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特開2023-168188不整脈または不整脈関連障害のリスク判定方法及びリスク判定システム
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  • 特開-不整脈または不整脈関連障害のリスク判定方法及びリスク判定システム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168188
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】不整脈または不整脈関連障害のリスク判定方法及びリスク判定システム
(51)【国際特許分類】
   C12Q 1/6883 20180101AFI20231116BHJP
【FI】
C12Q1/6883 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022130225
(22)【出願日】2022-08-17
(31)【優先権主張番号】P 2022079513
(32)【優先日】2022-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成30年度、国立研究開発法人日本医療研究開発機構、ゲノム医療実現推進プラットフォーム事業(先端ゲノム研究開発)、「マルチオミックス連関による循環器疾患における次世代型精密医療の実現」、産業技術力強化法第17条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】503359821
【氏名又は名称】国立研究開発法人理化学研究所
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 薫
(72)【発明者】
【氏名】宮澤 一雄
【テーマコード(参考)】
4B063
【Fターム(参考)】
4B063QA13
4B063QA19
4B063QQ02
4B063QQ42
4B063QS24
4B063QS34
4B063QX01
(57)【要約】
【課題】幅広い人種にわたって適用可能な、心房細動等の不整脈または不整脈関連障害のリスクを高精度で判定することのできる方法およびシステムを提供すること。
【解決手段】対象者の不整脈または不整脈関連障害のリスクを判定するための方法であって、
不整脈に関連する遺伝的変異の効果アレルと効果量を含むデータリストを準備する工程、対象者の遺伝情報を入手する工程、
前記データリストの不整脈関連遺伝的変異の効果アレルと効果量に関する情報に基づき、対象者の遺伝情報から不整脈リスクスコアを算出する工程、および
前記リスクスコアに基づき不整脈のリスクを判定する工程、
を含み、
前記データリストが欧米人集団のゲノム解析結果と欧米人以外の集団のゲノム解析結果をメタ解析により統合したデータリストであることを特徴とする、
方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象者の不整脈または不整脈関連障害の発症リスクを判定するための方法であって、
不整脈に関連する遺伝的変異の効果アレルと効果量を含むデータリストを準備する工程、対象者の遺伝情報を入手する工程、
前記データリストの不整脈関連遺伝的変異の効果アレルと効果量に関する情報に基づき、対象者の遺伝情報から不整脈リスクスコアを算出する工程、および
前記リスクスコアに基づき不整脈または不整脈関連障害のリスクを判定する工程、
を含み、
前記データリストが欧米人集団のゲノム解析結果と欧米人以外の集団のゲノム解析結果をメタ解析により統合したデータリストであることを特徴とする、
方法。
【請求項2】
前記欧米人以外の集団がアジア人の集団である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記リスクスコアの算出はpruning and thresholding法を用いて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記メタ解析は変量効果モデルを用いて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
不整脈が心房細動である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
不整脈関連障害が脳梗塞、脳卒中および脳出血から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記データリストに含まれる遺伝的変異は、rs202030113、rs2930856、rs1055894680、rs73205368、rs778479352、rs4970418、rs9782984、rs75414548、rs1933723、rs12512502、rs6841049、rs17118812、rs7766436、rs12209223、rs4896104、rs2727757、rs17430357、rs17303101、rs11527634、rs76460895、rs1769758、rs7126870、rs10500790、rs517938、rs10845620、rs2629755、rs1344543、rs11614295、rs11841562、rs1886512、rs9284324、rs8096658、rs11881441、rs3746471、rs5754508、rs139557、rs73205368、rs1891095(なお、rs番号はNational Center for Biotechnology InformationのdbSNPデータベースの登録番号を示す)から選択される1種以上の一塩基多型を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
対象者の不整脈または不整脈関連障害のリスクを判定するためのシステムであって、
不整脈に関連する遺伝的変異の効果アレルと効果量を含むデータリストを含むデータを格納する手段、
対象者の遺伝情報を受信する手段、
前記データリストの不整脈関連遺伝的変異の効果アレルと効果量に関するデータに基づき、対象者の遺伝情報から不整脈リスクスコアを算出する手段、および
前記リスクスコアに基づき不整脈または不整脈関連障害のリスクを提示する手段、を含み、
前記データリストが欧米人集団のゲノム解析結果と欧米人以外の集団のゲノム解析結果をメタ解析により統合したデータリストであることを特徴とする、
システム。
【請求項9】
前記データリストに含まれる遺伝的変異は、rs202030113、rs2930856、rs1055894680、rs73205368、rs778479352、rs4970418、rs9782984、rs75414548、rs1933723、rs12512502、rs6841049、rs17118812、rs7766436、rs12209223、rs4896104、rs2727757、rs17430357、rs17303101、rs11527634、rs76460895、rs1769758、rs7126870、rs10500790、rs517938、
rs10845620、rs2629755、rs1344543、rs11614295、rs11841562、rs1886512、rs9284324、rs8096658、rs11881441、rs3746471、rs5754508、rs139557、rs73205368、rs1891095(なお、rs番号はNational Center for Biotechnology InformationのdbSNPデータベースの登録番号を示す)から選択される1種以上の一塩基多型を含む、請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
不整脈が心房細動である、請求項8または9に記載のシステム。
【請求項11】
不整脈関連障害が脳梗塞、脳卒中および脳出血から選択される、請求項8または9に記載のシステム。
【請求項12】
不整脈または不整脈関連障害のリスク判定方法であって、
rs202030113、rs2930856、rs1055894680、rs73205368、rs778479352、rs4970418、rs9782984、rs75414548、rs1933723、rs12512502、rs6841049、rs17118812、rs7766436、rs12209223、rs4896104、rs2727757、rs17430357、rs17303101、rs11527634、rs76460895、rs1769758、rs7126870、rs10500790、rs517938、rs10845620、rs2629755、rs1344543、rs11614295、rs11841562、rs1886512、rs9284324、rs8096658、rs11881441、rs3746471、rs5754508、rs139557、rs73205368、rs1891095(なお、rs番号はNational Center for Biotechnology InformationのdbSNPデータベースの登録番号を示す)から選択される1種以上の
一塩基多型を解析する工程を含む、方法。
【請求項13】
不整脈が心房細動である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
不整脈関連障害が脳梗塞、脳卒中および脳出血から選択される、請求項12または13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は遺伝子配列解析を利用した心房細動などの不整脈または不整脈関連障害のリスク判定方法及びリスク判定システムに関する。
【背景技術】
【0002】
不整脈は心臓の脈の乱れを指す状態であるが、同期や息切れ、胸痛などの自覚症状が出たり、失神や心不全、なかには突然死に至るものもある。心房細動 (AF)はそのような不整
脈の一種であり、世界中で約 4,630万人が罹患している。心房細動の世界的な有病率は、一般人口の急速な高齢化と不顕性心房細動の検出の強化により増加している。心房細動の診断・治療技術は進歩しているが、脳卒中や心不全などの生命を脅かす合併症で入院する患者も相当数おり、患者や公的医療制度に大きな負担を与えている。心房細動の発症には、加齢、肥満、高血圧、心不全などの従来の臨床的な危険因子のほかに、遺伝的な寄与も広く認識されている。最近のゲノムワイド関連解析(GWAS)により、100以上の心房細動
関連遺伝子座が同定され、そのいくつかは心臓の発生、電気生理、収縮、構造経路に関与していることが分かっている(非特許文献1~4)。しかし、大部分のAF-GWASはヨーロ
ッパ人集団で主に行われてきたため、非ヨーロッパ人集団におけるAFの遺伝的病態は包括的に理解されておらず、このようなGWASから得られた多因子リスクスコア (PRS) を非ヨ
ーロッパ人集団に適用することは困難であった。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Christophersen, I.E. et al. Large-scale analyses of common and rare variants identify 12 new loci associated with atrial fibrillation. Nat. Genet. 49, 946-952 (2017).
【非特許文献2】Low, S.K. et al. Identification of six new genetic loci associated with atrial fibrillation in the Japanese population. Nat. Genet. 49, 953-958 (2017).
【非特許文献3】Nielsen, J.B. et al. Biobank-driven genomic discovery yields new insight into atrial fibrillation biology. Nat. Genet. 50, 1234-1239 (2018).
【非特許文献4】Roselli, C. et al. Multi-ethnic genome-wide association study for atrial fibrillation. Nat. Genet. 50, 1225-1233 (2018).
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
遺伝情報に基づいて心房細動の発症リスクや予後を予測することは、今後、心房細動の医学・医療を進歩させるために重要な役割を果たすと期待される。しかし、これまでの心房細動の遺伝的解析は特定の民族を対象とした結果であり、人種を越えた普遍的なリスク予測は困難であった。すなわち、遺伝的変異の分布には民族差が大きいことが知られており、例えば、ヨーロッパ人集団を用いた研究成果が、非欧米人、例えば日本人を含む東アジア人集団にも適応可能かどうかについては明らかではなかった。
【0005】
そこで、本発明は、幅広い人種にわたって適用可能な、心房細動等の不整脈または不整脈関連障害のリスクを高精度で判定することのできる方法およびシステムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
まず、本発明者らの研究グループは、バイオバンク・ジャパンに登録されている約9800人
の心房細動患者群と140000人の対照群のゲノム配列を比較し、心房細動の患者に特徴的に見られる遺伝的変異を網羅的に検出するゲノムワイド関連解析(GWAS)を行った。その結果、表2に示すような心房細動に関わる疾患感受性座位および遺伝子変異を同定した。
【0007】
次に、日本人のGWASの結果(約15万人)をヨーロッパ人集団のGWASの結果(欧州の大規模解析の約103万人、フィンランドバイオバンク(FinnGen)の約6万人)とメタ解析により統合し、計120万人を超える世界最大規模の心房細動における民族横断的GWASを行った。
その結果、表3に示すような心房細動と関連を示すさらなる疾患感受性座位および遺伝子変異を同定した。
【0008】
続いて、今回得られた遺伝的変異と心房細動の関連解析結果を用いてポリジェニックリスクスコア(PRS)を作成し、その予測性能を評価したところ、民族横断的GWASの結果を用
いて作成されたPRSの性能は、日本人データに基づくPRSやヨーロッパ人集団データに基づくPRSを顕著に上回ることが分かった。そして、民族横断的GWASの結果を用いて作成され
たPRSを用いて日本人のデータ(BBJ)を解析したところ、心房細動の発症年齢や予後、さらには脳卒中や脳梗塞などの関連障害リスクを効率よく予測できることが明らかとなった。
以上のような知見に基づき、本発明を完成させた。
【0009】
本発明の一態様は、対象者の不整脈または不整脈関連障害のリスクを判定するための方法であって、
不整脈に関連する遺伝的変異の効果アレルと効果量を含むデータリストを準備する工程、対象者の遺伝情報を入手する工程、
前記データリストの不整脈関連遺伝的変異の効果アレルと効果量に関する情報に基づき、対象者の遺伝情報から不整脈リスクスコアを算出する工程、および
前記リスクスコアに基づき不整脈または不整脈関連障害のリスクを判定する工程、を含み、
前記データリストが欧米人集団のゲノム解析結果と欧米人以外の集団(非欧米人集団)のゲノム解析結果をメタ解析により統合したデータリストであることを特徴とする、方法、に関する。
【0010】
本発明の他の態様は、対象者の不整脈または不整脈関連障害のリスクを判定するためのシステムであって、
不整脈に関連する遺伝的変異の効果アレルと効果量を含むデータリストを含むデータを格納する手段、
対象者の遺伝情報を受信する手段、
前記データリストの不整脈関連遺伝的変異の効果アレルと効果量に関するデータに基づき、対象者の遺伝情報から不整脈リスクスコアを算出する手段、および
前記リスクスコアに基づき不整脈または不整脈関連障害のリスクを提示する手段、を含み、
前記データリストが欧米人集団のゲノム解析結果と欧米人以外の集団のゲノム解析結果をメタ解析により統合したデータリストであることを特徴とする、システム、に関する。
【0011】
本発明の他の態様は、不整脈または不整脈関連障害のリスク判定方法であって、
rs202030113、rs2930856、rs1055894680、rs73205368、rs778479352、
rs4970418、rs9782984、rs75414548、rs1933723、rs12512502、rs6841049、rs17118812、rs7766436、rs12209223、rs4896104、rs2727757、rs17430357、rs17303101、rs11527634
、rs76460895、rs1769758、rs7126870、rs10500790、rs517938、rs10845620、rs2629755
、rs1344543、rs11614295、rs11841562、rs1886512、rs9284324、rs8096658、rs11881441、rs3746471、rs5754508、rs139557、rs73205368、rs1891095、から選択される1種以上の
一塩基多型を解析する工程を含む、方法、に関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の方法およびシステムによれば、複数民族のゲノム解析結果をメタ解析により統合したデータリストを用いてリスクスコアを算出することで、心房細動などの不整脈または不整脈関連障害のリスクを精度よく判定することができる。これにより、心房細動などの不整脈やその関連疾患を予防することができ、不整脈の予防や治療の指針を得ることができ、不整脈における精密医療の実現に向けた基盤を築くことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】研究デザインの概要。上段、9,826人のAF症例と140,446人のコントロールからなる日本人コホートの概要とリファレンスパネル。中段、各研究のGWAS概要とtrans-ancestryメタ解析の症例数、対照群数。下段、Trans-ancestryメタ解析における心房細動関連変異の下流解析の概要。GWAS, ゲノムワイド関連解析; JENGER, Japanese ENcyclopedia GEnetic associations by Riken; MR, メンデルランダム化; PRS, ポリジェニックリスクスコア; TWAS, トランスクリプトームワイド関連解析
図2】トランス祖先メタ分析のマンハッタンプロット。トランス祖先メタ分析の結果を示す(77,690人の心房細動ケースと1,167,040人のコントロール)。X軸のゲノム位置(hg19)に対して、y軸にlog10BFを示した。ゲノムワイドな有意水準(log10BF>6)に達した関連シグナルは、既報の遺伝子座については青で、新規の遺伝子座は赤で示されている。AFは心房細動、BFはベイズ係数。
図3】トランス祖先メタ分析から得られた多遺伝子リスクスコア(PRS)の性能。各点は、(2,953ケース、21,194コントロール)における多遺伝子リスクスコアのナゲルケルケの疑似Rの中央値を示す。エラーバーは95%CIを示す。疑似Rの中央値とCIは、5×10回のブートストラップ法から推定した。各点の色は、発見母集団に含まれる祖先を示す。各点の大きさは、発見母集団に含まれる症例数を示す。CI:信頼区間。
図4】心房細動-多遺伝子リスクスコアの予測性能の評価。a、b:心房細動-多遺伝子リスクスコア(AF-PRS)と心房細動発症年齢との関連性分析。a:各ポイントは、多遺伝子リスクスコア分位値による発症年齢の中央値を示す。b:各点とエラーバーは、線形回帰モデルから得られた推定βと95%CIを表す。c:心房細動と脳卒中のサブタイプの関係。データはAF-PRSの1s.d.増加に対する推定ORと95%CIとして示した。d:心血管系死(a)及び脳卒中死(b)の累積イベントのカプランーマイヤー推定値と95%CI。個体は、高PRS(上位10%、赤)、低PRS(下位10%、青)、中間(その他、緑)に分類される。e:長期死亡率に対するAF-PRSの影響。データは、AF-PRSが1s.d.増加した場合の推定HRsと95%CIで示した。AF:心房細動、PRS:多遺伝子リスクスコア、CI:信頼区間、OR:オッズ比、HR:ハザード比、s.d.:標準偏差、CV:心血管死、HF:鬱血性心不全死、IHD:虚血性心疾患死。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<本発明の不整脈のリスク判定方法>
本発明の不整脈または不整脈関連障害のリスク判定方法は、
不整脈に関連する遺伝的変異の効果アレルと効果量を含むデータリストを準備する工程(データリスト準備工程)、
対象者の遺伝情報を入手する工程(遺伝情報入手工程)、
前記データリストの不整脈関連遺伝的変異のデータに基づき、対象者の遺伝情報から不整脈リスクスコアを算出する工程(リスクスコア算出工程)、及び
前記リスクスコアに基づき不整脈または不整脈関連障害のリスクを判定する工程(判定工程)、
を含む方法である。
【0015】
不整脈としては、頻脈性不整脈、徐脈性不整脈、期外収縮が挙げられる。頻脈性不整脈としては、洞性頻脈、心室性頻拍、心房細動、心房粗動、多源性心房頻拍、心室細動、心室粗動、上室性頻拍が挙げられる。徐脈性不整脈としては、洞房ブロック、房室ブロック、接合部性調律、洞不全症候群、呼吸性不整脈、脚ブロックが挙げられる。期外収縮としては、心房性期外収縮、心室性期外収縮が挙げられる。これらの中では、心房細動が好ましい。
不整脈は心電図検査等で診断される。
不整脈関連障害としては、不整脈によって血流に異常が生じ、それによって引き起こされる脳梗塞、脳卒中および脳出血等が挙げられる。
【0016】
不整脈のリスクには不整脈の発症リスク、不整脈の予後の増悪リスク(死亡リスクや不整脈関連障害発症リスクを含む)が含まれる。
【0017】
以下、各工程について説明する。
【0018】
<データリスト準備工程>
データリストとは、不整脈に関連する多数のバリアント(遺伝的変異)について、効果アレル(リスクアレル)とその効果量(疾患との関連度)のデータをリスト化したものである。
ここで、遺伝的変異は、一塩基多型(SNP)、塩基の欠失、塩基の挿入など、野生型配列
と異なる変異であればその種類は特に制限されない。
データリストに含まれる不整脈関連バリアントの種類は合計で1000種類以上であることが好ましく、5000種類以上であることがより好ましく、10000種類以上であることがさらに好ましい。
不整脈に関連する遺伝子変異の効果量は、各アレルの不整脈への関連度、例えば、不整脈患者における出現頻度等に応じて設定される。
【0019】
不整脈関連バリアントはマイナーアレル頻度が1%以上のバリアントであることが好ましい。
また、不整脈関連バリアントは、P<0.05の確率で不整脈と関連するバリアントであることが好ましい。
【0020】
本発明の方法においては、データリストは、欧米人集団のゲノム解析結果と欧米人以外の集団(非欧米人集団)のゲノム解析結果をメタ解析により統合したデータリストであることを特徴とする。ここで欧米人としては、例えば、白色人種(Caucasian)が挙げられ、
例えば、欧州人が挙げられる。また、非欧米人集団としてはアジア人の集団が挙げられ、アジア人の集団としては、例えば、日本人の集団が挙げられる。ゲノム解析結果としては、大規模、例えば、1万人以上の被検者から得られた結果であることが好ましい。また、ゲノムワイド関連解析(GWAS)の結果であることが好ましい。欧米人集団のゲノム解析結果および欧米人以外の集団のゲノム解析結果は、既にゲノム解析が行われ、一般に公開されているゲノム解析結果でもよいし、新たに行われるゲノム解析の結果であってもよい。一般に公開されているゲノム解析結果としては、例えば、日本人の場合、バイオバンク・ジャパンが挙げられ、欧州人の場合、欧州の心房細動データソース(The Nord-trφndelag Health Study、deCODE、the Michigan Genomics Initiative、DiscovEHR、UK Biobank、及び the AFGen Consortium)やFinnGenプロジェクトにおける解析結果が挙げられるが特にこれらには限定されない。European AF GWASs (EUR and FIN)
【0021】
メタ解析の手法は特に制限されず、一般的なメタ解析手法を用いることができ、各研究間の異質性を考慮しない固定効果モデルを使用してもよいが、好ましくは各研究間の異質性を考慮する変量効果モデル(random effects model)が使用される。メタ解析は、例えば、METASOFT v.2(http://genetics.cs.ucla.edu/meta)などの解析ソフトを用いて行うことができる。
【0022】
なお、本発明の方法に使用されるデータリストは、以下に記載される新規不整脈関連バリアントのうちの1種類以上、5種類以上、10種類以上、20種類以上、または30種以上を含むことが好ましい。
rs202030113、rs2930856、rs1055894680、rs73205368、rs778479352、rs4970418、rs9782984、rs75414548、rs1933723、rs12512502、rs6841049、rs17118812、rs7766436、rs12209223、rs4896104、rs2727757、rs17430357、rs17303101、rs11527634、rs76460895、rs1769758、rs7126870、rs10500790、rs517938、rs10845620、rs2629755、rs1344543、rs11614295、rs11841562、rs1886512、rs9284324、rs8096658、rs11881441、rs3746471、rs5754508、rs139557、rs73205368、rs1891095
これらのバリアントについては後述する。
【0023】
また、不整脈との関連が知られている下記表1(表1-1、1-2、1-3に分けて示す)に記載のバリアントも含むことが好ましい。これらの不整脈関連バリアントのうちの10種類以上、50種類以上または100種以上を含むことが好ましい。表1において、各欄は左から、バリアントが存在する染色体(CHR)、参照配列hg19(GRCh37)における染
色体上の位置(POS)、参照アレル(REF)、変異アレル(ALT)、dbSNPデータベースの登録番号(rsID)、近傍遺伝子、遺伝子上の位置、関連性(log10BF)を示す。バリアント
が変異アレルである場合に不整脈のリスクが高い。
【0024】
【表1-1】
【0025】
【表1-2】
【0026】
【表1-3】
【0027】
<遺伝情報入手工程>
本工程では、対象者の遺伝情報、すなわち、ゲノム配列の情報を入手する。ゲノム配列の情報としては、データリストに含まれる解析対象の各バリアントに対応する配列情報が得られる情報であればよいが、全ゲノム配列情報であることが好ましい。
【0028】
対象者の遺伝情報は、通常の遺伝子配列解析によって行うことができる。例えば、次世代シークエンサーなどを用いて対象者の遺伝情報を得ることができる。なお、本発明の方法においては、遺伝子配列解析を行うことは必須ではなく、既に解析されたデータを入手すれば足りる。
【0029】
本発明において、解析の対象はヒトであり、例えば、心房細動のリスクが疑われるヒトである。人種は特に制限されないが、例えば、日本人を含むアジア人や欧州人を含む白色人種(Caucasian)である。なお、遺伝情報解析に用いる試料は、対象由来の染色体DNAを含む試料であれば特に制限されない。例えば、血液、尿、髄液等の体液、子宮頸部や口腔粘膜などの細胞、毛髪等の体毛などが挙げられる。これらの試料を直接使用することもできるが、これらの試料から染色体DNAを常法により単離し、解析することが好ましい。
【0030】
<リスクスコア算出工程>
本工程では、データリストの不整脈関連バリアントのリスクアレルと効果量のデータに基づき、対象者の遺伝情報から不整脈リスクスコアを算出する。ここで、リスクスコアとは、遺伝情報から算出される疾患リスクを示すスコア(値)を意味し、例えば、疾患と関連する複数の遺伝的変異の重み付きの和を個人ごとに計算したスコアのことを意味する。例えば、対象者の遺伝情報をデータリストのバリアント情報に照合し、各バリアント、例えば、効果量(疾患関連度)と、対象者におけるリスクアレル保持数とを乗じた値を算出し、これの総和を算出することで、対象者におけるリスクスコアを決定することができる。
【0031】
リスクスコア(PRS:ポリジェニックリスクスコア)としては、例えば、以下の式が例示される。
PRS=β+β+...β+β
ここで、βは、SNPについてのリスクアレルの冠動脈疾患に対するlogオッズ比(OR)であり、xはSNPについてのリスクアレルの保持数(0、1または2)であり、nは解析SNPの総数である。
あるいは、下記のように対数で計算することもできる。
log(PRS)=x*logβ+x*logβ+...x*logβ+x*logβ
【0032】
好ましくは、リスクスコアの算出はpruning and thresholding法を用いて行われる。
すなわち、上記データリストにおいて、疾患に関連性の高いバリアント、例えば、P<0.05、好ましくはP<0.01の確率で不整脈と関連するバリアントを選択し、さらに、それらの
バリアントを連鎖不平衡に基づいて分類し、各群を代表するP値の低いインデックスバリ
アントを選択し、各インデックスバリアントについて、リスクアレルの効果量とリスクアレル保持数から値を算出し、その値からリスクスコアを算出することができる。ここで、インデックスバリアントは、例えば、連鎖不均衡係数r2<0.5、好ましくはr2<0.8の条件でバリアントを群分けして、その群から選択することができる。
【0033】
<判定工程>
本工程では、算出されたリスクスコアに基づき不整脈または不整脈関連障害のリスクを判定する。すなわち、本工程は、リスクスコアという客観的指標に基づく、医師の判断によらない、判定工程である。
例えば、リスクスコアが一定の基準値を超えた場合に、不整脈リスクが高いと判定することができる。基準値としては、例えば、健常人の群と不整脈患者の群であらかじめリスクスコアを算出し、カットオフ値を定めておくことができる。
また、リスクスコアの大きさに従って、例えば、5段階や10段階などの疾患リスクのランク付けを行うこともできる。さらに、不整脈の重篤度や予後と関連付けたランク付けを行うこともできる。
【0034】
本発明の方法は、コンピューターを用いて実行することができる。
すなわち、本発明の方法の一態様は、不整脈または不整脈関連障害のリスクを判定するためのコンピューターによって実行される方法であって、プロセッサーおよびメモリーを含むコンピューターシステムにおいて操作可能であり:
対象者の遺伝情報を受信すること、
受信した遺伝情報を処理して、不整脈リスクスコアを決定すること;
リスクスコアに基づき不整脈または不整脈関連障害のリスクを判定し、提示すること;
を含む、方法に関する。
ここで、処理は、受信した遺伝情報を、欧米人集団のゲノム解析結果と欧米人以外の集団のゲノム解析結果をメタ解析により統合して得られた不整脈関連遺伝的変異のデータリストの各バリアントの効果アレルと効果量に関する情報と照合することを含む。
【0035】
本発明の方法は、コンピューターにより実行される方法として、システム化されていてもよい。すなわち、本発明の一態様は対象者の不整脈または不整脈関連障害のリスクを判定するためのコンピューターシステムを提供する。
【0036】
<不整脈発症リスク判定システム>
本発明の不整脈または不整脈関連障害のリスク判定システムは、
不整脈に関連する遺伝的変異の効果アレルと効果量を含むデータリストを含むデータ格納手段、
対象者の遺伝情報を受信する手段、
前記データリストの不整脈関連遺伝的変異の効果アレルと効果量に関する情報に基づき、対象者の遺伝情報から不整脈リスクスコアを算出する手段、および
前記リスクスコアに基づき不整脈または不整脈関連障害のリスクを提示する手段、を含み、
前記データリストが欧米人集団のゲノム解析結果と欧米人以外の集団のゲノム解析結果をメタ解析により統合したデータリストであることを特徴とする。
【0037】
一実施形態において、不整脈に関連する遺伝的変異の効果アレルと効果量を含むデータリストを含むデータ格納手段は、コンピューター内部の記憶領域に置かれる。他の実施形態では、該データ格納手段は外部サーバーなどのコンピューター外に置かれ、使用時にコンピューターから接続して使用されるような手段でもよい。
【0038】
対象者の遺伝情報は、コンピューターに直接入力されて受信されてもよいし、コンピューターと連結しているユーザーインターフェースから受信されてもよい。また、対象者の遺伝情報は無線通信ネットワークを介して遠隔デバイスから受信されてもよい。
【0039】
リスクスコア算出手段は、受信された遺伝情報を、データ格納手段内のデータリストと照合し、その照合結果に基づき、リスクスコアを算出する。
例えば、リスクアレルに関する照合結果を、あらかじめ格納されたリスクスコア算出のための数式に代入することでリスクスコアを算出する。
提示手段はリスクスコアに基づき、あらかじめ記憶された基準を参照し、リスクの判定結果を提示する。ここで、判定結果を提示することは、コンピューターシステムと連結しているユーザーインターフェースに情報を出力すること、および、無線通信ネットワークを介する遠隔デバイスに情報を伝達することを含む。
これらの手段はプログラム化され、ソフトウェアまたはアプリケーションとして、コンピューターに搭載され、受信した遺伝情報の処理(データの照合、リスクスコアの算出等)、結果の提示などの機能を該コンピューターシステムに実施させ得る。
【0040】
<新規不整脈関連SNPを利用した不整脈または不整脈関連障害のリスク判定方法>
本発明の不整脈または不整脈関連障害のリスク判定方法の他の態様は、下記から選択される1以上のSNPを解析する工程、および解析結果に基づいて不整脈または不整脈関連障害のリスクを判定する工程を含む。
【0041】
ここで、上記同様、不整脈としては、頻脈性不整脈、徐脈性不整脈、期外収縮が挙げられる。頻脈性不整脈としては、洞性頻脈、心室性頻拍、心房細動、心房粗動、多源性心房頻拍、心室細動、心室粗動、上室性頻拍が挙げられる。徐脈性不整脈としては、洞房ブロック、房室ブロック、接合部性調律、洞不全症候群、呼吸性不整脈、脚ブロックが挙げられる。期外収縮としては、心房性期外収縮、心室性期外収縮が挙げられる。これらの中では、心房細動を検査するのが好ましい。不整脈関連障害としては、不整脈によって血流に異常が生じ、それによって引き起こされる脳梗塞、脳卒中および脳出血等が挙げられる。
また、不整脈のリスクには不整脈の発症リスク、不整脈の予後の増悪リスク(死亡リスクや不整脈関連障害発症リスクを含む)が含まれる。
【0042】
なお、rs番号はNational Center for Biotechnology InformationのdbSNPデータベース(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/snp/)の登録番号を示す。
【0043】
rs202030113は第6染色体上のSYNE1遺伝子のイントロンに位置するSNPであり、参照
配列 hg19(GRCh37)の第6染色体152466619番目の塩基におけるシトシン(C)/チミン(T)のSNPを意味し、この塩基がCである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、CC>TC>TTの順で不整脈のリスクが高い。
【0044】
rs2930856は第12染色体上のHCFC2遺伝子のイントロンに位置するSNPであり、参照配列 hg19(GRCh37)の第12染色体104471663番目の塩基におけるチミン(T)/
シトシン(C)のSNPを意味し、この塩基がTである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、TT>CT>CCの順で不整脈のリスクが高い
【0045】
rs1055894680は第16染色体上のZNF689遺伝子のイントロンに位置するSNPであり、
参照配列 hg19(GRCh37)の第16染色体30619745番目の塩基におけるチミン(T
)/シトシン(C)のSNPを意味し、この塩基がTである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、TT>CT>CCの順で不整脈のリスクが高い。
【0046】
rs73205368はX染色体上のPTCHD1遺伝子のイントロンに位置するSNPであり、参照配列 hg19(GRCh37)のX染色体23399501番目の塩基におけるシトシン(C)/チミン(T)のSNPを意味し、この塩基がCである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、CC>TC>TTの順で不整脈のリスクが高い。
【0047】
rs778479352はX染色体上のFGF13遺伝子のイントロンに位置するSNPであり、参照配
列 hg19(GRCh37)のX染色体137790580番目の塩基におけるシトシン(C)/チミン(T)のSNPを意味し、この塩基がCである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、CC>TC>TTの順で不整脈のリスクが高い。
【0048】
rs4970418は第1染色体上のPERM1;HES4遺伝子間に位置するSNPであり、参照配
列 hg19(GRCh37)の第1染色体918617番目の塩基におけるアデニン(A)/グア
ニン(G)のSNPを意味し、この塩基がAである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、AA>AG>GGの順で不整脈のリスクが高い。
【0049】
rs9782984は第1染色体上のMIR5096遺伝子のncRNAイントロンに位置するSNP
であり、参照配列 hg19(GRCh37)の第1染色体16199051番目の塩基におけるシ
トシン(C)/チミン(T)のSNPを意味し、この塩基がCである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、CC>TC>TTの順で不整脈のリスクが高い。
【0050】
rs75414548は第1染色体上のRHBDL2遺伝子のイントロンに位置するSNPであり、参照配列 hg19(GRCh37)の第1染色体39385714番目の塩基におけるアデニン(A)
/グアニン(G)のSNPを意味し、この塩基がAである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、AA>AG>GGの順で不整脈のリスクが高い。
【0051】
rs1933723は第1染色体上のPALMD遺伝子のイントロンに位置するSNPであり、参照配列 hg19(GRCh37)の第1染色体100149308番目の塩基におけるアデニン(A)
/グアニン(G)のSNPを意味し、この塩基がAである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、AA>AG>GGの順で不整脈のリスクが高い。
【0052】
rs12512502は第4染色体上のMOB1B遺伝子のイントロンに位置するSNPであり、参照配列 hg19(GRCh37)の第4染色体71776935番目の塩基におけるシトシン(C)/アデニン(A)のSNPを意味し、この塩基がCである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、CC>CA>AAの順で不整脈のリスクが高い。
【0053】
rs6841049は第4染色体上のLIN54遺伝子のイントロンに位置するSNPであり、参照配
列 hg19(GRCh37)の第4染色体83910712番目の塩基におけるグアニン(G)/チミン(T)のSNPを意味し、この塩基がGである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、GG>GT>TTの順で不整脈のリスクが高い。
【0054】
rs17118812は第5染色体上のPFDN1;HBEGF遺伝子間に位置するSNPであり、参照配列 hg19(GRCh37)の第5染色体139703286番目の塩基におけるシトシン(C)/チミン(T)のSNPを意味し、この塩基がCである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、CC>TC>TTの順で不整脈のリスクが高い。
【0055】
rs7766436は第6染色体上のHDGFHL1;LOC105374972遺伝子間に位置するSNPであり、参照配列 hg19(GRCh37)の第6染色体22598259番目の塩基におけ
るチミン(T)/シトシン(C)のSNPを意味し、この塩基がTである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、TT>TC>CCの順で不整脈のリスクが高い。
【0056】
rs12209223は第6染色体上のFILIP1遺伝子のイントロンに位置するSNPであり、参照配列 hg19(GRCh37)の第6染色体76164589番目の塩基におけるアデニン(A)/シトシン(C)のSNPを意味し、この塩基がAである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、AA>AC>CCの順で不整脈のリスクが高い。
【0057】
rs4896104は第6染色体上のLOC101928304;ALDH8A1遺伝子間に位置するSNPであり、参照配列 hg19(GRCh37)の第6染色体135119089番目の塩基にお
けるチミン(T)/シトシン(C)のSNPを意味し、この塩基がTである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、TT>TC>CCの順で不整脈のリスクが高い。
【0058】
rs2727757は第7染色体上のCDHR3遺伝子のイントロンに位置するSNPであり、参照配
列 hg19(GRCh37)の第7染色体105612736番目の塩基におけるグアニン(G)/アデニン(A)のSNPを意味し、この塩基がGである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、GG>GA>AAの順で不整脈のリスクが高い。
【0059】
rs17430357は第8染色体上のEXT1遺伝子のイントロンに位置するSNPであり、参照配列hg19(GRCh37)の第8染色体118863412番目の塩基におけるチミン(T)/アデ
ニン(A)のSNPを意味し、この塩基がTである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、TT>TA>AAの順で不整脈のリスクが高い。
【0060】
rs17303101は第9染色体上のPAPPA;ASTN2遺伝子間に位置するSNPであり、参照配列 hg19(GRCh37)の第9染色体119181794番目の塩基におけるアデニン(A)/グアニン(G)のSNPを意味し、この塩基がAである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、AA>AG>GGの順で不整脈のリスクが高い。
【0061】
rs11527634は第10染色体上のCCDC7遺伝子のイントロンに位置するSNPであり、参照
配列 hg19(GRCh37)の第10染色体32772734番目の塩基におけるチミン(T)/
シトシン(C)のSNPを意味し、この塩基がTである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、TT>TC>CCの順で不整脈のリスクが高い。
【0062】
rs76460895は第10染色体上のC10orf128;C10arf71-AS1遺伝子間に位置するSNPであり、参照配列 hg19(GRCh37)の第10染色体50485434番目の塩基
におけるアデニン(A)/グアニン(G)のSNPを意味し、この塩基がAである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、AA>AG>GGの順で不整脈のリスクが高い。
【0063】
rs1769758は第10染色体上のZMIZ1遺伝子のイントロンに位置するSNPであり、参照配列 hg19(GRCh37)の第10染色体80898969番目の塩基におけるチミン(T)/グ
アニン(G)のSNPを意味し、この塩基がTである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、TT>TG>GGの順で不整脈のリスクが高い。
【0064】
rs7126870は第11染色体上のSTIM1遺伝子のイントロンに位置するSNPであり、参照配列 hg19(GRCh37)の第11染色体3890059番目の塩基におけるチミン(T)/シト
シン(C)のSNPを意味し、この塩基がTである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、TT>TC>CCの順で不整脈のリスクが高い。
【0065】
rs10500790は第11染色体上のSPON1遺伝子のイントロンに位置するSNPであり、参照
配列 hg19(GRCh37)の第11染色体14036189番目の塩基におけるアデニン(A)
/グアニン(G)のSNPを意味し、この塩基がAである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、AA>AG>GGの順で不整脈のリスクが高い。
【0066】
rs517938は第11染色体上のLOC100129203;FAM76B遺伝子間に位置するSNPであり、参照配列 hg19(GRCh37)の第11染色体95089882番目の塩基におけるチミン(T)/シトシン(C)のSNPを意味し、この塩基がTである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、TT>TC>CCの順で不整脈のリスクが高い。
【0067】
rs10845620は第12染色体上のAPOLD1遺伝子のイントロンに位置するSNPであり、参
照配列 hg19(GRCh37)の第12染色体12886027番目の塩基におけるアデニン(A
)/グアニン(G)のSNPを意味し、この塩基がAである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、AA>GA>GGの順で不整脈のリスクが高い。
【0068】
rs2629755は第12染色体上のHCFC2遺伝子のイントロンに位置するSNPであり、参照配列 hg19(GRCh37)の第12染色体104492003番目の塩基におけるグアニン(G)
/アデニン(A)のSNPを意味し、この塩基がGである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、GG>GA>AAの順で不整脈のリスクが高い。
【0069】
rs1344543は第12染色体上のMVK;FAM222A遺伝子間に位置するSNPであり、参照配列 hg19(GRCh37)の第12染色体110082115番目の塩基におけるシトシン(C
)/チミン(T)のSNPを意味し、この塩基がTである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、CC>TC>TTの順で不整脈のリスクが高い。
【0070】
rs11614295は第12染色体上のRPH3A遺伝子のイントロンに位置するSNPであり、参照
配列 hg19(GRCh37)の第12染色体113196733番目の塩基におけるアデニン(A
)/グアニン(G)のSNPを意味し、この塩基がAである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、AA>GA>GGの順で不整脈のリスクが高い。
【0071】
rs11841562は第13染色体上のMICU2遺伝子のイントロンに位置するSNPであり、参照
配列 hg19(GRCh37)の第13染色体22111521番目の塩基におけるアデニン(A)
/シトシン(C)のSNPを意味し、この塩基がAである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、AA>AC>CCの順で不整脈のリスクが高い。
【0072】
rs1886512は第13染色体上のKLF12遺伝子のイントロンに位置するSNPであり、参照配列 hg19(GRCh37)の第13染色体74520186番目の塩基におけるアデニン(A)/
チミン(T)のSNPを意味し、この塩基がAである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、AA>AT>TTの順で不整脈のリスクが高い。
【0073】
rs9284324は第16染色体上のMYH11遺伝子のイントロンに位置するSNPであり、参照配列 hg19(GRCh37)の第16染色体15902715番目の塩基におけるアデニン(A)/
グアニン(G)のSNPを意味し、この塩基がAである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、AA>GA>GGの順で不整脈のリスクが高い。
【0074】
rs8096658は第18染色体上のNFATC1遺伝子のイントロンに位置するSNPであり、参照配列 hg19(GRCh37)の第18染色体77156537番目の塩基におけるグアニン(G)
/シトシン(C)のSNPを意味し、この塩基がGである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、GG>GC>CCの順で不整脈のリスクが高い。
【0075】
rs11881441は第19染色体上のBICRA遺伝子のイントロンに位置するSNPであり、参照
配列 hg19(GRCh37)の第19染色体43142746番目の塩基におけるシトシン(C)
/アデニン(A)のSNPを意味し、この塩基がCである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、CC>AC>AAの順で不整脈のリスクが高い。
【0076】
rs3746471は第20染色体上のKIAA1755遺伝子のエクソンに位置するSNPであり、参照配列 hg19(GRCh37)の第20染色体36841914番目の塩基におけるアデニン(A
)/グアニン(G)のSNPを意味し、この塩基がAである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、AA>AG>GGの順で不整脈のリスクが高い。
【0077】
rs5754508は第22染色体上のSDF2L1遺伝子の下流に位置するSNPであり、参照配列 hg19(GRCh37)の第22染色体21999229番目の塩基におけるグアニン(G)/シト
シン(C)のSNPを意味し、この塩基がGである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、GG>GC>CCの順で不整脈のリスクが高い。
【0078】
rs139557は第22染色体上のMEI1遺伝子のイントロンに位置するSNPであり、参照配列 hg19(GRCh37)の第22染色体42189407番目の塩基におけるグアニン(G)/チミン(T)のSNPを意味し、この塩基がGである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、GG>GT>TTの順で不整脈のリスクが高い。
【0079】
rs73205368はX染色体上のPTCHD1遺伝子のイントロンに位置するSNPであり、参照配列 hg19(GRCh37)のX染色体23399501番目の塩基におけるシトシン(C)/チミン(T)のSNPを意味し、この塩基がTである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、CC>TC>TTの順で不整脈のリスクが高い。
【0080】
rs1891095はX染色体上のZIC3;UNCOO889遺伝子間に位置するSNPであり、参
照配列 hg19(GRCh37)のX染色体137418967番目の塩基におけるアデニン(A)/シトシン(C)のSNPを意味し、この塩基がAである場合は不整脈のリスクが高い。また、遺伝子型を考慮して解析した場合は、AA>AC>CCの順で不整脈のリスクが高い。
【0081】
また、本発明において解析するSNPは上記のものに限定されず、上記のSNPと連鎖不平衡にあるSNPを分析してもよい。ここで「上記のSNPと連鎖不平衡にあるSNP」とは、上記のSNPとr2>0.5、好ましくはr2>0.8、さらに好ましくはr2>0
.9の関係を満たすSNPをいう。r2は連鎖不平衡係数である。連鎖不平衡にあるSN
Pは、例えば、HapMapデータベース(http://www.hapmap.org/index.html.ja)等を用いて
同定することができる。
【0082】
上記SNPは単独で解析されてもよいが、複数のSNP、例えば、5種以上、10種以上、20種以上、または30種以上組み合わせて解析することが好ましい。上記SNPを、例えば、上記表1-1、1-2および1-3に記載されたような公知の不整脈関連SNPと組み合わせ
て解析してもよい。複数のSNPを組み合わせて解析することにより、不整脈のリスク判定
の精度を向上させることができる。複数のSNPを解析し、それぞれがリスクアレルであるかを確認し、リスクアレルの総数により、不整脈リスクの指標(例えば、リスクアレルを1個以上、2個以上、または3個以上有する場合に不整脈リスクが高いと判定する)としてもよいが、複数のSNPの解析結果からリスクスコアを算出し、得られたリスクスコアを不整脈リスクの指標とすることもできる。例えば、リスクスコアが一定の基準値を超えた場合に、不整脈リスクが高いと判定することができる。
【0083】
上記のようにして1または複数のSNPの塩基の種類を調べ、得られた結果またはそれに基
づくリスクスコアなどの指標を用いて不整脈との関連付けを行うことにより、不整脈のリスクを判定することができる。すなわち、本発明の方法は、不整脈診断のためのデータを提供することができる。
【0084】
本発明の方法により判定された結果は、必要に応じて医師等に提供される。結果を提供された医師等は、心電図測定、血液検査、超音波検査等の必要な検査を行った上で、不整脈を診断することができる。医師等が不整脈のリスクが高いと診断した場合には、薬剤投与など適当な予防措置を取ることができ、発症していると診断したときは、薬剤投与、手術等の治療を施すことができる。
【0085】
なお、SNPの解析は、通常の遺伝子多型解析方法によって行うことができる。例えば、シ
ークエンス解析、PCR、ハイブリダイゼーション、インベーダー法などが挙げられるが、
これらに限定されない。
【0086】
本発明はまた、不整脈または不整脈関連障害を検査するためのプライマーやプローブなどの検査試薬を提供する。このようなプローブとしては、上記SNP部位を含み、ハイブリダ
イズの有無によってSNP部位の塩基の種類を判定できるプローブが挙げられる。具体的に
は、各SNPの多型部位を含む塩基配列又はその相補配列を有する15塩基以上の長さのプ
ローブや、当該塩基と連鎖不平衡の関係にある塩基を含む配列又はその相補配列を有する15塩基以上の長さのプローブが挙げられる。プローブの長さは好ましくは、15~35塩基であり、より好ましくは20~35塩基である。
【0087】
また、プライマーとしては、上記SNP部位を増幅するためのPCRに用いることのできるプライマー、又は上記SNP部位を配列解析(シークエンシング)するために用いることのでき
るプライマーが挙げられる。具体的には、各SNP部位の塩基を含む領域を増幅したりシー
クエンシングしたりすることのできるプライマーや、当該塩基と連鎖不平衡の関係にある塩基を含む領域を増幅したりシークエンシングしたりすることのできるプライマーが挙げられる。このようなプライマーの長さは15~50塩基が好ましく、15~35塩基がより好ましく、20~35塩基がさらに好ましい。SNP部位をシークエンシングするための
プライマーとしては、上記塩基の5’側領域、好ましくは30~100塩基上流の配列を有するプライマーや、上記塩基の3’側領域、好ましくは30~100塩基下流の領域に相補的な配列を有するプライマーが例示される。PCRによる増幅の有無で多型を判定するために用いるプライマーとしては、上記塩基を含む配列を有し、上記塩基を3’側に含むプライマーや、上記塩基を含む配列の相補配列を有し、上記塩基の相補塩基を3’側に含むプライマーなどが例示される。
【実施例0088】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の態様には限定されない。
【0089】
方法
検体
日本人GWASの対象者はすべてバイオバンク・ジャパン(BBJ)プロジェクト(https://biobankjp.org/)に登録されている日本人である。BBJは、全国12の協力医療機関(大阪府立成人病センター、財団法人日本癌研究振興会がん研有明病院、順天堂大学、東京都健康長寿医療センター、日本医科大学、日本大学医学部、岩手医科大学、徳州会病院、滋賀医科大学、福寿園、国立病院機構大阪病院、飯塚病院)からDNA、血清試料と臨床情報を収集する病院ベースの全国バイオバンクプロジェクトである。2003年から2007年にかけて、47の対象疾患のいずれかを有する約20万人の患者が登録した。サンプルはすべて18歳以上であった。すべての参加者からインフォームドコンセントを取得し、本研究は各施設の関連する倫理委員会の承認を得ている。
GWASの品質管理のため、コール・レート<0.98のサンプルと、PLINK 2.0(2018年8月20日バージョン:https://www.cog-genomics.org/plink/2.0/)に
て実行されたペアワイズ家系同一性に基づく血縁関係の指標であるPI_HAT>0.2の血縁者については除外した。そして、ヘテロ接合性レート>+4s.d.のサンプルを除外した。集団の層別を明らかにするために、PLINK 2.0.を用いて主成分分析を行い、日本人クラスタ-の異常値を除外した。GWASにおける症例サンプルとして、一般的な医療行為に基づいて医師が診断した心房細動又は心房粗動、あるいは12-誘導心電図に記録された人を選択した。
【0090】
遺伝子型判定、インピュテーション、品質管理
Illumina Human OmniExpress Genotyping BeadChips又はIllumina HumanOmniExpress及びHumanExome BeadChipsの組み合わせ(Illumina社製、カリフォルニア州サンディエゴ)を用いてGWAS対象者の遺伝子型(genotype)を決定した。遺伝子型の品質管理として、(i)SNPコール・レート<0.99、(ii)MAF<0.01、(iii)ハーディー・ワインベルグ平衡P値≦1.0×10-6のバリアントを除外した。また、EAGLEを用いて遺伝子型をプリフェーズし、minimac3(https://genome.sph.umich.edu/wiki/Minimac3)を使ったBBJからの日本人1,037人の自製リファレンスパネルを含む、1,000 Genome Project Phase 3(1KG Phase 3;2012年5月)リファレンスパネル(Nature 467, 1061-1073 (2010).)を使ってバリアント頻度のインピュテーションを行った。X染色体
については、男女ともにプリフェーズを行い、インピュテーションは男女別に行った。X染色体中のバリアントの頻度は、男性では0~2の間で割り当てられた。
【0091】
GWAS
日本のGWASにおいては、PLINK 2.0(2018年8月20日バージョン)を用いて、年齢、年齢、性、上位20主成分を調整した加法モデルを仮定し、ロジスティック回帰分析により関連付けを行った。minimac3のインピュテーション品質スコアが0.3以上、MAFが0.001以上のバリアントを選択した。X染色体については、男性と女性で別々に関連解析を行い、METASOFT(v2.0.1)により実行した逆分散重み付け固定効果モデルを使って結果を統合した。研究間の不均一性はコクランのQ検定を用いて算出した。強い不均一性(Phet<1.0×10-4)を持つバリアントをフィルターにかけた。ゲノムワイドの有意性閾値は、MAF≧1%のバリアントについてはP<5.0×10-8、MAF<1%のバリアントについてはP<5.71×10-9とした(0.05/8,753,038のバリアント)。ゲノムインフレーションファクター(λGC)は1.12であったが、LDスコア回帰により、インフレーションは主に多遺伝子効果によることが示された(LDスコア回帰切片=1.02)。隣接するゲノムワイドに有意なSNPは、互いに1Mb以内であれば1つの遺伝子座にグループ化した。我々は遺伝子座を、ゲノムワイドで有意なバリアントの上流と下流に500Mb以内に位置する候補領域と定義した。遺伝子座が報告されている遺伝子座とLD(r<0.10)内にない場合、我々はそれを新規遺伝子座と定義した。遺伝子判定又はインピュテーションされたバリアントは、ANNOVAR(ビルド2017年7月7日)(http://annovar.openbioinformatics.org)を用いてアノテーションを行った。
【0092】
LDスコア回帰と遺伝率
不可解な相関性や集団の層別化などの交絡バイアスを推定するために、LD-スコア回帰(バージョン1.0.0)を行った。MAF≧0.01のSNPを選択し、主要組織適合性複合体領域内のバリアントは除外した。回帰には、東アジアのLDスコアを用いた(https://github.com/bulik/ldsc/)。
【0093】
トランス祖先メタ分析
ヨーロッパの2つの心房細動GWAS(EURとFIN)の要約結果は、それぞれ既報のウェブサイト(http://csg.sph.umich.edu/willer/public/afib2018)(Nat. Genet. 50, 1234-1239 (2018).)とFinnG
en研究プロジェクトのウェブサイト(https://www.finngen.fi/en)から入手した。EURは、6つの寄与する心房細動データソース(The Nord-trφndelag Health Study、deCODE、the Michigan Genomics Initiative、DiscovEHR、UK Biobank、及び the AFGen Consortium)のメタ分析である。FINは102,739人のフィンランド人参加者からなり、表現型はFinnGenプロジェクトの一環として、フィンランドの国立病院登録と死因登録のICDコードから導き出されたものである。これらのGWASの偏りを調べるために、各研究のLDスコア回帰切片を計算し、これら2つの研究がよく較正されていることを確認した(EUR=1.052(標準誤差=0.012)とFIN=1.033(標準誤差=0.010)のLDスコア回帰切片)。また、遺伝的相関を計算したところ、EURとFINの間に有意な遺伝的相関が見られた(r=0.918、標準誤差=0.035、P=3.9×10-155)。
3つの研究間の祖先の不均一性を考慮するために、多様な祖先グループ間の不均一性を許容し、固定効果メタ分析やランダム効果メタ分析と比較してパフォーマンスを向上させるMANTRAアルゴリズムを、トランス祖先メタ分析において適用した(Genet. Epidemiol.35, 809-822 (2011).)。日本人集団とヨーロッパ人集団の両方でMAF≧1%のバリアントを選択し、相関性を検討した。log10BF>6のSNPをゲノムワイドに有意であるとみなした。
【0094】
トランス祖先の遺伝的相関
トランス祖先の遺伝的相関を推定するために、Popcornソフトウェア(v.1.0)を使用した。LDの基準には1KGの東アジア又はヨーロッパのサンプルを用い、ソフトウェアの説明に従って主要組織適合性複合体領域内のバリアントを除外した。易罹病性スケールの遺伝的相関を推定するために、心房細動の有病率は日本人集団で0.58%、イギリス人集団で1.38%、フィンランド人集団で0.97%と仮定した(https://vizhub.healthdata.org/gbd-compare/)。
【0095】
信頼できるセット解析
原因バリアントを含む妥当なバリアントのセットを構築するために、トランス祖先メタ分析でMANTRAの結果から得られたBFを用いて、各AF関連遺伝子座における99%信頼できるセットを構築した。各遺伝子座について、j番目のSNPの事後確率(PP)を以下の式:PP=BF/ΣBFから算出した。ここで、BFはj番目のSNPのBF、BFはその遺伝子座に含まれるすべてのバリアントを示す。そして、累積PPが0.99になるまでPPが減少する順にバリアントを追加し、99%信頼できるセットを構築した。トランス祖先メタ分析由来の99%信頼できるセットにより原因バリアントが絞り込まれているかどうかを評価するために、MANTRAアルゴリズムを用いて2つの追加メタ分析(EUR+BBJ及びEUR+FIN)を行い、トランス祖先メタ分析で特定された150の心房細動関連遺伝子座について99%信頼できるセットを構築した。そして、各遺伝子座について、99%信頼できるセットに含まれるバリアントの数を比較した。その中で、すべてのメタ分析で少なくとも1つのバリアントがゲノムワイドな有意性を超えた(log10BF>6)遺伝子座を検定対象とした。信頼できるセットの大きさの違いは、ペアになったウィルコクソン順位和検定を用いて検定した。
【0096】
多遺伝子リスクスコアの導出と性能
pruning and thresholding法を用いて多遺伝子リスクスコア(PRS)を導出した。多遺伝子リスクスコアは、P値の閾値(0.5、5.0×10-2、5.0×10-4、5.0×10-6、5.0×10-8)とrの閾値(0.2、0.5、0.8)の範囲で作成された。生存率解析のために、データセットを3つのグループに分けた:(i)多遺伝子リスクスコアの導出と検証を行う発見群(6,890ケース、49,451コントロール)、(ii)多遺伝子リスクスコアの性能を評価するテスト群(2,953ケース、21,194コントロール)、(iii)生存時間解析群(70,645コントロール)である。多遺伝子リスクスコアの導出と検証の独立性を確保するため、10重クロスバリデーションの手法を用いた。まず、発見グループをランダムに10のサブグループに分割し、そのうち9つのサブグループを多遺伝子リスクスコアの導出に、残りの1つを多遺伝子リスクスコアの検証用に使用した。多遺伝子リスクスコアの重み付けを決定するために、2つの欧州GWASと組み合わせてGWASを行った:(i)日本サブグループGWAS、(ii)2つの欧州GWAS(EUR又はFIN)、(iii)日本サブグループGWAS+EUR(固定又はランダム効果モデル)、(iv)日本サブグループGWAS+FIN(固定又はランダム効果モデル)、(v)EUR+FIN(固定又はランダム効果モデル)、及び(vi)日本サブグループGWAS+EUR+FIN(固定又はランダム効果モデル)。メタ分析はMETASOFTソフトウェアを用いて実施した。日本人サブグループGWASを用いたメタ分析では、1KGの東アジア又はヨーロッパ人サンプルに基づき、LDを個別に算出した。その後、PLINK 2.0を用いて、保留された検証コホートの多遺伝子リスクスコアを算出し、その性能を検証した。検証用コホートを変更し、これらの手順を10回繰り返し、各組み合わせの性能測定値を得た。なお、検証コホートはGWASの導出から除外した。多遺伝子リスクスコアの性能は、(1)年齢、性別、正規化多遺伝子リスクスコアをモデル化して得られるナゲルケルゲの疑似Rとして、(2)ナゲルケルゲの疑似Rと同じモデルにおける受信者動作曲線の曲線下の面積として
測定された。各組み合わせモデル(BBJ、EUR、FIN、BBJ+EUR、BBJ+FIN、EUR+FIN、BBJ+EUR+FIN)の最適モデル/パラメータセットは、ナゲルケルゲの疑似Rを平均化することで決定した。導出コホートと検証コホートで決定された最適なモデルとパラメータを用いて、多遺伝子リスクスコアを計算し、独立したテストコホートについてその性能を評価した。多遺伝子リスクスコアの性能分布を評価するためにブートストラップ法を適用した。テストコホート中の個体を置換してランダムに抽出し、そのサンプルの性能を計算した。この手順を5.0×10回繰り返すことで,性能指標の分布を推定した。
【0097】
心房細動-多遺伝子リスクスコアと、心房細動発症年齢及び脳卒中サブタイプとの関連性心房細動-多遺伝子リスクスコア(AF-PRS)と、心房細動発症年齢との関連性を評価するために、心房細動症例サンプル(n=7,458、心房細動発症年齢の中央値は63歳(IQR56~71))を抽出し、性別と上位10主因子を調整した線形回帰モデルを用いて、上位多遺伝子リスクスコアを持つ個体と残りの多遺伝子リスクスコアを持つ個体間の心房細動発症年齢の影響の差を推定した。心房細動と脳卒中サブタイプの相関解析では、年齢、性、上位10主因子を調整したロジスティック回帰モデルを用いてORと関連するP値を算出した。我々のデータセットに含まれるコントロールサンプル(n=140,447)の中で、14,120例の脳卒中表現型が見出された。脳梗塞9,177例、心塞栓症111例、アテローム血栓症1,465例、ラクナ梗塞1,266例、脳出血1,143例、クモ膜下出血967例であり、脳梗塞が最も多い。
【0098】
生存率分析
生存率分析では、コックス比例ハザードモデルを用いて、AF-PRSと長期死亡率との関連を評価した。BBJデータセットから132,737人の個人のICD-10コードによる生存追跡データを入手した。死因はICD-10コードに従って分類された。(i)心血管死(I00-I99)、(ii)心不全死(I50)、(iii)虚血性心疾患死(I20-I25)、及び(iv)脳卒中死(I60、I61、I63及びI64)である。追跡期間の中央値は8.4年(IQR 6.8~9.9)であった。コックス比例ハザードモデルでは,性別、年齢、上位10主因子、疾患の症状について調整した。解析はRパッケージsurvival v.2.44で行い、生存曲線はRパッケージsurvminer v.0.4.6を修正したものを用いて推定した。
【0099】
結果
日本人ゲノムワイド関連解析で同定された心房細動に対する5つの新規遺伝子座
研究デザインの概要を図1に示す。常染色体の16,394,105バリアントとX染色体のマイナーアレル頻度(MAF)>0.1%の423,039バリアントを用いて、バイオバンク・ジャパン(BBJ)のケースコントロールデータセット(心房細動9,826ケース、140,446コントロールを含む)から、ゲノムワイド関連解析を実施した。ゲノムワイド関連解析によりゲノムワイドに有意な31の心房細動関連遺伝子座を同定したが、そのうち5つはこれまで報告されていない新規な遺伝子座であった(表2)。今回の日本人ゲノムワイド関連解析で検出された全ゲノムワイド遺伝的バリエーションで説明される心房細動(AF)のバリエーションの割合(一塩基多型(SNP)遺伝率:h)は、推定では、6.1%(標準誤差1.4%)であり、また連鎖不平衡(LD)-スコア回帰を用いた易罹病性スケールhは11.7%(標準誤差2.6%)と推定された。
【0100】
【表2】
【0101】
このうち、6q25.1上のリードバリアントであるrs202030113は、SYNE1のエキソンイントロン境界から3塩基離れたイントロン領域にあり、スプライスAIのデルタスコアが0.3310から、スプライスドナー損失と予測された。SYNE1はネスプラリン-1(スペクトリンリピート)タンパク質をコーディングし、Sad1p/UNC84ドメイン含有タンパク質(SUN1/2)とともに核膜タンパク質複合体を構成し、その核膜ドメインを介してラミンA/Cに結合している。LMNAとSYNE1遺伝子の変異は、重症筋ジストロフィーや拡張型心筋症の患者において同定されている(Nat. Genet. 21, 285-288 (1999).、Nat. Rev.Genet. 7, 940-952 (2006).)。SYNE1
遺伝子の変異は、核の形態、筋芽細胞の分化、心臓の発達に異常をもたらし、心房性不整脈作用時の構造基質に寄与する核膜タンパク質複合体を変化させる(Hum. Mol. Genet. 26, 2258-2276(2017).)。
【0102】
FGF13のイントロンに位置するリードバリアントである、rs778479352によって強いシグナル(心房細動発症に対するオッズ比[OR]=2.00、95%信頼区間[CI]=1.73-2.31、P=1.6×10-20)が表示された。FGF13は線維芽細胞成長因子ファミリーの構成種をコードし、幅広い分裂促進作用と細胞生存作用を有する。FGF13は、サルコレマにある主要な心臓ナトリウムチャネル(Na1.5)のC末端に直接結合する。ラット心筋細胞でFGF13をノックダウンすると、Na1.5-還元型Na電流密度の機能低下、Naチャネル利用率の低下、Na1.5-還元型Na電流の不活性化からの回復速度の低下が認められた(Circ. Res. 109, 775-782 (2011))。この心筋細胞における伝導障害の証拠は、FGF13が心房細動に関連する重要な標的遺伝子であることを示唆している。
【0103】
トランス祖先メタ分析による心房細動の新規遺伝子座33個の同定
心房細動とのさらなる遺伝的関連性を検出するための統計的検出力を向上させるために、我々は今回の日本のGWAS(BBJ)とヨーロッパの2つのGWAS(ヨーロッパ人集団の大規模メタ分析(EUR)(Nat. Genet. 50, 1234-1239 (2018))とFinnGenデータリリース2(FIN)のバイオバンクデータ)を組み合わせて、トランス祖先メタ分析を実施した。3つのデータセットすべてで77,690ケース(BBJ:9,826、EUR:60,620;FIN:7,244)及びコントロール群1,167,040人(BBJ:140,446人;EUR:970,216;FIN:56,378)であった。MAFが1%以上の合計5,158,449個のバリアントをテストし、ゲノムワイドに有意な150個のAF関連遺伝子座を特定した(log10ベイズ係数(BF)>6;図2)。このトランス祖先メタ分析により、合計33の新規遺伝子座が同定された(表3)。
【0104】
【表3】
【0105】
日本人とヨーロッパ人集団の間で共有される対立遺伝子効果と、トランス祖先メタ分析におけるファインマッピング/信頼セット解析
150のリードバリアントについて、BBJ、EUR及びFIN間で、変異アレル頻度と対立遺伝子効果を比較した。EURとFIN間でアレル頻度がかなり一致している(スピアマンのρ=0.974、P<2.2×10-16)のに比べ、BBJとEUR間及び、BBJとFIN間のアレル頻度には中程度の相関が見られた(それぞれ、ρ=0.592、P=1.5×10-15及びρ=0.632、P<2.2×10-16)。さらに,これらのバリアントの一致対立遺伝子効果間で有意な正の相関を見出した(BBJ対EURに対して、ρ=0.769、P<2.2×10-16;BBJ対FINに対して、ρ=0.769、P<2.2×10-16)。集団間の対立遺伝子効果の関係をさらに調べるために,トランス祖先遺伝相関分析を行ったところ,BBJはEUR及びFINと強い相関を示した(BBJとEUR:r=0.990、標準誤差=0.097、BBJとFIN:r=0.955、標準誤差=0.344)。
【0106】
トランス祖先メタ分析による推定原因バリアント純化への寄与を評価するため、今回のトランス祖先メタ分析で検出された150のAF関連遺伝子座について99%信頼できるセットを構築し、メタ分析の3つの組み合わせ(EUR+BBJ、EUR+FIN、BBJ+EUR+FIN)に由来する99%信頼できるセットに含まれるバリアントの数を比較検討した。EUR+BBJ由来の99%信頼できるセットの大きさはEUR+FIN由来の大きさよりも有意に縮小した(P=0.004、ペア化ウィルコクソンの順位和検定)。さらに、3つのデータセット(BBJ+EUR+FIN)のトランス祖先メタ分析では、すべてのメタ分析の組み合わせの中で最もバリアント数が減少した(バリアント数の中央値=12;四分位範囲[IQR]5~36)。特に、3つのデータセットからなるトランス祖先メタ分析においてのみ、ZFHX3遺伝子座に単一のバリアント、rs67329386が、0.995という高い事後確率で確認された。過去の心房細動-GWASでは、ZFHX3遺伝子座(Nat. Genet. 41, 876-878 (2009))にいくつかのバリアントが見つかり、大型転写因子であるZFHX3は、PITX2とともにDNA結合と転写活性を促進することがわかっている(J. Biol. Chem. 273, 20066-20072 (1998))。
【0107】
単一母集団GWAS及びトランス祖先メタGWAS由来の多遺伝子リスクスコア(PRS)の予測能力
多遺伝子リスクスコア(PRS)は、遺伝データに基づく複雑な体質や疾患のリスクを層別化するポテンシャルを有する。しかし、多様な集団から得られた多遺伝子リスクスコアを別の祖先を持つ集団に移植することは依然として困難である。そこで、我々は日本人集団において、要約統計量の様々な組み合わせから導かれる多遺伝子リスクスコアの性能を検討した。ケース・コントロールサンプルを導出データセット、検証データセット、テストデータセットに分割し、3つのGWAS研究(BBJ、EUR、FIN)の要約統計量と多遺伝子リスクスコア導出のためのパラメータの組み合わせ255通りを構築した。検証コホートにおける多遺伝子リスクスコアの性能に基づいて,各要約統計量の組み合わせ(BBJ、FIN、EUR、BBJ+FIN、BBJ+EUR、EUR+FIN、BBJ+EUR+FIN)に対して最高の性能を示すパラメータを決定し、テストコホートにおいて最適モデルの性能を評価した(図3)。母集団特異性と一致するように、BBJから得られた多遺伝子リスクスコアはヨーロッパの研究から得られた多遺伝子リスクスコアよりも有意に優れた性能を示した(BBJ対EUR及びBBJ対FINの両方に対して、P<2.2×10-16)。さらに,異なる祖先グループ(EUR+BBJ及びFIN+BBJ)を含むメタ分析から得られた多遺伝子リスクスコアの性能は,単一研究からのもの(全例でP<2.2×10-16)だけでなく,ヨーロッパの2つ研究のメタ分析からのもの(EUR+BBJ対EUR+FIN及びBBJ対FIN+EURの両方でP<2.2×10-16)も有意に上回った。すべてのモデルの中で,多祖先かつ最大のサンプルサイズを持つ3つの研究(BBJ+EUR+FIN)から得られた多遺伝子リスクスコアが最も高い性能を示した(疑似R=0.144、95%CI=0.130-0.154、受信者動作特性曲線下の面積=0.737、95%CI=0.726-0.748)。
【0108】
心房細動-多遺伝子リスクスコアがAF関連表現型と心血管系の転帰に与える影響
多遺伝子リスクスコア(PRS)の臨床応用の可能性を検討するため、BBJの症例サンプル(n=7,459)を対象に、多遺伝子リスクスコアと心房細動の発症年齢との関連を調べたところ、多遺伝子リスクスコアは心房細動の発症年齢と相関があることがわかった。その結果、多遺伝子リスクスコアが高くなるにつれて発症年齢は低下し、上位1%の多遺伝子リスクスコアを持つ人は、残りの人に比べて心房細動発症年齢が約4歳若いと推定された(図4a、4b)。
【0109】
次に、脳血管障害の表現型を、心房細動-多遺伝子リスクスコア(AF-PRS)で予測できるかどうかを検討した。我々のデータセット中の140,446人のコントロールサンプルを対象にロジスティック回帰分析を行ったところ、多遺伝子リスクスコアは脳梗塞(OR[95%CI]=1.04[1.02-1.07]、P=4.0×10-4)、および心塞栓性脳卒中(OR[95%CI]=1.35[1.13-1.63]、P=1.3×10-3)(図4c)のリスク上昇と有意に関連した。
重要なことは、他の脳卒中の表現型を持つ人の中で多遺伝子リスクスコアが心塞栓性脳卒中に最も大きな影響を与えることが観察され、AF-PRSが臨床的に検出できない心房細動(すなわち、不顕性心房細動)、あるいは血栓性又は高凝固性症状のようなAF関連の症状が、心房細動のない人に対しても発症するかもしれないことが示唆される。
【0110】
心房細動-多遺伝子リスクスコアの臨床的有用性をさらに追求するため、BBJの長期追跡データを用いて多遺伝子リスクスコアの死亡率への影響を評価した。累積死亡率のカプラン-マイヤー推定値は多遺伝子リスクスコアが高い人ほど高く、特に心血管系と脳卒中関連の死亡率が高かった(図4d)。コックス回帰分析では、多遺伝子リスクスコアは心血管死亡(多遺伝子リスクスコアの1標準偏差[s.d.]あたりのハザード比[HR]=1.06、95%CI=1.02-1.11、P=5.0×10-3)及び脳卒中死亡(HR[95%CI]=1.14[1.04-1.24]、P=4.0×10-3図4e)のリスクの上昇と有意に関連していることが明らかにされた。
図1
図2
図3
図4