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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168154
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】X線手荷物検査装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 23/10 20180101AFI20231116BHJP
【FI】
G01N23/10
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079834
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】000004651
【氏名又は名称】日本信号株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100181146
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 啓
(74)【代理人】
【識別番号】100109221
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 充広
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼山 和朗
【テーマコード(参考)】
2G001
【Fターム(参考)】
2G001AA01
2G001BA11
2G001CA01
2G001DA09
2G001HA13
2G001HA14
2G001JA08
2G001JA09
2G001JA11
2G001PA11
2G001PA12
(57)【要約】
【課題】検査の円滑化を図りつつ、例えばベルトコンベアを用いた場合と比べて装置の小型化を図ることができるX線手荷物検査装置を提供すること。
【解決手段】筐体SCの正面に設けられる正面扉10と、正面扉10に対向して筐体SCの背面に設けられる背面扉20と、筐体SC内において、X線照射により手荷物(荷物)LUを検査する検査部30とを備え、正面扉10と背面扉20とのうちの一方から検査すべき手荷物(荷物)LUを筐体SC内に入れ、他方から検査部30による検査を完了した手荷物LUを筐体SC外へ出す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体の正面に設けられる正面扉と、
前記正面扉に対向して前記筐体の背面に設けられる背面扉と、
前記筐体内において、X線照射により荷物を検査する検査部と
を備えるX線手荷物検査装置。
【請求項2】
前記正面扉は、利用者の進行方向に関して相対的に手前側にあり、
前記背面扉は、前記利用者の進行方向に関して相対的に奥側にある、請求項1に記載のX線手荷物検査装置。
【請求項3】
前記正面扉は、前記荷物の取込み口を形成し、
前記背面扉は、前記荷物の取出し口を形成し、
前記取込み口から前記荷物が前記筐体内に取り込まれた後、前記検査部による検査が開始され、
前記検査部による検査が完了した後、前記取出し口から前記荷物が前記筐体外に取り出される、請求項2に記載のX線手荷物検査装置。
【請求項4】
前記正面扉及び前記背面扉の開閉許否を制御する開閉制御部を備え、
前記開閉制御部は、前記取込み口から前記荷物が前記筐体内に取り込まれた後であって前記検査部による検査が開始される前に、前記正面扉及び前記背面扉を施錠し、前記検査部による検査が完了した後、前記背面扉を解錠する、請求項3に記載のX線手荷物検査装置。
【請求項5】
前記正面扉は、前記筐体の正面側から上面側に延在しており、
前記背面扉は、前記筐体の背面側から上面側に延在している、請求項1~4のいずれか一項に記載のX線手荷物検査装置。
【請求項6】
前記正面扉及び前記背面扉は、スライド開閉する、請求項1に記載のX線手荷物検査装置。
【請求項7】
前記検査部は、前記荷物をX線照射の範囲内において載置させるとともに回転させる回転式載置部を備える、請求項1に記載のX線手荷物検査装置。
【請求項8】
前記正面扉及び前記背面扉の開閉可否と、前記検査部の動作状況とについて報知する報知部を備える、請求項1に記載のX線手荷物検査装置。
【請求項9】
前記正面扉と前記背面扉とは、反転可能である、請求項1に記載のX線手荷物検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、X線を利用して手荷物検査を行うX線手荷物検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、手荷物の検査を行う検査装置において、ベルトコンベアのようなもので手荷物等の搬送を行う態様となっているものが知られている(特許文献1,2等参照)。
【0003】
しかしながら、上記特許文献1,2のように、ベルトコンベア等を利用した搬送では、搬送方向について長大な構成となる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006-58234号公報
【特許文献2】特開2007-64727号公報
【発明の概要】
【0005】
本発明は上記した点に鑑みてなされたものであり、検査の円滑化を図りつつ、例えばベルトコンベアを用いた場合と比べて装置の小型化を図ることができるX線手荷物検査装置を提供することを目的とする。
【0006】
上記目的を達成するためのX線手荷物検査装置は、筐体の正面に設けられる正面扉と、正面扉に対向して筐体の背面に設けられる背面扉と、筐体内において、X線照射により荷物を検査する検査部とを備える。
【0007】
上記X線手荷物検査装置では、例えば正面扉と背面扉とのうちの一方から検査すべき荷物を筐体内に入れ、他方から検査部による検査を完了した荷物を筐体外へ出すことができる。したがって、手荷物(荷物)の出し入れ作業に一方向の流れを作って検査の円滑化を図ることができ、また、筐体に扉を設けた構成の装置とすることで、例えばベルトコンベアを用いた場合と比べて装置の小型化を図ることができる。
【0008】
本発明の具体的な側面では、正面扉は、利用者の進行方向に関して相対的に手前側にあり、背面扉は、利用者の進行方向に関して相対的に奥側にある。この場合、利用者は、手前側の正面扉から手荷物を入れ、奥側の背面扉から手荷物を取り出すことで、手荷物の出し入れ作業の流れを形成できる。
【0009】
本発明の別の側面では、正面扉は、荷物の取込み口を形成し、背面扉は、荷物の取出し口を形成し、取込み口から荷物が筐体内に取り込まれた後、検査部による検査が開始され、検査部による検査が完了した後、取出し口から荷物が筐体外に取り出される。この場合、手荷物検査に関する一連の動作を迅速に行える。
【0010】
本発明のさらに別の側面では、正面扉及び背面扉の開閉許否を制御する開閉制御部を備え、開閉制御部は、取込み口から荷物が筐体内に取り込まれた後であって検査部による検査が開始される前に、正面扉及び背面扉を施錠し、検査部による検査が完了した後、背面扉を解錠する。この場合、手荷物検査に関する一連の動作を安全に行える。
【0011】
本発明のさらに別の側面では、正面扉は、筐体の正面側から上面側に延在しており、背面扉は、筐体の背面側から上面側に延在している。この場合、手荷物の出し入れ作業がより行いやすくなる。
【0012】
本発明のさらに別の側面では、正面扉及び背面扉は、スライド開閉する。この場合、装置の設置のために確保する必要のある領域をより小さくできる。
【0013】
本発明のさらに別の側面では、検査部は、荷物をX線照射の範囲内において載置させるとともに回転させる回転式載置部を備える。この場合、回転式載置部を利用して、CT画像を得たり、角度を変えた検査を行ったりすることが可能になる。
【0014】
本発明のさらに別の側面では、正面扉及び背面扉の開閉可否と、検査部の動作状況とについて報知する報知部を備える。この場合、報知部による報知態様として、例えば赤色点滅等を行うことで、利用者に装置の動作状況を認識させたり、検査結果を報知したりすることができる。
【0015】
本発明のさらに別の側面では、正面扉と背面扉とは、反転可能である。この場合、例えば、手荷物の取込み口と手荷物の取出し口とを入替え可能な構成とすることが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】一実施形態のX線手荷物検査装置及び検査システムについて概要を示す概念的な平面図である。
図2】(A)は、X線手荷物検査装置及び検査システムについての概念的な正面図であり、(B)は、X線手荷物検査装置の本体部分の概念的な正面図である。
図3】(A)は、X線手荷物検査装置の本体部分の背面側閉の状態を示す概念的な背面図であり、(B)は、本体部分の背面側開の状態を示す概念的な背面図である。
図4】(A)~(C)は、本体部分の平面図、正面図及び側面図である。
図5】(A)~(C)は、X線手荷物検査装置を含む検査システムにおける一連の動作について説明するための概念的な平面図である。
図6】X線手荷物検査装の機能的な側面について説明するためのブロック図である。
図7】X線手荷物検査装置における一連の動作について説明するためのフローチャートである。
図8】X線手荷物検査装置における一連の動作について説明するためのフローチャートである。
図9】(A)及び(B)は、一比較例について説明するための概念的な平面図であり、(C)は、本実施形態の一例についての概念的な平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態に係るX線手荷物検査装置と、X線手荷物検査装置を含む検査システムについて一例を説明する。
【0018】
図1に示すX線手荷物検査装置100あるいはこれを含む検査システム500は、例えばイベント会場の入場口等に設置されている。X線手荷物検査装置100は、筐体SCの内部において検査対象である手荷物LUを収納した状態で、手荷物LUにX線を照射することで検査を行って、手荷物LUについての安全性を判定するための検査装置である。このため、X線手荷物検査装置100は、筐体SC等で構成される本体部分100Aと、本体部分100Aでの動作により検出された手荷物LUに関する画像データ等についての解析や判定についての処理を行う情報処理部CTとを備える。
【0019】
検査システム500は、上記のような手荷物検査のためのX線手荷物検査装置100に加え、人体すなわち手荷物LUの所持者である利用者HUについての検査を行うためのゲート装置GTを備える。ゲート装置GTは、例えば図2(A)に例示するように、利用者HUをくぐらせて通過させるべく、左右両側と上側を囲ったゲート状となっており、金属探知機等で構成されている。図示の一例では、検査システム500は、X線手荷物検査装置100において手荷物LUについての検査を行い、この間において、ゲート装置GTを利用者HUが通過することで、手荷物LUと利用者HUとについての検査が並行して行われる態様となっている。また、図2(A)に示すように、ここでの一例では、ゲート装置GTは、情報処理部CTとも接続されており、情報処理部CTは、上述した手荷物LUに関する各種処理に加え、手荷物LUの所持者HUに関する各種処理も行うものとなっている。なお、情報処理部CTについては、例えばCPUや各種ストレージデバイス等を有するPCで構成することが考えられる。情報処理部CTは、上記のような各種画像処理を行うX線画像処理部として機能するほか、X線手荷物検査装置100の全体についての装置状態管理や、外部機器接続処理等を行う。このため、情報処理部CTは、検査の係員等が所持するタブレット等の端末MTとの通信を行う。
【0020】
またここで、図1等において、手荷物LU及びその所持者である利用者HUのゲート装置GTにおける進行方向(正面の方向)A1をZ方向としており、さらに、Z方向に直交する方向のうち水平方向をX方向とし、垂直方向をY方向としている。
【0021】
以下、図1等を参照しつつ、X線手荷物検査装置100を構成する各部に関して、より詳細に説明する。まず、図1に示すように、X線手荷物検査装置100のうち、本体部分100Aは、筐体SCのほか、筐体SCの正面に設けられる前面の扉である正面扉10と、正面扉10に対向して筐体SCの背面に設けられる背面の扉である背面扉20と、筐体SC内において、X線照射により荷物(手荷物LU)を検査する検査部30とを備える。
【0022】
また、図1図2に示すように、本体部分100Aは、上記のほか、例えばX線手荷物検査装置100の動作を開始させるためのスイッチ(検査開始スイッチ)SWを、正面扉10の近傍に備える。検査開始スイッチSWは、例えば人感センサー等を組み合わせて構成され、当該人感センサーが利用者HUにおける検知態様に応じて自動で検査を開始すべく、手荷物LUの受付状態が解除され、X線検査に移行する等のための動作切替えを行うものとなっている。
【0023】
さらに、図2(A)に示すように、X線手荷物検査装置100は、例えば天井等に取り付けられたランプLPを有している。ランプLPは、例えば赤、青、黄での灯色の切替や、明るさの調整(点滅)等が可能となっており、表示色や点灯状態によって、X線手荷物検査装置100の動作状況や検査結果等を示すものとなっている。言い換えると、ランプLPは、点灯状態を変化させることで、新たな手荷物LUの受付が可能であるか否かを示す受付ランプ、X線照射中であることを示す、すなわちX線の照射中に点灯し、周囲にX線が出ていることを示す照射表示ランプ、動作異常の発生を示す異常表示ランプ等として機能する。以上のように、ランプLPは、正面扉10及び背面扉20の開閉可否や、検査部30の動作状況等について報知する報知部として機能する。
【0024】
ここで、図示の一例では、本体部分100Aには、本体部分100Aの上記各部やランプLPの動作制御を行うため、チップ回路等で構成される制御基板CBが設けられている。制御基板CBは、本体部分100Aの各部やランプLPと接続されるとともに、情報処理部CTと接続されており、各種動作制御を担うとともに必要に応じて、情報処理部CTとの通信を行う。
【0025】
上記のうち、正面扉10は、X線手荷物検査装置100の利用者HUの進行方向A1に関して相対的に手前側すなわち-Z側に配置されており、図2(A)及び図2(B)において矢印DD1に示すように、±X方向についてスライド開閉可能となっている。
【0026】
一方、背面扉20は、進行方向A1に関して相対的に奥側すなわち+Z側に配置されており、図3(A)及び図3(B)において矢印DD2に示すように、±X方向についてスライド開閉可能となっている。
【0027】
筐体SC、正面扉10及び背面扉20は、鉛を含んだ金属製の部材を含んで構成された板状の部材(例えば厚さ2mm程度)であり、閉塞した状態において、検査部30による検査でのX線照射が外部に漏れ出すことを回避可能あるいは十分に抑制可能なものとなっている。これらは、全体として、直方体状の遮蔽ボックスを形成している。なお、筐体SCの下部の四隅に設けた4つの脚FTにより全体が支持されている。さらに、図4(A)~図4(C)等に示すように、ここでの一例では、正面扉10及び背面扉20は、それぞれ正面側の一側面及び背面側の一側面のみではなく、筐体SCの上面側にも延びるように配置されている。言い換えると、正面扉10は、正面側の一側面を形成するとともにさらに筐体SCの上面側において背面扉20側(+Z側)に向かって延在しており、背面扉20は、背面側の一側面を形成するとともにさらに筐体SCの上面側において正面扉10側(-Z側)に向かって延在している。この場合、図4(C)にあるように、側面から見ると、正面扉10及び背面扉20は、L字状となっている。以上のような形態において、正面扉10は、手荷物(荷物)LUの取込み口を形成し、背面扉20は、手荷物LUの取出し口を形成している。この場合、正面扉10及び背面扉20が筐体SCの上面側に配置されていることで、取込み口や取出し口を使いやすい大きな形状とすることができる。また、ここでは、正面扉10及び背面扉20については、自動扉であるものとして説明するが、手動式として構成することも考えられる。
【0028】
検査部30は、筐体SCの内部に収納され、検査対象である手荷物LUに対して放射線であるX線RAを照射するX線発生器31と、X線発生器31からのX線RAのうち手荷物LUを通過した成分を受けるX線センサー32と、手荷物LUをX線照射の範囲内において載置させるとともに、検査時にこれを回転させる回転式載置部である回転ステージ33とを有する。
【0029】
ここでの一例では、例えば図4(A)~図4(C)に示すように、検査部30のうち、X線発生器31は、筐体SC内において-X側であって、やや-Z側に配置されている。一方、X線センサー32は、+X側であって、やや+Z側に配置されている。回転ステージ33は、これらの間において正面扉10及び背面扉20に対応した位置に配置されている。X線発生器31によるX線RAの照射に際して、円盤状の回転ステージ33は、その中心軸である回転軸AXについて軸回転する。すなわち、双方向矢印AA1に示す方向(あるいはこれらのうちの一方向)について、手荷物LUを動かす。これにより、X線発生器31及びX線センサー32による検査可能範囲が、回転ステージ33の載置可能範囲の全体を覆っていない小型のものであっても、載置可能範囲にある手荷物LUについての検査を的確に行えるものとなっている。なお、この場合、検査部30を小型化できることで、延いては、X線手荷物検査装置100の小型化を図ることが可能になる。
【0030】
以下、図5(A)~図5(C)として示す概念的な平面図を参照して、X線手荷物検査装置100を含む検査システム500における利用者HU等の一連の動作について、詳細に説明する。
【0031】
まず、図5(A)に示すように、少なくともX線手荷物検査装置100の正面扉(前面扉)10が-X方向にスライドして開放された状態(全開の状態)になっていることで、手荷物(荷物)LUを装置内へ入れることが可能となる。なお、図示の一例では、背面扉20も開放された状態(全開の状態)となっている。
【0032】
次に、図5(B)に示すように、手荷物LUが本体部分100Aの内部に収納され、正面扉10及び背面扉20が+X方向にスライドして閉塞され、さらに本体部分100Aにおいてロックが掛かると、本体部分100Aの内部において検査部30による手荷物LUの検査のためのX線照射が開始される。一方、この間において、利用者HUは、自身について検査を受けるべく、検査システム500のゲート装置GTへ向かい、ゲート装置GTでの検査を終えると、背面扉20側に向かう。
【0033】
利用者HUによる上記一連の動作の間に、あるいは動作終了後において、検査部30による手荷物LUの検査が完了すると、図5(C)に示すように、背面扉20が-X方向にスライドして開放され、手荷物LUを装置外へ取り出すことが可能となる。手荷物LUが取り出されると、正面扉10も-X方向にスライドして開放され、最初の状態に戻る。すなわち、図5(A)に示すような正面扉10の開放が可能な状態となり、次の利用者HUの手荷物LUについて受付可能となる。
【0034】
以下、図6として示すブロック図を参照して、上記のような一連の動作を可能とするためのX線手荷物検査装置100を構成する各部の構成及び機能について、一例を説明する。
【0035】
まず、図示のように、また、既述のように、X線手荷物検査装置100は、情報処理部CTのほか、本体部分100Aとして、正面扉10、背面扉20、検査部30、検査開始スイッチSW、ランプLP、制御基板CB等を備え、検査部30は、X線発生器31、X線センサー32、回転ステージ33を有する。なお、X線センサー32が受信したX線画像データは、解析のため、情報処理部CTに向けて出力される。また、ここでの一例では、既述のように、正面扉10、背面扉20は、自動扉であるものとする。X線手荷物検査装置100は、上記のほか、例えば正面扉10及び背面扉20について、緊急停止後や、検査部30での検査による危険物確認後において扉10,20のロックを手動解除する際にロック解除を行う扉ロック解除スイッチSWrや、挟み込みの有無や扉の閉状態の確認、あるいはロック検知等を行うための各種センサーSEを備えている。また、X線手荷物検査装置100は、検査部30を構成する各部について強制的に緊急停止させる、つまりX線発生器31によるX線照射や、回転ステージ33の回転を強制停止させるための緊急停止スイッチSWsや、各部に対して電力を供給する電源部PW等を備える。
【0036】
制御基板CBは、上記各部と接続されており、状況に応じて必要な動作を行うべく、各部に対して指令信号を出力する。また、制御基板CBは、上記各種動作に関する情報を、情報処理部CTに対して出力する。
【0037】
なお、情報処理部CTは、本体部分100Aの各部から取得したデータに基づいて、手荷物LUに関する解析及び判定処理を行い、処理結果を、例えば検査の係員等が所持するタブレット等の端末MTに対して送信する。
【0038】
以下、図7及び図8として示すフローチャートを参照して、X線手荷物検査装置100における一連の動作について、一例を説明する。
【0039】
X線手荷物検査装置100が起動すると、制御基板CBは、まず、ランプLPにおいて、新たな手荷物LUの受付が可能であること(装置が受付状態であること)を利用者HUに示すべく受付ランプを点灯状態としつつ、正面扉10を全開の状態とする(ステップS101)。上記のような状態となった後、例えば図5(A)等に示すように、利用者HUにより手荷物LUが本体部分100A内の回転ステージ33上に設置(載置)され(ステップS102)、さらに、検査開始スイッチSWにおいて検査開始の状態への切り替えがなされると(ステップS103)、制御基板CBは、これを検知して、ランプLPにおける受付ランプを消灯し(ステップS104)、自動扉である正面扉10及び背面扉20を閉じた状態とし(ステップS105)、さらに、各種センサーSEに関して、挟み込みセンサーがOFF状態であるか(ステップS106)や、扉閉状態センサーがON状態であるか(ステップS107)についての確認がなされる。挟み込みセンサーがOFF状態で、かつ、扉閉状態センサーがON状態である場合(ステップS106,S107ともにYes)、制御基板CBは、正面扉10及び背面扉20をロック(施錠)し(ステップS108)、ロック検知センサーがONになったか否かを確認し(ステップS109)、ロック検知センサーがONになったことが確認されると(ステップS109:Yes)、例えば図5(B)等に示すような状態となり、筐体SCの内部において、検査部30による検査すなわちX線照射が開始される。
【0040】
一方、ステップS106において、挟み込みセンサーがOFF状態でない(ステップS106:No)、すなわちON状態であり何かが挟まっていることが検知された場合には、直ちに扉の閉動作を停止させ(ステップS110)、異常事態が発生した場合の一連の動作処理を行う(ステップS111~S115)。具体的には、まず、ランプLPにおいて、動作異常の発生を示す態様の点灯を行い(ステップS111)、異常表示ランプとして機能させ、正面扉10及び背面扉20を自動で全開の状態とし(ステップS112)、挟み込みセンサーがOFF状態となったかを確認する(ステップS113)。ステップS113において、挟み込みセンサーがOFF状態となったことが確認されると(ステップS113:Yes)、ランプLPにおいて、異常表示ランプを消灯し(ステップS114)、再度、受付ランプを点灯する(ステップS115)。受付ランプの点灯後は、再度、検査開始スイッチSWにおいて検査開始の状態への切り替えがなされる(ステップS103)のを待って、ステップS103からの処理を開始する。
【0041】
なお、ステップS107において、扉閉状態センサーがON状態でない場合(ステップS107:No)、つまり、扉10,20が閉の状態とならない場合、制御基板CBは、ステップS106に戻って、再度、挟み込みの検知を行う。
【0042】
また、ステップS109において、ロック検知センサーがONになったことが確認されない場合(ステップS109:No)、すなわち挟み込みが無くかつ扉10,20が閉の状態となったにもかかわらず施錠できない場合には、異常事態が発生したものとして、ステップS111~S115の一連の動作処理が行われる。
【0043】
一方、ステップS109において、ロック検知センサーがONになったことが確認された場合(ステップS109:Yes)、検査部30による検査(X線照射)を開始すべく、まず、ランプLPにおいて、X線照射中であることを示す照射表示ランプが点灯し(ステップS116)、その後、検査部30がX線を照射して、X線画像(画像データ)を取得する(ステップS117)。また、これに合わせて、検査部30の回転ステージ33が回転する(ステップS118)。
【0044】
ここで、上記のような検査部30による検査中において、筐体SCの内部に収納された手荷物LUが存在するか否かが確認される。具体的には、筐体SCの内部に設けた手荷物センサーがOFF状態にあるか否かを確認し(ステップS119)、OFF状態でなければ(ステップS119:No)、つまり手荷物LUが存在していることが確認された場合には、ステップS117におけるX線画像の取得が完了したか否かを確認し(ステップS120)、取得が完了するまで、確認を繰り返す。一方、ステップS119において、OFF状態であると判定された場合には(ステップS119:Yes)、異常事態が発生したものとして、X線照射を停止し、例えばステップS111~S115の一連の動作処理が行われる。
【0045】
ステップS120において、X線画像の取得が完了したことが確認されるとステップS120:Yes)、制御基板CBは、回転ステージ33の回転を停止させるとともに(ステップS121)、X線の照射を停止させ(ステップS122)、その後、X線照射中であることを示す照射表示ランプを消灯する(ステップS123)。なお、取得されたX線画像のデータは、X線センサー32から情報処理部CTに適宜出力され、情報処理部CTにおいて保存されている。
【0046】
その後、情報処理部CTは、X線画像処理部として、取得及び保存したX線画像のデータについての解析処理を行い、自動判定する(ステップS124)。すなわち、特定の危険物等の検知対象物に相当するものが、手荷物LUのX線画像中に存在するか否かについて、判定を行う。判定結果は、情報処理部CTから本体部分100A側、すなわち制御基板CB側や、端末MTに対して、出力される。
【0047】
ステップS124において、特定の危険物等の検知対象物が検知されなかった場合(ステップS125:No)、すなわち安全である旨の判定がなされた場合、制御基板CBは、筐体SCの背面に位置する背面扉20のみロックを解除して、全開にする(ステップS126)。すなわち、例えば図5(C)等に示すような状態となる。その後、制御基板CBは、利用者HUが、手荷物LUを取り出すまでの時間として適切な程度の一定時間が経過したか否かを確認し(ステップS127)、一定時間が経過すると(ステップS127:Yes)、筐体SCの正面に位置する正面扉10のロックを解除して、全開にする(ステップS128)。すなわち、例えば図5(A)等に示すような状態となる。また、これとともに、ランプLPにおいて、受付ランプを点灯状態とし(ステップS129)、一連の処理を終了する。言い換えると、ステップS101からの動作に戻り、次の手荷物LUについての一連の処理が開始される。
【0048】
一方、ステップS125において、検知対象物が検知された場合(ステップS125:Yes)、すなわち特定の危険物等が見つかり安全でない旨の判定がなされた場合、制御基板CBあるいは情報処理部CTは、その旨を外部に伝えるべく、例えば、検査の係員等が所持するタブレット等の端末MTに対して判定結果を通知(送信)する(ステップS130)。この場合、以後は係員による別途の検査(2次検査)が行われることになる。具体的には、係員は、まず、判定結果についてのX線画像を確認し(ステップS131)、その上で、係員専用のロック解除スイッチSWrを押すこと(ステップS132)等によりX線手荷物検査装置100の受付状態を元に戻しつつ(ステップS133)、手荷物に関する開披検査等の2次検査を行う(ステップS134)。なお、ロック解除スイッチSWrは、例えば知っていないと見えないところに設置するか、鍵付きとする、といった態様とすることが考えられる。
【0049】
なお、上記一連の動作は、一例であり、X線手荷物検査装置100における構成や動作態様については、種々の場合が考えられる。
【0050】
受付ランプ等を含むランプLPは、正面側のみにあるものとしてもよいが、装置の前後両面に付ける態様とすることも考えられる。
【0051】
検査の待ち時間を表示する残検査時間表示ランプをさらに設ける態様とすることも考えられる。この場合、少なくとも背面側に残検査時間表示ランプを設ければよいため、背面側にきた受付ランプを活用する態様とすることも考えられる。
【0052】
また、検査の係員等への通知態様としては、上記のように検査の係員等が所持するタブレット等の端末MTへ通知するものとする場合のほか、例えば装置に据付けのモニターを通知先とすることも考えられる。
【0053】
上記のほか、例えば回転ステージ33において回転中の手荷物LUの落下などを検知し、必要に応じて検査を停止するための振動検知センサーや、検査前に回転ステージ33上に手荷物LUがあるかを判定する手荷物有無検知センサー等をさらに設ける構成とすることも考えられる。手荷物有無検知センサーは、検査後の手荷物回収検知にも使用することが想定できる。また、検査開始スイッチSWを設けない構成とした場合に、手荷物有無検知センサーを検査開始のトリガーとして使用してもよい。
【0054】
さらに、手荷物が回転ステージの検査領域からはみ出していないことを判定する手荷物設置状態確認センサーを設ける構成とすることも考えられる。この場合、手荷物設置状態確認センサーを設けることで、X線センサー32等の高額で衝撃に弱いユニットを守ることや、X線検査ができていない領域がある場合にこれを検知することが可能になる。
【0055】
以下、図9として示す概念的な平面図により、一比較例と本実施形態の一例とについて比較して説明する。まず、図9(A)は、一比較例のX線手荷物検査装置100Xとして、ベルトコンベアBBを設けた構成についての一例を示している。一方、図9(B)は、回転ステージを設けたインターロック式のX線手荷物検査装置100Yについての一例を示している。ただし、図9(B)に示す一例では、1つの開閉扉10Yのみを有する構成となっている点において、本実施形態のX線手荷物検査装置100と異なっている。なお、図9(C)は、本実施形態のX線手荷物検査装置100を簡潔に示している。
【0056】
まず、図9(A)のようにベルトコンベアBBを有する構成の場合、進行方向(Z方向)A1に沿ってベルトコンベアBBを配置する構成となるため、この進行方向A1についての長さLLAが、図9(C)に示すX線手荷物検査装置100の進行方向(Z方向)A1の長さLLと比べて非常に大きくなってしまう(例えば5倍程度)。つまり、本実施形態のX線手荷物検査装置100は、ベルトコンベアBBを設けた構成と比べて、特に進行方向A1についての小型化を図ることができるものとなっている。
【0057】
また、図9(B)のような開閉扉10Yが1つのみの構成であると、手荷物LUの検査の前後で、利用者HUが同じ場所において手荷物LUの出し入れを行うことになるため、手荷物LUと利用者HU自身との双方について検査を行うような態様の場合に、例えば図示のように、ゲート装置GTにより利用者HUが自身の検査を終えた後、再び手荷物LUを受けとるべく、X線手荷物検査装置100Yの開閉扉10Yの前に戻る(図中において矢印で示す手順1~4のうち、手順3)、といったことが必要になる。これに比べて、本実施形態のX線手荷物検査装置100は、円滑に迅速な検査が可能となる。
【0058】
以上のように、本実施形態のX線手荷物検査装置100は、筐体SCの正面に設けられる正面扉10と、正面扉10に対向して筐体SCの背面に設けられる背面扉20と、筐体SC内において、X線照射により手荷物(荷物)LUを検査する検査部30とを備える。これにより、例えば正面扉10と背面扉20とのうちの一方から検査すべき手荷物(荷物)LUを筐体SC内に入れ、他方から検査部30による検査を完了した手荷物LUを筐体SC外へ出すことができる。したがって、手荷物LUの出し入れ作業に一方向の流れを作って検査の円滑化を図ることができ、また、筐体SCに扉を設けた構成の装置とすることで、例えばベルトコンベアを用いた場合と比べて装置の小型化を図ることができる。
【0059】
〔その他〕
この発明は、上記の各実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様で実施することが可能である。例えば上記各実施形態や変形例について、可能な範囲で適宜組み合わせた構成とすることが考えられる。
【0060】
まず、上記では、正面扉10及び背面扉20の開閉可否や、検査部30の動作状況について報知する報知部として、ランプLPによる視覚的は報知手法を一例として示しているが、これに限らず、例えばスピーカー等を利用して音声による報知を行う態様とする、あるいは音声による報知とともにランプ点灯を行うものとしてもよい。また、ランプLPの設置態様も天井に配置する場合に限らず種々の態様とすることができる。さらに、視覚的な報知手法として、ランプLP以外にも、例えばディスプレイパネルによる画面表示等を利用する態様としてもよい。また、設置箇所についても種々の態様が考えられ、例えば正面扉10側と背面扉20側とにおいてこれらの近傍に各種報知手段を設けるものとしてもよい。
【0061】
また、上記では、検査部30において、回転式載置部である回転ステージ33を設けた構成としているが、回転式載置部を設けない構成(例えばワンショットで必要なX線画像を取得する構成)とすることも考えられる。
【0062】
また、上記では、X線手荷物検査装置100を検査システム500に組み込んだものとしているが、X線手荷物検査装置100を単独で利用する態様とすることも可能である。例えば、手荷物の検査については、X線手荷物検査装置100で行う一方、当該手荷物の所持者については、手持ち式の金属探知機により係員が行う、といった態様とすることも考えられる。
【0063】
また、X線手荷物検査装置100において、正面扉10と背面扉20とが、反転可能であるものとしてもよい。具体的には、図1等に示す状態から、X線手荷物検査装置100をY軸周りに180°反転させて、正面扉10を利用者HUの進行方向A1に関して相対的に奥側とし、背面扉20を進行方向A1に関して相対的に手前側とし、背面扉20が手荷物LUの取込み口を形成し、正面扉10が手荷物LUの取出し口を形成する態様に切り替え可能としてもよい。手荷物LUの取込み口と手荷物LUの取出し口とを入替え可能な構成とすることにより、例えば図1等において、仮に筐体SCの左側(+X側)に壁があるような場合であっても、上記のように筐体SCをY軸周りに反転させて正面扉10と背面扉20との役割を入れ替えた状態で設置し、かつ、ゲート装置GTを筐体SCの右側(-X側)に配置することで、利用者HUを大回りさせること等無く、検査が行える態様とすることが可能になる。
【符号の説明】
【0064】
10…正面扉(前面扉)、20…背面扉、30…検査部、31…X線発生器、32…X線センサー、33…回転ステージ、100…X線手荷物検査装置、100A…本体部分、500…検査システム、A1…進行方向、AX…回転軸、CB…制御基板、CT…情報処理部、DD1…矢印、DD2…矢印、FT…脚、GT…ゲート装置、HU…利用者、HU…所持者、LP…ランプ、LU…手荷物(荷物)、MT…端末、PW…電源部、RA…X線、SC…筐体、SE…各種センサー、SW…スイッチ(検査開始スイッチ)、SWr…扉ロック解除スイッチ、SWr…ロック解除スイッチ、SWs…緊急停止スイッチ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9