(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168116
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】フィルター清掃装置
(51)【国際特許分類】
B01D 46/681 20220101AFI20231116BHJP
【FI】
B01D46/681
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079772
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】391044797
【氏名又は名称】株式会社コーワ
(72)【発明者】
【氏名】中川 和紀
【テーマコード(参考)】
4D058
【Fターム(参考)】
4D058JA01
4D058JA12
4D058JA14
4D058MA31
4D058MA47
4D058MA48
(57)【要約】
【課題】 製造コストの低減を図ることができると共に、車両を使用するたびに頻繁にフィルターの清掃を行わせることができるフィルター清掃装置を提供する。
【解決手段】 フィルター清掃装置10は、フィルター1と、フィルター1に当接して該フィルター1の表面に付着した塵埃を除去する清掃体2と、清掃体2に連結されていると共に、清掃体2とフィルター1との距離を略一定に保ちながら、清掃体1の可動を制御する可動機構3とを有し、可動機構3は、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、清掃体2がフィルター1に対して相対的に可動できる構成とした。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用空調設備に設置されるフィルター清掃装置であって、
前記フィルター清掃装置は、フィルターと、
前記フィルターに当接して該フィルターの表面に付着した塵埃を除去する清掃体と、
前記清掃体に連結されていると共に、前記清掃体と前記フィルターとの距離を略一定に保ちながら、前記清掃体の可動を制御する可動機構と、を有し、
前記可動機構は、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、前記清掃体が前記フィルターに対して相対的に可動できることを特徴とするフィルター清掃装置
【請求項2】
可動機構は、清掃体を保持する棒状のブラシ台と、該ブラシ台の両端部又は中央部に形成された摺接部に摺接すると共に、該摺接部を支持する案内レールと、を有し、
前記ブラシ台は、前記案内レールの長手方向に沿って往復可動するものであって、
前記案内レールは、フィルターの端部近傍又は中央部近傍に設けられていることを特徴とする請求項1に記載のフィルター清掃装置
【請求項3】
案内レールは、長手方向の両端部近傍に緩衝装置が設置されていると共に、前記緩衝装置はブラシ台が近づいた場合又は当接した場合に、ブラシ台に対して反発力を生じさせ、案内レールとの衝突を緩和できることを特徴とする請求項2に記載のフィルター清掃装置
【請求項4】
ブラシ台は、案内レールにより支持された摺接部近傍の長手方向における単位長さあたりの荷重が、前記ブラシ台の摺接部近傍以外の単位長さあたりの荷重よりも大きいことを特徴とする請求項2に記載のフィルター清掃装置
【請求項5】
可動機構は、清掃体を保持する棒状のブラシ台を有し、
前記ブラシ台の一端は、フィルターの近傍に回動可能に固定されていると共に、他端は、往復回動可能な自由端となっていることを特徴とする請求項1に記載のフィルター清掃装置
【請求項6】
可動機構は、車両を側面視した場合に、清掃体の可動方向が車両の進行方向に対して傾斜して可動するように形成されていることを特徴とする請求項1~5のいずれか1項に記載のフィルター清掃装置
【請求項7】
可動機構は、回動軸と、清掃体を保持する板状のブラシ台とを有し、
前記ブラシ台の短手方向の一端は、前記回動軸に回動可能に固定されていると共に、他端は、往復回動可能な自由端となっており、該自由端側に前記清掃体が保持されていることを特徴とする請求項1に記載のフィルター清掃装置
【請求項8】
車両用空調設備に設置されるフィルター清掃装置であって、
前記フィルター清掃装置は、フィルターと、
前記フィルターに当接して該フィルターの表面に付着した塵埃を除去する清掃体と、
前記フィルターと直接的又は間接的に連結されていると共に、前記清掃体と前記フィルターとの距離を略一定に保ちながら、前記フィルターの可動を制御する可動機構と、を有し、
前記可動機構は、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、前記フィルターが前記清掃体に対して相対的に可動できることを特徴とするフィルター清掃装置
【請求項9】
車両用空調設備に設置されるフィルター清掃装置であって、
前記フィルター清掃装置は、フィルターと、
前記フィルターに当接して該フィルターの表面に付着した塵埃を除去する清掃体と、
前記清掃体を挟んで前記フィルターと対向する位置に設けられると共に、前記清掃体と前記フィルターとの距離を略一定に保ちながら、前記清掃体の可動を制御する略蓋状の可動機構と、を有し、
前記可動機構は、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、前記清掃体が前記フィルターに対して相対的に可動できることを特徴とするフィルター清掃装置
【請求項10】
フィルターの近傍であって、清掃体の可動方向の少なくとも一方側にダストボックスが形成されていることを特徴とする請求項1、8又は9のいずれか1項に記載のフィルター清掃装置
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車等の車両用空調設備に設置されるフィルター清掃装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両用空調設備では外気を取り入れて空気を調和し室内に送り込む場合に、フィルターを通して外気を浄化した後に室内へと供給するようになっており、フィルターには外気中に含まれる塵埃が堆積して目詰まりが生じるため、フィルターの清掃が必要とされている。また、室内で内気を循環させる場合も同様に、室内で発生した塵埃を浄化するためにフィルターが設けられており、フィルターに堆積した塵埃の清掃が必要とされている。そして、このフィルターの清掃を自動化した発明が従来から知られている。(特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の車両用空調装置は、小物を収脱するためにグラブボックスを開放すると、ワイヤがブラシボックスを引張り、掻落し部材がエアフィルター上の異物を除去して排気ダクトから排出する構成としており、グラブボックスを閉止すると引張りコイルばねによってブラシボックス及び掻落し部材は原位置へ戻る構成としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の車両用空調装置は、掻落し部材を駆動させるモーターを必要とせず、該モーターに電気を供給する配線も必要としないことから、製造コストの低減を図ることができる装置であった。しかしながら、グラブボックスの開け閉めを行わない場合にはフィルターに塵埃が堆積したままの状態となり、目詰まりが生じる課題を有するものであった。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するものであり、モーターや電気配線を必要としないので製造コストの低減を図ることができると共に、車両を使用するたびに頻繁にフィルターの清掃を行わせることができるフィルター清掃装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、請求項1の発明は、車両用空調設備に設置されるフィルター清掃装置であって、前記フィルター清掃装置は、フィルターと、前記フィルターに当接して該フィルターの表面に付着した塵埃を除去する清掃体と、前記清掃体に連結されていると共に、前記清掃体と前記フィルターとの距離を略一定に保ちながら、前記清掃体の可動を制御する可動機構と、を有し、前記可動機構は、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、前記清掃体が前記フィルターに対して相対的に可動できることを特徴としている。
【0008】
請求項1の発明では、可動機構が車両の加減速及び操舵により生じる慣性力を利用して、清掃体がフィルターに対して相対的に可動できるように制御する構成としたので、モーターや電気配線を必要とせず、製造コストの低減を図ることができる。また、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力は、車両を使用するたびに発生するので、頻繁にフィルターの清掃を行わせることができる。
【0009】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、可動機構は、清掃体を保持する棒状のブラシ台と、該ブラシ台の両端部又は中央部に形成された摺接部に摺接すると共に、該摺接部を支持する案内レールと、を有し、前記ブラシ台は、前記案内レールの長手方向に沿って往復可動するものであって、前記案内レールは、フィルターの端部近傍又は中央部近傍に設けられていることを特徴としている。これにより、慣性力をフィルターに沿った直線方向の力に変換して利用することができる。
【0010】
請求項3の発明は、請求項2の発明において、案内レールは、長手方向の両端部近傍に緩衝装置が設置されていると共に、前記緩衝装置はブラシ台が近づいた場合又は当接した場合に、ブラシ台に対して反発力を生じさせ、案内レールとの衝突を緩和できることを特徴としている。これにより、大きな慣性力が加わった場合でも可動機構が損傷するのを防ぐことができる。
【0011】
請求項4の発明は、請求項2の発明において、ブラシ台は、案内レールにより支持された摺接部近傍の長手方向における単位長さあたりの荷重が、前記ブラシ台の摺接部近傍以外の単位長さあたりの荷重よりも大きいことを特徴としている。これにより、ブラシ台に作用する慣性力を大きくすることができると共に、ブラシ台の変形も抑制され、ブラシ台は、案内レール上を滑らかに摺動することができる。
【0012】
請求項5の発明は、請求項1の発明において、可動機構は、清掃体を保持する棒状のブラシ台を有し、前記ブラシ台の一端は、フィルターの近傍に回動可能に固定されていると共に、他端は、往復回動可能な自由端となっていることを特徴としている。これにより、可動機構を簡素化することができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0013】
請求項6の発明は、請求項1~5のいずれかの発明において、可動機構は、車両を側面視した場合に、清掃体の可動方向が車両の進行方向に対して傾斜して可動するように形成されていることを特徴としている。これにより、車両に慣性力が作用していない状態であっても清掃体に重力が作用してフィルターのどちらかの端部側に移動させることができ、清掃体がフィルターの中間位置で停止して室内への通風を阻害するのを防ぐことができる。
【0014】
請求項7の発明は、請求項1の発明において、可動機構は、回動軸と、清掃体を保持する板状のブラシ台とを有し、前記ブラシ台の短手方向の一端は、前記回動軸に回動可能に固定されていると共に、他端は、往復回動可能な自由端となっており、該自由端側に前記清掃体が保持されていることを特徴としている。これにより、可動機構を簡素化することができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0015】
請求項8の発明は、車両用空調設備に設置されるフィルター清掃装置であって、前記フィルター清掃装置は、フィルターと、前記フィルターに当接して該フィルターの表面に付着した塵埃を除去する清掃体と、前記フィルターと直接的又は間接的に連結されていると共に、前記清掃体と前記フィルターとの距離を略一定に保ちながら、前記フィルターの可動を制御する可動機構と、を有し、前記可動機構は、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、前記フィルターが前記清掃体に対して相対的に可動できることを特徴としている。
【0016】
請求項8の発明では、可動機構が車両の加減速及び操舵により生じる慣性力を利用して、フィルターが清掃体に対して相対的に可動できるように制御する構成としたので、モーターや電気配線を必要とせず、製造コストの低減を図ることができる。また、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力は、車両を使用するたびに発生するので、頻繁にフィルターの清掃を行わせることができる。
【0017】
請求項9の発明は、車両用空調設備に設置されるフィルター清掃装置であって、前記フィルター清掃装置は、フィルターと、前記フィルターに当接して該フィルターの表面に付着した塵埃を除去する清掃体と、前記清掃体を挟んで前記フィルターと対向する位置に設けられると共に、前記清掃体と前記フィルターとの距離を略一定に保ちながら、前記清掃体の可動を制御する略蓋状の可動機構と、を有し、前記可動機構は、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、前記清掃体が前記フィルターに対して相対的に可動できることを特徴としている。
【0018】
請求項9の発明では、略蓋状の可動機構が車両の加減速及び操舵により生じる慣性力を利用して、清掃体がフィルターに対して相対的に可動できるように制御する構成としたので、モーターや電気配線を必要とせず、製造コストの低減を図ることができる。また、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力は、車両を使用するたびに発生するので、頻繁にフィルターの清掃を行わせることができる。
【0019】
請求項10の発明は、請求項1、8又は9のいずれかの発明において、フィルターの近傍であって、清掃体の可動方向の少なくとも一方側にダストボックスが形成されていることを特徴としている。これにより、清掃体がフィルターから除去した塵埃をダストボックスに蓄積させることができ、蓄積した塵埃をまとめて外部に排出することができる。
【発明の効果】
【0020】
請求項1、8及び9の発明は、モーターや電気配線を必要とせず、製造コストの低減を図ることができる。また、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力は、車両を使用するたびに発生するので、頻繁にフィルターの清掃を行わせることができる。また、請求項2の発明は、慣性力をフィルターに沿った直線方向の力に変換して利用することができる。
【0021】
請求項3の発明は、大きな慣性力が加わった場合でも可動機構が損傷するのを防ぐことができる。また、請求項4の発明は、ブラシ台に作用する慣性力を大きくすることができると共に、ブラシ台の変形も抑制され、ブラシ台は、案内レール上を滑らかに摺動することができる。また、請求項5及び7の発明は、可動機構を簡素化することができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0022】
請求項6の発明は、清掃体がフィルターの中間位置で停止して通風を阻害するのを防ぐことができる。また、請求項10の発明は、清掃体がフィルターから除去した塵埃をダストボックスに蓄積させることができ、蓄積した塵埃をまとめて外部に排出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】(a)本発明に係るフィルター清掃装置を車両用空調設備に設置した状態を示す断面図(b)本発明に係るフィルター清掃装置の第1実施形態を示す斜視図
【
図2】(a)車両後方に向けて慣性力が作用する場合の側面図(b)車両前方に向けて慣性力が作用する場合の側面図
【
図3】(a)清掃体の第1実施形態を示す斜視図(b)清掃体の第2実施形態を示す斜視図(c)清掃体の第3実施形態を示す斜視図(d)清掃体の第4実施形態を示す斜視図
【
図4】(a)緩衝装置の第1実施形態を示す断面図(b)緩衝装置の第2実施形態を示す断面図(c)緩衝装置の第3実施形態を示す断面図
【
図5】本発明に係るフィルター清掃装置の第2実施形態を示す斜視図
【
図6】本発明に係るフィルター清掃装置の第3実施形態を示す斜視図
【
図7】本発明に係るフィルター清掃装置の第4実施形態を示す斜視図
【
図8】本発明に係るフィルター清掃装置の第5実施形態を示す斜視図
【
図9】本発明に係るフィルター清掃装置の第6施形態を示す斜視図
【
図10】本発明に係るフィルター清掃装置の第7実施形態を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。尚、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
図1(a)は、本発明に係るフィルター清掃装置を車両用空調設備に設置した状態を示す断面図であり、
図1(b)は、本発明に係るフィルター清掃装置の第1実施形態を示す斜視図である。また、
図2(a)は、車両後方に向けて慣性力が作用する場合の側面図であり、
図2(b)は、車両前方に向けて慣性力が作用する場合の側面図である。これらの図を用いて本発明に係るフィルター清掃装置の第1実施形態について以下に説明する。
【0025】
第1実施形態のフィルター清掃装置10は、車両用空調設備に設置されるものであり、
図1(a)に示すように、車両用エアコン本体ケース81の内部に設置されている送風ファン82の上流側(上方)に設置され、フィルター1を通過した空気が室内に供給される。
【0026】
フィルター清掃装置10は、フィルター1と、フィルター1に当接して該フィルター1の表面に付着した塵埃を除去する清掃体2と、清掃体2に連結されていると共に、清掃体2とフィルター1との距離を略一定に保ちながら、清掃体2の可動を制御する可動機構3とを有している。
【0027】
そして、可動機構3は、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、清掃体2がフィルター1に対して相対的に可動できるようにしている。これにより、モーターや電気配線を必要とせず、車両の電力を使用することもないため、車両全体の消費電力に負担をかけることなく、環境に優しい構造であると共に、製造コストの低減を図ることができる。また、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力は、車両を使用するたびに発生するので、頻繁にフィルター1の清掃を行わせることができる。
【0028】
可動機構3は、清掃体2を保持する棒状のブラシ台4と、該ブラシ台4の両端部に形成された摺接部4a、4bに摺接すると共に、摺接部4a、4bを支持する案内レール5a、5bとを有しており、ブラシ台4は、案内レール5a、5bの長手方向に沿って往復可動するものであって、案内レール5a、5bは、フィルター1の両端部近傍に設けられている。これにより、慣性力をフィルター1に沿った直線方向の力に変換して利用することができる。
【0029】
案内レール5a、5bは、長手方向の両端部近傍に、各々緩衝装置6a、6b、6c、6dが設置されていると共に、緩衝装置6a、6b、6c、6dはブラシ台4が近づいた場合又は当接した場合に、ブラシ台4に対して反発力を生じさせて案内レール5a、5bとの衝突を緩和できる構成としている。これにより、大きな慣性力が加わった場合でも可動機構3が損傷するのを防ぐことができる。
【0030】
ブラシ台4は、案内レール5a、5bにより支持された摺接部4a、4b近傍の長手方向における単位長さあたりの荷重が、ブラシ台の摺接部4a、4b近傍以外の単位長さあたりの荷重よりも大きくなるようにしている。これにより、ブラシ台4に作用する慣性力を大きくすることができると共に、ブラシ台の変形も抑制され、ブラシ台4は、案内レール5a、5b上を滑らかに摺動することができる。
【0031】
フィルター1の近傍であって、清掃体2の可動方向の両側にダストボックス7a、7bが形成されている。尚、ダストボックス7a、7bは、清掃体2の可動方向の少なくとも一方側に形成されていれば本発明に含まれる。これにより、清掃体2がフィルター1から除去した塵埃をダストボックス7a、7bに蓄積させることができ、蓄積した塵埃をまとめて外部に排出することができる。
【0032】
尚、可動機構3は、車両を側面視した場合に、清掃体2の可動方向が車両の進行方向に対して傾斜して可動するように形成されているのが好ましい。これにより、車両に慣性力が作用していない状態であっても清掃体に重力が作用してフィルター1のどちらかの端部側に移動させることができ、清掃体2がフィルター1の中間位置で停止して室内への通風を阻害するのを防ぐことができる。
【0033】
ここで慣性力は、車両の加減速及び操舵により生じるものであり、車両が加速している状態では、
図2(a)に示すように、運転者の前方から後方に向けて慣性力が作用するので、フィルター清掃装置10の可動機構3にも車両の前方から後方に向けて慣性力が作用することとなり、フィルター1の車両前方側に位置していた清掃体2がフィルター1の車両後方側に向けて可動することとなる。反対に、車両が減速している状態では、
図2(b)に示すように、運転者の後方から前方に向けて慣性力が作用するので、フィルター清掃装置10の可動機構3にも車両の後方から前方に向けて慣性力が作用することとなり、フィルター1の車両後方側に位置していた清掃体2がフィルター1の車両前方側に向けて可動することとなる。また、図示しないが、操舵によって車両の進行方向が変化することによっても慣性力が発生し、清掃体2がフィルター1に対して相対的に可動することとなる。
【0034】
図3(a)は、清掃体の第1実施形態を示す斜視図である。尚、便宜上、ブラシ台4の摺接部は描いていない(以下同様)。第1実施形態の清掃体2aは、合成樹脂多孔質体であるスポンジで形成されており、一方の端部に形成された基部がブラシ台4の溝部4cにスライド可能に固定されている。
【0035】
図3(b)は、清掃体の第2実施形態を示す斜視図である。第2実施形態の清掃体2bは、ブラシ毛材で形成されており、一方の端部に形成された基部がブラシ台4の溝部4cにスライド可能に固定されている。尚、ブラシ毛材の材質には、ナイロン、PP、PE、天然繊維等種々の材質を適用することができる。
【0036】
図3(c)は、清掃体の第3実施形態を示す斜視図である。第3実施形態の清掃体2cは、軟質合成樹脂製のブレードで形成されており、一方の端部に形成された基部がブラシ台4の溝部4cにスライド可能に固定されている。尚、この図においてブレードの側面には突起4d、4dが形成されているが、突起を有していないブレードであってもよい。
【0037】
図3(d)は、清掃体の第4実施形態を示す斜視図である。第4実施形態の清掃体2dは、不織布で形成されており、一方の端部に形成された基部がブラシ台4の溝部4cにスライド可能に固定されている。
【0038】
図4(a)は、緩衝装置の第1実施形態を示す断面図である。第1実施形態の緩衝装置6aは、案内レール5aの長手方向の両端部近傍に形成されており、側部には、凸部4dが挿入される挿入孔6gが形成されている。また、挿入孔6gには、付勢手段であるバネ6hが設置されており、ブラシ台4の凸部4dがバネ6h押圧すると跳ね返される構成としている。これにより、大きな慣性力が加わった場合でも可動機構が損傷するのを防ぐことができる。
【0039】
図4(b)は、緩衝装置の第2実施形態を示す断面図である。第2実施形態の緩衝装置6eは、案内レール5aの長手方向の両端部近傍に形成されており、側部には、磁石からなる凸部4eが挿入される挿入孔6gが形成されている。また、挿入孔6gには、凸部4eの対向する面と同じ磁極を、凸部4e側に有する磁石6iが設置されており、ブラシ台4の凸部4eが磁石6i近づくと跳ね返される構成としている。これにより、大きな慣性力が加わった場合でも可動機構が損傷するのを防ぐことができる。
【0040】
図4(c)は、緩衝装置の第3実施形態を示す断面図である。第3実施形態の緩衝装置6fは、案内レール5aの長手方向の両端部近傍に形成されており、側部には、軟質部材からなる凸部4fが挿入される挿入孔6gが形成されている。また、挿入孔6gには、軟質部材からなるクッション部材6jが設置されており、ブラシ台4の凸部4fがクッション部材6jに当接すると両者が変形して衝撃力を吸収する構成としている。これにより、大きな慣性力が加わった場合でも可動機構が損傷するのを防ぐことができる。
【0041】
図5は、本発明に係るフィルター清掃装置の第2実施形態を示す斜視図である。第2実施形態のフィルター清掃装置20では、フィルター21に波形のプリーツフィルターを採用しており、このフィルター21に対応するように、清掃体22の先端を波形にしている。プリーツフィルターを採用することによって、表面積を増やすことができ、捕集効率を向上させることができる。その他の構成は第1実施形態と同様なので説明は省略する。
【0042】
図6は、本発明に係るフィルター清掃装置の第3実施形態を示す斜視図である。第3実施形態のフィルター清掃装置30では、案内レール35をフィルター1の中央部近傍に設けると共に、摺接部34aをブラシ台34の中央部に形成している。これにより、第1実施形態のフィルター清掃装置10よりも安価に製造することができ、製造コストの低減を図ることができる。その他の構成は第1実施形態と同様なので説明は省略する。
【0043】
図7は、本発明に係るフィルター清掃装置の第4実施形態を示す斜視図である。第4実施形態のフィルター清掃装置40では、可動機構43は、清掃体42を保持する棒状のブラシ台44を有し、ブラシ台44の一端は、平面視扇形状のフィルター41の近傍の基台に設置された軸体8に回動可能に固定されていると共に、他端は、往復回動可能な自由端となっている。尚、軸体8の2箇所には磁石46が設置されており、これに対応するブラシ台44にも、互いに対向する面が同じ磁極となるように磁石(図示せず)が設置されていて、第1実施形態で説明した緩衝装置の機能を果たしている。これにより、可動機構43を簡素化することができ、製造コストの低減を図ることができる。その他の構成は第1実施形態と同様なので説明は省略する。尚、本実施形態では、操舵によって車両の進行方向が変化することによっても慣性力が発生し、清掃体42がフィルター41に対して相対的に可動する。
【0044】
図8は、本発明に係るフィルター清掃装置の第5実施形態を示す斜視図である。第5実施形態のフィルター清掃装置50では、可動機構53は、フィルター51が設置される通風口を備えた基台と、該基台に設置された軸受けと、該軸受けに軸支された回動軸9と、清掃体52を保持する板状のブラシ台54とを有しており、ブラシ台54の短手方向の一端は、回動軸9に回動可能に固定されていると共に、他端は、往復回動可能な自由端となっており、該自由端側に清掃体52が保持されている。また、フィルター51は、側面視が円弧状に形成されており、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、清掃体52がフィルター51に摺接しつつ往復回動することによって清掃が行われる。これにより、可動機構53を簡素化することができ、製造コストの低減を図ることができる。
【0045】
図9は、本発明に係るフィルター清掃装置の第6実施形態を示す斜視図である。第6実施形態のフィルター清掃装置60は、フィルター61と、該フィルター61に当接して該フィルター61の表面に付着した塵埃を除去する清掃体62と、フィルター61と直接的又は間接的に連結されていると共に、清掃体62とフィルター61との距離を略一定に保ちながら、フィルター61の可動を制御する可動機構63とを有している。そして、可動機構63は、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、フィルター61が清掃体62に対して相対的に可動できる構成としている。具体的にはフィルター61の長手方向の両端部に側面視コ字状のレールが設置されており、このレール上をフィルター61と該フィルター61の短手方向の両端部に固着されたベルトがローラを介して移動することができる構成とし、左右のレールの中間部にかけ渡されるように固定されたブラシ台に保持されている清掃体62が、慣性力によって往復動するフィルター61に摺接することによって清掃が行われる。
【0046】
第6実施形態のフィルター清掃装置60は、可動機構が車両の加減速及び操舵により生じる慣性力を利用して、フィルター61が清掃体62に対して相対的に可動できるように制御する構成としたので、モーターや電気配線を必要とせず、製造コストの低減を図ることができる。また、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力は、車両を使用するたびに発生するので、頻繁にフィルター61の清掃を行わせることができる。
【0047】
図10は、本発明に係るフィルター清掃装置の第7実施形態を示す斜視図である。第7実施形態のフィルター清掃装置70は、フィルター71と、該フィルター71に当接して該フィルター71の表面に付着した塵埃を除去する清掃体72と、該清掃体72を挟んでフィルター71と対向する位置に設けられると共に、清掃体72とフィルター71との距離を略一定に保ちながら、清掃体72の可動を制御する通風孔12を備えた略蓋状の可動機構73とを有している。そして、可動機構73は、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力によって、清掃体72がフィルター71に対して相対的に可動できる構成としている。また、フィルター71の四辺は、フィルター71が設置される通風口を備えた基台の側壁11、11によって囲まれており、清掃体72がフィルター71上から外れるのを防いでいる。
【0048】
第7実施形態のフィルター清掃装置70は、略蓋状の可動機構73が車両の加減速及び操舵により生じる慣性力を利用して、清掃体72がフィルター71に対して相対的に可動できるように制御する構成としたので、モーターや電気配線を必要とせず、製造コストの低減を図ることができる。また、車両の加減速及び操舵により生じる慣性力は、車両を使用するたびに発生するので、頻繁にフィルター71の清掃を行わせることができる。尚、本実施形態では、操舵によって車両の進行方向が変化することによっても慣性力が発生し、清掃体72がフィルター71に対して相対的に可動する。
【0049】
尚、上述の第4実施形態~第7実施形態を示す図面においてダストボックスが描かれていないが、第1実施形態~第3実施形態と同様に、フィルターの近傍であって、清掃体の可動方向の少なくとも一方側にダストボックスを形成した形態とすることができる。
【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明に係るフィルター清掃装置は、自動車等の車両用空調設備に設置されて利用される。
【符号の説明】
【0051】
1、21、41、51、61、71 フィルター
2、2a、2b、2c、2d、22、42、52、62、72 清掃体
2e 突起
3、43、53、63、73 可動機構
4、34、44、54 ブラシ台
4a、4b、34a 摺接部
4c 溝部
4d、4e、4f 凸部
5a、5b、35 案内レール
6a、6b、6c、6d、6e、6f 緩衝装置
6g 挿入孔
6h バネ(付勢手段)
6i、46 磁石
6j クッション部材
7a、7b ダストボックス
8 軸体
9 回動軸
10、20,30、40,50、60,70 フィルター清掃装置
11 側壁
12 通風孔
81 車両用エアコン本体ケース
82 送風ファン