(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168175
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】摺動部材及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
B32B 33/00 20060101AFI20231116BHJP
C23C 26/00 20060101ALI20231116BHJP
F16C 33/20 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B32B33/00
C23C26/00 A
F16C33/20 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022091166
(22)【出願日】2022-06-03
(31)【優先権主張番号】P 2022079159
(32)【優先日】2022-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】591001282
【氏名又は名称】大同メタル工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095577
【弁理士】
【氏名又は名称】小西 富雅
(74)【代理人】
【識別番号】100100424
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 知公
(72)【発明者】
【氏名】森 愛絵
(72)【発明者】
【氏名】安田 絵里奈
(72)【発明者】
【氏名】海老沼 卓也
【テーマコード(参考)】
3J011
4F100
4K044
【Fターム(参考)】
3J011AA20
3J011BA08
3J011DA01
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3J011SC20
4F100AB03
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4K044BC02
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4K044CA53
(57)【要約】
【課題】固液二相性材料層と基材層とを備えるハイブリッド構造物からなる摺動部材において固液二相性材料層と基材層との間に十分な接着力を付与することを目的とする。
【解決手段】基材層を準備するステップと、基材層の表面を処理する処理ステップと、表面処理された基材層の表面に固液二相性材料層を積層する積層ステップと、を含む摺動部材の製造方法であって、処理ステップは、シランカップリング剤のモル数(D)と、シラン化合物のモル数(C)の比の値C/Dが0.10~1.00である前処理溶液を準備するステップと、処理液へ基材層の表面を接触させるステップとを実行することで、固液二相性材料層と基材層との間に十分な接着力を備えた摺動部材が得られる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材層を準備するステップと、
前記基材層の表面を処理する処理ステップと、
表面処理された前記基材層の表面に固液二相性材料層を積層する積層ステップと、を含む摺動部材の製造方法であって、
前記処理ステップは、
シランカップリング剤のモル数(D)と、シラン化合物のモル数(C)の比の値C/Dが0.10~1.00である前処理溶液を準備するステップと、
前記処理液へ前記基材層の表面を接触させるステップと、を含む摺動部材の製造方法。
【請求項2】
前記処理ステップでは、前記基材層の表面を粗化した後、前記前処理液へ浸漬する、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記積層ステップは、前記基材層の表面へ、第1モノマーを反応させて第1ポリマーネットワークを含むシートを形成するステップと、前記第1ポリマーネットワークを含むシートに第2モノマーを含浸させて含浸シートを準備するステップと、前記含浸シートを前記基材層の表面へ接触させるステップと、前記含浸シートに含浸された前記第2モノマーを反応させて第2ポリマーネットワークを形成するステップとを含み、前記第2ポリマーネットワーク及び/又は前記第1ポリマーネットワークを、前記置換基を介して、前記基材層の表面に結合させる、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
基材層と該基材層の上に形成される固液二相性材料層とを備えてなる摺動部材であって、
前記基材層から前記固液二相性材料層を機械的に剥離させた後の前記基材層のFT-IR分析で検出されるエステルのC=O伸縮由来のピークの吸光度(A)と前記FT-IR分析で検出された全ピークの中の最も高いピークの吸光度(B)との比の値A/Bが0.10~0.90である、摺動部材。
【請求項5】
前記C=O伸縮由来のピークは、反応性シランカップリング剤由来のものであり、前記最も高いピークは前記固液二相性材料層由来のものである、請求項4に記載の摺動部材。
【請求項6】
前記固液二相性材料層は100μm~1500μmの膜厚を備える、請求項4又は5に記載の摺動部材。
【請求項7】
基材層と該基材層の上に形成される固液二相性材料層とを備えてなる摺動部材であって、
前記固液二相性材料層のバランス性能評価指数Mが15≦M≦40である、
ここにバランス性能評価指数Mは基材露出時の荷重[N]+摩擦係数[-]×1000で表される ここで、前記荷重は、下記条件のスクラッチ試験を行うことで測定される、
試験モード 連続荷重
荷重 1~20N
荷重スピード 10N/min
スクラッチ距離 19mm
潤滑状態 Dry
圧子 ダイヤモンド R=0.2mm
ここで、前記摩擦係数は往復摺動試験機により下記条件で測定される。
試験機 往復動試験機 HEIDON
荷重 700gf
速度 25mm/s
摺動距離 10mm
潤滑状態 Dry
往復回数 21回
相手材 SUJ2 Φ8mmボール
摺動部材。
【請求項8】
基材層と該基材層の上に形成される固液二相性材料層とを備えてなるハイブリッド構造物であって、
前記基材層から前記固液二相性材料層を機械的に剥離させた後の前記基材層のFT-IR分析で検出されるエステルのC=O伸縮由来のピークの吸光度(A)と前記FT-IR分析で検出された全ピークの中の最も高いピークの吸光度(B)との比の値A/Bが0.10~0.90である、ハイブリッド構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は摺動部材及びその製造方法の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ダブルネットワークゲルと固体物とのハイブリッド構造物が特許文献1に開示されている。
この構造物を摺動部材として用いる例が特許文献2に提案されている。
ここにダブルネットワークゲルは2種類以上のポリマーネットワークが相互侵入網目状構造を形成してなる固相と潤滑性の高い液相とを備える。このダブルネットワークゲルを層状にして固体物(基材層)へ接着することで、摺動部材が構成される。
かかるダブルネットワークゲル(本願発明では「固液二相性材料層」と言う)は、下記のメカニズムにより低摩擦性を発現する。
【0003】
基材層に支持された固液二相性材料層が摺動相手と接触すると、もっぱら液相が流動しようとする。しかしながら、ダブルネットワーク構造の固相によりその流動性が制限されるため液相の圧力が上昇する。これにより、液相が受持つ荷重比率が高まり、結果として比較的高い摩擦係数を有する固相が受持つ荷重比率が低下する。よって、低摩擦性が発現される。
本件に関連する技術を開示する特許文献3も参照されたい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第5892570号公報
【特許文献2】特開2020-203435号公報
【特許文献3】国際公開2008-065756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
固液二相性材料層と基材層との間の接着力を得るため、特許文献1に記載の発明では、基材層の表面を処理してこれに置換基を導入し、この置換基をラジカル活性種と反応させている。
しかしながら、固液二相性材料層と基材層とを備えるハイブリッド構造物を軸受など摺動部材に適用するとき、特許文献1に開示の方法では、固液二相性材料層と基材層との間に十分な接着力を与えられないおそれがある。
即ち、この発明は、固液二相性材料層と基材層との間に十分な接着力を与えることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、固液二相性材料層と基材層との間の接着力を向上すべくシランカップリング剤に注目した。シランカップリング剤はそもそも異種材料間に強い接着力を付与する機能を備えるものだからである。しかしながら、シランカップリング剤だけでは、固液二相性材料層と基材層との間に十分な接着力を得ることができなかった。
【0007】
本発明者らは、シランカップリング剤の使用につき鋭意検討を重ねた結果、本発明の1つの局面に想到した。即ち、この発明の1つの局面は次の様に規定される。
基材層を準備するステップと、
前記基材層の表面を処理する処理ステップと、
表面処理された前記基材層の表面に固液二相性材料層を積層する積層ステップと、を含む摺動部材の製造方法であって、
前記処理ステップは、
シランカップリング剤のモル数(D)と、シラン化合物のモル数(C)の比の値C/Dが0.10~1.00である前処理溶液を準備するステップと、
前記処理液へ前記基材層の表面を接触させるステップと、を含む摺動部材の製造方法。
【0008】
このようにシランカップリング剤とシラン化合物とを併用することで、固液二相性材料層と基材層との接着力が増強される。
【0009】
このようにして得られた基材層と固液二相性材料層とのハイブリッド構造からなる摺動部材は次のように規定できる。
基材層と該基材層の上に形成される固液二相性材料層とを備えてなる摺動部材であって、
前記基材層から前記固液二相性材料層を機械的に剥離させた後の前記基材層のFT-IR分析で検出されるエステルのC=O伸縮由来のピークの吸光度(A)と前記FT-IR分析で検出された全ピークの中の最も高いピークの吸光度(B)との比の値A/Bが0.10~0.90である、摺動部材。
【0010】
エステルのC=O基はシランカップリング剤に由来する。これに対し、最も高いピークが由来する原子-原子結合は固液二相性材料層に由来する。固液二相性材料層を基材層から機械的に剥離したとき、固液二相性材料層の一部が基材層側に残存し、当該残存部分に存在する原子-原子結合に由来してピークが観察される。ピークの位置は特に限定されない。
このピークの吸光度(B)とエステルのC=O伸縮に由来するピークの吸光度(A)との比の値A/Bが0.10~0.90の範囲において、基材層と固液二相性材料層との間に高い接着性を維持しつつ、固液二相性材料層も本来の特性(低摩擦係性)を維持する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】
図1はこの発明の実施の形態の摺動部材を示す模式図である。
【
図2】
図2は実施例8のFT-IR分析の結果を示すチャートである。
【
図3】
図3は比較例4のFT-IR分析の結果を示すチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下この発明の実施の形態について説明をする。
この発明の実施形態の摺動部材1は、
図1に示すように、基材層3の上に固液二相性材料層5を積層した構造である。
摺動部材1に適用される基材層3には一般的に金属材料が用いられる。
摺動部材1の一例の軸受では、基材層3は、鋼材からなる裏金層へ銅基の軸受合金層を積層した構成である。軸受合金層の上にAg、Ni等からなる中間層を形成することもある。
【0013】
基材層3の表面には凹凸を形成しても良い。凹凸を形成することで、基材層3と固液二相性材料層5との接触面積が増大し、強固な接着力を確保できるが、基材層3の表面の凹凸の谷深さが深すぎると、固液二相性材料層5は基材層3の表面の凹凸の中に入り込めず、固液二相性材料層と基材層との間に隙間が生まれてしまい、密着力が低下するため、適切な谷深さの見極めが必要となる。
基材層3の表面の最大谷深さRvは、0.1μm≦Rv≦40μmを満たす値であることが望ましい。
凹凸の形成は基材層3の表面へ置換基を付与する前に行い、ショットブラスト、エッチング、レーザ加工、研磨等で行うことができる。
【0014】
基材層3の表面は次のように前処理される。
超音波洗浄等による脱脂工程を行い、次にショットブラスト等による粗面化工程を行い、超音波洗浄等による洗浄工程、最後にコロナ処理等による親水化工程を行う。
【0015】
このように前処理された基材層3の表面を処理液で処理する。
この処理液はシランカップリング剤とシラン化合物とを含み、シランカップリング剤のモル質量(D)と、シラン化合物のモル質量(C)の比の値C/Dを0.10~1.00とする。
かかる処理液を用いることで、基材層3と固液二相性材料層5との間に強い接着力を確保しつつ、固液二相性材料層5に備えられる本来の特性(低摩擦性)を維持できる。
なお、比の値C/Dの更に好ましい値は、0.20~1.00である。
【0016】
シラン化合物が固液二相性材料層5に取り込まれるとこれと反応して変性(硬化)させる。本発明者らの観察によれば、上記の範囲でのシラン化合物の使用において、固液二相性材料層5において基材層3側の界面においてシラン化合物との反応領域が見られるが、固液二相性材料層5の表層側においては反応領域が見られなかった。即ち、表層側において固液二相性材料層5の特性は十分に維持されている。
換言すれば、シラン化合物はシランカップリング剤による置換基を定着させる効果を増加させる一方、固液二相性材料層5を変性するというトレードオフの作用を有する。よって、摺動部材の作成においては、シランカップリング剤に対するシラン化合物の配合量を上記のように規定することができる。
【0017】
ここに、シランカップリング剤は特に限定されないが、メタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル、メタクリル酸3-(トリエトキシシリル)プロピル、メタクリル酸3-[トリ(メトキシエトキシ)シリル]プロピル、メタクリル酸3-(メチルジメトキシシリル)プロピル、メタクリル酸3-(メチルジエトキシシリル)プロピルなどのアルコキシシリル基含有アクリレート化合物など、アルコキシシリル基およびエステル構造を有する化合物が挙げられる。
【0018】
かかるシラン化合物は、シランカップリング剤による接着の効果を増強させるものであれば特に限定されず、トリアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、アリールシラン、ダイポーダルシラン、ヒドロキシ基含有シラン、疎水性シラン等を挙げることができる。
この発明では、シランカップリング剤との相性から上記のシラン化合物を選択したが、同等の機能を備える化合物があれば、その化合物との併用又はその化合物とシランカップリング剤とから処理液を調製することもできる。
処理液にはシランカップリング剤とシラン化合物との他に、アルコール等の助剤を配合することができる。
【0019】
シランカップリング剤とシラン化合物からなる処理液は次のように調製される。
最初に、シランカップリング剤とエタノールを混合し、10分攪拌した後にシラン化合物を混合し10分攪拌し液体(I)を得る。
次に、28%アンモニア水とエタノールを混合し、10分攪拌して液体(II)を得る。
液体(I)と液体(II)と混合し、10分攪拌して処理液を得る。
【0020】
このようにして得られた処理液へ、既述のように前処理された基材層3を浸漬する。浸漬条件は特に限定されないが、浸漬温度:20~50℃、浸漬時間:6~24時間とすることができる。
このようにして基材層3の表面へ置換基が定着される。
【0021】
浸漬された基材層に対して、周知の方法で固液二相性材料層を積層することができる。積層の方法は、下記に限定されるものではないが、その厚さは100μm~1500μmとすることが好ましい。
固液二相性材料の厚さを100μm以上とすると、基材層に残存したシラン化合物による固液二相性材料への影響を小さくさせ易い。
固液二相性材料の厚さを1500μm以下とすると、その膜厚により、固液二相性材料の液相の圧力が上昇し、液相が受け持つ荷重比率が高まることで低摩擦係数を保ち易い。
【0022】
固液二相性材料はダブルネットワーク構造の固相と潤滑性を備えた液相とを含む。
<ダブルネットワーク構造>
ここにダブルネットワーク構造とは2種類以上のポリマーネットワークによって形成される相互侵入網目構造を指し、更に、「相互侵入網目構造」とは、2以上の架橋網目構造を有するポリマーが互いの網目構造に侵入することで、物理的に絡まり合っており、結果として内部に複数の網目構造が形成されている構造あるいは状態をいう。なお、ダブルネットワーク構造は、2種類のポリマーネットワークによって形成されたものはもちろんのこと、3種類のポリマーネットワークによって形成されたもの、あるいは、それ以上の種類のポリマーネットワークによって形成されたもののいずれであってもよい。また、ダブルネットワーク構造は、さらに直鎖状のポリマーを含有することで、半相互侵入網目構造を形成するものであってもよい。
【0023】
ダブルネットワークを形成する2種以上のポリマーネットワークは、特に限定されないが、たとえば、分散媒として、極性化合物を含有する場合には、ダブルネットワークゲルの強度を適切に高めることができるという観点より、正または負に荷電し得る基を有する不飽和モノマーから形成されるポリマーネットワーク(E)と、電気的に中性な(正または負に荷電し得る基を有さない)不飽和モノマーから形成されるポリマーネットワーク(F)との組み合わせであることが好ましい。
【0024】
正または負に荷電し得る基を有する不飽和モノマーから形成されるポリマーネットワーク(E)(以下、適宜、「ポリマーネットワーク(E)」とする。)を形成するための、正または負に荷電し得る基を有する不飽和モノマーとしては、特に限定されないが、酸性基(たとえば、カルボキシル基、リン酸基及びスルホン酸基)や塩基性基(たとえば、アミノ基)を有する不飽和モノマーなどが挙げられる。
【0025】
正または負に荷電し得る基を有する不飽和モノマーの具体例としては、
(メタ)アクリル酸(アリクル酸および/またはメタクリル酸を意味する。以下同様。)、(無水)マレイン酸、マレイン酸モノアルキルエステル、フマル酸、フマル酸モノアルキルエステル、クロトン酸、イタコン酸、イタコン酸モノアルキルエステル、イタコン酸グリコールモノエーテル、シトラコン酸、シトラコン酸モノアルキルエステル、桂皮酸等のカルボキシル基含有ビニル系モノマーや、これらの塩;
スルホプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロキシプロピルスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルアミノ-2,2-ジメチルエタンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルオキシエタンスルホン酸、3-(メタ)アクリロイルオキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、p-スチレンスルホン酸、ビニルスルホン酸などのスルホン酸基含有ビニル系モノマーや、これらの塩;
2-ヒドロキシエチルアクリロイルホスフェートなどのリン酸基含有ビニル系モノマーや、これらの塩;
アミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、t-ブチルアミノエチル(メタ)アクリレートなどのアミノ基含有ビニル系モノマーやこれらの塩(メタクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド等);などが挙げられる。
これらのモノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0026】
電気的に中性な(正または負に荷電し得る基を有さない)不飽和モノマーから形成されるポリマーネットワーク(F)(以下、適宜、「ポリマーネットワーク(F)」とする。)を形成するための、電気的に中性な不飽和モノマーとしては、
ジメチルシロキサン、スチレン、アクリルアミド誘導体(アクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、アクリロイルモルホリン、メチレンビスアクリルアミド等)、メタクリルアミド誘導体(メタクリルアミド、ジメチルメタクリルアミド、N-イソプロピルメタクリルアミド、N-メチロールメタクリルアミド、メタクリロイルモルホリン等)、アクリレート(ヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノプロピルアクリレートアルキルアクリレート(メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルアクリレートラウリルアクリレート、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、トリメチールプロパントリメタクリレート等)、アクリロニトリル、N-ビニルピロリドン、ビニルピリジン、スチレン、メタクリル酸メチル、フッ素含有不飽和モノマー(たとえば、トリフルオロエチルアクリレート(TFE))、ヒドロキシエチルアクリレート、酢酸ビニル、トリエチレングリコールジメタクリレートなどが挙げられる。これらのモノマーは、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0027】
一方、ダブルネットワークゲルに含有させる分散媒として、イオン液体を用いる場合には、ダブルネットワークゲルの強度を適切に高めることができるという観点より、ダブルネットワークゲルを、架橋点間分子量が比較的大きなポリマーネットワークと、架橋点間分子量が比較的小さなポリマーネットワークとの組み合わせであることが好ましく、特に、イオン液体との親和性を良好なものとするという観点より、下記一般式(1)で表される化合物から形成されるポリマーネットワーク(J)と、下記一般式(1)で表される化合物以外の化合物から形成されるポリマーネットワーク(H)との組み合わせであることが好ましい。
【0028】
この場合において、下記一般式(1)で表される化合物から形成されるポリマーネットワーク(J)(以下、適宜、「ポリマーネットワーク(J)」とする。)、および、下記一般式(1)で表される化合物以外の化合物から形成されるポリマーネットワーク(J)(以下、適宜、「ポリマーネットワーク(H)」とする。)のうち、いずれを架橋点間分子量が比較的大きなポリマーネットワークとしても、架橋点間分子量が比較的小さなポリマーネットワークとしてもよく、特に限定されない。
【化1】
(上記一般式(1)中、mは、1以上10以下の整数を示す。nは、1以上5以下の整数を示す。R1は、水素原子、または炭素数1~3のアルキル基を示す。R2、R3、R4は、炭素数1~5のアルキル基を示す。R2、R3、R4は、酸素原子、硫黄原子、フッ素原子から選ばれる1種以上のヘテロ原子を含んでいてもよく、R2、R3、R4のいずれか2個の基が環状構造を形成していてもよい。また、Yは一価のアニオンを示す。)
【0029】
炭素数1~5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、2-プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。また、R2、R3およびR4のいずれか2個の基が環状構造を形成している化合物としては、アジリジン環、アゼチジン環、ピロリジン環、ピペリジン環等を有する4級アンモニウム塩等が挙げられる。
【0030】
一価のアニオンYとしては、特に限定されるものではなく、BF4-、PF6-、AsF6-、SbF4-、AlCl4-、NbF6-、HSO4-、ClO4-、CH3SO3-、CF3SO3-、CF3CO2-、(CF3SO2)2N-、Cl-、Br-、I-等のアニオンを用いることができるが、ダブルネットワーク構造の安定性等を考慮すると、BF4-、PF6-、(CF3SO2)2N-、CF3SO3-、またはCF3CO2-であることが好適であり、CF3SO3-であることがより好適である。
【0031】
上記一般式(1)で表される化合物のなかでも、下記一般式(2)~(9)で表される化合物が特に好適である。
【化2】
(上記一般式(2)~(9)中、m、R1、R2、Yは、上記一般式(1)と同様である。)
【0032】
上記一般式(1)で表される化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上併用してもよい。
【0033】
ポリマーネットワーク(H)を形成するためのモノマーとしては、特に限定されないが、たとえば、上述したポリマーネットワーク(F)の形成に用いられる電気的に中性な不飽和モノマーなどが挙げられる。
【0034】
<潤滑性を備えた液相>
潤滑性を備えた液相として、特開2016-141072号公報に示されるイオン液体を用いることができる。即ち、イオン液体としては、特に限定されないが、低摩擦摺動性や機械強度、耐環境性をより高めることができるという観点より、下記一般式(10)で示され、融点が25℃以下であるイオン液体を好適に用いることができる。
【化3】
(上記一般式(10)中、R5~R8は互いに同一もしくは異種の炭素数1~5のアルキル基、またはR9-O-(CH2)n-で表されるアルコキシアルキル基(R9はメチル基またはエチル基を示し、nは1~4の整数である。)を示し、これらR5、R6、R7およびR8は、2つ以上が連結して環状構造を形成していてもよい。ただし、R5~R8の内少なくとも1つは上記アルコキシアルキル基である。Xは窒素原子またはリン原子を示し、Yは一価のアニオンを示す。〕
【0035】
炭素数1~5のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基、2-プロピル基、ブチル基、ペンチル基等が挙げられる。R9-O-(CH2)n-で表されるアルコキシアルキル基としては、メトキシまたはエトキシメチル基、メトキシまたはエトキシエチル基、メトキシまたはエトキシプロピル基、メトキシまたはエトキシブチル基等が挙げられる。
【0036】
R5、R6、R7およびR8のいずれか2個の基が環状構造を形成している化合物としては、Xに窒素原子を採用した場合には、アジリジン環、アゼチジン環、ピロリジン環、ピペリジン環等を有する4級アンモニウム塩、一方、Xにリン原子を採用した場合には、ペンタメチレンホスフィン(ホスホリナン)環等を有する4級ホスホニウム塩等が挙げられる。
【0037】
特に、置換基として、上記R9がメチル基であり、nが2のメトキシエチル基を少なくとも1つ有する4級アンモニウム塩が好適である。
また、置換基として、メチル基、2つのエチル基、およびアルコキシエチル基を有する下記一般式(11)で示される4級塩を好適に用いることができ、なかでも、下記式(12)~(20)で表される化合物を特に好適に用いることができる。
【化4】
(上記一般式(11)中、R9はメチル基またはエチル基を示し、Xは窒素原子またはリン原子を示し、Yは一価のアニオンを示す。)
【化5】
【0038】
液相としてイオン液体を用いる場合には、イオン液体に加えて、イオン液体と相溶性を有する別の分散媒、たとえば、プロピレンカーボネート、アセトニトリル、水、テトラヒドロフランなどを併用してもよい。
【0039】
イオン液体のほかに、潤滑性を備えた液相として次のものを挙げることができる。
例えば、水、エタノール、プロパノール、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、プロピレンカーボネートなどの極性化合物である。
摺動部材と摺動相手との間に注入される潤滑剤と同一もしくは同種のものを液相の材料として選択することが好ましいことはいうまでもない。例えば、潤滑剤にオイルが使用されるときには、当該オイル自体もしくはそのベースオイルを採用する。冷媒潤滑であれば、冷媒自体もしくは希釈に用いる水を採用する。
【0040】
第2モノマーを反応させて第2ポリマーネットワークを形成し、もってダブルネットワーク構造を構築した際、当該ダブルネットワーク構造には製造時に用いた分散媒などが液相として残留した状態である。したがって、かかる液相を、上記潤滑性を備えた液相で置換する。
かかる液相の量(固液二相性材料層の全質量に対する液相の質量比)は50~95mass%、更に好ましくは60~95mass%である。当該液相の量が50mass%以上となると、低摩擦性の確保が十分にできる。他方、95mass%以下となると強度の維持がされやすくなる。
【0041】
上記において、固液二相性材料層中に硬質の粒子や固体潤滑剤粒子を内包させることができる。
さらには、既述の固液二相性材料層(第1固液二相性材料層)と基材層との間に第2固液二相性材料層を介在させることができる。この第2固液二相性材料層では第1固液二相性材料層よりも液相の量を少なくする。例えば、液相の量を5~50mass%として、更に好ましくは、5~40mass%である。このように相対的に固相比率を高くすることにより、基材層と固相の接合面積が増大し、接合性が向上する。
さらには、第3固液二相性材料層を介在させることもできる。
【0042】
以下、この発明の実施例について説明する。
<<基材層3>>
表面を切削、研磨した厚さ1.5mmのAl-Zn合金/鋼の二層構造の平板を基材層3として準備し、超音波洗浄による脱脂をした。粗面化を行うときはこの時点でショットブラスト処理を行う。紫外線反射率を調整する場合は粗面化条件により調整する。最後に超音波洗浄を実行してメディア除去を行う。
次に、メタクリル酸3-(トリメトキシシリル)プロピル1.0g、1,2-ビス(トリエトキシシリル)エタン0.2g及び28%アンモニア水5.0gをエタノール50mLに溶解させることで処理液を得た。そして、脱脂後の基材層3に対し、コロナ処理を施すことで、表面を親水化させ、これを上記で得られた処理液に浸漬し、室温にて12時間静置することで基材層(表面上にシランカップリング剤由来の置換基とラジカル活性種とを有するもの)を得た。
基材層が浸漬された後、固液二相性材料層が積層される。
【0043】
<<固液二相性材料層>>
<第1ポリマーネットワークを含むシート(第1ゲルシート)の作成>
第1モノマーとしてのN,N-ジエチル-N-(2-メタクリロイルエチル)-N-メチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド(DEMM-TFSI)5.0g、並びに架橋剤としてのトリエチレングリコールジメタクリレート5mg、開始剤としてのIRGACURE 369(BASF社製)5mgを分散媒としてのN,N-ジエチル-N-(2-メトキシエチル)-N-メチルアンモニウムビス(トリフルオロメチルスルホニル)イミド1.5gとアセトニトリル5.0gに溶解した。この溶液(第1ポリマーネットワーク材料液)をアルゴンガスで5分間のバブリング後、所定厚さのシリコンゴムのスペーサを介した2枚のガラス板の間に注入し、1時間の紫外線照射を行うことでガラス板の間の溶液をゲル化した。これにより、第1ポリマーネットワークを含むシート(第1ゲルシート)が形成される。
【0044】
紫外線の照射は試料をターンテーブルにおいてUV炉(アイテックシステム製卓上バッチ式UV硬化装置(MUVBA-0.3×0.3×0.5))内にて行った。かかるUV炉の出力は13.3%に設定した。UV源から試料までの距離は10cmとした。この出力設定における最大照射強度の計算値は37mW/cm2とした。このとき、アイテックシステム製紫外線積算光量計(UVM-100)をターンテーブルに置き、UV源から受光部までの距離を10cmにし、20秒間測定を行った。
【0045】
<含浸シート(第2ゲルシート)の作製>
第2のモノマーとしてのメタクリル酸メチル2.0g、架橋剤としてのトリエチレングリコールジメタクリレート100mg、及び開始剤としてのベンゾフェノン10mgを分散媒としてのプロピレンカーボネート8gに溶解した。この溶液(第2ポリマーネットワーク材料液)をアルゴンガスで5分間のバブリング後、前記で得られた第1ポリマーネットワークを含むシート(第1ゲルシート)を1日浸漬した。
【0046】
<ハイブリッド化>。
上記で得られた実施例の含浸シートを基材層の処理面へ、その全面が接触するように、重ねた。更に含浸シートの上に未処理のガラス板を重ねた。
ガラス板の重量により実施例の基材層へ含浸シートを圧接する状態で紫外線照射した。照射時間は、12時間であった。紫外線の照射条件は、第1ポリマーネットワークを形成する条件と同じとした。
【0047】
これにより、含浸シート内において、半架橋状態のDEMM-TFSIの重合とメタクリル酸メチルの重合が進行し、ダブルネットワークゲルが形成される。そしてこれと同時に、基材層の表面の置換基(メタクリレート基)と含浸シート内のメタクリル酸メチルが共重合することにより、ダブルネットワークの固相と基材層とが化学結合により強固に接合されて、ハイブリッド構造物が作製された。
【0048】
<液相の置換>
基材層―固液二相性材料層のハイブリッド構造物を、イオン液体へ12時間浸漬し、固液二相性材料層に含まれる液相を当該潤滑油に置換して、固液二相性材料層とした。その膜厚は1100μmであった。
【0049】
このようにして得られた摺動部材1の実施例及び比較例を表1に示す。
表1において、シランカップリング剤とシラン化合物との配合比は、処理液作製時に両者の配合量を調整することにより行った。
基材層露出時の荷重は次の条件でスクラッチ試験を行うことで測定した。
試験機 スクラッチ試験機
試験モード 連続荷重
荷重 1~20N
荷重スピード 10N/min
スクラッチ距離 19mm
潤滑状態 Dry
圧子 ダイヤモンド R=0.2mm
この基材層露出時の荷重は基材層と固液二相性材料層との接着力を表す。
【0050】
表1の摩擦係数は往復摺動試験機により下記条件で測定した。
試験機 往復動試験機 HEIDON
荷重 700gf
速度 25mm/s
摺動距離 10mm
潤滑状態 Dry
往復回数 21回
相手材 SUJ2 Φ8mmボール
【0051】
FT-IR分析
FT-IR分析装置としてパーキンエルマー製Spotlight200を用い、ATR法で分析を行った。
固液二相性材料層5と基材層3との界面にナイフを入れ、固液二相性材料層5が基材層3の表面にわずかに残存する程度までナイフで削り、固液二相性材料層5を基材層3から剥がす。このとき、ナイフと基材層3の表面とが接触しないようにする。このように、固液二相性材料層の材料がわずかに残存した状態の基材層の表面に対してFT-IR分析を行う。
【0052】
分析により得られたチャートにおいて、エステルのC=O伸縮に由来するピーク(領域:1760~1715cm
-1)の吸光度をAとし、得られたチャートにおいて最も高いピークの吸光度をBとしたときの両者の比の値A/BをFT-IR分析の結果とした。なお、各実施例及び比較例において最も高い吸光度Bのピークは1185~1175cm
-1の領域に現れた。
【表1】
【0053】
表1において、バランス性能標記指数Mは基材露出時の荷重の値Pに摩擦係数の値K1を千倍したものを加えた値であり、15≦M≦40の範囲を満たすとき、接着性と低摩擦性とのバランスが良好で、摺動部材として好適であるとする。
比較例1では、その基材露出時の荷重の結果から、基材層3に対する固液二相性材料層5の接着性は好ましいが、摩擦係数が大きくなる。これは、固液二相性材料層5に対するシラン化合物の影響によると考えられる。比較例2では摩擦係数は好ましいが基材層3に対する固液二相性材料層5の接着性で劣る。これは、シランカップリング剤による基材層表面に置換基を定着する機能がシラン化合物により十分の増強されなかったためと考えられる。
以上、実施例1及び実施例5並びに比較例1及び比較例2の結果からシラン化合物とシランカップリング剤の配合の比の値C/Dは0.10~1.00とすることが好ましいことがわかる。実施例4と実施例5との比較から、更に好ましいC/Dの比の値は0.25~1.00である。
【0054】
以上、処理液に含まれるシラン化合物とシランカップリング剤との配合比率に基づいて説明をしてきたが、得られた摺動部材のFT-IR分析の結果に基づき、この発明を規定することもできる。
本発明者らは、更に、上記と同じ条件で処理液におけるシラン化合物とシランカップリング剤との配合比率を変化させてみた。結果を表2に示す。
【表2】
【0055】
上記において、FT-IR分析により得られた実施例8のチャートを
図2に、同じく、比較例4のチャートを
図3に示す。
図中、エステルのC=O伸縮に由来するピークに参照符号Aが付され、得られたチャートにおいて最も高いピークに参照符号Bが付されている。なお、チャートにおいて横軸は波数を示し、縦軸は吸光度を示している。
表2の結果から、FT-IR分析の結果が0.10~0.90において好ましいバランス性評価指数が得られることがわかる(実施例6、7及び比較例3、4参照)。更に好ましいFT-IR分析の結果は0.50~0.90である(実施例9、10参照)。
既述の通り、シラン化合物の機能はシランカップリング剤により置換基定着機能を増強する。シランカップリング剤のみでは基材露出時の荷重(接着力)が不十分になることは比較例4の結果から明らかである。換言すれば、FT-IR分析結果が0.10~0.90を示すハイブリッド構造体は新規な物といえる。
【0056】
従って、この発明の他の局面は次のように規定される。
基材層と該基材の上に形成される固液二相性材料層とを備えてなる摺動部材であって、
前記基材層から前記固液二相性材料層を機械的に剥離させた後の前記基材層のFT-IR分析で検出されるエステルのC=O伸縮由来のピークの吸光度(A)と前記FT-IR分析で検出された全ピークの中の最も高いピークの吸光度(B)との比の値A/Bが0.10~0.90である、摺動部材。
【0057】
上記において、前記C=O伸縮由来のピークは、シランカップリング剤由来のものである。シランカップリング剤からの置換基により基材層と固液二相性材料層とは
図2のように結合されており、そのエステル構造のC=O基に着目している。
最も高いピークは前記固液二相性材料層由来のものである。
また、固液二相性材料層は100μm~1500μmの膜厚を備えることが好ましい。
【0058】
以上、専ら軸受等の摺動部材に基材層と固液二相性材料層とからなるハイブリッド構造物を適用する例について説明してきた。
この発明の用途は摺動部材に限定されるものではなく、人工関節等生体に適用される部材やその他の機能性部材に適用できることは言うまでもない。
そこでこの発明の他の局面は次の様に規定される。
基材層と該基材の上に形成される固液二相性材料層とを備えてなるハイブリッド構造物であって、
前記基材層から前記固液二相性材料層を機械的に剥離させた後の前記基材層のFT-IR分析で検出されるエステルのC=O伸縮由来のピークの吸光度(A)と前記FT-IR分析で検出された全ピークの中の最も高いピークの吸光度(B)との比の値A/Bが0.10~0.90である、ハイブリッド構造物。
このハイブリッド構造物における基材層の材料は金属に限定されず、その用途に応じて、金属の他、金属酸化物、金属窒化物、セラミックス等の任意の材料を選択できる。同様に、基材層の形状も任意であり、固液二相性材料層の厚さも任意に選択できる。
【0059】
この発明は、上記発明の実施形態の説明に何ら限定されるものではない。特許請求の範囲の記載を逸脱せず、当業者が容易に想到できる範囲で種々の変形態様もこの発明に含まれる。
【符号の説明】
【0060】
1 摺動部材
3 基材層
5 固液二相性材料層