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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168199
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】塗布装置及び塗布方法
(51)【国際特許分類】
   B05B 13/04 20060101AFI20231116BHJP
   B05B 17/00 20060101ALI20231116BHJP
   B05D 1/02 20060101ALI20231116BHJP
   B05D 7/00 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B05B13/04
B05B17/00 101
B05D1/02 A
B05D7/00 L
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022164528
(22)【出願日】2022-10-13
(31)【優先権主張番号】P 2022078601
(32)【優先日】2022-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】514075714
【氏名又は名称】株式会社ウレタンメンテナンスサービス
(74)【代理人】
【識別番号】100177921
【弁理士】
【氏名又は名称】坂岡 範穗
(72)【発明者】
【氏名】加藤 誠一朗
【テーマコード(参考)】
4D074
4D075
4F035
【Fターム(参考)】
4D074AA01
4D074BB05
4D074CC04
4D074CC55
4D075AA01
4D075AA32
4D075AA35
4D075AA38
4D075AA43
4D075AA76
4D075AA81
4D075AA85
4D075CA47
4D075CA48
4D075DC05
4D075EA05
4F035AA03
4F035CA01
4F035CA04
4F035CD03
4F035CD08
4F035CD18
(57)【要約】
【課題】コストを抑えつつ、立上がり部分も塗布することができる塗布装置を提供する。
【解決手段】路面50又は床面に塗料をスプレーガン3で塗布する塗布装置1であって、車輪11,12を備えて走行可能な台車10と、前記台車に設けられ、前記台車の幅方向に往復可能なスライダ部23を備える左右往復機構20と、前記スライダ部に設けられ、前記左右往復機構の動作端からさらに外側に首振り動作が可能な首振りヘッド30aと、前記首振りヘッドに設けられるスプレーガンと、少なくとも前記左右往復機構の動作を制御する制御部4と、を備え、路面又は床面に加えて側面の立上がり部分51もあわせて塗布可能である。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
路面又は床面に塗料をスプレーガンで塗布する塗布装置であって、
車輪を備えて走行可能な台車と、
前記台車に設けられ、前記台車の幅方向に往復可能なスライダ部を備える左右往復機構と、
前記スライダ部に設けられ、前記左右往復機構の動作端からさらに外側に首振り動作が可能な首振りヘッドと、
前記首振りヘッドに設けられるスプレーガンと、
少なくとも前記左右往復機構の動作を制御する制御部と、を備え、
路面又は床面に加えて側面の立上がり部分もあわせて塗布可能であることを特徴とする塗布装置。
【請求項2】
前記首振りヘッドを前記首振りヘッドの重心より上側で軸支する回動軸を備え、
前記首振りヘッドが前記左右往復機構の動作端に到達したときにその慣性によって首振り動作をする請求項1に記載の塗布装置。
【請求項3】
前記首振りヘッドの首振り動作の角度を調整可能に規制する角度規制部を備える請求項2に記載の塗布装置。
【請求項4】
前記スライダ部と前記首振りヘッドに取付けられるバネを備え、前記首振りヘッドが前記左右往復機構の動作端以外の箇所で首振り動作をすることを抑制する請求項2に記載の塗布装置。
【請求項5】
前記スライダ部と前記首振りヘッドに取付けられるダンパーを備え、前記首振りヘッドが前記左右往復機構の動作端以外の箇所で首振り動作をすることを抑制する請求項2に記載の塗布装置。
【請求項6】
前記ダンパーが流体シリンダであり、
前記流体シリンダの一方の端部が前記スライダ部に回動可能に軸支され、他方の端部が前記首振りヘッドに回動可能に軸支されている請求項5に記載の塗布装置。
【請求項7】
前記ダンパーが流体シリンダであり、
前記流体シリンダが前記回動軸を通る鉛直線上にその軸を鉛直方向にして設けられるとともに、前記流体シリンダの一方の端部が前記スライダ部に回動可能に軸支され、他方の端部が前記首振りヘッドに回動可能に軸支されている請求項5に記載の塗布装置。
【請求項8】
前記流体シリンダのピストンロッドの伸縮速度を調整する速度調整機構を備え、
前記速度調整機構が、
前記流体シリンダのシリンダ部の基端側と先端側とにそれぞれ設けられる流出口及び流入口と、
前記先端側の流出口と前記基端側の流入口を連結する伸び側配管と、
前記伸び側配管の流量を調整する伸び側調整弁と、
前記基端側の流出口と前記先端側の流入口を連結する縮み側配管と、
前記縮み側配管の流量を調整する縮み側調整弁と、を備える請求項7に記載の塗布装置。
【請求項9】
前記首振りヘッドに前記回動軸から下方に所定の距離を隔てて錘を設け、前記回動軸と前記錘との距離及び/又は前記錘の重さによって前記首振りヘッドの首振り動作と戻り速度を調整する請求項2に記載の塗布装置。
【請求項10】
前記首振りヘッドが中立位置にあるとき、前記首振りヘッドが前記左右往復機構の動作端に到達したときの慣性力より弱い力で保持する仮保持部を備える請求項2に記載の塗布装置。
【請求項11】
前記首振りヘッドを軸支する回動軸と、
前記首振りヘッドを首振り動作させるためのヘッド用アクチュエータと、を備え、
前記スライダ部が動作端に到達するとき、前記ヘッド用アクチュエータを動作させて前記首振りヘッドを首振り動作させる請求項1に記載の塗布装置。
【請求項12】
請求項2ないし10のいずれか1項に記載の塗布装置を用いてなされる塗布方法であって、
前記台車を走行させながら、
前記スライダ部が動作端に向かって移動しつつ前記スプレーガンから塗料を路面又は床面に吹き付けて塗布する第1水平塗布工程と、
前記スライダ部が動作端に到達したとき前記首振りヘッドが外側に首振り動作をして立上がり部分を塗布する垂直塗布工程と、
前記垂直塗布工程が終わる前に前記スライダ部を反対側の動作端に移動させる動作を開始して、前記首振りヘッドを次第に中立位置に戻しつつ路面又は床面を塗布する第2水平塗布工程と、を含み、
前記垂直塗布工程と前記第2水平塗布工程とを繰り返すことを特徴とする塗布方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、道路の下地等の路面又は建物屋上等の床面に塗料をスプレーガンで塗布する塗布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、非稼働時は小さくすることで装置の運搬等を容易にし、稼働時には装置の幅より広い範囲を塗布することを目的として、特開2020-000964号公報に、台車に配置され、前記台車の幅より広い範囲に動作可能な多関節ロボットと、前記多関節ロボットのマニピュレータの手先に配置されるスプレーガンを備える防水層塗布装置が開示されている。また、この防水層塗布装置は、路面等と同時に壁面等の立上がり部分も塗布することが可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2020-000964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、特許文献1に開示された装置では、多関節ロボットを用いているため、装置が高価なものになりやすい。本発明は、上記の点に鑑みなされたもので、多関節ロボットの代わりに左右往復機構を採用して装置のコストを抑えつつ、立上がり部分も塗布することができる塗布装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の塗布装置は、
路面又は床面に塗料をスプレーガンで塗布する塗布装置であって、
車輪を備えて走行可能な台車と、
前記台車に設けられ、前記台車の幅方向に往復可能なスライダ部を備える左右往復機構と、
前記スライダ部に設けられ、前記左右往復機構の動作端からさらに外側に首振り動作が可能な首振りヘッドと、
前記首振りヘッドに設けられるスプレーガンと、
少なくとも前記左右往復機構の動作を制御する制御部と、を備え、
路面又は床面に加えて側面の立上がり部分もあわせて塗布可能であることを特徴とする。
【0006】
本発明の塗布装置によれば、首振りヘッドが外側方向に首振り動作をするため、床板の端の立上がり部分や側壁等の立上がり部分も同時に塗料を塗布することができる。また、首振りヘッドは左右往復機構のスライダ部に設けられており、構成を比較的簡素なものにでき、コスト面で有利である。
【0007】
本発明の塗布装置の好ましい例は、
前記首振りヘッドを前記首振りヘッドの重心より上側で軸支する回動軸を備え、
前記首振りヘッドが前記左右往復機構の動作端に到達したときにその慣性によって首振り動作をする。
【0008】
本発明の塗布装置の好ましい例によれば、首振りヘッドがその慣性によって首振り動作をするため、装置の構成をより簡素にすることができる。
【0009】
本発明の塗布装置の好ましい例は、
前記首振りヘッドの首振り動作の角度を調整可能に規制する角度規制部を備える。
【0010】
本発明の塗布装置の好ましい例によれば、角度規制部を備えるため、立上がり部分において無駄なところを塗布することがなくなる。また、立上がり部分が左右片側のみにあるときも、角度規制部によって立上がり部分がある側のみ首振り動作をさせることができる。
【0011】
本発明の塗布装置の好ましい例は、
前記スライダ部と前記首振りヘッドに取付けられるバネを備え、前記首振りヘッドが前記左右往復機構の動作端以外の箇所で首振り動作をすることを抑制する。
【0012】
本発明の塗布装置の好ましい例は、
前記スライダ部と前記首振りヘッドに取付けられるダンパーを備え、前記首振りヘッドが前記左右往復機構の動作端以外の箇所で首振り動作をすることを抑制する。
【0013】
本発明の塗布装置の好ましい例は、
前記ダンパーが流体シリンダであり、
前記流体シリンダの一方の端部が前記スライダ部に回動可能に軸支され、他方の端部が前記首振りヘッドに回動可能に軸支されている。
【0014】
本発明の塗布装置の好ましい例は、
前記ダンパーが流体シリンダであり、
前記流体シリンダが前記回動軸を通る鉛直線上にその軸を鉛直方向にして設けられるとともに、前記流体シリンダの一方の端部が前記スライダ部に回動可能に軸支され、他方の端部が前記首振りヘッドに回動可能に軸支されている。
【0015】
本発明の塗布装置の好ましい例は、
前記流体シリンダのピストンロッドの伸縮速度を調整する速度調整機構を備え、
前記速度調整機構が、
前記流体シリンダのシリンダ部の基端側と先端側とにそれぞれ設けられる流出口及び流入口と、
前記先端側の流出口と前記基端側の流入口を連結する伸び側配管と、
前記伸び側配管の流量を調整する伸び側調整弁と
前記基端側の流出口と前記先端側の流入口を連結する縮み側配管と、
前記縮み側配管の流量を調整する縮み側調整弁と、を備える。
【0016】
これらの本発明の塗布装置の好ましい例によれば、首振りヘッドが左右往復機構の動作端以外の箇所で余分な首振り動作をしなくなるため、塗料の塗布ムラが少なくなり膜厚が安定する。
【0017】
本発明の塗布装置の好ましい例は、
前記首振りヘッドに前記回動軸から下方に所定の距離を隔てて錘を設け、前記回動軸と前記錘との距離及び/又は前記錘の重さによって前記首振りヘッドの首振り動作と戻り速度を調整する。
【0018】
本発明の塗布装置の好ましい例によれば、錘によって首振りヘッドの首振り動作の速度等を任意の状態に調整できる。
【0019】
本発明の塗布装置の好ましい例は、
前記首振りヘッドが中立位置にあるとき、前記首振りヘッドが前記左右往復機構の動作端に到達したときの慣性力より弱い力で保持する仮保持部を備える。
【0020】
本発明の首振りヘッドの好ましい例によれば、仮保持部によって中立位置における首振りヘッドの余分な動きが抑制され、膜厚のムラ等がなくなる。
【0021】
本発明の塗布装置の好ましい例は、
前記首振りヘッドを軸支する回動軸と、
前記首振りヘッドを首振り動作させるためのヘッド用アクチュエータと、を備え、
前記スライダ部が動作端に到達したとき、前記ヘッド用アクチュエータを動作させて前記首振りヘッドを首振り動作させる。
【0022】
本発明の塗布装置の好ましい例によれば、ヘッド用アクチュエータで首振りヘッドの首振り動作を行うため、首振り動作を正確かつ任意のタイミングで行なうことができる。
【0023】
本発明の塗布方法は、
上記の発明に係る塗布装置を用いる塗布方法であって、
前記台車を走行させながら、
前記スライダ部が動作端に向かって移動しつつ前記スプレーガンから塗料を路面又は床面に吹き付けて塗布する第1水平塗布工程と、
前記スライダ部が動作端に到達したとき前記首振りヘッドが外側に首振り動作をして立上がり部分を塗布する垂直塗布工程と、
前記垂直塗布工程が終わる前に前記スライダ部を反対側の動作端に移動させる動作を開始して、前記首振りヘッドを次第に中立位置に戻しつつ路面又は床面を塗布する第2水平塗布工程と、を含み、
前記垂直塗布工程と前記第2水平塗布工程とを繰り返すことを特徴とする。
【0024】
本発明の塗布方法の好ましい例は、
前記スライダ部が動作端に到達する前に前記スライダ部の移動速度を減速させて前記首振りヘッドの首振り動作を開始させる。
【0025】
本発明の塗布方法は、
上記の発明に係る塗布装置を用いる塗布方法であって、
前記台車を走行させながら、
前記スライダ部が前記左右往復機構の動作端に向かって移動しつつ前記スプレーガンから塗料を路面又は床面に吹き付けて塗布する第1水平塗布工程と、
前記スライダ部が動作端に到達したとき前記ヘッド用アクチュエータにより前記首振りヘッドが外側に首振り動作をして立上がり部分を塗布する垂直塗布工程と、
前記垂直塗布工程が終わる前に前記スライダ部を反対側の動作端に向かって移動させる動作を開始して、前記首振りヘッドを次第に中立位置に戻しつつ路面又は床面を塗布する第2水平塗布工程と、を含み、
前記垂直塗布工程と前記第2水平塗布工程とを繰り返すことを特徴とする。
【0026】
本発明の塗布方法の好ましい例は、
前記スライダ部が動作端に到達する前に前記首振りヘッドの首振り動作を開始させる。
【0027】
これらの本発明の塗布方法によれば、上述した塗布装置と同様の作用効果を奏することができる。また、垂直塗布工程が終わるのを待たずに第2水平塗布工程に移り、路面又は床面を塗布している間に首振りヘッドが中立位置に戻るため、立上がり部分の膜厚を調整できるとともに、路面又は床面において膜厚が急激に変化することを抑制できる。さらに、スライダ部が動作端に到達する前に首振りヘッドが首振り動作をする態様も、同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0028】
上述したように、本発明の塗布装置及び塗布方法によれば、装置のコストを抑えつつ、立上がり部分も塗布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の一実施形態に係る塗布装置の正面図である。
図2】塗布装置の平面図である。
図3】塗布装置の側面図である。
図4】首振りヘッド周辺を説明する図である。
図5】首振りヘッド周辺を説明する他の図である。
図6】首振りヘッド周辺を説明する他の図である。
図7】首振りヘッド周辺を説明する他の図である。
図8】首振りヘッド周辺を説明する他の図である。
図9】首振りヘッド周辺を説明する他の図である。
図10】首振りヘッド周辺を説明する他の図である。
図11】本発明の一実施形態に係る塗布方法を説明する図である。
図12】塗布方法を説明する他の図である。
図13】塗布方法を説明する他の図である。
図14】塗布方法を説明する他の図である。
図15】塗布方法を説明する他の図である。
図16】塗布方法を説明する他の図である。
図17】他の実施形態に係る塗布方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本発明の塗布装置1及び塗布方法の実施形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。なお、本実施形態の塗布方法は、本実施形態に係る塗布装置1を用いて実施される。
【0031】
図1ないし図4を参照して、先に塗布装置1の実施形態を説明する。本実施形態の塗布装置1は、主剤と硬化剤からなる2液混合型の塗料が図示しない圧送装置からホース2を通じて送られてきて、それをスプレーガン3から路面50又は床面、及び立上がり部分51(図11参照)に吹き付けて塗布するものである。この塗料には防水剤等の液剤も含まれる。また、塗料をスプレーガン3に供給するホース2は、図1のみ記載しており、他は図面を見やすくするために省略している。本実施形態の塗布装置1は、台車10と、左右往復機構20と、首振りヘッド30aと、スプレーガン3と、制御部4と、飛散防止カバー5とを備える。
【0032】
台車10は、車輪を備えて路面50又は床面を走行可能に構成されるものであり、本実施形態では平面視で略ホームベース状をなしている。車輪は、台車10の進行方向側に前輪11が1つ、進行方向とは反対側の左右方向端部近傍に後輪12が2つ設けられる。そして、前輪11には駆動用のモーター13と操舵用のハンドル14が取付けられ、ハンドル14には図示しないアクセルとブレーキが備えられる。もっとも、走行と操舵に関しては、制御部4によって自動的に行うことも可能である。台車10の中央近傍には、ホース2を支持するためのホース支持部15が立設される。
【0033】
左右往復機構20は、台車10の後部上面に設けられ、台車10の幅(左右)方向に往復可能なスライダ部23を備えるものであり、他に駆動部21と、スライドレール22とを備える。駆動部21は、スライダ部23が幅方向に移動するための動力を与えるものである。駆動部21には、例えばラックとピニオンギヤを使用する機構や、台車10の幅方向に渡される一対以上のスプロケットと当該スプロケットにかけられるチェーンを用いる機構等が採用される(いずれも図示せず)。スライダ部23は、既に述べたように、駆動部21によって駆動され、台車10の幅方向を往復するものである。このスライダ部23にはスライドベース24が設けられる。本実施形態では、このスライドベース24に、後述する角度規制部32(図5参照)やバネ35(図6参照)等を取付けている。また、スライダ部23又はスライドベース24には、ホース2がスプレーガン3までの途中で留められてあり、ホース2の重さや抵抗で首振りヘッド30aの動きが妨げられるのを抑制している。スライドレール22は、台車10の幅方向に渡される部材であり、その上をスライダ部23が滑動する。また、左右往復機構20には、リミットスイッチ等から構成される動作端25a,25bが設けられる。本実施形態では、動作端25a,25bがスライドレール22に設けられ、この動作端25a,25bを任意の位置に設定することで、スライダ部23の可動範囲を調整することができる。
【0034】
次に、図4(A)~(C)も参照して、首振りヘッド30a及び首振りヘッド30a周辺の説明をする。図4(A)はスライダ部23及び首振りヘッド30a周辺の平面図であり、図4(B)は正面図、図4(C)は側面図である(図5図10も同様。)。首振りヘッド30aは、スライダ部23に設けられ、左右往復機構20の動作端25a,25bからさらに外側に首振り動作が可能なものである。この首振り動作を実現するにあたり、本実施形態では首振りヘッド30aをその重心より上側で軸支する回動軸31を、スライダ部23と首振りヘッド30aに備えている。この回動軸31は、水平方向かつ台車10の進行方向に沿った方向に配置され、スライダ部23に対して首振りヘッド30aを揺動可能に軸支する。そして、スライダ部23がスライドレール22の動作端25a,25bに到達したときに、首振りヘッド30aがその慣性によって外側方向に首振り動作をする。なお、回動軸31に対してスライドベース24と首振りヘッド30aのどちらを固定してどちらを回動可能にするのかは、そのときの実施形態によって異なり選択が可能である。
【0035】
次に、図5(A)~(C)を参照して、他の実施形態に係る首振りヘッド30bを説明する。本実施形態では、首振りヘッド30bの首振り動作の角度を調整可能に規制する角度規制部32を備えている。この角度規制部32として、例えば、首振りヘッド30bの裏面に止め板33を設け、スライドベース24に一対の規制ボルト34を設け、止め板33が規制ボルト34に接触することで首振り動作の角度を規制する構成にすることができる。この場合、首振りヘッド30bの首振り動作範囲は、規制ボルト34の突き出し長さを変えることで調整可能である。また、首振りヘッド30bが図5(B)に示す中立位置にあるときに、片方のみ規制ボルト34の突き出し長さを長くして、止め板33に当接させることで、首振りヘッド30bを左右片側のみ首振り動作させることができる。なお、止め板33の広い面や規制ボルト34の先端には、ゴム等の緩衝材を設けることもできる。
【0036】
また、図5(D)に示す実施形態では、首振りヘッド30bが垂直になる中立位置で止まるように他方の角度規制部132が設けられている。そして、角度規制部132には、首振りヘッド30bが中立位置にあるとき、首振りヘッド30bが左右往復機構20の動作端に到達したときの慣性力より弱い力で保持する仮保持部139が設けられる。この仮保持部139として、本実施形態では磁石139を採用している。これにより、首振りヘッド30bが中立位置にあるときは止め板33が磁石139によって吸着され、首振りヘッド30bが余分な動きをすることがない。また、首振りヘッド30bが左右往復機構20の動作端に達したときは、その慣性力によって磁石139の吸着を振り切り、外側に首振り動作をする。なお、仮保持部139としては、上記の磁石以外にも、スライドベース24に設けたバネで突出する球体を、止め板33の背面に設けた窪みに嵌める等の方法をとることができる(図示せず)。係る場合、角度規制部32が図5(B)のように配置されていても、仮保持部139によって首振りヘッド30bを中立位置で保持することができる。
【0037】
次に、図6(A)~(C)を参照して、他の実施形態に係る首振りヘッド30cを説明する。本実施形態では、首振りヘッド30cに取付けられるバネ35及び/又はダンパー36を備え、首振りヘッド30cが左右往復機構20の動作端25a,25b以外の箇所で無駄な首振り動作をすることを抑制している。詳しく説明すると、バネ35はスライドベース24の左右に一対設けられ、その一端がスライドベース24の左右端近傍に取付けられ、他端が首振りヘッド30cの裏側に取付けられる。そして、一対のバネ35が互いに引っ張り合う力で、首振りヘッド30cを図6(B)に示す中立位置に保とうとするのである。また、ダンパー36として本実施形態ではロータリーダンパー36を用い、これを回動軸31と首振りヘッド30cとの取付部分に設けている。そして、ロータリーダンパー36の抵抗によって、首振りヘッド30cが速やかに中立位置に戻るようにしている。なお、ロータリーダンパーの取付例として、図10(A)~(C)に示すアクチュエータ40をロータリーダンパーと置換することもできる。
【0038】
次に、図7(A)(B)を参照して、他の実施形態に係る首振りヘッド30fを説明する。なお、本図では側面図(C)を省略している。本実施形態では、首振りヘッド30fにダンパーとして流体シリンダ60を用いている。そして、流体シリンダ60の一方の端部がスライダ部23に回動可能に軸支され、他方の端部が首振りヘッド30fに回動可能に軸支されている。具体的には、流体シリンダ60のシリンダ部61の基端側が、正面視略逆L字状をなすスライドベース24fにピン部材63で軸支されている。また、ピストンロッド62の先端側が、首振りヘッド30fにピン部材64で軸支されている。これらの構成により、スプレーガン3が図7(B)において左側に振れるときは(矢印a)流体シリンダ60が伸び、右側に振れるときは(矢印b)流体シリンダ60が縮む。この流体シリンダ60の抵抗によって、首振りヘッド30fの余分な首振り動作を抑制している。
【0039】
次に、図8(B)(C)を参照して、他の実施形態に係る首振りヘッド30gを説明する。なお、本図では平面図(A)を省略している。本実施形態では、首振りヘッド30gにダンパーとして流体シリンダ60を用いている。そして、流体シリンダ60が回動軸31を通る鉛直線上にその軸を垂直方向にして設けられる。さらに、流体シリンダ60の一方の端部がスライダ部23に回動可能に軸支され、他方の端部が首振りヘッド30gに回動可能に軸支されている。具体的には、垂直に配置された流体シリンダ60のシリンダ部61の基端側が、上方に延長されたスライドベース24gにピン部材65で軸支されている。また、ピストンロッド62の先端側が、首振りヘッド30gにピン部材66で軸支されている。
【0040】
このように、回動軸31と2つのピン部材65,66が鉛直線上に配置されているため、首振りヘッド30gが、図8(B)に示す中立位置から外側に振れようとするときは、左右のいずれ側においても流体シリンダ60が伸びる方向に動作する。一方、首振りヘッド30gが外側に振れた位置から中立位置に戻ろうとするときは、左右のいずれ側においても流体シリンダ60が縮む方向に動作する。これにより、首振りヘッド30gを左右に首振り動作させるとき、首振りヘッド30gが左右いずれの方向に振れるときも流体シリンダ60を同一条件で動作させることができる。これは、流体シリンダ60は、内部のピストンの一方にロッドが付いており、ロッドの分だけ油圧を受ける面積が減少することから、伸び側と縮み側ではその抵抗に差があるからである。本実施形態では、上記のことから流体シリンダ60の伸び側と縮み側との差を考慮する必要がなくなる。なお、ピストンロッド62がシリンダ部61から出入りするときに、内部の体積を調整するため、シリンダ部61又は速度調整機構70の配管の途中にガス室(図示せず)を設けることができる。又は、ピストンロッド62をピストン(図示せず)の両側に設け、シリンダ部61の基端側からも突出させる等してもよい。
【0041】
また、本実施形態の首振りヘッド30gは、流体シリンダ60のピストンロッド62の伸縮速度を調整する速度調整機構70を備える。この速度調整機構70は、それぞれ2つの流出口75,76及び流入口77,78と、伸び側配管71と、伸び側調整弁72と、縮み側配管73と、縮み側調整弁74とを備える。流出口75,76と流入口77,78は、シリンダ部61から流体(オイル)が出入りする穴であり、シリンダ部61の基端側と先端側にそれぞれ設けられる。伸び側配管71は、ピストンロッド62が伸び側に動作するときに、シリンダ部61の先端側の流出口75から流出するオイルを基端側の流入口77を通じてシリンダ部61に戻す配管であり(矢印c)、これらの先端側の流出口75と基端側の流入口77とを連結する。伸び側調整弁72は、伸び側配管71を流れるオイルの流量を調整するものであり、本実施形態では伸び側配管71の途中に設けられる。この伸び側調整弁72の開度を変更することで、ピストンロッド62の伸び側の動きを調整することができる。
【0042】
縮み側配管73は、ピストンロッド62が縮み側に動作するときに、シリンダ部61の基端側の流出口76から流出するオイルを先端側の流入口78を通じてシリンダ部61に戻す配管であり(矢印d)、これらの基端側の流出口76と先端側の流入口78とを連結する。縮み側調整弁74は、縮み側配管73を流れるオイルの流量を調整するものであり、本実施形態では縮み側配管73の途中に設けられる。この縮み側調整弁74の開度を変更することで、ピストンロッド62の縮み側の動きを調整することができる。なお、速度調整機構70は、オイルが流出口75,76から流入口77,78に向かって流れるように、流出口75、伸び側配管71、伸び側調整弁72、流入口77のいずれか、及び流出口76、縮み側配管73、縮み側調整弁74、流入口78のいずれかに、図示しない逆止弁を備える。また、伸び側調整弁72、縮み側調整弁74ともに、配管の途中でなく流出口75,76又は流入口77,78に設けることもできる。さらに、上記の速度調整機構70を、図7に示す流体シリンダ60に用いることも可能である。
【0043】
次に、図9(A)~(C)を参照して、他の実施形態に係る首振りヘッド30dを説明する。本実施形態では、首振りヘッド30dに回動軸31から下方に所定の距離を隔てて錘38を設けている。詳しくは、首振りヘッド30dの裏側から垂下される吊り棒37と、吊り棒37の下側に設けられる錘38とを備える。この錘38と回動軸31との距離、及び錘38の重さは任意の値に設定することができる。そして、回動軸31と錘38との距離及び/又は錘38の重さによって、首振りヘッド30dの首振り動作の首振り速度や戻り速度を調整することができる。これは、首振り動作の周期や戻り速度は、理論上は吊り棒37を含めた錘38と回動軸31との距離によって決まるが、実際はスプレーガン3に接続されたホース2や回動軸31の抵抗によって影響を受ける。そこで、錘38を重くすることでこれらの抵抗の影響を受けにくくすることができる。なお、吊り棒37のみをもって錘38の代わりとしてもよい。また、図5ないし図9に示す実施形態の少なくとも2つを任意に組み合わせて使用することも可能である。
【0044】
次に、図10(A)~(C)を参照して、他の実施形態に係る首振りヘッド30eを説明する。本実施形態では、首振りヘッド30eを軸支する回動軸31と、首振りヘッド30eを首振り動作させるためのヘッド用アクチュエータ40とを備える。このヘッド用アクチュエータ40の例として、スライダ部23の上に電気モーター等を備えるヘッド用アクチュエータ40を配置して、このアクチュエータの出力軸43と回動軸31とをベルト41とプーリー42で接続する構成にしている。そして、スライダ部23が左右往復機構20の動作端25a,25bに来たとき、又はスライダ部23が任意の位置において、ヘッド用アクチュエータ40を動作させて首振りヘッド30eを首振り動作させるのである。本実施形態では、慣性によらずに首振りヘッド30eを首振り動作させるため、回動軸31を首振りヘッド30eの重心の上側に配置する必要はなく、回動軸31は首振りヘッド30の重心近傍にある方が好ましい。また、首振りヘッド30eの駆動には、上記のベルト41とプーリー42以外にも、歯車やリンク機構等の公知の方法を用いることや、図7(A)(B)に示す流体シリンダ60をシリンダ式のアクチュエータに置換すること等ができる。さらに、出力軸43をそのまま回動軸31として使用する構成にすることもできる。
【0045】
図1ないし図3に戻り、スプレーガン3は、首振りヘッド30aにその先端が下向きに取付けられており、2本のホース2から送られてくる主剤と硬化剤とを、その中で混合して路面50等に吹き付けるものである。
【0046】
制御部4は、例えばCPU、メモリ、入出力回路等を備えるプログラマブルコントローラ、又は有接点シーケンス等を備え、本実施形態の塗布装置1の動作を制御するものである。この制御対象には、例えば、左右往復機構20の動作、ヘッド用アクチュエータ40の動作、スプレーガン3の動作等が含まれる。本実施形態では、制御部4を台車10の上に配置しているが、他の箇所に設置して、制御用電線や動力用電線等で各構成要素と接続しても良い。
【0047】
飛散防止カバー5は、スライダ部23の動作範囲を覆うもので、塗料の飛散を防止している。本実施形態では、左右方向の側面は開放され、側面の立上がり部分51に塗料を塗布するときに邪魔にならないように構成される。又は、飛散防止カバー5の左右方向の側面を着脱可能に構成することもできる。
【0048】
次に、上述した塗布装置1の各構成要素を踏まえて、図11ないし図17も参照して、塗布装置1を用いた塗布方法の実施形態を説明する。図11ないし図17は、首振りヘッド30の動作を見やすくするために、塗布装置1の構成を一部省略して記載している。なお、塗布方法の説明では、首振りヘッドの符号を(30)としている(図面も同様)。
【0049】
本実施形態の塗布方法は、ヘッド用アクチュエータ40を備えない、図4ないし図9に示す首振りヘッド30を備える塗布装置1を用いて実施され、第1水平塗布工程と、垂直塗布工程と、第2水平塗布工程とを含む。第1水平塗布工程は、図11に示すように、スライダ部23(首振りヘッド30)が左右往復機構20の動作端25a,25bに向かって移動しつつ、スプレーガン3から塗料を路面50又は床面に吹き付けて塗布する工程である。本図では、首振りヘッド30が左側の動作端25aに向かって移動している状態を示している。
【0050】
次に、垂直塗布工程を説明する。図12に示すように、首振りヘッド30が左右往復機構20の動作端25aに到達する。すると、図13に示すように、それまで移動してきた慣性によって、首振りヘッド30が外側方向に首振り動作をする。そして、立上がり部分51に塗料を塗布する。
【0051】
次に、第2水平塗布工程として、図13に示す垂直塗布工程が終わる前に、スライダ部23を反対側の動作端25bに移動させる動作を開始する。そして図14に示すように、スライダ部23の加速によって首振りヘッド30を次第に中立位置に戻しつつ路面50又は床面を塗布する。このとき、このとき、第1水平塗布工程が終わった直後にスライダ部23をスライドレール22の反対側の動作端25bに向かって移動させても良いし、スライダ部23の動きを一旦停止させて首振りヘッド30が外側に向かって首振り動作をしているときに移動させても良い。又は、首振りヘッド30が最も外側に首振り動作をした瞬間にスライダ部23を反対側の動作端25bに向かって移動させてもよい。これは、首振りヘッド30が外側に首振り動作をした後、中立位置に戻ろうとしているときにスライダ部23を反対側の動作端25bに向かって移動させると、スライダ部23の加速によって首振りヘッド30が再度外側方向に首振り動作(戻り動作)をする恐れがあり、それを防止するためである。このように、本実施形態の塗布方法では、垂直塗布工程と第2水平塗布工程の一部が同時に行われている。
【0052】
続いて、第2水平塗布工程が進んでいくと、図15に示すように、首振りヘッド30が次第に中立位置に戻りつつ、路面50又は床面を塗布するようになる。さらに第2水平塗布工程が進むと、図16に示すように、首振りヘッド30は中立位置に戻り、その状態で路面50又は床面を塗布していく。そして、図に示す右側の動作端25bに首振りヘッド30が到達したとき、上記の垂直塗布工程と第2水平塗布工程とを繰り返していけばよい。なお、首振りヘッド30の首振り動作及び垂直塗布工程は、左右往復機構20の動作端25a,25bの両側で行なってもよいし、左右のうち一方だけでもよい。また、首振りヘッド30が中立位置に戻るタイミングは、第2水平塗布工程のどこでもよく、例えば第2水平塗布工程の終わりであってもよい。
【0053】
また、他の実施形態として、図6ないし図8に示すようにバネ又はダンパー(流体シリンダ)を使う、又はスライダ部23の移動開始時の加速を抑える等して上記の戻り動作が改善できるなら、首振りヘッド30が外側に首振り動作をした後、中立位置に戻ろうとしているときにスライダ部23を反対側の動作端25bに向かって移動させてもよい。又は、図13に示す状態で、スライダ部23を停止させたまま、首振りヘッド30の首振り動作が終わるまで待ち、図12に示す状態まで首振りヘッド30が戻ってからスライダ部23をスライドレール22の反対側の動作端25bに向かって移動させることも可能である。
【0054】
さらに他の実施形態として、図17に示すように、スライダ部23が左側の動作端25aに到達する直前にスライダ部23の移動速度を減速させて、そのときの首振りヘッド30の慣性によって、スライダ部23が動作端25aに到達する前から首振り動作をさせることができる。この場合、スライダ部23が動作端25aに到達した後は、既に説明した図13以降の動作を行う。
【0055】
このように動作端25a,25bでスライダ部23を停止又は減速させることで、立上がり部分51の膜厚を調整することが可能である。例えば、そのときの状況にもよるが、動作端25a,25bでスライダ部23を直ぐに折り返す動作をさせると、立上がり部分51及びその近傍の膜厚は薄くなる。一方、動作端25a,25bでの停止時間を長くする、又は減速具合を強めることで、立上がり部分51及びその近傍の膜厚が厚くなる。なお、図13から図14に示す第2水平塗布工程の最初におけるスライダ部23の加速を加減することでも、首振りヘッド30の戻り速度が調整でき、立上がり部分51及びその近傍の膜厚を調整することが可能である。
【0056】
次に、ヘッド用アクチュエータ40を備える、図10に示す首振りヘッド30eを用いた場合の塗布方法の実施形態を説明する。本実施形態の塗布方法は、基本的に上述の塗布方法と同じ動作をするのであるが、首振り動作をスライダ部23の移動による首振りヘッド30の慣性によって行うのではなく、ヘッド用アクチュエータ40によって行う。これにより、首振りヘッド30eの首振り動作がスライダ部23の速度に依存せず、スライダ部23の移動速度を全体的に速める又は遅くすることが可能である。さらに、第2水平塗布工程を開始させるタイミングも、首振りヘッド30eの位置に関係なく自由に決定することができる。また、図17に示す実施形態をするときも、スライダ部23を動作端25aの手前で減速させる必要がなくなる。これらにより、立上がり部分51及びその近傍を含めた塗布する場所の膜厚を、より細かく調整することが可能となる。
【0057】
以上、説明したように、本実施形態の塗布装置1によれば、簡素な構成ながら路面50又は床面に加えて側面の立上がり部分51も同時に塗料を塗布することができる。特に、首振りヘッド30a,30b,30c,30dをその慣性によって首振り動作させる構成では、ヘッド用アクチュエータ40が不要であり、さらに簡素な構成とすることができる。係る場合においても、角度規制部32、バネ35、ダンパー36、流体シリンダ60、速度調整機構70、及び錘38によって首振り動作を安定させるとともに、所望の角度と速度で動かすことが可能となる。また、仮保持部(磁石)139によって首振りヘッドを中立位置に保つことができる。
【0058】
一方、ヘッド用アクチュエータ40を備える構成では、首振り動作を首振りヘッド30eの慣性に頼る必要がなくなるため、首振り動作の速度、スライダ部23の動作端25a,25b近傍での減速具合や一旦停止の時間、及び折り返しのタイミングの設定と調整をより細かくかつ任意の速度とタイミングで行なうことができ、膜厚のコントロールがより容易となる。
【0059】
また、本実施形態の塗布方法によれば、垂直塗布工程の途中でスライダ部23を折り返して移動させる第2水平塗布工程を行っている。このため、首振りヘッド30が中立位置に戻るときには、既にスライダ部23が移動している。これにより、首振りヘッド30が中立位置に戻ったときの首振りヘッドの瞬間的な停止が起きず、膜厚のムラを防止できる。
【0060】
また、スライダ部23が動作端25a,25bに到達する前に首振りヘッド30を首振り動作させる実施形態では、スライダ部23が動作端25a,25bに達したときも、首振りヘッド30の瞬間的な停止が起きず、さらに膜厚のムラを防止できる。
【0061】
なお、上述した塗布装置及び塗布方法は、本発明の例示であり、発明の趣旨を逸脱しない範囲においてその構成を適宜変更することができる。例えば、本実施形態のように配管が露出された速度調整機構70でなく、速度調整機構が内蔵された流体シリンダを用いることもできる。
【符号の説明】
【0062】
1・・塗布装置、2・・ホース、3・・スプレーガン、4・・制御部、5・・飛散防止カバー、
10・・台車、11・・前輪、12・・後輪、13・・モーター、14・・ハンドル、15・・ホース支持部、
20・・左右往復機構、21・・駆動部、22・・スライドレール、23・・スライダ部、24,24f,24g・・スライドベース、25a,25b・・動作端,
30,30a,30b,30c,30d,30e,30f,30g・・首振りヘッド、31・・回動軸、32,132・・角度規制部、33・・止め板、34・・規制ボルト、35・・バネ、36・・ダンパー(ロータリーダンパー)、37・・吊り棒、38・・錘、139・・磁石(仮保持部)、
40・・ヘッド用アクチュエータ、41・・ベルト、42・・プーリー、43・・出力軸、
50・・路面(床面)、51・・立上がり部分、
60・・流体シリンダ、61・・シリンダ部、62・・ピストンロッド、63,64,65,66・・ピン部材、
70・・速度調整機構、71・・伸び側配管、72・・伸び側調整弁、73・・縮み側配管、74・・縮み側調整弁、75,76・・流出口、77,78・・流入口、
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
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図15
図16
図17