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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168097
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】接合装置
(51)【国際特許分類】
   B23K 3/02 20060101AFI20231116BHJP
   B23K 3/00 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B23K3/02 N
B23K3/00 310Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079747
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000166948
【氏名又は名称】シチズンファインデバイス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000001960
【氏名又は名称】シチズン時計株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】小須田 桂一
(72)【発明者】
【氏名】乙部 鉄太郎
(57)【要約】
【課題】被接合材を電極にて挟持し、電極間に電流を供給しながら加圧することで接合材を接合する接合装置において、電極の先端部の状態を回復させることが容易な接合装置を提供する。
【解決手段】相互に対向して被接合材200を挟持する一対の電極10を備え、この一対の電極10の少なくとも一方は、電極10の先端側に着脱可能に設けられ、被接合材200に接触する接触電極13および発熱電極12を含む先端側電極と、この先端側電極における被接合材200に接触する面とは反対側に設けられ、先端側電極を支持する支持電極11と、を備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に対向して被接合材を挟持する一対の電極を備え、
前記一対の電極の少なくとも一方は、
前記電極の先端側に着脱可能に設けられ、前記被接合材に接触する先端側電極と、
前記先端側電極における前記被接合材に接触する面とは反対側に設けられ、当該先端側電極を支持する支持電極と、
を備えることを特徴とする、接合装置。
【請求項2】
前記先端側電極は、被接合材に接触する接触電極と、当該接触電極と前記支持電極との間に設けられ、通電により発熱する発熱電極とを含むことを特徴とする、請求項1に記載の接合装置。
【請求項3】
前記接触電極と前記発熱電極とは、前記先端側電極において個別に着脱可能であることを特徴とする、請求項2に記載の接合装置。
【請求項4】
予備の先端側電極を保持することが可能であり、着脱可能な前記先端側電極を前記支持電極に対応する対応位置から移動させ、当該予備の先端側電極を当該対応位置に配置する電極交換手段をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の接合装置。
【請求項5】
前記先端側電極は、被接合材に接触する接触電極と、当該接触電極と前記支持電極との間に設けられ、通電により発熱する発熱電極とを含み、
前記電極交換手段は、前記接触電極および前記発熱電極に対して個別に設けられることを特徴とする、請求項4に記載の接合装置。
【請求項6】
着脱可能な前記先端側電極を前記支持電極に対応する対応位置から移動させ、移動した当該先端側電極の先端側の面および反対側の面をドレスするドレス手段をさらに備えることを特徴とする、請求項1に記載の接合装置。
【請求項7】
前記先端側電極は、被接合材に接触する接触電極と、当該接触電極と前記支持電極との間に設けられ、通電により発熱する発熱電極とを含み、
前記ドレス手段は、前記接触電極および前記発熱電極に対して個別に設けられることを特徴とする、請求項6に記載の接合装置。
【請求項8】
相互に対向して被接合材を挟持する一対の電極を備え、
前記電極は、
基部に取り付けられて、当該基部と共に前記被接合材に向かって進退する支持電極と、
前記支持電極の先端側に設けられ、通電により発熱する発熱電極と、
前記発熱電極の先端側に設けられ、前記被接合材に接触する接触電極と、を備え、
前記発熱電極および前記接触電極の少なくとも一方が着脱可能であることを特徴とする、接合装置。
【請求項9】
前記発熱電極および前記接触電極は、前記支持電極の先端側に露出させて設けられていることを特徴とする、請求項8に記載の接合装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合装置に関する。
【背景技術】
【0002】
被接合材を電極にて挟持し、電極間に電流を供給しながら加圧することで接合材を接合する接合装置がある。
【0003】
特許文献1には、被接合物を挟む電極と、電極により被接合物を挟持させる加圧機構と、電極の先端部の温度を測定する温度測定手段と、電極に電流を供給する溶接電源とを備え、電極をモリブデン、タングステン、鉄、ニッケル、チタンのうち少なくとも1つの元素を含む金属または合金にて構成し、溶接電源は、電極の先端部の温度が被接合物の融点未満の温度になるように電極への通電量を制御する溶接装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013-46917号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
電極の先端を被接合材に接触させるため、接合作業を繰り返すと、電極の先端面が消耗する。そのため、適当な間隔で電極の先端の状態を回復させることが必要である。
【0006】
本発明は、電極の先端部の状態を回復させることが容易な接合装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成する本発明は、相互に対向して被接合材を挟持する一対の電極を備え、この一対の電極の少なくとも一方は、電極の先端側に着脱可能に設けられ、被接合材に接触する先端側電極と、この先端側電極における被接合材に接触する面とは反対側に設けられ、先端側電極を支持する支持電極と、を備えることを特徴とする、接合装置である。
より詳細には、先端側電極は、被接合材に接触する接触電極と、この接触電極と支持電極との間に設けられ、通電により発熱する発熱電極とを含む。
ここで、接触電極と発熱電極とは、先端側電極において個別に着脱可能である構成としても良い。
また、この接合装置は、予備の先端側電極を保持することが可能であり、着脱可能な先端側電極を支持電極に対応する対応位置から移動させ、予備の先端側電極を対応位置に配置する電極交換手段をさらに備える構成としても良い。
ここで、電極交換手段は、接触電極および発熱電極に対して個別に設けられる構成としても良い。
また、この接合装置は、着脱可能な先端側電極を支持電極に対応する対応位置から移動させ、移動した先端側電極の先端側の面および反対側の面をドレスするドレス手段をさらに備える構成としても良い。
ここで、ドレス手段は、接触電極および発熱電極に対して個別に設けられる構成としても良い。
上記の目的を達成する他の本発明は、相互に対向して被接合材を挟持する一対の電極を備え、この電極は、基部に取り付けられて、この基部と共に被接合材に向かって進退する支持電極と、この支持電極の先端側に設けられ、通電により発熱する発熱電極と、この発熱電極の先端側に設けられ、被接合材に接触する接触電極と、を備え、発熱電極および接触電極の少なくとも一方が着脱可能であることを特徴とする、接合装置である。
より詳細には、発熱電極および接触電極は、支持電極の先端側に露出させて設けられている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、電極の先端部の状態を回復させることが容易な接合装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本実施形態による接合装置の構成例を示す図である。
図2図1のII部分を拡大した図である。
図3】接合装置による被接合材の接合動作を示す図であり、図3(A)は接合動作の準備状態を示す図、図3(B)は接合時の状態を示す図である。
図4】発熱電極の交換装置の例を示す図である。
図5】接触電極の交換装置の例を示す図である。
図6】支持電極と発熱電極と接触電極との位置関係を示す図であり、図6(A)は退行時の状態を示す図、図6(B)は進行時の状態を示す図である。
図7】発熱電極のドレス手段の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0011】
<装置構成>
図1は、本実施形態による接合装置の構成例を示す図である。この接合装置100は、接合ヘッド10と、基部20と、駆動機構30と、電源装置40とを備える。また、図1には示していないが、接合装置100は、接合ヘッド10の電極を交換するための交換装置と、接合ヘッド10から取り外された電極をドレスするためのドレス装置と、放射温度計とを備える。交換装置の構成および接合ヘッド10の交換方法については後述する。
【0012】
接合ヘッド10は、電極を備えて構成され、被接合材200を挟んで相互に対向して配置される2個を一対として設けられる。基部20は、一対の接合ヘッド10をそれぞれ支持する一対の部材である。駆動機構30は、基部20に取り付けられた一対の接合ヘッド10の少なくとも一方を被接合材200に対して進退させる機構である。電源装置40は、接合ヘッド10の電極に電流を供給する。
【0013】
接合装置100は、接合ヘッド10が被接合材200に接触した状態で、電源装置40が接合ヘッド10に電流を供給し、駆動機構30が接合ヘッド10をさらに進行させるように力を加えることで、被接合材200を加熱しながら加圧し、接合する。
【0014】
<接合ヘッド10の構成>
図2は、図1のII部分を拡大した図である。図2を参照し、接合ヘッド10の構成を説明する。上述したように、接合ヘッド10は相互に対向する2個一対が設けられる。この2個の接合ヘッド10を区別する場合は、接合ヘッド10a、10bのように添え字を付して記す。接合ヘッド10の各構成部材および接合ヘッド10を支持する基部20についても同様とする。図2に示す例では、上側の接合ヘッド10を接合ヘッド10a、下側の接合ヘッド10を接合ヘッド10bとしている。
【0015】
接合ヘッド10は、基部20に取り付けられた支持電極11と、支持電極11の先端側に設けられた発熱電極12と、発熱電極12の先端側に設けられた接触電極13とを備える。図2に示す例では、上側の基部20aに上側の支持電極11aが取り付けられ、下側の基部20bに下側の支持電極11bが取り付けられている。そして、支持電極11a、11bの対向する側から相互に近づく方向へ、発熱電極12a、12b、接触電極13a、13bの順に配置されている。したがって、本実施形態の接合装置100において、接合ヘッド10の発熱電極12a、bおよび接触電極13a、bは、支持電極11a、bの先端側に露出させて設けられている。
【0016】
支持電極11は、円柱形状であり、円形の面を対向する先端側の面としている。支持電極11は、導電性を有し、熱伝導率が高い材料で形成される。例えば、支持電極11は、Cu(銅)やCu合金等で形成される。
【0017】
発熱電極12は、円柱形状であり、円形の面を支持電極11に接触する面および先端側の面としている。発熱電極12は、支持電極11に対してほぼ同芯状に配置されている。図2に示す例では、発熱電極12の径は、支持電極11の径よりもやや小さい。発熱電極12は、導電性を有し、熱膨張率が小さく、抵抗値が大きく通電による発熱量が大きい材料で形成される。例えば、発熱電極12は、カーボンやカーボン合金で形成される。
【0018】
接触電極13は、円柱形状であり、円形の面を発熱電極12に接触する面および先端側の面としている。接触電極13の先端側の面は、被接合材200を接合する際に接触する面である。接触電極13は、発熱電極12および支持電極11に対してほぼ同芯状に配置されている。図2に示す例では、接触電極13と発熱電極12とは、ほぼ同じ径である。接触電極13は、導電性を有し、熱伝導率が高く、熱膨張率が小さい材料で形成される。例えば、発熱電極12は、W(タングステン)やW合金で形成される。
【0019】
基部20は、支持電極11を装着可能であり、図2における上下の基部20のうち少なくとも一方が、駆動機構30によって被接合材200に対して進退する。本実施形態では、下側の基部20bを固定し、この基部20bに被接合材200がセットされた状態で、駆動機構30が上側の基部20aを被接合材200に対して進退させるように動作させるものとする。
【0020】
被接合材200を接合する際は、基部20a、bに装着された電極10a、bが、相互に近づくことによって被接合材200を挟む。そして、電極10a、bが被接合材200を挟んだ状態で、さらに駆動機構30により力が加えられることにより、被接合材200を加圧することができる。また、基部20は、電源装置40に接続され、装着された電極10に対して電流を供給することができる。電極10への電流の供給は、基部20に導線を配して行っても良いし、基部20自体を導体により構成しても良い。
【0021】
図2に示す例では、基部20に形成された凹部に、支持電極11が挿入されて固定されている。また、図2に示すように、基部20には、液体を流すための流路21が形成されている。この流路21に冷却用の液体(例えば、水)を流すことにより、支持電極11を速やかに放熱させ得る。流路21の配置や流路21における液体の流量、支持電極11における基部20に挿入された部分の表面積などの設定により、支持電極11の放熱量を調整し得る。
【0022】
ここで、被接合材200について説明する。図1、2には、接合装置100により接合される個所を含む被接合材200の部分が示されている。被接合材200は、少なくとも接合装置100による接合が行われる個所において、シート状や板状の2枚の接合対象部材210a、bを含む。接合前の段階において、接合対象部材210a、bの少なくとも一方には、他方と接合される側の面に、ろう材220の層がめっき処理により形成されている。
【0023】
接合対象部材210a、bは、例えば、ステンレス鋼(例えば、SUS304)で形成される。ろう材220の層は、例えば、接合対象部材210a、bの接合面に、Ni(ニッケル)-P(リン)めっきを施すことにより形成される。接合装置100は、接合ヘッド10a、bにより被接合材200を挟み、加熱すると共に加圧し、ろう材220を融解させて接合対象部材210a、bを貼り合わせる。
【0024】
<接合装置100による被接合材の接合動作>
図3は、接合装置100による被接合材の接合動作を示す図であり、図3(A)は接合動作の準備状態を示す図、図3(B)は接合時の状態を示す図である。接合動作の準備状態として、図3(A)に示すように、接合装置100の上側の基部20aおよび電極10aが駆動機構30により上方へ退行され、被接合材200をセットする空間が開けられる。被接合材200は、ろう材220を挟んで接合対象部材210a、bを重ねた状態で、接合個所が接合装置100の電極10a、bに対応する位置となるようにセットされる。被接合材200がセットされると、下側の電極10bの接触電極13bの先端側の面は、被接合材200に接触する。
【0025】
接合動作が開始されると、駆動機構30が基部20aおよび電極10aを下方(被接合材200および電極10bに向かう方向)へ進行させ、図3(B)に示すように、電極10aの接触電極13aが被接合材200に接触する。接触電極13aと被接合材200とが接触すると、電極10a(接触電極13a)と電極10b(接触電極13b)とで被接合材200を挟んだ状態となる。そして、電源装置40から基部20a、支持電極11a、発熱電極12a、接触電極13a、被接合材200、接触電極13b、発熱電極12b、支持電極11b、基部20bを経て電源装置40へ戻る回路が閉じる。この状態で、電源装置40により、電極10a、bに電流(例えば、数千アンペア程度)が供給される。また、駆動機構30は、基部20aおよび電極10aに対して下方へ進行する向きの力を加え、電極10a(接触電極13a)と電極10b(接触電極13b)とにより被接合材200に対して加圧する。
【0026】
電極10a、bおよび被接合材200に電流が流れると、電極10a、bおよび被接合材200の各部材が自身の抵抗により発熱する。特に、カーボンで形成された発熱電極12a、bは、抵抗が高く、被接合材200のろう材220の融点を超える温度まで容易に発熱する。この熱は、接触電極13a、bを介して被接合材200に伝達され、ろう材220を溶融させる。これにより、被接合材200は、ろう接接合される。
【0027】
この後、電源装置40は、電極10a、bへの電流の供給を止め、被接合材200を冷却する。被接合材200の冷却は、例えば、冷却用の気体を吹き付けることにより急速に行っても良い。冷却用の気体としては、例えば、窒素ガスや空気を用い得る。被接合材200が冷却されると、溶融したろう材220が固化し、接合対象部材210a、bが張り合わされる。電極10a、bは、冷却によりろう材220が固化するまで、被接合材200を加圧した状態を保つ。したがって、被接合材200を冷却する際、電極10a、bも一緒に冷却される。また、電極10a、bは、基部20a、bの冷却構造(流路21、図2参照)によって、支持電極11からも放熱する。
【0028】
ろう材220が固化し、接合対象部材210a、bが接合されたならば、駆動機構30により基部20aおよび電極10aが上方へ退行されて準備状態に戻り、電極10aが被接合材200から離隔する(図3(A)参照)。そして、被接合材200が接合装置100から取り外される。
【0029】
以上の動作において、被接合材200の接合時における電極10a、b(特に、発熱電極12a、bおよび接触電極13a、b)の温度は、被接合材200のろう材220が溶融し、液相状態を必要時間確立して被接合材の不動態膜層を破壊する程度の高温が維持される必要がある。そこで、本実施形態では、放射温度計50で発熱電極12a、bの温度を測定し(図3(B)参照)、必要な温度に到達し、維持されるように電流を調節する。なお、発熱電極12を形成するカーボンは、熱伝導率が小さいため、表面の温度が、部位によってばらつきが生じやすい。そこで、被接合材200に直接接触する接触電極13a、bを測定対象として温度を測定しても良い。また、被接合材200の冷却時間は、溶融したろう材220が固化するのに十分な時間が設定される。
【0030】
<先端側電極の交換>
電極10は、発熱および冷却を繰り返し、被接合材200に対して加圧するために電極10自体も圧力を受ける。このため、特に発熱電極12および接触電極13は、使用に伴う消耗が激しい(以下、発熱電極12と接触電極13とを合わせて「先端側電極」と呼ぶ場合がある)。そこで、本実施形態は、これらの先端側電極を着脱可能とし、交換可能に構成する。
【0031】
先端側電極を交換可能とするため、本実施形態の接合装置100は、先端側電極を支持電極11に対応する位置(以下、「基本位置」と呼ぶ)に保持すると共に、先端側電極を予備の先端側電極と交換する動作を行う電極交換手段を備える。これにより、先端側電極は、支持電極11に対して固定されず、電極交換手段によって基本位置に保持された状態となり、後述する電極交換手段の動作により着脱自在となる。
【0032】
電極交換手段は、先端側電極を基本位置、準備位置、退避位置に移動させて保持可能に構成されるものとする。準備位置とは、現在の先端側電極と交換して使用される予備の先端側電極が配置される位置である。退避位置とは、基本位置から外された先端側電極が配置される位置である。電極交換手段は、先端側電極を交換する際、使用していた先端側電極を基本位置から退避位置へ移動させ、準備位置に配置された予備の先端側電極を基本位置に移動させる。
【0033】
電極交換手段は、上記のように先端側電極を着脱し交換可能なものであれば良く、具体的な構成は特に限定しない。また、先端側電極の交換は、発熱電極12および接触電極13をまとめて行う構成としても良いし、個別に交換可能な構成としても良い。また、発熱電極12のみを交換可能としても良いし、接触電極13のみを交換可能としても良い。以下、発熱電極12および接触電極13を個別に交換可能とすることを想定し、電極交換手段の具体的な構成例について説明する。
【0034】
図4は、発熱電極12a、bの交換装置の例を示す図である。発熱電極12a、bの交換装置60a、bは、電極交換手段の一例である。図4は、発熱電極12a、b、交換装置60a、b、被接合材200を上方から見た状態を示す。すなわち、図4において、紙面の手前から奥へ向かって、交換装置60aおよび発熱電極12a、被接合材200、交換装置60bおよび発熱電極12bの順に並んでいる。
【0035】
交換装置60a、bは、円板状の回転テーブル61a、bを有しており、中心軸62の周りに回転可能に構成されている。交換装置60aと交換装置60bとは、個別に回転可能であるものとする。そのため、図4に示す例では、交換装置60aの中心軸62と交換装置60bの中心軸62とが、被接合材200を挟んで反対側に配置されている。また、図4に示す例では、回転テーブル61aは右回りに、回転テーブル61bは左回りに回転する(図4の矢印参照)。回転テーブル61には、発熱電極12が装着される4つの貫通孔が設けられている。各貫通孔は、中心軸62から等距離にあり、中心軸62を頂点として90度ずつ開いて設けられている。したがって、各貫通孔に収められた発熱電極12は、回転テーブル61が90度ずつ4回、図示の矢印方向に回ると、1回転して元の位置に戻る。
【0036】
図4に示す交換装置60a、bにおいて、回転テーブル61a、bにより発熱電極12a、bが配置される4か所は、基準位置I、準備位置IIおよび2か所の退避位置IIIに設定されている。したがって、基準位置Iにある発熱電極12a、bは、回転テーブル61a、bが1/4回転するごとに、基準位置I→最初の退避位置III→2番目の退避位置III→準備位置IIと移動した後、再び基準位置Iへ戻る。なお、図4において、交換装置60bの基準位置Iは、被接合材200を挟んで交換装置60aの基準位置Iと重なっているため、図示されていない。
【0037】
図5は、接触電極13a、bの交換装置の例を示す図である。接触電極13a、bの交換装置70a、bは、電極交換手段の一例である。図5は、接触電極13a、b、交換装置70a、b、被接合材200を上方から見た状態を示す。すなわち、図5において、紙面の手前から奥へ向かって、交換装置70aおよび接触電極13a、被接合材200、交換装置70bおよび接触電極13bの順に並んでいる。なお、説明の都合上、発熱電極12a、bの交換装置60a、bは2点鎖線で外形のみを記載し、接触電極13a、bの交換装置70a、bに対する位置関係のみを示している。
【0038】
交換装置70a、bは、円板状の回転テーブル71a、bを有しており、中心軸72の周りに回転可能に構成されている。交換装置70aと交換装置70bとは、個別に回転可能であるものとする。そのため、図5に示す例では、交換装置70aの中心軸72と交換装置70bの中心軸72とが、被接合材200を挟んで反対側に配置されている。また、図5に示す例では、回転テーブル71aは右回りに、回転テーブル71bは左回りに回転する(図5の矢印参照)。回転テーブル71には、接触電極13が装着される4つの貫通孔が設けられている。各貫通孔は、中心軸72から等距離にあり、中心軸72を頂点として90度ずつ開いて設けられている。したがって、各貫通孔に収められた接触電極13は、回転テーブル71が90度ずつ4回、図示の矢印方向に回ると、1回転して元の位置に戻る。
【0039】
図5に示す交換装置70a、bにおいて、回転テーブル71a、bにより接触電極13a、bが配置される4か所は、基準位置I、準備位置IIおよび2か所の退避位置IIIに設定されている。したがって、基準位置Iにある接触電極13a、bは、回転テーブル71a、bが1/4回転するごとに、基準位置I→最初の退避位置III→2番目の退避位置III→準備位置IIと移動した後、再び基準位置Iへ戻る。なお、図5において、交換装置70bの基準位置Iは、被接合材200を挟んで交換装置70aの基準位置Iと重なっているため、図示されていない。
【0040】
また、交換装置70a、bは、交換装置60a、bとは独立に動作して接触電極13a、bを交換することができる。また、交換装置70aの回転テーブル71aと交換装置60aの回転テーブル61aの回転動作が互いに干渉しないように、回転テーブル71aの中心軸72と回転テーブル61aの中心軸62とは重ならないように配置されている。同様に、交換装置70bの回転テーブル71bと交換装置60bの回転テーブル61bの回転動作が互いに干渉しないように、回転テーブル71bの中心軸72と回転テーブル61bの中心軸62とは重ならないように配置されている。
【0041】
ここで、発熱電極12および接触電極13が交換される際、交換装置60に装着された発熱電極12と、交換装置70に装着された接触電極13と、支持電極11とが、基準位置Iにおいてそれぞれ接している場合を考える。この場合、交換装置60による発熱電極12の移動、交換装置70による接触電極13の移動がそれぞれ行われると、接触電極13と発熱電極12との接触面や、発熱電極12と支持電極11との接触面が擦れて削れる可能性がある。このような事態を回避するため、被接合材200を加圧するとき以外は、接触電極13と発熱電極12との間、発熱電極12と支持電極11との間に、それぞれ間隙を設けるようにしても良い。
【0042】
図6は、支持電極11と発熱電極12と接触電極13との位置関係を示す図である。図6(A)は退行時の状態を示す図、図6(B)は進行時の状態を示す図である。なお、図6では、上側の支持電極11、発熱電極12、接触電極13、回転テーブル61および回転テーブル71のみを示しており、添え字「a」は付していない。また、図6では、電極10(支持電極11、発熱電極12および接触電極13)を側方(言い換えれば、回転テーブル61、71に平行な方向)から見た様子が示されている。
【0043】
この例では、回転テーブル61および回転テーブル71は、中心軸62、72に対してバネ性をもって取り付けられており、中心軸62、72に沿う方向の力に応じてわずかに沈むように構成されているものとする。接合装置100が準備状態(図3(A)参照)にあるとき、支持電極11、発熱電極12および接触電極13には駆動機構30による被接合材200へ向かう力がかかっておらず、回転テーブル61および回転テーブル71は初期状態となる。このとき、図6(A)に示すように、支持電極11と回転テーブル61に保持された発熱電極12との間、発熱電極12と回転テーブル71に保持された接触電極13との間には、わずかな空隙が保たれるものとする。この状態で、回転テーブル61、71が動作すれば、接触電極13と発熱電極12との対向する面、発熱電極12と支持電極11との対向する面を接触させることなく、発熱電極12および接触電極13を交換することができる。
【0044】
次に、被接合材200を接合させるために駆動機構30が基部20と共に支持電極11を進行させると、支持電極11の先端側の面が発熱電極12に接触し、被接合材200へ向かう方向(図の下方)へ押す。これにより、回転テーブル61は被接合材200へ向かう方向に沈み、基部20、支持電極11および発熱電極12が被接合材200へ向かって進行する。そして、発熱電極12の先端側の面が接触電極13に接触し、被接合材200へ向かう方向(図の下方)へ押す。これにより、回転テーブル61、71は被接合材200へ向かう方向に沈み、基部20、支持電極11、発熱電極12および接触電極13が被接合材200へ向かって進行する。そして、接触電極13の先端側の面が被接合材200に接触する。これにより、図6(B)に示すように、支持電極11、発熱電極12、接触電極13および被接合材200が全て接触し、電極10および被接合材200への電流の供給および被接合材200に対する加圧が可能となる。
【0045】
被接合材200の接合が終了すると、駆動機構30により基部20aおよび電極10aが上方へ退行されて準備状態に戻るため、回転テーブル61、71も初期状態に戻り、支持電極11と発熱電極12との間、発熱電極12と接触電極13との間に、再び空隙が開けられる(図6(A)参照)。
【0046】
以上、図6を参照して上側の発熱電極12(a)および接触電極13(a)を着脱可能とする構成について説明したが、下側の発熱電極12bおよび接触電極13bについても同様の構成を適用し得る。なお、図3(A)に示す例では、被接合材200が接合装置100にセットされた状態で、下側の接触電極13bの先端側の面が被接合材200に接触するとした。これに対し、図6に示したように、下側の接触電極13bにおいても、接合装置100におけるステージ(図示せず)に被接合材200がセットされた状態では接触電極13bの先端側の面が被接合材200に接触しないように構成し得る。
【0047】
以上のように構成された交換装置60a、b、70a、bを用い、予め定められた条件に応じて自動的に回転テーブル61a、b、71a、bを回転させることにより、本実施形態の接合装置100は、先端側電極を自動的に交換することができる。回転テーブル61a、b、71a、bを回転させる条件としては、例えば、予め設定された回数、被接合材200の接合を行ったこと、前回の交換時から予め設定された時間が経過したこと等とすることができる。
【0048】
なお、上記の構成例では、発熱電極12a、bに対する交換装置60a、bと、接触電極13a、bに対する交換装置70a、bとをそれぞれ設け、個別にドレス可能とする構成として説明した。これに対し、発熱電極12および接触電極13を分離せずにまとめて交換する場合、例えば、一つの交換装置の回転テーブルに発熱電極12および接触電極13を設置し、同時に移動させるように構成しても良い。また、発熱電極12のみを交換可能とする場合、図4を参照して説明した交換装置60a、bのみを設ける構成としても良い。また、接触電極13のみを交換可能とする場合、図5を参照して説明した交換装置70a、bのみを設ける構成としても良い。
【0049】
このように、本実施形態の接合装置100は、先端側電極である発熱電極12や接触電極13を着脱可能な構成としたため、劣化した先端側電極を交換することにより、接合ヘッド10や基部20ごと交換する構成と比較して、接合ヘッド10における電極の先端部の状態を回復させることが容易となる。そして、電極の先端部の状態を回復させることにより、接合装置100を使用して行われる工程を長時間にわたって連続的に実施することが可能となる。
【0050】
<先端側電極のドレス>
上記の説明では、先端側電極である発熱電極12および接触電極13の交換について述べた。本実施形態は、さらに、これら先端側電極の消耗や接触電極13の被接合材200に接触する面の平坦度の劣化から回復させるため、交換して取り外された先端側電極をドレスする。以下、図4および図5と、図7とを参照して、先端側電極のドレスについて説明する。なお、ここでは上述した発熱電極12a、bおよび接触電極13a、bの交換動作の例と同様に、発熱電極12a、発熱電極12b、接触電極13a、接触電極13bをそれぞれ個別にドレスする例について説明する。
【0051】
まず、発熱電極12のドレスについて説明する。図4に示す構成例において、交換装置60の回転テーブル61による発熱電極12の配置位置として、基準位置Iと準備位置IIと退避位置IIIとが設定されることを述べた。ここで、退避位置IIIにおいて、発熱電極12のドレスを行う。図4に示す例では、各発熱電極12a、bにおける2か所の退避位置IIIのそれぞれに、発熱電極12をドレスするドレス装置81a、bが設けられることが破線で示されている。発熱電極12をドレスする手法としては、既存の手法を用いて良い。ドレス装置81a、bは、ドレス手段の一例である。
【0052】
図7は、発熱電極12のドレス手段の例を示す図である。図7では、退避位置IIIの一つに配置された発熱電極12を側方から見た様子が示されている。図7に示す例では、ドレス装置81は、接合ヘッド10から外されて退避位置IIIに配置された発熱電極12を上下から挟み、先端側および後端側の両面を同時にドレスする。図4の構成例では、退避位置IIIは2か所あるので、ドレス処理の手順としては、発熱電極12の交換が2回行われた後に、接合ヘッド10から外された2つの発熱電極12に対して同時にドレスしても良い。また、2か所の退避位置IIIに設けられた2つのドレス装置81において異なる精度の2段階のドレスを行っても良い。なお、図示の例は、ドレス装置81による発熱電極12のドレス手法の一例に過ぎない。例えば、2か所の退避位置IIIにおいて、発熱電極12の先端側の面と後端側の面とを1面ずつドレスしても良い。
【0053】
次に、接触電極13のドレスについて説明する。接触電極13のドレス手段は、上記の発熱電極12のドレス手段と同様に設けられる。図5に示す構成例において、交換装置70の回転テーブル71による接触電極13の配置位置として、基準位置Iと準備位置IIと退避位置IIIとが設定されることを述べた。ここで、退避位置IIIにおいて、接触電極13のドレスを行う。図5に示す例では、各接触電極13における2か所の退避位置IIIのそれぞれに、接触電極13をドレスするドレス装置82a、bが設けられることが破線で示されている。接触電極13をドレスする手法としては、既存の手法を用いて良い。ドレス装置82a、bは、ドレス手段の一例である。接触電極13のドレス手段は、図7を参照して説明した発熱電極12のドレス手段と同様であるので、説明を省略する。
【0054】
以上のように構成されたドレス装置81a、b、82a、bを用いることにより、交換装置60a、b、70a、bにより退避位置IIIに移動した先端側電極に対し、自動的にドレス処理を行うことができる。
【0055】
なお、上記の構成例では、発熱電極12a、bに対するドレス装置81a、bと、接触電極13a、bに対するドレス装置82a、bとをそれぞれ設け、個別にドレス可能とする構成として説明した。これに対し、電極交換手段と同様に、発熱電極12および接触電極13を分離せず、まとめて一つの電極(先端側電極)としてドレスする構成としても良い。この場合、接触電極13の先端側の面と、発熱電極12の後端側の面とがドレスされることになる。また、発熱電極12のみを交換可能とする構成では、図4に示したドレス装置81a、bのみを設ける構成としても良い。また、接触電極13のみを交換可能とする構成では、図5を参照して説明したドレス装置82a、bのみを設ける構成としても良い。
【0056】
このように、本実施形態の接合装置100は、先端側電極である発熱電極12や接触電極13を交換してドレスする構成を有することにより、劣化した先端側電極の状態を回復することが可能となる。そして、ドレスされた先端側電極を再び予備の先端側電極として用いることにより、接合装置100を使用して行われる工程を、さらに長時間にわたって連続的に実施することが可能となる。
【0057】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態には限定されない。例えば、上記の実施形態では、被接合材200をろう接接合する接合装置100を対象として説明したが、本実施形態は、被接合材200に対して電流を供給するとともに加圧して接合する他の接合方法に対しても適用し得る。例えば、ろう材を用いずに接合対象部材を直接融解して接合する抵抗溶接等に用いても良い。その他、本発明の技術思想の範囲から逸脱しない様々な変更や構成の代替は、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0058】
10(10a、10b)…接合ヘッド、11(11a、11b)…支持電極、12(12a、12b)…発熱電極、13(13a、13b)…接触電極、20(20a、20b)…基部、30…駆動機構、40…電源装置、50…放射温度計、60(60a、60b)、70(70a、70b)…交換装置、61(61a、61b)、71(71a、71b)…回転テーブル、62、72…中心軸、81(81a、81b)、82(82a、82b)…ドレス装置、100…接合装置、200…被接合材、210a、210b…接合対象部材、220…ろう材
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7