(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168211
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】作業進捗管理方法、作業進捗管理システムおよび作業進捗管理プログラム
(51)【国際特許分類】
G06Q 50/02 20120101AFI20231116BHJP
【FI】
G06Q50/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022188850
(22)【出願日】2022-11-28
(31)【優先権主張番号】P 2022079441
(32)【優先日】2022-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】720001060
【氏名又は名称】ヤンマーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100205350
【弁理士】
【氏名又は名称】狩野 芳正
(74)【代理人】
【識別番号】100117617
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 圭策
(72)【発明者】
【氏名】田中 徹士
(72)【発明者】
【氏名】三谷 英樹
【テーマコード(参考)】
5L049
【Fターム(参考)】
5L049CC01
(57)【要約】
【課題】現実の作業状況に即した作業進捗率を効率よく算出する。
【解決手段】作業進捗管理方法は、圃場(9、90)の中に複数の判定領域(80、81、82、83、84)を設定すること(S2)と、圃場(9、90)の中で移動しながら第1作業を行う第1作業装置(20)の第1位置情報を取得すること(S3)と、第1位置情報に基づいて、複数の判定領域(80、81、82、83、84)のうち、第1作業装置が通過した判定領域を作業済み判定領域(81)として検出すること(S4)と、複数の判定領域(80、81、82、83、84)の第1総数と、作業済み判定領域(81)の第2総数とに基づいて、第1作業の進捗率を算出すること(S5)と、進捗率を表す情報を出力すること(S6)とを含む。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場の中に複数の判定領域を設定することと、
前記圃場の中で移動しながら第1作業を行う第1作業装置の第1位置情報を取得することと、
前記第1位置情報に基づいて、前記複数の判定領域のうち、前記第1作業装置が通過した判定領域を作業済み判定領域として検出することと、
前記複数の判定領域の第1総数と、前記作業済み判定領域の第2総数とに基づいて、前記第1作業の進捗率を算出することと、
前記進捗率を表す情報を出力することと
を含む
作業進捗管理方法。
【請求項2】
請求項1に記載の作業進捗管理方法において、
前記圃場は、それぞれが互いに平行に延在するように形成された複数の畝を備え、
前記設定することは、
前記複数の判定領域を、前記複数の畝のそれぞれの長手方向に並ぶように設定すること
を含む
作業進捗管理方法。
【請求項3】
請求項2に記載の作業進捗管理方法において、
前記設定することは、
前記複数の判定領域に含まれる第1判定領域群を、前記複数の畝のそれぞれの、前記長手方向に直交する第1方向の側に設定することと、
前記複数の判定領域に含まれる第2判定領域群を、前記複数の畝のそれぞれの、前記長手方向に直交する、前記第1方向とは逆の第2方向の側に設定することと
をさらに含み、
前記第1作業装置が測位信号を受信する測位位置に対する、前記第1作業装置の作業機が前記複数の畝の少なくとも1つに対して作業を行う作業位置の、前記第1作業装置の進行方向に直交するオフセット方向におけるオフセット向きおよびオフセット長さを表すオフセット情報を取得することと、
前記第1位置情報に基づいて、前記第1作業装置の、測位位置ごとの移動方向を算出することと
をさらに含み、
前記検出することは、
前記オフセット向きと前記オフセット長さとに基づいて、前記測位位置ごとに、前記第1作業装置が、前記長手方向に含まれる所定の基準方向と同じ方向に移動しているとき、前記第1判定領域群または前記第2判定領域群の一方に含まれる判定領域を前記作業済み判定領域として検出し、前記第1作業装置が前記基準方向とは逆の方向に移動しているとき、前記第1判定領域群または前記第2判定領域群の他方に含まれる判定領域を前記作業済み判定領域として検出すること
を含む
作業進捗管理方法。
【請求項4】
請求項3に記載の作業進捗管理方法において、
前記設定することは、
前記複数の畝に含まれ隣接する第1畝と第2畝との間に、前記第1判定領域群の少なくとも一部と、前記第2判定領域群の少なくとも一部とが重なり合うように設定すること
をさらに含む
作業進捗管理方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の作業進捗管理方法において、
前記第1作業の前に、前記圃場の中で移動しながら第2作業を行う第2作業装置の第2位置情報を取得すること
をさらに含み、
前記設定することは、
前記第2位置情報に基づいて前記複数の判定領域の位置および寸法を設定すること
を含む
作業進捗管理方法。
【請求項6】
請求項5に記載の作業進捗管理方法において、
前記複数の判定領域の前記位置を設定することは、
前記複数の判定領域を、前記第2位置情報に含まれる複数の測位点の位置の少なくとも一部をそれぞれ含むように設定すること
を含む
作業進捗管理方法。
【請求項7】
請求項5に記載の作業進捗管理方法において、
前記圃場は、それぞれが互いに平行に延在するように形成された複数の畝を備え、
前記複数の判定領域の前記寸法を設定することは、
前記寸法を、前記複数の畝のうちの隣接する2つの畝の間隔および/または前記複数の畝のうちの1つの畝に含まれて隣接する2つの測位点の間隔に基づいて設定すること
を含む
作業進捗管理方法。
【請求項8】
請求項1に記載の作業進捗管理方法において、
前記第1位置情報を取得することは、
前記第1作業装置に含まれる第1作業機を移動させる作業車両の第3位置情報を取得することと、
前記第3位置情報と、前記作業車両の進行方向と、前記第3位置情報を取得する位置としての前記作業車両の基準位置に対する、前記第1作業機が前記圃場に対して前記第1作業を行う作業位置の位置関係とに基づいて、前記第1位置情報を算出することと
を含む
作業進捗管理方法。
【請求項9】
請求項1~4のいずれか一項に記載の作業進捗管理方法において、
前記複数の判定領域のそれぞれの形状は、円または楕円である
作業進捗管理方法。
【請求項10】
請求項1に記載の作業進捗管理方法において、
前記検出することは、
前記第1位置情報が表す複数の測位点のうち、測位時刻が連続する2つの測位点を結ぶ仮想的な直線が少なくとも一度は重なった判定領域を、前記作業済み判定領域として検出すること
を含む
作業進捗管理方法。
【請求項11】
圃場の中に複数の判定領域を設定する設定部と、
前記圃場の中で移動しながら第1作業を行う第1作業装置の第1位置情報を取得する取得部と、
前記第1位置情報に基づいて、前記複数の判定領域のうち、前記第1作業装置が通過した判定領域を作業済み判定領域として検出する検出部と、
前記複数の判定領域の第1総数と、前記作業済み判定領域の第2総数とに基づいて、前記第1作業の進捗率を算出する算出部と、
前記進捗率を表す情報を出力する出力部と
を備える
作業進捗管理システム。
【請求項12】
実行することによって所定の処理を実現するための作業進捗管理プログラムであって、
前記処理は、
圃場の中に複数の判定領域を設定することと、
前記圃場の中で移動しながら第1作業を行う第1作業装置の第1位置情報を取得することと、
前記第1位置情報に基づいて、前記複数の判定領域のうち、前記第1作業装置が通過した判定領域を作業済み判定領域として検出することと、
前記複数の判定領域の第1総数と、前記作業済み判定領域の第2総数とに基づいて、前記第1作業の進捗率を算出することと、
前記進捗率を表す情報を出力することと
を含む
作業進捗管理プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は作業進捗管理方法、作業進捗管理システムおよび作業進捗管理プログラムに関し、例えば、農作業の進捗率の管理に好適に利用できるものである。
【背景技術】
【0002】
複数の作業者が複数の圃場で農作業を行う場合などにおいて、それぞれの圃場における作業の進捗状況を把握して、全体的な農作業を包括的に管理する需要がある。
【0003】
上記に関連して、特許文献1(特許5522785号公報)には、農作業車両運行管理システムが開示されている。この農作業車両運行管理システムは、圃場の面積と、農作業車両がこの圃場に対して作業を実施した作業済み領域の面積との重なる割合により、作業の状況を色分け表示する。作業済み領域は、農作業車両が作業を実施しながら移動した経路の位置情報と、農作業車両の幅とに基づいて求められる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ある圃場に対して作業機が作業を行った面積と、この圃場の全体の面積との割合を作業進捗率として算出するとき、この圃場に対する作業が完了しても作業進捗率が100%に達しない場合がある。例えば、互いに平行な複数の畝を圃場に設けて、これらの畝に対して作業を行うとき、隣接する畝の間の領域は作業対象外である。このような場合には、圃場に含まれる全ての畝に対する作業が完了しても、作業進捗率は圃場の全体の面積に対する畝の面積の比率に留まり、算出される作業進捗率は現実の状況から乖離してしまう。
【0006】
上記状況に鑑み、本開示は、現実の作業状況に即した作業進捗率を効率よく算出するための作業進捗管理方法、作業進捗管理システムおよび作業進捗管理プログラムを提供することを目的の1つとする。その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、発明を実施するための形態で使用される番号・符号を用いて、課題を解決するための手段を説明する。これらの番号・符号は、特許請求の範囲の記載と発明を実施するための形態との対応関係の一例を示すために、参考として、括弧付きで付加されたものである。よって、括弧付きの記載により、特許請求の範囲は、限定的に解釈されるべきではない。
【0008】
一実施の形態によれば、作業進捗管理方法は、圃場(9、90)の中に複数の判定領域(82、83、84)を設定すること(S2)と、圃場(9、90)の中で移動しながら第1作業を行う第1作業装置(20)の第1位置情報を取得すること(S3)と、第1位置情報に基づいて、複数の判定領域(82、83、84)のうち、第1作業装置(20)が通過した判定領域を作業済み判定領域(81)として検出すること(S4)と、複数の判定領域(82、83、84)の第1総数と、作業済み判定領域(81)の第2総数とに基づいて、第1作業の進捗率を算出すること(S5)と、進捗率を表す情報を出力すること(S6)とを含む。
【0009】
一実施の形態によれば、作業進捗管理システム(1)は、設定部(522)と、取得部(521)と、検出部(523)と、算出部(524)と、出力部(525)とを備える。設定部(522)は、圃場(9、90)の中に複数の判定領域(82、83、84)を設定する。取得部(521)は、圃場(9、90)の中で移動しながら第1作業を行う第1作業装置(20)の第1位置情報を取得する。検出部(523)は、第1位置情報に基づいて、複数の判定領域(82、83、84)のうち、第1作業装置(20)が通過した判定領域を作業済み判定領域(81)として検出する。算出部(524)は、複数の判定領域(82、83、84)の第1総数と、作業済み判定領域(81)の第2総数とに基づいて、第1作業の進捗率を算出する。出力部(525)は、進捗率を表す情報を出力する。
【0010】
一実施の形態によれば、作業進捗管理プログラムは、実行することによって所定の処理を実現するためのものである。この処理は、圃場(9、90)の中に複数の判定領域(82、83、84)を設定すること(S2)と、圃場(9、90)の中で移動しながら第1作業を行う第1作業装置(20)の第1位置情報を取得すること(S3)と、第1位置情報に基づいて、複数の判定領域(82、83、84)のうち、第1作業装置(20)が通過した判定領域を作業済み判定領域(81)として検出すること(S4)と、複数の判定領域(82、83、84)の第1総数と、作業済み判定領域(81)の第2総数とに基づいて、第1作業の進捗率を算出すること(S5)と、進捗率を表す情報を出力すること(S6)とを含む。
【発明の効果】
【0011】
一実施の形態によれば、現実の状況に即した作業進捗率を効率よく算出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1は、一実施の形態による作業進捗管理システムの一構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、一実施の形態による作業進捗管理装置の一構成例を示すブロック回路図である。
【
図3】
図3は、作業機の作業領域と非作業領域について説明するための図である。
【
図4】
図4は、作業進捗率の算出の考え方について説明するための図である。
【
図5】
図5は、一実施の形態による作業進捗管理方法の処理の一例を示すフローチャートである。
【
図6】
図6は、畝の位置情報を取得する方法について説明するための図である。
【
図7】
図7は、判定領域を設定する方法について説明するための図である。
【
図8】
図8は、判定領域を設定する方法について説明するための図である。
【
図9】
図9は、判定領域を設定する方法について説明するための図である。
【
図10】
図10は、判定領域を設定する方法について説明するための図である。
【
図11】
図11は、作業車両の位置情報に基づいて作業位置情報を算出する方法について説明するための図である。
【
図12】
図12は、作業車両の位置情報に基づいて作業位置情報を算出する方法について説明するための図である。
【
図13】
図13は、作業車両の位置情報に基づいて作業位置情報を算出する方法について説明するための図である。
【
図14】
図14は、畝と、第1判定領域群と、第2判定領域群との位置関係の一例を表す図である。
【
図15】
図15は、1つの測位点に対応する第1判定領域群および第2判定領域群の位置関係の一例を表す図である。
【
図16】
図16は、2つの測位点にそれぞれ対応する第1判定領域群および第2判定領域群の位置関係の一例を表す図である。
【
図17】
図17は、一実施の形態による作業進捗管理方法の処理の一例を示すフローチャートの一部である。
【
図18】
図18は、作業装置の進行方向、測位基準位置および作業基準位置の関係の一例を表す図である。
【
図19】
図19は、作業装置の進行方向、測位基準位置および作業基準位置の関係の一例を表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
添付図面を参照して、本開示による作業進捗管理方法、作業進捗管理システムおよび作業進捗管理プログラムを実施するための形態を以下に説明する。
【0014】
(第1の実施の形態)
図1に示すように、一実施の形態による作業進捗管理システム1は、作業進捗管理装置5を備える。作業進捗管理装置5は、ネットワーク4などを介して、作業車両2に搭載された車載端末3から、作業車両2が圃場9の中を移動しながら農作業などの作業を行ったときに取得した測位情報を受信する。
【0015】
作業車両2は、例えばトラクターであり、接続された作業機20の種類によって様々な作業を行い、トラクターとこれに着脱自在に接続された作業機が作業装置を構成することになる。別の例として、作業車両2は、コンバインなどのように、作業機20と一体化して単一の作業装置を構成してもよい。車載端末3は、GNSS(Global Navigation Satellite System:全球測位衛星システム)などを用いて作業車両2の位置を測定し、測定した位置を表す位置情報と、測定した時刻を表す時刻情報とを対応付けた測位情報を生成し、ネットワーク4などを介する無線通信および/または有線通信により測位情報を作業進捗管理装置5へ送信する。
【0016】
作業進捗管理装置5は、車載端末3から受信した測位情報と、圃場9の位置および範囲を表す圃場情報とに基づいて、圃場9における作業の進捗状況を表す作業進捗率を算出し、作業進捗率を表す作業進捗率情報を外部に出力する。一例として、作業進捗率情報は、使用者が使用する外部端末6によって出力されてもよい。このとき、作業進捗管理装置5は、ネットワーク4などを介する無線通信および/または有線通信により作業進捗率情報を外部端末6へ送信してもよい。
【0017】
図2に示すように、一実施の形態による作業進捗管理装置5は、コンピュータのように構成されてもよい。
図2の例において、作業進捗管理装置5は、バス51と、演算装置52と、記憶装置53と、通信装置54と、入出力装置55とを備える。バス51は、演算装置52、記憶装置53、通信装置54および入出力装置55を、互いに通信可能に接続する。
【0018】
演算装置52は、取得部521と、設定部522と、検出部523と、算出部524と、出力部525とを備える。記憶装置53は、作業進捗管理プログラム記憶部531を備える。作業進捗管理プログラム記憶部531は、作業進捗管理プログラムを記憶する。
【0019】
演算装置52は、作業進捗管理プログラムを読み出して実行することによって、取得部521、設定部522、検出部523、算出部524および出力部525のそれぞれの機能を実現する。取得部521、設定部522、検出部523、算出部524および出力部525のそれぞれは、演算装置52および記憶装置53が協働して実現する処理を実行する仮想的な機能ブロックである。これらの機能ブロックの処理については、後述する。
【0020】
作業進捗管理プログラムは、外部の記録媒体530から読み出されて作業進捗管理プログラム記憶部531に格納されてもよい。記録媒体530は、非一時的で有形の媒体(non-transitory and tangible media)であってもよい。
【0021】
通信装置54は、取得部521および/または出力部525の制御下で、ネットワーク4を介する無線通信および/または有線通信により、車載端末3および外部端末6を含む外部の装置との通信を行う。作業進捗管理プログラムは、通信装置54によって外部から受信されて作業進捗管理プログラム記憶部531に格納されてもよい。
【0022】
入出力装置55は、使用者に情報を出力し、使用者が入力する操作を受け付ける。一例として、入出力装置55は、画像を出力する表示装置、入力を受け付けるキーボードおよび/またはマウスなどを含む。
【0023】
図3を参照して、作業機20の作業領域と非作業領域について説明する。圃場9で育成する農作物の種類によっては、圃場9に畝を立てる場合がある。このような場合において、圃場9のうち、畝の領域は作業機20が作業を行う対象としての作業領域であり、畝以外の、例えば隣接する2本の畝の間の領域は作業機20が作業を行う対象外としての非作業領域である。
図3の例では、第1の畝に沿って第1の進行方向D
1に移動しながら作業車両2および作業機20が作業を行う幅W
1の領域と、第2の畝に沿って第2の進行方向D
2に移動しながら作業車両2および作業機20が作業を行う幅W
3の領域とは作業領域であり、第1の畝と第2の畝との間の幅W
2の領域は非作業領域である。ここで、作業領域の幅W
1、W
3は、作業機20の幅であってもよい。
【0024】
図4を参照して、作業進捗率の算出の考え方について説明する。一例として、圃場9を縦横に区切った複数のメッシュ80を設定し、あるメッシュ80を作業機20が通過したらそのメッシュ80は作業済みのメッシュ81であると判定する。作業済みメッシュ81の総数の、圃場9に含まれるメッシュ80の総数に対する比率を算出することで、作業進捗率が得られる。ここで、全てのメッシュ80がいずれかの作業領域を含み、かつ、どの非作業領域もいずれかのメッシュ80に含まれるように圃場9を区切ることで、実際の作業状況に即した作業進捗率が得られる。
図4の例では、圃場9を、畝の長手方向である第1方向と、畝の幅方向である第2方向とに区切った複数のメッシュ80、81を設定している。また、作業車両2が通過した作業済みのメッシュ81と、作業車両2がまだ通過していない未作業のメッシュ80とを、斜線の有無で区別して示している。
図4の例では、メッシュ80、81の、畝の幅方向の寸法W
10、W
20を、
図3に示した作業の幅W
1、W
2より広くして、畝の間にある幅W
2の非作業領域の全てがいずれかのメッシュ80、81に含まれている。
【0025】
ただし、一実施の形態では、上記のような長方形のメッシュ80の代わりに、円や楕円などの、別の形状を有する判定領域を設定してもよい。その詳細については後述する。
【0026】
図5のフローチャートは、一実施の形態による作業進捗管理方法の処理の一例を示す。作業進捗管理方法の処理は、作業進捗管理装置5が起動するときに開始してもよい。このとき、作業進捗管理装置5の演算装置52が作業進捗管理プログラムを実行することによって、作業進捗管理方法の処理が実現される。
【0027】
図5のフローチャートが開始すると、ステップS1が実行される。ステップS1において、作業進捗管理装置5の取得部521が、畝の位置情報を取得する。
【0028】
一例として、取得部521は、通信装置54を制御して、車載端末3が生成した測位情報を受信してこれを取得する。この測位情報は、
図6の例に示すように、圃場90の畝に沿って移動しながら作業を行う作業車両2が複数の時刻のそれぞれに通過した測位点71の位置を表す位置情報を含む。ここで、作業車両2が作業機20を用いて行う作業は、例えば、播種である。
【0029】
取得部521は、測位情報に含まれる測位点71の位置情報に基づいて、畝の位置情報を取得する。より詳細には、取得部521は、連続する2つの測位時刻に測位された2つの測位点71を結ぶ移動経路72のうち、作業車両2がある畝から次の畝へ移動するときに旋回した曲線の部分を除いた、直線または直線に近似可能な曲線の部分を、畝の形状を表す直線として抽出する。取得部521は、この直線に含まれる測位点71を、畝の位置情報として抽出する。
図6に示した例の場合は、
図7に示す畝91の位置情報が得られる。
【0030】
図5のステップS1の後、
図5のステップS2が実行される。ステップS2において、作業進捗管理装置5の設定部522が、圃場90に判定領域を設定する。判定領域とは、上述のとおり、作業車両2がその領域を通過したとき、圃場90のうち、その領域に対応付けられた作業領域に対する作業は完了したと判定する基準として用いる、仮想的な領域である。
【0031】
設定部522は、畝91に含まれる測位点71のそれぞれについて、対応する判定領域を設定する。一例として、
図8に示すように、この判定領域82の形状は長方形であってもよい。この長方形の第1の辺の長さd
1は、隣接する2つの畝91の間隔の平均値であり、この長方形の第1の辺に直交する第2の辺の長さd
2は、1つの畝91に含まれて隣接する2つの測位点71の間隔の平均値である。
【0032】
一例として、全ての判定領域82について、その形状を表す長方形の第2の辺は、互いに平行である。このとき、第2の辺の方向の、任意の基準方向に対する傾きの角度は、圃場90に含まれる畝91の、この基準方向に対する傾きの角度の平均値である。
図8の例において、南北の方向または経線の方向を基準方向Yとして用いるとき、判定領域82を表す長方形の第2の辺の、基準方向Yに対する傾きは、角度θである。
【0033】
さらに、
図8の例に示す、別の基準方向Xとして、東西の方向または緯線の方向を用いてもよい。このとき、判定領域82を表す長方形の第1の辺の方向を、基準方向Xに対する同じ傾きの角度を有するように設定してもよい。ただし、この場合において、判定領域82を表す形状は、厳密には長方形でなくてもよい。
【0034】
判定領域82を表す長方形の中心は、この判定領域82に対応する測位点71と重なっていてもよい。このとき、複数の判定領域82は、複数の畝91のそれぞれの長手方向に並ぶように設定される。また、ある測位点71に対応する判定領域82は、別の測位点71に対応する別の判定領域82と接していてもよいし、部分的に重なっていてもよいし、離れていてもよい。
【0035】
別の例として、
図9に示すように、圃場90に設定される判定領域83の形状は、円であってもよい。この場合、判定領域83を表す円の中心は、この判定領域83に対応する測位点71と重なっていてもよい。また、判定領域83を表す円の直径は、隣接する2つの畝91の間隔の平均値の長さd
1であってもよいし、1つの畝91に含まれて隣接する2つの測位点71の間隔の平均値の長さd
2であってもよいし、長さd
1および長さd
2の平均値であってもよい。ある測位点71に対応する判定領域83は、別の測位点71に対応する別の判定領域83と接していてもよいし、部分的に重なっていてもよいし、離れていてもよい。
【0036】
さらに別の例として、
図10に示すように、圃場90に設定される判定領域84の形状は、楕円であってもよい。この場合、判定領域84を表す楕円の長径(または短径)は、隣接する2つの畝91の間隔の平均値の長さd
3であり、この楕円の短径(または長径)は、1つの畝91に含まれて隣接する2つの測位点71の間隔の平均値の長さd
2である。
【0037】
また、
図8の長方形の場合と同様に、全ての判定領域84について、その形状を表す楕円の短軸(または長軸)は、互いに平行であってもよい。このとき、短軸(または長軸)の、任意の基準方向に対する傾きの角度は、圃場90に含まれる畝91の、この基準方向に対する傾きの角度の平均値である。
【0038】
判定領域84を表す楕円の中心は、この判定領域84に対応する測位点71と重なっていてもよい。ある測位点71に対応する判定領域84は、別の測位点71に対応する別の判定領域84と接していてもよいし、部分的に重なっていてもよいし、離れていてもよい。
【0039】
いずれの場合も、圃場90に設定される判定領域82、83、84の位置および範囲は、測位点71の位置と、隣接する測位点71の間隔の平均値と、隣接する畝91の間隔の平均値と、任意の基準方向に対する傾きの角度の平均値との少なくとも一部に基づいて決定される。
【0040】
ステップS2の後、
図5のステップS3が実行される。ステップS3において、作業進捗管理装置5の取得部521は、作業機20の位置情報を取得する。
【0041】
一例として、取得部521は、上述したステップS1の例と同様に、通信装置54を制御して、車載端末3が生成した測位情報を受信して取得する。ただし、このときに作業車両2が行う作業は、ステップS1で行った作業と同じ圃場90の、同じ畝91に対して、後から行う作業である。一例として、ステップS3で行う作業は、収穫である。ここで、ステップS1で作業を行う作業機20と、ステップS3で作業を行う作業機20とは、互いに異なってもよい。
【0042】
ステップS3の後、
図5のステップS4が実行される。ステップS4において、作業進捗管理装置5の検出部523は、圃場90に設定された複数の判定領域82、83、84のうち、作業機20が通過した作業済み判定領域を検出する。より詳細には、検出部523は、ステップS3で取得された作業車両2の位置情報が表す測位点71のそれぞれについて、ステップS2で設定した複数の判定領域82、83、84のいずれかの内側にあるか否かを判定する。もしくは、検出部523は、ステップS2で設定した複数の判定領域82、83、84のそれぞれについて、ステップS3で取得された作業車両2の位置情報が表す測位点71を含むか否かを判定する。この判定の結果として、検出部523は、複数の判定領域82、83、84のうち、その内側に測位点71が少なくとも一度は存在した判定領域82、83、84を、作業済み判定領域として検出する。このとき、作業済み判定領域の検出精度を向上させるために、ステップS3で測位を行うGNSSアンテナを、作業機20の、圃場90に対して作業を行う作業位置に設けてもよい。もしくは、コンバインのように、作業車両2と、作業機20とが、作業装置として一体化されている場合は、GNSSアンテナを、作業装置の、圃場90に対して作業を行う作業位置に設けてもよい。
【0043】
ステップS4の後、
図5のステップS5が実行される。ステップS5において、作業進捗管理装置5の算出部524は、圃場90に対する作業の進捗率を算出する。より詳細には、ステップS4で検出した作業済み判定領域の総数を、ステップS2で圃場90に設定した判定領域82、83、84の総数で割り算することで、作業進捗率を算出する。
【0044】
ステップS5の後、
図5のステップS6が実行される。ステップS6において、作業進捗管理装置5の出力部525は、作業進捗率を表す進捗率情報を出力する。より詳細には、作業進捗管理装置5の出力部525が、通信装置54を制御して、ネットワーク4を介する通信によって進捗率情報を外部端末6へ送信するなどして出力する。外部端末6は、受信した進捗率情報が表す作業進捗率を、使用者が確認できるように画面で表示するなどして出力する。ここで、複数の圃場90を、算出された作業進捗率に基づいて色分け表示してもよい。一例として、注目している圃場90の作業進捗率が25%未満であれば緑色に、25%以上かつ50%未満であれば黄緑色に、50%以上かつ75%未満であれば黄色に、75%以上かつ100%未満であればオレンジ色に、100%であれば赤色に、それぞれ色分けして表示してもよい。このようにすることで、複数の圃場90の作業進捗率をより容易に把握して管理することができる。
【0045】
ステップS6が完了すると、
図5のフローチャートの処理は終了する。
【0046】
以上に説明したように、一実施の形態によれば、圃場90に複数の判定領域82、83、84を設定し、これら複数の判定領域82、83、84のうちの、作業機20が通過した作業済み判定領域の割合を作業進捗率として算出することができる。その結果、現実の作業状況に即した作業進捗率を効率よく算出することができる。
【0047】
(変形例、その1)
上記の実施の形態では、
図5のステップS1において、畝91の位置情報を取得するために、作業進捗管理装置5の取得部521が、作業車両2に搭載された車載端末3が生成した測位情報を用いる場合の構成について説明した。この構成の変形例として、畝91の位置情報が、作業進捗管理装置5の記憶装置53に予め記憶されている場合について説明する。
【0048】
この変形例では、
図5のステップS1において、作業進捗管理装置5の取得部521は、畝91の位置情報を、記憶装置53から読み出すことによって取得する。ここで、記憶装置53に記憶されている畝91の位置情報は、例えば、使用者が外部端末6を操作するなどして入力したデータであってもよいし、圃場90の情報から撮影した写真を画像処理するなどして生成したデータであってもよい。
【0049】
(変形例、その2)
上記の実施の形態では、
図5のステップS1で畝の位置情報を取得するときに播種を行い、ステップS3で作業済み判定領域を検出するときに収穫を行う場合の構成について説明したが、ステップS1における作業と、ステップS3における作業との組み合わせは、上記の構成に限定されない。一例として、ステップS1で畝立てを行う場合は、ステップS3で播種または植付から収穫までのいずれかの作業を行ってもよい。別の例として、ステップS1で播種または植付を行う場合は、ステップS3で施肥、防除、収穫などのいずれかの作業を行ってもよい。
【0050】
(変形例、その3)
上記の実施の形態では、
図5のステップS2において、判定領域の寸法を規定する長方形の各辺の長さ、円の直径、または、楕円の長径および短径を、隣接する2つの畝91の間隔の平均値の長さd
1と、1つの畝91に含まれて隣接する2つの測位点71の間隔の平均値の長さd
2とに基づいて算出する場合の構成について説明した。この構成の変形例として、長さd
1、d
2を、上記とは異なる方法で決定してもよい。一例として、長さd
1、d
2の少なくとも片方を、予め決められた固定値に設定してもよいし、隣接する2つの畝91の間隔および/または1つの畝に含まれて隣接する2つの測位点71の間隔に基づいて算出してもよい。
【0051】
(変形例、その4)
上記の実施の形態では、
図5のステップS2において、長方形の判定領域を設定する場合の構成について説明した。この構成の変形例として、判定領域は正方形であってもよい。一例として、この正方形の辺の長さは、隣接する2つの畝91の間隔の平均値として算出した長さd
1であってもよいし、1つの畝91に含まれて隣接する2つの測位点71の間隔の平均値として算出した長さd
2であってもよいし、これらの長さd
1、d
2の平均値であってもよい。
【0052】
(変形例、その5)
上記の実施の形態では、
図5のステップS2において、測位点71のそれぞれに対応する判定領域82、83、84を設定する場合の構成について説明した。この構成の変形例として、それぞれの畝91に沿って設定される判定領域82、83、84の総数を、その畝91に含まれる測位点71の総数から増減してもよい。一例として、判定領域82、83、84の総数を増やす場合は、測位時刻が連続する2つの実在する測位点71の間に、仮想的な測位点71を設定して、実在する測位点71と、仮想的な測位点71とのそれぞれに対応する判定領域82、83、84を設定してもよい。反対に、判定領域82、83、84の総数を減らす場合は、測位時刻が連続する2つの実在する測位点71のうちの片方だけに対応する判定領域82、82、84を設定してもよい。こうすることで、測位を行ったときの作業車両2の車速と、サンプリング周期との組み合わせによらず、判定領域82、83、84の、畝91の長手方向における間隔を、測位点71の位置に基づいて適度な距離に調節することができる。また、複数の判定領域82、83、84を、複数の測位点71の位置の少なくとも一部をそれぞれ含むように設定してもよい。
【0053】
(変形例、その6)
上記の実施の形態では、
図5のステップS3において測位を行うGNSSアンテナを、作業機20の、圃場90に対して作業を行う作業位置に設ける場合の構成について説明した。この構成の変形例として、
図11を参照して、作業車両2の位置情報に基づいて作業位置情報を算出する方法について説明する。
図11の例に示すように、作業車両2の位置情報は、作業車両2に搭載された車載端末3のGNSSアンテナの測位位置21を表す。そして、作業車両2が圃場90に対して作業を行う作業位置201は、作業機20の所定の基準位置である。測位位置21と、作業位置201は、必ずしも一致しないが、作業車両2に対してGNSSアンテナが固定されており、かつ、作業車両2に対して作業機20が固定されていれば、測位位置21と作業位置201との位置関係も固定されている。したがって、測位位置21に対する作業位置201の相対的位置を予め測定しておくことによって、作業位置201を、測位位置21と、作業車両2の進行方向D
1とに基づいて算出することができる。なお、ある測位点71における進行方向D
1は、その測位点71の位置情報と、その測位点71の前または後に測位した測位点71の位置情報とに基づいて算出することができる。
【0054】
この変形例は、
図12の例に示すように、作業機20の作業位置202が、作業車両2の進行方向D
1に直交する方向にオフセットしている場合にも適用可能である。さらに、この変形例は、
図13の例に示すように、作業機20が複数の作業位置201、202、203を有する場合にも適用可能である。このような場合には、ステップS4において、複数の判定領域82、83、84のうち、その内側に作業位置201、202、203の少なくとも1つが、少なくとも一度は存在した判定領域82、83、84を、作業済み判定領域として検出する。この場合は、作業位置201、202、203のそれぞれにGNSSアンテナを設ける場合と比較して、使用するGNSSアンテナの総数を節約することができ、また、車載端末3から作業進捗管理装置5へ測位情報を送信するための通信コストも節約することができる。
【0055】
(変形例、その7)
上記の実施の形態では、
図5のステップS4において、作業進捗管理装置5の検出部523が、複数の判定領域82、83、84のうち、その内側に測位点71が少なくとも一度は存在した判定領域82、83、84を、作業済み判定領域として検出する場合の構成について説明した。この構成の変形例として、測位時刻が連続する2つの測位点71を結ぶ仮想的な直線が少なくとも一度は重なった判定領域82、83、84を、作業済み判定領域として検出してもよい。この場合、実際には作業車両2および/または作業機20が通過した場所に対応する判定領域82、83、84を、作業車両2の車速と、サンプリング周期と、判定領域82、83、84の位置関係との組み合わせによって検出できない可能性を減らすことができる。
【0056】
(変形例、その8)
上記の実施の形態では、
図5のステップS6において、作業進捗率を表す進捗率情報を出力するために、作業進捗管理装置5の出力部525が進捗率情報を外部端末6へ送信する場合の構成について説明した。この構成の変形例として、出力部525は、外部端末6とは別の端末やサーバなどへ進捗率情報を送信してもよい。また、さらなる変形例として、出力部525は、入出力装置55を制御して、入出力装置55に含まれる表示装置に、進捗率情報が表す作業進捗率を、使用者が確認できるように表示するなどして出力してもよい。
【0057】
(第2の実施の形態)
上述した第1の実施の形態のうち、上記の「変形例、その6」では、
図12に示すように、作業機20の作業位置202が、作業車両2の測位位置21から、作業車両2の進行方向D
1に直交する方向にオフセットしている場合でも、作業位置202の位置情報を取得することによって、作業済み判定領域を精度良く検出することができる構成について説明した。本実施の形態では、作業位置202が測位位置21から、進行方向D
1に直交する方向にオフセットしている場合でも、測位位置21に基づいて作業済み判定領域を精度良く検出することができる構成について説明する。
【0058】
本実施の形態による作業進捗管理システム1は、第1の実施の形態による作業進捗管理システム1と同じである。ただし、本実施の形態による作業装置は、
図12の例と同様に、作業機20の作業位置202が、作業車両2の測位位置21から、作業車両2の進行方向D
1に直交する方向にオフセットしている。作業車両2から見て進行方向D
1に直交する方向を、以降、オフセット方向と呼ぶ。オフセット方向には、進行方向D
1に対して左右2種類のオフセット方向が含まれる。これら2種類のオフセット方向を区別するとき、オフセット方向の第1向きまたは第2向きと呼ぶ。また、オフセット方向における、作業車両2の測位位置21から、作業機20の作業位置202までの距離を、オフセット長さと呼ぶ。
【0059】
本実施の形態による作業進捗管理方法および作業間直管理プログラムは、第1の実施の形態による作業進捗管理方法および作業間直管理プログラムと、それぞれ、
図5のフローチャートの各ステップに以下の点を変更することによって得られる。
【0060】
本実施形態において、
図5のフローチャートのうち、ステップS1は、第1の実施の形態の場合と同様である。ただし、ステップS1において、作業進捗管理装置5の取得部521は、畝91の長手方向に含まれる第1長手方向(例えば、南から北へ向かう方向)と第2長手方向(例えば、北から南へ向かう方向)のうち、いずれか1つの方向を、基準方向として選択する。一例として、ここでは、
図14に示すように、基準方向D
Rとして南から北へ向かう方向を選択した場合について説明する。
【0061】
本実施形態において、
図5のフローチャートのうち、ステップS2において、作業進捗管理装置5の設定部522は、
図14に示すように、畝91の左右両側に沿って2種類の判定領域83A、83Bを設定する。より詳細には、設定部522は、
図15に示すように、畝91の測位点71のそれぞれに、一対の判定領域83A、83Bを設定する。このとき、設定部522は、
図5のフローチャートのステップS1で取得された測位点71のそれぞれについて、畝91の長手方向に直交する方向に含まれる第1向きおよび第2向きの各々に、注目している測位点71から所定の距離だけ離れた位置を中心とする判定領域83A、83Bを設定する。以降、判定領域83A、83Bを区別しないとき、これらを判定領域83と総称する。
【0062】
また、
図15に示すように、同じ測位点71に設定された判定領域83A、83Bは部分的に重なり合っていてもよい。さらに、
図16に示すように、第1の畝91Aに含まれる第1の測位点71Aに設定された判定領域83Aと、第1の畝91Aに隣接する第2の畝91Bに含まれる第2の測位点71Bに設定された判定領域83Bとが、部分的に重なり合っていてもよい。
【0063】
なお、判定領域83A、83Bの寸法と、判定領域83A、83Bの中心から対応する測位点71までの距離とは、それぞれ、隣接する2本の畝91の間の距離や、作業装置のオフセット長さなどに基づいて適宜に決定してもよい。
【0064】
本実施形態において、
図5のフローチャートにおけるステップS2の後、ステップS3の代わりに、作業進捗管理装置5の取得部521は、
図17に示すフローチャートのステップS31~S33を実行する。ステップS31において、取得部521は、通信装置54を制御して、車載端末3が生成した測位情報を受信する。
【0065】
図17のステップS31の後、ステップS32が実行される。ステップS32において、作業進捗管理装置5の取得部521は、作業車両2に対する作業機20のオフセット情報を取得する。オフセット情報は、オフセット方向を表す情報と、オフセット長さを表す情報とを含む。オフセット情報は、作業進捗管理装置5の記憶装置53に予め格納されていてもよい。この場合、取得部521は、記憶装置53から読み出すことによってオフセット情報を取得する。もしくは、オフセット情報は、作業車両2の車載端末3の記憶装置に予め格納されていてもよい。この場合、取得部521は、車載端末3から受信することによってオフセット情報を取得する。一例として、ここでは、
図18、
図19に示すように、オフセット方向が作業車両2の進行方向D
1、D
2に対して右側を向いている場合について説明する。
【0066】
図17のステップS32の後、ステップ33が実行される。ステップS33において、作業進捗管理装置5の取得部521は、作業車両2の測位情報に基づいて作業車両2の移動方向を算出する。より詳細には、注目している測位情報が表す位置と、注目している測位情報の前または/および後の測位情報が表す位置とに基づいて、注目している測位情報が表す位置における作業車両2の移動方向を算出する。
【0067】
図17のステップS33の後、
図5のステップS4が実行される。ステップS4において、作業進捗管理装置5の検出部523は、作業車両2が通過した判定領域83A、83Bのうち、作業機20が作業を行った畝91の測位点71に対応する方を、作業済み判定領域として検出する。この検出について、
図16を参照して説明する。
図16の例では、2つの測位点71A、71Bがあり、一方の測位点71Aに対応して判定領域83Aが設定されており、他方の測位点71Bに対応して判定領域83Bが設定されている。これら2つの測位点71A、71Bは、それぞれ、基準方向D
Rに沿って延在して隣接する2本の畝91(図示せず)に含まれている。ここで、これら2つの判定領域83A、83Bは、少なくとも部分的に重なり合っている。この重なり合う領域を、作業車両2の測位位置21が通過したとき、作業車両2が、測位点71A、71Bを含む2つの畝91のどちらに対して作業を行ったのかを、作業車両2の進行方向D
1、D
2と、畝91の基準方向D
Rと、オフセット情報とに基づいて、検出部523が判定する。検出部523は、この判定の結果に基づいて、作業車両2が通過した判定領域83A、83Bのうち、作業機20が作業を行った方の畝91に設定されている方の判定領域83を、作業済み判定領域として決定する。
【0068】
図18の例に示すように、作業車両2の、注目している測位情報が表す位置に対応する進行方向D
1と、畝91A、91Bの基準方向D
Rとが同じ方向であるとき、検出部523は、基準方向D
Rに対して、作業車両2の進行方向D
1に対する作業機のオフセット方向と同じ方向にある判定領域83を、作業済み判定領域として検出する。なお、検出部523は、進行方向D
1と、基準方向D
Rとの間の角度が所定の閾値より小さいとき、進行方向D
1と基準方向D
Rとが同じ方向であると判定してもよい。
【0069】
反対に、
図19の例に示すように、作業車両2の、注目している測位情報が表す位置に対応する進行方向D
2と、畝91A、91Bの基準方向D
Rとが逆の方向であるとき、検出部523は、基準方向D
Rに対して、作業車両2の進行方向D
2に対する作業機のオフセット方向とは逆の方向にある判定領域83を、作業済み判定領域として検出する。なお、検出部523は、進行方向D
2とは逆の方向と、基準方向D
Rとの間の角度が所定の閾値より小さいとき、進行方向D
1と基準方向D
Rとが逆の方向であると判定してもよい。
【0070】
図5のステップS4の後、ステップS5が実行される。ステップS5において、作業進捗管理装置5の算出部524は、圃場90に対する作業の進捗率を算出する。ただし、本実施の形態では、第1の実施の形態と比較して、判定領域83A、83Bの総数が2倍であるので、ステップS4で検出した作業済み判定領域の総数を、判定領域83A、83Bの総数の半分で除算した比を作業進捗率として算出する。
【0071】
図5のステップS5の後の処理は、第1の実施の形態の場合と同じである。
【0072】
以上に説明したように、本実施の形態によれば、作業位置202が測位位置21から、進行方向D1に直交する方向にオフセットしている場合でも、測位位置21に基づいて作業済み判定領域を精度良く検出することができる。
【0073】
(変形例、その9)
上述した第2の実施の形態では、
図14、
図15に示したように、判定領域83A、83Bが円形である場合の構成について説明した。この構成の変形例として、判定領域83A、83Bは楕円、正方形、長方形、またはその他の形状を有していてもよい。
【0074】
(変形例、その10)
上述した第2の実施の形態では、
図17のフローチャートにおいて、先にステップS32を実行し、その後にステップS33を実行する場合の構成につい説明した。この構成の変形例として、ステップS33を先に実行し、その後にステップS32を実行してもよいし、ステップS32、S33を並行して実行してもよい。
【0075】
以上、発明者によってなされた発明を実施の形態に基づき具体的に説明したが、本発明は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。また、実施の形態に説明したそれぞれの特徴は、技術的に矛盾しない範囲で自由に組み合わせることが可能である。
【0076】
(付記)
各実施の形態で記載した作業進捗管理方法、作業進捗管理システムおよび作業進捗管理プログラムは、以下のように言うことができる。
【0077】
第1の態様に係る作業進捗管理方法は、
圃場の中に複数の判定領域を設定することと、
前記圃場の中で移動しながら第1作業を行う第1作業装置の第1位置情報を取得することと、
前記第1位置情報に基づいて、前記複数の判定領域のうち、前記第1作業装置が通過した判定領域を作業済み判定領域として検出することと、
前記複数の判定領域の第1総数と、前記作業済み判定領域の第2総数とに基づいて、前記第1作業の進捗率を算出することと、
前記進捗率を表す情報を出力することと
を含む。
【0078】
第2の態様に係る作業進捗管理方法は、第1の態様に係る作業進捗管理方法であって、
前記圃場は、それぞれが互いに平行に延在するように形成された複数の畝を備え、
前記設定することは、
前記複数の判定領域を、前記複数の畝のそれぞれの長手方向に並ぶように設定すること
を含む。
【0079】
第3の態様に係る作業進捗管理方法は、第2の態様に係る記載の作業進捗管理方法であって、
前記設定することは、
前記複数の判定領域に含まれる第1判定領域群を、前記複数の畝のそれぞれの、前記長手方向に直交する第1方向の側に設定することと、
前記複数の判定領域に含まれる第2判定領域群を、前記複数の畝のそれぞれの、前記長手方向に直交する、前記第1方向とは逆の第2方向の側に設定することと
をさらに含み、
前記第1作業装置が測位信号を受信する測位位置に対する、前記第1作業装置の作業機が前記複数の畝の少なくとも1つに対して作業を行う作業位置の、前記第1作業装置の進行方向に直交するオフセット方向におけるオフセット向きおよびオフセット長さを表すオフセット情報を取得することと、
前記第1位置情報に基づいて、前記第1作業装置の、測位位置ごとの移動方向を算出することと
をさらに含み、
前記検出することは、
前記オフセット向きと前記オフセット長さとに基づいて、前記測位位置ごとに、前記第1作業装置が、前記長手方向に含まれる所定の基準方向と同じ方向に移動しているとき、前記第1判定領域群または前記第2判定領域群の一方に含まれる判定領域を前記作業済み判定領域として検出し、前記第1作業装置が前記基準方向とは逆の方向に移動しているとき、前記第1判定領域群または前記第2判定領域群の他方に含まれる判定領域を前記作業済み判定領域として検出すること
を含む。
【0080】
第4の態様に係る作業進捗管理方法は、第3の態様に係る作業進捗管理方法であって、
前記設定することは、
前記複数の畝に含まれ隣接する第1畝と第2畝との間に、前記第1判定領域群の少なくとも一部と、前記第2判定領域群の少なくとも一部とが重なり合うように設定すること
をさらに含む。
【0081】
第5の態様に係る作業進捗管理方法は、第1~第4の態様のいずれかに係る作業進捗管理方法であって、
前記第1作業の前に、前記圃場の中で移動しながら第2作業を行う第2作業装置の第2位置情報を取得すること
をさらに含み、
前記設定することは、
前記第2位置情報に基づいて前記複数の判定領域を設定すること
を含む。
【0082】
第6の態様に係る作業進捗管理方法は、第5の態様に係る作業進捗管理方法であって、
前記複数の判定領域の前記位置を設定することは、
前記複数の判定領域を、前記第2位置情報に含まれる複数の測位点の位置の少なくとも一部をそれぞれ含むように設定すること
を含む。
【0083】
第7の態様に係る作業進捗管理方法は、第5の態様に係る作業進捗管理方法であって、
前記複数の判定領域の前記寸法を設定することは、
前記寸法を、前記複数の畝のうちの隣接する2つの畝の間隔および/または前記複数の畝のうちの1つの畝に含まれて隣接する2つの測位点の間隔に基づいて設定すること
を含む。
【0084】
第8の態様に係る作業進捗管理方法は、第1~第7の態様のいずれか一つに係る作業進捗管理方法であって、
前記第1位置情報を取得することは、
前記第1作業装置としての第1作業機を移動させる作業車両の第3位置情報を取得することと、
前記第3位置情報と、前記作業車両の進行方向と、前記第3位置情報を取得する位置としての前記作業車両の基準位置に対する、前記作業機が前記圃場に対して前記第1作業を行う作業位置の位置関係とに基づいて、前記第1位置情報を算出することと
を含む。
【0085】
第9の態様に係る作業進捗管理方法は、第1~第8の態様のいずれか一つに係る作業進捗管理方法であって、
前記複数の判定領域のそれぞれの形状は、円または楕円である。
【0086】
第10の態様に係る作業進捗管理方法は、第1~第9の態様のいずれか一つに係る作業進捗管理方法であって、
前記検出することは、
前記第1位置情報が表す複数の測位点のうち、測位時刻が連続する2つの測位点を結ぶ仮想的な直線が少なくとも一度は重なった判定領域を、前記作業済み判定領域として検出すること
を含む。
【0087】
第11の態様に係る作業進捗管理システムは、
圃場の中に複数の判定領域を設定する設定部と、
前記圃場の中で移動しながら第1作業を行う第1作業装置の第1位置情報を取得する取得部と、
前記第1位置情報に基づいて、前記複数の判定領域のうち、前記第1作業装置が通過した判定領域を作業済み判定領域として検出する検出部と、
前記複数の判定領域の第1総数と、前記作業済み判定領域の第2総数とに基づいて、前記第1作業の進捗率を算出する算出部と、
前記進捗率を表す情報を出力する出力部と
を備える。
【0088】
第12の態様に係る作業進捗管理プログラムは、
実行することによって所定の処理を実現するための作業進捗管理プログラムであって、
前記処理は、
圃場の中に複数の判定領域を設定することと、
前記圃場の中で移動しながら第1作業を行う第1作業装置の第1位置情報を取得することと、
前記第1位置情報に基づいて、前記複数の判定領域のうち、前記第1作業装置が通過した判定領域を作業済み判定領域として検出することと、
前記複数の判定領域の第1総数と、前記作業済み判定領域の第2総数とに基づいて、前記第1作業の進捗率を算出することと、
前記進捗率を表す情報を出力することと
を含む。
【符号の説明】
【0089】
1 作業進捗管理システム
2 作業車両
20 作業機(作業装置)
21 測位位置
201、202、203 作業位置
3 車載端末
4 ネットワーク
5 作業進捗管理装置
51 バス
52 演算装置
521 取得部
522 設定部
523 検出部
524 算出部
525 出力部
53 記憶装置
530 記録媒体
531 作業進捗管理プログラム記憶部
54 通信装置
55 入出力装置
6 外部端末
71 測位点
72 移動経路
80、81 メッシュ
82、83、84 判定領域
83A 第1判定領域
83B 第2判定領域
9、90 圃場
91 畝
d1、d2 長さ
D1、D2 進行方向
DR 基準方向
W1、W2、W3 幅
W10、W20 寸法
X、Y 基準方向
θ 角度