(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168161
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】電源を有する装置および試験ボード
(51)【国際特許分類】
G05F 1/56 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
G05F1/56 310N
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022079850
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】390005175
【氏名又は名称】株式会社アドバンテスト
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松浦 邦博
(72)【発明者】
【氏名】竹内 博昭
【テーマコード(参考)】
5H430
【Fターム(参考)】
5H430BB01
5H430BB09
5H430BB11
5H430CC05
5H430EE04
5H430EE17
5H430FF01
5H430FF13
5H430GG08
5H430HH03
5H430LA04
5H430LA06
5H430LB06
(57)【要約】 (修正有)
【課題】負荷の消費電流が急激に増加した場合においても、電圧降下を許容範囲内に抑える安定した電力を供給する電源及び試験ボードを提供する。
【解決手段】装置600は、正電位と電源出力端子102との間に接続されたスイッチング素子105と、電源出力端子の出力電圧を目標電圧に近付けるようにスイッチング素子を制御する制御回路420と、電源出力端子に対して負荷である被試験デバイス(DUT)145と並列に接続されたキャパシタ150と、電源出力端子に対してキャパシタと並列に接続され、スイッチング素子のオンオフの状態に依存せず電源出力端子から電流を流出させる電流源660と、を備える。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
正電位と電源出力端子との間に接続されたスイッチング素子と、
前記電源出力端子の出力電圧を目標電圧に近付けるように前記スイッチング素子を制御する制御回路と、
前記電源出力端子に対して負荷と並列に接続されたキャパシタと、
前記電源出力端子に対して前記キャパシタと並列に接続され、前記スイッチング素子のオンオフの状態に依存せず前記電源出力端子から電流を流出させる電流源と
を備える装置。
【請求項2】
前記電流源は、前記負荷に電流が流れていない状態において、前記スイッチング素子を飽和領域に維持する電流を前記電源出力端子から流出させる請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記電流源は、前記電源出力端子および接地電位の間に接続された抵抗を有する請求項2に記載の装置。
【請求項4】
前記電流源は、前記電源出力端子から予め定められた大きさの電流を流出させる定電流源である請求項2に記載の装置。
【請求項5】
前記電流源は、前記電源出力端子から前記負荷へと供給する最大電流の10%以下の電流を前記電源出力端子から流出させる請求項2に記載の装置。
【請求項6】
前記電流源は、前記電源出力端子から前記負荷へと供給する最大電流の0.055%以上の電流を前記電源出力端子から流出させる請求項2に記載の装置。
【請求項7】
前記スイッチング素子、および前記制御回路を有し、前記電源出力端子から電源電力を出力する電源ユニットと、
前記電源ユニットに着脱可能に接続され、前記キャパシタ、および前記負荷となる被試験デバイスを搭載するデバイス搭載部を有する試験ボードと
を備える請求項1に記載の装置。
【請求項8】
正電位と電源出力端子との間に接続されたスイッチング素子と、前記電源出力端子の出力電圧を目標電圧に近付けるように前記スイッチング素子を制御する制御回路とを有する電源ユニットに着脱可能に接続され、
被試験デバイスを搭載するデバイス搭載部と、
前記電源出力端子に対して前記被試験デバイスと並列に接続されたキャパシタと、
前記電源出力端子に対して前記キャパシタと並列に接続され、前記スイッチング素子のオンオフの状態に依存せず前記電源出力端子から電流を流出させる電流源と
を備える試験ボード。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電源を有する装置および試験ボードに関する。
【背景技術】
【0002】
電源は、負荷に接続されて負荷に電源電力を供給する。安定した電源電力を負荷に供給するために、電源には、負荷の消費電流が急激に増加した場合においても、電圧降下を許容範囲内に抑えることが求められる。
【発明の概要】
【0003】
本発明の第1の態様においては、正電位と電源出力端子との間に接続されたスイッチング素子と、電源出力端子の出力電圧を目標電圧に近付けるようにスイッチング素子を制御する制御回路と、電源出力端子に対して負荷と並列に接続されたキャパシタと、電源出力端子に対してキャパシタと並列に接続され、スイッチング素子のオンオフの状態に依存せず電源出力端子から電流を流出させる電流源とを備える装置を提供する。
【0004】
上記の装置において、電流源は、負荷に電流が流れていない状態において、スイッチング素子を飽和領域に維持する電流を電源出力端子から流出させてもよい。
【0005】
上記のいずれかの装置において、電流源は、電源出力端子および接地電位の間に接続された抵抗を有してよい。
【0006】
上記のいずれかの装置において、電流源は、電源出力端子から予め定められた大きさの電流を流出させる定電流源であってよい。
【0007】
上記のいずれかの装置において、電流源は、電源出力端子から負荷へと供給する最大電流の10%以下または5%以下の電流を電源出力端子から流出させてよい。
【0008】
上記のいずれかの装置において、電流源は、電源出力端子から負荷へと供給する最大電流の0,0275%以上または0.055%以上の電流を電源出力端子から流出させてよい。
【0009】
上記のいずれかの装置は、スイッチング素子、および制御回路を有し、電源出力端子から電源電力を出力する電源ユニットと、電源ユニットに着脱可能に接続され、キャパシタ、および負荷となる被試験デバイスを搭載するデバイス搭載部を有する試験ボードとを備えてよい。
【0010】
本発明の第2の態様においては、正電位と電源出力端子との間に接続されたスイッチング素子と、電源出力端子の出力電圧を目標電圧に近付けるようにスイッチング素子を制御する制御回路とを有する電源ユニットに着脱可能に接続され、被試験デバイスを搭載するデバイス搭載部と、電源出力端子に対して被試験デバイスと並列に接続されたキャパシタと、電源出力端子に対してキャパシタと並列に接続され、スイッチング素子のオンオフの状態に依存せず電源出力端子から電流を流出させる電流源とを備える試験ボードを提供する。
【0011】
上記の試験ボードにおいて、電流源は、被試験デバイスに電流が流れていない状態において、スイッチング素子を飽和領域に維持する電流を電源出力端子から流出させてもよい。
【0012】
上記のいずれかの試験ボードにおいて、電流源は、電源出力端子および接地電位の間に接続された抵抗を有してよい。
【0013】
上記のいずれかの試験ボードにおいて、電流源は、電源出力端子から予め定められた大きさの電流を流出させる定電流源であってよい。
【0014】
上記のいずれかの試験ボードにおいて、電流源は、電源出力端子から被試験デバイスへと供給する最大電流の10%以下または5%以下の電流を電源出力端子から流出させてよい。
【0015】
上記のいずれかの試験ボードにおいて、電流源は、電源出力端子から被試験デバイスへと供給する最大電流の0.0275%以上または0.055%以上の電流を電源出力端子から流出させてよい。
【0016】
なお、上記の発明の概要は、本発明の特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図2】電源電圧の変動を測定するために用いる擬似負荷回路200の構成を示す。
【
図3】第1比較例に係る装置10における電源電圧の変動を示すグラフである。
【
図5】第2比較例に係る装置400における電源電圧の変動を示すグラフである。
【
図7】本実施形態に係る装置600における電源電圧の変動を示すグラフである。
【
図8】本実施形態に係る装置600におけるバイパスコンデンサ容量と電圧降下との関係を示すグラフである。
【
図9】本実施形態に係る装置600における、電流源660として用いる抵抗の大きさと電圧降下との関係を示すグラフである。
【
図10】本実施形態に係る装置600における、電源ユニット402の出力電圧が3.3Vである場合の電源電圧の変動を示すグラフである。
【
図11】本実施形態に係る電流源660の一例としての定電流源1100の構成を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0019】
図1は、第1比較例に係る装置10の構成を示す。装置10は、電源を有する装置の一例としての試験装置である。装置10は、電源ユニット20と、試験ボード30と、試験ユニット40とを備える。
【0020】
電源ユニット20は、電源出力端子102から電源電力を出力する。電源ユニット20は、例えばAC-DCコンバータ等のより上流の電源に接続され、上流の電源からの電力を用いて予め定められた大きさの出力電圧を電源出力端子102から出力する。
【0021】
電源ユニット20は、スイッチング素子105と、スイッチング素子110と、制御回路120とを有する。スイッチング素子105は、MOSFET(金属酸化膜半導体電界効果トランジスタ)等の半導体スイッチング素子である。スイッチング素子105は、第1主端子および第2主端子(例えばドレインおよびソース)と、第1主端子および第2主端子の間の接続状態を制御する制御端子(例えばゲート)とを有する。スイッチング素子105は、より上流の電源の正電位と電源出力端子102との間に主端子間が接続される。
【0022】
スイッチング素子110は、スイッチング素子105と同様に、MOSFET等の半導体スイッチング素子である。スイッチング素子105は、より上流の電源の負電位(「接地電位」とも示す。)と電源出力端子102との間に主端子間が接続される。
【0023】
制御回路120は、電源出力端子102の出力電圧を目標電圧に近付けるようにスイッチング素子105およびスイッチング素子110を制御する。制御回路120は、電圧源125と、オペアンプ130と、バイアス制御回路135とを含む。電圧源125は、目標電圧を出力する定電圧源である。
【0024】
オペアンプ130は、試験ボード30からフィードバックされる電源出力端子102の出力電圧と、電圧源125が出力する目標電圧との差に応じた信号を出力する。オペアンプ130は、目標電圧から電源出力端子102の出力電圧を減じた差に比例する信号を出力してよい。
【0025】
バイアス制御回路135は、オペアンプ130からの信号に応じてスイッチング素子105およびスイッチング素子110を制御する。バイアス制御回路135は、目標電圧から電源出力端子102の出力電圧を減じた差が正の場合にスイッチング素子105をオンとし(あるいはスイッチング素子105の主端子間に流れる電流を増加させ)、スイッチング素子110をオフとして(あるいはスイッチング素子110の主端子間に流れる電流を減少させて)、正電位から電源出力端子102へと電流を流入させ、電源出力端子102の出力電圧を上昇させる。バイアス制御回路135は、目標電圧から電源出力端子102の出力電圧を減じた差が負の場合にスイッチング素子105をオフ(あるいはスイッチング素子105の主端子間に流れる電流を減少させ)、スイッチング素子110をオンとして(あるいはスイッチング素子110の主端子間に流れる電流を増加させて)、電源出力端子102から負電位へと電流を流出させ、電源出力端子102の出力電圧を下降させる。これにより、制御回路120は、電源出力端子102の出力電圧を目標電圧に近付けていき、出力電圧を目標電圧から予め定められた誤差の範囲内とする。
【0026】
試験ボード30は、電源ユニット20および試験ユニット40に着脱可能に接続される。なお、試験ボード30は、試験ボード30に搭載する被試験デバイス(DUT)145のバーンイン試験用のバーンインボードであってよく、DUT145の機能試験用の試験ボードであってもよい。試験ボード30は、デバイス搭載部140と、キャパシタ150とを有する。
【0027】
デバイス搭載部140は、例えばICソケット等であり、DUT145を搭載してDUT145の各端子を試験ボード30の各配線に電気的に接続する。DUT145は、電源電力を消費する負荷の一例である。デバイス搭載部140は、DUT145の電源入力端子を、試験ボード30の電源配線を介して電源出力端子102に電気的に接続する。また、デバイス搭載部140は、DUT145の1または複数の信号入出力端子を、試験ボード30の信号配線を介して1または複数の試験端子170に電気的に接続する。
【0028】
キャパシタ150は、電源出力端子102に対してDUT145と並列に接続される。キャパシタ150は、「バイパスコンデンサ」とも示される。キャパシタ150は、電源ユニット20よりもDUT145の近傍に設けられる。キャパシタ150は、DUT145の消費電力が増加したことに応じて蓄積した電荷をDUT145へと供給する。これにより、キャパシタ150は、DUT145の消費電力の瞬時的な変動を吸収し、電源出力端子102の出力電圧を安定化させる。電源ユニット20内のスイッチング素子105、スイッチング素子110、および制御回路120と、試験ボード30内のキャパシタ150とは、DUT145に電源電力を供給する電源として機能する。
【0029】
試験ユニット40は、試験ボード30に着脱可能に接続される。試験ボード30は、試験回路180を有する。試験回路180は、1または複数の試験端子170を介してDUT145の信号入出力端子に電気的に接続される。試験回路180は、DUT145の動作試験を行なう。試験回路180は、試験用の信号(試験信号)をDUT145に供給し、試験信号に応答してDUT145が出力する応答信号が期待値と一致するか否かを判定することによりDUT145の良否を判定してよい。
【0030】
図2は、電源電圧の変動を測定するために用いる擬似負荷回路200の構成を示す。擬似負荷回路200は、電源出力端子102と接地電位との間に電気的に直列に接続されるスイッチング素子210および抵抗220を備える。スイッチング素子210は、パルス波形が制御端子に入力されると、パルス波形の立ち上がりで主端子間をオンとし、パルス波形の立ち下がりで主端子間をオフとする。抵抗220は、スイッチング素子210がオンとなったことに応じて、電源出力端子102の電圧を抵抗220の抵抗値で割った大きさのパルス電流を流す。
【0031】
図3は、第1比較例に係る装置10における電源電圧の変動を示すグラフである。本図のグラフにおいて、横軸は時間の経過であり、縦軸は電源電圧(電源出力端子102の出力電圧)である。本図のグラフは、負荷として擬似負荷回路200を用い、負荷電流を20Aとし、キャパシタ150の容量を500μF、800μF、および1000μFとしたときの、電源電圧変動のシミュレーション結果を示す。
【0032】
本図の例においては、電源ユニット20は、定格で2.7Vの出力電圧を電源出力端子102に出力する。時刻5.00msにおいて擬似負荷回路200内のスイッチング素子210がオンとなると、キャパシタ150の容量が500μFの場合には585mV、800μFの場合には526mV、1000μFの場合には496mVの電圧降下が見られる。このように、
図1の電源ユニット20に示した構成の電源を用いる場合には、キャパシタ150の容量を増加させることによって瞬時的な電圧降下を抑えることができる。
【0033】
図4は、第2比較例に係る装置400の構成を示す。装置400は、
図1に示した装置10の変形例である。装置400における、
図1の装置10と同じ符号を付した構成要素は、装置10の対応する構成要素と同様の機能および構成を有するので、以下相違点を除き説明を省略する。
【0034】
第2比較例に係る装置400は、電源ユニット20に代えて電源ユニット402を備える。電源ユニット402は、スイッチング素子105と、制御回路420とを有する。スイッチング素子105は、
図1のスイッチング素子105と同様である。第2比較例においては、
図1のスイッチング素子110を有しない。これにより、電源ユニット402は、試験ボード30からフィードバックされる電源出力端子102の出力電圧と目標電圧との比較結果に応じてオンオフされ、オン時に選択的に電源出力端子102から負電位(接地電位)へと電流を流出させるスイッチング素子を有しない構成をとる。
【0035】
制御回路420は、電源出力端子102の出力電圧を目標電圧に近付けるようにスイッチング素子105を制御する。第2比較例においては、制御回路420は、電源出力端子102の出力電圧が目標電圧よりも低下すると、スイッチング素子105をオンとして(あるいはスイッチング素子105の主端子間に流れる電流を増加させて)、電源出力端子102の出力電圧を上昇させる。その一方で、制御回路420は、電源出力端子102の出力電圧が目標電圧よりも高くなると、スイッチング素子105をオフとして、電源出力端子102の出力電圧が低下するのを待つ。これにより、制御回路420は、電源出力端子102の出力電圧を目標電圧に近付けていき、出力電圧を目標電圧から予め定められた誤差の範囲内とする。
【0036】
制御回路420は、電圧源125と、オペアンプ130とを含む。電圧源125およびオペアンプ130は、
図1の電圧源125およびオペアンプ130と同様である。
【0037】
図5は、第2比較例に係る装置400における電源電圧の変動を示すグラフである。本図のグラフにおいて、横軸は時間の経過であり、縦軸は電源電圧(電源出力端子102の出力電圧)である。本図のグラフは、負荷として擬似負荷回路200を用い、負荷電流を20Aとし、キャパシタ150の容量を500μF、800μF、および1000μFとしたときの、電源電圧の変動のシミュレーション結果を示す。
【0038】
本図の例においては、電源ユニット402は、定格で3.3Vの出力電圧を電源出力端子102に出力する。時刻6.00msにおいて擬似負荷回路200内のスイッチング素子210がオンとなると、キャパシタ150の容量が500μFの場合には670mV、800μFの場合には821mV、1000μFの場合には904mVの電圧降下が見られる。このように、
図4の電源ユニット402に示した構成の電源を用いる場合には、キャパシタ150の容量を増加させても必ずしも瞬時的な電圧降下を抑えることができないことがある。
【0039】
図4の電源ユニット402に示した電源は、吐出電流(正電位からスイッチング素子105を介してキャパシタ150およびDUT145へと向かう電流)を出力するが、吸込電流(キャパシタ150およびDUT145からスイッチング素子110を介して負電位へと向かう電流)を提供しない。このため、DUT145の消費電流がほぼ0となると、スイッチング素子105は長期間オフとなり、スイッチング素子105のドレイン電流が長期間0Aとなりうる。この結果、スイッチング素子105は、深い遮断領域にある状態となる。
【0040】
その後、DUT145の消費電流が増加すると、制御回路420は、スイッチング素子105をオン状態に切り替えるために、スイッチング素子105にゲート駆動電流を供給する。この際、制御回路420は、スイッチング素子105が有するゲート-ソース間容量に電荷をチャージする必要があるので、電荷のチャージに要する時間の間スイッチング素子105のターンオンが遅延する。また、制御回路420は、電源出力端子102の出力電圧のフィードバックに応じて動作するフィードバック回路となっており、周波数帯域による応答遅れ、オペアンプ130の遅延時間等による遅延も生じる。DUT145の消費電流が0から急激に増加すると、キャパシタ150の容量が大きい場合には、初期の出力電圧変動の検出が遅れる等の要因により、制御回路420によるスイッチング素子105のゲート-ソース電圧の上昇が遅れる。この結果、スイッチング素子105を深い遮断領域から飽和領域を経て線形領域に切り替えるのに時間がかかってしまい、電圧降下が却って大きくなってしまうことがある。
【0041】
図6は、本実施形態に係る装置600の構成を示す。装置600は、
図4に示した装置400の変形例である。装置600における、
図4の装置400と同じ符号を付した構成要素は、装置400と同様の機能および構成を有するので、以下相違点を除き説明を省略する。
【0042】
装置600は、電源ユニット402と、試験ボード602と、試験ユニット40とを備える。電源ユニット402および試験ユニット40は、
図4の装置400と同様である。試験ボード602は、
図4の試験ボード30に対し、電流源660を加えた構成をとる。
【0043】
電流源660は、電源出力端子102に対してキャパシタ150と並列に接続される。電流源660は、スイッチング素子105のオンオフの状態に依存せず電源出力端子102から電流を流出させる。電流源660は「ブリーダ抵抗」とも示され、電流源660に流れる電流は「ブリーダ電流」とも示される。
【0044】
これにより、電源ユニット402は、DUT145の消費電流が0である場合においても、電流源660が流出させる電流に応じたドレイン電流を流すようにスイッチング素子105を制御することになる。この結果、スイッチング素子105は、DUT145の消費電流が0である場合においても、深い遮断領域の状態にならない。したがって、電源ユニット402は、DUT145の消費電流が急激に上昇した場合でも、短い時間でスイッチング素子105のドレイン電流を増加させることができる。
【0045】
電流源660は、DUT145等の負荷に電流が流れていない状態において、スイッチング素子105を飽和領域に維持する電流を電源出力端子102から流出させるようにしてよい。また、電流源660は、スイッチング素子105のオンオフに依らず常時ブリーダ電流(>0)を電源出力端子102から流出させてよい。
【0046】
図7は、本実施形態に係る装置600における電源電圧の変動を示すグラフである。本図のグラフは、横軸に時間の経過を示し、縦軸に電源電圧(電源出力端子102の出力電圧)を示す。本図のグラフでは、負荷として擬似負荷回路200を用いる。本図の例において、擬似負荷回路200は、スイッチング素子210がオンの場合に20Aの負荷電流を流すものとする。また、キャパシタ150の容量は、200μFとする。
【0047】
本図は、電流源660に流れる電流IBが0の場合(「IB無」)、電流IBが小さい場合(「IB小」、IB=11mA)、電流IBが中くらいの場合(「IB中」、IB=110mA)、電流IBが大きい場合(「IB大」、IB=1.1A)の、電源電圧変動のシミュレーション結果を示す。
【0048】
本図の例においては、電流IBが0である場合には1.12Vもの電圧降下が生じる。これに対し、IB小、IB中、IB大と電流IBを増やすにつれて、電圧降下は、0.35V、0.29V、0.23Vと減少する。
【0049】
図8は、本実施形態に係る装置600におけるバイパスコンデンサ容量と電圧降下との関係を示すグラフである。本図のグラフにおいて、横軸はキャパシタ150の容量(バイパスコンデンサの容量)であり、縦軸は電源出力端子102の出力電圧の電圧降下である。本図のグラフは、
図1に示した構成の電源(「電源A」とも示す。)、
図4に示した構成の電源(「電源B」とも示す。)、および電源Bにおいて電流IBを1.1Aとした電源の3種類の電源のそれぞれについて、負荷電流を10Aおよび20Aとした場合の電圧降下のシミュレーション結果を示す。
【0050】
本グラフに示すように、電源Bの場合にはキャパシタ150の容量を増やすと電圧降下が大きくなってしまう。しかし、試験ボード602側に電流源660を追加した電源Bにおいては、電源Aよりも電圧降下を小さくすることができる。
【0051】
図9は、本実施形態に係る装置600における、電流源660として用いる抵抗の大きさと電圧降下との関係を示すグラフである。本図の例においては、電流源660は、電源出力端子102および接地電位の間に接続された抵抗を有する構成を採る。電流源660は、このようなブリーダ抵抗のみで構成されてよく、この場合には電流源660は、電源出力端子102の出力電圧をブリーダ抵抗の抵抗値で割った大きさのブリーダ電流を流す。本図のグラフでは、負荷として擬似負荷回路200を用いる。本図の例において、擬似負荷回路200は、スイッチング素子210がオンの場合に20Aの負荷電流を流すものとする。
【0052】
本図は、キャパシタ150の容量を200μF、300μF、400μF、および500μFとした場合における電圧降下のシミュレーション結果を示す。本図において出力電圧の定格は3.3Vであるから、ブリーダ抵抗の大きさが3Ω、30Ω、300Ωの場合、ブリーダ電流は1.1A、110mA、11mAとなる。本図に示すように、装置600は、ブリーダ抵抗の大きさが300Ω以上の範囲では、ブリーダ抵抗の大きさが300Ω未満の範囲と比較して電圧降下を効果的に減らすことができる。装置600は、ブリーダ抵抗の大きさが300Ω以上の範囲では、抵抗値を減らしてブリーダ電流を増やしても電源変動特性が大きくは改善しない。したがって、電流源660は、電源出力端子102からDUT145へと供給する最大電流の0.055%(11mA/20A)以上または0.0275%以上の電流を電源出力端子102から流出させるようにしてよい。
【0053】
また、電流源660は、電源出力端子102からDUT145へと供給する最大電流の10%以下の電流を電源出力端子102から流出させれば十分である。電流源660は、最大電流の5%以下の電流を電源出力端子102から流出させるようにしてもよい。
【0054】
図10は、本実施形態に係る装置600における、電源ユニット402の出力電圧が3.3Vである場合の電源電圧の変動を示すグラフである。本図のグラフにおいて、横軸は時間の経過であり、縦軸は電源電圧(電源出力端子102の出力電圧)である。本図のグラフは、負荷として擬似負荷回路200を用い、負荷電流を20Aとし、キャパシタ150の容量を200μFとし、電流源660として用いるブリーダ抵抗の抵抗値を3Ω、30Ω、および300Ωとしたときの、電源電圧変動のシミュレーション結果を示す。本図に示すように、電源ユニット402の出力電圧が3.3Vである場合には、ブリーダ抵抗の抵抗値を3Ω程度とすれば電圧降下を0.3V以内に抑えることができる。
【0055】
図11は、本実施形態に係る電流源660の一例としての定電流源1100の構成を示す。電流源660は、本図に示したような、電源出力端子102から予め定められた大きさの電流を流出させる定電流源であってよい。
【0056】
定電流源1100は、ツェナーダイオード1110と、抵抗1120と、スイッチング素子1130と、抵抗1140とを含む。ツェナーダイオード1110および抵抗1120は、電源出力端子102および接地電位の間に直列に接続される。ツェナーダイオード1110は、アノード側が接地電位に、カソード側が抵抗1120に接続される。ツェナーダイオード1110は、カソード側の電圧をアノード側の電圧にツェナー電圧を加えた定電圧とする。抵抗1120は、電源出力端子102の出力電圧およびツェナーダイオード1110のカソード側の電圧の差を吸収する。
【0057】
スイッチング素子1130および抵抗1140は、電源出力端子102および接地電位の間に直列に接続される。スイッチング素子1130は、制御端子が抵抗1120およびツェナーダイオード1110の間に接続され、ツェナーダイオード1110のカソード側の定電圧からスイッチング素子1130の特性によって予め定められたゲート-ソース間の電圧降下分を減じたソース電圧を出力する。抵抗1140は、ソース電圧を抵抗値で割った大きさの定電流を流す。
【0058】
以上に示した装置600によれば、スイッチング素子105と相補的に動作して電源出力端子102から電流を流出させるスイッチング素子110を有しない電源ユニット402を用いた場合においても、出力電圧の電圧降下を十分に抑制可能な電源を実現することができる。このような電源をDUT145の試験に用いる装置600においては、試験の開始時にDUT145に電源を投入し、瞬間的に大電流の電源電力を供給し始める場合においても、出力電圧の電圧降下を十分抑制することが可能となる。
【0059】
このような電源は、DUT145の試験以外の用途にも適用できる。装置600をDUT145の試験以外に適用した場合にも、装置600は、負荷の消費電流が急激に増加したことに応じて短い応答時間の間にスイッチング素子105に流れるドレイン電流を増加させることができ、電源出力端子102の出力電圧の電圧降下を低減することができる。
【0060】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0061】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0062】
10 装置、20 電源ユニット、30 試験ボード、40 試験ユニット、102 電源出力端子、105 スイッチング素子、110 スイッチング素子、120 制御回路、125 電圧源、130 オペアンプ、135 バイアス制御回路、140 デバイス搭載部、145 DUT、150 キャパシタ、170 試験端子、180 試験回路、200 擬似負荷回路、210 スイッチング素子、220 抵抗、400 装置、402 電源ユニット、420 制御回路、600 装置、602 試験ボード、660 電流源、1100 定電流源、1110 ツェナーダイオード、1120 抵抗、1130 スイッチング素子、1140 抵抗