(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168091
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】油圧バルブ及び油圧回路
(51)【国際特許分類】
F16K 3/24 20060101AFI20231116BHJP
F16K 11/07 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
F16K3/24 D
F16K11/07 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079739
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】池田 真俊
(72)【発明者】
【氏名】住野 亘
(72)【発明者】
【氏名】赤松 隆志
【テーマコード(参考)】
3H053
3H067
【Fターム(参考)】
3H053AA13
3H053AA25
3H053AA26
3H053BA03
3H053DA11
3H067AA17
3H067CC04
3H067CC16
3H067CC32
3H067CC33
3H067DD05
3H067DD12
3H067DD33
3H067EA02
3H067FF17
3H067GG15
3H067GG22
(57)【要約】
【課題】長期にわたって油の流量制御を正確、かつ微細に行う。
【解決手段】スプール62の移動に伴ってメータアウトポート41に対するメータアウト通路部63fの開口面積を変化させることによりメータアウトポート41から主通路部63を経由してドレンポート42に至る油の流量制御を行う流量制御バルブ40であって、メータアウト通路部63fは、メータアウトポート41に連通するタイミングが互いに異なるようにスプール62に複数設けられ、スプール62の主通路部63は、メータアウト通路部63fが設けられるメータアウト領域63bと、ドレン通路部63gが設けられるドレン領域63dと、メータアウト領域63b及びドレン領域63dの間のテーパ領域63cとを有し、メータアウト領域63bの内径がドレン領域63dよりも大きく形成され、テーパ領域63cがドレン領域63dに向けて内径が漸次減少するテーパ状に構成されている。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに独立した第1ポート及び第2ポートを有するバルブ本体と、
前記バルブ本体に対して軸心に沿って移動可能に配設されたスプールとを備え、
前記スプールには、軸心部分に設けられた主通路部と、前記主通路部から外周面までの間に設けられ、前記第1ポートに連通可能となる第1通路部と、前記主通路部から外周面までの間に設けられ、前記第2ポートに連通可能となる第2通路部とが設けられ、
前記スプールの移動に伴って前記第1ポートに対する前記第1通路部の開口面積を変化させることにより前記第1ポートから前記主通路部を経由して前記第2ポートに至る油の流量制御を行う油圧バルブであって、
前記第1通路部は、前記第1ポートに連通するタイミングが互いに異なるように前記スプールに複数設けられ、
前記スプールの主通路部は、前記第1通路部が設けられる第1領域と、前記第2通路部が設けられる第2領域と、これら前記第1領域及び前記第2領域の間を連続させる第3領域とを有し、前記第1領域の内径が前記第2領域よりも大きく形成され、前記第3領域が前記第2領域に向けて内径が漸次減少するテーパ状に構成されていることを特徴とする油圧バルブ。
【請求項2】
前記第3領域は、前記第1領域から前記第2領域に向けて一定の割合で内径が減少していることを特徴とする請求項1に記載の油圧バルブ。
【請求項3】
前記第3領域は、前記主通路部の軸心方向の長さに対して内径が減少する割合がtan15°~tan30°の範囲にあることを特徴とする請求項2に記載の油圧バルブ。
【請求項4】
請求項1~請求項3のいずれか一つに記載した油圧バルブの前記第1ポートに油圧シリンダのボトム室との間を連通するメータアウト油路が接続され、前記第2ポートに油タンクとの間を連通するタンク油路が接続されていることを特徴とする油圧回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブ本体の内部にスプールを備えた油圧バルブ及び油圧回路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
バルブ本体に対してスプールが軸方向に移動する油圧バルブには、スプールの内部に油を通過させるための主通路部を設けるようにしたものがある。すなわち、この油圧バルブでは、スプールの内部に軸方向に沿った主通路部が設けられているとともに、主通路部からスプールの外周面に開口するように径方向に沿って第1開口及び第2開口が設けられている。第1開口は、バルブ本体に設けられた第1ポートに連通可能となるものであり、第2開口は、バルブ本体に設けられた第2ポートに連通可能となるものである。この油圧バルブでは、スプールの移動に伴って第1ポートに対する第1開口の開口面積を変化させることにより第1ポートからスプールの主通路部を経由して第2ポートに至る油の流量制御を行うことが可能である(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007-107677号公報(
図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
流量制御を微細に行うには、第1ポートに連通するタイミングが互いに異なるようにスプールの軸心方向にずれた位置に複数の第1開口を設けることが好ましい。すなわち、複数の第1開口を設けた場合には、スプールの移動に伴う第1開口の開口面積を細かく変化させることができ、流量制御を微細に行うことが可能となる。
【0005】
しかしながら、上述の油圧バルブでは、微細な流量制御を行っている場合、第1開口の一部がバルブ本体のランド部によって閉じられた状態で第1ポートからスプールの主通路部に油が流入することになる。バルブ本体のランド部によって閉じられた第1開口は、主通路部に開口する凹部となるため、内部の油が滞留しやすい状態となる。
【0006】
ここで、高圧側となる第1ポートから低圧側となる主通路部に油が流れた場合には、油に気泡が発生し、この気泡が油とともに主通路部の内部を移動することになる。主通路部に流入した油は、第2通路部を介して第2ポートに排出されるまでの間に主通路部の内部において適宜反転する。上流側に反転した油に含まれる気泡は、第1開口によって構成される凹部に到達した場合、そのまま内部に滞留するおそれがあり、崩壊することによってランド部にエロージョンを来す要因となる。このため、使用が長期にわたり、ランド部のエロージョンが進行すると、例えばランド部とスプールとの間からの油の漏れ量が増大する要因となり、油の流量を正確に制御することが困難となる等の問題を招来するおそれがある。
【0007】
本発明は、上記実情に鑑みて、長期にわたって油の流量制御を正確、かつ微細に行うことのできる油圧バルブ及び油圧回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る油圧バルブは、互いに独立した第1ポート及び第2ポートを有するバルブ本体と、前記バルブ本体に対して軸心に沿って移動可能に配設されたスプールとを備え、前記スプールには、軸心部分に設けられた主通路部と、前記主通路部から外周面までの間に設けられ、前記第1ポートに連通可能となる第1通路部と、前記主通路部から外周面までの間に設けられ、前記第2ポートに連通可能となる第2通路部とが設けられ、前記スプールの移動に伴って前記第1ポートに対する前記第1通路部の開口面積を変化させることにより前記第1ポートから前記主通路部を経由して前記第2ポートに至る油の流量制御を行う油圧バルブであって、前記第1通路部は、前記第1ポートに連通するタイミングが互いに異なるように前記スプールに複数設けられ、前記スプールの主通路部は、前記第1通路部が設けられる第1領域と、前記第2通路部が設けられる第2領域と、これら前記第1領域及び前記第2領域の間を連続させる第3領域とを有し、前記第1領域の内径が前記第2領域よりも大きく形成され、前記第3領域が前記第2領域に向けて内径が漸次減少するテーパ状に構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、第1領域から第2領域に至る間に内径が漸次減少する第3領域が設けてあるため、油が下流に向けてスムースに流れることになり、第1ポートから主通路部に流入する際に油に生じた気泡がそのまま第1領域で滞留することなく下流に向けて進行することになる。さらに、油が第2領域から第1領域に向けて反転する際には第3領域がディフューザとして機能し、第1領域に到達する油の圧力が減少されるため、第1通路部に気泡が滞留したとしても、これが崩壊する事態を防止することができ、バルブ本体のランド部にエロージョンを来すおそれがなくなる。これにより、使用が長期にわたった場合にも油の漏れ量が増大することがなく、油の流量制御を正確、かつ微細に行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、本発明の実施の形態である油圧バルブを適用した油圧回路を示す回路図である。
【
図2】
図2は、
図1に示した回路図において油圧シリンダが伸長動作する状態を示す図である。
【
図3】
図3は、
図1に示した回路図において油圧シリンダが縮退動作する状態を示す図である。
【
図4】
図4は、
図1に示した回路図に適用する油圧バルブの構造を示す断面図である。
【
図5】
図5は、
図4に示した油圧バルブの要部拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら本発明に係る油圧バルブ及び油圧回路の好適な実施の形態について詳細に説明する。
【0012】
図1~
図3は、本発明の実施の形態である油圧回路を示したものである。ここで例示する油圧回路は、油圧ポンプから供給された油によって油圧シリンダ1を動作させるためのものである。油圧シリンダ1は、単一のピストン2を備えた片ロッド複動型のものである。本実施の形態では、作業機械においてブーム3を動作させるための油圧シリンダ1を例示している。作業機械は、下部走行体4の上部に上部旋回体5が上下に沿った旋回軸回りに回転可能に配設されたもので、上部旋回体5にブーム3を備えている。ブーム3は、水平方向に沿ったブーム支持軸により、基端部を介して上部旋回体5に回転可能に支持させたものである。図中の符号6は、ブーム3の先端部に設けたアーム、符号7はアーム6の先端部に設けたバケットである。
【0013】
油圧シリンダ1は、シリンダ本体8を介して上部旋回体5に連結してあり、かつロッド9を介してブーム3に連結してある。油圧シリンダ1が伸張動作した場合には、上部旋回体5に対してブーム3の先端部が上方に移動し、油圧シリンダ1が縮退動作した場合には、上部旋回体5に対してブーム3の先端部が下方に移動する。油圧シリンダ1には、ボトム室1aにボトム油路11が接続してあり、ロッド室1bにロッド油路12が接続してある。ボトム油路11は、途中で第1ボトム油路11A及び第2ボトム油路(メータアウト油路)11Bに2分岐している。同様に、ロッド油路12は、途中で第1ロッド油路12A及び第2ロッド油路12Bに2分岐している。
【0014】
油圧回路は、油圧ポンプ20と、油圧シリンダ1を操作するための方向切換バルブ30と、流量制御バルブ(油圧バルブ)40とを有している。
【0015】
油圧ポンプ20は、エンジン(図示せず)によって駆動される可変容量型のものである。油圧ポンプ20の吐出口には、チェックバルブ21を有したポンプ油路22が接続してある。
【0016】
方向切換バルブ30は、図示せぬ操作バルブからのパイロット圧によって動作し、第1入出力ポート31及び第2入出力ポート32に対してポンプポート33及びタンクポート34の接続状態を切り換えるように構成してある。より詳細に説明すると、方向切換バルブ30は、
図1に示す中立位置に配置された場合、2つの入出力ポート31,32、ポンプポート33及びタンクポート34がそれぞれ遮断された状態となる。この状態から
図2に示すように左に移動して伸長位置に配置されると、方向切換バルブ30は、第1入出力ポート31がポンプポート33に接続され、かつ第2入出力ポート32がタンクポート34に接続された状態となる。一方、中立位置から
図3に示すように右に移動して縮退位置に配置されると、第1入出力ポート31がタンクポート34に接続され、かつ第2入出力ポート32がポンプポート33に接続された状態となる。この方向切換バルブ30には、第1入出力ポート31に第1ボトム油路11Aが接続してあり、第2入出力ポート32に第1ロッド油路12Aが接続してある。ポンプポート33には、ポンプ油路22が接続してあり、タンクポート34には油タンク50に至るタンク油路51が接続してある。
【0017】
流量制御バルブ40は、操作バルブ(図示せず)からのパイロット圧によって動作し、メータアウトポート(第1ポート)41に対してドレンポート(第2ポート)42及び再生ポート43の接続状態を切り替えるように構成してある。より具体的に説明すると、流量制御バルブ40は、図に示す閉止位置に配置された場合、メータアウトポート41、ドレンポート42及び再生ポート43がそれぞれ遮断された状態となる。この状態から図に示すように左に移動して制御位置に配置されると、流量制御バルブ40は、メータアウトポート41がドレンポート42及び再生ポート43に接続された状態となる。メータアウトポート41とドレンポート42及び再生ポート43との間には、操作バルブ(図示せず)から加えられるパイロット圧が増大するに従って開口面積が増大するようにメータアウト絞り44が設けてある。メータアウトポート41とドレンポート42との間には、メータアウト絞り44の下流にドレン側固定絞り45が設けてある。メータアウトポート41と再生ポート43との間には、メータアウト絞り44の下流にチェックバルブ46及び再生側固定絞り47が設けてある。この流量制御バルブ40には、メータアウトポート41に第2ボトム油路11Bが接続してあり、ドレンポート42にタンク油路51が接続してある。再生ポート43には、第2ロッド油路12Bが接続してある。
【0018】
図4~
図6は、流量制御バルブ40の具体的な構成を示したものである。以下、
図4~
図6を適宜参照しながら流量制御バルブ40の構成について詳述し、併せて本願発明の特徴部分について説明する。図からも明らかなように、この流量制御バルブ40は、ブロック状に構成したバルブ本体60を備えている。バルブ本体60には、スプール孔61が設けてあるとともに、スプール孔61に連通するように上述したメータアウトポート41、ドレンポート42、再生ポート43が設けてある。スプール孔61は、断面が円形で、軸心が直線に沿った貫通孔であり、内部にスプール62を備えている。スプール62は、スプール孔61に嵌合する外径を有した円柱状部材であり、スプール孔61の軸心に沿って移動可能となる状態でバルブ本体60に配設してある。図には明示していないが、スプール62の端部とバルブ本体60との間には、バルブ本体60に対してスプール62を
図4中の右側に付勢して常態位置に維持するリターンバネ48(
図1参照)が設けてあるとともに、操作バルブ(図示せず)からパイロット圧が供給される圧力室49(
図1参照)が設けてある。圧力室49は、操作バルブ(図示せず)から方向切換バルブ30を縮退位置に配置するようにパイロット圧が供給された場合にリターンバネ48のバネ力に抗してスプール62を
図4中の左側に移動させるように機能するものである。メータアウトポート41、ドレンポート42、再生ポート43は、スプール孔61の周囲を取り囲む部分を有するように構成したもので、スプール62の軸心方向において互いに離隔した位置に設けてある。図示の例では、メータアウトポート41を挟んで両側となる部分にドレンポート42及び再生ポート43が設けてある。
【0019】
スプール62には、主通路部63が設けてある。主通路部63は、スプール62の軸心部分に形成した貫通孔であり、基準領域63a、メータアウト領域(第1領域)63b、テーパ領域(第3領域)63c、ドレン領域(第2領域)63d、バルブ領域63eを有している。基準領域63aは、断面が円形の空所であり、一定の内径を有するように構成してある。
【0020】
メータアウト領域63bは、一定の内径を有した断面が円形の空所であり、
図4中において基準領域63aの右側に隣接して設けてある。メータアウト領域63bの内径は、基準領域63aよりも大きくなるように形成してある。このメータアウト領域63bには、上述したメータアウト絞り44を構成するためのメータアウト通路部(第1通路部)63fが形成してある。メータアウト通路部63fは、スプール62の径方向に沿って形成した断面が円形の貫通孔であり、互いに断面積が異なるものが周方向及び軸心方向に並設するように複数個ずつ形成してある。これらのメータアウト通路部63fは、スプール62が常態位置に配置された場合に、バルブ本体60においてメータアウトポート41とドレンポート42との間に位置するランド部60aによってすべてが覆われた状態となる。これに対してスプール62がバルブ本体60に対して左側に移動すると、メータアウト通路部63fは、メータアウトポート41に対して開口し、主通路部63とメータアウトポート41との間の開口面積を漸次増大するように機能する。本実施の形態の流量制御バルブ40では、メータアウト領域63bの内径が、基準領域63aよりも大きく形成してあるため、多数のメータアウト通路部63fを相互に干渉することなく形成することが可能となる。
【0021】
テーパ領域63cは、メータアウト領域63bの右側に隣接して設けた空所であり、右側に向けて内径が漸次減少するテーパ状に形成してある。このテーパ領域63cは、一定の割合で内径が減少しており、軸心を含む断面において内周面が直線状に延在している。図示の例では、メータアウト領域63bに対する傾斜角度θが21°となるようにテーパ領域63cが形成してある。テーパ領域63cの傾斜角度θは、15~30°の範囲であることが好ましい。換言すれば、軸心方向に沿って右側に行くに従って内径が減少する割合がtan15°~tan30°の範囲にあることが好ましい。テーパ領域63cのもっとも右側に位置する部分の内径は、基準領域63aよりも太径、かつメータアウト領域63bよりも細径となるように設定してある。
【0022】
ドレン領域63dは、テーパ領域63cの右側に隣接して設けた一定の内径を有する断面が円形の空所である。ドレン領域63dの内径は、テーパ領域63cのもっとも細径となる部分と同一である。このドレン領域63dには、上述したドレン側固定絞り45を構成するためのドレン通路部(第2通路部)63gが設けてある。ドレン通路部63gは、スプール62の径方向に沿って形成した断面が円形の貫通孔であり、周方向に沿って互いに等間隔となるように複数形成してある。これらのドレン通路部63gは、スプール62が常態位置に配置された状態からスプール62が左側に移動してメータアウト通路部63fがすべてメータアウトポート41に開口した状態までの間、常時ドレンポート42に連通するように設けてある。主通路部63においてドレン領域63dよりも右側となる部分には、プラグ64が装着してある。
【0023】
バルブ領域63eは、基準領域63aの左側となる部分に隣接して設けた断面が円形の空所である。このバルブ領域63eには、上述したチェックバルブ46を構成するためのバルブボディ65及びリターンスプリング66が収容してあるとともに、上述した再生側固定絞り47を構成するための再生通路部63hが設けてある。バルブボディ65は、基準領域63aとバルブ領域63eとの間に設けたバルブシート部63iに当接した場合に互いの間の油の流通を阻止する一方、左側に移動してバルブシート部63iから離隔した場合に互いの間の油の流通を許容する。リターンスプリング66は、主通路部63においてバルブ領域63eよりも左側となる部分に装着したプラグ67とバルブボディ65との間に介在し、バルブボディ65を常時バルブシート部63iに当接するように付勢するものである。再生通路部63hは、スプール62の径方向に沿って形成した断面が円形の貫通孔であり、周方向に沿って互いに等間隔となるように複数形成してある。
【0024】
上記のように構成した油圧回路では、ブーム3の先端部を上昇させるように操作バルブ(図示せず)を動作させると、
図2に示すように、流量制御バルブ40が常態位置に配置された状態で方向切換バルブ30が伸長位置に配置される。これにより、油圧ポンプ20から吐出された油がポンプ油路22及びボトム油路11を介して油圧シリンダ1のボトム室1aに供給される。これにより、油圧シリンダ1が伸長動作し、ブーム3の先端部が上方に移動することになる。
【0025】
一方、ブーム3の先端部を下降させるように操作バルブ(図示せず)を動作させると、
図3に示すように、方向切換バルブ30が縮退位置に配置されるとともに、流量制御バルブ40のスプール62がバルブ本体60に対して左側に移動し、操作バルブ(図示せず)から加えられるパイロット圧に応じてメータアウト通路部63f(メータアウト絞り44)の開口面積が変化する。これにより、ボトム油路11から排出される油の一部が第2ボトム油路11Bを介して流量制御バルブ40を経由し、メータアウト絞り44によって油タンク50に至る油の流量が制限されるとともに、流量制御バルブ40を経由した油の一部がチェックバルブ46、再生通路部63h(再生側固定絞り47)及び第2ロッド油路12Bを介して油圧シリンダ1のロッド室1bに再生されることになる。従って、流量制御バルブ40においてメータアウト通路部63fの開口面積を調整することにより、ブーム3やアーム6、バケット7の重量に抗して油圧シリンダ1が縮退する際の速度を制御することが可能となる。
【0026】
ところで、上述の流量制御を行っている場合には、
図6に示すように、メータアウト通路部63fの一部がバルブ本体60のランド部60a′によって閉じられた状態でメータアウトポート41からスプール62の主通路部63に油が流入することになる。バルブ本体60のランド部60a′によって閉じられたメータアウト通路部63fは、主通路部63に開口する凹部となるため、内部の油が滞留しやすい状態となる。
【0027】
ここで、高圧側となるメータアウトポート41から低圧側となる主通路部63に油が流れた場合には、油に気泡が発生し、この気泡が油とともに主通路部63の内部を移動することになる。主通路部63に流入した油は、ドレン通路部63gを介してドレンポート42に排出されるまでの間に主通路部63の内部においてプラグ64とバルブボディ65との間を適宜反転する。上流側に反転した油に含まれる気泡は、メータアウト通路部63fによって構成される凹部(閉じられたメータアウト通路部63f)に到達した場合、そのまま内部に滞留するおそれがあり、崩壊した場合にはランド部60a′にエロージョンを来す要因となり得る。
【0028】
しかしながら、上述の流量制御バルブ40によれば、メータアウト領域63bからドレン領域63dに至る間に内径が漸次減少するテーパ領域63cが設けてあるため、油が下流に向けてスムースに流れることになる。従って、メータアウトポート41から主通路部63に流入する際に油に生じた気泡は、そのままメータアウト領域63bで滞留することなく下流に向けて進行し、ドレン通路部63gを通じてドレンポート42に排出されることになる。さらに、油がドレン領域63dからメータアウト領域63bに向けて反転する際にはテーパ領域63cがディフューザとして機能し、メータアウト領域63bに到達する際に油の圧力が減少する。このため、仮にメータアウト通路部63fに気泡が到達したとしても、これが崩壊する事態を防止することができ、バルブ本体60のランド部60a′にエロージョンを来すおそれがなくなる。これにより、使用が長期にわたった場合にも油の漏れ量が増大する事態を招来することがなくなり、油の流量制御を正確、かつ微細に行うことが可能となる。また、バルブ本体60のランド部60a′にエロージョンが生じないため、バルブ本体60とスプール62の外周面(スプールランド部)との間において油の漏れがなくなり、例えばブーム3が自然落下する等の問題を防止することが可能となる。
【0029】
なお、上述した実施の形態では、作業機械のブームを動作するための油圧シリンダを例示しているが、本発明はこれに限定されない。この場合、第1ポートがメータアウトポートである必要もなく、第2ポートがドレンポートである必要もない。また、第3領域として一定の割合で内径が減少するテーパ部を例示しているが、第1領域から第2領域に向けて内径が減少する割合が変化し、凸状に湾曲していても良いし、凹状に湾曲するようにテーパ部を構成することも可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 油圧シリンダ
1a ボトム室
11B 第2ボトム油路
40 流量制御バルブ
41 メータアウトポート
42 ドレンポート
50 油タンク
51 タンク油路
60 バルブ本体
62 スプール
63 主通路部
63b メータアウト領域
63c テーパ領域
63d ドレン領域
63f メータアウト通路部
63g ドレン通路部