IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 北川工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-固定具 図1
  • 特開-固定具 図2
  • 特開-固定具 図3
  • 特開-固定具 図4
  • 特開-固定具 図5
  • 特開-固定具 図6
  • 特開-固定具 図7
  • 特開-固定具 図8
  • 特開-固定具 図9
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168037
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】固定具
(51)【国際特許分類】
   F16B 5/02 20060101AFI20231116BHJP
   H01R 13/6592 20110101ALI20231116BHJP
   H05K 9/00 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
F16B5/02 A
H01R13/6592
H05K9/00 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079653
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000242231
【氏名又は名称】北川工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】野村 真希
【テーマコード(参考)】
3J001
5E021
5E321
【Fターム(参考)】
3J001FA07
3J001GB01
3J001HA04
3J001JA10
5E021GB02
5E321AA32
5E321GG09
(57)【要約】
【課題】2つの対象物を固定する際に、2つの対象物の相対的な位置がずれることを抑制できる固定具を提供する。
【解決手段】第1対象物及び第2対象物それぞれに対して固定される金属製の固定具は、第1固定部と、第2固定部と、当接部と、を備える。当接部は、弾性変形可能に構成され、第1対象物と当接する。当接部は、第1固定部が第1対象物に対して固定される位置にあるときに、弾性変形した状態で第1対象物の第2面に接触し、弾性変形の反発力により、第1固定部が軸部材を中心に回転することを抑制可能に構成されている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1対象物及び第2対象物それぞれに対して固定される金属製の固定具であって、
前記第1対象物に対して固定される第1固定部と、
前記第2対象物に対して固定される第2固定部と、
弾性変形可能に構成され、前記第1対象物と当接する当接部と、
を備え、
前記第1対象物は、第1面と、前記第1面に対して角度を有する第2面と、を有し、
前記第1固定部は、貫通孔を有し、前記第1面に配置される軸部材が前記貫通孔に通された状態で前記第1対象物に対して固定され、
前記当接部は、前記第1固定部が前記第1対象物に対して固定される位置にあるときに、弾性変形した状態で前記第2面に接触し、前記弾性変形の反発力により、前記第1固定部が前記軸部材を中心に回転することを抑制可能に構成されている、固定具。
【請求項2】
請求項1に記載の固定具であって、
前記第1固定部が前記第1対象物に対して固定される位置にあるときに、
前記第2面は、前記第2固定部から間隔を空けて、前記第2固定部と対向する位置に配置されており、
前記当接部は、前記第2面と前記第2固定部との間に生じる間隙に位置し、
前記当接部は、前記第2固定部から前記第2面に向かう方向に、前記第2面に力を加える、固定具。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の固定具であって、
前記軸部材は、スタッドボルトであり、
前記軸部材は、前記第1対象物に形成された孔部に通され、2つのナットと螺合することにより前記第1対象物に取付可能であり、
前記第1固定部と前記第1面とが前記2つのナットの間に挟持されるように構成される、固定具。
【請求項4】
請求項1又は請求項2に記載の固定具であって、
前記第2対象物は、フェライトクランプである、固定具。
【請求項5】
請求項1又は請求項2に記載の固定具であって、
内部導体と、前記内部導体をシールドする外部導体と、を有するケーブルを保持可能な接続部を更に備え、
前記接続部は、前記外部導体と通電可能に構成されている、固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、フェライトを有するノイズ吸収具と、ノイズ吸収具をシャーシ等の対象物に固定する固定台とを備えるノイズ吸収装置が開示されている。ノイズ吸収装置は、固定台に設けられた1つのネジ挿通穴にネジが通されることによってシャーシ等に固定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10-256773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載のノイズ吸収装置では、1つのネジ挿通穴にネジが通される際、ネジの回転に伴って、固定台自体も回転してしまうという問題があった。これにより、ノイズ吸収装置が、対象物に対して所定の位置からずれて固定されてしまう可能性があった。
【0005】
本開示の一局面は、2つの対象物を固定する際に、2つの対象物の相対的な位置がずれることを抑制できる固定具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、第1対象物及び第2対象物それぞれに対して固定される金属製の固定具であって、第1固定部と、第2固定部と、当接部と、を備える。第1固定部は、第1対象物に対して固定される。第2固定部は、第2対象物に対して固定される。当接部は、弾性変形可能に構成され、第1対象物と当接する。第1対象物は、第1面と、第2面と、を有する。第2面は、第1面に対して角度を有する。第1固定部は、貫通孔を有し、第1面に配置される軸部材が貫通孔に通された状態で第1対象物に対して固定される。当接部は、第1固定部が第1対象物に対して固定される位置にあるときに、弾性変形した状態で第2面に接触し、弾性変形の反発力により、第1固定部が軸部材を中心に回転することを抑制可能に構成されている。このような構成によれば、弾性変形の反発力により、第1固定部が軸部材を中心に回転することを抑制できる。その結果、第1固定部を第1対象物に固定する際に、所望の位置から第1固定部がずれてしまうことを抑制できる。よって、第1対象物及び第2対象物を固定する際に、第1対象物及び第2対象物の相対的な位置がずれることを抑制できる。
【0007】
本開示の一態様では、第1固定部が第1対象物に対して固定される位置にあるときに、第2面は、第2固定部から間隔を空けて、第2固定部と対向する位置に配置されていてもよい。当接部は、第2面と第2固定部との間に生じる間隙に位置してもよい。また、当接部は、第2固定部から第2面に向かう方向に、第2面に力を加えてもよい。このような構成によれば、第2面と第2固定部とが近づくのを抑制することができる。よって、第2面が第2固定部の方へずれて固定されてしまうことを抑制できる。
【0008】
本開示の一態様では、軸部材は、スタッドボルトであってもよい。また、軸部材は、第1対象物に形成された孔部に通され、2つのナットと螺合することにより第1対象物に取付可能であってもよい。第1固定部と第1面とが2つのナットの間に挟持されるように構成されてもよい。このような構成によれば、スタッドボルトがナットと螺合する際に、弾性変形の反発力により、第1固定部がスタッドボルトを中心に回転することを抑制できる。その結果、第1固定部を第1対象物に固定する際に、所望の位置から第1固定部がずれてしまうことを抑制できる。
【0009】
本開示の一態様では、第2対象物は、フェライトクランプであってもよい。このような構成によれば、フェライトクランプと第1対象物との相対的な位置を固定することができる。よって、フェライトクランプに挿通されるケーブル等を任意の位置に固定することができる。
【0010】
本開示の一態様は、内部導体と、内部導体をシールドする外部導体と、を有するケーブルを保持可能な接続部を更に備えてもよい。接続部は、外部導体と通電可能に構成されていてもよい。このような構成によれば、外部導体と固定具とが電気的に接続される。固定具をグランド部材に接続していると、固定具を介してケーブルをグランドに接続することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】第1実施形態の固定具を第1対象物及び第2対象物に固定したときの斜視図である。
図2】第1実施形態の固定具を第1対象物及び第2対象物に固定したときの斜視図である。
図3】第1実施形態の固定具を第1対象物及び第2対象物に固定したときの左側面図である。
図4】第1実施形態の固定具の斜視図である。
図5】第1実施形態の固定具の斜視図である。
図6図6Aは第1実施形態の固定具の正面図であり、図6Bは第1実施形態の固定具の平面図であり、図6Cは第1実施形態の固定具の底面図であり、図6Dは第1実施形態の固定具の左側面図であり、図6Eは第1実施形態の固定具の右側面図であり、図6Fは第1実施形態の固定具の背面図である。
図7】第2実施形態の固定具を第1対象物及び第2対象物に固定したときの斜視図である。
図8】第2実施形態の固定具の斜視図である。
図9】変形例の固定具を第1対象物及び第2対象物に固定したときの左側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本開示の例示的な実施形態について図面を参照しながら説明する。
[1.第1実施形態]
[1-1.構成]
図1図3に示されるように、固定具1は、第1対象物2及び第2対象物3それぞれに対して固定される。第1対象物2は、一例として、車両のシャーシである。なお、図1図3では、第1対象物2の一部のみを図示している。第2対象物3は、一例として、フェライトクランプである。すなわち、固定具1は、シャーシに対してフェライトクランプを固定することができる。第1対象物2は、第1面21と、第1面21に対して角度を有する第2面22と、を有する。
【0013】
フェライトクランプは、複数に分割された磁性体コアを環状に保持するものである。フェライトクランプにより環状体となった磁性体コアにノイズ電流が流れているケーブル等が挿し通されることによって、ノイズ電流の伝播を抑えることができる。磁性体コアは、ケース4に覆われている。
【0014】
ケース4は、第1分割ケース41と、第2分割ケース42と、を有する。第1分割ケース41及び第2分割ケース42は、略八角形の中空状の角柱を、その軸方向に沿って均等に二等分したような形状に構成されている。第1分割ケース41及び第2分割ケース42の分割面には、開口43が形成されている。第1分割ケース41及び第2分割ケース42は、同一の形状である。ただし、理解を容易にする目的で、別符号をつけて説明する。
【0015】
第1分割ケース41及び第2分割ケース42は、着脱部44を備える。着脱部44は、第1分割ケース41に設けられた係合枠441と、第2分割ケース42に設けられた係合爪442と、を有する。なお、図示しないが、ケース4における、着脱部44が設けられた面と対向する面にも、同様に着脱部が設けられている。ケース4における、着脱部44が設けられた面と対向する面においては、第1分割ケース41に係合爪442が設けられ、第2分割ケース42に係合枠441が設けられている。
【0016】
係合枠441に係合爪442が差し込まれることにより、第1分割ケース41及び第2分割ケース42が結合される。本実施形態では、ケーブル5を囲んで、第1分割ケース41及び第2分割ケース42が結合される。
【0017】
第1分割ケース41は、第2分割ケース42と組み合わせたときに角柱の側面となる部分に、4つの貫通孔45を備える。4つの貫通孔45は、略長方形に構成されている。4つの貫通孔45には、後述する第1脚部123a~第4脚部123dが引っ掛けられる。
【0018】
図4図6に示す固定具1は、金属で構成されている。固定具1は、第1固定部11と、第2固定部12と、当接部13と、を備える。第1固定部11は、図1に示されるように固定具1を第1対象物2に組み付けたときに、第1面21の表面に沿って広がる。第2固定部12は、第1固定部11の広がる方向に対して直交する。ここで、第2固定部12が延び出す方向を上下方向とする。また、第1固定部11が突き出している方を前方とし、その反対側を後方とする。また、上下方向及び前後方向に直交する方向を左右方向とする。なお、これらの方向は説明の便宜上用いているに過ぎず、本開示の実施の態様について何ら限定するものではない。
【0019】
固定具1は、1枚の金属板から構成されている。固定具1は、第1折曲げ部14~第5折曲げ部18で折り曲げられた形状である。固定具1は、図6D及び図6Eに示されるように、側面視したときに全体として略T字状に構成されている。
【0020】
第1固定部11は、第1対象物2に対して固定される部分である。第1固定部11は、上側板部111と、下側板部112と、を備える。上側板部111及び下側板部112は、左右方向及び前後方向に広がる、略長方形の板状の部位である。上側板部111及び下側板部112は、上下に隙間なく重なっている。また上側板部111の前方の端部と下側板部112の前側の端部は、第3折曲げ部16を介して接続している。上側板部111及び下側板部112は、第3折曲げ部16を中心にして180度折れ曲がっている。第3折曲げ部16近傍は、左右方向を法線方向とする平面による断面が、略円形に構成されている。
【0021】
上側板部111の左右の両端部には、上方に立設する側壁113が設けられる。側壁113は、後述する第2折曲げ部15近傍から第3折曲げ部16近傍まで、前後方向に長さを有する。側壁113の上下方向の高さは、第3折曲げ部16近傍の上下方向の高さよりも若干低い。
【0022】
上側板部111には貫通孔114が設けられる。下側板部112にも貫通孔115が設けられる。貫通孔114,115は、上側板部111及び下側板部112を重ね合わせたときに同じ位置に配置されるように形成されている。
【0023】
第2固定部12は、第2対象物3に対して固定される部分である。第2固定部12は、上側壁部121と、下側壁部122と、を備える。
上側壁部121は、第2折曲げ部15から上方に立設する板状の部位である。第2折曲げ部15は、上側板部111と上側壁部121との稜線をなす部分である。上側板部111と上側壁部121は、第2折曲げ部15を中心に90度折れ曲がっている。上側壁部121の上方の端部には、第1脚部123aと、第2脚部123bと、が設けられている。第1脚部123a及び第2脚部123bは、左右方向に間隔を開けて形成されており、第1折曲げ部14を中心にして後方に180度折れ曲がっている。第1折曲げ部14近傍は、左右方向を法線方向とする平面による断面が、略U字状に構成されている。
【0024】
上側板部111と上側壁部121との接続箇所、すなわち第2折曲げ部15には、リブ124が設けられている。リブ124は突条であり、上側壁部121を後方からみたときに窪んだ形状に構成されている。
【0025】
下側壁部122は、第4折曲げ部17から下方に立設する板状の部位である。第4折曲げ部17は、下側板部112と下側壁部122との稜線をなす部分である。下側板部112と下側壁部122とは、第4折曲げ部17を中心に90度折れ曲がっている。下側壁部122の下方の端部には、第3脚部123cと、第4脚部123dと、が設けられている。第3脚部123c及び第4脚部123dは、第5折曲げ部18を中心にして後方に180度折れ曲がっている。第5折曲げ部18近傍は、左右方向を法線方向とする平面による断面が、略U字状に構成されている。
【0026】
当接部13は、弾性変形可能に構成されている。当接部13は、下側板部112の左右方向の両端部の一部を切り取り形成される。当接部13は、第4折曲げ部17を中心にして前方に180度折れ曲がっている。つまり、当接部13は、下側壁部122の左右方向の両端部から下方に延びている。第4折曲げ部17近傍は、左右方向を法線方向とする平面による断面が、略U字状に構成されている。当接部13は、直線部131と、傾斜部132と、を有する。
【0027】
直線部131は、第4折曲げ部17から下方に立設する長尺状の部位である。
傾斜部132は、直線部131の下方の端部から延出する板状の部位である。傾斜部132は、直線部131の下方の端部から先端に向かうにつれ、後方に向かい傾斜している。
【0028】
[1-2.固定具の組み付け]
[1-2-1.固定具の第2対象物への組み付け]
第1対象物2及び第2対象物3に固定具1を組み付ける手順を説明する。
【0029】
第1脚部123a及び第2脚部123bの先端と、第3脚部123c及び第4脚部123dの先端との間隔は、上下に配置される貫通孔45同士の間隔よりも狭い。そこでまず、第1脚部123a及び第2脚部123bを、第2対象物3の貫通孔45に引っ掛ける。
【0030】
続いて、上側板部111及び下側板部112が互いに離れる向きに力を加え、上側板部111及び下側板部112を開く。
続いて、その状態で、第3脚部123c及び第4脚部123dを第2対象物3の貫通孔45に引っ掛ける。上側板部111及び下側板部112が互いに離れる向きに力を加えることを止めると、上側板部111及び下側板部112は近接し、第1脚部123a及び第2脚部123bと、第3脚部123c及び第4脚部123dとも近接する。第2固定部12が第2対象物3に取り付けられた状態において、上側板部111及び下側板部112の間には、若干の隙間が生じている。よって、上側板部111及び下側板部112が近接する方向への弾性反力を有した状態であるため、第1脚部123a~第4脚部123dは貫通孔45の壁面に強く当接する。よって、固定具1が第2対象物3に対してずれることを抑制できる。
【0031】
[1-2-2.固定具の第1対象物への組み付け]
まず、固定具1の下側板部112と第1対象物2の第1面21とが接触するように、第1固定部11を第1対象物2の上に配置する。このとき、第1対象物2に形成された孔部23と、貫通孔114,115とが重なるように第1固定部11を第1対象物2の上に配置する。図3に示されるように、第1固定部11が第1対象物2に対して固定される位置にあるときに、第1対象物2の第2面22は、第2固定部12の下側壁部122から間隔を空けて、第2固定部12の下側壁部122と対向する位置に配置されている。
【0032】
続いて、ネジ6を貫通孔114,115及び孔部23に差し込み、右方向に回転させることによりネジ締めを行う。上側板部111に接触するまでネジ6を回転しながら差し込むことで、第1固定部11は、ネジ6の頭部61と第1対象物2とに挟み込まれる。
【0033】
以上により、固定具1が第1対象物2に固定される。しかし、当接部13は、第1対象物2の第2面22と第2固定部12の下側壁部122との間に生じる間隙に位置しており、当接部13が、弾性変形した状態で第1対象物2の第2面22に接触する。具体的には、当接部13は、第1対象物2の第2面22を前方に押すように弾性変形する。よって、当接部13は、第2固定部12の下側壁部122から第1対象物2の第2面22に向かう方向に、第2面22に力を加えることができる。このとき、ネジ6を右方向に回転させることにより、第1固定部11にも右方向に回転しようとする力が加えられると、2つの当接部13のうち、右方に設けられた当接部13の弾性反発力が強く生じ、一方、左方に設けられた当接部13の弾性反発力が弱くなる。その結果、左方向に第1固定部11を回転させようとする回転力が生じる。よって、第1固定部11がネジ6を中心に回転することが抑制される。
【0034】
[1-2.効果]
以上詳述した第1実施形態によれば、以下の効果が得られる。
(1a)当接部13は、第1固定部11が第1対象物2に対して固定される位置にあるときに、弾性変形した状態で第2面22に接触する。そのため、弾性変形の反発力により、第1固定部11がネジ6を中心に回転することを抑制できる。その結果、第1固定部11を第1対象物2に固定する際に、所望の位置から第1固定部11がずれてしまうことを抑制できる。
【0035】
(1b)第1固定部11が第1対象物2に対して固定される位置にあるときに、当接部13は、第2面22と第2固定部12との間に生じる間隙に位置している。また、当接部13は、第2固定部12から第2面22に向かう方向に、第2面22に力を加える構成である。このような構成によれば、第2面22と第2固定部12とが近づくことを抑制できる。よって、第2面22が第2固定部12の方へずれて固定されてしまうことを抑制できる。
【0036】
(1c)第1対象物2はシャーシであり、第2対象物3はフェライトクランプである。このような構成によれば、シャーシの任意の位置にフェライトクランプを固定することができる。よって、フェライトクランプに挿通されるケーブル5を任意の位置に固定することができる。
【0037】
(1d)固定具1は、1枚の金属板に対して折り曲げ等の加工を行うことにより形成されている。このような構成によれば、複数の部材を組み合わせて固定具1を構成する必要がなくなるので、各部材を接続するための部材や機構が必要なくなる。
【0038】
[2.第2実施形態]
第2実施形態は、基本的な構成は第1実施形態と同様であるため、相違点について以下に説明する。なお、第1実施形態と同じ符号は、同一の構成を示すものであって、先行する説明を参照する。
【0039】
[2-1.第1実施形態との相違点]
図7図8に示される第2実施形態では、固定具100が接続部170を備える点で第1実施形態と異なる。接続部170は、ケーブル5を保持可能であって、ケーブル5と電気的に接続し、通電可能に構成されている。接続部170は、第1板部171と、第2板部172と、取付部173と、を備える。
【0040】
第1板部171は、第2脚部123b近傍から上方に延びる長尺状の部位である。第1板部171は、一例として、カシメにより上側壁部121に固定される。具体的には、上側壁部121の後方から下穴を開け形成したフランジであるバーリング部174を、第1板部171に形成された孔部175に通した後、バーリング部174の上端を外側に開く。これにより、第1板部171が上側壁部121とバーリング部174の縁とに挟まれ固定される。また、第1板部171の両脇には、回り止め部176a,176bが設けられる。回り止め部176a,176bは、上側壁部121から前方に延びる壁である。回り止め部176a,176bは、一例として、上側壁部121をプレス加工することにより形成される。第1板部171の両脇に回り止め部176a,176bが設けられることにより、第1板部171が左右に回転することを抑制できる。
【0041】
第2板部172は、第1板部171の上端部から後方に延びる長尺状の部位である。第2板部172は、第1板部171と取付部173とを接続する。第1板部171の上端部と、ケーブル5の中心部とは、左右方向に関して若干異なる位置に配置されているため、第2板部172は、若干右方向に蛇行している。
【0042】
第1板部171と第2板部172とは、第6折曲げ部177を介して接続している。第1板部171と第2板部172とは、第6折曲げ部177を中心に90度折れ曲がっている。
【0043】
取付部173は、ケーブル5に嵌め込む部分である。取付部173は、円筒状の形状から一部を切り取った形状に構成されている。取付部173は、上下方向を法線方向とする平面による断面が、略Ω状に構成されている。取付部173の両端部には、円弧の外側に向かって傾斜している傾斜部178a,178bが設けられている。
【0044】
図7に示されるように、ケーブル5は、一例として同軸ケーブルであって、内部導体51と、絶縁体52と、外部導体53と、外部被覆54と、を備える。内部導体51は、金属の単線であってもよいし、撚り線であってもよい。内部導体51は、電気信号を伝送する。絶縁体52は、内部導体51の周りを被覆する絶縁層である。外部導体53は、絶縁体52の外側を囲む網線である。外部導体53は、外部への信号漏洩や外部からの電波の侵入を遮断するシールド効果を有する。外部被覆54は、一例としてポリ塩化ビニルで構成され、外部導体53の外側を被覆する。なお、ケーブル5の種類は同軸ケーブルに限られず、例えば、多芯ケーブルであってもよい。
【0045】
[2-2.ケーブルへの組み付け]
まず、外部被覆54の一部を剥がし、外部導体53の一部を露出させる。続いて、露出した外部導体53に取付部173が接触するように、取付部173を嵌め込む。取付部173を外部導体53に嵌め込む際に、傾斜部178a,178bがまず外部導体53に当たり、滑るように開く。よって、傾斜部178aから傾斜部178bまでの間隔が外部導体53の直径よりも小さくても、スムーズに取付部173を外部導体53に嵌め込むことができる。
【0046】
[2-3.効果]
以上詳述した第2実施形態によれば、前述した第1実施形態の効果に加え、以下の効果を得ることができる。
【0047】
(2a)ケーブル5と電気的に接続する接続部170を備える。このような構成によれば、外部導体53と固定具100とが電気的に接続される。固定具100をシャーシのようなグランド部材に接続していると、固定具100を介してケーブル5をグランドに接続することができる。
【0048】
[3.他の実施形態]
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、上記実施形態に限定されることなく、種々の形態を採り得ることは言うまでもない。
【0049】
(3a)上記実施形態では、ネジ6を貫通孔114,115及び孔部23に差し込み、第1対象物2と固定具1とを固定する構成を例示した。しかし、第1対象物2と固定具1とを固定する部材はこれに限定されるものではない。例えば、第1対象物2と固定具1とを固定する部材として、ボルト、スタッドボルト等が用いられてもよい。図9に示されるように、スタッドボルト106が用いられる場合、まず、第1対象物2の孔部23にスタッドボルト106を差し、下方に突出するスタッドボルト106にナット116を螺合する。その後、第1対象物2の第1面21の上方に延び出すスタッドボルト106に沿って貫通孔114,115を差し込む。続いて、上方に突出するスタッドボルト106にナット126を螺合し固定する。このように、スタッドボルト106を用いて、ナット116とナット126によって第1対象物2と第1固定部11とを挟み込んで固定することができる。このような構成によれば、上方に突出するスタッドボルト106に貫通孔114,115を差し込むだけで、貫通孔114,115の位置を合わせることができる。よって、貫通孔114,115及び孔部23の位置を予め合わせてからネジ6を差し込む構成と比較して、貫通孔114,115を案内する位置が分かりやすくなり、作業効率がよくなる。なお、スタッドボルト106等の組み付けは上記の方法に限定されず、予め1つのナットが螺合したスタッドボルト106を貫通孔114,115及び孔部23に差し込んでもよい。
【0050】
(3b)上記実施形態では、第1対象物2がシャーシであり、第2対象物3がフェライトクランプである構成を例示した。しかし、対象物の種類はこれに限定されるものではない。
【0051】
(3c)上記実施形態では、固定具1が金属で構成されていることを例示した。しかし、固定具1は、例えば樹脂材で構成されていてもよい。
(3d)上記実施形態における1つの構成要素が有する機能を複数の構成要素として分散させたり、複数の構成要素が有する機能を1つの構成要素に統合したりしてもよい。また、上記実施形態の構成の一部を省略してもよい。また、上記実施形態の構成の少なくとも一部を、他の上記実施形態の構成に対して付加、置換等してもよい。
【0052】
[本明細書が開示する技術思想]
[項目1]
第1対象物及び第2対象物それぞれに対して固定される金属製の固定具であって、
前記第1対象物に対して固定される第1固定部と、
前記第2対象物に対して固定される第2固定部と、
弾性変形可能に構成され、前記第1対象物と当接する当接部と、
を備え、
前記第1対象物は、第1面と、前記第1面に対して角度を有する第2面と、を有し、
前記第1固定部は、貫通孔を有し、前記第1面に配置される軸部材が前記貫通孔に通された状態で前記第1対象物に対して固定され、
前記当接部は、前記第1固定部が前記第1対象物に対して固定される位置にあるときに、弾性変形した状態で前記第2面に接触し、前記弾性変形の反発力により、前記第1固定部が前記軸部材を中心に回転することを抑制可能に構成されている、固定具。
【0053】
[項目2]
項目1に記載の固定具であって、
前記第1固定部が前記第1対象物に対して固定される位置にあるときに、
前記第2面は、前記第2固定部から間隔を空けて、前記第2固定部と対向する位置に配置されており、
前記当接部は、前記第2面と前記第2固定部との間に生じる間隙に位置し、
前記当接部は、前記第2固定部から前記第2面に向かう方向に、前記第2面に力を加える、固定具。
【0054】
[項目3]
項目1又は項目2に記載の固定具であって、
前記軸部材は、スタッドボルトであり、
前記軸部材は、前記第1対象物に形成された孔部に通され、2つのナットと螺合することにより前記第1対象物に取付可能であり、
前記第1固定部と前記第1面とが前記2つのナットの間に挟持されるように構成される、固定具。
【0055】
[項目4]
項目1から項目3までのいずれか1項に記載の固定具であって、
前記第2対象物は、フェライトクランプである、固定具。
【0056】
[項目5]
項目1から項目4までのいずれか1項に記載の固定具であって、
内部導体と、前記内部導体をシールドする外部導体と、を有するケーブルを保持可能な接続部を更に備え、
前記接続部は、前記外部導体と通電可能に構成されている、固定具。
【符号の説明】
【0057】
1,100…固定具、2…第1対象物、3…第2対象物、4…ケース、5…ケーブル、6…ネジ、11…第1固定部、12…第2固定部、13…当接部、14…第1折曲げ部、15…第2折曲げ部、16…第3折曲げ部、17…第4折曲げ部、18…第5折曲げ部、21…第1面、22…第2面、23…孔部、41…第1分割ケース、42…第2分割ケース、43…開口、44…着脱部、45,114,115…貫通孔、51…内部導体、52…絶縁体、53…外部導体、54…外部被覆、61…頭部、106…スタッドボルト、111…上側板部、112…下側板部、113…側壁、116,126…ナット、121…上側壁部、122…下側壁部、123a…第1脚部、123b…第2脚部、123c…第3脚部、123d…第4脚部、124…リブ、131…直線部、132…傾斜部、170…接続部、171…第1板部、172…第2板部、173…取付部、174…バーリング部、175…孔部、176a,176b…回り止め部、177…第6折曲げ部、178a,178b…傾斜部、441…係合枠、442…係合爪。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9