IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

特開2023-168109ホウ素濃度判定装置および方法、プログラム
<>
  • 特開-ホウ素濃度判定装置および方法、プログラム 図1
  • 特開-ホウ素濃度判定装置および方法、プログラム 図2
  • 特開-ホウ素濃度判定装置および方法、プログラム 図3
  • 特開-ホウ素濃度判定装置および方法、プログラム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168109
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】ホウ素濃度判定装置および方法、プログラム
(51)【国際特許分類】
   G21C 17/02 20060101AFI20231116BHJP
   G21C 19/28 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
G21C17/02 300
G21C19/28
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079763
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】蒲原 覚
(72)【発明者】
【氏名】辰巳 栄作
(72)【発明者】
【氏名】須藤 有生
(72)【発明者】
【氏名】奥 圭介
【テーマコード(参考)】
2G075
【Fターム(参考)】
2G075AA05
2G075CA40
2G075DA05
2G075DA07
2G075EA01
2G075FB09
(57)【要約】
【課題】ホウ素濃度判定装置および方法、プログラムにおいて、ホウ素濃度の変動による異常を容易に検出することで装置の複雑化や高コスト化を抑制する。
【解決手段】純水を供給する純水供給ラインと、ホウ酸水を供給するホウ酸水供給ラインと、純水供給ラインから供給される純水とホウ酸水供給ラインから供給されるホウ酸水とが混合されたホウ酸混合水を原子炉冷却水に対して供給するホウ酸混合水供給ラインと、純水供給ラインとホウ酸水供給ラインとホウ酸混合水供給ラインのうちの少なくとも2つのラインの流量を計測する第1流量計および第2流量計と、第1流量計が計測した第1流量と第2流量計が計測した第2流量との実流量比に基づいて原子炉冷却水におけるホウ素濃度の低下による異常を判定する判定部と、を備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
純水を供給する純水供給ラインと、
ホウ酸水を供給するホウ酸水供給ラインと、
前記純水供給ラインから供給される前記純水と前記ホウ酸水供給ラインから供給される前記ホウ酸水とが混合されたホウ酸混合水を原子炉冷却水に対して供給するホウ酸混合水供給ラインと、
前記純水供給ラインと前記ホウ酸水供給ラインと前記ホウ酸混合水供給ラインのうちの少なくとも2つのラインの流量を計測する第1流量計および第2流量計と、
前記第1流量計が計測した第1流量と前記第2流量計が計測した第2流量との実流量比に基づいて前記原子炉冷却水におけるホウ素濃度の低下による異常を判定する判定部と、
を備えるホウ素濃度判定装置。
【請求項2】
前記第1流量計は、前記純水供給ラインに設けられ、前記第2流量計は、前記ホウ酸混合水供給ラインに設けられ、前記判定部は、前記第1流量計が計測した前記第1流量としての前記純水の流量と、前記第2流量計が計測した前記第2流量としての前記ホウ酸混合水との実流量比に基づいて前記原子炉冷却水におけるホウ素濃度の低下による異常を判定する、
請求項1に記載のホウ素濃度判定装置。
【請求項3】
前記第1流量計は、前記純水供給ラインに設けられ、前記第2流量計は、前記ホウ酸水供給ラインに設けられ、前記判定部は、前記第1流量計が計測した前記第1流量としての前記純水の流量と、前記第2流量計が計測した前記第2流量としての前記ホウ酸水との実流量比に基づいて前記原子炉冷却水におけるホウ素濃度の低下による異常を判定する、
請求項1に記載のホウ素濃度判定装置。
【請求項4】
前記第1流量計は、前記ホウ酸水供給ラインに設けられ、前記第2流量計は、前記ホウ酸混合水供給ラインに設けられ、前記判定部は、前記第1流量計が計測した前記第1流量としての前記ホウ酸水の流量と、前記第2流量計が計測した前記第2流量としての前記ホウ酸混合水との実流量比に基づいて前記原子炉冷却水におけるホウ素濃度の低下による異常を判定する、
請求項1に記載のホウ素濃度判定装置。
【請求項5】
前記判定部は、前記第1流量または前記第2流量が変動したとき、予め設定された所定の待機時間が経過した後の前記実流量比に基づいて前記原子炉冷却水におけるホウ素濃度の低下による異常を判定する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のホウ素濃度判定装置。
【請求項6】
原子炉を適正に維持するための前記原子炉冷却水における基準ホウ素濃度が設定され、前記原子炉冷却水を前記基準ホウ素濃度に維持するための前記第1流量と前記第2流量との基準流量比が設定され、前記判定部は、前記基準流量比と前記実流量比とを比較してホウ素濃度の低下による異常を判定する、
請求項1に記載のホウ素濃度判定装置。
【請求項7】
前記基準流量比に対して余裕分を加味して前記基準ホウ素濃度が維持される正常領域が設定され、前記判定部は、前記実流量比が前記正常領域にないときに異常と判定する、
請求項6に記載のホウ素濃度判定装置。
【請求項8】
前記正常領域は、原子炉の臨界条件に応じて変更可能である、
請求項7に記載のホウ素濃度判定装置。
【請求項9】
前記純水供給ラインは、隔離弁が設けられ、前記判定部は、異常と判定したときに前記隔離弁を閉止する側に作動させる、
請求項1に記載のホウ素濃度判定装置。
【請求項10】
前記判定部は、原子炉の起動前および停止後に、前記原子炉冷却水におけるホウ素濃度の低下による異常を判定する、
請求項1に記載のホウ素濃度判定装置。
【請求項11】
純水を供給する純水供給ラインとホウ酸水を供給するホウ酸水供給ラインと前記純水と前記ホウ酸水とが混合されたホウ酸混合水を原子炉冷却水に対して供給するホウ酸混合水供給ラインのうちの少なくとも2つのラインの第1流量および第2流量を計測する工程と、
前記第1流量と前記第2流量との実流量比に基づいて前記原子炉冷却水におけるホウ素濃度の低下による異常を判定する工程と、
を有するホウ素濃度判定方法。
【請求項12】
純水を供給する純水供給ラインとホウ酸水を供給するホウ酸水供給ラインと前記純水と前記ホウ酸水とが混合されたホウ酸混合水を原子炉冷却水に対して供給するホウ酸混合水供給ラインのうちの少なくとも2つのラインの第1流量および第2流量を計測する工程と、
前記第1流量と前記第2流量との実流量比に基づいて前記原子炉冷却水におけるホウ素濃度の低下による異常を判定する工程と、
をコンピュータに実行させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ホウ素濃度判定装置、ホウ素濃度判方法、プログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、加圧水型原子炉(PWR:Pressurized Water Reactor)を有する原子力発電プラントは、軽水を原子炉冷却材および中性子減速材として使用し、原子炉の炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、高温高圧水を蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させ、蒸気をタービン発電機へ送って発電する。
【0003】
加圧水型原子炉は、制御棒操作や化学体積制御(ホウ素濃度調整)などにより反応度制御が可能である。加圧水型原子炉の出力制御は、化学体積制御により冷却水(軽水)のホウ素濃度を所定値に維持した上で、制御棒操作により実施される。このような原子炉制御としては、例えば、下記特許文献に記載されたものがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭60-146187号公報
【特許文献2】特許第2734483号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
加圧水型原子炉の起動時および停止時の臨界調整制御は、ホウ素濃度調整により行われる。この場合、機器の誤作動や故障などにより冷却水のホウ素濃度が低下すると、臨界調整が困難となる。そのため、機器の誤作動や故障などによる冷却水におけるホウ素濃度の変動を検出する必要がある。ホウ素濃度の低下による原子炉の異常は、例えば、中性子束の増加やホウ素濃度の測定により検出することが可能である。しかし、中性子束の増加を用いた異常検出は、炉心への燃料配置によっては誤差が大きくなり、検出が遅れることとなってしまう。また、ホウ素濃度の測定による異常検出は、軽水の配管などに濃度計を配置する必要があり、コストが増加してしまう。
【0006】
本開示は、上述した課題を解決するものであり、ホウ素濃度の変動による原子炉の異常を容易に検出することで装置の複雑化や高コスト化を抑制するホウ素濃度判定装置および方法、プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本開示のホウ素濃度判定装置は、純水を供給する純水供給ラインと、ホウ酸水を供給するホウ酸水供給ラインと、前記純水供給ラインから供給される前記純水と前記ホウ酸水供給ラインから供給される前記ホウ酸水とが混合されたホウ酸混合水を原子炉冷却水に対して供給するホウ酸混合水供給ラインと、前記純水供給ラインと前記ホウ酸水供給ラインと前記ホウ酸混合水供給ラインのうちの少なくとも2つのラインの流量を計測する第1流量計および第2流量計と、前記第1流量計が計測した第1流量と前記第2流量計が計測した第2流量との実流量比に基づいて前記原子炉冷却水におけるホウ素濃度の低下による異常を判定する判定部と、を備える。
【0008】
また、本開示のホウ素濃度判定方法は、純水を供給する純水供給ラインとホウ酸水を供給するホウ酸水供給ラインと前記純水と前記ホウ酸水とが混合されたホウ酸混合水を原子炉冷却水に対して供給するホウ酸混合水供給ラインのうちの少なくとも2つのラインの第1流量および第2流量を計測する工程と、前記第1流量と前記第2流量との実流量比に基づいて前記原子炉冷却水におけるホウ素濃度の低下による異常を判定する工程と、を有する。
【0009】
また、本開示のプログラムは、純水を供給する純水供給ラインとホウ酸水を供給するホウ酸水供給ラインと前記純水と前記ホウ酸水とが混合されたホウ酸混合水を原子炉冷却水に対して供給するホウ酸混合水供給ラインのうちの少なくとも2つのラインの第1流量および第2流量を計測する工程と、前記第1流量と前記第2流量との実流量比に基づいて前記原子炉冷却水におけるホウ素濃度の低下による異常を判定する工程と、をコンピュータに実行させる。
【発明の効果】
【0010】
本開示のホウ素濃度判定装置および方法、プログラムによれば、ホウ素濃度の変動による異常を容易に検出することで、装置の複雑化や高コスト化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1図1は、本実施形態のホウ素濃度判定装置が適用された加圧水型原子炉を表す概略構成図である。
図2図2は、ホウ素濃度の低下による原子炉の異常を判定する判定マップを表す概略図である。
図3図3は、原子炉の異常判定時期を表す説明図である。
図4図4は、本実施形態のホウ素濃度判定方法を表すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に図面を参照して、本開示の好適な実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、実施形態が複数ある場合には、各実施形態を組み合わせて構成するものも含むものである。また、実施形態における構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。
【0013】
<加圧水型原子炉>
図1は、本実施形態のホウ素濃度判定装置が適用された加圧水型原子炉を表す概略構成図である。
【0014】
本実施形態では、原子炉として加圧水型原子炉を適用して説明する。但し、原子炉は、加圧水型原子炉に限定されるものではなく、他の原子炉や原子燃料を取り扱う各種設備に適用することができる。
【0015】
加圧水型原子炉は、軽水を原子炉冷却材および中性子減速材として使用し、炉心全体にわたって沸騰しない高温高圧水とし、高温高圧水を後述する蒸気発生器に送って熱交換により蒸気を発生させ、蒸気をタービン発電機へ送って発電する。
【0016】
図1に示すように、加圧水型原子炉11は、高温側送給配管12と低温側送給配管13により蒸気発生器14が連結される。低温側送給配管13は、一次系冷却水ポンプ15が設けられる。加圧水型原子炉11と蒸気発生器14は、図示しない原子炉格納容器の内部に格納される。
【0017】
加圧水型原子炉11は、図示しないが、内部に炉心が設けられ、炉心は、複数の燃料集合体(燃料棒)により構成される。また、加圧水型原子炉11は、炉心における燃料集合体の間に複数の制御棒が配置される。制御棒駆動装置は、炉心に対して制御棒を抜き差しすることで、原子炉出力を制御する。
【0018】
蒸気発生器14は、図示しないが、内部に逆U字形状をなす複数の伝熱管からなる伝熱管群が設けられる。蒸気発生器14は、下部に入室14aと出室14bが設けられる。蒸気発生器14は、入室14aに高温側送給配管12の端部が連結され、出室14bに低温側送給配管13の端部が連結される。
【0019】
そのため、加圧水型原子炉11は、炉心の燃料集合体により一次系冷却水として軽水が加熱され、高温の一次系冷却水が高圧に維持された状態で、高温側送給配管12を通して蒸気発生器14に送られる。蒸気発生器14は、高温高圧の一次系冷却水と二次系冷却水との間で熱交換を行うことで二次系蒸気を生成し、冷やされた一次系冷却水が加圧水型原子炉11に戻される。このとき、制御棒駆動装置は、炉心に対して制御棒を抜き差しすることで、炉心での核分裂を調整し、加圧水型原子炉11の出力を調整する。
【0020】
また、加圧水型原子炉11は、化学体積制御系(CVCS)21が設けられる。低温側送給配管13は、一次系冷却水ポンプ15を介して一次系冷却水循環ライン22が設けられる。一次系冷却水循環ライン22は、体積制御タンク23および充填ポンプ24が設けられる。なお、一次系冷却水循環ライン22は、図示しないが、再生熱交換器、非再生冷却器、脱塩塔などが設けられる。化学体積制御系21は、一次系冷却水循環ライン22に設けられる。
【0021】
化学体積制御系21は、一次系冷却水補給ライン(純水供給ライン)31と、ホウ酸水供給ライン32と、ホウ酸混合水供給ライン33とを有する。ホウ酸混合水供給ライン33は、一端部が一次系冷却水循環ライン22に連結される。ホウ酸混合水供給ライン33は、他端部に混合器34を介して一次系冷却水補給ライン31の一端部とホウ酸水供給ライン32の一端部が連結される。
【0022】
一次系冷却水補給ライン31は、流量調整弁41と、純水流量計42と、隔離弁43と、補給水ポンプ44が設けられると共に、他端部に一次系純水タンク45が連結される。ホウ酸水供給ライン32は、流量調整弁51と、ホウ酸水流量計52と、ホウ酸水ポンプ53が設けられると共に、他端部にホウ酸水タンク54が連結される。ホウ酸混合水供給ライン33は、流量調整弁61と、ホウ酸混合水流量計62が設けられる。ここで、各流量計42,52,62は、例えば、差圧式流量計であるが、他の形式のものであってもよい。また、流量計41,52,62は、安全性を考慮し、それぞれ多重に配置することが好ましい。
【0023】
流量調整弁41は、開度を調整することで、一次系冷却水補給ライン31における純水の供給量を調整可能である。純水流量計42は、一次系冷却水補給ライン31を流れる純水の供給量を計測可能である。隔離弁43は、閉止することで、流量調整弁41の開度に拘わらず、純水の供給を停止可能である。補給水ポンプ44は、作動することで、純水を供給可能である。一次系純水タンク45は、一次系冷却水に対する補給水としての純水を貯留する。
【0024】
流量調整弁51は、開度を調整することで、ホウ酸水供給ライン32におけるホウ酸水の供給量を調整可能である。ホウ酸水流量計52は、ホウ酸水供給ライン32を流れるホウ酸水の供給量を計測可能である。ホウ酸水ポンプ53は、作動することで、ホウ酸水を供給可能である。ホウ酸水タンク54は、所定濃度のホウ酸水を貯留する。
【0025】
流量調整弁61は、開度を調整することで、ホウ酸混合水供給ライン33におけるホウ酸混合水の供給量を調整可能である。ホウ酸混合水流量計62は、ホウ酸混合水供給ライン33を流れるホウ酸混合水の供給量を計測可能である。
【0026】
制御装置71は、充填ポンプ24と、各流量調整弁41,51,61と、各流量計42,52,62と、隔離弁43と、各ポンプ44,53が接続される。制御装置71は、充填ポンプ24を作動することで、一次系冷却水の一部を一次系冷却水循環ライン22に循環可能である。制御装置71は、各流量調整弁41,51,61の開度を調整可能である。また、制御装置71は、流量計42,52,62の計測結果として純水の流量、ホウ酸水の流量、ホウ酸混合水の流量が入力される。また、制御装置71は、隔離弁43を開閉可能である。また、制御装置71は、各ポンプ44,53の作動可能であると共に閉止可能である。
【0027】
制御装置71は、コントローラであり、例えば、CPU(Central Processing Unit)やMPU(Micro Processing Unit)などにより、記憶部に記憶されている各種プログラムがRAMを作業領域として実行されることにより実現される。
【0028】
制御装置71は、操作部72と、記憶部73が接続される。操作部72は、作業者が操作することで、制御装置71に対して各種のデータを入力可能である。操作部72は、例えば、キーボードやタッチ式のディスプレイである。記憶部73は、後述する異常判定マップなどが記憶される。
【0029】
そのため、制御装置71は、化学体積制御系21を制御することで、加圧水型原子炉11を冷却する一次系冷却水(原子炉冷却水)に対して純水またはホウ酸水を供給し、一次系冷却水におけるホウ素濃度を調整可能である。
【0030】
すなわち、充填ポンプ24を作動すると、高温側送給配管12および低温側送給配管13を流れる一次系冷却水の一部を一次系冷却水循環ライン22に取り込んで循環させることができる。このとき、体積制御タンク23は、一次冷却水を浄化すると共に、ホウ素濃度調整などによる体積変動を吸収する。
【0031】
そして、制御装置71は、隔離弁43を開放した状態で、流量調整弁41を開放して補給水ポンプ44を作動すると、一次系純水タンク45に貯留された純水を一次系冷却水補給ライン31から混合器34を通してホウ酸混合水供給ライン33に供給することができる。また、制御装置71は、流量調整弁51を開放してホウ酸水ポンプ53を作動すると、ホウ酸水タンク54に貯留されたホウ酸水をホウ酸水供給ライン32から混合器34を通してホウ酸混合水供給ライン33に供給することができる。そして、制御装置71は、流量調整弁61を開放すると、混合器34により純水とホウ酸水とが混合されて生成されたホウ酸混合水をホウ酸混合水供給ライン33から一次系冷却水循環ライン22に供給することができる。
【0032】
ここで、制御装置71は、一次系冷却水補給ライン31の流量調整弁41の開度と、ホウ酸水供給ライン32の流量調整弁51の開度を調整することで、ホウ酸混合水供給ライン33から一次系冷却水循環ライン22に供給するホウ酸混合水におけるホウ素濃度を調整する。また、制御装置71は、ホウ酸混合水供給ライン33の流量調整弁61の開度を調整することで、ホウ酸混合水供給ライン33から一次系冷却水循環ライン22に供給するホウ酸混合水の流量を調整する。その結果、制御装置71は、一次系冷却水循環ライン22に供給されるホウ酸混合水におけるホウ素濃度と流量を調整することで、一次系冷却水循環ライン22に連結される高温側送給配管12および低温側送給配管13を流れる一次系冷却水におけるホウ素濃度を調整することができる。
【0033】
また、制御装置71は、流量計42,52,62から入力された純水の流量、ホウ酸水の流量、ホウ酸混合水の流量に基づいて、各流量調整弁41,51,61の開度をフィードバック制御する。
【0034】
<ホウ素濃度判定装置>
図1に示すように、ホウ素濃度判定装置70は、一次系冷却水補給ライン31と、ホウ酸水供給ライン32と、ホウ酸混合水供給ライン33と、第1流量計および第2流量計と、判定部とを備える。
【0035】
本実施形態にて、第1流量計は、一次系冷却水補給ライン31に設けられた純水流量計42であり、第2流量計は、ホウ酸混合水供給ライン33に設けられたホウ酸混合水流量計62である。また、判定部は、制御装置71が機能する。
【0036】
すなわち、第1流量計としての純水流量計42は、一次系冷却水補給ライン31における第1流量計としての純水の流量を計測する。また、第2流量計としてのホウ酸混合水流量計62は、ホウ酸混合水供給ライン33における第2流量計としてのホウ酸混合水の流量を計測する。そして、判定部としての制御装置71は、純水流量計42が計測した純水の流量と、ホウ酸混合水流量計62が計測したホウ酸混合水の流量との実流量比に基づいて、一次系冷却水におけるホウ素濃度の低下による異常を判定する。
【0037】
加圧水型原子炉11は、加圧水型原子炉11を適正に維持するための一次系冷却水における基準ホウ素濃度が設定されている。ここで、基準ホウ素濃度とは、加圧水型原子炉11を安全に運転するための一次系冷却水におけるホウ素濃度の下限値である。制御装置71は、必要に応じて化学体積制御系21を制御し、一次系冷却水に対して純水、ホウ酸水、ホウ酸混合水を供給することで、一次系冷却水におけるホウ素濃度が基準ホウ素濃度以上に維持されるように調整する。
【0038】
そして、加圧水型原子炉11は、一次系冷却水を基準ホウ素濃度以上に維持するための純水の流量(第1流量)とホウ酸混合水の流量(第2流量)との基準流量比が設定されている。ここで、基準流量比とは、ホウ酸混合水の流量に対する純水の流量の比率であり、加圧水型原子炉11を安全に運転するための流量比の上限値である。制御装置71は、基準流量比と実流量比とを比較してホウ素濃度の低下による異常を判定する。
【0039】
制御装置71は、流量調整弁41,51,61の開度やポンプ44,53の作動などを制御するものであるが、制御装置71、流量調整弁41,51,61、流量計42,52,62、ポンプ44,53などが誤作動したり、故障したりする可能性がある。各種機器の誤作動や故障などが発生すると、一次系冷却水におけるホウ素が希釈される。そのため、制御装置71は、一次系冷却水におけるホウ素の希釈を、基準流量比と実流量比との比較により検出し、ホウ素濃度の低下による加圧水型原子炉11の異常を判定する。
【0040】
そして、制御装置71は、ホウ素濃度の低下による加圧水型原子炉11の異常を判定したとき、隔離弁43を閉止する側に作動させる。すると、隔離弁43が閉止された一次系冷却水補給ライン31による純水の供給が停止され、一次系冷却水におけるホウ素の希釈が抑制される。
【0041】
なお、上述した実施形態では、第1流量計を純水流量計42とし、第2流量計をホウ酸混合水流量計62としたが、この構成に限定されるものではない。
【0042】
例えば、第1流量計を一次系冷却水補給ライン31に設けられた純水流量計42とし、第2流量計をホウ酸水供給ライン32に設けられたホウ酸水流量計52としてもよい。この場合、判定部としての制御装置71は、純水流量計42が計測した純水の流量と、ホウ酸水流量計52が計測したホウ酸水の流量との実流量比に基づいて、一次系冷却水におけるホウ素濃度の低下による異常を判定する。
【0043】
また、第1流量計をホウ酸水供給ライン32に設けられたホウ酸水流量計52とし、第2流量計をホウ酸混合水供給ライン33に設けられたホウ酸混合水流量計62としてもよい。この場合、判定部としての制御装置71は、ホウ酸水流量計52が計測したホウ酸水の流量と、ホウ酸混合水流量計62が計測したホウ酸混合水の流量との実流量比に基づいて、一次系冷却水におけるホウ素濃度の低下による異常を判定する。
【0044】
さらに、判定部としての制御装置71は、純水流量計42が計測した純水の流量と、ホウ酸水流量計52が計測したホウ酸水の流量と、ホウ酸混合水流量計62が計測したホウ酸混合水の流量の実流量比に基づいて、一次系冷却水におけるホウ素濃度の低下による異常を判定してもよい。
【0045】
<異常判定マップ>
図2は、ホウ素濃度の低下による原子炉の異常を判定する判定マップを表す概略図である。
【0046】
図2に示すように、制御装置71は、予め設定された基準流量比と、流量計42,62の計測結果から算出した実流量比とを比較してホウ素濃度の低下による異常を判定する。ここで、基準流量比と実流量比は、ホウ酸混合水の流量に対する純水の流量の比率である。基準流量比は、基準ホウ素濃度に基づいて設定される。そして、基準流量比に基づいて第1しきい値L1が設定される。第1しきい値L1に対して余裕分Mを加味して第2しきい値L2が設定される。ここで、第2しきい値L2に対して正常領域A1が設定され、第1しきい値L1に対して異常領域A2が設定される。正常領域A1と異常領域A2との間の領域は、非干渉領域である。なお、余裕分Mを加味した非干渉領域は、流量計42,62などの計測誤差や加圧水型原子炉11の運転余裕分を考慮して設定される。なお、余裕分Mを考慮せず、第1しきい値L1に対して正常領域A1と異常領域A2を設定してもよい。
【0047】
制御装置71は、実流量比が正常領域A1にあると、一次系冷却水におけるホウ素濃度の低下による加圧水型原子炉11の正常と判定する。一方、制御装置71は、実流量比が正常領域A1になく、異常領域A2にあると、一次系冷却水におけるホウ素濃度の低下による加圧水型原子炉11の異常と判定する。なお、第1しきい値L1(異常領域A2)、第2しきい値L2(正常領域A1)、余裕分Mは、加圧水型原子炉11の臨界条件に応じて変更可能である。
【0048】
<異常判定時期>
図3は、原子炉の異常判定時期を表す説明図である。
【0049】
図3に示すように、加圧水型原子炉11は、例えば、時間t1にて、起動を開始して出力を上昇させ、時間t2にて、出力を一定(Pa)に維持した運転を開始し、時間t3にて、出力を低下させ、時間t4にて、停止する。
【0050】
制御装置71は、加圧水型原子炉11の起動前および停止後に、一次系冷却水におけるホウ素濃度の低下による異常を判定する処理を実行する。
【0051】
加圧水型原子炉11は、起動中(t1~t2)、炉心の燃料が交換されたものであることから、一次冷却水におけるホウ素濃度が基準ホウ素濃度より高い。そのため、制御装置71は、流量調整弁41だけを開放し、一次系冷却水循環ライン22に対して純水だけを供給し、一次冷却水におけるホウ素濃度を低下させることで、基準ホウ素濃度に調整する。このときの一次冷却水におけるホウ素濃度の希釈は、正常なものであり、ここで、制御装置71が純水の流量とホウ酸混合水の流量との実流量比に基づいた異常判定は、誤判定となる。そこで、制御装置71は、加圧水型原子炉11の起動中は、ホウ素濃度の低下による異常を判定する処理を実行しない。
【0052】
また、加圧水型原子炉11は、停止中(t3~t4)、一次系冷却水の温度が高い。そのため、制御装置71は、流量調整弁41,51の開度を大きくし、加圧水型原子炉11の臨界度を上げながら、一次系冷却水の温度低下による冷却水の収縮を補うようにホウ素濃度の高い補給水が供給される。このときの一次冷却水におけるホウ素濃度の濃縮は、正常なものであり、ここで、制御装置71が純水の流量とホウ酸混合水の流量との実流量比に基づいた異常判定処理を実行してもよいが、一次系冷却水の補給は、誤判定となる。そこで、制御装置71は、加圧水型原子炉11の停止中は、ホウ素濃度の低下による異常を判定する処理を実行しない。
【0053】
さらに、加圧水型原子炉11は、運転中(t2~t3)、制御装置71は、流量調整弁41を開放し、一次系冷却水に対して純水を供給することで、一次冷却水におけるホウ素濃度の希釈を行う。このときの一次冷却水におけるホウ素濃度の希釈は、正常なものであり、ここで、制御装置71が純水の流量とホウ酸混合水の流量との実流量比に基づいた異常判定は、誤判定となる。そこで、制御装置71は、加圧水型原子炉11の運転中であっても、臨界管理のための一次系冷却水の希釈時に、ホウ素濃度の低下による異常を判定する処理を実行しない。
【0054】
すなわち、制御装置71は、加圧水型原子炉11の起動時(t1)から停止時(t4)の間は、一次系冷却水におけるホウ素濃度の低下による異常を判定しない。
【0055】
そして、制御装置71は、加圧水型原子炉11の起動前(t0~t1)および停止後(t4~t5)に、各流量調整弁41,61の開度調整により純水の流量やホウ酸混合水の流量が変動したとき、予め設定された所定の待機時間が経過した後、純水とホウ酸混合水の実流量比に基づいた一次系冷却水におけるホウ素濃度の低下による異常を判定する。
【0056】
<ホウ素濃度判定方法>
図4は、本実施形態のホウ素濃度判定方法を表すフローチャートである。
【0057】
ホウ素濃度判定方法は、純水を供給する一次系冷却水補給ライン(純水供給ライン)31とホウ酸水を供給するホウ酸水供給ライン32と純水とホウ酸水とが混合されたホウ酸混合水を一次系冷却水(原子炉冷却水)に対して供給するホウ酸混合水供給ライン33とのうちの少なくとも2つのラインの第1流量および第2流量を計測する工程と、第1流量と第2流量との実流量比に基づいて一次系冷却水におけるホウ素濃度の低下による異常を判定する工程とを有する。
【0058】
以下、ホウ素濃度判定方法について具体的に説明する。図1および図4に示すように、ステップS11にて、制御装置71は、ホウ素濃度判定条件が成立しているか否かを判定する。ホウ素濃度判定条件とは、加圧水型原子炉11が起動前の状態または停止後の状態に維持されることである。ここで、制御装置71は、ホウ素濃度判定条件が成立していないと判定(No)すると、このルーチンを抜ける。
【0059】
一方、制御装置71は、ホウ素濃度判定条件が成立していると判定(Yes)すると、ステップS12にて、制御装置71は、流量調整弁41,51,61の開度が変更されたか否かを判定する。ここで、制御装置71は、流量調整弁41,61の開度が変更されたと判定(Yes)すると、ステップS13にて、制御装置71は、流量調整弁41,51,61の開度が変更されてから待機時間が経過したか否かを判定する。制御装置71は、流量調整弁41,51,61の開度が変更されてから待機時間が経過していないと判定(No)すると、この状態を維持する。そして、制御装置71は、流量調整弁41,51,61の開度が変更されてから待機時間が経過したと判定(Yes)すると、ステップS14に移行する。また、ステップS12にて、制御装置71は、流量調整弁41,51,61の開度が変更されていないと判定(No)すると、ステップS14に移行する。
【0060】
ステップS14にて、制御装置71は、流量調整弁41,61の検出結果として、一次系冷却水補給ライン31における純水の流量と、ホウ酸混合水供給ライン33におけるホウ酸混合水の流量を取得する。ステップS15にて、制御装置71は、純水の流量とホウ酸混合水の流量の比率である実流量比(純水の流量/ホウ酸混合水の流量)を算出する。そして、ステップS16にて、制御装置71は、実流量比が正常領域にあるか否かを判定する。この場合、制御装置71は、実流量比が正常領域にあるか否かを、記憶部73に記憶されている異常判定マップ(図2参照)を用いて判定する。
【0061】
ここで、制御装置71は、実流量比が正常領域にあると判定(Yes)すると、一次系冷却水のホウ素濃度が希釈されていないことから、このルーチンを抜ける。一方、制御装置71は、実流量比が正常領域になく、異常領域にあると判定(No)すると、一次系冷却水のホウ素濃度が希釈されていることから、ステップS17にて、隔離弁43を閉止する。すなわち、実流量比が異常領域にあると判定された場合、例えば、流量調整弁41の誤作動や故障などにより開放され、純水が一次系冷却水補給ライン31およびホウ酸水供給ライン32とを通して一次系冷却水循環ライン22に供給されている可能性が高い。そのため、隔離弁43を閉止する。
【0062】
隔離弁43が閉止されると、純水が一次系冷却水補給ライン31およびホウ酸水供給ライン32とを通して一次系冷却水循環ライン22に供給されている事象が停止され、一次系冷却水におけるホウ素濃度の希釈が抑制される。なお、その後、加圧水型原子炉11は、停止する。
【0063】
[本実施形態の作用効果]
第1の態様に係るホウ素濃度判定装置は、純水を供給する一次系冷却水補給ライン(純水供給ライン)31と、ホウ酸水を供給するホウ酸水供給ライン32と、一次系冷却水補給ライン31から供給される純水とホウ酸水供給ライン32から供給されるホウ酸水とが混合されたホウ酸混合水を一次系冷却水(原子炉冷却水)に対して供給するホウ酸混合水供給ライン33と、一次系冷却水補給ライン31とホウ酸水供給ライン32とホウ酸混合水供給ライン33のうちの少なくとも2つのラインの流量を計測する第1流量計および第2流量計と、第1流量計が計測した第1流量と第2流量計が計測した第2流量との実流量比に基づいて一次系冷却水におけるホウ素濃度の低下による異常を判定する制御装置(判定部)71とを備える。
【0064】
第1の態様に係るホウ素濃度判定装置によれば、純水の流量とホウ酸水の流量とホウ酸混合水の流量のうちの少なくとも2つの流量の実流量比に基づいて一次系冷却水におけるホウ素濃度の低下による異常を判定する。そのため、既存の設備を用いてホウ素濃度の変動による異常を容易に検出することができ、装置の複雑化や高コスト化を抑制することができる。
【0065】
第2の態様に係るホウ素濃度判定装置は、第1の態様に係るホウ素濃度判定装置であって、さらに、第1流量計は、一次系冷却水補給ライン31に設けられる純水流量計42であり、第2流量計は、ホウ酸混合水供給ライン33に設けられるホウ酸混合水流量計62であり、制御装置71は、純水流量計42が計測した純水の流量と、ホウ酸混合水流量計が計測したホウ酸混合水との実流量比に基づいて一次系冷却水におけるホウ素濃度の低下による異常を判定する。これにより、ホウ素濃度の変動による異常を適切に検出することができる。
【0066】
第3の態様に係るホウ素濃度判定装置は、第1の態様に係るホウ素濃度判定装置であって、さらに、第1流量計は、一次系冷却水補給ライン31に設けられる純水流量計42であり、第2流量計は、ホウ酸水供給ライン32に設けられるホウ酸水流量計52であり、制御装置71は、純水流量計42が計測した純水の流量と、ホウ酸水流量計52が計測したホウ酸水との実流量比に基づいて一次系冷却水におけるホウ素濃度の低下による異常を判定する。これにより、ホウ素濃度の変動による異常を適切に検出することができる。
【0067】
第4の態様に係るホウ素濃度判定装置は、第1流量計は、ホウ酸水供給ライン32に設けられるホウ酸水流量計52であり、第2流量計は、ホウ酸混合水供給ライン33に設けられるホウ酸混合水流量計62であり、制御装置71は、ホウ酸水流量計52が計測したホウ酸水の流量と、ホウ酸混合水流量計62が計測したホウ酸混合水との実流量比に基づいて一次系冷却水におけるホウ素濃度の低下による異常を判定する。これにより、ホウ素濃度の変動による異常を適切に検出することができる。
【0068】
第5の態様に係るホウ素濃度判定装置は、第1の態様から第4の態様のいずれか一つに係るホウ素濃度判定装置であって、さらに、制御装置71は、第1流量または第2流量が変動したとき、予め設定された所定の待機時間が経過した後の実流量比に基づいて一次系冷却水におけるホウ素濃度の低下による異常を判定する。これにより、例えば、各流量調整弁41,51,61の開度が変更されて第1流量や第2流量が変動すると、その影響が各流量計42,52,62に表れるまで所定時間を要することなり、待機時間が経過した後の実流量比を用いて異常を判定することで、高精度な判定を行うことができる。
【0069】
第6の態様に係るホウ素濃度判定装置は、第1の態様から第5の態様のいずれか一つに係るホウ素濃度判定装置であって、さらに、加圧水型原子炉11を適正に維持するための一次系冷却水における基準ホウ素濃度が設定され、一次系冷却水を基準ホウ素濃度に維持するための第1流量と第2流量との基準流量比が設定され、制御装置71は、基準流量比と実流量比とを比較してホウ素濃度の低下による異常を判定する。これにより、各流量計42,52,62が計測した各流量を異常判定に直接用いることとなり、判定処理ロジックの簡素化を図ることができる。
【0070】
第7の態様に係るホウ素濃度判定装置は、第6の態様に係るホウ素濃度判定装置であって、さらに、基準流量比に対して余裕分を加味して基準ホウ素濃度が維持される正常領域が設定され、制御装置71は、実流量比が正常領域にないときに異常と判定する。これにより、各種機器の故障などを余裕分として考慮して異常を判定することで、異常判定のハンチングなどを抑制することができる。
【0071】
第8の態様に係るホウ素濃度判定装置は、第7に係るホウ素濃度判定装置であって、さらに、正常領域は、加圧水型原子炉11の臨界条件に応じて変更可能である。これにより、加圧水型原子炉11の形態などに応じた異常判定を高精度に行うことができる。
【0072】
第9の態様に係るホウ素濃度判定装置は、第1の態様から第8の態様のいずれか一つに係るホウ素濃度判定装置であって、さらに、一次系冷却水補給ライン31は、隔離弁43が設けられ、制御装置71は、異常と判定したときに隔離弁43を閉止する側に作動させる。これにより、一次系冷却水におけるホウ素濃度の低下を抑制することで、加圧水型原子炉11の安全性を確保することができる。
【0073】
第10の態様に係るホウ素濃度判定装置は第1の態様から第9の態様のいずれか一つに係るホウ素濃度判定装置であって、さらに、制御装置71は、加圧水型原子炉11の起動前および停止後に、一次系冷却水におけるホウ素濃度の低下による異常を判定する。これにより、ホウ素濃度の変動による異常の判定を適切に行うことができる。
【0074】
第11の態様に係るホウ素濃度判定方法は、純水を供給する一次系冷却水補給ライン(純水供給ライン)31とホウ酸水を供給するホウ酸水供給ライン32と純水とホウ酸水とが混合されたホウ酸混合水を一次系冷却水(原子炉冷却水)に対して供給するホウ酸混合水供給ライン33のうちの少なくとも2つのラインの第1流量および第2流量を計測する工程と、第1流量と第2流量との実流量比に基づいて一次系冷却水におけるホウ素濃度の低下による異常を判定する工程とを有する。これにより、既存の設備を用いてホウ素濃度の変動による異常を容易に検出することができ、装置の複雑化や高コスト化を抑制することができる。
【0075】
第12の態様に係るプログラムは、純水を供給する一次系冷却水補給ライン(純水供給ライン)31とホウ酸水を供給するホウ酸水供給ライン32と純水とホウ酸水とが混合されたホウ酸混合水を一次系冷却水(原子炉冷却水)に対して供給するホウ酸混合水供給ライン33のうちの少なくとも2つのラインの第1流量および第2流量を計測する工程と、第1流量と第2流量との実流量比に基づいて一次系冷却水におけるホウ素濃度の低下による異常を判定する工程とをコンピュータに実行させる。これにより、既存の設備を用いてホウ素濃度の変動による異常を容易に検出することができ、装置の複雑化や高コスト化を抑制することができる。
【0076】
なお、上述した実施形態では、純水の流量とホウ酸水の流量とホウ酸混合水の流量の少なくとも2つの流量の実流量比と、基準ホウ素濃度に基づいて設定された基準流量比とを比較してホウ素濃度の低下による異常を判定したが、この構成に限定されるものではない。例えば、純水の流量とホウ酸水の流量とホウ酸混合水の流量の少なくとも2つの流量の実流量比に基づいて一次系冷却水におけるホウ素濃度を推定し、推定ホウ素濃度と基準ホウ素濃度とを比較してホウ素濃度の低下による異常を判定してもよい。
【符号の説明】
【0077】
11 加圧水型原子炉
12 高温側送給配管
13 低温側送給配管
14 蒸気発生器
15 一次系冷却水ポンプ
21 化学体積制御系
22 一次系冷却水循環ライン
23 体積制御タンク
24 充填ポンプ
31 一次系冷却水補給ライン(純水供給ライン)
32 ホウ酸水供給ライン
33 ホウ酸混合水供給ライン
34 混合器
41 流量調整弁
42 純水流量計
43 隔離弁
44 補給水ポンプ
45 一次系純水タンク
51 流量調整弁
52 ホウ酸水流量計
53 ホウ酸水ポンプ
54 ホウ酸水タンク
61 流量調整弁
62 ホウ酸混合水流量計
71 制御装置(判定部)
72 操作部
73 記憶部
図1
図2
図3
図4