(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168032
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】拡底バケット及び拡底孔の施工方法
(51)【国際特許分類】
E21B 11/00 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
E21B11/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079644
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001373
【氏名又は名称】鹿島建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】391039829
【氏名又は名称】東洋テクノ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】大塚 明宏
(72)【発明者】
【氏名】福島 隆
(72)【発明者】
【氏名】村松 匡太
(72)【発明者】
【氏名】武居 幸次郎
(72)【発明者】
【氏名】落合 利行
(72)【発明者】
【氏名】森田 亨
(72)【発明者】
【氏名】山田 正毅
【テーマコード(参考)】
2D129
【Fターム(参考)】
2D129AB16
2D129AC09
2D129BA04
2D129BB01
2D129BB08
2D129DA12
2D129DC05
2D129DC16
2D129EB14
2D129EB21
2D129GA31
(57)【要約】
【課題】拡底バケットの軽量化を図るとともに、掘削抵抗が増大することを抑制できる大型の拡底バケット及び拡底孔の施工方法を提供する。
【解決手段】第1バケット本体22に、拡底孔42の上部側を施工する上部拡底翼24を備えた第1拡底バケット21と、第2バケット本体32に、拡底孔42の下部側を施工する下部拡底翼34を備えた第2拡底バケット31とを備え、第1拡底バケット21と第2拡底バケット31とは、ケリーバ先端に付け替え可能に取り付けられる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アースドリルのケリーバ先端に着脱可能に装着され、予め掘削した縦孔の底部を、バケット本体に開閉可能に設けられた拡底翼を開くことにより拡大掘削し、拡底孔を形成する拡底バケットにおいて、
前記拡底翼は、前記拡底孔の上部側を施工する上部拡底翼と、前記拡底孔の下部側を施工する下部拡底翼とに分割して形成され、
前記拡底バケットは、前記ケリーバ先端に付け替え可能に装着される第1拡底バケットと第2拡底バケットとを備え、前記第1拡底バケットは、第1バケット本体に、前記上部拡底翼のみを備え、前記第2拡底バケットは、第2バケット本体に、前記下部拡底翼のみを備えることを特徴とする拡底バケット。
【請求項2】
請求項1に記載の拡底バケットを用いて拡底孔を施工する拡底孔の施工方法において、前記第1拡底バケットを前記ケリーバ先端に装着し、拡底孔の上部側を施工した後、前記第1拡底バケットを吊り上げ、地上で前記ケリーバ先端から、前記第1拡底バケットを取外して前記第2拡底バケットに付け替えた後、前記拡底孔の下部側を施工することを特徴とする拡底孔の施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アースドリルにより掘削した縦孔の底部を拡大掘削して、拡底孔を形成する拡底バケット及び拡底孔の施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、アースドリルによって、拡底孔を掘削する際には、まず、ケリーバの先端に掘削バケットを装着して、所定深さの縦孔を掘削した後、掘削バケットを拡底バケットに交換して、縦孔の底部をテーパー状(円錐状)に拡底している。この拡底バケットは、バケット本体の外周に、油圧シリンダの作動によって開閉する掘削刃を備えた拡底翼を備え、ベースマシンから油圧シリンダに供給される油圧により、油圧シリンダが伸縮して拡底翼が開閉するように形成されている。高層ビルや高層タワー等の基礎杭では、基礎杭に高い支持力が要求されることから、拡底孔を大径に掘削して基礎杭の拡底径を大きくすることが求められている。しかし、大径の拡底孔を掘削するためには、拡底翼の寸法を大きくしなければならないことから、掘削抵抗が増大し、さらに、拡底バケットの重量も増加することから、一度に排土できる土砂の量が減少していた。
【0003】
このため、拡底バケットの拡底翼を上下2段に分割し、下段の拡底翼を駆動拡底翼、上段の拡底翼を従動拡底翼とし、両者間に連動用動力伝達手段を設け、下段の拡底翼がある程度開いてから上段の拡底翼が開くように形成し、拡底翼を閉じる際に、バケット本体を大型化させなくても、拡底翼を良好に閉じることができるようにしたものがあった(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述の特許文献1のものは、拡底翼を上下2段に分割することで、バケット本体が大型化して重量が増大することをある程度は抑制できるものの、その効果が限定的であり、また、掘削抵抗が増大することは抑制できなかった。
【0006】
そこで本発明は、拡底バケットの軽量化を図るとともに、掘削抵抗が増大することを抑制できる大型の拡底バケット及び拡底孔の施工方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の拡底バケットは、アースドリルのケリーバ先端に着脱可能に装着され、予め掘削した縦孔の底部を、バケット本体に開閉可能に設けられた拡底翼を開くことにより拡大掘削し、拡底孔を形成する拡底バケットにおいて、前記拡底翼は、前記拡底孔の上部側を施工する上部拡底翼と、前記拡底孔の下部側を施工する下部拡底翼とに分割して形成され、前記拡底バケットは、前記ケリーバ先端に付け替え可能に装着される第1拡底バケットと第2拡底バケットとを備え、前記第1拡底バケットは、第1バケット本体に、前記上部拡底翼のみを備え、前記第2拡底バケットは、第2バケット本体に、前記下部拡底翼のみを備えることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の拡底孔の施工方法は、請求項1に記載の拡底バケットを用いて拡底孔を施工する拡底孔の施工方法において、前記第1拡底バケットを前記ケリーバ先端に装着し、拡底孔の上部側を施工した後、前記第1拡底バケットを吊り上げ、地上で前記ケリーバ先端から、前記第1拡底バケットを取外して前記第2拡底バケットに付け替えた後、前記拡底孔の下部側を施工することを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の拡底バケット及び拡底孔の施工方法によれば、第1拡底バケットと第2拡底バケットとから成る2種類の拡底バケットで掘削段階毎に順を追って、ケリーバ先端に付け替えて機能させることから、拡底バケットに生じる掘削抵抗を極力抑えながら、拡底孔を施工することができる。さらに、第1拡底バケットと第2拡底バケットとは、上部拡底翼と下部拡底翼のいずれか一方しか備えていないことから拡底バケットの軽量化を図ることができ、一度に排土できる土砂の量を増大させて排土作業の回数を減少させ、効率を向上させることができる。
【0010】
また、上下で掘削を分ける(拡底翼の上部のみ・下部のみで掘削を分ける)ことができるため、上下一体で掘削するよりも、掘削抵抗が極力抑えられる。さらに、拡底バケット重量と土砂重量の総重量は、掘削機の能力によって決まっていることから、上部のみ下部のみの拡大翼にして、各々の拡底バケットの重量増加を抑えたことで、拡底バケットに一度に収納できる土砂を増やすことができる。すなわち、一度に排土できる土砂の量を増大させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図2】第1拡底バケットにて拡底孔の上部側を施工した説明図である。
【
図4】第2拡底バケットにて拡底孔の下部側を施工した状態の説明図である。
【
図5】拡底バケットを連結した状態のアースドリルの側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1乃至
図5は本発明の拡底バケットの一形態例を示す図で、拡底バケット21(31)を連結するアースドリル11は、
図5に示すように、自走式のベースマシン12と、ブーム13と、支持アーム14と、支持アーム14に支持されるケリーバ駆動装置15と、ケリーバ駆動装置15により回転駆動するケリーバ16と、ケリーバ駆動装置15の下部に設けられ、昇降を規制した状態でケリーバ16と一体に回転する回転テーブル17とを備え、回転テーブル17から下方に突出したケリーバ16の下端部に拡底バケットが着脱可能に装着される。ケリーバ16は、ベースマシン12に設けられたウインチ(図示せず)に巻回されるワイヤロープ18に連結され、ウインチによってワイヤロープ18が巻き取り、もしくは、巻き出しされることにより上下方向に移動自在となっており、拡底バケット21(31)は、ケリーバ16と一体に回転するとともに上下動する。
【0013】
拡底バケットは、ケリーバ16の先端に付け替え可能に設けられた第1拡底バケット21と第2拡底バケット31とを備えている。
図1に示すように、第1拡底バケット21は、円筒状の第1バケット本体22と、第1バケット本体22の上端部に設けたスタビライザー23と、第1バケット本体22の下端部に設けた底蓋22aと、開口部を開閉し、開状態で下方に向けて漸次大径となる円錐状の上部拡底翼24,24と、上部拡底翼24,24を開閉させる拡底翼駆動装置(図示せず)とを備えている。
【0014】
上部拡底翼24は、一側縁(回動基部)が第1バケット本体22の縦枠22b,22bに複数のヒンジ部材25を回動軸として回動可能にそれぞれ取り付けられ、他側縁(回動端部)には、複数の掘削刃26が連続して設けられている。
れている。
【0015】
図3に示すように、第2拡底バケット31は、円筒状の第2バケット本体32と、第2バケット本体32の上端部に設けたスタビライザー33と、第2バケット本体32の下端部に設けた底蓋32aと、開口部を開閉し、開状態で下方に向けて漸次大径となる円錐台状の下部拡底翼34,34と、下部拡底翼34,34を開閉させる拡底翼駆動装置(図示せず)とを備えている。
【0016】
下部拡底翼34は、一側縁(回動基部)が第2バケット本体32の縦枠32b,32bに複数のヒンジ部材35を回動軸として回動可能にそれぞれ取り付けられ、他側縁(回動端部)には、複数の掘削刃36が連続して設けられている。尚、第1拡底バケット21と第2拡底バケット31の本体22,32(スタビライザー23,33と底蓋22a,32aとの間隔)は略同一であって施工する拡底孔42の高さに概ね等しく、第1拡底バケット21の上部拡底翼24は本体22の上端部に設けられ、第2拡底バケット31の下部拡底翼34は本体32の下端部に設けられている。
【0017】
上部拡底翼24と下部拡底翼34とは、一体に形成されていた従来の拡底翼を上下2段に分離分割して形成したもので、第1拡底バケット21に備わる上部拡底翼24では、拡底孔42の上部42a側のみを、第2拡底バケット31に備わる下部拡底翼34では、拡底孔42の下部42b側のみをそれぞれ施工する。
【0018】
上述のように形成されたアースドリル11を用いて拡底孔を施工する際は、まず、
図1及び
図2に示されるように、ケリーバ16の先端に第1拡底バケット21を連結し、該第1拡底バケット21を、掘削バケット(図示せず)で予め掘削した縦孔41に挿入し、該縦孔41の底部において回転駆動した状態で、上部拡底翼24を徐々に開きながら、拡底孔42の上部42a側をテーパー状に拡径させる(
図2の斜線で示した部分)。また、掘削した土砂は上部拡底翼24の内面に沿って第1バケット本体22側に導入され、第1バケット本体22内に取り込まれる。所定量を掘削した後は、上部拡底翼24を閉じて、土砂を第1バケット本体22内に抱え込ませる。そして、第1拡底バケット21を土砂ごと吊り上げ、所定の場所で底蓋22aを開いて排土する。これを数回繰り返し、拡底孔42の上部42a側が施工される。
【0019】
拡底孔42の下部42b側を施工する際は、
図3及び
図4に示されるように、地上において第1拡底バケット21と第2拡底バケット31とを付け替える。その後、既に施工済みの拡底孔42の上部42a側まで第2拡底バケット31を挿入し、下部拡底翼34を徐々に開きながら、最大拡底径となる拡底孔42の下部42b側を施工する(
図4の斜線で示した部分)。また、掘削した土砂は下部拡底翼34の内面に沿って第2バケット本体32側に導入され、第2バケット本体32内に取り込まれる。所定量を掘削した後は、下部拡底翼34を閉じて、土砂を第2バケット本体32内に抱え込ませた状態で第2拡底バケット31を吊り上げ、底蓋32aを開いて排土する。これを数回繰り返し、拡底孔42の下部42b側が施工される。
【0020】
このように、本発明によれば、第1拡底バケット21と第2拡底バケット31とから成る2種類の拡底バケットを掘削段階毎に順を追って、ケリーバ先端に付け替えて機能させることから、拡底バケットに生じる掘削抵抗を極力抑えながら、拡底孔42を施工することができる。さらに、第1拡底バケット21と第2拡底バケット31とは、上部拡底翼24と下部拡底翼34のいずれか一方しか備えていないことから拡底バケットの軽量化を図ることができ、一度に排土できる土砂の量を増大させて排土作業の回数を減少させ、効率を向上させることができる。
【0021】
また、上下で掘削を分ける(上部拡底翼24のみ・下部拡底翼34のみで掘削を分ける)ことができるため、上下一体で掘削するよりも、掘削抵抗が極力抑えられる。さらに、拡底バケット重量と土砂重量の総重量は、掘削機の能力によって決まっていることから、上部のみ下部のみの拡大翼にして、各々の拡底バケット21,31の重量増加を抑えたことで、拡底バケットに一度に収納できる土砂を増やすことができる。すなわち、一度に排土できる土砂の量を増大させることが可能となる。
【0022】
なお、本発明は上述の形態例に限るものではなく、上下に分離分割した拡底翼同士の寸法関係は、拡底バケットの仕様に基づいて適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0023】
11…アースドリル、12…ベースマシン、13…ブーム、14…支持アーム、15…ケリーバ駆動装置、16…ケリーバ、17…回転テーブル、18…ワイヤロープ、21…第1拡底バケット、22…第1バケット本体、22a…底蓋、22b縦枠、23…スタビライザー、24…上部拡底翼、25…ヒンジ部材、26…掘削刃、31…第2拡底バケット、32…第2バケット本体、32a…底蓋、32b…縦枠、33…スタビライザー、34…下部拡底翼、35…ヒンジ部材、36…掘削刃、41…縦孔、42…拡底孔、42a…上部、42b…下部