(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168103
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】マイク位置最適化システム、方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
G10K 15/00 20060101AFI20231116BHJP
H04R 5/027 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
G10K15/00 L
H04R5/027 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079755
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000202361
【氏名又は名称】綜合警備保障株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(72)【発明者】
【氏名】磯部 忠明
(72)【発明者】
【氏名】河目 瞬
(72)【発明者】
【氏名】羽山 西蔵
(72)【発明者】
【氏名】木村 卓哉
(72)【発明者】
【氏名】藤田 肇
【テーマコード(参考)】
5D011
【Fターム(参考)】
5D011AB00
(57)【要約】
【課題】マイクの最適な設置位置を容易に決定する。
【解決手段】本発明の一実施形態に係るマイク位置最適化システムは、マイク設置空間の図面から、前記マイク設置空間を表す3次元空間内の3次元形状を推定する3次元空間形状推定部と、前記マイク設置空間の図面上の物体を認識する図面上物体認識部と、前記物体と前記物体で発生する雑音とが対応付けられたデータベースを参照して前記物体で発生する雑音を特定し、前記雑音の情報と前記マイク設置空間内の検出対象の情報およびマイク設置可能場所の情報を用いて音響シミュレーションを実行し、マイクの最適な位置を提示する、音響シミュレーション部と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マイク設置空間の図面から、前記マイク設置空間を表す3次元空間内の3次元形状を推定する3次元空間形状推定部と、
前記マイク設置空間の図面上の物体を認識する図面上物体認識部と、
前記物体と前記物体で発生する雑音とが対応付けられたデータベースを参照して前記物体で発生する雑音を特定し、前記雑音の情報と前記マイク設置空間内の検出対象の情報およびマイク設置可能場所の情報を用いて音響シミュレーションを実行し、マイクの最適な位置を提示する、音響シミュレーション部と
を備えたマイク位置最適化システム。
【請求項2】
前記音響シミュレーション部は、前記雑音に対する前記検出対象の比が大きい位置を前記マイクの最適な位置として提示する、請求項1に記載のマイク位置最適化システム。
【請求項3】
前記音響シミュレーション部は、前記マイクの種類を提示する、請求項1または2に記載のマイク位置最適化システム。
【請求項4】
前記音響シミュレーション部は、複数のマイクの位置を提示する、請求項1または2に記載のマイク位置最適化システム。
【請求項5】
前記データベースは、前記マイク設置空間で収音された音に基づいて更新される、請求項1または2に記載のマイク位置最適化システム。
【請求項6】
マイク位置最適化システムが実行する方法であって、
マイク設置空間の図面から、前記マイク設置空間を表す3次元空間内の3次元形状を推定するステップと、
前記マイク設置空間の図面上の物体を認識するステップと、
前記物体と前記物体で発生する雑音とが対応付けられたデータベースを参照して前記物体で発生する雑音を特定し、前記雑音の情報と前記マイク設置空間内の検出対象の情報およびマイク設置可能場所の情報を用いて音響シミュレーションを実行し、マイクの最適な位置を提示する、ステップと
を含む方法。
【請求項7】
マイク位置最適化システムを、
マイク設置空間の図面から、前記マイク設置空間を表す3次元空間内の3次元形状を推定する3次元空間形状推定部、
前記マイク設置空間の図面上の物体を認識する図面上物体認識部、
前記物体と前記物体で発生する雑音とが対応付けられたデータベースを参照して前記物体で発生する雑音を特定し、前記雑音の情報と前記マイク設置空間内の検出対象の情報およびマイク設置可能場所の情報を用いて音響シミュレーションを実行し、マイクの最適な位置を提示する、音響シミュレーション部
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイク位置最適化システム、方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、マイクロフォン(以下、マイクという)が収音した音から悲鳴や怒声、破壊音などの異常発生時に生じる音(以下、異常音という)を検出するシステムが知られている。例えば、小売店等の室内に設置されたマイクが収音した音に、検出対象である異常音と比較して大きな音量の雑音(例えば、人の会話の音声、電子音、物音等)が含まれている場合、異常音を検出する精度が低下する。このため、精度よく検出対象を認識するためには、雑音が入りにくく、かつ、検出対象である異常音が大きく聞こえる位置にマイクを設置する必要がある。
【0003】
マイクの位置を決定する手法として、例えば、特許文献1には、雑音と音響エコーを考慮しつつ、会議室のマイクおよびスピーカの配置を最適化することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、小売店等のように様々な音圧の雑音が散発的に発生する場所では、雑音を収集し音源を特定するために現場に長期間にわたりマイクを設置しなければならず、小売店等の営業の妨げになってしまう。また、会議室であればマイクを自由に設置することができるが、小売店等では、音響的に最適な位置であっても小売店等の都合(例えば、何らかの物が置いてある、あるいは、作業の邪魔になる等)や工事の可否によりマイクを設置できないことがある。このため、音響に関する専門知識のない作業員にとって、精度よく異常音を検出することができるマイクの設置位置を決定することは容易ではなかった。
【0006】
そこで、本発明では、検出対象である異常音を精度よく検出するためのマイクの最適な設置位置を容易に決定することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施形態に係るマイク位置最適化システムは、マイク設置空間の図面から、前記マイク設置空間を表す3次元空間内の3次元形状を推定する3次元空間形状推定部と、前記マイク設置空間の図面上の物体を認識する図面上物体認識部と、前記物体と前記物体で発生する雑音とが対応付けられたデータベースを参照して前記物体で発生する雑音を特定し、前記雑音の情報と前記マイク設置空間内の検出対象の情報およびマイク設置可能場所の情報を用いて音響シミュレーションを実行し、マイクの最適な位置を提示する、音響シミュレーション部と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、マイクの最適な設置位置を容易に決定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の一実施形態に係る全体の構成を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係るマイク位置最適化システムの機能ブロック図である。
【
図3】本発明の一実施形態に係るマイクの位置を決定する処理のフローチャートである。
【
図4】本発明の一実施形態に係る3次元空間形状の推定について説明するための図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る図面上の物体の認識について説明するための図である。
【
図6】本発明の一実施形態に係る情報の統合について説明するための図である。
【
図7】本発明の一実施形態に係る音響シミュレーションについて説明するための図である。
【
図8】本発明の一実施形態に係る音響シミュレーションについて説明するための図である。
【
図9】本発明の一実施形態に係る音響シミュレーションについて説明するための図である。
【
図10】本発明の一実施形態に係るマイクの種類の決定について説明するための図である。
【
図11】本発明の一実施形態に係る複数のマイクの位置の決定について説明するための図である。
【
図12】本発明の一実施形態に係るマイク位置最適化システムのハードウェア構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面に基づいて本発明の実施の形態を説明する。
【0011】
<用語の説明>
・本明細書において、「マイク設置空間」とは、マイクを設置する空間である。例えば、マイク設置空間は、小売店等の室内であるが、これに限定されない。
・本明細書において、「検出対象」とは、マイクが収音した音のなかから検出すべき音である。例えば、検出対象は、店員の悲鳴、客の怒声等である。
・本明細書において、「雑音」とは、マイクが収音する音のうち「検出対象」以外の音である。例えば、定常的な雑音は、店舗内のBGM、空気調和機の音等である。また、散発的な雑音は、客の会話、客の物音、店員の作業音、車のエンジン音、台車の走行音等である。
【0012】
<全体構成>
図1は、本発明の一実施形態に係る全体の構成を示す図である。マイク位置最適化システム10と作業員端末20は、任意のネットワークを介して、互いにデータを送受信することができる。
【0013】
<<マイク位置最適化システム>>
マイク位置最適化システム10は、マイク設置空間(つまり、マイクを設置する空間)内で、マイクを設置するのに最適な位置を決定するシステムである。マイク位置最適化システム10は、1つまたは複数のコンピュータから構成される。
【0014】
<<作業員端末>>
作業員端末20は、作業員21が操作する端末である。例えば、作業員端末20は、パーソナルコンピュータ、タブレット、スマートフォン等の端末である。
【0015】
具体的には、作業員端末20は、マイク設置空間を確認した作業員21がWEBフォーム等に入力したマイク設置空間の図面と、マイク設置空間内のマイク設置可能場所情報と、マイク設置空間内の検出対象情報と、をマイク位置最適化システム10へ送信する。作業員端末20は、マイク設置空間内でマイクを設置するのに最適な位置の情報をマイク位置最適化システム10から受信する。
【0016】
ここで、「マイク設置空間の図面」、「マイク設置可能場所情報」、「検出対象情報」について説明する。
【0017】
[マイク設置空間の図面]
マイク設置空間の図面は、マイクを設置する空間を表す図面(例えば、平面図)である。例えば、マイク設置空間である小売店等の建物の平面図にレジカウンタ、陳列棚、出入り口等のレイアウト、さらに、空気調和機やスピーカ等の雑音を発生する可能性の有る機器の配置等が示された図面である。
【0018】
[マイク設置可能場所情報]
マイク設置可能場所情報は、マイクを設置することができる場所を示す情報である。例えば、作業員21がマイク設置空間を確認するとともに所有者などへのヒアリングを基に、什器等がなくマイクを設置するスペースを確保できると判断した場所を示す情報である。なお、作業員21がマイクを設置することができる場所か否かを判断する際に、設置工事の難易度を考慮し、設置工事が難しい場所を除外するようにしてもよい。
【0019】
[検出対象情報]
検出対象情報は、検出対象である音の発生源(以下、音源という)の位置を示す情報である。例えば、検出対象の音源の位置は、悲鳴を発する店員や怒声を発する客がいると想定される位置等である。なお、検出対象情報は、検出対象である音の種類(例えば、悲鳴、怒声等)を示す情報を含むことができる。
【0020】
<機能ブロック>
図2は、本発明の一実施形態に係るマイク位置最適化システム10の機能ブロック図である。マイク位置最適化システム10は、3次元空間形状推定部101と、図面上物体認識部102と、情報統合部103と、音響シミュレーション部104と、事前知識データベース(DB)105と、テスト音データベース(DB)106と、を備える。マイク位置最適化システム10は、プログラムを実行することによって、3次元空間形状推定部101、図面上物体認識部102、情報統合部103、音響シミュレーション部104、として機能する。
【0021】
3次元空間形状推定部101は、3次元空間形状を推定する。具体的には、3次元空間形状推定部101は、作業員端末20から受信したマイク設置空間の図面から、マイク設置空間を表す3次元空間内の3次元形状を推定する。
【0022】
図面上物体認識部102は、図面上の物体を認識する。具体的には、図面上物体認識部102は、作業員端末20から受信したマイク設置空間の図面に基づいて(例えば、マイク設置空間の図面に含まれる文字、記号等に基づいて)、図面上の物体を認識する。なお、物体は、カウンタ等の物に限らず、図面上の領域(例えば、レジ内領域、店内領域等)であってもよい。
【0023】
情報統合部103は、情報を統合する。具体的には、情報統合部103は、3次元空間形状推定部101が推定した3次元空間内の3次元形状の情報に、図面上物体認識部102が認識した物体の情報を付加する。
【0024】
音響シミュレーション部104は、音響シミュレーションを実行する。具体的には、音響シミュレーション部104は、物体と当該物体で発生する雑音の種類とが対応付けられたデータベース(後述する、事前知識データベース105)を参照して、図面上物体認識部102が認識した物体で発生する雑音の種類を特定する。次に、雑音および検出対象の種類と音のデータとが対応付けられたデータベース(後述する、テスト音データベース106)より、特定した雑音の種類に対応する音のデータを抽出する。また、作業員端末20から受信した検出対象情報から検出対象の種類を特定し、雑音および検出対象の種類と音のデータとが対応付けられたデータベース(後述する、テスト音データベース106)より、当該検出対象の種類に対応する音のデータを抽出する。そして、音響シミュレーション部104は、抽出した音のデータと、情報統合部103より得られる物体の情報を含んだ3次元空間形状の情報と、作業員端末20から受信した検出対象情報に含まれる検出対象の音源の位置を示す情報と、作業員端末20から受信したマイク設置可能場所情報と、を用いて、マイク設置空間内の音響をシミュレーションする。
【0025】
音響シミュレーションの実行後、音響シミュレーション部104は、マイクの設置位置を提示する。具体的には、音響シミュレーション部104は、マイクの設置が可能な場所のうち、雑音に対する検出対象の比が最も大きくなる位置(つまり、マイクを設置するのに最適な位置)の情報を作業員端末20へ送信する。なお、音響シミュレーション部104は、作業員端末20から受信した候補数に応じた数のマイクの位置(例えば、マイクを設置するのに最も適した位置、当該マイクを設置するのに次に適した位置、当該マイクを設置するのに次の次に適した位置・・・)を提示してもよい。
【0026】
事前知識データベース105には、事前に物体と、当該物体がどのような雑音を発生するかを示す情報(当該物体で発生する雑音の種類)と、が対応付けて記憶されている。
【0027】
テスト音データベース106には、種々の雑音および検出対象の種類に対応して、種々の雑音および検出対象の音のデータ(つまり、各種の音源が発する音)が記憶されている。
【0028】
なお、事前知識データベース105およびテスト音データベース106内のデータは、実証実験で得られたデータ、オープンデータ等である。現地の環境(つまり、小売店等のマイク設置空間)の音は、時々刻々と変化すると考えられ、本発明に係るシステムを運用中にマイク設置空間で収音された音に基づいて事前知識データベース105およびテスト音データベース106を更新することで、マイクの位置の決定の精度を向上させることができる。
【0029】
<方法>
図3は、本発明の一実施形態に係るマイクの位置を決定する処理のフローチャートである。
【0030】
ステップS1において、3次元空間形状推定部101は、3次元空間形状を推定する。具体的には、3次元空間形状推定部101は、作業員端末20から受信したマイク設置空間の図面から、マイク設置空間を表す3次元空間内の3次元形状を推定する。
【0031】
ステップS2において、図面上物体認識部102は、図面上の物体を認識する。具体的には、図面上物体認識部102は、作業員端末20から受信したマイク設置空間の図面に基づいて(例えば、マイク設置空間の図面に含まれる文字、記号等に基づいて)、図面上の物体を認識する。
【0032】
ステップS3において、情報統合部103は、情報を統合する。具体的には、情報統合部103は、ステップS1で推定した3次元空間内の3次元形状の情報に、ステップS2で認識した物体の情報を付加する。
【0033】
ステップS4において、音響シミュレーション部104は、音響シミュレーションを実行する。具体的には、音響シミュレーション部104は、物体と当該物体で発生する雑音の種類とが対応付けられたデータベース(事前知識データベース105)を参照してステップS2で認識した物体で発生する雑音の種類を特定する。次に、雑音および検出対象の種類と音のデータとが対応付けられたデータベース(テスト音データベース106)より、特定した雑音の種類に対応する音のデータを抽出する。また、作業員端末20から受信した検出対象情報から検出対象の種類を特定し、雑音および検出対象の種類と音のデータとが対応付けられたデータベース(テスト音データベース106)より、当該検出対象の種類に対応する音のデータを抽出する。そして、音響シミュレーション部104は、抽出した音のデータと、情報統合部103より得られる物体の情報を含んだ3次元空間形状の情報と、作業員端末20から受信した検出対象情報に含まれる検出対象の音源の位置を示す情報と、作業員端末20から受信したマイク設置可能場所情報と、を用いて、マイク設置空間内の音響をシミュレーションする。
【0034】
ステップS5において、音響シミュレーション部104は、マイクの設置位置を提示する。具体的には、音響シミュレーション部104は、雑音に対する検出対象の比が最も大きい位置(つまり、マイクを設置するのに最適な位置)の情報を作業員端末20へ送信する。
【0035】
以下、各処理について詳細に説明する。
【0036】
[3次元空間形状の推定]
図4は、本発明の一実施形態に係る3次元空間形状の推定について説明するための図である。3次元空間形状推定部101は、マイク設置空間の図面から、マイク設置空間の形状や空間内に存在する物体の形状を判定する。次に、3次元空間形状推定部101は、文字および記号を検出し、検出した文字および記号を認識して、図面の縮尺情報を抽出する。次に、3次元空間形状推定部101は、天井の高さを所定の高さに設定して、マイク設置空間の3次元空間形状情報である点群データ(つまり、マイク設置空間を示す3次元空間内の3次元形状の点群データ)を作成する。なお、3次元空間形状推定部101は深層学習等を用いて図面をもとに、直接点群データが出力されるようなエンドツーエンドの推定方法を実施してもよい。
【0037】
[図面上の物体の認識]
図5は、本発明の一実施形態に係る図面上の物体の認識について説明するための図である。図面上物体認識部102は、マイク設置空間の図面から、文字(例えば、
図5の「カウンタ」、「陳列棚」等)および記号(例えば、ドアの記号)を検出する。次に、図面上物体認識部102は、検出した文字および記号を認識して、図面上の物体の位置および種類を特定する。
【0038】
なお、図面上物体認識部102は、マイク設置空間の図面から、マイク設置可能場所、検出対象を認識してもよい。
【0039】
[情報の統合]
図6は、本発明の一実施形態に係る情報の統合について説明するための図である。情報統合部103は、3次元空間形状推定部101が推定したマイク設置空間内の3次元空間形状情報に、図面上物体認識部102が認識した物体の情報を付加する。具体的には、情報統合部103は、マイク設置空間の3次元空間形状情報内での物体の位置を特定して当該物体を3次元空間形状情報である点群データに対応付けることによって、点群データに物体の情報を付加する。
【0040】
[音響シミュレーション]
図7-
図9は、本発明の一実施形態に係る音響シミュレーションについて説明するための図である。
【0041】
図7に示すように、音響シミュレーション部104は、情報統合部103より得た物体の情報を含んだ3次元空間形状情報と、事前知識データベース105の情報と、作業員端末20からの検出対象情報と、から、マイク設置空間においてどのような雑音や検出対象の音が発生するのかを特定する。また、作業員端末20からのマイク設置可能場所情報をもとに、マイク設置可能場所を特定する。
【0042】
具体的には、事前知識データベース105には、扉やカウンタ、空気調和機、スピーカ等の物体と、各物体がある領域にて発生する可能性がある音の種類(椅子の移動音や扉の開閉音、レジや空気調和機の動作音、来客を知らせる電子音等)を記憶している。例えば、小売店のカウンタでは、椅子の移動音や店員の作業音、人の話し声、レジの動作音が発生する可能性があると記憶している。
【0043】
なお、事前知識データベース105には、マイク設置空間内の領域(レジカウンタ内領域や商品陳列エリア、事務室、給湯室等)と、各領域にて発生する音の種類を対応付けて記憶してもよい。例えば、商品陳列エリアでは人の話し声や店員の作業音に加え、台車の走行音が発生する可能性があるとして記憶する。また、給湯室では人の話し声に加え流水音、事務室では椅子の移動音やプリンタの稼働音等が考えられるため、各領域に対応付けて記憶する。また、領域において各種雑音が発生する位置の確率分布を示す情報を記憶してもよい。例えば、レジカウンタ内の領域において、レジの稼働音や店員の声はレジ周辺で発生するため、レジ設置位置周辺の発生確率が高くなるよう設定し記憶する。また、商品陳列エリアでは、台車の走行音や人の話し声は陳列棚周辺の通路で発生するため、通路の発生確率を高く設定し記憶する。
【0044】
そして、
図8に示すように、音響シミュレーション部104は、マイク設置空間内で発生する音(つまり、雑音および検知対象の音)を特定する。例えば、音響シミュレーション部104は、情報統合部103より得られる物体の情報を含んだ3次元空間形状情報から「レジカウンタ内領域(レジ内領域)」と「カウンタ」と「陳列棚」と「商品陳列エリア(店内領域)」を認識し、事前知識データベース105を参照して、「レジカウンタ内領域」と「カウンタ」と「陳列棚」と「商品陳列エリア」で発生すると想定される音の種類を特定し、特定した音の種類に対応する音のデータをテスト音データベース106より抽出する。また、作業員端末20から受信した検出対象情報から検出対象の種類を特定し、テスト音データベース106より、当該検出対象の種類に対応する音のデータを抽出する。そして、抽出した音データを、作業員端末20から受信した検出対象情報に含まれる検出対象の音源の位置を示す情報を用いて3次元空間上に割り当てる。この際、事前知識データベース105に各種雑音および検出対象の音が発生する位置の確率分布を記憶している場合、この確率分布に合わせて音源を割り当てて配置するようにしてもよい。
【0045】
その後、
図9に示すように、音響シミュレーション部104は、テスト音データベース106より抽出した音データ、および、作業員端末20から受信した検出対象情報に含まれる検出対象の音源の位置を示す情報および、3次元空間形状情報をもとに、FDTD(Finite Difference Time Domain Method)法や音像法等の手法を用いて3次元空間内での音波の伝搬をシミュレーションし、マイク設置空間内の音圧の分布を計算する。次に、音響シミュレーション部104は、マイク設置可能場所を格子状に分割し、各格子におけるS(検出対象音)/N(雑音)比を計算する。例えば、音響シミュレーション部104は、時系列データであるテスト音データを用いて計算したS/N比の平均値や最大値等の代表値を用いる。次に、音響シミュレーション部104は、S/N比の高い順に、マイクの位置の候補を決定して提示する。
【0046】
なお、S/N比ではなく、周波数帯での評価(雑音と検出対象の周波数帯の重なり等)に基づいて、マイクの位置を決定してもよい。
【0047】
[マイクの種類の決定]
図10は、本発明の一実施形態に係るマイクの種類の決定について説明するための図である。音響シミュレーション部104は、マイクの位置だけでなく、マイクの種類を決定して提示することもできる。具体的には、音響シミュレーション部104は、各指向性(例えば、無指向性、双指向性、単一指向性等)のマイクを用いてマイク設置空間内の音響をシミュレーションして、最適な種類のマイクを決定して提示することができる。このように、本発明の一実施形態では、マイクの指向性を反映して適切なマイクを選択することができる。
【0048】
例えば、
図10の左側の[無指向性]で示すように、検知対象の音が広い範囲で発生する場合には、無指向性のマイクが適している。
【0049】
例えば、
図10の中央の[双指向性]で示すように、検知対象の音が相対する2方向で発生し、それらの間の距離が離れている場合には、双指向性のマイクが適している。
【0050】
例えば、
図10の右側の[単一指向性]で示すように、検知対象の音がある狭い範囲内でのみ発生する場合には、単一指向性のマイクが適している。
【0051】
[複数のマイクの決定]
図11は、本発明の一実施形態に係る複数のマイクの位置の決定について説明するための図である。1つのマイク設置空間内に検出対象の音が発生する領域が離れた位置に複数ある場合、音響シミュレーション部104は、複数のマイクの位置を決定して提示することもできる。具体的には、音響シミュレーション部104は、検出対象の領域ごとに音響シミュレーションを実行して、検出対象の領域ごとにマイクの位置を決定して提示することができる。なお、検出対象の領域が1つの場合であっても、音響シミュレーション部104は、複数のマイクの位置を決定して提示することができる。
【0052】
<効果>
本発明の一実施形態では、様々な場所で様々な音圧の雑音が散発的に発生するような環境(例えば、小売店等)で精度よく異常音検知を実現するためのマイクの最適な設置位置を容易に決定することができる。
【0053】
<ハードウェア構成>
図12は、本発明の一実施形態に係るマイク位置最適化システム10のハードウェア構成図である。マイク位置最適化システム10は、CPU(Central Processing Unit)1001、ROM(Read Only Memory)1002、RAM(Random Access Memory)1003を有する。CPU1001、ROM1002、RAM1003は、いわゆるコンピュータを形成する。また、マイク位置最適化システム10は、補助記憶装置1004、表示装置1005、操作装置1006、I/F(Interface)装置1007、ドライブ装置1008を有することができる。なお、マイク位置最適化システム10の各ハードウェアは、バスBを介して相互に接続されている。なお、これらの構成に加え、GPU (Graphics Processing Unit)を設けてもよい。
【0054】
CPU1001は、補助記憶装置1004にインストールされている各種プログラムを実行する演算デバイスである。CPU1001がプログラムを実行することによって、本明細書に記載の各処理が行われる。
【0055】
ROM1002は、不揮発性メモリである。ROM1002は、補助記憶装置1004にインストールされている各種プログラムをCPU1001が実行するために必要な各種プログラム、データ等を格納する主記憶デバイスとして機能する。具体的には、ROM1002はBIOS(Basic Input/Output System)やEFI(Extensible Firmware Interface)等のブートプログラム等を格納する、主記憶デバイスとして機能する。
【0056】
RAM1003は、DRAM(Dynamic Random Access Memory)やSRAM(Static Random Access Memory)等の揮発性メモリである。RAM1003は、補助記憶装置1004にインストールされている各種プログラムがCPU1001によって実行される際に展開される作業領域を提供する、主記憶デバイスとして機能する。
【0057】
補助記憶装置1004は、各種プログラムや、各種プログラムが実行される際に用いられる情報を格納する補助記憶デバイスである。
【0058】
表示装置1005は、マイク位置最適化システム10の内部状態等を表示する表示デバイスである。
【0059】
操作装置1006は、マイク位置最適化システム10の操作者がマイク位置最適化システム10に対して各種指示を入力する入力デバイスである。
【0060】
I/F装置1007は、ネットワークに接続し、他のデバイスと通信を行うための通信デバイスである。
【0061】
ドライブ装置1008は、記憶媒体1009をセットするためのデバイスである。ここでいう記憶媒体1009には、CD-ROM、フレキシブルディスク、光磁気ディスク等のように情報を光学的、電気的あるいは磁気的に記録する媒体が含まれる。また、記憶媒体1009には、ROM、フラッシュメモリ等のように情報を電気的に記録する半導体メモリ等が含まれていてもよい。
【0062】
なお、補助記憶装置1004にインストールされる各種プログラムは、例えば、配布された記憶媒体1009がドライブ装置1008にセットされ、該記憶媒体1009に記録された各種プログラムがドライブ装置1008により読み出されることでインストールされる。あるいは、補助記憶装置1004にインストールされる各種プログラムは、I/F装置1007を介して、ネットワークよりダウンロードされることでインストールされてもよい。
【0063】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、形態や詳細の変更が可能である。
【符号の説明】
【0064】
10 マイク位置最適化システム
20 作業員端末
21 作業員
101 3次元空間形状推定部
102 図面上物体認識部
103 情報統合部
104 音響シミュレーション部
105 事前知識DB
106 テスト音DB
1001 CPU
1002 ROM
1003 RAM
1004 補助記憶装置
1005 表示装置
1006 操作装置
1007 I/F装置
1008 ドライブ装置
1009 記憶媒体