(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168141
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】レール、移動間仕切装置、間仕切構造、およびレール施工方法
(51)【国際特許分類】
E05D 15/06 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
E05D15/06 125C
E05D15/06 125B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079806
(22)【出願日】2022-05-13
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り 令和3年11月7日にコマニー株式会社 東京支社 東京ショールームにて展示 令和3年12月22日にコマニー株式会社の本社および各営業所にてチラシ頒布 令和4年1月31日にウェブサイトにて公開 令和4年2月1日にウェブサイトにて公開 令和4年5月1日に株式会社アーキ・ジャパンにて施工
(71)【出願人】
【識別番号】000105693
【氏名又は名称】コマニー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000844
【氏名又は名称】弁理士法人クレイア特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】辻本 浩
(72)【発明者】
【氏名】浪川 由基
【テーマコード(参考)】
2E034
【Fターム(参考)】
2E034CA13
2E034DA17
(57)【要約】
【課題】間仕切り用のレールを天井の下面に設置した場合において、強度を保ちながら、意匠性に優れたレールを提供すること。
【解決手段】本発明の天井200の下面に設けられるレール100は、レール100を天井200に固定するための固定部111と、固定部111の両端部からそれぞれ垂設される側壁112と、側壁112の下部に設けられた見切部113と、を備え、側壁112に鏡面部112aが設けられている。鏡面部112aは、側壁112の少なくとも上端に設けられていてもよい。また、見切部113は、側壁112より外側に突設されていてもよい。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天井の下面に設けられる間仕切り用のレールであって、
前記レールを前記天井に固定するための固定部と、
前記固定部の両端部からそれぞれ垂設される側壁と、
前記側壁の下部に設けられた見切部と、を備え、
前記側壁に鏡面部が設けられている、レール。
【請求項2】
前記鏡面部は、前記側壁の少なくとも上端に設けられた、請求項1に記載のレール。
【請求項3】
前記見切部が、前記側壁より外側に突設されている、請求項1または2に記載のレール。
【請求項4】
前記見切部は、前記レール同士を連結可能にする連結部を含む、請求項1または2に記載のレール。
【請求項5】
前記天井を貫通するブロックをさらに備え、
前記ブロックは、建物の構造物に支持され前記固定部に固定される、請求項1または2に記載のレール。
【請求項6】
天井の下面に設けられる移動間仕切り用のレールであって、
断面がハット状のレール本体と、建物の構造物に支持され前記レール本体を固定するブロックと、を有し、
前記レール本体は、
前記天井の下面で前記ブロックに固定される固定部と、
前記固定部の両端部からそれぞれ垂設される側壁と、
前記側壁の下部に設けられた見切部と、を備え、
前記側壁の外面に、前記天井の下面を反射し得る鏡面部が設けられている、レール。
【請求項7】
請求項1に記載のレールと、
上端部を有する移動壁と、を含み、
前記レールは、前記側壁間に形成されたレール溝を備え、
前記移動壁は、前記レール溝に前記上端部が挿入され、前記レールに沿って移動可能に設けられた、移動間仕切装置。
【請求項8】
天井パネルと、
前記天井パネルの下面に設けられる請求項1に記載のレールと、を有する間仕切構造であって、
前記側壁の外面に設けられた前記鏡面部に前記天井パネルが映るように構成されている、間仕切構造。
【請求項9】
請求項4に記載のレールを長手方向に複数配置し、隣接するレールの端部同士を連結する連結工程、を含むレール施工方法であって、
前記連結工程は、前記隣接するレールの前記連結部間に配置した連結部材により前記連結部を連結する、レール施工方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、室内空間を間仕切るため室内の天井の下面に設けられる間仕切り用のレール、そのレールを用いた間仕切装置、間仕切構造およびレール施工方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、間仕切り用レールはアルミニウムなど金属の長尺部材から構成され、天井にレールの一部または全部を埋め込むようにして取り付けられている。レールにはレールの下面に形成された下方が開放するレール溝が設けられ、間仕切が固定可能に構成される。間仕切が移動可能な移動間仕切の場合、移動間仕切には上端に取り付けたランナーが配設され、レールに沿って移動間仕切りが走行するように構成されている。
【0003】
例えば、特許文献1(特開2002-38807号公報)には、天井見切材を、楽な姿勢で、レールの下端部に取り付けることができ、作業性及び作業効率の向上を図ることができるとともに、美麗な外観を呈し、しかも構造が簡単で、容易に着脱し得るようにした移動間仕切装置における天井見切材の取付構造が開示されている。
【0004】
文献1に記載の移動間仕切装置における天井見切材の取付構造は、天井見切材に、上方に向かって開口して、レールの下端に形成したフランジに下方より嵌合する嵌合部と、フランジの上面に係合する係止手段とを設け、係止手段と嵌合部とにより、フランジを上下から挟むことにより、天井見切材が、レールに取り付けられている。
【0005】
特許文献2(特開2019-7299号公報)には、ハンガーレールの小型化を実現するランナおよびこれを備える移動間仕切り装置が開示されている。
【0006】
特許文献2に記載の移動間仕切り装置は、ハンガーレールの内壁に沿って移動可能なランナを有し、パネルを支持する支軸に軸支され、ハンガーレールの内壁の上下からそれぞれ突出する上方リブおよび下方リブ上に個別に当接する、上下に離間した上方ローラおよび下方ローラを備え、下方ローラの上部が、上方リブと離間すると共に、該上方リブと上下方向において重複する位置に設けられている。
【0007】
また、特許文献3(特開2018-71277号公報)には、別体の吊戸装置を用いることなく吊戸を設置することができる間仕切パネル装置が提案されている。
【0008】
特許文献3に記載の間仕切パネル装置は、天井側に設けられ左右に延びる上部パネル支持体と床面に設けられ左右に延びる下部パネル支持体との間に亘って配設された前後のパネル体が左右方向に連設されてなる間仕切パネル装置であって、天井側に前後のパネル体の互いに対向する対向面間において吊戸を吊支部材により吊支可能なレールを備え、吊戸は、終端に配設される前後のパネル体の側端に形成される開口部から進退可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002-38807号公報
【特許文献2】特開2019-7299号公報
【特許文献3】特開2018-71277号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
間仕切りは、空間を仕切る壁が間仕切り用レールと固定可能に構成されるので、住居またはオフィスにおいてその間仕切り位置を簡便に変更することができる。
従来、移動間仕切りを施工するには、特許文献1に記載の可動間仕切り用レールのように、レールの大部分は天井パネルの表面より上方に位置し、天井内部に内蔵されるように施工されていた。このような構成であれば、天井パネルの表面より下にレールが突設することがないので、部屋全体の美観を保ち、圧迫感を与えることがない。
【0011】
しかしながら、近年では、一度オフィス等に設置した移動間仕切りとレール一式をオフィス内の別の場所に移設させたいという要求が増えてきた。また、オフィスの施工期間を極力短くし、また施工コストを押さえたいというニーズがある。
しかし、特許文献1のレールを天井内部に内蔵する移動間仕切装置の施工方法では、天井解体、下地補強、レール取付、天井復旧、パネル吊り込みという工程があり、天井パネルの大部分を除去する必要があるため、大がかりな補強工事等が必要となる。さらに、移設費または導入費が高額になり、施工期間も長期に亘り、また退去時の原状回復工事が必要になるという欠点がある。
【0012】
一方、特許文献2および3に記載のように、レールを天井パネルの下面に配設し、施工性を改善した施工方法が提案されている。この場合、レールを天井パネルの下面に配設に設けるため、意匠性に問題が生じ、レールを小型化し美観を保つ施工方法が提案されている。
【0013】
特許文献2および3では、可動間仕切りのレールを小型化するなど工夫をしているが、部屋の美観を損ねてしまい、依然として意匠性に問題がある。さらに、レール小型化に伴い、レール強度が十分ではなく、レールの接続に溶接をする必要がある。その場合、オフィスの現場で溶接を行うため施工性が悪くなり、また、溶接部分が露出し美観をさらに損ねるおそれがある。
【0014】
本発明は上記の欠点を解消するためになされたもので、その目的は、間仕切り用のレールを天井の下面に設置した場合において、強度を保ちながら、意匠性に優れたレールを提供することにある。
本発明の他の目的は、レール同士が容易に接続でき、施工性に優れたレールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
(1)
一局面に従うレールは、天井の下面に設けられる間仕切り用のレールであって、レールを天井に固定するための固定部と、固定部の両端部からそれぞれ垂設される側壁と、側壁の下部に設けられた見切部と、を備え、側壁に鏡面部が設けられていてもよい。
【0016】
この場合、レールの側壁に鏡面部が設けられているので、室内からレール付近を見上げたときに、鏡面部が天井表面を映し出すため、鏡面部と天井とが連続しているように見える。これにより、部屋全体に一体感を与え部屋の美観を保つことができる。
また、レールの側壁下部には見切部が設けられているので、天井の虚像が映し出されるレールの側壁によって、見切部は天井から分離しているように見える。その結果、見切部が空中に浮いているように見えるため、室内にいる人に特別な浮遊感を与える。したがって、平坦に広がる天井面においてレール全体が大きく突出して見える従来のレールのように、居住者に圧迫感、突出感を与えることがない。
【0017】
(2)
第2の発明に係るレールは、一局面に従うレールにおいて、鏡面部は、側壁の少なくとも上端に設けられていてもよい。
【0018】
これにより、鏡面部は天井に近接して設置されるため、天井面の模様、柄、質感等は鏡面部に明瞭かつ連続的に映し出される。その結果、鏡面部が天井の一部であるかのように錯覚させ、天井とレールとが連続しているように見せることができる。
【0019】
(3)
第3の発明に係るレールは、一局面または第2の発明に係るレールにおいて、見切部が、側壁より外側に突設されていてもよい。
【0020】
室内からレール付近を見上げたとき、側壁の鏡面部に天井下面が写されるため、見切部は天井の下方位置で空中に浮いているように見える。これにより、従来のレールのように、平坦な天井面から突出してレール全体が見えるということがなく、レールの存在感が小さくなりレールによる圧迫感、突出感をさらに抑えることができる。
また、側壁から突設された見切部が設けられることにより、見切部を設けない小型のレールと比べて、レールの強度を十分に確保することができる。
さらに、側壁から突設された見切部を連結のための部材として利用し、連結部材などにより隣接するレールの見切部同士を連結することができる。したがって、レール同士を溶接により連結させる必要がなく、レールの施工性が向上する。
【0021】
(4)
第4の発明に係るレールは、一局面から第3のいずれかの発明に係るレールにおいて、見切部は、レール同士を連結可能にする連結部を含んでもよい。
【0022】
これにより、隣接するレール同士を連結する時にレールを溶接する必要がなく、また溶接部分の後処理(塗装等)も不要となるため、レールの施工性が向上する。したがって、見切部に備えられた連結部においてレール同士を容易に連結することが可能になる。
【0023】
(5)
第5の発明に係るレールは、一局面から第4のいずれかの発明に係るレールにおいて、天井を貫通するブロックをさらに備え、ブロックは、建物の構造物に支持され固定部に固定されていてもよい。
【0024】
従来のように天井に埋め込まれたレールにおいては、レール全体が天井面を貫通しているため、天井内で建物の構造物と適宜接合することで強度が確保されていた。本発明に係るレールは、天井面にブロックを適宜貫通させることで強度を確保することができるので、レール全体を天井面に貫通させる必要がない。したがって、施工性に優れたレールとすることができる。
特に、移動用間仕切のレールの場合、レールは移動壁が走行するときに水平方向上下方向に大きな力を受ける場合がある。この場合、レールの本体がブロックにより建物の構造物に支持され、固定部により固定されているため、レールの本体を天井に通して固定することがなく、施工性に優れていると共にレール保持強度が向上する。
【0025】
(6)
他の局面に従うレールは、天井の下面に設けられる移動間仕切り用のレールであって、断面がハット状のレール本体と、建物の構造物に支持されレール本体を固定するブロックと、を有し、レール本体は、天井の下面でブロックに固定される固定部と、固定部の両端部からそれぞれ垂設される側壁と、側壁の下部に設けられた見切部と、を備え、側壁の外面に、天井の下面を反射し得る鏡面部が設けられていてもよい。
【0026】
これにより、室内からレール付近を見上げたときに、鏡面部が映し出す天井の虚像によって、鏡面部と天井とが連続しているように見え、部屋全体に一体感を与え部屋の美観を保つことができる。
また、レールの側壁下部に見切部が備えられることにより、側壁には天井の虚像が映し出されるため、天井から見切部が分離しているように見え、その結果見切部に浮遊感を与え、部屋の人に圧迫感、突出感を与えることがない。
さらに、建物の構造物にブロックが固定され、ブロックにレール本体が支持されるので、レールの施工性に優れていると共に取り付け強度が高く、また天井を大きく切断することがないので施工費用を下げ、施工期間を短縮することができる。
さらに、移動間仕切り用のレールを天井の下面に設置した場合において、ハット状のレール本体と、レール本体を固定するブロックによって強度が保たれ、固定部の両端部からそれぞれ垂設される側壁の外面に、天井の下面を反射し得る鏡面部が設けられることにより、意匠性に優れたレールを提供することができる。
【0027】
(7)
他の局面に従う移動間仕切装置は、一局面から第6のいずれかに従うレールと、上端部を有する移動壁と、を含み、レールは、側壁間に形成されたレール溝を備え、移動壁は、レール溝に上端部が挿入され、レールに沿って移動可能に設けられていてもよい。
【0028】
これにより、天井下面に設置された移動間仕切装置において、移動壁がレールに沿って円滑に移動可能となる。また、鏡面部が天井表面を映し出すため鏡面部と天井が連続しているように見えるので、部屋全体に一体感を与える移動間仕切装置を提供することができる。したがって、意匠性を維持しつつ自由度をもって空間を間仕切ることができる。
【0029】
(8)
他の局面に従う間仕切構造は、天井パネルと、天井パネルの下面に設けられる一局面から第6のいずれかに従うレールと、を有する間仕切構造であって、側壁の外面に設けられた鏡面部に天井パネルが映るように構成されていてもよい。
【0030】
これにより、間仕切り用のレールを天井の下面に設置した場合において、意匠性に優れた間仕切構造を提供することができる。また、鏡面部が天井表面を映し出すため鏡面部と天井が連続しているように見えるので、部屋全体に一体感を与える間仕切構造を提供することができる。
【0031】
(9)
他の局面に従うレール施工方法は、第4の発明に従うレールを長手方向に複数配置し、隣接するレールの端部同士を連結する連結工程、を含むレール施工方法であって、連結工程は、隣接するレールの連結部間に配置した連結部材により連結部を連結することを含んでもよい。
【0032】
これにより、隣接するレールを連結部材により連結できるため、溶接などする必要がなく容易に施工することができ、また安全でもある。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】移動間仕切装置の設置状態の一例を示す斜視図である。
【
図2】
図1の移動間仕切装置をローラの走行方向に垂直に切断した場合の模式的拡大断面図である。
【
図3】本実施の形態に係る移動間仕切装置の天井裏の構造およびレール連結方法を説明するための説明図である。
【
図4】
図2の移動間仕切装置をローラの走行方向に切断した場合の模式的拡大断面図である。
【
図6】他の実施形態のレールの模式的斜視図である。
【
図7】他の実施形態のレールの模式的斜視図である。
【
図8】他の実施形態のレールの模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。以下の説明においては、同一の部品には同一の符号を付してある。それらの名称および機能も同じである。したがって、それらについての詳細な説明は繰り返さない。
【0035】
[本実施の形態]
図1は、本発明の一実施形態に係る移動間仕切装置の設置状態の一例を示す斜視図である。また、
図2は
図1の移動間仕切装置をローラの走行方向に垂直に切断した場合の模式的拡大断面図である。
図3は本実施の形態に係る移動間仕切装置の天井裏の構造およびレール連結方法を説明するための説明図である。
図4は
図1の移動間仕切装置をローラの走行方向に切断した場合の模式的拡大断面図である。
図5は本実施形態のレールの模式的斜視図である。
【0036】
(間仕切構造10)
図1に示すように、間仕切構造10は、天井(天井パネルともいう。)200と、天井の下面に設けられる移動間仕切り用のレール100と、を有する。
間仕切構造10は、建物内の部屋および空間を複数の区画に仕切って分割するために、天井から床面に亘って複数の移動壁400を取り付けてなる構造である。複数の移動壁400は、天井200に固定されたレール100を介して天井200に支持される。この移動壁400により、建物内の部屋および空間が複数の区画に仕切られる。
【0037】
(移動間仕切装置20)
図2に示すように、移動間仕切装置20は、天井200に固定されたレール100と、上端部410を有する移動壁400と、を含む。
レール100は、2つの側壁112で構成され、その間に形成されたレール溝116を有する。レール溝116には、移動壁400の上端部410が挿入され、移動壁400はレール100に沿って移動可能に設けられている。
また、移動壁400の上端部410には、レール100に沿って転動する上ローラ411および下ローラ412が備えられている。上ローラ411および下ローラ412は、レール100の側壁112の間に形成されたレール溝116に形成された突条116aと接触しながら転動する。なお、
図2のレール溝116が示すように、上ローラ411および下ローラ412は、当該突条116aおよび係合部116bと相対的に異なる部分で接触する。上ローラ411および下ローラ412が円滑に回動可能にするためである。
【0038】
(レール100)
本実施形態におけるレール100は、断面が略ハット状のレール本体110と、建物の構造物300に支持されレール本体110を固定するブロック150と、ブロック150を固定する固定片130と、レール100同士を連結する連結部140と、を備える。
レール本体110は、天井200の下面でブロック150に固定される固定部111と、固定部111の両端部からそれぞれ垂設される側壁112と、側壁112の下部に設けられた見切部113と、を有する。
そして、側壁112の外面には、天井200の下面を反射し得る鏡面部112aが設けられている。
【0039】
レール100の長さは特に限定されないが、直線状の場合、例えば2m以上5m以下が好ましい。また、レール100は、延在する長手方向に沿って直線状のものに限定されず、直角状のもの、T字状のもの、また曲線状のものであってもよい。直角状のレール100を組み合わせることにより、移動壁400で部屋の角部を作ることができる。
【0040】
移動壁400を案内するレール本体110は、天井200の下面に設置され、移動壁400の移動範囲のほぼ全域に及ぶ長さで、移動壁400の移動方向へ向けて水平に延設されている。
また、本実施形態のレール100は、
図2に示されるようにレール溝116が設けられる。レール溝116により移動壁400の上端部410に取り付けられた上ローラ411と下ローラ412とを支持する。また、レール100は、移動壁400の上端部410が走行可能な走行経路を形成するものである。上端部410を内部に収容可能なレール溝116が形成される。またレール本体110は、下方が解放された断面ハット形状に形成されている。このレール100が複数連結されて所望の走行経路を成すよう天井200の下面に配設される。このようにして、移動壁400の配設位置、即ち移動壁400によって間仕切られる空間の大きさまたは形状が適宜決定される。
【0041】
本実施形態のレール100の詳細な構成は以下のとおりである。
レール100は、断面が略ハット状のレール本体110と、建物の構造物300に支持されレール本体110を固定するブロック150と、を有する。
レール本体110は、天井200の下面でブロック150に固定される固定部111と、固定部111の両端部からそれぞれ垂設される側壁112と、側壁112の下部に設けられた見切部113と、を備えている。例えば、レール本体110は、アルミニウムなどの金属にて長尺に形成されている。
【0042】
(固定部111)
図2に示すように、固定部111はレール本体110の上部に形成され、一対の係止部111aと、両係止部の間に形成された固定溝と、を有する。固定溝は第1の溝111bと、第1の溝111bの下側に設けられた第2の溝111cと、を有し、第1の溝111bの幅は第2の溝111cの幅よりも小さくなっており、第2の溝111c内に挿入した固定片130を一対の係止部111aの下面側で抜け留めができるように構成されている。
【0043】
固定部111の両端部からそれぞれ垂設される側壁112は、第1の側壁と、第2の側壁とからなり、第1の側壁と第2の側壁との間に下方に開口するレール溝116が形成されている。第1の側壁内面に内側へ突出する突条116aが設けられている。また、第1および第2の側壁112の下端部に内側(対向する側)へ突出する係合部116bが形成されている。これらの係合部116bおよび突条116aはレール本体110の長手方向に亘って設けられている。
これらの係合部116bおよび突条116aは、それぞれ上ローラ411および下ローラ412と断面左右反対の片側のみ、すなわち相対的に異なる位置で係合し、移動壁400の重量を分散し、移動壁400を走行可能に支えている。
【0044】
図3および
図4に示すように、レール本体110は、固定部111において、天井200(天井パネルともいう。)を貫通するブロック150、固定片130およびボルト131により構造物300に固定される。天井200には、間隔をおいて複数のブロック150がレール本体110に沿って配置されている。
固定片130は、レール本体110の固定部111に形成された固定溝に差し込まれ、ブロック150に形成された通孔を通したボルト131が固定片130に設けられたねじ孔に螺合する。これにより、レール本体110をブロック150に固定するとともに、レール本体110は、天井200を介して構造物300に固定することができる。天井200には、間隔をおいて複数のブロック150がレール100に沿って配置されているので、ブロック150は、レール100に対して一定の間隔で設けられる。したがって、天井200には、所定のブロック150が埋め込めるよう、適宜間隔で孔を設けるだけで、レール本体110を設置することができる。
【0045】
ブロック150の大きさとしては、高さは、天井200の厚みによって適宜設定されるが、例えば50mm以上100mm以下が好ましい。ブロック150の横幅は、レール本体110の横幅よりも30mm程度短いほうが好ましい。このようなブロック150を用いて構造物300と固定部111とをボルト131で締結することにより、建物の構造物300に対してレール本体110を強固に固定することができる。
また、ブロック150は、レール本体110の長さ方向に対して、150mm以上1500mm以下の間隔で設けられることが好ましく、400mm以上1000mm以下の間隔で設けられることがより好ましい。これにより、レール本体100は構造物300に適切な強度で固定されつつ施工性を高めることができる。特に移動壁400を格納する部分については、ブロック150を設けるピッチが150mm以上300mm以下とすることがより好ましい。これにより十分な強度を確保することができる。
なお、
図3および
図4では便宜上、ブロック150と固定部111とが同じ位置にある場合を示したが、ブロック150と固定部111とは同じ位置にある必要はない。ブロック150は構造物300とレール100とが固定できるよう、レール100に沿って適宜配置されておればよく、また、固定部111は各レール100の接続部分に設けられておればよい。
【0046】
(側壁112)
レール本体110の側壁112は、固定部111の両端部から垂設される。側壁112の外面には鏡面部112aが設けられるため、鏡面部112aは天井200の模様等を反射し、側壁112に映し出すことができる。側壁112が天井200の模様を映し出すことにより、天井200と側壁112において連続性が失われず、美観を高めることができる。
鏡面部112aは、鏡面を有する樹脂製フィルム、金属テープなどからなるシールを側壁112の外面に貼り付けることによって形成してもよく、鏡面を有するプレートを側壁112に固着または係止することによって形成してもよい。また、レール100の側壁112を研磨し鏡面を作ることによって形成してもよく、アルミ等の金属が蒸着されたガラス製の鏡を使用してもよい。
【0047】
鏡面部112aは、側壁112の少なくとも上端に設けられていることが好ましい。鏡面部112aが天井200に近接して設置されることにより、天井面の模様・柄・質感等は鏡面部112aに明瞭かつ連続的に映し出される。したがって、鏡面部112aが天井の一部であるかのように錯覚させ、天井200が連続してレール100が宙に浮いているように見せることができる。鏡面部112aに映し出される天井200は、天井を見る者の位置に応じた虚像がそれぞれ作られるため、単に天井200と同じ図柄の場合と比較して、実際にレール100が宙に浮いているように見せることができる。
側壁112の外面にシールを貼り付けたことによって鏡面部112aを形成する場合、側壁112のみにシールを貼り付けてもよく、側壁112から固定部111の上部にまで鏡面シールを巻き込んで貼り付けてもよい。鏡面シールを固定部111の上部に巻き込むことにより、天井200と側壁112との間に隙間なく鏡面を設けることができる。
鏡面部112aは、室内の光を反射することにより天井200の面の虚像が形成可能なものであればよい。鏡面部112aの反射率は、90%以上が好ましく95%以上がより好ましい。また、112aは無色で波長依存性がないことが好ましいが、有色のものであってもよい。
【0048】
鏡面部112aが設けられる側壁112は、天井200の面に対して垂直に設けられることが好ましい。これにより、鏡面部112aに天井200の面を歪むことなく映し出すことが可能となるため、天井200が連続しているように見える。
また、鏡面部112aは天井200の面と直接接するように設けられることが好ましい。これにより、天井200が連続しているように見えるようになる。
側壁112の上下方向の長さとしては30mm以上300mm以下が好ましく、50mm以上100mm以下がより好ましく、60mm以上70mm以下がさらに好ましい。また、鏡面部112aの上端は側壁112の上端にある(天井200と近接させる)ことが好ましく、一方で、鏡面部112aの下端部は側壁112の下端部にあってもよいし、側壁112の下端部から5mm程度上部にあってもよい。側壁112の下端部は、見切部113により死角になるためである。
なお、
図6に示すように、側壁112の中央部等に、天井200と平行に走る溝が1本または複数本設けられていてもよく、溝で上下に分断された側壁112の天井側のみを鏡面としてもよい。
【0049】
(見切部113)
図2および
図5に示すように、本実施の形態においては、側壁112の下部に、天井200と略平行方向に外側に突設する見切部113が断面左右対称に設けられている。2つの見切部113は、後述するように第1連結部140aとして作用し、複数のレール100を接続可能とする。
なお、見切部113の断面形状は、
図6~
図8に示すように、曲面により形成された半円形でもよいし、略正方形または略台形等であってもよい。
見切部113が
図2および
図5のように略長方形である場合、その横幅(側壁112からの水平方向への突出幅)は5mm以上30mm以下が好ましく、10mm以上23mm以下がより好ましい。また、その縦幅(レール100の底面からの高さ)は5mm以上40mm以下が好ましく、10mm以上30mm以下がより好ましい。これにより、見る者に対して効果的に浮遊感を与えることができ、またレール100の強度および接続性を向上することができる。
【0050】
天井200の模様等を映し出している側壁112の直下に見切部113が設けられていることにより、見切部113が天井200の下面から離隔し浮いているように見せることができる。見切部113の素材および色味は特に限定されないが、強度を確保する観点でレール本体110と一体に鉄またはアルミニウム等で形成されていることが好ましい。また、色味は黒・茶・グレー・メタリックカラーなど、適用される室内環境、天井デザイン、照明等に応じて適宜選択することができる。
見切部113が天井200の面から離れて空間中に浮遊しているように見せるためには、レール100が常に人の目線よりも上にある必要がある。そのため、レール100は床から2300mm以上の高さに設置されることが好ましい。
【0051】
(連結部140)
複数のレール100は連結部140によって連結することができる。本実施の形態においては、見切部113に設けられた第1連結部140aと、レール溝116の上端部に設けられた第2連結部140bとで連結可能とする。
本実施の形態においては、断面両側で対称に設けられた2つの見切部113に第1連結部140aが設けられている。
図2に示すように、第1連結部140aは、見切部113の一部によって構成され、側壁112の下端部から外側へ延設された第1リブ113cと、第1リブ113cと上下に間隔をおいて側壁112の下部から外側へ延設された第2リブ113aと、第1リブ113cおよび第2リブ113aの外側端部を連結する連結片113dと、見切部113内に設けられた一対の係止片113bと、から構成されている。第2リブ113aと係止片113bとの間に板状の連結部材141を配置し、第2リブ113aに形成した通孔に通したねじ142を連結部材141に螺入することで、隣接するレール100は連結されるようになっている。
【0052】
そして、本実施形態の第2連結部140bは、レール溝116の上端部、すなわち固定部111の下部に設けることもできる。
第2連結部140bは、一対のレール100の固定部111の下面側で抜け留めができるように構成されている。連結部材145には、ねじ孔が設けられており、
図4に示すように、固定部111の上または下からねじ146が差し込まれ、ねじ孔と螺合することにより連結部材145を介してレール100同士が固定される。
【0053】
このように、レール100の下部の両側に第1連結部140aが設けられ、さらにレール100の上部に第2連結部140bが設けられており、断面三角形を構成する3箇所で隣接するレール100の端部同士が連結固定されることにより、レール100の連結強度が向上する。
レール100の端部に見切部113が設けられたことにより、レール100同士を連結する際は、ビス、ボルト・ナット等従来から公知の連結具を用いて行うことができ、溶接等を行う必要がなく、施工が容易で短時間で処理することができる。また、レール100同士を連結する際にねじ等を使用した場合、ねじ等が外から見えないように、見切部113の外側面を延設させてもよい。
【0054】
(レール100の施工方法)
以上に説明したレール100の施工方法について、
図3および
図4を用いて説明する。
図3は本実施の形態に係る移動間仕切装置20の天井裏の構造およびレール連結方法を説明するための説明図である。
【0055】
図3に示すように、レール100を固定する構造は、は、建物の天井スラブ320下端に固定具310を介するものである。
天井スラブ320に埋設、固定されたアンカー321の下端に吊子受315が固定される。吊子受315に吊子アングル313の上端部が固定されている。吊子アングル313の下端部に吊子312が固定され、吊子312に固定された断面L型のレール受311にボルト131によって固定部111が連結されている。なお、吊子312は、施工する天井裏の高さに応じて長さの調節をするための機能を有してもよい。
この固定具310は、天井200に設けられた通孔に挿通されたブロック150を介して、固定部111にレール100が固定されている。
【0056】
さらに詳しく説明すると、天井200下面に敷設されたレール100は、天井200の通孔を貫通しレール100を固定するブロック150を介してレール受311とボルト131により固定されている。
レール受311はさらに吊子312とねじ止めされ、吊子312は吊子アングル313とねじ止めされている。吊子アングル313は、天井スラブ320下端のアンカー321により接続される吊子受315と固定されることにより、天井スラブ320とレール100とが間接的に固定される。
また、吊子アングル313のみで移動壁400の荷重を支持しようとすると、吊子アングル313が振れてしまうおそれがあるため、吊子アングルには少なくとも2以上の振止アングル314により吊子アングル313を固定し、振止アングル314は天井スラブ320と固定されるように施工することにより移動壁400の保持力を強靭に保つことができる。
【0057】
移動間仕切装置20のレール100は、上記したとおり長尺部材で構成されており、複数のレール100を天井200の下面に直線状に配置し、組み合わせて所望の走行経路を形成することができる。本実施形態に係る移動間仕切装置20は、天井200の下面にレール100を敷設するが、移動壁400の荷重は天井スラブ320に支持されている。
【0058】
次に、レール100同士の連結方法について説明する。
本実施形態のレール100同士の連結方法は、レール100を長手方向に複数配置し、隣接するレール100の端部同士を連結する工程、を含むレール施工方法であって、レールの端部に第1連結部140aおよび第2連結部140bが設けられ、隣接するレール100の連結部間に配置した連結部材141,145により各連結部を3点で連結する連結工程を含む。
【0059】
レール100の端部同士を連結する工程において連結箇所は、第1連結部140aである2つの見切部113と、第2連結部140bであるレール溝116の上端部とである。
レール100同士を当接させる前に、連結部材141,145であるプレートをそれぞれのレール端部の第1連結部140aと第2連結部140bにある開口部に差し込み、ねじ142,146によりそれぞれ固定する。
連結工程では、連結するレールの連結部140と連結部材141,145とをそれぞれのレール100の端部においてねじ止めにより固定する。連結部材141,145を介して連結することにより、レール100同士を直接溶接等で連結する必要がなく、連結強度を保つことができる。
【0060】
次に、天井スラブ320とレール100との固定およびレール100同士の連結について詳述する。なお、本施工工程は施工現場に応じて適宜選択されるため、以下に限定されるものではない。
まず、天井スラブ320に固定された吊子アングル313に吊子312およびレール受311を仮止めする(第1工程)。
第1工程で仮止めした断面L型のレール受311の底面を水平に調整し、吊子アングル313に吊子312およびレール受311を固定する(第2工程)。なお、第2工程において、間仕切構造内の全てのレール受311の底面の水平レベルを一定に揃えることが好ましい。また、吊子312およびレール受311の固定は、ボルト等であっても良いし溶接であっても良い。
次に、構造物300に固定する前に、適宜の数のレール本体110同士を連結してもよい。すなわち、連結部140に連結部材141,145を差し込みレール本体110の端部に対して位置合わせをして、連結部材141,145をねじ142,146で仮止めする(第3工程)。このように、適宜の数(例えば2~5本)のレール本体110を一組にして、構造物300に固定することで作業性が向上する場合がある。
そして、第3工程で仮止め固定された一組のレール本体110を、構造物300に順次固定する。すなわち、各レール本体110をブロック150を介してレール受311に当接させ、固定片130およびボルト131を用いて仮止めする(第4工程)。
第4工程により一組のレール本体110を構造物300に順次固定するにあたっては、併せて一組のレール本体同士を結合する必要がある。すなわち、一組のレール本体110を構造物300に仮止めして、レール受311に仮止めされされた係止部111aを僅かにスライドさせてレール本体110同士を連結し、連結部材141,145のねじ142,146を固定する(第5工程)。
最後にレール全体の水平を確認して全てのボルト131およびねじ142,146等を本締めし、天井パネル200を取り付ける(第6工程)。
上記に例示した工程により、レールを安全かつ正確に設置することができる。
【0061】
(変形例1)
上記実施形態においては、見切部113が略長方形である場合を示したが、見切部113は、曲面により形成された半円形でもよいし、略正方形または略台形等であってもよい。
図6に示すように、見切部113の大きさが極力最小限となるようにしてもよい。
すなわち、係合部116bと見切部113とが一体となった例であり、見切部113の直上を移動壁400の上端部410が移動し、また、見切部113の内部に連結部が設けられる。この場合において、レール100の接続強度が不足する場合は、適宜溶接等の処理を行ってもよい。
また、実施形態においては、見切部113全体を浮遊させるようにしたが、変形例1のように、側壁112の中央に境界線を設けて、鏡面部112aは境界線より上部にのみ設けてもよい。これにより、見切部113と側壁112の下部が空中に浮遊しているように見せることができる。
【0062】
(変形例2,3)
変形例2として、
図7に示すように、は見切部113の突出部分を半円形状としてもよく、変形例3として、
図8に示すように、は見切部113を敢えて大きく設計してもよい。これらにより、空中に浮遊する見切部113を効果的に目立たせることができるとともに、機械的強度を確保することができる。
【0063】
本発明においては、間仕切構造10が「間仕切構造」に相当し、天井(天井パネル)200が「天井、天井パネル」に相当し、移動壁400が「移動壁」に相当し、レール100が「レール」に相当し、移動間仕切装置20が「移動間仕切装置」に相当し、上端部410が「上端部」に相当し、側壁112が「側壁」に相当し、レール溝116が「レール溝」に相当し、レール本体110が「レール本体」に相当し、構造物300が「構造物」に相当し、ブロック150が「ブロック」に相当し、固定部111が「固定部」に相当し、見切部113が「見切部」に相当し、鏡面部112aが「鏡面部」に相当し、連結部材141,145が「連結部材」に相当し、連結部140が「連結部」に相当する。
【0064】
本発明の好ましい一実施の形態は上記の通りであるが、本発明はそれだけに制限されない。本発明の精神と範囲から逸脱することのない様々な実施形態が他になされることは理解されよう。さらに、本実施形態において、本発明の構成による作用および効果を述べているが、これら作用および効果は、一例であり、本発明を限定するものではない。
【符号の説明】
【0065】
10 間仕切構造
20 移動間仕切装置
100 レール
110 レール本体
111 固定部
112 側壁
112a 鏡面部
113 見切部
140 連結部
141 連結部材
150 ブロック
116 レール溝
200 天井(天井パネル)
300 構造物
310 固定具
311 レール受
312 吊子
313 吊子アングル
314 振止アングル
320 スラブ
321 アンカー
400 移動壁
410 上端部