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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168282
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】連続線材
(51)【国際特許分類】
   D01F 6/62 20060101AFI20231116BHJP
   B29B 17/00 20060101ALI20231116BHJP
   D01D 5/08 20060101ALI20231116BHJP
   D02J 1/22 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
D01F6/62 302E
B29B17/00 ZAB
D01D5/08 Z
D02J1/22 J
D01F6/62 302A
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078029
(22)【出願日】2023-05-10
(31)【優先権主張番号】P 2022078476
(32)【優先日】2022-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2022116566
(32)【優先日】2022-07-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000004503
【氏名又は名称】ユニチカ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】中谷 雄俊
(72)【発明者】
【氏名】南波 祐司
【テーマコード(参考)】
4F401
4L035
4L036
4L045
【Fターム(参考)】
4F401AA22
4F401BA13
4F401CA02
4F401CA03
4F401CA13
4F401CA58
4F401CA60
4F401CB01
4F401CB10
4F401CB18
4F401DC01
4F401DC04
4F401FA05Z
4F401FA20Z
4L035AA05
4L035BB31
4L035BB89
4L035BB91
4L035CC07
4L035DD14
4L035FF01
4L035FF02
4L035GG05
4L035HH01
4L036MA05
4L036MA34
4L036PA03
4L036UA07
4L045AA05
4L045BA02
4L045BA32
4L045DA42
(57)【要約】
【課題】 ポリエステル系熱可塑性樹脂脂からなる連続線材において、実用上必要な機械的物性等を備えたものであり、かつリサイクル率を向上させた連続線材を提供することを課題とする。
【解決手段】 リサイクルポリエステルを50質量%以上含むポリエステル樹脂から構成される連続線材であって、リサイクルポリエステルが、未採用のポリエステル樹脂製品を用いたものであり、連続線材の相対粘度が1.1~1.8、直径が0.2~10mmである再生ポリエステルからなる連続線材。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リサイクルポリエステルを50質量%以上含むポリエステル樹脂から構成される連続線材であって、
リサイクルポリエステルが、使用済み、未使用もしくは未採用のポリエステル樹脂製品またはポリエステル樹脂製品を製造する工程で発生する未採用のポリエステル樹脂の少なくともいずれかを用いたものであり、連続線材の相対粘度が1.1~1.8、直径が0.2~10mmであることを特徴とする再生ポリエステルからなる連続線材。
【請求項2】
ポリエステル樹脂製品が、ポリエステル樹脂製の連続線材であることを特徴とする請求項1記載の再生ポリエステルからなる連続線材。
【請求項3】
ポリエステル樹脂製品が、ラケットストリングまたは釣り糸であることを特徴とする請求項1記載の再生ポリエステルからなる連続線材。
【請求項4】
使用済み、未使用もしくは未採用のポリエステル樹脂製品またはポリエステル樹脂製品を製造する工程で発生する未採用のポリエステル樹脂の少なくともいずれかのリサイクルポリエステルを原料とし、これを溶融紡出し、冷却して得られた未延伸線材を熱延伸することを特徴とする再生ポリエステルからなる連続線材の製造方法。
【請求項5】
ポリエステル樹脂製品がポリエステル樹脂製の連続線材であり、前記連続線材を0.2~20mmの長さに細断したものを溶融紡出することを特徴とする請求項4記載の再生ポリエステルからなる連続線材の製造方法。
【請求項6】
原料とするリサイクルポリエステルを固相重合によって相対粘度を1.2~1.9としたものを溶融紡出することを特徴とする請求項4記載の再生ポリエステルからなる連続線材の製造方法。
【請求項7】
請求項1~3のいずれか1項記載の再生ポリエステルからなる連続線材からなることを特徴とする材料押出型の付加製造装置に適用する造形材料。
【請求項8】
請求項4記載の製造方法により得られた再生ポリエステルからなる連続線材を、材料押出型の付加製造装置に適用し、三次元造型物を製造することを特徴とする三次元造造型物の製造方法。
【請求項9】
請求項1~3のいずれか1項記載の再生ポリエステルからなる連続線材からなることを特徴とするラケットストリング。
【請求項10】
請求項1~3のいずれか1項記載の再生ポリエステルからなる連続線材からなることを特徴とする釣り糸。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リサイクル樹脂製の連続線材であり、特に各種資材用の織物、編物、ネット、ロープ、造形材料などに適用できる連続線材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、熱可塑性樹脂からなる連続線材は抄紙用途や汚水濾過用のフィルター、ゴム補強材、消防ホース、面ファスナー、漁網、防球フェンス、ブラシ、釣り糸、ラケット用ストリングなど様々な用途で使用されている。
【0003】
近年、このような連続線材を含めたプラスチック材料について、マイクロプラスチック対策やサーキュラーエコノミー、持続可能性などの観点での対策が特に求められている。PET(ポリエチレンテレフタレート)からなる飲料用や化粧品用などの容器は、従来よりリサイクルが行われており、マテリアルリサイクルやケミカルリサイクル、サーマルリサイクルなどの形で活用されているが、資源循環や工程の簡便性の観点でマテリアルリサイクルが好ましく、多く利用されている(非特許文献1)。また、繊維製品については、最終消費者が使用した使用済の衣料品を店頭や自治体にて回収した後、リユースすることや、反毛やウエスとしてリサイクルすることなどがシステム的になされて実運用されている。しかし、衣料用繊維に比べて線径の大きい熱可塑性樹脂製の連続線材については、産業用製品としての使用が多く、その用途も細分化されていることもあり、リサイクルの事例はまだまだ少ない。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】プラスチックリサイクルの基礎知識2021 ウェブサイト URL:https://www.pwmi.or.jp/pdf/panfl.pdf
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したように、熱可塑性樹脂からなる連続線材ではリサイクル原料の活用が十分になされていない現状に鑑み、本発明では、ポリエステル系熱可塑性樹脂脂からなる連続線材において、実用上必要な機械的物性等を備えたものであり、かつリサイクル率を向上させた連続線材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するものであって、リサイクルポリエステルを50質量%以上含むポリエステル樹脂から構成される連続線材であって、
リサイクルポリエステルが、使用済み、未使用もしくは未採用のポリエステル樹脂製品またはポリエステル樹脂製品を製造する工程で発生する未採用のポリエステル樹脂の少なくともいずれかを用いたものであり、連続線材の相対粘度が1.1~1.7、直径が0.2~10mmであることを特徴とする再生ポリエステルからなる連続線材を要旨とする。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、連続線材を構成する樹脂におけるリサイクル樹脂が占める割合が高いものでありながら、物性や耐久性に優れ、産業資材用として実用十分な再生ポリエステルからなる連続線材を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の再生ポリエステルからなる連続繊維は、リサイクルポリエステルを50質量%以上含むポリエステル樹脂から構成される。ポリエステルとしては、分子内にエステル結合を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、芳香族ポリエステルでは、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリプロピレンテレフタレート等が挙げられ、また、脂肪族ポリエステルでは、例えばポリ乳酸、ポリブチレンサクシネート、ポリカプロラクトン等が挙げられる。中でも、耐熱性、機械的物性、経済性の観点でポリエチレンテレフタレートが好ましい。
【0009】
前記したポリエステルに、本発明の目的が達成される範囲において、他のジカルボン酸成分、ジオール成分あるいはオキシカルボン酸成分等を共重合してもよく、あるいは前記したポリエステルのうち少なくとも2つをブレンドしたブレンド物を用いてもよい。共重合できる他の成分としては、ジカルボン酸では、例えば、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、5-ナトリウムスルホイソフタル酸、無水フタル酸、セバシン酸、アジピン酸、アゼライン酸、コハク酸、ε-カプロラクトン等が挙げられ、ジオール成分では、エタンジオール、ジエチレングリコール、プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサングリコール、シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。また、連続線材を構成する原料の一部に再生可能資源に由来するモノマーやオリゴマーなどの原料を使用することによって、環境を配慮したものとなり好ましい。具体的には、サトウキビやトウモロコシ由来の乳酸、微生物や動物由来のエステル、トウゴマ油由来のポリアミド11等が挙げられ、また、再生可能資源としては、植物の実,種,葉,花,根,幹,枝,茎,皮,殻などに含まれる成分(樹液,油脂,デンプン,セルロース,リグニン等)や、微生物産生の成分(乳酸,アミノ酸などの有機酸やたんぱく質等)、動物の代謝物や排泄物,食料などの廃棄物、大気中等の二酸化炭素などが挙げられる。
【0010】
本発明の連続線材は、リサイクルポリエステルを50質量%以上含むポリエステル樹脂から構成されるものであるが、連続線材を構成するポリエステル樹脂の全質量に対して、リサイクルポリエステルが占める質量割合が50質量%以上であり、これをリサイクル率50%以上ともいう。本発明の連続線材を構成するリサイクルポリエステルは、マテリアルリサイクルあるいはケミカルリサイクルのいずれの方法によるものでもよい。マテリアルリサイクルによるリサイクルポリエステルは、使用済み、未使用もしくは未採用のポリエステル樹脂製品、またはポリエステル樹脂製品を製造する工程で発生する未採用樹脂を用いる。ポリエステル樹脂製品とは、具体的には、連続線材、連続線材によって構成される織編物等の加工品、繊維製の織編物,糸,ロープ等の繊維構造体、不織布、フィルム、シート、樹脂成形品などが挙げられる。使用済みのポリエステル樹脂製品とは、例えば一度市場に出回り、使用後に回収された樹脂製品であり、未使用のポリエステル樹脂製品とは、例えば一度市場に出回ったが、使用されることなく回収された樹脂製品である。また、未採用のポリエステル樹脂製品とは、市場に出回ることなく回収された樹脂製品である。樹脂製品を製造する工程で発生する未採用樹脂とは、製品化に至らなかったポリエステルであり、例えば規格を外れた樹脂ペレット、成形時に不要になった材料、成形時に切断された断片、成形時や加工時に発生した屑(ポリエステル屑)、銘柄変更時に発生する移行品の裁断物・試作品・不良品の裁断物等が挙げられる。
【0011】
マテリアルリサイクルを原料とする場合、リサイクル原料を使用する工程においては、必要に応じて洗浄、消毒、殺菌、除菌、滅菌、選別、分級、乾燥などの工程を加えてもよく、また、リサイクルポリエステル樹脂を固相重合、溶融重合、気相重合などの方法で重合度を引き上げてもよい。ケミカルリサイクルを原料とする場合、解重合によって得られたモノマーまたはオリゴマーに別種のモノマーなどを加えて共重合体としてもよい。なお、この場合は、共重合体に占めるケミカルリサイクル由来のモノマーまたはオリゴマーの質量分率を用いてリサイクル率を計算する。例えば、バージンポリマー100質量部にマテリアルリサイクルしたリサイクル原料を60質量部配合した樹脂組成物のリサイクル率は37.5%であり、またバージンポリマー100重量部に、ケミカルリサイクルされたモノマーを80質量%含む共重合体60重量部を配合した樹脂組成物のリサイクル率は30%となる。
【0012】
本発明においては、マテリアルリサイクル原料を用いて連続線材を得ることが好ましく、マテリアルリサイクル原料であるリサイクルのポリエステル樹脂製品(使用済、未使用または未採用であって、回収されたポリエステル樹脂製品)の形態としては、回収された連続線材を用いることが好ましい。特に、回収する連続線材として、使用済み、未使用もしくは未採用のラケットストリングや釣糸であることが好ましく、連続線材の形態の状態で、最終製品として市場に出るラケットストリングや釣り糸は、回収し、これをマテリアルリサイクル原料として用いて、リサイクルにより連続線材を得ることは、再び同一用途
での使用が可能となり、サーキュラーエコノミーの観点でも好ましい。
【0013】
回収された連続線材をマテリアルリサイクル原料として用いる場合、ペレタイズ加工によるリペレット化を行ってもよいが、リペレット化を行うことなく、回収された連続線材を0.2~20mmの長さに細断した細断物をそのまま溶融紡出させて、再生ポリエステルからなる連続線材を得ることが好ましい。ペレタイズ加工によるリペレット工程を省略することによって、溶融加工する回数が低減することができ、樹脂組成物の熱劣化を抑制できるためである。回収された連続線材を細断する際のカット長が0.2mm未満の場合、細断の加工速度の低下、収率の悪化、溶融紡出時の取扱い性の低下などにつながりやすい。一方、カット長が20mmを超える場合、溶融紡出機に供する際にエクストルーダー部で喰い込みにくくなる。このような理由から、好ましいカット長は0.5~15mm、さらに好ましくは1~10mmである。細断物のアスペクト比(カット長/線径)は特に限定されないが、0.1~100程度であることが好ましい。また細断の前後で洗浄、脱脂、脱油、消毒、殺菌、除菌、滅菌、選別、分級、乾燥、固相重合などの工程を加えてもよい。マテリアルリサイクル原料として用いる回収された連続線材において、その線径、カット長、製品形態、色調、重合度、原料処方(共重合組成、添加剤配合内容など)が異なるリサイクル原料を2種類以上併用してもよい。また、リサイクル原料の使用比率が50質量%を下回らない範囲でバージンのポリエステル樹脂原料、ポリエステル以外の樹脂原料あるいは添加剤などを併用してもよい。ただし、溶融紡出時の取扱い性に配慮すると、線径、カット長、重合度はできるだけ同等のものを用いることが好ましく、また品質を安定させるために溶融紡出前に使用原料をタンブラー型ミキサーなどでプリブレンドすることが好ましく、色調、原料処方はできるだけ同等のものを用いることが好ましい。
【0014】
マテリアルリサイクル原料として、回収された連続線材からなる織編物やロープなどの加工品を用いる場合は、加工品がポリエステル系樹脂からなる連続線材のみからなる場合は、解体せずにそのまま細断などを行ってフレーク状とし、ペレタイズ加工によりリペレット化して、再生原料とすればよい。加工品が、ポリエステル系樹脂以外の他種の樹脂からなる線材が混用されている場合は、加工品を解体してポリエステル樹脂からなる線材のみを選別して使用してもよく、また、加工品を解体することなく細断した後に比重差を利用して選別を行うことや、ポリエステル以外の樹脂からなる線材のみを溶解する溶剤を用いる方法などで選別し、選別したポリエステル樹脂を使用してもよい。本発明においては、効率的なリサイクル性に配慮し、ポリエステル系樹脂製の線材のみを用いて加工品を製作し、使用済み品や未使用品、規格外品などの未採用品を再び回収したものをマテリアル原料とし、これを溶融紡出して連続線材として使用することがサーキュラーエコノミーなどの観点から望ましい。
【0015】
本発明の連続線材の横断面形状の外形は、円形、楕円形、多角形など特に限定されないが、得られる機械的物性や汎用性、使用後の細断や紡出時の取扱い性の観点から円形断面が好ましい。
【0016】
該線材の軸方向に対して垂直に切断した際の断面(横断面)は、単一の層から構成されていてもよく、複数の層から構成される芯鞘、サイドバイサイド、海島などの複合断面となっていてもよいが、リサイクル性を考えると単一層からなる連続線材が均質性の高さの観点で好ましい。複合する場合、各層の構成する樹脂は同種のリサイクルポリエステル原料でもよく、他のポリマー(ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリウレタン、スチレン系樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン樹脂、熱可塑性エラストマー)を単独または複数種をブレンドしたものでもよいが、リサイクル性を考えるとポリエステル以外の樹脂の使用量は少ないことが好ましい。
【0017】
本発明の連続線材の直径は0.2~10mmであり、より好ましくは0.4~8mm、さらに好ましくは0.8~6mmである。0.2mm未満では、細断後にリサイクル原料として溶融紡出機に供する際にエクストルーダー部で喰い込みにくく、特殊な装置や薬剤による補助が必要となるため好ましくない。また10mm以上では連続線材としての取扱い性が低く、また細断や固相重合、溶融紡糸時の取扱い性も低くなるため好ましくない。なお、線材の横断面形状が円形ではなく、異形である場合は、その断面積を円形換算した際の直径と異形断面の連続線材の直径とみなす。
【0018】
本発明の連続線材を構成するポリエステルの相対粘度は、1.1~1.8であり、より好ましくは1.2~1.7、さらに好ましくは1.3~1.6である。連続線材を構成するポリエステルの相対粘度が1.1未満では線材の機械的特性や耐久性、寸法安定性が低くなるため好ましくなく、1.8を超えると溶融紡出時の加工性が損なわれるため好ましくない。上記の相対粘度を有する連続線材を得るためには1.2~1.9の相対粘度を有するポリエステル樹脂を原料として用いることが好ましく、異なる相対粘度を有する2種以上のポリエステル樹脂原料を併用してもよい。また、使用するポリエステル樹脂の少なくとも一部を溶融重合や固相重合などの方法で重合度を増加させてもよい。特に、リサイクルポリエステル原料の相対粘度が低い場合は、重合度を引き上げとよく、特に使用済み等の回収した連続線材を、重合度を引き上げてリサイクル原料として使用する場合は、リペレット工程を省略するために固相重合法を選択することが好ましい。なお、ポリエステルの相対粘度は、濃度0.5%のフェノール/四塩化エタンの等質量混合溶液を溶媒とし、ウベローデ粘度計を使用して、温度20℃で測定する。
【0019】
本発明の連続線材には、本発明の目的を達成する範囲であれば、少量であれば、ポリエステル以外の熱可塑性樹脂を添加してもよい。たとえば、ポリアミド、ポリオレフィン、ポリウレタン、スチレン系樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル樹脂、塩化ビニリデン樹脂、ポリテトラフルオロエチレン、シリコーン樹脂、熱可塑性エラストマーなどが挙げられ、これらを単独でまたは混合して添加してもよい。
また、所望により種々の添加剤を含有させてもよい。たとえば、染料、顔料、分散剤、相溶化剤、展着剤、可塑剤、粘度調整剤、難燃剤、滑剤、紫外線吸収剤、赤外線吸収材料、マイクロ波吸収材料、光安定剤、酸化防止剤、pH調整剤、抗菌剤、防腐剤、充填剤、補強材、耐熱剤、耐候剤、帯電防止剤、導電材、熱伝導性材料、結晶核剤等を添加することができる。特に、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤、耐熱剤、耐候剤などの添加剤は、連続線材の製造、使用、リサイクル工程などでの性能劣化抑制のために添加することが好ましい。また、連続線材を補強するための補強材として、マイクロファイバーやナノファイバーなどの補強繊維を添加することもできる。しかし、本発明の連続線材を、さらにマテリアルリサイクルするリサイクル工程を繰り返すうちに補強繊維の繊維長が短くなり、補強効果が低下し、さらなるリサイクルにより得られる連続線材は機械的物性の低下につながるため、補強繊維の配合量は少ないことが好ましい。補強繊維の種類により異なるが、連続線材100重量部に対して補強繊維の配合量は20重量部以下が好ましく、より好ましくは10重量部以下、さらに好ましくは5重量部以下である。
【0020】
本発明の連続線材の引張強力は4N以上であることが好ましい。4N未満では、加工時や実用時の負荷に耐えられないため不適である。より好ましい引張強力は20N以上であり、さらに好ましくは40N以上である。なお、引張強力は大きいほどよいが、上限として50000N程度あれば十分と考える。なお、線径が大きいと、単位断面積あたりの強度(MPa)が低くても、線材としての強力(N)は高くなるが、単位断面積あたりの強度としては、20MPa以上であり、より好ましくは100MPa以上である。なお、引張試験時の条件は、つかみ間隔250mm、引張速度300mm/minとし、n=5で測定し、最大強力および破断時の伸度の平均値を求め、その平均値を引張強力、破断伸度とする。
【0021】
本発明の連続線材の引張伸度は3~200%であり、より好ましくは10~100%、さらに好ましくは15~50%である。3%未満では、線材の脆性が高くなり、屈曲疲労などに対する耐久性が低くなるため好ましくない。200%を超えると、各種資材としての剛性が低下し、例えばフィルターでは濾過精度が不足してしまうため好ましくない。
【0022】
本発明の再生ポリエステルからなる連続線材の製造方法について、一例を挙げて説明する。
【0023】
使用済み、未使用もしくは未採用のポリエステル樹脂製品またはポリエステル樹脂製品を製造する工程で発生する未採用のポリエステル樹脂の少なくともいずれかによって構成されたリサイクルポリエステル原料(ペレットや細断物の形態のもの)を準備し、また、必要に応じてバージンポリエステル樹脂ペレットを準備し、リサイクルポリエステルが原料樹脂の50質量%以上となるように秤量し、準備した原料を、紡出温度260~300℃程度とし、エクストルーダー型紡糸装置を使用して、紡出口金より溶融紡出し、紡出物を50~80℃程度の温水浴中で冷却して未延伸線材を得る。この未延伸線材を70~95℃程度の水浴中で第一段階目の延伸(延伸倍率2.5~4.5倍程度)を行い、次いで約100~300℃の熱風雰囲気下で第二段階目の延伸(延伸倍率1.1~2.5倍程度)を行う。引き続いて約100~300℃の熱風雰囲気下で0~20%程度の弛緩熱処理を行い、本発明の連続線材を得ることができる。なお、使用する原料の性状や用途などに応じて、紡糸温度、延伸温度、延伸倍率などは適宜変更してもよく、例えばPETよりも融点の低いポリエステル樹脂(例えばジオール成分としてエチレングリコールとブタンジオールを併用し、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を使用した共重合ポリエステルや、ジオール成分としてエチレングリコールを使用し、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸とイソフタル酸を併用した共重合ポリエステル、ポリ乳酸、ポリカプロラクトンなど)を使用する場合は、紡糸温度や温水浴温度、延伸温度は上述した条件より低くてもよい。
【0024】
顔料や耐熱剤などの添加剤を使用する場合、個々に準備したものをリサイクルポリエステル原料(ペレットや細断物の形態)とドライブレンドし、これを溶融紡糸装置に導入して線材を製作することができる。また、各原料を所定比率で事前に溶融混錬したコンパウンドペレットやマスターバッチを用いてもよい。
取扱い性や表面性状(摩擦係数、表面硬度、耐光性、親水性、親油性、色調など)を調整するために、延伸前後にオンラインで繊維用油剤などを塗布してもよく、後工程でコーティングやディンピングで塗膜を付与してもよい。また、水との親和性や工程通過性などを調整するためにプラズマ処理などの後加工を施してもよい。なお、これらの処理を施した連続線材について、またさらに、リサイクルポリエステル原料として用いる場合には、表面処理等により連続線材の表面には油剤や塗膜等が付着しているため、これをリサイクルによって連続線材を得ようとすると、表面に付着していた油剤や塗膜等がポリエステル原料中において不純物となり、紡糸操業性が悪化したり、得られるリサイクルの連続線材の機械的物性が悪化する恐れがあるため、本発明の連続線材を、さらにリサイクルすることを考慮すると、必要最小限の処理に留めることが好ましい。
【0025】
本発明の連続線材は環境配慮性に優れ、かつ物性や耐久性の観点でもバージンのポリエステル樹脂からなる連続線材と遜色なく使用することができるため、例えば濾材などの工業用織物、漁網、防球ネットなどのネット類、釣り糸、ロープ、ゴム補強材、ラケット用ストリング、ブラシ用毛材、研磨材、カーペット、人工芝、クッション材など各種用途へ好適に使用することができる。また、本発明の連続線材およびこれを所定のカット長に細断した材料は卓上型3Dプリンターや3Dペンなどの材料押出型の付加製造装置や積層造形装置にも適用することも好適である。この場合、本発明の再生ポリエステルからなる連続線材を、材料押出型の付加製造装置に適用し、所望の形状の三次元造型物を製造することができる。
【実施例0026】
以下、本発明について、実施例に基づき説明する。物性は以下の方法により測定した。
(1)線径
連続線材の長手方向50cmおきに10カ所を測定した数値の平均値を線径(mm)とした。
(2)引張試験
連続線材は通常巻き取ってなるものであることから、必要量解舒し、室温下で24時間以上静置した後、引張試験機にて切断するまで荷重をかけ、最大強力と破断伸度を測定した。引張試験の条件は、つかみ間隔は250mm、引張速度は300mm/minとし、n=5で測定した平均値を最大強力(N)、破断伸度(%)とした。
(3)相対粘度
前述の試験方法で測定した。
【0027】
実施例1
ポリエチレンテレフタレート(PET)からなる未採用の連続線材(直径0.8mm、相対粘度1.5)をカット長5mmに細断したものを80℃の温水浴中で攪拌して15分間洗浄した後、水気をきって24時間の室温風乾し、さらに乾燥窒素流通させた熱風乾燥機で100℃×48時間の乾燥を行ったリサイクル原料を、通常のエクストルーダー型溶融紡糸装置へ投入し、275℃の温度で溶融紡出した。紡出した線材を60℃の温水浴中で冷却して未延伸線材を得た。この未延伸線材を巻き取ることなく、90℃の温水浴中で、延伸倍率3.8倍で第1段延伸し、次いで全延伸倍率が5.0倍となるように、200℃の加熱ゾーンを通過させながら第2段延伸し(延伸倍率1.3倍)、さらに200℃の加熱ゾーンを通過させて4%の弛緩熱処理を行い、連続線材を得た。得られた再生ポリエステルからなる連続線材は、直径0.4mm、引張強力70N、伸度19%、相対粘度1.4、リサイクル率100%であった。
【0028】
比較例1
原料としてバージンのPETチップ(相対粘度1.5)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして連続線材を得た。得られた連続線材は、直径0.4mm、引張強力72N、伸度21%、相対粘度1.4、リサイクル率0%であった。
【0029】
実施例1の再生ポリエステルからなる連続線材は、比較例1の連続線材とほぼ同等の物性を持ちながら、リサイクル率が50%以上であって、高いリサイクル率の製品であり、環境配慮性に優れた素材として各種用途へ好適に使用できる再生ポリエステルからなる連続線材であった。