IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイスの特許一覧

特開2023-168268重いプラスチック材料から作製される物品
<>
  • 特開-重いプラスチック材料から作製される物品 図1
  • 特開-重いプラスチック材料から作製される物品 図2
  • 特開-重いプラスチック材料から作製される物品 図3
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168268
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】重いプラスチック材料から作製される物品
(51)【国際特許分類】
   C08L 101/00 20060101AFI20231116BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20231116BHJP
   C08L 77/00 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
C08L101/00
C08K3/013
C08L77/00
【審査請求】有
【請求項の数】29
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023077047
(22)【出願日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】22172730.8
(32)【優先日】2022-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】591048416
【氏名又は名称】ウーテーアー・エス・アー・マニファクチュール・オロロジェール・スイス
(74)【代理人】
【識別番号】100098394
【弁理士】
【氏名又は名称】山川 茂樹
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・ダーン
(72)【発明者】
【氏名】ブノワ・シュネル
【テーマコード(参考)】
4J002
【Fターム(参考)】
4J002AA001
4J002BB002
4J002BN151
4J002CF001
4J002CK021
4J002CK022
4J002CL001
4J002CL011
4J002DA066
4J002DE096
4J002DL007
4J002DM006
4J002FA047
4J002FD016
4J002FD017
4J002GC00
4J002GM00
4J002GN00
4J002GQ00
(57)【要約】      (修正有)
【課題】材料の結合力を向上させることにより材料の機械特性を向上させる重いプラスチック材料から作製される物品を提供する。
【解決手段】物品は、重量で、50%以上及び85%以下で存在する金属及び/又はセラミック充填材と、15%以上及び50%以下で存在する少なくとも1つのポリマーと、任意で、0%以上及び10%未満で存在する少なくとも1つの結合剤とを含む材料から作製され、前記ポリマーは、充填材に結合される、及び/又は材料が少なくとも1つの結合剤を含む場合、結合剤は、1つ又は複数の水素結合によってポリマー及び充填材のそれぞれに結合され、ポリマー及び/又は結合剤は、水素結合ドナーを含み、水素結合ドナーは、-[(C=O)NH]-ユニットを生成するように、C=O基である水素結合アクセプタに隣接するNH基であり、-[(C=O)NH]-ユニットは、ポリマー及び/又は結合剤の少なくとも1モル%に相当する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
2から7g/cmの間の密度を有する材料から作製される物品であって、前記材料は、100%の合計重量で、
-3g/cm以上の密度を有する金属及び/又はセラミック材料から作製される充填材(2)であって、前記充填材(2)は、50%以上及び85%以下のパーセンテージで存在する、充填材(2)と、
-15%以上及び50%以下のパーセンテージで存在する少なくとも1つのポリマー(4)と、
-任意で、0%以上及び10%未満のパーセンテージで存在する少なくとも1つの結合剤(3)と、
-任意で、0から10%の間のパーセンテージで存在する少なくとも1つの補強剤と、
-任意で、0から5%の間のパーセンテージで存在する少なくとも1つの顔料と、
-任意で、0から5%の間のパーセンテージで存在する少なくとも1つの展延剤及び/又は可塑剤と
を含み、前記ポリマー(4)は、前記充填材(2)に結合される、及び/又は前記材料が少なくとも1つの結合剤(3)を含む場合、前記結合剤(3)は、1つ又は複数の水素結合によって前記ポリマー(4)及び前記充填材(2)のそれぞれに結合され、
前記ポリマー(4)及び/又は前記結合剤(3)は、水素結合ドナーを含むことを特徴とし、前記水素結合ドナーは、-[(C=O)NH]-ユニットを生成するように、C=O基である水素結合アクセプタに隣接するNH基であり、
前記-[(C=O)NH]-ユニットは、前記ポリマー(4)及び/又は前記結合剤(3)の少なくとも1モル%に相当することを特徴とする、物品。
【請求項2】
前記充填材(2)は、60から80%の間の重量パーセンテージで存在し、前記ポリマー(4)は、20から40%の間の重量パーセンテージで存在することを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項3】
前記充填材(2)は、65から75%の間の重量パーセンテージで存在し、前記ポリマー(4)は、25から35%の間の重量パーセンテージで存在することを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項4】
前記充填材(2)は、50から75%の間の重量パーセンテージで存在し、前記ポリマー(4)は、25から50%の間の重量パーセンテージで存在することを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項5】
前記充填材(2)は、50から65%の間の重量パーセンテージで存在し、前記ポリマー(4)は、35から50%の間の重量パーセンテージで存在することを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項6】
前記結合剤(3)は、0.1から10%の間の重量パーセンテージで存在することを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項7】
前記結合剤(3)は、0.1から5%の間の重量パーセンテージで存在することを特徴とする、請求項6に記載の物品。
【請求項8】
前記結合剤(3)は、0.5から3%の間の重量パーセンテージで存在することを特徴とする、請求項6に記載の物品。
【請求項9】
前記金属及び/又はセラミック材料は、表面酸化物、水酸化物、及び/又は水素内に含まれる電子孔上に、前記ポリマー(4)及び/又は前記結合剤(3)との配位及びイオン結合を含むことを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項10】
前記ポリマー(4)及び/又は前記結合剤(3)は、NH、OH、COC、C=O及びCOOHから選択される1つ又は複数の基を有することを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項11】
前記ポリマー(4)は、ポリアミド、好ましくはポリアミド11であることを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項12】
前記結合剤(3)は、ポリウレタンであることを特徴とする、請求項11に記載の物品。
【請求項13】
前記ポリマー(4)は、前記充填材(2)に結合される、及び/又は前記材料が少なくとも1つの結合剤(3)を含む場合、前記結合剤(3)は、1つ又は複数のイオン結合によって前記ポリマー(4)及び前記充填材(2)のそれぞれに結合され、前記ポリマー(4)は、前記充填材(2)及び/又は前記結合剤(3)の陰イオンに結合されるNH+基を有することを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項14】
前記充填材(2)は、O-陰イオンを有することを特徴とする、請求項13に記載の物品。
【請求項15】
前記結合剤(3)は、R-COO-陰イオンを有することを特徴とする、請求項13に記載の物品。
【請求項16】
前記ポリマー(4)は、前記充填材(2)に結合される、及び/又は前記材料が少なくとも1つの結合剤(3)を含む場合、前記結合剤(3)は、1つ又は複数の配位結合によって前記ポリマー(4)及び前記充填材(2)のそれぞれに結合され、前記ポリマー(4)及び/又は前記結合剤(3)は、前記充填材(2)の表面上の電子孔との前記配位結合を生成するアミン又はカルボン酸官能基を有することを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項17】
前記結合剤(3)は、少なくとも20個の炭素原子を含むことを特徴とする、請求項6に記載の物品。
【請求項18】
前記材料は、前記充填材(2)と、ポリウレタンである前記ポリマー(4)とを含み、前記結合剤(3)を添加しないことを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項19】
前記材料は、前記充填材(2)と、前記ポリマー(4)としてのポリアミドと、前記結合剤(3)としてのポリウレタンとを含むことを特徴とする、請求項6に記載の物品。
【請求項20】
前記材料は、100%のパーセンテージで、65から80%の間のパーセンテージの前記充填材(2)と、19.5から34.5%の間のパーセンテージの前記ポリマー(4)と、0.5から5%の間のパーセンテージの前記結合剤(3)とを含むことを特徴とする、請求項19に記載の物品。
【請求項21】
前記材料は、100%のパーセンテージで、65から75%の間のパーセンテージの前記充填材(2)と、24から34%の間のパーセンテージの前記ポリマー(4)と、1から3.5%の間のパーセンテージの前記結合剤(3)とを含むことを特徴とする、請求項20に記載の物品。
【請求項22】
前記材料は、100%のパーセンテージで、50から75%の間のパーセンテージの前記充填材(2)と、24.5から49.5%の間のパーセンテージの前記ポリマー(4)と、0.5から5%の間のパーセンテージの前記結合剤(3)とを含むことを特徴とする、請求項19に記載の物品。
【請求項23】
前記材料は、100%のパーセンテージで、50から65%の間のパーセンテージの前記充填材(2)と、34.5から49.5%の間のパーセンテージの前記ポリマー(4)と、0.5から5%の間のパーセンテージの前記結合剤(3)とを含むことを特徴とする、請求項22に記載の物品。
【請求項24】
前記材料は、前記充填材(2)と、前記ポリマー(4)としてのポリアミドと、前記結合剤(3)としてのアミド又はアミン官能基を有するヒドロキシシランとを含むことを特徴とする、請求項6に記載の物品。
【請求項25】
前記材料は、前記充填材(2)と、前記ポリマー(4)としてのポリエステルと、前記結合剤(3)としてのアミド又はアミン官能基を有するヒドロキシシランとを含むことを特徴とする、請求項6に記載の物品。
【請求項26】
前記補強剤は、1から6%の間の重量パーセンテージで存在することを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項27】
前記補強剤は、ガラス繊維、ガラスビーズ、炭素繊維及び/又はアラミド繊維から形成されることを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項28】
前記物品は、測時器外部部品又はムーブメント構成要素から構成されることを特徴とする、請求項1に記載の物品。
【請求項29】
請求項1に記載の物品を製造する方法であって、前記方法は、
a)前記充填材(2)、前記ポリマー(4)並びに任意で前記結合剤(3)、前記補強剤及び前記顔料のための基材を提供するステップであって、
-前記充填材(2)は、3g/cm以上の密度を有する金属及び/又はセラミック材料から作製され、前記充填材(2)は、50%以上及び85%以下のパーセンテージで存在し、
-前記ポリマー(4)は、15%以上及び50%以下のパーセンテージで存在し、
-前記結合剤(3)は、0%以上及び10%未満のパーセンテージで存在し、
-前記補強剤は、0から10%の間のパーセンテージで存在し、
-前記顔料は、0から5%の間のパーセンテージで存在し、
-前記展延剤及び/又は前記可塑剤は、0から5%の間のパーセンテージで存在する、ステップと、
b)射出成形技法又は3D印刷技法により、前記物品を生成するように前記基材を成形するステップと
を含み、前記充填材(2)のための前記基材は、0.01m/g、好ましくは2m/g、より好ましくは5m/g以上のBET比表面積を有する粉末であり、前記成形ステップの後、前記ポリマー(4)は、前記充填材(2)に結合される、及び/又は前記材料が少なくとも1つの結合剤(3)を含む場合、前記結合剤(3)は、1つ又は複数の水素結合によって前記ポリマー(4)及び前記充填材(2)のそれぞれに結合され、
前記ポリマー(4)及び/又は前記結合剤(3)は、水素結合ドナーを含むことを特徴とし、前記水素結合ドナーは、(C=O)NHユニットを生成するように、C=O基である水素結合アクセプタに隣接するNH基であり、
前記(C=O)NHユニットは、前記ポリマー(4)及び/又は前記結合剤(3)の少なくとも1モル%に相当することを特徴とする、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重い耐衝撃性プラスチック材料から作製される物品、例えば、測時器構成要素に関する。
【0002】
本発明は、重いプラスチックから作製されるそのような物品を製造する方法にも関する。
【背景技術】
【0003】
中間部品及びバンド等、多数の外部部品構成要素は、プラスチック材料から作製される。これらの構成要素は、成形方法を使用して生成でき、この方法は修正作業を一切伴わずに様々な形状を入手可能であるという利点をもたらす。これらのプラスチック材料構成要素は、1に近い密度を有する、したがって、軽量であるという特徴を有する。このことは、手首に特定の重量がある腕時計の着用を求めているユーザにとっては、欠点と言える。
【0004】
この欠点を改善するため、例えば、文献欧州特許第2482142号明細書において、ムーブメントであるか、外部部品構成要素であるかにかかわらず、タングステン粉末等の高密度金属粉末を充填したプラスチック材料の測時器構成要素を生成することが提案されている。これらの構成要素は、射出成形方法を使用して生成され、後続の修正を伴わずにモールド内での成形の利点を保持することを可能にする一方で、構成要素の密度を増大させるものである。
【0005】
したがって、これらの材料は、射出による成形の容易さといったプラスチックの利点と、密度、冷たい感触及び金属の外観といった金属の利点とを組み合わせたものである。
【0006】
しかし、ホストのポリマー母材と比較して、破断及び伸びに対する抵抗の減少がこれらの材料で観察されることがある。この減少は、マイクロメートルサイズの金属粉末をナノメートルサイズのポリマー鎖に組み込んだことによる、材料の結合力のなさに起因する。したがって、材料の結合力のなさによるこの特性の低下は、金属(又はセラミック)充填材、ポリマーとしてのポリオレフィン(ポリエチレン、ポリプロピレン)、及び結合剤としてのポリウレタンを含む材料で観察される。
【0007】
この機械特性の減少は、材料の衝撃吸収能力に影響を与える。したがって、この種類の材料は、例えば、中間部品等を生成する測時器の分野等、耐衝撃性を必要とする用途には適していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第2482142号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、材料の結合力を向上させ、これにより、材料の機械特性を向上させる、新規で重いプラスチック材料組成物を提供することである。
【0010】
本発明は、時計製造分野で特に興味深い用途を見いだしている。しかし、本発明は、そのような用途に限定するものではない。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的で、本発明は、物品を提供し、物品は、100%の合計重量で、
-3g/cm以上の密度を有する金属及び/又はセラミック材料から作製される充填材であって、前記充填材は、50%以上及び85%以下のパーセンテージで存在する、充填材と、
-15%以上及び50%以下のパーセンテージで存在する少なくとも1つのポリマーと、
-任意で、0%以上及び10%未満のパーセンテージで存在する少なくとも1つの結合剤と、
-任意で、0から10%の間のパーセンテージで存在する少なくとも1つの補強剤と、
-任意で、0から5%の間のパーセンテージで存在する少なくとも1つの顔料と、
-任意で、0から5%の間のパーセンテージで存在する少なくとも1つの展延剤及び/又は可塑剤と
を含む材料から作製される。
【0012】
本発明によれば、ポリマーは、充填材に結合される、及び/又は結合剤は、材料が少なくとも1つの結合剤を含む場合、1つ又は複数の水素結合によって充填材及びポリマーのそれぞれに結合される。
【0013】
ポリマー及び/又は結合剤は、水素結合ドナーを含み、水素結合ドナーは、-[(C=O)NH]-ユニットを生成するように、C=O基である水素結合アクセプタに隣接するNH基である。
【0014】
-[(C=O)NH]-ユニットは、ポリマー及び/又は結合剤の少なくとも1モル%に相当する。
【0015】
充填材、ポリマー、及び適用可能な場合、結合剤を結合するこれらの水素結合は、材料の良好な結合力の保証を可能にする。これらの水素結合は、典型的には100kJ/mol又は50kJ/mol未満である相互作用エネルギーを有し、製造工程中、温度が上昇する間に分子間の結合を破壊可能にし、これにより、冷却及び結合再生成後、材料のより良好な混合及びより良好な結合力を保証するという特徴を有する。
【0016】
本発明による材料は、測時器の用途のために、2.5GPa以上のヤング率の十分な剛性、5%以上の十分な破断点伸び、及び30MPa以上の十分な引張り強度を有する。本発明による材料は、良好な靭性及び2から7g/cmの間の密度も更に有する。
【0017】
以前の段落で述べたこれらの特徴に加えて、本発明による物品は、以下の中から、個々の基準に基づき、又は技術的に可能なあらゆる組合せにより考慮される、1つ又は複数の相補的な特徴を有し得る:
-充填材は、60から80%の間の重量パーセンテージで存在し、ポリマーは、20から40%の間の重量パーセンテージで存在する、
-充填材は、65から75%の間の重量パーセンテージで存在し、ポリマーは、25から35%の間の重量パーセンテージで存在する、
-充填材は、50から75%の間の重量パーセンテージで存在し、ポリマーは、25から50%の間の重量パーセンテージで存在する、
-充填材は、50から65%の間の重量パーセンテージで存在し、ポリマーは、35から50%の間の重量パーセンテージで存在する、
-結合剤は、0.1から10%の間の重量パーセンテージで存在する、
-結合剤は、0.1から5%の間の重量パーセンテージで存在する、
-結合剤は、0.5から3%の間の重量パーセンテージで存在する、
-金属及び/又はセラミック材料は、表面酸化物、水酸化物及び/又は水素内に含まれる電子孔上に、ポリマー及び/又は結合剤との配位及びイオン結合を含む、
-ポリマー及び/又は結合剤は、NH、OH、COC、C=O及びCOOHから選択される1つ又は複数の基を有する、
-ポリマーは、ポリアミド、好ましくはポリアミド11である、
-結合剤は、ポリウレタンである、
-ポリマーは、充填材に結合される、及び/又は材料が少なくとも1つの結合剤を含む場合、結合剤は、1つ又は複数のイオン結合によってポリマー及び充填材のそれぞれに結合され、ポリマーは、充填材及び/又は結合剤の陰イオンに結合されるNH+基を有する、
-充填材は、O-陰イオンを有する、
-結合剤は、R-COO-陰イオンを有する、
-ポリマーは、充填材に結合される、及び/又は材料が少なくとも1つの結合剤を含む場合、結合剤は、1つ又は複数の配位結合によってポリマー及び充填材のそれぞれに結合され、ポリマー及び/又は結合剤は、充填材の表面上の電子孔と前記配位結合を生成するアミン又はカルボン酸官能基を有する、
-結合剤は、少なくとも20個の炭素原子を含む、
-材料は、充填材と、ポリウレタンであるポリマーとを含み、前記結合剤を添加しない、
-材料は、充填材と、ポリマーとしてのポリアミドと、結合剤としてのポリウレタンとを含む、
-材料は、100%のパーセンテージで、65から80%の間のパーセンテージの前記充填材と、19.5から34.5%の間のパーセンテージの前記ポリマーと、0.5から5%の間のパーセンテージの前記結合剤とを含む、
-材料は、100%のパーセンテージで、65から75%の間のパーセンテージの前記充填材と、24から34%の間のパーセンテージの前記ポリマーと、1から3.5%の間のパーセンテージの前記結合剤とを含む、
-材料は、100%のパーセンテージで、50から75%の間のパーセンテージの前記充填材と、24.5から49.5%の間のパーセンテージの前記ポリマーと、0.5から5%の間のパーセンテージの前記結合剤とを含む、
-材料は、100%のパーセンテージで、50から65%の間のパーセンテージの前記充填材と、34.5から49.5%の間のパーセンテージの前記ポリマーと、0.5から5%の間のパーセンテージの前記結合剤とを含む、
-材料は、ポリマーとしてのポリアミドを有する充填剤と、結合剤としてのアミド又はアミン官能基を有するヒドロキシシランとを含む、
-材料は、ポリマーとしてのポリエステルを有する充填剤と、結合剤としてのアミド又はアミン官能基を有するヒドロキシシランとを含む、
-補強剤は、1から6%の間の重量パーセンテージで存在する、
-補強剤は、ガラス繊維、ガラスビーズ、炭素繊維及び/又はアラミド繊維から形成される、
-物品は、測時器外部部品又はムーブメント構成要素である。
【0018】
更に、本発明は、成形、射出又は3D印刷によってこの材料を製造する方法に関する。
【0019】
方法は、ポリマー及び/又は結合剤が存在する場合は結合剤との水素結合並びに任意の相補的なイオン及び/又は配位結合を生成するのに十分な反応表面積を有する充填材を得られるよう、充填材の基材が、0.01m/g、好ましくは2m/g、より好ましくは5m/g以上のBETを有する粉末の形態である、という特徴を有する。したがって、反応表面積は、セラミック(酸化物、窒化物若しくは炭化物)又は金属(鉄鋼、タングステン等)の種類にかかわらず、水酸化物、酸化物及び/又は電子孔を含む。
【0020】
本発明の更なる特徴及び利点は、添付の図面を参照しながら非限定的な例として示される好ましい実施形態の以下の説明で明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明による重いプラスチック材料から作製された中間部品を備える計時器の図である。
図2】充填材の表面と結合剤とポリマーとの間の相互作用を表す概略図である。
図3】充填材と結合剤とポリマーとの間に生成された水素結合を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明は、プラスチック材料と金属又はセラミック材料とを含む複合材料から作製される物品に関する。
【0023】
例えば、物品は、腕時計、宝飾品、バンド等の構成要素とし得る。
【0024】
物品は、ベゼルの構成要素、例えば、台、アーム、基体とすることもできる。
【0025】
非限定的で非網羅的な様式では、本発明による物品は、スポーツ用品の物品、料理器具の物品、音楽物品若しくは楽器、革製品若しくは裁縫用品の物品、自動車若しくは航空機の構成要素、電子物品の構成要素(例えば、電話保護ケース、コンピュータ・キーボード、コンピュータ・キーボードのキー、ヘッドセット等)、筆記具等の構成要素とし得るか、又はこれらを全体に形成し得る。
【0026】
有利には、物品は、構成要素又は構成要素の一部であり、これらの機能は、衝突及び衝撃に対して特定の耐性を必要とする。
【0027】
時計製造という特定の分野において、この物品は、例えば、中間部品、裏蓋、ベゼル、ボタン、バンド環、文字板、針、文字板の目盛り等の外部部品構成要素とし得る。
【0028】
例として、本発明の材料から作製される中間部品1を図1に示す。
【0029】
別の実施形態の例によれば(図示せず)、本発明による物品は、例えば、板等のムーブメントの構成要素とし得る。
【0030】
本発明によれば、物品は、金属及び/又はセラミック充填材並びにポリマーである2つの主要構成要素を含む材料から作製される。したがって、材料は、複合材料と言える。
【0031】
任意で、材料は、充填材とポリマーとの間の物理化学相互作用が用途の種類に従って十分ではない場合、及び既に強化させてある本発明による材料の耐衝撃性をより一層増大させることが求められる場合、1つ又は複数の結合剤を含み得る。
【0032】
任意で、材料は、補強剤も含み得る。
【0033】
任意で、材料は、1つ又は複数の顔料も含み得る。
【0034】
任意で、材料は、展延剤及び/又は可塑剤も含み得る。
【0035】
充填材は、金属及び/又はセラミックとし得る。
【0036】
金属材料は、従来の炭素鋼、ステンレス鋼、銅、銅合金、チタン、チタン合金又はタングステンから構成し得る。好ましくは、金属材料は、ニッケル不含ステンレス鋼から構成される。
【0037】
セラミック材料は、ZrO、CeO、ZnO等の炭化物、窒化物又は酸化物から構成し得る。
【0038】
充填材は、金属材料及びセラミック材料の混合物を含む充填材からも構成し得る。
【0039】
充填材は、材料の重量で50%以上及び85%以下の重量パーセンテージで存在する。
【0040】
例えば、充填材は、材料の(包括的)重量で50から75%の間である。
【0041】
例えば、充填材は、比較的低い密度の材料が求められる場合、材料の(包括的)重量で50から65%の間である。
【0042】
例えば、充填材は、材料密度の更なる増大が求められる場合、材料の(包括的)重量で60から80%の間、例えば、重量で65から75%の間である。
【0043】
有利には、上記の例において、充填材は、全体として、重量の大部分である、即ち、材料の重量で50%を超える。
【0044】
本発明によれば、充填材は、製造工程の間に、高比表面積(≧0.01m/g)を有する粉末の形態で導入され、この粉末は、事実上、特定の処理の不在下、金属又はセラミック充填材の種類にかかわらず、その表面上に、組成物修飾部及び/又は欠陥を有する。充填材は、粉末の酸化表面上に存在する酸化物又は水酸化物、及び電子孔等の欠陥から構成でき、これにより、ポリマー及び/又は結合剤が存在する場合は結合剤との様々な水素結合を介した相互作用を可能にする。したがって、図2は、材料が結合剤を含む場合、充填材2の表面と、結合剤3とポリマー4との間に確立された相互作用を概略的に示す。
【0045】
材料は、充填材及び/又は任意で結合剤が存在する場合は結合剤とのイオン及び/又は配位結合に加えて、水素結合の生成が可能な1つ又は複数のポリマーを含む。全てのこうした物理化学結合及び特に水素結合は、典型的には5から100kJ/モルの間の低相互作用エネルギーを有するという特徴を有し、材料の射出又は3D印刷中、温度上昇の間に分子間の結合を破壊可能にする。これらの物理化学結合は、射出又は3D印刷後、材料の冷却中に再生成される。この特徴は、構成要素の間のより良好な混合、より良好な適合性、並びにしたがって、分子規模での材料のより良好な結合力、及びしたがって、材料のより良好な全体結合力を可能にする。
【0046】
ポリマー又はポリマーのセットは、(包括的)材料の15から50%の間の重量パーセンテージに相当する。
【0047】
例えば、ポリマー又はポリマーのセットは、(包括的)材料の25から50%の間の重量パーセンテージに相当する。
【0048】
例えば、ポリマー又はポリマーのセットは、(包括的)材料の35から50%の間の重量パーセンテージに相当する。
【0049】
例えば、ポリマー又はポリマーのセットは、(包括的)材料の20から40%の間、例えば、25から35%の間の重量パーセンテージに相当する。
【0050】
充填材が材料の大部分である場合、ポリマー又はポリマーのセットは、重量で50%未満パーセンテージとなる。
【0051】
有利には、ポリマー又はポリマーのセットは、充填材と水素結合を生成するように選択される。この目的で、ポリマー又はポリマーのセットは、NH又はOH基等の水素原子を有する基を含む水素結合ドナー、及び窒素、酸素、又はフッ素、塩素、臭素等ハロゲン基の原子等、水素よりも電気的に陰性の原子を有する基を含む水素結合アクセプタを含む。水素結合は、金属又はセラミック充填材の酸化表面上に存在する水酸化物及び酸化物により生成される。
【0052】
例えば、充填材の表面上の水酸化物基は、ポリマーのC=O、R-OH、COC、R-NHR’基と相互作用する。
【0053】
好ましくは、水素結合ドナー及びアクセプタは、ポリマー鎖上で隣接する。
【0054】
好ましくは、ポリマー又はポリマーのセットは、水素結合ドナーを含み、水素結合ドナーは、-[(C=O)NH]-ユニットを生成するように、C=O基である水素結合アクセプタに隣接するNH基である。
【0055】
好ましくは、ポリマー又はポリマーのセットは、R-C(=O)-NH-R’鎖のポリアミドとし得る、したがって、-[(C=O)NH]-ユニットを含み、したがって、結合アクセプタ酸素原子を含むC=O基及び結合ドナー水素原子を含むN-H基は、隣接している。
【0056】
好ましくは、-[(C=O)NH]-ユニットは、ポリマー又はポリマーのセット鎖の少なくとも1%に相当する。
【0057】
好ましくは、ポリマーは、生物由来の再生可能供給源であるポリアミド、例えば、ポリアミド11である。
【0058】
更に、イオン及び/又は配位結合は、ポリマーと充填材との間に生成され、更なる相互作用を生成し、材料の結合力を更に強化し得る。
【0059】
本発明の範囲におけるイオン結合は、マイナスに帯電している塩基性官能基とプラスに帯電している酸性官能基との間の相互作用からもたらされる。イオン結合は、金属又はセラミック充填材の表面上のOH基からのHイオンをポリマーに移すことにより生成される。例えば、ポリマーは、NH基を含む、より詳細には、酸-塩基反応後、R-NHX+1-R’+/MO-が得られるポリアミドとし得る。
【0060】
配位結合は、特殊な共有結合であり、共有電子の二重項は、1つの電子が結合電子上のそれぞれから得られる従来の共有結合とは反対に、原子の一方からのみ得られる。本発明によれば、この配位結合には、より詳細には、ポリマーによって生成されるルイス塩基を必要とし、ルイス酸を生成する充填材の表面上の電子孔と関連付けられる。非結合対を有する原子を含む官能基を有するあらゆるポリマーは、電子孔を「安定させる」ようにこの対を共有し得る。例えば、ポリマーは、R(C=O)NR’内、RO(C=O)NR’内及びR(C=O)OR’内の窒素又は酸素の非結合対から構成し得る。ポリマーは、アミン(NH)又はカルボン酸(COOH)官能基も有することができ、アミン(NH)又はカルボン酸(COOH)官能基は、充填材の表面上の電子孔とこの配位結合を生成することが可能である。例えば、ポリウレタン及びポリエステルを挙げることができる。
【0061】
材料は、0%から10%未満の間、有利には0.1から10%の間、より有利には0.1から5%の間、より一層有利には0.5から3%の間のパーセンテージで結合剤を含み得る。
【0062】
結合剤の使用により、本発明によるそのような材料から作製される物品の機械特性、特に耐衝撃性を更に強化することを可能にする。
【0063】
結合剤は、主に1つ又は複数の水素結合によって充填材及びポリマーに結合可能である。充填材と結合剤との間、及びポリマーと結合剤との間の水素結合は、使用されるポリマーの性質に従って、ポリマーと充填材との間の水素結合に取って代わるか、又はポリマーと充填材との間の水素結合を補足し得る。
【0064】
上記で説明したイオン及び/又は配位結合は、更なる相互作用も生成し、材料の結合力、即ち、結合剤と充填材との間及び結合剤とポリマーとの間の結合力を更に強化し得る。
【0065】
結合剤の存在下、水素結合は、主に、結合剤と充填材との間及び結合剤とポリマーとの間に生成され、充填材とポリマーとの間には必ずしも直接的な水素結合を伴わないことを明記する。ポリマーに関し、結合剤は、C=O、COC、OH、NH又はCOOHから選択される少なくとも1つの基を含み得る。
【0066】
好ましくは、水素結合ドナー及びアクセプタは、結合剤の鎖上で隣接する。
【0067】
好ましくは、結合剤は、水素結合ドナーを含み、水素結合ドナーは、-[(C=O)NH]-ユニットを生成するように、C=O基である水素結合アクセプタに隣接するNH基である。
【0068】
好ましくは、-[(C=O)NH]-ユニットは、結合剤の鎖の少なくとも1%に相当する。
【0069】
好ましくは、結合剤は、-[O-C=O-NH]-ユニットを含むポリウレタンである。
【0070】
好ましくは、結合剤は、少なくとも20個の炭素原子の長鎖を有する。
【0071】
やはり例として、結合剤は、鎖上にアミド又はアミン官能基、及び有利には少なくとも20個の炭素原子を有するヒドロキシシランであり、水素、イオン及び/又は配位結合を可能にし得る。
【0072】
同じく例として、結合剤も、充填材の表面上のOH基からのイオンHが移ることで、製造工程の間、充填材と結合剤との間に生じる酸-塩基反応によって、イオン結合を生成できる。
【0073】
結合剤は、結合剤とポリマーとの間のイオン結合も生成し得る。ポリマーは、塩基を生成するカルボン酸COOH及びアミンR’-NH官能基の一方又は他方をそれぞれ含み、酸-塩基反応後、RCOO-/R’-NH+1+が得られる。
【0074】
代替的に、ポリマー及び結合剤は、接触前に既に帯電していることがある。この場合、上記の例の場合、結合剤及びポリマーはそれぞれ、塩基性官能基RCOO-又は酸性官能基R’-NHX+1+を有する。
【0075】
任意で、材料は、0から10%の間、好ましくは0%(0%を除外)から10%以下の間、有利には1から6%の重量パーセンテージで補強剤も含み得る(包括的)。補強剤は、様々な形態、例えば、繊維又は粒子の形態で存在し得る。例えば、補強剤は、ガラス繊維、ガラスビーズ、炭素繊維及び/又はアラミド繊維から構成でき、300μm以下、及び好ましくは200μmの繊維長さを有する。補強剤の目的は、材料の靭性を強化する、射出中の材料の収縮を制限する、及び/又は材料の導電率を強化することである。
【0076】
任意で、材料は、重量で0から5%の間、好ましくは0%(0%を除く)から5%以下の間の合計パーセンテージで1つ又は複数の顔料も含み得る。顔料は、有機顔料であっても、無機顔料であってもよい。例えば、顔料は、黒のためのカーボン・ブラック、赤のためのジケトピロロピロール(例えば、BASFのIrgazin Red K3840LW)、青のためのフタロシアニン銅(例えば、BASFのHeliogen Blue K7096)、黄色のためのモノアゾ顔料(例えば、BASFのPaliotol Yellow K1760)等から構成し得る。
【0077】
任意で、材料は、ワックス(パラフィン)又は他の用途の樹脂(テルペン、フェノール等)等の展延剤及び/又は可塑剤も含み、製造中の実装を促進し得る。これら展延剤及び可塑剤の全ては、重量で0から5%の間、好ましくは0%(0%を除く)から5%以下の間である。
【0078】
例えば、図3によって表されるように、材料は、金属充填材M及び/又はセラミック充填材2と、ポリマー4としてのポリアミドと、好ましくは少なくとも20個の炭素原子を有する結合剤3としてのポリウレタンとを含む。好ましくは、ポリマー4はポリアミド11である。
【0079】
ポリアミドP11は、ヒマシ油から得られるため、再生可能供給源である。したがって、本発明によって提供される材料は、生物由来材料である。
【0080】
この例では、ポリマーと結合剤と充填材との間の水素結合は、点線で表される。
【0081】
例えば、材料は、100%の重量パーセンテージに対して、
-重量で65から80%の間、例えば、65から75%の間、又は重量で50から75%の間、例えば、50から65%の間のパーセンテージのステンレス鋼等の金属充填材、及び/又は酸化ジルコニウム等のセラミック充填材と、
-重量で19.5から34.5%の間、例えば、24から34%の間、又は24.5から49.5%の間、例えば、34.5から49.5%の間のパーセンテージのポリアミドと、
-0.5から5%の間、例えば1から3.5%の間のパーセンテージのポリウレタンと
を含む。
【0082】
例えば、材料は、100%の重量パーセンテージに対して、
-重量で65から80%の間、例えば、65から75%の間、又は重量で50から75%の間、例えば、50から65%の間のパーセンテージの酸化ジルコニウム等のセラミック充填材と、
-重量で19.5から34.5%の間、例えば、24から34%の間、又は24.5から49.5%の間、例えば、34.5から49.5%の間のパーセンテージのポリアミド11等のポリアミドと、
-0.5から5%の間、例えば1から3.5%の間のパーセンテージのポリウレタンと
を含む。
【0083】
セラミック材料と再生可能供給源の生物由来材料とを組み合わせたそのような材料は、バイオセラミック材料と呼ばれる。
【0084】
例えば、材料は、金属及び/又はセラミック充填材と、ポリウレタンとを含み、ポリウレタンは、ポリマー及び結合剤の両方として作用する。したがって、この例では、ポリマーとは別個の結合剤は不要である。というのは、充填材とポリマーとの間の相互作用は、この工程後の材料の良好な結合力を保証するのに十分であるためである。
【0085】
例えば、材料は、金属及び/又はセラミック充填材と、ポリマーとしてのポリアミドと、結合剤としてのアミド又はアミン官能基を有するヒドロキシシランとを含み、結合剤は、有利には、少なくとも20個の炭素原子を含む。
【0086】
例えば、材料は、金属及び/又はセラミック充填材と、ポリマーとしてのポリエステルと、結合剤としてのアミド又はアミン官能基を有するヒドロキシシランとを含み、結合剤は、好ましくは、少なくとも20個の炭素原子を含む。
【0087】
物品は、成形、射出又は3D印刷によって製造される。方法は、充填材粉末のBETが、反応表面積を得るのに十分でなければならないことを特徴とする。より詳細には、充填材の基材は、2010年ISO9277規格に従って測定される0.01m/g以上、好ましくは2m/g、より好ましくは5m/gのBET比表面積を有する粉末である。
【0088】
射出成形の場合、製造方法は、上記で説明した充填材、ポリマー、結合剤、補強剤及び顔料に言及する以下のステップ:
a)数ミリメートルの顆粒を調製するステップであって、顆粒は、重量で、
-3g/cm以上の密度を有する金属及び/又はセラミック充填材であって、50%以上及び85%以下、例えば、60から80%の間、例えば、65から75%の間、例えば、50から75%の間、例えば、50から65%の間のパーセンテージで存在する充填材、
-全体として15%以上及び50%%以下、例えば、20から40%の間、例えば、25から35%の間、例えば、25から50%の間、例えば、35から50%の間のパーセンテージで存在するポリマー(複数可)、
-任意で、0%以上及び10%未満、有利には0.1から10%の間、より有利には0.1から5%の間、より一層有利には0.5から3%の間のパーセンテージで存在する少なくとも1つの結合剤、
-任意で、0から10%の間のパーセンテージで存在する補強剤、
-任意で、0から5%の間のパーセンテージで存在する顔料(複数可)、
-任意で、展延剤及び/若しくは可塑剤、又は展延剤及び/若しくは可塑剤の混合物であって、前記展延剤及び/若しくは前記可塑剤、又は展延剤及び/若しくは可塑剤の前記混合物は、0から5%の間のパーセンテージで存在する、展延剤及び/若しくは可塑剤、又は展延剤及び/若しくは可塑剤の混合物
を含む、ステップと、
b)物品又は物品の一部を形成するため、例えば、別の部品へのオーバーモールディングによって前記顆粒を射出成形するステップと
を含む。射出は、60から100℃の間、好ましくは70から80℃の間の温度を有するモールド内で実行される一方で、射出中の材料は、200から300℃の間、好ましくは250から300℃の間の温度を有する。
【0089】
ステップa)において、顆粒は、上述した原材料の押出成形から得られた円筒体を抜くことによって製造し得る。有利には、結合剤が存在する場合、結合剤は、第1の段階において、ポリマー顆粒と個別に又は共に押出成形機のホッパに導入され、この導入は、第2の段階において押出成形機に金属又はセラミック粉末を導入する前に行われる。結合剤を個別に導入する場合、結合剤は、500μm以下、好ましくは315μmのd90を有する粉末の形態で、又は液体の形態で導入し得る。顔料は、押出成形の間、有利には第2の段階において導入し得る。押出成形の直前にポリマーを顆粒と混合することも想定し得る。
【0090】
代替実施形態によれば、金属又はセラミック材料、及び結合剤が存在する場合、結合剤は、第1の段階において押出成型機のホッパに導入され、ポリマー及び補強剤を導入する前に金属又はセラミック粉末を結合剤で被覆するようにする。
【0091】
代替的に、物品は、FDM(熱溶解積層法)等の3D印刷によって製造し得る。
【0092】
こうして得られる物品は、金属及び/又はセラミック材料と、ポリマーを含むプラスチック材料と、任意で結合剤とを含み、製品は、押出加工又は射出の間の充填材とポリマーと結合剤との間の反応に由来する。物品は、顔料及び補強剤が存在する場合、補強剤と顔料とを更に含む。
【0093】
本発明による物品は、2.5GPa以上のヤング率、5%以上の破断点伸び、及び30MPa以上の引張り強度を有し、これらの特性は、2019年のISO527-1A規格に従って測定される。
【0094】
例えば、約4mmの直径及び約1.5mmの長さを有する円筒形顆粒からの射出によって中間部品を製造する試験が行われた。
【0095】
以下、表1及び2は、2つの実施形態例を取り、60℃での湿気制御をしない通風オーブン内での24時間のならし前及びその後に得られた特性を伴う。中間部品に対するアイゾット機械弾性試験は、上述した組成物により生成した中間部品の良好な靭性を更に呈した。
【0096】
表3は、結合剤を使用しない本発明による材料組成物の一例を示す。
【0097】
表4は、従来技術による、特に文献EP3674816による重いプラスチック材料から作製された物品の組成物Comp1を示す。
【0098】
表5は、強化繊維を使用しない、従来技術の組成物Comp1の第1の変形形態Comp2を示す。
【0099】
表6は、従来技術の組成物Comp1の第2の変形形態Comp3を示し、充填材、ポリマー及び結合剤の割合は、本発明Inv1、Inv2による例と同じである。そのような変形形態は、文献EP3674816に記載の材料に対して得られた材料の結合力に対する利点及び改善の強調を可能にする。
【0100】
表7は、本発明(Inv1、Inv2、Inv3)及び従来技術の組成物(Comp1、Comp2、Comp3)による組成物に対する様々な剛性、破断点伸び及び破断応力の特性を集めた概要の表である。
【0101】
例1(Inv1)、例2(Inv2)及び例3(inv3)と、従来技術の例4(Comp1)、例5(Comp2)、例6(Comp3)とを比較することによって、特に充填材との水素結合の生成により、充填材との結合力を強化するポリマーの特定の選択に対する利益が示される。
【0102】
良好な結合剤の使用により、物品特性の強化を更に可能にする(例3及び例1)。
【0103】
表1-例1-Inv1
【0104】
表2-例2-Inv2
【0105】
表3-例3-Inv3
【0106】
表4-例4-組成物1(Comp1)
【0107】
表5-例5-組成物2(Comp2)
(強化繊維を有さない組成物1)
【0108】
表6-例6-組成物3(Comp3)
【0109】
表7-例1、例2、例3、例4、例5及び例6の比較-()の間は、ならし前及びその後の特性
【符号の説明】
【0110】
2 充填材
3 結合剤
4 ポリマー
図1
図2
図3
【外国語明細書】