IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 横河電機株式会社の特許一覧 ▶ 横河ソリューションサービス株式会社の特許一覧

特開2023-168058情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム
<>
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム 図1
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム 図2
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム 図3
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム 図4
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム 図5
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム 図6
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム 図7
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム 図8
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム 図9
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム 図10
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム 図11
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム 図12
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム 図13
  • 特開-情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム 図14
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168058
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラム
(51)【国際特許分類】
   C21B 5/00 20060101AFI20231116BHJP
   C21B 7/24 20060101ALI20231116BHJP
   G05B 23/02 20060101ALN20231116BHJP
【FI】
C21B5/00 323
C21B7/24
G05B23/02 302V
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079686
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006507
【氏名又は名称】横河電機株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】513213966
【氏名又は名称】横河ソリューションサービス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】今井 龍彦
【テーマコード(参考)】
3C223
4K015
【Fターム(参考)】
3C223AA05
3C223FF22
3C223FF26
3C223FF35
3C223FF45
4K015KA01
(57)【要約】
【課題】正確に、簡素に、かつ実践的に高炉の異常を検出すること
【解決手段】情報処理装置10は、高炉の操業で発生する炉内ガスから計測される計測データを取得し、当該計測データを用いて、高炉の垂直方向の複数の位置それぞれの水平断面における炉内ガスの各流速指数を算出し、高炉内の複数の位置それぞれに各流速指数を対応付けた炉内ガスの流速指数分布を生成する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
高炉の操業で発生する炉内ガスから計測される計測データを取得する取得部と、
前記計測データを用いて、前記高炉の複数の位置それぞれにおける炉内ガスの各流速指数を算出する算出部と、
前記高炉内の前記複数の位置それぞれに前記各流速指数を対応付けた前記炉内ガスの流速分布を生成する生成部と、
を備える情報処理装置。
【請求項2】
前記算出部は、
前記高炉の垂直方向の前記複数の位置の水平断面内の複数の領域それぞれにおける炉内ガスの各流速指数を算出し、
前記生成部は、
前記水平断面内の前記複数の領域それぞれに前記各流速指数を対応付けた流速指数分布を生成する、
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記取得部は、
前記計測データとして、前記高炉における炉壁側の前記炉内ガスの温度データと圧力データとを取得し、
前記算出部は、
前記圧力データを用いて前記垂直方向の複数の位置である第1の位置と第2の位置との前記炉内ガスの圧力の差である差圧を算出し、前記差圧と前記温度データおよび圧力データとを用いて前記水平断面の円周方向における前記炉壁側の流速指数である複数の炉壁流速指数を算出し、前記複数の炉壁流速指数を用いて前記高炉における炉芯側の流速指数である炉芯流速指数を算出し、
前記生成部は、
前記複数の炉壁流速指数と前記炉芯流速指数とを用いて前記流速指数分布を生成する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記算出部は、
前記複数の炉壁流速指数の平均値に対して前記水平断面から炉内の原料までの高さに基づく所定の倍率を乗算することによって、前記炉芯流速指数を算出する、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記算出部は、
前記複数の炉壁流速指数と平均流速指数とを用いて、前記炉芯流速指数を算出する、
請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記生成部は、
複数の前記水平断面における前記流速指数分布を生成することによって、前記高炉の垂直方向における前記流速指数分布をさらに生成する、
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記高炉の正常状態における前記流速分布が示す前記流速指数を用いて所定の閾値を設定し、前記高炉の操業時の前記流速指数が前記閾値を超過した場合には、前記高炉の異常を検出する検出部、
をさらに備える請求項1から6のいずれか1項に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記検出部は、
前記計測データが入力されると前記閾値を出力するように学習した機械学習モデルを用いて、前記高炉の異常を検出する、
請求項7に記載の情報処理装置。
【請求項9】
コンピュータが、
高炉の操業で発生する炉内ガスから計測される計測データを取得し、
前記計測データを用いて、前記高炉の複数の位置それぞれにおける炉内ガスの各流速指数を算出し、
前記高炉内の前記複数の位置それぞれに前記各流速指数を対応付けた前記炉内ガスの流速分布を生成する、
処理を実行する情報処理方法。
【請求項10】
コンピュータに、
高炉の操業で発生する炉内ガスから計測される計測データを取得し、
前記計測データを用いて、前記高炉の複数の位置それぞれにおける炉内ガスの各流速指数を算出し、
前記高炉内の前記複数の位置それぞれに前記各流速指数を対応付けた前記炉内ガスの流速分布を生成する、
処理を実行させる情報処理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、高炉操業において、高温の高炉炉内の状況を把握するために高炉炉壁に設置された温度や圧力等のセンサで連続的に内部の状態を計測する一方で、ゾンデと呼ばれる炉内装入型のセンサで、炉頂付近の低温部分は連続的に、またそれ以下の高温部分は間欠的に、炉内温度、圧力、ガス成分等の計測を行い、これらのセンサから得られる炉内の計測データをもとに異常検出につながる炉内の各種指標を生成し検知が行われてきた。ここで、各種指標には、シャフト部圧力の主成分分析およびQ統計量、圧力変動指数、温度の水平、垂直方向のバランス、差圧(圧損)等がある。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】JFE技報No.45 (2020年2月)p.19-25、「データサイエンスによる高炉操業ガイダンス技術」、[online]、[2022年2月27日検索]、インターネット<URL:https://www.jfe-steel.co.jp/research/giho/045/pdf/045-05.pdf>
【非特許文献2】日本鋼管 技術報告、「高炉異常炉況予知システムの開発」、[online]、[2022年3月10日検索]、インターネット<URL:https://www.jstage.jst.go.jp/article/tetsutohagane1955/72/10/72_10_1545/_pdf>
【非特許文献3】神戸製鋼技報/Vol.68 No.2(Dec.2018) 「高炉吹き抜け予測方法」、[online]、[2021年12月27日検索]、インターネット<URL:https://www.kobelco.co.jp/technology-review/pdf/68_2/007-011.pdf>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、高炉は、正常状態においても、出滓・出銑を周期とする炉内圧力の変動や、圧力および温度の分布の変動を示しており、従来の技術では、温度、圧力等、1種類のプロセス変数情報では正確に高炉の異常を検出することが難しく、また多種類のプロセス変数を組み合わせた複雑な指標では、操業条件等が変動した場合のチューニング等に専門性が必要になる等、操業前線での実践的な運用が難しいなどの課題を有する。また、高炉は、操業安定のために原料のV字装入(炉壁部分が高く、炉芯部分が低い装入)が実施されており、炉内のガス流も、炉芯の通気抵抗が最少、炉壁が最大となる流速分布となっており、高炉の異常である高温の炉内ガスの吹き抜けも、炉芯での発生が多い傾向にある。しかしながら、従来の高炉表面に設置されたセンサからの情報量だけでは、重要な炉芯の情報化が十分ではないことがある。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、正確に、簡素に、かつ実践的に高炉の異常を検出することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、高炉の操業で発生する炉内ガスから計測される計測データを取得する取得部と、前記計測データを用いて、前記高炉の垂直方向の複数の位置それぞれの水平断面における炉内ガスの各流速指数を算出する算出部と、前記高炉内の前記複数の位置それぞれに前記各流速指数を対応付けた前記炉内ガスの流速指数分布を生成する生成部と、を備える情報処理装置を提供する。
【0007】
本発明は、コンピュータが、高炉の操業で発生する炉内ガスから計測される計測データを取得し、前記計測データを用いて、前記高炉の垂直方向の複数の位置それぞれの水平断面における炉内ガスの各流速指数を算出し、前記高炉内の前記複数の位置それぞれに前記各流速指数を対応付けた前記炉内ガスの流速指数分布を生成する、処理を実行する情報処理方法を提供する。
【0008】
また、本発明は、コンピュータに、高炉の操業で発生する炉内ガスから計測される計測データを取得し、前記計測データを用いて、前記高炉の垂直方向の複数の位置それぞれの水平断面における炉内ガスの各流速指数を算出し、前記高炉内の前記複数の位置それぞれに前記各流速指数を対応付けた前記炉内ガスの流速指数分布を生成する、処理を実行させる情報処理プログラムを提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、正確に、簡素に、かつ実践的に高炉の異常を検出することができることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る情報処理システムの構成例を示す図である。
図2】実施形態に係る情報処理システムの各装置の構成例を示すブロック図である。
図3】実施形態に係る各水平断面の流速指数監視領域を示す図である。
図4】実施形態に係る炉芯流速指数の推定倍率の算出処理1を示す図である。
図5】実施形態に係る炉芯流速指数の推定倍率の算出処理2を示す図である。
図6】実施形態に係る異常検出処理1を示す図である。
図7】実施形態に係る異常検出処理2を示す図である。
図8】実施形態に係る算出処理1-1(a)の流れを示すフローチャートである。
図9】実施形態に係る算出処理1-1(b)の流れを示すフローチャートである。
図10】実施形態に係る算出処理1-2の流れを示すフローチャートである。
図11】実施形態に係る算出処理2-1(a)の流れを示すフローチャートである。
図12】実施形態に係る算出処理2-1(b)の流れを示すフローチャートである。
図13】実施形態に係る算出処理2-2の流れを示すフローチャートである。
図14】ハードウェア構成例を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、本発明の一実施形態に係る情報処理装置、情報処理方法および情報処理プログラムを、図面を参照して詳細に説明する。なお、本発明は、以下に説明する実施形態により限定されるものではない。
【0012】
〔実施形態〕
以下に、実施形態に係る情報処理システムの構成、情報処理装置等の構成、各処理の流れを順に説明し、最後に実施形態の効果を説明する。
【0013】
〔1.情報処理システム100の構成〕
図1を用いて、実施形態に係る情報処理システム100の構成を詳細に説明する。図1は、実施形態に係る情報処理システム100の構成例を示す図である。以下では、情報処理システム100全体の構成例、情報処理システム100の処理、情報処理システム100の効果の順に説明する。
【0014】
(1-1.情報処理システム100全体の構成例)
情報処理システム100は、情報処理装置10、高炉20、圧力センサ30(30-1、30-2、30-3、30-4)、温度センサ40(40-1、40-2、40-3)およびゾンデ60を有する。図1に示した情報処理システム100には、複数台の情報処理装置10、複数の高炉20または複数のゾンデ60が含まれてもよい。また、圧力センサ30と温度センサ40とは、統合された構成であってもよい。以下では、情報処理装置10、高炉20、圧力センサ30、温度センサ40およびゾンデ60について説明する。
【0015】
(1-1-1.情報処理装置10)
情報処理装置10は、高炉20のプロセスデータ(適宜、「計測データ」)から炉内ガス50の炉内の流速指数分布を生成する管理者によって使用されるデバイス(コンピュータ)である。例えば、情報処理装置10は、スマートフォンや、タブレット型端末や、ノート型PC(Personal Computer)や、デスクトップPCや、携帯電話機や、PDA(Personal Digital Assistant)等により実現される。図1の例では、情報処理装置10がデスクトップPCにより実現される場合を示す。また、情報処理装置10は、圧力センサ30および温度センサ40と図示しない所定の通信網(ネットワーク)を介して、有線または無線により通信可能に接続される。
【0016】
(1-1-2.高炉20)
高炉20は、鉄鉱石を熱処理して、鉄を取り出すための溶鉱炉である。例えば、高炉20は、上部から鉄鉱石、コークス等が投入され、下部側面から加熱された空気が送入される。このとき、高炉20は、鉄鉱石とコークスの還元反応によって一酸化炭素、二酸化炭素等の炉内ガス50を発生する。図1の例において、水平断面1は、高炉20の炉腹部の水平断面を示す。また、水平断面2は、高炉20の炉胸部下部の水平断面を示す。また、水平断面3は、高炉20の炉胸部中部の水平断面を示す。
【0017】
(1-1-3.圧力センサ30)
圧力センサ30は、高炉20において発生する炉内ガス50の圧力を計測する機器である。図1の例では、圧力センサ30-1は、高炉20の炉腹部の炉壁側の炉内ガス50の圧力を計測する。また、圧力センサ30-2は、高炉20の炉胸部下部の炉壁側の炉内ガス50の圧力を計測する。また、圧力センサ30-3は、高炉20の炉胸部中部の炉壁側の炉内ガス50の圧力を計測する。さらに、圧力センサ30-4は、高炉20の炉胸部上部の炉壁側の炉内ガス50の圧力を計測する。
【0018】
(1-1-4.温度センサ40)
温度センサ40は、高炉20において発生する炉内ガス50の温度を計測する機器である。図1の例では、温度センサ40-1は、高炉20の下部の炉壁側の炉内ガス50の温度を計測する。また、温度センサ40-2は、高炉20の中部の炉壁側の炉内ガス50の温度を計測する。また、温度センサ40-3は、高炉20の上部の炉壁側の炉内ガス50の温度を計測する。
【0019】
(1-1-5.ゾンデ60)
ゾンデ60は、高炉20の炉内の温度、圧力、成分等を計測する機器である。図1の例では、ゾンデ60は、炉壁から炉芯の複数点の炉内ガス圧力および温度を計測する。
【0020】
(1-2.情報処理システム100全体の処理)
上記の情報処理システム100全体の処理について説明する。なお、下記のステップS1~S5は、異なる順序で実行することもできる。また、下記のステップS1~S5のうち、省略される処理があってもよい。
【0021】
(1-2-1.ステップS1の処理)
第1に、情報処理装置10は、高炉20の計測データを取得する(ステップS1)。例えば、情報処理装置10は、圧力センサ30から炉内ガス50の圧力データPを取得する。図1の例では、情報処理装置10は、圧力センサ30-1から高炉20の水平断面1付近の炉壁側の炉腹部圧力データを取得する。また、情報処理装置10は、圧力センサ30-2から高炉20の水平断面2付近の炉壁側の炉胸部下部圧力データを取得する。また、情報処理装置10は、圧力センサ30-3から高炉20の水平断面3付近の炉壁側の炉胸部中部圧力データを取得する。また、情報処理装置10は、圧力センサ30-4から高炉20の炉壁側の炉胸部上部圧力データを取得する。また、情報処理装置10は、ゾンデ60が設置されている場合で炉壁から炉芯までの複数点の炉内ガス50の圧力データPを取得可能な場合は、そのデータを取得する。
【0022】
また、情報処理装置10は、温度センサ40から炉内ガス50の温度データTを取得する。図1の例では、情報処理装置10は、温度センサ40-1から高炉20の炉壁側の下部温度データを取得する。また、情報処理装置10は、温度センサ40-2から高炉20の炉壁側の中部温度データを取得する。また、情報処理装置10は、温度センサ40-3から高炉20の炉壁側の上部温度データを取得する。また、情報処理装置10は、ゾンデ60が設置されている場合で炉壁から炉芯までの複数点の炉内ガス50の温度データTを取得可能な場合は、そのデータを取得する。
【0023】
また、情報処理装置10は、送風流量データ等を取得する。
【0024】
(1-2-2.ステップS2の処理)
第2に、情報処理装置10は、取得した計測データから、高炉20の炉壁側の炉内ガス50の流速指数(適宜、「炉壁流速指数」)v(o)を算出する(ステップS2)。例えば、情報処理装置10は、圧力データを用いて炉内ガス50のある水平断面の円周方向のある角度位置の圧力データと、同一炉壁角度位置でかつガス流れ下流側の水平断面の圧力データとから差圧データΔPを算出し、差圧データΔPと温度データTと圧力データPとを用いて水平断面の円周方向におけるある角度位置の炉壁流速指数v(o)を算出する。
【0025】
ここで、流速指数とは、ベルヌーイの式の動圧の項から導出する炉内ガス50の流速に比例する数値であって、流速指数をv、差圧をΔP、気体の状態方程式に基づく温度圧力補正後のガス密度をρとすると、v=(2×ΔP/ρ)0.5で表わされる。なお、炉壁流速指数v(o)の算出処理の詳細については後述する。
【0026】
(1-2-3.ステップS3の処理)
第3に、情報処理装置10は、算出した炉壁流速指数v(o)から、高炉20の炉芯側の炉内ガス50の流速指数(適宜、「炉芯流速指数」)v(i)を算出する(ステップS3)。例えば、情報処理装置10は、炉壁流速指数の平均値v(ave)(o)に対して水平断面から炉内の原料までの高さに基づく推定倍率Eを乗算することによって、炉芯流速指数v(i)を算出する。
【0027】
また、情報処理装置10は、ゾンデ60が設置されている場合で炉壁から炉芯までの複数点の炉内ガス50の温度データTおよび圧力データPを取得可能な場合は、取得した炉芯の温度データTおよび圧力データPを用いて炉芯流速指数v(i)を算出することもできる。また、情報処理装置10は、データ全体を平均して各水平断面の平均差圧、平均温度および平均圧力を算出し、これらを用いて平均流速指数v(ave)および炉芯流速指数v(i)を算出することもできる。すなわち、情報処理装置10は、平均流速指数の水平断面の領域数Nに対応する流速指数の合計値vから炉壁流速指数v(o)の合計値v(o)を減算することによって炉芯流速指数v(i)を算出することもできる。なお、炉芯流速指数v(i)の算出処理の詳細については後述する。
【0028】
(1-2-4.ステップS4の処理)
第4に、情報処理装置10は、算出した炉壁流速指数v(o)と炉芯流速指数v(i)とを用いて炉内ガス50の流速指数分布を生成する(ステップS4)。図1の例では、情報処理装置10は、炉内ガス50の水平断面1における炉内の流速指数分布として、8領域の炉壁流速指数v(o)である{0°領域:1.01、45°領域:1.05、90°領域:0.99、135°領域:1.05、180°領域:1.10、225°領域:1.05、270°領域:1.02、315°領域:1.00}、1領域の炉芯流速指数v(i)である{1.31}を表示した9領域の流速指数分布を生成する。このとき、情報処理装置10は、水平断面1~水平断面3の水平断面における流速指数分布を生成することによって、高炉20の垂直方向における3次元的な流速指数分布を生成することもできる。
【0029】
(1-2-5.ステップS5の処理)
第5に、情報処理装置10は、生成した炉内の流速指数分布を用いて高炉20の操業時の炉内の異常を検出する(ステップS5)。例えば、情報処理装置10は、水平断面1における炉芯流速指数v(i)が所定の閾値を超過している場合には、水平断面1の炉芯における炉内の異常を検出する。このとき、情報処理装置10は、高炉20の操業時の炉内の異常として、棚吊り(hanging)、スリップ(slipping)、吹き抜け(channeling)等による通気性の異常を検出する。
【0030】
(1-3.情報処理システム100の効果)
以下では、参考技術として、高炉操業において利用される通常の異常検出技術の問題点を説明した上で、情報処理システム100の効果について説明する。
【0031】
(1-3-1.参考技術の概要)
通常の異常検出技術では、高炉操業において、高温の高炉炉芯の状況を把握するために高炉炉壁に設置された温度や圧力等のセンサで連続的に内部の状態を計測する。また、ゾンデと呼ばれる炉内装入型のセンサで、炉頂付近の低温部分は連続的に、またそれ以下の高温部分は間欠的に、炉内温度、圧力、ガス成分等の計測を行う。上記のセンサから得られる炉内の計測データをもとに異常検出につながる炉内の各種指標を生成し、炉内の異常を検出する。ここで、各種指標には、シャフト部圧力の主成分分析およびQ統計量、圧力変動指数、温度の水平、垂直方向のバランス、差圧(圧損)等がある。
【0032】
(1-3-2.高炉操業の主な異常)
高炉操業の主な異常には、以下に示す棚吊り、スリップ、吹き抜け、フラッディング、バブリング等があり、これらが連携して異常となっていると想定される。一例として、棚吊り→スリップ→吹き抜けが挙げられる。また、以下に示す高炉操業の主な異常は、いずれも炉内ガスの通気性不具合につながっている。
【0033】
(1-3-2-1.棚吊り)
棚吊りは、鉄鉱石やコークス等の塊状物が高炉内を降下する際に、周囲との摩擦などで細かくなった塊状物が他の塊状物の空隙に入り込み、その一帯を目詰りさせ棚を作り降下しにくくする。このとき、強いガス上昇流で、下部の細かい塊状物が上部の塊状物の空隙に入り込み、その一帯を目詰りさせ棚を作り降下しにくくする。また、フラッディングで飛び散った溶滓や溶銑が上部の塊状物に付着し棚を作り降下しにくくする。
【0034】
(1-3-2-2.スリップ)
棚吊り時に、その下部の塊状物が降下して、棚吊り部の下に空間が形成され、空間がある程度の大きさになると棚が崩れ落ちて(スリップ)、下部のガスが吹き抜けする。スリップが炉下部の直接還元域で発生すると、塊状物の量と熱量のバランスにより、熱量が多いと多量のガス発生で吹き抜け、熱量が不足すると炉芯が冷却し操業停止に至ることもある。
【0035】
(1-3-2-3.吹き抜け)
吹き抜けが発生すると、炉内の高温のガスが炉頂部に抜けて、炉頂設備を破損し操業停止などを引き起こす。また、炉芯流速を高くする操業形態(炉頂原料V字形装入)のため圧倒的に炉芯部吹き抜けが多い。
【0036】
(1-3-2-4.フラッディング)
レースウエーのガス流が強いと溶滓や溶銑が飛び散り(フラッディング)、二次的な問題を起こす。
【0037】
(1-3-2-5.バブリング)
急激還元反応で多量の溶滓、溶銑、ガスが混ざり合い周囲の流動化を進め(バブリング)、炉内のバランスを崩し不安定な操業となる。
【0038】
(1-3-3.参考技術の問題点)
高炉は、操業安定のために原料のV字装入、すなわち、炉壁部分が高く、炉芯部分が低い装入が実施されている。このとき、炉内のガス流も、炉芯の通気抵抗が最小、炉壁の通気抵抗が最大となる流速分布となっており、高炉の異常である高温の炉内ガスの吹き抜けも、炉芯での発生が多い傾向にある。このため、高炉表面に設置されたセンサからの情報量だけでは、重要な炉芯の情報化が十分ではなく、正確な異常検出が難しいという問題点があり、また複数のプロセス変数を組み合わせた複雑な異常評価指数では、その運用が専門的になる等、操業前線での実践的な適用性に課題がある。
【0039】
(1-3-4.情報処理システム100の概要)
情報処理システム100では、高炉20の操業で発生する炉内ガス50から計測される計測データを取得し、当該計測データを用いて、高炉20の垂直方向の複数の位置それぞれの水平断面における炉内ガス50の流速指数vを算出し、高炉20内の複数の位置それぞれに流速指数vを対応付けた炉内ガス50の流速指数分布を生成し、当該流速指数分布が示す流速指数vが所定の閾値を超過した場合には、高炉20の異常を検出する。このとき、情報処理システム100では、水平断面の円周方向における炉壁流速指数v(o)を算出し、炉壁流速指数v(o)を用いて炉芯流速指数v(i)を算出する。また、情報処理システム100では、計測データを説明変数、閾値を目的変数とする機械学習により生成された機械学習モデルを用いて、高炉20の異常を検出する。
【0040】
すなわち、情報処理システム100では、これまで数値化されていなかった高炉炉内の通気性把握につながる流速指数分布を、既存のプロセスデータおよび、それらを加工したデータによる推定を行うことで数値化し、数値化された流速指数分布に基づき異常検知の閾値を算出し、高炉操業の異常検知に適用することができる。また、情報処理システム100では、プロセスデータの変動が大きい場合は、機械学習機能(例:多変量統計解析)等により、変動する操業状態の中、正常および異常を統計的に識別する閾値を算出することもできる。
【0041】
(1-3-5.情報処理システム100の効果)
上記の高炉操業の主な異常は、いずれも炉内ガスの通気性不具合につながっているが、情報処理システム100は、炉内の通気性の監視を可能とし、異常の早期検出および抑制を可能とし、安定操業を目指す助成手段の1つとなることが期待される。また、情報処理システム100は、炉壁側の通気性だけではなく、炉芯側の通気性の監視を可能とするので、より正確な高炉の異常の検出を可能とする。
【0042】
〔2.情報処理システム100の各装置の構成〕
図2を用いて、図1に示した情報処理システム100が有する各装置の機能構成について説明する。以下では、実施形態に係る情報処理装置10の構成例、情報処理装置10の算出処理、情報処理装置10の検出処理の順に詳細に説明する。
【0043】
(2-1.情報処理装置10の構成例)
まず、図2を用いて、図1に示した情報処理装置10の構成例について説明する。図2は、実施形態に係る情報処理システム100の各装置の構成例を示すブロック図である。情報処理装置10は、入力部11、出力部12、通信部13、記憶部14および制御部15を有する。
【0044】
(2-1-1.入力部11)
入力部11は、当該情報処理装置10への各種情報の入力を司る。例えば、入力部11は、マウスやキーボード等で実現され、当該情報処理装置10への設定情報等の入力を受け付ける。
【0045】
(2-1-2.出力部12)
出力部12は、当該情報処理装置10からの各種情報の出力を司る。例えば、出力部12は、ディスプレイ等で実現され、当該情報処理装置10に記憶された設定情報等を出力する。
【0046】
(2-1-3.通信部13)
通信部13は、他の装置との間でのデータ通信を司る。例えば、通信部13は、ルータ等を介して、各通信装置との間でデータ通信を行う。また、通信部13は、図示しないオペレータの端末との間でデータ通信を行うことができる。
【0047】
(2-1-4.記憶部14)
記憶部14は、制御部15が動作する際に参照する各種情報や、制御部15が動作した際に取得した各種情報を記憶する。記憶部14は、計測データ記憶部14a、流速指数分布記憶部14bおよび機械学習モデル14cを有する。ここで、記憶部14は、例えば、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等の半導体メモリ素子、または、ハードディスク、光ディスク等の記憶装置等で実現され得る。なお、図2の例では、記憶部14は、情報処理装置10の内部に設置されているが、情報処理装置10の外部に設置されてもよいし、複数の記憶部が設置されていてもよい。
【0048】
(2-1-4-1.計測データ記憶部14a)
計測データ記憶部14aは、制御部15の取得部15aによって取得された計測データを記憶する。例えば、計測データ記憶部14aは、高炉20における炉内ガス50の圧力データP、温度データT、差圧データΔP、送風流量データ等を記憶する。
【0049】
(2-1-4-2.流速指数分布記憶部14b)
流速指数分布記憶部14bは、制御部15の生成部15cによって生成された炉内ガス50の流速指数分布を記憶する。例えば、流速指数分布記憶部14bは、高炉20における水平断面である水平断面1、水平断面2、水平断面3ごとの炉内ガス50の炉壁流速指数v(o)と炉芯流速指数v(i)とを示した流速指数分布を記憶する。
【0050】
(2-1-4-3.機械学習モデル14c)
機械学習モデル14cは、計測データの入力に応じて、高炉20の異常を示す閾値を出力するように学習されたモデルである。例えば、機械学習モデル14cは、高炉20の安定操業時の状態である正常状態での計測データを学習データとして生成された学習済みモデルである。
【0051】
(2-1-5.制御部15)
制御部15は、当該情報処理装置10全体の制御を司る。制御部15は、取得部15a、算出部15b、生成部15cおよび検出部15dを有する。ここで、制御部15は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)等の電子回路やASIC(Application Specific Integrated Circuit)やFPGA(Field Programmable Gate Array)等の集積回路により実現され得る。
【0052】
(2-1-5-1.取得部15a)
取得部15aは、高炉20の操業で発生する炉内ガス50から計測される計測データを取得する。例えば、取得部15aは、計測データとして、高炉20における炉壁側の炉内ガス50の温度データTと圧力データPとを取得する。また、取得部15aは、高炉20にゾンデ60が設置されている場合で炉壁から炉芯までの複数点の炉内ガス50の圧力データPおよび温度データTを取得可能な場合は、そのデータを取得する。このとき、取得部15aは、通信部13を介して高炉20の炉壁に設置された温度センサ40から温度データTを取得する。また、取得部15aは、通信部13を介して高炉20の炉壁に設置された圧力センサ30から圧力データPを取得する。また、取得部15aは、通信部13を介して高炉20のゾンデ60から炉壁から炉芯までの複数点の圧力データPおよび温度データTを取得する。なお、取得部15aは、取得した計測データを計測データ記憶部14aに格納する。
【0053】
(2-1-5-2.算出部15b)
算出部15bは、計測データを用いて、高炉20の垂直方向の複数の位置それぞれの水平断面における炉内ガス50の各流速指数を算出する。例えば、算出部15bは、複数の位置それぞれの各流速指数vとして、高炉20の所定位置の水平断面内の複数の領域それぞれにおける炉内ガス50の各流速指数vを算出する。
【0054】
具体的には、算出部15bは、圧力データPを用いて複数の位置の中の、ある第1の位置とガス流れの下流側の第2の位置との炉内ガス50の圧力の差である差圧ΔPを算出し、差圧ΔPとガス密度ρ(温度データTおよび圧力データPで使用状態へ補正した値)とを用いて水平断面の円周方向における炉壁側の流速指数である複数の炉壁流速指数v(o)を算出し、複数の炉壁流速指数v(o)を用いて高炉20における炉芯側の流速指数である炉芯流速指数v(i)を算出する。ここで、ガス密度ρ補正用の温度データTおよび圧力データPは、(1)ガス流れ上流側水平断面の対象領域のデータ、(2)ガス流れ下流側水平断面の対象領域のデータ、または、(3)これらの平均、のいずれかとし、同一水平断面の中では、いずれかに統一して運用することができる。また、ある水平断面とガス流れ下流側の炉頂間の適用例では、下流側の水平断面が無いため、この場合は上記の(1)、または(1)のデータと炉頂データとの平均、のいずれかに統一して運用することもできる。
【0055】
さらに、算出部15bは、複数の炉壁流速指数の平均値(平均炉壁流速指数)v(ave)(o)に対して水平断面から炉内の原料までの高さに基づく所定の倍率(推定倍率)Eを乗算することによって、炉芯流速指数v(i)を算出する。また、算出部15bは、複数の炉壁流速指数v(o)と平均流速指数v(ave)とを用いて、炉芯流速指数v(i)を算出する。
【0056】
(2-1-5-3.生成部15c)
生成部15cは、高炉20内の垂直方向の複数の位置それぞれの水平断面に各流速指数vを対応付けた炉内ガス50の流速指数分布を生成する。例えば、生成部15cは、水平断面内の複数の領域それぞれに各流速指数vを対応付けた炉内ガス50の流速指数分布を生成する。このとき、生成部15cは、複数の炉壁流速指数v(o)と炉芯流速指数v(i)とを用いて流速指数分布を生成する。さらに、生成部15cは、複数の異なる水平断面における流速指数分布を生成することによって、高炉の垂直方向における流速指数分布をさらに生成する。なお、生成部15cは、生成した流速指数分布を流速指数分布記憶部14bに格納する。
【0057】
(2-1-5-4.検出部15d)
検出部15dは、高炉20の正常状態における流速指数分布が示す流速指数vを用いて所定の閾値を設定し、高炉20の操業時の流速指数vが当該閾値を超過した場合には、高炉の異常を検出する。例えば、検出部15dは、高炉20の異常として、棚吊り、スリップ、吹き抜け等による通気性の異常を検出する。また、検出部15dは、計測データが入力されると所定の閾値を出力するように学習した機械学習モデル14cを用いて、高炉20の異常を検出する。例えば、検出部15dは、計測データの変動が大きい場合や計測データ間の相関性が重要な場合等には、基本統計量、多変量統計解析、主成分分析、ホテリングT2/Q統計量、全成分分析等の手法を用いて正常と異常とを判定する閾値を算出することによって、高炉20の異常を検出する。
【0058】
(2-2.情報処理装置10の算出処理)
図3~5を用いて、図1に示した情報処理装置10の算出処理について説明する。以下では、流速指数vを算出する水平断面の領域について説明した上で、正常状態における算出処理、操業状態における算出処理について説明する。
【0059】
(2-2-1.水平断面の領域)
図3を用いて、情報処理装置10が算出する流速指数vの水平断面の領域について説明する。図3は、実施形態に係る各水平断面の流速指数監視領域を示す図である。情報処理装置10は、水平断面の各領域の流速指数vを算出し、流速指数vを表示した流速指数分布を生成する。ここで、水平断面とは、高炉20が設置される設置面と水平な任意の断面であって、炉内ガス50が流れることができる空間を炉頂部方向から概念的に図示したものである。図3の例で示すように、高炉20の水平断面は、8つの炉壁領域と1つの炉芯領域に分割される。ここで、分割される領域の形状、数、面積は特に限定されない。例えば、高炉20の水平断面は、炉壁領域と炉芯領域との間にさらに中間領域を設定するように分割されてもよい。また、図3の例の斜線で示すように、炉壁領域は360°の角度を8等分した45°ごとに分割されているが、さらに細かく分割されてもよい。
【0060】
(2-2-2.正常状態における算出処理)
続いて、高炉20の正常状態における算出処理について説明する。以下では、炉内ガス50の平均流速指数v(ave)を用いる算出処理1-1、炉芯流速指数v(i)の推定倍率Eを用いる算出処理1-2について説明する。
【0061】
(2-2-2-1.算出処理1-1)
まず、高炉20の正常状態において、炉内ガス50の平均流速指数v(ave)を用いる算出処理1-1について説明する。算出処理1-1は、ゾンデ60による炉壁から炉芯までの複数の温度データTおよび圧力データPが取得できる場合に実行される。算出処理1-1は、計測データから炉芯流速指数v(i)を直接的に算出する手法(a)と、平均流速指数v(ave)から炉芯流速指数v(i)を間接的に算出する手法(b)とがある。直接的に算出する手法(a)では、情報処理装置10は、計算式v(i)=(2×ΔP/ρ0.5にしたがって炉芯流速指数v(i)を算出する。ここで、差圧PaをΔP、使用状態のガス密度kg/mをρ(炉芯の温度データおよび圧力データで補正)とする。また、間接的に算出する手法(b)では、以下で説明する使用状態での炉壁流速指数v(o)と、使用状態での平均流速指数v(ave)とを算出し、これらにより炉芯流速指数v(i)を算出し、算出結果から正常状態の流速指数分布を生成する。
【0062】
第1に、情報処理装置10は、使用状態での円周方向の各炉壁角度位置の炉壁流速指数v(o)を算出する。このとき、情報処理装置10は、計算式v(o)=(2×ΔP/ρ0.5にしたがって炉壁流速指数v(o)を算出する。ここで、差圧PaをΔP、使用状態のガス密度kg/mをρ(各炉壁角度位置の温度データおよび圧力データで補正)とする。
【0063】
第2に、情報処理装置10は、使用状態での平均流速指数v(ave)から炉芯流速指数v(i)を算出する。このとき、情報処理装置10は、計算式v(ave)=[2×ΔP(ave)/{ρ×(T/T(ave))×(P(ave)/P)}]0.5にしたがって平均流速指数v(ave)を算出する。ここで、水平断面の平均差圧PaをΔP(ave)、標準状態(15℃、1気圧)のガス密度kg/mをρ、標準状態のガス温度KをT、水平断面での平均ガス温度KをT(ave)、水平断面での平均ガス圧力PaをP(ave)、標準状態のガス圧力Pa(絶対圧)をPとする。
【0064】
第3に、情報処理装置10は、全ての炉壁流速指数v(o)および平均流速指数v(ave)を標準状態に換算する。ここで、情報処理装置10は、炉壁流速指数v(o)について、計算式v(o)=v(o)×(T/T)×(P/P)にしたがって標準状態に換算する。ここで、標準状態(15℃、1気圧)のガス温度KをT、各炉壁の使用状態のガス温度KをT、各炉壁の使用状態のガス圧力Pa(絶対圧)をP、標準状態のガス圧力Pa(絶対圧)をPとする。また、情報処理装置10は、平均流速指数v(ave)について、計算式v(ave)=v(ave)×(T/T)×(P/P)にしたがって標準状態に換算する。ここで、標準状態(15℃、1気圧)のガス温度KをT、使用状態の平均ガス温度KをT、使用状態の平均ガス圧力Pa(絶対圧)をP、標準状態のガス圧力Pa(絶対圧)をPとする。
【0065】
第4に、情報処理装置10は、計算式v(i)=v(ave)×N-Σv(o)にしたがって標準状態の炉芯流速指数v(i)を算出する。ここで、水平断面の領域数(図3の例では、9領域)をNとする。すなわち、情報処理装置10は、水平断面の全領域の流速指数の総和であるv(ave)×Nから、当該水平断面の炉壁領域の流速指数の総和であるΣv(o)を減算することによって、炉芯流速指数v(i)を算出する。
【0066】
第5に、情報処理装置10は、計算式v(i)=v(i)×(T/T)×(P/P)にしたがって使用状態の炉芯流速指数v(i)を算出する。ここで、使用状態の炉芯ガス温度KをT、標準状態(15℃、1気圧)のガス温度KをT、標準状態のガス圧力Pa(絶対圧)をPn、使用状態の炉芯ガス圧力Pa(絶対圧)をPとする。
【0067】
なお、簡易的な手法として、情報処理装置10は、水平断面での平均ガス温度T(ave)の数値として、炉壁温度Kの平均値を代用することもできる。また、情報処理装置10は、水平断面での平均ガス圧力P(ave)の数値として、炉壁圧力Pa(絶対圧)の平均値を代用することもできる。
【0068】
(2-2-2-2.算出処理1-2)
次に、高炉20の正常状態において、炉内ガス50の炉芯流速指数v(i)の推定倍率Eを用いる算出処理1-2について説明する。算出処理1-2は、ゾンデ60による炉壁から炉芯までの複数の温度データTおよび圧力データPが取得できない場合、すなわち炉内ガス50の平均流速指数v(ave)が算出されない場合に実行される。この場合、情報処理装置10は、操業実績データに基づいて、タイムスタンプごとの各計測時間の炉内ガス50の温度データT、圧力データP、送風流量データ等の計測データを取得し、また圧力データPとガス流れ下流側の対象となる次の水平断面の圧力データPから差圧データΔPを算出し、以下で説明する使用状態での炉壁流速指数v(o)と、標準状態での炉壁流速指数v(o)と、標準状態での炉芯流速指数v(i)と使用状態での炉芯流速指数v(i)とを算出し、使用状態での算出結果である炉壁流速指数v(o)と使用状態での炉芯流速指数v(i)とから正常状態の流速指数分布を生成する。また、情報処理装置10は、標準状態での流速指数の合計値である合計流速指数vnt、標準状態での単位ガス流量当りの流速指数vngを算出する。
【0069】
第1に、情報処理装置10は、使用状態での炉壁流速指数v(o)を算出する。このとき、情報処理装置10は、計算式v(o)=(2×ΔP/ρ0.5にしたがって炉壁流速指数v(o)を算出する。ここで、差圧PaをΔP、使用状態のガス密度kg/mをρ(各炉壁角度位置の温度データおよび圧力データで補正)とする。
【0070】
第2に、情報処理装置10は、標準状態での炉壁流速指数v(o)を算出する。このとき、情報処理装置10は、計算式v(o)=v(o)×(T/T)×(P/P)にしたがって炉壁流速指数v(o)を算出する。ここで、標準状態(15℃、1気圧)のガス温度KをT、使用状態の各炉壁角度位置のガス温度KをT、使用状態の各炉壁角度位置のガス圧力Pa(絶対圧)をP、標準状態のガス圧力Pa(絶対圧)をPとする。
【0071】
第3に、情報処理装置10は、推定倍率Eを用いて標準状態での炉芯流速指数v(i)を算出する。このとき、情報処理装置10は、標準状態での炉壁流速指数v(o)の水平断面における円周方向の平均値v(ave)(o)を算出し、計算式v(i)=v(ave)(o)×Eにしたがって炉芯流速指数v(i)を算出する。
【0072】
ここで、図4図5を用いて、炉芯流速指数v(i)の推定倍率Eの算出処理について説明する。図4および図5は、実施形態に係る炉芯流速指数v(i)の推定倍率の算出処理を示す図である。情報処理装置10は、流速指数計測時の水平断面からの原料の高さHや、実際の流れの方向に基づく流路の長さLを用いて推定倍率Eを算出する。図4に示すように、原料の高さHは、炉壁の高さ:H2、炉芯の高さ:H1となる。また、通気性の観点での原料の高さLは、炉壁の高さ:L2=H2/cosθ、炉芯の高さ:L1=H1となる。炉芯流速指数v(i)の推定倍率Eは、炉壁:E=1(正規化)、炉芯:E=L2/L1=H2/(H1×cosθ)となる。ここで、炉芯におけるHをH1、炉芯におけるLをL1、炉壁におけるHをH2、炉壁におけるLをL2、水平断面の垂線と炉壁とがなす角度をθとする。
【0073】
図5に示すように、情報処理装置10は、炉壁における推定倍率Eを1と正規化したときの各領域の推定倍率Eを算出する。図5の例では、情報処理装置10は、炉壁領域:E=1、中間領域:E=1、炉芯領域:E=1.08と算出する。すなわち、図4に示す水平断面では、炉芯流速指数v(i)は、炉壁流速指数v(o)の1.08倍の流速指数vであることを示している。上記のように、情報処理装置10は、水平断面ごとに算出した推定倍率Eを用いて、炉芯流速指数v(i)を算出する。
【0074】
第4に、情報処理装置10は、使用状態での炉芯流速指数v(i)を算出する。このとき、情報処理装置10は、計算式v(i)=v(i)×(T/T)×(P/P)にしたがって炉芯流速指数v(i)を算出する。このとき、炉芯の使用状態の温度Tは当該水平断面炉壁部の平均温度、圧力Pは同平均圧力で代用することができる。
【0075】
第5に、情報処理装置10は、標準状態での合計流速指数vntを算出する。このとき、情報処理装置10は、計算式vnt=Σv(o)+v(i)にしたがって合計流速指数vntを算出する。ここで、標準状態での水平断面の炉壁領域の流速指数の総和をΣv(o)とする。
【0076】
第6に、情報処理装置10は、タイムスタンプごとの標準状態での単位ガス流量当りの流速指数vngを算出する。このとき、情報処理装置10は、計算式vng=(Σvnt/ΣQ)にしたがって合算および平均化し、単位ガス流量当りの流速指数vngを算出する。ここで、標準状態での各計測時間の合計流速指数vntの総和をΣvnt、標準状態での各計測時間のガス流量の総和をΣQとする。
【0077】
さらに、情報処理装置10は、所定の上限閾値および所定の下限閾値のうち少なくとも1つを用いて、計測データから高炉20が正常状態であることを判定することができる。また、情報処理装置10は、計測データの変動が大きい場合には、計測データの統計処理や、当該統計処理後に機械学習モデル14cによるマハラノビス距離を用いた閾値の算出処理を実行し、当該閾値を用いて高炉20が正常状態であることを判定することもできる。
【0078】
(2-2-3.操業状態における算出処理)
続いて、高炉20の操業状態(使用状態)における算出処理について説明する。以下では、炉内ガス50の平均流速指数v(ave)を用いる算出処理2-1、炉内ガス50の平均流速指数v(ave)を用いずに、正常状態における算出結果を用いる算出処理2-2について説明する。
【0079】
(2-2-3-1.算出処理2-1)
まず、高炉20の操業状態において、炉内ガス50の平均流速指数v(ave)を用いる算出処理2-1について説明する。算出処理2-1は、算出処理1-1と同様に、使用するデータは操業状態のものである。情報処理装置10は、上記の算出処理が終了した後、所定の上限閾値および所定の下限閾値のうち少なくとも1つを用いて、計測データから高炉20が正常状態であることを判定することができる。また、情報処理装置10は、計測データの変動が大きい場合には、計測データの統計処理や、当該統計処理後に機械学習モデル14cによるマハラノビス距離を用いた閾値の算出処理を実行し、当該閾値を用いて高炉20が正常状態であることを判定することもできる。
【0080】
(2-2-3-2.算出処理2-2)
次に、高炉20の操業状態において、正常状態における算出結果を用いる算出処理2-2について説明する。算出処理2-2は、炉内ガス50の平均流速指数v(ave)が算出されない場合に実行される。すなわち、情報処理装置10は、正常状態と同様に、タイムスタンプごとの各計測時間の炉内ガス50の差圧データΔP、温度データT、圧力データP、送風流量データ等の計測データを取得し、以下で説明する、使用状態での各計測時間に想定される合計流速指数vatと、使用状態での炉壁流速指数v(o)と、使用状態での炉芯流速指数v(i)とを算出し、基準となる正常状態の流速指数vと比較し、異常に関与するデータ項目を抽出し、異常の要因の特定に使用する。
【0081】
第1に、情報処理装置10は、使用状態での各計測時間に想定される合計流速指数vatを算出する。このとき、情報処理装置10は、計算式vat=Q×vngにしたがって合計流速指数vatを算出する。ここで、標準状態での各計測時間のガス流量をQ、標準状態での単位ガス流量当りの流速指数vng(算出処理1-2で算出)とする。
【0082】
第2に、情報処理装置10は、使用状態での炉壁流速指数v(o)を算出する。このとき、情報処理装置10は、計算式v(o)=(2×ΔP/ρ0.5にしたがって炉壁流速指数v(o)を算出する。ここで、差圧PaをΔP、使用状態のガス密度kg/mをρとする。また、情報処理装置10は、計算式ρ=ρ×(T/T)×(P/P)にしたがってガス密度ρを算出する。ここで、標準状態のガス密度kg/mをρ、標準状態(15℃、1気圧)のガス温度KをT、使用状態のガス温度KをT、使用状態のガス圧力Pa(絶対圧)をP、標準状態のガス圧力Pa(絶対圧)をPとする。
【0083】
第3に、情報処理装置10は、標準状態での炉壁流速指数v(o)を算出する。このとき、情報処理装置10は、計算式v(o)=v(o)×(T/T)×(P/P)にしたがって炉壁流速指数v(o)を算出する。
【0084】
第4に、情報処理装置10は、標準状態での炉芯流速指数v(i)を算出する。このとき、情報処理装置10は、計算式v(i)=vat-Σv(o)にしたがって炉芯流速指数v(i)を算出する。すなわち、情報処理装置10は、使用状態での各計測時間に想定される合計流速指数vatから、当該水平断面の炉壁領域の流速指数の総和であるΣv(o)を減算することによって、炉芯流速指数v(i)を算出する。
【0085】
第5に、情報処理装置10は、使用状態での炉芯流速指数v(i)を算出する。このとき、情報処理装置10は、計算式v(i)=v(i)×(T/T)×(P/P)にしたがって炉芯流速指数v(i)を算出する。ここで、使用状態の炉芯ガス温度Kである温度Tは当該水平断面炉壁部の平均温度、標準状態(15℃、1気圧)のガス温度KをT、標準状態のガス圧力Pa(絶対圧)をP、使用状態の炉芯ガス圧力Pa(絶対圧)であるPは当該水平断面炉壁部の平均圧力とする。
【0086】
(2-3.情報処理装置10の検出処理)
図6図7を用いて、図1に示した情報処理装置10の検出処理について説明する。図6および図7は、実施形態に係る異常検出処理を示す図である。以下では、流速指数vを用いた異常検出処理について、差圧ΔP等を用いた異常検出処理と比較しつつ説明する。
【0087】
(2-3-1.表による比較)
図6を用いて、情報処理装置10が流速指数vを用いて検出する高炉20の異常について、図6の表を用いて説明する。図6の例では、縦の項目として、「差圧による検出[kg/cmG]」、温度「T[℃]」、圧力「P[kg/cmG]」、「v:流速指数」、「流速指数による検出」が示され、横の項目として、「正常状態1」、「吹き抜け」、「スリップ」、「正常状態2」が示される。以下では、従来技術である差圧ΔPを用いた検出処理である「差圧による検出」と、情報処理装置10の検出処理である「流速指数による検出」とを比較しつつ説明する。
【0088】
図6(1)において、「差圧による検出」では、「正常状態1」の差圧が「0.065」、「吹き抜け」の差圧が「0.065」であり、異常の1つである吹き抜けの状態を検出できない。
【0089】
図6(2)において、「差圧による検出」では、「スリップ」の差圧が「0.095」であり、異常の1つであるスリップの状態を過剰に検出している。
【0090】
図6(3)において、「流速指数による検出」では、「正常状態1」の流速指数vを「1.000」としたとき、「吹き抜け」の流速指数vが「1.266」であり、吹き抜けの状態が生じたときに正常状態に対して26%増加した流速指数vを検出している。
【0091】
図6(4)において、「流速指数による検出」では、「正常状態1」の流速指数vを「1.000」としたとき、「スリップ」の流速指数vが「1.155」であり、スリップの状態が生じたときに、吹き抜けの状態以下の適正値である流速指数vを検出している。
【0092】
(2-3-2.グラフによる比較)
図7を用いて、情報処理装置10が流速指数vを用いて検出する高炉20の異常について、図7のグラフを用いて説明する。図7の例では、縦の項目として、「v:流速指数」または「ΔP」が示され、横の項目として、「正常状態1」、「吹き抜け」、「スリップ」、「正常状態2」が示される。以下では、情報処理装置10の検出処理である流速指数による検出(図7(1)参照)と、従来技術である差圧ΔPを用いた検出処理(図7(2)参照)を比較しつつ説明する。
【0093】
図7(1)は、流速指数による検出を示したグラフである。図7(1)では、「正常状態1」の流速指数vを「1.000」としたとき、「吹き抜け」の流速指数vが「1.266」であり、異常の1つである吹き抜けの状態が生じたときに正常状態に対して適正に増加した流速指数vを検出している。また、図7(1)では、「正常状態1」の流速指数vを「1.000」としたとき、「スリップ」の流速指数vが「1.155」であり、異常の1つであるスリップの状態が生じたときに、吹き抜けの状態以下の適正値である流速指数vを検出している。
【0094】
図7(2)は、従来技術である差圧ΔPを用いた検出を示したグラフである。図7(2)では、「正常状態1」の差圧と「吹き抜け」の差圧とが差異がなく、吹き抜けの状態を検出できない。また、図7(2)では、スリップの状態を過剰に検出している。
【0095】
〔3.情報処理システム100の処理の流れ〕
図8図13を用いて、実施形態に係る情報処理システム100の処理の流れについて説明する。図8図13は、実施形態に係る算出処理の流れを示すフローチャートである。以下では、上述した算出処理1-1(a)および1-1(b)の流れ、算出処理1-2の流れ、算出処理2-1(a)および2-1(b)の流れ、算出処理2-2の流れの順に説明する。
【0096】
(3-1.算出処理1-1の流れ)
図8図9を用いて、実施形態に係る正常状態における流速指数vの算出処理1-1の流れについて説明する。以下では、上述した算出処理1-1(a)、1-1(b)の流れの順に説明する。
【0097】
(3-1-1.算出処理1-1(a)の流れ)
図8を用いて、実施形態に係る正常状態における流速指数vの算出処理1-1(a)の流れについて説明する。なお、下記のステップS101(a)~S104(a)の処理は、異なる順序で実行することもできる。また、下記のステップS101(a)~S104(a)の処理のうち、省略される処理があってもよい。
【0098】
第1に、情報処理装置10の取得部15aは、正常状態の炉内ガス50の温度データTおよび圧力データPを取得する(ステップS101(a))。
【0099】
第2に、情報処理装置10の算出部15bは、取得した圧力データPから正常状態の炉内ガス50の差圧データΔPを算出する(ステップS102(a))。
【0100】
第3に、情報処理装置10の算出部15bは、使用状態における炉壁流速指数v(o)を算出する(ステップS103(a))。
【0101】
第4に、情報処理装置10の算出部15bは、使用状態における炉芯流速指数v(i)を算出し(ステップS104(a))、処理を終了する。
【0102】
(3-1-2.算出処理1-1(b)の流れ)
図9を用いて、実施形態に係る正常状態における流速指数vの算出処理1-1(b)の流れについて説明する。なお、下記のステップS101(b)~S107(b)の処理は、異なる順序で実行することもできる。また、下記のステップS101(b)~S107(b)の処理のうち、省略される処理があってもよい。
【0103】
第1に、情報処理装置10の取得部15aは、正常状態の炉内ガス50の温度データTおよび圧力データPを取得する(ステップS101(b))。
【0104】
第2に、情報処理装置10の算出部15bは、取得した圧力データPから正常状態の炉内ガス50の差圧データΔPを算出する(ステップS102(b))。
【0105】
第3に、情報処理装置10の算出部15bは、使用状態における炉壁流速指数v(o)を算出する(ステップS103(b))。
【0106】
第4に、情報処理装置10の算出部15bは、使用状態における平均流速指数v(ave)を算出する(ステップS104(b))。
【0107】
第5に、情報処理装置10の算出部15bは、標準状態における炉壁流速指数v(o)および平均流速指数v(ave)を算出する(ステップS105(b))。
【0108】
第6に、情報処理装置10の算出部15bは、標準状態における炉芯流速指数v(i)を算出する(ステップS106(b))。
【0109】
第7に、情報処理装置10の算出部15bは、使用状態における炉芯流速指数v(i)を算出し(ステップS107(b))、処理を終了する。
【0110】
(3-2.算出処理1-2の流れ)
図10を用いて、実施形態に係る正常状態における流速指数vの算出処理1-2の流れについて説明する。なお、下記のステップS111~S118の処理は、異なる順序で実行することもできる。また、下記のステップS111~S118の処理のうち、省略される処理があってもよい。
【0111】
第1に、情報処理装置10の取得部15aは、正常状態の炉内ガス50の温度データT、圧力データP、送風流量データを取得する(ステップS111)。
【0112】
第2に、情報処理装置10の算出部15bは、正常状態の炉内ガス50の差圧データΔPを算出する(ステップS112)。
【0113】
第3に、情報処理装置10の算出部15bは、使用状態における炉壁流速指数v(o)を算出する(ステップS113)。
【0114】
第4に、情報処理装置10の算出部15bは、標準状態における炉壁流速指数v(o)を算出する(ステップS114)。
【0115】
第5に、情報処理装置10の算出部15bは、標準状態における炉芯流速指数v(i)を算出する(ステップS115)。
【0116】
第6に、情報処理装置10の算出部15bは、使用状態における炉芯流速指数v(i)を算出する(ステップS116)。
【0117】
第7に、情報処理装置10の算出部15bは、標準状態における合計流速指数vntを算出する(ステップS117)。
【0118】
第8に、情報処理装置10の算出部15bは、標準状態における単位ガス流量当りの流速指数vngを算出し(ステップS118)、処理を終了する。
【0119】
(3-3.算出処理2-1の流れ)
図11図12を用いて、実施形態に係る正常状態における流速指数vの算出処理2-1の流れについて説明する。以下では、上述した算出処理2-1(a)、2-1(b)の流れの順に説明する。
【0120】
(3-3-1.算出処理2-1(a)の流れ)
図11を用いて、実施形態に係る操業状態における流速指数vの算出処理2-1(a)の流れについて説明する。なお、下記のステップS201(a)~S206(a)の処理は、異なる順序で実行することもできる。また、下記のステップS201(a)~S206(a)の処理のうち、省略される処理があってもよい。
【0121】
第1に、情報処理装置10の取得部15aは、操業状態の炉内ガス50の温度データTおよび圧力データPを取得する(ステップS201(a))。
【0122】
第2に、情報処理装置10の算出部15bは、操業状態の炉内ガス50の差圧データΔPを算出する(ステップS202(a))。
【0123】
第3に、情報処理装置10の算出部15bは、使用状態における炉壁流速指数v(o)を算出する(ステップS203(a))。
【0124】
第4に、情報処理装置10の算出部15bは、使用状態における炉芯流速指数v(i)を算出する(ステップS204(a))。
【0125】
第5に、情報処理装置10の検出部15dは、異常なデータ項目の有無を検出する(ステップS205(a))。ここで、検出部15dは、異常なデータ項目がある場合(ステップS205(a):Yes)、ステップS206(a)の処理に移行する。一方、検出部15dは、異常なデータ項目がない場合(ステップS205(a):No)、処理を終了する。
【0126】
第6に、情報処理装置10の検出部15dは、高炉20の異常の要因を特定し(ステップS206(a))、処理を終了する。
【0127】
(3-3-2.算出処理2-1(b)の流れ)
図12を用いて、実施形態に係る操業状態における流速指数vの算出処理2-1(b)の流れについて説明する。なお、下記のステップS201(b)~S207(b)の処理は、異なる順序で実行することもできる。また、下記のステップS201(b)~S207(b)の処理のうち、省略される処理があってもよい。
【0128】
第1に、情報処理装置10の取得部15aは、操業状態の炉内ガス50の温度データTおよび圧力データPを取得する(ステップS201(b))。
【0129】
第2に、情報処理装置10の算出部15bは、取得した圧力データPから操業状態の炉内ガス50の差圧データΔPを算出する(ステップS202(b))。
【0130】
第3に、情報処理装置10の算出部15bは、使用状態における炉壁流速指数v(o)を算出する(ステップS203(b))。
【0131】
第4に、情報処理装置10の算出部15bは、使用状態における平均流速指数v(ave)を算出する(ステップS204(b))。
【0132】
第5に、情報処理装置10の算出部15bは、標準状態における炉壁流速指数v(o)および平均流速指数v(ave)を算出する(ステップS205(b))。
【0133】
第6に、情報処理装置10の算出部15bは、標準状態における炉芯流速指数v(i)を算出する(ステップS206(b))。
【0134】
第7に、情報処理装置10の算出部15bは、使用状態における炉芯流速指数v(i)を算出する(ステップS207(b))。
【0135】
第8に、情報処理装置10の検出部15dは、異常なデータ項目の有無を検出する(ステップS208(b))。ここで、検出部15dは、異常なデータ項目がある場合(ステップS208(b):Yes)、ステップS209(b)の処理に移行する。一方、検出部15dは、異常なデータ項目がない場合(ステップS208(b):No)、処理を終了する。
【0136】
第9に、情報処理装置10の検出部15dは、高炉20の異常の要因を特定し(ステップS209(b))、処理を終了する。
【0137】
(3-4.算出処理2-2の流れ)
図13を用いて、実施形態に係る操業状態における流速指数vの算出処理2-2の流れについて説明する。なお、下記のステップS211~S219の処理は、異なる順序で実行することもできる。また、下記のステップS211~S219の処理のうち、省略される処理があってもよい。
【0138】
第1に、情報処理装置10の取得部15aは、操業状態の炉内ガス50の温度データT、圧力データP、送風流量データを取得する(ステップS211)。
【0139】
第2に、情報処理装置10の取得部15aは、操業状態の炉内ガス50の差圧データΔPを算出する(ステップS212)。
【0140】
第3に、情報処理装置10の算出部15bは、標準状態における合計流速指数vntを算出する(ステップS213)。
【0141】
第4に、情報処理装置10の算出部15bは、使用状態における炉壁流速指数v(o)を算出する(ステップS214)。
【0142】
第5に、情報処理装置10の算出部15bは、標準状態における炉壁流速指数v(o)を算出する(ステップS215)。
【0143】
第6に、情報処理装置10の算出部15bは、標準状態における炉芯流速指数v(i)を算出する(ステップS216)。
【0144】
第7に、情報処理装置10の算出部15bは、使用状態における炉芯流速指数v(i)を算出する(ステップS217)。
【0145】
第8に、情報処理装置10の検出部15dは、異常なデータ項目の有無を検出する(ステップS218)。ここで、検出部15dは、異常なデータ項目がある場合(ステップS218:Yes)、ステップS219の処理に移行する。一方、検出部15dは、異常なデータ項目がない場合(ステップS219:No)、処理を終了する。
【0146】
第9に、情報処理装置10の検出部15dは、高炉20の異常の要因を特定し(ステップS219)、処理を終了する。
【0147】
〔4.実施形態の効果〕
最後に、実施形態の効果について説明する。以下では、実施形態に係る処理に対応する効果1~8について説明する。
【0148】
(4-1.効果1)
第1に、上述した実施形態に係る処理では、高炉20の操業で発生する炉内ガス50から計測される計測データを取得し、計測データを用いて、高炉の垂直方向の複数の位置それぞれの水平断面における炉内ガス50の流速指数vを算出し、高炉20内の複数の位置それぞれに流速指数vを対応付けた炉内ガス50の流速指数分布を生成する。このため、実施形態に係る処理では、正確に、簡素に、かつ実践的に高炉20の異常を検出することができる。
【0149】
(4-2.効果2)
第2に、上述した実施形態に係る処理では、垂直方向の複数の位置それぞれの水平断面の流速指数vとして、高炉20の所定位置の水平断面内の複数の領域それぞれにおける炉内ガス50の流速指数vを算出し、水平断面内の複数の領域それぞれに流速指数vを対応付けた流速指数分布を生成する。このため、実施形態に係る処理では、高炉20の水平断面における流速指数分布を生成することによって、正確に、簡素に、かつ実践的に高炉20の異常を検出することができる。
【0150】
(4-3.効果3)
第3に、上述した実施形態に係る処理では、計測データとして、高炉20における炉壁側の炉内ガス50の温度データTと圧力データPとを取得し、圧力データPを用いて炉内ガス50の圧力の差である差圧ΔPを算出し、差圧ΔP、温度データTおよび圧力データPとを用いて水平断面の円周方向における複数の炉壁流速指数v(o)を算出し、複数の炉壁流速指数v(o)を用いて高炉20における炉芯流速指数v(i)を算出し、複数の炉壁流速指数v(o)と炉芯流速指数v(i)とを用いて流速指数分布を生成する。このため、実施形態に係る処理では、高炉20の水平断面における炉壁流速指数v(o)と炉芯流速指数v(i)とを用いた流速指数分布を生成することによって、正確に、簡素に、かつ実践的に高炉20の異常を検出することができる。
【0151】
(4-4.効果4)
第4に、上述した実施形態に係る処理では、複数の炉壁流速指数v(o)の平均値v(ave)(o)に対して水平断面から炉内の原料までの高さHに基づく所定の倍率Eを乗算することによって、炉芯流速指数v(i)を算出する。このため、実施形態に係る処理では、高炉20の水平断面における原料の高さHに基づく推定倍率Eを算出することによって、正確に、簡素に、かつ実践的に高炉20の異常を検出することができる。
【0152】
(4-5.効果5)
第5に、上述した実施形態に係る処理では、水平断面の計測データの複数の温度データと複数の圧力データから直接的に炉芯流速指数v(i)を算出する。または平均流速指数を算出して間接的に炉芯流速指数v(i)を算出する。、このため、実施形態に係る処理では、正確に、簡素に、かつ実践的に高炉20の異常を検出することができる。
【0153】
(4-6.効果6)
第6に、上述した実施形態に係る処理では、複数の水平断面における流速指数分布を生成することによって、高炉20の垂直方向における流速指数分布をさらに生成する。このため、実施形態に係る処理では、高炉20の水平断面における立体的な流速指数分布を生成することによって、正確に、簡素に、かつ実践的に高炉20の異常を検出することができる。
【0154】
(4-7.効果7)
第7に、上述した実施形態に係る処理では、高炉20の正常状態における流速指数分布が示す流速指数vを用いて所定の閾値を設定し、高炉20の操業時の流速指数vが当該閾値を超過した場合には、高炉20の異常を検出する。このため、実施形態に係る処理では、高炉20の正常状態と異常状態とを判定することによって、正確に、簡素に、かつ実践的に高炉20の異常を検出することができる。
【0155】
(4-8.効果8)
第8に、上述した実施形態に係る処理では、計測データが入力されると所定の閾値を出力するように学習した機械学習モデル14cを用いて、高炉20の異常を検出する。このため、実施形態に係る処理では、高炉20の正常状態と異常状態とを機械学習モデル14cを用いて判定することによって、正確に、簡素に、かつ実践的に高炉20の異常を検出することができる。
【0156】
〔システム〕
上記文書中や図面中で示した処理手順、制御手順、具体的名称、各種のデータやパラメータを含む情報については、特記する場合を除いて任意に変更することができる。
【0157】
また、図示した各装置の各構成要素は機能概念的なものであり、必ずしも物理的に図示の如く構成されていることを要しない。すなわち、各装置の分散や統合の具体的形態は図示のものに限られない。つまり、その全部または一部を、各種の負荷や使用状況などに応じて、任意の単位で機能的または物理的に分散・統合して構成することができる。
【0158】
さらに、各装置にて行なわれる各処理機能は、その全部または任意の一部が、CPUおよび当該CPUにて解析実行されるプログラムにて実現され、あるいは、ワイヤードロジックによるハードウェアとして実現され得る。
【0159】
〔ハードウェア〕
次に、情報処理装置10のハードウェア構成例を説明する。図14は、ハードウェア構成例を説明する図である。図14に示すように、情報処理装置10は、通信装置10a、HDD(Hard Disk Drive)10b、メモリ10c、プロセッサ10dを有する。また、図12に示した各部は、バス等で相互に接続される。
【0160】
通信装置10aは、ネットワークインタフェースカードなどであり、他のサーバとの通信を行う。HDD10bは、図2に示した機能を動作させるプログラムやDBを記憶する。
【0161】
プロセッサ10dは、図2に示した各処理部と同様の処理を実行するプログラムをHDD10b等から読み出してメモリ10cに展開することで、図2等で説明した各機能を実行するプロセスを動作させる。例えば、このプロセスは、情報処理装置10が有する各処理部と同様の機能を実行する。具体的には、プロセッサ10dは、取得部15a、算出部15b、生成部15c、検出部15d等と同様の機能を有するプログラムをHDD10b等から読み出す。そして、プロセッサ10dは、取得部15a、算出部15b、生成部15c、検出部15d等と同様の処理を実行するプロセスを実行する。
【0162】
このように、情報処理装置10は、プログラムを読み出して実行することで各種処理方法を実行する装置として動作する。また、情報処理装置10は、媒体読取装置によって記録媒体から上記プログラムを読み出し、読み出された上記プログラムを実行することで上記した実施形態と同様の機能を実現することもできる。なお、この他の実施形態でいうプログラムは、情報処理装置10によって実行されることに限定されるものではない。例えば、他のコンピュータまたはサーバがプログラムを実行する場合や、これらが協働してプログラムを実行するような場合にも、本発明を同様に適用することができる。
【0163】
このプログラムは、インターネットなどのネットワークを介して配布することができる。また、このプログラムは、ハードディスク、フレキシブルディスク(FD)、CD-ROM、MO(Magneto-Optical disk)、DVD(Digital Versatile Disc)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録され、コンピュータによって記録媒体から読み出されることによって実行することができる。
【符号の説明】
【0164】
10 情報処理装置
11 入力部
12 出力部
13 通信部
14 記憶部
14a 計測データ記憶部
14b 流速指数分布記憶部
14c 機械学習モデル
15 制御部
15a 取得部
15b 算出部
15c 生成部
15d 検出部
20 高炉
30 圧力センサ
40 温度センサ
50 炉内ガス
60 ゾンデ
100 情報処理システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14