(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168093
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】情報処理装置、情報処理方法、情報処理システム及びコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
H02J 3/12 20060101AFI20231116BHJP
H02J 3/00 20060101ALI20231116BHJP
H02J 3/38 20060101ALI20231116BHJP
H02J 3/46 20060101ALI20231116BHJP
H02J 13/00 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
H02J3/12
H02J3/00 170
H02J3/38 110
H02J3/46
H02J13/00 301A
H02J13/00 311R
【審査請求】未請求
【請求項の数】21
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079742
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003078
【氏名又は名称】株式会社東芝
(71)【出願人】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100107582
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 毅
(74)【代理人】
【識別番号】100118876
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 順生
(72)【発明者】
【氏名】小野 謙次
(72)【発明者】
【氏名】吉田 琢史
(72)【発明者】
【氏名】畠山 遼子
(72)【発明者】
【氏名】百川 涼平
(72)【発明者】
【氏名】荻田 能弘
(72)【発明者】
【氏名】鳥羽 廣次
【テーマコード(参考)】
5G064
5G066
【Fターム(参考)】
5G064AC05
5G064AC08
5G064BA01
5G064CB06
5G064CB10
5G064DA03
5G066AA03
5G066AD14
5G066AE09
5G066DA04
5G066DA06
5G066FA01
5G066HA15
5G066HB02
5G066HB06
5G066HB09
5G066JA05
5G066JB03
(57)【要約】
【課題】発電量の予測精度に対してロバストな電圧制御を可能とする情報処理装置、情報処理方法、情報処理システム及びコンピュータプログラムを提供する。
【解決手段】本実施形態に係る情報処理装置は、少なくとも1つの発電装置の発電量の予測値と、前記発電装置を含む配電系統における第1配線の電圧とに基づき、前記配電系統において電力を制御可能な第2配線における前記電力の制御量である第1制御量を決定する処理部を備える。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの発電装置の発電量の予測値と、前記発電装置を含む配電系統における第1配線の電圧とに基づき、前記配電系統において電力を制御可能な第2配線における前記電力の制御量である第1制御量を決定する処理部
を備えた情報処理装置。
【請求項2】
前記処理部は、前記発電装置の発電量の前記予測値の誤差情報に基づき、前記第1制御量を決定する
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記発電装置の発電量の前記予測値に基づき、前記第1配線の電圧を計算する計算部
を備えた請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記制御可能な電力は、有効電力及び無効電力の少なくとも一方である
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記処理部は、前記第2配線における前記有効電力の制御量の変化に対する前記第1配線の電圧の変化を表す第1係数と
前記第2配線における前記無効電力の制御量の変化に対する前記第1配線の電圧の変化を表す第2係数とのうちの少なくとも一方と、
前記発電装置の発電量の前記予測値の変化に対する前記第1配線の電圧の変化を表す第3係数と
に基づいて、前記有効電力及び前記無効電力の前記少なくとも一方の制御量を前記第1制御量として決定する
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記処理部は、前記発電装置の発電量の前記予測値の誤差のサンプル値を確率的に生成し、
前記第1係数と、前記第2係数と、前記第3係数と、前記第2配線における前記有効電力の制御量を表す第1変数と、前記第2配線における前記無効電力の制御量を表す第2変数と、前記サンプル値とに基づき、前記第1配線の電圧の範囲に関する制約条件を生成し、
前記制約条件に基づき、前記第1変数及び前記第2変数を含む目的関数を計算することにより、前記第1変数及び前記第2変数の値を算出する
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記処理部は、前記誤差の確率分布又は確率密度関数に基づき、前記サンプル値を取得する
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記第1係数と、前記第2係数と、前記第3係数と、前記第2配線における前記有効電力の制御量を表す第1変数と、前記第2配線における前記無効電力の制御量を表す第2変数と、前記サンプル値とに基づき、前記第1配線の電圧の変化量を示す第3変数を生成し、
前記制約条件は、前記第3変数と、前記第1配線の電圧との和が第1範囲に含まれるとの条件である
請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記制約条件は、前記第3変数と前記第1配線の電圧との和の統計値が前記第1範囲に含まれるとの条件である
請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記発電量の誤差情報は、前記発電装置の発電量の予測値と前記発電装置の発電量の実績値との差分に基づいている
請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記発電装置は前記第2配線に接続されており、
前記発電装置の発電量の予測値に基づき前記第2配線に有効電力及び無効電力を設定し、潮流計算を行うことにより、前記第1係数及び前記第2係数のうちの少なくとも一方と、前記第3係数とを取得する計算部を備えた
請求項5に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記第2配線における前記有効電力及び前記無効電力の少なくとも一方を前記第1制御量だけ制御した場合の前記第1配線の電圧を計算する計算部を備え、
前記処理部は、計算した前記第1配線の電圧と、前回計算した前記第1配線の電圧との差分に基づき、収束条件が満たされたかを判定し、
前記処理部は、前記収束条件が満たされていない場合は、計算した前記第1配線の電圧に基づき、前記第2配線における前記有効電力及び前記無効電力の少なくとも一方の制御量である第2制御量を決定し、
前記第1制御量と前記第2制御量の合計に基づき、前記第2配線における前記有効電力及び前記無効電力の少なくとも一方の制御量を決定する
請求項8に記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記処理部は、前記第1係数、前記第2係数及び前記第3係数のうちの少なくとも1つに対する複数の摂動値に基づいて、前記摂動値ごとに、前記第1制御量の候補を決定し、
前記処理部は、前記収束条件を満たす前記第1配線の個数に基づいて、前記第1制御量の複数の前記候補のうちの1つを前記第1制御量として選択し、
前記処理部は、選択した前記第1制御量だけ前記第2配線における前記有効電力及び前記無効電力の少なくとも一方を制御した場合の前記第1配線の電圧を計算する
請求項12に記載の情報処理装置。
【請求項14】
前記処理部は、前記第1係数、前記第2係数及び前記第3係数に対して前記摂動値の組み合わせを複数生成し、前記組み合わせごとに前記第1制御量を決定する
請求項13に記載の情報処理装置。
【請求項15】
前記第1配線及び前記第2配線は、母線である
請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項16】
前記第2配線における前記有効電力及び前記無効電力は、前記第2配線に接続される電力装置に対して入力又は出力される有効電力及び無効電力の少なくとも一方を制御することにより制御可能である
請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項17】
前記電力装置は、前記発電装置、蓄電池、及び需要家装置のうちの少なくとも1つを含む
請求項16に記載の情報処理装置。
【請求項18】
前記第1制御量を示す情報を前記電力装置又は前記電力装置を管理するサーバに送信することにより、前記電力装置が入力又は出力する前記有効電力及び前記無効電力の少なくとも一方を変更する通信部と、
請求項16に記載の情報処理装置。
【請求項19】
少なくとも1つの発電装置の発電量の予測値と、前記発電装置を含む配電系統における第1配線の電圧とに基づき、前記配電系統において電力を制御可能な第2配線における前記電力の制御量である第1制御量を決定する
情報処理方法。
【請求項20】
少なくとも1つの発電装置の発電量の予測値と、前記発電装置を含む配電系統における第1配線の電圧とに基づき、前記配電系統において電力を制御可能な第2配線における前記電力の制御量である第1制御量を決定するステップと
をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項21】
少なくとも1つの発電装置の発電量の予測値と、前記発電装置を含む配電系統における第1配線の電圧とに基づき、前記配電系統において電力を制御可能な第2配線における前記電力の制御量である第1制御量を決定する処理部と、
前記第2配線に接続される電力装置と、を備え、
前記第2配線における前記電力は、前記電力装置に対して入力又は出力される電力を制御することにより制御可能である
情報処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、情報処理装置、情報処理方法、情報処理システム及びコンピュータプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電設備のような発電出力が変動する変動型分散電源が多数連系された配電網に対して、例えば電力取引市場における前日のスポット市場取引を活用して当日の電圧制御を事前に行っておくことが行われる。このような電圧制御を事前型制御と呼ぶ。事前型制御では、変動型分散電源の当日における発電量の予測値が外れた場合などに、電圧が管理値(許容値)から逸脱してしまう箇所が配電網において発生する可能性がある。この逸脱を事後制御と呼ばれる当日の制御で事後的に補償しようとすると、コスト増につながる問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の実施形態は、発電量の予測精度に対してロバストな電圧制御を可能とする情報処理装置、情報処理方法、情報処理システム及びコンピュータプログラムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本実施形態に係る情報処理装置は、少なくとも1つの発電装置の発電量の予測値と、前記発電装置を含む配電系統における第1配線の電圧とに基づき、前記配電系統において電力を制御可能な第2配線における前記電力の制御量である第1制御量を決定する処理部を備える。
【図面の簡単な説明】
【0006】
【
図1】第1実施形態に係る一般送配電事業者システムと配電網とを示す模式図。
【
図2】第1実施形態に係る一般送配電事業者システムのブロック図。
【
図3】第1実施形態に係る電圧事前制御装置のハードウェアブロック図。
【
図4】第1実施形態に係る電圧事前制御装置の機能ブロック図。
【
図5】第1実施形態の電圧事前制御装置の処理の全体のフローチャート。
【
図6】第1実施形態の潮流計算部の処理のフローチャート。
【
図7】第1実施形態の電圧感度情報生成部の処理のフローチャート。
【
図8】第1実施形態の最適化部の処理のフローチャート。
【
図9】第2実施形態の電圧事前制御装置の機能ブロック図。
【
図10】第2実施形態の電圧事前制御装置の処理の全体のフローチャート。
【
図11】第3実施形態の電圧事前制御装置の機能ブロック図。
【
図12】第3実施形態の電圧事前制御装置の処理の全体のフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本実施形態は、電力の発生から消費にいたる一連のシステム(発電、送電、変電、配電、消費)のうち、特に配電以降のシステム部分である配電系統(配電網)について、一般送配電事業者による系統運用業務(特に電圧制御)に適用可能な技術に関する。
【0008】
既存の配電網は、上流の配電用変電所から下流末端の需要家まで一方向の電力供給を行うことを前提にして構成されている。しかしながら、昨今は太陽光発電及び風力発電等の発電設備が配電網に大量に連系(接続)されることにより、発電設備から配電網側に電力が供給される逆潮流が発生するなど、一方向の原則が崩れつつある。このため、配電網の各箇所(例えば母線)で電圧を適正値に制御することが重要である。
【0009】
電圧制御には大きく2種類ある。2種類の電圧制御とはそれぞれ、あらかじめ電圧が管理範囲から逸脱することを予測して事前に電圧を制御する事前制御と、電圧が管理範囲から逸脱したのを検知してから電圧を制御する事後制御である。本実施形態は主として電圧事前制御に係る。
【0010】
より詳細には、本実施形態は、将来のある期間(例えばある時点、または時間帯など)における各母線の電圧を管理範囲(許容範囲)から逸脱しないよう事前に制御する技術に関する。例えば、本実施形態は、配電網に連系した発電設備の発電量の計画値(予測値)、及び需要家設備の消費電力量の計画値を用いつつ、発電量の予測値の誤差情報を考慮して、各母線の電圧を事前制御することを可能にする。これにより発電量の予測値の精度が低い場合であっても、管理範囲からできるだけ逸脱しないように高い精度で各母線の電圧を制御できる。本実施形態は、前日から当日の対象となる時点にかけての電力市場取引又は相対電力取引を通じて配電網の各箇所の電圧制御を事前に行うのに用いて有用である。
【0011】
以下、図面を参照しつつ、本実施形態について詳細に説明する。
【0012】
<第1実施形態>
図1は、本実施形態に係る一般送配電事業者システム10と、配電用変電所1から末端の電力装置(需要家設備9及び発電設備7)までをつなぐ配電網(配電系統)とを示す。一般送配電事業者システム10と電力装置との組は、本実施形態に係る情報処理システムに対応する。
【0013】
配電用変電所1は配電網に接続されている。配電用変電所1からの電力は、高圧線2(例えば6.6kV)を流れ、高圧母線3、高圧母線柱上変電器4、低圧線5(例えば100V/200V)、低圧母線6を介して分岐しながら、中規模工場9a、小規模工場9b及び住宅9c等の需要家設備9に供給される。需要家設備9は電力を消費する電力装置の一例である。母線は、送電線(配線)から電流を受けて、他の1つ以上の送電線に分電する線であり、その機能を実現するための各種回路を含む。
【0014】
また、配電網には太陽光発電7a及び風力発電7b等の発電設備(発電装置)7が連系又は接続され、発電設備7から配電網に電力が供給される。発電設備7の例として、水力発電又は地熱発電など他の発電設備の例も可能である。発電設備7は、太陽光発電のような気候によって出力が変動する、出力変動の不確定性を有する変動型分散電源である。発電設備7は電力を発電及び放電(出力)する電力装置の一例である。
【0015】
なお、上述の配電網の構成はあくまで本実施形態を説明するための一例であり、例えば他に各種調相設備又は蓄電池等が配電網に連系されている構成等も考えられる。蓄電池は、電力を放電(出力)する電力装置の一例である。
【0016】
VPP(Virtual Power Plant)事業者13aは、発電設備7を束ねて、リソースの管理または制御を行うことにより、電力(ポジワット)を創出する。VPP事業者13aは、創出した電力(ポジワット)を、電力取引を通じて売却することで、収益を上げる。電力取引には、電力市場取引及び相対取引の少なくとも一方が含まれる。
【0017】
VPP事業者13bは、需要家と契約し、電力需給のひっ迫時にデマンドレスポンス要請に対して、需要家設備9のリソースを管理または制御することによりネガワットを創出する。VPP事業者13bは、ネガワットを電力取引を通じて売却することにより、収益を上げる。デマンドレスポンス要請は、例えば電力需給のひっ迫時に電力会社等により発行される。またVPP事業者13bは、デマンドレスポンス要請に対して、蓄電池を放電することにより、ポジワットを創出して、電力取引を通じて売却することで、収益を上げることもあり得る。
【0018】
一般送配電事業者システム10は、VPP事業者13a及びVPP事業者13bと連携することで、間接的に発電設備7及び需要家設備9のリソース制御を行う。VPP事業者13a及びVPP事業者13bは、例えば一般送配電事業者システム10との連携を通じて、電力取引を通じたポジワット及びネガワットの売却を行う。またVPP事業者13bは電力取引を通じて電力を購入して、電力を蓄電池に充電したり、需要家設備9で消費することもあり得る。
【0019】
図2は、一般送配電事業者システム10のブロック図である。一般送配電事業者システム10は、電圧事前制御装置14、配電網状態監視装置15、VPP事業者管理装置16、及び発電量予測装置17を備えている。本実施形態に係る情報処理装置は、電圧事前制御装置14を含み、さらに配電網状態監視装置15、VPP事業者管理装置16、及び発電量予測装置17のうちの少なくとも1つをさらに含んでもよい。本実施形態に係る情報処理装置は単一のコンピュータとして構成されてもよいし、複数のコンピュータに分散して構成されてもよい。
【0020】
配電網状態監視装置15は、配電網における1つ以上の箇所(配線)の電圧及び潮流の状態を計算する際に必要なパラメータ(系統パラメータ)等の情報を、電圧事前制御装置14に提供する。本実施形態において電圧等を計算する対象となる配線は、電圧の管理対象となる母線である。配電網状態監視装置15は系統パラメータ等の情報を格納した記憶部を備えている。配電網状態監視装置15は、記憶部に格納された系統パラメータ等の情報を電圧事前制御装置14からの要求に応じて読み出して、電圧事前制御装置14に提供する。
【0021】
VPP事業者管理装置16は、VPP事業者13a、13bと有線又は無線で通信可能に構成されている。VPP事業者管理装置16は、VPP事業者13aから発電設備7の発電計画を含む電力の供給計画と、発電設備7のリソース情報Raとを取得する。VPP事業者管理装置16は、VPP事業者13bから需要家設備9の電力消費計画を含む電力の需要計画と、需要家設備9のリソース情報Rbとを取得する。需給計画(供給計画と需要計画)は、配電網における1つ以上の配線(母線)の電圧及び潮流の状態を計算又は推定する際に必要な情報である。リソース情報Ra、Rbは、電力(有効電力・無効電力)を制御可能な母線の電力(有効電力・無効電力)の制御内容を決定する際に必要な情報である。すなわち、母線の電力(有効電力及び無効電力)は、母線に接続された需要家設備9及び発電設備7等のリソース(電力装置)から出力される又はリソースに入力される、有効電力及び無効電力を制御することで制御可能である。リソースから出力される又はリソースに入力される有効電力及び無効電力は、例えば、リソースに対して出力又は入力する電圧及び電流の位相を調整することにより制御できる。VPP事業者管理装置16は、需給計画(供給計画と需要計画)とリソース情報Ra、Rbとを電圧事前制御装置14に提供する。
【0022】
リソース情報Raは、少なくとも制御コスト及び制御方式の2種類の情報を含む。制御コストの情報としては、発電設備7を制御する費用及び時間、VPP事業者13aが発電事業者に制御の対価として支払う費用、一般送配電事業者がVPP事業者13aに制御の対価として支払う費用、などがある。制御コストの情報はさらに、発電設備7間の優先度又は公平性に関する情報を含んでもよい。制御方式の情報としては、有効電力(P)と無効電力(Q)の取り得る制御量の情報がある。例えば、連続値か離散値かの識別情報、連続値の場合は制御可能な範囲の上下限値、離散値の場合は選択可能な離散値の集合などがある。
リソース情報Rbは、少なくとも制御コスト及び制御方式の2種類の情報を含む。制御コストの情報としては、需要家設備9を制御する費用及び時間、VPP事業者13bが需要家に制御の対価として支払う費用、一般送配電事業者がVPP事業者13bに制御の対価として支払う費用、などがある。制御コストの情報はさらに、需要家設備9間の優先度又は公平性に関する情報を含んでもよい。制御方式の情報としては、有効電力(P)と無効電力(Q)の取り得る制御量の情報がある。例えば、連続値か離散値かの識別情報、連続値の場合は制御可能な範囲の上下限値、離散値の場合は選択可能な離散値の集合などがある。
【0023】
発電量予測装置17は、発電設備7(7a、7b)と有線又は無線で通信可能に構成されている。発電量予測装置17は、発電設備7の発電量の実績データを発電設備7から取得し、発電設備7の発電量の予測を行う。発電量予測装置17は、発電量の事前の予測値と、発電量の実績値と差を表す誤差情報を算出する。太陽光発電及び風力発電等の発電量の誤差は、当日における天候等に左右されるために生じる。発電量予測装置17は、対象となる期間(例えば時点、時間帯、又は日等)について発電設備7の発電量を予測し、発電設備7の発電量の予測値を含む予測データを電圧事前制御装置14に提供する。また発電量予測装置17と、過去における発電量の誤差情報の履歴を電圧事前制御装置14に提供する。
【0024】
電圧事前制御装置14は、系統パラメータと、需給計画と、リソース情報Ra、Rbと、発電量の予測データと、発電量の誤差情報とに基づき、配電網において有効電力・無効電力を制御可能な母線の有効・無効電力の制御内容を決定する。これにより配電網における管理対象となる母線の電圧を、管理範囲(許容範囲)に抑えることを実現する。
【0025】
電圧の管理対象となる母線は一例として全ての母線(高圧母線3、低圧母線6)である。
【0026】
制御可能な母線は一例として需要家設備9又は発電設備7が接続された母線である。
図1の例では、制御可能な母線は、太陽光発電設備7aが接続された高圧母線3、風力発電設備7bが接続された高圧母線3、中規模工場設備9aが接続された高圧母線3、中規模工場設備9bが接続された低圧母線6、住宅設備9cが接続された低圧母線6である。
【0027】
図3は、電圧事前制御装置14のハードウェアブロック図である。電圧事前制御装置14は、CPU140、記録メディア141、RAM(Random Access Memory)142、ユーザインタフェース143、通信インタフェース144等のハードウェアを備えている。
【0028】
記録メディア141は、HDD(Hard Disk Drive)又はSSD(Solid State Drive)等で構成されている。記録メディア141には、電圧事前制御装置14の制御に必要なコンピュータプログラム、及び、コンピュータプログラムの実行に必要な情報を含むデータベースとが格納されている。
【0029】
RAM142は、SRAM(Static Random Access Memory),DRAM(Dynamic Random Access Memory)又はフラッシュメモリ等で構成されている。また、RAM141は、CPU140の作業領域として用いられる。
【0030】
ユーザインタフェース143は、ディスプレイ、キーボード及びマウス等で構成されている。ユーザインタフェース143は、ユーザからの入力の受付け、ユーザへの情報の出力を行う。
【0031】
通信インタフェース144は、配電網状態監視装置15、VPP事業者管理装置16及び発電量予測装置17と通信するためのインタフェースである。通信インタフェース144は、有線ネットワークまたは無線ネットワークの少なくとも一方を通じて通信する。有線ネットワークは、有線LAN(Local Area Network)でもよいし、インターネット等の広域ネットワークでもよいし、その他の方式の有線ネットワークでもよい。無線ネットワークは、無線LANでもよいし、セルラーネットワークでもよいし、その他の方式の無線ネットワークでもよい。
【0032】
CPU140は、バス145を介して、各部140~144と接続されている。CPU140は、各部140~144を制御すると共に、記録メディア141に格納されたコンピュータプログラムを順次実行する。CPU140は、コンピュータプログラムの実行時には、必要に応じて記録メディア141に格納されているコンピュータプログラムまたは情報等を読み出して、一時的にRAM141に記憶する。
【0033】
図4は、電圧事前制御装置14の記録メディア141に格納されたコンピュータプログラムをCPU140に実行させることによって実現される情報処理部100と、記録メディア141に格納されたデータベース130とを表すブロック図である。
【0034】
情報処理部100は、潮流計算部110(計算部)と、処理部120とを備えている。処理部120は、電圧感度情報生成部111と、最適化部112とを含む。
【0035】
データベース130は、系統パラメータD0と、需給計画D1と、予測誤差情報D2と、リソース情報D3とを格納している。
【0036】
系統パラメータD0は、配電網状態監視装置15から取得された情報である。系統パラメータD0は、配電網における各電気設備の各種パラメータ(インピーダンス等)を含む。各電気設備は、母線及び送電線を含み、さらに、末端の母線に接続される発電設備及び需要家設備などを含む。なお、母線及び送電線はいずれも、配電網における配線の一例である。
【0037】
需給計画D1は、VPP事業者管理装置16から取得された供給計画Saと需要計画Sbとを含む。供給計画Saは、各発電装置7の発電計画として、対象となる期間における発電計画値(発電量の予測値)を含む。需要計画Sbは各需要家設備9の消費計画として、対象となる期間における電力の消費計画値(消費量の予測値)を含む。
【0038】
予測誤差情報D2は、発電量予測装置17から取得された発電設備7(7a、7b)の発電量の予測の誤差情報を含む。誤差情報は、例えば、各発電設備が接続されている母線(母線kとする)に対する発電量の予測値Pkと予測誤差ΔPkとのデータ組の過去の実績データ、または当該実績データに基づく情報である。誤差情報は、過去の実績データを用いてパラメトリックな統計モデル(例えば平均と分散をパラメータとする正規分布など)に当てはめた際の当該統計モデルのパラメータであってもよい。
【0039】
リソース情報D3は、VPP事業者管理装置16から取得された発電設備7のリソース情報Ra及び需要家設備9のリソース情報Rbを含む。
【0040】
データベース130には、その他の情報、例えば電気設備間の接続関係を定義するデータであるネットワーク図が格納されている。ネットワーク図は、母線、送電線、発電設備7及び需要家設備9間の接続関係を定義している。
【0041】
情報処理部100は、データベース130に格納されている各種情報に基づき、対象となる期間における管理対象となる母線の電圧を、所定の管理範囲(許容範囲)に抑えるように、電力(有効電力・無効電力)を制御可能な母線の有効・無効電力の制御内容を決定する。
【0042】
図5は、情報処理部100の処理の全体の流れを示すフローチャートである。
ステップS101では、情報処理部100における潮流計算部110は、系統パラメータD0と需給計画D1とに基づき配電網における潮流計算を行い、対象となる期間における管理対象の各母線における電圧を計算する。また、潮流計算の際に算出されるヤコビアン行列の逆行列から電圧感度係数を取得する。管理対象の母線は、本実施形態では高圧母線3及び低圧母線6を含む全ての母線とするが、高圧母線3及び低圧母線6のうち予め指定された1つ又は複数の母線でもよい。管理対象の母線は、配電系統において電圧の管理対象となる第1配線に対応する。以下、ステップS101の処理について詳細に説明する。
【0043】
図6は、潮流計算部110の処理の一例のフローチャートである。
潮流計算部110は、データベース130から系統パラメータD0と、上述のネットワーク図(電気設備間の接続関係を定義するデータ)とを読み込む(ステップS10)。
【0044】
次に潮流計算部110は、データベース130から需給計画D1を読み込む。潮流計算部110は、需給計画D1に基づき、発電設備7及び需要家設備9に接続された末端の母線j、すなわち有効・無効電力を制御可能な母線jの有効電力Pj・無効電力Qjを設定する(ステップS11)。前述の発電設備が接続されている母線kは、有効・無効電力を制御可能な母線jでもある。有効・無効電力を制御可能な母線jは、配電系統において電力を制御可能な第2配線に対応する。
【0045】
例えば、潮流計算部110は、需給計画D1における供給計画Sa及び需要計画Sbの少なくとも一方に基づき対象となる期間において発電設備7から出力する電力の有効電力及び無効電力を決定し、決定した有効電力及び無効電力を、発電設備7に接続された母線jに有効電力Pj・無効電力Qjとして設定する。また、需給計画D1における供給計画Sa及び需要計画Sbの少なくとも一方に基づき、対象となる期間において需要家設備9に入力(需要家設備9で消費)される電力の有効電力及び無効電力を決定する。決定した有効電力及び無効電力を、需要家設備9に接続された母線jに有効電力Pj・無効電力Qjとして設定する。
【0046】
母線jの有効電力Pj・無効電力Qjを設定するとは、実際に配電網における母線jが有効電力Pj・無効電力Qjになるように設定するのではなく、データ処理上、母線jの有効電力・無効電力を有効電力Pj・無効電力Qjとして扱うことを意味する。
【0047】
なお、他の母線について有効電力・無効電力の設定が潮流計算のために必要な場合、適宜、状態推定手法等を用いて、他の母線の有効電力・無効電力の値を推定し、設定しておく。
【0048】
次に、系統パラメータD0、ネットワーク図、及び母線j等に対して設定された有効電力・無効電力を元に、潮流方程式を計算する(ステップS12)。潮流方程式の計算には、直流法又は交流法など、既存の潮流計算手法を用いることができる。潮流計算は、配電網における発電設備の発電出力及び需要家設備の消費電力等が与えられた場合、配電網における送電線を流れる潮流や、母線等の各箇所(配線)における電圧および位相を計算することである。
【0049】
潮流方程式の計算により、管理対象の母線iに対する電圧Vi=Vi(P,Q)を得る(ステップS13)。Vi(P,Q)は、ViがPとQの関数であることを意味する。PとQが潮流計算の入力となり、Viが出力となる。また、潮流方程式の計算の際に算出されるヤコビアン行列の逆行列から、電圧感度係数dVi/dPj,dVi/dQj、dVi/dPkを取得する(同ステップS13)。
【0050】
潮流計算部110は、発電装置(発電設備)の発電量の予測値に基づき、配電網における電圧の管理対象となる第1配線(母線i)の電圧を計算する計算部に対応する。
【0051】
以上により、
図6のフローチャートの処理が終了し、
図5のステップS101aに進む。
【0052】
図5のステップS101aにおいて、処理部120は、計算した電圧が管理範囲(許容範囲)に含まれているか、すなわち管理範囲から逸脱しているかを管理対象となる各母線について決定する。管理範囲は、例えば下限値(第1閾値)と上限値(第2閾値)とにより規定される。潮流計算部110は、計算した電圧が下限値より小さい、または上限値より大きいならば、計算した電圧は管理範囲に含まれていない、すなわち、管理範囲から逸脱していると判断する。潮流計算部110は、管理範囲を逸脱している母線が少なくとも1つ存在する場合に(YES)、V
i=V
i(P,Q)と電圧感度係数dV
i/dP
j,dV
i/dQ
j、dV
i/dP
kとを、電圧感度情報生成部111に提供し、次のステップS102に進む。
【0053】
処理部120は管理範囲を逸脱している母線が存在しない場合に(NO)、制御不要と判断、すなわち、管理対象となる母線のうち制御可能な母線に対する有効・無効電力の制御は不要であると判断し、
図5のスローチャートの処理の終了を決定する。処理部120は、処理の終了を示す情報をユーザインタフェース143(表示部)に出力してもよい。
【0054】
図5のステップS102において、処理部120における電圧感度情報生成部111は、制御可能な母線における有効電力・無効電力に対する電圧の感度を表す電圧感度近似式を生成する。電圧感度近似式を生成するために、電圧感度情報生成部111は、データベース130における発電量の予測誤差情報D2と、潮流計算部110により計算された管理対象の母線の電圧の情報(V
i=V
i(P,Q))、電圧感度係数dV
i/dP
j,dV
i/dQ
j、dV
i/dP
kとを用いる。以下、
図7のフローチャートを用いて、ステップS102の処理について詳細に説明する。
【0055】
図7は、電圧感度情報生成部111の処理の一例のフローチャートである。
まず電圧感度情報生成部111は、データベース130から発電設備7の発電量の予測誤差情報D2を読み込む(ステップS20)。
【0056】
次に電圧感度情報生成部111は、予測誤差情報D2に基づき、発電量の予測誤差のシナリオを複数生成する(ステップS21)。より詳細には、
図6のステップS11で設定された有効・無効電力が制御可能な母線jのうち、発電量の予測対象となる発電装置7が接続された母線kに対し、予測誤差情報D2を元に確率的にΔP
k(予測誤差)を生成する。確率的に生成されるΔP
kは、予測値の誤差のサンプル値を表す。全ての発電設備7に接続された母線kについて生成したΔP
kを並べたベクトル[・・・,ΔP
k,・・・]を1つのシナリオとする。
【0057】
なお発電量の予測対象とならない発電設備が末端の母線に接続されている場合、発電設備が接続されている母線は母線kとして扱わなくてよい。例えば水素発電設備が存在し、発電に必要な十分の水素等が存在することが前提となる場合には、安定した電力が供給可能であるため、この場合、水素発電設備が接続された母線は母線kとして扱わなくてよい。一方、水素の供給量等にばらつきがあり、発電量に誤差が生じ得る場合は、当該水素発電設備も発電量の予測対象として、水素発電設備が接続された母線も母線kとして扱ってよい。
【0058】
確率的にΔPkを生成する方法は、ステップS11で読み込まれた需給計画における発電計画値(発電量の予測値)Pkに対して過去の実績データにおいて予測値が近かった予測誤差の集合からランダムに予測誤差を選択する方法でもよい。あるいは、パラメトリックな統計モデル(例えば正規分布など)にΔPkが確率的に従うとして、予測誤差を取得又は数値計算する方法でもよい。すなわち、ΔPkの確率分布又は確率密度分布に基づき、ΔPkを確率的に取得してもよい。
【0059】
上述の試行を複数回行うことにより、複数のシナリオw(w=1,2,3,...)を生成する。すなわち、複数の母線kに対する予測誤差のサンプル値を含むベクトルを、複数生成する。
【0060】
次に電圧感度情報生成部111は、ステップS21で生成したシナリオ[・・・,ΔP
k,・・・]を用いて、電圧感度近似式を生成する(ステップS23)。電圧管理対象の母線iにおけるシナリオwに対する電圧感度をΔV
i
wとすると、電圧感度近似式は式1で表される。
【数1】
【0061】
ΔPjは、制御対象の母線jの有効電力の制御量(変更量)を表す変数(第1変数)である。ΔQjは、制御対象の母線jの無効電力の制御量(変更量)を表す変数(第2変数)である。ΔPj及びΔQjによって表される制御量は、電力(有効電力・無効電力)を制御可能な配線(母線j)に対する電力(有効電力・無効電力)の制御量である第1制御量に対応する。
【0062】
dVi/dPjは、制御対象の母線jの有効電力Pjに関する、管理対象の母線iの電圧Viの電圧感度係数を表す。dVi/dPjは、母線jにおける有効電力の制御量の変化に対する母線iの電圧の変化を表す第1係数に対応する。
【0063】
dVi/dQjは、制御対象の母線jの無効電力Qjに関する、管理対象の母線iの電圧Viの電圧感度係数を表す。dVi/dQjは、母線jにおける無効電力の制御量の変化に対する母線iの電圧の変化を表す第2係数に対応する。
【0064】
dVi/dPkは、発電設備7の母線kの発電量の予測値Pkに関する、管理対象の母線iの電圧Viの電圧感度係数(第3係数)を表す。dVi/dPkは、発電装置(発電設備7)の発電量の予測値の変化に対する母線iの電圧の変化を表す第3係数に対応する。
【0065】
δPk
wは、発電設備7の母線kに対するシナリオwが示す予測誤差(予測誤差のサンプル値)を表す。
【0066】
ΔVi
wは、管理対象となる母線iの電圧の変化量を表す第3変数に対応する。電圧感度情報生成部111は、第1係数と、第2係数と、第3係数と、第1変数と、第2変数と、シナリオw(サンプル値)とに基づき、第3変数を生成する。シナリオwの個数だけ、第3変数を生成する。
【0067】
係数(dV
i/dP
j、dV
i/dQ
j、dV
i/dP
k)は、
図5のステップS101(潮流計算)における処理の結果として得られたものであるが、当該係数を別途データベースに格納しておき、データベースから係数を取得する方法も可能である。この場合、ステップS101(潮流計算)で係数を取得する処理を省略してもよい。
【0068】
シナリオ数だけ、ステップS22~S24のシナリオのループ処理を行うことによって、式1の電圧感度近似式をシナリオ数だけ生成する。
【0069】
図5のステップS103において、処理部120における最適化部112は、リソース情報D3(発電設備のリソース情報Ra、需要家設備のリソース情報Rb)と、電圧感度近似式とに基づき、制御対象の母線jに対して有効電力・無効電力の制御量をそれぞれ計算する。制御量は、母線jに接続されている実際の制御対象のリソース(需要家設備、発電設備等)の性質に合わせて連続量または離散値を取る。本実施形態の制御量は、連続量及び離散値のいずれであってもよい。以下、
図8のフローチャートを用いて、ステップS103の処理について詳細に説明する。
【0070】
図8は、最適化部112の処理の一例のフローチャートである。
まず最適化部112は、データベース130からリソース情報D3を読み込む(ステップS30)。
【0071】
最適化部112は、リソース情報D3と電圧感度近似式とに基づき、ΔP
j(第1変数)に関するコスト係数wp
j、及びΔQ
j(第2変数)に関するコスト係数wq
jを用いて、式2に示す目的関数を生成する(ステップS31)。目的関数はΔP
j(第1変数)とΔQ
j(第2変数)とを含む関数である。
【数2】
【0072】
式2は、制御に掛かるコストを最小化することを意味する。コスト係数wpj、wqjは、リソース情報D3に基づき算出する。コストの定義は、発電設備または需要家設備を制御する費用及び時間、VPP事業者が発電事業者または需要家に制御の対価として支払う費用、一般送配電事業者がVPP事業者に制御の対価として支払う費用、など様々考えられる。
【0073】
最適化部112は、コスト係数wpj、wqjを、これらの費用及び時間の少なくとも一方に基づき算出してもよい。また費用及び時間以外にも、設備間の優先度又は公平性を考慮した係数、事業者間の優先度又は公平性を考慮してコスト係数wpj、wqjを算出してもよい。コスト係数wpj、wqjは、その他、様々な方法で算出することが考えられる。
【0074】
コスト係数wpj、wqjは最適化部112が計算する他、コスト係数wpj、wqjがリソース情報D3に格納されていてもよい。この場合、最適化部112はリソース情報D3に含まれているコスト係数wpj、wqjを用いて目的関数を生成すればよい。
【0075】
次に、目的関数に対する制約条件を生成する(ステップS32)。制約条件には様々なものがあるが、本実施形態では制約条件として3種類の制約式の例を示す。
【0076】
1つ目は、上述した管理対象となる母線iにおけるシナリオwの電圧感度近似式(式1)である。
【0077】
2つ目は、管理対象となる母線iにおける電圧又は電圧の統計値が管理範囲(第1範囲又は許容範囲)に含まれるとの制約を表す式であり、式3で表される。
【数3】
【0078】
ここで式3の上式は、制御後の電圧Vi+ΔViが管理範囲の下限以上であることを表し、式3の下式は、制御後の電圧Vi+ΔViが管理範囲の上限以下であることを表す。式3における上式及び下式のそれぞれの左辺は、全てのシナリオwに関するVi+ΔVi
wの分布に対して、αパーセンタイル点及びβパーセンタイル点を表す。
【0079】
例えば、α=β=0.5の場合は、シナリオの中央値として制御後の電圧が管理範囲に含まれることを意味する。0<α<β<1の場合は、確率的により厳しい条件下で制御後の電圧が管理範囲に含まれることを意味する。1>α>β>0の場合は確率的により緩い条件下で制御後の電圧が管理範囲に含まれることを意味する。
【0080】
なお、式3ではシナリオ分布のパーセンタイル点を取っているが、本実施形態はこの定義に限定されることなく、例えばシナリオ分布の期待値、CVaR(Conditional Value at Risk)など他の統計値を取ることも可能である。
【0081】
式3は、ΔVi
wは、上述の式1で定義されているように、管理対象となる母線iの電圧の変化量を表す第3変数である。したがって、式3は、第3変数と、母線iの電圧Viとの和が管理範囲(第1範囲又は許容範囲)に含まれるとの制約条件を表している。
【0082】
3つ目は、制御対象となる母線jにおける有効電力の制御量ΔP
j及び無効電力の制御量ΔQ
jの範囲の制約式であり、式4で表される。
【数4】
【0083】
式4はΔPj・ΔQjが有効電力及び無効電力を連続的に制御可能な場合の制約式であるが、有効電力及び無効電力を離散的に制御する場合の制約式もあり得る。その場合、ΔPjを有効電力の離散値の集合から選択する制約式と、ΔQjを無効電力の離散値の集合から選択する制約式とを用いればよい。
【0084】
ステップS33の最適化計算では、目的関数(式2)と、制約条件(式1、式3、式4)に基づき、ΔPj(第1変数)及びΔQj(第2変数)の値を算出する。この計算は、式3に表されるように複数のシナリオを統計的に考慮して最適解を求めるいわゆるシナリオ最適化であり、線形計画問題向けソルバ等のソフトウェアを用いて実行することが可能である。
【0085】
ステップS34では、ステップS33で求められた制御対象となる母線jに対する制御量ΔPj・ΔQjを示す情報をユーザインタフェース143の表示部に出力する(ステップS34)。
【0086】
制御量ΔPj・ΔQjを示す情報に基づき、母線jの有効電力及び無効電力を制御(調整)する。例えば、電圧事前制御装置14の通信インタフェース144は、制御量ΔPj・ΔQjを示す情報を、母線jに関する発電設備・需要家設備を有する発電事業者・需要家と契約しているVPP事業者(13a又は13b)のサーバに送信してもよい。VPP事業者のサーバは、受信した情報に基づき、該当する母線jの有効電力及び無効電力を制御する要求を、発電設備又は需要家設備に送信してもよい。発電設備又は需要家設備は、受信した要求に基づき、出力又は入力する電力の有効電力及び無効電力を制御することにより、発電設備又は需要家設備に接続されている母線jの有効電力及び無効電力を調整してもよい。また、VPP事業者は、制御量ΔPj・ΔQjを示す情報に基づき、電力取引市場における前日のスポット市場取引で取引する電力量を決定し、電力を売却又は購入することで、当日における発電設備又は需要家設備の入出力する電力量を調整してもよい。これにより、発電設備又は需要家設備が接続された母線における当日の電圧制御を事前に行うことも可能である。
【0087】
以上、第1実施形態によれば、太陽光発電及び風力発電等の発電設備の発電量の予測誤差も考慮して、制御可能な各母線の有効電力及び無効電力のそれぞれの制御量を決定する。これにより、太陽光発電及び風力発電等の発電設備の発電量の予測の外れに対してロバストな制御量を決定することができる。すなわち、発電量の予測精度に拘わらず、管理対象となる各母線における電圧を管理範囲内に高い精度で収めることができる。
【0088】
(変形例)
上述した第1実施形態の式1及び式2等では有効電力に関する項と、無効電力に関する項との双方が含まれていたが、いずれか一方のみが含まれていてもよい。また、有効電力に関する項及び無効電力に関する項の代わりに、皮相電力に関する項が含まれていてもよい。また力率に関する項などが含まれていてもよい。上述の実施形態では発電量の予測誤差を扱ったが、消費電力量の予測誤差を扱ってもよい。この場合、上述した実施形態の説明における発電量の予測誤差を消費電力量の予測誤差を読み替えて、同様の処理を行えばよい。
【0089】
<第2実施形態>
第2実施形態は、上述の第1実施形態に加え、収束判定に基づく反復計算を取り入れることにより、電圧感度近似式のモデル誤差を低減して、より精度の高い有効電力・無効電力の制御量を出力することを可能にする。第1実施形態と第2実施形態は、一部を除きほぼ同じであるので、変更又は拡張された処理を除き、第1実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0090】
図9は、電圧事前制御装置14の記録メディア141に格納されたコンピュータプログラムをCPU140に実行させることによって実現される情報処理部100と、記録メディア141に格納されたデータベース130とを表すブロック図である。第1実施形態との違いは、処理部120に収束判定部113が追加されていることである。
図4と同一名称の要素には同一の符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0091】
潮流計算部110は、最適化部112の最適化の結果として得られる制御量ΔPj・ΔQjに基づき、制御対象の母線jのPj、Qjを制御(調整)したと仮定して潮流計算を再度行い、管理対象となる母線iの電圧Vi(第1配線の電圧)を計算する。収束判定部113は、計算した母線iの電圧Vi(第1配線の電圧)と、上述の最適化の結果の制御量ΔPj・ΔQjとに基づき、最適化計算の誤差(モデル化誤差)を計算する。収束判定部113は、モデル化誤差に基づき最適化計算が収束したか、すなわち、モデル化誤差が収束したかを判定する。モデル化誤差が収束した場合は、最適化計算の結果を出力する。モデル化誤差が収束していない場合は、モデル化誤差が収束するまで、潮流計算、電圧感度情報の生成及び最適化を繰り返す。
【0092】
図10は、第2実施形態に係る情報処理部100の処理の全体のフローチャートである。第1実施形態との違いは、最適化計算(ステップS103)の後に、再度潮流計算(ステップS201)が行われ、その後、収束判定(ステップS202)により最適化計算の誤差(モデル化誤差)が収束したか判定する。モデル化誤差が収束したと判定される場合(ステップS202aのYES)、本フローチャートの処理を終了する。モデル化誤差が収束していないと判定される場合(ステップS202aのNO)、電圧感度近似式の生成処理(ステップS102)に戻る。
【0093】
以下、第1実施形態と異なるステップS201、S202について詳細に説明する。
【0094】
ステップS201(潮流計算)では、潮流計算部110が、最適化計算(ステップS103)で得られたΔPj・ΔQjを用いて、制御対象の母線jをPj+ΔPj・Qj+ΔQjにした場合の潮流計算を行う。これにより、管理対象となる母線iに対して電圧Vi=Vi(P+ΔP,Q+ΔQ)を求める。
【0095】
ΔPは母線iにおける前回のPとの差分、ΔQは母線iにおける前回のQとの差分である。前回のPは、ステップS101で求めたViにおけるP又は前回のステップS201で算出したViにおけるP+ΔPである。前回のQは、ステップS101で求めたViにおけるQ又は前回のステップS201で算出したViにおけるQ+ΔQである。
【0096】
ステップS201(収束判定)では、収束判定部113が、以下の式5によって収束判定を行う。式5におけるV
i(P,Q)は、前回のV
iである。前回のV
iは、ステップS101で求めたV
i又は前回のステップS201で算出したV
iである。
【数5】
【0097】
式5の上式の右辺のεは収束条件の閾値である。最適化計算(S103)で求めた制御量ΔPj・ΔQjは、電圧変化ΔViを制御量の一次式で近似した電圧感度近似式(式1)により計算しているため、モデル化誤差を含む。式5の上式の左辺は、このモデル化誤差を表している。左辺がε以下であればモデル化誤差が収束している、そうでなければモデル化誤差がまだ収束していないと判定できる。この収束判定を、全ての電圧管理対象となる母線iに対して行う。
【0098】
ステップS202(収束判定)の結果、全ての電圧管理対象となる母線iに対して式5の収束条件が成立する場合は処理を終了する。少なくとも1つの母線iに対して収束条件が成立しない場合は、電圧感度近似式の生成処理(ステップS102)に戻って、反復処理を行う。
【0099】
処理部120は、反復処理の結果、収束条件が満たされた場合は、有効電力及び無効電力ごとに、これまでの最適化計算(S103)で計算された複数の制御量の合計を、制御対象の母線jに対する制御量ΔPj又はΔQjとして最終的に決定する。
【0100】
以上、第2実施形態によれば、収束判定処理に基づく反復計算を行うことによって、電圧感度近似式の精度を高め、より精度の高い有効電力・無効電力の制御量を出力することが可能になる。
【0101】
<第3実施形態>
第3実施形態は、上述の第2実施形態に加え、電圧感度係数に摂動項を導入することにより、異なる複数の制御量候補を取得する。複数の制御量候補の中から収束性の良い制御量候補を選択する。これによって、収束のループ処理を効率化して全体の計算時間を短縮することができる。また第2実施形態で離散的な制御量を扱う場合に、反復計算の収束性が悪くなり得る状況に対して、収束効率を向上させることができる。第2実施形態と第3実施形態は、一部を除きほぼ同じであるので、以下では、第2実施形態と異なる部分を中心に説明する。
【0102】
図11は、電圧事前制御装置14の記録メディア141に格納されたコンピュータプログラムをCPU140に実行させることによって実現される情報処理部100と、記録メディア141に格納されたデータベース130とを表すブロック図である。第2実施形態との違いは、データベース130に摂動項情報D4が追加されていることである。
図11と同一名称の要素には同一の符号を付して、変更又は拡張された処理を除き、詳細な説明は省略する。
【0103】
摂動項情報D4は、電圧管理対象となる母線iと制御対象となる母線jとの組合せに対する摂動値εijの集合を、複数のパタン含む。摂動値εijは、あらかじめランダムに生成した正負の微小数である。このような摂動値集合(・・・,εij,・・・)を複数パタン生成する。例えば、ランダムシードを変更して複数回、摂動値の集合を生成する方法などを用いることができる。
【0104】
図12は、第3実施形態に係る情報処理部100の処理の全体のフローチャートである。
図9と同一名称のステップには同一の符号を付し、
図9から変更又は拡張されたステップについては符号の末尾に“_1”を付加する。新たに追加されたステップの符号は“S3”で始まる。
【0105】
第2実施形態との違いは、摂動値集合を複数パタン含む摂動項情報を読み込み(ステップS301)、各々の摂動値集合に対してループ処理(S302、S102_1、S103、S201、S303)を実行する点である。また、ループ処理のステップS102_1の処理で生成する電圧感度近似式は摂動項を考慮した式となる。また、収束判定(ステップS202_1)も第2実施形態と異なる。
【0106】
以下、第2実施形態と異なるステップS301、S102_1、S202_1について詳細に説明する。
【0107】
ステップS202(摂動項情報の読み込み)では、電圧感度情報生成部111が、摂動項情報D4から電圧管理対象となる母線iと制御対象となる母線jとの組合せに対する摂動値εijの集合を読み込む。摂動値の集合(・・・,εij,・・・)は複数パタン読み込まれる。パタン毎にループ処理(S302、S102_1、S103、S201、S303)が実行される。
【0108】
摂動値集合の各パタン(・・・,ε
ij,・・・)に対して、ステップS102_1(電圧感度近似式の生成)では、以下の式6に表される摂動項を含む電圧感度近似式が生成される。すなわち、第1係数、第2係数及び第3係数に対して摂動値の組み合わせを複数生成し、組み合わせごとに電圧感度近似式を生成する。
【数6】
式6の摂動値集合の各パタンに対応して、すなわち、摂動値の各組み合わせに対応して、最適化部112による最適化計算(ステップS103)により、制御量ΔP
j・ΔQ
jが得られる。すなわち、パタンごとに、制御量ΔP
j・ΔQ
jが得られ、それぞれ母線jに対する有効電力及び無効電力の制御量の候補となる。
【0109】
収束判定(ステップS202_1)では、収束判定部113が、制御量ΔPj・ΔQjの候補のうち、収束判定の条件式5を満たす母線iの数が最も多い候補、すなわち収束性の良い候補を、制御量として選択する。このように収束性の良い候補を制御量ΔPj・ΔQjとして選択することにより、収束のループ処理を効率化し、全体の計算時間を短縮することができる。特に、離散的な制御量が含まれる場合、電圧感度近似式の一次近似が適切に機能しないことによって第2実施形態では収束のループ処理が機能しない場合があるが、そのような場合にも第3実施形態を用いて収束条件を満たす制御量を求めることが可能となる。
【0110】
本実施形態では、dVi/dPj(第1係数)、dVi/dQj(第2係数)、dVi/dPk(第3係数)のそれぞれに摂動項を追加したが、いずれか1つ又は2つの係数に摂動項を追加し、残りの係数には摂動項を追加しないことも可能である。また、各項の摂動値を異なる方法で生成してもよい。
【0111】
以上、第3実施形態によれば、収束のループ処理を効率化して全体の計算時間を短縮することができる。また、第3実施形態によれば、離散的な制御量が含まれる場合にも収束計算を行うことができる。
【0112】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【0113】
なお、本実施形態は以下のような構成を取ることもできる。
[項目1]
少なくとも1つの発電装置の発電量の予測値と、前記発電装置を含む配電系統における第1配線の電圧とに基づき、前記配電系統において電力を制御可能な第2配線における前記電力の制御量である第1制御量を決定する処理部
を備えた情報処理装置。
[項目2]
前記処理部は、前記発電装置の発電量の前記予測値の誤差情報に基づき、前記第1制御量を決定する
項目1に記載の情報処理装置。
[項目3]
前記発電装置の発電量の前記予測値に基づき、前記第1配線の電圧を計算する計算部
を備えた項目1又は2に記載の情報処理装置。
[項目4]
前記制御可能な電力は、有効電力及び無効電力の少なくとも一方である
項目1~3のいずれか一項に記載の情報処理装置。
[項目5]
前記処理部は、前記第2配線における前記有効電力の制御量の変化に対する前記第1配線の電圧の変化を表す第1係数と
前記第2配線における前記無効電力の制御量の変化に対する前記第1配線の電圧の変化を表す第2係数とのうちの少なくとも一方と、
前記発電装置の発電量の前記予測値の変化に対する前記第1配線の電圧の変化を表す第3係数と
に基づいて、前記有効電力及び前記無効電力の前記少なくとも一方の制御量を前記第1制御量として決定する
項目4に記載の情報処理装置。
[項目6]
前記処理部は、前記発電装置の発電量の前記予測値の誤差のサンプル値を確率的に生成し、
前記第1係数と、前記第2係数と、前記第3係数と、前記第2配線における前記有効電力の制御量を表す第1変数と、前記第2配線における前記無効電力の制御量を表す第2変数と、前記サンプル値とに基づき、前記第1配線の電圧の範囲に関する制約条件を生成し、
前記制約条件に基づき、前記第1変数及び前記第2変数を含む目的関数を計算することにより、前記第1変数及び前記第2変数の値を算出する
項目5に記載の情報処理装置。
[項目7]
前記処理部は、前記誤差の確率分布又は確率密度関数に基づき、前記サンプル値を取得する
項目6に記載の情報処理装置。
[項目8]
前記第1係数と、前記第2係数と、前記第3係数と、前記第2配線における前記有効電力の制御量を表す第1変数と、前記第2配線における前記無効電力の制御量を表す第2変数と、前記サンプル値とに基づき、前記第1配線の電圧の変化量を示す第3変数を生成し、
前記制約条件は、前記第3変数と、前記第1配線の電圧との和が第1範囲に含まれるとの条件である
項目6又は7に記載の情報処理装置。
[項目9]
前記制約条件は、前記第3変数と前記第1配線の電圧との和の統計値が前記第1範囲に含まれるとの条件である
項目8に記載の情報処理装置。
[項目10]
前記発電量の誤差情報は、前記発電装置の発電量の予測値と前記発電装置の発電量の実績値との差分に基づいている
項目2又は3に記載の情報処理装置。
[項目11]
前記発電装置は前記第2配線に接続されており、
前記発電装置の発電量の予測値に基づき前記第2配線に有効電力及び無効電力を設定し、潮流計算を行うことにより、前記第1係数及び前記第2係数のうちの少なくとも一方と、前記第3係数とを取得する計算部を備えた
項目5~9のいずれか一項に記載の情報処理装置。
[項目12]
前記第2配線における前記有効電力及び前記無効電力の少なくとも一方を前記第1制御量だけ制御した場合の前記第1配線の電圧を計算する計算部を備え、
前記処理部は、計算した前記第1配線の電圧と、前回計算した前記第1配線の電圧との差分に基づき、収束条件が満たされたかを判定し、
前記処理部は、前記収束条件が満たされていない場合は、計算した前記第1配線の電圧に基づき、前記第2配線における前記有効電力及び前記無効電力の少なくとも一方の制御量である第2制御量を決定し、
前記第1制御量と前記第2制御量の合計に基づき、前記第2配線における前記有効電力及び前記無効電力の少なくとも一方の制御量を決定する
項目8又は9に記載の情報処理装置。
[項目13]
前記処理部は、前記第1係数、前記第2係数及び前記第3係数のうちの少なくとも1つに対する複数の摂動値に基づいて、前記摂動値ごとに、前記第1制御量の候補を決定し、
前記処理部は、前記収束条件を満たす前記第1配線の個数に基づいて、前記第1制御量の複数の前記候補のうちの1つを前記第1制御量として選択し、
前記処理部は、選択した前記第1制御量だけ前記第2配線における前記有効電力及び前記無効電力の少なくとも一方を制御した場合の前記第1配線の電圧を計算する
項目12に記載の情報処理装置。
[項目14]
前記処理部は、前記第1係数、前記第2係数及び前記第3係数に対して前記摂動値の組み合わせを複数生成し、前記組み合わせごとに前記第1制御量を決定する
項目13に記載の情報処理装置。
[項目15]
前記第1配線及び前記第2配線は、母線である
項目1~14のいずれか一項に記載の情報処理装置。
[項目16]
前記第2配線における前記有効電力及び前記無効電力は、前記第2配線に接続される電力装置に対して入力又は出力される有効電力及び無効電力の少なくとも一方を制御することにより制御可能である
項目4~9、11~14のいずれか一項に記載の情報処理装置。
[項目17]
前記電力装置は、前記発電装置、蓄電池、及び需要家装置のうちの少なくとも1つを含む
項目16に記載の情報処理装置。
[項目18]
前記第1制御量を示す情報を前記電力装置又は前記電力装置を管理するサーバに送信することにより、前記電力装置が入力又は出力する前記有効電力及び前記無効電力の少なくとも一方を変更する通信部と、
項目16又は17に記載の情報処理装置。
[項目19]
少なくとも1つの発電装置の発電量の予測値と、前記発電装置を含む配電系統における第1配線の電圧とに基づき、前記配電系統において電力を制御可能な第2配線における前記電力の制御量である第1制御量を決定する
情報処理方法。
[項目20]
少なくとも1つの発電装置の発電量の予測値と、前記発電装置を含む配電系統における第1配線の電圧とに基づき、前記配電系統において電力を制御可能な第2配線における前記電力の制御量である第1制御量を決定するステップと
をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
[項目21]
少なくとも1つの発電装置の発電量の予測値と、前記発電装置を含む配電系統における第1配線の電圧とに基づき、前記配電系統において電力を制御可能な第2配線における前記電力の制御量である第1制御量を決定する処理部と、
前記第2配線に接続される電力装置と、を備え、
前記第2配線における前記電力は、前記電力装置に対して入力又は出力される電力を制御することにより制御可能である
情報処理システム。
【符号の説明】
【0114】
1 配電用変電所
2 高圧線
3 高圧母線
4 高圧母線柱上変電器
5 低圧線
6 低圧母線
7 発電設備(発電装置)
7a 太陽光発電
7b 風力発電
9 需要家設備
9a 中規模工場
9b 小規模工場
9c 住宅
10 一般送配電事業者システム
13a VPP事業者
13b VPP事業者
14 電圧事前制御装置
15 配電網状態監視装置
16 VPP事業者管理装置
17 発電量予測装置
100 情報処理部
110 潮流計算部
111 電圧感度情報生成部
112 最適化部
113 収束判定部
120 処理部
130 データベース
141 記録メディア
143 ユーザインタフェース
144 通信インタフェース
145 バス