(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168156
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】ホットメルト磁性テープ、発泡成形用布状物およびその製造方法、発泡成形体複合物の製造方法、並びに車両用シート
(51)【国際特許分類】
C08J 9/12 20060101AFI20231116BHJP
B29C 39/10 20060101ALI20231116BHJP
B29C 39/24 20060101ALI20231116BHJP
B29C 44/00 20060101ALI20231116BHJP
B29C 44/36 20060101ALI20231116BHJP
D06M 15/333 20060101ALI20231116BHJP
B60N 2/90 20180101ALI20231116BHJP
【FI】
C08J9/12
B29C39/10
B29C39/24
B29C44/00 A
B29C44/36
D06M15/333
B60N2/90
【審査請求】有
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079841
(22)【出願日】2022-05-13
(11)【特許番号】
(45)【特許公報発行日】2023-04-05
(71)【出願人】
【識別番号】000222118
【氏名又は名称】東洋インキSCホールディングス株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】711004506
【氏名又は名称】トーヨーケム株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】505084044
【氏名又は名称】株式会社型技術事務所モート
(74)【代理人】
【識別番号】100103894
【弁理士】
【氏名又は名称】家入 健
(74)【代理人】
【識別番号】100124936
【弁理士】
【氏名又は名称】秦 恵子
(72)【発明者】
【氏名】石黒 秀之
(72)【発明者】
【氏名】原 憲一
(72)【発明者】
【氏名】山口 浩史
(72)【発明者】
【氏名】岩沢 敏雄
(72)【発明者】
【氏名】高橋 太
(72)【発明者】
【氏名】岩沢 良
【テーマコード(参考)】
3B087
4F074
4F204
4F214
4L033
【Fターム(参考)】
3B087DE03
3B087DE10
4F074AA16
4F074AA46
4F074AA63
4F074AA78
4F074CC10X
4F074CC10Y
4F204AB02
4F204AC05
4F204AD19
4F204AG03
4F204AG20
4F204AH26
4F204EA01
4F204EB01
4F204EB11
4F204EF05
4F214AB02
4F214AC05
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4F214AG03
4F214AG20
4F214AH26
4F214UA01
4F214UB01
4F214UB11
4F214UF05
4L033AA07
4L033AB07
4L033AC15
4L033CA28
(57)【要約】
【課題】生産性に優れるホットメルト磁性テープ、発泡成形用布状物およびその製造方法、発泡成形体複合物の製造方法、並びに車両用シートを提供する。
【解決手段】ホットメルト磁性物から形成された磁性層を有するホットメルト磁性テープであって、ホットメルト磁性物は、(i)環球法軟化点が100℃越え、150℃以下であり、(ii)エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)を含む熱可塑性樹脂と、磁性粉末(C)とを含有し、更に、ワックス(B)を含んでいてもよく、前記成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計100質量%中に、前記成分(A)を20~80質量%、前記成分(B)を0~8質量%、前記成分(C)を15~80質量%含有する発泡成形体用のホットメルト磁性テープ。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホットメルト磁性物から形成された磁性層を有するホットメルト磁性テープであって、
前記ホットメルト磁性物は、
(i)環球法軟化点が100℃越え、150℃以下であり、
(ii)エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)を含む熱可塑性樹脂と、磁性粉末(C)とを含有し、更に、ワックス(B)を含んでいてもよく、前記成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計100質量%中に、前記成分(A)を20~80質量%、前記成分(B)を0~8質量%、前記成分(C)を15~80質量%含有する、
発泡成形体用のホットメルト磁性テープ。
【請求項2】
前記ホットメルト磁性物の飽和磁化密度が、20~400emu/cm3であることを特徴とする請求項1記載のホットメルト磁性テープ。
【請求項3】
エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)の酢酸ビニル単量体に由来する構成単位が12~45質量%であることを特徴とする請求項1記載のホットメルト磁性テープ。
【請求項4】
ホットメルト磁性物が、不織布の表面の一部に含浸され、固定化されてなる発泡成形用布状物であり、
前記ホットメルト磁性物は、
(i)環球法軟化点が100℃越え、150℃以下であり、
(ii)エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)を含む熱可塑性樹脂と、磁性粉末(C)とを含有し、更に、ワックス(B)を含んでいてもよく、前記成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計100質量%中に、前記成分(A)を20~80質量%、前記成分(B)を0~8質量%、前記成分(C)を15~80質量%含む発泡成形用布状物。
【請求項5】
エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)の酢酸ビニル単量体に由来する構成単位が12~45質量%であることを特徴とする請求項4記載の発泡成形用布状物。
【請求項6】
前記ホットメルト磁性物の190℃、21.168Nでのメルトフローレイトが5~1000g/10分であることを特徴とする請求項4記載の発泡成形用布状物。
【請求項7】
不織布の表面に、請求項1~3のいずれかに記載のホットメルト磁性テープを配置し、加熱手段により、前記不織布の所望の位置に前記ホットメルト磁性テープを固定する固着工程と、
前記ホットメルト磁性テープを固定した前記不織布を成形型にセットし、加熱手段により立体的に前記不織布を加工成形する工程と、を備える発泡成形用布状物の製造方法。
【請求項8】
前記ホットメルト磁性テープは、長手方向に延在されており、
前記固着工程による前記ホットメルト磁性テープの前記不織布への固定部と、前記ホットメルト磁性テープの非固定部と、を切り離す分断工程を更に備え、
前記固着工程と前記分断工程を交互に行い、前記ホットメルト磁性テープを前記固定部単位で分断しながら、前記不織布の所望の位置にホットメルト磁性物を固定することを特徴とする請求項7に記載の発泡成形用布状物の製造方法。
【請求項9】
前記加熱手段が、超音波加熱であることを特徴とする請求項7記載の発泡成形用布状物の製造方法。
【請求項10】
不織布の表面の一部に、加熱手段を用いてホットメルト磁性物を浸み込ませて、請求項4~6のいずれかに記載の発泡成形用布状物を得る工程aと、
成形型の型面に、前記発泡成形用布状物を磁力によって仮固定する工程bと、
工程b後に、前記成形型に発泡樹脂を投入して発泡させて得られる発泡成形体と、前記発泡成形用布状物とを一体化して発泡成形体複合物を得る工程cと、
工程c後、前記発泡成形体複合物を前記成形型から取り出す工程dと、を備える発泡成形体複合物の製造方法。
【請求項11】
請求項4~6のいずれかに記載の発泡成形用布状物を備える車両用シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ホットメルト磁性テープに関する。また、発泡成形用布状物およびその製造方法に関する。更に、発泡成形体複合物の製造方法および車両用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
車両用シートは、フレームにスプリングが収容され、その上にクッション材が設けられている。このクッション材は、発泡ウレタンなどの発泡成形体、および発泡成形用布状物を有する。この発泡成形用布状物は、寒冷紗または不織布などが用いられ、発泡成形体の劣化防止、浸出防止およびスプリングとの接触による異音発生防止などのために、スプリングと当接する側に配置される。
【0003】
このようなクッション材は、立体成形した発泡成形用布状物を金型に仮固定し、その後、金型内に発泡樹脂を注入して発泡成形体を形成し、この発泡成形体と発泡成形用布状物を一体化する工程等を経て製造される。発泡成形用布状物の立体成形は、従来、裁断・縫製工程により行われてきたが、発泡成形用布状物の原反を成形型にセッティングし、加熱により立体的に加工成形する方法が知られている(特許文献1,2)。
【0004】
この立体成形した発泡成形用布状物を金型に効率よく仮固定させる方法として、金型内に永久磁石を埋設させ、所定の位置にホットメルト磁性物を固定した発泡成形用布状物を磁力によって仮固定する方法が提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006-281768号公報
【特許文献2】特開2009-220445号公報
【特許文献3】特開2018-3199号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
発泡成形用布状物を磁力により金型に仮固定する方法によれば、発泡成形用布状物の位置ズレおよび剥離を効果的に防止できるという利点がある。しかしながら、市場では、更に生産性に優れる発泡成形用布状物が求められている。
【0007】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、生産性に優れるホットメルト磁性テープ、発泡成形用布状物およびその製造方法、発泡成形体複合物の製造方法、並びに車両用シートの提供を目的とする。
本開示のホットメルト磁性テープおよび発泡成形用布状物は、車両用などのシートに用いられる発泡成形体複合物に用いて好適なものであるが、任意の用途に使用可能なものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、以下のホットメルト磁性テープ、発泡成形用布状物およびその製造方法、発泡成形体複合物の製造方法、並びに車両用シートを提供する。
[1]: ホットメルト磁性物から形成された磁性層を有するホットメルト磁性テープであって、
前記ホットメルト磁性物は、
(i)環球法軟化点が100℃越え、150℃以下であり、
(ii)エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)を含む熱可塑性樹脂と、磁性粉末(C)とを含有し、更に、ワックス(B)を含んでいてもよく、前記成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計100質量%中に、前記成分(A)を20~80質量%、前記成分(B)を0~8質量%、前記成分(C)を15~80質量%含有する、
発泡成形体用のホットメルト磁性テープ。
[2]: 前記ホットメルト磁性物の飽和磁化密度が、20~400emu/cm3であることを特徴とする[1]記載のホットメルト磁性テープ。
[3]: エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)の酢酸ビニル単量体に由来する構成単位が12~45質量%であることを特徴とする[1]または[2]記載のホットメルト磁性テープ。
[4]: ホットメルト磁性物が、不織布の表面の一部に含浸され、固定化されてなる発泡成形用布状物であり、
前記ホットメルト磁性物は、
(i)環球法軟化点が100℃越え、150℃以下であり、
(ii)エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)を含む熱可塑性樹脂と、磁性粉末(C)とを含有し、更に、ワックス(B)を含んでいてもよく、前記成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計100質量%中に、前記成分(A)を20~80質量%、前記成分(B)を0~8質量%、前記成分(C)を15~80質量%含む、発泡成形用布状物。
[5]: エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)の酢酸ビニル単量体に由来する構成単位が12~45質量%であることを特徴とする[4]記載の発泡成形用布状物。
[6]: 前記ホットメルト磁性物の190℃、21.168Nでのメルトフローレイトが5~1000g/10分であることを特徴とする[4]または[5]記載の発泡成形用布状物。
[7]: 不織布の表面に、[1]~[3]のいずれかに記載のホットメルト磁性テープを配置し、加熱手段により、前記不織布の所望の位置に前記ホットメルト磁性テープを固定する固着工程と、
前記ホットメルト磁性テープを固定した前記不織布を成形型にセットし、加熱手段により立体的に前記不織布を加工成形する工程と、を備える発泡成形用布状物の製造方法。
[8]: 前記ホットメルト磁性テープは、長手方向に延在されており、
前記固着工程による前記ホットメルト磁性テープの前記不織布への固定部と、前記ホットメルト磁性テープの非固定部と、を切り離す分断工程を更に備え、
前記固着工程と前記分断工程を交互に行い、前記ホットメルト磁性テープを前記固定部単位で分断しながら、前記不織布の所望の位置にホットメルト磁性物を固定することを特徴とする[7]に記載の発泡成形用布状物の製造方法。
[9]: 前記加熱手段が、超音波加熱であることを特徴とする[7]または[8]記載の発泡成形用布状物の製造方法。
[10]: 不織布の表面の一部に、加熱手段を用いてホットメルト磁性物を浸み込ませて、[4]~[6]のいずれかに記載の発泡成形用布状物を得る工程aと、
成形型の型面に、前記発泡成形用布状物を磁力によって仮固定する工程bと、
工程b後に、前記成形型に発泡樹脂を投入して発泡させて得られる発泡成形体と、前記発泡成形用布状物とを一体化して発泡成形体複合物を得る工程cと、
工程c後、前記発泡成形体複合物を前記成形型から取り出す工程dと、を備える発泡成形体複合物の製造方法。
[11]: [4]~[6]のいずれかに記載の発泡成形用布状物を備える車両用シート。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、生産性に優れるホットメルト磁性テープ、発泡成形用布状物およびその製造方法、発泡成形体複合物の製造方法、並びに車両用シートを提供できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施形態に係るホットメルト磁性テープの一例を示す模式的上面図。
【
図3】変形例に係るホットメルト磁性テープの一例を示す模式的上面図。
【
図5】実施形態に係る発泡成形用布状物の一例を示す部分拡大断面図。
【
図6】実施形態に係る発泡成形用布状物の一例を示す模式的斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示について詳細に説明する。なお、本発明の趣旨に合致する限り、他の実施形態も本発明の範疇に含まれることは言うまでもない。また、本明細書において「~」を用いて特定される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値の範囲として含むものとする。また、本明細書において「フィルム」、「シート」および「テープ」は同義であり、厚みや形状によって区別されないものとする。また、本明細書中に出てくる各種成分は特に注釈しない限り、それぞれ独立に一種単独でも二種以上を併用してもよい。
【0012】
本明細書において、「環球法軟化点」は、JIS K 6863に準拠して測定される温度を意味する。更に、「発泡成形体」とは、所定の樹脂から構成される発泡体をいう。発泡形状は特に限定されないが、球状気泡、略球状気泡、涙型気泡等が例示できる。各気泡が部分的に連結していてもよい。「熱可塑性樹脂」とは、加熱により溶融成形可能な特性を有する樹脂をいう。また、「ホットメルト」とは、常温で固体あるいは粘稠な状態にあり、加熱により溶融して軟化、流動状体あるいは液状となる性質をいう。また、「メルトフローレイト」(以下、MFRともいう)は、溶融状態にある樹脂の流動性を示す尺度の一つであり、JIS K7210に準拠して190℃、21.168Nの条件で測定した値である。
【0013】
1.ホットメルト磁性物
本開示のホットメルト磁性物(以下、本磁性物ともいう)は、環球法軟化点(以下、軟化点ともいう)が100℃越え、150℃以下のホットメルト接着剤である。本磁性物は、常温では固体であるが加熱により軟化あるいは液状化して、流動可能となる性質を有しており、磁石と引き合う磁性を有している。但し、磁力を要する用途の使用後は、酸化等により磁性を示さないものとなっていてもよい。
【0014】
本磁性物は、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)(以下、成分(A)ともいう)を含む熱可塑性樹脂および磁性粉末(C)(以下、成分(C)ともいう)を含有する。エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)は、エチレン単量体と、酢酸ビニル単量体との共重合により得られる共重合体である。ランダム共重合体、ブロック共重合体あるいは交互共重合体とすることができる。
【0015】
本磁性物の配合成分として、更に、ワックス(B)(以下、成分(B)ともいう)を添加してもよい。本磁性物において成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計100質量%中に、成分(A)を20~80質量%、成分(B)を0~8質量%、成分(C)を15~80質量%含む。成分(A)を20~80質量%とすることにより、加工性(成形性)を良好に保ちつつ、磁石への密着性を良好に保つことができる。成分(B)を8質量%以下とすることにより、型追従性を良好に保つことができる。また、成分(C)を15~80質量%とすることにより、磁石への密着性を良好に保ちつつ、後述する型追従性・切り離し性・加工性を良好に保つことができる。
【0016】
本磁性物によれば、生産性を格段に高めることができる。その主たる理由は、軟化点を100℃越え、150℃以下とし、且つ成分(A)、成分(B)および成分(C)を上記比率で配合する組合せにより、本磁性物を固定するための製造プロセスの設計自由度を高められることによる。100℃越えとすることにより水蒸気加熱を含めた加熱プロセスを行うことが可能となる一方で、150℃以下とすることにより、溶融性を適度なものとし、後述するホットメルト磁性物テープなどにおいて切り離し性を優れたものとすることができる。軟化点のより好適な範囲は105~140℃であり、更に好適な範囲は110~140℃である。本磁性物においてエチレン-酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル量、エチレン-酢酸ビニル共重合体のMFRを調整することにより、軟化点を調整することができる。
【0017】
ホットメルト磁性テープの優れた切り離し性と付着性を得る観点からは、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)における、酢酸ビニル単量体に由来する構成単位の割合を12~45質量%とすることが好ましい。この範囲とすることにより、ホットメルト磁性物の不織布などの被着体への追従性、切り離し性、および溶着性(付着性)のバランスを保つことができる。エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)における、酢酸ビニル単量体に由来する構成単位の割合のより好適な範囲は15~30質量%である。
【0018】
エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)は、本発明の特性を損なわない範囲において、エチレン単量体および酢酸ビニル単量体以外のその他の単量体を含むことができる。
【0019】
本磁性物100質量%において、成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計の含有率は60~100質量%であることが好ましい。この範囲とすることにより、接着性および切り離し性をより効果的に引き出すことができる。より好適な範囲は70~100質量%であり、更に好適な範囲は80~100質量%である。
【0020】
エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)のMFRは、例えば0.1g/10分以上、1000g/10分以下である。好ましくは、1g/10分以上、500g/10分以下、更に好ましくは、3g/10分以上、400g/10分以下である。MFRはJISK7210に準拠して測定される、190℃、21.168N荷重での10分間の流出量(g/10分)である。
【0021】
磁性粉末(C)は、磁石と引き合う磁性を有する粉末であり、好ましくは、鉄、ケイ素鉄、パーマロイ、ソフトフェライト、センダスト、パーメンジュール、電磁ステンレス、アモルファス、ナノ結晶などの軟磁性体を示す粉末状の磁性体が挙げられる。
【0022】
必要とされる磁力に応じて磁性粉末(C)の種類等を適宜設計すればよい。後述する発泡成形用布状物に用いる場合には、成形型に仮固定できる磁力を有していればよい。後述する発泡成形用布状物の場合、皺、たるみ、ずれなどを防止できる磁力を有していればよく、例えば、本磁性物の飽和磁化密度を20~400emu/cm3とすることができる。この範囲とすることにより、磁石への密着性と、成形型への追従性の両立を図ることができる。飽和磁化密度は、磁性粉末の種類および含有率により調整できる。
【0023】
磁性粉末(C)の平均粒径は用途により設計可能である。例えば1~500μmとすることができる。この範囲とすることにより、本磁性物の分散性を良好に保ちつつ、不織布に染みこませたときに磁性粉末(C)の沈降速度を適切に保ち、均質性・含浸性を高めることができる。磁性粉末(C)の平均粒径のより好ましい範囲は、15~100μmである。
【0024】
ワックス(B)は、本磁性物の流動性および耐熱性をよくする役割を担う。ワックス(B)の具体例として、カルナバワックス、キャンデリラワックス、モンタンワックス、パラフィンワックス、マイクロワックス、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、もしくはこれらのワックスの酸化物が挙げられる。また、エチレン-アクリル酸共重合体ワックス、エチレン-メタクリル酸共重合体ワックスも例示できる。ワックス(B)は単独もしくは2種類以上を組み合わせて使用される。特に好ましくは、フィッシャートロプシュワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックスである。
【0025】
ワックス(B)の好適例として、分子量300~10,000のJISK7210に準拠したMFRが測定できないほどの低粘度体が挙げられる。ワックス(B)の動粘度(JIS K2283)は30mm2/s以下であることが好ましく、20mm2/s以下であることがより好ましく、10mm2/s以下であることが更に好ましい。
【0026】
ワックス(B)の融点は、例えば70~160℃であり、ホットメルト磁性物の軟化点を最適にする観点からは、融点が80~150℃が好ましく、より好ましくは90~140℃であり、更に好ましくは100~130℃である。融点はDSC法で測定される温度である。
【0027】
本磁性物の190℃、21.168NでのMFRは、5~1000g/10分であることが好ましい。上述した特定範囲の軟化点と、前記MFRを組み合わせることにより、補強用布状物への含浸性をより効果的に高めることが可能となる。また、後述する発泡成形用布状物の製造において生産性を格段に高めることができる。MFRのより好適な範囲は10~300g/10分で、さらに好ましくは10~100g/10分ある。本磁性物においてエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)の酢酸ビニルの必要量、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)の酢酸ビニルのMFRを調整することにより、本磁性物のMFRを調整することができる。
【0028】
本磁性物は、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)以外の熱可塑性樹脂を用いることができる。また、本磁性物は、磁性粉末(C)の分散性および流動性を高めるために、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において他の添加剤を混合してもよい。他の添加剤としては、鉱物油軟化剤、ガラスフィラー、シリカ繊維、流動パラフィンが例示できる。エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)以外の熱可塑性樹脂および他の添加剤を、本磁性物100質量%中、合計で好ましくは40質量%以下混合させることができる。
【0029】
2.ホットメルト磁性物の製造方法
本開示のホットメルト磁性物は、例えば、撹拌機を備えた溶融釜で熱可塑性樹脂、必要に応じてワックス(B)を溶融したものに磁性粉末(C)を混合分散することにより調製することができる。また、配合成分を押出機で混合分散させ、溶融した混合物を押出機の先端のノズルから押出すことにより本磁性物を製造してもよい。
【0030】
本磁性物は配合成分を混合し、所望の形状に成形したものを用いてもよい。所望の形状として、顆粒状、ペレット状、面状、あるいはブロック状が例示できる。これらの方法は、公知の方法を制限なく利用することができる。
【0031】
前記面状の具体例として、シート状、網状および布状が例示できる。シート状の形成は、例えば、離型シートにTダイ方式で磁性層を形成する方法が例示できる。Tダイ方式の他、公知の方法を適用できる。長尺状のシート状(テープ状)とするには、シートを長尺状に分割して巻き取る方法が例示できる。
【0032】
本磁性物は、熱、超音波、電磁誘導加熱などの加熱手段によって溶融、流動化するので、加熱手段により各種被着体に含浸させたり、被着体上に塗工したりすることができる。冷却時の型によって要求の形状に成形することが容易であるため、不織布などの被着体の目標の位置に、要求される形状の磁性体を固定化させることができる。被着体としては、不織布、寒冷紗をはじめとする各種繊維;炭素繊維等のプリプレグ;ポリエチレンなどの各種プラスチックシートが例示できる。
【0033】
本磁性物は、本磁性物から形成された磁性層を有するホットメルト磁性テープとして好適に用いることができる。また、本磁性物は、不織布に本磁性物を含浸せしめた補強用布状物の製造に好適に用いることができる。
【0034】
3.ホットメルト磁性テープ
本開示のホットメルト磁性テープ(以下、本磁性テープともいう)は、上述した本磁性物から形成された層を有する。
【0035】
図1に本磁性テープの一例を示す模式的平面図を、
図2に
図1のII-II切断部断面図を示す。磁性テープ1は、ホットメルト磁性物から形成された磁性層2を有する。磁性層2の厚みは、例えば50~3000μmとすることができる。この範囲とすることにより、磁石への接着性およびテープの加工性が良好になる。更に好ましくは100~1000μmで、さらに好ましくは300~500μmである。短手方向の幅は用途に応じて任意に設計すればよく、例えば5~50mmとすることができる。
【0036】
磁性テープ1は、
図1に示すように長手方向に延在されており、セロハンテープのように、磁性テープ1の長手方向の任意の位置、例えば、
図1中の点線の位置で分断されて使用することができる。本磁性テープは、使用前まで離型層や保護層が積層されていてもよい。また、磁性層が2層以上の積層体から構成されていてもよい。積層体の場合、少なくとも一層の磁性層を本開示のホットメルト磁性物から形成する。更に、本磁性テープは、ホットメルト磁性層とホットメルト非磁性層を有する積層体であってもよい。
【0037】
本磁性テープは種々の用途に適用できる。被着体に含浸、塗工、積層する用途等として利用できる。特に、後述する発泡成形用布状物、発泡成形体複合物などの発泡成形体用の用途をはじめとする各種用途に好適である。発泡成形用布状物は、不織布の表面の一部に、ホットメルト磁性物が浸み込み、固定化されてなる布状物である。発泡成形用布状物の用途の場合、布状物の厚みを1としたときの磁性層の厚み割合は例えば0.01~2とすることができる。磁性層の厚み割合は0.03~1がより好適であり、0.05~1が更に好適である。
【0038】
従来、ホットメルト磁性物を加熱により液状化し、不織布等の被着体にスタンプすることにより製造する方法が用いられてきた。本磁性テープによれば、不織布等の被着体表面に、本磁性テープを配置し、加熱手段により簡便に本磁性テープを固定することができる。また、本磁性層は、非加熱部である非固定部の本磁性テープを引き離す方向に軽く引っぱることにより、非固定部と、加熱溶融により染みこみ、冷却により固着せしめられた固定部とを容易に分断することができる。
【0039】
(変形例)
本磁性テープは、
図3、
図4に示すように、離型層3上に所定の間隔で磁性層2aを形成してもよい。この方法によれば、所望の形状の磁性層を容易に被着体に固着せしめることが可能である。また、本磁性テープを
図1に示すような長尺状とする他、縦・横比を任意のシートとすることもできる。また、貼付対象の形状に応じた所望の形状、例えば、円形状に形成するなど、自在に設計することが可能である。
【0040】
4.ホットメルト磁性テープの製造方法
本開示のホットメルト磁性テープの好適な製造方法について以下に説明する。但し、以下の製造方法に限定されず、種々の方法で製造できる。
【0041】
本磁性テープは、例えば、離型シート上に本磁性物を塗工して所定の塗布厚を有する磁性層を形成する工程等を経て得ることができる。磁性層の塗工は加熱して軟化あるいは液状化させ、コーターを用いて層状に形成する方法が例示できる。コーターとして、ブレードコーター、バーコーター、コンマコーター、グラビヤコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、ダイコーターなどが挙げられる。塗工後、冷却することにより粘度を調整するために、有機溶剤を添加してもよい。有機溶剤を用いた場合には、温風乾燥炉にて有機溶剤を除去する。磁性層を形成後、離型シートを剥離してもよいし、使用直前まで離型シートを積層させておいてもよい。
【0042】
また、本磁性テープは、磁性層を単層または複層で構成することができる。また、他の層を積層してもよい。他の層としては、ホットメルト非磁性層、保護層等が例示できる。本磁性テープは必要に応じてロール状に巻き取ることができる。
【0043】
5.発泡成形用布状物
本開示の発泡成形用布状物(以下、本布状物ともいう)は、不織布の表面の一部に、ホットメルト磁性物が含浸せしめられ、固定されてなるものである。
図5に、ホットメルト磁性物が染みこんで固定されてなる本布状物の状態を説明するための模式的部分拡大図を示す。同図に示すように、発泡成形用布状物4は、ホットメルト磁性物5が不織布6の表面の一部に染みこみ、固定化されてなる。浸み込み、固定化されているとは、ホットメルト磁性物5が加熱溶融されて軟化した状態で、不織布6の特定箇所の表面に軟化したホットメルト磁性物5が浸透した後、風乾又は冷却されて、固形状態となり、固定化されたことを指している。ホットメルト磁性物5は、
図5に示すように、不織布の厚み方向の一部にまで浸透する態様の他、不織布の最下部まで含浸されていてもよい。また、本磁性物が不織布の表面から凸状に形成されていてもよいし(
図5参照)、本磁性物の表面と不織布の表面が実質的に一致していてもよい。
【0044】
不織布の種類は限定されないが、有機繊維が好適に用いられる。不織布を構成する繊維の種類、太さは特に制限されない。例えばポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル繊維;ポリエチレン、ポリプロピレン(ホモ、ランダムなどコポリマーであってもよい)などのポリオレフィン繊維;ポリアミド繊維;などを単独で、又は複数の種類の有機繊維を組み合わせて用いることができる。好ましくは、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエチレン繊維、融点が110~160℃の低融点ポリエステル繊維が例示できる。また、ポリエステル/ポリエチレン、ポリエステル/低融点ポリエステル、ポリプロピレン/ポリエチレンのバイコンポーネント繊維を用いてもよい。また、構成する有機繊維の繊維径は5~30μm、繊維(太さ)は1~33dtex程度が好ましい。不織布は、単層品に限らず、それらを積層した複層品であってもよい。不織布の厚さは、例えば、0.5~10mm程度とすることができる。
【0045】
6.発泡成形用布状物の製造方法
本開示の発泡成形用布状物の好適な製造方法について以下に説明する。但し、以下の製造方法に限定されず、種々の方法で製造できる。
【0046】
本開示の発泡成形用布状物の好適な製造方法は、不織布の表面に、本磁性テープを配置し、加熱手段により、不織布の所望の位置に本磁性テープを固定する固着工程と、本磁性テープを固定した不織布を成形型にセットし、加熱により立体的に加工成形する工程を有する。加熱温度は、95℃以上120℃以下が好ましい。
【0047】
本磁性テープの形状は特に限定されず種々の形状とすることができる。好適な例として、短手方向(幅方向)を貼り付け幅とし、長尺状の長手方向に延在されたテープが例示できる。このような長尺状のテープを用いることにより、例えば、以下のように効率的に本磁性物を不織布に固定することができる。即ち、前述の固着工程と、本磁性テープの不織布への固定部と、ホットメルト磁性テープの非固定部とを切り離す分断工程とを交互に行い、本磁性テープの長手方向を固定部単位で分断しながら、不織布の所望の位置に本磁性物を効率的に固定することができる。
【0048】
固着工程は、不織布の原反をセットし、その上に本磁性テープを配置し、超音波加熱などの加熱手段により本磁性テープの磁性層を溶融し、不織布に磁性層を浸み込ませ、冷却することにより行うことができる。また、離型層側を上面とし、上から超音波やアイロンなどの加熱手段で磁性層を溶融して、不織布に染みこませ、その後に離型シートを剥離する方法が例示できる。
【0049】
本磁性物は、軟化点が100℃越えのものであるため、例えば水蒸気加熱を行った場合においても本磁性物の不織布からの染み出し、広がりを効果的に防止することができる。このため、不織布の原反を立体成形してから、立体成形した不織布にホットメルト磁性物をスタンプ方式などで固定する方式に比べて生産性を顕著に高めることができる。
【0050】
図6に、立体成形した後の本布状物の模式的斜視図を示す。本布状物によれば、本磁性物が固定されているので、発泡成形するための金型内への仮固定を容易に行うことができる。立体成形した本布状物のセットおよび取り出しを容易にする観点からは、金型内の磁石を電磁石とし、磁力をオン・オフ切り替え可能にすることが好ましい。
【0051】
本布状物によれば、軟化点が比較的高く、且つ、特定の配合成分を有するホットメルト磁性物を組み合わせることにより、ホットメルト磁性物と不織布との相溶性を高められる。また、軟化点が100℃越え、150℃以下である本磁性物を用いることにより、原布の不織布に本磁性物を固定化させてから、立体加工成形するときの温度範囲の設計自由度を高めることができる。また、不織布の立体成形の成形型において、水蒸気加熱を行っても、本磁性物が軟化しにくいので、成形型の汚染を防止できる。これらの結果、生産性を格段に高められる。
【0052】
7.発泡成形体複合物
本発泡成形体複合物は、本布状物と発泡成形体とが一体成形された構成を有する。発泡成形体は、発泡樹脂を成形することにより得られる。発泡樹脂としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、メラミン樹脂、ポリオレフィン樹脂などが例示できる。この中でも、柔らかくて伸縮性に富んだ軟質のウレタン樹脂が好適である。
【0053】
8.発泡成形体複合物の製造方法
本開示の発泡成形体複合物の製造方法の好適な一例を以下に説明する。但し、本発泡成形体複合物は以下の方法に限定されるものではない。
まず、不織布の表面の一部に、加熱手段を用いてホットメルト磁性物を浸み込ませて発泡成形用布状物を得る(工程a)。次いで、成形型の型面に、前記発泡成形用布状物を磁力によって仮固定する(工程b)。磁力は、例えば、金型内に磁石を設置できる。電磁石により磁力がオン・オフ自在に構成されていてもよい。
【0054】
工程b後、前記成形型に発泡樹脂を投入して、発泡させて得られる発泡成形体と、前記発泡成形用布状物とを一体化して発泡成形体複合物を得る(工程c)。発泡樹脂は例えばウレタン樹脂を用いることができる。そして、工程c後、発泡成形体複合物を成形型から取り出す(工程d)。これらの工程を経て発泡成形体複合物を製造することができる。
【0055】
9.車両用シート
本開示の車両用シートは、本布状物を有する。発泡成形体複合物を備えるとも言い換えることができる。車両用シートは、例えば、フレームにスプリングが収容され、その上に、発泡ウレタンなどの発泡成形体と発泡成形用布状物が一体化された発泡成形体複合物を備えるクッション材が設けられている。
【0056】
<<実施例>>
次に、比較例と対比しながら本発明の具体的な実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0057】
ホットメルト磁性物に用いた原料を以下に示す。
α.エチレン-酢酸ビニル共重合体
A-1:ウルトラセン13B53D(東ソー社製、エチレン―酢酸ビニル共重合体、酢ビ含有42質量%、MFR:70g/10分(190℃×21.168N)、融点:<50℃
A-2:ウルトラセン722(東ソー社製、エチレン―酢酸ビニル共重合体、酢ビ含有28質量%、MFR:400g/10分(190℃×21.168N)、融点:58℃
A-3:ウルトラセン720(東ソー社製、エチレン―酢酸ビニル共重合体、酢ビ含有28質量%、MFR:150g/10分(190℃×21.168N)、融点:59℃
A-4:ウルトラセン751(東ソー社製、エチレン―酢酸ビニル共重合体、酢ビ含有28質量%、MFR:5.7g/10分(190℃×21.168N)、融点:65℃
A-5:ウルトラセン683(東ソー社製、エチレン―酢酸ビニル共重合体、酢ビ含有20質量%、MFR:800g/10分(190℃×21.168N)、融点:74℃
A-6:ウルトラセン681(東ソー社製、エチレン―酢酸ビニル共重合体、酢ビ含有20質量%、MFR:350g/10分(190℃×21.168N)、融点:72℃
A-7:ウルトラセン633(東ソー社製、エチレン―酢酸ビニル共重合体、酢ビ含有20質量%、MFR:20g/10分(190℃×21.168N)、融点:78℃
A-8:ウルトラセン631(東ソー社製、エチレン―酢酸ビニル共重合体、酢ビ含有20質量%、MFR:1.5g/10分(190℃×21.168N)、融点:80℃
A-9:ウルトラセン710(東ソー社製、エチレン―酢酸ビニル共重合体、酢ビ含有18質量%、MFR:18g/10分(190℃×21.168N)、融点:71℃
A-10:ウルトラセン630(東ソー社製、エチレン―酢酸ビニル共重合体、酢ビ含有15質量%、MFR:1.5g/10分(190℃×21.168N)、融点:90℃
A-11:ウルトラセン625(東ソー社製、エチレン―酢酸ビニル共重合体、酢ビ含有15質量%、MFR:14g/10分(190℃×21.168N)、融点:92℃
A-12:ウルトラセン526(東ソー社製、エチレン―酢酸ビニル共重合体、酢ビ含有7質量%、MFR:25(190℃×21.168N)、融点:97℃
【0058】
β.ワックス(B)
B-1:ビスコール660-P(三洋化成工業社製ポリプリピレンワックス、融点:145℃)
B-2:サソールH1(南アフリカ・サソール社製フィッシャートロプッシュワックス、融点:110℃)
B-3:ポリワックス1000(アメリカ・NuCera社製ポリエチレンワックス、融点:113℃)
【0059】
γ.磁性粉末(C)
C-1.JIP300A-120(JFEスチール社製、磁性体粉末)
C-2.70KA(神戸製鋼社製、磁性体粉末)
【0060】
δ.添加剤
D-1.酸化防止剤:IRGANOX1010(BASF社製)
D-2.ブロッキング防止剤:インクロスリップC(クローダ社製)
【0061】
なお、エチレン-酢酸ビニル共重合体の融点は、JIS K7121に従って測定した。また、ワックスの融点は、DSC法で測定した。
【0062】
[1]ホットメルト磁性物の製造
各実施例および比較例のホットメルト磁性物を以下の方法により製造した。即ち、表1に示す配合比で、エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)、必要によりワックス(B)および必要に応じて各種添加剤をヘンシェルミキサーで5分間プリブレンドした。次いで、プリブレンド物を押出機のホッパーに投入し、スクリューフィーダを用いて押出機に供給した。また、別のスクリューフィーダを用いて表1の配合比となるように磁性粉末(C)を押出機に投入し、混練し、下記条件で押出し工程を行うことにより、実施例1~20、比較例1~5に係るホットメルト磁性物を得た。
(押出条件)
押出機:アイ・ケー・ジー社製の同方向回転二軸押出機PMT32-40.5
バレル温度:80~180℃(供給口80℃)MFRなどにより適宜調整した。(MFRに応じてバレル温度を調整した。)
スクリュー回転速度:30~100rpm
供給速度:5kg/hr
【0063】
【0064】
各実施例および比較例の本磁性物の軟化点、MFR、飽和磁化密度、並びに本磁性テープの磁性層の厚みは、以下の方法で測定した。測定結果を表2に示す。
【0065】
<環球法軟化点>
各実施例および比較例のホットメルト磁性物の軟化点は、JIS K-6863ホットメルト接着剤の軟化点試験方法に従って求めた。溶媒はグリセリンを使用した。
【0066】
<MFR>
各実施例および比較例のホットメルト磁性物のMFRは、JIS K7210に準拠して190℃、21.168Nの条件で測定した。
【0067】
<飽和磁化密度>
ホットメルト磁性物の飽和磁化測定は、振動試料型磁力計(VSM) BHV-50(理研電子(株)社製)を用いて測定した。
【0068】
[2]ホットメルト磁性テープ作製
PETフィルム/離型処理層(シリコーン処理)の離型処理層上に、Tダイにより、各実施例、比較例のホットメルト磁性物を用いてホットメルト磁性層を形成し、PETフィルム/離型処理層/ホットメルト磁性層のシートを得た。得られた各シートを、カッタを用いて幅13mmの長尺状に切断し、各実施例および比較例に係るホットメルト磁性テープを得た。
押出ラミネーター:ムサシノキカイ製400M/MテストEXTラミネーター
ダイ直下樹脂温度:80~280℃(MFRなどにより調整した。)
加工速度:1~30m/分(磁性層のシートの厚みを加工速度などでコントロールした。)
Tダイ幅:400mm
冷却ロール表面温度:20~25℃
<磁性層の厚み>
実施例等のホットメルト磁性層の厚みをJ&T測定器 デジタルシックスネスゲージデジタル厚さ測定器(ノギス電子社製)により求めた。
【0069】
【0070】
[3]発泡成形用布状物の作製
不織布として、三井化学社製タフネル(ポリエステル短繊維(繊度2.2dtex)70質量%と、ポリエチレンとポリプロピレンのバイコンポーネント短繊維(繊度2.2dtex)30質量%との混合した繊維を原料とし、カード法で作られた目付140g/m2の単層構成の乾式不織布)を用いた。
【0071】
上記の立体加工前の不織布(5cm×10cm)に、表2で示した厚みの各実施例・比較例のホットメルト磁性テープを載置し、超音波シール機(ソノテック社製、超音波発信機 SH-3510(500W仕様)、超音波振動子 SF-8500RR(22KHZ使用))で1秒加熱することにより、各実施例および比較例に係る補強用布状物を得た。
【0072】
<浸み込み性評価>
上記不織布上に、13mm幅のホットメルト磁性物テープを載置し、15mm×15mmの領域を超音波シール機(超音波発信機 SH-3510(ソノテック社製、500W仕様、22KHZ使用)および超音波振動子 SF-8500RR(ソノテック社製))で1秒加熱して、ホットメルト磁性物を有機繊維の不織布に浸み込ませた。せん断強度を測定する為に、ホットメルト磁性テープの上にガムテープで補強して、不織布と磁性テープを引張試験機でせん断強度を測定し、ホットメルト磁性物の不織布への浸み込み性について、以下の基準で評価した。
5:磁性物テープが、材破またはせん断強度が20N以上である。
4:不織布が材破して、せん断強度が10N以上20N未満である。
3:不織布が材破して、せん断強度が5N以上10N未満である。
2:不織布が材破して、せん断強度が1N以上5N未満である。
1:不織布に染みこんでいない、またはせん断強度が1N未満である。
2~5を合格、1を不合格とした。
【0073】
<切り離し性評価>
上記不織布上に、13mm幅の長尺状のホットメルト磁性物テープを載置し、15mm×15mmの領域を超音波シール機(超音波発信機 SH-3510(ソノテック社製、500W仕様)、超音波振動子 SF-8500RR(22KHZ使用))で1秒加熱した。その後、超音波処理していない未固着部の本磁性テープを引っ張り、超音波処理された領域(不織布への固定部)と、超音波処理されていないテープ(不織布に固定されていない部分)の境界で切り離し性を以下の基準で評価した。
5:糸曳きなく切り離しができる。
4:切り離せるが、糸曳き長さ3mm未満の糸が発生する。
3:切り離せるが、糸曳き長さ3mm以上5mm以下の糸が発生する。
2:切り離せるが、長さ5mm以上の糸が発生する。
1:切り離すことができない。
2~5を合格とし、1を不合格とした。
なお、比較例1は、溶融性試験でホットメルト磁性物が不織布に浸み込まず、補強用布状物の作製できなかった。以後、補強用布状物の作製できない場合、表中に‘-’と記載する。
【0074】
<補強用布状物の磁石への吸着性>
各実施例および比較例に係る補強用布状物に重りを付けて、質量2.5g、直径10mmの永久磁石(2800G)を持ち上げることによって、ホットメルト磁性テープの磁石への吸着性を以下の基準で評価した。
5:20gの重りを付けても落下しない。
4:20gの重りを付けると落下するが、15gの重りを付けても落下しない。
3:20,15gの重りを付けると落下するが、10gの重りを付けて落下しない。
2:10,15,20gの重りを付けると落下するが、5g重りを付けても落下しない。
1:5、10,15,20いずれの重りを付けても落下する。
2~5を合格とし、1は不合格とした。
なお、比較例1、5は、溶融性試験でホットメルト磁性物が不織布に浸み込まず、ホットメルト磁性物が固着された補強用布状物を作製できなかった。
【0075】
<付着性評価>
有機繊維の不織布にホットメルト磁性物テープを浸み込ませた発泡成形用布状物を用意した。次いで、直径1cmの丸い磁石(ニッケルメッキのネオジウム磁石:DAISO社製)が埋め込まれ、且つ表面に露出したポリカーボネートシート(以下、「PC」ともいう)からなる成形型に発泡成形用布状物をセットした。そして、水蒸気加熱により発泡成形用布状物を立体成形した。成形された発泡成形用布状物を10秒間放置・冷却した。その後、発泡成形用布状物を剥がした。そして、各実施例および比較例に係るホットメルト磁性物がPCおよび磁石に付着するか否かを以下の基準で評価した。なお、磁石の表面温度は100℃、PCの表面温度は90℃であった。
5:まったく付着しない。
4:PCおよび磁石の少なくとも一方に点状にホットメルト磁性物が付着した。
3:PCおよび磁石の少なくとも一方に1割未満の面積でホットメルト磁性物が付着した。
2:PCおよび磁石の少なくとも一方に1割以上3割未満の面積でホットメルト磁性物が付着した。
1:PCおよび磁石の少なくとも一方に3割以上の面積でホットメルト磁性物が付着した。
2~5を合格とし、1は不合格とした。
なお、比較例1及び5は、溶融性試験・切離し性試験でホットメルト磁性物が不織布に浸み込まなかった又は及び切り離しができなかったため、ホットメルト磁性物が固着された補強用布状物の作製ができなかった。
【0076】
<型追従性>
屈曲部をもつ、成形型であるPC上に、ホットメルト磁性物が固定された不織布をセットし、水蒸気加熱により不織布を成形した。前記PCの屈曲部として、曲げ角度が157.5°、135°、112.5および90°の4種の領域で試験を行った。ホットメルト磁性物を含む補強用布状物の、前記屈曲部を含むPC上への追従性について以下の基準で評価した。
5:曲げ角度157.5°、135°、112.5°及び90°のPCに追従し、目視において浮きが認められない。
4: 曲げ角度157.5°、135°及び112.5°のPC追従し、目視において浮きは確認されないが、90°のPCに浮きが認められる。
3: 曲げ角度157.5°及び135°のPCの角度に追従し、目視において浮きがないが、112.5°及び90°のPCに浮きが認められる。
2: 曲げ角度157.5°のPCの角度に追従し、目視において浮きは確認されないが、135°、112.5°及び90°のPCに浮きが認められる。
1:曲げ角度157.5°のPCにおいて浮きが認められた。
2~5を合格とし、1は不合格とした。
なお、比較例1及び5は、溶融性試験・切離し性試験でホットメルト磁性物が不織布に浸み込まなかった又は切り離しができなかったためホットメルト磁性物が付いた補強用布状物の作製できなかった。
【0077】
【0078】
環球軟化点が150℃を超えた比較例1は、切り離し性、溶融性および型追従性に課題があった。ワックス(B)の含有量が8質量%を超えた比較例2,3は、付着性に課題があった。また、磁性粉末(C)の含有率が15質量%未満である比較例4は、切り離し性、溶融性等には優れるものの磁石への吸着性に課題があった。逆に、磁性粉末(C)の含有率が80質量%越えの比較例5は、溶融性等には優れるものの切り離し性に課題があった。これに対し、本磁性物を用いた実施例1~20においては、磁石への吸着性、切り離し性、溶融性、付着性および型追従性において優れていることが確認された。
【符号の説明】
【0079】
1,1a 磁性テープ
2,2a 磁性層
3 離型層
4 発泡成形用布状物
5 ホットメルト磁性物
6 不織布
【手続補正書】
【提出日】2023-01-31
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホットメルト磁性物から形成された磁性層を有するホットメルト磁性テープであって、
前記ホットメルト磁性物は、
(i)環球法軟化点が105℃以上、140℃以下であり、
(ii)酢酸ビニル単量体に由来する構成単位が15~30質量%であるエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)を含む熱可塑性樹脂と、磁性粉末(C)とを含有し、更に、ワックス(B)を含んでいてもよく、前記成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計100質量%中に、前記成分(A)を20~80質量%、前記成分(B)を0~8質量%、前記成分(C)を15~80質量%含有する、
発泡成形体用のホットメルト磁性テープ。
【請求項2】
前記ホットメルト磁性物の飽和磁化密度が、20~400emu/cm3であることを特徴とする請求項1記載のホットメルト磁性テープ。
【請求項3】
長手方向に延在された前記ホットメルト磁性テープを不織布に配置して、加熱により前記ホットメルト磁性物を前記不織布の表面の一部に含浸して固定し、当該固定した部分と非固定部分とを分断することにより、前記ホットメルト磁性物が固定化された発泡成形用布状物を得る用途に用いられる請求項1に記載のホットメルト磁性テープ。
【請求項4】
ホットメルト磁性物が、不織布の表面の一部に含浸され、固定化されてなる発泡成形用布状物であり、
前記ホットメルト磁性物は、
(i)環球法軟化点が105℃以上、140℃以下であり、
(ii)酢酸ビニル単量体に由来する構成単位が15~30質量%であるエチレン-酢酸ビニル共重合体(A)を含む熱可塑性樹脂と、磁性粉末(C)とを含有し、更に、ワックス(B)を含んでいてもよく、前記成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計100質量%中に、前記成分(A)を20~80質量%、前記成分(B)を0~8質量%、前記成分(C)を15~80質量%含む発泡成形用布状物。
【請求項5】
前記ホットメルト磁性物の190℃、21.168Nでのメルトフローレイトが5~1000g/10分であることを特徴とする請求項4記載の発泡成形用布状物。
【請求項6】
ホットメルト磁性テープは、長手方向に延在されており、
不織布の表面に、前記ホットメルト磁性テープを配置し、加熱手段により、前記不織布の所望の位置に前記ホットメルト磁性テープを固定する固着工程と、
前記固着工程による前記ホットメルト磁性テープの前記不織布への固定部と、前記ホットメルト磁性テープの非固定部と、を切り離す分断工程と、
前記ホットメルト磁性テープを固定した前記不織布を成形型にセットし、加熱手段により立体的に前記不織布を加工成形する工程とを備え、
前記ホットメルト磁性テープは、ホットメルト磁性物から形成された磁性層を有し、
前記ホットメルト磁性物は、
(i)環球法軟化点が100℃越え、150℃以下であり、
(ii)エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)を含む熱可塑性樹脂と、磁性粉末(C)とを含有し、更に、ワックス(B)を含んでいてもよく、前記成分(A)、成分(B)および成分(C)の合計100質量%中に、前記成分(A)を20~80質量%、前記成分(B)を0~8質量%、前記成分(C)を15~80質量%含有しており
前記固着工程と前記分断工程を交互に行い、前記ホットメルト磁性テープを前記固定部単位で分断しながら、前記不織布の所望の位置にホットメルト磁性物を固定する発泡成形用布状物の製造方法。
【請求項7】
前記環球法軟化点が105℃以上、140℃以下であり、
前記エチレン-酢酸ビニル共重合体(A)が、酢酸ビニル単量体に由来する構成単位が15~30質量%である請求項6に記載の発泡成形用布状物の製造方法。
【請求項8】
前記加熱手段が、超音波加熱であることを特徴とする請求項6記載の発泡成形用布状物の製造方法。
【請求項9】
不織布の表面の一部に、加熱手段を用いてホットメルト磁性物を浸み込ませて、請求項4又は5に記載の発泡成形用布状物を得る工程aと、
成形型の型面に、前記発泡成形用布状物を磁力によって仮固定する工程bと、
工程b後に、前記成形型に発泡樹脂を投入して発泡させて得られる発泡成形体と、前記発泡成形用布状物とを一体化して発泡成形体複合物を得る工程cと、
工程c後、前記発泡成形体複合物を前記成形型から取り出す工程dと、を備える発泡成形体複合物の製造方法。
【請求項10】
請求項4又は5に記載の発泡成形用布状物を備える車両用シート。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0056
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0056】
<<実施例>>
次に、比較例と対比しながら本発明の具体的な実施例に基づいて説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例1、2、5、10、11、17は、特許請求の範囲に整合させることを目的として参考例1、2、5、10、11、17と読み替えるものとする。