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  • 特開-電池寿命予告診断装置 図1
  • 特開-電池寿命予告診断装置 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168173
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】電池寿命予告診断装置
(51)【国際特許分類】
   G01R 31/396 20190101AFI20231116BHJP
   H02J 7/00 20060101ALI20231116BHJP
   G01R 31/3842 20190101ALI20231116BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20231116BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
G01R31/396
H02J7/00 Y
G01R31/3842
H01M10/48 P
H01M10/44 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】書面
(21)【出願番号】P 2022089209
(22)【出願日】2022-05-13
(71)【出願人】
【識別番号】391017540
【氏名又は名称】東芝ITコントロールシステム株式会社
(72)【発明者】
【氏名】島田 直人
【テーマコード(参考)】
2G216
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
2G216BA30
5G503AA01
5G503BA01
5G503BB02
5G503CA01
5G503CA11
5G503CB06
5G503DA04
5G503EA08
5G503GD03
5G503GD06
5H030AA01
5H030AS20
5H030BB03
5H030BB21
5H030FF43
5H030FF44
(57)【要約】
【課題】蓄電池システムを停止することなく蓄電池の寿命を予告診断する電池寿命予告診断装置を提供する。
【解決手段】繰り返し充電および放電する蓄電池2と、蓄電池2の状態量を測定し充放電指令を与える制御手段5と、制御手段5は、蓄電池2の電圧に対して予告上限電圧値を有し、蓄電池2が充電時に蓄電池2の電圧値が予告上限電圧値に到達したときを上限到達時とし、蓄電池2の使用開始時から上限到達時に到達するまでの時間から蓄電池2の寿命を予測する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り返し充電および放電する蓄電池と、
前記蓄電池の状態量を測定し、前記蓄電池に対して充放電指令を与える制御手段と、
前記制御手段は、前記蓄電池の電圧に対して予告上限電圧値を有し、前記蓄電池が充電時に前記蓄電池の電圧値が前記予告上限電圧値に到達したときを上限到達時とし、前記蓄電池の使用開始時から前記上限到達時に到達するまでの時間から前記蓄電池の寿命を予測する電池寿命予告診断装置。
【請求項2】
請求項1に記載の電池寿命予告診断装置において、
前記制御手段は、さらに前記蓄電池の電圧に対して予告下限電圧値を有し、前記蓄電池が放電時に前記蓄電池の電圧値が前記予告下限電圧値に到達したときを下限到達時とし、前記蓄電池の使用開始時から前記下限到達時に到達するまでの時間から前記蓄電池の寿命を予測する電池寿命予告診断装置。
【請求項3】
請求項1に記載の電池寿命予告診断装置において、
前記制御手段は、さらに前記予告上限電圧値を、前記蓄電池が充電する際の充電電流に前記蓄電池の初期内部抵抗値を乗算した結果に前記蓄電池が無通電時の電池電圧値を加算した値を前記蓄電池の使用開始時の第1の電池電圧とし、前記第1の電池電圧に前記蓄電池の使用限界上限電圧値と前記第1の電池電圧との差を加算した結果に前記蓄電池の充電時の使用限界割合を乗算して求める電池寿命予告診断装置。
【請求項4】
請求項2に記載の電池寿命予告診断装置において、
前記制御手段は、さらに前記予告下限電圧値を、前記蓄電池が放電する際の放電電流に前記蓄電池の初期内部抵抗値を乗算した結果に前記蓄電池が無通電時の電池電圧値を加算した値を前記蓄電池の使用開始時の第2の電池電圧とし、前記第2の電池電圧に前記蓄電池の使用限界下限電圧値と前記第2の電池電圧との差を加算した結果に前記蓄電池の放電時の使用限界割合を乗算して求める電池寿命予告診断装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、蓄電池の劣化を診断し電池寿命を予告する装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、バックアップ電源装置やディーゼルエンジンとのハイブリッドシステム等に例えばリチウムイオン蓄電池を利用することが多くなっている。
【0003】
リチウムイオン蓄電池などの蓄電池は使用環境や使い方によってその電池寿命に差が生じ、電池交換を行う時期が異なるため、事前に電池交換時期が把握できる手法(診断)の提供がなされている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-20310号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術によれば、蓄電池の電圧を計測しながら実際の負荷を接続して短時間で放電もしくは充電させ、放電もしくは充電開始時の電圧変化量が所定値より大きく変化しているときに、蓄電池は劣化していると診断することを特徴とする。
【0006】
しかしながら、蓄電池の電圧を計測しながら充電、もしくは放電させる為にはシステムを一度停止させ、蓄電池電圧を測定する測定器の設置を行う必要があり、蓄電池の劣化診断を行うためには限られた期間に限定されるという課題があった。
【0007】
本実施形態は、上記のような従来技術の問題点を解決するために提案されたものである。本実施形態の目的は、蓄電池システムを停止することなく蓄電池の寿命を予告診断する電池寿命予告診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するため、請求項1記載の電池寿命予告診断装置は、繰り返し充電および放電する蓄電池と、前記蓄電池の状態量を測定し、前記蓄電池に対して充放電指令を与える制御手段と、 前記制御手段は、前記蓄電池の電圧に対して予告上限電圧値を有し、前記蓄電池が充電時に前記蓄電池の電圧値が前記予告上限電圧値に到達したときを上限到達時とし、前記蓄電池の使用開始時から前記上限到達時に到達するまでの期間から前記蓄電池の寿命を予測することを特徴とする。
【0009】
前記目的を達成するため、請求項2記載の電池寿命予告診断装置は、請求項1に記載の電池寿命予告診断装置において、前記制御手段は、さらに前記蓄電池の電圧に対して予告下限電圧値を有し、前記蓄電池が放電時に前記蓄電池の電圧値が前記予告下限電圧値に到達したときを下限到達時とし、前記蓄電池の使用開始時から前記下限到達時に到達するまでの期間から前記蓄電池の寿命を予測することを特徴とする。
【0010】
前記目的を達成するため、請求項3記載の電池寿命予告診断装置は、請求項1に記載の電池寿命予告診断装置において、前記制御手段は、さらに前記予告上限電圧値を、前記蓄電池が充電する際の充電電流に前記蓄電池の初期内部抵抗値を乗算した結果に前記蓄電池が無通電時の電池電圧値を加算した値を前記蓄電池の使用開始時の第1の電池電圧とし、前記第1の電池電圧に前記蓄電池の使用限界上限電圧値と前記第1の電池電圧との差を加算した結果に前記蓄電池の充電時の使用限界割合を乗算して求めることを特徴とする。
【0011】
前記目的を達成するため、請求項4記載の電池寿命予告診断装置は、請求項2に記載の電池寿命予告診断装置において、前記制御手段は、さらに前記予告下限電圧値を、前記蓄電池が放電する際の放電電流に前記蓄電池の初期内部抵抗値を乗算した結果に前記蓄電池が無通電時の電池電圧値を加算した値を前記蓄電池の使用開始時の第2の電池電圧とし、前記第2の電池電圧に前記蓄電池の使用限界下限電圧値と前記第2の電池電圧との差を加算した結果に前記蓄電池の放電時の使用限界割合を乗算して求めることを特徴とする。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態を示す電池寿命予告診断装置を有する蓄電池システム構成図。
図2】蓄電池の寿命予測の概念を表すイメージ図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は本発明の実施形態を示す電池寿命予告診断装置を有する蓄電池システム構成図である。負荷1は充放電装置で、蓄電池2は、負荷1へ放電及び負荷1から充電を繰り返す。コンタクタ3は負荷1と蓄電池2を切り離す遮断器で、制御装置5により開閉の切り替え制御が行われる。制御装置5はさらに蓄電池2の充電電流や放電電流を測定する電流センサー4が接続され、蓄電池2の状態を測定し、蓄電池2に対して運転指令を与える。
【0014】
制御装置5は例えば電子回路基板で構成され、蓄電池2とともに収納される蓄電池盤の中に配置され、蓄電池2からの電池状態や電池電圧、温度の情報と、電流センサー4で測定した充電電流、放電電流といった状態量を取り込み、取り込んだ情報で異常検出されていない場合に蓄電池システムの運転/停止を行う。更に取り込んだ充電電流、放電電流を積算し、蓄電池2の電池残量も算出している。また、蓄電池2の保護動作を検出した際には故障、警報の信号を発報する。ここで、制御装置5は電子回路基板に限らず、一定の入力条件により予め用意されたプログラム等を介して出力をなす機能を有していれば良く、例えばPLC(プログラマブルロジックコントローラ)やボックスPCなどを使用しても良い。
【0015】
制御装置5はさらに次の機能を有する。すなわち、蓄電池システムの充放電電流値、電池使用電圧範囲、初期電池内部抵抗値から算出した予告上限電圧値、予告下限電圧値を設定・監視する機能を具備し、蓄電池システム運用中にその機能の検出状態を監視することで、蓄電池2の使用開始時から予告上限電圧値もしくは予告下限電圧値に到達するまでの時間から蓄電池2の電池寿命を推定する。具体的な推定方法を以下に示す。
【0016】
リチウムイオン蓄電池は、充放電回数や経年劣化により電池内部抵抗値が上昇することが一般的に知られており、ある一定の電流で充放電を行っていくと、使用開始当初は電池の使用電圧範囲内で収まっているものが、内部抵抗の上昇に伴い電池の使用電圧範囲を超える場合がある。この時がこの使用条件での電池の使用限界(寿命)となる。
【0017】
図2は、蓄電池の寿命予測の概念を表すイメージ図である。蓄電池の使用開始時の充放電時の電池電圧値と電池の使用限界電圧値の2点を直線で結んだ線上に、寿命予告となる充電時の予告上限電圧値と放電時の予告下限電圧値を設ける。
【0018】
蓄電池の使用開始時の充放電時の電池電圧は無通電時の電池電圧とは異なり、充電時は無通電時の電池電圧より高く、放電時は無通電時の電池電圧より低くなる。
【0019】
蓄電池の使用開始時の充電時の電池電圧(Vmax0)、放電時の電池電圧(Vmin0)は、式、
Vmax0=Vocv+Ic×R・・・・・(1)
Vmin0=Vocv+Id×R・・・・・(2)
で求める。ここで、Vocvは無通電時の電池電圧であり、充電する電池容量と放電する電池容量で電圧値は異なり、Ic及びIdは、それぞれ充電電流(Ic)、放電電流(Id)で、Rは電池の初期内部抵抗値である。
【0020】
図2に式(1)と(2)から求めた充放電時の電池電圧と電池の使用限界上限電圧、使用限界下限電圧を示す。ここで、電池の使用限界電圧は、電池の満充電時を使用限界上限電圧、電池の放電末時を使用限界下限電圧である。
【0021】
予告上限電圧値及び予告下限電圧値は、使用開始時の充電時もしくは放電時の電池電圧から使用限界上限電圧もしくは使用限界下限電圧までを電池寿命100%とすると、電池寿命の内どの時点で検出するかを求める。
【0022】
予告上限電圧値は、式、
Vmax=Vmax0+(Vmi-Vmax0)×Z・・・・(3)
で求める。ここで、Vmax0は式(1)を用いて求めた蓄電池を充電する際の充電電流(Ic)に、電池の初期内部抵抗値(R)を乗算し、電池の無通電時の電池電圧(Vocv)を加算したものであり、Vmiは電池の使用限界上限電圧、Zは電池寿命100%とした使用限界の割合である。
【0023】
同様に、予告下限電圧値は、式、
Vmin=Vmin0+(Vmd-Vmin0)×Z・・・・(4)
で求める。ここで、Vmin0は式(2)を用いて求めた蓄電池を放電する際の放電電流(Id)に、電池の初期内部抵抗値(R)を乗算し、電池の無通電時の電池電圧(Vocv)を加算したものであり、Vmdは電池の使用限界下限電圧,Zは電池寿命100%とした使用割合である。
【0024】
これにより、予告上限電圧値(Vmax)は、蓄電池2の電圧に対して充電時に蓄電池2の電圧値が予告上限電圧値に到達したときの電圧値、もしくは予告下限電圧値に到達したときの電圧値を設定することで、使用開始時から上限到達もしくは下限到達に到達するまでの期間から蓄電池2の寿命を予測することが実現できる。
【0025】
例えば、使用限界の割合(Z)を70%とした場合、充電時は、Vmax0からVmiとVmax0の差の70%の電圧Vmaxに到達するまでの期間が例えば7年だったとすると、そのまま使用を続ければあと3年で使用限界(寿命)に到達すると予告診断することができ、放電時も同様の考え方で電池寿命を予告診断することが出来る。
【0026】
本実施形態によれば、蓄電池が充放電時に蓄電池の状態量を計測すれば良く、蓄電池システムが運転中のまま蓄電池の寿命を予告診断することができる。
【符号の説明】
【0027】
1・・・負荷(充放電装置)
2・・・蓄電池
3・・・コンタクタ
4・・・電流センサー
5・・・制御装置
図1
図2