(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168209
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】燃料電池車両の統合熱管理システム
(51)【国際特許分類】
B60K 8/00 20060101AFI20231116BHJP
B60H 1/22 20060101ALI20231116BHJP
B60L 50/75 20190101ALI20231116BHJP
B60L 3/00 20190101ALI20231116BHJP
B60L 58/33 20190101ALI20231116BHJP
B60L 58/27 20190101ALI20231116BHJP
B60L 58/26 20190101ALI20231116BHJP
B60L 58/34 20190101ALI20231116BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20231116BHJP
B60K 11/04 20060101ALI20231116BHJP
H01M 8/00 20160101ALI20231116BHJP
H01M 8/04014 20160101ALI20231116BHJP
H01M 8/04 20160101ALI20231116BHJP
【FI】
B60K8/00
B60H1/22 611Z
B60H1/22 651C
B60L50/75
B60L3/00 H
B60L58/33
B60L58/27
B60L58/26
B60L58/34
B60K1/04 Z
B60K11/04 G
H01M8/00 A
H01M8/00 Z
H01M8/04014
H01M8/04 J
【審査請求】未請求
【請求項の数】29
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022185290
(22)【出願日】2022-11-18
(31)【優先権主張番号】10-2022-0058495
(32)【優先日】2022-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(71)【出願人】
【識別番号】591251636
【氏名又は名称】現代自動車株式会社
【氏名又は名称原語表記】HYUNDAI MOTOR COMPANY
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(71)【出願人】
【識別番号】500518050
【氏名又は名称】起亞株式会社
【氏名又は名称原語表記】KIA CORPORATION
【住所又は居所原語表記】12, Heolleung-ro, Seocho-gu, Seoul, Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム, キ モク
(72)【発明者】
【氏名】イ, サン シン
(72)【発明者】
【氏名】オ,マン ジュ
(72)【発明者】
【氏名】イ, グォン ボク
(72)【発明者】
【氏名】チェ, ゼ ヒョク
【テーマコード(参考)】
3D038
3D235
3L211
5H125
5H127
【Fターム(参考)】
3D038AB01
3D038AC22
3D235AA01
3D235BB21
3D235CC15
3D235CC22
3D235FF38
3D235FF43
3D235HH02
3D235HH16
3L211AA13
3L211BA02
3L211BA21
3L211CA18
3L211CA19
3L211DA27
3L211DA28
3L211DA29
3L211DA50
3L211FA21
3L211GA27
3L211GA28
3L211GA49
5H125AA01
5H125AC07
5H125AC12
5H125BC19
5H125BD04
5H125CD06
5H125CD08
5H125CD09
5H125FF24
5H125FF26
5H125FF27
5H127AB04
5H127AB29
5H127BA02
5H127BB02
5H127CC07
5H127FF04
5H127FF06
5H127FF07
(57)【要約】
【課題】室内空調用冷媒、電子部品用冷却水、燃料電池用冷却水、バッテリー用冷却水及びバッテリー用冷媒を統合システムとして構成し、様々な熱交換モードを実現して車両の全般的なエネルギー効率を向上させることができる燃料電池車両の統合熱管理システムを提供する。
【解決手段】本発明の燃料電池車両の統合熱管理システムは、燃料電池、バッテリーチラー及び統合チラーを第1冷却水が循環する燃料電池冷却水ライン、第1圧縮機、室内コンデンサー、室外熱交換器及び統合チラーを冷媒が循環する室内空調冷媒ライン、及び第2圧縮機、室外コンデンサー及びバッテリーチラーを冷媒が循環するバッテリー冷媒ラインを含む。
燃料電池冷却水ラインにおいて、バッテリーチラーは、燃料電池と統合チラーとの間に第1バルブを介して並列に連結され、第2バルブを介して燃料電池に燃料電池ラジエータが並列に連結されることを特徴とする。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水素と空気を介して電力を生産する燃料電池、バッテリーと冷却水を介して熱交換されるバッテリーチラー及び統合チラーを第1冷却水が循環する燃料電池冷却水ライン、
冷媒を吸入して圧縮する第1圧縮機、室内空調装置に設けられて温風を生成して室内へ供給する室内コンデンサー、外気と冷媒を熱交換する室外熱交換器及び統合チラーを冷媒が循環する室内空調冷媒ライン、及び
冷媒を吸入して圧縮する第2圧縮機、圧縮された冷媒を外気と熱交換して放熱する室外コンデンサー及びバッテリーチラーを冷媒が循環するバッテリー冷媒ライン、を含むことを特徴とする燃料電池車両の統合熱管理システム。
【請求項2】
燃料電池冷却水ラインにおいて、バッテリーチラーは、燃料電池と統合チラーとの間に第1バルブを介して並列に連結されたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両の統合熱管理システム。
【請求項3】
燃料電池冷却水ラインには、第2バルブを介して燃料電池に燃料電池ラジエータが並列に連結され、
バッテリーチラーとバッテリーを第2冷却水が循環するバッテリー冷却水ライン、をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両の統合熱管理システム。
【請求項4】
車両電子部品と統合チラーを第3冷却水が循環する電子部品冷却水ライン、をさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両の統合熱管理システム。
【請求項5】
電子部品冷却水ラインには、第3バルブを介して車両電子部品に電子部品ラジエータが並列に連結されたことを特徴とする請求項4に記載の燃料電池車両の統合熱管理システム。
【請求項6】
統合チラーは、冷媒ラインにおいて第4バルブを介して並列に連結された電子部品チラーと燃料電池チラーで構成され、電子部品チラーは、電子部品冷却水ラインに連結され、燃料電池チラーは、燃料電池冷却水ラインに連結されたことを特徴とする請求項4に記載の燃料電池車両の統合熱管理システム。
【請求項7】
室内空調冷媒ラインの室外熱交換器と第1圧縮機との間には、統合チラーと蒸発器が並列に連結されたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両の統合熱管理システム。
【請求項8】
統合チラーは、直列に連結された燃料電池チラーと電子部品チラーで構成され、電子部品チラーは電子部品冷却水ラインに連結され、燃料電池チラーは燃料電池冷却水ラインに連結され、統合チラーの上流地点には第5バルブが設けられ、冷媒ラインには、室内コンデンサーと室外熱交換器との間から分岐して第5バルブに合流する分岐ラインが設けられたことを特徴とする請求項4に記載の燃料電池車両の統合熱管理システム。
【請求項9】
第5バルブには、統合チラーをバイパスするバイパスラインが連結され、バイパスラインは、第1圧縮機の上流地点で室内空調冷媒ラインに合流することを特徴とする請求項8に記載の燃料電池車両の統合熱管理システム。
【請求項10】
燃料電池チラーは、電子部品チラーよりも上流地点に設けられ、燃料電池チラーから吐出された冷媒が電子部品チラーへ導入されることを特徴とする請求項8に記載の燃料電池車両の統合熱管理システム。
【請求項11】
燃料電池冷却水ラインの冷却水は、燃料電池、バッテリーチラー、統合チラーの順に冷却水が流れることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両の統合熱管理システム。
【請求項12】
室内空調冷媒ラインにおける、第1圧縮機と室内空調装置の室内コンデンサーとの間には、冷媒ヒーターが設けられたことを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両の統合熱管理システム。
【請求項13】
燃料電池冷却モードでは、第1圧縮機と第2圧縮機の両方が稼働され、燃料電池冷却水ラインにおいて燃料電池を流れた冷却水がバッテリーチラーと統合チラーによって冷却されることを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両の統合熱管理システム。
【請求項14】
室内暖房モードでは、第1圧縮機が稼働され、室内空調冷媒ラインにおいて室内コンデンサーを流れた冷媒が室外熱交換器と統合チラーを介して吸熱することを特徴とする請求項1に記載の燃料電池車両の統合熱管理システム。
【請求項15】
バッテリー昇温モードでは、バッテリー冷却水ラインが循環し、燃料電池冷却水ラインにおいて燃料電池を流れた冷却水がバッテリーチラーを介して放熱することを特徴とする請求項3に記載の燃料電池車両の統合熱管理システム。
【請求項16】
燃料電池冷却モードでは、第1圧縮機と第2圧縮機の両方が稼働され、燃料電池冷却水ラインにおいて燃料電池を流れた冷却水がバッテリーチラーと燃料電池チラーによって冷却されることを特徴とする請求項6に記載の燃料電池車両の統合熱管理システム。
【請求項17】
室内暖房モードでは、第1圧縮機が稼働され、室内空調冷媒ラインにおいて室内コンデンサーを流れた冷媒が室外熱交換器を介して吸熱し、第4バルブによって燃料電池チラーを流れて吸熱することを特徴とする請求項6に記載の燃料電池車両の統合熱管理システム。
【請求項18】
室内暖房モードでは、第1圧縮機が稼働され、室内空調冷媒ラインにおいて室内コンデンサーを流れた冷媒が室外熱交換器を介して吸熱し、第4バルブによって電子部品チラーを流れて吸熱し、燃料電池冷却水ラインにおいて燃料電池を流れた冷却水がバッテリーチラーを介して放熱することを特徴とする請求項6に記載の燃料電池車両の統合熱管理システム。
【請求項19】
室内暖房モードでは、第1圧縮機が稼働され、室内空調冷媒ラインにおいて室内コンデンサーを流れた冷媒の一部が室外熱交換器を介して吸熱し、残りが分岐ラインと第5バルブを介して燃料電池チラーと電子部品チラーへ流れて吸熱することを特徴とする請求項9に記載の燃料電池車両の統合熱管理システム。
【請求項20】
室内暖房モードで燃料電池の昇温が必要な場合、燃料電池チラーでは冷媒が膨張せず、電子部品チラーで冷媒が膨張することを特徴とする請求項19に記載の燃料電池車両の統合熱管理システム。
【請求項21】
水素と空気を介して電力を生産する燃料電池と統合チラーを第1冷却水が循環する燃料電池冷却水ライン、
冷媒を吸入して圧縮する第1圧縮機、室内空調装置に設けられて温風を生成して室内へ供給する室内コンデンサー、外気と冷媒を熱交換する室外熱交換器及び統合チラーを冷媒が循環する室内空調冷媒ライン、
バッテリーと冷却水を介して熱交換されるバッテリーチラー、及び
冷媒を吸入して圧縮する第2圧縮機、圧縮された冷媒を外気と熱交換して放熱する室外コンデンサー及びバッテリーチラーを冷媒が循環するバッテリー冷媒ライン、を含むことを特徴とする燃料電池車両の統合熱管理システム。
【請求項22】
車両電子部品と統合チラーを第3冷却水が循環する電子部品冷却水ラインをさらに含むことを特徴とする請求項21に記載の燃料電池車両の統合熱管理システム。
【請求項23】
統合チラーは、直列に連結された燃料電池チラーと電子部品チラーで構成され、電子部品チラーは電子部品冷却水ラインに連結され、燃料電池チラーは燃料電池冷却水ラインに連結され、統合チラーの上流地点には第5バルブが設けられ、冷媒ラインには室内コンデンサーと室外熱交換器との間から分岐して第5バルブに合流する分岐ラインが設けられたことを特徴とする請求項22に記載の燃料電池車両の統合熱管理システム。
【請求項24】
第5バルブには、統合チラーをバイパスするバイパスラインが連結され、バイパスラインは、第1圧縮機の上流地点で室内空調冷媒ラインに合流することを特徴とする請求項23に記載の燃料電池車両の統合熱管理システム。
【請求項25】
燃料電池チラーは、電子部品チラーよりも上流地点に設けられ、燃料電池チラーから吐出された冷媒が電子部品チラーに導入されることを特徴とする請求項23に記載の燃料電池車両の統合熱管理システム。
【請求項26】
室内暖房モードでは、第1圧縮機が稼働され、室内空調冷媒ラインにおいて室内コンデンサーを流れた冷媒の一部が室外熱交換器を介して吸熱し、残りが分岐ラインと第5バルブを介して燃料電池チラーと電子部品チラーへ流れて吸熱することを特徴とする請求項23に記載の燃料電池車両の統合熱管理システム。
【請求項27】
室内暖房モードで燃料電池の昇温が必要な場合、燃料電池チラーでは冷媒が膨張せず、電子部品チラーで冷媒が膨張することを特徴とする請求項26に記載の燃料電池車両の統合熱管理システム。
【請求項28】
室内空調冷媒ラインにおける、第1圧縮機と室内空調装置の室内コンデンサーとの間には、冷媒ヒーターが設けられ、室内暖房モードで燃料電池の昇温が必要な場合、冷媒ヒーターが稼働され、燃料電池チラーでは冷媒が膨張せず、電子部品チラーで冷媒が膨張することを特徴とする請求項26に記載の燃料電池車両の統合熱管理システム。
【請求項29】
統合チラーは、冷媒ラインにおいて第4バルブを介して並列に連結された電子部品チラーと燃料電池チラーで構成され、電子部品チラーは電子部品冷却水ラインに連結され、燃料電池チラーは燃料電池冷却水ラインに連結されたことを特徴とする請求項22に記載の燃料電池車両の統合熱管理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池車両の統合熱管理システムに係り、より詳しくは、室内空調用冷媒、電子部品用冷却水、燃料電池用冷却水、バッテリー用冷却水及びバッテリー用冷媒を統合システムとして構成し、様々な熱交換モードを実現して車両の全般的なエネルギー効率を向上させることができる燃料電池車両の統合熱管理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
最近、内燃機関車両の環境的なイシューにより、電気自動車や燃料電池自動車などの環境に優しい車両の普及が拡大する傾向にある。
従来の内燃機関車両の場合、エンジンの廃熱を利用して室内を暖房することができるため、別途の暖房のためのエネルギーが不要であった。しかし、電気自動車や燃料電池自動車などの環境にやさしい車両の場合は、エンジンなどの熱源がないため、別途のエネルギーを介して暖房を行わなければならず、これにより電費が低下するという問題が生じた。
したがって、電気自動車や燃料電池自動車などの環境にやさしい車両の空気調和装置には、内燃機関車両の空気調和装置とは異なる方式のヒートポンプシステムが適用されている。
一般に、ヒートポンプシステム(Heat pump system)は、冷媒の発熱又は凝縮熱を用いて低温の熱源を高温に伝達することにより、暖房時には、外部熱ないし廃熱を吸収して室内へ放出する冷暖房システムである。
しかし、電気自動車や燃料電池自動車などの環境にやさしい車両は、空気調和装置に加えて、バッテリー、モーターなどの電装部品に対する熱管理ニーズも新たに追加された。特に、燃料電池自動車の場合には、燃料電池スタックに対する熱管理ニーズも追加される。
【0003】
つまり、電気自動車や燃料電池自動車などの環境にやさしい車両に適用される室内空間、バッテリー、電装部品及び燃料電池スタックの場合、それぞれ空調に対するニーズが異なり、これらを独立して対応しながらも効率よく協働してエネルギーを最大限に節約することができる技術が必要である。これにより、それぞれの構成に対して独立して熱管理を行いながら同時に全体的な車両の熱管理を統合して熱効率を増大させるために、車両の統合熱管理概念が必要である。
このような車両の統合熱管理が行われるためには、複雑な冷却水ライン、冷媒ライン及び部品を統合してモジュール化する必要があるが、複数の部品をモジュール化しながらも製造が簡単であり、パッケージ的な面でもコンパクトなモジュール化の概念が必要である。
【0004】
一方、ヒートポンプシステムが適用される車両の統合熱管理システムには、例えば外気温度が低い場合など、ヒートポンプシステムがスムーズに作動しない場合に備えて、バッテリーの昇温のために水加熱ヒーターを冷却水ラインに具備し、室内空間の暖房のために空気加熱ヒーターを冷媒ラインに具備するなど、様々な方式のヒーターを別途備えて車両の統合熱管理回路に適用している。
しかし、バッテリーの昇温のための水加熱ヒーター及び室内暖房のための空気加熱ヒーターを別途備えることは、熱管理の面でも効率的ではなく、部品の数も増加するため、統合熱管理回路の概念を介して部品の数を減らす方案が必要である。
上記の背景技術として説明された事項は、本発明の背景に対する理解を増進するためのものに過ぎず、当該技術分野における通常の知識を有する者に既に知られている従来技術に該当することを認めるものと受け入れられてはならないだろう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】韓国公開特許第10-2020-0145880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、かかる問題点を解決するために提案されたもので、その目的は、室内空調用冷媒、電子部品用冷却水、燃料電池用冷却水、バッテリー用冷却水及びバッテリー用冷媒を統合システムとして構成し、様々な熱交換モードを実現して車両の全般的なエネルギー効率を向上させることができる燃料電池車両の統合熱管理システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するための本発明による燃料電池車両の統合熱管理システムは、水素と空気を介して電力を生産する燃料電池、バッテリーと冷却水を介して熱交換されるバッテリーチラー及び統合チラーを第1冷却水が循環する燃料電池冷却水ライン、冷媒を吸入して圧縮する第1圧縮機、室内空調装置に設けられて温風を生成して室内へ供給する室内コンデンサー、外気と冷媒を熱交換する室外熱交換器及び統合チラーを冷媒が循環する室内空調冷媒ライン、及び冷媒を吸入して圧縮する第2圧縮機、圧縮された冷媒を外気と熱交換して放熱する室外コンデンサー及びバッテリーチラーを冷媒が循環するバッテリー冷媒ライン、を含む。
【0008】
燃料電池冷却水ラインにおいて、バッテリーチラーは、燃料電池と統合チラーとの間に第1バルブを介して並列に連結されることができる。
燃料電池冷却水ラインには、第2バルブを介して燃料電池に燃料電池ラジエータが並列に連結され、バッテリーチラーとバッテリーを第2冷却水が循環するバッテリー冷却水ラインをさらに含むことができる。
車両電子部品と統合チラーを第3冷却水が循環する電子部品冷却水ラインをさらに含むことができる。
電子部品冷却水ラインには、第3バルブを介して車両電子部品に電子部品ラジエータが並列に連結されることができる。
統合チラーは、冷媒ラインにおいて第4バルブを介して並列に連結された電子部品チラーと燃料電池チラーで構成され、電子部品チラーは、電子部品冷却水ラインに連結され、燃料電池チラーは、燃料電池冷却水ラインに連結されることができる。
室内空調冷媒ラインの室外熱交換器と第1圧縮機との間には、統合チラーと蒸発器が並列に連結されることができる。
【0009】
統合チラーは、直列連結された燃料電池チラーと電子部品チラーで構成され、電子部品チラーは電子部品冷却水ラインに連結され、燃料電池チラーは燃料電池冷却水ラインに連結され、統合チラーの上流地点には第5バルブが設けられ、冷媒ラインには室内コンデンサーと室外熱交換器との間から分岐して第5バルブに合流する分岐ラインが設けられることができる。
第5バルブには、統合チラーをバイパスするバイパスラインが連結され、バイパスラインは、圧縮機の上流地点で室内空調冷媒ラインに合流することができる。
燃料電池チラーは、電子部品チラーよりも上流地点に設けられ、燃料電池チラーから吐出された冷媒が電子部品チラーへ導入されることができる。
燃料電池冷却水ラインの冷却水は、燃料電池、バッテリーチラー、統合チラーの順に冷却水が流れることができる。
室内空調冷媒ラインにおける、第1圧縮機と室内空調装置の室内コンデンサーとの間には、冷媒ヒーターが設けられることができる。
燃料電池冷却モードでは、第1圧縮機と第2圧縮機の両方が稼働され、燃料電池冷却水ラインにおいて燃料電池を流れた冷却水がバッテリーチラーと統合チラーによって冷却されることができる。
【0010】
室内暖房モードでは、第1圧縮機が稼働され、室内空調冷媒ラインにおいて室内コンデンサーを流れた冷媒が室外熱交換器と統合チラーを介して吸熱することができる。
バッテリー昇温モードでは、バッテリー冷却水ラインが循環し、燃料電池冷却水ラインにおいて燃料電池を流れた冷却水がバッテリーチラーを介して放熱することができる。
燃料電池冷却モードでは、第1圧縮機と第2圧縮機の両方が稼働され、燃料電池冷却水ラインにおいて燃料電池を流れた冷却水がバッテリーチラーと燃料電池チラーによって冷却されることができる。
室内暖房モードでは、第1圧縮機が稼働され、室内空調冷媒ラインにおいて室内コンデンサーを流れた冷媒が室外熱交換器を介して吸熱し、第4バルブによって燃料電池チラーを流れて吸熱することができる。
室内暖房モードでは、第1圧縮機が稼働され、室内空調冷媒ラインにおいて室内コンデンサーを流れた冷媒が室外熱交換器を介して吸熱し、第4バルブによって電子部品チラーを流れて吸熱し、燃料電池冷却水ラインにおいて燃料電池を流れた冷却水がバッテリーチラーを介して放熱することができる。
室内暖房モードでは、第1圧縮機が稼働され、室内空調冷媒ラインにおいて室内コンデンサーを流れた冷媒の一部が室外熱交換器を介して吸熱し、残りが分岐ラインと第5バルブを介して燃料電池チラーと電子部品チラーへ流れて吸熱することができる。
室内暖房モードで燃料電池の昇温が必要な場合、燃料電池チラーでは冷媒が膨張せず、電子部品チラーで冷媒が膨張することができる。
【0011】
本発明による別の燃料電池車両の統合熱管理システムは、水素と空気を介して電力を生産する燃料電池と統合チラーを第1冷却水が循環する燃料電池冷却水ライン、冷媒を吸入して圧縮する第1圧縮機、室内空調装置に設けられて温風を生成して室内へ供給する室内コンデンサー、外気と冷媒を熱交換する室外熱交換器及び統合チラーを冷媒が循環する室内空調冷媒ライン、バッテリーと冷却水を介して熱交換されるバッテリーチラー、及び冷媒を吸入して圧縮する第2圧縮機、圧縮された冷媒を外気と熱交換して放熱する室外コンデンサー及びバッテリーチラーを冷媒が循環するバッテリー冷媒ライン、を含む。
また、本発明は、車両電子部品と統合チラーを第3冷却水が循環する電子部品冷却水ライン、をさらに含むことができる。
統合チラーは、直列に連結された燃料電池チラーと電子部品チラーで構成され、電子部品チラーは電子部品冷却水ラインに連結され、燃料電池チラーは燃料電池冷却水ラインに連結され、統合チラーの上流地点には第5バルブが設けられ、冷媒ラインには室内コンデンサーと室外熱交換器との間から分岐して第5バルブに合流する分岐ラインが設けられることができる。
【0012】
第5バルブには、統合チラーをバイパスするバイパスラインが連結され、バイパスラインは、第1圧縮機の上流地点で室内空調冷媒ラインに合流することができる。
燃料電池チラーは、電子部品チラーよりも上流地点に設けられ、燃料電池チラーから吐出された冷媒が電子部品チラーに導入されることができる。
室内暖房モードでは、第1圧縮機が稼働され、室内空調冷媒ラインにおいて室内コンデンサーを流れた冷媒の一部が室外熱交換器を介して吸熱し、残りが分岐ラインと第5バルブを介して燃料電池チラーと電子部品チラーへ流れて吸熱することができる。
室内暖房モードで燃料電池の昇温が必要な場合、燃料電池チラーでは冷媒が膨張せず、電子部品チラーで冷媒が膨張することができる。
室内空調冷媒ラインにおける、第1圧縮機と室内空調装置の室内コンデンサーとの間には冷媒ヒーターが設けられ、室内暖房モードで燃料電池の昇温が必要な場合、冷媒ヒーターが稼働され、燃料電池チラーでは冷媒が膨張せず、電子部品チラーで冷媒が膨張することができる。
統合チラーは、冷媒ラインにおいて第4バルブを介して並列に連結された電子部品チラーと燃料電池チラーで構成され、電子部品チラーは電子部品冷却水ラインに連結され、燃料電池チラーは燃料電池冷却水ラインに連結されることができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の燃料電池車両の統合熱管理システムによれば、室内空調用冷媒、電子部品用冷却水、燃料電池用冷却水、バッテリー用冷却水及びバッテリー用冷媒を統合システムとして構成し、様々な熱交換モードを実現して車両の全般的なエネルギー効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施形態による燃料電池車両の統合熱管理システムの動作を示す図である。
【
図2】本発明の第1実施形態による燃料電池車両の統合熱管理システムの動作を示す図である。
【
図3】本発明の第1実施形態による燃料電池車両の統合熱管理システムの動作を示す図である。
【
図4】本発明の第2実施形態による燃料電池車両の統合熱管理システムを示す図である。
【
図5】本発明の第3実施形態による燃料電池車両の統合熱管理システムの動作を示す図である。
【
図6】本発明の第3実施形態による燃料電池車両の統合熱管理システムの動作を示す図である。
【
図7】本発明の第3実施形態による燃料電池車両の統合熱管理システムの動作を示す図である。
【
図8】本発明の第4実施形態による燃料電池車両の統合熱管理システムの動作を示す図である。
【
図9】本発明の第4実施形態による燃料電池車両の統合熱管理システムの動作を示す図である。
【
図10】本発明の第4実施形態による燃料電池車両の統合熱管理システムの動作を示す図である。
【
図11】本発明の第4実施形態による燃料電池車両の統合熱管理システムの動作を示す図である。
【
図12】本発明の第5実施形態による燃料電池車両の統合熱管理システムの動作を示す図である。
【
図13】本発明の第5実施形態による燃料電池車両の統合熱管理システムの動作を示す図である。
【
図14】本発明の第6実施形態による燃料電池車両の統合熱管理システムの動作を示す図である。
【
図15】本発明の第7実施形態による燃料電池車両の統合熱管理システムの動作を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1乃至
図3は、本発明の第1実施形態による燃料電池車両の統合熱管理システムの動作を示す図であり、
図4は、本発明の第2実施形態による燃料電池車両の統合熱管理システムを示す図であり、
図5乃至
図7は、本発明の第3実施形態による燃料電池車両の統合熱管理システムの動作を示す図であり、
図8乃至
図11は、本発明の第4実施形態による燃料電池車両の統合熱管理システムの動作を示す図である。
また、
図12及び
図13は、本発明の第5実施形態による燃料電池車両の統合熱管理システムの動作を示す図であり、
図14は、本発明の第6実施形態による燃料電池車両の統合熱管理システムの動作を示す図であり、
図15は、本発明の第7実施形態による燃料電池車両の統合熱管理システムの動作を示す図である。
【0016】
本発明は、燃料電池が設けられた車両の統合熱管理に関するものであって、基本的に車両の駆動力生成のために燃料電池310が設けられる。燃料電池は、水素と空気中の酸素とを反応して電気エネルギーを生成し、これは、発熱反応であるため、冷却水などによる冷却が必要である。一方、特殊な場合であって、冬季の長期駐車などで燃料電池の冷却水と膜電極などが凍結した場合には、冷始動が必要である。このために、燃料電池は、冷始動の際に初期の速い昇温が必要である。
また、このような車両には高電圧バッテリーが装着され、燃料電池310の発電電力はモーターを駆動するか或いはバッテリー410に充電され、場合に応じては、バッテリーを用いたモーターリングも可能である。よって、バッテリー410の場合は、夏季には冷却が必要であり、冬季には昇温が必要であり、モーター駆動のための電子部品等は、冷却水などを用いたマイルドな冷却が必要である。
冬季には車室内空間の暖房も必要であるので、この場合には、電子部品210の廃熱又は燃料電池310の廃熱又は外気の熱を吸収し、ヒートポンプシステムを介して暖房効率を上昇させることも必要である。
このように、燃料電池、モーター及びバッテリーが適用された燃料電池車両の場合には、様々な構成の冷暖房要求を全て同時に満足させることができなければならず、このようなシステムの統合を介して車両の全体的な熱管理を統合することにより、熱効率と電費を向上させる。
【0017】
具体的には、
図1は、本発明の第1実施形態による熱管理システムを示す図である。本発明による燃料電池車両の統合熱管理システムは、水素と空気を介して電力を生産する燃料電池310、バッテリー410と冷却水を介して熱交換されるバッテリーチラー420及び統合チラー600を第1冷却水が循環する燃料電池冷却水ライン30、冷媒を吸入して圧縮する第1圧縮機110、室内空調装置に設けられて温風を生成して室内へ供給する室内コンデンサー120、外気と冷媒を熱交換する室外熱交換器140及び統合チラー600を冷媒が循環する室内空調冷媒ライン10、及び冷媒を吸入して圧縮する第2圧縮機510、圧縮された冷媒を外気と熱交換して放熱する室外コンデンサー520及びバッテリーチラー420を冷媒が循環するバッテリー冷媒ライン50を含む。
燃料電池冷却水ライン30には、燃料電池310とポンプ330が連結される。そして、燃料電池310には、並列に燃料電池ラジエータ320が設けられることができる。すなわち、燃料電池冷却水ラインには、第2バルブ381を介して燃料電池310に燃料電池ラジエータ320が並列に連結(31)されることにより、燃料電池310の廃熱が必要でない場合、燃料電池310は、第2バルブ381を介して燃料電池ラジエータ320と冷却水を交換することにより、独立して冷却が可能となる。
【0018】
一方、燃料電池冷却水ライン30には、バッテリーチラー420が連結される。そして、統合チラー600も連結される。したがって、各種チラーを介して燃料電池310のより積極的な冷却又は昇温が可能であり、燃料電池310の廃熱をチラーに伝達して室内暖房の効率を高めることができる。燃料電池冷却水ライン30の冷却水は、燃料電池310、バッテリーチラー420、統合チラー600の順に冷却水が流れることができる。
一方、
図4は、本発明の第2実施形態による統合熱管理システムを示す。これによれば、バッテリーチラー420は、第1バルブ382を介して燃料電池冷却水ライン30に並列に連結されることもできる。すなわち、燃料電池冷却水ライン30において、バッテリーチラー420は、燃料電池310と統合チラー600との間に第1バルブ382を介して並列に連結されることができる。これにより、燃料電池310を通過した冷却水がバッテリーチラー420をバイパスすることができ、燃料電池310とバッテリー410とを互いに影響がないように独立して熱管理することができる。
そして、バッテリーチラー420とバッテリー410とを第2冷却水が循環するバッテリー冷却水ライン40が設けられることにより、バッテリーの冷却又はバッテリーの廃熱を回収することができる。
【0019】
一方、室内空調冷媒ライン10は、冷媒を吸入して圧縮する第1圧縮機110、室内空調装置に設けられ、温風を生成して室内へ供給する室内コンデンサー120、外気と冷媒を熱交換する室外熱交換器140及び統合チラー600を冷媒が循環するラインに該当する。このような室内空調冷媒ライン10の場合には、図示の如く、後述するバッテリー冷媒ライン50とは別個の冷媒で管理されることができる。したがって、室内空調とバッテリーの場合は、独立した熱管理も可能となる。
具体的には、室内空調冷媒ライン10は、第1圧縮機110を介して冷媒が圧縮されて循環する。圧縮された冷媒は、まず、室内空調装置の室内コンデンサー120を通過する。室内空調装置には室内コンデンサー120と蒸発器150が設けられ、図示してはいないが、これらの室内コンデンサーと蒸発器に流れる空気の流量を制御するミックスドアが設けられる。ミックスドアの制御によって、暖房時には空気が室内コンデンサー120のみを流れるようにし、冷房時には空気が蒸発器150のみを通過するようにする。したがって、夏季に室内コンデンサー120を介して高温の冷媒が流れるとしても、ミックスドアにより、空気は蒸発器150のみを経るため、冷房性能には影響がないようにすることができる。そして、室内空調装置にはPTCヒーター170も設けられて足りない暖房を補充することができるようにする。
【0020】
室内コンデンサー120を流れた冷媒は、膨張バルブ131を介して室外熱交換器140へ供給される。もし膨張バルブ131が膨張する場合には、室外熱交換器140で外気から熱を吸収し、膨張バルブ131が全て開放された場合には、膨張が起こらないため、外気を介してコンデンシングを行う。室外熱交換器140を経た冷媒は、分岐してそれぞれ統合チラー600と蒸発器150に流入する。統合チラー600及び蒸発器150にはそれぞれ膨張バルブ132、133が設けられ、膨張バルブは膨張又は開放が可能である。そして、回収ライン11は、室内空調冷媒ライン10に含まれる一部のラインであって、統合チラー600を経た冷媒は、室内空調冷媒ライン10の回収ライン11に回収され、蒸発器150を経た冷媒と合流して再びアキュムレータ160を介して第1圧縮機110に供給される。室内空調冷媒ライン10の回収ライン11を介して統合チラー600と蒸発器150とは並列に連結される構造を持つ。
【0021】
一方、バッテリー冷媒ライン50の場合には、冷媒を吸入して圧縮する第2圧縮機510、圧縮された冷媒を外気と熱交換して放熱する室外コンデンサー520、膨張バルブ530及びバッテリーチラー420を冷媒が循環するラインに該当する。これは、独立した冷媒ラインであって、必要に応じてバッテリーチラー420を冷却させる用途として活用される。冷却されたバッテリーチラー420は、バッテリー410又は燃料電池310の冷却を担当する。
そして、車両の電子部品210の場合、必要に応じて外気による冷却が必要であることがあり、車両電子部品210と統合チラー600を第3冷却水がポンプ230によって循環する電子部品冷却水ライン20が設けられる。電子部品冷却水ライン20には、第3バルブ280を介して車両電子部品210に電子部品ラジエータ220が並列に連結(21)されることができる。
これにより、電子部品210の廃熱が統合チラー600を介して回収され、暖房への活用が可能であり、或いは電子部品210から発生した熱が電子部品ラジエータ220を介して放熱されることができる。このようなモードの切り替えは、第3バルブ280の制御によって行われる。
【0022】
図2は、
図1に示した統合熱管理システムにおいて室内冷房が行われる場合を示す。この場合には、室内空調冷媒ライン10の第1圧縮機110が駆動されて室内コンデンサー120が加熱されるが、室内空調装置のミックスドアを制御することにより、室内には加熱された空気が導入されないようにする。圧縮及び加熱された冷媒は、室外熱交換器140を介して放熱され、統合チラー600と蒸発器150とに分けられて流入する。そして、統合チラー600と蒸発器150の膨張バルブ132、133を介して冷媒がそれぞれ膨張することにより、蒸発器150を介して室内冷房が可能となる。
また、統合チラー600を介して燃料電池310の冷却が可能となる。燃料電池冷却水ライン30の循環時に、冷却水は、統合チラー600を介して冷却されて燃料電池310を冷却する。また、バッテリー冷媒ライン50とバッテリー冷却水ライン40のポンプ430の循環を介してバッテリー410も冷却される。ここで、燃料電池冷却水ライン30の冷却水は、バッテリーチラー420と統合チラー600を介して二次的な冷却が行われて燃料電池310の十分な冷却が可能となる。
室内冷房と共に燃料電池310の冷却も同時に行われるものであって、燃料電池冷却モードでは、第1圧縮機110と第2圧縮機510の両方が稼働され、燃料電池冷却水ライン30において燃料電池310を流れた冷却水がバッテリーチラー420と統合チラー600によって冷却されることができる。
【0023】
また、
図4の第2実施形態の場合には、第1バルブ382を制御して、燃料電池冷却水ライン30の冷却水がバッテリーチラー420を経由せずにバイパスするようにすることにより、燃料電池310の冷却とバッテリー410の冷却を独立に区分して行うことが可能となる。これによれば、燃料電池310とバッテリー410の冷却を別途行うことが可能である。よって、エネルギーの無駄遣いを防止することができる。
図3の場合は、本発明の第1実施形態による統合熱管理システムにおいて室内暖房を行う場合である。この場合には、電子部品210の廃熱又はバッテリー410の廃熱又は燃料電池310の廃熱又は外気の熱を回収してヒートポンプシステムで暖房を行うことができる。まず、電子部品210の場合には、第3バルブ280を介して電子部品210を流れた冷却水が電子部品ラジエータ220ではなく、統合チラー600と熱交換するようにする。これにより、室内空調冷媒ライン10の冷媒は加熱される。加熱された冷媒は、第1圧縮機110に流入して圧縮されることにより、より高温の冷媒に変換され、これを室内コンデンサー120へ流して室内を暖房する。そして、室内コンデンサー120を流れた冷媒は、膨張バルブ131を介して膨張し、室外熱交換器140に導入されて外気の熱を吸収した後、統合チラー600を介して再び熱を吸収して効率よくヒートポンプシステムを実現する。
【0024】
一方、統合チラー600には、燃料電池冷却水ライン30を介して燃料電池310とバッテリー410の廃熱を回収して伝達することができ、結局、統合チラー600を流れる冷媒は、外気の熱、電子部品の廃熱、燃料電池の廃熱及びバッテリーの廃熱を全て回収することができる。この場合、第3バルブ280又はポンプ230の制御によって、電子部品210の廃熱を回収するか否かを選択することができ、膨張バルブ131の制御によって、外気の熱を吸収するか否かを選択することができ、第2バルブ381又はポンプ330の制御によって、燃料電池310の廃熱を回収するか否かを選択することができ、バッテリー側ポンプ430の制御によって、バッテリーの廃熱を回収するか否かを決定することができる。すなわち、4種類の熱源を全て独立的に選択してヒートポンプシステムの動作が可能であるので、状況に応じた最適効率の暖房が可能となる。そして、この状態で膨張バルブ132を全開して、室外熱交換器140を流れた冷媒を蒸発器150に導入する場合には、室内コンデンサー120と蒸発器150の両方を活用して室内除湿モードにも実現が可能となる。
【0025】
図5乃至
図7は、本発明の第3実施形態による燃料電池車両の統合熱管理システムの動作を示す図である。この場合には、統合チラー600は、冷媒ラインにおいて第4バルブ330を介して並列に連結された電子部品チラー610と燃料電池チラー620で構成され、電子部品チラー610は電子部品冷却水ライン20に連結され、燃料電池チラー620は燃料電池冷却水ライン30に連結されることができる。この場合は、統合チラー600が電子部品チラー610と燃料電池チラー620に分けられ、これらがそれぞれのライン13、14を介して並列に連結されることにより取捨選択が可能となり、より独立的で多様なモードの実現が可能であるという利点がある。
具体的には、
図5の場合は、室内冷房の場合であって、室内空調冷媒ライン10の冷媒は、燃料電池チラー620にのみ膨張して流れることにより蒸発器150を介して室内を冷房し、燃料電池チラー620を介して燃料電池を冷却する。電子部品210は、電子部品ラジエータ220を介して冷却され、バッテリー410は、バッテリー冷媒ライン50とバッテリー冷却水ライン40を介して冷却される。特に、燃料電池冷却水ライン30の第1冷却水は、バッテリーチラー420と燃料電池チラー620を介して二重に冷却されて燃料電池310の効果的な冷却が可能となる。もちろん、燃料電池310がマイルドな冷却のみが必要であれば、第2バルブ381を介して第1冷却水が燃料電池310と燃料電池ラジエータ320のみを循環するようにし、室内空調冷媒ライン10の冷媒が燃料電池チラー620へは流れないように膨張バルブ133を閉鎖し、蒸発器150にのみ流れるようにすることも可能である。
【0026】
図6の場合は、室内暖房の場合であって、この場合は、電子部品210の廃熱を電子部品チラー610を介して回収し、室内コンデンサー120を介して暖房を行う場合を示す。この場合、室内空調冷媒ライン10の冷媒は、膨張した後、電子部品チラー610のみへ流れて廃熱を回収する。燃料電池冷却水ライン30の第1冷却水は、燃料電池310とバッテリーチラー420との間を循環し、燃料電池310の廃熱を利用してバッテリー410を昇温させる。そして、足りない室内の暖房は、PTCヒーター170を稼働して補充することもできる。また、この場合、冷媒は、膨張バルブ131を介して膨張した後、室外熱交換器140に導入されることができ、蒸発器側の膨張バルブ132を全開する場合、室外熱交換器140から吐出された冷媒が蒸発器に導入され、これにより室内除湿モードの実現も可能である。
図7の場合も、暖房モードを示すものであるが、これは、外気の熱を回収し、燃料電池チラー620を介して燃料電池310の廃熱を回収して室内を暖房する場合である。この場合は、電子部品210の温度が高くない場合に活用が可能である。また、燃料電池310の温度が高ければ、燃料電池310の廃熱を介してバッテリー410の昇温も可能であり、燃料電池310の温度が低ければ、バッテリー410の廃熱を回収して燃料電池チラー620に伝達するものとも見做すことができる。
【0027】
図8乃至
図11は、本発明の第4実施形態による燃料電池車両の統合熱管理システムの動作を示す図である。この場合には、統合チラー600は、直列に連結された燃料電池チラー620と電子部品チラー610で構成され、電子部品チラー610は電子部品冷却水ライン20に連結され、燃料電池チラー620は燃料電池冷却水ライン30に連結され、統合チラーの上流地点には、第5バルブ183が設けられ、冷媒ラインには、室内コンデンサー120と室外熱交換器140との間から分岐して第5バルブ183に合流する分岐ライン15が設けられることができる。第5バルブ183には、統合チラーをバイパスするバイパスライン12が連結され、バイパスライン12は、第1圧縮機110の上流地点で室内空調冷媒ライン10に合流することができる。そして、燃料電池チラー620は、電子部品チラー610よりも上流地点に設けられ、燃料電池チラー620から吐出された冷媒が電子部品チラー610に導入されることができる。
このような構造を実現するために、図示の如く、第5バルブ183は4ウェイマルチウェイバルブで構成されることができる。
これにより、まず、
図8のように室内冷房が可能となる。この場合には、電子部品210は、電子部品ラジエータ220を介して冷却を別途行う。冷媒は、燃料電池チラー620の上流地点で膨張バルブ133を介して膨張することにより、燃料電池チラー620を用いて燃料電池310の冷却が可能となる。バッテリー410は、バッテリー冷媒ライン50とバッテリー冷却水ライン40を介して冷却が可能となる。
【0028】
図9の場合は、暖房の場合であって、室外熱交換器140を介した外気熱の回収や、電子部品チラー610を介した電子部品210の廃熱の回収が可能である。燃料電池チラー620を介して燃料電池310の廃熱回収も可能である。また、バッテリーチラー420を介したバッテリー廃熱の回収も可能であるため、暖房効率を最大化することが可能である。一方、室内空調冷媒ライン10の冷媒は、室内コンデンサー120を介して室内へ放熱した後、分岐ライン15と第5バルブ183の制御によって直ちに膨張バルブ133で膨張した後、燃料電池チラー620と電子部品チラー610を介して重複して廃熱を回収することが可能である。この場合、燃料電池チラー620の膨張バルブ133が開放され、電子部品チラー610の膨張バルブ134が膨張を行うことも可能であり、これにより電子部品210の廃熱のみが回収されて暖房に活用され、燃料電池310は、バッテリーチラー420又は燃料電池チラー620を介して熱を吸収して冷始動時に昇温することも可能となる。一方、追加的に膨張バルブ131によって膨張した冷媒が室外熱交換器140を経た後、蒸発器150に導入されるように蒸発器側の膨張バルブ132を全開することにより、室内の除湿を行うことも可能である。
【0029】
一方、バッテリー410の昇温が必要でない場合には、
図10に示すように、バッテリー冷却水ラインのポンプ430の稼働を中止し、バッテリー冷媒ライン50の第2圧縮機510の稼働を中止することにより、第1冷却水がバッテリーチラー420を通過するが、特別な熱交換が起こらないようにすることも可能である。
図11の場合は、室内空調冷媒ライン10に冷媒ヒーター112が設けられた場合である。室内空調冷媒ライン10における、第1圧縮機110と室内空調装置の室内コンデンサー120との間には、冷媒ヒーター112が設けられることができる。この場合には、冷媒ヒーター112を介して加熱された冷媒が室内コンデンサー120に導入されることにより、より強い暖房を実現することができるとともに、高温の冷媒を燃料電池チラー620に導入することにより、燃料電池310の冷始動時の昇温も可能となる。このためには、燃料電池チラー620の膨張バルブ133は開放することにより、単純な熱交換のみを誘導し、室外熱交換器140の膨張バルブ131で膨張を行い、電子部品チラー610の膨張バルブ134で膨張して吸熱を積極的に行うことにより、ヒートポンプシステムの効率を高めることが有利である。
【0030】
一方、
図12及び
図13は、本発明の第5実施形態による燃料電池車両の統合熱管理システムの動作を示す図である。この場合は、燃料電池とバッテリーチラーの冷却水を分離する場合である。したがって、室内暖房時には、室外熱交換器140を介した外気熱の回収、電子部品チラー610を介した電子部品210の廃熱の回収が可能である。そして、燃料電池チラー620を介して燃料電池310の廃熱回収も可能である。
一方、室内空調冷媒ライン10の冷媒の場合は、室内コンデンサー120を介して室内へ放熱した後、分岐ライン15と第5バルブ183の制御によって、直ちに膨張バルブ133で膨張した後、燃料電池チラー620と電子部品チラー610を介して重複して廃熱を回収することが可能である。この場合、燃料電池チラー620の膨張バルブ133が開放され、電子部品チラー610の膨張バルブ134が膨張を行うことも可能であり、これにより電子部品210の廃熱のみが回収されて暖房に活用され、燃料電池310は、燃料電池チラー620を介して熱を吸収して冷始動時に昇温することも可能となる。一方、追加的に
図12のように膨張バルブ131により膨張した冷媒が室外熱交換器140を経た後、蒸発器150に導入されるように蒸発器側の膨張バルブ132を全開することにより、室内の除湿を同時に行うことも可能である。
【0031】
図13の場合は、
図12の室内空調冷媒ライン10に冷媒ヒーター112が設けられた場合である。室内空調冷媒ライン10における、第1圧縮機110と室内空調装置の室内コンデンサー120との間には、冷媒ヒーター112が設けられることができる。この場合には、冷媒ヒーター112を介して加熱された冷媒が室内コンデンサー120に導入されることにより、より強い暖房を実現することができるとともに、高温の冷媒を燃料電池チラー620に導入することにより、燃料電池310の冷始動時の昇温も可能となる。このためには、燃料電池チラー620の膨張バルブ133は全開することにより単純な熱交換のみを誘導し、室外熱交換器140の膨張バルブ131で膨張を行い、電子部品チラー610の膨張バルブ134で膨張して吸熱を積極的に行うことにより、ヒートポンプシステムの効率を高めることが有利である。
【0032】
一方、
図14は、本発明の第6実施形態による燃料電池車両の統合熱管理システムの動作を示す図である。この場合、統合チラーは、冷媒ラインにおいて第4バルブ330を介して並列に連結された電子部品チラー610と燃料電池チラー620で構成され、電子部品チラー610は電子部品冷却水ライン20に連結され、燃料電池チラー620は燃料電池冷却水ライン30に連結されることができる。この場合は、統合チラーが電子部品チラー610と燃料電池チラー620に分けられ、これらがそれぞれのライン13、14を介して並列に連結されることにより取捨選択が可能となるため、より独立的で多様なモードの実現が可能であるという利点がある。
図14の場合は、室内暖房モードを示すものであって、これは、外気の熱を回収し、燃料電池チラー620を介して燃料電池310の廃熱を回収して室内を暖房する場合である。この場合は、電子部品210の温度が高くない場合に活用可能である。
又は、電子部品210の廃熱を電子部品チラー610を介して回収し、室内コンデンサー120を介して暖房を行う場合も可能である。この場合には、室内空調冷媒ライン10の冷媒は、膨張した後、電子部品チラー610のみに流れて廃熱を回収する。そして、足りない室内の暖房は、PTCヒーター170を稼働して補充することもできる。また、この場合、冷媒は、膨張バルブ131を介して膨張した後、室外熱交換器140に導入されることができ、蒸発器側の膨張バルブ132を全開する場合、室外熱交換器140から吐出された冷媒が蒸発器に導入され、これにより室内除湿モードの実現も可能である。
【0033】
図15は、本発明の第7実施形態による燃料電池車両の統合熱管理システムの動作を示す図である。この場合には、電子部品210の廃熱又は燃料電池310の廃熱又は外気の熱を回収してヒートポンプシステムで暖房を行うことができる。まず、電子部品210の場合には、第3バルブ280を介して電子部品210を流れた冷却水がラジエータ220ではなく、統合チラー600と熱交換するようにする。これにより、室内空調冷媒ライン10の冷媒は加熱される。加熱された冷媒は、第1圧縮機110に流入して圧縮されることにより、より高温の冷媒に変換され、これを室内コンデンサー120に流して室内を暖房する。そして、室内コンデンサー120を流れた冷媒は、膨張バルブ131を介して膨張し、室外熱交換器140に導入されて外気の熱を吸収した後、統合チラー600を介して再び熱を吸収して効率よくヒートポンプシステムを実現する。
【0034】
一方、統合チラー600には、燃料電池冷却水ライン30を介して燃料電池310の廃熱を回収して伝達することができ、結局、統合チラー600を流れる冷媒は、外気の熱、電子部品の廃熱、燃料電池の廃熱をすべて回収することができる。この場合、第3バルブ280又はポンプ230の制御によって、電子部品210の廃熱を回収するか否かを選択することができ、膨張バルブ131の制御によって、外気の熱を吸収するか否かを選択することができ、第2バルブ381又はポンプ330の制御によって、燃料電池310の廃熱を回収するか否かを選択することができる。すなわち、3種類の熱源を全て独立的に選択してヒートポンプシステムの動作が可能であるので、状況に応じた最適効率の暖房が可能となる。そして、この状態で膨張バルブ132を全開して、室外熱交換器140を流れた冷媒を蒸発器150に導入する場合には、室内コンデンサー120と蒸発器150の両方を活用して室内除湿モードにも実現可能である。 本発明の燃料電池車両の統合熱管理システムによれば、室内空調用冷媒、電子部品用冷却水、燃料電池用冷却水、バッテリー用冷却水及びバッテリー用冷媒を統合システムとして構成し、様々な熱交換モードを実現して車両の全般的なエネルギー効率を向上させることができる。
本発明は、特定の実施形態に関連して図示及び説明したが、以下の特許請求の範囲によって提供される本発明の技術的思想から逸脱することなく、本発明に様々な改良及び変更を加え得ることは、当業分野における通常の知識を有する者にとって自明であろう。
【符号の説明】
【0035】
10 室内空調冷媒ライン
20 電子部品冷却水ライン
30 燃料電池冷却水ライン
40 バッテリー冷却水ライン
50 バッテリー冷媒ライン