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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168281
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】波形冷延ステンレス鋼板の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C21D 9/46 20060101AFI20231116BHJP
   C22C 38/00 20060101ALI20231116BHJP
   C22C 38/58 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
C21D9/46 Q
C22C38/00 302Z
C22C38/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023078004
(22)【出願日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】2204482
(32)【優先日】2022-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】515220317
【氏名又は名称】ギャズトランスポルト エ テクニギャズ
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【弁理士】
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100202304
【弁理士】
【氏名又は名称】塙 和也
(72)【発明者】
【氏名】ニコラ、ローラン
(72)【発明者】
【氏名】バンサン、ルノン
【テーマコード(参考)】
4K037
【Fターム(参考)】
4K037EA04
4K037EA05
4K037EA12
4K037EA15
4K037EA18
4K037EA20
4K037EA21
4K037EA23
4K037EA25
4K037EA27
4K037EB05
4K037EB08
4K037EB11
4K037FH01
4K037FJ02
4K037FJ05
4K037FJ06
4K037FK03
4K037JA02
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ターゲットゾーン内の材料の構造を修正することを可能にする特定の熱処理を有する波形ステンレス鋼製の板を製造するための方法を提供する。また、波形ステンレス鋼製の板の材料の降伏強度を改善することによって、良好な疲労強度が得られる板を提供する。
【解決手段】本発明は、ステンレス鋼製波形板の製造方法であって、ステンレス鋼製板の提供(100)と、15%~45%の幾何学的変形比を示すターゲットゾーンを備える波形板を取得するためのステンレス鋼製板の変形(110)と、再結晶化されたターゲットゾーンを有する波形板を取得するために、ステンレス鋼の組成に従って定義された温度及び熱処理持続時間でのターゲットゾーンの熱処理(120)と、再結晶化されたターゲットゾーンを有する波形板の冷却(130)と、を含む方法とする。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
波形冷延ステンレス鋼板の製造方法であって、
含有量が重量で表される、
0.005%≦C≦0.05%及び好ましくはC≦0.03%、
0.1%≦Si≦1%、
0.5%≦Mn≦2%、
4%≦Ni≦10.5%、
16%≦Cr≦20%、
0%<N≦0.2%、
0%<P≦0.045%、
0%<S≦0.015%、
鉄及び製造から生じる残留元素である残り、を含む組成を有する冷延ステンレス鋼板の提供(100)と、
15%~45%、好ましくは35%未満の幾何学的変形比、又は25%未満のターゲットゾーン内の断面減少比を示す前記ターゲットゾーンを備える波形板を取得するための前記ステンレス鋼製板の変形(110)と、
再結晶化されたターゲットゾーンを有する波形板を取得するため、前記ステンレス鋼の前記組成に従って定義された温度及び熱処理持続時間での前記波形板の前記ターゲットゾーンの熱処理(120)と、
再結晶化されたターゲットゾーンを有する前記波形板の冷却(130)と、を含み、
前記製造方法が、
-4%≦Ni≦8%
-0.05%<N≦0.2%
であるような、重量で表される前記ステンレス鋼のニッケル及び窒素含有量について、
前記熱処理持続時間(120)が、前記熱処理の前記温度に従って定義され、
【表1】
-8%<Ni≦10.5%
-0<N≦0.1%
であるような、重量で表される前記ステンレス鋼のニッケル及び窒素含有量について、
前記熱処理(120)の持続時間が、前記熱処理の前記温度に従って定義されることを特徴とする、製造方法。
【表2】
【請求項2】
再結晶化されたターゲットゾーンを有する前記波形板の前記冷却(130)が、50℃/秒以上の速度で実施される、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記熱処理(120)が連続炉内で実施される、請求項1及び2のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項4】
前記熱処理(120)及び/又は前記冷却(130)が、不活性又は還元環境で実施される、請求項1から3のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項5】
前記熱処理(120)が真空炉内で実施される、請求項1及び2のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項6】
前記熱処理(120)が、前記ターゲットゾーンに加熱ベルを適用することによって実施される、請求項1及び2のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項7】
再結晶化されたターゲットゾーンを有する前記波形板の前記冷却(130)が、焼戻し流体中の焼戻しによって実施される、請求項1から6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項8】
再結晶化されたターゲットゾーンを有する前記波形板の前記冷却(130)が、好ましくは周囲温度での焼戻し流体の加圧注入によって実施される、請求項1から6のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記熱処理(120)の前に、前記波形板を洗浄するステップ(115)をさらに含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
含有量が重量で表される、
0.005%≦C≦0.05%及び好ましくはC≦0.03%、
0.1%≦Si≦1%、
0.5%≦Mn≦2%、
4%≦Ni≦10.5%、
16%≦Cr≦20%、
0%<N≦0.2%、
0%<P≦0.045%、
0%<S≦0.015%、
鉄及び製造から生じる残留元素である残り、を含む組成を有する波形冷延ステンレス鋼板であって、
波形板が、15%~45%、好ましくは35%未満の幾何学的変形比、又は25%未満のターゲットゾーン内の断面減少比を示す少なくとも1つの前記ターゲットゾーン(14)を定義する波形を備え、前記少なくとも1つのターゲットゾーンが再結晶化される、波形冷延ステンレス鋼板。
【請求項11】
前記波形板が、第1の方向の第1の波形(15)と、前記第1の方向(15)に対して実質的に直角の第2の方向の第2の波形(16)とを有し、その交点に前記少なくとも1つのターゲットゾーン(14)を備えるノード(13)が存在する、請求項10に記載の波形板。
【請求項12】
請求項10及び11のいずれか一項に記載の少なくとも一枚の波形板を備える密閉断熱タンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ステンレス鋼製波形板の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この製造方法は、より詳細には、タンク内の液化天然ガス(頭文字LNGによっても知られる)の輸送及び/又は貯蔵のための一次密閉膜としての用途のための波形ステンレス鋼製板の製造用に実装されることが意図されている。
【0003】
本発明の製造方法によって得られる板は、好ましいが非限定的な例示的な例として、支持構造、例えば船の船体に組み込まれたタンクの断熱及び防漏壁の製造に使用することができる。
【0004】
そのようなタンクは、例えば、液化ガス輸送船で使用されるものである。それらは、低温で液化ガスを収容し、その蒸発を制限するために、完全に防漏及び十分に断熱でなければならない。
【0005】
図1Aを参照すると、これらの壁は、一般に、2つの連続する密閉膜であり、一方は、タンクに収容された製品と接触する一次10、他方は、一次膜10と支持構造50との間に配置された二次30から構成され、これらの2つの膜は、2つの断熱障壁20、40と交互に配置されている。したがって、ステンレス鋼製の一次膜10に関連付けられた一次断熱材20と、可撓性又は剛性の二次膜30に関連付けられた二次断熱材40とで構成されるタンク壁が知られている。この二次膜30は、例えばアルミニウム製の、2つのガラス繊維織物の間に挟まれて接着された少なくとも1つの薄い連続金属板と、ガラス織物とアルミニウムとの間の結合を確実にすることができる結合剤とを含む。これらのタンクの断熱及び防漏壁は、好ましくは、組み立て式パネルのアセンブリから製造される。一般に、各組み立て式パネルは、直方体の一般的な形態を有し、一次断熱要素20及び二次断熱要素40は、平面視において、辺が実質的に平行な第1の長方形及び第2の長方形の形態をそれぞれ有し、第1の長方形の長さ及び/又は幅は、周囲境界を形成するために、第2の長方形のものよりも短い。隣接する二次断熱要素40の周囲境界及び一次断熱要素20の側壁は、タンクの全長、全幅又は全高にわたって延びることができる通路24を画定する。一次断熱材20の連続性は、ブロック25を通路24に挿入することによってもたらされる。二次膜30の連続性を確保するために、2つの隣接するパネル間の接合部において、前述の周囲境界は、前述のブロック25の配置前に、少なくとも1つの連続する薄い金属板を備える可撓性プライ35のストリップによって覆われる。これらの異なるパネルの取り付けは、タンクの断熱及び密閉を保証するために、非常に厳しい作業モード及び高い取り付け精度を伴う。
【0006】
タンク壁の別の変形例は、図1Bに部分的に表されている。この変形例では、壁はまた、2つの連続する密閉膜であり、一方は、タンクに収容された製品と接触する一次10、他方は、一次膜10と支持構造50との間に配置された二次30から構成され、これらの2つの膜は、2つの断熱障壁20、40と交互に配置されている。この変形例では、二次膜30はきつく張られていてもよく、Invar(登録商標)又は高マンガン含有量を有する合金及びステンレス鋼製の波形一次膜10で作製することができる。断熱障壁20、40の断熱パネルは、好ましくは強化ポリウレタンフォーム製である。
【0007】
そのような船のタンクは、多数の歪みを受ける。したがって、非常に低い温度に、例えばメタンでは-160℃程度、さらには-170℃に近い温度まで充填される前のタンクの冷却により、壁を形成する材料の様々な熱収縮に起因する歪みが生じる可能性がある。さらに、船舶は、航行中に、その船体、したがってタンクの壁の変形を引き起こす可能性があるうねりなどの多数の歪みを受ける。貨物の移動によりまた、タンクの壁に過圧又は逆圧の歪みを生じる可能性がある。
【0008】
1つ又は複数の絶縁要素及び膜の配置は、例示として上述されており、決して限定するものではないことに留意されたい。本発明は、より具体的には、以下に記載される一次膜に関する。
【0009】
一次膜10は、一次膜の表面上に延びる波形を含む。これらの波形の目的は、タンクが冷却されるときの鋼の熱収縮に適応するために一次膜に可撓性を与えることである。したがって、図2に示すように、平坦なゾーン11、波12、及びノード13によって一次膜の表面を画定することが可能である。したがって、これらのノード13は、変形に由来し、板が構成される材料の冶金的変形の位置である。その結果、ノード13は幾何学的応力領域を形成する。
【0010】
液化天然ガスが輸送及び/又は貯蔵されるとき、一次膜10は液化天然ガスと直接接触する。このため、上述したように、ノード13は、波形板がLNGを輸送及び/又は貯蔵するための一次密閉膜として使用される場合に蓄積された疲労による破損のリスクが増加する領域である。実際、船舶のキールビームの曲げ運動は、船舶の二重船殻、したがって膜に作用する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ターゲットゾーン内の材料の構造を修正することを可能にする特定の熱処理を有する波形ステンレス鋼製の板を製造するための方法を提案することによって上記の問題の全部又は一部を軽減することを目的とし、したがってその降伏強度を改善することによってより良好な疲労強度が得られる板を与える。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的のために、本発明の主題は、波形冷延ステンレス鋼板の製造方法であって、
含有量が重量で表される、
0.005%≦C≦0.05%及び好ましくはC≦0.03%、
0.1%≦Si≦1%、
0.5%≦Mn≦2%、
4%≦Ni≦10.5%、
16%≦Cr≦20%、
0%<N≦0.2%、
0%<P≦0.045%、
0%<S≦0.015%、
鉄及び製造から生じる残留元素である残り、を含む組成を有する冷延ステンレス鋼板の提供と、
15%~45%、好ましくは35%未満の幾何学的変形比、又は25%未満のターゲットゾーン内の断面減少比を示すターゲットゾーンを備える波形板を取得するためのステンレス鋼製の板の変形と、
再結晶化されたターゲットゾーンを有する波形板を得るため、ステンレス鋼の組成に従って定義された温度及び熱処理持続時間での波形板のターゲットゾーンの熱処理と、
再結晶化されたターゲットゾーンを有する波形板の冷却と、を含む方法である。
【0013】
一実施形態では、重量で表されるステンレス鋼のニッケル及び窒素含有量は、
-4%≦Ni≦8%
-0.05%<N≦0.2%
のようなものであり、
【0014】
熱処理の持続時間は、熱処理の温度に従って定義される。
【表1】
【0015】
別の実施形態では、重量で表されるステンレス鋼のニッケル及び窒素含有量は、
-8%<Ni≦10.5%
-0%<N≦0.1%
のようなものである。
【0016】
熱処理の持続時間は、熱処理の温度に従って定義される。
【表2】
【0017】
有利には、再結晶化されたターゲットゾーンを有する波形板の冷却は、50℃/秒以上の速度で実施される。
【0018】
有利には、熱処理は連続炉内で実施される。
【0019】
有利には、熱処理及び/又は冷却は、不活性又は還元環境で実施される。
【0020】
有利には、熱処理は連続炉内で実施される。
【0021】
本発明による製造方法の別の実施形態では、熱処理は、ターゲットゾーンに加熱ベルを適用することによって実施され得る。
【0022】
有利には、再結晶化されたターゲットゾーンを有する波形板の冷却は、焼戻し流体中の焼戻しによって実施される。
【0023】
有利には、再結晶化されたターゲットゾーンを有する波形板の冷却は、好ましくは周囲温度での焼戻し流体の加圧注入によって実施され得る。
【0024】
本発明による製造方法は、熱処理の前に、波形板を洗浄するステップをさらに含むことができる。
【0025】
本発明はまた、そのような製造方法によって得られた再結晶化されたターゲットゾーンを有する少なくとも1つの波形板を備える密閉断熱タンクに関する。
【0026】
本発明はまた、
含有量が重量で表される、
0.005%≦C≦0.05%及び好ましくはC≦0.03%、
0.1%≦Si≦1%、
0.5%≦Mn≦2%、
4%≦Ni≦10.5%、
16%≦Cr≦20%、
0%<N≦0.2%、
0%<P≦0.045%、
0%<S≦0.015%、
鉄及び製造から生じる残留元素である残り、を含む組成を有する波形冷延ステンレス鋼板に関し、
該波形板は、15%~45%、好ましくは35%未満の幾何学的変形比、又は25%未満のターゲットゾーン内の断面減少比を示す少なくとも1つのターゲットゾーンを定義する波形を備え、少なくとも1つのターゲットゾーンは再結晶化される。
【0027】
有利には、波形板は、第1の方向の第1の波形と、第1の方向に対して実質的に直角の第2の方向の第2の波形とを有し、その交点に少なくとも1つのターゲットゾーンを備えるノードが存在する。
【0028】
本発明はまた、少なくとも1つのそのような波形板を備える密閉断熱タンクに関する。
【0029】
本発明のこれらの特徴及び利点、並びに他の特徴及び利点は、非限定的な例として与えられる添付の図面を参照して与えられる以下の説明からより明確に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1A】従来技術のタンク壁の概略断面図である。
図1B】従来技術の別のタンク壁の概略図である。
図2】従来技術の波形板の異なる領域を表す。
図3】本発明による製造方法のステップのフロー図を表す。
図4】本発明による製造方法の板の変形ステップ後に得られた波形板のノードの詳細を示す。
図5】本発明による製造方法の連続炉での熱処理ステップ及び冷却ステップのステップを概略的に示す。
図6】本発明による製造方法により得られた波形冷延ステンレス鋼板のミクロ組織の詳細を示す。
図7】本発明による製造方法とは異なる方法により得られた波形冷延ステンレス鋼板のミクロ組織の詳細を示す。
図8】本発明による製造方法を用いた場合と用いない場合とで異なるサンプルに対して実施された試験の結果を示す。
図9】板の変形を簡略化して示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
明確にするために、同じ要素は、異なる図において同じ参照番号を有する。
【0032】
以下では、ステンレス鋼製の板は、冷延によって得られ、例えば0.15~5mmの厚さの長方形で薄い平行六面体の形態を有するステンレス鋼片であると理解されるべきである。さらに、波形という用語は波状も意味し、波形板は、波形又は起伏を示す板であると理解されるべきである。
【0033】
好ましくは、本発明の文脈において、ステンレス鋼製の板は、0.5~2mmの厚さを有する。その幅は、好ましくは200cm以下であり、その長さは、好ましくは400cm以下である。しかしながら、本発明の方法を実行するときに使用される手段、特に本発明の説明において以下に現れる炉のサイズを適合させることによって、他の寸法を想定することができる。
【0034】
図1Aは、従来技術のタンク壁の概略断面図である。本発明の方法によって製造された板は、一次膜10に取って代わることができる。この図については既に説明している。
【0035】
図1Bは、従来技術の別のタンク壁の概略図である。本発明の方法によって製造された板は、一次膜10に取って代わることができる。この図については既に説明している。
【0036】
図2は、従来技術の波形板の異なる領域を表す。この図については既に説明している。
【0037】
図3は、本発明による製造方法のステップのフロー図を表す。本発明による波形冷延ステンレス鋼板の製造方法は、
含有量が重量で表される、
0.005%≦C≦0.05%及び好ましくはC≦0.03%、
0.1%≦Si≦1%、
0.5%≦Mn≦2%、
4%≦Ni≦10.5%、
16%≦Cr≦20%、
0%<N≦0.2%、
0%<P≦0.045%、
0%<S≦0.015%、
を含む組成を有する冷延ステンレス鋼板の提供のステップ100を含む。
【0038】
任意に、提供される板のステンレス鋼の組成は、重量で表される含有量が3%以下のモリブデン(Mo≦3%)及び/又は重量で表される含有量が0.5%以下の銅(Cu≦0.5%)を含むことができる。
【0039】
組成の残りは、鉄及び鋼の製造から生じる不可避不純物から構成される。このステンレス鋼のミクロ組織は、本質的にオーステナイト系である(準安定オーステナイトの形態である)。一次オーステナイトとも呼ばれるオーステナイト粒子の平均サイズは、6μm(マイクロメートル)~35μm(マイクロメートル)である。
【0040】
製造方法は、折り畳みによって実施される変形に対して15%~45%(好ましくは35%未満)の幾何学的変形比を示す、又はスタンピングによって実施される変形に対して25%未満のターゲットゾーン内の断面減少比を示す、ターゲットゾーンを画定する波形を含む波形板を取得するため、例えば折り畳み又はスタンピングによるステンレス鋼製の板の変形のステップ110を含む。
【0041】
断面減少比は、変形前後の鋼の断面間の比として見ることができる。初期断面5mm、変形後の断面4.5mm(スタンピングタイプ)を有する板の断面減少比は10%である。
【0042】
幾何学的変形比は、板の幾何学的変形を3次元的に表す比である。これは、当業者に既知の式に従って数値計算によって決定することができる。図9は、板の変形を簡略化して示す図である。例示のために、簡略化された方法で、単一の寸法のみを考慮する場合、中立繊維セグメント長Fn(その長さは、図9に太い点線l0で示されている)l0=100mm及び長さld=110mmの外側繊維セグメント(その長さは、図9に細い点線で、ld=l0+Δlであるldと表される)について、この外側繊維に沿った材料が、板の厚さEpが折り畳みで変更されることなく、10%の変形比を示すように、厚さEpの折り畳まれた板(図9を参照)。
【0043】
板の変形のステップ110は、板上に波形又は起伏を形成することを可能にする。これらの波形15は、図4に見ることができる。これらの波形の目的は、液化ガスを輸送及び/又は貯蔵するためその使用を目的として、板に可撓性を与えることである。
【0044】
図4は、板の変形のステップ110の後に得られる波形板のノード13の詳細を表す。図4では、変形ステップの後、波形板は、第1の方向の第1の波形15と、第1の方向に対して実質的に直角の第2の方向の第2の波形16とを有する。第1の波形15と第2の波形16との交点にノード13がある。それは、15%~45%、好ましくは35%未満の変形比、又は25%未満のターゲットゾーン内の断面減少比を示すターゲットゾーン14を備える。この変形/減少比は、変形ステップに固有のものであり、当業者に既知の計算方法によって決定することができる。これらの変形比により、ノード13のターゲットゾーン14においてより多くの含有量のマルテンサイトの出現をもたらす。
【0045】
板の変形のステップ110は、ターゲットゾーン14において、ステンレス鋼のミクロ組織レベルにおける変化を生じさせる。6~35マイクロメートルの平均サイズを有する粒子の形態で最初に存在するステンレス鋼の準安定オーステナイトは、オーステナイトとマルテンサイトの混合物に変態する。マルテンサイトは、変形前の鋼板の一次オーステナイト粒子の寸法よりも小さい寸法のラメラの形態をとる。
【0046】
一次オーステナイトのマルテンサイトへの変形は部分的である。変形後、オーステナイトとマルテンサイトとの間の比は、いくつかの要因、特にステンレス鋼の初期組成及び鋼板の変形/断面減少のレベルに依存する。換言すれば、同一の変形が与えられると、オーステナイトとマルテンサイトとの間の比は、異なる組成の2つのステンレス鋼板について異なる。同様に、所与の初期鋼組成について、オーステナイトとマルテンサイトとの間の比は、板の点に従って受ける変形/断面減少比の違いのために、考慮される板の点に応じて異なる(ターゲットゾーン、波又は平坦なゾーン)。
【0047】
ターゲットゾーン14は、15%~45%の間の幾何学的変形比、又は25%未満のターゲットゾーン内で局所的に断面減少比を示す。幾何学的変形比という表現は、折り畳みによる変形のステップに続いて得られるターゲットゾーンに使用される。断面減少比という表現は、スタンピングによる変形のステップに続いて得られるターゲットゾーンに使用される。先に説明したように、幾何学的に応力がかけられたゾーンを形成するのはこれらのターゲットゾーン14であり、したがって疲労の増加による破損のリスクを示すゾーンである。ターゲットゾーン14において、オーステナイト粒子は、変形ステップ110の間に、少なくとも部分的に、マルテンサイトのラメラに変態する。
【0048】
以下に説明する本発明による製造方法のステップは、ターゲットゾーン14に隣接するゾーンの機械的特性を低下させることなく、ターゲットゾーン14の疲労強度を改善することを可能にする。
【0049】
本発明による製造方法は、板の変形のステップ110の後に、再結晶化されたターゲットゾーンを有する波形板を取得するためステンレス鋼の組成に従って定義された温度及び熱処理持続時間で、ターゲットゾーン14を含む波形板の熱処理のステップ120を含む。ターゲットゾーンの再結晶について以下に説明する。本発明の文脈において、再結晶温度は700~900℃であり、熱処理持続時間は5秒~40分である。
【0050】
本発明の文脈において、部品の熱処理120は、該部品を加熱し、その温度を維持することを意味する。
【0051】
より具体的には、
-4%≦Ni≦8%
-0.05%<N≦0.2%
であるような、重量で表されるステンレス鋼のニッケル及び窒素含有量について、
熱処理120の持続時間は、熱処理の温度に従って以下のように定義される。
【表3】
【0052】
言い換えれば、熱処理の持続時間は、熱処理の温度に直接関連する。考慮される鋼のこのニッケル及び窒素含有量について、700℃の温度では、熱処理持続時間は15~40分である。750℃の温度では、熱処理持続時間は5~20分などである。
【0053】
さらに、
-8%≦Ni≦10.5%
-0<N≦0.1%
であるような、重量で表されるステンレス鋼のニッケル及び窒素含有量について、
熱処理120の持続時間が、熱処理の温度に従って以下のように定義される。
【表4】
【0054】
本明細書に開示されている教示に照らして、上述の実施形態に対して様々な修正を行うことができることは、当業者にはより一般的に明らかであろう。本発明は、熱処理温度、例えば750℃又は800℃による熱処理持続時間範囲によって定義される。しかしながら、本発明は、示された制限の間にある熱処理温度にも同様に適用される。一例として、775℃の熱処理温度(すなわち、750~800℃の示された温度の間)の場合、当業者は、本発明の説明に基づいて、熱処理の持続時間が4~8分で適合されなければならないことを知っている。
【0055】
熱処理のステップ120では、波形板中に存在するマルテンサイトのラメラを分断して、マルテンサイトのラメラのサイズよりも小さいサイズ(したがって、変形前の板の鋼中のオーステナイト粒子の初期サイズよりもはるかに小さいサイズ)のオーステナイト粒子に変態させる。言い換えれば、熱処理により、ターゲットゾーンのマルテンサイトは、大部分が微細な粒子を有するオーステナイトに変態する。典型的には、熱処理後の残留マルテンサイトの割合は4%以下である。これらのゾーンは、再結晶化ターゲットゾーンと呼ばれる。言い換えれば、ターゲットゾーンは、マルテンサイト型のそのミクロ組織が、二次ミクロ組織と呼ばれる微細粒子を有するオーステナイトのミクロ組織に変態するときに再結晶化される。これらのオーステナイトのナノ粒子の製造、又はより一般的にはミクロ組織のオーステナイトのより小さな粒子への微細化は、材料の降伏強度に関してより良好な性能を得ることを可能にする。この降伏強度の改善は、関係するターゲットゾーンの疲労強度に有益な効果をもたらす。
【0056】
最後に、本発明による製造方法は、再結晶化されたターゲットゾーンを有する波形板を冷却するステップ130を含む。再結晶化されたターゲットゾーンを有する波形板の冷却のステップ130は、板全体の粒子の成長を停止させ、その目的は、熱処理120によって得られたオーステナイトのナノ粒子の形態のミクロ組織を設定することである。
【0057】
図5は、本発明による製造方法の連続炉での熱処理ステップ及び冷却ステップを概略的に示す。
【0058】
図5に示す実施形態では、熱処理120は連続炉20内で実施される。有利には、熱処理ステップ120及び冷却ステップ130は、表面汚染に対して保護的な環境で行われる。熱処理120は、代替的に真空炉内で実施され得ることに留意されたい。これらの特定の環境の目的は、波形板の表面上のスケール又は任意の他の汚染の形成を防止することである。これらの表面汚染は、熱処理後にスケール除去ステップ(機械的、化学的又はその他)を省くために回避されるべきである。しかしながら、本発明による方法はまた、特に熱処理の環境が表面汚染に対して保護的でない場合、熱処理120の後にスケール除去ステップを含むことができる。
【0059】
有利には、本発明による製造方法は、熱処理120の前に、波形板の洗浄ステップ115をさらに含むことができる。洗浄ステップ115の目的は、波形板上に存在する微量の汚染物質、顕著な脂肪物質又は金属チップをすべて除去することである。
【0060】
図5に示すように、波形板は、炉20を直接通過する移動床21、例えばマット又はローラのセット上に配置される。方向22への床21の移動により、波形板は、投入ゾーンと呼ばれる第1のゾーン23で内側20に変位する。投入ゾーン23は、加熱されていないゾーンである。対照的に、制御された環境の場合、投入ゾーン23は制御された環境にある。したがって、環境を破壊することなく、床を方向22に並進させることによって、波形板は次いで、加熱ゾーンと呼ばれる第2のゾーン24に移送される。熱処理ステップ120は、波形板が適切な持続時間にわたって目標温度に曝されるゾーンである加熱ゾーン24で行われる。一例として、重量で表されるそれぞれニッケル及び窒素含有量が6%及び0.15%であり、加熱ゾーン24が800℃に設定されているステンレス鋼の波形板の場合、曝露時間は5~10分、例えば8分である。波形板のステンレス鋼の所与の温度及び所与の組成について、上記の曝露時間範囲を決定するために本出願人によって試験が行われている。
【0061】
連続炉20を通る床の前進速度は、所望の曝露時間を得るために、加熱ゾーン24の長さの関数として計算される。例えば、10mの長さの加熱ゾーンを有し、800℃で5分の曝露対象の連続炉の場合、床の速度は2m/分に設定される。
【0062】
代替的に、波形板の寸法に従って、波形板が2つのステップで同時に存在する時間を制限するために、床の段階的な前進も想定され得る。
【0063】
この例では、床は並進移動可能であることに留意されたい。しかしながら、同じ原理は、他の種類の移動、特に回転キャリッジ炉を用いた回転移動、及び好ましく好ましくは例えば30cm×50cm程度(又は炉のサイズに応じてそれ以上)の小さな寸法の部品に適用される。本発明は、加熱ゾーン内で予め定義されている温度及び持続時間での熱処理に基づく。
【0064】
加熱ゾーン24における曝露時間の終わりに、波形板は急速冷却、例えば過焼戻し型の冷却を受ける。
【0065】
熱処理ステップ120及び/又は冷却ステップ130は、板の表面上の酸化物の形成を回避するために、不活性又は還元環境で好ましくは実施される。冷却ステップ130では、次いで、酸化から保護する流体の中から焼戻し流体が選択される。両方の場合(熱処理ステップ120及び冷却ステップ130)において、水素化窒素、アルゴン、ヘリウム又は場合によっては純粋な水素にも注目することができる。代替的に、冷却が不活性又は還元環境で行われない場合、又はさらに、再結晶化されたターゲットゾーンを有する波形板は、冷却ステップ130の後に、板の表面に存在し得る望ましくない残留物を除去するために、スケール除去ステップにかけることができる。
【0066】
図5に示す連続炉20の場合、冷却130は、再結晶化されたターゲットゾーンを有する波形板を、床の前進方向22に加熱ゾーン24に隣接する焼戻しゾーン25に移送することによって実施される。
【0067】
有利には、冷却ステップ130は、非常に迅速に、例えば50℃/秒以上の速度で実施される。
【0068】
熱処理120及び/又は冷却130は、前述の理由により、不活性又は還元環境で好ましくは実施される。
【0069】
真空炉又は制御された環境での熱処理120の場合、冷却130は、周囲温度での焼戻し流体の加圧注入によって実施される。
【0070】
別の実施形態では、熱処理120は、ターゲットゾーンに局所加熱手段、例えば加熱ベルを適用することによって実施することができる。そのために、加熱ベルは、波形板の形態を包むノード上に位置付けられる。特に短持続時間の熱処理のための誘導型又は対流型の加熱手段を想定することも可能である。
【0071】
前述のように、熱処理は薄い板(典型的には0.5mm~2mmの厚さを有する)に対して実施され、浸漬時間は皮膚加熱時間に近いと概算される。そのため、本発明の製造方法で定義される曝露時間に比べて浸漬時間が短いと考えられる。
【0072】
炉の加熱ゾーンの加熱手段が、目標温度に既に加熱された加熱ゾーン(例えば、真空炉)に処理される板の配置を可能にしない場合、目標温度が維持される時間を短縮することによって、温度上昇勾配の影響が考慮される。この短縮は、熱処理温度が高く、昇温速度が遅い場合に一層大きくなる。なお、熱処理時間が5分未満では、目標温度まで緩やかに昇温することができない。
【0073】
製造方法はまた、熱処理の持続時間を良好に制御し、必要に応じて温度上昇勾配を考慮するために、加熱ゾーン24内の温度の関数として床の前進速度を調整するステップ125を含むことができる。例えば、より大きな厚さの部品の場合、床の前進速度は、より薄い厚さの部品の前進速度よりも小さくなるように調整される。
【0074】
したがって、本発明による製造方法は、鋼板の鋼の化学組成の関数として最適化される熱処理に依存する。熱処理持続時間及び温度パラメータは、一次(すなわち、ノードの非変形ゾーン内)及び二次(変形ゾーン内)オーステナイト粒子の成長を制限しながら、ノードのターゲットゾーン内でマルテンサイトのオーステナイトへの満足のいく復帰を得るように選択される。
【0075】
本発明の製造方法は、ターゲットゾーン、計画された液化ガス輸送/貯蔵用途に不可欠な波形を得るため変形のために脆弱化されたゾーンに特有の熱処理に基づく。本発明の熱処理は、ターゲットゾーンに存在するマルテンサイトを小さな粒径を有する二次オーステナイトに変態させることを可能にする。これは、ターゲットゾーンのより良好な機械的特性をもたらす。換言すれば、本発明は、熱処理後に、マルテンサイトのラメラ及び最初にステンレス鋼中に存在するオーステナイトの粒子よりも小さいサイズのオーステナイト粒子を得るために形成されるマルテンサイトを介したターゲットゾーンのミクロ組織レベルでの部分変態を利用する。
【0076】
本発明による製造方法によって製造された再結晶ターゲットゾーンを有する波形板は、極低温で液化ガスの輸送及び/又は貯蔵のための密閉膜(一次膜10)の製造における構成要素として使用することができる。
【0077】
図6は、本発明による製造方法により得られた波形冷延ステンレス鋼板のミクロ組織の詳細を示す。この拡大図(1000倍)では、冷延ステンレス鋼板に最初に存在するオーステナイトの粒子60の境界を見ることができる。これらの粒子は、少なくとも部分的に、ラメラ61の形態でマルテンサイトに変態する。本発明による製造方法の適合された熱処理により、ラメラ61は、微粒子62又はナノ粒子の形態のいわゆる二次オーステナイトに変態する。このようにして製造された板の降伏強度を改善することによってより良好な機械的性能を得ることを可能にするのは、一次オーステナイト粒子60の二次オーステナイトナノ粒子62への微細化である。二次オーステナイト粒子の平均サイズは、0.2μm(マイクロメートル)~2μm(マイクロメートル)であり、0.2μm未満であってもよい。
【0078】
図7は、本発明による製造方法とは異なる方法により得られた波形冷延ステンレス鋼板のミクロ組織の詳細を表す。この例では、波形板は、過度に長い熱処理、すなわち、本発明の方法の熱処理時間を超える持続時間を受けている。言い換えれば、図7に詳細が表されている波形板は、本発明による製造方法では得られていない。
【0079】
この拡大図(500倍)では、冷延ステンレス鋼に最初に存在するものと同様の寸法のオーステナイトの粒子60の境界を見ることができる。マルテンサイトのラメラ61の痕跡がかすかに見える。見て分かるように、過剰な熱処理時間は、二次オーステナイトのナノ粒子の形成をもたらさなかった。反対に、熱処理は材料をアニーリングした。得られたミクロ組織は、一次オーステナイト粒子と、一次オーステナイト粒子のサイズに近いサイズまで大幅に成長した二次オーステナイト粒子との混合物を含む。
【0080】
図6及び図7に示すミクロ組織は、熱処理ステップ120の重要性を強調している。実際、一方では、使用される鋼の化学組成を考慮することが不可欠であり、他方では、熱処理の持続時間を曝露時間に適合させることが不可欠である。熱処理の持続時間が本発明の方法の持続時間未満である場合、マルテンサイトのラメラのかなりの割合は、オーステナイトのナノ粒子に変態される時間を有さない。また、熱処理の持続時間が本発明の方法の持続時間よりも長い場合、アニーリング材料、マルテンサイトのラメラは、大きなオーステナイト粒子に変態し戻される。
【0081】
図8は、本発明による製造方法を用いて、及び本発明による製造方法を用いずに、異なるサンプルに対して行われた試験の結果を示す。x軸は、破断までのサイクル数(N)を表す。Y軸は、繰り返し伸長を表す。この特定の場合では、繰り返し伸長(Ec)は0.55mmである。この係数は、以下に提示されるすべての試験について同一である。サンプルは、ステップ110に従って変形された冷延波形板の一部分であり、完全なノードを含む。各サンプルを繰り返し伸長させ、サンプルの破断までのサイクル数を観察した。破断は、例えば、ターゲットゾーンの亀裂によって反映され得る。
【0082】
図4に示すように、冷延され、次いで変形された(すなわち、変形ステップ110を受けた)ステンレス鋼板の2つのサンプル、
0.0159%のC、0.57%のSi、1.135%のMn、0.0243%のP、0.0027%のS、18.272%のCr、9.310%のNi、0.116%のCu、0.039%のMo、及び0.0175%のNの組成(重量パーセント)の304L、
0.025%のC、0.52%のSi、1.70%のMn、0.033%のP、0.003%のS、17.32%のCr、6.63%のNi、0.25%のCu及び0.108%のNの組成(重量パーセント)の301LN、
を熱処理ステップ及び冷却ステップを用いて試験した。
【0083】
これらのサンプルは、保護環境で異なる熱処理を受けた。iso-stress法による平均寿命(サイクル数)は、以下のようになる。
熱処理なし304L(「生の304L」)-155147サイクル、
800℃で6分間熱処理した304L(本発明の方法による)-470467サイクル、
800℃で10分間熱処理した304L(範囲外)-134400サイクル、
熱処理なし301LN(「生の301LN」)-1896400サイクル、
800℃で5分間(範囲内)熱処理した301LN-2000000サイクルで破断は観察されなかった(試験は2000000サイクルで停止された)。
【0084】
示されているサイクル数は、所与の条件に対して行われたいくつかの試験から得られた平均であることに留意されたい。
【0085】
生のサンプル304Lは、ターゲットゾーン14を含む基準サンプルを構成する。その寿命は155147サイクルである。
【0086】
同一のサンプルを、800℃の熱処理ステップで6分間(304Lのサンプル800℃/6分間)、本発明の方法に供した。その寿命は470467サイクルに変化する(すなわち、基準サンプルより3倍多い)。
【0087】
同一の試料を、800℃の熱処理ステップで10分間(304L試料800℃/10分)、本発明の方法に対応しない熱処理に供した。その寿命は134400サイクルに変化する。言い換えれば、その寿命は基準サンプルと比較して減少する。過度に長い熱処理は、サンプルの降伏強度を向上させることができないだけでなく、サンプルの寿命に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0088】
生の301LNサンプルは、ターゲットゾーン14を含む別の参照サンプルを構成する。その寿命は1896400サイクルである。
【0089】
同一の試料を、800℃の熱処理ステップで5分間(301LN800℃/5分)、本発明の方法に供した。その寿命は、亀裂が検出されない2000000サイクルである(すなわち、基準サンプルの最低1.05倍大きい)。
【0090】
別の試験は、より高い負荷レベル(0.7mmの繰り返し伸長(Ec)による「高負荷レベル」)で、条件ごとに1回の試験で実行された。iso-stress法を与えられた平均寿命(サイクル数)は、このことから以下のようになる。
熱処理なし301LN(「生の301LN」)-367200サイクル、
750℃で10分間熱処理した301LN(本発明の方法に対応する持続時間の範囲内)-破断が観察されない2000000サイクル(試験は2000000サイクルで停止)。
【0091】
生の301LNサンプルは、ターゲットゾーン14を含む別の参照サンプルを構成する。高負荷レベルでの寿命は367200サイクルである。
【0092】
同一のサンプルを、750℃の熱処理ステップで10分間(301LN 750℃/10分)、本発明の方法に供した。高負荷レベルでの寿命は、亀裂の検出なしで2000000サイクルである(すなわち、基準サンプルの最低5.44倍大きい)。本発明による製造方法の有無にかかわらず、異なるサンプルに対して実行された試験は、本発明の方法によって試験されたサンプルの改善された疲労強度を明確に示す。顕微鏡観察は、ミクロ組織の形成、したがってそれから生じる降伏強度性能レベルに対する熱処理の効果を強調している。
【0093】
本発明はまた、
含有量が重量で表される、
0.005%≦C≦0.05%及び好ましくはC≦0.03%、
0.1%≦Si≦1%、
0.5%≦Mn≦2%、
4%≦Ni≦10.5%、
16%≦Cr≦20%、
0%<N≦0.2%、
0%<P≦0.045%、
0%<S≦0.015%、
を含む組成を有する波形冷延ステンレス鋼板に関し、
該波形板は、15%~45%、好ましくは35%未満の幾何学的変形比、又は25%未満のターゲットゾーン内の断面減少比を示す少なくとも1つのターゲットゾーン14を定義する波形を含み、少なくとも1つのターゲットゾーンは再結晶化される。
【0094】
有利には、波形板は、第1方向の第1の波形15と、第1の方向15に対して実質的に直角な第2の方向の第2の波形16とを有し、その交点に少なくとも1つのターゲットゾーン14を含むノード13が存在する。
【0095】
本発明はまた、少なくとも1つのそのような波形板を備える密閉断熱タンクに関する。
【0096】
開示された教示に照らして、上述の実施形態に様々な修正を加えることができることが、当業者にはより一般的になるであろう。以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、特許請求の範囲を本明細書に記載の実施形態に限定するものとして解釈されるべきではなく、特許請求の範囲がその定式化によって網羅することを目的とし、その予想が当業者の一般知識に基づく当業者の範囲内にあるすべての均等物をその中に含むと解釈されるべきである。
図1A
図1B
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
【外国語明細書】