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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168004
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】積層フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/00 20060101AFI20231116BHJP
   B29C 48/154 20190101ALI20231116BHJP
   C09D 11/30 20140101ALI20231116BHJP
   B32B 37/14 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B32B27/00 E
B29C48/154
C09D11/30
B32B37/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079596
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000122313
【氏名又は名称】株式会社ユポ・コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】足利 光洋
【テーマコード(参考)】
4F100
4F207
4J039
【Fターム(参考)】
4F100AK01
4F100AK01A
4F100AK03
4F100AK03C
4F100AK07
4F100AK07C
4F100AR00C
4F100AT00A
4F100BA03C
4F100BA07
4F100CA11
4F100CA11B
4F100CA21
4F100CA21B
4F100CC00
4F100CC00B
4F100DC21
4F100DC21B
4F100DD01
4F100DD01A
4F100DD01C
4F100EH17
4F100EH17C
4F100EH61
4F100EH61B
4F100EJ37
4F100EJ38
4F100EJ53
4F100GB07
4F100HB00
4F100HB00B
4F100JB16
4F100JB16C
4F100JN28
4F207AG03
4F207KA01
4F207KA17
4F207KB22
4F207KK64
4F207KL84
4J039BC32
4J039BE19
4J039BE29
4J039BE33
4J039CA01
4J039DA01
4J039DA02
4J039EA28
4J039EA29
4J039EA43
4J039EA46
4J039FA02
4J039GA24
(57)【要約】
【課題】中間層として、各種機能性材料からなるパターン層を有する積層フィルムを効率的に製造できるようにする。
【解決手段】基材層101、パターン層102および表面層103を有する積層フィルム100の製造方法であって、インクジェット吐出装置20を用いて、基材層101に機能性材料でパターン層102を形成するパターン層形成工程と、パターン層102表面に、熱可塑性樹脂組成物からなる表面層形成材料を用いた押出ラミネート法により形成する表面層形成工程とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層、パターン層及び表面層を有する積層フィルムの製造方法であって、
インクジェット吐出装置を用いて、前記基材層に機能性材料でパターン層を形成するパターン層形成工程と、
前記パターン層表面に、熱可塑性樹脂組成物からなる表面層形成材料を用いた押出ラミネート法により形成する表面層形成工程と
を備えることを特徴とする積層フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記機能性材料が、蛍光インキであることを特徴とする、請求項1に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記機能性材料が、剥離剤を含有する塗工液であることを特徴とする、請求項1に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項4】
前記機能性材料が、ガスバリア剤を含有する塗工液であることを特徴とする、請求項1に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項5】
前記機能性材料が、エチレンイミン系化合物を含有する塗工液であることを特徴とする、請求項1に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項6】
前記機能性材料が、導電材,芳香オイルカプセルのうち、少なくともいずれかを含有する塗工液であることを特徴とする、請求項1に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項7】
前記機能性材料が、防虫剤または抗菌剤を含む塗工液であり、前記基材層及び前記表面層の少なくとも一方が多孔質層であることを特徴とする、請求項1に記載の積層フィルムの製造方法。
【請求項8】
前記機能性材料が、樹脂およびレーザー光照射により発色または変色する色材を含む塗工液であり、前記表面層が透明または半透明であることを特徴とする、請求項1に記載の積層フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層フィルムの製造技術に関する。
【背景技術】
【0002】
積層フィルムの作成方法として、基材層の上に押出ラミネート法で表面層を設ける方法が知られている。その場合、表面層を設ける前に、基材層表面にパターン層を形成することにより、偽造防止性能を付与したり、機能性を付与することができる。
【0003】
また、基材層表面へのパターン層の形成は、例えば、基材層表面にグラビア印刷やフレキソ印刷の方法でパターンや図柄を印刷することで行なわれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002-187387号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、グラビア印刷やフレキソ印刷においては、パターンや図柄を変更する場合に、印刷装置を停止しなければならず、製品ロスが生じる。また、可変情報を挟み込んで偽造防止性を高めることは困難である。
【0006】
またグラビア印刷やフレキソ印刷は装置が大型であり、積層フィルム製造ラインに組み込むことは困難な場合がある。
【0007】
本発明の目的の一つは、中間層として、各種機能性材料からなるパターン層を有する積層フィルムを効率的に製造できるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、この積層フィルムの製造方法は、基材層、パターン層および表面層を有する積層フィルムの製造方法であって、インクジェット吐出装置を用いて、前記基材層に機能性材料でパターン層を形成するパターン層形成工程と、前記パターン層表面に、熱可塑性樹脂組成物からなる表面層形成材料を用いた押出ラミネート法により形成する表面層形成工程とを備える。
【発明の効果】
【0009】
一実施形態によれば、中間層として、各種機能性材料からなるパターン層を有する積層フィルムを効率的に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態の一例としての積層フィルム製造システムの構成を例示する図である。
図2】実施形態の一例としての積層フィルム製造システムの縦延伸装置の構成例を模式的に示す図である。
図3】実施形態の一例としての積層フィルム製造システムのインクジェット吐出装置を説明するための図である。
図4】実施形態の一例としての積層フィルム製造システムの横延伸装置の構成例を模式的に示す図である。
図5】積層フィルム製造システムの変形例におけるインクジェット吐出装置の配置例を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本積層フィルムの製造方法にかかる実施の形態を説明する。ただし、以下に示す実施形態はあくまでも例示に過ぎず、実施形態で明示しない種々の変形例や技術の適用を排除する意図はない。すなわち、本実施形態を、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形(実施形態および各変形例を組み合わせる等)して実施することができる。また、各図は、図中に示す構成要素のみを備えるという趣旨ではなく、他の機能等を含むことができる。
【0012】
(A)構成
図1は実施形態の一例としての積層フィルム製造システム1の構成を例示する図である。
【0013】
本発明の積層フィルム製造システム1は積層フィルム100を生成する。積層フィルム100は、基層101の上にパターン層102が形成された積層構造を有する。
【0014】
以下に示す例においては、パターン層102の上に表面層103が、また、基層101の下に裏面層104がそれぞれ形成された積層フィルム100を生成する例を示す。表面層103および裏面層104の少なくとも一方を積層フィルム100の表層といってよい。
【0015】
基層101は、第1延伸工程が完了するまでは「樹脂組成物を押出してなるキャストフィルム層」(以下、単に「キャストフィルム層」と称することがある)を表し、第1延伸工程後、第2延伸工程が完了するまでは「第1延伸層」を表し、第2延伸工程完了後は「多孔性基材層」を表す。
【0016】
基層101を形成する基層形成用材料としては、熱可塑性樹脂を含む樹脂組成物が挙げられる。すなわち、基層101に相当するキャストフィルム層、第1延伸層および多孔性基材層はいずれも、熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物からなる。
【0017】
熱可塑性樹脂としては、例えばオレフィン系重合体、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリ(メタ)アクリレート、ポリ塩化ビニル、およびこれらの混合樹脂等が挙げられる。なかでも、耐水性および耐溶剤性の観点からは、オレフィン系重合体が好ましい。
【0018】
オレフィン系重合体としては、ポリプロピレン等のプロピレン系重合体、ポリエチレン等のエチレン系重合体等を好ましく使用できる。
【0019】
前記樹脂組成物は、さらにフィラーを含有していてもよい。特に、後述するように基材層を多孔質層とする場合には、前記樹脂組成物がフィラーを含有することが好ましい。フィラーとしては、無機フィラーおよび有機フィラーのいずれであってもよい。
フィラーは、無機フィラーであっても有機フィラーであってもよく、いずれも平均粒径が通常0.01μm~15μm、好ましくは0.01μm~8μm、更に好ましくは0.03μm~4μmのものを使用することができる。なおフィラーの平均粒径は平均一次粒径(D50)であり、レーザー回折による粒度分布計で測定した体積平均粒径である。基層101中のフィラーの含有量は、所望の空孔率を得る観点からは、1質量%以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上であり、さらに好ましくは5質量%以上であり、また45質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは35質量%以下である。
【0020】
無機フィラーとして、具体的には、炭酸カルシウム、焼成クレイ、シリカ、けいそう土、タルク、酸化チタン、硫酸バリウム、アルミナなどを使用することができる。
【0021】
有機フィラーとしては、前記熱可塑性樹脂とは非相溶であり、融点又はガラス転移温度が熱可塑性樹脂よりも高く、熱可塑性樹脂の溶融混練条件下で微分散する有機粒子が好ましい。例えば熱可塑性樹脂がオレフィン系重合体である場合には、有機フィラーとしては、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ナイロン-6、ナイロン-6,6、環状オレフィンの単独重合体や環状オレフィンとエチレンとの共重合体等で融点が120℃~300℃、ないしはガラス転移温度が120℃~280℃であるものを用いることが好ましい。
【0022】
前記樹脂組成物には、更に必要により、安定剤、光安定剤、分散剤、滑剤、蛍光増白剤、着色剤等を配合してもよい。
【0023】
基層101は、単層構造であっても、2層以上の複層構造であってもよい。
【0024】
表面層103および裏面層104は、いずれも熱可塑性樹脂を含有する樹脂組成物からなる。また、前記樹脂組成物はフィラーを含有していてもよい。特に、後述するように表面層または裏面層を多孔質層とする場合には、前記樹脂組成物がフィラーを含有することが好ましい。フィラーとしては、無機フィラーおよび有機フィラーのいずれであってもよい。表面層103および裏面層104に用いられる熱可塑性樹脂、無機フィラー、有機フィラーとしては、基層101に用いられるものと同じものを使用することができる。さらに、表面層103および裏面層104には、上記安定剤、光安定剤、分散剤、滑剤、蛍光増白剤、着色剤等を配合してもよい。
【0025】
表面層103および裏面層104はそれぞれ単層構造であっても、2層以上の複層構造を有していてもよい。また、表面層103および裏面層104を構成する層の少なくとも一部は、一軸方向に延伸されていてもよい。
【0026】
図1に例示する積層フィルム製造システム1は、原料サイロ10a,10b,造粒機11,ペレットサイロ12a,12b,12c,押出機13a,13b,13c,縦延伸装置14,ラミネート装置15,横延伸装置16およびインクジェット吐出装置20を備える。
【0027】
積層フィルム製造システム1を構成する、これらの原料サイロ10a,10b,造粒機11,ペレットサイロ12a,12b,12c,押出機13a,13b,13c,縦延伸装置14,ラミネート装置15,横延伸装置16およびインクジェット吐出装置20のそれぞれは、積層フィルム100を製造するための製造工程を実現する。
【0028】
原料サイロ10a,10bには、積層フィルム100の原料が格納される。積層フィルム100の原料は、例えば、熱可塑性樹脂、フィラーおよび任意の添加剤などである。なお図1における原料サイロの数は2だが、必要な数を設ければよい。
【0029】
積層フィルム100の原料には、積層フィルム100の成形時の断裁工程等で発生した端材を加工して生成されるリサイクル素材を含めてもよい。
【0030】
原料サイロ10a,10b内に格納された原料は、造粒機11に投入される。
【0031】
造粒機11は、原料の熱可塑性樹脂にフィラーと、必要に応じて各種添加剤とを加えて、樹脂組成物のペレットを生成する。
【0032】
ペレットサイロ12a,12b,12cは、造粒機11によって生成されたペレットをそれぞれ格納する。ペレットサイロ12aは自身に格納するペレットを押出機13aに供給する。ペレットサイロ12bは自身に格納するペレットを押出機13bに供給する。ペレットサイロ12cは自身に格納するペレットを押出機13cに供給する。
【0033】
押出機13a,13b,13cは、それぞれ図示しない押出機ダイから、溶融された熱可塑性樹脂をシートの形状で押し出す。
【0034】
押出機13aは積層フィルムの表面層103を生成するものであり、図示しない押出機ダイから、溶融された熱可塑性樹脂をシートの形状で押し出す。押出機13aから押し出された表面層103は、後述するラミネート装置15に供給される。
【0035】
押出機13cは積層フィルムの裏面層104を生成するものであり、図示しない押出機ダイから、溶融された熱可塑性樹脂をシートの形状で押し出す。押出機13cから押し出された裏面層104は、ラミネート装置15に供給される。
【0036】
押出機13bはキャストフィルム層である基層101を形成するものであり、図示しない押出機ダイから、溶融された樹脂組成物をシートの形状で押し出す。押出機13bから押し出された基層101、すなわちキャストフィルム層は、図示しない搬送ローラ等により搬送され、後述する縦延伸装置14に供給される。
【0037】
縦延伸装置14は、押出機13bから押し出された基層101、すなわちキャストフィルム層の流れ方向(搬送方向)における下流位置に配置されている。
【0038】
縦延伸装置14は、押出機13bから押し出された基層101、すなわちキャストフィルム層を、当該基層101の流れ方向に延伸させる。以下、基層101の流れ方向(搬送方向)を縦方向といってよい。縦方向は第1の方向に相当する。
【0039】
縦延伸装置14は、基層101(キャストフィルム層)を縦方向(第1の方向)に延伸する第1延伸装置に相当する。また、縦延伸装置14は、基層101(キャストフィルム層)を縦方向(第1の方向)に延伸する第1延伸工程を実現する。
【0040】
縦延伸装置14においては、例えば、縦延伸方向と直交する方向に複数(図1に示す例では3つ)の搬送ローラが互いに平行に配設されている。そして、これらの搬送ローラ間において、例えば、搬送ローラの周速に差をつけることでキャストフィルム層に縦方向の張力をかけ、該層を縦方向に延伸させる。すなわち、縦延伸装置14は、ロール群の周速差を利用したロール間延伸を行なってもよい。
【0041】
延伸を実施するときの延伸温度は、使用する熱可塑性樹脂が非晶性樹脂の場合、当該熱可塑性樹脂のガラス転移点温度以上の範囲であることが好ましい。また、熱可塑性樹脂が結晶性樹脂の場合の延伸温度は、当該熱可塑性樹脂の非結晶部分のガラス転移点以上であって、かつ当該熱可塑性樹脂の結晶部分の融点以下の範囲内であることが好ましく、熱可塑性樹脂の融点よりも2℃~60℃低い温度が好ましい。具体的には、プロピレン単独重合体(融点155℃~167℃)の場合は100℃~164℃の延伸温度が好ましく、高密度ポリエチレン樹脂(融点121~134℃)の場合は70℃~133℃の延伸温度が好ましい。
【0042】
延伸速度は、特に限定されるものではないが、安定した延伸成形の観点から、20m/分~350m/分の範囲内であることが好ましい。
【0043】
また、延伸倍率についても、使用する熱可塑性樹脂の特性等を考慮して適宜決定することができ、例えばプロピレン系樹脂を使用して2軸延伸する場合、延伸倍率は、面積延伸倍率で、下限が通常1.5倍以上、好ましくは4倍以上であり、上限が通常60倍以下、好ましくは50倍以下である。
【0044】
図2は実施形態の一例としての積層フィルム製造システム1の縦延伸装置14の構成例を模式的に示す図である。
【0045】
この図2に示す例においては、4つの搬送ローラ141a,141b,141c,141dが、互いの回転軸が平行になるように、各回転軸を縦方向と直交させた状態で配設されている。4つの搬送ローラ141a,141b,141c,141dは、基層101の流れ方向に沿って、搬送ローラ141a,搬送ローラ141b,搬送ローラ141c,搬送ローラ141dの順で配置されている。以下、搬送ローラ141a,141b,141c,141dを特に区別しない場合には、搬送ローラ141と表記する。
【0046】
これらの各搬送ローラ141は、図示しない駆動モータにより回転軸を中心に回転可能に構成されており、それぞれ基層101に当接した状態で、基層101の流れに沿う方向に回転する。
【0047】
また、各搬送ローラ141においては、基層101の流れ方向における下流に配置された搬送ローラ141ほど周速が速くなるよう駆動モータの回転速度の制御が行なわれる。これにより、隣り合う搬送ローラ141間において基層101の流れ方向に沿って基層101に張力が発生し、基層101が縦方向に延伸される。
【0048】
縦延伸装置14の下流であって、横延伸装置16の上流位置には、インクジェット吐出装置20が備えられている。
【0049】
インクジェット吐出装置20は、縦延伸装置14が延伸させた基層101の表面に塗工液を吐出することで、基層101の表面にパターン層102を形成する。縦延伸装置14が延伸させた基層101は第1延伸層に相当する。
【0050】
インクジェット吐出装置20は、基層101の第1の面(表面)に塗工液の粒子を吐出する。なお、インクジェット吐出装置20は、基層101の第2の面(裏面)に塗工液の粒子を吐出してもよい。
【0051】
インクジェット吐出装置20は、縦延伸装置14(第1延伸工程)にて得られた基層(第1延伸層)101上にパターン層102を形成する塗工工程を実現する。
【0052】
図3は実施形態の一例としての積層フィルム製造システム1のインクジェット吐出装置20を説明するための図である。
【0053】
インクジェット吐出装置20は、基層101の表面に対向する位置において、幅方向に沿って配置される。インクジェット吐出装置20における基層101と対向する位置には、図示しない複数のインク吐出口(ノズル)が配置されている。これらのインク吐出口は基層101の幅方向の全体に亘って形成されており、各インク吐出口から塗工液が粒子状に吐出され、基層101の表面に塗工液が塗布される。
【0054】
インクジェット吐出装置30の各インク吐出口からの塗工液の吐出は、塗工制御部400(図3参照)により制御される。塗工制御部400は、各インク吐出口のそれぞれからの塗工液の吐出を制御する。例えば、塗工制御部400は、インク吐出口に対する吐出のオン/オフを切り替える制御を行なうことで、塗工液の吐出量を精密に制御することができる。
【0055】
塗工制御部400としての機能は、図示しないコンピュータのプロセッサがドライバソフトウェアを実行することで実現される。
【0056】
塗工制御部400は、インクジェット吐出装置20に備えられた複数のインク吐出口のうち任意のインク吐出口に対して吐出のオン/オフを制御することで、インクジェット吐出装置30における特定のインク吐出口からの塗工液の吐出制御や、インク吐出口からの吐出の抑止を実現することができる。インクジェット吐出装置20の吐出制御を行なうドライバソフトウェアは既知であり、その詳細な説明は省略する。
【0057】
塗工制御部400は、塗工液を用いて基層101の表面にパターンを形成(印刷)する。塗工液は、積層フィルムに何らかの機能を持たせるための機能性材料であってもよい。
【0058】
機能性材料に特に制限はないが、例えば蛍光インキや,剥離剤,ガスバリア剤,エチレンイミン系化合物,導電材,または芳香オイルカプセルなどを含む塗工液のいずれかであってもよい。塗工制御部400は、塗工液(機能性材料)の種類に応じて基層101の表面に形成するパターンを変えてよい。すなわち、塗工制御部400は、基層101の表面に塗工液の種類に応じたパターン層102を形成してよい。
【0059】
塗工液として蛍光インキを用いて基層101の表面にインクジェット吐出装置20を用いて図柄を印刷してもよい。これにより、製造された積層フィルム100にブラックライトを照射すると、図柄が浮き出てくるため、偽造を困難にすることができる。すなわち、塗工液として蛍光インキを用いることで、偽造防止性の高いフィルムを得ることができる。なお、この場合は表面層103が透明または半透明であることが望ましい。
【0060】
また、剥離剤を含む塗工液を用いて基層101の表面にインクジェット吐出装置20を用いて図柄を印刷してもよい。これにより、例えば表面層または裏面層の少なくとも一方の表面を粘着加工したラベルは、これを物品に貼付したのち再剥離した際に、剥離剤の部分が剥離して図柄を浮き出すことが可能となる。
【0061】
また、ガスバリア剤を含む塗工液を用いてもよい。これにより、積層フィルム100にガスバリア性を容易に付与することができる。
【0062】
さらに、エチレンイミン系化合物を含む塗工液を用いてもよい。これにより、積層フィルムの層間強度を向上させることができる。
【0063】
また、導電材を含む塗工液を用いてもよい。これにより、導電性の積層フィルム100(導電性フィルム)を容易に生成することができる。
【0064】
また、芳香オイルを包含するカプセル(芳香オイルカプセル)を含む塗工液を使用してもよい。これにより、保香フィルムを容易に生成することができる。
【0065】
さらに、樹脂とレーザー光照射により発色または変色する色材とを含む塗工液を使用してもよい。この場合、レーザーマーキングする領域のみ、塗工液をベタ塗りするパターンを採用してもよい。これにより、レーザーマーキングにて可変情報などを記録可能な積層フィルム100を容易に得ることができる。
なお、パターン層102に対してレーザーマーキングを行なう場合には、表面層103が透明または半透明であることが望ましい。
【0066】
また、防虫剤または抗菌剤を含む塗工液を用いてもよい。これにより、防虫効果や抗菌効果を有する積層フィルム100を容易に作製することができる。なお、この場合、基層101もしくは表面層103が延伸樹脂フィルムであり、熱可塑性樹脂とフィラー(充填剤)とを含有する樹脂組成物を延伸することにより、フィルム中にボイド(空孔)形成してなる多孔質フィルム(多孔質層)であることが望ましい。
【0067】
なお上述の各種塗工液は、剥離剤,ガスバリア剤,エチレンイミン系化合物,導電材,芳香オイルカプセル,防虫剤または抗菌剤のほかに、少なくともこれらを溶解またはごく微剤に分散可能な分散媒を含有する。
【0068】
またパターン層102を構成するパターンは、幾何学的・規則的なパターンであっても、不規則な文様であってもよく、何らかの図柄や文字・数字などであってもよく、特に制限はない。
【0069】
ラミネート装置15は、押出機13b,13cおよびインクジェット吐出装置20の下流に配置されている。
【0070】
ラミネート装置15は、押出機13bから押し出され、縦延伸装置14によって縦方向に延伸され、インクジェット吐出装置20によってパターン層102が形成された基層101に、押出機13aから押し出された表面層103および押出機13cから押し出された裏面層104を層状に貼り付けることで積層体105を生成する。ラミネート装置15は押出ラミネート法により積層体105を形成する。
【0071】
ラミネート装置15は、パターン層102表面に、熱可塑性樹脂組成物からなる表面層形成材料を用いた押出ラミネート法により形成する表面層形成装置に相当する。また、ラミネート装置15は、パターン層102表面に、熱可塑性樹脂組成物からなる表面層形成材料を用いた押出ラミネート法により形成する表面層形成工程を実現する。
【0072】
ラミネート装置15による基層101への表面層103および裏面層104の貼り付けは既知の手法で実現することができ、その説明は省略する。
【0073】
横延伸装置16は、ラミネート装置15の下流に配置されている。
【0074】
横延伸装置16は、ラミネート装置15によって生成された積層体105を、縦方向と直交する方向(横方向,幅方向)に延伸し、積層フィルム100を形成する。なお基層101または表面層103のうち少なくとも一方を多孔質層とするため、該層形成用の樹脂組成物がフィラーを含有する場合には、この横方向への延伸により層中にボイドが形成され、多孔質層が形成される。横方向は第2の方向に相当する。
【0075】
横延伸装置16は、ラミネート装置15によって生成された積層体105を、縦方向(第1の方向)と直交する横方向(幅方向,第2の方向)に延伸する第2延伸装置に相当する。また、横延伸装置16は、パターン層102が形成された基層101(第1延伸層)を、縦方向(第1の方向)と直交する横方向(幅方向,第2の方向)に延伸する第2延伸工程を実現する。
【0076】
なお、第2延伸工程でも、第1延伸工程と同様に、使用する熱可塑性樹脂の種類に応じた延伸温度に基層101を加熱し、延伸を行なう。
【0077】
図4は実施形態の一例としての積層フィルム製造システム1の横延伸装置16の構成例を模式的に示す図である。
【0078】
横延伸装置16は、積層体105の縁辺を把持する複数(図4に示す例では6つ)のクリップ161を備える。これらのクリップ161は、前記積層体105の二つの縁辺のそれぞれにおける積層体105を介して対向する位置において、対をなすように配置されている。図4に示す例においては積層体105の流れ方向に沿って3対のクリップ161が備えられている。
【0079】
これらの複数のクリップ161において、積層体105を挟んで対向する位置に備えられたクリップ161の対は、それぞれ積層体105の縁辺部を把持した状態で、互いに遠ざかる方向に移動することで、積層体105を横方向(幅方向)に引っ張り延伸させる。
【0080】
積層体105を把持するクリップ161は、積層体105の搬送に追従して流れ方向に移動しながら積層体105を幅方向に延伸させ、所定の位置において積層体105を解放する。その後、各クリップ161は、積層体105の搬送方向における上流位置に戻り、再度積層体105を把持する。このように、横延伸装置16においては、複数のクリップ161を用いて、積層体105の把持、延伸、解放を繰り返し行なうことで、積層体105を横方向に延伸させる。すなわち、横延伸装置16は、テンターオーブンを利用したクリップ延伸を行なう。この横延伸工程、すなわち第2延伸工程を経ることにより、本発明の積層フィルム100が完成する。
【0081】
その後、積層フィルム100に対して両縁辺の裁断等の加工や厚みの計測等の処理が行なわれる。その後、積層フィルム100は、ワインダー(図示せず)により巻き取られ、後続する仕上げ工程に送られる。
【0082】
(B)動作
上述の如く構成された積層フィルム製造システム1において、原料サイロ10a,10bに格納された原料は、造粒機11に投入される。
【0083】
造粒機11は、原料の熱可塑性樹脂に、必要に応じてフィラーや任意の添加剤を加えて樹脂組成物のペレットを生成する。生成されたペレットはペレットサイロ12a,12b,12cに格納される。
【0084】
ペレットサイロ12aは自身に格納するペレットを押出機13aに供給する。ペレットサイロ12bは自身に格納するペレットを押出機13bに供給する。ペレットサイロ12cは自身に格納するペレットを押出機13cに供給する。
【0085】
押出機13bは、基層101(キャストフィルム層)を生成する。押出機13aによって生成された基層101は、縦延伸装置14に投入される。
【0086】
縦延伸装置14は、押出機13bから押し出された基層101を縦方向に延伸させる。縦延伸装置14により縦方向に延伸された基層101(第1延伸層)の第1の面(表面)にインクジェット吐出装置20が塗工液の粒子を吐出し、この表面にパターン層102を形成する。
【0087】
押出機13aは積層フィルムの表面層103を生成する。また、押出機13cは積層フィルムの裏面層104を生成する。
【0088】
ラミネート装置15は、押出機13bから押し出され、縦延伸装置14によって縦方向に延伸され、さらにインクジェット吐出装置20によってパターン層102が形成された基層101に、押出機13aから押し出された表面層103および押出機13cから押し出された裏面層104を層状に貼り付けることで積層体105を生成する。
【0089】
その後、横延伸装置16が、ラミネート装置15によってラミネートされた積層体105を、横方向(幅方向)に延伸させて積層フィルム100を生成する。
【0090】
その後、積層フィルム100に対して両縁辺の裁断等の加工や厚みの計測等の処理が行なわれる。その後、積層フィルム100は、図示しないワインダーにより巻き取られ、後続する仕上げ工程に送られる。
【0091】
(C)効果
このように、実施形態の一例としての積層フィルム製造システム1によれば、縦延伸装置14によって縦方向に延伸された基層101に対して、インクジェット吐出装置20が塗工液を吐出する。インクジェット吐出装置20の図示しないインクジェットノズルから吐出される塗工液は液滴が小さく、塗工制御部400は塗工量を精密制御することができるので、塗工制御部400は、基層101の表面に高精度なパターン層102を形成することができる。
【0092】
また、インクジェット吐出装置20が基層101の表面にパターン層102を形成した後に、ラミネート装置15が、基層101のパターン層102の上に表面層103を、基層101の裏面に裏面層104をそれぞれラミネートする。これにより、押出ラミネート法にて積層フィルム100を作製する途中に、層間にパターン層102を容易に設けることができる。すなわち、積層フィルム100を効率的に製造できる。
【0093】
また、インクジェット吐出装置20を用いてパターン層102を形成することで、例えば、仕様変更等によりパターン層102のパターンに変更が生じた場合においても、塗工制御部400を用いて新たなパターンを設定することで、容易に対応することができる。すなわち、パターンの多様性を容易に実現することができる。
【0094】
また、インクジェット吐出装置20は、既知のロールコーターと比べて小型であるので、連続的な積層フィルム作製工程中に容易に組み込むことができる。また、本積層フィルム製造システム1の小型化を図ることもできる。
【0095】
塗工液として蛍光インキを用いてパターン層102を形成することで、例えば、偽造防止性の高いフィルムを得ることができる。
【0096】
また、剥離剤を含む塗工液を用いてパターン層102を形成することで、この積層フィルムの表面層または裏面層の少なくとも一方の表面を粘着加工したラベルは、これを物品に貼付したのち再剥離した際に、剥離剤の部分が剥離して図柄を浮き出すことが可能となる。
【0097】
また、ガスバリア剤を含む塗工液を用いてパターン層102を形成することで、積層フィルム100にガスバリア性を容易に付与することができる。
【0098】
さらに、エチレンイミン系化合物を含む塗工液を用いてパターン層102を形成することで、積層フィルムの層間強度を向上させることができる。
【0099】
また、導電材を含む塗工液を用いてパターン層102を形成することで、導電性の積層フィルム100(導電性フィルム)を容易に生成することができる。
【0100】
また、芳香オイルを包含するカプセル(芳香オイルカプセル)を含む塗工液を用いることで、保香フィルムを容易に生成することができる。
【0101】
さらに、樹脂とレーザー光照射により発色または変色する色材とを含む塗工液を使用してもよい。この場合、レーザーマーキングする領域のみ、塗工液をベタ塗りするパターンを採用してもよい。これにより、レーザーマーキングにて可変情報などを可能な積層フィルム100を容易に得ることができる。
【0102】
また、防虫剤または抗菌剤を含む塗工液を用いてパターン層102を形成することで、防虫効果や抗菌効果を有する積層フィルム100を容易に作製することができる。
【0103】
また、上述した実施形態においては、基層101の裏面に裏面層104を形成しているが、これに限定されるものではなく、裏面層104の形成を省略してもよい。
【0104】
(D)その他
開示の技術は上述した実施形態に限定されるものではなく、本実施形態の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
【0105】
例えば、上述した実施形態においては、積層フィルム100が基層101の上にパターン層102が形成された構造を有する例を示しているが、これに限定されるものではない。例えば基層101は多層であってもよく、また基層101の裏面にもパターン層102を形成してもよい。
【0106】
図5は積層フィルム製造システム1の変形例におけるインクジェット吐出装置20a,20bの配置例を模式的に示す図である。
【0107】
基層101の両面にパターン層102を形成する場合には、この図5に例示するように、基層101の表面にパターン層102を形成するインクジェット吐出装置20aと、基層101の裏面にパターン層102を形成するインクジェット吐出装置20bとを備える。これらのインクジェット吐出装置20a,20bは、上述したインクジェット吐出装置20と同様の構成を有する。
【0108】
図5に示す例においては、インクジェット吐出装置20bとインクジェット吐出装置20aとを上下方向に並べて配置している。そして、縦延伸装置14によって延伸された基層101の搬送経路を、複数の搬送ローラ201を用いて屈曲させて折り返すことで、インクジェット吐出装置20bによって裏面(第2の面)にパターン層102が形成された基層101の表面(第1の面)に、インクジェット吐出装置20aよりパターン層102を形成している。
【0109】
このようにインクジェット吐出装置20bとインクジェット吐出装置20aとを上下方向に並べて配置することで、本積層フィルム製造システム1の省スペース化を実現することができる。
【0110】
上述した実施形態においては、縦延伸装置14と横延伸装置16との間にインクジェット吐出装置20が備えられ、基層101に対して縦延伸装置14が縦方向への延伸を行なった後に、この基層101にインクジェット吐出装置20がパターン層102を形成しているが、これに限定されるものではない。縦延伸装置14の上流側にインクジェット吐出装置20を備え、基層101に対してインクジェット吐出装置20がパターン層102を形成した後に、この基層101に対して縦延伸装置14が縦方向への延伸を行なってもよい。
【0111】
また、上述した開示により本実施形態を当業者によって実施・製造することが可能である。
【符号の説明】
【0112】
1 積層フィルム製造システム
10a,10b 原料サイロ
11 造粒機
12a,12b,12c ペレットサイロ
13a,13b,13c 押出機
14 縦延伸装置
15 ラミネート装置
16 横延伸装置
161 クリップ
20a,20b,20 インクジェット吐出装置
100 積層フィルム
101 基層
102 塗工層(パターン層)
105 積層体
141a,141b,141c,141d,141 搬送ローラ
201 搬送ローラ
400 塗工制御部
図1
図2
図3
図4
図5