(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168216
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】高電子移動度トランジスタの構成及び製造方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/338 20060101AFI20231116BHJP
H01L 21/31 20060101ALI20231116BHJP
H01L 21/318 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
H01L29/80 H
H01L21/31 B
H01L21/318 B
【審査請求】有
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023007573
(22)【出願日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】111117893
(32)【優先日】2022-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】TW
(71)【出願人】
【識別番号】515124783
【氏名又は名称】環球晶圓股▲分▼有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】劉嘉哲
(72)【発明者】
【氏名】林子堯
【テーマコード(参考)】
5F045
5F058
5F102
【Fターム(参考)】
5F045AA04
5F045AB14
5F045AB17
5F045AB18
5F045AB33
5F045AC15
5F045AD11
5F045AD12
5F045AD13
5F045AD14
5F045AF02
5F045AF03
5F045AF04
5F045AF09
5F045CA07
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5F045EK27
5F058BB01
5F058BB02
5F058BB06
5F058BC08
5F058BF06
5F058BF20
5F058BF36
5F102GJ02
5F102GJ03
5F102GJ04
5F102GJ05
5F102GJ10
5F102GK04
5F102GK08
5F102GL04
5F102GQ01
5F102GV08
5F102HC01
(57)【要約】 (修正有)
【課題】高電子移動度トランジスタ構成及び製造方法を提供することにより、高品質となるパッシベーション層を提供して高電子移動度トランジスタの性能を高めること。
【解決手段】高電子移動度トランジスタ構成の製造方法は、パッシベーション層及びバリア層を同一の成長室に中断せずに成長させるように制御する。
【効果】温度、圧力や雰囲気が激しく変化することにより、パッシベーション層が成長している際に欠陥が生じたりパッシベーション層とバリア層との間の境界に品質が劣化したりすることを避けることができ、ひいては、高品質となるパッシベーション層及び高品質となるパッシベーション層とバリア層との間の境界を提供して、高電子移動度トランジスタ構成の性能を高める目的を達成することができる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を提供するステップAと、
前記基板の上方に核形成層を形成するステップBと、
前記核形成層の上方にバッファ層を形成するステップCと、
前記バッファ層の上方にチャネル層を形成するステップDと、
前記チャネル層の上方にバリア層を沈積しており、前記バリア層の成長温度が第一成長温度であり、二次元電子ガス領域は、前記チャネル層と前記バリア層との間における境界に沿って前記チャネル層に形成され、成長室において行われるステップEと、
ステップEが行われてから、前記成長室において前記バリア層の上方にパッシベーション層を中断せずに沈積し、前記パッシベーション層の成長温度が前記第一成長温度から昇温領域を介して第二成長温度まで昇温するように制御するステップFと、を含む、ことを特徴とする高電子移動度トランジスタ構成製造方法。
【請求項2】
前記バリア層及び前記パッシベーション層は、同じ圧力と雰囲気という成長の条件で形成されたものである、ことを特徴とする請求項1に記載の高電子移動度トランジスタ構成製造方法。
【請求項3】
ステップFは、高温維持領域に前記第二成長温度を維持するように制御することを含む、ことを特徴とする請求項1に記載の高電子移動度トランジスタ構成製造方法。
【請求項4】
前記パッシベーション層は、前記高温維持領域における成長厚さが前記パッシベーション層全体の厚さに占める比例が50%以上である、ことを特徴とする請求項3に記載の高電子移動度トランジスタ構成製造方法。
【請求項5】
前記第二成長温度は、1000℃以上である、ことを特徴とする請求項1に記載の高電子移動度トランジスタ構成製造方法。
【請求項6】
前記チャネル層における前記二次元電子ガス領域のシート抵抗値を第一シート抵抗値として測量すること、及び、時間帯が経過した後、前記チャネル層における前記二次元電子ガス領域のシート抵抗値を第二シート抵抗値として測量することを含み、
前記時間帯は、三ヶ月以上であり、シート抵抗値における変化比例の絶対値が0.1%以下であり、シート抵抗値の変化比例が(前記第二シート抵抗値-前記第一シート抵抗値)/ 前記第一シート抵抗値*100%として定義される、ことを特徴とする請求項1に記載の高電子移動度トランジスタ構成製造方法。
【請求項7】
基板と、
核形成層と、
バッファ層と、
チャネル層と、
バリア層であって、二次元電子ガス領域が前記チャネル層と前記バリア層との間における境界に沿って前記チャネル層に形成されるバリア層と、
パッシベーション層と、を順に含み、
前記チャネル層における前記二次元電子ガス領域は、時間帯においてシート抵抗値の変化量が1%以下であり、前記時間帯が三ヶ月以上である、ことを特徴とする高電子移動度トランジスタ構成。
【請求項8】
前記パッシベーション層は、全体としてその厚さが100nm以下である、ことを特徴とする請求項7に記載の高電子移動度トランジスタ構成。
【請求項9】
前記パッシベーション層は、その屈折率が2.05~2.28である、ことを特徴とする請求項7に記載の高電子移動度トランジスタ構成。
【請求項10】
前記パッシベーション層は、その表面粗さRMSが0.5nm以下である、ことを特徴とする請求項7に記載の高電子移動度トランジスタ構成。
【請求項11】
前記パッシベーション層は、単位厚さ当たりに受けられる破壊電圧値が1~1.15V/nmである、ことを特徴とする請求項7に記載の高電子移動度トランジスタ構成。
【請求項12】
前記パッシベーション層は、窒化ケイ素である、ことを特徴とする請求項7に記載の高電子移動度トランジスタ構成。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体の技術に関し、特に、高電子移動度トランジスタに関する。
【背景技術】
【0002】
既知の高電子移動率トランジスタ(High Electron Mobility Transistor、HEMT)は、二次元電子ガス(two dimensional electron gas、2-DEG)を備えたトランジスタであり、その二次元電子ガスは、エネルギーバンドが異なる二つの材料間の異質な接合面に隣接する。高電子移動率トランジスタは、ドープ領域をトランジスタのキャリアのチャネルとして用いることなく、高電子移動度を有した二次元電子ガスをトランジスタのキャリアのチャネルとして用いることから、高破壊電圧、高電子移動度、低オン抵抗及び低入力容量などの特性を有し、ハイパワーの半導体裝置に幅広く適用されている。
【0003】
性能を高めるためには、通常に高電子移動度トランジスタにおけるバリア層の上方に、例えば窒化ガリウムのパッシベーション層を成長させることが一般的である。しかし、ガリウムが酸素と接合し易いことにより表面に欠陥が増え、そして、素子に安定性が不足になり、リーク電流が増える問題も現れてしまう。故に、如何にしてパッシベーション層を提供し高電子移動度トランジスタの性能を高めるかということは、早めに解決すべき問題となる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このことに鑑み、高電子移動度トランジスタ構成及び製造方法を提供することにより、高品質となるパッシベーション層を提供して高電子移動度トランジスタの性能を高めることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明が提供する高電子移動度トランジスタ構成製造方法は、
基板を提供するステップAと、
前記基板の上方に核形成層を形成するステップBと、
前記核形成層の上方にバッファ層を形成するステップCと、
前記バッファ層の上方にチャネル層を形成するステップDと、
前記チャネル層の上方にバリア層を沈積しており、前記バリア層の成長温度が第一成長温度であり、二次元電子ガス領域は、前記チャネル層と前記バリア層との間における境界に沿って前記チャネル層に形成され、成長室において行われるステップEと、
前記ステップEが行われてから、前記成長室において前記バリア層の上方にパッシベーション層を中断せずに沈積し、前記パッシベーション層の成長温度が前記第一成長温度から昇温領域を介して第二成長温度まで昇温するように制御するステップFと、を含む。
【0006】
本発明がさらに提供する高電子移動度トランジスタ構成は、基板と、核形成層と、バッファ層と、チャネル層と、バリア層と、パッシベーション層とを順に含み、二次元電子ガス領域は、前記チャネル層と前記バリア層との間における境界に沿って前記チャネル層に形成され、前記チャネル層における前記二次元電子ガス領域は、時間帯においてシート抵抗値の変化量が1%以下であり、前記時間帯が三ヶ月以上である。
【発明の効果】
【0007】
本発明による効果は、以下の通りである。前記パッシベーション層及び前記バリア層於を同一の成長室に中断せずに成長させるように制御することから、温度、圧力や雰囲気が激しく変化することにより前記パッシベーション層が成長している際に欠陥が生じたり前記パッシベーション層と前記バリア層との間の境界に品質が劣化したりすることを避けることができ、ひいては、高品質となるパッシベーション層、及び、前記パッシベーション層と前記バリア層との間の境界を提供して、高電子移動度トランジスタの性能を高める目的を達成することができる。
また、本発明がさらに提供する高電子移動度トランジスタ構成は、前記パッシベーション層を形成するにより、前記チャネル層における前記二次元電子ガス領域は時間帯においてシート抵抗値の変化量が1%以下であり、前記時間帯が三ヶ月以上であるようにして、高電子移動度トランジスタの安定性を高める目的を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明における好ましい実施例に係る高電子移動度トランジスタ構成の製造方法のフローチャートである。
【
図2】本発明における好ましい実施例に係る高電子移動度トランジスタ構成の模式図である。
【
図3】本発明における好ましい実施例に係る成長パッシベーション層について時間と温度との関係図である。
【
図4】本発明における好ましい実施例に係る成長パッシベーション層について時間と温度との関係図である。
【
図5】本発明における好ましい実施例に係る成長パッシベーション層について時間と温度との関係図である。
【
図6】比較例に係る成長パッシベーション層について時間と温度との関係図である。
【
図7】本発明における好ましい実施例に係る成長パッシベーション層について時間と温度との関係図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明をより明確に説明するために、好ましい実施例を挙げて、図面を参照しながら以下のように説明する。
図1に示すように、本発明における好ましい実施例に係る高電子移動度トランジスタ構成の製造方法は、以下のステップを含む。
【0010】
ステップS02は、基板10を提供する。前記基板10は、例えばシリコン(Si)、ヒ化ガリウム(GaAs)、窒化ガリウム(GaN)、炭化ケイ素(SiC)、又は、酸化アルミニウム(Al2O3)基板であってもよい。
【0011】
ステップS04は、前記基板10の上方に核形成層20を形成する。前記核形成層20は、例えば、窒化アルミニウム(AlN)又は窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)の窒化物の核形成層であってもよい。前記核形成層20は、例示的に、有機金属気相成長法(MOCVD)により形成されたものであってもよい。
【0012】
ステップS06は、前記核形成層20の上方にバッファ層30を形成する。前記バッファ層30は、例えば、窒化ガリウム(GaN)の窒化物のバッファ層であってもよい。前記バッファ層30は、例示的に、有機金属気相成長法(MOCVD)により形成されたものであってもよい。
【0013】
ステップS08は、前記バッファ層30の上方にチャネル層40を形成する。前記チャネル層40は、例えば窒化ガリウム(GaN)の窒化物のチャネル層であってもよい。前記チャネル層40は、有機金属気相成長法(MOCVD)により形成されたものであってもよい。
【0014】
ステップS10は、前記チャネル層40の上方にバリア層50を沈積する。前記バリア層50の成長温度が第一成長温度T1であり、前記第一成長温度T1は、700~1000℃が好ましい。二次元電子ガス領域は、前記チャネル層40と前記バリア層50との間における境界に沿って前記チャネル層40に形成される。ステップS10は、成長室において行われる。前記バリア層50は、例えば窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)、窒化アルミニウム(AlN)、窒化アルミニウムインジウム(AlInN)又は窒化アルミニウムインジウムガリウム(AlInGaN)の窒化物バリア層であってもよい。前記バリア層50は、有機金属気相成長法(MOCVD)又は分子線エピタキシー法(MBE)により形成されたものであってもよい。
【0015】
ステップS12は、ステップS10が行われてから、前記成長室において前記バリア層50の上方にパッシベーション層60を中断せずに沈積し、前記パッシベーション層60の成長温度が前記第一成長温度T1から昇温領域RTを介して第二成長温度T2まで昇温するように制御する。前記第二成長温度T2は、1000℃以上である。前記パッシベーション層60は、窒化ケイ素である。前記パッシベーション層60は、有機金属気相成長法(MOCVD)又は分子線エピタキシー法(MBE)により形成されたものであってもよい。前記パッシベーション層60全体の厚さは、100nm以下である。上記全体の厚さとは、前記パッシベーション層60について前記パッシベーション層60と前記バリア層50との境目から前記パッシベーション層60の上面までの距離を意味している。
【0016】
言い換えると、前記バリア層50が前記有機金属気相成長法(MOCVD)又は分子線エピタキシー(MBE)による作業機器の前記成長室に形成された後、ステップS10が済んだ仕掛品が前記成長室から移されたことなく、つまり、前記バリア層50が空気又は前記成長室外の環境に晒されたことなく、前記成長室においてステップS12をそのまま実行して前記パッシベーション層60を形成することになる。言い換えると、前記バリア層50及び前記パッシベーション層60は、同じ空間、圧力及び雰囲気という成長の条件で形成され、しかも、前記パッシベーション層60の最初成長温度が前記バリア層50のほうと同じである。上記同じ雰囲気とは、同一の例えば水素又は窒素などのキャリアガス(carrier gas)を用いるということを意味している。
【0017】
そして、前記パッシベーション層60及び前記バリア層50を同一の成長室において中断せずに成長させるように制御することから、温度、圧力や雰囲気が激しく変化することにより前記パッシベーション層60が成長している際に欠陥が生じたり前記パッシベーション層60と前記バリア層50との間における境界に品質が劣化したりすることを避けることができ、ひいては、高品質となるパッシベーション層60及び高品質となる前記パッシベーション層60と前記バリア層50との間における境界を提供し、高電子移動度トランジスタの性能を高める目的を達成することができる。
【0018】
そのうち、ステップS12は、高温維持領域HTに前記第二成長温度T2を維持するように制御することを含む。言い換えると、
図3に示すように、前記第一成長温度T1を所定時間t1だけ維持して前記バリア層50を成長させ、次に、前記パッシベーション層60を成長させる。前記パッシベーション層60は、その最初成長温度が前記バリア層50のほうと同じであり、前記昇温領域RTを介して前記第二成長温度T2まで昇温してから、前記第二成長温度T2を他の所定時間t2だけ維持して前記パッシベーション層60を必要な厚さに成長させる。そのうち、前記パッシベーション層60は、前記高温維持領域HTにおける成長厚さが前記パッシベーション全体の厚さに占める比例が50%以上である。
【0019】
他の実施例では、
図4に示すように、ステップS12は、前記パッシベーション層60の成長温度が先に低温維持領域LTに前記第一成長温度T1を維持し、前記昇温領域RTを介して昇温してから、前記高温維持領域HTに前記第二成長温度T2を維持するように制御することを含む。そのうち、前記パッシベーション層60全体の厚さは、前記パッシベーション層60が前記低温維持領域LT、前記昇温領域RT及び前記高温維持領域HTにおいて成長した厚さの総計である。また、前記パッシベーション層60は、前記低温維持領域LTにおける成長厚さが前記パッシベーション層60全体の厚さに占める比例が0~25%である。前記パッシベーション層60は、前記昇温領域RTにおける成長厚さが前記パッシベーション層60全体の厚さに占める比例が0~25%である。
【0020】
他の実施例では、前記低温維持領域LTにおける成長厚さが前記パッシベーション層60全体の厚さに占める比例が0%であり、前記パッシベーション層60は、前記昇温領域RTにおける成長厚さが前記パッシベーション層60全体の厚さに占める比例が5~25%であり、前記高温維持領域HTにおける成長厚さが前記パッシベーション層60全体の厚さに占める比例が75~95%である。言い換えると、前記ステップS12においては、先に、前記パッシベーション層60の成長温度が
図3に示すように前記第一成長温度T1から前記昇温領域RTに前記第二成長温度T2まで昇温してから、前記第二成長温度を所定時間t2だけ維持して前記パッシベーション層60を必要な厚さに成長させるように制御する。
【0021】
他の実施例では、前記パッシベーション層60は、前記低温維持領域LTにおける成長厚さが前記パッシベーション層60全体の厚さに占める比例が0~25%であり、前記パッシベーション層60は、前記昇温領域RTの成長厚さが前記パッシベーション層60全体の厚さに占める比例が5~25%であり、前記高温維持領域HTの成長厚さが前記パッシベーション層60全体の厚さに占める比例が50~95%である。
【0022】
再度説明するのは、前記昇温領域RTにおける昇温の速さが好適に10~30℃/minであり、前記昇温領域RTは、
図5に示すように複数の昇温段階を含み、そのうち、昇温段階の数が好適に1~15段階であり、段階ごとに30~60℃だけ昇温し、しかも、昇温の速さが60℃/min以下であるように制御することにより、良好なパッシベーション層60の品質を得ることができる。
【0023】
前記高電子移動度トランジスタ構成の製造方法により生産された高電子移動度トランジスタ構成1は、緻密さが良い薄膜となり、表面粗さが良くなり、耐圧レベルが高い。そのうち、前記パッシベーション層60の屈折率が2.05~2.28を満たし、前記パッシベーション層60の表面粗さRMSが0.5nm以下であり、前記パッシベーション層60における単位厚さあたりに受けられる破壊電圧値為が1~1.15V/nmとなる。前記屈折率は、エリプソメータにより測量されたものである。
【0024】
再度説明するのは、前記高電子移動度トランジスタ構成の製造方法に、前記チャネル層40における前記二次元電子ガス領域のシート抵抗値を第一シート抵抗値として測量すること、及び、時間帯が経過すると前記チャネル層40における前記二次元電子ガス領域のシート抵抗値を第二シート抵抗値として測量することを含む。前記時間帯は、三ヶ月以上である。また、シート抵抗値の変化比例は、(前記第二シート抵抗値-前記第一シート抵抗値)/前記第一シート抵抗値*100%として定義される。前記高電子移動度トランジスタ構成の製造方法により生産された高電子移動度トランジスタ構成1は、シート抵抗値の変化比例の絶対値が0.1%以下になる。言い換えると、前記高電子移動度トランジスタ構成の製造方法により生産された高電子移動度トランジスタ構成1は、シート抵抗値が良い安定性を有することになる。
【0025】
表1を参照しながら、以下に幾つかの比較例及び幾つかの実施例に基づいて説明する。先に説明するのは、第二シート抵抗値が第一シート抵抗値を測量してから四ヶ月後に再度測量したものであり、シート抵抗値の変化比例が上記のように定義されたものであることから、繰り返して説明しない。
〔比較例A-B〕
【0026】
比較例A-Bでは、バリア層の上方にパッシベーション層を沈積しなかった。比較例Aと比較例Bの相違については、比較例Aに係る構成が第一シート抵抗値を測量してからRCA洗浄工程を経たものである一方、比較例Bに係る構成が第一シート抵抗値を測量してからRCA洗浄工程を実行しなかったものである。表1に示すように、比較例Aに係る構成についてRCA洗浄工程を実行する前後において、シート抵抗値が372.7ohm/sqから著しく687ohm/sqまで向上する一方、比較例Bに係る構成についてRCA洗浄の工程を実行しなかったものの、そのシート抵抗値の変化比例が3.57%と高い。
〔比較例C-E〕
【0027】
比較例C-Eでは、バリア層の上方にパッシベーション層を間欠的に沈積する。上記間欠とはバリア層を沈積した後に、沈積バリア層を沈積する成長室において連続的に同じ温度、圧力又は雰囲気に前記パッシベーション層を継続的に成長させないということを意味している。比較例Cと比較例Eとの相違について、比較例C、Dに係る構成が第一シート抵抗値を測量してからRCA洗浄の工程を経たものである一方、比較例Eに係る構成が第一シート抵抗値を測量したにRCA洗浄工程を実行しなかったものである。
【0028】
表1に示すように、比較例C、Dに係る構成は、RCA洗浄工程をする前後に測量されたシート抵抗値に明確な相違が現れず、比較例Aにおいて洗浄工程をする前後におけるシート抵抗値に比べると、1.8倍と向上し、大幅な改良ともいえる。言い換えると、バリア層の上方にパッシベーション層を沈積することにより、シート抵抗値の安定度を少々高めることができる。比較例Eに係る構成は、RCA洗浄工程を実行しなかったものの、シート抵抗値の変化比例が依然として-0.87%と高い。
〔実施例A-B〕
【0029】
実施例A-Bでは、上記高電子移動度トランジスタ構成の製造方法によりバリア層の上方にパッシベーション層を中断せずに沈積する。実施例Aと実施例Bとの相違について、実施例Aに係る構成が第一シート抵抗値を測量してからRCA洗浄工程を経たものである一方、実施例Bに係る構成が第一シート抵抗値を測量した後にRCA洗浄工程を実行しなかったものである。表1に示すように、実施例Aに係る構成は、RCA洗浄工程をする前後に測量されたシート抵抗値に明確な相違が現れず、実施例A、Bに係る構成についてシート抵抗値の変化比例が共に-0.05%である。言い換えると、前記高電子移動度トランジスタ構成の製造方法により生産された高電子移動度トランジスタ構成は、シート抵抗値が良い安定性を有し、シート抵抗値の変化比例の絶対値を0.1%以下に抑えることができる。
【0030】
【0031】
比較例及び幾つかの実施例に基づいて説明する。先に説明するのは、比較例1及び実施例1-4において、比較例1及び実施例1-4がいずれもバリア層を沈積した後に、バリア層を沈積する成長室において連続的に同じ温度、圧力又は雰囲気により前記パッシベーション層を連続的、中断せずに成長させる。そのうち、第一成長温度T1が900℃であり、第二成長温度T2が1000℃であり、前記パッシベーション層60全体の厚さは、上記のように、前記パッシベーション層60が前記低温維持領域LT、前記昇温領域RT及び前記高温維持領域HTにおいて成長した厚さの総合であり、比較例1及び実施例1-4に係るパッシベーション全体の厚さが同じである。また、高温維持領域HTにおける前記パッシベーション層60の厚さ比例は、前記於高温維持領域HTにおける前記パッシベーション層60の成長厚さが前記パッシベーション層60全体の厚さに占める比例であり、昇温領域RTにおける前記パッシベーション層60の厚さ比例は、前記於昇温領域RTにおける前記パッシベーション層60の成長厚さが前記パッシベーション層60全体の厚さに占める比例であり、また、低温維持領域LTにおける前記パッシベーション層60の厚さ比例は、前記低温維持領域LTにおける前記パッシベーション層60の成長厚さが前記パッシベーション層60全体の厚さに占める比例である。
〔比較例1〕
【0032】
比較例1では、
図6に示すように、パッシベーション層の成長温度が前記第一成長温度T1のほうと同じであるように制御する。つまり、パッシベーション層の成長温度が低温維持領域LTに前記第一成長温度T1を所定時間t3だけ維持し、バリア層をパッシベーション層のほうと同じである成長温度において所定厚さだけ成長させるように制御する。表2に示すように、比較例1に係るパッシベーション層は、低温維持領域LTにおける厚さ比例が100%であり、昇温領域RTにおける厚さ比例が0%であり、また、高温維持領域HTにおける厚さ比例が0%である。
〔実施例1〕
【0033】
実施例1では、
図7に示すように、前記パッシベーション層を成長させる際の成長温度が前記第二成長温度T2である。つまり、制御パッシベーション層の成長温度が前記第一成長温度T1から前記第二成長温度T2まで急速に昇温し、前記高温維持領域HTに前記第二成長温度を所定時間t4だけ維持し、パッシベーション層を所定の厚さに成長させるよう制御する。表2に示すように、実施例1に係るパッシベーション層は、低温維持領域LTにおける厚さ比例が0%であり、昇温領域RTにおける厚さ比例が0%であり、また、高温維持領域HTにおける厚さ比例が100%である。再度説明するのは、前記パッシベーション層の成長温度が前記第一成長温度T1から前記第二成長温度T2まで昇温する時間が極めて短いことから、昇温領域RTにおけるパッシベーション層の成長厚さがゼロに近い。
〔実施例2-3〕
【0034】
実施例2、3では、
図3に示すように、前記パッシベーション層の成長温度が前記第一成長温度T1から前記昇温領域RTを介して前記第二成長温度T2まで昇温すると、前記高温維持領域HTにおいて前記第二成長温度T2を所定時間t2だけ維持するように制御する。表2に示すように、実施例2に係るパッシベーション層は、低温維持領域LTにおける厚さ比例が0%であり、昇温領域RTにおける厚さ比例が25%であり、高温維持領域HTにおける厚さ比例が75%である。実施例3に係るパッシベーション層は、低温維持領域LTにおける厚さ比例が0%であり、昇温領域RTにおける厚さ比例が5%であり、また、高温維持領域HTにおける厚さ比例が95%である。
〔実施例4〕
【0035】
実施例4では、
図4に示すように、前記パッシベーション層の成長温度が先に前記低温維持領域LTに前記第一成長温度T1を所定時間ta維持すると、前記第一成長温度が前記昇温領域RTを介して所定時間tbだけ前記第二成長温度T2まで昇温してから、前記高温維持領域HTに前記第二成長温度T2を所定時間tcだけ維持するように制御する。表2に示すように、実施例4に係るパッシベーション層は、低温維持領域LTにおける厚さ比例が25%であり、昇温領域RTにおける厚さ比例が25%であり、また、高温維持領域HTにおける厚さ比例が50%である。
【0036】
表2を参照すると、実施例1-4に示すように、前記パッシベーション層は、前記低温維持領域LTにおける成長厚さが前記パッシベーション全体の厚さに占める比例が0~25%であり、しかも、前記昇温領域RTにおける成長厚さが前記パッシベーション全体の厚さに占める比例が0~25%であるということを満たす場合に、実施例1-4に係る薄膜の屈折率が2.074~2.11であり、比較例1に係る薄膜の屈折率が2.014であるということに比べると、実施例1-4に係る構成が良い屈折率を有することになる。
【0037】
なお、実施例2-3に示すように、前記パッシベーション層は、前記低温維持領域LTにおける成長厚さが前記パッシベーション全体の厚さに占める比例が0%であり、前記昇温領域RTにおける成長厚さが前記パッシベーション全体の厚さに占める比例が5~25%であり、前記高温維持領域HTにおける成長厚さが前記パッシベーション全体の厚さに占める比例が75~95%であるということを満たす場合に、実施例2-3に係る破壊電圧がそれぞれ1.05と1.1 V/nmであり、しかも、RMS粗さがいずれも0.5nmよりも小さく、比較例1に係る破壊電圧が0.96V/nmであり、しかも、RMS粗さが0.5nmよりも大きい。言い換えると、実施例2-3に係る構成は、比較例1のほうに比べると、耐圧レベルが良く、RMS粗さが良い。
【0038】
なお、実施例2-4に示すように、前記パッシベーション層は、前記昇温領域RTにおける成長厚さが前記パッシベーション全体の厚さに占める比例が5~25%であり、前記高温維持領域HTにおける成長厚さが前記パッシベーション全体の厚さに占めるパーセント率が50~95%であるということを満たす場合に、実施例2-4に係るシート抵抗値変化量が0.1%以下になる一方、比較例1に係るシート抵抗値の変化量が0.5%よりも大きい。つまり、実施例2-4に係る構成は、比較例1に比べると、シート抵抗値が良い安定性を有することになる。また、実施例2-4に係る結果に基づいて直接分かるように、全く低温維持領域(比較例1)又は全く高温維持領域(実施例1)に前記パッシベーション層の成長を済ませることに比べると、前記パッシベーション層が成長している際に、前記第一成長温度T1が前記昇温領域RTを介して時間帯において前記第二成長温度まで昇温する(実施例2-4)ように制御すると、シート抵抗値が良い安定性を有する構成を取得することができる。
【0039】
【0040】
本発明は、他の高電子移動度トランジスタ構成1をさらに提供する。
図2に示すように、前記高電子移動度トランジスタ構成1は、基板10、核形成層20、バッファ層30、チャネル層40、バリア層50及びパッシベーション層60を順に含む。そのうち、二次元電子ガス領域は、前記チャネル層と前記バリア層50との間における境界に沿って前記チャネル層40に形成される。前記チャネル層40は、前記二次元電子ガス領域について時間帯においてシート抵抗値の変化量が1%以下であり、前記時間帯が三ヶ月以上である。前記パッシベーション層60を形成することにより、前記チャネル層40における前記二次元電子ガス領域は、前記時間帯においてシート抵抗値の変化量が1%以下になる。前記時間帯は、三ヶ月以上である。そして、高電子移動度トランジスタの安定度を高める目的を達成することができる。本実施例では、前記高電子移動度トランジスタ構成1は、前記高電子移動度トランジスタ構成の製造方法により生産されたものである。
【0041】
そのうち、前記パッシベーション層60が窒化ケイ素であり、前記パッシベーション層60全体の厚さが100nm以下であり、前記パッシベーション層60の屈折率が2.05~2.28であり、前記パッシベーション層60の表面粗さRMSが0.5nm以下であり、前記パッシベーション層60における単位厚さあたりに受けられる破壊電圧値が1~1.15V/nmである。つまり、本発明が提供する前記高電子移動度トランジスタ構成1は、緻密さが良い薄膜となり、表面粗さが良くなり、耐圧レベルとシート抵抗値の安定度が高い。そして、高電子移動度トランジスタの安定度を高める目的を達成することができる。
【0042】
以上より、本発明による効果が以下の通りである。前記パッシベーション層60及び前記バリア層50を同一の成長室において中断せずに成長させるように制御することから、温度、圧力や雰囲気が激しく変化することにより前記パッシベーション層60が成長している際に欠陥が生じたり前記パッシベーション層60と前記バリア層50との間における境界に品質が劣化したりすることを避けることができ、ひいては、高品質となるパッシベーション層60及び高品質となる前記パッシベーション層と前記バリア層との間における境界を提供して、高電子移動度トランジスタの性能を高める目的を達成することができる。また、本発明がさらに提供する高電子移動度トランジスタ構成1は、前記パッシベーション層60を形成することにより、前記チャネル層40における前記二次元電子ガス領域が前記時間帯においてシート抵抗値の変化量が1%以下になる。前記時間帯は、三ヶ月以上である。そして、高電子移動度トランジスタの安定度を高める目的を達成することができる。
【0043】
上述したのは、本発明の好ましい可能な実施例に過ぎず、本発明の明細書及び特許請求の範囲を利用してなされた同等バリエーションは、何れも本発明の特許範囲内に含まれるべきである。
【符号の説明】
【0044】
S02、S04、S06、S08、S10、S12 ステップ
1 高電子移動度トランジスタ構成
10 基板
20 核形成層
30 バッファ層
40 チャネル層
50 バリア層
60 パッシベーション層
HT 高温維持領域
LT 低温維持領域
RT 昇温領域
T1 第一成長温度
T2 第二成長温度
t1、 t2、 t3、t4、 ta、 tb、 tc 所定時間