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特開2023-168035リチウム二次電池用非水電解液、リチウム二次電池前駆体、リチウム二次電池の製造方法、リチウム二次電池、及び、リチウム二次電池の非水電解液用添加剤
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  • 特開-リチウム二次電池用非水電解液、リチウム二次電池前駆体、リチウム二次電池の製造方法、リチウム二次電池、及び、リチウム二次電池の非水電解液用添加剤 図1
  • 特開-リチウム二次電池用非水電解液、リチウム二次電池前駆体、リチウム二次電池の製造方法、リチウム二次電池、及び、リチウム二次電池の非水電解液用添加剤 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168035
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】リチウム二次電池用非水電解液、リチウム二次電池前駆体、リチウム二次電池の製造方法、リチウム二次電池、及び、リチウム二次電池の非水電解液用添加剤
(51)【国際特許分類】
   H01M 10/0567 20100101AFI20231116BHJP
   H01M 10/052 20100101ALI20231116BHJP
   H01M 4/525 20100101ALI20231116BHJP
   H01M 4/505 20100101ALI20231116BHJP
   H01M 10/058 20100101ALI20231116BHJP
【FI】
H01M10/0567
H01M10/052
H01M4/525
H01M4/505
H01M10/058
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079650
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000005887
【氏名又は名称】三井化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安久 侑輝
(72)【発明者】
【氏名】清水 雄介
(72)【発明者】
【氏名】須黒 雅博
【テーマコード(参考)】
5H029
5H050
【Fターム(参考)】
5H029AJ04
5H029AK03
5H029AK18
5H029AL06
5H029AL07
5H029AL08
5H029AL12
5H029AL18
5H029AM02
5H029AM03
5H029AM04
5H029AM05
5H029AM07
5H029HJ01
5H029HJ02
5H050AA09
5H050BA17
5H050CA08
5H050CA29
5H050CB07
5H050CB08
5H050CB09
5H050CB12
5H050CB29
5H050HA02
(57)【要約】
【課題】リチウム二次電池の高温保存時の低温抵抗上昇率を低減させることができるリチウム二次電池用非水電解液を提供する。
【解決手段】式(I)で表される化合物(I)を含有する、リチウム二次電池用非水電解液。R11は、水素原子又は-SO基であり、R12は、アルキレン基、フッ化アルキレン基、アルケニレン基、フッ化アルケニレン基、及びカルボニル基からなる群Aから選択される1種である炭素数1~10の2価の基であるか、又は、上記群Aから選択される2種以上が連結してなる炭素数1~10の2価の基であり、R及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいベンジル基である。

【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される化合物(I)を含有する、リチウム二次電池用非水電解液。
【化1】

〔式(I)中、
11は、水素原子又は-SO基であり、
12は、
アルキレン基、フッ化アルキレン基、アルケニレン基、フッ化アルケニレン基、及びカルボニル基からなる群Aから選択される1種である炭素数1~10の2価の基であるか、又は、前記群Aから選択される2種以上が連結してなる炭素数1~10の2価の基である。
及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいベンジル基である。〕
【請求項2】
前記R12が、炭素数2のアルキレン基又は炭素数2のアルケニレン基であり、
前記R及び前記Rが、それぞれ独立に、置換されていてもよいアリール基である、
請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項3】
前記化合物(I)が、下記化合物(I-1)~下記化合物(I-6)からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【化2】
【請求項4】
前記化合物(I)の含有量が、電池用非水電解液の全量に対し、0.01質量%以上5.0質量%以下である、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項5】
更に、モノフルオロリン酸リチウム及びジフルオロリン酸リチウムの少なくとも一方である化合物(II)、下記式(III)で表される化合物(III)、下記式(IV)で表される化合物(IV)、並びに、下記式(V)で表される化合物(V)からなる群より選択される少なくとも1種である添加剤Xを含有する、請求項1に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【化3】

〔式(III)中、
Mは、アルカリ金属であり、
Yは、遷移元素、周期律表の13族元素、14族元素、又は15族元素であり、
bは、1~3の整数であり、
mは、1~4の整数であり、
nは、0~8の整数であり、
qは、0又は1であり、
31は、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数1~10のハロゲン化アルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基、又は炭素数6~20のハロゲン化アリーレン基(これらの基は、構造中に置換基、又はヘテロ原子を含んでいてもよく、qが1でmが2~4の場合にはm個のR31はそれぞれが結合していてもよい。)であり、
32は、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、炭素数6~20のアリール基、又は炭素数6~20のハロゲン化アリール基(これらの基は、構造中に置換基、又はヘテロ原子を含んでいてもよく、nが2~8の場合はn個のR32はそれぞれが結合して環を形成していてもよい。)であり、
及びQは、それぞれ独立に、酸素原子又は炭素原子である。
式(IV)中、
41は、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基、又は炭素数2~6のアルケニレン基であり、
42は、炭素数1~6のアルキレン基、炭素数2~6のアルケニレン基、式(iv-1)で表される基、又は式(iv-2)で表される基であり、
*は、結合位置であり、
式(iv-1)中、R43は、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基、炭素数2~6のアルケニレン基、又はオキシメチレン基であり、
式(iv-2)中、R44は、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数2~6のアルケニル基である。
式(V)中、R51及びR52は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、又はプロピル基を表す。〕
【請求項6】
前記添加剤Xの含有量が、電池用非水電解液の全量に対し、0.01質量%以上5.0質量%以下である、請求項5に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【請求項7】
ケースと、
前記ケースに収容された、正極、負極、セパレータ、及び電解液と、
を備え、
前記正極が、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な正極であり、
前記負極が、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極であり、
前記電解液が、請求項1~請求項6のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用非水電解液である、リチウム二次電池前駆体。
【請求項8】
前記正極が、正極活物質として、下記式(P1)で表されるリチウム含有複合酸化物を含む、請求項7に記載のリチウム二次電池前駆体。
LiNiCoMn … 式(P1)
〔式(P1)中、a、b及びcは、それぞれ独立に、0超1未満であり、かつ、a、b及びcの合計は、0.99以上1.00以下である。〕
【請求項9】
請求項7に記載のリチウム二次電池前駆体を準備する工程と、
前記リチウム二次電池前駆体に対して、充電及び放電を施す工程と
を含む、リチウム二次電池の製造方法。
【請求項10】
請求項7に記載のリチウム二次電池前駆体に対し、充電及び放電を施して得られた、リチウム二次電池。
【請求項11】
下記式(I)で表される化合物(I)を含む、リチウム二次電池の非水電解液用添加剤。
【化4】

〔式(I)中、
11は、水素原子又は-SO基であり、
12は、アルキレン基、フッ化アルキレン基、アルケニレン基、フッ化アルケニレン基、及びカルボニル基からなる群Aから選択される1種である炭素数1~10の2価の基であるか、又は、前記群Aから選択される2種以上が連結してなる炭素数1~10の2価の基であり、
及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいベンジル基である。〕
【請求項12】
前記R12が、炭素数2のアルキレン基であり、
前記R及び前記Rが、それぞれ独立に、置換されていてもよいアリール基である、
請求項11に記載のリチウム二次電池の非水電解液用添加剤。
【請求項13】
前記化合物(I)が、下記化合物(I-1)~下記化合物(I-6)からなる群から選択される少なくとも1種である、請求項11に記載のリチウム二次電池の非水電解液用添加剤。
【化5】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、リチウム二次電池用非水電解液、リチウム二次電池前駆体、リチウム二次電池の製造方法、リチウム二次電池、及び、リチウム二次電池の非水電解液用添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウム二次電池等の電池用の非水電解液に関し、様々な検討がなされている。
例えば、特許文献1には、初期抵抗値の低い非水電解液電池に使用される非水電解液として、ウレア構造を有する特定の化合物、溶質、及び非水有機溶媒を含有する非水電解液が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開第2021/015264号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、リチウム二次電池を高温保存した場合のリチウム二次電池の低温抵抗の上昇率(以下、「リチウム二次電池の高温保存時の低温抵抗上昇率」ともいう)をより低減させることが求められる場合がある。
本開示の一態様の課題は、リチウム二次電池の高温保存時の低温抵抗上昇率を低減させることができる、リチウム二次電池用非水電解液、リチウム二次電池前駆体、リチウム二次電池の製造方法、リチウム二次電池、及び、リチウム二次電池の非水電解液用添加剤を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための手段には、以下の実施態様が含まれる。
【0006】
<1> 下記式(I)で表される化合物(I)を含有する、リチウム二次電池用非水電解液。
【0007】
【化1】
【0008】
式(I)中、
11は、水素原子又は-SO基であり、
12は、
アルキレン基、フッ化アルキレン基、アルケニレン基、フッ化アルケニレン基、及びカルボニル基からなる群Aから選択される1種である炭素数1~10の2価の基であるか、又は、前記群Aから選択される2種以上が連結してなる炭素数1~10の2価の基である。
及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいベンジル基である。
【0009】
<2> 前記R12が、炭素数2のアルキレン基又は炭素数2のアルケニレン基であり、
前記R及び前記Rが、それぞれ独立に、置換されていてもよいアリール基である、
<1>に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
<3> 前記化合物(I)が、下記化合物(I-1)~下記化合物(I-6)からなる群から選択される少なくとも1種である、<1>又は<2>に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【0010】
【化2】
【0011】
<4> 前記化合物(I)の含有量が、電池用非水電解液の全量に対し、0.01質量%以上5.0質量%以下である、<1>~<3>のいずれか1つに記載のリチウム二次電池用非水電解液。
<5> 更に、モノフルオロリン酸リチウム及びジフルオロリン酸リチウムの少なくとも一方である化合物(II)、下記式(III)で表される化合物(III)、下記式(IV)で表される化合物(IV)、並びに、下記式(V)で表される化合物(V)からなる群より選択される少なくとも1種である添加剤Xを含有する、<1>~<4>のいずれか1つに記載のリチウム二次電池用非水電解液。
【0012】
【化3】
【0013】
式(III)中、
Mは、アルカリ金属であり、
Yは、遷移元素、周期律表の13族元素、14族元素、又は15族元素であり、
bは、1~3の整数であり、
mは、1~4の整数であり、
nは、0~8の整数であり、
qは、0又は1であり、
31は、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数1~10のハロゲン化アルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基、又は炭素数6~20のハロゲン化アリーレン基(これらの基は、構造中に置換基、又はヘテロ原子を含んでいてもよく、qが1でmが2~4の場合にはm個のR31はそれぞれが結合していてもよい。)であり、
32は、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、炭素数6~20のアリール基、又は炭素数6~20のハロゲン化アリール基(これらの基は、構造中に置換基、又はヘテロ原子を含んでいてもよく、nが2~8の場合はn個のR32はそれぞれが結合して環を形成していてもよい。)であり、
及びQは、それぞれ独立に、酸素原子又は炭素原子である。
式(IV)中、
41は、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基、又は炭素数2~6のアルケニレン基であり、
42は、炭素数1~6のアルキレン基、炭素数2~6のアルケニレン基、式(iv-1)で表される基、又は式(iv-2)で表される基であり、
*は、結合位置であり、
式(iv-1)中、R43は、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基、炭素数2~6のアルケニレン基、又はオキシメチレン基であり、
式(iv-2)中、R44は、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数2~6のアルケニル基である。
式(V)中、R51及びR52は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、又はプロピル基を表す。
【0014】
<6> 前記添加剤Xの含有量が、電池用非水電解液の全量に対し、0.01質量%以上5.0質量%以下である、<5>に記載のリチウム二次電池用非水電解液。
<7> ケースと、
前記ケースに収容された、正極、負極、セパレータ、及び電解液と、
を備え、
前記正極が、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な正極であり、
前記負極が、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極であり、
前記電解液が、<1>~<6>のいずれか1項に記載のリチウム二次電池用非水電解液である、リチウム二次電池前駆体。
<8> 前記正極が、正極活物質として、下記式(P1)で表されるリチウム含有複合酸化物を含む、<7>に記載のリチウム二次電池前駆体。
LiNiCoMn … 式(P1)
〔式(P1)中、a、b及びcは、それぞれ独立に、0超1未満であり、かつ、a、b及びcの合計は、0.99以上1.00以下である。〕
<9> <7>又は<8>に記載のリチウム二次電池前駆体を準備する工程と、
前記リチウム二次電池前駆体に対して、充電及び放電を施す工程と
を含む、リチウム二次電池の製造方法。
<10> <7>~<9>のいずれか1つに記載のリチウム二次電池前駆体に対し、充電及び放電を施して得られた、リチウム二次電池。
<11> 下記式(I)で表される化合物(I)を含む、リチウム二次電池の非水電解液用添加剤。
【0015】
【化4】
【0016】
式(I)中、
11は、水素原子又は-SO基であり、
12は、アルキレン基、フッ化アルキレン基、アルケニレン基、フッ化アルケニレン基、及びカルボニル基からなる群Aから選択される1種である炭素数1~10の2価の基であるか、又は、前記群Aから選択される2種以上が連結してなる炭素数1~10の2価の基であり、
及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいベンジル基である。
【0017】
<12> 前記R12が、炭素数2のアルキレン基であり、
前記R及び前記Rが、それぞれ独立に、置換されていてもよいアリール基である、
<11>に記載のリチウム二次電池の非水電解液用添加剤。
<13> 前記化合物(I)が、下記化合物(I-1)~下記化合物(I-4)からなる群から選択される少なくとも1種である、<11>又は<12>に記載のリチウム二次電池の非水電解液用添加剤。
【0018】
【化5】
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、リチウム二次電池用非水電解液、リチウム二次電池前駆体、リチウム二次電池の製造方法、リチウム二次電池、及び、リチウム二次電池の非水電解液用添加剤が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本開示のリチウム二次電池前駆体の一例であるラミネート型電池を示す概略断面図である。
図2】本開示のリチウム二次電池前駆体の別の一例であるコイン型電池を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本明細書において、組成物中の各成分の量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合は、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。
本明細書において、「工程」との用語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
【0022】
〔リチウム二次電池用非水電解液〕
本開示のリチウム二次電池用非水電解液(以下、単に「非水電解液」ともいう)は、下記式(I)で表される化合物(I)を含有する。
【0023】
【化6】
【0024】
式(I)中、
11は、水素原子又は-SO基であり、
12は、アルキレン基、フッ化アルキレン基、アルケニレン基、フッ化アルケニレン基、及びカルボニル基からなる群Aから選択される1種である炭素数1~10の2価の基であるか、又は、上記群Aから選択される2種以上が連結してなる炭素数1~10の2価の基であり、
及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいベンジル基である。
【0025】
本開示の非水電解液によれば、リチウム二次電池の高温保存時の低温抵抗上昇率を低減させることができる。
本開示において、低温抵抗とは、低温条件(例えば-10℃の条件)における抵抗を意味する。
本開示において、リチウム二次電池の高温保存時の低温抵抗上昇率とは、リチウム二次電池を高温保存した場合のリチウム二次電池の低温抵抗の上昇率を意味する。
本開示におけるリチウム二次電池の高温保存時の低温抵抗上昇率は、高温保存前のリチウム二次電池の低温抵抗に対する高温保存後のリチウム二次電池の低温抵抗の比率(即ち、比率〔高温保存後のリチウム二次電池の低温抵抗/高温保存前のリチウム二次電池の低温抵抗〕)として求められる。
【0026】
本開示の非水電解液による上記効果は、非水電解液に含有される上記化合物(I)における、アリール基又はベンジル基と、スルホニル基と、環状ウレア構造と、の組み合わせによってもたらされる効果であると考えられる。
上記効果が奏される理由は、化合物(I)における、アリール基又はベンジル基と、スルホニル基と、環状ウレア構造と、の組み合わせにより、リチウム二次電池における電極(即ち、正極及び/又は負極)上の被膜が効率良く形成され、この被膜により、充放電時において、非水電解液における電解質又は非水溶媒の分解といった副反応が抑制されるためと考えられる。
【0027】
<化合物(I)>
本開示の非水電解液は、下記式(I)で表される化合物(I)を含有する。
本開示の非水電解液は、化合物(I)を1種のみ含有していてもよいし、2種以上含有していてもよい。
【0028】
【化7】
【0029】
式(I)中、
11は、水素原子又は-SO基であり、
12は、アルキレン基、フッ化アルキレン基、アルケニレン基、フッ化アルケニレン基、及びカルボニル基からなる群Aから選択される1種である炭素数1~10の2価の基であるか、又は、上記群Aから選択される2種以上が連結してなる炭素数1~10の2価の基であり、
及びRは、それぞれ独立に、置換されていてもよいアリール基又は置換されていてもよいベンジル基である。
【0030】
式(I)中、R12における、アルキレン基、フッ化アルキレン基、アルケニレン基、及びフッ化アルケニレン基は、それぞれ、直鎖構造の基であってもよいし、分岐構造を含む基であってもよい。
【0031】
式(I)中、R12は、
好ましくは、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数1~10のフッ化アルキレン基、炭素数2~10のアルケニレン基、又は炭素数2~10のフッ化アルケニレン基であり、
より好ましくは、炭素数1~10のアルキレン基又は炭素数2~10のアルケニレン基であり、
更に好ましくは、炭素数1~4のアルキレン基又は炭素数2~4のアルケニレン基であり、
更に好ましくは、炭素数2のアルキレン基又は炭素数2のアルケニレン基である。
【0032】
式(I)中、R又はRで表される置換されていてもよいアリール基におけるアリール基として、好ましくは、フェニル基、ナフチル基、又はビフェニル基であり、より好ましくはフェニル基である。
【0033】
式(I)中、R又はRで表される、置換されていてもよいアリール基に含まれ得る置換基としては特に限定はない。
置換されていてもよいアリール基に含まれ得る置換基として、例えば、
フッ素原子、
炭素数が1~10の直鎖あるいは分岐状のアルキル基、
炭素数が1~10の直鎖あるいは分岐状のアルコキシ基、
炭素数が2~10のアルケニル基、
炭素数が2~10のアルケニルオキシ基、
炭素数が2~10のアルキニル基、
炭素数が2~10のアルキニルオキシ基、
炭素数が3~10のシクロアルキル基、
炭素数が3~10のシクロアルコキシ基、
炭素数が3~10のシクロアルケニル基、
炭素数が3~10のシクロアルケニルオキシ基、
炭素数が6~10のアリール基、及び、
炭素数が6~10のアリールオキシ基、
等が挙げられる。
上記置換基として、好ましくは、フッ素原子又は炭素数1~4の直鎖あるいは分岐状のアルキル基であり、より好ましくは、フッ素原子、メチル基、又はエチル基であり、更に好ましくは、フッ素原子又はメチル基である。
【0034】
式(I)中、R又はRで表される、置換されていてもよいベンジル基に含まれ得る置換基としては特に限定はない。
置換されていてもよいベンジル基に含まれ得る置換基としては、上述の、置換されていてもよいアリール基に含まれ得る置換基と同様のものが挙げられる。
【0035】
式(I)中、R又はRとしては、
置換されていてもよいアリール基が好ましく、
置換されていてもよいフェニル基がより好ましく、
フェニル基又は炭素数7~11のアルキルフェニル基が更に好ましく、
フェニル基又はメチルフェニル基が更に好ましく、
フェニル基又は4-メチルフェニル基が更に好ましい。
【0036】
化合物(I)の好ましい態様の一例として、R12が、炭素数2のアルキレン基又は炭素数2のアルケニレン基であり、R及びRが、それぞれ独立に、置換されていてもよいアリール基である態様が挙げられる。
但し、化合物(I)は、この好ましい態様には限定されない。
【0037】
以下、化合物(I)の例示化合物(化合物(I-1)~化合物(I-36))を示すが、化合物(I)は、以下の例示化合物には限定されない。
【0038】
【化8】

【0039】
【化9】

【0040】
【化10】
【0041】
上記例示化合物のうち、化合物(I-1)~化合物(I-6)からなる群から選択される少なくとも1種が好ましい。
【0042】
本開示の非水電解液の全量に対する化合物(I)の含有量は、0.01質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以上3.0質量%以下がより好ましく、0.2質量%以上2.0質量%以下が更に好ましい。
【0043】
なお、実際にリチウム二次電池を解体して採取した非水電解液を分析した際、化合物(I)の量が、非水電解液への添加量と比較して減少している場合がある。この場合であっても、電池から採取された非水電解液中に少量でも化合物(I)が検出されれば、その電池の非水電解液は、本開示の非水電解液の範囲に含まれる。
以下で説明する他の化合物(添加剤Xほか)についても同様である。
【0044】
<添加剤X>
本開示の非水電解液は、更に、モノフルオロリン酸リチウム及びジフルオロリン酸リチウムの少なくとも一方である化合物(II)、下記式(III)で表される化合物(III)、下記式(IV)で表される化合物(IV)、並びに、下記式(V)で表される化合物(V)からなる群より選択される少なくとも1種である添加剤Xを含有してもよい。
【0045】
本開示の非水電解液が添加剤Xを含有する場合、本開示の非水電解液の全量に対する添加剤Xの含有量は、本開示の非水電解液による効果がより効果的に奏される観点から、0.01質量%以上5.0質量%以下が好ましく、0.1質量%以上3.0質量%以下がより好ましく、0.2質量%以上2.0質量%以下が更に好ましい。
【0046】
本開示の非水電解液による効果がより効果的に奏される観点から、本開示の非水電解液において、化合物(I)の含有量に対する添加剤Xの含有量の質量比(以下、「含有質量比〔添加剤X/化合物(I)〕」ともいう)は、0.1~10が好ましく、0.2~5.0がより好ましい。
【0047】
(化合物(II))
化合物(II)は、モノフルオロリン酸リチウム及びジフルオロリン酸リチウムの少なくとも一方である。
ここで、ジフルオロリン酸リチウムは、下記化合物(II-1)であり、モノフルオロリン酸リチウムは、下記化合物(II-2)である。
【0048】
【化11】
【0049】
化合物(II)は、モノフルオロリン酸リチウム及びジフルオロリン酸リチウムの一方のみであってもよいし、モノフルオロリン酸リチウム及びジフルオロリン酸リチウムの両方であってもよい。
【0050】
本開示の非水電解液が化合物(II)を含有する場合、化合物(II)の含有量は、非水電解液の全量に対し、0.001質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましい。
上記化合物(II)の含有量の上限は、更に好ましくは3.0質量%、更に好ましくは2.0質量%である。
上記化合物(II)の含有量の下限は、更に好ましくは0.05質量%、更に好ましくは0.1質量%である。
【0051】
(化合物(III))
化合物(III)は、下記式(III)で表される化合物である。
【0052】
【化12】
【0053】
式(III)中、
Mは、アルカリ金属であり、
Yは、遷移元素、周期律表の13族元素、14族元素、又は15族元素であり、
bは、1~3の整数であり、
mは、1~4の整数であり、
nは、0~8の整数であり、
qは、0又は1であり、
31は、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数1~10のハロゲン化アルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基、又は炭素数6~20のハロゲン化アリーレン基(これらの基は、構造中に置換基、又はヘテロ原子を含んでいてもよく、qが1でmが2~4の場合にはm個のR31はそれぞれが結合していてもよい。)であり、
32は、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、炭素数6~20のアリール基、又は炭素数6~20のハロゲン化アリール基(これらの基は、構造中に置換基、又はヘテロ原子を含んでいてもよく、nが2~8の場合はn個のR32はそれぞれが結合して環を形成していてもよい。)であり、
、及びQは、それぞれ独立に、酸素原子、又は炭素原子である。
【0054】
Mは、アルカリ金属である。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム等が挙げられる。中でも、Mは、リチウムであることが好ましい。
Yは、遷移元素、周期律表の13族元素、14族元素、又は15族元素である。Yとしては、Al、B、V、Ti、Si、Zr、Ge、Sn、Cu、Y、Zn、Ga、Nb、Ta、Bi、P、As、Sc、Hf又はSbであることが好ましく、Al、B又はPであることがより好ましい。YがAl、B又はPの場合、アニオン化合物の合成が比較的容易になり、製造コストを抑えることができる。
bは、アニオンの価数及びカチオンの個数を表す。bは、1~3の整数であり、1であることが好ましい。bが3以下であれば、アニオン化合物の塩が混合有機溶媒に溶解しやすい。
m及びnの各々は、配位子の数に関係する値である。m及びnの各々は、Mの種類によって決まる。mは、1~4の整数である。nは、0~8の整数である。
qは、0又は1である。qが0の場合、キレートリングが五員環となり、qが1の場合、キレートリングが六員環となる。
31は、炭素数1~10のアルキレン基、炭素数1~10のハロゲン化アルキレン基、炭素数6~20のアリーレン基、又は炭素数6~20のハロゲン化アリーレン基を表す。これらのアルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アリーレン基又はハロゲン化アリーレン基は、その構造中に置換基、ヘテロ原子を含んでいてもよい。具体的には、R31は、これらの基の水素原子の代わりに、置換基を含んでもよい。置換基としては、ハロゲン原子、鎖状又は環状のアルキル基、アリール基、アルケニル基、アルコキシ基、アリーロキシ基、スルホニル基、アミノ基、シアノ基、カルボニル基、アシル基、アミド基、又は水酸基が挙げられる。これらの基の炭素元素の代わりに、窒素原子、硫黄原子、又は酸素原子が導入された構造であってもよい。qが1でmが2~4である場合、m個のR31はそれぞれが結合していてもよい。そのような例としては、エチレンジアミン四酢酸のような配位子を挙げることができる。
32は、ハロゲン原子、炭素数1~10のアルキル基、炭素数1~10のハロゲン化アルキル基、炭素数6~20のアリール基、炭素数6~20のハロゲン化アリール基を表す。これらのアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基又はハロゲン化アリール基は、R31と同様に、その構造中に置換基、ヘテロ原子を含んでいてもよく、nが2~8のときにはn個のR32は、それぞれ結合して環を形成してもよい。R32としては、電子吸引性の基が好ましく、特にフッ素原子が好ましい。
及びQは、それぞれ独立に、O又はCを表す。つまり、配位子はこれらヘテロ原子を介してYに結合することになる。
【0055】
化合物(III)の具体例としては、下記化合物(III-1)及び下記化合物(III-2)が挙げられる。
【0056】
【化13】
【0057】
本開示の非水電解液が化合物(III)を含有する場合、化合物(III)の含有量は、非水電解液の全量に対し、0.001質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましい。
上記化合物(II)の含有量の上限は、更に好ましくは3.0質量%、更に好ましくは2.0質量%である。
上記化合物(II)の含有量の下限は、更に好ましくは0.05質量%、更に好ましくは0.1質量%である。
【0058】
(化合物(IV))
化合物(IV)は、下記式(IV)で表される化合物である。
【0059】
【化14】
【0060】
式(IV)中、
41は、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基、又は炭素数2~6のアルケニレン基であり、
42は、炭素数1~6のアルキレン基、炭素数2~6のアルケニレン基、式(iv-1)で表される基、又は式(iv-2)で表される基であり、
*は、結合位置であり、
式(iv-1)中、R43は、酸素原子、炭素数1~6のアルキレン基、炭素数2~6のアルケニレン基、又はオキシメチレン基であり、
式(iv-2)中、R44は、炭素数1~6のアルキル基、又は炭素数2~6のアルケニル基である。
【0061】
式(IV)中、R42は、式(iv-1)で表される基又は式(iv-2)で表される基であることが好ましい。
式(iv-1)中、R43は、炭素数1~3のアルキレン基、炭素数1~3のアルケニレン基、又はオキシメチレン基であることが好ましく、オキシメチレン基であることがより好ましい。
式(iv-2)中、R44は、炭素数1~3のアルキル基、又は炭素数2~3のアルケニル基であることが好ましく、プロピル基であることがより好ましい。
【0062】
化合物(IV)の具体例としては、下記化合物(IV-1)~下記化合物(IV-8)が挙げられる。
【0063】
【化15】
【0064】
本開示の非水電解液が化合物(IV)を含有する場合、化合物(IV)の含有量は、非水電解液の全量に対し、0.001質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましい。
上記化合物(IV)の含有量の上限は、更に好ましくは3.0質量%、更に好ましくは2.0質量%である。
上記化合物(IV)の含有量の下限は、更に好ましくは0.05質量%、更に好ましくは0.1質量%である。
【0065】
(化合物(V))
化合物(V)は、下記式(V)で表される化合物である。
【0066】
【化16】
【0067】
式(V)中、R51及びR52は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、エチル基、又はプロピル基を表す。
【0068】
式(V)中、R51及びR52は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基であることが好ましく、水素原子又はメチル基であることがより好ましく、水素原子であることが更に好ましい。
式(V)で表される化合物(V)としては、例えば、ビニレンカーボネート(以下、「VC」ともいう)、メチルビニレンカーボネート、ジメチルビニレンカーボネートなどが挙げられ、特に好ましくはビニレンカーボネートである。
【0069】
本開示の非水電解液が化合物(V)を含有する場合、化合物(V)の含有量は、非水電解液の全量に対し、0.001質量%以上5.0質量%以下であることが好ましく、0.01質量%以上5.0質量%以下であることがより好ましい。
上記化合物(V)の含有量の上限は、更に好ましくは3.0質量%、更に好ましくは2.0質量%である。
上記化合物(V)の含有量の下限は、更に好ましくは0.05質量%、更に好ましくは0.1質量%である。
【0070】
<その他の添加剤>
本開示の非水電解液は、その他の添加剤を含んでもよい。
その他の添加剤としては、特に制限はなく、公知のものを任意に用いることができる。
その他の添加剤としては、例えば、特開2019-153443号公報の段落0042~0055に記載の添加剤を用いることができる。
【0071】
<非水溶媒>
非水電解液は、一般的に、非水溶媒を含有する。非水溶媒としては種々公知のものを適宜選択することができる。非水溶媒は1種のみであってもよく、2種以上であってもよい。
【0072】
非水溶媒としては、例えば、環状カーボネート類、含フッ素環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、含フッ素鎖状カーボネート類、脂肪族カルボン酸エステル類、含フッ素脂肪族カルボン酸エステル類、γ-ラクトン類、含フッ素γ-ラクトン類、環状エーテル類、含フッ素環状エーテル類、鎖状エーテル類、含フッ素鎖状エーテル類、ニトリル類、アミド類、ラクタム類、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、燐酸トリメチル、ジメチルスルホキシド、ジメチルスルホキシド燐酸、などが挙げられる。
環状カーボネート類としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート(PC)、ブチレンカーボネート(BC)、などが挙げられる。
含フッ素環状カーボネート類としては、例えば、フルオロエチレンカーボネート(FEC)、などが挙げられる。
鎖状カーボネート類としては、例えば、ジメチルカーボネート(DMC)、ジエチルカーボネート(DEC)、エチルメチルカーボネート(EMC)、メチルプロピルカーボネート(MPC)、エチルプロピルカーボネート(EPC)、ジプロピルカーボネート(DPC)、などが挙げられる。
脂肪族カルボン酸エステル類としては、例えば、ギ酸メチル、酢酸メチル、プロピオン酸メチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酪酸メチル、ギ酸エチル、酢酸エチル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、イソ酪酸エチル、トリメチル酪酸エチル、などが挙げられる。
γ-ラクトン類としては、例えば、γ-ブチロラクトン、γ-バレロラクトン、などが挙げられる。
環状エーテル類としては、例えば、テトラヒドロフラン、2-メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3-ジオキソラン、4-メチル-1,3-ジオキソラン、1,3-ジオキサン、1,4-ジオキサン、などが挙げられる。
鎖状エーテル類としては、例えば、1,2-エトキシエタン(DEE)、エトキシメトキシエタン(EME)、ジエチルエーテル、1,2-ジメトキシエタン、1,2-ジブトキシエタン、などが挙げられる。
ニトリル類としては、例えば、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリル、3-メトキシプロピオニトリル、などが挙げられる。
アミド類としては、例えば、N,N-ジメチルホルムアミド、などが挙げられる。
ラクタム類としては、例えば、N-メチルピロリジノン、N-メチルオキサゾリジノン、N,N'-ジメチルイミダゾリジノン、などが挙げられる。
【0073】
非水溶媒は、環状カーボネート類、含フッ素環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、及び含フッ素鎖状カーボネート類からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
この場合、環状カーボネート類、含フッ素環状カーボネート類、鎖状カーボネート類、及び含フッ素鎖状カーボネート類の合計の割合は、非水溶媒の全量に対して、好ましくは50質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは60質量%以上100質量%以下であり、更に好ましくは80質量%以上100質量%以下である。
【0074】
非水溶媒は、環状カーボネート類及び鎖状カーボネート類からなる群から選択される少なくとも1種を含むことが好ましい。
この場合、非水溶媒中に占める、環状カーボネート類及び鎖状カーボネート類の合計の割合は、非水溶媒の全量に対して、好ましくは50質量%以上100質量%以下であり、より好ましくは60質量%以上100質量%以下であり、更に好ましくは80質量%以上100質量%以下である。
【0075】
非水溶媒の含有量の下限は、非水電解液の総量に対して、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70質量%以上である。
非水溶媒の含有量の上限は、非水電解液の総量に対して、好ましくは99質量%であり、好ましくは97質量%であり、更に好ましくは90質量%である。
非水溶媒の含有量の範囲の一例として、60質量%以上99質量%以下が挙げられる。
【0076】
非水溶媒の固有粘度は、電解質の解離性及びイオンの移動度をより向上させる観点から、25℃において10.0mPa・s以下であることが好ましい。
【0077】
<電解質>
非水電解液は、一般的に、電解質を含有する。
【0078】
電解質は、フッ素を含むリチウム塩(以下、「含フッ素リチウム塩」という場合がある。)、及びフッ素を含まないリチウム塩の少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0079】
含フッ素リチウム塩としては、例えば、無機酸陰イオン塩、有機酸陰イオン塩などが挙げられる。
無機酸陰イオン塩としては、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF)、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF)、六フッ化タンタル酸リチウム(LiTaF)、などが挙げられる。
有機酸陰イオン塩としては、例えば、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCFSO)、リチウムビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミド(Li(CFSON)、リチウムビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミド(Li(CSON)などが挙げられる。
中でも、含フッ素リチウム塩としては、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)が更に好ましい。
【0080】
フッ素を含まないリチウム塩としては、過塩素酸リチウム(LiClO)、四塩化アルミニウム酸リチウム(LiAlCl)、リチウムデカクロロデカホウ素酸(Li10Cl10)などが挙げられる。
【0081】
電解質が含フッ素リチウム塩を含む場合、含フッ素リチウム塩の含有割合は、電解質の全量に対して、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは60質量%以上100質量%以下、更に好ましくは80質量%以上100質量%以下である。
含フッ素リチウム塩が六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を含む場合、六フッ化リン酸リチウム(LiPF)の含有割合は、電解質の全量に対して、好ましくは50質量%以上100質量%以下、より好ましくは60質量%以上100質量%以下、更に好ましくは80質量%以上100質量%以下である。
【0082】
非水電解液が電解質を含む場合、非水電解液における電解質の濃度は、好ましくは0.1mol/L以上3mol/L以下、より好ましくは0.5mol/L以上2mol/L以下である。
【0083】
非水電解液が六フッ化リン酸リチウム(LiPF)を含む場合、非水電解液における六フッ化リン酸リチウム(LiPF)の濃度は、好ましくは0.1mol/L以上3mol/L以下、より好ましくは0.5mol/L以上2mol/L以下である。
【0084】
<その他の成分>
非水電解液は、必要に応じて、その他の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、酸無水物などが挙げられる。
【0085】
〔リチウム二次電池前駆体〕
本開示のリチウム二次電池前駆体は、
ケースと、
ケースに収容された、正極、負極、セパレータ、及び電解液と、
を備える。
ここで、
正極は、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な正極であり、
負極は、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極であり、
電解液は、本開示の非水電解液である。
【0086】
本開示において、リチウム二次電池前駆体は、充電及び放電が施される前のリチウム二次電池を示す。
【0087】
本開示のリチウム二次電池前駆体によれば、このリチウム二次電池前駆体に充電及び放電を施して得られたリチウム二次電池において、高温保存時の低温抵抗上昇率を低減させることができる。
【0088】
<ケース>
ケースの形状などは、特に限定はなく、本開示のリチウム二次電池前駆体の用途などに応じて、適宜選択される。
ケースとしては、ラミネートフィルムを含むケース、電池缶と電池缶蓋とからなるケース、などが挙げられる。
【0089】
<正極>
正極は、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な正極である。
正極は、好ましくは、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な正極活物質を少なくとも1種含む。
【0090】
正極は、好ましくは、正極集電体と、正極集電体の表面の少なくとも一部に設けられた正極合材層と、を備える。
【0091】
正極集電体の材質としては、例えば、金属又は合金が挙げられる。
詳しくは、正極集電体の材質として、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼材(SUS)、銅などが挙げられる。中でも、導電性の高さとコストとのバランスの観点から、アルミニウムが好ましい。ここで、「アルミニウム」は、純アルミニウム又はアルミニウム合金を意味する。正極集電体として、アルミニウム箔が好ましい。アルミニウム箔の材質は、特に限定されず、A1085材、A3003材、などが挙げられる。
【0092】
正極合材層は、正極活物質及びバインダーを含有する。
【0093】
正極活物質としては、リチウムイオンの吸蔵及び放出が可能な物質であれば特に限定されず、リチウム二次電池前駆体の用途などに応じて、適宜調整され得る。
【0094】
正極活物質としては、例えば、第1酸化物、第2酸化物などが挙げられる。第1酸化物は、リチウム(Li)とニッケル(Ni)とを構成金属元素とする。第2酸化物は、Liと、Niと、Li及びNi以外の金属元素の少なくとも1種と、を構成金属元素として含む。Li及びNi以外の金属元素としては、例えば、遷移金属元素、典型金属元素などが挙げられる。第2酸化物は、Li及びNi以外の金属元素として、好ましくは、原子数換算で、Niと同程度、又は、Niよりも少ない割合で含むことが好ましい。Li及びNi以外の金属元素は、例えば、Co、Mn、Al、Cr、Fe、V、Mg、Ca、Na、Ti、Zr、Nb、Mo、W、Cu、Zn、Ga、In、Sn、La及びCeからなる群からなる群から選択される少なくとも1種であり得る。これらの正極活物質は、単独で用いても複数を混合して用いてもよい。
【0095】
正極活物質は、下記式(P1)で表されるリチウム含有複合酸化物(以下、「NCM」という場合がある。)を含むことが好ましい。リチウム含有複合酸化物(P1)は、単位体積当たりのエネルギー密度が高く、熱安定性にも優れるという利点を有する。
LiNiCoMn … 式(P1)
式(P1)中、a、b及びcは、それぞれ独立に、0超1未満であり、a、b及びcの合計は、0.99以上1.00以下である。
NCMの具体例としては、LiNi0.33Co0.33Mn0.33、LiNi0.5Co0.3Mn0.2、LiNi0.5Co0.2Mn0.3、LiNi0.6Co0.2Mn0.2、LiNi0.8Co0.1Mn0.1などが挙げられる。
【0096】
正極活物質は、下記式(P2)で表されるリチウム含有複合酸化物(以下、「NCA」という場合がある。)を含んでもよい。
LiNi1-x-yCoAl … 式(P2)
式(P2)中、tは、0.95以上1.15以下であり、xは、0以上0.3以下であり、yは、0.1以上0.2以下であり、x及びyの合計は、0.5未満である。)
NCAの具体例としては、LiNi0.8Co0.15Al0.05などが挙げられる。
【0097】
本開示のリチウム二次電池前駆体における正極が、正極集電体と、正極活物質及びバインダーを含む正極合材層と、を備える場合、正極合材層中の正極活物質の含有量は、正極合材層の全量に対し、好ましくは10質量%以上99.9質量%以下、より好ましくは30質量%以上99.9質量%以下、更に好ましくは50質量%以上99質量%以下、特に好ましくは70質量%以上99質量%以下である。
【0098】
バインダーとしては、例えば、ポリ酢酸ビニル、ポリメチルメタクリレート、ニトロセルロース、フッ素樹脂、ゴム粒子などが挙げられる。フッ素樹脂としては、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、テトラフルオロエチレン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン共重合体などが挙げられる。ゴム粒子としては、スチレン-ブタジエンゴム粒子、アクリロニトリルゴム粒子などが挙げられる。これらの中でも、正極合材層の耐酸化性を向上させる観点から、フッ素樹脂が好ましい。バインダーは1種を単独で使用でき、必要に応じて2種以上を組み合わせて使用できる。
正極合材層中におけるバインダーの含有量は、正極合材層の物性(例えば、電解液浸透性、剥離強度、など)と電池性能との両立の観点から、正極合材層の全量に対し、好ましくは0.1質量%以上4質量%以下である。バインダーの含有量が0.1質量%以上であると、正極集電体に対する正極合材層の接着性、及び、正極活物質同士の結着性がより向上する。バインダーの含有量が4質量%以下であると、正極合材層中における正極活物質の量をより多くすることができるので、放電容量がより向上する。
【0099】
正極合材層は、導電助剤を含むことが好ましい。
導電助剤の材質としては、公知の導電助剤を用いることができる。公知の導電助剤としては、導電性を有する炭素材料が好ましい。導電性を有する炭素材料としては、グラファイト、カーボンブラック、導電性炭素繊維、フラーレンなどが挙げられる。これらは、単独で、もしくは2種類以上を併せて使用することができる。導電性炭素繊維としては、カーボンナノチューブ、カーボンナノファイバー、カーボンファイバーなどが挙げられる。グラファイトとしては、例えば、人造黒鉛、天然黒鉛などが挙げられる。天然黒鉛としては、例えば、燐片状黒鉛、塊状黒鉛、土状黒鉛などが挙げられる。
導電助剤の材質は、市販品であってもよい。カーボンブラックの市販品としては、例えば、トーカブラック#4300、#4400、#4500、#5500など(東海カーボン社製、ファーネスブラック)、プリンテックスLなど(デグサ社製、ファーネスブラック)、Raven7000、5750、5250、5000ULTRAIII、5000ULTRAなど、Conductex SC ULTRA、Conductex 975ULTRAなど、PUER BLACK100、115、205など(コロンビヤン社製、ファーネスブラック)、#2350、#2400B、#2600B、#30050B、#3030B、#3230B、#3350B、#3400B、#5400Bなど(三菱ケミカル社製、ファーネスブラック)、MONARCH1400、1300、900、VulcanXC-72R、BlackPearls2000、LITX-50、LITX-200など(キャボット社製、ファーネスブラック)、Ensaco250G、Ensaco260G、Ensaco350G、Super-P(TIMCAL社製)、ケッチェンブラックEC-300J、EC-600JD(アクゾ社製)、デンカブラック、デンカブラックHS-100、FX-35(デンカ社製、アセチレンブラック)などが挙げられる。
【0100】
正極合材層は、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、増粘剤、界面活性剤、分散剤、濡れ剤、消泡剤などが挙げられる。
【0101】
<負極>
負極は、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極である。
負極は、好ましくは、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な負極活物質を少なくとも1種含む。
【0102】
負極は、好ましくは、負極集電体と、負極集電体の表面の少なくとも一部に設けられた負極合材層と、を備える。
【0103】
負極集電体の材質としては、特に制限はなく公知の物を任意に用いることができ、例えば、金属又は合金が挙げられる。詳しくは、負極集電体の材質として、アルミニウム、ニッケル、ステンレス鋼材(SUS)、ニッケルメッキ鋼材、銅などが挙げられる。中でも、負極集電体の材質として、加工性の観点から、銅が好ましい。負極集電体として、銅箔が好ましい。
【0104】
負極合材層は、負極活物質及びバインダーを含む。
【0105】
負極活物質は、リチウムイオンを吸蔵及び放出可能な物質であれば特に制限はない。負極活物質は、例えば、金属リチウム、リチウム含有合金、リチウムとの合金化が可能な金属もしくは合金、リチウムイオンのドープ及び脱ドープが可能な酸化物、リチウムイオンのドープ及び脱ドープが可能な遷移金属窒素化物、及び、リチウムイオンのドープ及び脱ドープが可能な炭素材料からなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、負極活物質は、リチウムイオンをドープ及び脱ドープすることが可能な炭素材料(以下、単に「炭素材料」ともいう。)が好ましい。
【0106】
炭素材料としては、カーボンブラック、活性炭、黒鉛材料、非晶質炭素材料、などが挙げられる。これらの炭素材料は、1種類で使用してもよく、2種類以上混合して使用してもよい。炭素材料の形態は、特に限定されず、例えば、繊維状、球状、ポテト状、フレーク状などが挙げられる。炭素材料の粒径は、特に限定されず、好ましくは5μm以上50μm以下、より好ましくは20μm以上30μm以下である。
非晶質炭素材料として、例えば、ハードカーボン、コークス、1500℃以下に焼成したメソカーボンマイクロビーズ(MCMB)、メソフェーズピッチカーボンファイバー(MCF)などが挙げられる。
黒鉛材料としては、天然黒鉛、人造黒鉛が挙げられる。人造黒鉛としては、黒鉛化MCMB、黒鉛化MCFなどが挙げられる。黒鉛材料は、ホウ素を含んでもよい。黒鉛材料は、金属又は非晶質炭素で被覆されていてもよい。黒鉛材料を被覆する金属の材質としては、金、白金、銀、銅、スズなどが挙げられる。黒鉛材料は、非晶質炭素と黒鉛との混合物であってもよい。
【0107】
負極合材層は、導電助剤を含むことが好ましい。導電助剤としては、正極合材層に含まれ得る導電助剤として例示した導電助剤と同様の導電助剤が挙げられる。
【0108】
負極合材層は、上記各成分に加えて、その他の成分を含んでいてもよい。その他の成分としては、増粘剤、界面活性剤、分散剤、濡れ剤、消泡剤などが挙げられる。
【0109】
<セパレータ>
セパレータとしては、例えば、多孔質の樹脂平板が挙げられる。多孔質の樹脂平板の材質としては、樹脂、この樹脂を含む不織布などが挙げられる。樹脂としては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリエステル、セルロース、ポリアミドなどが挙げられる。
なかでも、セパレータは、単層又は多層構造の多孔性樹脂シートであることが好ましい。多孔性樹脂シートの材質は、一種又は二種以上のポリオレフィン樹脂を主体とする。セパレータの厚みは、好ましくは5μm以上30μm以下である。セパレータは、好ましくは、正極と負極との間に配置される。
【0110】
<リチウム二次電池前駆体の具体例>
図1は、本開示のリチウム二次電池前駆体の一例である積層型のリチウム二次電池前駆体を示す概略断面図である。
【0111】
図1に示すように、リチウム二次電池前駆体1は、積層型の電池前駆体である。
詳細には、リチウム二次電池前駆体1では、電池素子10は、外装体30の内部に封入されている。外装体30は、ラミネートフィルムで形成されている。電池素子10には、正極リード21及び負極リード22の各々が取り付けられている。正極リード21及び負極リード22の各々は、外装体30の内部から外部に向かって、反対方向に導出されている。
【0112】
電池素子10は、図1に示すように、正極11と、セパレータ13と、負極12と、が積層されてなる。正極11は、正極集電体11Aの両方の主面上に正極合材層11Bが形成されてなる。負極12は、負極集電体12Aの両方の主面上に負極合材層12Bが形成されてなる。正極11の正極集電体11Aの片方の主面上に形成された正極合材層11Bと、正極11に隣接する負極12の負極集電体12Aの片方の主面上に形成された負極合材層12Bとは、セパレータ13を介して向き合っている。
【0113】
リチウム二次電池前駆体1の外装体30の内部には、本開示の非水電解液が注入されている。本開示の非水電解液は、正極合材層11B、セパレータ13、及び負極合材層12Bに浸透している。リチウム二次電池前駆体1では、隣接する正極合材層11B、セパレータ13及び負極合材層12Bによって、1つの単電池層14が形成されている。なお、正極及び負極は、各集電体の片面上に各活物質層が形成されているものであってもよい。
【0114】
なお、リチウム二次電池前駆体1は、積層型のリチウム二次電池前駆体であるが、本開示のリチウム二次電池前駆体はこれに限定されず、例えば、捲回型のリチウム二次電池前駆体であってもよい。捲回型のリチウム二次電池前駆体は、正極、セパレータ、負極、及びセパレータをこの順の配置で重ねて層状に巻いてなる。捲回型のリチウム二次電池前駆体には、円筒型のリチウム二次電池前駆体及び角形リチウム二次電池前駆体が包含される。
【0115】
図1に示すように、リチウム二次電池前駆体1において、正極リード及び負極リードの各々が外装体30の内部から外部に向けて突出する方向は、外装体30に対して反対方向であるが、本開示はこれに限定されない。例えば、正極リード及び負極リードの各々が外装体30の内部から外部に向けて突出する方法は、外装体30に対して同一方向であってもよい。
【0116】
後述の本開示のリチウム二次電池の一例としては、リチウム二次電池前駆体1に対し、充電及び放電を施して得られたリチウム二次電池が挙げられる。
【0117】
図2は、本開示のリチウム二次電池前駆体の別の一例であるコイン型のリチウム二次電池前駆体を示す概略断面図である。
【0118】
図2に示すコイン型のリチウム二次電池前駆体では、円盤状負極42、非水電解液を注入したセパレータ45、円盤状正極41、必要に応じて、ステンレス、又はアルミニウムなどのスペーサー板47、48が、この順序に積層された状態で、正極缶43(以下、「電池缶」ともいう)と封口板44(以下、「電池缶蓋」ともいう)との間に収納される。正極缶43と封口板44とはガスケット46を介してかしめ密封する。
この一例では、セパレータ45に注入される非水電解液として、本開示の非水電解液を用いる。
【0119】
後述の本開示のリチウム二次電池の一例としては、図2に示すコイン型のリチウム二次電池前駆体に対し、充電及び放電を施して得られたリチウム二次電池も挙げられる。
【0120】
〔リチウム二次電池及びその製造方法〕
本開示のリチウム二次電池の製造方法は、
前述した本開示のリチウム二次電池前駆体を準備する工程(以下、「準備工程」ともいう)と、
上記リチウム二次電池前駆体に対して、充電及び放電を施す工程と、
を含む。
本開示のリチウム二次電池は、上述した本開示のリチウム二次電池前駆体に対し、充電及び放電を施して得られたリチウム二次電池である。
【0121】
本開示のリチウム二次電池及びその製造方法によれば、リチウム二次電池の高温保存時の低温抵抗上昇率を低減させることができる。
【0122】
準備工程は、予め製造された本開示のリチウム二次電池前駆体を充電及び放電を施す工程に供するために単に準備するだけの工程であってもよいし、本開示のリチウム二次電池前駆体を製造する工程であってもよい。
リチウム二次電池前駆体については前述のとおりである。
【0123】
充電及び放電を施す工程において、リチウム二次電池前駆体に対する充電及び放電は、公知の方法に従って行うことができる。
本工程では、リチウム二次電池前駆体に対し、充電及び放電のサイクルを、複数回繰り返してもよい。
前述のとおり、この充電及び放電により、リチウム二次電池前駆体における正極(特に正極活物質)及び/又は負極(特に負極活物質)の表面に、好ましくはSEI(Solid Electrolyte Interface)膜が形成される。
【0124】
充電及び放電を施す工程は、リチウム二次電池前駆体に対し、25℃~70℃の環境下で、充電及び放電の組み合わせを1回以上施すことが好ましい。
【0125】
〔リチウム二次電池の非水電解液用添加剤〕
本開示のリチウム二次電池の非水電解液用添加剤は、前述した化合物(I)を含む。
化合物(I)の好ましい態様は前述のとおりである。
本開示のリチウム二次電池の非水電解液用添加剤をリチウム二次電池用非水電解液に含有させることにより、前述した本開示の非水電解液による効果と同様の効果が奏される。
【実施例0126】
以下、本開示の実施例を示すが、本開示は以下の実施例には限定されない。
以下、「%」は、特に断りが無い限り「質量%」である。
【0127】
〔実施例1〕
<非水電解液の調製>
エチレンカーボネート(以下、「EC」)と、ジメチルカーボネート(以下、「DMC」)と、エチルメチルカーボネート(以下、「EMC」)とを、EC:DMC:EMC=30:35:35(体積比)で混合した。これにより、非水溶媒として混合溶媒を得た。
得られた混合溶媒に対し、電解質としてのLiPFを、最終的に得られる非水電解液中の濃度が1モル/リットルとなるように溶解させ、電解液(以下、「基本電解液」ともいう)を得た。
得られた基本電解液に対し、化合物(I)として化合物(I-1)を、最終的に得られる非水電解液の全量に対する含有量が表1に記載の含有量(質量%)となるように添加し、非水電解液を得た。
【0128】
<正極の作製>
正極活物質としてのLiNi0.5Co0.2Mn0.3(94質量%)、導電助剤としてのカーボンブラック(3質量%)、及び結着材としてのポリフッ化ビニリデン(PVdF)(3質量%)を混合した混合物を得た。得られた混合物を、N-メチルピロリドン溶媒中に分散させ、正極合材スラリーを得た。
正極集電体として厚さ20μmのアルミニウム箔を準備した。
得られた正極合材スラリーをアルミニウム箔上に塗布し、乾燥後、プレス機で圧延し、シート状の正極を得た。正極は、正極集電体と正極活物質層とからなる。
【0129】
<負極の作製>
負極活物質としてグラファイト(96質量%)、導電助剤としてカーボンブラック(1質量%)、増粘剤として純水中で分散したカルボキシメチルセルロースナトリウムを固形分で1質量%、及び結着材として純水中で分散したスチレン-ブタジエンゴム(SBR)を固形分で2質量%を混合し、負極合材スラリーを得た。
負極集電体として厚さ10μmの銅箔を準備した。
得られた負極合材スラリーを銅箔上に塗布し、乾燥後、プレス機で圧延し、シート状の負極を得た。負極は、負極集電体と負極活物質層とからなる。
【0130】
<セパレータの準備>
セパレータとして、多孔性ポリエチレンフィルムを準備した。
【0131】
<リチウム二次電池前駆体の作製>
負極を直径14mmで、正極を直径13mmで、セパレータを直径17mmで、それぞれ円盤状に打ち抜いた。これにより、コイン状の負極、コイン状の正極、及びコイン状のセパレータをそれぞれ得た。
得られたコイン状の負極、コイン状のセパレータ、及びコイン状の正極を、この順序でステンレス製の電池缶(サイズ:2032サイズ)内に積層した。次いで、この電池缶内に非水電解液28μLを注入し、セパレータと正極と負極とを非水電解液に含漬させた。
次に、正極上にアルミニウム製の板(厚さ1.2mm、直径16mm)及びバネを乗せ、ポリプロピレン製のガスケットを介して、電池缶蓋をかしめることにより、電池を密封した。
以上により、図2で示す構成を有するコイン型のリチウム二次電池前駆体(即ち、充電及び放電が施される前のリチウム二次電池)を得た。リチウム二次電池前駆体のサイズは、直径20mm、高さ3.2mmであった。
【0132】
<リチウム二次電池の作製>
上記リチウム二次電池前駆体に対し、25℃~70℃の温度範囲下、1.5V~4.2Vの充電、5時間~50時間の保持、4.2Vまでの充電、及び2.5Vまでの放電をこの順に施し、リチウム二次電池を得た。
【0133】
<初期の低温抵抗の測定>
上記リチウム二次電池を、3.7Vで充電し、次いで恒温槽内で-10℃に冷却し、-10℃の温度環境にて、放電レート0.1C~0.6Cの各々におけるCC10s放電による各電圧低下量(=放電開始前の電圧-放電開始後10秒目の電圧)を測定した。ここで、CC10s放電とは、定電流(Constant Current)にて10秒間行う放電を意味する。得られた各電圧低下量と、各電流値(即ち、放電レート0.1C~0.6Cに相当する各電流値)と、に基づき、初期の低温抵抗としての直流抵抗[Ω]を求めた。
後述の比較例1についても同様にして、初期の低温抵抗としての直流抵抗[Ω]を求めた。
【0134】
<高温保存>
次に、初期の低温抵抗の測定後のリチウム二次電池を4.2Vまで充電し、充電したリチウム二次電池を、60℃の恒温槽内で14日間保存した(以下、「高温保存」とする)。
【0135】
<高温保存後の低温抵抗の測定>
高温保存後のリチウム二次電池を2.5Vまで放電し、次いで、初期の低温抵抗の測定と同様の方法により、高温保存後の低温抵抗の測定を行った。
後述の比較例1についても同様にして、高温保存後の低温抵抗としての直流抵抗[Ω]を求めた。
【0136】
<高温保存時の低温抵抗上昇率の算出>
下記式により、高温保存時の低温抵抗上昇率(%)を算出した。
高温保存時の低温抵抗上昇率(%)=(高温保存後の低温抵抗/初期の低温抵抗)×100
【0137】
後述の比較例1についても同様にして、高温保存時の低温抵抗上昇率(%)を算出した。
【0138】
比較例1の高温保存時の低温抵抗上昇率を100とした場合の、実施例1の高温保存時の低温抵抗上昇率(相対値)を求めた。
結果を表1に示す。
【0139】
表1中、各添加剤の含有量は、非水電解液の全量に対する含有量(質量%)を示し、「-」は、該当する成分を含有しないことを示す。
【0140】
〔実施例2~16〕
基本電解液に添加する添加剤の種類及び含有量を、表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
表1に示す添加剤(化合物(I-1)他)の構造は前述のとおりである。実施例3におけるVCは、ビニレンカーボネートを意味する。
【0141】
〔比較例1〕
基本電解液に化合物(I)を添加しなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行った。
結果を表1に示す。
【0142】
【表1】
【0143】
表1に示すように、添加剤として化合物(I)を含有する非水電解液を用いた実施例1~16のリチウム二次電池は、添加剤を含有しない基本電解液を用いた比較例1のリチウム二次電池と比較して、高温保存時の低温抵抗上昇率が低減されていた。
【符号の説明】
【0144】
1 リチウム二次電池前駆体
10 電池素子
11 正極
11A 正極集電体
11B 正極合材層
12 負極
12A 負極集電体
12B 負極合材層
13 セパレータ
14 単電池層
21 正極リード
22 負極リード
30 外装体
41 正極
42 負極
43 正極缶
44 封口板
45 セパレータ
46 ガスケット
47、48 スペーサー板
図1
図2