(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168153
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】養生構造及び養生方法
(51)【国際特許分類】
E04G 21/32 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
E04G21/32 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079833
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000001258
【氏名又は名称】JFEスチール株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】591205536
【氏名又は名称】JFEシビル株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】521072582
【氏名又は名称】坪井工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(74)【代理人】
【識別番号】230118913
【弁護士】
【氏名又は名称】杉村 光嗣
(74)【代理人】
【識別番号】100165696
【弁理士】
【氏名又は名称】川原 敬祐
(74)【代理人】
【識別番号】100180655
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 俊樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 貴晴
(72)【発明者】
【氏名】森 貴史
(72)【発明者】
【氏名】朝霧 典昭
(72)【発明者】
【氏名】小沢 正典
(57)【要約】
【課題】開口部を養生したまま開口部の上部から開口部への作業を行うことができる養生構造及び養生方法が提供される。
【解決手段】養生構造は、対象材に形成された開口部の養生構造であって、開口部の周囲に設置された支持材(11)と、開口部に対して開口部の面外方向に隙間(h)を空けた状態で支持材(11)に固定され、開口部を覆う被覆部材(13)と、を備える。養生構造において、被覆部材(13)はネットであってよい。養生構造において、被覆部材(13)は隙間の間隔が調整可能であってよい。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象材に形成された開口部の養生構造であって、
前記開口部の周囲に設置された支持材と、
前記開口部に対して前記開口部の面外方向に隙間を空けた状態で支持材に固定され、前記開口部を覆う被覆部材と、を備える、養生構造。
【請求項2】
前記被覆部材はネットである、請求項1に記載の養生構造。
【請求項3】
前記隙間の間隔が調整可能である、請求項1又は2に記載の養生構造。
【請求項4】
前記支持材は複数の支柱であり、前記支柱の間に張られたワイヤーにネットが固定されている、請求項1又は2に記載の養生構造。
【請求項5】
平面視で、前記開口部に新設対象材を取り付ける際の前記新設対象材の挿入方向における前記複数の支柱の間隔は、前記挿入方向に交差する方向における前記複数の支柱の間隔より狭い、請求項4に記載の養生構造。
【請求項6】
前記隙間の間隔は、前記対象材の厚さの2倍以上である、請求項1又は2に記載の養生構造。
【請求項7】
対象材に形成された開口部の養生方法であって、
前記開口部に対して面外方向に隙間を空けた状態で、前記開口部を覆うように被覆部材を配置する養生工程と、
前記隙間から新設対象材を挿入し、前記新設対象材によって前記開口部を塞ぐ更新工程と、を含む、養生方法。
【請求項8】
前記養生工程では、既設対象材上に被覆部材を配置した後、既設対象材を撤去することによって対象材に前記開口部を形成する、請求項7に記載の養生方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、養生構造及び養生方法に関する。本開示は、特に対象材に形成された開口部の養生構造及び養生方法に関する。
【背景技術】
【0002】
屋根材などの対象材に設けられた開口部において新設対象材への交換等の作業を行う場合には、作業者が開口部から落下することを防ぐために開口部を養生する必要がある。従来、開口部を養生する場合に、例えば開口部上に足場板を載せる工法、開口部上にネットを敷く工法、開口部を仮設手摺で囲う工法など、開口部の上部から養生する工法が用いられている。また、開口部の下部にアクセス出来る場合には、例えば特許文献1に示すように、開口部の下部にネットを取り付ける工法なども用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、開口部の上部から開口部を養生する場合、足場板、敷かれたネット、仮設手摺などで開口部を覆ってしまうため、開口部を養生しながら開口部への作業(新設対象材への交換など)を行うことが難しい。このため、作業中に養生を取り外す必要があり、落下の危険性が高まる。
【0005】
また、開口部の下部から開口部を養生する場合、開口部の下部空間へのアクセスの制限によって工事に制約が生じたり、下部空間における作業制限が必要となったりするという問題及びネット取付の為の足場仮設のコストがかさむという問題があった。
【0006】
かかる事情に鑑みてなされた本開示の目的は、開口部を養生したまま開口部の上部から開口部への作業を行うことができる養生構造及び養生方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一実施形態に係る養生構造は、
対象材に形成された開口部の養生構造であって、
前記開口部の周囲に設置された支持材と、
前記開口部に対して前記開口部の面外方向に隙間を空けた状態で支持材に固定され、前記開口部を覆う被覆部材と、を備える。
【0008】
本開示の一実施形態に係る養生方法は、
対象材に形成された開口部の養生方法であって、
前記開口部に対して面外方向に隙間を空けた状態で、前記開口部を覆うように被覆部材を配置する養生工程と、
前記隙間から新設対象材を挿入し、前記新設対象材によって前記開口部を塞ぐ更新工程と、を含む。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、開口部を養生したまま開口部の上部から開口部への作業を行うことができる養生構造及び養生方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る養生方法の手順1を説明するための図である。
【
図2】
図2は、一実施形態に係る養生方法の手順2を説明するための図である。
【
図3】
図3は、一実施形態に係る養生方法の手順3を説明するための図である。
【
図4】
図4は、一実施形態に係る養生方法の手順4を説明するための図である。
【
図5】
図5は、一実施形態に係る養生方法の手順5を説明するための図である。
【
図6】
図6は、一実施形態に係る養生方法の手順6を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本開示の一実施形態に係る養生構造及び養生方法が説明される。各図中、同一又は相当する部分には、同一符号が付されている。本実施形態の説明において、同一又は相当する部分については、説明を適宜省略又は簡略化する。
【0012】
本開示は、特に対象材に形成された開口部の養生構造及び養生方法に関する。ここで、対象材とは、例えば建物の屋根材、壁材、床材などである。開口部は、既に形成されている状態(例えば対象材の破損)でよいし、既設対象材16(
図5参照)を撤去することによって形成されてよい。以下、対象材が屋根材である例について説明する。
【0013】
(養生方法)
図1から
図6は、本実施形態に係る養生方法の手順1~手順6のそれぞれを説明するための図である。
図1から
図6のそれぞれにおいて、左図は作業場所を横から見た側面図である。また、右図は上から見た平面図である。以下、各図を参照しながら、それぞれの工程が説明される。
【0014】
まず、
図1に示すように、手順1として、屋根材(対象材)の上に支持材11が設置される。支持材11は、本実施形態において互いに間隔をあけて配置される複数の支柱(スタンションポール)であるが、これに限定されない。本実施形態において、複数の支持材11のそれぞれは、屋根材(対象材)に立設され、固定される。また、複数の支持材11の間に、後述する被覆部材13(
図2参照)を固定するための固定用部材12が設けられる。本実施形態において、固定用部材12は支柱の間に張られたワイヤーであるが、これに限定されない。また、
図1の例において、2組の支持材11のそれぞれに固定用部材12が設けられて、合計で2つの固定用部材12が設けられる。ただし、支持材11の数及び固定用部材12の数は限定されない。また、固定用部材12を緩めること、締めること及び固定用部材12の高さを調整することが可能であれば、支持材11に対して固定用部材12を接続する手法は限定されない。例えば固定用部材12は、支持材11に直接に縛り付けられてよいし、クランプレバーなどを介して接続されてよい。
【0015】
本実施形態において、屋根材(対象材)の一部である作業対象領域20において、屋根材の交換作業が行われる。作業対象領域20は、既設対象材16(
図5参照)が撤去されることによって開口部となる。そのため、作業者30(
図3参照)の落下を防止して安全を確保しながら、作業対象領域20に対する作業が可能なように、作業対象領域20の上部から養生が行われる必要がある。ここで、
図1から
図4では、見やすさのために既設対象材16(
図5参照)の図示を省略して作業対象領域20のみを示している。また、作業対象領域20の面に沿った方向は面内方向と称されることがある。また、作業対象領域20の面に垂直な方向は面外方向と称されることがある。本実施形態において、面外方向は高さ方向に対応する。
【0016】
図2に示すように、手順2として、2つの固定用部材12の間に被覆部材13が取り付けられて、作業対象領域20が覆われる。被覆部材13は作業対象領域20の全体を覆うことが好ましい。本実施形態において、被覆部材13はネットであるが、これに限定されない。他の例として、被覆部材13はシートなどであってよい。ただし、被覆部材13を介しての視認及び作業が可能であるように、被覆部材13はネットのように孔を有する部材であることが好ましい。手順2においては、固定用部材12が緩められて、作業対象領域20の上に間を空けずに被覆部材13が配置される。ここで、固定用部材12に対して被覆部材13を固定する手法は限定されない。例えば被覆部材13は、固定用部材12に直接に縛り付けられてよいし、カラビナなどを介して接続されてよい。
【0017】
図3に示すように、手順3として、被覆部材13の上に足場板14が設置される。また、手順3として、作業者30は、被覆部材13の上から作業対象領域20において既設対象材16(
図5参照)を固定しているボルトを引き抜く。
【0018】
図4に示すように、手順4として、作業対象領域20に対して面外方向(高さ方向)に隙間hを空けた状態で、作業対象領域20を覆うように被覆部材13を配置する養生工程が実行される。例えば固定用部材12の張力を強めて被覆部材13を作業対象領域20から浮かせることによって、隙間hが空けられてよい。隙間hの範囲については後述する。また、本実施形態の手順4のように、まだ既設対象材16(
図5参照)がある場合(開口部が形成されていない場合)には、既設対象材16(
図5参照)を撤去して開口部を形成する作業も養生工程に含まれる。つまり、養生工程は、本実施形態において手順4及び手順5を含み、開口部に対して隙間hを空けた状態で、開口部を覆うように被覆部材13を配置する。
【0019】
図5に示すように、手順5として、隙間hから既設対象材16が撤去されて、開口部が形成される。このとき、腐食状況が点検されて、必要に応じて既設対象材16と新設対象材17(
図6参照)との交換が行われてよい。
図5に示すように、既設対象材16の撤去作業において、既設対象材16の落下防止のために、撤去中の既設対象材16を支える支持材15が用いられてよい。支持材15は、例えば単管であるが、これに限定されない。ここで、
図5及び
図6の右図では、見やすさのために被覆部材13を透過させて示している。
【0020】
被覆部材13と開口部との隙間hの間隔は、上記のように固定用部材12を緩めること、締めること及び支持材11に対する固定用部材12の高さを調整することなどによって調整可能であるが、屋根材(対象材)の交換が可能なように、屋根材(対象材)の厚さの2倍以上であることが好ましい。一例として、隙間hの間隔は350mm以上であってよい。ここで、隙間hは、「開口部周縁での被覆部材13と開口部との隙間」である。開口部の全面において被覆部材13との間に隙間hが空いている必要はない。少なくとも開口部周縁において開口部と被覆部材13との間に隙間hがあれば、屋根材(対象材)の交換が可能である。本実施形態において、固定用部材12の最も低い位置の高さ(屋根材と固定用部材12との距離の最も狭い部分)が屋根材(対象材)の厚さの2倍以上となるように設定されている。また、隙間hからの転落防止の観点から、隙間hの間隔の上限は、作業者30の腰辺りであることが好ましい。一例として、隙間hの間隔は1m以下であってよい。ここで、隙間hの間隔の上限は、開口部に対する被覆部材13の大きさ(面積)に応じて調整されてよい。
【0021】
図6に示すように、手順6として、隙間hから新しい屋根材である新設対象材17を挿入し、新設対象材17によって開口部を塞ぐ更新工程が実行される。例えば、手順6において、作業者30は、挿入した新設対象材17を開口部に取り付けて開口部を塞いでから被覆部材13を取り外し、新設対象材17をボルトで固定してよい。
【0022】
ここで、本実施形態に係る養生方法は、手順1~手順6の全てを含む必要がなく、少なくとも養生工程及び更新工程を含めばよい。本実施形態において、養生工程では、既設対象材16上に被覆部材13を配置した後、既設対象材16を撤去することによって対象材に開口部を形成する。ただし、例えば屋根材の破損などによって開口部が既に形成されている場合にも、本実施形態に係る養生方法を適用することができる。このとき、養生工程は、既に形成されている開口部に対して面外方向に隙間hを空けた状態で、開口部を覆うように被覆部材13を配置する。
【0023】
(養生構造)
上記の養生方法によって形成される本実施形態に係る養生構造は、開口部の周囲に設置された支持材11と、開口部に対して開口部の面外方向に隙間hを空けた状態で支持材11に固定され、開口部を覆う被覆部材13と、を備える。
【0024】
ここで、開口部の周囲に設置された複数の支持材11は、平面視で縦方向と横方向の間隔が異なる。換言すると、複数の支持材11は、作業対象領域20の面内方向の一の方向には狭い間隔で配置され、作業対象領域20の面内方向の他の方向には広い間隔で配置される。ここで、作業対象領域20の面内方向の一の方向は、開口部に新設対象材17を取り付ける際の新設対象材17の挿入方向である。また、面内方向の他の方向は、挿入方向に交差する方向であり、固定用部材12が張られる方向に平行である。作業対象領域20の面内方向の一の方向(
図1から
図6の右図で縦方向)では、作業対象領域20(開口部)から支持材11までの距離が短いため、この方向に沿って容易に既設対象材16の撤去及び新設対象材17の挿入を行うことができる。また、作業対象領域20の面内方向の他の方向(
図1から
図6の右図で横方向)では、作業対象領域20(開口部)から支持材11までの距離が長いため、養生構造の内部に作業者30が作業を行うスペースを確保できる。このように、平面視で、一の方向(新設対象材17の挿入方向)における複数の支持材11の間隔が、他の方向(一の方向に交差する方向)における複数の支持材11の間隔より狭いことによって、作業者30の作業がしやすくなる。
【0025】
以上のように、本実施形態に係る養生構造及び養生方法は、上記の構成及び工程によって、開口部を覆う被覆部材13を、開口部に対して開口部の面外方向に隙間hを空けた状態で取り付ける。そのため、被覆部材13によって作業者30の開口部からの落下を防ぎつつ、開口部と被覆部材13との隙間hから開口部への作業を行うことができる。すなわち、開口部を養生したまま開口部の上部から開口部への作業を行うことができる。
【0026】
本開示の実施形態について、諸図面及び実施例に基づき説明してきたが、当業者であれば本開示に基づき種々の変形又は修正を行うことが容易であることに注意されたい。従って、これらの変形又は修正は本開示の範囲に含まれることに留意されたい。例えば、各構成部又は各ステップ(工程)などに含まれる機能などは論理的に矛盾しないように再配置可能であり、複数の構成部又はステップなどを1つに組み合わせたり、或いは分割したりすることが可能である。本開示の範囲にはこれらも包含されるものと理解されたい。
【符号の説明】
【0027】
11 支持材
12 固定用部材
13 被覆部材
14 足場板
15 支持材
16 既設対象材
17 新設対象材
20 作業対象領域
30 作業者