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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016808
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】疼痛治療のためのブロムヘキシン
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/137 20060101AFI20230126BHJP
   A61P 25/04 20060101ALI20230126BHJP
   A61P 29/02 20060101ALI20230126BHJP
【FI】
A61K31/137
A61P25/04
A61P29/02
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022177907
(22)【出願日】2022-11-07
(62)【分割の表示】P 2019569687の分割
【原出願日】2018-06-13
(31)【優先権主張番号】17176379.0
(32)【優先日】2017-06-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】519442874
【氏名又は名称】カイ-ウーベ ケルン
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100117019
【弁理士】
【氏名又は名称】渡辺 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100141977
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 勝
(74)【代理人】
【識別番号】100150810
【弁理士】
【氏名又は名称】武居 良太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100134784
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 和美
(72)【発明者】
【氏名】カイ-ウーベ ケルン
(57)【要約】
【課題】疼痛治療のためのブロムヘキシンを提供すること。
【解決手段】本発明は、患者において急性又は慢性疼痛を治療するための、ブロムヘキシン又はその塩に関する。特に、本発明は、侵害受容性疼痛、神経因性疼痛及び/又は機能障害性疼痛の治療において使用するためのブロムヘキシン又はその塩に関する。本発明は更に、ブロムヘキシン又はその塩を含有する局所用医薬組成物、並びに急性又は慢性疼痛を治療するためのブロムヘキシン又はその塩を含有する組成物又は局所用医薬組成物に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者における急性又は慢性疼痛の治療において使用するためのブロムヘキシン又はその塩。
【請求項2】
前記疼痛が、侵害受容性疼痛、神経因性疼痛及び/又は機能障害性疼痛である、請求項1記載の使用のためのブロムヘキシン又はその塩。
【請求項3】
前記疼痛が、慢性侵害受容性疼痛、慢性神経因性疼痛及び/又は慢性機能障害性疼痛である、請求項1又は2記載の使用のためのブロムヘキシン又はその塩。
【請求項4】
前記疼痛が:
(a)中枢神経因性疼痛;
(b)末梢神経因性疼痛;
(c)侵害受容性疼痛;
(d)混合型疼痛症候群;
(e)機能障害性疼痛;又は
(f)神経因性、侵害受容性又は混合型の頭痛:である、請求項1~3のいずれか一項記載の使用のためのブロムヘキシン又はその塩。
【請求項5】
前記疼痛が、慢性中枢神経因性疼痛;慢性末梢神経因性疼痛;又は、慢性侵害受容性疼痛である、請求項4記載の使用のためのブロムヘキシン又はその塩。
【請求項6】
請求項4又は5記載の使用のためのブロムヘキシン又はその塩であって:
(a)前記中枢神経因性疼痛が、多発性硬化症疼痛、脊髄損傷痛(SCI;対麻痺)、パーキンソン病関連疼痛、有痛性てんかん発作、脳卒中後疼痛、求心路遮断性疼痛、三叉神経痛、舌咽頭神経痛、視床痛、ボレリオ症疼痛、幻肢痛、及び有痛性脚不穏症候群からなる群から選択されるか;
(b)前記末梢神経因性疼痛が、上腕痛感覚異常、手根管症候群、肢端紅痛症、顔面神経痛、ヘルペス後神経痛、術後神経痛、外傷後神経痛、坐骨神経痛、カウザルギー、単神経炎、神経絞扼症候群、神経損傷、神経炎痛、後頭神経痛、三叉神経ニューロパシー、異痛症及び痛覚過敏、尺骨神経溝症候群、足根管症候群、神経根障害、ファブリー病関連疼痛、多発性ニューロパシー、外傷後ニューロパシー、切断術後疼痛、断端痛及び錯感覚性背痛からなる群から選択されるか;
(c)前記侵害受容性疼痛が、内臓痛;虚血性疼痛;レイノー症候群関連疼痛;骨関節炎痛又は関節炎痛などの変性性関節痛;リウマチ痛;上顆炎、アキレス腱炎、筋膜炎疼痛、足底筋膜炎痛などの、腱炎関連疼痛;有痛性肩拘縮症;関節炎;変形性脊柱痛;変形性頚痛;炎症性疼痛;筋膜性疼痛症候群;筋肉硬結痛及び筋肉痛からなる群から選択されるか;
(d)前記混合型疼痛症候群が、頸部症候群、癌性疼痛、腰痛、腹痛、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、切断術後疼痛、肛門痛、椎間板ヘルニア及び変性、変形性脊椎痛、脊椎手術後疼痛症候群(FBS)並びに急性及び慢性術後疼痛(CPSP)からなる群から選択されるか;又は
(e)前記機能障害性疼痛が、軟組織リウマチ、線維筋痛、慢性骨盤痛症候群(CPPS)、慢性膀胱炎痛、慢性前立腺炎痛、尾骨痛、過敏性腸症候群、消化管の慢性疼痛、口腔顔面痛、肛門周囲痛、外陰部痛、デルカム病関連疼痛、広範囲疼痛及び頭蓋下顎障害からなる群から選択されるか;又は
(f)前記頭痛が、群発性頭痛、偏頭痛、緊張型頭痛、片頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛、SUNCT症候群、貨幣状頭痛、後頭神経痛及び三叉神経痛及びニューロパシーからなる群から選択される:ブロムヘキシン又はその塩。
【請求項7】
前記ブロムヘキシン又はその塩が、局所的又は全身に投与される、請求項1~6のいずれか一項記載の使用のためのブロムヘキシン又はその塩。
【請求項8】
前記ブロムヘキシン又はその塩が、局所的、好ましくは経真皮的に投与される、請求項1~7のいずれか一項記載の使用のためのブロムヘキシン又はその塩。
【請求項9】
前記ブロムヘキシン又はその塩が、局所的に投与され、且つ疼痛が、末梢神経因性疼痛、好ましくは局在化された末梢神経因性疼痛であるか、又は疼痛が、変性性関節痛又は腱炎関連疼痛である、請求項8記載の使用のためのブロムヘキシン又はその塩。
【請求項10】
前記ブロムヘキシンが、ブロムヘキシン塩酸塩の形状である、請求項1~9のいずれか一項記載の使用のためのブロムヘキシン又はその塩。
【請求項11】
前記患者が、哺乳動物、好ましくはヒト、伴侶動物、ウマ、ラクダ又は家畜、より好ましくはヒトである、請求項1~10のいずれか一項記載の使用のためのブロムヘキシン又はその塩。
【請求項12】
請求項1~11のいずれか一項記載の使用のためのブロムヘキシン又はその塩を含有する組成物。
【請求項13】
前記ブロムヘキシン又はその塩、及び好ましくは経皮使用のための、医薬として許容される賦形剤を含有する、局所用医薬組成物。
【請求項14】
(a)前記ブロムヘキシンが、ブロムヘキシン塩酸塩の形状であり;及び/又は
(b)前記組成物が、クリーム、ローション、医療用ヘアローション、乳液、スプレー、溶液、軟膏、ゲル剤、又は皮膚用貼付剤の形状である:請求項13記載の局所用医薬組成物。
【請求項15】
患者において、急性又は慢性疼痛の治療における使用のための、請求項13又は14記載の局所用医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、患者において急性又は慢性疼痛を治療するための、ブロムヘキシン又はその塩に関する。特に本発明は、侵害受容性疼痛、神経因性疼痛及び/又は機能障害性疼痛の治療における使用のためのブロムヘキシン又はその塩に関する。本発明は更に、ブロムヘキシン又はその塩を含有する局所用医薬組成物、及び急性又は慢性疼痛の治療のためのブロムヘキシン又はその塩を含有する組成物又は局所用医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
疼痛は、数多くの様々な状態に関連し得、且つ典型的には発端は神経因性又は侵害受容性である。疼痛は更に、混合型状態、すなわち神経因性成分又は侵害受容性成分の両方を有し得るか、あるいは、機能障害性、すなわちいかなる検出可能な炎症も神経系への損傷もない、確定し得る有害な刺激を有さないことができる。
【0003】
機能障害性疼痛は、治癒及び修復を保護も支援もしない体性感覚器官それ自体の機能不全により引き起こされ、且つそれ自体の疾患と考えることができる。機能障害性疼痛症候群は、神経因性疼痛といくつかの特徴を共有する:反復刺激に反応した疼痛の進行性ビルドアップを伴う時間的総和(ワインドアップ(windup))、空間的拡散性、及び低下した疼痛閾値。機能障害性疼痛の主な特徴は、広範な又は体の特定部位に限定されたかのいずれかの慢性症状;並びに、疼痛の増幅、又は疼痛に対する異常な感受性である。機能障害性疼痛の原因は、大部分は確定されていない。これは、線維筋痛、間質性膀胱炎又は過敏性腸症候群を含む、広い範囲の障害を含む。
【0004】
侵害受容性疼痛は、刺激が、例えば筋肉、骨、皮膚又は内臓に組織損傷を引き起こす場合に生じる不快さを指す。侵害受容性疼痛は典型的には、有害な強度に近づく又はこれを超える刺激に対してのみ反応する末梢神経線維(侵害受容器)の刺激により引き起こされ、且つ有害な刺激の様式に従い分類することができ;最も一般的な範疇は、「熱」(熱い又は冷たい)、「力学的」(挫滅(crushing)、裂傷など)、及び「化学的」(傷口のヨウ素、眼のチリパウダー)がある。侵害受容性疼痛はまた、内臓痛(内部臓器)、又は深部体性痛及び表在体性痛などの体性痛(体への損傷)に分けることもできる。内臓痛は、特定領域に局在化されない傾向があるので、内臓痛に罹患した患者は、全般的にうずきを感じる傾向がある。癌は、内臓痛の共通の根源である。深部体性痛は、靱帯、腱、骨、血管、筋膜及び筋肉における侵害受容器の刺激により開始され、且つ鈍い、うずくような、余り局在化されない疼痛である。表在痛は、皮膚又は表層組織の侵害受容器の活性化により開始され、且つ鋭く、よく限定され、明らかに局在化される。
【0005】
神経因性疼痛は、神経損傷又は神経機能不全に発端がある疼痛であり、且つ急性であるか又は慢性となり始めることがある。神経因性疼痛は、身体感覚(体性感覚系)に関連した神経系の中枢又は末梢部分に影響を及ぼす損傷又は疾患により引き起こされ得る。末梢神経因性疼痛は、例えば力学的外傷、代謝性疾患、神経毒性化学物質、感染症又は腫瘍浸潤などにより引き起こされる、末梢神経系(PNS)に対する病巣から生じ、PNS内及びCNS中の両方の複数の病態生理学的変化に関与している。中枢神経因性疼痛は最も一般的には、脊髄損傷、脳卒中又は多発性硬化症から生じる。糖尿病性ニューロパシー及び他の代謝性病態を除いて、有痛性末梢ニューロパシーの一般的な原因は、帯状疱疹感染症、HIV-関連ニューロパシー、栄養欠乏、毒素、悪性腫瘍の遠隔兆候、遺伝子、及び免疫媒介性障害又は神経幹に対する物理的外傷である。神経因性疼痛は、末梢神経に対する癌の直接的結果(例えば腫瘍による圧迫)として、又は化学療法、放射線傷害もしくは手術の副作用として、癌において一般的である。しかし化学療法が誘発した疼痛は、他の型の神経因性疼痛のものとは、機序が異なる。神経因性疼痛の患者が経験し得る壊滅的症状の一部は、服が皮膚に触れる度に辛い痛み、沸騰水のように感じる自発火傷(spontaneous burning)、歩行時の足の「ピン及び針」で刺す感覚(burst)、まるで幻肢が押しつぶされるような切断術後の連続する挫滅痛、又は脊髄損傷後の全ての感覚が失われたレベルでの体の周りの焼け付くような痛みの帯である。神経因性疼痛への従来のアプローチは、類別されており、且つ基礎となる疾患を基にこれを治療するが、そのような病因学的アプローチは、神経因性疼痛の本質的特徴を捉えておらず、これは神経系の不適切に生じた可塑性の兆候である。
【0006】
急性及び慢性疼痛の十分な治療は、重篤な副作用がない利用可能な有効な鎮痛薬の数がかなり少ないことにより、依然限定されている。末梢侵害受容性感覚ニューロンの興奮の薬学的阻害は、新規鎮痛薬の開発における好ましい戦略である。侵害受容性感覚ニューロンは、電位依存性ナトリウムチャネルのα-サブユニットの独自の集成体を発現する。電位依存性ナトリウムチャネルは、非選択的ナトリウムチャンネル遮断薬である、局所麻酔薬の堅固な阻害作用により指摘されるように、異所性活性の発生に大きく寄与する。後根神経節(DRG)ニューロンは、テトロドトキシン(TTX)に対し感受性又は抵抗性のいずれかである、いくつかのナトリウムチャネルを発現するが、これらのチャネルのいずれかが活動電位の異常な発生に寄与するかは、全てが明らかではない。アンチセンスオリゴヌクレオチドによる遺伝子ノックダウンを使用する試験は、神経損傷後にDRGニューロンにおいてアップレギュレートされる、Nav1.3チャネルの特異的役割を裏付けているが、このチャネルのノックアウトは、神経因性疼痛様挙動又は異所性活性を変更することには失敗している。TTX-抵抗性チャネルNav1.8は、主に侵害受容器により発現されるが、これは全振幅の活動電位の伝播を支援せず、代わりに特にリン酸化された場合に、膜興奮性を変調する。Nav1.8アンチセンス及びshRNAノックダウン、並びにコノトキシン及び小型薬アゴニストによる薬学的遮断を使用する実験は、神経因性疼痛の発生におけるこのチャネルの主要な役割を指摘しているが、Nav1.8ノックアウトは、神経因性疼痛表現型を減少しない。低-投与量TTXは、神経因性疼痛の発現及び発達を遮断し、且つNav1.8は、軸索損傷後顕著にダウンレギュレートされ、TTX-R電流密度の実質的減少を生じる。侵害受容器におけるNav1.7の条件付き欠失は、神経因性疼痛を減少しないが、そのチャネルの選択的遮断薬は、神経障害治療薬としての有効性を示す。同じく過分極-活性化された環状ヌクレオチド-依存性チャネル(HCN)、ニューロンのカリウム電位-依存性チャネルサブファミリーQ(KCNQ)及びカルシウム-活性化カリウムチャネルは、神経因性疼痛に関与することが暗示されている。更にCav2.2(N-型カルシウムチャネル)が欠失したマウスは、低下した神経因性疼痛様挙動を示す。従って単一イオンチャネルのみの全般的又は条件付きでのノックアウトは、代償性及び冗長性(compensation and redundancy)のために、鎮痛薬の標的としてのそれらの価値を引き出すための有用な方式を明らかにしない。
【0007】
患者における疼痛治療は、緩和はほとんどの患者において単に部分的なものであり、且つ治療への反応者を確定することができないので、大きな挑戦であり続ける。平均して、神経因性疼痛は、より強く且つより治療が困難である。治療失敗のリスクは比較的高く、自殺又はひきこもり(social decent)に繋がることがある。神経因性疼痛は、局在化されることが多く、理論的には局所的に治療されるが、しかしこれは成功しないことが多い。この理由のひとつは、ナトリウム-又はカルシウムチャネル、並びにNMDA-又はTRPV受容体又はそれらの組合せなどの異なる疼痛を媒介する構造の関与であり得る。他方で神経因性疼痛治療のための全身投与は、重篤なCNS副作用に繋がり得る。
【0008】
侵害受容性、神経因性及び機能障害性疼痛は、それらの病因及び臨床特徴に関して区別されるが、これらは機序の一部は共通している。神経因性疼痛の重要な局所治療は、ナトリウムチャネル阻害剤(局所麻酔薬)、及びカプサイシンなどによる、一過性受容体電位カチオンチャネルサブファミリーV(TRPV)受容体の遮断を含む。全身治療のためには、カルバマゼピン又はラモトリギンなどのナトリウムチャンネル遮断薬が、神経因性疼痛のために有用であるが、プレガバリン及びガバペンチンなどのカルシウムモジュレーターも有用である。侵害受容性疼痛の治療のためにもまた、ジクロフェナク、イブプロフェン、アセチルサリチル酸などの抗炎症薬を使用することができる。オピオイドは、両方のために使用されている。疼痛治療に使用される多種多様な薬物にもかかわらず、依然緩和することができない疼痛を伴う多くの患者が存在し、従って疼痛治療のための更に且つ広範に作用する活性物質の必要性が存在する。ドイツだけで、1500~2000万人の疼痛患者が存在し、そのうちの400~600万人は重篤な慢性疼痛を伴い、約200万人は現在利用可能な選択肢を使う専門医であっても治療することができない疼痛症状を伴う。メタ解析により確認されるように、物理的疼痛は、依然自殺志願及び行動の一貫した危険因子である。高齢集団による人口動態的発達のために、疼痛に悩まされている患者の数は、更に翌年にかけて増大すると予想される。高齢集団によりまた、治療期間はより長くなり、且つペインキラーの長期使用に関連した問題点、例えば胃、腎臓、心臓血管系及び肝臓への副作用は、今後より関係し始めるであろう。従って、疼痛治療に広範に効果があり且つ副作用がほとんどない新規薬剤の必要性が、依然存在する。
【0009】
ブロムヘキシン(2,4-ジブロモ-6-[[シクロヘキシル(メチル)アミノ]メチル]アニリン、C14H20Br2N2、MW=376.136g/mol、CAS番号:3572-43-8は、様々な呼吸器疾患の治療のために一部の国において使用されるアダトダ・ウァシカ(Adhatoda vasica)植物の誘導体である。ブロムヘキシンは、様々な呼吸器疾患の治療のために、多くの国において使用される。去痰薬としての1963年の市場への導入時から、ブロムヘキシンは、ヒト及び動物使用での呼吸器疾患のための処方箋の不要な(OTC)薬である(例えば、Bisolvon(登録商標))。ブロムヘキシンは、錠剤又はシロップ剤として、経口投与される。血管-脳関門を通過し、且つ非常に副作用が少ないことはわかっている。ブロムヘキシンは、粘液の物理化学的特徴を変更することにより、様々な粘液成分の分泌を増強することが知られている。これらの変化は次に、粘膜毛様体クリアランスを増大し、咳を鎮める。ブロムヘキシンは、分泌容積を増大し、且つ痰の粘度を減少し、これにより粘膜毛様体クリアランスを増大する。50年以上にわたるそれの医薬品としての使用にもかかわらず、疼痛治療に関するその効力は、報告されていない。
【発明の概要】
【0010】
発明の概要
患者における急性又は慢性疼痛の治療における使用のための、ブロムヘキシン又はその塩が、本明細書に提供される。一実施態様において、疼痛は、侵害受容性疼痛、神経因性疼痛及び/又は機能障害性疼痛である。別の実施態様において、疼痛は、慢性侵害受容性疼痛、慢性神経因性疼痛及び/又は慢性機能障害性疼痛である。疼痛は、(a)中枢神経因性疼痛;(b)末梢神経因性疼痛;(c)侵害受容性疼痛;(d)混合型疼痛症候群;(e)機能障害性疼痛;又は、(f)神経因性、侵害受容性又は混合型の頭痛:である。好ましくは、疼痛は、慢性中枢神経因性疼痛;慢性末梢神経因性疼痛;又は、慢性侵害受容性疼痛である。
【0011】
更なる別の態様において、ブロムヘキシン又はその塩を患者へ投与することを含む、慢性又は急性疼痛の患者を治療する方法が提供される。一実施態様において、疼痛は、侵害受容性疼痛、神経因性疼痛及び/又は機能障害性疼痛である。別の実施態様において、疼痛は、慢性侵害受容性疼痛、慢性神経因性疼痛及び/又は慢性機能障害性疼痛である。疼痛は、(a)中枢神経因性疼痛;(b)末梢神経因性疼痛;(c)侵害受容性疼痛;(d)混合型疼痛症候群;(e)機能障害性疼痛;又は、(f)神経因性、侵害受容性又は混合型の頭痛:である。好ましくは、疼痛は、慢性中枢神経因性疼痛;慢性末梢神経因性疼痛;又は、慢性侵害受容性疼痛である。
【0012】
本発明の使用及び方法に従う中枢神経因性疼痛は、好ましくは、多発性硬化症疼痛、脊髄損傷痛(SCI;対麻痺)、パーキンソン病関連疼痛、有痛性てんかん発作、脳卒中後疼痛、求心路遮断性疼痛、三叉神経痛、舌咽頭神経痛、視床痛、ボレリオ症疼痛、幻肢痛、及び有痛性脚不穏症候群からなる群から選択される。
【0013】
本発明の使用及び方法に従う末梢神経因性疼痛は、好ましくは、上腕痛感覚異常、手根管症候群、肢端紅痛症、顔面神経痛、ヘルペス後神経痛、術後神経痛、外傷後神経痛、坐骨神経痛、カウザルギー、単神経炎、神経絞扼症候群、神経損傷、神経炎痛、後頭神経痛、三叉神経ニューロパシー、異痛症及び痛覚過敏、尺骨神経溝症候群、足根管症候群、神経根障害、ファブリー病関連疼痛、多発性ニューロパシー、外傷後ニューロパシー、切断術後疼痛、断端痛及び錯感覚性背痛からなる群から選択される。
【0014】
本発明の使用及び方法に従う侵害受容性疼痛は、好ましくは、内臓痛;虚血性疼痛;レイノー症候群関連疼痛;骨関節炎痛又は関節炎痛などの変性性関節痛;リウマチ痛;上顆炎、アキレス腱炎、筋膜炎疼痛、足底筋膜炎痛(kneel supur pain)などの、腱炎関連疼痛;有痛性肩拘縮症;関節炎;変形性脊柱痛;変形性頚痛;炎症性疼痛;筋膜性疼痛症候群;筋肉硬結痛及び筋肉痛からなる群から選択される。
【0015】
本発明の使用及び方法に従う混合型疼痛症候群は、好ましくは、頸部症候群、癌性疼痛、腰痛、腹痛、複合性局所疼痛症候群(CRPS、疼痛性ジストロフィー、反射性ジストロフィー、ズデック萎縮とも称される)、切断術後疼痛、肛門痛、椎間板ヘルニア及び変性、変形性脊椎痛、脊椎手術後疼痛症候群(FBS)並びに急性及び慢性術後疼痛(CPSP)からなる群から選択される。
【0016】
本発明の使用及び方法に従う機能障害性疼痛は、好ましくは、軟組織リウマチ、線維筋痛、慢性骨盤痛症候群(CPPS)、慢性膀胱炎痛、慢性前立腺炎痛、尾骨痛、過敏性腸症候群、消化管の慢性疼痛、口腔顔面痛、肛門周囲痛、外陰部痛、デルカム病関連疼痛、広範囲疼痛及び頭蓋下顎障害からなる群から選択される。
【0017】
本発明の使用及び方法に従う頭痛は、好ましくは、群発性頭痛、偏頭痛(migraine)、緊張型頭痛、片頭痛(hemicrania)、三叉神経・自律神経性頭痛、SUNCT症候群、貨幣状頭痛、後頭神経痛及び三叉神経痛及びニューロパシーからなる群から選択される。
【0018】
一実施態様において、本発明の使用及び方法に従うブロムヘキシン又はその塩は、局所的又は全身に、好ましくは局所的、より好ましくは経真皮的に投与される。好ましい実施態様において、ブロムヘキシン又はその塩は、局所的に投与され、且つ疼痛は、末梢神経因性疼痛、好ましくは局在化された末梢神経因性疼痛であるか、又は疼痛は、変性性関節痛又は腱炎関連疼痛である。
【0019】
好ましい実施態様において、ブロムヘキシンは、ブロムヘキシン塩酸塩の形状である。
【0020】
治療される患者は、哺乳動物、好ましくはヒト、伴侶動物、ウマ、ラクダ又は家畜、より好ましくはヒトである。
【0021】
別の態様において、本発明に従う急性又は慢性疼痛の治療において使用するためのブロムヘキシン又はその塩を含有する組成物が提供される。
【0022】
更に別の態様において、ブロムヘキシン又はその塩、及び好ましくは皮膚使用のための、医薬として許容し得る賦形剤を含有する、局所用医薬組成物が提供される。従って、本発明はまた、ブロムヘキシン又はその塩及び医薬として許容される賦形剤を含有する真皮の局所用医薬組成物にも関する。好ましい実施態様において、ブロムヘキシンは、ブロムヘキシンが、ブロムヘキシン塩酸塩の形状である。局所用医薬組成物は、好ましくは経真皮的投与のための、クリーム、ローション、医療用ヘアローション、乳液、スプレー、溶液、軟膏、ゲル剤、又は皮膚用貼付剤の形状である。
【0023】
本発明の更に別の態様において、本発明の局所用医薬組成物は、本発明に従う使用のために提供されるか、又は本発明に従う方法において使用される。
【0024】
更に別の態様において、患者へブロムヘキシン又はその塩を投与することを含む、慢性又は急性疼痛の患者を治療する方法が、提供される。一実施態様において、疼痛は、侵害受容性疼痛、神経因性疼痛及び/又は機能障害性疼痛である。別の実施態様において、疼痛は、慢性侵害受容性疼痛、慢性神経因性疼痛及び/又は慢性機能障害性疼痛である。疼痛は、(a)中枢神経因性疼痛;(b)末梢神経因性疼痛;(c)侵害受容性疼痛;(d)混合型疼痛症候群;(e)機能障害性疼痛;又は、(f)神経因性、侵害受容性又は混合型の頭痛:である。好ましくは、疼痛は、慢性中枢神経因性疼痛;慢性末梢神経因性疼痛;又は、慢性侵害受容性疼痛である。
【0025】
一実施態様において、ブロムヘキシン又はその塩は、局所的又は全身に、好ましくは局所的、より好ましくは経真皮的に投与される。好ましい実施態様において、ブロムヘキシン又はその塩は、局所投与され、且つ疼痛は、末梢神経因性疼痛、好ましくは局在化された末梢神経因性疼痛であるか、又は疼痛は、変性性関節痛又は腱炎関連疼痛である。
【0026】
好ましい実施態様において、ブロムヘキシンは、ブロムヘキシン塩酸塩の形状である。
【0027】
治療される患者は、哺乳動物、好ましくはヒト、伴侶動物、ウマ、ラクダ又は家畜、より好ましくはヒトである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1(A)】図1。5年に及ぶ原因が不明である手及び腕の両方の慢性の重症の疼痛症候群の患者の手及び肘の写真。症状:痛みを伴う緊張、過熱、発赤及び機能不全。(A、B)ブロムヘキシンによる局所治療の20分後、左手(+ブロムヘキシン)は、上側及び下側パネルに示されるように、発赤の減少(白色矢印)、並びに疼痛並びに腫脹及び緊張の感覚の印象的低下を呈した。
図1(B)】図1。5年に及ぶ原因が不明である手及び腕の両方の慢性の重症の疼痛症候群の患者の手及び肘の写真。症状:痛みを伴う緊張、過熱、発赤及び機能不全。(A、B)ブロムヘキシンによる局所治療の20分後、左手(+ブロムヘキシン)は、上側及び下側パネルに示されるように、発赤の減少(白色矢印)、並びに疼痛並びに腫脹及び緊張の感覚の印象的低下を呈した。
図1(C)】図1。5年に及ぶ原因が不明である手及び腕の両方の慢性の重症の疼痛症候群の患者の手及び肘の写真。(C)上側パネル:未治療の右手(-ブロムヘキシン)と比較したブロムヘキシン治療した左手(+ブロムヘキシン)の可能な指の広がりの程度。下側パネル:未治療の右手(-ブロムヘキシン)と比較したブロムヘキシン治療した左手(+ブロムヘキシン)の「痛みで限定された」指の広がりの程度であり、ここでは最初の動きと共にすぐ痛みが始まった。写真は、局所ブロムヘキシン治療の20分後に撮影した。(D)下側パネル:治療した左肘(治療した領域に印を付けた)のブロムヘキシンの20分後の痛みのない可能な肘の回転の程度。腫脹の減少も治療領域で認められた。上側パネル:疼痛を伴わない運動は、未治療の右手肘においては不可能であった。(E)患者は、ブロムヘキシン(+ブロムヘキシン)の約30分後に、左手及び腕の痛みのない多様な可能性のある運動を示した一方で、疼痛を伴わない運動は、未治療の右腕(-ブロムヘキシン)においては不可能であった。
図1(D)】図1。5年に及ぶ原因が不明である手及び腕の両方の慢性の重症の疼痛症候群の患者の手及び肘の写真。(D)下側パネル:治療した左肘(治療した領域に印を付けた)のブロムヘキシンの20分後の痛みのない可能な肘の回転の程度。腫脹の減少も治療領域で認められた。上側パネル:疼痛を伴わない運動は、未治療の右手肘においては不可能であった。
図1(E)】図1。5年に及ぶ原因が不明である手及び腕の両方の慢性の重症の疼痛症候群の患者の手及び肘の写真。(E)患者は、ブロムヘキシン(+ブロムヘキシン)の約30分後に、左手及び腕の痛みのない多様な可能性のある運動を示した一方で、疼痛を伴わない運動は、未治療の右腕(-ブロムヘキシン)においては不可能であった。
図2図2:線維筋痛と合併した20年に及ぶ関節リウマチにより引き起こされた慢性疼痛の患者の手の写真。手及び指の全ての運動は、痛みを伴った。局所ブロムヘキシン治療の5分後、最初の閉じる動き(下側パネル)は、モーションシーケンスにおいて著しく改善され、且つ手の「軽快で柔らかい感覚(a light and tender feeling)」のために、痛みの軽減が果たされた。
図3図3:何年にも及ぶ指の骨関節炎により引き起こされた慢性疼痛の患者の拳を形成する右手の写真。上側パネル(-ブロムヘキシン):拳を閉じる動きは、痛みを伴い、且つ治療前に、最大の可能性のある指の運動(既に痛みを伴う)は、完全には可能ではなかった。下側パネル(+ブロムヘキシン):局所ブロムヘキシンの15分後、拳を閉じる動きは、完全に行うことができ、且つ疼痛が軽減した。
図4(A)-(B)】図4:痛みを伴う手/指の運動及び腫脹が増悪している重症線維筋痛の患者の手の写真。局所ブロムヘキシンの25分後、(A)腫脹は、強力に減少し(印を付けた領域を参照)、及び(B)拳を閉じる動きは、モーションシーケンスにおいて著しく改善され、且つ右手の「軽快で柔らかい感覚」のために、痛みの軽減が果たされた。患者は、減少した腫脹、拳を閉じる動きの可能性及び運動時の機能障害の減少に驚き且つこれを実演した。
図4(C)】図4:痛みを伴う手/指の運動及び腫脹が増悪している重症線維筋痛の患者の手の写真。(C)上側パネル(-ブロムヘキシン):拳を閉じる動きは、治療前には示した半分閉じた位置まではほぼ無痛であったが、痛みを伴わずに更に閉じることはできなかった。中央パネル(+ブロムヘキシン):局所ブロムヘキシン治療の25分後、拳は、完全に閉じることができ、且つ痛みを伴わなかった。下側パネル(+ブロムヘキシン):親指の運動は、以前のように痛みによりそれ以上制限されることはなかった。示された親指の位置(小指の根元で掌にタッチする)は、25分前には不可能であった。
図5図5:局所適用後の様々な時点での、侵害受容性疼痛症候群におけるブロムヘキシン後の疼痛軽減(NRS=科学的評価基準としての数値化した等級スケール0-10)。
図6図6:局所適用後の様々な時点での、神経因性疼痛症候群におけるブロムヘキシン後の疼痛軽減(NRS=科学的評価基準としての数値化した等級スケール0-10)。
【発明を実施するための形態】
【0029】
詳細な説明
用語「含んでいる」又は「含まれた」は、より詳細な実施態様「からなる」を包含している。更に、単数形及び複数形は、限定的な意味では使用されない。本明細書において使用される単数形「“a”、“an”及び“the”」は、単数のみ示すことを別に明確に言及しない限り、単数及び複数の両方を示している。
【0030】
本明細書において使用される用語「ブロムヘキシン」は、(2,4-ジブロモ-6-[[シクロヘキシル(メチル)アミノ]メチル]アニリン、C14H20Br2N2、MW=376.136g/mol、CAS番号:3572-43-8である。ブロムヘキシンは、アダトダ・ウァシカ植物の誘導体である。これは、粘稠且つ過剰な粘液により特徴付けられる呼吸器障害のために使用される粘液溶解剤及び去痰薬として、ヒト及び動物での使用が認められており、且つ例えば、Bisolvon(登録商標)として経口投与のために市販されている。
【0031】
用語「動物」は、全ての哺乳動物、鳥類及び魚類を含むように本明細書において使用される。哺乳動物は、哺乳綱内の任意の脊椎動物である。全ての哺乳動物種の雌は、乳腺から分泌される乳をその仔に授乳する。哺乳動物は、ヒト:類人猿、サル、伴侶動物(イヌ、ネコ、ハムスター、モルモットなど)、齧歯類、ウマ、ラクダ、並びに畜牛及びブタなどの家畜を含むが、これらに限定されるものではない。
【0032】
本明細書に使用される「医薬として許容される賦形剤」とは、一般に安全で、無毒で且つ生物学的にもその他の点でも望ましくない点はない、医薬組成物、好ましくは医薬局所用組成物の調製において有用である物質を指す。そのような物質は、獣医学又は医薬品用途に適合可能である賦形剤、希釈剤又は担体を含んでよい。そのような物質は、非天然であるか、又は天然であってよい。
【0033】
本明細書において使用される用語「治療する」又は「治療」は、疼痛の感覚を緩和又は軽減することを指す。疼痛の強度の感覚は、患者は、その疼痛を‘0=無痛’と‘10=耐えがたい疼痛’の間で等級化する、NRSスコア(NRS=数値化した等級スケール)を用いて評価され得る。NRSスコアは、国際刊行物における疼痛評価の標準であり、且つその文献に従い、NRS 3以下の強度は、通常慢性疼痛患者により‘耐えられる’ものと感じられる。好ましくは、本発明により治療される疼痛は、化学療法が誘導した疼痛(すなわち、化学療法の結果として発症した疼痛)ではない。
【0034】
本明細書において使用される用語「急性疼痛」は、進行を治癒するにつれ衰退する侵害刺激により引き起こされる疼痛、又は原因刺激が除去された疼痛、及び最低の痛みから無痛が検出されるまで低減する疼痛感覚に関する。
【0035】
本明細書において使用される用語「慢性疼痛」は、通常の治癒期間を超えて持続する疼痛に関する。実践において、これは、1ヶ月未満であるか、又はより頻繁には6ヶ月よりも長くてよい。非悪性の疼痛では、3ヶ月が、急性と慢性の疼痛の間を決定する最も便利な時点であり、悪性疼痛に関しては、これは典型的には3ヶ月未満である。これは、典型的には痛みを伴う体性又は非体性の最初の傷害(insult)により引き起こされ、長く持続する疼痛知覚を相乗的に憎悪する末梢及び/又は中枢の増感に繋がる。より詳細には、国際疼痛学会(ISP)の分類に関する専門委員会により準備された、「慢性疼痛分類、慢性疼痛症候群の説明及び疼痛用語の定義(Classification of Chronic Pain, Description of Chronic Pain Syndoromes and Definition of Pain Terms)」第2版(編集者:Harold Merskey及びNikolai Bogduk、IASP Press社、シアトル)から引用される。
【0036】
本明細書において使用される用語「侵害受容性疼痛」は、刺激が、例えば筋肉、骨、皮膚又は内臓などへの組織損傷を引き起こす場合に生じる不快さを指す。侵害受容性疼痛は典型的には、有害な強度に近づく又はこれを超える刺激に対してのみ反応する末梢神経線維(侵害受容器)の刺激により引き起こされ、且つ有害な刺激の様式に従い分類することができ;最も一般的な範疇は、「熱」(熱い又は冷たい)、「力学的」(挫滅、裂傷など)、及び「化学的」(傷口のヨウ素、眼のチリパウダー)がある。侵害受容性疼痛はまた、内臓痛(内部臓器)又は深部体性痛及び表在体性痛などの体性痛(体への損傷)に分けることもできる。内臓痛に罹患した患者は、全般的にうずきを感じる傾向があり、この疼痛は、特定領域に局在化されない傾向があるからである。癌は、内臓痛の共通の根源である。深部体性痛は、靱帯、腱、骨、血管、筋膜及び筋肉における侵害受容器の刺激により開始され、且つ鈍い、うずくような、余り局在化されない疼痛である。表在痛は、皮膚又は表層組織の侵害受容器の活性化により開始され、且つ鋭く、よく限定され且つ明らかに局在化される。
【0037】
本明細書において使用される用語「神経因性疼痛」は、神経損傷又は神経機能不全に発端がある疼痛を指し、且つ急性であるか又は慢性となり始めることがある。神経因性疼痛は、身体感覚(体性感覚系)に関連した神経系の中枢部分(中枢神経因性疼痛)又は末梢部分(末梢神経因性疼痛)に影響を及ぼす損傷又は疾患により引き起こされ得る。末梢神経因性疼痛は、力学的外傷、代謝性疾患、神経毒性化学物質、感染症又は腫瘍浸潤などにより引き起こされる、末梢神経系(PNS)に対する病巣から生じ、PNS内及びCNS中の両方の複数の病態生理学的変化に関与している。中枢神経因性疼痛は最も一般的には、脊髄損傷、脳卒中又は多発性硬化症から生じる。糖尿病性ニューロパシー及び他の代謝性病態を除いて、有痛性末梢ニューロパシーの一般的な原因は、帯状疱疹感染症、HIV-関連ニューロパシー、栄養欠乏、毒素、悪性腫瘍の遠隔兆候、遺伝子、及び免疫媒介性障害又は神経幹に対する物理的外傷である。神経因性疼痛は、末梢神経に対する癌の直接的結果(例えば腫瘍による圧迫)として、又は放射線傷害もしくは手術の副作用として、癌において一般的である。神経因性疼痛の患者が経験し得る壊滅的症状の一部は、服が皮膚に触れる度に辛い痛み、沸騰水のように感じる自発火傷、歩行時の足の「ピン及び針」で刺す感覚、まるで幻肢が押しつぶされるような切断術後の連続する挫滅痛、又は脊髄損傷後の全ての感覚が失われたレベルでの体の周りの焼け付くような痛みの帯である。
【0038】
本明細書において使用される用語「混合型疼痛症候群」は、神経因性又は侵害受容性成分の両方を有する状態に関する。
【0039】
本明細書において使用される用語「機能障害性疼痛」は、神経系への確定し難い侵害刺激も検出可能な炎症若しくは損傷も有さない疼痛を指す。これは、治癒及び修復を保護も支援もしない体性感覚器官それ自身の機能不全により引き起こされるように見え、且つそれ自体の疾患と考えることができる。機能障害性疼痛症候群は、神経因性疼痛といくつかの特徴を共有する:反復刺激に反応した疼痛の進行性ビルドアップを伴う時間的総和(ワインドアップ)、空間的拡散性、及び低下した疼痛閾値。機能障害性疼痛の主な特徴は、広範な又は体の特定部位に限定されたかのいずれかの慢性症状;並びに、疼痛の増幅、又は疼痛に対する異常な感受性である。機能障害性疼痛の原因は、大部分は確定されていない。これは、線維筋痛、間質性膀胱炎又は過敏性腸症候群を含む、広い範囲の障害を含む。
【0040】
本明細書において使用される用語「局所投与」は、体の表面への投与を指す。これは、特に体の真皮表面を意味し、従って、皮膚への投与を意味する。局所投与のための物質は、典型的には局所用医薬組成物として製剤化される。
【0041】
本明細書において使用される用語「皮膚の局所投与」又は「経真皮的投与」は、体の外側表面への、すなわち皮膚上への適用を指し、従って粘膜、腸内及び眼球投与を明確に排除する、経皮送達などの、上皮投与を専ら意味する。局所投与のための物質は、典型的には真皮の局所用医薬組成物として製剤化される。
【0042】
ブロムヘキシン
本発明は、急性及び慢性疼痛を治療するための、ブロムヘキシン又はその塩に関する。ブロムヘキシンは、様々な呼吸器疾患の治療のための多くの国において使用される。去痰薬としての1963年の市場への導入時から、ブロムヘキシンは、ヒト及び動物使用での呼吸器疾患のための処方箋の不要な(OTC)薬である(例えば、Bisolvon(登録商標))。ヒト用途に関して、ブロムヘキシンは、シロップ剤、吸入剤又は錠剤の形状で提供され、これは成人において24~48mg/日の範囲の投与量で投与される。ブロムヘキシンは、粘液の物理化学的特徴を変更することにより、様々な粘液成分の分泌を増強することがわかっている。これらの変化は次に、粘膜毛様体クリアランスを増大し、咳を鎮める。ブロムヘキシンは、分泌容積を増大し、且つ痰の粘度を減少し、これにより粘膜毛様体クリアランスを増大する。
【0043】
ブロムヘキシンは、高い肝臓初回通過効果のために(最大80%)、かなり低い生物学的利用能を有する。ブロムヘキシンは、他の不活性代謝産物に加え、アンブロキソールへ代謝される。アンブロキソールは、β-相での代謝産物の約25%を占める。しかし、アンブロキソールそれ自身は、更に代謝され、且つ存在する量は、実質的にブロムヘキシン分泌物溶解効果に寄与するには少なすぎると仮定される。初回通過効果は、局所投与について役割を果たさないので、アンブロキソールは、更に真皮投与後にかなりの量で形成されることは期待できない。ブロムヘキシンは、血管-脳関門を通過することがわかっており、従って全身投与後に有益な中枢神経作用も示すことが予想される。理論により結びつけられるものではないが、本発明者らは、ブロムヘキシンは、その分泌物溶解活性に関するよりも、疼痛治療における使用のためのほうが、より高い全身用量が必要とされると考える。このことは、疼痛治療におけるブロムヘキシンの活性が、40年以上もの間呼吸器疾患の治療後にこれまで認められなかった理由を説明するであろう。
【0044】
アンブロキソールは、齧歯類における疼痛関連挙動を軽減し、且つヒトにおいて疼痛を緩和することが示された。これは、Na1.8によりコードされたテトロドトキシン-抵抗性(TTXr)Na電流を優先し、感覚ニューロンにおいてNa+電流を遮断することが、更に報告されている。ブロムヘキシンの去痰薬としての長い治療経験にもかかわらず、疼痛治療におけるブロムヘキシンの有益な効果は、報告されていない。従ってブロムヘキシン又はその塩は、侵害受容性、神経因性及び機能障害性疼痛を含む、急性及び慢性疼痛の緩和において活性があることがわかったことは驚くべきことである。この化合物は、局所的に、特に経真皮的に、又は全身に投与されてよい。好ましくは、この化合物は、経真皮的、経口、又は皮下に、より好ましくは経真皮的又は経口に投与される。
【0045】
局所投与に関して、ブロムヘキシン又はその塩は、好ましくは、末梢神経因性疼痛、変性性関節痛又は腱炎関連疼痛などの、局在化された疼痛に罹患されたか又はそれに隣接する体の一部又は体表の領域(例えば、皮膚の上)へ、局所的に投与されてよい。しかし、局所ブロムヘキシンはまた、侵害受容性内臓痛及び機能障害性疼痛などの状態の患者において疼痛症状を緩和もすることができ、それは両方共、皮膚の過敏症及び/又は疼痛媒介性受容体の病的過剰発現又は疼痛媒介性受容体の過剰興奮性に関連し得るからである。
【0046】
あるいは、ブロムヘキシン又はその塩は、全身に、例えば錠剤、シロップ剤又はカプセル剤の形状などで、経口で投与されてよい。全身への又は経口の投与は、特に線維筋痛などの広範な疼痛の患者において、助けとなる。線維筋痛は、広範な疼痛であり、且つ広く身体に生じるか又は身体全体に移行する、接触に対する圧痛である。局所投与は、特定の症例又は身体の部分に適しているが、身体全体の治療に関しては、全身投与が必要とされる。ブロムヘキシンは更に、皮下経路を介して投与されてよい。この投与経路は、長期間の持続効果を提供するデポ製剤に特に適している。
【0047】
ブロムヘキシンは、局所及び全身投与の両方のために、その遊離塩基又は塩として投与されてよい。ブロムヘキシンの塩を形成するのに適した酸は、医薬として許容される塩、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸、シュウ酸、マロン酸、フマル酸、マレイン酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、及びメタンスルホン酸である。好ましくはブロムヘキシンの塩を形成するための酸は、塩酸である。
【0048】
ブロムヘキシンの使用
患者の急性又は慢性疼痛を治療する際に使用するためのブロムヘキシン又はその塩が、本明細書に提供される。疼痛は、侵害受容性疼痛、神経因性疼痛及び/又は機能障害性疼痛であってよい。一実施態様において、疼痛は、慢性侵害受容性疼痛、慢性神経因性疼痛及び/又は慢性機能障害性疼痛である。より具体的には、治療される疼痛は、(a)中枢神経因性疼痛;(b)末梢神経因性疼痛;(c)侵害受容性疼痛;(d)混合型疼痛症候群;(e)機能障害性疼痛;又は、(f)神経因性、侵害受容性又は混合型の頭痛:である。好ましくは、疼痛は、慢性中枢神経因性疼痛;慢性末梢神経因性疼痛;又は、慢性侵害受容性疼痛である。一実施態様において、疼痛は、化学療法が誘導した疼痛ではなく、特に化学療法が誘導した神経因性疼痛ではない。
【0049】
中枢神経因性疼痛の例は、多発性硬化症疼痛、脊髄損傷痛(SCI;対麻痺)、パーキンソン病関連疼痛、有痛性てんかん発作、脳卒中後疼痛、求心路遮断性疼痛、三叉神経痛、舌咽頭神経痛、視床痛、ボレリオ症疼痛、幻肢痛、及び有痛性脚不穏症候群であるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、本発明により治療される中枢神経因性疼痛は、多発性硬化症疼痛、脊髄損傷痛(SCI;対麻痺)、脳卒中後疼痛、求心路遮断性疼痛、三叉神経痛、視床痛、幻肢痛、又は有痛性脚不穏症候群である。
【0050】
末梢神経因性疼痛の例は、上腕痛感覚異常、手根管症候群、肢端紅痛症、顔面神経痛、ヘルペス後神経痛、術後神経痛、外傷後神経痛、坐骨神経痛、カウザルギー、単神経炎、神経絞扼症候群、神経損傷、神経炎痛、後頭神経痛、三叉神経ニューロパシー、異痛症及び痛覚過敏、尺骨神経溝症候群、足根管症候群、神経根障害、ファブリー病関連疼痛、多発性ニューロパシー、外傷後ニューロパシー、切断術後疼痛、断端痛及び錯感覚性背痛であるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、本発明により治療される末梢神経因性疼痛は、肢端紅痛症、ヘルペス後神経痛、術後神経痛、外傷後神経痛、カウザルギー、単神経炎、神経絞扼症候群、神経損傷、三叉神経ニューロパシー、異痛症及び痛覚過敏、神経根障害、多発性ニューロパシー、外傷後ニューロパシー、断端痛又は錯感覚性背痛である。
【0051】
侵害受容性疼痛の例は、内臓痛;虚血性疼痛;レイノー症候群関連疼痛;骨関節炎痛又は関節炎痛などの変性性関節痛;リウマチ痛;上顆炎、アキレス腱炎、筋膜炎疼痛、足底筋膜炎痛などの、腱炎関連疼痛;有痛性肩拘縮症;関節炎;変形性脊柱痛;変形性頚痛;炎症性疼痛;筋膜性疼痛症候群;筋肉硬結痛及び筋肉痛であるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、本発明により治療される侵害受容性疼痛は、虚血性疼痛、レイノー症候群関連疼痛、骨関節炎痛又は関節炎痛などの変性性関節痛、リウマチ痛、上顆炎、アキレス腱炎、有痛性肩拘縮症、関節炎、変形性脊柱痛、変形性頚痛、炎症性疼痛又は筋肉痛である。
【0052】
混合型疼痛症候群の例は、頸部症候群、癌性疼痛、腰痛、腹痛、複合性局所疼痛症候群(CRPS、疼痛性ジストロフィー、反射性ジストロフィー、ズデック萎縮とも称される)、切断術後疼痛、肛門痛、椎間板ヘルニア及び変性、変形性脊椎痛、脊椎手術後疼痛症候群(FBS)並びに急性又は慢性術後疼痛(CPSP)であるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、本発明により治療される混合型疼痛症候群は、頸部症候群、癌性疼痛、腰痛、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、切断術後疼痛、変形性脊椎痛、脊椎手術後疼痛症候群(FBS)及び急性又は慢性術後疼痛(CPSP)である。
【0053】
機能障害性疼痛の例は、軟組織リウマチ、線維筋痛、慢性骨盤痛症候群(CPPS)、慢性膀胱炎痛、慢性前立腺炎痛、尾骨痛、過敏性腸症候群、消化管の慢性疼痛、口腔顔面痛、肛門周囲痛、外陰部痛、デルカム病関連疼痛、広範囲疼痛及び頭蓋下顎障害であるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、本発明により治療される機能障害性疼痛は、軟組織リウマチ、線維筋痛、慢性膀胱炎痛、尾骨痛、口腔顔面痛、肛門周囲痛、外陰部痛、デルカム病関連疼痛、及び広範囲疼痛である。
【0054】
頭痛の例は、群発性頭痛、偏頭痛、緊張型頭痛、片頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛、SUNCT症候群、貨幣状頭痛、後頭神経痛及び三叉神経痛及びニューロパシーであるが、これらに限定されるものではない。好ましくは、頭痛は、偏頭痛、緊張型頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛、貨幣状頭痛、後頭神経痛及び三叉神経痛又はニューロパシーである。
【0055】
ブロムヘキシン又はその塩は、医薬組成物の形状であってよい。ブロムヘキシン又はその塩は、局所的に又は全身に、好ましくは経真皮的、経口、又は皮下に投与されてよい。好ましくは、ブロムヘキシン又はその塩は、局所的に、より好ましくは経真皮的、更により好ましくは表皮へ投与される。一実施態様において、ブロムヘキシン又はその塩は、医薬組成物の、好ましくは局所用医薬組成物、より好ましくは経真皮的局所用医薬組成物の形状である。
【0056】
一実施態様において、ブロムヘキシン又はその塩は、局所的に投与され、且つ疼痛は、局在化された疼痛である。全ての例証的疼痛又は先に明らかにされた例証的疼痛に関連した少なくとも局部の疼痛は、局所的に治療され得るが、一部の局在化された疼痛は、ブロムヘキシン又はその塩を含有する局所用医薬組成物を使用する治療に特に適している。
【0057】
非限定的に局所用医薬組成物を使用する治療に特に適している局在化された神経因性疼痛の例は、多発性硬化症疼痛、脊髄損傷痛(SCI;対麻痺)、パーキンソン病関連疼痛、脳卒中後疼痛、求心路遮断性疼痛、三叉神経痛、視床痛、ボレリオ症疼痛、幻肢痛、及び有痛性脚不穏症候群である。多発性硬化症疼痛に関して、特に末梢異痛症が言及される。
【0058】
非限定的に局所用医薬組成物を使用する治療に特に適している局在化された末梢神経因性疼痛の例は、上腕痛感覚異常、手根管症候群、肢端紅痛症、顔面神経痛、ヘルペス後神経痛、術後神経痛、外傷後神経痛、坐骨神経痛、カウザルギー、単神経炎、神経絞扼症候群、神経損傷、神経炎痛、後頭神経痛、三叉神経ニューロパシー、異痛症及び痛覚過敏、尺骨神経溝症候群、足根管症候群、神経根障害、ファブリー病関連疼痛、多発性ニューロパシー、外傷後ニューロパシー、切断術後疼痛、断端痛及び錯感覚性背痛である。
【0059】
非限定的に局所用医薬組成物を使用する治療に特に適している局在化された侵害受容性疼痛の例は、虚血性疼痛;レイノー症候群関連疼痛;骨関節炎痛又は関節炎痛などの変性性関節痛;リウマチ痛;腱炎関連疼痛(上顆炎、アキレス腱炎、筋膜炎疼痛、足底筋膜炎痛など);有痛性肩拘縮症;関節炎;変形性脊柱痛;炎症性疼痛;筋膜性疼痛症候群;筋肉硬結痛及び筋肉痛である。好ましくは、本発明の局所用医薬組成物を使用し治療される侵害受容性疼痛は、骨関節炎痛又は関節炎痛などの変性性関節痛、又は上顆炎、アキレス腱炎、筋膜炎疼痛、足底筋膜炎痛などの腱炎関連疼痛である。
【0060】
非限定的に局所用医薬組成物を使用する治療に特に適している局在化された混合型疼痛症候群の例は、頸部症候群、癌性疼痛、腰痛、腹痛、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、切断術後疼痛、肛門痛、椎間板ヘルニア及び変性、変形性脊椎痛、脊椎手術後疼痛症候群(FBS)並びに急性又は慢性術後疼痛(CPSP)である。
【0061】
非限定的に局所用医薬組成物を使用する治療に特に適している局在化された機能障害性疼痛の例は、軟組織リウマチ、慢性骨盤痛症候群(CPPS)、慢性前立腺炎痛、口腔顔面痛、肛門周囲痛、デルカム病関連疼痛、広範囲疼痛及び頭蓋下顎障害である。しかし皮膚過敏症など、線維筋痛、慢性膀胱炎痛、尾骨痛、過敏性腸症候群、及び消化管の慢性疼痛に関連した局部の疼痛もまた、局所用医薬組成物を用いて治療することができる。
【0062】
非限定的に局所用医薬組成物を使用する治療に特に適している頭痛の例は、緊張型頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛、後頭神経痛及び三叉神経痛又はニューロパシーである。
【0063】
局所治療に特に適しているのは、末梢神経因性疼痛又は侵害受容性変性性関節痛又は腱炎関連疼痛であり、好ましくは末梢神経因性疼痛は、局在化された末梢神経因性疼痛である。
【0064】
用語局在化された疼痛とは、明確な局在化を有するか、又は境界をひかれた身体の表面上の疼痛を指す。典型的には、これは、最大ほぼ2つの掌サイズまでの表面分布を有するか、又は体の一部に限定される。
【0065】
本発明によるブロムヘキシン又はその塩は、臨床又は獣医学用途のためである。本発明は、非限定的にヒト;類人猿、サル、伴侶動物(イヌ、ネコ、ハムスター、モルモットなど)、齧歯類、ウマ、ラクダ、並びに畜牛及びブタなどの家畜を含む、哺乳動物、好ましくは、ヒト、伴侶動物、ウマ、ラクダ及び家畜であり、より好ましくは、ヒト、ネコ、イヌ、ウマ、畜牛及びブタ、更により好ましくはヒトを治療する用途について、特に適している。
【0066】
本発明は更に、本発明の用途によるブロムヘキシン又はその塩を使用することを含む、治療方法を提供する。
【0067】
組成物
一態様において、ブロムヘキシン又はその塩は、全身又は局所投与のための、好ましくは経真皮的局所投与のための医薬組成物の形状で提供される。ブロムヘキシン又はその塩を含有する医薬組成物は、医薬として許容される賦形剤を更に含んでよい。
【0068】
ブロムヘキシンは、単独で又は他の医薬活性物質と組合せて使用してよい。好適な調製品は、全身性又は局所性の医薬組成物、例えば、錠剤、カプセル剤、坐剤、溶液、シロップ剤、乳液、軟膏、クリーム、ローション、ゲル剤、貼付剤、薬用硬膏、皮膚用貼付剤又は分散性粉末を含む。好適な錠剤は、例えば、活性物質(複数可)を、公知の賦形剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、もしくは乳糖などの不活性希釈剤、トウモロコシデンプンもしくはアルギン酸などの崩壊剤、デンプンもしくはゼラチンなどの結合剤、ステアリン酸マグネシウムもしくはタルクなどの滑沢剤、並びに/又はカルボキシメチルセルロース、酢酸フタル酸セルロースもしくはポリ酢酸ビニルなどの放出を遅延する物質と混合することにより得ることができる。錠剤はまた、複数の層を含んでよい。本発明による使用に適した錠剤は、Bisolvon(登録商標)錠である。
【0069】
コーティング錠は、先に記載した錠剤と同様に作製されたコアを、錠剤コーティングに適した物質、例えばコリドンもしくはシェラック、アラビアゴム、タルク、二酸化チタン、又は糖などによりコーティングすることにより、調製されてよい。遅延放出を達成するか又は配合変化を防止するために、コアは、多数の層からなることもできる。同様に錠剤コーティングは、遅延放出を達成するために、おそらく錠剤について先に言及した賦形剤を用い、多数の層からなることができる。錠剤はまた、pH依存性放出のために、腸溶性コーティングによりコーティングされてよい。
【0070】
本発明の活性物質又はその組合せを含有するシロップ剤は、加えて、サッカリン、チクロ、グリセロール又は糖などの甘味料、例えばバニリン又はオレンジエキスなどの香味料のような香味強化剤を含んでよい。これらはまた、カルボキシメチルセルロースナトリウムなどの懸濁アジュバントもしくは増粘剤、例えば脂肪族アルコールとエチレンオキシドの縮合生成物などの湿潤剤、又はp-ヒドロキシ安息香酸エステルなどの保存剤も含んでよい。本発明による使用に適したシロップ剤は、Bisolvon(登録商標)シロップである。
【0071】
1種もしくは複数の活性物質又は活性物質の組合せを含むカプセル剤は、例えば、活性物質を、乳糖又はソルビトールなどの不活性担体と混合し、且つそれらをゼラチンカプセルへ充填することにより、調製してよい。
【0072】
急性又は慢性疼痛の治療において使用するためのブロムヘキシン又はその塩の全身投与、特に経口投与に関して治療に有効な1日量は、ヒトにおいて約50mg~約1000mg、好ましくは約50mg~約800mg、より好ましくは約75mg~約500mgの範囲であり、更により好ましくは約100mg~約300mgである。ブロムヘキシン又はその塩は、1日に約1~3回、典型的には1日に2~3回投与されてよい。当業者は、投与頻度を、遅延放出製剤を用い減少することができることを理解するであろう。
【0073】
好ましくは、医薬組成物は、任意に少なくとも1種の医薬として許容される賦形剤を更に含む、ブロムヘキシン又はその塩を含有する局所用医薬組成物である。好ましくは、本局所用医薬組成物は、真皮送達のため、より好ましくは経皮的送達のために適合される。好ましい実施態様において、ブロムヘキシンは、ブロムヘキシン塩酸塩の形状である。本局所用医薬組成物は、クリーム、ローション、医療用ヘアローション、乳液、スプレー、溶液、軟膏、ゲル剤、又は皮膚用貼付剤の形状であってよい。剤形は、治療される体表の位置によって左右されるが(例えば、頭皮は、余り毛がない皮膚とは異なる製剤化が必要である)、しかし皮膚によるより良いその吸収のために、クリーム又はローションが好ましい。
【0074】
特に好ましいのは、クリーム、ローション、医療用ヘアローション、乳液、スプレー、溶液、軟膏、ゲル剤、又は皮膚用貼付剤からなる群から選択された製剤の形状の局所用医薬組成物である。ブロムヘキシンの含量は、1%~50%(w/w)、好ましくは3%~30%(w/w)、より好ましくは5%~20%である。本局所用医薬組成物は、好ましくは、経真皮的投与、より好ましくは経皮投与される。本局所用医薬組成物は、1日に約1~3回、典型的には1日に2~3回投与されてよい。皮膚用貼付剤はまた、50%(w/w)を超えるブロムヘキシン含量を含み、且つ連続して適用されてよい。
【0075】
本局所用医薬組成物は更に、天然、半-合成又は合成のポリマー、無機ゲル-形成する化合物(例えば、コロイド状二酸化ケイ素又はベントナイト)、香味料、香料、甘味料、着色剤、保存剤、低級アルコール(例えば、エタノール、1-プロパノール及び2-プロパノール)、ポリオール(例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセロール及び糖アルコール)、pH調節剤、透過性促進剤、脂肪酸及び可溶化剤の中から選択された1又は複数の賦形剤を含む。
【0076】
好適なポリマーは、アラビアゴム、セルロース、セルロース誘導体、好ましくは非イオン性及び粘膜付着性のセルロース誘導体、特に好ましくはメチルセルロース(MC)、カルボキシメチルセルロース(CMC)又はそれらの塩、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)、ヒドロキシエチルセルロース(HEC)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)又はメチルエチル-セルロース(MEC)、ポリビニルアルキルエーテル-コ-無水マレイン酸又はその塩、ゼラチン、ペクチン、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、トラガカント、カラゲナン(carrageenin)、キサンタン、キトサン、キトサンクロリド、アガロース、アガーアガー、アルギネート、ポロキサマー、デンプン、デンプン誘導体、グアーガム、ガラクトマンナン、ポリアクリレート、架橋されたアクリル系ポリマー、ポリ(ヒドロキシエチル)、ポリ(ヒドロキシプロピル)-及びポリ(ヒドロキシプロピルメチル)メタクリレートを含む群から選択される医薬として許容される化合物である。
【0077】
本発明による軟膏及びクリームは、その中にブロムヘキシン又はその塩が溶解又は分散されている親油性基剤からなる。これらはまた、医薬として許容される香料、甘味料、着色剤、透過性促進剤、抗酸化剤、透過性促進剤、ポリオール、分散剤、増粘剤、着色剤、香味剤、及び/又はpH調節剤も含んでよい。
【0078】
この親油性基剤は、合成又は天然の炭化水素、例えばパラフィン、ポリエチレン又はワセリンゲル、植物又は動物の油又は脂肪、硬化油、合成グリセリド、ワックス及び液体ポリアルキルシロキサンであってよい。以下の医薬として許容される賦形剤又はその選択された混合物は、親油性基剤として適している:炭化水素、例えば白色ワセリン、黄色ワセリン、薄い及び濃い流動パラフィン、固形パラフィン、微晶質パラフィン、パラフィン油、ポリエチレン、スクアレン、もしくはペルヒドロスクアレンなど、グリセリド、例えば部分グリセリド、ポリグリセリド、モノ-、ジ-もしくはトリグリセリドなど、脂肪酸、例えば、ステアリン酸、パルミチン酸、もしくはオレイン酸など、植物起源の脂肪油、例えばボリジ種子、アザミ、ラッカセイ、ココナツもしくはメイズ種子油など、(半)合成起源の脂肪油、例えば中鎖トリグリセリド、植物起源の脂肪及び硬化グリセリド、例えば硬化ラッカセイ油、ヒマシ油もしくはカカオバターなど、動物起源の脂肪、例えば豚脂など、又は半合成起源の脂肪、例えば固い脂肪もしくはシアバターなど、天然及び合成起源のワックス、例えば黄色ワックス、晒蜜蝋、微晶質ワックス、蜜蝋、セチルパルミテートもしくはその誘導体、好ましくはアセチル化されたワックス、ポリエチレンワックス、セチルエステルワックスもしくはTHGワックスなど、樹脂、例えばコロフォニーなど、又はシリコーン、例えばシリコーン油、ジメチコーン、シメチコーンもしくはシクロメチコンなど。
【0079】
以下の医薬として許容される賦形剤は、界面活性物質として使用されてよい:陰イオン性活性乳化剤、例えばステアリン酸アルカリ金属塩、好ましくはステアリン酸カリウム、又はステアリン酸金属塩、好ましくはアルミニウムモノステアレート、アミンソープ、好ましくはトリエタノールアミンもしくはトリエタノールアミンラウリルスルフェート、並びにアルキル硫酸塩、好ましくはドデシル硫酸ナトリウムなど、陽イオン性活性乳化剤、例えば、第4級アンモニウム化合物、好ましくは塩化ベンザルコニウムもしくは塩化セチルピリジニウムなど、両性乳化剤、例えば天然もしくは合成のリン脂質、特にレシチン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルグリセリド、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルセリンもしくはスフィンゴミエリンなど、又はベタイン非イオン性乳化剤、例えば、高級脂肪族アルコール、好ましくはセチルアルコール、ステアリルアルコールもしくはセチルステアリルアルコールなど、多価アルコールの部分エステル、好ましくはエチレン-/プロピレングリコール脂肪酸エステル、特に好ましくはエチレングリコールモノステアレート、ジステアレート、もしくはプロピレングリコールモノステアレートなど、グリセロール脂肪酸エステル、好ましくはグリセロールモノパルミテート、グリセロールジパルミテート、グリセロールトリパルミテート、グリセロールモノステアレート、グリセロールモノイソステアレート、グリセロールジステアレート、グリセロールジイソステアレート、グリセロールトリステアレート、グリセロールトリヒドロキシステアレート、グリセロールモノオレエートもしくはグリセロールジオレレートなど、ソルビトール脂肪酸エステル、好ましくはソルビトランラウレート、ソルビトールパルミテート、ソルビトールステアレート、ソルビトランモノオレエート、ソルビトランセスキオレエート、もしくはソルビトラントリオレエートなど、ポリエチレングリコールのエーテル及びエステル、好ましくはポリエチレングリコール脂肪族アルコールエーテル、好ましくはポリエチレングリコールラウリルエーテル、ポリエチレングリコールセチルエーテル、ポリエチレングリコールステアリルエーテル、ポリエチレングリコールセチルステアリルエーテル、もしくはポリエチレングリコールミリスチルセチルステアリルエーテルなど、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、好ましくはポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールステアリルステアレート、もしくはポリエチレングリコールリシノオレエートなど、ポリエチレングリコールソルビタン脂肪酸エステル、好ましくはポリソルベートなど、ポリエチレングリコールグリセロール脂肪酸エステル、好ましくはポリエチレングリコールグリセロールモノステアレート、ポリエチレングリコールグリセロールジステアレート、ポリエチレングリコールグリセロールヒドロキシステアレート、ポリエチレングリコールグリセロールトリパルミテート、ポリエチレングリコールグリセロールトリリノレート、ポリエチレングリコールグリセロールトリオレエート、ポリエチレングリコールグリセロールリシンオレエートもしくはポリエチレングリコールグリセロールココエートなど、ステアリン酸アルコール、好ましくはコレステロールもしくは羊毛アルコールなど、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレンのブロックコポリマー、好ましくはポロキサマー、羊毛脂又は羊毛アルコール、並びに前述の乳化剤の2種以上の混合物。
【0080】
好適な保存剤は、以下である:アルコール及びフェノール、例えばエタノール、イソプロパノール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、フェニルエチルアルコール、フェノキシエタノール、フェノール、クロロクレゾール、チモール又はトリクロサンなど、カルボン酸及びその塩、例えば安息香酸、安息香酸ナトリウム、ソルビン酸、ソルビン酸カリウムなど、PHBエステル(4-ヒドロキシ安息香酸エステル)、好ましくはメチル-4-ヒドロキシ安息香酸エステル、エチル-4-ヒドロキシ安息香酸エステル、プロピル-4-ヒドロキシ安息香酸エステルもしくはブチル-4-ヒドロキシ安息香酸エステル及びそれらのナトリウム化合物など、窒素化合物、例えば塩化ベンザルコニウム、クロルヘキシジングルコネート、ピリチオン亜鉛、又はシス1-(3-クロルアリル-3,5,7トリアザ 1-アゾニア-アダマンタンクロリド、又は炭酸プロピレンなど、並びに前述の保存剤の2種以上の混合物。
【0081】
好適な抗酸化剤は、天然の抗酸化剤、例えばアスコルビン酸、サリチル酸又は[アルファ]-トコフェロールなど、半合成抗酸化剤、例えばアスコルビン酸又は没食子酸のエステル、特にパルミトイルアスコルビン酸又はプロピル没食子酸など、合成抗酸化剤、例えばブチルヒドロキシアニソール、ブチルヒドロキシトルエン又はスルファイト、特に亜硫酸水素ナトリウムなど、錯化剤、例えばエデト酸又はナトリウム-EDTAなど、並びに前述の抗酸化剤の2種以上の混合物である。
【0082】
好適なポリオールは、例えば、グリセロール、糖アルコール、例えばソルビトール、マンニトール、マルチトールもしくはイソマルト、エチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキシレングリコール又はポリエチレングリコールである。好適な分散剤は、例えば、ミリスチルミリステート、イソプロピルミリステート、イソプロピルパルミテート、イソプロピルラノエート、ジイソプロピルアジペート、及びジブチルアジペートなどである。好適なpH調節剤は、例えば酸、例えば酢酸、酒石酸、クエン酸、乳酸、塩酸、硫酸又はリン酸など、塩基、例えばアンモニア、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アルミニウム又はトロメタモール、並びに塩、例えば炭酸水素ナトリウム、リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、リン酸一水素カリウム、リン酸二水素カリウム、塩化ナトリウム、クエン酸ナトリウム、シュウ酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、乳酸カルシウム、硫酸マグネシウム、クエン酸一水素アンモニウム又はクエン酸水素二アンモニウムなどである。好適な透過性促進剤は、例えば、尿素、ジメチルスルホキシド、ヒアルロン酸ナトリウム塩、アルカノール、例えばラウリルアルコール又はオレイルアルコールなど、アルカン酸、例えばオレイン酸など、1-ドデシルアザシクロヘプタン-2-オン、エチレングリコール、プロピレングリコール又はメントール、並びに1-アシル配糖体、1-アシル-ポリオキシエチレン、1-アシル-サッカライド、2-n-アシル-シクロヘキサノン、2-n-アシル-1,3-ジオキソラン(SEPA)、1,2,3-トリアシル-グリセロール、1-アルカノール、1-アルカン酸、1-アルキル-アセテート、1-アルキル-アミン、1-アルキル-n-アルキル-ポリオキシエチレン、1-アルキル-アルキレート、n-アルキル-ベータ-D-チオ配糖体、1-アルキル-グリセリド、1-アルキル-プロピレングリコール、1-アルキル-ポリオキシエチレン、1-アルキル-2-ピロリドン、アルキル-アセトアセテート、アルキレングリコール、アルキルメチルスルホキシド、アルキル-プロピオネート、アルキルスルフェート、ジアシルスクシネート、ジアシル-N,N-ジメチルアミノアセテート(DDAA)、ジアシル-N,N-ジメチルアミノイソプロピオネート(DDAIP)及びフェニルアルキルアミンの中から選択された他の透過性促進剤である。使用される増粘剤は、ゲル剤及び親水性泥膏の説明において先に言及したような、天然又は半合成ポリマー、合成ポリマー、無機ゲル-形成する化合物であってよい。
【0083】
基本的にドイツ薬局方外規格/新処方フォーミュラリ(DAC/NRF)に収載された任意の医師処方の調製品は、本発明において、非限定的に、ベースクリームDAC(グリセロールモノステアレート、セチルアルコール、中鎖トリグリセリド、白色ワセリン、マクロゴール-20-グリセロールモノステアレート、プロピレングリコール、精製水)及びWolffベースクリームミディアムファット(アクア、オレイン酸デシル、ステアリン酸グリセリル、パルミチン酸、ステアリン酸、セテアレス-3、リノール酸、トロメタミン、セラアルバ、香料、メチルパラベン、エチルパラベンナトリウム)を含有する、基剤クリームとして使用することができる。具体的実施態様において、真皮局所用クリームは、均一なクリームを得るために、ブロムヘキシンを、中鎖トリグリセリド及びLinola Cremeなどの基剤クリームと混合することにより、好ましくはブロムヘキシンHCl(1~20%w/w)、約10%中鎖トリグリセリド及び基剤クリームを混合することにより、調製される。真皮局所用クリームは、皮膚によりより良く吸収されるという、ゲル剤に勝る利点を有する。ブロムヘキシンは、局所用医薬組成物へ、特に均一なクリームへ、迅速且つ容易に製剤化される。このクリームは、皮膚により容易に(すなわち、迅速且つ完全に)吸収され、且つ白色の染みなどの服の汚れに繋がらない。
【0084】
組合せ
本発明は更に、ブロムヘキシン又はその塩と、1又は複数の更なる活性物質を含む組合せに関する。1又は複数の活性物質及びブロムヘキシン又はその塩は、一緒に、個別に又は長期間にわたり投与されてよい。1又は複数の活性物質及びブロムヘキシン又はその塩は、1種の医薬組成物中に、又は個別の医薬組成物中に製剤化されてよい。これらが、個別の医薬組成物中に製剤化される場合には、これらは更に異なる経路により投与されてよい。
【0085】
1又は複数の更なる活性物質は、抗痙攣薬、例えばガバペンチン、プレガバリン、フェニトイン、カルバマゼピン、オキシカルバゼピンもしくはラモトリギンなど;抗うつ薬、例えばアミトリプチリン、ドキセピン、デュロキセチンもしくはベンラファキシンなど;神経保護物質、例えばNMDA受容体アンタゴニスト、例えばケタミン、デキストロメトルファンもしくはメマンチンなど;不整脈治療薬、好ましくはリドカイン及びメキシレチンなど;又は、アルファアドレナリン作動性アゴニスト、例えばクロニジンなどであってよい。
【0086】
1又は複数の活性のある更なる物質はまた、疼痛寛解剤(pain reliever)、例えばオピエート、好ましくはモルヒネ、オキシコドン、ヒドロモルフォン、タペンタドール、ブプレノルフィン、フェンタニル、レボメサドン、コデイン、トラマドールもしくはチリジンなど;抗炎症性鎮痛薬、例えば、アセチルサリチル酸、パラセタモル、ジクロフェナク、メロキシカム、インドメタシン、イブプロフェン、イブプロフェンリシネート、エトリコキシブ、セレコキシブもしくはDMSO(ジメチル-スルホキシド)など;局所麻酔性鎮痛薬、プリロカイン、ブピバカイン、ロピバカイン、メピバカイン及びキシロカインのようなもの、又は他のカプサイシン、アンブロキソールもしくはバクロフェンのようなものであってよい。
【実施例0087】
実施例
以下の実施例において、別に言及しない限りは、20%(w/w)ブロムヘキシンHCl(10g)、中鎖トリグリセリド(MCT;Triglycerida Saturata Medium Migloyol(登録商標)812N、FAGRON社、カタログ番号73398-61-5)(5g)、50gとなるよう添加したLinola Creme(Dr. August Wolff社、Arzneimittel、PZN 02489672;不飽和脂肪酸(C18:2)、カルボマー980、デシルオレエート(decyloleat)、グリセロールモノステアラート、セテアレス-3、フェノキシエタノール、ステアリン酸、トロメタモール、晒蜜蝋及び精製水を含有するO/W型乳液)を含有する、真皮局所用クリームを使用した。真皮局所用クリームは、ブロムヘキシンを、MCTと混合し、且つLinola Cremeを添加し、均一なクリームを得ることにより調製した。本発明者らは、クリームは皮膚によりよりよく吸収されるので、ゲル剤よりも真皮局所用クリームを選択した。ブロムヘキシンは、局所用医薬組成物に、特に均一なクリームに、迅速かつ容易に製剤化した。クリームは、皮膚により容易に(すなわち、迅速且つ完全に)吸収され、白色の染みなどの服の汚れに繋がらなかった。
【0088】
本真皮局所用クリームは、患部の皮膚に(薄く)投与し、且つ有益な効果は、典型的には30分以内に認められた。この効果は、約4~12時間、典型的には6時間持続した。長期治療に関して、このクリームは、1日2~3回投与した。一部症例において、1日1回の投与で十分であった。
【0089】
迅速な開始及びブロムヘキシンは局所投与後に作用するという事実は、これは活性代謝産物アンブロキソールを介しては作用しないことを指摘している。更に、ブロムヘキシンは肝臓において初回通過代謝により主に代謝されるので、活性代謝産物アンブロキソールが、局所投与後に観察された効果において役割を果たすことは可能性が低い。
【0090】
以下に示した全ての症例報告において、疼痛の強度は、患者が自身の疼痛について‘0=無痛’と‘10=耐えがたい痛み’の間で等級化する、NRSスコア(NRS=数値化した等級スケール)により報告される。NRSスコアは、国際刊行物における疼痛評価の標準であり、且つその文献に従い、NRS3以下の強度を、通常、慢性疼痛の患者は「耐えられる」ものと感じる。
【0091】
ブロムヘキシンの全ての適用は、重症且つ進行中の疼痛についての、個別の治療の試みとして、WMAヘルシンキ宣言(医学研究の倫理原則)の37章を基に実行した。治療した患者で、副作用は報告されなかった。症例1-3、9及び11は、書面で記録し、症例4-8及び10は、ビデオで記録した。言及した症例における疼痛の状態は、末梢且つ局在化されるので、治療は局所的であった。線維筋痛などの他の疼痛状態に関しては、全身適用が、より適しているであろう。これは、局所治療は既に成功していることが示されているので、特に有望である(図4及び5参照)。
【0092】
症例報告1:膝関節全置換術後の侵害受容性及び神経因性疼痛
この女性患者は、両膝の骨関節炎に罹患し、且つ膝関節置換術を受けた後、その一方に術後遷延性疼痛(CPSP)を有した。両膝の試験は、接触により皮膚の、及びちょっとの優しい圧力により既に組織の、局部過敏を示した。抗炎症薬及びオピエートは十分ではなく、局所リドカイン硬膏は役に立たなかった。疼痛レベルはNRS7から始まり、局所ブロムヘキシンの30分後にはNRS6へ、及び2時間以内にNRS4へ低下した。同様の結果は、関連のある骨関節炎を有する他方の膝においても達成された(図5、左側カラムの「膝骨関節炎」)。別の状況において、両膝の疼痛は、ブロムヘキシン治療前のNRS6から2時間後のNRS3まで低下した。
【0093】
症例報告2:神経因性前足疼痛
この72歳の男性患者は、両足に神経因性疼痛を呈し、「石炭上を走る(running on coals)」及び「万力で掴む(gripped in a vice)」ように感じ、歩行又は庭仕事はほぼ不可能であった。これは整形外科用語では説明することができず、神経記録検査では、多発性ニューロパシーは検出されなかった。試験は、突出した異痛症を示した。ガバペンチン、オピエート及び局所リドカインは、役に立たなかった。局所ブロムヘキシン後、踵と爪先で回転させる時(heel-to-toe roll)にNRS5の疼痛及び前足接触感受性は、15分以内にNRS1に低下し、30分後には何時間も消失した(図6、最後のカラムの「神経因性前足痛」)。8時間後、疼痛レベルは依然NRS2であり、歩行機能障害は再発しなかった。
【0094】
症例報告3:手の骨関節炎及び変性膝痛
この高齢女性は、骨関節炎のために、右手及び手首の疼痛に罹患していた。局所ブロムヘキシンクリームは、治療前のNRS6から、2時間以内でのNRS0.5への、疼痛軽減に繋がった(図5、右側から二番目のカラムの「多発関節炎指/手」)。従って運動は、痛みなしでほとんど行うことができた。半月板手術後に左膝が痛んだ時の別のブロムヘキシン治療もまた、成功した:NRS8の疼痛強度は、NRS4.5まで低下することができた(図5、右側カラムの「術後膝痛」)。
【0095】
症例報告4:疱疹後神経痛
この35歳の女性患者は、帯状疱疹ウイルス感染症に罹り、それ以降3年前から皮膚発疹が続いている。右胸部の患部に、患者は、動的異痛症、並びに針で刺すような痛覚過敏、並びに輪状から腹部領域へ広がる冷たくエアブラシで吹き付けるような過敏症を発症した。その患部の背面部分のみを、ブロムヘキシンで治療した。ほんの数分後、チクチクする感覚及び自覚的過敏症は軽減され(NRS6)、その後完全に消失した。他覚的臨床試験により、15分後に、チクチクする感覚の他覚的知見は、再現することができず、治療部位の疼痛は、15分後にNRS4へ、及び30分後にNRS1へ漸減した。しかしチクチクする痛みは、未治療の腹部領域では変化がなかった(図6、左から二番目のカラムの「疱疹後神経痛」参照)。
【0096】
症例報告5:腰痛(S1-神経根障害)
この2人の幼児の母親である患者は、最後の出産後の複数回の腹部手術に起因した重症の慢性腰痛に罹患し、損傷した左S1神経の神経根障害を合併していた。神経圧迫椎間板ヘルニアは、明らかに、1回の長時間の手術時の問題のある体位の結果である。ブロムヘキシン治療前、数種の末梢神経及び中枢神経作用物質による薬物治療の採用にもかかわらず、疼痛レベルはNRS6であった。ブロムヘキシンは、突き刺すような感覚を軽減し、30分以内に痛みを約4に下げた(図6、三番目のカラムの「腰部神経根障害」)。患者は、この「新たな感覚」を「はるかにより快適」と表現した。
【0097】
症例報告6:関節リウマチ及び線維筋痛
この75歳女性において、長年にわたる関節リウマチ及び線維筋痛は、慢性疼痛疾患を発症した。手は、痛みを伴い変形され、拳を閉じる動きのような運動は、非常にゆっくりとした時だけ可能であり、この運動は痛みを伴い不完全であった。自立(self-supply)は脅かされた。疼痛治療に関する医学的選択肢は、非ステロイド性抗リウマチ薬(NSAIDS)又はコキシブによる胃、腎臓、心臓血管系及び肝臓への長期間の副作用のため、並びに鎮静状態及び眩暈としての中枢神経作用により引き起こされる転倒のリスクのために、限定された。ブロムヘキシンクリームは、両手に塗布した。2分後既に患者は、痛みが改善されたので両手を動かし「痛みを探す」ことを開始し、運動はより容易に迅速に完全に行うことができた。局所ブロムヘキシンの5分後、拳を閉じる動きは、モーションシーケンスにおいて著しく改善され、手の「軽快で柔らかい感覚」のために少ない痛みで行うことができた(図2及び図5、左から二番目のカラムの「関節リウマチ+線維筋痛」参照)。患者は、この状況をはるかにより快適であり、且つ機能障害の減少は非常に有益なものと説明した。これは数時間継続した。
【0098】
症例報告7:複合性局所疼痛症候群(CRPS)
この中年女性は、来院の数週間前に、手根管症候群の手術後、複合性局所疼痛症候群(CRPS)を発症した。右手は腫れ、手首を閉じる動き、及び親指を小指(finger V)に相対するように置く能力が損なわれた。局所ブロムヘキシン前に、焼けるような痛みが、NRSレベル8に到達し、ナイフで刺すような痛みが、指を動かそうとすると始まった。治療の30~45分後、焼けるような痛みは、NRS3に低下し(図6、左側カラムの「複合性局所疼痛症候群(CRPS)」参照)、親指の明らかに改善された可動域のような手の動きは、突き刺すような感覚を伴わずに行うことができた。依然十分理解されず且つ承認された薬物療法が利用できないこの潜在的に長期間の極めて機能を損なう疾患について、長期間の治療が開始された。
【0099】
症例報告8:慢性の不明確な重症の疼痛症候群
この女性患者は、5年にわたり、原因不明の両手及び腕に慢性の重症の疼痛症候群を有した。患者は、手及び腕の痛みを伴う緊張、過熱、発赤及び機能不全の症状を示した。局所ブロムヘキシン後20分で、治療された左手は、発赤の減少(図1A及びB、白色矢印)、並びに疼痛と腫脹及び緊張の感覚の印象的な減少を呈した。更に、可能な指の広がりの程度は、ブロムヘキシンにより治療された患者の左手において、未治療の患者の右手と比べ、はるかに良かった(図1C)。特に患者のブロムヘキシンで治療した左手の「痛みで制限された」指の広がりの程度は、未治療の患者の右手と比べ、増大した。未治療の患者の右手において、疼痛は、最初の運動の直後に始まった。更に患者の治療した左肘において、ブロムヘキシン後20分の痛みのない可能な肘の回転の程度は、増大した(図1D、下側パネル)。患者の右肘においては、痛みのない運動は不可能であった(図1D、上側パネル)。同じく腫脹の減少が、治療した領域において認められた。患者は、ブロムヘキシン投与後約30分で、左手及び腕の痛みのない運動を行うことができたが、未治療の対側の右腕では、痛みのない運動は不可能であった。
【0100】
症例報告9:骨関節炎により引き起こされた慢性疼痛
長年、指の骨関節炎により引き起こされた慢性疼痛を伴う患者。拳の形成は、不完全で、非常に痛かった。図3の上側パネルに示したような半分閉じた拳であっっても、既に痛みがあった。ブロムヘキシン局所投与の15分後、拳は完全に閉じ、痛みが軽減した(図3、下側パネル)。
【0101】
症例報告10:重症の線維筋痛
この重症線維筋痛の患者は、痛みを伴う手/指の運動及び腫脹の増悪を示した。局所ブロムヘキシンの25分後、腫脹は、治療した右手において大きく減少し(図4A)、拳を閉じる動きは、モーションシーケンスにおいて著しく改善され、治療した右手の「軽快で柔らかい感覚」のために、少ない痛みで行うことができた(図4B)。患者は、減少した腫脹、拳を閉じる動きの可能性及び運動時の機能障害の減少について驚いていた。拳を閉じる動きは、治療前は、痛みなし(またはほぼ無し)ではわずかに半分閉じることが可能であった(図4C、上側パネル)。局所ブロムヘキシンの25分後、拳を閉じる動きは、痛みなしで完全に可能であった(図4C、中央パネル)。親指の掌への動きも、痛みにより不可能であったが、図4C、下側パネルに示したように、局所ブロムヘキシン投与後わずか25分で、痛みなしに行うことができた。
【0102】
症例報告11:線維筋痛
この中年女性患者は、長年線維筋痛を罹患し、医師に診てもらった際には、増悪及び悪化を呈していた。患者の両手の痛みは、NRSレベル5であり、指関節の運動又は接触時に、緊張の感覚、凝り、腫脹及び刺すような痛みの質を伴っていた。手への局所ブロムヘキシン後30分で、これは、広く消失し、運動はより容易に行うことができた。この組織の感覚は、より優しく柔らかくなり、刺すような痛みは消失した(図5、三番目のカラムの「線維筋痛」)。
【0103】
この患者において、局部的治療に適さない患者の体の部位は更に、罹患していた。線維筋痛をより全身的に治療するために、患者は、経口ブロムヘキシンにより、初回量の2~3×12mgで治療する。この投与量は、効果及び忍容性に応じて、最大100mg/日まで増量する。その結果に応じて、最大300mg/日のより高い投与量が、更に考慮される。鎮痛及び抗炎症効果は、定期的来院時にモニタリングする。
【0104】
本発明は、以下の項目を包含している:
1. 患者における急性又は慢性疼痛の治療において使用するためのブロムヘキシン又はその塩。
2. 前記疼痛が、侵害受容性疼痛、神経因性疼痛及び/又は機能障害性疼痛である、項目1の使用のためのブロムヘキシン又はその塩。
3. 前記疼痛が、慢性侵害受容性疼痛、慢性神経因性疼痛及び/又は慢性機能障害性疼痛である、項目1又は2の使用のためのブロムヘキシン又はその塩。
4. 前記疼痛が:
(a)中枢神経因性疼痛;
(b)末梢神経因性疼痛;
(c)侵害受容性疼痛;
(d)混合型疼痛症候群;
(e)機能障害性疼痛;又は
(f)神経因性、侵害受容性又は混合型の頭痛:である、項目1~3のいずれか一項の使用のためのブロムヘキシン又はその塩。
5. 前記疼痛が、慢性中枢神経因性疼痛;慢性末梢神経因性疼痛;又は、慢性侵害受容性疼痛である、項目4の使用のためのブロムヘキシン又はその塩。
6. 前記中枢神経因性疼痛が、多発性硬化症疼痛、脊髄損傷痛(SCI;対麻痺)、パーキンソン病関連疼痛、有痛性てんかん発作、脳卒中後疼痛、求心路遮断性疼痛、三叉神経痛、舌咽頭神経痛、視床痛、ボレリオ症疼痛、幻肢痛、及び有痛性脚不穏症候群からなる群から選択される、項目4又は5の使用のためのブロムヘキシン又はその塩。
7. 前記末梢神経因性疼痛が、上腕痛感覚異常、手根管症候群、肢端紅痛症、顔面神経痛、ヘルペス後神経痛、術後神経痛、外傷後神経痛、坐骨神経痛、カウザルギー、単神経炎、神経絞扼症候群、神経損傷、神経炎痛、後頭神経痛、三叉神経ニューロパシー、異痛症及び痛覚過敏、尺骨神経溝症候群、足根管症候群、神経根障害、ファブリー病関連疼痛、多発性ニューロパシー、外傷後ニューロパシー、切断術後疼痛、断端痛及び錯感覚性背痛からなる群から選択される、項目4又は5の使用のためのブロムヘキシン又はその塩。
8. 前記侵害受容性疼痛が、内臓痛;虚血性疼痛;レイノー症候群関連疼痛;骨関節炎痛又は関節炎痛などの変性性関節痛;リウマチ痛;上顆炎、アキレス腱炎、筋膜炎疼痛、足底筋膜炎痛などの、腱炎関連疼痛;有痛性肩拘縮症;関節炎;変形性脊柱痛;変形性頚痛;炎症性疼痛;筋膜性疼痛症候群;筋肉硬結痛及び筋肉痛からなる群から選択される、項目4又は5の使用のためのブロムヘキシン又はその塩。
9. 前記混合型疼痛症候群が、頸部症候群、癌性疼痛、腰痛、腹痛、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、切断術後疼痛、肛門痛、椎間板ヘルニア及び変性、変形性脊椎痛、脊椎手術後疼痛症候群(FBS)並びに急性及び慢性術後疼痛(CPSP)からなる群から選択される、項目4の使用のためのブロムヘキシン又はその塩。
10. 前記機能障害性疼痛が、軟組織リウマチ、線維筋痛、慢性骨盤痛症候群(CPPS)、慢性膀胱炎痛、慢性前立腺炎痛、尾骨痛、過敏性腸症候群、消化管の慢性疼痛、口腔顔面痛、肛門周囲痛、外陰部痛、デルカム病関連疼痛、広範囲疼痛及び頭蓋下顎障害からなる群から選択される、項目4の使用のためのブロムヘキシン又はその塩。
11. 前記頭痛が、群発性頭痛、偏頭痛、緊張型頭痛、片頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛、SUNCT症候群、貨幣状頭痛、後頭神経痛及び三叉神経痛及びニューロパシーからなる群から選択される、項目4の使用のためのブロムヘキシン又はその塩。
12. 前記ブロムヘキシン又はその塩が、局所的又は全身に投与される、項目1~11のいずれか一項の使用のためのブロムヘキシン又はその塩。
13. 前記ブロムヘキシン又はその塩が、局所的、好ましくは経真皮的に投与される、項目1~12のいずれか一項の使用のためのブロムヘキシン又はその塩。
14. 前記ブロムヘキシン又はその塩が、局所的に投与され、且つ疼痛が、末梢神経因性疼痛、好ましくは局在化された末梢神経因性疼痛であるか、又は疼痛が、変性性関節痛又は腱炎関連疼痛である、項目13の使用のためのブロムヘキシン又はその塩。
15. 前記ブロムヘキシンが、ブロムヘキシン塩酸塩の形状である、項目1~14のいずれか一項の使用のためのブロムヘキシン又はその塩。
16. 前記患者が、哺乳動物、好ましくはヒト、伴侶動物、ウマ、ラクダ又は家畜、より好ましくはヒトである、項目1~15のいずれか一項の使用のためのブロムヘキシン又はその塩。
17. 項目1~16のいずれか一項の使用のためのブロムヘキシン又はその塩を含有する組成物。
18. ブロムヘキシン又はその塩及び医薬として許容される賦形剤を含有する、局所用医薬組成物。
19. 経真皮的使用のための項目18の局所用医薬組成物。
20. ブロムヘキシンが、ブロムヘキシン塩酸塩の形状である、項目19又は20の局所用医薬組成物。
21. 前記組成物が、クリーム、ローション、医療用ヘアローション、乳液、スプレー、溶液、軟膏、ゲル剤、又は皮膚用貼付剤の形状である、項目18~20のいずれか一項の局所用医薬組成物。
22. 患者において、急性又は慢性疼痛の治療における使用のための、項目18~21のいずれか一項の局所用医薬組成物。
23. 前記疼痛が、侵害受容性疼痛、神経因性疼痛及び/又は機能障害性疼痛である、項目22の使用のための局所用医薬組成物。
24. 前記疼痛が、慢性侵害受容性疼痛、慢性神経因性疼痛及び/又は慢性機能障害性疼痛である、項目22又は23の使用のための局所用医薬組成物。
25. 前記疼痛が、局在化された:
(a)中枢神経因性疼痛;
(b)末梢神経因性疼痛;
(c)侵害受容性疼痛;
(d)混合型疼痛症候群;
(e)機能障害性疼痛;又は
(f)神経因性、侵害受容性又は混合型の頭痛:である、項目22~24のいずれか一項の使用のための局所用医薬組成物。
26. 前記疼痛が、局在化された慢性中枢神経因性疼痛;慢性末梢神経因性疼痛;又は、慢性侵害受容性疼痛である、項目25の使用のための局所用医薬組成物。
27. 前記中枢神経因性疼痛が、多発性硬化症疼痛、脊髄損傷痛(SCI;対麻痺)、パーキンソン病関連疼痛、有痛性てんかん発作、脳卒中後疼痛、求心路遮断性疼痛、三叉神経痛、舌咽頭神経痛、視床痛、ボレリオ症疼痛、幻肢痛、及び有痛性脚不穏症候群からなる群から選択される、項目25又は26の使用のための局所用医薬組成物。
28. 前記末梢神経因性疼痛が、上腕痛感覚異常、手根管症候群、肢端紅痛症、顔面神経痛、ヘルペス後神経痛、術後神経痛、外傷後神経痛、坐骨神経痛、カウザルギー、単神経炎、神経絞扼症候群、神経損傷、神経炎痛、後頭神経痛、三叉神経ニューロパシー、異痛症及び痛覚過敏、尺骨神経溝症候群、足根管症候群、神経根障害、ファブリー病関連疼痛、多発性ニューロパシー、外傷後ニューロパシー、切断術後疼痛、断端痛及び錯感覚性背痛からなる群から選択される、項目25又は26の使用のための局所用医薬組成物。
29. 前記侵害受容性疼痛が、内臓痛;虚血性疼痛;レイノー症候群関連疼痛;骨関節炎痛又は関節炎痛などの変性性関節痛;リウマチ痛;上顆炎、アキレス腱炎、筋膜炎疼痛、足底筋膜炎痛などの、腱炎関連疼痛;有痛性肩拘縮症;関節炎;変形性脊柱痛;変形性頚痛;炎症性疼痛;筋膜性疼痛症候群;筋肉硬結痛及び筋肉痛からなる群から選択される、項目25又は26の使用のための局所用医薬組成物。
30. 前記混合型疼痛症候群が、頸部症候群、癌性疼痛、腰痛、腹痛、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、切断術後疼痛、肛門痛、椎間板ヘルニア及び変性、変形性脊椎痛、脊椎手術後疼痛症候群(FBS)並びに急性及び慢性術後疼痛(CPSP)からなる群から選択される、項目25の使用のための局所用医薬組成物。
31. 前記機能障害性疼痛が、軟組織リウマチ、線維筋痛、慢性骨盤痛症候群(CPPS)、慢性膀胱炎痛、慢性前立腺炎痛、尾骨痛、過敏性腸症候群、消化管の慢性疼痛、口腔顔面痛、肛門周囲痛、外陰部痛、デルカム病関連疼痛、広範囲疼痛及び頭蓋下顎障害からなる群から選択される、項目25の使用のための局所用医薬組成物。
32. 前記頭痛が、群発性頭痛、偏頭痛、緊張型頭痛、片頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛、SUNCT症候群、貨幣状頭痛、後頭神経痛及び三叉神経痛及びニューロパシーからなる群から選択される、項目25の使用のための局所用医薬組成物。
33. 前記疼痛が、末梢性神経因性疼痛、好ましくは局在化された神経因性疼痛であるか、又は疼痛が、変性性関節痛又は腱炎関連疼痛である、項目23の使用のための局所用医薬組成物。
34. 前記患者が、哺乳動物、好ましくはヒト、伴侶動物、ウマ、ラクダ又は家畜、より好ましくはヒトである、項目22~33のいずれか一項の使用のための局所用医薬組成物。
35. ブロムヘキシン又はその塩を患者へ投与することを含む、慢性又は急性疼痛の患者を治療する方法。
36. ブロムヘキシン又はその塩を含有する組成物を、患者へ投与することを含む、項目35の方法。
37. 前記疼痛が、侵害受容性疼痛、神経因性疼痛及び/又は機能障害性疼痛である、項目35又は36の方法。
38. 前記疼痛が、慢性侵害受容性疼痛、慢性神経因性疼痛及び/又は慢性機能障害性疼痛である、項目37の方法。
39. 前記疼痛が:
(g)中枢神経因性疼痛;
(h)末梢神経因性疼痛;
(i)侵害受容性疼痛;
(j)混合型疼痛症候群;
(k)機能障害性疼痛;又は
(l)神経因性、侵害受容性又は混合型の頭痛:である、項目35~38のいずれか一項の方法。
40. 前記疼痛が、慢性中枢神経因性疼痛;慢性末梢神経因性疼痛;又は、慢性侵害受容性疼痛である、項目39の方法。
41. 前記中枢神経因性疼痛が、多発性硬化症疼痛、脊髄損傷痛(SCI;対麻痺)、パーキンソン病関連疼痛、有痛性てんかん発作、脳卒中後疼痛、求心路遮断性疼痛、三叉神経痛、舌咽頭神経痛、視床痛、ボレリオ症疼痛、幻肢痛、及び有痛性脚不穏症候群からなる群から選択される、項目39又は40の方法。
42. 前記末梢神経因性疼痛が、上腕痛感覚異常、手根管症候群、肢端紅痛症、顔面神経痛、ヘルペス後神経痛、術後神経痛、外傷後神経痛、坐骨神経痛、カウザルギー、単神経炎、神経絞扼症候群、神経損傷、神経炎痛、後頭神経痛、三叉神経ニューロパシー、異痛症及び痛覚過敏、尺骨神経溝症候群、足根管症候群、神経根障害、ファブリー病関連疼痛、多発性ニューロパシー、外傷後ニューロパシー、切断術後疼痛、断端痛及び錯感覚性背痛からなる群から選択される、項目39又は40の方法。
43. 前記侵害受容性疼痛が、内臓痛;虚血性疼痛;レイノー症候群関連疼痛;骨関節炎痛又は関節炎痛などの変性性関節痛;リウマチ痛;上顆炎、アキレス腱炎、筋膜炎疼痛、足底筋膜炎痛などの、腱炎関連疼痛;有痛性肩拘縮症;関節炎;変形性脊柱痛;変形性頚痛;炎症性疼痛;筋膜性疼痛症候群;筋肉硬結痛及び筋肉痛からなる群から選択される、項目39又は40の方法。
44. 前記混合型疼痛症候群が、頸部症候群、癌性疼痛、腰痛、腹痛、複合性局所疼痛症候群(CRPS)、切断術後疼痛、肛門痛、椎間板ヘルニア及び変性、変形性脊椎痛、脊椎手術後疼痛症候群(FBS)並びに急性及び慢性術後疼痛(CPSP)からなる群から選択される、項目39の方法。
45. 前記機能障害性疼痛が、軟組織リウマチ、線維筋痛、慢性骨盤痛症候群(CPPS)、慢性膀胱炎痛、慢性前立腺炎痛、尾骨痛、過敏性腸症候群、消化管の慢性疼痛、口腔顔面痛、肛門周囲痛、外陰部痛、デルカム病関連疼痛、広範囲疼痛及び頭蓋下顎障害からなる群から選択される、項目39の方法。
46. 前記頭痛が、群発性頭痛、偏頭痛、緊張型頭痛、片頭痛、三叉神経・自律神経性頭痛、SUNCT症候群、貨幣状頭痛、後頭神経痛及び三叉神経痛及びニューロパシーからなる群から選択される、項目39の方法。
47. 前記ブロムヘキシン又はその塩が、局所的又は全身に投与される、項目35~46のいずれか一項の方法。
48. 前記ブロムヘキシン又はその塩が、局所的、好ましくは経真皮的に投与される、項目47の方法。
49. 前記ブロムヘキシン又はその塩が、局所的に投与され、且つ疼痛が、末梢神経因性疼痛、好ましくは局在化された神経因性疼痛であるか、又は疼痛が、変性性関節痛又は腱炎関連疼痛である、項目48のいずれか一項の方法。
50. 前記ブロムヘキシンが、ブロムヘキシン塩酸塩の形状である、項目35~49のいずれか一項の方法。
51. 前記患者が、哺乳動物、好ましくはヒト、伴侶動物、ウマ、ラクダ又は家畜、より好ましくはヒトである、項目35~50のいずれか一項の方法。
図1(A)】
図1(B)】
図1(C)】
図1(D)】
図1(E)】
図2
図3
図4(A)-(B)】
図4(C)】
図5
図6
【手続補正書】
【提出日】2022-12-07
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書及び/又は図面に記載された発明。
【外国語明細書】