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特開2023-168066施工管理システム、施工管理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168066
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】施工管理システム、施工管理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   E02D 3/02 20060101AFI20231116BHJP
   G01C 15/00 20060101ALN20231116BHJP
【FI】
E02D3/02
G01C15/00 103E
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079696
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003333
【氏名又は名称】ボッシュ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100161506
【弁理士】
【氏名又は名称】川渕 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100161207
【弁理士】
【氏名又は名称】西澤 和純
(72)【発明者】
【氏名】平田 弘達
(72)【発明者】
【氏名】宮下 裕貴
(72)【発明者】
【氏名】山本 真哉
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 正憲
(72)【発明者】
【氏名】中里 研一
【テーマコード(参考)】
2D043
【Fターム(参考)】
2D043CA00
2D043CB00
(57)【要約】
【課題】施工現場において敷均しの作業を行う作業対象領域を適切に設定できるようにする。
【解決手段】配置された置き土の敷均しがブルドーザーにより行われる施工対象領域のマップ上にて測定された高さの分布が示される高さマップを生成する高さマップ生成部と、生成された高さマップに基づいて特定した前記施工対象領域における置き土の配置状態と敷均しの進捗状況とに基づいて、前記ブルドーザーが敷均しの作業の対象とする作業対象領域を設定する作業対象領域設定部とを備えて施工管理システムを構成する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配置された置き土の敷均しがブルドーザーにより行われる施工対象領域のマップ上にて測定された高さの分布が示される高さマップを生成する高さマップ生成部と、
生成された高さマップに基づいて特定した前記施工対象領域における置き土の配置状態と敷均しの進捗状況とに基づいて、前記ブルドーザーが敷均しの作業の対象とする作業対象領域を設定する作業対象領域設定部と
を備える施工管理システム。
【請求項2】
前記作業対象領域設定部は、前記置き土の配置状態として置き土間距離を特定し、特定した置き土間距離に基づいて施工対象領域にて配置された置き土のグループ分けを行い、同じグループに含まれる置き土を包含するように形成した領域のうちから作業対象領域を選択する
請求項1に記載の施工管理システム。
【請求項3】
前記作業対象領域設定部は、1の作業対象領域について、置き土と、置き土と隣接して敷均しが完了している一定範囲の完了領域と、前記1の作業対象領域を対象とする敷均しによって完了領域に変換されると推定した完了予定領域とを含めるようにして形成する
請求項1または2に記載の施工管理システム。
【請求項4】
前記作業対象領域設定部は、前記ブルドーザーに敷均しを行わせた場合に、対象の置き土の敷均しを行った場合に形成されることが推定される第1完了予定領域と、当該対象の置き土と隣り合う位置に配置された置き土の敷均を行った場合に形成されることが推定される第2完了予定領域との間に敷均しが完了しない未完領域が存在せず、かつ、前記第1完了予定領域と前記第2完了予定領域との重複度合いが所定未満となる条件を満たすように、作業対象領域を設定する
請求項1または2に記載の施工管理システム。
【請求項5】
前記作業対象領域設定部は、施工対象領域において敷均し作業中の作業対象領域以外の領域を対象として作業対象領域の更新を行う
請求項1または2に記載の施工管理システム。
【請求項6】
前記作業対象領域設定部により設定された作業対象領域の情報が、前記施工対象領域にて置き土を配置する土砂運搬車両にて取得されるように送信する送信部をさらに備える
請求項1または2に記載の施工管理システム。
【請求項7】
施工管理システムにおける施工管理方法であって、
配置された置き土の敷均しがブルドーザーにより行われる施工対象領域のマップ上にて測定された高さの分布が示される高さマップを生成する高さマップ生成ステップと、
生成された高さマップに基づいて特定した前記施工対象領域における置き土の配置状態と敷均しの進捗状況とに基づいて、前記ブルドーザーが敷均しの作業の対象とする作業対象領域を設定する作業対象領域設定ステップと
を含む施工管理方法。
【請求項8】
施工管理システムにおいて備えられるコンピュータを、
配置された置き土の敷均しがブルドーザーにより行われる施工対象領域のマップ上にて測定された高さの分布が示される高さマップを生成する高さマップ生成部、
生成された高さマップに基づいて特定した前記施工対象領域における置き土の配置状態と敷均しの進捗状況とに基づいて、前記ブルドーザーが敷均しの作業の対象とする作業対象領域を設定する作業対象領域設定部
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、施工管理システム、施工管理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
建設機械に備えられたステレオカメラを用いて施工現場の画像データを取得し、取得された画像データを用いて施工現場の地形の三次元データを生成する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2019-44480号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
施工現場において、土砂運搬車両が運搬して配置した置き土をブルドーザーにより撒き出し、敷均しを行う盛土工と呼ばれる施工を行うにあたっては、盛土工を効率良く進めていくことができるように、施工現場の環境に応じて敷均しの作業を行う作業対象領域を適切に設定することが求められる。
【0005】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、施工現場において敷均しの作業を行う作業対象領域を適切に設定できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決する本発明の一態様は、配置された置き土の敷均しがブルドーザーにより行われる施工対象領域のマップ上にて測定された高さの分布が示される高さマップを生成する高さマップ生成部と、生成された高さマップに基づいて特定した前記施工対象領域における置き土の配置状態と敷均しの進捗状況とに基づいて、前記ブルドーザーが敷均しの作業の対象とする作業対象領域を設定する作業対象領域設定部とを備える施工管理システムである。
【0007】
本発明の一態様は、施工管理システムにおける施工管理方法であって、配置された置き土の敷均しがブルドーザーにより行われる施工対象領域のマップ上にて測定された高さの分布が示される高さマップを生成する高さマップ生成ステップと、生成された高さマップに基づいて特定した前記施工対象領域における置き土の配置状態と敷均しの進捗状況とに基づいて、前記ブルドーザーが敷均しの作業の対象とする作業対象領域を設定する作業対象領域設定ステップとを含む施工管理方法である。
【0008】
本発明の一態様は、施工管理システムにおいて備えられるコンピュータを、配置された置き土の敷均しがブルドーザーにより行われる施工対象領域のマップ上にて測定された高さの分布が示される高さマップを生成する高さマップ生成部、生成された高さマップに基づいて特定した前記施工対象領域における置き土の配置状態と敷均しの進捗状況とに基づいて、前記ブルドーザーが敷均しの作業の対象とする作業対象領域を設定する作業対象領域設定部として機能させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0009】
以上説明したように、本発明によれば、施工現場において敷均しの作業を行う作業対象領域を適切に設定できるようになるという効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本実施形態における施工管理システムの構成例を示す図である。
図2】本実施形態における環境マップに基づく作業対象領域の設定手法例を説明する図である。
図3】本実施形態における環境マップに基づく作業対象領域の設定手法例を説明する図である。
図4】本実施形態における環境マップに基づく作業対象領域の設定手法例を説明する図である。
図5】本実施形態における環境マップに基づく作業対象領域の設定手法例を説明する図である。
図6】本実施形態における環境マップに基づく作業対象領域の設定手法例を説明する図である。
図7】本実施形態における作業対象領域の設定手法例を説明する図である。
図8】本実施形態におけるブルドーザーの機能構成例を示す図である。
図9】本実施形態におけるブルドーザーが作業対象領域の設定に関連して実行する処理手順例を示すフローチャートである。
図10】本実施形態におけるブルドーザーが自律運転のもとで作業対象領域の敷均しに関連して実行する処理手順例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本実施形態の施工管理システムの構成例を示している。同図に示されるように、本実施形態の施工管理システムは、ブルドーザー100及び土砂運搬車両200を備える。
【0012】
ブルドーザー100は、施工現場FL(施工対象領域の一例)において、盛土工としての施工における撒き出し・敷均し(以下、「敷均し」を、撒き出しも含む工程として記載する)を行うように稼働する重機である。ブルドーザー100は、自律運転により施工現場FLにおいて移動し、敷均しを行うことが可能とされる。
盛土工は、施工現場FLを所定の高さにまで嵩上げするように盛り土を行う工程である。盛土工において、土砂運搬車両200は、施工現場FLにまで土砂を運搬し、施工現場FLにおけるしかるべき位置に、積載していたひとまとまりの土砂を配置する。ブルドーザー100は、配置されたひとまとまりの土砂を均して拡げていくことで、施工現場FLにおける地面の高さが目標の高さで平坦となるようにする。このようにブルドーザー100が土砂を均す工程が敷均しと呼ばれる。このような工程を繰り返すことにより、施工現場FLに対応する領域全体を目標高さまで嵩上げしていく。なお、盛土工において、ブルドーザー100により敷均しが完了した領域を、ローラー(転圧機)により締め固めする工程が含まれてよい。
【0013】
ブルドーザー100の自律運転を実現する技術については特に限定されないが、例えば自律運転のために周囲形状を把握する技術としてはLiDAR(Light Detection and Ranging)が採用されてよい。LiDARは、パルス状のレーザ光を周囲に照射してから反射光が受光されるまでの時間に基づいて距離を計測することにより周囲環境の形状を示す周囲環境データを生成し、自己位置を推定するようにされた技術である。
【0014】
土砂運搬車両200は、盛土工に用いられる土砂を積載して施工現場FLに入場し、施工現場FLにおいて指定された位置(置き土指定位置)に土砂を荷下ろしし、置き土EBとして配置する。
土砂運搬車両200は、人が操縦するようにされてもよいし、自律運転により動作するようにされてもよい。以降の説明においては、土砂運搬車両200が自律運転するようにされている場合を例に説明を行う。
【0015】
ブルドーザー100と土砂運搬車両200は、例えばネットワーク経由で通信可能に接続される。この際、また、ブルドーザー100と土砂運搬車両200との間での情報の授受を中継する施工管理サーバ等が設けられてもよい。
【0016】
本実施形態のブルドーザー100は、センサを用いて施工現場FLの環境センシングを行って施工現場FLの環境を示す環境マップ(高さマップの一例)を生成することができる。環境マップにおいては、ブルドーザー100が環境センシングにより検出した施工現場FLにおける地面の高さの分布が示される。なお、環境マップの生成にあたっては、例えば施工現場FLの設計内容を示した設計図データも利用されてよい。
【0017】
また、ブルドーザー100は、例えば環境マップにおいて示される高さ分布に基づいて、施工現場FLにおいて盛土工の作業が完了した完了領域と、盛土工の作業が完了していない未完領域と、置き土が配置された置き土領域とを特定することができる。このような完了領域、未完領域、及び置き土領域の分布は、敷均しに関する施工の進捗状況を示すものとなる。
完了領域は、高さが敷均しにより得られるべき目標高さに対応して定められた許容誤差範囲内となっている領域である。未完領域は、高さが許容誤差範囲よりも低くなっている領域である。置き土領域は、高さが許容誤差範囲よりも高くなっている領域である。
また、ブルドーザー100は、敷均しの作業を行っている際に、作業中の領域の地面の高さを測定し、測定した高さが許容誤差範囲であるか否かを判定することで、作業中の領域について敷均しが完了したか否かを判定することができる。
【0018】
ブルドーザー100が敷均しとしての作業を効率良く行っていくにあたっては、敷均しの進捗に応じて、未完領域において適切に敷均しの作業対象となる領域(作業対象領域)が順次設定されていくようにすることが求められる。
【0019】
図2図6を参照して、本実施形態における作業対象領域の設定手法例について説明する。
図2は、環境マップにより示される施工現場FLにおける一部領域の高さ分布を平面方向より示している。同図の環境マップは、或る施工段階にて置き土EBが配置された状態の施工現場FLをもとに生成されたものとなる。
環境マップは、作業対象領域の設定にあたり、所定サイズのグリッドGDにより区分される。以降において施工現場FLにて設定される各領域は、連続するグリッドGDの集合として形成される。また、同図では、図における上下左右のそれぞれが北、南、西、東に対応する場合を例に挙げている。
【0020】
同図の環境マップにおいては、完了領域AR11と、未完領域AR12と、置き土領域AR13との各領域が分布している。敷均しの作業は、完了領域AR11を散在させることなく、完了領域AR11としての1まとまった面積が拡大されていくように未完領域AR12を嵩上げしていくことから、作業対象となる未完領域AR12は、完了領域AR11と隣接した部分となる。このため、置き土EBは完了領域AR11と未完領域AR12との境界近傍に配置される。これに伴い、置き土領域AR13は、置き土EBは完了領域AR11と未完領域AR12との境界近傍に分布している。同図においては、置き土領域AR13に関して、2つの置き土領域AR13が東西方向において或る距離を隔てて分布した状態の例が示されている。
【0021】
図2に示されるような領域分布のもとでは、2つの置き土領域AR13の間に一定以上の広さの未完領域AR12が存在している。このような場合、2つの置き土領域AR13を敷均した結果として、置き土領域AR13の間の未完領域AR12が許容誤差範囲内の高さとなって完了領域AR11に変換されるようにする必要がある。
例えば、2つの置き土領域AR13のそれぞれについて、主に北方向に敷均しを行っていったとする。この場合、例えば図3に示されるように、2つの置き土領域AR13(図2)のそれぞれを敷均して新たに得られた完了領域AR11が北方向に延伸していくような状態となり、変換された完了領域AR11の間には、残存領域AR12aとして示すように、溝状に未完領域AR12が残る状態となる。2つの変換された完了領域AR11が1つの領域としてまとまらずに分離され、作業として効率的でない。
【0022】
そこで、図3の領域分布の場合、ブルドーザー100は、例えば図5に示すようにして、2つの置き土領域AR13のそれぞれに対応する2つの作業対象領域AR20、AR20を設定する。
1つの作業対象領域AR20は、少なくとも1つの置き土領域AR13を含む。また、1つの作業対象領域AR20は、対応の置き土領域AR13と隣接する完了領域AR11を含んでよい。置き土領域AR13と隣接する完了領域AR11は、敷均しの作業のために当該作業対象領域AR20にブルドーザー100が立ち入る領域となる。また、1つの作業対象領域AR20は、対応の置き土領域AR13の置き土を敷均ししたことで完了領域に変換されるとブルドーザー100が推定した未完領域AR12を含んでよい。
【0023】
図4において設定された2つの作業対象領域AR20、AR20は、互いに接しているが、重複しないように設定される。このような作業対象領域AR20、AR20の位置関係は、互いの作業対象領域AR20で敷均す土ができるだけ重複しないようにすることを考慮したものである。つまり、本実施形態においては、互いに隣り合う作業対象領域AR20、AR20との重複度合いを一定未満とするようにされている。なお、重複度合いが一定未満であるとの条件としては、互いに隣り合う作業対象領域AR20、AR20の重複を許容したうえで許容される面積が一定以下であることとしてもよいし、互いに隣り合う作業対象領域AR20、AR20が一定の距離以上に離間していることであってもよい。
【0024】
ブルドーザー100は、前述のように完了領域AR11に変換される未完領域AR12を推定するにあたり、環境マップにおける置き土領域AR13の面積と高さとにより置き土の量を算出する。さらにブルドーザー100は、算出した量の置き土の撒き出し、敷均しに際して、隣り合う置き土領域AR13との間に未完領域AR12が残らないように、かつ、作業対象の置き土領域AR13の置き土EBで敷均した領域と、隣り合う置き土領域AR13の置き土EBで敷均した領域との重複の度合いが一定未満となる結果が生じるように、敷均しにより嵩上げ対象とする未完領域AR12のグリッドGDを決定してよい。ブルドーザー100は、このように決定された未完領域AR12のグリッドGDの集合を、完了領域AR11に変換されると推定される未完領域AR12としてよい。このような完了領域AR11に変換されると推定される未完領域AR12の特定は、例えば置き土の配置された位置、配置された置き土の量等による置き土の配置状態に基づいて行われるものとみることができる。
【0025】
このように2つの作業対象領域AR20が設定され、ブルドーザー100は、自律運転のもとで、それぞれの作業対象領域AR20の敷均しの作業を、順次行う。この場合、ブルドーザー100は、作業対象領域AR20のそれぞれにおいて、対応の置き土領域AR13に配置された置き土EBを未完領域AR12に撒き出させるようにして敷均しを行う。具体的に、ブルドーザー100は、西側の置き土領域AR13の置き土EBについては、主に北東方向を中心に扇状に撒き出し、敷均しを行っていくようにされる。また、ブルドーザー100は、東側の置き土領域AR13の置き土EBについては、主に北西方向を中心に扇状に撒き出し、敷均ししていくようにされる。
このような敷均しは、ブルドーザー100が強化学習により行ってよい。この場合、ブルドーザー100は、敷均しの実行回数を重ねていく過程において効率的とされる制御を学習するようにされる。この場合、ブルドーザー100は、例えば時間や移動距離等を短縮して効率的に敷均しを完了できたときであるとか、設定された作業対象領域AR20内で敷均しを実施できたときなどを良い経験(報酬)として学習してよい。
この結果、図示は省略するが、2つの離間した2つの置き土領域AR13、AR13の敷均しによっては、2つの置き土領域AR13、AR13の間の未完領域AR12が埋められたうえで、2つの作業対象領域AR20、AR20ごとにおいて形成される完了領域AR11(第1完了予定領域と、第2完了予定領域の一例)が連続して1つの完了領域AR11として得られる。
【0026】
図5は、環境マップにより示される高さ分布の他の例を示している。同図においては、近接して(同図の例では隣接して)配置された2つの置き土EBのそれぞれに対応する2つの置き土領域AR13が存在している例が示されている。
このように2つの置き土領域AR13間の距離が一定以内である状態の場合、ブルドーザー100は、図6に示すように当該2つの置き土領域AR13を含む1つの作業対象領域AR20を設定する。この場合の作業対象領域AR20は、置き土領域AR13と、対応の置き土領域AR13と隣接する完了領域AR11と、敷均しにより完了領域に変換されることが推定される未完領域AR12とを含んでよい。
【0027】
この場合、ブルドーザー100は、自律運転のもとで、2つの置き土領域AR13の置き土EBが、互いに他方の置き土領域AR13にできるだけ敷かれることがないように、各置き土領域AR13の置き土EBを敷均していくようにする。具体的に、ブルドーザー100は、東側の置き土領域AR13においては、北方向から東方向にかけて撒き出し、敷均しを行っていくようにされてよい。また、ブルドーザー100は、西側の置き土領域AR13においては、北方向から西方向にかけて撒き出し、敷均しを行っていくようにされる。
この結果、図示は省略するが、図6の作業対象領域AR20において含まれる2つの置き土領域AR13と未完領域AR12とが1つの完了領域AR11に変換される。この場合の完了領域AR11は、2つの置き土領域AR13のそれぞれについて敷均しが行われた2つの領域(第1完了予定領域と、第2完了予定領域の一例)が1つの完了領域AR11となる。
【0028】
ブルドーザー100は、一例として、施工現場FLにおける置き土の配置状態に基づき、グラフ理論を用いて作業対象領域AR20を設定してよい。この点について、図7を参照して説明する。
ブルドーザー100は、施工現場FLにおいて配置された置き土のそれぞれをノードNDとして設定する。ブルドーザー100は、1つのノードNDに対して所定距離の範囲内に位置する他のノードNDとの間にエッジEDを形成する。この際、1のノードNDに対応する所定距離は、例えば対応の置き土の量等に応じて変更されてよい。
ブルドーザー100は、上記のようにノードNDとエッジEDの設定を行うと、エッジEDで連結されたひとまとまりのノードNDを包含する集合のそれぞれをクラスタCLとして設定するクラスタリング(ノードNDのグループ分け)を行う。なお、他のノードNDのいずれとも接続されない1つのノードNDについては、当該1つのノードNDにより1つのクラスタCLを設定してよい。
ブルドーザー100は、このようなクラスタリングの結果により得られたクラスタCLごとに対応して、例えば対応の置き土領域AR13、完了領域AR11、未完領域AR12を含む領域を形成し、形成した領域のうちで、例えば完了領域AR11と未完領域AR12との境界に対応する位置に存在する領域を作業対象領域AR20として設定してよい。
【0029】
本実施形態において、設定された作業対象領域AR20のうち、ブルドーザー100が作業中の作業対象領域AR20については、例えば作業が完了するまで変更されることなく固定されてよい。一方、設定された作業対象領域AR20のうち、作業中以外の作業対象領域AR20については、作業中の作業対象領域AR20の作業の進行や、土砂運搬車両200により新たに置き土EBが配置されるなどの作業対象領域AR20の環境変化に応じて、随時、再設定が行われてよい。
【0030】
図8を参照して、ブルドーザー100の機能構成例について説明する。ブルドーザー100は、通信部101、センサ部102、測位部103、車両機構部104、ブレード機構部105、制御部106、及び記憶部107を備える。
【0031】
通信部101は、無線による通信経由で土砂運搬車両200と通信を行う。
センサ部102は、ブルドーザー100が備える各種のセンサを包括して示す部位である。本実施形態のセンサ部102は、例えばLiDARによる自律運転を行う場合には、周囲環境データの生成と自己位置推定を行うためにレーザ光を照射し、反射されたレーザ光を受光するセンサを含む。また、本実施形態のセンサ部102は、施工現場FLの高さを測定するセンサも含む。なお、施工現場FLの高さを測定にあたり、LiDARにより生成される周囲環境データが用いられてもよい。
測位部103は、例えばGPS(Global Positioning System)等に対応するデバイスを備え、自己位置を測定する。測位部103による自己位置の測定結果は、例えば自律運転制御部161が自律運転の制御に用いる。
【0032】
車両機構部104は、ブルドーザー100における車両に相当する機構部である。車両機構部104が自律運転制御部161の制御により駆動されることで、ブルドーザー100は、自律運転のもとで移動することができる。
ブレード機構部105は、ブレードを動かすことのできる機構部である。ブレード機構部105が自律運転制御部161の制御により駆動されることで、ブルドーザー100は、自律運転のもとでブレードを適切に動かすことができる。
【0033】
制御部106は、ブルドーザー100における制御を行う。制御部106としての機能は、ブルドーザー100において備えられるCPU(Central Processing Unit)がプログラムを実行することにより実現される。制御部106は、自律運転制御部161、環境マップ生成部162(高さマップ生成部の一例)、作業対象領域設定部163、及び送信部164を備える。
【0034】
自律運転制御部161は、ブルドーザー100の自律運転に関する制御を実行する。自律運転制御部161は、例えばセンサ部102におけるカメラ、レーザスキャナ等のセンサの出力、測位部103の測位結果等に基づいて施工現場FLにおける自己位置を推定する。また、自律運転制御部161は、自己位置の推定結果に基づいてブルドーザー100が移動するように車両機構部104を制御する。また、自律運転制御部161は、ブルドーザー100が対象の領域範囲にて適切に敷均しを行うように車両機構部104、ブレード機構部105を制御する。
【0035】
環境マップ生成部162は、環境マップを生成する。環境マップ生成部162は、センサ部102を用いた環境センシングにより検出した施工現場FLの地面の高さの情報を用いて、環境マップにおける高さの分布が示されるようにする。また、環境マップ生成部162は、設計図データ記憶部171が記憶する設計図データも環境マップの生成に利用してよい。
【0036】
作業対象領域設定部163は、図2図7を用いて説明したようにして作業対象領域AR20を設定する。
【0037】
送信部164は、作業対象領域設定部163により設定された作業対象領域AR20を示す情報(作業対象領域情報)を土砂運搬車両200に送信する。
【0038】
記憶部107は、ブルドーザー100に対応する各種の情報を記憶する。記憶部107は、設計図データ記憶部171、環境マップ記憶部172、及び作業対象領域情報記憶部173を備える。
設計図データ記憶部171は、施工現場FLの設計図データを記憶する。
環境マップ記憶部172は、環境マップ生成部162が生成した環境マップを記憶する。
作業対象領域情報記憶部173は、作業対象領域設定部163が設定した作業対象領域を示す情報(作業対象領域情報)を記憶する。なお、作業対象領域設定部163が設定した作業対象領域を環境マップに反映させるようにしてもよく、この場合には、作業対象領域設定部163は、省略されてよい。
【0039】
図9のフローチャートを参照して、本実施形態のブルドーザー100が作業対象領域AR20の設定に関連して実行する処理手順例について説明する。
ステップS100:ブルドーザー100の作業対象領域設定部163は、作業対象領域AR20の設定の指示に相当する設定トリガが発生するのを待機する。設定トリガは、例えば、所定時間ごとに発生されてよい。また、設定トリガは、例えば一定面積の敷均しが完了した等、ブルドーザー100による敷均しの作業が所定の目標段階に達したことに応じて発生されてよい。また、設定トリガは、新たに置き土EBが配置されたことに応じて発生されてよい。
新たに置き土EBが配置されたか否かについては、例えばブルドーザー100が定常的に実行する環境センシングのもとで新たな置き土EBの配置に対応する地形(高さ)の変化が生じたか否かにより判定されてよい。あるいは、新たに置き土EBが配置されたか否かについては、土砂運搬車両200から送信された置き土EBの配置完了の通知が受信されたか否かにより判定されてよい。
【0040】
ステップS102:ステップS100にて設定トリガが発生したと判定されると、環境マップ生成部162は、現在の施工現場FLの環境を反映した環境マップを生成する。この際、環境マップ生成部162は、環境センシングにより測定された施工現場FLの地面の高さに基づいて、完了領域AR11、未完領域AR12、及び置き土領域AR13の分布を特定し、環境マップに反映させる。環境マップ生成部162は、生成した環境マップにより環境マップ記憶部172が記憶する環境マップを更新する。
【0041】
ステップS104:作業対象領域設定部163は、ステップS102により更新された環境マップに基づいて、図2図7にて説明したようにして作業対象領域AR20を設定する。この際、作業対象領域設定部163は、前述のように現在において作業中の作業対象領域AR20については変更しないようにしたうえで、施工現場FLにおける他の領域における作業対象領域AR20を設定するようにしてよい。
なお、当該ステップS104の処理は、環境マップが示す完了領域AR11と未完領域AR12と置き土領域AR13の分布状況、置き土領域AR13ごとの置き土量等に応じて1以上の作業対象領域を設定するように学習した学習済みモデルを用いて実行されてよい。
【0042】
ステップS106:作業対象領域設定部163は、ステップS104により設定した作業対象領域が示されるように、作業対象領域情報記憶部173が記憶する作業対象領域情報を更新する。
【0043】
ステップS108:送信部164は、ステップS104により設定された作業対象領域を示す作業対象領域情報(ステップS106により更新された後の作業対象領域情報)を、土砂運搬車両200に送信する。
【0044】
土砂運搬車両200は、受信により取得した作業対象領域情報が示す作業対象領域の位置に基づいて、施工現場FLにおいて次に置き土EBを配置して適切とされる位置を決定し、決定した位置に置き土するように自律運転を行ってよい。
【0045】
なお、送信部164が作業対象領域情報を送信するタイミングは、同図のように、作業対象領域を設定したタイミングに限定されない。例えば、送信部164は、土砂運搬車両200からの要求に応答して作業対象領域情報記憶部173に記憶されている作業対象領域情報を送信するようにされてよい。
【0046】
図10のフローチャートを参照して、本実施形態のブルドーザー100が自律運転のもとで作業対象領域AR20の敷均しに関連して実行する処理手順例について説明する。
ステップS200:ブルドーザー100において自律運転制御部161は、1の作業対象領域を対象に作業の実行を開始するにあたり、作業対象領域情報記憶部173が記憶する作業対象領域情報を参照する。
【0047】
ステップS202:自律運転制御部161は、ステップS200により参照した作業対象領域情報が示す1以上の作業対象領域(候補作業対象領域)のうちから、敷均しの実行対象とする作業対象領域を選択する。この際、自律運転制御部161は、現在のブルドーザー100の位置と各候補作業対象領域との位置関係、現在のブルドーザー100の位置と各作業対象領域との間に存在する物体や地形等に基づいて、作業対象領域を選択してよい。また、ステップS202の処理は、候補作業対象領域の設定状況に応じて敷均しの実行対象として適切とされる1つの作業対象領域の選択結果を出力するよう学習させた学習済みモデルを用いて実行されてよい。
【0048】
ステップS204:自律運転制御部161は、ステップS202により選択した作業対象領域を対象に敷均しの作業を実行する。
【0049】
ステップS206:自律運転制御部161は、ステップS204による敷均し作業が完了すると、今回の作業対象領域を対象とする敷均し作業の完了に伴って、予め設定された目標の進捗段階に到達したか否かを判定する。
当該ステップS206にて目標の進捗段階に到達していないと判定された場合には、ステップS200に処理が戻されることで、次の作業対象領域の選択と敷均し作業が実行される。当該ステップS206にて目標の進捗段階に到達したことが判定された場合には、同図の処理が終了される。
【0050】
これまでの説明のように、本実施形態のブルドーザー100は、作業対象領域AR20の設定にあたり、互いに隣り合う2つの置き土領域AR13を敷均して形成される完了領域AR11の間に未完領域AR12が存在しないように、互いに隣り合う2つの置き土領域AR13で敷均す土ができるだけ重複しないように作業対象領域AR20を設定することができる。即ち、本実施形態においては、施工現場FLにおける敷均しの作業の効率が損なわれないように適切に作業対象領域AR20を設定することができる。
また、本実施形態の場合、ブルドーザー100は、施工現場FLにおいて作業対象領域AR20として設定された限定的な領域を対象として敷均し作業を実行すればよいことから、ブルドーザー100が自律運転により敷均し作業を実行するためのアルゴリズムを単純化できる。また、本実施形態における作業対象領域AR20の設定は、自律運転によるブルドーザー100の敷均しのアルゴリズムには依存することなく行われる。このため、例えば、ブルドーザー100の敷均しのアルゴリズムに変更が生じたとしても、本実施形態の作業対象領域の設定のアルゴリズムを変更する必要がない。また、本実施形態の作業対象領域の設定であれば、同じ施工現場FLにおいて複数の自律運転によるブルドーザー100を稼働させることも容易となる。
【0051】
本実施形態の施工管理システムにおいて施工管理サーバを備え、施工管理サーバが、例えば図9図10に示した処理手順における所定の処理を実行するようにされてよい。
例えば、施工管理サーバが、ブルドーザー100から送信された環境センシングの検出データを利用して環境マップを生成し、生成した環境マップを記憶してよい。また、施工サーバが、環境マップを用いて作業対象領域を設定し、作業対象領域情報を記憶してよい。さらに、施工管理サーバが、作業対象領域情報を土砂運搬車両200に送信してよい。
また、施工管理サーバが、ブルドーザー100が敷均し作業の実行対象とする作業対象領域情報を選択し、選択した作業対象領域を指定してブルドーザー100に作業の実行を指示するようにされてよい。ブルドーザー100は、作業対象領域の敷均し作業を完了すると、施工管理サーバに完了通知を送信し、施工管理サーバは、目標の進捗段階に到達するまで、完了通知の受信に応じて、次に敷均し作業の実行対象となる作業対象領域情報を選択してブルドーザー100に敷均し作業を実行させてよい。
【0052】
上記実施形態では、土砂を敷均していくようにされた施工現場FLを例に挙げた。しかしながら、例えばダムなどのようにコンクリートをブルドーザーにより敷均していくような施工現場にも本実施形態の施工管理システムを適用することができる。
【0053】
上記実施形態において、ブルドーザー100と土砂運搬車両200は、それぞれが自律運転をするように構成された例を挙げた。しかしながら、ブルドーザー100と土砂運搬車両200の少なくともいずれか一方が人により運転(操縦)されるものであってもよい。
【0054】
なお、上述のブルドーザー100、土砂運搬車両200及び施工管理サーバ等としての機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより上述のブルドーザー100、土砂運搬車両200及び施工管理サーバ等としての処理を行ってもよい。ここで、「記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行する」とは、コンピュータシステムにプログラムをインストールすることを含む。ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータシステム」は、通信回線を含むネットワークを介して接続された複数のコンピュータ装置を含んでもよい。記録媒体には、当該プログラムを配信するために配信サーバからアクセス可能な内部または外部に設けられた記録媒体も含まれる。
【符号の説明】
【0055】
100 ブルドーザー、101 通信部、102 センサ部、103 測位部、104 車両機構部、105 ブレード機構部、106 制御部、107 記憶部、161 自律運転制御部、162 環境マップ生成部、163 作業対象領域設定部、164 送信部、171 設計図データ記憶部、172 環境マップ記憶部、173 作業対象領域情報記憶部、200 土砂運搬車両
図1
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図10