(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168271
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】受信信号の異常の検出方法および検出装置
(51)【国際特許分類】
G01S 19/20 20100101AFI20231116BHJP
G01S 19/28 20100101ALI20231116BHJP
G01S 19/29 20100101ALI20231116BHJP
【FI】
G01S19/20
G01S19/28
G01S19/29
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023077194
(22)【出願日】2023-05-09
(31)【優先権主張番号】P 2022078567
(32)【優先日】2022-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【弁理士】
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】長保 龍
【テーマコード(参考)】
5J062
【Fターム(参考)】
5J062AA01
5J062AA09
5J062BB01
5J062BB02
5J062BB03
5J062CC07
5J062DD22
5J062HH09
(57)【要約】
【課題】エフェメリスに基づく衛星位置から推定した衛星の方向を用いることなく、GNSSにおける受信信号の行路差の異常を含む受信信号の異常を検出する。
【解決手段】時刻同期異常と衛星数異常とのどちらにも分類されていない2個のGNSSアンテナの組み合わせごとに、当該の2個のGNSSアンテナが同時に追尾しているGNSS衛星S#iのうちの2個のGNSS衛星S_iの組み合わせごとに、当該の2個のGNSS衛星S_i各々から前記2個のGNSSアンテナ各々までの行路の差を表す行路差指標が所定の行路差閾値以下のときに、当該の2個のGNSS衛星S_iを行路差異常に分類し、行路差異常に分類されたGNSS衛星S_iの個数が所定の異常判定閾値以上のときに、GNSS信号に異常が発生していると判定する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の衛星それぞれから送信されるGNSS信号を少なくとも3個のアンテナを介して受信して、
前記少なくとも3個のアンテナそれぞれに対応して備えられる少なくとも3個の受信器のうちの2個の受信器の組み合わせごとに、当該の2個の受信器各々の内部時刻どうしが時刻同期していないときに、当該の2個の受信器それぞれに対応する2個のアンテナの組み合わせを時刻同期異常に分類し、
前記少なくとも3個のアンテナのうちの2個のアンテナの組み合わせごとに、当該の2個のアンテナが同時に追尾している衛星の個数が所定の閾値未満のときに、当該の2個のアンテナの組み合わせを衛星数異常に分類し、
前記時刻同期異常と前記衛星数異常とのどちらにも分類されていない2個のアンテナの組み合わせごとに、当該の2個のアンテナが同時に追尾している前記衛星のうちの2個の衛星の組み合わせごとに、当該の2個の衛星各々から前記2個のアンテナ各々までの行路の差を表す行路差指標が所定の行路差閾値以下のときに、当該の2個の衛星を行路差異常に分類し、
前記行路差異常に分類された衛星の個数が所定の閾値以上のときに、前記GNSS信号に異常が発生していると判定する、
ことを特徴とする受信信号の異常の検出方法。
【請求項2】
前記GNSS信号に異常が発生しているという判断を所定の時間だけ維持する、
ことを特徴とする請求項1に記載の受信信号の異常の検出方法。
【請求項3】
前記GNSS信号に異常が発生しているという判断が維持されているときに、前記複数の衛星それぞれから送信されるすべての前記GNSS信号の行路差が正常であると判定された場合に、前記GNSS信号に異常が発生しているという判断を解除する、
ことを特徴とする請求項2に記載の受信信号の異常の検出方法。
【請求項4】
前記GNSS信号に異常が発生しているか否かの判定を所定の周期で実行し、直前の周期に実行された前記判定において前記行路差異常に分類された前記衛星は、前記所定の行路差閾値よりも大きな値を有する第2の行路差閾値を用いて次の周期の前記判定を実行する、
ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の受信信号の異常の検出方法。
【請求項5】
前記行路差異常に分類されている前記衛星の行路差が正常であると判定された場合に、前記所定の行路差閾値を用いて次の周期の前記判定を実行する、
ことを特徴とする請求項4に記載の受信信号の異常の検出方法。
【請求項6】
複数の衛星それぞれから送信されるGNSS信号を少なくとも3個のアンテナを介して受信する、前記少なくとも3個のアンテナそれぞれに対応して備えられる少なくとも3個の受信器と、
前記少なくとも3個の受信器のうちの2個の受信器の組み合わせごとに、当該の2個の受信器各々の内部時刻どうしが時刻同期していないときに、当該の2個の受信器それぞれに対応する2個のアンテナの組み合わせを時刻同期異常に分類する時刻同期判定部と、
前記少なくとも3個のアンテナのうちの2個のアンテナの組み合わせごとに、当該の2個のアンテナが同時に追尾している衛星の個数が所定の閾値未満のときに、当該の2個のアンテナの組み合わせを衛星数異常に分類する衛星数判定部と、
前記時刻同期異常と前記衛星数異常とのどちらにも分類されていない2個のアンテナの組み合わせごとに、当該の2個のアンテナが同時に追尾している前記衛星のうちの2個の衛星の組み合わせごとに、当該の2個の衛星各々から前記2個のアンテナ各々までの行路の差を表す行路差指標が所定の行路差閾値以下のときに、当該の2個の衛星を行路差異常に分類する行路差判定部と、
前記行路差異常に分類された衛星の個数が所定の閾値以上のときに、前記GNSS信号に異常が発生していると判定する異常判定部と、を有する、
ことを特徴とする受信信号の異常の検出装置。
【請求項7】
前記GNSS信号に異常が発生しているという判断を所定の時間だけ維持する、
ことを特徴とする請求項6に記載の受信信号の異常の検出装置。
【請求項8】
前記GNSS信号に異常が発生しているという判断が維持されているときに、前記複数の衛星それぞれから送信されるすべての前記GNSS信号の行路差が正常であると判定された場合に、前記GNSS信号に異常が発生しているという判断を解除する、
ことを特徴とする請求項7に記載の受信信号の異常の検出装置。
【請求項9】
前記GNSS信号に異常が発生しているか否かの判定を所定の周期で実行し、直前の周期に実行された前記判定において前記行路差異常に分類された前記衛星は、前記所定の行路差閾値よりも大きな値を有する第2の行路差閾値を用いて次の周期の前記判定を実行する、
ことを特徴とする請求項6ないし8のいずれか1項に記載の受信信号の異常の検出装置。
【請求項10】
前記行路差異常に分類されている前記衛星の行路差が正常であると判定された場合に、前記所定の行路差閾値を用いて次の周期の前記判定を実行する、
ことを特徴とする請求項9に記載の受信信号の異常の検出装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、GNSS(Global Navigation Satellite System の略;全球測位衛星システム)における受信信号の異常を検出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、慣性航法装置とGNSS測位システムを用いて移動体の位置を計測する装置が知られている(特許文献1参照)。また、GNSSにおける受信信号の異常を検出する技術として、GPS(Global Positioning System,Global Positioning Satellite の略;全地球測位システム)衛星からの受信信号がマルチパスの影響を受けた信号であるか否かを判定する装置が知られている(特許文献2参照)。さらに、GNSSによる衛星測位が途切れた後にスプーフィングを検出する装置が知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4803862号公報
【特許文献2】特開2010-256301号公報
【特許文献3】特開2020-134350号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2の装置は、GPS衛星自身の現在位置を示すデータであるエフェメリスに基づく衛星位置から推定した衛星の方向と、複数アンテナが受信した衛星の信号の到来方向から推定した衛星の方向と、を比較して、合致しない場合は異常信号と判断する方法である。
【0005】
そこでこの発明は、エフェメリスに基づく衛星位置から推定した衛星の方向を用いることなく、GNSSにおける受信信号の到来方向の異常を含む受信信号の異常を検出することが可能な、受信信号の異常の検出方法および検出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、この発明に係る受信信号の異常の検出方法は、複数の衛星それぞれから送信されるGNSS信号を少なくとも3個のアンテナを介して受信して、前記少なくとも3個のアンテナそれぞれに対応して備えられる少なくとも3個の受信器のうちの2個の受信器の組み合わせごとに、当該の2個の受信器各々の内部時刻どうしが時刻同期していないときに、当該の2個の受信器それぞれに対応する2個のアンテナの組み合わせを時刻同期異常に分類し、前記少なくとも3個のアンテナのうちの2個のアンテナの組み合わせごとに、当該の2個のアンテナが同時に追尾している衛星の個数が所定の閾値未満のときに、当該の2個のアンテナの組み合わせを衛星数異常に分類し、前記時刻同期異常と前記衛星数異常とのどちらにも分類されていない2個のアンテナの組み合わせごとに、当該の2個のアンテナが同時に追尾している前記衛星のうちの2個の衛星の組み合わせごとに、当該の2個の衛星各々から前記2個のアンテナ各々までの行路の差を表す行路差指標が所定の行路差閾値以下のときに、当該の2個の衛星を行路差異常に分類し、前記行路差異常に分類された衛星の個数が所定の閾値以上のときに、前記GNSS信号に異常が発生していると判定する、ことを特徴とする。
【0007】
この発明に係る受信信号の異常の検出方法は、前記GNSS信号に異常が発生しているという判断を所定の時間だけ維持する、ようにしてもよい。
【0008】
この発明に係る受信信号の異常の検出方法は、前記GNSS信号に異常が発生しているという判断が維持されているときに、前記複数の衛星それぞれから送信されるすべての前記GNSS信号の行路差が正常であると判定された場合に、前記GNSS信号に異常が発生しているという判断を解除する、ようにしてもよい。
【0009】
この発明に係る受信信号の異常の検出方法は、前記GNSS信号に異常が発生しているか否かの判定を所定の周期で実行し、直前の周期に実行された前記判定において前記行路差異常に分類された前記衛星は、前記所定の行路差閾値よりも大きな値を有する第2の行路差閾値を用いて次の周期の前記判定を実行する、ようにしてもよい。
【0010】
この発明に係る受信信号の異常の検出方法は、前記行路差異常に分類されている前記衛星の行路差が正常であると判定された場合に、前記所定の行路差閾値を用いて次の周期の前記判定を実行する、ようにしてもよい。
【0011】
また、この発明に係る受信信号の異常の検出装置は、複数の衛星それぞれから送信されるGNSS信号を少なくとも3個のアンテナを介して受信する、前記少なくとも3個のアンテナそれぞれに対応して備えられる少なくとも3個の受信器と、前記少なくとも3個の受信器のうちの2個の受信器の組み合わせごとに、当該の2個の受信器各々の内部時刻どうしが時刻同期していないときに、当該の2個の受信器それぞれに対応する2個のアンテナの組み合わせを時刻同期異常に分類する時刻同期判定部と、前記少なくとも3個のアンテナのうちの2個のアンテナの組み合わせごとに、当該の2個のアンテナが同時に追尾している衛星の個数が所定の閾値未満のときに、当該の2個のアンテナの組み合わせを衛星数異常に分類する衛星数判定部と、前記時刻同期異常と前記衛星数異常とのどちらにも分類されていない2個のアンテナの組み合わせごとに、当該の2個のアンテナが同時に追尾している前記衛星のうちの2個の衛星の組み合わせごとに、当該の2個の衛星各々から前記2個のアンテナ各々までの行路の差を表す行路差指標が所定の行路差閾値以下のときに、当該の2個の衛星を行路差異常に分類する行路差判定部と、前記行路差異常に分類された衛星の個数が所定の閾値以上のときに、前記GNSS信号に異常が発生していると判定する異常判定部と、を有する、ことを特徴とする。
【0012】
この発明に係る受信信号の異常の検出装置は、前記GNSS信号に異常が発生しているという判断を所定の時間だけ維持する、ようにしてもよい。
【0013】
この発明に係る受信信号の異常の検出装置は、前記GNSS信号に異常が発生しているという判断が維持されているときに、前記複数の衛星それぞれから送信されるすべての前記GNSS信号の行路差が正常であると判定された場合に、前記GNSS信号に異常が発生しているという判断を解除する、ようにしてもよい。
【0014】
この発明に係る受信信号の異常の検出装置は、前記GNSS信号に異常が発生しているか否かの判定を所定の周期で実行し、直前の周期に実行された前記判定において前記行路差異常に分類された前記衛星は、前記所定の行路差閾値よりも大きな値を有する第2の行路差閾値を用いて次の周期の前記判定を実行する、ようにしてもよい。
【0015】
この発明に係る受信信号の異常の検出装置は、前記行路差異常に分類されている前記衛星の行路差が正常であると判定された場合に、前記所定の行路差閾値を用いて次の周期の前記判定を実行する、ようにしてもよい。
【発明の効果】
【0016】
この発明に係る受信信号の異常の検出方法や受信信号の異常の検出装置によれば、時刻同期異常と衛星数異常とのどちらにも分類されていない2個のアンテナの組み合わせごとに、当該の2個のアンテナが同時に追尾している衛星のうちの2個の衛星の組み合わせごとに、行路差異常(言い換えると、GNSS信号の到来方向の異常)を検出するようにしているので、エフェメリスに基づく衛星位置から推定した衛星の方向を用いることなく、GNSSにおける受信信号の異常の検出処理の信頼性を向上させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施の形態に係るGNSSコンパスの概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】
図1のGNSSコンパスにおける複数のGNSSアンテナの配置を示す図である。
【
図3】
図2のGNSSアンテナどうしの間における行路差を説明する図である。
【
図4】
図1の行路差判定部において第1の行路差閾値と第2の行路差閾値とが適宜切り替えられる行路差の判定処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。この実施の形態では、この発明に係る受信信号の異常の検出装置がGNSSコンパスに組み込まれて前記GNSSコンパスにおいてこの発明に係る受信信号の異常の検出方法が実施される場合を例に挙げて説明する。
【0019】
(GNSSコンパスの全体構成)
図1は、この発明に係る受信信号の異常の検出装置を含む、実施の形態に係るGNSSコンパス1の概略構成を示す機能ブロック図である。GNSSコンパス1は、例えば、船舶,車両,および飛行体などの移動体に搭載されて使用される。
【0020】
実施の形態に係るGNSSコンパス1は、GNSS(Global Navigation Satellite System の略;全球測位衛星システム)で用いられる複数の衛星(「GNSS衛星」と呼ぶ)それぞれから送信される衛星信号/測位信号(「GNSS信号」と呼ぶ)を受信してGNSSにおける受信信号であるGNSS信号の異常を検出する機能と自機の位置などを計算する機能とを備え、主に、制御ユニット2と、GNSSアンテナ3と、GNSS受信部4と、異常検出部5と、測位部6と、を有する。GNSSコンパス1を構成する各部は、バスを介して信号の送受を行って相互に情報伝達可能であるように接続される。
【0021】
GNSSとしてはGPS(Global Positioning System,Global Positioning Satellite の略;全地球測位システム),GLONASS(GLObal NAvigation Satellite System の略),およびBDS(BeiDou navigation satellite System の略;北斗衛星導航系統)などが挙げられる。
【0022】
複数のGNSS衛星それぞれは、当該のGNSS衛星自身の現在位置を示すデータであるエフェメリスを含むGNSS信号を電波として送信する。複数のGNSS衛星それぞれから送信されるGNSS信号には、そのGNSS衛星が当該GNSS信号を電波として送信した時刻を示す情報も含まれる。
【0023】
制御ユニット2は、GNSSコンパス1を構成する各部の動作を制御する機能を備え、例えば、GNSS信号の異常の検出やGNSSコンパス1の位置などの計算などに纏わる演算処理を行う中央処理装置(CPU:Central Processing Unit の略)を有する機序として構成される。
【0024】
制御ユニット2は、また、中央処理装置(CPU)がGNSS信号の異常の検出やGNSSコンパス1の位置などの計算などに纏わる演算処理を行う際に利用するプログラム,各種の情報,およびデータなどを記憶して格納などするための記憶領域となったり中央処理装置(CPU)が前記演算処理を行う際に生成されるデータや情報などを一時的に記憶などするための作業領域となったりする機能を備え、例えば、読み取り専用の記憶装置であるROM(Read Only Memory の略)、読み出しおよび書き込み可能な記憶装置であるRAM(Random Access Memory の略)、ならびにハードディスクのうちの少なくとも1つを有する機序として構成される。
【0025】
制御ユニット2は、GNSSコンパス1の動作を制御するためのプログラム(「制御プログラム」と呼ぶ)を中央処理装置(CPU)が実行することにより、制御プログラムに従ってGNSSコンパス1を構成する各部の処理の開始,内容,および終了を統制して制御する。
【0026】
GNSS受信部4は、複数のGNSS衛星S_i(但し、i:複数のGNSS衛星を相互に区別して各々を識別するための各衛星に固有の番号)それぞれから送信されるGNSS信号を受信するための機序であり、各々がGNSSアンテナを備える少なくとも3個のGNSS受信器から構成される(即ち、GNSSアンテナも少なくとも3個である)。この実施の形態では、GNSS受信部4が3個のGNSS受信器4A,4B,4Cから構成され、GNSS受信器4AがGNSSアンテナ3Aを備え、GNSS受信器4BがGNSSアンテナ3Bを備え、GNSS受信器4CがGNSSアンテナ3Cを備える。
【0027】
3個のGNSSアンテナ3A,3B,3Cは、GNSSコンパス1が搭載される移動体上に、所定の間隔で相互に離間して配置されて固定される。この実施の形態では、3個のGNSSアンテナ3A,3B,3Cが正三角形の頂点の位置それぞれに配置される(
図2参照)。
【0028】
GNSSアンテナ3A,3B,3Cどうしを結ぶ線分を「基線」と呼ぶ。GNSSアンテナ3A,3B,3Cどうしの間の距離である基線の寸法は、GNSSアンテナ3A,3B,3Cの配置の設計値として既知である。この実施の形態では、GNSSアンテナ3AとGNSSアンテナ3Bとの間の基線ABの寸法,GNSSアンテナ3BとGNSSアンテナ3Cとの間の基線BCの寸法,およびGNSSアンテナ3AとGNSSアンテナ3Cとの間の基線ACの寸法はいずれも既知である。GNSSアンテナ3A,3B,3Cどうしの間の距離である基線の寸法は、GNSSアンテナ3A,3B,3C間の干渉を避けるため、1波長以上(具体的には、数波長程度)に設定される。
【0029】
各GNSS受信器4A,4B,4Cは、GNSS衛星S_iそれぞれから送信されるGNSS信号をGNSSアンテナ3A,3B,3Cを介して受信して電気信号(特に、デジタル信号)に変換して出力する。
【0030】
各GNSS受信器4A,4B,4Cは、GNSSコンパス1の電源投入時から動作を開始する内部時計を備え、GNSS衛星S_iそれぞれから送信されるGNSS信号を受信することによって得られる1秒周期のパルス信号である1PPS(One Pulse Per Second:1秒パルス)信号に前記内部時計を同期させて得られる内部時刻も出力する。
【0031】
GNSS信号は、搬送波に重畳されて電波(「GNSS電波」と呼ぶ)としてGNSS衛星S_iから逐次送信される。各GNSS受信器4A,4B,4Cは、GNSS電波を受信し、前記GNSS電波を復調してGNSS信号を取り出す。そして、前記GNSS信号がGNSS受信部4から出力される。
【0032】
GNSS受信部4は、すなわち、GNSS受信器4A,4B,4C別の、GNSS衛星S_iごとの、GNSS信号と当該のGNSS信号の受信時における内部時刻との組み合わせデータを出力する。
【0033】
制御プログラムを制御ユニット2の中央処理装置(CPU)が実行することにより、制御ユニット2内に異常検出部5および測位部6が構成される。
【0034】
異常検出部5は、GNSS受信部4から出力されるGNSS信号の異常を検出して検出結果を出力するための機序である。
【0035】
測位部6は、GNSS受信部4から出力されるGNSS信号を用いて測位情報を計算して出力するための機序である。
【0036】
測位部6によって計算される測位情報は、特定の項目には限定されないものの、例えば、自機の位置,方位,および姿勢(例えば、ローリング,ピッチング,旋回率(ROT))などのうちの少なくとも1つが挙げられる。測位部6による測位情報の計算処理は、周知の技術が適用され得るとともにこの発明では特定の項目や手法などには限定されないので、詳細な説明を省略する。
【0037】
測位部6は、異常検出部5から出力されるGNSS信号の異常の検出結果に基づいて、測位情報の計算処理で使用する衛星群から排除するGNSS衛星S_iを決定する(言い換えると、測位情報の計算処理で使用するGNSS衛星S_iを決定する)。
【0038】
(異常検出部の処理内容)
実施の形態に係る受信信号の異常の検出方法は、複数のGNSS衛星S_iそれぞれから送信されるGNSS信号を3個のGNSSアンテナ3A,3B,3Cを介して受信して、3個のGNSSアンテナ3A,3B,3Cそれぞれに対応して備えられる3個のGNSS受信器4A,4B,4Cのうちの2個のGNSS受信器の組み合わせごとに、当該の2個のGNSS受信器各々の内部時刻どうしが時刻同期していないときに、当該の2個のGNSS受信器それぞれに対応する2個のGNSSアンテナの組み合わせを時刻同期異常に分類し、3個のGNSSアンテナ3A,3B,3Cのうちの2個のGNSSアンテナの組み合わせごとに、当該の2個のGNSSアンテナが同時に追尾しているGNSS衛星S_iの個数が所定の衛星数閾値未満のときに、当該の2個のGNSSアンテナの組み合わせを衛星数異常に分類し、時刻同期異常と衛星数異常とのどちらにも分類されていない2個のGNSSアンテナの組み合わせごとに、当該の2個のGNSSアンテナが同時に追尾しているGNSS衛星S_iのうちの2個のGNSS衛星S_iの組み合わせごとに、当該の2個のGNSS衛星S_i各々から前記2個のGNSSアンテナ各々までの行路の差を表す行路差指標が所定の行路差閾値以下のときに、当該の2個のGNSS衛星S_iを行路差異常に分類し、行路差異常に分類されたGNSS衛星S_iの個数が所定の異常判定閾値以上のときに、GNSS信号に異常が発生していると判定する、ようにしている。
【0039】
また、上記の受信信号の異常の検出方法を実施する機器としての受信信号の異常の検出装置を含む、実施の形態に係るGNSSコンパス1は、複数のGNSS衛星S_iそれぞれから送信されるGNSS信号を3個のGNSSアンテナ3A,3B,3Cを介して受信する、3個のGNSSアンテナ3A,3B,3Cそれぞれに対応して備えられる3個のGNSS受信器4A,4B,4Cと、3個のGNSS受信器4A,4B,4Cのうちの2個のGNSS受信器の組み合わせごとに、当該の2個のGNSS受信器各々の内部時刻どうしが時刻同期していないときに、当該の2個のGNSS受信器それぞれに対応する2個のGNSSアンテナの組み合わせを時刻同期異常に分類する時刻同期判定部52と、3個のGNSSアンテナ3A,3B,3Cのうちの2個のGNSSアンテナの組み合わせごとに、当該の2個のGNSSアンテナが同時に追尾しているGNSS衛星S_iの個数が所定の衛星数閾値未満のときに、当該の2個のGNSSアンテナの組み合わせを衛星数異常に分類する衛星数判定部53と、時刻同期異常と衛星数異常とのどちらにも分類されていない2個のGNSSアンテナの組み合わせごとに、当該の2個のGNSSアンテナが同時に追尾しているGNSS衛星S_iのうちの2個のGNSS衛星S_iの組み合わせごとに、当該の2個のGNSS衛星S_i各々から前記2個のGNSSアンテナ各々までの行路の差を表す行路差指標が所定の行路差閾値以下のときに、当該の2個のGNSS衛星S_iを行路差異常に分類する行路差判定部54と、行路差異常に分類されたGNSS衛星S_iの個数が所定の異常判定閾値以上のときに、GNSS信号に異常が発生していると判定する異常判定部55と、を有する、ようにしている。
【0040】
異常検出部5は、GNSS信号の異常を検出するための機序であり、GNSS受信部4から所定の周期で出力される、GNSS受信器4A,4B,4C別の、GNSS衛星S_iごとの、GNSS信号と当該のGNSS信号の受信時における内部時刻との組み合わせデータの入力を受け、前記GNSS信号および前記内部時刻に基づいてGNSSにおける受信信号であるGNSS信号の異常を検出するための演算処理(「異常検出演算処理」と呼ぶ)を実行する。異常検出演算処理は、GNSS受信部4からGNSS信号と当該のGNSS信号の受信時における内部時刻との組み合わせデータが出力される所定の周期に合わせて前記所定の周期で実行されるようにしてもよく、或いは、前記所定の周期とは異なる周期で実行されるようにしてもよい。異常検出部5における異常検出演算処理が実行される時点それぞれのことを「処理時点」と呼ぶ。
【0041】
異常検出部5は、行路差計算部51,時刻同期判定部52,衛星数判定部53,行路差判定部54,および異常判定部55を備える。
【0042】
行路差計算部51は、当該の処理時点においてGNSS受信部4から出力される、GNSS受信器4A,4B,4C別の、GNSS衛星S_iごとの、GNSS信号と当該のGNSS信号の受信時における内部時刻との組み合わせデータの入力を受け、前記GNSS信号の情報を用いてGNSS衛星S_iから各GNSSアンテナ3A,3B,3Cまでの行路の差を計算する。行路差計算部51によって行われる処理のことを「行路差の計算処理」と呼ぶ。
【0043】
行路差計算部51は、複数のGNSSアンテナ3A,3B,3Cが所定の間隔で相互に離間して配置されていることに起因して生じる、GNSS衛星S_iから各GNSSアンテナ3A,3B,3Cまでの行路の差(絶対値)を、GNSS衛星S_i別に、GNSSアンテナ3A,3B,3Cどうしの間ごと(言い換えると、基線AB,BC,ACごと)に、つまり2個のGNSSアンテナ(3A,3B,3Cのうちのいずれか2個)の組み合わせごとに、計算する。
【0044】
図3は行路の差を説明する図である。行路の差は実際には3次元で求められるが、行路の差の原理の説明として
図3では2次元で説明する。
図3に示す例では、GNSS衛星S_1とGNSS衛星S_2とのそれぞれについて、GNSSアンテナ3Aまでの行路とGNSSアンテナ3Bまでの行路との差(即ち、GNSSアンテナ3AとGNSSアンテナ3Bとの間における行路差)を取り上げて説明する。
【0045】
GNSS衛星S_1からGNSSアンテナ3Aまでの行路とGNSSアンテナ3Bまでの行路との差C_1ABは下記の数式1のように表され、GNSS衛星S_2からGNSSアンテナ3Aまでの行路とGNSSアンテナ3Bまでの行路との差C_2ABは下記の数式2のように表される(
図3(A)参照)。
(数1) C_1AB = L_AB×cos(θ_1)
(数2) C_2AB = L_AB×cos(θ_2)
ここに、
L_AB:GNSSアンテナ3AとGNSSアンテナ3Bとの間の基線ABの寸法
θ_1:GNSS衛星S_1の仰角
θ_2:GNSS衛星S_2の仰角
【0046】
上記の数式1のように表されるGNSS衛星S_1からGNSSアンテナ3Aまでの行路とGNSSアンテナ3Bまでの行路との差C_1ABは下記の数式3に従って計算される。また、上記の数式2のように表されるGNSS衛星S_2からGNSSアンテナ3Aまでの行路とGNSSアンテナ3Bまでの行路との差C_2ABは下記の数式4に従って計算される。
(数3) C_1AB = λ_1×(N_1+P_1AB)
(数4) C_2AB = λ_2×(N_2+P_2AB)
ここに、
λ_1:GNSS衛星S_1のGNSS電波の搬送波の波長
λ_2:GNSS衛星S_2のGNSS電波の搬送波の波長
N_1:GNSS衛星S_1のGNSS電波の整数値バイアス(サイクル以上)
N_2:GNSS衛星S_2のGNSS電波の整数値バイアス(サイクル以上)
P_1AB:GNSS衛星S_1のGNSS電波のアンテナ間一重差(サイクル未満)
P_2AB:GNSS衛星S_2のGNSS電波のアンテナ間一重差(サイクル未満)
【0047】
GNSS衛星S_iについてのアンテナ間一重差P_iXYは(但し、X,Y:複数のGNSSアンテナを相互に区別して各々を識別するためのアンテナ記号であり、X≠Y;以下同じ)、2個のGNSSアンテナ(
図3に示す例では、GNSSアンテナ3AとGNSSアンテナ3B)に対する1個のGNSS衛星S_iの搬送波位相積算値の差である。
【0048】
行路差計算部51は、3個のGNSSアンテナ3A,3B,3Cのうちの2個のGNSSアンテナの組み合わせごと(言い換えると、基線AB,BC,ACごと)に、GNSS衛星S_i別の、当該のGNSS衛星S_iからGNSSアンテナXまでの行路とGNSSアンテナYまでの行路との差(絶対値)C_iXYを計算する。
【0049】
行路差計算部51によって計算される、GNSSアンテナXとGNSSアンテナYとの組み合わせにおける、GNSS衛星S_iについての、当該のGNSS衛星S_iからGNSSアンテナXまでの行路とGNSSアンテナYまでの行路との差(絶対値)C_iXYのことを「GNSS衛星S_iのGNSSアンテナX-Y間における行路差C_iXY」と呼ぶ。
【0050】
行路差計算部51は、3個のGNSSアンテナ3A,3B,3Cのうちの2個のGNSSアンテナの組み合わせごと(言い換えると、基線AB,BC,ACごと)に、GNSS衛星S_i別の、当該のGNSS衛星S_iのGNSSアンテナX-Y間における行路差C_iXYを出力する。
【0051】
時刻同期判定部52は、当該の処理時点においてGNSS受信部4から出力される、GNSS受信器4A,4B,4C別の、GNSS衛星S_iごとの、GNSS信号と当該のGNSS信号の受信時における内部時刻との組み合わせデータの入力を受け、前記内部時刻どうしが時刻同期しているか否かを判定する。時刻同期判定部52によって行われる処理のことを「時刻同期の判定処理」と呼ぶ。
【0052】
ここで、GNSS信号に異常が発生していない場合はGNSS受信器4A,4B,4C各々の内部時刻どうしは時刻同期しているはずであり、GNSS受信器4A,4B,4C各々の内部時刻どうしが時刻同期していないときはGNSS信号に異常が発生していると考えられる。
【0053】
時刻同期判定部52は、当該の処理時点の行路差の計算処理における、3個のGNSSアンテナ3A,3B,3Cのうちの2個のGNSSアンテナの組み合わせごと(言い換えると、基線AB,BC,ACごと)の、GNSS衛星S_i別の、当該のGNSS衛星S_iのGNSSアンテナX-Y間における行路差C_iXYの計算に用いられたGNSS信号と組み合わせられている内部時刻どうしの差の絶対値が所定の時刻差閾値よりも大きいか否かを判断する。
【0054】
時刻差閾値は、特定の値に限定されるものではなく、例えば正常な状態であるとしても機械誤差などに起因して生じると想定される誤差が考慮されるなどしたうえで、適当な値に適宜設定される。時刻差閾値は、例えば1~5ミリ秒程度の範囲のうちのいずれかの値に設定されることが考えられる。
【0055】
時刻同期判定部52は、3個のGNSSアンテナ3A,3B,3Cのうちの2個のGNSSアンテナの組み合わせごと(言い換えると、基線AB,BC,ACごと)に、GNSS衛星S_i別の、当該のGNSS衛星S_iのGNSSアンテナX-Y間における行路差C_iXYの計算に用いられたGNSS信号と組み合わせられている内部時刻どうしの差の絶対値が時刻差閾値よりも大きいとき、前記行路差C_iXYの計算に用いられたGNSS信号についての内部時刻が異常であるとして、当該の2個のGNSSアンテナの組み合わせを時刻同期異常に分類する。時刻同期判定部52は、つまり、3個のGNSS受信器4A,4B,4Cのうちの2個のGNSS受信器の組み合わせごとに、当該の2個のGNSS受信器各々の内部時刻どうしが時刻同期していないときに、当該の2個のGNSS受信器それぞれに対応する2個のGNSSアンテナの組み合わせを時刻同期異常に分類する。
【0056】
衛星数判定部53は、当該の処理時点において行路差計算部51から出力される、3個のGNSSアンテナ3A,3B,3Cのうちの2個のGNSSアンテナの組み合わせごと(言い換えると、基線AB,BC,ACごと)の、GNSS衛星S_i別の、当該のGNSS衛星S_iのGNSSアンテナX-Y間における行路差C_iXYの入力を受け、2個のGNSSアンテナ(3A,3B,3Cのうちのいずれか2個)の組み合わせごとに当該の2個のGNSSアンテナが当該の処理時点において同時に追尾しているGNSS衛星S_iの個数が妥当であるか否かを判定する。衛星数判定部53によって行われる処理のことを「衛星数の判定処理」と呼ぶ。
【0057】
ここで、GNSS衛星S_iのGNSSアンテナX-Y間における行路差C_iXY(尚、GNSS衛星S_iについてのアンテナ間一重差P_iXYを含む)を計算するためには、GNSSアンテナXを備えるGNSS受信器とGNSSアンテナYを備えるGNSS受信器とが同じGNSS衛星S_iを追尾している必要がある。しかしながら、移動体においては、複数のGNSSアンテナ3A,3B,3Cどうしが相互に近傍の位置関係にあっても、例えばGNSSコンパス1が船舶に搭載されて当該の船舶が動揺しているなど、各GNSSアンテナ3A,3B,3Cの受信環境/遮蔽環境が異なる場合がある。この場合には、或る2個のGNSSアンテナ(3A,3B,3Cのうちのいずれか2個)の組み合わせにおけるこれらGNSSアンテナ各々が追尾しているGNSS衛星S_iが異なり、したがって前記或る2個のGNSSアンテナの組み合わせ(言い換えると、基線)では行路差C_iXY(尚、アンテナ間一重差P_iXYを含む)を計算することができない。
【0058】
また、
図3に示す例において、GNSS衛星S_1とGNSS衛星S_2とは通常は相互に異なる空間位置に存在するのでGNSSコンパス1(具体的には、GNSSアンテナ3)からみた衛星各々の仰角θ_1と仰角θ_2とが相互に異なる。そして、GNSS衛星S_1の仰角θ_1とGNSS衛星S_2の仰角θ_2とが相互に異なるので、GNSS衛星S_1についての行路の差C_1ABとGNSS衛星S_2についての行路の差C_2ABとは相互に異なる(
図3(A)ならびに上記の数式1,数式2参照)。
【0059】
これに対し、GNSS衛星S_1とGNSS衛星S_2とがどちらも同じ空間位置に存在する場合にはGNSSコンパス1(具体的には、GNSSアンテナ3)からみた衛星各々の仰角θ_1と仰角θ_2とが同じになる(
図3(B)参照)。そして、GNSS衛星S_1の仰角θ_1とGNSS衛星S_2の仰角θ_2とが同じ場合は、GNSS衛星S_1についての行路の差C_1ABとGNSS衛星S_2についての行路の差C_2ABとは同じになる(上記の数式1,数式2参照)。
【0060】
GNSS衛星S_1の仰角θ_1とGNSS衛星S_2の仰角θ_2とが同じになる場合として、例えば、複数のGNSS衛星の測位情報および軌道情報を含んだ信号が単一の送信アンテナから発信されている場合が考えられ、言い換えると、複数のGNSS衛星からGNSS信号(別言すると、GNSS電波)が送信されているように見せかけたうえで単一の送信アンテナ(言い換えると、同一の地点;尚、地上に設置されているアンテナ局を含む)から複数のGNSS衛星のGNSS信号が発信されている場合が考えられ、つまり単一の送信アンテナ/同一の地点から複数の偽のGNSS信号が送信されている場合が挙げられる。この点において、この発明における「複数のGNSS衛星S_iそれぞれから送信されるGNSS信号」は、複数のGNSS衛星S_iそれぞれからGNSS信号が送信されているように見せかけたうえで単一の送信アンテナ/同一の地点から発信される信号を含む。
【0061】
上記に関連して、GNSSアンテナ3A,3B,3Cどうしの間の距離である基線の寸法は、GNSSアンテナ3A,3B,3C間の干渉を避けるため、1波長以上(具体的には、数波長程度)に設定される。したがって、GNSS衛星S_1とGNSS衛星S_2とが相互に異なる空間位置に存在してGNSS衛星S_1についての行路の差C_1ABとGNSS衛星S_2についての行路の差C_2ABとが実際には相互に異なるにもかかわらず、上記の数式3,数式4から分かるように、整数値バイアスN_1,N_2は異なるものの前記2個のGNSS衛星S_1,S_2についてのアンテナ間一重差P_1AB,P_2ABが偶さか同じになることも考えられる。しかしながら、GNSS衛星S_1,S_2は移動しているので、前記の状態が長く(例えば、数秒以上)続くことはない。また、GNSSアンテナ3A,3B,3Cどうしの間ごとに基線の方向が異なるので、例えば、GNSSアンテナ3AとGNSSアンテナ3Bとの組み合わせにおいて2個のGNSS衛星S_1,S_2についてのアンテナ間一重差P_1AB,P_2ABが偶さか同じになったとしても、GNSSアンテナ3AとGNSSアンテナ3Cとの組み合わせにおいて前記2個のGNSS衛星S_1,S_2についてのアンテナ間一重差P_1AB,P_2ACは同じにはならない。
【0062】
衛星数判定部53は、当該の処理時点の行路差の計算処理において計算された、3個のGNSSアンテナ3A,3B,3Cのうちの2個のGNSSアンテナの組み合わせごと(言い換えると、基線AB,BC,ACごと)の、GNSS衛星S_i別の、当該のGNSS衛星S_iのGNSSアンテナX-Y間における行路差C_iXYに基づいて、2個のGNSSアンテナ(3A,3B,3Cのうちのいずれか2個)の組み合わせごと(言い換えると、基線AB,BC,ACごと)に、前記行路差C_iXYが計算されているGNSS衛星S_iの個数を計数する。このGNSS衛星S_iの個数は、すなわち、2個のGNSSアンテナが当該の処理時点において同時に追尾しているGNSS衛星S_iの個数である。
【0063】
そのうえで、衛星数判定部53は、2個のGNSSアンテナ(3A,3B,3Cのうちのいずれか2個)の組み合わせごと(言い換えると、基線AB,BC,ACごと)に、当該の2個のGNSSアンテナが当該の処理時点において同時に追尾しているGNSS衛星S_iの個数が所定の衛星数閾値未満であるか否かを判断する。
【0064】
衛星数閾値は、特定の値に限定されるものではなく、例えば通常の(別言すると、正常な)受信環境において想定される、2個のGNSSアンテナが同時に追尾し得るGNSS衛星S_iの個数が考慮されるなどしたうえで、適当な値に適宜設定される。衛星数閾値は、例えば2~4程度の範囲のうちのいずれかの値に設定されることが考えられる。
【0065】
衛星数判定部53は、3個のGNSSアンテナ3A,3B,3Cのうちの2個のGNSSアンテナの組み合わせごと(言い換えると、基線AB,BC,ACごと)に、当該の2個のGNSSアンテナが当該の処理時点において同時に追尾しているGNSS衛星S_iの個数が衛星数閾値未満のとき、当該の2個のGNSSアンテナが同時に追尾しているGNSS衛星S_iの個数が異常であるとして、当該の2個のGNSSアンテナの組み合わせを衛星数異常に分類する。
【0066】
行路差判定部54は、行路差計算部51から出力される、GNSS衛星S_iのGNSSアンテナX-Y間における行路差C_iXYが正常であるか否かを判定する。行路差判定部54によって行われる処理のことを「行路差の判定処理」と呼ぶ。
【0067】
行路差判定部54は、具体的には、当該の処理時点において行路差計算部51から出力される、3個のGNSSアンテナ3A,3B,3Cのうちの2個のGNSSアンテナの組み合わせごと(言い換えると、基線AB,BC,ACごと)の、GNSS衛星S_i別の、当該のGNSS衛星S_iのGNSSアンテナX-Y間における行路差C_iXYの入力を受ける。
【0068】
行路差判定部54は、また、当該の処理時点の時刻同期の判定処理において時刻同期異常に分類された2個のGNSSアンテナ(3A,3B,3Cのうちのいずれか2個)の組み合わせを時刻同期判定部52から取得し、さらに、当該の処理時点の衛星数の判定処理において衛星数異常に分類された2個のGNSSアンテナ(3A,3B,3Cのうちのいずれか2個)の組み合わせを衛星数判定部53から取得する。
【0069】
行路差判定部54は、そのうえで、入力されたGNSS衛星S_iのGNSSアンテナX-Y間における行路差C_iXYのうち、時刻同期異常と衛星数異常とのどちらにも分類されていない2個のGNSSアンテナ(3A,3B,3Cのうちのいずれか2個)の組み合わせにおける、GNSS衛星S_i別の、当該のGNSS衛星S_iのGNSSアンテナX-Y間における行路差C_iXYを用いて下記の処理を行う。
【0070】
行路差判定部54は、(時刻同期異常と衛星数異常とのどちらにも分類されていない)2個のGNSSアンテナ(3A,3B,3Cのうちのいずれか2個)の組み合わせごとに、当該の2個のGNSSアンテナが当該の処理時点において同時に追尾しているGNSS衛星S_iのうちの2個のGNSS衛星S_iの組み合わせごとに、当該の2個のGNSS衛星S_i各々のGNSSアンテナX-Y間における行路差C_iXYどうしの差の絶対値が所定の行路差閾値以下であるとき、当該の2個のGNSS衛星S_iはGNSS信号の到来方向が異常であるとして、当該の2個のGNSS衛星S_iを行路差異常に分類する。この処理は、2個のGNSSアンテナ(3A,3B,3Cのうちのいずれか2個)の組み合わせごとに、当該の2個のGNSSアンテナが当該の処理時点において同時に追尾しているGNSS衛星S_iのうちの2個のGNSS衛星S_iの組み合わせのすべてについて行われる。
【0071】
行路差閾値は、特定の値に限定されるものではなく、例えば実際には単一の送信アンテナ/同一の地点から複数のGNSS衛星のGNSS信号が送信されているとしても機械誤差などに起因して生じると想定される誤差が考慮されるなどしたうえで、適当な値に適宜設定される。
【0072】
ここで、複数のGNSS衛星S_iが相互に異なる空間位置に存在する場合には前記複数のGNSS衛星S_i各々についてのアンテナ間一重差P_iXYは通常は相互に異なるのに対して、単一の送信アンテナ/同一の地点から複数のGNSS衛星のGNSS信号が送信されている場合には複数のGNSS衛星S_i各々についてのアンテナ間一重差P_iXYは同じになる。そこで、GNSS衛星S_iごとの行路差の判定処理において、複数のGNSS衛星S_i各々についてのアンテナ間一重差P_iXYが検証されるようにしてもよい(上記の数式3,数式4参照)。
【0073】
複数のGNSS衛星S_i各々についてのアンテナ間一重差P_iXYを検証する場合は、行路差判定部54は、(時刻同期異常と衛星数異常とのどちらにも分類されていない)2個のGNSSアンテナ(3A,3B,3Cのうちのいずれか2個)の組み合わせごとに、当該の2個のGNSSアンテナが当該の処理時点において同時に追尾しているGNSS衛星S_iのうちの2個のGNSS衛星S_iの組み合わせごとに、当該の2個のGNSS衛星S_i各々についてのアンテナ間一重差P_iXYどうしの差の絶対値が所定の行路差閾値以下であるとき、当該の2個のGNSS衛星S_iはGNSS信号の到来方向が異常であるとして、当該の2個のGNSS衛星S_iを行路差異常に分類する。
【0074】
この場合の行路差閾値も、特定の値に限定されるものではなく、例えば実際には単一の送信アンテナ/同一の地点から複数のGNSS衛星のGNSS信号が送信されているとしても機械誤差などに起因して生じると想定される誤差が考慮されるなどしたうえで、適当な値に適宜設定される。
【0075】
GNSS衛星S_iごとの行路差の判定処理に用いられる、GNSS衛星S_iから各GNSSアンテナ3A,3B,3Cまでの行路の差を表す、GNSS衛星S_iについてのアンテナ間における行路の差C_iXYやアンテナ間一重差P_iXYのことを「行路差指標」と呼ぶ。
【0076】
行路差判定部54は、行路差異常(言い換えると、GNSS信号の到来方向の異常)に分類したGNSS衛星S_iに関する情報を出力する。
【0077】
異常判定部55は、当該の処理時点において行路差判定部54から出力される行路差異常に分類されたGNSS衛星S_iに関する情報の入力を受け、GNSS信号に異常が発生しているか否かを判定する。
【0078】
異常判定部55は、具体的には、行路差判定部54から出力される行路差異常に分類されたGNSS衛星S_iに関する情報に基づいて行路差異常に分類されたGNSS衛星S_iの個数を計数し、前記個数が所定の異常判定閾値以上であるか否かを判断する。
【0079】
異常判定閾値は、特定の値に限定されるものではなく、例えば単一の送信アンテナ/同一の地点から複数のGNSS衛星のGNSS信号が送信されている場合に想定されるGNSS衛星の個数が考慮されるなどしたうえで、適当な値に適宜設定される。異常判定閾値は、例えば3~5程度の範囲のうちのいずれかの値に設定されることが考えられる。
【0080】
異常判定部55は、行路差異常に分類されたGNSS衛星S_iの個数が異常判定閾値未満であるときはGNSS信号に異常は発生していないと判定し、前記個数が異常判定閾値以上であるときはGNSS信号に異常が発生していると判定する。
【0081】
GNSS信号に異常が発生していると判定された場合は、異常発生状態となり、行路差異常に分類されたGNSS衛星S_iは測位部6による測位情報(具体的には、自機の位置,方位,および姿勢など)の計算処理で使用する衛星群から排除され、排除された前記GNSS衛星S_iから送信されるGNSS信号は測位部6による測位情報の計算処理には使用されない。
【0082】
GNSS信号に異常が発生していると判定された場合は、異常発生状態が所定の異常保持時間だけ維持されるようにしてもよい。異常発生状態が維持される間は、行路差異常に分類されたGNSS衛星S_iは測位部6による測位情報の計算処理で使用する衛星群から排除される。
【0083】
異常保持時間は、特定の時間長さに限定されるものではなく、例えば正常な(言い換えると、測位部6による測位情報の計算処理に使用される)GNSS衛星S_iの数が極端に減る事態を回避することやGNSSコンパス1が搭載される移動体の移動に伴う正常なGNSS衛星S_iの捕捉の可能性を確保することが考慮されるなどしたうえで、適当な時間長さに適宜設定される。
【0084】
GNSS信号に異常が発生していると判定された場合は、或いは、行路差異常に分類されたGNSS衛星S_iの個数がゼロとなったときに異常発生状態が解除されたり、また、行路差異常に分類されたGNSS衛星S_iの個数がゼロとなり且つ行路差異常に分類されていないGNSS衛星S_iの個数が所定の個数(例えば、4個)以上となったときに異常発生状態が解除されたりするようにしてもよい。すなわち、受信信号の異常の検出方法や受信信号の異常の検出装置は、GNSS信号に異常が発生しているという判断が維持されているときに、複数のGNSS衛星S_iそれぞれから送信されるすべてのGNSS信号の行路差が正常であると判定された場合に、GNSS信号に異常が発生しているという判断を解除する、ようにしてもよい。
【0085】
GNSSコンパス1に付随する、例えばモニタやスピーカを備える出力装置(図示していない)が設けられて、GNSS信号に異常が発生したことが、出力装置のモニタに警報画面が表示されたり出力装置のスピーカから警報が発出されたりして、ユーザへと通知されるようにしてもよい。また、GNSS信号を利用する他の機器(例えば、レーダ,慣性航法装置)に対してGNSS信号に異常が発生したことが通知されるようにしてもよい。
【0086】
実施の形態に係る受信信号の異常の検出方法やGNSSコンパス1によれば、時刻同期異常と衛星数異常とのどちらにも分類されていない2個のアンテナ(3A,3B,3Cのうちのいずれか2個)の組み合わせごとに、当該の2個のアンテナが同時に追尾しているGNSS衛星S_iのうちの2個のGNSS衛星S_iの組み合わせごとに、行路差異常(言い換えると、GNSS信号の到来方向の異常)を検出するようにしているので、エフェメリスに基づく衛星位置から推定した衛星の方向を用いることなく、GNSSにおける受信信号の異常の検出処理の信頼性を向上させることが可能となる。
【0087】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。
【0088】
例えば、上記の実施の形態で説明したGNSSコンパス1によれば、GNSS受信器4A,4B,4C間の時刻同期が不十分であったり、GNSS信号にマルチパスや雑音が発生していたり、あるいは各衛星の周回方向などの違いによって衛星ごとにGNSS信号のドップラー周波数が異なる場合に、その影響を受けてGNSS受信器4A,4B,4C間の行路差に微小なばらつきやオフセットが生じてしまうことがある。行路差に微小なばらつきやオフセットが生じると、上記の行路差の判定処理では、直前の周期の判定において行路差指標が所定の行路差閾値以下(すなわち、行路差一致)であるとして行路差異常に分類された衛星が、次の周期の判定では行路差指標が微小なばらつきやオフセットによって所定の行路差閾値よりも大きくなり(すなわち、行路差不一致)、正常なGNSS信号であると誤判定される可能性がある。このような誤判定を抑制するには、行路差に生じる微小なばらつきやオフセットを予め考慮して行路差閾値を緩めればよいが(すなわち、大きな値に設定)、行路差閾値を緩めてしまうと、行路差に微小なばらつきやオフセットが生じていないときに誤判定が発生してしまう。
【0089】
上記の問題を解決するために、上述した所定の行路差閾値(以下では、第1の行路差閾値という)と、この第1の行路差閾値よりも大きな値を有する第2の行路差閾値とを適宜切り替えて行路差の判定処理を行なうことが好ましい。第1の行路差閾値と第2の行路差閾値との関係は、「第1の行路差閾値<第2の行路差閾値」となる。より具体的には、GNSS信号に異常が発生しているか否かの判定を所定の周期で実行し、直前の周期に実行された行路差の判定処理において行路差異常に分類された衛星は、第1の行路差閾値よりも大きな値を有する第2の行路差閾値を用いて次の周期の行路差の判定処理を実行する。また、行路差異常に分類されている衛星の行路差が正常であると判定された場合には、第1の行路差閾値を用いて次の周期の行路差の判定処理を実行する。
【0090】
図4は、上記の行路差の判定処理の手順を示すフローチャートである。行路差判定部54は、具体的には、当該の処理時点において行路差計算部51から出力される、3個のGNSSアンテナ3A,3B,3Cのうちの2個のGNSSアンテナの組み合わせごと(言い換えると、基線AB,BC,ACごと)の、GNSS衛星S_i別の、当該のGNSS衛星S_iのGNSSアンテナX-Y間における行路差C_iXYの入力を受ける。
【0091】
行路差判定部54は、また、当該の処理時点の時刻同期の判定処理において時刻同期異常に分類された2個のGNSSアンテナ(3A,3B,3Cのうちのいずれか2個)の組み合わせを時刻同期判定部52から取得し、さらに、当該の処理時点の衛星数の判定処理において衛星数異常に分類された2個のGNSSアンテナ(3A,3B,3Cのうちのいずれか2個)の組み合わせを衛星数判定部53から取得する。
【0092】
行路差判定部54は、そのうえで、入力されたGNSS衛星S_iのGNSSアンテナX-Y間における行路差C_iXYのうち、時刻同期異常と衛星数異常とのどちらにも分類されていない2個のGNSSアンテナ(3A,3B,3Cのうちのいずれか2個)の組み合わせにおける、GNSS衛星S_i別の、当該のGNSS衛星S_iのGNSSアンテナX-Y間における行路差C_iXYを用いて下記の処理を行う。
【0093】
行路差判定部54は、(時刻同期異常と衛星数異常とのどちらにも分類されていない)2個のGNSSアンテナ(3A,3B,3Cのうちのいずれか2個)の組み合わせごとに、当該の2個のGNSSアンテナが当該の処理時点において同時に追尾しているGNSS衛星S_iのうちの2個のGNSS衛星S_iの組み合わせごとに、直前の周期の判定で行路差異常に分類された衛星か否かを確認する(ステップS1)。
【0094】
行路差判定部54は、ステップS1にて行路差異常に分類されていない衛星であると確認できた場合には(ステップS1でNO)、当該の2個のGNSS衛星S_i各々のGNSSアンテナX-Y間における行路差C_iXYどうしの差の絶対値が第1の行路差閾値以下であるか否かを判定する(ステップS2)。当該の2個のGNSS衛星S_i各々のGNSSアンテナX-Y間における行路差C_iXYどうしの差の絶対値が第1の行路差閾値以下であるときには(ステップS2でYES)、当該の2個のGNSS衛星S_iはGNSS信号の到来方向が異常であるとして、当該の2個のGNSS衛星S_iを行路差異常に分類する(ステップS3)。
【0095】
行路差判定部54は、次の周期のステップS1において、直前の周期の判定で行路差異常に分類された衛星か否かを確認し、行路差異常に分類されている衛星であると確認できた場合には(ステップS1でYES)、当該の2個のGNSS衛星S_i各々のGNSSアンテナX-Y間における行路差C_iXYどうしの差の絶対値が、第1の行路差閾値よりも大きな値を有する第2の行路差閾値以下であるか否かを判定する(ステップS4)。当該の2個のGNSS衛星S_i各々のGNSSアンテナX-Y間における行路差C_iXYどうしの差の絶対値が第2の行路差閾値以下であるときには(ステップS4でYES)、当該の2個のGNSS衛星S_iはGNSS信号の到来方向が異常であるとして、当該の2個のGNSS衛星S_iを行路差異常に分類する(ステップS3)。
【0096】
また、ステップS4の判定において、当該の2個のGNSS衛星S_i各々のGNSSアンテナX-Y間における行路差C_iXYどうしの差の絶対値が第2の行路差閾値よりも大きいときには(ステップS4でNO)、当該の2個のGNSS衛星S_iはGNSS信号の到来方向が正常であるとして、当該の2個のGNSS衛星S_iを行路差正常に分類する(ステップS5)。
【0097】
ステップS5にて行路差正常に分類された当該の2個のGNSS衛星S_iは、次の周期の行路差の判定処理において、各々のGNSSアンテナX-Y間における行路差C_iXYどうしの差の絶対値が第1の行路差閾値以下であるか否かが判定される(ステップS1、S2)。
【0098】
第1の行路差閾値は、特定の値に限定されるものではなく、例えば実際には単一の送信アンテナ/同一の地点から複数のGNSS衛星のGNSS信号が送信されているとしても機械誤差などに起因して生じると想定される誤差が考慮されるなどしたうえで、適当な値に適宜設定される。また、第2の行路差閾値は、GNSS受信器4A,4B,4Cの時刻同期精度や、マルチパスまたは雑音の発生頻度や発生量、GNSS信号のドップラー周波数の変化、GNSSコンパス1ごとの個体差などに基づいて、行路差に生じる微小なばらつきやオフセットを特定し、これらの影響を受けないように第1の行路差閾値よりも大きな値に適宜設定される。
【0099】
このように、第1の行路差閾値と第2の行路差閾値とを適宜切り替えて行路差の判定処理を行なうことにより、行路差に生じる微小なばらつきやオフセットを原因として発生する誤判定を抑制することが可能である。
【0100】
また、上記の実施の形態では
図1に概略構成を示すGNSSコンパス1にこの発明に係る受信信号の異常の検出装置が組み込まれて前記GNSSコンパス1においてこの発明に係る受信信号の異常の検出方法が実施されるようにしているが、この発明に係る受信信号の異常の検出装置が組み込まれたりこの発明に係る受信信号の異常の検出方法が適用されたりする機器/装置は
図1に概略構成を示すGNSSコンパス1に限定されるものではなく、他の構成を備えるGNSSコンパスにこの発明に係る受信信号の異常の検出装置が組み込まれたりこの発明に係る受信信号の異常の検出方法が適用されたりするようにしてもよく、さらに言えば、この発明に係る受信信号の異常の検出装置が、GNSSを利用する他の種類の機器や装置に組み込まれたり、また、この発明に係る受信信号の異常の検出方法が、GNSSを利用する他の種類の機器や装置に適用されたりするようにしてもよい。
【符号の説明】
【0101】
1 GNSSコンパス
2 制御ユニット
3 GNSSアンテナ
3A,3B,3C GNSSアンテナ
4 GNSS受信部
4A,4B,4C GNSS受信器
5 異常検出部
51 行路差計算部
52 時刻同期判定部
53 衛星数判定部
54 行路差判定部
55 異常判定部
6 測位部