(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168031
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】拡底バケット及び拡底孔の施工方法
(51)【国際特許分類】
E21B 11/00 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
E21B11/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079643
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391039829
【氏名又は名称】東洋テクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】大塚 明宏
(72)【発明者】
【氏名】福島 隆
(72)【発明者】
【氏名】村松 匡太
(72)【発明者】
【氏名】武居 幸次郎
(72)【発明者】
【氏名】落合 利行
(72)【発明者】
【氏名】森田 亨
(72)【発明者】
【氏名】山田 正毅
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129AB16
2D129AC09
2D129BA03
2D129BB01
2D129BB08
2D129DA12
2D129DC05
2D129DC16
2D129EB17
2D129EB24
2D129GA33
(57)【要約】
【課題】掘削抵抗が増大することを抑制するとともに、土砂の排土を効率よく行うことができる大型の拡底バケット及び拡底孔の施工方法を提供する。
【解決手段】拡底翼24を、上部拡底翼24aと下部拡底翼24bとに分割して形成する。上部拡底翼24aに、拡底翼24を開閉させる拡底翼駆動装置25を連結する。上部拡底翼24aと下部拡底翼24bとを連結し、上部拡底翼24aと下部拡底翼24bとを拡底翼駆動装置25にて一体的に開閉可能とする第1連結手段と、下部拡底翼24bとバケット本体22とを連結し、下部拡底翼24bを閉状態に維持し、上部拡底翼24aのみを拡底翼駆動装置25にて開閉可能とする第2連結手段とを備える。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アースドリルのケリーバ先端に着脱可能に装着され、予め掘削した縦孔の底部を、バケット本体に開閉可能に設けられた拡底翼を開くことにより拡大掘削し、拡底孔を形成する拡底バケットにおいて、
前記拡底翼は、上部拡底翼と下部拡底翼とに分割して形成され、前記上部拡底翼に、拡底翼を開閉させる拡底翼駆動装置を連結するとともに、前記上部拡底翼と前記下部拡底翼とを連結し、前記上部拡底翼と前記下部拡底翼とを前記拡底翼駆動装置にて一体的に開閉可能とする第1連結手段と、前記下部拡底翼と前記バケット本体とを連結し、前記下部拡底翼を閉状態に維持し、前記上部拡底翼のみを前記拡底翼駆動装置にて開閉可能とする第2連結手段とを備えていることを特徴とする拡底バケット。
【請求項2】
前記第1連結手段は、前記上部拡底翼と前記下部拡底翼とにそれぞれ設けられた一対の第1連結ブラケットと、該一対の第1連結ブラケットにそれぞれ形成された一対の第1ピン挿通孔と、該一対の第1ピン挿通孔に亘って着脱可能に挿通される第1連結ピンとで形成され、第2連結手段は、前記下部拡底翼と前記バケット本体とにそれぞれ設けられた一対の第2連結ブラケットと、該一対の第2連結ブラケットにそれぞれ形成された一対の第2ピン挿通孔と、該一対の第2ピン挿通孔に亘って着脱可能に挿通される第2連結ピンとで形成されることを特徴とする請求項1記載の拡底バケット。
【請求項3】
前記第1ピン挿通孔と前記第2ピン挿通孔とは同一の径に形成され、前記第1連結ピンと前記第2連結ピンとは、同一の連結ピンで形成されることを特徴とする請求項2記載の拡底バケット。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の拡底バケットを用いて拡底孔を施工する拡底孔の施工方法において、前記第2連結手段にて、前記下部拡底翼を閉状態に維持し、前記上部拡底翼のみを前記拡底翼駆動装置にて開閉可能とした拡底バケットで、前記拡底孔の上部側を施工した後、前記拡底バケットを吊り上げ、地上で前記第2連結手段を解除し、前記第1連結手段にて、前記上部拡底翼と前記下部拡底翼とを連結し、前記上部拡底翼と前記下部拡底翼とを前記拡底翼駆動装置にて一体的に開閉可能とした前記拡底バケットを、施工済みの前記拡底孔の上部側に配置し、前記拡底孔の上部側に連続して、前記拡底孔の下部側を施工することを特徴とする拡底孔の施工方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の拡底バケットを用いて拡底孔を施工する拡底孔の施工方法において、前記第1連結手段にて、前記上部拡底翼と前記下部拡底翼とを連結し、前記上部拡底翼と前記下部拡底翼とを前記拡底翼駆動装置にて一体的に開閉可能とした前記拡底バケットで、前記拡底孔の施工を所定の径まで広げて行い、掘削抵抗が所定以上に増したら、前記上部拡底翼と前記下部拡底翼とを一旦閉じて前記拡底バケットを吊り上げ、地上で前記第1連結手段を解除し、前記第2連結手段にて、前記下部拡底翼を閉状態に維持し、前記上部拡底翼のみを前記拡底翼駆動装置にて開閉可能とした拡底バケットで、前記拡底孔の上部側を施工した後、前記拡底バケットを吊り上げ、地上で前記第2連結手段を解除し、前記第1連結手段にて、前記上部拡底翼と前記下部拡底翼とを連結し、前記上部拡底翼と前記下部拡底翼とを前記拡底翼駆動装置にて一体的に開閉可能とした前記拡底バケットを、施工済みの前記拡底孔の上部側に配置し、前記拡底孔の上部側に連続して、前記拡底孔の下部側を施工することを特徴とする拡底孔の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アースドリルにより掘削した縦孔の底部を拡大掘削して、拡底孔を施工する拡底バケット及び拡底孔の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アースドリルによって、拡底孔を掘削する際には、まず、ケリーバの先端に掘削バケットを装着して、所定深さの縦孔を掘削した後、掘削バケットを拡底バケットに交換して、縦孔の底部をテーパー状(円錐状)に拡底している。この拡底バケットは、バケット本体の外周に、油圧シリンダの作動によって開閉する掘削刃を備えた拡底翼を備え、ベースマシンから油圧シリンダに供給される油圧により、油圧シリンダが伸縮して拡底翼が開閉するように形成されている。高層ビルや高層タワー等の基礎杭では、基礎杭に高い支持力が要求されることから、拡底孔を大径に掘削して基礎杭の拡底径を大きくすることが求められている。しかし、大径の拡底孔を掘削するためには、拡底翼の寸法を大きくしなければならないことから、掘削抵抗が増大し、さらに、拡底バケットの重量も増加することから、一度に排土できる土砂の量が減少していた。
【0003】
このため、拡底バケットの拡底翼を上下2段に分割し、下段の拡底翼を駆動拡底翼、上段の拡底翼を従動拡底翼とし、両者間に連動用動力伝達手段を設け、下段の拡底翼がある程度開いてから上段の拡底翼が開くように形成し、拡底翼を閉じる際に、バケット本体を大型化させなくても、拡底翼を良好に閉じることができるようにしたものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の特許文献1のものは、拡底翼を上下2段に分割することで拡底翼をバケット内に良好に収納できるようにし、バケット本体が大型化して排土の効率が低下することは抑制できるものの、上段の拡底翼と下段の拡底翼とを単独で作動させることはできず、掘削抵抗が増大することは抑制できなかった。また、上段の拡底翼と下段の拡底翼とを単独で作動させるために、上段の拡底翼用の駆動装置と、下段の拡底翼用の駆動装置とを個別に設けると拡底バケットの重量が嵩み、排土の効率が低下するおそれがあった。
【0006】
そこで本発明は、掘削抵抗が増大することを抑制するとともに、土砂の排土を効率よく行うことができる大型の拡底バケット及び拡底孔の施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の拡底バケットは、アースドリルのケリーバ先端に着脱可能に装着され、予め掘削した縦孔の底部を、バケット本体に開閉可能に設けられた拡底翼を開くことにより拡大掘削し、拡底孔を形成する拡底バケットにおいて、前記拡底翼は、上部拡底翼と下部拡底翼とに分割して形成され、前記上部拡底翼に、拡底翼を開閉させる拡底翼駆動装置を連結するとともに、前記上部拡底翼と前記下部拡底翼とを連結し、前記上部拡底翼と前記下部拡底翼とを前記拡底翼駆動装置にて一体的に開閉可能とする第1連結手段と、前記下部拡底翼と前記バケット本体とを連結し、前記下部拡底翼を閉状態に維持し、前記上部拡底翼のみを前記拡底翼駆動装置にて開閉可能とする第2連結手段とを備えていることを特徴としている。
【0008】
また、前記第1連結手段は、前記上部拡底翼と前記下部拡底翼とにそれぞれ設けられた一対の第1連結ブラケットと、該一対の第1連結ブラケットにそれぞれ形成された一対の第1ピン挿通孔と、該一対の第1ピン挿通孔に亘って着脱可能に挿通される第1連結ピンとで形成され、第2連結手段は、前記下部拡底翼と前記バケット本体とにそれぞれ設けられた一対の第2連結ブラケットと、該一対の第2連結ブラケットにそれぞれ形成された一対の第2ピン挿通孔と、該一対の第2ピン挿通孔に亘って着脱可能に挿通される第2連結ピンとで形成されると好ましい。
【0009】
さらに、前記第1ピン挿通孔と前記第2ピン挿通孔とは同一の径に形成され、前記第1連結ピンと前記第2連結ピンとは、同一の連結ピンで形成されると好適である。
【0010】
また、本発明の拡底孔の施工方法は、上述の拡底バケットを用いて拡底孔を施工する拡底孔の施工方法において、前記第2連結手段にて、前記下部拡底翼を閉状態に維持し、前記上部拡底翼のみを前記拡底翼駆動装置にて開閉可能とした拡底バケットで、前記拡底孔の上部側を施工した後、前記拡底バケットを吊り上げ、地上で前記第2連結手段を解除し、前記第1連結手段にて、前記上部拡底翼と前記下部拡底翼とを連結し、前記上部拡底翼と前記下部拡底翼とを前記拡底翼駆動装置にて一体的に開閉可能とした前記拡底バケットを、施工済みの前記拡底孔の上部側に配置し、前記拡底孔の上部側に連続して、前記拡底孔の下部側を施工することを特徴としている。
【0011】
さらに、上述の拡底バケットを用いて拡底孔を施工する拡底孔の施工方法において、前記第1連結手段にて、前記上部拡底翼と前記下部拡底翼とを連結し、前記上部拡底翼と前記下部拡底翼とを前記拡底翼駆動装置にて一体的に開閉可能とした前記拡底バケットで、前記拡底孔の施工を所定の径まで広げて行い、掘削抵抗が所定以上に増したら、前記上部拡底翼と前記下部拡底翼とを一旦閉じて前記拡底バケットを吊り上げ、地上で前記第1連結手段を解除し、前記第2連結手段にて、前記下部拡底翼を閉状態に維持し、前記上部拡底翼のみを前記拡底翼駆動装置にて開閉可能とした拡底バケットで、前記拡底孔の上部側を施工した後、前記拡底バケットを吊り上げ、地上で前記第2連結手段を解除し、前記第1連結手段にて、前記上部拡底翼と前記下部拡底翼とを連結し、前記上部拡底翼と前記下部拡底翼とを前記拡底翼駆動装置にて一体的に開閉可能とした前記拡底バケットを、施工済みの前記拡底孔の上部側に配置し、前記拡底孔の上部側に連続して、前記拡底孔の下部側を施工することを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、上下の拡底翼を掘削段階毎に順を追って機能させることから、掘削抵抗を極力抑えながら、拡底孔を施工することができ、さらに、排土を効果的に行うことができる。また、選択的なピン結合によって、上部拡底翼のみを単独で作動させたり、上部拡底翼と下部拡底翼とを一体的に作動させたりすることができ、しかも、同一の拡底翼駆動装置を用いることができることから機構がシンプルになり、拡底バケットの重量が増大することを抑制できる。すなわち、一度の拡径で排土できる土砂の量を増やすことが可能となり、施工効率を向上させることができる。さらに、複数あるピン結合を同一の連結ピンを用いたピン結合構造とすることによって、部品の共通化を図ることができるとともに連結ピンの付け替え作業も短時間で迅速に行うことができる。
【0013】
また、上下で掘削を分ける(拡底翼の上部のみ・下部のみで掘削を分ける)ことができるため、上下一体で掘削するよりも、掘削抵抗が極力抑えられる。さらに、掘削抵抗を抑えることができるため、スムーズに施工ができる。加えて、掘削抵抗が大きくなり掘削出来ない状況(施工作業が止まる)になりにくい。したがって、排土を効果的に行うことができる。また、拡底バケット重量と土砂重量の総重量は、掘削機の能力によって決まっていることから、拡底バケットの重量増加を抑えたことで、拡底バケットに収納できる土砂を増やすことができる。すなわち、一度の拡径で掘削できる土砂の量を増やすことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一形態例を示す拡底バケットの正面図である。
【
図3】上部拡底翼のみを開いた拡底バケットの正面図である。
【
図4】上部拡底翼のみを開いた拡底バケットの要部説明図である。
【
図5】上部拡底翼と下部拡底翼とを一体に開いた拡底バケットの正面図である。
【
図7】上部拡底翼と下部拡底翼とを一体に開いた拡底バケットの要部説明図である。
【
図8】拡底バケットにて拡底孔を施工した状態の説明図である。
【
図9】拡底バケットを連結した状態のアースドリルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1乃至
図9は本発明の拡底バケットの一形態例を示す図である。このうち、
図3及び
図5の破線で丸く囲んだ部分については、これらの部分を取り出して、
図4及び
図7に拡底バケットの要部としてそれぞれ斜視図で示している。拡底バケット21は、
図9に示されるように、アースドリル11に連結されて使用される。アースドリル11は、自走式のベースマシン12と、ブーム13と、支持アーム14と、支持アーム14に支持されるケリーバ駆動装置15と、ケリーバ駆動装置15により回転駆動するケリーバ16と、ケリーバ駆動装置15の下部に設けられ、昇降を規制した状態でケリーバ16と一体に回転する回転テーブル17とを備え、回転テーブル17から下方に突出したケリーバ16の下端部に拡底バケット21が着脱可能に装着される。ケリーバ16は、ベースマシン12に設けられたウインチ(図示せず)に巻回されるワイヤロープ18に連結され、ウインチによってワイヤロープ18が巻き取り、もしくは、巻き出しされることにより上下方向に移動自在となっており、拡底バケット21は、ケリーバ16と一体に回転するとともに上下動する。
【0016】
拡底バケット21は、
図1や
図6などに示すように、周壁に二つの開口部22a,22aを形成した円筒状のバケット本体22と、バケット本体22の上端部に設けたスタビライザー23と、バケット本体22の下端部に設けた底蓋22bと、両開口部22a,22aを開閉し、開状態(
図5)で下方に向けて漸次大径となる円錐状の拡底翼24,24と、拡底翼24,24を開閉させる拡底翼駆動装置25とを備えている。
【0017】
各拡底翼24は、上部拡底翼24aと下部拡底翼24bとに分割して形成される。上下の拡底翼24a,24bは、一側縁(回動基部)がバケット本体22の縦枠22c,22cに複数のヒンジ部材26を介して開口部22aに対して回動可能にそれぞれ取り付けられ、他側縁(回動端部)には、複数の掘削刃27が連続して設けられている。
【0018】
また、
図4や
図7などに示すように、上部拡底翼24aと下部拡底翼24bとには、一対の第1連結ブラケット28a,28bがそれぞれ設けられ、一方の第1連結ブラケット28aに形成された第1ピン挿通孔28cと、他方の第1連結ブラケット28bに形成された第1ピン挿通孔28cとに亘って、連結ピン29(本発明の第1連結ピン)を挿通することにより、上部拡底翼24aと下部拡底翼24bとが一体に連結される(
図7、請求項1の第1連結手段)。さらに、下部拡底翼24bとバケット本体22とには、一対の第2連結ブラケット30a,30bがそれぞれ設けられ、一方の第2連結ブラケット30aに形成された第2ピン挿通孔30cと他方の第2連結ブラケット30bに形成された第2ピン挿通孔30cとに亘って、連結ピン29(本発明の第2連結ピン)を挿通することにより、下部拡底翼24bとバケット本体22とが連結される(
図4、請求項1の第2連結手段)。また、第1ピン挿通孔28c,28cと第2ピン挿通孔30c,30cとは同一の径に形成され、連結ピン29は、同一の連結ピンが用いられる。連結ピン29は、第1ピン挿通孔28cと第2ピン挿通孔30cとで選択的に挿入される。
【0019】
図6に示すように、拡底翼駆動装置25は、バケット本体内の中央部に立設される角柱25aと、該角柱25aに昇降可能に取り付けられる昇降ブラケット25bと、ベースマシン12から供給される油圧により昇降ブラケット25bを昇降させる一対の油圧シリンダ25c,25cと、昇降ブラケット25bに一端部を、上部拡底翼24aの下部側に他端部をそれぞれ連結した一対のリンク部材25d,25dとを備えている。
【0020】
連結ピン29によって、第2連結ブラケット30a,30bを連結した状態で油圧シリンダ25c,25cを伸長させると、昇降ブラケット25bが下降し、これに伴って、リンク部材25d,25dは、その他端部(下端部)が上部拡底翼24aのみをバケット本体22の外周側に押し開きながら倒伏する。これにより、下部拡底翼24bを閉状態に維持したまま、上部拡底翼24aが開口部22aを閉鎖する閉状態から、開口部22aを開放する開状態とに亘って、バケット本体22の半径方向へ回動する。一方、油圧シリンダ25c,25cを収縮させると、昇降ブラケット25bが上昇し、これに伴って、リンク部材25d,25dの他端部(下端部)がバケット本体22側へ移動しながら起立する。これにより、上部拡底翼24aが、上述の開状態から、開口部22aを閉鎖する閉状態まで回動する。
【0021】
また、連結ピン29によって、第1連結ブラケット28a,28bを連結した状態で油圧シリンダ25c,25cを伸長させると、昇降ブラケット25bが下降し、これに伴って、リンク部材25d,25dは、その他端部(下端部)が上部拡底翼24aと下部拡底翼24bとをバケット本体22の外周側に押し開きながら倒伏する。これにより、上部拡底翼24aと下部拡底翼24bとが開口部22aを閉鎖する閉状態から、開口部22aを開放する開状態とに亘って、バケット本体22の半径方向へ一体的に回動する。一方、油圧シリンダ25c,25cを収縮させると、昇降ブラケット25bが上昇し、これに伴って、リンク部材25d,25dの他端部(下端部)がバケット本体22側へ移動しながら起立する。これにより、上部拡底翼24aと下部拡底翼24bが、上述の開状態から、開口部22aを閉鎖する閉状態まで一体的に回動する。
【0022】
また、
図1及び
図2に示すように、昇降ブラケット25bとバケット本体22との間には、油圧シリンダ25c,25cの伸縮動作により開閉する拡底翼24の開度と、油圧シリンダ25c,25cに供給される作動油の流量とを対応付ける較正機構31が設けられている。較正機構31は、バケット本体22に設けられるゲージ部材31aと、昇降ブラケット25bに設けられ該昇降ブラケット25bの昇降に伴って、ゲージ部材31aに沿って移動するバー部材31bとを備え、ゲージ部材31aには、拡底翼24の開度を示す目盛りを備えている。これにより、バー部材31bが指し示す目盛りを読むことで、拡底翼24の開度を正確に認識することができる。
【0023】
上述のように形成された拡底バケット21を用いて拡底孔を施工する際は、まず、第2連結ブラケット30a,30bの位置を合わせ、一対の第2ピン挿通孔30c,30cに亘って連結ピン29を挿通し、上部拡底翼24aのみを拡底翼駆動装置25によって開閉可能な状態とした拡底バケット21を、掘削バケット(図示せず)で予め掘削した縦孔に挿入し、該縦孔の底部において回転駆動した状態で、上部拡底翼24aを徐々に開きながら、
図8(A)に示すように、拡底孔32の上部32a側をテーパー状に拡径させる。また、掘削した土砂は上部拡底翼24aの内面に沿ってバケット本体22側に導入され、バケット本体22内に取り込まれる。所定量を掘削した後は、上部拡底翼24aを閉じて、土砂をバケット本体22内に抱え込ませる。このとき、底の浅い形状の底蓋22bや、上部拡底翼24aに設けられた複数の排土口24cにより、余分に土砂が取り込まれることなく、アースドリル11の吊り能力に応じた最大量の土砂をバケット本体22に保持させることができる。そして、拡底バケット21を土砂ごと吊り上げ、所定の場所で底蓋22bを開いて排土する。これを数回繰り返し、拡底孔の上部側が施工される。
【0024】
拡底孔の下部側を施工する際は、地上において第2ピン挿通孔30c,30cから連結ピン29を抜き取り、第1連結ブラケット28a,28bの位置を合わせ、一対の第1ピン挿通孔28c,28cに亘って連結ピン29を挿通し、上部拡底翼24aと下部拡底翼24bとを一体的に開閉可能な状態とする。その後、縦孔の底部(既に施工済みの拡底孔の上部側の位置で上部拡径翼24aを開く深さ)まで拡底バケット21を挿入し、上部拡底翼24aと下部拡底翼24bとを一体的に徐々に開きながら、
図8(B)に示すように、最大拡底径となる拡底孔32の下部32b側を施工する。また、掘削した土砂は下部拡底翼24bの内面に沿ってバケット本体22側に導入され、バケット本体22内に取り込まれる。所定量を掘削した後は、上部拡底翼24aと下部拡底翼24bとを一体的に閉じて、土砂をバケット本体22内に抱え込ませた状態で拡底バケット21を吊り上げ、底蓋22bを開いて排土する。これを数回繰り返し、拡底孔の下部側が施工される。
【0025】
このように、本発明によれば、上下の拡底翼24a,24bを掘削段階毎に順を追って機能させることから、掘削抵抗を極力抑えながら、拡底孔を施工することができ、さらに、排土を効果的に行うことができる。また、選択的なピン結合によって、上部拡底翼24aのみを単独で作動させたり、上部拡底翼24aと下部拡底翼24bとを一体的に作動させたりすることができ、しかも、同一の拡底翼駆動装置25を用いることができることから機構がシンプルになり、拡底バケット21の重量が増大することを抑制できる。すなわち、一度の拡径で排土できる土砂の量を増やすことが可能となり、施工効率を向上させることができる。さらに、複数あるピン結合を同一の連結ピン29を用いたピン結合構造とすることによって、部品の共通化を図ることができるとともに連結ピン29の付け替え作業も短時間で迅速に行うことができる。
【0026】
また、上下で掘削を分ける(上部拡底翼24aのみ・下部拡底翼24bのみで掘削を分ける)ことができるため、上下一体で掘削するよりも、掘削抵抗が極力抑えられる。さらに、掘削抵抗を抑えることができるため、スムーズに施工ができる。加えて、掘削抵抗が大きくなり掘削出来ない状況(施工作業が止まる)になりにくい。したがって、排土を効果的に行うことができる。また、拡底バケット重量と土砂重量の総重量は、掘削機の能力によって決まっていることから、拡底バケット21の重量増加を抑えたことで、拡底バケット21に収納できる土砂を増やすことができる。すなわち、一度の拡径で掘削できる土砂の量を増やすことが可能となる。
【0027】
なお、本発明は上述の形態例に限るものではなく、第1ピン挿通孔と第2ピン挿通孔とが同一の径に形成されていなくてもよく、第1連結ピンと第2連結ピンとを個別に設けるものでも差し支えない。さらに、第1連結手段及び第2連結手段の構造は任意である。また、最初から上部拡底翼と下部拡底翼とを一体的に開閉可能な状態で、所定の径まで広げて拡底し、掘削抵抗が所定以上に増したら、上部拡底翼のみを作動できる状態にして拡底し、その後、上部下部一体で拡底してもよい。
【符号の説明】
【0028】
11…アースドリル、12…ベースマシン、13…ブーム、14…支持アーム、15…ケリーバ駆動装置、16…ケリーバ、17…回転テーブル、18…ワイヤロープ、21…拡底バケット、22…バケット本体、22a…開口部、22b…底蓋、22c…縦枠、23…スタビライザー、24…拡底翼、24a…上部拡底翼、24b…下部拡底翼、24c…排土口、25…拡底翼駆動装置、25a…角柱、25b…昇降ブラケット、25c…油圧シリンダ、25d…リンク部材、26…ヒンジ部材、27…切削刃、28a,28b…第1連結ブラケット、28c…第1ピン挿通孔、29…連結ピン、30a,30b…第2連結ブラケット、30c…第2ピン挿通孔、31…較正機構、31a…ゲージ部材、31b…バー部材、32…拡底孔、32a…上部、32b…下部