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特開2023-168206感光性組成物、着色硬化物及びその製造方法、並びに表示デバイス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168206
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】感光性組成物、着色硬化物及びその製造方法、並びに表示デバイス
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/004 20060101AFI20231116BHJP
   G03F 7/038 20060101ALI20231116BHJP
   G02B 5/20 20060101ALI20231116BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20231116BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20231116BHJP
   G02F 1/1339 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
G03F7/004 505
G03F7/038 601
G02B5/20 101
G09F9/30 349B
G09F9/30 349C
G02F1/1335 505
G02F1/1339 500
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022178115
(22)【出願日】2022-11-07
(31)【優先権主張番号】P 2022078445
(32)【優先日】2022-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004178
【氏名又は名称】JSR株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121821
【弁理士】
【氏名又は名称】山田 強
(74)【代理人】
【識別番号】100122390
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 美穂
(74)【代理人】
【識別番号】100139480
【弁理士】
【氏名又は名称】日野 京子
(72)【発明者】
【氏名】杉田 光
(72)【発明者】
【氏名】依田 杏介
(72)【発明者】
【氏名】間嶋 寛
(72)【発明者】
【氏名】福間 聡司
(72)【発明者】
【氏名】金井 大樹
(72)【発明者】
【氏名】山村 哲也
(72)【発明者】
【氏名】眞鍋 裕司
(72)【発明者】
【氏名】立嶋 和子
(72)【発明者】
【氏名】江幡 敏
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 拓之
(72)【発明者】
【氏名】倉 怜史
(72)【発明者】
【氏名】米田 英司
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 功一
【テーマコード(参考)】
2H148
2H189
2H225
2H291
5C094
【Fターム(参考)】
2H148BE03
2H148BE24
2H148BE36
2H148BF11
2H148BG02
2H148BG06
2H148BG08
2H189DA23
2H189EA06X
2H189FA16
2H189HA12
2H189HA16
2H225AE03P
2H225AE04P
2H225AE05P
2H225AE06P
2H225AF22P
2H225AF43P
2H225AF44P
2H225AM53P
2H225AN42P
2H225AN66P
2H225AN94P
2H225BA15P
2H225BA17P
2H225CA16
2H225CA21
2H225CB06
2H225CC01
2H225CC17
2H291FA02
2H291FA16
2H291FB04
2H291FC10
2H291GA13
2H291LA13
2H291LA40
5C094AA43
5C094BA27
5C094BA43
5C094BA52
5C094CA19
5C094ED03
5C094ED15
5C094FB01
5C094GB10
5C094HA03
5C094HA05
5C094HA07
5C094HA08
5C094JA01
5C094JA11
(57)【要約】
【課題】成分の有機溶剤への溶解性を確保しつつ、低温プロセスを適用した場合に溶剤耐性に優れた着色硬化物を得ることができる感光性組成物を提供すること。
【解決手段】色素と、けん化度が5モル%以上50モル%以下のポリビニルアルコールと、架橋剤と、光酸発生剤と、有機溶剤と、を含有する感光性組成物とする。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
色素と、
けん化度が5モル%以上50モル%以下のポリビニルアルコールと、
架橋剤と、
光酸発生剤と、
有機溶剤と、
を含有する、感光性組成物。
【請求項2】
前記色素が染料を含む、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項3】
前記ポリビニルアルコールの重合度が100~450である、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項4】
カラーフィルタ、ブラックマトリクス、ブラックスペーサー又はブラックバンクの形成用である、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項5】
前記架橋剤が、メチロール基、アルコキシメチル基及びグリシジル基よりなる群から選択される少なくとも1種を有する、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項6】
前記架橋剤が、ウリル誘導体、ユリア誘導体、イソシアヌレート誘導体及びメラミン誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種である、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項7】
前記架橋剤の含有割合が、前記ポリビニルアルコール100質量部に対して、50質量部以下である、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項8】
前記光酸発生剤の波長365nmにおけるモル吸光係数が200mol-1・cm-1以上である、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項9】
前記光酸発生剤に放射線を照射することにより発生する酸の酸解離定数が-1以下である、請求項1に記載の感光性組成物。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の感光性組成物に光を照射する工程と、
光照射後の感光性組成物を150℃以下で加熱する工程と、
を含む、硬化物の製造方法。
【請求項11】
請求項1~9のいずれか一項に記載の感光性組成物が硬化されてなる着色硬化物。
【請求項12】
カラーフィルタ、ブラックマトリクス、ブラックスペーサー又はブラックバンクである、請求項11の着色硬化物。
【請求項13】
請求項11に記載の着色硬化物を備える、表示デバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感光性組成物、着色硬化物及びその製造方法、並びに表示デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
表示デバイスが有するカラーフィルタやブラックマトリクス、ブラックスペーサーを製造する方法として、近年、フォトリソグラフィ法が主流となっている。例えば、フォトリソグラフィ法によりカラーフィルタを製造する場合、色素と重合体とを含有する感光性組成物を基板上に塗布して塗膜を形成した後、所定の開口パターンを有するフォトマスクを介して露光し、次いで現像して未露光部分を溶解除去することにより硬化パターン(すなわち、着色パターン)を形成する方法が一般に採用されている(例えば、特許文献1参照)。現像後は、通常、200~250℃の温度で30~60分程度ポストベークすることにより塗膜の硬化を促進させ、膜の溶剤耐性や膜硬度等を高めることが行われる。着色パターンの形成に用いられる感光性の着色組成物は一般に、色素や重合体と共に、これらの成分を溶解又は分散するための有機溶剤を含んでいる。
【0003】
有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)素子を用いた表示装置では、表示領域を隔壁(バンクともいう)により区画し、隔壁間に有機発光物質をインクジェット法等により塗布して発光層を形成することが行われている。また近年では、色素を含む感光性組成物を用いて、フォトリソグラフィ法により隔壁を形成することにより、隔壁に遮光性を付与することが行われている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平2-144502号公報
【特許文献2】国際公開第2020/240925号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
高温でポストベークを実施することにより、着色パターンの溶剤耐性を高めることができる反面、プロセス温度が高いことに起因してプラスチック基板の適用が制限されたり、一般に耐熱性が劣るとされている染料の使用が制限されたりすることがある。その一方で、着色パターンの硬化が不十分であると、次の工程で、有機溶剤を含む組成物が基板上に塗布され、基板上に先に形成された着色パターンが有機溶剤と接触することにより、着色パターンが有機溶剤に溶解あるいは膨潤したり、色素が有機溶剤中に溶け出したりすることが懸念される。プラスチック基板の適用や染料の使用を可能にしつつ、溶剤耐性が高い硬化物を得る観点からすると、比較的低温(例えば150℃以下)での加熱によって十分に硬化する感光性組成物を開発することが望まれている。
【0006】
低温プロセスを実現するために、感光性組成物を構成する成分の改良を図ることが考えられる。その場合、均質かつ透過性の高い着色硬化物を得る観点から、有機溶媒系の感光性組成物に配合する成分には、溶剤成分として用いられる有機溶媒に十分に溶解可能であることが求められる。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、成分の有機溶剤への溶解性を確保しつつ、低温プロセスを適用した場合に溶剤耐性に優れた着色硬化物を得ることができる感光性組成物を提供することを1つの目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、以下の感光性組成物、着色硬化物及びその製造方法、並びに表示デバイスが提供される。
【0009】
[1] 色素と、けん化度が5モル%以上50モル%以下のポリビニルアルコールと、架橋剤と、光酸発生剤と、有機溶剤と、を含有する、感光性組成物。
[2] 上記[1]の感光性組成物に光を照射する工程と、光照射後の感光性組成物を150℃以下で加熱する工程と、を含む、硬化物の製造方法。
[3] 上記[1]の感光性組成物が硬化されてなる着色硬化物。
[4] 上記[3]の着色硬化物を備える、表示デバイス。
【発明の効果】
【0010】
本発明の感光性組成物によれば、配合成分の有機溶剤への溶解性を確保しつつ、低温プロセスを適用した場合にも溶剤耐性に優れた着色硬化物を得ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、実施態様に関連する事項について詳細に説明する。なお、本明細書において、「~」を用いて記載された数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味である。「構造単位」とは、主鎖構造を主として構成する単位であって、少なくとも主鎖構造中に2個以上含まれる単位をいう。
【0012】
[感光性組成物]
本開示の感光性組成物は、表示デバイスの構成部材であるカラーフィルタ、ブラックマトリクス、ブラックスペーサー及びブラックバンクのうち1種以上を形成するための感光性組成物として好適に用いられる。本開示の感光性組成物は、[A]色素と、けん化度が5モル%以上50モル%以下のポリビニルアルコール(以下、「[B]ポリビニルアルコール」ともいう)と、[C]架橋剤と、[D]光酸発生剤と、[E]有機溶剤とを含有する。以下、本開示の感光性組成物に含まれる各成分、及び必要に応じて配合されるその他の成分について説明する。なお、各成分については特に言及しない限り、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0013】
ここで、本明細書において「炭化水素基」は、鎖状炭化水素基、脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基を含む意味である。「鎖状炭化水素基」とは、主鎖に環状構造を含まず、鎖状構造のみで構成された直鎖状炭化水素基及び分岐状炭化水素基を意味する。ただし、鎖状炭化水素基は飽和でも不飽和でもよい。「脂環式炭化水素基」とは、環構造としては脂環式炭化水素の構造のみを含み、芳香環構造を含まない炭化水素基を意味する。ただし、脂環式炭化水素基は脂環式炭化水素の構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造を有するものも含む。「芳香族炭化水素基」とは、環構造として芳香環構造を含む炭化水素基を意味する。ただし、芳香族炭化水素基は芳香環構造のみで構成されている必要はなく、その一部に鎖状構造や脂環式炭化水素の構造を含んでいてもよい。脂環式炭化水素基及び芳香族炭化水素基が有する環構造は、炭化水素構造からなる置換基を有していてもよい。
【0014】
<[A]色素>
[A]色素は、特に限定されるものではなく、用途に応じて色彩や種類を適宜選択することができる。[A]色素としては、顔料、染料、量子ドット、天然色素及び近赤外吸収色素等が挙げられる。輝度及び色純度の高い画素を得ることができる点で、[A]色素としては、有機顔料及び有機染料よりなる群から選択される少なくとも1種を好ましく使用できる。
【0015】
有機顔料としては、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行)においてピグメントに分類されている化合物、すなわちカラーインデックス(C.I.)名が付されているものを挙げることができる。例えば以下の有機顔料が挙げられる。
【0016】
C.I.ピグメントレッド166、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド224、C.I.ピグメントレッド242、C.I.ピグメントレッド254、C.I.ピグメントレッド264、C.I.ピグメントレッド279等の赤色顔料;
C.I.ピグメントグリーン1、C.I.ピグメントグリーン4、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36、C.I.ピグメントグリーン58、C.I.ピグメントグリーン59、C.I.ピグメントグリーン63等の緑色顔料;
C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6、C.I.ピグメントブルー16、C.I.ピグメントブルー79、C.I.ピグメントブルー80、C.I.ピグメントブルー60等の青色顔料;
C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー14、C.I.ピグメントイエロー17、C.I.ピグメントイエロー20、C.I.ピグメントイエロー24、C.I.ピグメントイエロー31、C.I.ピグメントイエロー55、C.I.ピグメントイエロー61、C.I.ピグメントイエロー61:1、C.I.ピグメントイエロー62、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー93、C.I.ピグメントイエロー100、C.I.ピグメントイエロー104、C.I.ピグメントイエロー109、C.I.ピグメントイエロー110、C.I.ピグメントイエロー129、C.I.ピグメントイエロー133、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー153、C.I.ピグメントイエロー154、C.I.ピグメントイエロー155、C.I.ピグメントイエロー166、C.I.ピグメントイエロー168、C.I.ピグメントイエロー169、C.I.ピグメントイエロー179、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー183、C.I.ピグメントイエロー185、C.I.ピグメントイエロー191、C.I.ピグメントイエロー191:1、C.I.ピグメントイエロー206、C.I.ピグメントイエロー209、C.I.ピグメントイエロー209:1、C.I.ピグメントイエロー211、C.I.ピグメントイエロー212、C.I.ピグメントイエロー215、C.I.ピグメントイエロー231等の黄色顔料;
C.I.ピグメントオレンジ38等の橙色顔料;
C.I.ピグメントバイオレット19、C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット29等の紫色顔料。
【0017】
また、有機顔料としては、上記のほか、ラクタム系黒顔料、ペリレン系黒顔料等の黒色顔料や、特表2011-523433号公報の式(Ic)で表されるブロモ化ジケトピロロピロール顔料を使用することもできる。
【0018】
有機染料としては、例えば、上記カラーインデックスにおいてダイ(Dye)に分類されている化合物の他、公知の染料を用いることができる。このような染料としては、例えば、トリアリールメタン染料、シアニン染料、キサンテン染料、アントラキノン染料、アゾ染料、ジピロメテン染料、キノフタロン染料、クマリン染料、ピラゾロン染料、キノリン染料、ニトロ染料、キノンイミン染料、フタロシアニン染料、スクアリリウム染料等が挙げられる。上記の中でも、耐熱性の観点から、トリアリールメタン染料、シアニン染料、キサンテン染料、アントラキノン染料、ジピロメテン染料、フタロシアニン染料又はスクアリリウム染料が好ましい。有機染料としては、カラーインデックス(C.I.)名が付されているものとして、例えば以下の有機染料が挙げられる。
【0019】
C.I.アシッドイエロー11、C.I.ダイレクトイエロー12、C.I.リアクティブイエロー2、C.I.モルダントイエロー5、C.I.アシッドイエロー3、C.I.アシッドイエロー1、C.I.ベーシックイエロー4、C.I.ソルベントイエロー33、C.I.ディスパースイエロー64、C.I.ディスパースイエロー42、C.I.ソルベントイエロー179、ディスパースイエロー201等の黄色染料;
C.I.ダイレクトグリーン59、C.I.ダイレクトグリーン28、C.I.アシッドグリーン25等の緑色染料;
C.I.ソルベントブラック5、C.I.ソルベントブラック7、C.I.ソルベントブラック27、C.I.ソルベントブラック29、C.I.ソルベントブラック34、C.I.リアクティブブラック5、C.I.モルダントブラック7等の黒色染料。
【0020】
また、有機染料としては、上記のほか、特開2015-044982号公報、特開2017-207676号公報、特開2013-213208号公報に記載の黄色染料を使用することもできる。
【0021】
本開示の感光性組成物において、[A]色素は染料を含むことが好ましい。染料は、染料自体の色純度やその色相の鮮やかさにより、表示画像の色相や輝度を高めることができ、高品質な着色層を得ることができる点で好適である。また、染料は、顔料に由来する粗大粒子の低減を図ることができ、コントラストの向上に有効であると考えられる。具体的には、染料の割合は、[A]色素の全量に対し、20質量%以上であることが好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上が更に好ましく、70質量%以上がより更に好ましい。
【0022】
本開示の感光性組成物において、[A]色素の含有割合は、カラーフィルタを形成する場合には輝度が高く、色純度に優れる画素を形成する観点、またブラックマトリクスやブラックスペーサー、ブラックバンクを形成する場合には遮光性に優れた着色硬化物を得る観点から、感光性組成物の全固形分の合計量に対し、好ましくは5~80質量%である。
【0023】
より具体的には、カラーフィルタを形成する場合、[A]色素の含有割合は、感光性組成物の全固形分の合計量に対し、より好ましくは10質量%以上であり、更に好ましくは12質量%以上である。また、カラーフィルタを形成する場合の[A]色素の含有割合は、感光性組成物の全固形分の合計量に対し、より好ましくは70質量%以下であり、更に好ましくは60質量%以下であり、より更に好ましくは55質量%以下であり、特に好ましくは45質量%以下である。また、ブラックマトリクスやブラックスペーサー、ブラックバンクを形成する場合、[A]色素の含有割合は、感光性組成物の全固形分の合計量に対し、より好ましくは20質量%以上であり、更に好ましくは40質量%以上である。また、ブラックマトリクス等を形成する場合の[A]色素の含有割合は、感光性組成物の全固形分の合計量に対し、より好ましくは75質量%以下である。
【0024】
なお、本明細書において「固形分」とは、感光性組成物中に含有される[E]有機溶剤以外の成分を意味する。すなわち、「全固形分」とは、[A]色素と、[B]ポリビニルアルコールと、[C]架橋剤と、[D]光酸発生剤と、[A]~[E]以外のその他成分とを合わせた成分である。したがって、例えば液状の添加剤成分(例えば界面活性剤等)であっても、これらは固形分に含まれるものとする。
【0025】
<[B]ポリビニルアルコール>
[B]ポリビニルアルコールは、けん化度が5モル%以上50モル%以下のポリビニルアルコールである。けん化度が上記範囲のポリビニルアルコールは[E]有機溶剤に溶解可能であり、[A]色素(特に染料)との相溶性も良好である。また、[B]ポリビニルアルコールを感光性組成物の重合体成分に用いて着色硬化物を製造することにより、低温プロセスを適用した場合にも溶剤耐性に優れた着色硬化物を得ることができる。
【0026】
[B]ポリビニルアルコールは、水酸基を有する構造単位と、アセチル基を有する構造単位とを含む重合体である。[B]ポリビニルアルコールは一般に、酢酸ビニルモノマーを重合したポリ酢酸ビニルをけん化することにより得られる。[B]ポリビニルアルコールは、けん化度(モル%)が低いほど、アセチル基の割合が多いことを表す。なお、ポリビニルアルコールのけん化度は加水分解率(単位:モル%)に対応する。例えば、けん化度が5モル%であるポリビニルアルコールの加水分解率は5モル%である。
【0027】
[B]ポリビニルアルコールのけん化度は、本開示の感光性組成物を用いて得られる着色硬化物の溶剤耐性を十分に確保する観点から、7モル%以上が好ましく、10モル%以上がより好ましい。また、[E]有機溶剤への溶解性を確保する観点から、[B]ポリビニルアルコールのけん化度は、45モル%以下が好ましく、40モル%以下がより好ましい。なお、[B]ポリビニルアルコールのけん化度は、JIS K 6726(1994)を参照して測定された値である。
【0028】
[B]ポリビニルアルコールの重合度は、十分な厚みと溶剤耐性とを有する着色硬化物を得る観点から、100以上が好ましく、150以上がより好ましく、200以上が更に好ましい。また、[B]ポリビニルアルコールの重合度は、未露光部の現像液への溶解性を確保する観点、及び[E]有機溶剤への溶解性を確保する観点から、450以下が好ましく、400以下がより好ましく、300以下が更に好ましい。なお、[B]ポリビニルアルコールの重合度は、JIS K 6726(1994)を参照して測定された値である。
【0029】
[B]ポリビニルアルコールは、中でも特に、けん化度が7モル%以上50モル%以下であって、重合度が100~450であるポリビニルアルコールが好ましい。けん化度及び重合度のより好ましい範囲についてはそれぞれ上述したとおりである。
【0030】
本開示の感光性組成物において、[B]ポリビニルアルコールの含有割合は、溶剤耐性を確保する観点から、感光性組成物に含まれる固形分の全量に対して、10質量%以上が好ましく、20質量%以上がより好ましく、30質量%以上が更に好ましい。また、[B]ポリビニルアルコールの含有割合は、十分に着色された硬化物を得る観点から、感光性組成物に含まれる固形分の全量に対して、80質量%以下が好ましく、70質量%以下がより好ましい。
【0031】
<[C]架橋剤>
[C]架橋剤は、感光性組成物を露光することにより、[B]ポリビニルアルコールの分子間又は分子内に架橋構造を形成させる成分である。[C]架橋剤としては、室温で有機溶媒に溶解し得る化合物を好ましく使用できる。具体的には、[C]架橋剤は、25℃におけるシクロヘキサノン又はプロピレングリコールモノプロピルエーテルに対する溶解度(以下、単に溶解度ともいう)が0.02モル/L以上であることが好ましい。均質かつ透過性の高い着色硬化物を得る観点から、[C]架橋剤の溶解度は、0.025モル/L以上であることがより好ましい。
【0032】
[C]架橋剤は2個以上の架橋性基を有する。[C]が有する架橋性基は特に限定されない。架橋反応性が高い点で、[C]架橋剤は、架橋性基として、メチロール基、アルコキシメチル基、及びグリシジル基よりなる群から選択される少なくとも1種を有することが好ましく、アルコキシメチル基を有することがより好ましい。架橋剤1分子が有する架橋性基の数は、例えば2~10個であり、好ましくは3~8個である。
【0033】
[C]架橋剤の具体例としては、例えば、窒素原子を1個以上有するアミノ系架橋剤、フェノール性水酸基含有化合物とホルムアルデヒド又はホルムアルデヒドと低級アルコールとの反応生成物等が挙げられる。[C]架橋剤としては、低温硬化しやすさの観点から中でも、窒素原子を1個以上有するアミノ系架橋剤を好ましく使用することができる。アミノ系架橋剤としては、例えば、ウリル誘導体、ユリア誘導体、イソシアヌレート誘導体、メラミン誘導体、トリアジン誘導体等が挙げられる。
【0034】
アミノ系架橋剤の具体例としては、ウリル誘導体として、グリコールウリル又はその誘導体等を;ユリア誘導体として、尿素、エチレン尿素、プロピレン尿素、アルコキシメチレン尿素、エチレン尿素カルボン酸、又はこれらの誘導体等を;イソシアヌレート誘導体として、N-置換イソシアヌレート等を;メラミン誘導体として、N-置換メラミン等を;トリアジン誘導体として、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン、又はこれらの誘導体等を、それぞれ挙げることができる。また、アミノ系架橋剤として、アミノ基含有化合物とホルムアルデヒドとの反応生成物、アミノ基含有化合物とホルムアルデヒドと低級アルコールとの重縮合物、又はアミノ基含有化合物とホルムアルデヒドとの反応生成物に更に低級アルコールを反応させた反応生成物を使用することもできる。当該反応生成物の合成に際し、アミノ基含有化合物としてメラミン化合物を用いた場合、アミノ系架橋剤としてメラミン誘導体が得られる。
【0035】
[C]架橋剤としては、低温での架橋反応性が高い点において、上記の中でも、ウリル誘導体、ユリア誘導体、イソシアヌレート誘導体及びメラミン誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種を好ましく使用できる。また、硬化物の透過性をより高くできる点で、ウリル誘導体が好ましく、グリコールウリル誘導体を特に好ましく使用できる。さらに、[C]架橋剤としては、ウリル誘導体、ユリア誘導体、イソシアヌレート誘導体及びメラミン誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種であって、かつメチロール基、アルコキシメチル基及びグリシジル基よりなる群から選択される少なくとも1種を有する化合物を特に好ましく使用できる。
【0036】
[C]架橋剤の好ましい具体例としては、下記式(C-1)~式(C-9)のそれぞれで表される化合物が挙げられる。
【化1】
【0037】
本開示の感光性組成物において、[C]架橋剤の含有割合は、硬化反応を十分に進行させ、露光部を現像液及び有機溶媒に溶解させにくくする観点から、感光性組成物に含まれる[B]ポリビニルアルコールの全量100質量部に対して、5質量部以上が好ましく、10質量部以上がより好ましく、15質量部以上が更に好ましい。また、[C]架橋剤の含有割合は、着色硬化物の透過性を確保する観点から、感光性組成物に含まれる[B]ポリビニルアルコールの全量100質量部に対して、100質量部以下が好ましく、80質量部以下がより好ましく、60質量部以下が更に好ましい。
【0038】
<[D]光酸発生剤>
[D]光酸発生剤は、室温で有機溶媒に溶解し得る化合物であることが好ましい。具体的には、25℃におけるシクロヘキサノン又はプロピレングリコールモノプロピルエーテルに対する溶解度が0.02モル/L以上である光酸発生剤を好ましく使用できる。均質かつ透過性の高い着色硬化物を得る観点から、[D]光酸発生剤の溶解度は、0.025モル/L以上であることがより好ましい。
【0039】
[D]光酸発生剤は、波長365nmにおけるモル吸光係数が200mol-1・cm-1以上であることが好ましい。この場合、i線の照射により十分に感光し、良好なリソグラフィー性能を示す組成物を得ることができる。パターン形状が良好な塗膜を得る観点から、[D]光酸発生剤の波長365nmにおけるモル吸光係数は、500mol-1・cm-1以上がより好ましい。
【0040】
[D]光酸発生剤に放射線を照射することにより発生する酸の種類は特に限定されない。硬化反応を十分に進行させる観点から、[D]光酸発生剤としては、放射線の照射により発生する酸の酸解離定数が、好ましくは-1以下、より好ましくは-8以下、更に好ましくは-10以下の強酸である光酸発生剤を好ましく使用でき、スルホン酸を発生する光酸発生剤がより好ましい。[D]光酸発生剤としては中でも、波長365nmにおけるモル吸光係数が200mol-1・cm-1以上であって、かつ光酸発生剤に放射線を照射することにより発生する酸の酸解離定数が-1以下である化合物を特に好ましく使用できる。
【0041】
[D]光酸発生剤は、イオン性光酸発生剤でもよく、非イオン性光酸発生剤でもよい。波長365nmの光照射によって発生する酸が触媒する硬化反応を十分に進行させる観点から、[D]光酸発生剤としては、下記式(1a)で表される化合物及び下記式(1b)で表される化合物よりなる群から選択される少なくとも1種を好ましく使用できる。
【化2】
(式(1a)中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~10の置換又は無置換の1価の飽和炭化水素基であるか、又は、RとRとが互いに合わせられR及びRが結合するSと共に構成される環構造を表す。aは1~5の整数である。bは0~5の整数である。nは0又は1である。ただし、a+b≦2n+5を満たす。bが1の場合、Rは、炭素数1~20の1価の有機基、ニトロ基又はハロゲン原子である。bが2以上の場合、複数のRは、同一又は異なり、炭素数1~10の1価の飽和炭化水素基、炭素数1~10の置換された1価の飽和炭化水素基、ニトロ基若しくはハロゲン原子であるか、又は複数のRのうちの2個以上が互いに合わせられこれらが結合する炭素鎖と共に構成される環員数4~10の環構造を表す。Mは有機アニオンである。)
【0042】
【化3】
(式(1b)中、R及びRは、それぞれ独立して、炭素数1~10の1価のフッ素化飽和炭化水素基であるか、又は、RとRとが互いに合わせられR及びRが結合する部分構造「-C(Ar)=N-O-SO-」と共に構成される環構造を表す。Arは、芳香環を有し、波長365nmにおけるモル吸光係数が500mol-1・cm-1以上の官能基である。)
【0043】
(式(1a)で表される化合物)
上記式(1a)において、R及びRで表される炭素数1~10の置換又は無置換の1価の飽和炭化水素基は、炭素数1~10の1価の飽和鎖状炭化水素基、又は水素原子が置換基により置換された炭素数1~10の飽和鎖状炭化水素基であることが好ましい。置換基としては、例えば、ハロゲン原子(フルオロ原子、クロロ原子、ブロモ原子、ヨード原子等)、ヒドロキシ基、カルボキシ基、シアノ基、ニトロ基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アルコキシカルボニルオキシ基、アシル基、アシロキシ基、-OSO-R、-SO-R、-O-Rkk-COOR、-Rkk-CO-R、-S-R等が挙げられる。Rは、炭素数1~5の1価の飽和鎖状炭化水素基である。Rkkは、単結合又は炭素数1~10の2価の飽和鎖状炭化水素基である。RとRとが互いに合わせられR及びRが結合するSと共に構成される環構造は、含硫黄飽和複素環構造であることが好ましい。
【0044】
及びRは、有機溶媒に対する溶解性の観点から、炭素数1~3のアルキル基であるか、又はRとRとが互いに合わせられR及びRが結合するSと共に構成される炭素数3~5の含硫黄飽和複素環構造であることが好ましい。
【0045】
としては、炭素数1~10の置換又は無置換の1価の飽和鎖状炭化水素基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、アシロキシ基、-OSO-R、-SO-R、-O-Rkk-COOR、-Rkk-CO-R又は-S-Rが好ましい。R及びRkkは、上記R及びRで表される基が有するR及びRkkと同義である。Rは、上記のうち、直鎖状若しくは分岐状の1価のアルキル基、直鎖状若しくは分岐状の1価のフルオロアルキル基、-OSO-R又は-SO-Rが好ましい。aは1~3が好ましい。bは0~2が好ましく、0又は1がより好ましい。また、i線に対する感度をより高くできる点で、nは1が好ましい。
【0046】
は、放射線照射によりカチオンが分解することによって生じるプロトンと有機アニオンとから酸を発生可能な構造を有していればよく、特に限定されない。Mが有するアニオン構造としては、スルホネートアニオン構造、イミドアニオン構造、メチルアニオン構造又はカルボキシレートアニオン構造等が挙げられる。これらのうち、Mは、スルホネートアニオン構造を有することが好ましい。具体的には、下記式(m-1)で表されるアニオンが挙げられる。
【化4】
(式(m-1)中、Rは、フッ素原子又は炭素数1~10のフルオロアルキル基である。R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~10の炭化水素基、フッ素原子又は炭素数1~10のフルオロアルキル基である。dは0~8の整数である。dが2以上の場合、複数存在するR及びRは互いに同一又は異なる。)
【0047】
上記式(m-1)において、R、R、R及びRで表される炭素数1~10の炭化水素基は、アルキル基及びシクロアルキル基が好ましく、アルキル基がより好ましく、メチル基、エチル基又はイソプロピル基であることが更に好ましい。
、R、R、R及びRで表される炭素数1~10のフルオロアルキル基としては、例えば、トリフルオロメチル基、2,2,2-トリフルオロエチル基、ペンタフルオロエチル基、2,2,3,3,3-ペンタフルオロプロピル基、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロプロピル基、ヘプタフルオロn-プロピル基、ヘプタフルオロi-プロピル基、ノナフルオロn-ブチル基、ノナフルオロi-ブチル基、ノナフルオロt-ブチル基、2,2,3,3,4,4,5,5-オクタフルオロn-ペンチル基、トリデカフルオロn-ヘキシル基、5,5,5-トリフルオロ-1,1-ジエチルペンチル基等が挙げられる。これらのうち、炭素数1~3のフルオロアルキル基が好ましく、トリフルオロメチル基がより好ましい。
【0048】
は、フッ素原子又はトリフルオロメチル基であることが、発生する酸の酸性度が高くなることから好ましい。dは0~5が好ましく、0~3がより好ましい。
【0049】
上記式(1a)で表される光酸発生剤の具体例としては、下記式(1a-1)~式(1a-10)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
【化5】
(式(1a-1)~式(1a-10)中、Mは有機アニオンである。)
【0050】
(式(1b)で表される化合物)
上記式(1b)において、R及びRで表される炭素数1~10の1価のフッ素化飽和炭化水素基は、炭素数1~10の1価の飽和鎖状炭化水素基が有する任意の水素原子がフッ素原子により置換された基であることが好ましい。R及びRは、これらの中でも、酸発生効率の観点から、炭素数1~6のフッ素化アルキル基であることが好ましく、炭素数1~4のフッ素化アルキル基であることがより好ましい。
【0051】
Arとしては、波長365nmに対する感度が高い感光性組成物を得ることができる点で、2個以上の単環式芳香族炭化水素環が連結した構造、多環式芳香族炭化水素環構造又は多環式芳香族複素環構造を有する基が好ましい。具体的には、ビフェニル構造、ナフタレン構造、フルオレン構造又はクマリン構造を有する基等が挙げられる。
【0052】
上記式(1b)で表される光酸発生剤の具体例としては、例えば下記式(1b-1)~式(1b-3)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
【化6】
【0053】
[D]光酸発生剤としては、上記のほか、トリアリールスルホニウム塩、ジアリールヨードニウム塩等の公知の光酸発生剤を使用することもできる。トリアリールスルホニウム塩及びジアリールヨードニウム塩の好ましい具体例の一例としては、下記式(1c-1)~式(1c-6)のそれぞれで表される化合物等が挙げられる。
【化7】
【0054】
ブラックマトリクスやブラックスペーサー、ブラックバンクの形成時のように、[A]色素の配合量を比較的多くする場合(例えば、感光性組成物の全固形分の合計量に対し、[A]色素の配合量を40質量%以上とする場合)、[D]光酸発生剤として、イオン性光酸発生剤と非イオン性酸発生剤とを併用するとよい。これにより、未露光部の現像性及びパターンの解像性をバランス良く改善することができる。[D]光酸発生剤としてイオン性光酸発生剤と非イオン性酸発生剤とを併用する場合、イオン性光酸発生剤と非イオン性酸発生剤との比率は、質量比で、イオン性光酸発生剤:非イオン性光酸発生剤=10:90~90:10とすることが好ましく、20:80~80:20とすることがより好ましい。
【0055】
本開示の感光性組成物における[D]光酸発生剤の含有割合は、硬化反応を十分に進行させる観点から、本開示の感光性組成物に含まれる[B]ポリビニルアルコールの全量100質量部に対して、1質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、10質量部以上が更に好ましい。また、[D]光酸発生剤の含有割合は、未露光部の塗膜の溶け残りを抑制する観点から、感光性組成物に含まれる[B]ポリビニルアルコールの全量100質量部に対して、40質量部以下が好ましく、30質量部以下がより好ましい。
【0056】
<[E]有機溶剤>
本開示の感光性組成物は、[A]色素、[B]ポリビニルアルコール、[C]架橋剤、[D]光酸発生剤、及び必要に応じて配合される成分が、好ましくは[E]有機溶剤に溶解又は分散された液状の組成物である。[E]有機溶剤としては、感光性組成物に含まれる成分と反応せず、適度の揮発性を有する有機溶媒を好ましく使用できる。
【0057】
[E]有機溶剤の具体例としては、例えば、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、3-メトキシブチルアセテート、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエチルエーテル、シクロヘキサノン、2-ヘプタノン、3-ヘプタノン、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,6-ヘキサンジオールジアセテート、乳酸エチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-メチル-3-メトキシブチルプロピオネート、酢酸n-ブチル、酢酸i-ブチル、ぎ酸n-アミル、酢酸i-アミル、プロピオン酸n-ブチル、酪酸エチル、酪酸i-プロピル、酪酸n-ブチル、及びピルビン酸エチル等が挙げられる。なお、[E]有機溶剤としては、1種を単独で使用してもよく、2種以上を混合して使用してもよい。
【0058】
<その他の成分>
本開示の感光性組成物は、上述した[A]色素、[B]ポリビニルアルコール、[C]架橋剤、[D]光酸発生剤及び[E]有機溶剤に加え、これら以外の成分(以下、「その他の成分」ともいう)を更に含有していてもよい。その他の成分としては、界面活性剤、密着助剤、分散剤等が挙げられる。
【0059】
・界面活性剤
界面活性剤は、塗膜の平滑性を向上させるための成分である。界面活性剤としては、カチオン界面活性剤、アニオン界面活性剤、両性界面活性剤及び非イオン性界面活性剤が挙げられる。
【0060】
これらの具体例としては、カチオン界面活性剤として、脂肪族アミン塩、脂肪族アンモニウム塩等が挙げられる。アニオン界面活性剤としては、脂肪酸石鹸、アルキルエーテルカルボン酸塩等のカルボン酸塩;アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、α-オレフィンスルホン酸塩等のスルホン酸塩;高級アルコール硫酸エステル塩、アルキルエーテル硫酸塩等の硫酸エステル塩;アルキルリン酸エステル等のリン酸エステル塩等が挙げられる。両性界面活性剤としては、カルボン酸塩、ベタイン類等が挙げられる。非イオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチレン化フェニルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、グリセリンエステルのポリオキシエチレンエーテル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、グリセリンエステル、ソルビタンエステル等が挙げられる。
【0061】
本開示の感光性組成物に界面活性剤を配合する場合、界面活性剤の含有割合は、感光性組成物に含まれる[B]ポリビニルアルコール100質量部に対して、例えば0.5~20質量部とすることができる。
【0062】
・密着助剤
密着助剤は、感光性組成物を用いて形成される塗膜と基板との接着性を向上させるための成分である。密着助剤としては、反応性官能基を有する官能性シランカップリング剤等が挙げられる。官能性シランカップリング剤が有する反応性官能基としては、カルボキシ基、(メタ)アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、イソシアネート基等が挙げられる。なお、「(メタ)アクリロ」は、「アクリロ」及び「メタクリロ」を包括する表記である。
【0063】
官能性カップリング剤の具体例としては、例えば、トリメトキシシリル安息香酸、3-グリシジルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシジルオキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロへキシル)エチルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、3-イソシアナートプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。本開示の感光性組成物に密着助剤を配合する場合、その含有割合は、[B]ポリビニルアルコール100質量部に対して、例えば0.01質量部以上30質量部以下であり、0.1質量部以上20質量部以下が好ましい。
【0064】
その他の成分としては、上記のほか、例えば、分散剤、分散助剤、重合禁止剤、酸化防止剤、連鎖移動剤等が挙げられる。これらの成分の配合割合は、本開示の効果を損なわない範囲において、各成分に応じて適宜選択される。
【0065】
本開示の感光性組成物は、その固形分濃度(すなわち、感光性組成物中の[E]有機溶剤以外の成分の合計質量が、感光性組成物の全質量に対して占める割合)は、粘性や揮発性等を考慮して適宜に選択される。本開示の感光性組成物の固形分濃度は、好ましくは1~60質量%の範囲である。固形分濃度が1質量%以上であると、感光性組成物を基板上に塗布した際に塗膜の膜厚を十分に確保できる。また、固形分濃度が60質量%以下であると、塗膜の膜厚が過大となりすぎず、更に感光性組成物の粘性を適度に高くでき、良好な塗布性を確保できる。本開示の感光性組成物の固形分濃度は、より好ましくは3~50質量%であり、更に好ましくは5~40質量%である。
【0066】
<感光性組成物の調製>
本開示の感光性組成物は、適宜の方法により調製することができる。その調製方法としては、[A]色素、[B]ポリビニルアルコール、[C]架橋剤及び[D]光酸発生剤、並びに必要に応じて使用されるその他の成分を[E]有機溶剤と混合し、溶解する方法が挙げられる。また、例えば特開2008-58642号公報、特開2010-132874号公報等に開示されている方法により本開示の感光性組成物を調製してもよい。具体的には、[A]色素として染料と顔料の両方を使用する場合、特開2010-132874号公報に開示されているように、染料溶液を第1のフィルタに通した後、第1のフィルタを通過した染料溶液を、別途調製した顔料分散液等と混合し、得られた組成物を更に第2のフィルタに通すことにより調製する方法を採用することができる。また、染料と、[B]ポリビニルアルコール、[C]架橋剤及び[D]光酸発生剤、並びに必要に応じて使用される他の成分を溶媒に溶解し、得られた溶液を第1のフィルタに通した後、第1のフィルタを通過した溶液を、別途調製した顔料分散液と混合し、得られた組成物を更に第2のフィルタに通すことにより調製する方法を採用してもよい。また、染料溶液を第1のフィルタに通した後、第1のフィルタを通過した染料溶液と、[B]ポリビニルアルコール、[C]架橋剤及び[D]光酸発生剤、並びに必要に応じて使用される他の成分を混合・溶解し、得られた溶液を第2のフィルタに通し、第2のフィルタを通過した溶液を更に、別途調製した顔料分散液と混合し、得られた組成物を更に第3のフィルタに通すことにより調製する方法を採用してもよい。
【0067】
[着色硬化物及びその製造方法]
上述した本開示の感光性組成物を用いて着色硬化物を製造する方法は特に限定されない。着色硬化物の製造を低温プロセスにより行い、これによりプラスチック基板の適用や染料の使用を可能にしつつ、溶剤耐性が高い着色硬化物を得る観点から、以下の露光工程及び加熱工程を含む方法により着色硬化物を製造することが好ましい。
露光工程:本開示の感光性組成物に光を照射する工程。
加熱工程:光照射後の感光性組成物を150℃以下で加熱(ポストベーク)する工程。
【0068】
本開示の製造方法は、光照射工程の前段階として、本開示の感光性組成物を基板上に塗布して塗膜を形成する工程(以下、「膜形成工程」ともいう)を更に含んでいてもよい。また、本開示の製造方法によりパターン化された着色硬化物を製造する場合、当該製造方法は、光照射後の感光性組成物を現像する工程(以下、「現像工程」ともいう)を更に含んでいてもよい。なお、本明細書では、露光工程の後に実施する加熱を「ポストベーク」と称する。ポストベークは、現像工程の前に実施されてもよく、現像工程の後に実施されてもよく、現像工程の前及び後の両方に実施されてもよい。以下、各工程について説明する。
【0069】
<膜形成工程>
基板としては、例えば、ガラス、シリコン等の無機系材料;ポリカーボネート、ポリエステル、芳香族ポリアミド、ポリアミドイミド、ポリイミド等の樹脂製材料;からなる基板が挙げられる。これらのうち、樹脂製の基板を適用することにより、フレキシブルなカラーフィルタや表示デバイスを製造でき、またカラーフィルタや表示デバイスの軽量化を図ることができる。そのため、樹脂製の基板は、表示デバイスの用途拡大等に大きく寄与する点で好ましい。また、低温硬化の必要性が高く、本製造方法を適用した場合のプロセスメリットが大きい。基板には、所望により、シランカップリング剤等による薬品処理、プラズマ処理、イオンプレーティング、スパッタリング、気相反応法、真空蒸着等の適宜の前処理を施しておくこともできる。
【0070】
感光性組成物を基板に塗布する際には、スプレー法、ロールコート法、回転塗布法(スピンコート法)、スリットダイ塗布法(スリット塗布法)、バー塗布法等の適宜の塗布法を採用することができる。これらのうち特に、均一な膜厚の塗膜を得ることができる点で、スピンコート法、スリットダイ塗布法を採用することが好ましい。
【0071】
感光性組成物を基板上に塗布した後、減圧乾燥等を行うことにより、基板上に塗膜が形成される。減圧乾燥は、通常、室温にて1~15分、好ましくは1~10分実施され、通常、50~200Paに到達する圧力で行われる。塗膜の形成は、ポストベーク温度よりも低温(例えば120℃以下)の加熱処理(プレベーク処理)が施されることにより行われてもよい。塗布厚さは、乾燥後の膜厚として、通常0.6~8μm、好ましくは1.2~5μmである。
【0072】
<露光工程>
露光工程は、感光性組成物を露光する工程であり、好ましくは上記膜形成工程により得られた塗膜を露光する工程である。露光する際に使用される放射線の光源としては、例えばキセノンランプ、ハロゲンランプ、タングステンランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、中圧水銀灯、低圧水銀灯等のランプ光源や、アルゴンイオンレーザー、YAGレーザー、XeClエキシマーレーザー、窒素レーザー等のレーザー光源等が挙げられる。露光光源として、紫外線LEDを使用することもできる。波長は、190~450nmの範囲にある放射線が好ましく、300~450nmの範囲にある放射線がより好ましい。放射線の露光量は、一般的には10~10,000J/m2が好ましい。放射線の露光量は、より好ましくは100J/m2以上であり、更に好ましくは200J/m2以上である。また、放射線の露光量は、より好ましくは5,000J/m2以下であり、更に好ましくは2,000J/m2以下である。
【0073】
上記膜形成工程により得られた塗膜に、所定のパターンを有するフォトマスクを介して露光し、続いて現像工程を行うことにより、パターン化された硬化物を得ることができる。
【0074】
<加熱工程>
加熱工程は、露光後の塗膜を加熱する処理(ポストベーク)を実施する工程である。この加熱工程では、露光後の加熱を1回のみ行ってもよく複数回行ってもよい。本開示の製造方法が現像工程を含む場合、感光性組成物の硬化を十分に促進させる観点から、現像工程の前に加熱処理を実施するか、又は現像工程の前及び後の両方に加熱処理を実施することが好ましい。
【0075】
硬化性や溶剤耐性、基板と塗膜との密着性の向上、及び色移りの抑制を図ることを考慮すると、従来、ポストベーク温度は高温(例えば、150~230℃)にすることが好ましいとされていた。その一方で、色素(特に染料)の保護及び基板の保護を考慮すると、塗膜に対しては極力低温でポストベークを実施することが好ましい。このような観点から、ポストベーク温度は、好ましくは150℃以下であり、より好ましくは120℃以下であり、更に好ましくは100℃以下であり、より更に好ましくは70~100℃である。なお、ポストベークを複数回行う場合、複数回のポストベークのうち一部についてポストベーク温度を150℃以下としてもよいが、全てのポストベークを150℃以下の温度で実施することが好ましい。
【0076】
ポストベーク時の加熱時間は、加熱温度により適宜設定可能である。例えば70~120℃の温度では、好ましくは1~60分、より好ましくは5~30分である。なお、露光後の加熱を複数回行う場合、各回の加熱条件は同一でも異なっていてもよい。基板上に形成された着色硬化物の厚みは、通常0.5~5μm、好ましくは1.0~3μmである。
【0077】
<現像工程>
現像工程では、塗膜にフォトマスクを介して露光した後、アルカリ現像液を用いて現像する。このとき、ポジ型の場合には塗膜の露光部が溶解除去され、ネガ型の場合には塗膜の未露光部が溶解除去される。本開示の感光性組成物は、当該感光性組成物を用いて形成された塗膜のうち、未露光部がアルカリ現像液に溶解して除去され、露光部により硬化パターンが形成されるネガ型であることが好ましい。
【0078】
アルカリ現像液としては、例えば、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド、コリン、1,8-ジアザビシクロ-[5.4.0]-7-ウンデセン、1,5-ジアザビシクロ-[4.3.0]-5-ノネン等の水溶液が好ましい。アルカリ現像液には、例えば、メタノール、エタノール等の水溶性有機溶剤や界面活性剤等を適量添加することもできる。なお、アルカリ現像後は、通常、水洗する。現像処理法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、パドル(液盛り)現像法等を適用することができる。現像条件は、常温(25℃)で5~300秒が好ましい。
【0079】
[カラーフィルタ、ブラックマトリクス、ブラックスペーサ―及びブラックバンク]
本開示の感光性組成物は、表示デバイスが備える着色硬化物形成用組成物として有用である。中でも特に、本開示の感光性組成物は、カラーフィルタ、ブラックマトリクス、ブラックスペーサ―又はブラックバンク形成用の感光性組成物として有用である。
【0080】
例えば、本開示の感光性組成物を用いて製造されたカラーフィルタは、ポストベーク温度を比較的低温(例えば150℃以下)とする低温プロセスにより製造された場合にも、高輝度であって色純度が高い。したがって、本開示のカラーフィルタは、カラー液晶表示装置、有機EL表示装置、電子ペーパー等の各種表示デバイスに適用する場合に特に有用である。
【0081】
カラーフィルタを本開示の感光性組成物により製造する場合、例えば、まず、画素を形成する部分を区画するように遮光層(ブラックマトリクス)を基板上に形成する。次いで、この基板上に、例えば緑色色素を含む感光性組成物を塗布した後、減圧乾燥及びプレベークの少なくともいずれかを行って[E]有機溶剤を蒸発させ、基板上に塗膜を形成する(膜形成工程)。次いで、この塗膜にフォトマスクを介して露光した後(露光工程)、150℃以下で加熱処理を行い(加熱工程)、加熱後にアルカリ現像液を用いて現像する(現像工程)。その後、好ましくは150℃以下で加熱処理を行うことにより(加熱工程)、緑色の画素アレイが得られる。
【0082】
次いで、赤色又は青色の色素を含む本開示の感光性組成物をそれぞれ用い、緑色の画素アレイを形成する場合と同様にして、各組成物の塗布、乾燥、露光、加熱及び現像を行い、その後任意に更に加熱を行い、赤色の画素アレイ及び青色の画素アレイを同一基板上に順次形成する。これにより、緑色、赤色及び青色の三原色の画素アレイが基板上に配置されたカラーフィルタが得られる。ただし、各色の画素を形成する順序は上記に限定されない。
【0083】
上記のように、緑色の画素アレイを基板上に形成した後、次の画素アレイ(例えば赤色の画素アレイ)を形成するために、緑色の画素アレイが形成された基板上に感光性組成物(より具体的には、感光性の着色組成物)を塗布した場合、緑色の画素アレイと、次の色の着色組成物に含まれる有機溶剤とが接触することにより、緑色の画素アレイが溶解又は膨潤したり、基板上に形成した画素アレイ中の緑色色素が有機溶剤中に溶け出したりすることが考えられる。基板上に先に形成した画素アレイの溶解等を抑制するためには、ポストベーク温度を高温に設定して硬化を促進させることも考えられるが、その場合、染料や樹脂基板の使用が制限されてしまう。この点、[B]ポリビニルアルコールを含む本開示の感光性組成物を用いて画素アレイを形成することにより、低温プロセスにより画素アレイを形成した場合にも、製造工程において画素アレイが溶解又は膨潤したり、画素アレイ中の色素が有機溶剤に溶け出したりすることを抑制でき、溶剤耐性に優れた画素アレイを得ることができる。
【0084】
また、[A]色素として黒色色素を含む本開示の感光性組成物を用いて、画素アレイを形成する場合と同様の処理を行うことにより、ブラックマトリクス、ブラックスペーサー及びブラックバンクの1種以上を形成することもできる。
【0085】
ブラックマトリクスが形成されている基板上に着色組成物を塗布する場合にも上記と同様の問題が生じる。すなわち、黒色色素を含む着色組成物を用いてブラックマトリクスが形成されている場合、ブラックマトリクスの上に着色組成物を塗布して各色の画素アレイを形成すると、着色組成物に含まれる有機溶剤によってブラックマトリクスが溶解又は膨潤したり、あるいは剥離したりすることが考えられる。また、着色組成物を用いて形成されたブラックスペーサやブラックバンクが、その後の工程において有機溶剤と接触した場合にも同様のことが言える。この点、[B]ポリビニルアルコールを含む本開示の感光性組成物を用いてブラックマトリクス、ブラックスペーサー及びブラックバンクの1種以上の着色硬化物を形成することにより、これらの着色硬化物を低温プロセスにより形成した場合にも、着色硬化物が溶解や膨潤、剥離することを抑制でき、溶剤耐性に優れた着色硬化物を得ることができる。なお、ブラックスペーサーは遮光性を有するスペーサーであり、通常、[A]色素として黒色色素が用いられることにより形成されるスペーサーである。ブラックバンクは、有機EL素子の発光層を区画する遮光性を有する部材であり、通常、[A]色素として黒色色素が用いられることにより形成される隔壁である。
【0086】
[表示デバイス]
本開示の表示デバイスは、上述した本開示の感光性組成物を用いて形成された着色硬化物(好適には、カラーフィルタ、ブラックマトリクス、ブラックスペーサー及び隔壁(ブラックバンク)の1種以上)を備えるものである。表示デバイスの具体例としては、カラー液晶表示装置、有機EL表示装置、電子ペーパー等が挙げられる。
【0087】
本開示の着色硬化物を備えるカラー液晶表示装置は、冷陰極蛍光管(CCFL:Cold Cathode Fluorescent Lamp)の他、白色LEDを光源とするバックライトユニットを具備することができる。白色LEDとしては、例えば、赤色LEDと緑色LEDと青色LEDを組み合わせて混色により白色光を得る白色LED、青色LEDと赤色LEDと緑色蛍光体を組み合わせて混色により白色光を得る白色LED、青色LEDと赤色発光蛍光体と緑色発光蛍光体を組み合わせて混色により白色光を得る白色LED、青色LEDとYAG系蛍光体の混色により白色光を得る白色LED、青色LEDと橙色発光蛍光体と緑色発光蛍光体を組み合わせて混色により白色光を得る白色LED、紫外線LEDと赤色発光蛍光体と緑色発光蛍光体と青色発光蛍光体を組み合わせて混色により白色光を得る白色LED等を挙げることができる。
【0088】
本開示の着色硬化物を備える有機EL表示装置は、適宜の構造をとることが可能である。具体的には、例えば、特開平11-307242号公報に開示されている構造を挙げることができる。また、本開示の着色硬化物を備える電子ペーパーとしては、例えば、特開2007-41169号公報に開示されている構造を挙げることができる。
【0089】
本開示の表示デバイスは、種々の用途に有効に適用することができる。具体的には、例えば、時計、携帯型ゲーム機、ワープロ、ノート型パソコン、カーナビゲーションシステム、カムコーダー、PDA、デジタルカメラ、携帯電話機、スマートフォン、各種モニター、液晶テレビ、インフォメーションディスプレイ等の各種表示デバイスとして用いることができる。
【0090】
上述した本開示によれば、以下の手段が提供される。
<手段1> 色素と、けん化度が5モル%以上50モル%以下のポリビニルアルコールと、架橋剤と、光酸発生剤と、有機溶剤と、を含有する、感光性組成物。
<手段2> 前記色素が染料を含む、上記<手段1>に記載の感光性組成物。
<手段3> 前記ポリビニルアルコールの重合度が100~450である、上記<手段1>又は<手段2>に記載の感光性組成物。
<手段4> カラーフィルタ、ブラックマトリクス、ブラックスペーサー又はブラックバンクの形成用である、上記<手段1>~<手段3>のいずれか1に記載の感光性組成物。
<手段5> 前記架橋剤が、メチロール基、アルコキシメチル基及びグリシジル基よりなる群から選択される少なくとも1種を有する、上記<手段1>~<手段4>のいずれか1に記載の感光性組成物。
<手段6> 前記架橋剤が、ウリル誘導体、ユリア誘導体、イソシアヌレート誘導体及びメラミン誘導体よりなる群から選択される少なくとも1種である、上記<手段1>~<手段5>のいずれか1に記載の感光性組成物。
<手段7> 前記架橋剤の含有割合が、前記ポリビニルアルコール100質量部に対して、50質量部以下である、上記<手段1>~<手段6>のいずれか1に記載の感光性組成物。
<手段8> 前記光酸発生剤の波長365nmにおけるモル吸光係数が200mol-1・cm-1以上である、上記<手段1>~<手段7>のいずれか1に記載の感光性組成物。
<手段9> 前記光酸発生剤に放射線を照射することにより発生する酸の酸解離定数が-1以下である、上記<手段1>~<手段8>のいずれか1に記載の感光性組成物。
<手段10> 上記<手段1>~<手段9>のいずれか1に記載の感光性組成物に光を照射する工程と、光照射後の感光性組成物を150℃以下で加熱する工程と、を含む、硬化物の製造方法。
<手段11> 上記<手段1>~<手段9>のいずれか1に記載の感光性組成物が硬化されてなる着色硬化物。
<手段12> カラーフィルタ、ブラックマトリクス、ブラックスペーサー又はブラックバンクである、上記<手段11>の着色硬化物。
<手段13> 上記<手段11>又は<手段12>に記載の着色硬化物を備える、表示デバイス。
【実施例0091】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。以下に、各実施例及び比較例で用いた各成分を示す。
【0092】
1.感光性組成物の調製に用いた各成分について
<色素>
実施例及び比較例に用いた色素は表1のとおりである。色素には、山田化学工業社製の製品又は文献に記載の合成方法に準じて合成した公知の色材を用いた。
【0093】
【表1】
【0094】
CG-1、CG-2、CB-1及びCB-2はそれぞれ、以下の文献に記載の合成方法に準じて合成した。
CG-1:国際公開第2020/171060号
CG-2:国際公開第2013/108591号
CB-1:特開2016-45236号公報
CB-2:特許第5772263号公報
【0095】
CG-1、CG-2、CB-1、CB-2の化学構造は以下のとおりである。
【化8】
【0096】
RGB各色とも、国際電気標準会議(IEC)が定めた国際標準規格の色空間であるsRGBに合致するように色材を混合して使用した。
【0097】
<ポリビニルアルコール(PVA)>
実施例及び比較例に用いたPVAは以下のとおりである。PVAは、日本酢ビ・ポバール社の製品をそのまま用いた。それぞれのPVAの分子量、けん化度及び日本酢ビ・ポバール社の商品名を表2に示す。表2に記載のけん化度(加水分解率)及び重合度は、日本酢ビ・ポバール社のカタログに記載の値であるか、又は当該カタログに記載の重合度とけん化度とのマップから読み取った値である。
【0098】
【表2】
【0099】
<架橋剤>
実施例及び比較例に用いた架橋剤(CL-1)~(CL-5)は以下のとおりである。
(CL-1):テトラメトキシメチルグリコールウリル(CAS番号:17464-88-9)
(CL-2):メラミン・ホルムアルデヒド・アルキルモノアルコールの重縮合物(CAS番号:68002-20-0)
(CL-3):[4-(1-{4-[1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エチル]フェニル}-1-メチルエチル)フェノールとホルムアルデヒドの反応生成物]とメタノールの反応生成物(CAS番号:161679-94-3)
(CL-4):1,3,4,6-テトラグリシジルグリコールウリル、TG-G(商品名、四国化成社製)
(CL-5):トリグリシジルイソシアヌレート(CAS番号:2451-62-9)
【0100】
架橋剤(CL-1)~(CL-5)の化学構造は以下のとおりである。
【化9】
【0101】
<光酸発生剤(PAG)>
実施例及び比較例に用いた光酸発生剤(PAG-1)~(PAG-6)は以下のとおりである。
(PAG-1):(4-ヒドロキシ-1-ナフタレニル)ジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート(CAS番号:195057-83-1)
(PAG-2):(4-ヒドロキシ-1-ナフタレニル)ジメチルスルホニウムパーフルオロ-1-ブタンスルホナート、NDS-109(商品名、みどり化学社製)
(PAG-3):(4,7-ジヒドロキシ-1-ナフタレニル)ジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート(CAS番号:316821-98-4)
(PAG-4):(4,7-ジヒドロキシ-1-ナフタレニル)ジメチルスルホニウムパーフルオロ-1-ブタンスルホナート、NDS-169(商品名、みどり化学社製)
(PAG-5):(4,8-ジヒドロキシ-1-ナフタレニル)ジメチルスルホニウムトリフルオロメタンスルホナート(CAS番号:380848-57-7)
(PAG-6):CGI1907(商品名、BASF社製)
【0102】
光酸発生剤(PAG-1)~(PAG-6)の化学構造は以下のとおりである。
【化10】
【0103】
2.感光性組成物の調製
[実施例1]
色素としてFDG-003 8質量部、FDB-006 7質量部及びFDB-009 3質量部と、ポリビニルアルコール(PVA-5)50質量部と、架橋剤(CL-1)20質量部と、光酸発生剤(PAG-1)10質量部とを混合し、固形分濃度が15質量%となるようにシクロヘキサノンを加えて混合し、感光性組成物(R-1)を調製した。
【0104】
[実施例2~36及び比較例1~18]
各固形分(色素、重合体(PVA)、架橋剤及び光酸発生剤)の組成比を表3及び表4に示すとおりとしたこと以外は実施例1と同様にして、実施例2~36の感光性組成物(R-2)~(R-11)、(G-1)~(G-11)、(B-1)~(B-11)及び(BLK-1)~(BLK-3)、並びに比較例1~18の感光性組成物(R-12)~(R-17)、(G-12)~(G-17)及び(B-12)~(B-17)をそれぞれ調製した。なお、(BLK-1)~(BLK-3)以外はいずれの組成物も、固形分濃度が15質量%のシクロヘキサノン溶液となるように調製した。(BLK-1)~(BLK-3)は、固形分濃度が12質量%の1-メトキシ-2-プロパノール溶液となるように調製した。
【0105】
3.評価
実施例1~36により調製した感光性組成物(R-1)~(R-11)、(G-1)~(G-11)、(B-1)~(B-11)及び(BLK-1)~(BLK-3)、並びに比較例1~18により調製した感光性組成物(R-12)~(R-17)、(G-12)~(G-17)及び(B-12)~(B-17)を用いて、以下の評価を実施した。結果を表3及び表4に示す。評価は、特に記載のない限り、23℃、湿度55%の雰囲気下で行った。
【0106】
[配合物の溶解性]
原材料を配合して調製した感光性組成物が均一な溶液となっているかどうかを目視で観察した。完全に均一な溶液が得られた場合を「A」とし、透明な組成物であるが、溶液中にわずかにゲル状の透明成分が浮遊していることが認められるものの、溶液を60℃で加熱することにより均一な溶液が得られた場合を「B」とし、透明な組成物であるが、調製した容器の底部にゲル状の透明成分が明らかに認められ、組成物を60℃で加熱しても均一な溶液が得られなかった場合を「C」として判定した。A及びBが実用可能である。なお、配合物の溶解性の評価においてCと判定された例については、以降の評価(露光部の溶剤耐性、未露光部の現像性、パターン解像性)を実施しなかった。
【0107】
[露光部の溶剤耐性]
感光性組成物を孔径0.5μmミリポアフィルタでろ過し、スピンコーターで9.5cm角のイーグルXGガラス基板上に塗布した後、85℃のホットプレート上で70秒間加熱(プレベーク)して、厚さ2.5μmの塗膜を得た。得られた塗膜に対し、露光量を100mJ/cmとして、365nm以上の波長の放射線を照射した。放射線の照射後、塗膜を備える基板を100℃のホットプレート上で5分間加熱(ポストベーク)し、塗膜の硬化促進を試みた。加熱後、塗膜を備える基板を120秒間アルカリ現像液に浸漬した。アルカリ現像液に浸漬した後、150℃のオーブン内で10分間加熱(ポストベーク)した。その後、カラーアナライザー(大塚電子株式会社製MCPD2000)を用い、C光源、2度視野にて、CIE表色系における色度座標値(x,y)及び刺激値(Y)を測定した。加熱後の基板をシクロヘキサノンに30分浸漬した後、再度カラーアナライザー(大塚電子株式会社製MCPD2000)を用い、C光源、2度視野にて、CIE表色系における色度座標値(x,y)及び刺激値(Y)を測定し、シクロヘキサノンに浸漬する前後での色変化、すなわちΔE*abを求めた。ΔE*abが2.3未満の場合を「A」、2.3以上3.0未満の場合を「B」、3.0以上の場合を「C」として評価し、その結果を表3及び表4に示す。ΔE*abが小さいほど、溶剤耐性が高いといえる。
【0108】
[未露光部の膜の現像性]
感光性組成物を孔径0.5μmミリポアフィルタでろ過し、スピンコーターで9.5cm角のイーグルXGガラス基板上に塗布した後、85℃のホットプレート上で5分間加熱して、厚さ2.5μmの塗膜を得た。続いて、加熱後の塗膜が積層された基板をアルカリ現像液に浸漬し、塗膜が完全に現像されて基板表面が露出するまでの時間を測定した。基板表面が露出するまでの時間が60秒未満の場合を「A」とし、60秒以上90秒未満の場合を「B」とし、90秒以上120秒未満の場合を「C」とし、120秒以上で基板表面が露出するか、又は120秒以上経過しても塗膜が溶け残り、基板表面が露出しなかった場合を「D」として判定した。A及びBは実用可能であり、Cは実用面でやや劣り、Dは実用面で劣る。
【0109】
[パターン解像性]
感光性組成物を孔径0.5μmミリポアフィルタでろ過し、スピンコーターで9.5cm角のイーグルXGガラス基板上に塗布した後、85℃のホットプレート上で70秒間加熱して厚さ2.5μmの塗膜を得た。得られた塗膜に対し、フォトマスクを介して、波長365nmの露光量を100mJ/cmとして、365nm以上の波長の放射線を照射した。放射線の照射後、塗膜を備える基板を100℃のホットプレート上で5分間加熱した。加熱後、塗膜を備える基板を120秒間アルカリ現像液に浸漬して未露光部を除去し、基板表面に露光硬化した凸部からなるパターンを形成した。
10μm未満の線幅のラインアンドスペースを解像できた場合を「A」とし、10μm未満の線幅のラインアンドスペースは解像できなかったが、10μm以上20μm未満の線幅のラインアンドスペースを解像できた場合を「B」とし、20μm未満の線幅のラインアンドスペースは解像できなかったが、20μm以上30μm未満の線幅のラインアンドスペースを解像できた場合を「C」とし、30μm未満の線幅のラインアンドスペースを解像できなかった場合を「D」として判定した。A及びBは実用可能であり、Cは実用面でやや劣り、Dは実用面で劣る。
【0110】
【表3】
【0111】
【表4】
【0112】
表3に示されるように、実施例1~34の感光性組成物は、全ての評価において実用可能なレベルであり、良好な結果を得ることができた。また、実施例35の感光性組成物は、配合物の溶解性、露光部の溶剤耐性及び非露光部の現像性の評価において実用可能なレベルであり、実施例36の感光性組成物は、配合物の溶解性、露光部の溶剤耐性及びパターン解像性の評価において実用可能なレベルであり、いずれも良好な結果を得ることができた。これに対し、比較例1~18の感光性組成物は、表4に示されるように、配合物の溶解性及び露光部の溶剤耐性のうち一方又は両方の評価項目において「C」であり(比較例1~4、7~10、13~16については配合物の溶解性が「C」のため、他の評価を実施せず)、実施例1~36よりも劣っていた。
【0113】
表3及び表4の結果について、以下考察する。
まず、使用するポリビニルアルコールについて検討すると、感光性組成物の調製に用いたポリビニルアルコール(PVA-1)~(PVA-9)のうち、(PVA-5)が最も良好な評価結果となった。(PVA-1)~(PVA-4)はけん化度(加水分解率)が相対的に高い、すなわちエステル基含有量が相対的に少なく、水酸基量が相対的に多いため、有機溶剤に溶解しにくい結果になったと考えられる。(PVA-6)は、けん化度は(PVA-5)と同等であるものの重合度が高いため、(PVA-5)と比較すると、有機溶剤への溶解性がわずかに低下する結果になったと考えられる。(PVA-7)は、(PVA-5)と同等の重合度であるもののけん化度が相対的に低く、(PVA-5)と比較すると、露光部の溶剤耐性がわずかに低下する結果になったと考えられる。(PVA-8)及び(PVA-9)は、けん化度が2モル%と低いため、有機溶剤への溶解性は良好であったが、その分、架橋に関与する水酸基が少ないため架橋不足となり、その結果、露光部の溶剤耐性が十分でない結果になったと考えられる。まとめると、(PVA-5)~(PVA-7)にて実用可能な感光性組成物を得ることができた。
【0114】
次に、使用する架橋剤について検討すると、架橋剤(CL-1)~(CL-5)のうち、(CL-1)~(CL-3)を含む感光性組成物では、露光部の溶剤耐性が良好であった。これは、(CL-1)~(CL-3)は有機溶剤への溶解性に優れ均一な溶液を得ることができるとともに、架橋性(低温硬化性)に優れるためと考えられる。架橋剤(CL-4)及び(CL-5)は、溶解性には優れるものの、(CL-1)~(CL-3)対比で硬化性がやや劣ったが、実用可能なレベルであった。
【0115】
光酸発生剤について検討すると、感光性組成物の調製に用いた光酸発生剤(PAG-1)~(PAG-6)はいずれも、室温(25℃)でのシクロヘキサノンに対する溶解性が0.02モル/L以上であり、かつ365nmにおけるモル吸光係数が200mol-1・cm-1以上である。このような光酸発生剤(PAG-1)~(PAG-6)を用いることによって、得られた感光性組成物は均一な溶液であり、また、得られた塗膜は365nm光に感光して硬化し、優れた溶剤耐性を有する硬化パターンを得ることができた。
【0116】
また、実施例34のように、配合される色素量が多い組成では、現像液に対してより溶解しやすいイオン性のPAG-1と、より高感度の非イオン性のPAG-6とを併用することによって未露光部の現像性とパターン解像性とがバランス良く改善されたと考えられる。一方、実施例35のように、現像液に対してより溶解しやすいイオン性のPAG-1を単独で用いた場合には、未露光部の現像性は良好なものの、パターン解像性がやや劣る結果となった。また、実施例36のように、より高感度の非イオン性のPAG-6を単独で用いた場合には、未露光部の現像性がやや劣る結果となった。