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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168136
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】操舵装置
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20231116BHJP
   B62D 1/16 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D1/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079797
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001519
【氏名又は名称】弁理士法人太陽国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長 勇次
【テーマコード(参考)】
3D030
3D232
【Fターム(参考)】
3D030DB15
3D030DB17
3D030DD12
3D030DD63
3D232CC20
3D232CC39
3D232DA03
3D232DA09
3D232DA23
3D232DA84
3D232DA86
3D232DA98
3D232DB20
3D232EB12
3D232EC37
3D232FF10
3D232GG01
(57)【要約】
【課題】乗員に多種類の情報を伝達可能な操舵装置を提供する。
【解決手段】コラム装置では、ステアリングを回転方向に振動させるパターンAの振動、ステアリングを前後方向に振動させるパターンBの振動、及びステアリングを上下方向に振動させるパターンCの振動をステアリングに付与できる。また、コラム装置では、ステアリングに付与する振動として、パターンAの振動にパターンB及びパターンCの少なくとも一方を組合せた振動パターンを設定できる。これにより、ステアリング20の振動を介して乗員に伝達する情報の種類を増やすことができる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸線回りに回転可能とされ、乗員により把持されて操舵されることで車両の転舵輪が転舵されるステアリング体と、
前記ステアリング体に回転トルクを付与するための回転駆動手段と、
前記ステアリング体を前記回転軸線に沿って移動するための第1駆動手段、及び前記ステアリング体の前記回転軸線を傾動するための第2駆動手段の少なくとも一方が設けられる変位駆動手段と、
前記ステアリング体に付与する振動パターンとして、前記ステアリング体の前記回転トルクが変動される第1パターンと、前記ステアリング体の軸線方向の位置が変動される第2パターン及び前記ステアリング体の前記回転軸線の傾きが変動される第3パターンの少なくとも一方とを選択し、選択した前記振動パターンに応じて前記回転駆動手段及び前記変位駆動手段を作動させる作動手段と、
を含む操舵装置。
【請求項2】
前記作動手段は、選択された前記振動パターンの一つの実行が開始されてから他の一つの振動パターンが実行されるように前記回転駆動手段及び前記変位駆動手段を作動させる、
ことを含む請求項1に記載の操舵装置。
【請求項3】
前記作動手段は、選択された前記振動パターンの一つの実行が終了してから他の一つの前記振動パターンが実行されるように前記回転駆動手段及び前記変位駆動手段を作動させる、
ことを含む請求項1に記載の操舵装置。
【請求項4】
前記作動手段は、選択された前記振動パターンが重畳されるように前記回転駆動手段及び前記変位駆動手段を作動させる、
ことを含む請求項1に記載の操舵装置。
【請求項5】
前記作動手段は、前記第1パターンが実行される際、変動される前記回転トルクの変化幅が変化されるように前記回転駆動手段を作動させる、
ことを含む請求項1に記載の操舵装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、操舵装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ドライバーへのステアリングホイールを介したアラートの最中であっても転舵輪の操作を可能とするためのステアバイワイヤ方式の操舵制御システムが開示されている。操舵制御システムでは、車輪がステアリングホイールのステアリング操舵角に応じた転舵角となるように転舵モータを制御し、ステアリング操舵角及び車速に応じた基本反力トルクを目標反力トルクとして、目標反力トルクが得られるように反力モータを制御する。
【0003】
また、操舵制御システムでは、アラート要求が出力されることを受けると、アラート要求の緊急度に応じて振動振幅及び振動周期のアラート反力トルクを演算し、基本反力トルクにアラート反力トルクを合算した目標反力トルクが得られるように反力モータを制御する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-169253号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、車両には、運転者の運転操作を支援する各種の運転支援機能が設置されており、運転者へ報知する情報が増えている。しかし、ステアリングホイールの反力トルクに振動成分を持たせる際の振動振幅及び振動周期を変更するのみでは、ステアリングホイールを介した運転者への情報伝達には限りがある。
【0006】
本発明は、上記事実を鑑みて成されたものであり、運転者としての乗員に多種類の情報を伝達可能な操舵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、第1の態様の操舵装置は、回転軸線回りに回転可能とされ、乗員により把持されて操舵されることで車両の転舵輪が転舵されるステアリング体と、前記ステアリング体に回転トルクを付与するための回転駆動手段と、前記ステアリング体を前記回転軸線に沿って移動するための第1駆動手段、及び前記ステアリング体の前記回転軸線を傾動するための第2駆動手段の少なくとも一方が設けられる変位駆動手段と、前記ステアリング体に付与する振動パターンとして、前記ステアリング体の前記回転トルクが変動される第1パターンと、前記ステアリング体の軸線方向の位置が変動される第2パターン及び前記ステアリング体の前記回転軸線の傾きが変動される第3パターンの少なくとも一方とを選択し、選択した前記振動パターンに応じて前記回転駆動手段及び前記変位駆動手段を作動させる作動手段と、を含む。
【0008】
第2の態様の操舵装置は、第1の態様において、前記作動手段は、選択された前記振動パターンの一つの実行が開始されてから他の一つの振動パターンが実行されるように前記回転駆動手段及び前記変位駆動手段を作動させる、ことを含む。
【0009】
第3の態様の操舵装置は、第1又は第2の態様において、前記作動手段は、選択された前記振動パターンの一つの実行が終了してから他の一つの前記振動パターンが実行されるように前記回転駆動手段及び前記変位駆動手段を作動させる、ことを含む。
【0010】
第4の態様の操舵装置は、第1の態様において、前記作動手段は、選択された前記振動パターンが重畳されるように前記回転駆動手段及び前記変位駆動手段を作動させる、ことを含む。
【0011】
第5の態様の操舵装置は、第1から第4の何れか1の態様において、前記作動手段は、前記第1パターンが実行される際、変動される前記回転トルクの変化幅が変化されるように前記回転駆動手段を作動させる、ことを含む。
【発明の効果】
【0012】
第1の態様の操舵装置では、ステアリング体が回転軸線回りに回転可能とされており、ステアリング体は、乗員により把持されて操舵(回転)されることで車両の転舵輪が転舵される。回転駆動手段は、作動されることでステアリング体に回転トルクを付与する。また、変位駆動手段には、作動されることでステアリング体を回転軸線に沿って移動させる第1駆動手段、及び作動されることでステアリング体の回転軸線を上下方向に傾ける第2駆動手段の少なくとも一方が設けられる。また、作動手段は、回転駆動手段及び変位駆動手段を作動させることでステアリング体に振動を付与する。
【0013】
ここで、ステアリング体に付与する振動パターンとして、ステアリング体の回転トルクが変動される第1パターン、ステアリング体の軸線方向の位置が変動される第2パターン、及びステアリング体の回転軸線の傾きが変動される第3パターンが設定されている。作動手段は、第2パターン及び第3パターンの少なくとも一方を選択し、選択した振動パターンと第1パターンとに応じて回転駆動手段及び変位駆動手段を作動させる。
【0014】
これにより、乗員が把持するステアリング体に付与する振動パターンを増やすことができて、振動パターンに応じて乗員に伝達(報知)する情報の種類を増やすことができる。
【0015】
第2の態様の操舵装置では、作動手段が振動パターンに応じて回転駆動手段及び変位駆動手段を作動させる際、選択された振動パターンの一つの実行が開始されてから他の一つの振動パターンが実行されるように回転駆動手段及び変位駆動手段を作動させる。これにより、乗員が把持するステアリング体に付与する振動パターンをさらに増やすことができて、振動パターンに応じて乗員に伝達(報知)する情報の種類を一層増やすことができる。
【0016】
第3の態様の操舵装置では、作動手段が振動パターンに応じて回転駆動手段及び変位駆動手段を作動させる際、選択された振動パターンの一つの実行が終了してから他の一つの振動パターンが実行されるように回転駆動手段及び変位駆動手段を作動させる。これにより、乗員が把持するステアリング体に付与する振動パターンをさらに増やすことができて、振動パターンに応じて乗員に伝達(報知)する情報の種類をより一層増やすことができる。
【0017】
第4の態様の操舵装置では、作動手段が振動パターンに応じて回転駆動手段及び変位駆動手段を作動させる際、選択された振動パターンが重畳されるように回転駆動手段及び変位駆動手段を作動させる。これにより、乗員が把持するステアリング体に付与する振動パターンをさらに増やすことができて、振動パターンに応じて乗員に伝達(報知)する情報の種類を一層増やすことができる。
【0018】
第5の態様の操舵装置では、作動手段が回転駆動手段を作動させて第1パターンを実行させる。この際、作動手段は、変動される回転トルクの変化幅が変化されるように回転駆動手段を作動させる。これにより、乗員が把持するステアリング体に付与する振動パターンを効果的に増やすことができて、振動パターンに応じて乗員に伝達(報知)する情報の種類を効果的に増やすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】(A)は、本実施形態に係るステアリング装置に設けられたコラム装置の主要部を示す斜視図、(B)は、ステアリングを示す正面図である。
図2】コラムモジュールを示す平面図である。
図3】チルテレモジュールを示す平面図である。
図4】コラム装置の制御部を示す概略図である。
図5】(A)~(C)は各々ステアリングに付与する振動パターンを示す線図であり、(A)は回転振動を示し、(B)は前後振動を示し、(C)は上下振動を示している。
図6】情報伝達処理の概略を示す流れ図である。
図7】(A)~(C)は、各々コラム装置に適用できる振動パターンを示す線図である。
図8】(A)~(C)は、各々コラム装置に適用できる図7とは異なる振動パターンを示す線図である。
図9】コラム装置に適用できる図7及び図8とは異なる振動パターンを示す線図である。
図10】コラム装置に適用できる振動パターンの他の一例を示す線図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、図面を参照して本発明の実施形態について詳細に説明する。
図1(A)には、本実施形態に係るステアリング装置(ステアリングシステム)10の主要部が車両後側かつ斜め右方視の斜視図にて示され、図1(B)には、ステアリング装置10の主要部が車両後側から見た正面図にて示されている。なお、図面では、車両前側を矢印FRにて示し、車両右側を矢印RHにて示し、上側を矢印UPにて示している。
【0021】
図1(A)に示すように、ステアリング装置10は、車両の操舵を行うための操舵装置としてのコラム装置12を備えている。また、ステアリング装置10は、車両の転舵輪の転舵を担う図示しない転舵装置(図示省略)を備えており、ステアリング装置10は、コラム装置12と転舵装置とが電気的に接続されたステアバイワイヤ式とされている。
【0022】
図1(A)及び図1(B)に示すように、コラム装置12には、操舵体及びステアリング体してのステアリング(ハンドル)20が設けられており、ステアリング20は、車両の運転席に着座する乗員(運転者)の車両前側に配置されている。ステアリング20は、車両の操舵に用いられ、乗員が車両を操舵する際に乗員により回転操作される。
【0023】
ステアリング20は、乗員が左手で把持する把持部としての左側のグリップ22L、及び乗員が右手で把持する把持部としての右側のグリップ22Rを備えている。グリップ22L、22Rは各々略棒状とされており、グリップ22L、22Rは、乗員が把持し易い形状(握り易い形状)とされて、各々長手方向が略上下方向(直進操舵位置における略上下方向)とされている。なお、図1(B)には、操舵角θ=0°となる直進操舵位置(車両直進状態)におけるステアリング20が示されている。また、図面では、ステアリング20の右回転(右操舵)方向が矢印Rにて示され、ステアリング20の左回転(左操舵)方向が矢印Lにて示されている。
【0024】
ステアリング20は、グリップ22L、22Rがボス部24Aを挟んで対で配置されており、ステアリング20は、グリップ22L、22Rが各々1か所又は複数個所でボス部24Aに連結された異形ステアリングとされている。ステアリング20では、グリップ22L、22Rの上部がスポーク部24Bによりボス部24Aに連結され、グリップ22Lの下部とグリップ22Rの下部とが連結部24Cにより連結されている。ステアリング20では、連結部24Cの車幅方向の中間部がボス部24Aの下部に連結されており、ステアリング20は、車幅方向に長い略矩形状とされている。
【0025】
また、コラム装置12では、ステアリング20の回転範囲が右回転及び左回転の各々において半回転以内とされている。これにより、コラム装置12では、ステアリング20を握り替えることなく操舵可能となっている。
【0026】
図1(A)に示すように、コラム装置12は、操舵機構としてのコラムモジュール26、及びチルト機構及びテレスコピック機構としてのチルテレモジュール28を備えている。コラム装置12は、コラムモジュール26の車両左側(車両右側又は車両前側でもよい)にチルテレモジュール28が取付けられて、コラムモジュール26及びチルテレモジュール28が図示しないカバーにより被覆されている。
【0027】
コラム装置12は、チルテレモジュール28が車両のインストルメントパネル内においてリンフォース(何れも図示省略)に取付けられて車体に固定されており、コラム装置12は、チルテレモジュール28を介してステアリング20及びコラムモジュール26が車体に支持されている。
【0028】
図2には、コラムモジュール26の主要部が上方視の平面図にて示され、図3には、チルテレモジュール28の主要部が車両左方視の平面図にて示されている。
【0029】
図2に示すように、コラムモジュール26は、円柱状のステアリングシャフト30、及び筐体32を備えている。ステアリングシャフト30は、長手方向が車両前後方向とされ、車両前側部分が筐体32に回転可能に支持されている。また、ステアリングシャフト30は、車両後端にステアリング20のボス部24Aが固定されている(図示省略)。これにより、ステアリング20は、ステアリングシャフト30の軸線を回転軸線Cとし、ステアリングシャフト30と一体に回転軸線C回りに回転可能とされている。
【0030】
コラムモジュール26の筐体32は、外形が略矩形ブロック状とされており、筐体32内には、電気モータが用いられた操舵駆動手段及び回転駆動手段としての操舵モータ34、減速手段が構成されているギアボックス36、及び操舵角検出手段としての操舵角センサ38が配置されている。
【0031】
ステアリングシャフト30は、筐体32内において軸受40A、40Bに挿通され、軸線方向への移動が阻止されて回転自在に支持されている。また、ステアリングシャフト30は、操舵角センサ38に挿通されており、操舵角センサ38は、ステアリング20と一体で回転されるステアリングシャフト30の回転角を操舵角θとして検出する。
【0032】
コラムモジュール26では、ステアリングシャフト30と操舵モータ34との間にギアボックス36が介在されている。ステアリングシャフト30には、拡径部30Aが形成されており、拡径部30Aの外周部には、平歯のギア42Aが取付けられている。また、操舵モータ34には、回転軸34Aに平歯のギア42Bが取付けられている。
【0033】
ギアボックス36には、操舵モータ34側に平歯のギア42Cが取付けられ、ステアリングシャフト30側に平歯のギア42Dが取付けられており、ギア42Cは操舵モータ34のギア42Bに噛合され、ギア42Dはステアリングシャフト30のギア42Aに噛合されている。また、ギアボックス36には、ギア42Bの回転を所要の減速比で減速してギア42Aに伝達するためのギア列(歯車列)が形成されている(図示省略)。
【0034】
これにより、コラムモジュール26では、操舵モータ34の正転回転又は逆転回転が減速されてステアリングシャフト30に伝達され、ステアリングシャフト30と共にステアリング20が回転される。また、ステアリング20は、操舵モータ34の回転力に応じた回転力(回転トルク)で右回転(図1(B)の矢印R方向回転)及び左回転(図1(B)の矢印L方向回転)される。ステアリング20を把持する乗員は、ステアリング20の回転トルクに応じた操作力を反力トルクとして感じる。
【0035】
図3に示すように、コラム装置12には、チルテレモジュール28にステアリングサポート14が配置されており、ステアリングサポート14がリンフォースに取付けられてチルテレモジュール28が車体に支持される。
【0036】
ステアリングサポート14には、下壁と車両左側壁(コラムモジュール26とは反対側壁)とが設けられており、ステアリングサポート14内は、車両前側、車両後側、車両右側及び上側に開放されている。ステアリングサポート14の車両左側端部の車両前側端部及び車両後側端部には、固定部としての長尺矩形柱状の固定柱14Aが各々設けられており、固定柱14Aは、各々ステアリングサポート14の下壁から上方に延設されている。
【0037】
ステアリングサポート14の車両右側には、コラムモジュール26の筐体32が配置されている。筐体32は、ステアリングサポート14の車両前側及び車両後側に突出されており、筐体32からはステアリングシャフト30が車両後側に突設されている。
【0038】
コラムモジュール26の筐体32には、チルテレモジュール28側の面に矩形の支持板46が配置されており、支持板46は、長手方向が上下方向とされて筐体32に取付けられている。支持板46には、円柱状の支柱48が配置されており、支柱48は、車両左側に突出されている。また、支柱48の軸線は、上下方向においてステアリング20の回転軸線Cと重ねられていると共に、ステアリング20の回転軸線Cと直交されている。
【0039】
チルテレモジュール28には、ステアリングサポート14内における筐体32側(車両右側)に連結部材としての矩形板状の連結板50が固定されており、連結板50は、上下方向に長尺にされると共に、ステアリングサポート14の一対の固定柱14Aより車両右側において、筐体32の支持板46に対向されて配置されている。連結板50には、支柱48が取付けられており、支柱48は、軸線が連結板50の幅方向(車両前後方向)の中心位置かつ連結板50の長手方向(上下方向)の中心位置とされて連結板50に固定されている。
【0040】
連結板50の上部及び下部には、それぞれ連結部としての同一構成の連結孔50A及び連結孔50Bが貫通形成されており、連結孔50Aと連結孔50Bとは、支柱48の中心点を対称点とする点対称に形成されている。上側の連結孔50A及び下側の連結孔50Bは、上下方向に長尺の略矩形状にされると共に、車両前後方向位置が互いに一致されている。連結孔50A、50Bは、各々の上端部及び下端部が半円状とされており、連結孔50A、50Bは、各々上側内周面及び下側内周面が凸状に湾曲されている。
【0041】
チルテレモジュール28には、作動部52が設けられている。作動部52には、変位駆動手段を構成する第1駆動手段及び第2駆動手段としての同一構成の第1作動モータ54A及び第2作動モータ54Bが車両前側の固定柱14Aに配置されている。第1作動モータ54A及び第2作動モータ54Bは、第1作動モータ54Aが固定柱14Aの上部に取付けられ、第2作動モータ54Bが固定柱14Aの下部に取付けられており、第1作動モータ54A及び第2作動モータ54Bは、各々の出力軸が車両後側に延出されている。第1作動モータ54A及び第2作動モータ54Bの出力軸には、それぞれ同一構成とされた平歯のギア56A及びギア56Bが取付けられており、ギア56Aの位置とギア56Bの位置は、車両前後方向において一致されている。
【0042】
作動部52には、それぞれ案内部材としての同一構成の送りネジ58A、58Bが設けられており、送りネジ58A、58Bの各々は、略円柱状とされていると共に、外周に雄ネジが形成されている。送りネジ58A、58Bは、各々の軸方向が車両前後方向にされて、送りネジ58Aが上側に配置され、送りネジ58Bが下側に配置されている。送りネジ58A、58Bは、各々車両後側端部が車両後側の固定柱14Aに回転可能に支持され、車両前側端部がステアリングサポート14の車両左側壁に回転可能に支持されている。
【0043】
送りネジ58A、58Bには、車両前側端部近傍に同一構成の平歯のギア60A、60Bが固定されており、送りネジ58Aのギア60Aは、第1作動モータ54Aのギア56Aに噛合され、送りネジ58Bのギア60Bは、第2作動モータ54Bのギア56Bに噛合されている。また、ギア60A、60Bの径は、それぞれギア56A、56Bの径に比し大きくされており、ギア56A、56Bが回転されることで、ギア60A、60Bが減速されて回転され、送りネジ58A、58Bが回転される。
【0044】
送りネジ58A、58Bには、各々の軸線方向の中間部において、作動部材としての同一構成のナット62A、62Bが配置されている。ナット62A、62Bは各々略筒状とされており、ナット62Aの内部には送りネジ58Aが貫通され、ナット62Bの内部には送りネジ58Bが貫通されている。ナット62A、62Bの各々の内周面には雌ネジが形成されており、ナット62Aには送りネジ58Aが螺合され、ナット62Bには送りネジ58Bが螺合されている。
【0045】
ナット62A、62Bの外形は、略直方体状とされており、ナット62A、62Bは、ステアリングサポート14の車両左側壁に嵌合されて、送りネジ58A、58B回りの回転が係止されている。また、ナット62A、62Bは、送りネジ58A、58Bが回転されることで、車両前後方向に移動可能となっており、ナット62A、62Bは、互いに車両前後方向に相対移動可能となっている。
【0046】
ナット62A及びナット62Bには、それぞれ支持部としての同一構成の支持柱64A及び支持柱64Bが固定されており、支持柱64A、64Bは、各々円柱状にされて車両右側に突出されている。支持柱64A及び支持柱64Bは、各々連結板50の連結孔50A及び連結孔50Bに挿入されて、連結孔50A、50Bから突出した先端がコラムモジュール26の支持板46において支持板46の長手方向に相対移動可能に取付けられている。
【0047】
支持柱64A及び支持柱64Bは、各々連結孔50A及び連結孔50Bに車両前後方向において嵌合されると共に、連結孔50A及び連結孔50B内を長軸方向(上下方向)に相対移動可能とされている。また、支持柱64A、64Bは、連結板50の長手方向が送りネジ58A、58Bの軸線方向(長手方向)と直交する向きにおいて、支持柱64Aが連結孔50Aの下面(下側内周面)に当接され、支持柱64Bが連結孔50Bの上面(上側内周面)に当接されている。このため、コラムモジュール26は、筐体32が支柱48を介して支持柱64A及び支持柱64Bによってステアリングサポート14に支持されている。
【0048】
これにより、チルテレモジュール28では、第1作動モータ54A及び第2作動モータ54Bが一体で正転又は逆転回転されることで、ナット62A、62Bが一体(車両前後方向の相対位置が保持された状態)で送りネジ58A、58Bに沿って車両前側又は車両後側に移動される。コラムモジュール26は、ナット62A、62Bが一体で車両前側又は車両後側に移動されることで、筐体32と共にステアリングシャフト30が移動されて、ステアリング20が車両前側又は車両後側に移動される(テレスコピック機構)。
【0049】
また、チルテレモジュール28では、第1作動モータ54A及び第2作動モータ54Bが互いに逆方向に回転駆動することで、ナット62A、62Bの一方が車両前側に移動され、ナット62A、62Bの他方が車両後側に移動される。これにより、チルテレモジュール28では、連結板50が支柱48の軸心回りに回動されて、コラムモジュール26の筐体32が回動されることで、ステアリングシャフト30の回転軸線Cが傾動される(車両前後方向に対する角度が変位される)。回転軸線Cが傾動されることで、ステアリング20は、上側又は下側に移動される(チルト機構)。
【0050】
なお、チルテレモジュール28では、送りネジ58A、58Bに形成されている雄ネジの範囲内においてナット62A、62Bが移動可能とされ、ナット62A、62Bの移動範囲内においてステアリング20が前後移動(車両前後方向への移動)及び上下移動される。
【0051】
一方、ステアリング装置10には、コラム装置12の作動を制御してステアリング装置10の作動を制御する制御部66が設けられている。図4には、制御部66の概略構成がブロック図にて示されている。
【0052】
図4に示すように、制御部66は、制御手段及び作動手段としてのステアリングECU70を備えている。ステアリングECU70は、CPU、ROM、RAM、不揮発性のストレージ、及び入出力インターフェイス等がバスによって接続されたマイクロコンピュータを備えると共に、所要の機能回路を備えている(何れも図示省略)。ステアリングECU70では、CPUがROM及びストレージに記憶されているプログラムを読み出してRAMに展開しながら実行することで、プログラムに応じた機能が実現される。
【0053】
以下に、ステアリング装置10及びコラム装置12に対するステアリングECU70の制御を説明する。
ステアリングECU70には、コラムモジュール26に設けられている操舵モータ34及び操舵角センサ38等が電気的に接続されていると共に、チルテレモジュール28の第1作動モータ54A及び第2作動モータ54Bの各々が電気的に接続されている。また、ステアリング装置10(コラム装置12)には、ステアリング20の車両前後方向位置、及びステアリング20の上下方向位置を設定するための設定スイッチ72が設けられており、設定スイッチ72は、ステアリングECU70に電気的に接続されている。
【0054】
さらに、ステアリング装置10では、転舵装置に設けられている転舵駆動手段及び転舵角検出手段等がステアリングECU70に接続されている(図示省略)。これにより、ステアリング装置10では、コラム装置12と転舵装置とが電気的に接続されている。
【0055】
車両には、車線維持機能や車線変更機能を含む運転支援装置、又は乗員の運転操作を介さずに車両の走行制御を行う自動運転装置が設置されており(何れも図示省略)、車両は、運転支援装置又は自動運転装置により操舵制御が可能となっている。
【0056】
ステアリングECU70は、車両のCAN(Controller Area Network)に接続されている。CANには、車両に設置されている各種の機能機器の電子制御ユニット(ECU)が接続されており、運転支援装置のECU及び自動運転装置のECUは、CANを介してステアリングECU70に接続されている。これにより、ステアリングECU70は、CANを介して運転支援装置又は自動運転装置から転舵輪の転舵角を含む車両の転舵に係る情報(転舵情報)が入力される。
【0057】
ステアリングECU70には、コラム装置12の作動を制御するための操舵制御プログラム、及び転舵装置の作動を制御するための転舵制御プログラム等がマイクロコンピュータのROM及びストレージに記憶されている。
【0058】
これにより、ステアリングECU70は、ステアリング20が回転操作(操舵操作)されて操舵角θが変化することで、転舵輪の転舵角が操舵角θに応じた角度となるように転舵駆動手段を作動させることで、車両の進行方向を変更する(転舵操作)。
【0059】
また、ステアリングECU70は、車両走行に伴うセルフライニングトルクにより転舵輪の転舵角が変化すると、転舵角に応じた操舵角θとなるように操舵モータ34を作動させてステアリング20を回転させる。
【0060】
さらに、ステアリングECU70は、CANを介して転舵情報が入力されると、転舵情報に応じた転舵角となるように転舵駆動手段を作動させると共に、転舵角に応じた操舵角θとなるように操舵モータ34を作動させてステアリング20を回転させる。
【0061】
また、ステアリングECU70では、乗員により回転されるステアリング20又は操舵モータ34により回転されるステアリング20に、操舵角θ、角速度(操舵角θの変化度合)あるいは車速に応じて設定した回転トルク生じるように操舵モータ34を作動させる。この際、ステアリングECU70は、必要とする回転トルクに応じた操舵モータ34の目標電流値を設定し、設定した目標電流値が得られる電力を操舵モータ34に供給する。これにより、ステアリングECU70は、ステアリング20を把持している(触れている)乗員に、ステアリング20を介して反力トルクを受けていると感じさせることができる。
【0062】
コラム装置12は、チルト機構及びテレスコピック機構が設けられている。設定スイッチ72には、ステアリング20を上下方向に移動させるためのチルトスイッチ、及びステアリング20を車両前後方向に移動させるためのテレスコピックスイッチが設けられている(何れも図示省略)。
【0063】
ステアリングECU70は、テレスコピックスイッチが操作されることで、第1作動モータ54A及び第2作動モータ54Bを同相かつ回転数(回転速度)で操作されたテレスコピックスイッチに応じて正転回転又は逆転回転させる。このため、ステアリング20が車両前後方向に移動される。
【0064】
また、ステアリングECU70は、チルトスイッチが操作されることで、第1作動モータ54A及び第2作動モータ54Bの一方を正転回転させると共に、第1作動モータ54A及び第2作動モータ54Bの他方を逆転回転させる(逆相で作動させる)。この際、ステアリングECU70は、第1作動モータ54A、54Bを同回転数で作動させる。このため、ステアリング20の回転軸線Cが上下方向に傾けされ(傾動され)て、ステアリング20が上下方向に移動される。
【0065】
これにより、コラム装置12では、運転席に着座してステアリング20を操作する乗員が、運転操作に先立って自身の体格等に合うようにステアリング20の前後方向の設定位置、及び上下方向の設定位置を調整でき、乗員は、設定した位置に配置したステアリング20を操作できる。
【0066】
車両に設けられている運転支援装置や自動運転装置などの機能機器では、車両の周囲の走行環境、車両の走行状態、及び乗員の運転操作状態等を監視しながら、乗員に対する運転支援や車両の走行制御を行う。この際、これらの機能機器は、情報検出装置として機能し、情報検出装置では、乗員に伝達(報知)するように設定されている情報を検出したり、乗員に伝達(報知)するように設定されている情報が発生したと判定したりすると、その情報を乗員に伝達するためにステアリングECU70に出力する。
【0067】
乗員に伝達される情報には、例えば、車両が走行車線を逸脱したことを示す情報(逸脱しようとしている情報でもよい)、車両が先行車と共に停車している状態で先行車が発進したことを報せる情報、車両(自車)が先行車に急速に接近していることを示す情報(衝突警報でもよい)、車線変更しようとしている際に後方又は側方に他の車両が走行していることを報せる情報等が挙げられる。
【0068】
また、乗員に伝達される情報には、乗員の眠気、乗員のわき見、車両の運転操作にふさわしくない動作等が発生していると判定(又は検出)を報せる情報(注意喚起のための情報)等の複数の情報が挙げられる。さらに、乗員に伝達される情報は、これらに限らず、情報検出装置により検出される各種の情報を適用できる。
【0069】
一方、コラム装置12では、操舵モータ34によりステアリング20に乗員が感じる周期的な回転の変化(回転振動)を付与できる。また、コラム装置12では、第1作動モータ54Aと第2作動モータ54Bとによりステアリング20に乗員が感じる周期的な前後方向への位置の変動(前後振動)及び周期的な上下方向位置の変動(上下振動)を付与できる。このため、コラム装置12では、互いに異なる複数の振動パターンをステアリング20に付与できる。
【0070】
ステアリングECU70には、ステアリング20に付与する複数の振動パターンが設定されており、ステアリングECU70には、基本とする複数の振動パターンが設定されていると共に、基本パターンを組合せた複数の振動パターンが設定されている。また、ステアリングECU70には、振動パターンごとに乗員に伝達する情報が設定されており、ステアリングECU70では、乗員に伝達する情報に応じた振動パターンをステアリング20に付与することで、当該情報が乗員に伝達されるようにしている。
【0071】
図5(A)~図5(C)には、ステアリング20における振動パターンの概略が線図にて示されている。なお、図5(A)~図5(C)では、横軸が時間とされ、縦軸は振動方向の変位量(振幅)とされている。
【0072】
図5(A)には、ステアリング20の回転方向における振動パターン及び第1パターンとしてのパターンA(回転振動のパターン)を示しており、縦軸がステアリング20に付与される回転トルクとしている。
【0073】
ステアリングECU70では、ステアリング20の操舵角θに応じて操舵モータ34によりステアリング20に付与する回転トルクを設定しており(以下、設定トルクという)、設定トルクは、操舵角θ、角速度ωや車速等に応じて設定されている。
【0074】
図5(A)に示すように、ステアリングECU70は、周期的に変化する回転トルク(振動トルク)を設定トルクに加算することで、設定トルクを中心に回転トルクを周期的に変位させることでステアリング20に回転振動を付与する。この際、ステアリングECU70は、パターンAにおいてトルク変位の平均値がゼロとなるように(整数周期の)回転トルクの変位(振動トルク)を設定する。また、ステアリング20の回転には、操舵角θの変化が転舵輪の転舵角に反映されない遊びが設定されており、ステアリングECU70は、回転トルクの変位(振幅)による操舵角θの変化がステアリング20の遊びの範囲内となるように回転トルクの変位(振幅)が設定されている。
【0075】
図5(B)には、ステアリング20の前後方向における振動パターン及び第2パターンとしてのパターンB(前後振動のパターン)を示し、図5(C)には、ステアリング20の上下方向における振動パターン及び第3パターンとしてのパターンC(上下振動のパターン)を示している。なお、図5(B)及び図5(C)において、第1作動モータ54A側及び第2作動モータ54B側の線図は、破線及び括弧書きにおいて第1作動モータ54A及び第2作動モータ54Bの回転方向が示され、実線にてナット62A、62Bの前後方向位置(送りネジ58A、58Bの軸線方向に対する位置)が示されている。また、図5(B)におけるステアリング20の線図は、縦軸がステアリング20の前後方向位置とされ、図5(C)におけるステアリング20の線図は、縦軸がステアリング20の上下方向位置とされている。
【0076】
図5(B)及び図5(C)に示すように、コラム装置12では、チルテレモジュール28の第1作動モータ54A及び第2作動モータ54Bが作動されることで、ステアリング20が前後方向及び上下方向に移動される。
【0077】
図5(B)に示すように、ステアリングECU70は、第1作動モータ54A及び第2作動モータ54Bを同位相かつ同回転数(同回転周期)で作動させることで、送りネジ58A、58Bに設けているナット62A、62Bが同様に(同期して)後方移動と前方移動とを繰り返す(前後方向の変位を繰返す)。これにより、コラム装置12では、ステアリングシャフト30が前側移動と後側移動とを繰返し、ステアリング20が前後方向に振動される。
【0078】
また、図5(C)に示すように、ステアリングECU70は、第1作動モータ54A及び第2作動モータ54Bを互いに逆位相で同回転数となるように作動させることで、送りネジ58Aのナット62Aと、送りネジ58Bに設けているナット62Bとが互いに逆方向とされて後方移動と前方移動とを繰り返す。これにより、コラム装置12では、支柱48の軸心を中心にステアリングシャフト30の回転軸線Cの上方傾動と下方傾動とが繰返されて、ステアリング20が上下に振動される(上下に変位が繰返される)。
【0079】
ステアリングECU70には、パターンA、パターンB及びパターンCと共に、パターンA~Cの少なくとも2つを組合せた複数の振動パターンが設定されている。なお、パターンA~Cは、各々所定時間連続するように実行されてもよく、所定のインターバル(時間間隔)で複数回実行されてもよい。
【0080】
ステアリングECU70では、乗員に伝達する情報ごとにステアリング20に付与する振動パターンが設定されており、ステアリングECU70では、乗員に伝達する情報が入力されることで、入力された情報に応じた振動パターンが選択(設定)される。また、ステアリングECU70では、選択された振動パターンが得られるように、操舵モータ34、第1作動モータ54A及び第2作動モータ54Bを作動させる。
【0081】
図6には、ステアリングECU70がステアリング20を介して乗員に情報を伝達(報知)するための情報の伝達(報知)処理の概略が流れ図にて示されている。
【0082】
図6に示すフローチャートは、車両走行が可能となると開始されて、車両走行が終了する(例えば、乗員が降車するためのステアリング20から手を離す)まで所定時間間隔で繰返し実行される。なお、コラム装置12では、予め操作スイッチ72が操作されてステアリング20の前後方向の位置及び上下方向の位置が設定され、チルテレモジュール28においてナット62A、62Bがステアリング20の前後方向位置及び上下方向位置に応じた設定位置に配置される。
【0083】
ステアリングECU70は、最初のステップ100において、情報検出装置等から乗員に伝達する情報が入力されたか否かを確認し、入力されていなければ、ステップ100において否定判定して、一旦処理を終了する。
【0084】
ここで、情報検出装置が例えば、車両の走行車線の逸脱、停車していた先行車の発進、車両(自車)の先行車への接近や後方又は側方への他の車両の接近等の乗員に伝達する情報が検出されると、情報検出装置がステアリングECU70に検出した情報(乗員に伝達する情報)を出力する。ステアリングECU70は、乗員に伝達する情報が入力されると、ステアリング100において肯定判定してステップ102に移行し、ステップ102において、入力された情報に対応するステアリング20の振動パターンを設定する。
【0085】
この後、ステップ104においてステアリングECU70は、設定した振動パターンに応じ、操舵モータ34、第1作動モータ54A及び第2作動モータ54Bを作動させる。このため、コラム装置12では、乗員に伝達する情報に応じてステアリング20に回転振動、前後振動及び上下振動の何れか少なくとも一つの振動が付与される。これにより、乗員がステアリング20の振動を感じることで、感じた振動に応じた情報を認識できる。
【0086】
このステアリング20の振動パターンには、ステアリング20が回転振動されるパターンA、ステアリング20が前後振動されるパターンB、及びステアリング20が上下振動されるパターンCが含まれる。
【0087】
また、ステアリング20の振動パターンには、パターンA~パターンCの少なくとも2つを組み合わせた複数の振動パターンを含むことができる。
【0088】
図7(A)~図7(C)には、パターンAとパターンBとを組合せた振動パターンが示され、図8(A)~図8(C)には、パターンAとパターンCとを組み合わせた振動パターンが示されている。
【0089】
図7(A)に示すように、パターンAとパターンBとの組合せた振動パターンとしては、パターンAを先に開始し、パターンAが終了してからパターンBを開始させるパターンDを適用できる。このパターンDにおいては、パターンAに連続してパターンBを開始してもよく、パターンAが終了してから所定時間(インターバル)経過してからパターンBを開始してもよい(図示省略)。
【0090】
また、図7(B)に示すように、パターンAとパターンBとの組合せた振動パターンとしては、パターンAを先に開始し、パターンAの実行途中においてパターンBを開始させることで、パターンAとパターンBとを一部において重畳させたパターンEを適用できる。パターンD及びパターンEにおいては、パターンBを開始してからパターンAを開始するようにしてもよい。
【0091】
さらに、図7(C)に示すように、パターンAとパターンBとの組合せた振動パターンとしては、パターンAとパターンBを同時に開始させることで、パターンAとパターンBとを重畳させたパターンFを適用できる。
【0092】
また、図8(A)に示すように、パターンAとパターンCとの組合せた振動パターンとしては、パターンAを先に開始し、パターンAが終了してからパターンCを開始させるパターンGを適用できる。このパターンGにおいては、パターンAに連続してパターンCを開始してもよく、パターンAが終了してから所定時間(インターバル)経過してからパターンCを開始してもよい(図示省略)。
【0093】
また、図8(B)に示すように、パターンAとパターンCとの組合せた振動パターンとしては、パターンAを先に開始し、パターンAの実行途中においてパターンCを開始させることで、パターンAとパターンCとを一部において重畳させたパターンHを適用できる。パターンG及びパターンHにおいては、パターンCを開始してからパターンAを開始するようにしてもよい。
【0094】
さらに、図8(C)に示すように、パターンAとパターンCとの組合せた振動パターンとしては、パターンAとパターンCを同時に開始させることで、パターンAとパターンCとを重畳させたパターンIを適用できる。
【0095】
振動パターンとしては、パターンD及びパターンGと同様にすることで、パターンBとパターンCとを組み合わせたパターンを適用できる(図示省略)。この場合、パターンB(パターンCでもよい)の振動が生成されるように第1作動モータ54A及び第2作動モータ54Bを作動させ、パターンBを終了してからパターンC(パターンBでもよい)の振動が生成されるように第1作動モータ54A及び第2作動モータ54Bの作動を開始されればよい。
【0096】
また、図9に示すように、振動パターンとしては、パターンBとパターンCを重畳させたパターンJを適用できる。なお、図9では、第1作動モータ54Aの回転方向、第2作動モータ54Bの回転方向、第1作動モータ54Aにより移動されるナット62Aの位置、第2作動モータ54Bにより移動されるナット62Bの位置、ステアリング20の上下方向の位置(位置の変位)、及びステアリング20の前後方向の位置(位置の変位)を示している。また、図9では、パターンBとパターンCとを重畳(開始位置を一致)させているが、振動パターンとしては、パターンBとパターンCの一部が重畳するパターンを適用できる。
【0097】
コラム装置12のチルテレモジュール28では、第1作動モータ54A及び第2作動モータ54Bの一方を停止させた状態で第1作動モータ54A及び第2作動モータ54Bの他方が作動されることで、ステアリング20の回転軸線Cを傾動させることができて、ステアリング20を上下移動させることができる。すなわち、第1作動モータ54A(又は第2作動モータ54B)が停止されて第2作動モータ54B(又は第1作動モータ54A)が作動されることで、ナット62A(又はナット62B)に対してナット62Bが相対的に往復移動され、ステアリング20の回転軸線Cが傾動されてステアリング20が上下移動される。
【0098】
ここから、図9に示すように、第1作動モータ54A(第2作動モータ54Bでもよい)を第2作動モータ54B(第1作動モータ54Aでもよい)の周期の整数倍の周期で作動させる。これにより、ステアリング20を把持している乗員が、ステアリング20の前後振動と上下振動を感じる振動をステアリング20に付与できる。例えば、作動モータ54Bの正転/逆転を周期τで作動させながら作動モータ54Aの正転/逆転を周期3τ(周期τの3倍の周期)で作動させた場合、ステアリング20を把持している乗員は、ステアリング20が周期τで前後移動(前後振動)しながら周期2τ(=3τ-τ)の周期で上下移動(上下振動)していると感じる振動をステアリング20に付与できる。
【0099】
さらに、コラム装置12では、振動パターンとしてパターンA、パターンB、及びパターンCを組合せたパターンを適用でき、パターンAとパターンJとを組み合わせたパターンも適用できる。
【0100】
このように、コラム装置12(ステアリング装置10)では、操舵モータ34が作動されることで、ステアリング20を回転方向に振動させるパターンAのステアリング20に付与できる。また、コラム装置12では、第1作動モータ54A及び第2作動モータ54Bが作動されることで、ステアリング20を前後方向に振動させるパターンBの振動、及びステアリング20を上下方向に振動させるパターンCの振動をステアリング20に付与できる。
【0101】
また、コラム装置12では、パターンB及びパターンCの少なくとも一方と、パターンAの振動とをステアリング20に付与できるので、ステアリング20の振動を介して乗員に伝達(報知)する情報の種類を増やすことができる。
【0102】
また、コラム装置12では、パターンAの振動を開始させてからパターンB又はパターンCの振動を開始させる。この際、コラム装置12では、一方の振動パターンの実行が終了してから他方の振動パターンが実行してもよく、二つの振動パターンの一部が重畳(重なる)ように実行することもできるので、ステアリング20の振動を介して乗員に伝達(報知)する情報の種類をより増やすことができる。
【0103】
さらに、コラム装置12では、少なくとも2との振動パターンを重畳させることができるので、ステアリング20の振動を介して乗員に伝達(報知)する情報の種類をより一層増やすことができる。
【0104】
一方、ステアリング20を把持している乗員は、ステアリング20に付与される振動の振幅が変化することで、一定振幅の振動とは異なる振動と感じる。ここから、振動パターンとしては、振幅が変化するパターンを適用できる。
【0105】
図10には、パターンAの振動において一部の振幅を小さくした振動パターン(パターンK)が示されている。このパターンKは、一部の周期において振幅が略1/2に変化されている。ステアリング20がパターンKで回転振動されることで、乗員はパターンAとは異なる振動と感じる。
【0106】
コラム装置12では、パターンKの振動が用いられることで、ステアリング20の振動を介して乗員に伝達(報知)する情報の種類をより一層増やすことができる。また、パターンKの振動は、パターンBやパターンCと組み合わせることができる。また、振幅の変化は、パターンAに限らずパターンBやパターンCにも適用でき、これにより、ステアリング20の振動を介して乗員に伝達(報知)する情報の種類をより効果的に増やすことができる。
【0107】
また、コラム装置12では、ステアリング20に付与する振動パターンにおいて、乗員に伝達する情報の緊急度合が重要度合に応じ、例えば、緊急度合が高いほど、また、重要度合が高いほどステアリング20が長い時間振動するようにしてもよい。これにより、重要と判断される情報を乗員に確実に伝達できる。
【0108】
なお、以上説明した本実施形態では、第1作動モータ54A及び第2作動モータ54Bを用い、第1作動モータ54Aと第2作動モータ54Bとを所定の位相及び回転数で作動させることで、ステアリング20に前後振動及び上下振動を付与した。しかしながら、変位駆動手段は、第1駆動手段及び第2駆動手段の動作を変えることで構成するものに限らず、ステアリング体を回転軸線に沿って移動するための第1駆動手段と、ステアリング体の回転軸線を上下方向に傾動するための第2駆動手段とを別々に設けるようにしてもよい。
【0109】
また、操舵装置は、変位駆動手段が第1駆動手段又は第2駆動手段を備え、ステアリング体を回転軸線に沿って移動させるか、又はステアリング体の回転軸線を上下方向に傾動させる構成であってもよい。
【0110】
また、本実施形態では、ステアリング20を例に説明した。しかしながら、ステアリング体は、略矩形状に限らず、円形状(円環状)であってもよく、D型状(フラットボトム形状)等であってもよい。
【0111】
さらに、本実施形態では、ステアリング20の回転範囲を右回転及び左回転の各々において半回転以内とした。しかしながら、ステアリング体は、右回転及び左回転の各々に、1回転や1回転半等の半回転以上に回転されて操舵されてもよい。
【符号の説明】
【0112】
12・・・コラム装置(操舵装置)、20・・・ステアリング(ステアリング体)、26・・・コラムモジュール、28・・・チルテレモジュール、30・・・ステアリングシャフト、34・・・操舵モータ(回転駆動手段)、54A・・・第1作動モータ(第1駆動手段、第2駆動手段、変位駆動手段)、54B・・・第2作動モータ(第1駆動手段、第2駆動手段、変位駆動手段)、70・・・ステアリングECU(作動手段)。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10