(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168088
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】状態判定装置、状態判定システム及び状態判定プログラム
(51)【国際特許分類】
A61B 5/00 20060101AFI20231116BHJP
A61B 5/024 20060101ALI20231116BHJP
A61B 5/11 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
A61B5/00 G
A61B5/00 102A
A61B5/00 102C
A61B5/024
A61B5/11 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079734
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】595022474
【氏名又は名称】株式会社ユビテック
(74)【代理人】
【識別番号】100087398
【弁理士】
【氏名又は名称】水野 勝文
(74)【代理人】
【識別番号】100128783
【弁理士】
【氏名又は名称】井出 真
(74)【代理人】
【識別番号】100128473
【弁理士】
【氏名又は名称】須澤 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100160886
【弁理士】
【氏名又は名称】久松 洋輔
(72)【発明者】
【氏名】三上 集
(72)【発明者】
【氏名】宮内 弘一
【テーマコード(参考)】
4C017
4C038
4C117
【Fターム(参考)】
4C017AA10
4C017AA20
4C017AB02
4C017AB04
4C017AB10
4C017BC11
4C017BC23
4C017BD04
4C017BD06
4C017CC01
4C017CC08
4C017DD17
4C017FF05
4C038VA18
4C038VA20
4C038VB11
4C038VB31
4C038VC05
4C117XA05
4C117XB02
4C117XC11
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4C117XE13
4C117XE26
4C117XE56
4C117XH12
4C117XJ42
4C117XR02
(57)【要約】
【課題】 本発明は、安静状態となる機会が少ない建築現場の現場作業員の状態を判定することが可能な状態判定装置、状態判定システム及び状態判定プログラムを提供することを目的とする。
【解決手段】 建築現場の現場作業者の状態を判定する状態判定装置であって、前記現場作業者の加速度を測定する加速度測定部と、前記加速度測定部から加速度データを取得する加速度取得部と、前記現場作業者の脈拍を測定する脈拍測定部と、前記脈拍測定部から脈拍データを取得する脈拍取得部と、前記加速度取得部によって取得された加速度データと、前記脈拍取得部によって取得された脈拍データと、を含むセンサデータに基づいて、前記現場作業者が異常状態であるかを判定する状態判定部と、を備えることを特徴とする状態判定装置。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築現場の現場作業者の状態を判定する状態判定装置であって、
前記現場作業者の加速度を測定する加速度測定部と、
前記加速度測定部から加速度データを取得する加速度取得部と、
前記現場作業者の脈拍を測定する脈拍測定部と、
前記脈拍測定部から脈拍データを取得する脈拍取得部と、
前記加速度取得部によって取得された加速度データと、前記脈拍取得部によって取得された脈拍データと、を含むセンサデータに基づいて、前記現場作業者が異常状態であるかを判定する状態判定部と、
を備えることを特徴とする状態判定装置。
【請求項2】
前記状態判定装置は、さらに、
前記加速度取得部及び前記脈拍取得部によって取得された所定数のセンサデータに基づいて、該所定数のセンサデータの分布中心を算出する分布中心算出部と、
該所定数のセンサデータに基づいて、該所定数のセンサデータの近似直線を算出する近似直線算出部と、
前記分布中心から、前記加速度取得部及び前記脈拍取得部によって取得されたセンサデータまでの離隔距離を算出する離隔距離算出部と、
前記近似直線のうち前記分布中心から延びる部分を始線としたときに、前記分布中心から、前記加速度取得部及び前記脈拍取得部によって取得されたセンサデータまで延びる仮想ベクトルが、前記始線に対してなす偏角を算出する偏角算出部と、
を備え、
前記状態判定部において、前記現場作業者が異常状態であると判定するために、離隔距離及び偏角によって規定される異常範囲が用いられ、
前記状態判定部は、センサデータの離隔距離及び偏角と、前記異常範囲として規定された離隔距離及び偏角の範囲と、に基づいて、前記現場作業者が異常状態であるかを判定する
ことを特徴とする請求項1に記載の状態判定装置。
【請求項3】
前記離隔距離算出部は、前記離隔距離をマハラビノス距離として算出する
ことを特徴とする請求項2に記載の状態判定装置。
【請求項4】
建築現場の現場作業者の状態を判定する状態判定システムであって、
電子機器と、前記電子機器とネットワークを介して接続されるサーバと、を備え、
前記現場作業者の加速度を測定する加速度測定部と、
前記加速度測定部から加速度データを取得する加速度取得部と、
前記現場作業者の脈拍を測定する脈拍測定部と、
前記脈拍測定部から脈拍データを取得する脈拍取得部と、
前記加速度取得部によって取得された加速度データと、前記脈拍取得部によって取得された脈拍データと、を含むセンサデータに基づいて、前記現場作業者が異常状態であるかを判定する状態判定部と、
を備えることを特徴とする状態判定システム。
【請求項5】
建築現場の現場作業者の状態を判定するための状態判定プログラムであって、
コンピュータに、
測定された現場作業者の加速度のデータを取得する加速度取得手段と、
測定された前記現場作業者の脈拍のデータを取得する脈拍取得手段と、
前記加速度取得手段によって取得された加速度データと、前記脈拍取得手段によって取得された脈拍データと、を含むセンサデータに基づいて、前記現場作業者が異常状態であるかを判定する状態判定手段と、
を実行させることを特徴とする状態判定プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築現場の現場作業者の状態を判定する状態判定装置、状態判定システム及び状態判定プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、建築現場の現場作業者の状態を判定する状態判定システムが、種々提案されている。
【0003】
特許文献1には、現場作業者の安静時の生体情報を基に、熱中症発症リスクが高まったかどうかを判定するための閾値を生成し、作業中の生体情報と当該閾値を比較することで現場作業者の熱中症の発症リスクを判断する熱中症発症リスク管理システムが開示されている。すなわち、特許文献1では、現場作業者の安静時の生体情報を取得して閾値を生成し、これに基づいて作業中の状態を判定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、建築現場の現場作業者は、動きながら作業をすることが大半であり、安静状態となる機会が少ない。そのため、特許文献1のような状態判定システムでは、安静時の生体情報の取得が不十分となり、状態判定のための閾値が生成されない可能性がある。かかる場合には、状態判定システム自体が機能せず、現場作業者の状態判定を行うことができない。
【0006】
上記点に鑑み、本発明は、安静状態となる機会が少ない建築現場の現場作業員の状態を判定することが可能な状態判定装置、状態判定システム及び状態判定プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下の構成はそれぞれ、上記課題を解決するための手段である。
【0008】
<構成1>
建築現場の現場作業者の状態を判定する状態判定装置であって、前記現場作業者の加速度を測定する加速度測定部と、前記加速度測定部から加速度データを取得する加速度取得部と、前記現場作業者の脈拍を測定する脈拍測定部と、前記脈拍測定部から脈拍データを取得する脈拍取得部と、前記加速度取得部によって取得された加速度データと、前記脈拍取得部によって取得された脈拍データと、を含むセンサデータに基づいて、前記現場作業者が異常状態であるかを判定する状態判定部と、を備えることを特徴とする状態判定装置。
【0009】
<構成2>
前記状態判定装置は、さらに、前記加速度取得部及び前記脈拍取得部によって取得された所定数のセンサデータに基づいて、該所定数のセンサデータの分布中心を算出する分布中心算出部と、該所定数のセンサデータに基づいて、該所定数のセンサデータの近似直線を算出する近似直線算出部と、前記分布中心から、前記加速度取得部及び前記脈拍取得部によって取得されたセンサデータまでの離隔距離を算出する離隔距離算出部と、前記近似直線のうち前記分布中心から延びる部分を始線としたときに、前記分布中心から、前記加速度取得部及び前記脈拍取得部によって取得されたセンサデータまで延びる仮想ベクトルが、前記始線に対してなす偏角を算出する偏角算出部と、を備え、前記状態判定部において、前記現場作業者が異常状態であると判定するために、離隔距離及び偏角によって規定される異常範囲が用いられ、前記状態判定部は、センサデータの離隔距離及び偏角と、前記異常範囲として規定された離隔距離及び偏角の範囲と、に基づいて、前記現場作業者が異常状態であるかを判定することを特徴とする構成1に記載の状態判定装置。
【0010】
<構成3>
前記離隔距離算出部は、前記離隔距離をマハラビノス距離として算出することを特徴とする構成2に記載の状態判定装置。
【0011】
<構成4>
建築現場の現場作業者の状態を判定する状態判定システムであって、電子機器と、前記電子機器とネットワークを介して接続されるサーバと、を備え、前記現場作業者の加速度を測定する加速度測定部と、前記加速度測定部から加速度データを取得する加速度取得部と、前記現場作業者の脈拍を測定する脈拍測定部と、前記脈拍測定部から脈拍データを取得する脈拍取得部と、前記加速度取得部によって取得された加速度データと、前記脈拍取得部によって取得された脈拍データと、を含むセンサデータに基づいて、前記現場作業者が異常状態であるかを判定する状態判定部と、を備えることを特徴とする状態判定システム。
【0012】
<構成5>
建築現場の現場作業者の状態を判定するための状態判定プログラムであって、コンピュータに、測定された現場作業者の加速度のデータを取得する加速度取得手段と、測定された前記現場作業者の脈拍のデータを取得する脈拍取得手段と、前記加速度取得手段によって取得された加速度データと、前記脈拍取得手段によって取得された脈拍データと、を含むセンサデータに基づいて、前記現場作業者が異常状態であるかを判定する状態判定手段と、を実行させることを特徴とする状態判定プログラム。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、安静状態/非安静状態に関わらず、現場作業者の状態判定を行うことができるため、安静状態となる機会が少ない建築現場の現場作業者の状態を判定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本実施形態における状態判定装置の一例を示す図である。
【
図2】ウェアラブルデバイス5のハードウェア構成を示す図である。
【
図3】ウェアラブルデバイス5の機能構成を示す図である。
【
図4】所定数取得されたセンサデータの分布図の一例である。
【
図5】
図4に示すセンサデータ分布図に対して規定された異常範囲の概略図である。
【
図6】ウェアラブルデバイス5において行われる、現場作業者の状態を判定する処理の流れを示すフローチャートである。
【
図7】本実施形態の状態判定装置に係る状態判定プログラムを実行するコンピュータの一例を示す。
【
図8】
図5に示す直交座標系を極座標系に変換したものである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
[状態判定装置]
以下、図面を参照しながら、本実施形態に係る状態判定装置について説明する。
図1は、本実施形態における状態判定装置の一例を示す図である。なお、以下の説明においては、建築現場の現場作業者を単に現場作業者と称する場合がある。本実施形態においては、状態判定装置(電子機器)として、監視対象(現場作業者)が装着するウェアラブルデバイスを用いるが、本発明はこれに限られず、例えば携帯端末等であってもよい。状態判定システム1は、サーバ2と、管理端末3と、ゲートウェイ4と、ウェアラブルデバイス5と、を有する。サーバ2、管理端末3及びゲートウェイ4は、ネットワークAを介して接続される。ゲートウェイ4及びウェアラブルデバイス5は、無線通信によって接続される。
【0016】
ネットワークAとしては、有線であるか無線であるかを問わず、インターネットやLAN(Local Area Network)、VPN(Virtual Private Network)等、任意の種類の通信網を用いることができる。ゲートウェイ4及びウェアラブルデバイス5の接続に用いられる無線通信としては、5G、LTE(Long Term Evolution)、WiFi(Wireless Fidelity)等の無線通信のほか、ブルートゥース(登録商標)等の近距離無線通信を用いることができる。
【0017】
サーバ2は、各監視対象が装着するウェアラブルデバイス5を統合管理するサーバ装置である。管理端末3は、各現場作業者を監視する管理者が使用する端末であり、例えばスマートフォンやパソコン等である。現場作業者が異常状態であると判定されると、該現場作業者が異常状態である旨の通知がウェアラブルデバイス5から管理端末3へと送られ、管理者が、特に注意して監視すべき現場作業者を認識することが可能となる。
【0018】
ゲートウェイ4は、ウェアラブルデバイス5を装着した現場作業者の近傍に配置される、スマートフォンや中継用のステーション等のコンピュータである。ゲートウェイ4は、ウェアラブルデバイス5から、現場作業者が異常状態であるか否かの判定結果や、所定時間ごとのログデータを受信し、ネットワークAを介してサーバ2に送信する。
【0019】
ウェアラブルデバイス5は、現場作業者が装着するコンピュータであり、腕時計型やバッジ型、タグ型等である。ウェアラブルデバイス5は、後述する加速度センサー(加速度測定部)及び脈拍センサー(脈拍測定部)を備えており、現場作業者の加速度及び脈拍を検出する。
【0020】
(ハードウェア構成)
図2は、ウェアラブルデバイス5のハードウェア構成を示す図である。
図2を参照して、ウェアラブルデバイス5は、無線部51、加速度センサー52、脈拍センサー53、ストレージ54、メモリ55、プロセッサ56を有する。
【0021】
無線部51は、ゲートウェイ4と無線通信を行うための通信インターフェースである。無線通信の種類については、上述のため、説明を省略する。加速度センサー52は、ウェアラブルデバイス5に生じる加速度(すなわち、ウェアラブルデバイス5を装着した現場作業者に生じる加速度)を検出するセンサーである。脈拍センサー53は、ウェアラブルデバイス5を装着した現場作業者の脈拍を検出するセンサーである。
【0022】
ストレージ54やメモリ55は、各種のデータやプログラムを記憶する記憶装置である。プロセッサ56は、後述する各処理を実行するプログラムをストレージ54から読みだしてメモリ55に展開し、読みだしたプログラムを実行する。
【0023】
(機能構成)
図3は、ウェアラブルデバイス5の機能構成を示す図である。
図3を参照して、ウェアラブルデバイス5は、加速度取得部61と、脈拍取得部62と、記憶部63と、算出部64と、状態判定部65と、通知部66と、を備える。なお、記憶部63は、ストレージ54やメモリ55に格納される。加速度取得部61、脈拍取得部62、算出部64、状態判定部65、通知部66は、プロセッサ56が有する電子回路の一例や、プロセッサ56が実行するプロセスの一例である。
【0024】
加速度取得部61は、加速度センサー52によって検出された加速度のデータを取得して、記憶部63が備えるセンサデータDB631に格納する処理部である。センサデータDB631には、加速度センサー52によって検出された加速度のデータが、例えば時系列で記憶される。
【0025】
脈拍取得部62は、脈拍センサー53によって検出された脈拍のデータを取得して、記憶部63が備えるセンサデータDB631に格納する処理部である。センサデータDB631には、脈拍センサー53によって検出された脈拍のデータが、例えば時系列で記憶される。
【0026】
センサデータDB631には、加速度取得部61で取得された加速度データと、脈拍取得部62で取得された脈拍データと、が同期して記憶される。以下、加速度データ及び脈拍データを合わせてセンサデータと称する場合がある。
【0027】
算出部64は、分布中心算出部641と、近似直線算出部642と、離隔距離算出部643と、偏角算出部644と、を備える。
【0028】
分布中心算出部641は、加速度取得部61及び脈拍取得部62によって現場作業者のセンサデータが所定数取得された場合に、センサデータDB631から該所定数のセンサデータを読み出し、該所定数のセンサデータの分布中心を算出する。
図4は、所定数取得されたセンサデータの分布図の一例である。
図4において、横軸は加速度、縦軸は脈拍を、それぞれ示す。
図4を参照して、本実施形態では、分布中心算出部641は、所定数取得されたセンサデータ(白丸で示す)に基づき、取得された加速度値の合計をデータ数で除した相加平均によって加速度の平均値Xを算出するとともに、取得された脈拍値の合計をデータ数で除した相加平均によって脈拍の平均値Yを算出し、加速度の平均値がXであり且つ脈拍の平均値がYとなる点(黒丸で示す)を分布中心Kとする。しかしながら、加速度の平均値及び脈拍の平均値の算出方法はこれに限られない。例えば、分布中心算出部641は、加重平均や移動平均によって、加速度の平均値及び脈拍の平均値を算出し、分布中心Kとしてもよい。また、分布中心Kは、加速度の平均値及び脈拍の平均値に限られるものではなく、センサデータDB631から読み出したセンサデータから最頻値や中央値を抽出して算出してもよい。
【0029】
近似直線算出部642は、加速度取得部61及び脈拍取得部62によってセンサデータが所定数取得された場合に、センサデータDB631から該所定数のセンサデータを読み出し、該所定数のセンサデータの分布を近似した近似直線Mを算出する。再び
図4を参照して、本実施形態では、近似直線算出部642は、所定数取得されたセンサデータ(白丸で示す)に基づき、加速度及び脈拍を変数とした最小二乗法を用いて、近似直線Mを算出する。しかしながら、近似直線の算出方法はこれに限られず、他の既知の算出方法を用いることができる。
【0030】
なお、分布中心算出部641での分布中心Kの算出及び近似直線算出部642での近似直線Mの算出の際には、加速度が過大または過小となるデータや脈拍が過大または過小となるデータ(外れ値データ)を除外することが好ましい。外れ値データを除外して分布中心K及び近似直線Mを算出することにより、分布中心K及び近似直線Mに対するノイズを低減し、分布中心K及び近似直線Mをより正確に算出することができる。例えば、センサデータ分布において、加速度の上位1%のデータ及び下位1%のデータと、脈拍の上位1%のデータ及び下位1%のデータと、を外れ値データとして設定することができるが、外れ値データとして設定されるデータ範囲は、これに限られない。
【0031】
離隔距離算出部643は、加速度取得部61及び脈拍取得部62によってセンサデータが取得されると、センサデータDB631から該センサデータを読み出し、分布中心算出部641で算出された分布中心Kから該センサデータを表す点L(細かいドットで示す)まで延びる仮想ベクトルSの長さ(分布中心KからセンサデータLまでの離隔距離D)を算出する(
図4参照)。本実施形態では、離隔距離算出部643は、分布中心KからセンサデータLまでの離隔距離Dを、マハラビノス距離として算出する。離隔距離Dをマハラビノス距離として算出する理由については、後述する。
【0032】
離隔距離算出部643において、マハラビノス距離Dは、以下の式によって算出される。なお、χは離隔距離の算出対象であるセンサデータ(ベクトル)を表し、μはセンサデータの分布の平均値(すなわち、分布中心Kにおける加速度値X及び脈拍値Y)を表し、Σはセンサデータ分布の共分散行列を表す。
【数1】
【0033】
偏角算出部644は、加速度取得部61及び脈拍取得部62によってセンサデータが取得されると、センサデータDB631から該センサデータを読み出し、近似直線Mのうち分布中心Kから延びる部分を始線としたときに、分布中心算出部641で算出された分布中心Kから該センサデータを表す点Lまで延びる仮想ベクトルSが、該始線に対してなす角θを、該センサデータLの偏角として算出する。なお、分布中心算出部641による分布中心Kの算出結果及び近似直線算出部642による近似直線Mの算出結果によっては、近似直線Mが分布中心Kを通る構成とならない場合もある。この場合には、近似直線Mを、分布中心Kを通る位置まで平行移動させる補正を行うことにより、上述の方法で、所定のセンサデータの偏角を算出することができる。
【0034】
異常範囲DB632には、現場作業者が異常状態であると判定される離隔距離D及び偏角θの範囲(異常範囲)のデータが格納されている。異常範囲の規定方法等については、後述する。
【0035】
状態判定部65は、加速度取得部61及び脈拍取得部62によって新規なセンサデータが取得されると、異常範囲DB632から異常範囲データを読み出し、該新規センサデータを表す点の離隔距離D及び偏角θが異常範囲にあるか否かを判定する。そして、新規センサデータを表す点の離隔距離D及び偏角θが、所定時間継続して異常範囲にあると判定した場合(例えば、新規なセンサデータが異常範囲にあると、所定回数連続して判定した場合)には、「現場作業者が異常状態にある」と判定する。ただし、「現場作業者が異常状態にある」と判定する基準は、「新規センサデータを表す点の離隔距離D及び偏角θが、所定時間継続して異常範囲にあるか否か」に限られるものではない。例えば、当該基準を、「直近の所定数の新規センサデータのうち、新規センサデータを表す点の離隔距離D及び偏角θが異常範囲に存する回数が、基準回数以上であるか否か」としてもよい。また、新規センサデータを表す点の離隔距離D及び/または偏角θが異常範囲から大幅に逸脱する場合(例えば、新規センサデータを表す点の離隔距離D及び/または偏角θと、異常状態であると判定される離隔距離D及び/または偏角θの範囲と、の差が所定値以上となる場合)に、上記判定基準に関わらず「現場作業者が異常状態にある」と判定するように構成してもよい。状態判定部65は、さらに、該新規センサデータを表す点が存する異常範囲に応じて、現場作業者の詳細な状態を判定することができるが、この点については後述する。
【0036】
通知部66は、状態判定部65で「現場作業者が異常状態にある」と判定された場合に、その旨を管理端末3に送信する。現場作業者が異常状態にある旨の通知を受けた管理者は、該現場作業者に対する声掛けや配置転換など、該現場作業者の状態回復を促す種々の方策を実施できる。通知部66は、状態判定部65において、現場作業者の詳細な状態が判定された場合には、現場作業者の詳細状態を管理端末3に送信することができる。
また、通知部66は、状態判定部65で「現場作業者が異常状態にある」と判定された場合に、ウェアラブルデバイス5が備える表示部(不図示)に「異常状態」等のメッセージを表示する構成を備えることができる。これにより、当該メッセージを確認した現場作業者が、自身の状態を把握し、状態を回復させる種々の方策を実施できる。
【0037】
(本実施形態に係る発明に至った経緯)
本実施形態に係る発明に至った経緯について、再度
図2~
図4を参照して、詳細に説明する。まず、本実施形態に係る状態判定装置は、現場作業者の加速度を測定する加速度センサー52(加速度取得部)と、加速度センサー52から加速度データを取得する加速度取得部61と、現場作業者の脈拍を測定する脈拍センサー53(脈拍測定部)と、脈拍センサー53から脈拍データを取得する脈拍取得部62と、加速度取得部61によって取得された加速度データ及び脈拍取得部62によって取得された脈拍データを含むセンサデータに基づいて、現場作業者が異常状態かを判定する状態判定部65と、を備える。この構成によれば、現場作業者が安静状態であるか非安静状態であるかに関わらず、現場作業者の加速度と脈拍に基づいて現場作業者の状態を判定することができる。そのため、本実施形態に係る状態判定装置によれば、安静状態となる機会が少ない建築現場の現場作業員の状態を判定することができる。
【0038】
ここで、各現場作業者の作業内容や脈拍には個人差があることから、センサデータの分布は、現場作業者ごとに異なる。そこで、現場作業者の状態をさらに正確に判定すべく、異常範囲の規定方法について、本発明者らは鋭意検討を重ねた。例えば、加速度及び脈拍の直交座標領域によって画一的に異常範囲を規定すると、ある現場作業者のセンサデータ分布に基づいて異常範囲を規定しても、該異常範囲が、他の現場作業者に対して十分に適合せず、現場作業者の状態判定の精度が十分に向上しない可能性がある。そこで、本発明者らは、加速度及び脈拍の直交座標領域による画一的な規定ではなく、センサデータ分布の近似直線Mを始線とした極座標領域として異常範囲を規定することに想到した。具体的には、異常範囲は、(1)センサデータ分布の近似直線Mに対する偏角θと、(2)分布中心Kからの離隔距離Dと、に基づいて規定される。この構成によれば、センサデータ分布の相違に関わらず、各センサデータ分布の相関方向(近似直線Mが延びる方向)を基準とした偏角と、分布中心Kからの相対距離によって、異常範囲を規定できる。そのため、現場作業者のセンサデータ分布の様子に関わらず、各現場作業者に適合した異常範囲を規定することができ、現場作業者の状態をさらに正確に判定することができる。
【0039】
ここで、
図4に示す分布図における左上のハッチング領域A1では、脈拍/加速度比が過度に高くなっている。すなわち、ハッチング領域A1に現場作業者のセンサデータが存する場合、「該現場作業者が体調不良である」と推測される。一方、
図4に示す分布図における右下のハッチング領域A2では、脈拍/加速度比が過度に低くなっている。すなわち、ハッチング領域A2に現場作業者のセンサデータが存する場合、「該現場作業者の注意力が低下している」と推測される。
【0040】
建築現場の現場作業者が行う作業は、危険度が高いため、「体調不良の状態」や「注意力が低下している状態」での現場作業は、けがや事故を引き起こす可能性が高く、したがって「現場作業に支障をきたす状態」(すなわち、異常状態)であると考えられる。そのため、ハッチング領域A1、A2の少なくとも一部が含まれるように、異常範囲を決定することにより、現場作業者の状態をさらにより正確に判定することができる。
【0041】
ここで、現場作業者の状態を判定する既知のシステムでは、縦軸及び横軸を所定のパラメータに設定した分布図において、分布中心から評価対象となるセンサデータまでの離隔距離を、ユークリッド距離で評価していた。このとき、現場作業者が異常状態であると判定する異常範囲の境界線は、分布中心から等方的に規定されるため、真円形状(または真円の一部としての弧形状)を呈していた。しかしながら、分布中心からの離隔距離をユークリッド距離で評価すると、正常状態のセンサデータと異常状態(ハッチング領域A1、A2)のセンサデータが区別できず、現場作業者の状態判定の精度をより十分に向上させる可能性が低まってしまう。
【0042】
この点に鑑み、本発明者らは、まず、ハッチング領域A1及びA2が、分布の相関性に逆らう方向(近似直線Mと直交する直交軸Nが延びる方向)に存する点に着目した。そして、分布中心から評価対象となるセンサデータまでの離隔距離を、ユークリッド距離でなく、マハラノビス距離で評価することに想到した。この構成によれば、分布中心からの離隔距離をユークリッド距離で評価する場合と比べて、分布の相関性に逆らう方向における離隔距離をより厳密に評価することができるため、異常範囲をより正確に規定することができ、現場作業員の状態をさらにより正確に判定することができる。
【0043】
これらの点を踏まえ、本実施形態において規定された異常範囲の概略図を、
図5に示す。
図5は、
図4に示すセンサデータ分布図に対して決定された異常範囲の概略図である。
図5において、
図4と同じ構成・機能を有する構成要素については、同様の符号を付している。ただし、説明の便宜のため、
図4に白丸で示したセンサデータの分布は、
図5では省略する。また、さらなる説明の便宜のため、近似直線Mのうち、分布中心Kから加速度が増加する方向に延びる部分をM+、分布中心Kから加速度が減少する方向に延びる部分をM-とする。
【0044】
図5における異常範囲は、「特定の偏角の範囲内であり、且つ、マハラビノス距離において所定の離隔距離以上となる範囲」として定義しており、これにより、
図4に示すハッチング領域A1、A2を異常範囲に含めるように異常範囲が規定される。本実施形態では、異常範囲は、第1異常範囲B1及び第2異常範囲B2から構成される。
【0045】
図5に示す第1異常範囲B1は、ハッチング領域A1を包含する異常範囲であり、M+から反時計回りにθ1回転した位置から、M-から時計回りにθ2回転した位置までの偏角範囲内であり、且つ、離隔距離がr1(マハラノビス距離)以上となる範囲に規定される。新規センサデータが所定時間継続して第1異常範囲B1に属する場合には、「現場作業者が異常状態である」と判定される。ここで、上述の通り、ハッチング領域A1では「現場作業者が体調不良である」と推測されることから、新規センサデータが所定時間継続して第1異常範囲B1に属する場合に、「現場作業者が体調不良である」と詳細に判定することもできる。
【0046】
図5に示す第2異常範囲B2は、ハッチング領域A2を包含する異常範囲であり、M+から時計回りにθ3回転した位置から、M-から反時計回りにθ4回転した位置までの偏角範囲内であり、且つ、離隔距離がr2(マハラノビス距離)以上となる範囲に規定される。新規センサデータが所定時間継続して第2異常範囲B2に属する場合には、「現場作業者が異常状態である」と推測される。ここで、上述の通り、ハッチング領域A2では「現場作業者の注意力が低下している」と推測されることから、新規センサデータが所定時間継続して第2異常範囲B2に属する場合に、「現場作業者の注意力が低下している」と詳細に判定することもできる。
【0047】
なお、偏角θ1~θ4は、それぞれ異なる値に設定してもよいし、任意の2つ以上の偏角を同じ値に設定してもよい。また、離隔距離r1と離隔距離r2とは、異なる値に設定してもよいし、同じ値に設定してもよい。
【0048】
(現場作業者の状態を判定する処理の流れ)
次に、ウェアラブルデバイス5において行われる、現場作業者の状態を判定する処理の流れを説明する。
図6は、ウェアラブルデバイス5において行われる、現場作業者の状態を判定する処理の流れを示すフローチャートである。
【0049】
まず、加速度取得部61が、加速度センサー52によって測定された現場作業者の加速度のデータを取得し(S101)、脈拍取得部62が、脈拍センサー53によって測定された現場作業者の脈拍のデータを取得する(S102)。加速度取得部61で取得された加速度データ及び脈拍取得部62で取得された脈拍データは、同期してセンサデータDB631に格納される。
【0050】
取得したセンサデータ(加速度データ及び脈拍データ)が所定数に達すると(S103 Yes)、分布中心算出部641が、センサデータDB631から該所定数のセンサデータを読み出し、読み出したセンサデータの分布に基づき、分布中心Kを算出するとともに(S104)、近似直線算出部642が、センサデータDB631から該所定数のセンサデータを読み出し、読み出したセンサデータの分布に基づき、近似直線Mを算出する(S105)。分布中心K及び近似直線Mの算出方法については、上述のため、説明を省略する。一方、取得したセンサデータ(加速度データ及び脈拍データ)が所定数に達しない場合には(S103 No)、再度、加速度取得部61及び脈拍取得部62でのセンサデータの取得が行われる(S101、S102)。
【0051】
次に、加速度取得部61が、加速度センサー52によって測定された新規の加速度データを取得し(S106)、脈拍取得部62が、脈拍センサー53によって測定された新規の脈拍データを取得する(S107)。加速度取得部61で取得された新規の加速度データ及び脈拍取得部62で取得された新規の脈拍データは、同期してセンサデータDB631に格納される。
【0052】
続いて、離隔距離算出部643が、センサデータDB631から新規センサデータを読み出し、分布中心K(S104で算出)から新規センサデータまでの離隔距離Dを算出するとともに(S108)、偏角算出部644が、センサデータDB631から新規センサデータを読み出し、分布中心Kから延びる近似直線Mを始線としたときに、分布中心K(S104で算出)から新規センサデータまで延びる仮想ベクトルSが、該始線に対してなす角(偏角θ)を算出する(S109)。上述の通り、本実施形態では、離隔距離Dはマハラビノス距離として算出する。
【0053】
状態判定部65は、異常範囲DB632から異常範囲データを読み出し、離隔距離算出部643で算出された新規センサデータの離隔距離D(S108)及び偏角算出部644で算出された新規センサデータの偏角θ(S109)に基づき、該新規センサデータが異常範囲B1、B2に存するか否かを判定する(S110)。新規センサデータが異常範囲B1及びB2に存しないと判定された場合には(S110 No)、再度、加速度取得部61及び脈拍取得部62での新規センサデータの取得が行われる(S106、S107)。一方、新規センサデータが異常範囲B1またはB2に存すると判定された場合には(S110 Yes)、状態判定部65は、新規センサデータが所定時間継続して異常範囲B1、B2に存するか否かを判定する(S111)。
【0054】
新規センサデータが所定時間継続して異常範囲B1及びB2に存しないと判定された場合には(S111 No)、再度、加速度取得部61及び脈拍取得部62での新規センサデータの取得が行われる(S106、S107)。一方、新規センサデータが所定時間継続して異常範囲B1またはB2に存すると判定された場合には(S111 Yes)、状態判定部65が「現場作業者が異常状態にある」と判定し(S112)、通知部66がその旨を管理端末3に通知する(S113)。この通知に際しては、新規センサデータが存する異常範囲B1、B2に応じて、現場作業者の詳細な状態(体調不良/注意力低下)を合わせて通知する。通知を受けた管理者は、該現場作業者の状態を回復する種々の方策を講じることができるため、該現場作業者の状態が悪化してけがや事故を招く危険性を低めることができる。
【0055】
[状態判定プログラム]
上述の状態判定装置を構成する各機能は、プログラムによって実現可能であり、各機能を実現するために予め用意されたコンピュータプログラムが補助記憶装置に格納され、制御部が補助記憶装置に格納されたプログラムを主記憶装置に読み出し、主記憶装置に読み出された該プログラムを制御部が実行することで、各部の機能を動作させることができる。そこで、
図7を用いて、上述の状態判定装置と同様の機能を有する状態判定プログラムを実行するコンピュータの一例について、以下に説明する。
【0056】
図7は、本実施形態の状態判定装置に係る状態判定プログラムを実行するコンピュータの一例を示す。
図7に示すように、コンピュータ1000は、操作部1100と、スピーカー1200と、カメラ1300と、ディスプレイ1400と、通信部1500と、を有する。さらに、コンピュータ1000は、CPU(制御部)1600と、HDD(補助記憶装置)1700と、RAM(主記憶装置)1800と、を有する。これらの各部は、バス1900を介して接続される。
【0057】
HDD1700には、
図7に示すように、上述の実施形態で示した各機能部と同様の機能を発揮する状態判定プログラムが予め記憶される。この状態判定プログラムについては、
図3に示した各々の機能部の各構成要素と同様に、適宜統合又は分離しても良い。すなわち、HDD1700に格納される各データは、常に全てのデータがHDD1700に格納される必要はなく、処理に必要なデータのみがHDD1700に格納されれば良い。
【0058】
そして、CPU1600が、状態判定プログラムをHDD1700から読み出してRAM1800に展開する。これによって、状態判定プログラムは、状態判定プロセスとして機能する。この状態判定プロセスは、HDD1700から読み出した各種データを適宜RAM1800上の自身に割り当てられた領域に展開し、この展開した各種データに基づいて各種処理を実行する。なお、状態判定プロセスは、
図3に示した各機能部にて実行される処理、例えば
図6に示す処理を含む。また、CPU1600上で仮想的に実現される各処理部は、常に全ての処理部がCPU1600上で動作する必要はなく、処理に必要な処理部のみが仮想的に実現されれば良い。
【0059】
なお、上述の状態判定プログラムについては、必ずしも最初からHDD1700に記憶させておく必要はなく、「コンピュータ読取可能な記録媒体」に各プログラムを記憶させ、コンピュータ1000がこの「コンピュータ読取可能な記録媒体」から各プログラムを取得して実行するようにしてもよい。「コンピュータ読取可能な記録媒体」としては、CD-ROM等の光ディスク、DVD-ROM等の相変化型光ディスク、MO(Magnet Optical)やMD(Mini Disk)などの光磁気ディスク、フロッピー(登録商標)ディスクやリムーバブルハードディスクなどの磁気ディスク、コンパクトフラッシュ(登録商標)、スマートメディア、SDメモリカード、メモリスティック等のメモリカードが挙げられる。また、本発明の目的のために特別に設計されて構成された集積回路(ICチップ等)等のハードウェア装置も記録媒体として含まれる。さらに、公衆回線、インターネット、LAN、WANなどを介してコンピュータ1000に接続される他のコンピュータまたはサーバ装置などに各プログラムを記憶させておいてもよい。その場合、コンピュータ1000が他のコンピュータまたはサーバ装置から各プログラムを取得して実行するようにしてもよい。
【0060】
(変形例)
上述の実施形態では、加速度取得部61と、脈拍取得部62と、記憶部63と、算出部64と、状態判定部65と、通知部66と、をウェアラブルデバイス5が備えている。しかしながら、これに限られず、加速度取得部61と、脈拍取得部62と、記憶部63と、算出部64と、状態判定部65と、通知部66と、のうち少なくとも一部をサーバ2が備える構成であってもよい。例えば、少なくとも、加速度取得部61と、脈拍取得部62と、記憶部63と、をサーバ2が備える構成である場合、ウェアラブルデバイス5が備える加速度センサー52によって測定された加速度のデータは、ネットワークAを介してサーバ2が備える加速度取得部61に取得され、加速度取得部61によってセンサデータDB631に格納されるとともに、ウェアラブルデバイス5が備える脈拍センサー53によって測定された脈拍のデータは、ネットワークAを介してサーバ2が備える脈拍取得部62に取得され、脈拍取得部62によってセンサデータDB631に格納される。
【0061】
(変形例)
異常範囲DB632に格納される異常範囲は、現場作業者の過去のセンサデータに基づいて、例えば機械学習を用いて規定される。また、予め規定された異常範囲に対し、加速度取得部61で取得された新規加速度データ及び脈拍取得部62で取得された新規脈拍データ(すなわち新規センサデータ)に基づいて適宜調整を行ってもよい。また、異常範囲として規定される離隔距離D及び偏角θの範囲は、現場作業者ごとに異なってもよく、同じであってもよい。
【0062】
(変形例)
異常範囲は、(1)センサデータ分布の近似直線Mに対する偏角θと、(2)分布中心Kからの離隔距離Dと、に基づき、極座標領域として規定される。上述の実施形態では、
図5に示すように、横軸に加速度、縦軸に脈拍を取った直交座標系において、極座標領域として異常範囲B1、B2を規定し、現場作業者の状態判定を行った。しかしながら、これに限られず、
図8に示すように、直交座標系のグラフを、分布中心Kから延びる近似直線Mを始線とした極座標系グラフに変換した後、極座標領域として異常範囲を規定し、現場作業者の状態判定を行ってもよい。
図8は、
図5に示す直交座標系を極座標系に変換したものである。
図5と対応する構成や領域には、同一の番号・文字を付している。
図8において、始線である近似直線Mを縦軸に設定しているが、近似直線Mを横軸に設定してもよい。直交座標系グラフを極座標系グラフに変換することにより、極座標領域としての異常範囲を、始線が同一の極座標系において規定することができるため、直交座標系と比べて、センサデータが異常範囲にあるか否かをより簡易に判定することができる。
【0063】
また、
図5では、分布中心Kからの離隔距離をマハラビノス距離として算出しているため、見かけ上同一の離隔距離であっても、マハラビノス距離としては異なる離隔距離となっている。この点に鑑み、極座標系への変換を行う際には、分布中心Kからの離隔距離(マハラビノス距離)が等しい場合に見かけ上も同一の離隔距離となるように極座標系を規定することが好ましい。この規定により、センサデータが異常範囲にあるか否かを、視覚的に簡易に判定することができる。
【符号の説明】
【0064】
1 状態判定システム 5 ウェアラブルデバイス 52 加速度センサー 53 脈拍センサー 61 加速度取得部 62 脈拍取得部 65 状態判定部 641 分布中心算出部 642 近似直線算出部 643 離隔距離算出部 644 偏角算出部