IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社神戸製鋼所の特許一覧

特開2023-168288減肉検知装置、減肉監視システムおよび減肉管理装置
<>
  • 特開-減肉検知装置、減肉監視システムおよび減肉管理装置 図1
  • 特開-減肉検知装置、減肉監視システムおよび減肉管理装置 図2
  • 特開-減肉検知装置、減肉監視システムおよび減肉管理装置 図3
  • 特開-減肉検知装置、減肉監視システムおよび減肉管理装置 図4
  • 特開-減肉検知装置、減肉監視システムおよび減肉管理装置 図5
  • 特開-減肉検知装置、減肉監視システムおよび減肉管理装置 図6
  • 特開-減肉検知装置、減肉監視システムおよび減肉管理装置 図7
  • 特開-減肉検知装置、減肉監視システムおよび減肉管理装置 図8
  • 特開-減肉検知装置、減肉監視システムおよび減肉管理装置 図9
  • 特開-減肉検知装置、減肉監視システムおよび減肉管理装置 図10
  • 特開-減肉検知装置、減肉監視システムおよび減肉管理装置 図11
  • 特開-減肉検知装置、減肉監視システムおよび減肉管理装置 図12
  • 特開-減肉検知装置、減肉監視システムおよび減肉管理装置 図13
  • 特開-減肉検知装置、減肉監視システムおよび減肉管理装置 図14
  • 特開-減肉検知装置、減肉監視システムおよび減肉管理装置 図15
  • 特開-減肉検知装置、減肉監視システムおよび減肉管理装置 図16
  • 特開-減肉検知装置、減肉監視システムおよび減肉管理装置 図17
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168288
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】減肉検知装置、減肉監視システムおよび減肉管理装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/83 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
G01N27/83
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078346
(22)【出願日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2022078672
(32)【優先日】2022-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000001199
【氏名又は名称】株式会社神戸製鋼所
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100111453
【弁理士】
【氏名又は名称】櫻井 智
(72)【発明者】
【氏名】吉田 大祐
(72)【発明者】
【氏名】下田 敏章
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 康二
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 雄太
(72)【発明者】
【氏名】尾崎 修
(72)【発明者】
【氏名】森田 晋也
【テーマコード(参考)】
2G053
【Fターム(参考)】
2G053AA12
2G053AB22
2G053BA03
2G053BB11
2G053BC20
2G053CA03
2G053CA05
2G053CA06
2G053CB24
2G053DA01
(57)【要約】
【課題】本発明は、作業性の悪化を低減できる減肉検知装置を提供することである。
【解決手段】本発明の減肉検知装置Dは、永久磁石11、12を含み、検知対象Obと組み合わされて磁気回路を形成する磁気回路形成部1と、検知対象Obの減肉に応じて検知対象Obから漏洩した磁束を検知する、エネルギーハーベスト素子の第1センサとを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
永久磁石を含み、検知対象と組み合わされて磁気回路を形成する磁気回路形成部と、
前記検知対象の減肉に応じて前記検知対象から漏洩した磁束を検知する、エネルギーハーベスト素子の第1センサとを備える、
減肉検知装置。
【請求項2】
前記第1センサは、ウィーガントセンサを備える、
請求項1に記載の減肉検知装置。
【請求項3】
前記ウィーガントセンサのコイルを用いて前記ウィーガントセンサを初期化する初期化部をさらに備える、
請求項2に記載の減肉検知装置。
【請求項4】
前記第1センサは、複数のウィーガントセンサを備え、
前記複数のウィーガントセンサは、それぞれ、前記検知対象の減肉量に応じて前記検知対象から漏洩した磁束によってウィーガント効果を生じるように配置されている、
請求項1に記載の減肉検知装置。
【請求項5】
前記第1センサの検知に応じて前記検知を外部に報知する報知部をさらに備え、
前記報知部は、前記センサで生成したエネルギーのみによって、前記検知を外部に報知する、
請求項1に記載の減肉検知装置。
【請求項6】
前記第1センサの検知に応じて前記検知を外部に報知する報知部をさらに備え、
前記報知部にエネルギーを供給する供給部をさらに備える、
請求項1に記載の減肉検知装置。
【請求項7】
前記磁気回路形成部は、さらに、前記永久磁石および前記検知対象と組み合わされて磁気回路を形成する磁性部材を含み、
前記磁性部材は、電磁ステンレス材で形成されている、または、耐食処理が施されている、
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の減肉検知装置。
【請求項8】
前記検知対象と前記磁気回路形成部の前記永久磁石との間の距離を調整する治具をさらに備える、
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の減肉検知装置。
【請求項9】
前記磁気回路形成部は、中継部材をさらに備え、
前記中継部材は、前記検知対象と前記永久磁石との間に、前記検知対象と前記中継部材とが互いに密着するとともに、前記中継部材と前記永久磁石材とが互いに密着するように、介在している、
請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載の減肉検知装置。
【請求項10】
前記第1センサの検知に応じて稼働され、前記検知対象の減肉量に応じた信号を出力する第2センサをさらに備える、
請求項1に記載の減肉検知装置。
【請求項11】
前記第2センサは、ホール素子、AMR素子、TMR素子およびGMR素子のうちのいずれかを備える磁気センサであり、前記検知対象の減肉量に応じて前記検知対象から漏洩した磁束を検知する、
請求項10に記載の減肉検知装置。
【請求項12】
前記第1センサは、ウィーガントセンサを備え、
前記ウィーガントセンサのコイルを用いて前記ウィーガントセンサを初期化する初期化部をさらに備える、
請求項10に記載の減肉検知装置。
【請求項13】
前記第1センサは、ウィーガントセンサを備え、
前記第2センサから出力された信号に基づいて前記第1センサの誤検知の有無を判定し、前記第1センサの誤検知を判定した場合に、前記ウィーガントセンサを初期化する初期化部をさらに備える、
請求項10に記載の減肉検知装置。
【請求項14】
前記第2センサから出力された信号を表す減肉量情報を収容した通信信号を送信する通信部をさらに備える、
請求項10に記載の減肉検知装置。
【請求項15】
前記第2センサから出力された信号を表す減肉量情報を管理する減肉管理装置と、
前記減肉管理装置と通信可能に接続される、複数の請求項10に記載の減肉検知装置とを備える、
減肉監視システム。
【請求項16】
請求項15に記載の減肉監視システムの減肉管理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検知対象の減肉を検知する減肉検知装置、これを備えた減肉監視システムおよびこれに用いる減肉管理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
金属部材は、一般に、例えば配管や橋梁等の様々な部分に用いられており、様々な原因による経年変化によって、基準時点より厚さが減じる減肉が生じてしまうことがある。金属部材の減肉は、突発トラブルを招く虞がある。例えば工場設備の配管等に代表される鋼材素材の減肉は、工場の稼働停止を招く虞があり、この場合には機会損失が生じてしまう。このため、金属部材の減肉の現状を把握したり、予測したりすることは、金属部材を安定的に利用するために、望まれており、例えば、特許文献1に開示されている。
【0003】
この特許文献1に開示された2振動子探触子は、2つの振動子を有する2振動子探触子であって、全体として可撓性を有するシート状に形成されていて、前記2つの振動子の間には空隙が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-1534号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に開示された2振動子探触子では、その振動子を駆動するために、電源が必要である。このため、自機に搭載したバッテリーや、測定箇所の付近の電源口から給電を受ける必要がある。例えば配管等のインフラ設備では、測定箇所が膨大であり、例えば、バッテリー搭載の測定装置を検査員が携帯し、現地に赴いて測定作業を実施する場合、前記バッテリーの容量は、有限であるため、バッテリーの充電を使い切ると、その都度、前記バッテリーの交換や充電等の手間が必要となる。測定箇所の付近の電源口から給電を受ける場合も考えられるが前記測定箇所の付近に必ずしも電源口が存在するとは限らず、この場合には、バッテリー搭載の測定装置が必要となり、上述と同様な手間が生じることになる。そこで、大きな容量のバッテリーを用いることが考えられるが、前記大きな容量のバッテリーは、重量も大きくなるため、可搬性が低下し、作業性が悪化してしまう。このため、軽量のバッテリーを選ぶと、可搬性は、向上するが、その容量が小さくなるため、結局、測定装置の連続稼働時間が短くなり、やはり作業性が悪化してしまう。
【0006】
本発明は、上述の事情に鑑みて為された発明であり、その目的は、作業性の悪化を低減できる減肉検知装置、これを備えた減肉監視システムおよびこれに用いる減肉管理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、種々検討した結果、上記目的は、以下の本発明により達成されることを見出した。すなわち、本発明の一態様にかかる減肉検知装置は、永久磁石を含み、検知対象と組み合わされて磁気回路を形成する磁気回路形成部と、前記検知対象の減肉に応じて前記検知対象から漏洩した磁束を検知する、エネルギーハーベスト素子の第1センサとを備える。好ましくは、上述の減肉検知装置において、前記第1センサは、前記検知対象が所定の厚さに減肉した場合に応じて前記検知対象から漏洩した磁束を検知する。好ましくは、上述の減肉検知装置において、前記第1センサは、ウィーガント(Wiegand)ワイヤに導線を巻き回したウィーガント(Wiegand)センサである。
【0008】
このような減肉検知装置は、エネルギーハーベスト素子のセンサを用いるので、前記第1センサの駆動にエネルギーの能動的供給を必要としないから、作業性の悪化を低減できる。なお、エネルギーハーベスト素子は、例えば太陽光、照明光、機械の発する振動、熱等の比較的少量のエネルギーを採取して電力を得て駆動する素子であり、例えば、ウィーガントセンサは、その一例である。
【0009】
他の一態様では、上述の減肉検知装置において、前記センサは、ウィーガントセンサを備える。
【0010】
これによれば、前記センサとしてウィーガントセンサを備える減肉検知装置が提供できる。
【0011】
他の一態様では、上述の減肉検知装置において、前記ウィーガントセンサのコイルを用いて前記ウィーガントセンサを初期化する初期化部をさらに備える。
【0012】
このような減肉検知装置は、初期化部をさらに備えるので、ウィーガントセンサを初期化する場合、別途、永久磁石や電磁石等の励磁器を用意する必要が無い。
【0013】
他の一態様では、上述の減肉検知装置において、前記第1センサは、複数のウィーガントセンサを備え、前記複数のウィーガントセンサは、それぞれ、前記検知対象の減肉量に応じて前記検知対象から漏洩した磁束によってウィーガント効果を生じるように配置されている。
【0014】
このような減肉検知装置は、複数のウィーガントセンサを備えるので、これら複数のウィーガントセンサを互いに異なるレベル(減肉で生じた凹所の深さ、減肉により残存した検知対象Obの厚さ)の減肉量を検知するように設定することが可能となる。したがって、このような減肉検知装置は、互いに異なる複数のレベルで減肉を検知することが可能となる。
【0015】
他の一態様では、上述の減肉検知装置において、前記第1センサの検知に応じて前記検知を外部に報知する報知部をさらに備え、前記報知部は、前記第1センサで生成したエネルギーのみによって、前記検知を外部に報知する。好ましくは、上述の減肉検知装置において、前記報知部は、ブザーを備える。好ましくは、上述の減肉検知装置において、前記報知部は、発光ダイオードを備える。
【0016】
このような減肉検知装置は、減肉の検知だけでなく、報知にもエネルギーの能動的供給を必要としないので、より作業性の悪化を低減できる。
【0017】
他の一態様では、上述の減肉検知装置において、前記第1センサの検知に応じて前記検知を外部に報知する報知部をさらに備え、前記報知部にエネルギーを供給する供給部をさらに備える。好ましくは、上述の減肉検知装置において、前記供給部は、自然エネルギーを電力に変換し、前記変換した電力を前記報知部に供給する電源回路である。好ましくは、上述の減肉検知装置において、前記供給部は、一次電池または二次電池を備える。好ましくは、上述の減肉検知装置において、前記供給部は、商用電源から給電されたエネルギーを前記報知部に供給する電源回路である。
【0018】
これによれば、供給部をさらに備える減肉検知装置が提供できる。前記供給部が自然エネルギーを電力に変換する場合には、報知部の駆動に電池を必要としないので、より作業性の悪化を低減できる。前記供給部が電池を備える場合には、報知部の駆動に利用するだけなので、比較的小さい容量の電池を利用することができ、重量の大きな増大を抑えられるから、作業性の悪化を低減できる。前記供給部が商用電源を利用する場合には、例えば電池交換等の手間を不要にできる。
【0019】
他の一態様では、これら上述の減肉検知装置において、前記磁気回路形成部は、さらに、前記永久磁石および前記検知対象と組み合わされて磁気回路を形成する磁性部材を含み、前記磁性部材は、電磁ステンレス材で形成されている、または、耐食処理が施されている。
【0020】
このような減肉検知装置は、電磁ステンレス材で形成されている、または、耐食処理が施されている磁性部材を用いるので、当該減肉検知装置の耐食性を向上できる。このため、上記減肉検知装置は、比較的厳しい環境に減肉検知装置を常設的に配置することができる。
【0021】
他の一態様では、これら上述の減肉検知装置において、前記検知対象と前記磁気回路形成部の前記永久磁石との間の距離を調整する治具をさらに備える。
【0022】
このような減肉検知装置は、前記距離を調整する治具をさらに備えるので、前記永久磁石の吸引力を調整(制御)できるから、前記減肉検知装置を、適切、かつ、安全に前記検知対象に配置することができる。
【0023】
他の一態様では、これら上述の減肉検知装置において、前記磁気回路形成部は、中継部材をさらに備え、前記中継部材は、前記検知対象と前記永久磁石との間に、前記検知対象と前記中継部材とが互いに密着するとともに、前記中継部材と前記永久磁石材とが互いに密着するように、介在している。
【0024】
このような減肉検知装置は、中継部材をさらに備えるので、検知対象の配置面が曲面である場合でも配置することが可能となる。
【0025】
他の一態様では、上述の減肉検知装置において、前記第1センサの検知に応じて稼働され、前記検知対象の減肉量に応じた信号を出力する第2センサをさらに備える。
【0026】
このような減肉検知装置は、第2センサをさらに備えるので、第1センサによる減肉の検知だけでなく減肉量も検知できる。第2センサは、前記第1センサの検知に応じて稼働されるので、それまでスリープ状態であるから、上記減肉検知装置は、消費電力を低減でき、比較的長期間、運用できる。
【0027】
他の一態様では、これら上述の減肉検知装置において、前記第2センサは、ホール素子、AMR素子、TMR素子およびGMR素子のうちのいずれかを備える磁気センサであり、前記検知対象の減肉量に応じて前記検知対象から漏洩した磁束を検知する。
【0028】
このような減肉検知装置は、第2センサに磁気センサを用いるので、第1センサの磁気回路と共有可能となり、減肉検知装置の小型化が可能となる。
【0029】
他の一態様では、これら上述の減肉検知装置において、前記第1センサは、ウィーガントセンサを備え、前記ウィーガントセンサのコイルを用いて前記ウィーガントセンサを初期化する初期化部をさらに備える。
【0030】
このような減肉検知装置は、初期化部をさらに備えるので、ウィーガントセンサを初期化する場合、別途、永久磁石や電磁石等の励磁器を用意する必要が無い。
【0031】
他の一態様では、これら上述の減肉検知装置において、前記第1センサは、ウィーガントセンサを備え、前記第2センサから出力された信号に基づいて前記第1センサの誤検知の有無を判定し、前記第1センサの誤検知を判定した場合に、前記ウィーガントセンサを初期化する初期化部をさらに備える。
【0032】
このような減肉検知装置は、第2センサを備えるので、前記第2センサから出力された信号に基づいて前記第1センサの誤検知の有無を判定でき、誤検知の場合、第1センサのウィーガントセンサを初期化できる。したがって、上記減肉検知装置は、第1センサのウィーガントセンサが誤検知した場合、自己復帰でき、人手によらずに減肉の検知を継続できる。
【0033】
他の一態様では、これら上述の減肉検知装置において、前記第2センサから出力された信号を表す減肉量情報を収容した通信信号を送信する通信部をさらに備える。
【0034】
このような減肉検知装置は、通信部を備えるので、減肉を遠隔から監視可能となり、減肉を集中監視可能となる。
【0035】
本発明の他の一態様にかかる減肉監視システムは、前記第2センサから出力された信号を表す減肉量情報を管理する減肉管理装置と、前記減肉管理装置と通信可能に接続される、複数の上述の減肉検知装置とを備える。
【0036】
これによれば、複数の減肉検知装置を遠隔から集中監視できる減肉監視システムが提供できる。
【0037】
他の一態様にかかる本発明は、上述の減肉監視システムの減肉管理装置である。
【0038】
これによれば、複数の減肉検知装置を遠隔から集中管理する減肉管理装置が提供できる。
【発明の効果】
【0039】
本発明にかかる減肉検知装置は、作業性の悪化を低減できる。本発明によれば、この減肉検知装置を備えた減肉監視システムおよびこれに用いる減肉管理装置が提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1】実施形態における減肉検知装置の構成を示す図である。
図2】前記減肉検知装置のウィーガントセンサを説明するための図である。
図3】前記ウィーガントセンサを支持する、第1および第2態様の各支持構造を示す図である。
図4】前記ウィーガントセンサを支持する、第3および第4態様の各支持構造を示す図である。
図5】前記減肉検知装置における電気的な構成を示す回路図である。
図6】前記減肉検知装置の動作を説明するための図である。
図7】第1変形形態における減肉検知装置を説明するための図である。
図8】第2変形形態における減肉検知装置の電気的な構成を示す回路図である。
図9】第3変形形態における減肉検知装置を説明するための図である。
図10】第4変形形態における減肉検知装置を説明するための図である。
図11】第5変形形態における減肉検知装置を説明するための図である。
図12】第6変形形態における減肉検知装置を説明するための図である。
図13】第7ないし第10変形形態における各減肉検知装置を説明するための図である。
図14】前記減肉検知装置の第1および第2使用態様を説明するための図である。
図15】第11および第12変形形態における減肉検知装置の構成を示す図である。
図16】前記第11変形形態の減肉検知装置における電気的な構成を示す回路図である。
図17】第12変形形態における減肉検知装置を、複数、備えた減肉監視システムの構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0041】
以下、図面を参照して、本発明の1または複数の実施形態が説明される。しかしながら、発明の範囲は、開示された実施形態に限定されない。なお、各図において同一の符号を付した構成は、同一の構成であることを示し、適宜、その説明を省略する。本明細書において、総称する場合には添え字を省略した参照符号で示し、個別の構成を指す場合には添え字を付した参照符号で示す。
【0042】
実施形態における減肉検知装置は、検知対象における、基準時点より厚さが減じる減肉を検知する装置である。この減肉検知装置は、永久磁石を含み、検知対象と組み合わされて磁気回路を形成する磁気回路形成部と、前記検知対象の減肉に応じて前記検知対象から漏洩した磁束を検知する、エネルギーハーベスト素子のセンサを備える。以下、このような減肉検知装置について、より具体的に説明する。
【0043】
図1は、実施形態における減肉検知装置の構成を示す図である。図2は、前記減肉検知装置のウィーガントセンサを説明するための図である。図2Aは、ウィーガントセンサの構成を示す図であり、図2Bは、ウィーガントセンサの特性を示す図である。図2Bの横軸は、外部磁界(印加磁場)であり、その縦軸は、ウィーガントセンサを構成する素材であるウィーガントワイヤの磁化である。図3は、前記ウィーガントセンサを支持する、第1および第2態様の各支持構造を示す図である。図3Aは、第1態様の支持構造を示し、図3Bは、第2態様の支持構造を示す。図4は、前記ウィーガントセンサを支持する、第3および第4態様の各支持構造を示す図である。図4Aは、第3態様の支持構造を示し、図4Bは、第4態様の支持構造を示す。図5は、前記減肉検知装置における電気的な構成を示す回路図である。図6は、前記減肉検知装置の動作を説明するための図である。
【0044】
実施形態における減肉検知装置Dは、例えば、図1に示すように、磁気回路形成部1と、センサ2と、前記センサ2の周辺回路3とを備える。
【0045】
磁気回路形成部1は、1対の永久磁石11、12含み、検知対象Obと組み合わされて磁気回路を形成する部材である。検知対象Obは、磁束を通し、減肉により漏れ磁束を生じる部材であれば、任意であってよく、例えば、鋼材等の強磁性部材である。前記1対の永久磁石11、12は、互いに異なる極を向けて前記検知対象Obに対向するように、配置される。より具体的には、前記1対の永久磁石11、12は、それぞれ、例えば、略直方体形状であり、前記1対の永久磁石11、12のうちの一方の永久磁石11が、その一方端部の端面のN極を検知対象Obに対向するとともに、前記1対の永久磁石11、12のうちの他方の永久磁石12が、その一方端部の端面のS極を検知対象Obに対向するように、互いに所定の間隔を空けて配置され、前記1対の永久磁石11、12は、それぞれ、各永久磁石11、12の各他方端部で、磁性材料で形成される板状の連結部材13に連結されている。磁気回路形成部1は、これら1対の永久磁石11、12および連結部材13で側面視(縦断面)にて略コ字(C字)形状を呈し、前記1対の永久磁石11、12が各一方端部の各端面で検知対象Obに当接することで側面視(縦断面)にて略ロ字形状(環形状)を呈することで、閉ループの磁気回路を形成する。前記1対の永久磁石11、12は、減肉に起因して漏洩する漏れ磁束を除く漏れ磁束を回避するために、検知対象Obに密着して当接することが好ましい。
【0046】
センサ(第1センサ)2は、前記検知対象Obの減肉に応じて前記検知対象Obから漏洩した磁束を検知する、エネルギーハーベスト素子である。エネルギーハーベスト素子とは、例えば太陽光、照明光、機械の発する振動、熱等の、当該エネルギーハーベスト素子の配置された環境に存在する比較的少量のエネルギーを採取して電力を得て駆動する素子である。本実施形態では、漏洩磁束を検知するために、センサ2は、エネルギーハーベスト素子の一例である、ウィーガント(Wiegand)ワイヤに導線を巻き回したウィーガントセンサ2を備えて構成される。
【0047】
より具体的には、このウィーガントセンサ2は、例えば、図2Aに示すように、軸芯となるコア部材21と、長尺な導線を前記コア部材21に巻き回したコイル22とを備える、いわゆる有芯のコイルである。コア部材21は、鉄-コバルト-バナジウム合金(FeCoV)を、外殻を硬磁性とし、内側を軟磁性となるように加工した円柱状(ロッド状、ワイヤ状)の部材(ウィーガントワイヤ)である。このようなウィーガントセンサ2は、例えば、図2Bに示すように、外部磁界(印加磁場)Hを0から増大させ、外部磁界Hが所定の外部磁界+Hになると、いわゆる大バルクハウゼンジャンプが生じる。この時、コイル22を貫く磁化Mが跳ねるように増大するため、コイル22の端子間に誘導起電力が生じる。したがって、ウィーガントセンサ2で生じる前記誘導起電力を周辺回路3で検知することで、前記外部磁界+Hの発生が周辺回路3で検知できる。そして、ウィーガントセンサ2は、前記大バルクハウゼンジャンプを生じた後、外部磁界Hを外部磁界+H0まで増大させた後、0に戻す過程では、大バルクハウゼンジャンプを発生しない。一方、ウィーガントセンサ2は、外部磁界Hを0からさらに減少させ、外部磁界Hが所定の外部磁界-Hになると、再び、大バルクハウゼンジャンプが生じる。そして、ウィーガントセンサ2は、前記大バルクハウゼンジャンプを生じた後、外部磁界Hを外部磁界-H0まで減少させた後、0に戻す過程では、大バルクハウゼンジャンプを発生しない。ウィーガントセンサ2は、このような磁気ヒステリシスの特性を持つ。
【0048】
このウィーガントセンサ2は、磁気回路形成部1によって形成された磁束が検知対象Obの減肉によって漏れた場合に、この漏れ磁束が所望の検知方向で外部磁界Hとして印加されるように、配置される。例えば、検知対象Obの面に略平行な検知方向で前記減肉による漏れ磁束を検知する場合には、コア部材21の長手方向(コイル22の軸方向)が検知対象Obの面に略平行に沿うように、ウィーガントセンサ2は、例えば、図3に示す支持部材4a、4bによって支持されて配置される。より具体的には、図3Aに示す支持部材4aは、非磁性材料から形成された柱状の1対の第1および第2支持部材4a-1、4a-2を備え、第1および第2支持部材4a-1、4a-2は、互いに平行に連結部材13から垂下するように各一方端部で前記連結部材13に連結され、前記長手方向からコア部材21を挟み込むように各他方端部で前記コア部材21に取り付けられる。図3Bに示す支持部材4bは、非磁性材料から形成された板状部材であり、検知対象Obの面上に配置され、ウィーガントセンサ2は、支持部材4bにおける、この検知対象Obの面に当接する面(裏面)に対向する面(表面)上に配置され、支持部材4bによって支持される。ウィーガントセンサ2は、このような支持部材4a、4bによって、前記1対の永久磁石11、12の対向方向における前記1対の永久磁石11、12間であって、前記1対の永久磁石11、12の幅方向における前記1対の永久磁石11、12幅内に、検知対象Obの面から所定の高さで配置される。
【0049】
あるいは、例えば、検知対象Obの面の法線方向に沿う検知方向で前記減肉による漏れ磁束を検知する場合には、コア部材21の長手方向(コイル22の軸方向)が前記法線方向に沿うように、ウィーガントセンサ2は、例えば、図4に示す支持部材4c、4dによって支持されて配置される。より具体的には、図4Aに示す支持部材4cは、非磁性材料から形成された柱状の部材であり、連結部材13から垂下するように一方端部で前記連結部材13に連結され、ウィーガントセンサ2は、そのコア部材21の長手方向が柱状の支持部材4cの長手方向(延長方向)に沿うように、前記支持部材4cに取り付けられる。図4Bに示す支持部材4dは、支持部材4cと同様な、非磁性材料から形成された柱状の部材であり、他方端部で検知対象Obの面に垂直に立設され、ウィーガントセンサ2は、そのコア部材21の長手方向が柱状の支持部材4dの長手方向(延長方向)に沿うように、前記支持部材4dに取り付けられる。ウィーガントセンサ2は、このような支持部材4c、4dによって、前記1対の永久磁石11、12の対向方向における前記1対の永久磁石11、12間であって、前記1対の永久磁石11、12の幅方向における前記1対の永久磁石11、12幅内に、検知対象Obの面から所定の高さで配置される。
【0050】
ウィーガントセンサ2は、上述の特性を持つため、前記所定の外部磁界+H(または外部磁界-H)が、前記検知方向および前記所定の高さにおいて、検知したいレベル(減肉で生じた凹所の深さ、減肉により残存した検知対象Obの厚さ)の減肉の際に生じる漏れ磁束の大きさと一致するように、設計される。
【0051】
周辺回路3は、センサ2の出力を処理する回路であり、本実施形態では、前記センサ2の検知に応じて前記検知を外部に報知する報知部を備える。前記報知部は、前記センサ2で生成したエネルギーのみによって、前記検知を外部に報知するものである。本実施形態では、センサ2には、上述したように、その一例として、ウィーガントセンサ2が用いられ、前記報知部は、減肉の際に生じた漏れ磁束+Hによりウィーガントセンサ2で発生した誘導起電力によって動作する。例えば、図5に示すように、前記報知部は、全波整流回路RHと、コンデンサCと、第1および第2抵抗素子R1、R2と、ブザーBUとを備える。全波整流回路RHは、ウィーガントセンサ2のコイル22の両端子それぞれに接続され、ウィーガントセンサ2の出力を全波整流する。コンデンサCは、全波整流回路RHの出力端子間に接続され、全波整流回路RHの出力を平滑化する。第1抵抗素子R1は、コンデンサCに並列に接続される。第2抵抗素子R2は、その一方端子がコンデンサCと第1抵抗素子R1との接続箇所に接続され、その他方端子がブザーBUを介して接地される。ブザーBUは、ブザー音を出力する部品である。
【0052】
周辺回路3は、センサ2に接続されていればよく、適宜な箇所に配置される。例えば、周辺回路3は、センサ2の出力端子自体によって支持されてもよい。
【0053】
このような構成の減肉検知装置Dは、所望の検知対象Obの面上に配置される。ウィーガントセンサ2は、上述の磁気ヒステリシスを持つので、所定の外部磁界+Hで前記誘導起電力を生じるためには、減肉検知装置Dの配置後、ウィーガントセンサ2に外部磁界-H以下の外部磁界Hを印加する必要がある(減肉検知装置Dの初期化)。例えば、外部磁界-H以下の磁界を生じる電磁石や永久磁石等の装置(初期化装置、励磁器)によって、ウィーガントセンサ2に外部磁界-H以下の外部磁界Hが印加されてもよいが、ウィーガントセンサ2は、コイル22を備えるので、このコイル22に、外部磁界-H以下の磁界Hを生じさせる電流を通電すればよい。減肉検知装置Dが減肉を検知した後、再度、前記減肉検知装置を利用する場合も同様に前記減肉検知装置は、初期化される。
【0054】
減肉検知装置Dの配置後、所定の減肉の検知では、例えば、図6に示すように、検知対象Obが経年により腐食し、腐食部DCが生じて所定の減肉が生じると、漏れ磁束φが生じる。ウィーガントセンサ2は、この漏れ磁束φを検知すると、前記誘導起電力を生じて電気信号を出力する。周辺回路3の前記報知部では、ウィーガントセンサ2から出力された、この電気信号が全波整流回路RHで全波整流されてコンデンサCで平滑化され、第2抵抗素子R2を介してブザーBUを鳴動させ、ブザー音が発生する。これによってウィーガントセンサ2による検知対象Obにおける減肉の検知が外部に報知される。なお、上述では、減肉の検知は、ブザー音の発生によって外部に報知されたが、前記ブザーBUに代え、発光ダイオードが用いられ、前記減肉の検知は、光の点灯によって外部に報知されてもよい。
【0055】
以上説明したように実施形態における減肉検知装置Dは、エネルギーハーベスト素子のセンサ2を用いるので、前記センサ2の駆動にエネルギーの能動的供給を必要としないから、作業性の悪化を低減できる。
【0056】
上記減肉検知装置Dは、減肉の検知だけでなく、報知にもエネルギーの能動的供給を必要としないので、より作業性の悪化を低減できる。
【0057】
なお、上述の実施形態において、減肉検知装置Dが配置された周囲環境に応じて、適宜な材料が選択されたり、構成が付加されたりしてもよい。
【0058】
例えば、磁石は、高温環境下では減磁するので、これに応じて漏れ磁束も低下する。このため、耐温度性が求められる環境下で減肉検知装置が用いられる場合、磁気回路形成部1の永久磁石11、12には、温度耐性のある、例えば、サマリウムコバルト磁石やアルニコ磁石等が用いられることが好ましい。あるいは、耐錆姓が求められる環境下で減肉検知装置が用いられる場合、磁気回路形成部1の永久磁石11、12には、耐錆性のある、例えば、フェライト磁石や、防錆メッキされた磁石等が用いられることが好ましい。
【0059】
また、磁気回路形成部1の連結部材13は、磁性部材の、例えば、炭素鋼や純鉄等で形成されてよいが、過酷な環境下では、磁気回路形成部1の連結部材13は、耐久性の高い電磁ステンレス材で形成されていることが好ましい。あるいは、磁気回路形成部1の連結部材13には、例えばメッキ処理や樹脂モールド等の耐食処理が施されていることが好ましい。前記耐久性の観点では、永久磁石11、12には、例えば、フェライト磁石やサマリウムコバルト磁石等が用いられることが好ましい。
【0060】
また、減肉検知装置D全体が、例えば防水ボックスや防塵ボック等で囲まれてもよい。
【0061】
また、上述の実施形態において、複数のウィーガントセンサ2が備えられてもよい。これによれば、これら複数のウィーガントセンサ2を互いに異なるレベルの減肉量を検知するように設定することが可能となる。したがって、このような減肉検知装置は、互いに異なる複数のレベルで減肉を検知することが可能となる。
【0062】
図7は、第1変形形態における減肉検知装置を説明するための図である。図7Aは、第1変形形態における減肉検知装置の構成を示す。図7Bは、第1レベルの減肉により生じた漏れ磁束φa1を示し、図7Cは、第2レベルの減肉により生じた漏れ磁束φa2を示す。前記第1レベルは、減肉で生じた凹所の腐食部DCa1における第1深さ(減肉により残存した検知対象Obの第1厚さ)であり、前記第2レベルは、減肉で生じた凹所の腐食部DCa2における、前記第1深さより深い第2深さ(減肉により残存した検知対象Obの、前記第1厚さより薄い第2厚さ)である。漏れ磁束は、一般に、減肉が進み腐食部の凹所が深くなるほど検知対象Obの面からより離れた位置でも観測され、前記第2レベルで生じる漏れ磁束φa2は、前記第1レベルで生じる漏れ磁束φa1より、検知対象Obの面から離れた位置でも観測される。
【0063】
例えば、図7Aに示すように、減肉検知装置Daは、2個の第1および第2ウィーガントセンサ2-1、2-2を備えて構成される。より具体的には、減肉検知装置Daは、第1ウィーガントセンサ2-1およびその第1周辺回路3-1を備える第1センサ部S-1と、第2ウィーガントセンサ2-2およびその第2周辺回路3-2を備える第2センサ部S-2とを備える。第1ウィーガントセンサ2-1は、検知対象Obの面から、前記第1レベルで生じる漏れ磁束φa1に応じた所定の高さ(第1高さ)に位置するように、図略の支持部材4によって支持され、第2ウィーガントセンサ2-2は、検知対象Obの面から、前記第2レベルで生じる漏れ磁束φa2に応じた前記第1高さより高い所定の高さ(第2高さ)に位置するように、図略の支持部材4によって支持される。
【0064】
このような減肉検知装置Daでは、検知対象Obが経年により腐食し、例えば、図7Bに示すように、前記第1レベルの減肉が生じると、漏れ磁束φa1が生じ、第1ウィーガントセンサ2-1によって検知され、第1周辺回路3-1によって前記検知が外部に報知される。続いて、検知対象Obが経年により、さらに腐食し、例えば、図7Cに示すように、前記第1レベルからさらに前記第2ベルの減肉が生じると、漏れ磁束φa2が生じ、第2ウィーガントセンサ2-2によって検知され、第2周辺回路3-2によって前記検知が外部に報知される。このように減肉検知装置Daは、第1センサ部S-1および第2センサ部S-2が順次に発報し、前記第1レベルの減肉および前記第2レベルの減肉を順次に外部に報知する。このため、ユーザは、発報したセンサ部Sを判定することで、減肉のレベルを認識できる。
【0065】
また、上述の実施形態において、前記報知部には、エネルギーを供給する供給部がさらに備えられてもよい。前記供給部は、例えば、太陽電池や温度差発電装置や風力発電装置等の、自然エネルギーを電力に変換し、前記変換した電力を前記報知部に供給する電源回路である。このような供給部を備える場合には、前記報知部の駆動に電池を必要としないので、より作業性の悪化が低減できる。あるいは、例えば、前記供給部は、一次電池または二次電池を備える。このような供給部を備える場合には、前記報知部の駆動に利用するだけなので、比較的小さい容量の電池が利用でき、重量の大きな増大を抑えられるから、作業性の悪化が低減できる。あるいは、例えば、前記供給部は、商用電源から給電されたエネルギーを前記報知部に供給する電源回路である。このような供給部を備える場合には、前記供給部が商用電源を利用するので、例えば電池交換等の手間が不要にできる。
【0066】
図8は、第2変形形態における減肉検知装置の電気的な構成を示す回路図である。一例として、前記供給部が電池(一次電池または二次電池)を備える場合について説明する。
【0067】
この周辺回路3aの報知部は、例えば、図8に示すように、全波整流回路RHと、コンデンサCと、第1ないし第4抵抗素子R1~R4と、ブザーBUと、第1および第2トランジスタ素子Tr1、Tr2と、電池BTとを備える。これら全波整流回路RH、コンデンサC、第1抵抗素子R1、第2抵抗素子R2およびブザーBUは、それぞれ、第2抵抗素子R2が第2トランジスタ素子Tr2を介してブザーBUに接続される点を除き、図5に示す上述の報知部における全波整流回路RH、コンデンサC、第1抵抗素子R1、第2抵抗素子R2およびブザーBUと同様であるので、その説明を省略する。前記第2抵抗素子R2は、NPN型の第2トランジスタ素子Tr2のベース端子に接続され、第2トランジスタ素子Tr2のエミッタ端子は、ブザーBUに接続され、このブザーBUを介して接地される。
【0068】
電池BTは、その-極が接地され、その+極が第4抵抗素子R4を介して、PNP型の第1トランジスタ素子Tr1のエミッタ端子に接続される。第1トランジスタ素子Tr1のベース端子は、第3抵抗素子R3を介して第1トランジスタ素子Tr1の前記エミッタ端子に接続されるとともに、第1トランジスタ素子Tr1のコレクタ端子に接続される。第1トランジスタ素子Tr1のコレクタ端子は、第2抵抗素子R2と第2トランジスタ素子Tr2のベース端子との接続箇所に接続される。これら第1トランジスタ素子Tr1、第2トランジスタ素子Tr2および第3抵抗素子R3は、いわゆるラッチ回路RCを構成する。なお、電池BTが二次電池である場合に、いわゆる非接触充電されてもよい。
【0069】
このような構成の周辺回路3aの報知部では、ウィーガントセンサ2から出力された前記電気信号は、全波整流回路RHで全波整流されてコンデンサCで平滑化され、第2抵抗素子R2を介して第2トランジスタ素子Tr2のベース端子に入力され、第2トランジスタ素子Tr2をオンする。第2トランジスタ素子Tr2がオンすると、第1トランジスタ素子Tr1がオンし、前記ラッチ回路RCがラッチオンし、電池BTから前記ラッチ回路RCを介してブザーBUに電力が供給され、ブザーBUが鳴動され、ブザー音が発生する。
【0070】
また、上述の実施形態において、前記検知対象Obと前記磁気回路形成部の前記永久磁石との間の距離を調整する治具がさらに備えられてもよい。永久磁石11、12には、例えばサマリウムコバルト磁石等の比較的強力な磁力を持つ磁石が利用される可能性があり、このような場合、適切、かつ、安全に、前記減肉検知装置を検知対象Obに配置することが好ましい。これによれば、前記距離を調整する前記治具によって、前記永久磁石11、12の吸引力を調整(制御)できるので、前記減肉検知装置を、適切、かつ、安全に検知対象Obに配置することができる。
【0071】
図9は、第3変形形態における減肉検知装置を説明するための図である。例えば、減肉検知装置Dbは、図9に示すように、4個の第1ないし第4治具(距離調整治具)5-1~5-4をさらに備える。これら第1ないし第4距離調整治具5-1~5-4は、磁気回路形成部1の連結部材13における両端部の各側面それぞれに配設される。これら第1ないし第4距離調整治具5-1~5-4は、それぞれ、互いに同様に構成されるので、その一つで代表的に説明する。例えば、距離調整治具5(5-1)は、取付け部材51と、調整部材52と、台座部材53とを備える。取付け部材51は、距離調整治具5を連結部材13に取り付けるための部材であり、例えば、直方体形状の部材であり、その一側面が連結部材13における端部の側面に固定的に取り付けられる。取付け部材51には、減肉検知装置Dが検知対象Obの面に取り付けた場合に、離接方向に沿って貫通開口が形成され、前記貫通開口の内壁面には、ねじ溝が形成される。台座部材53は、減肉検知装置Dが検知対象Obの面に取り付けられる場合に、検知対象Obの面に当接し、距離調整治具5を支持するための部材であり、例えば、その一方面(裏面)で前記検知対象Obの面に当接する円板形状の部材である。調整部材52は、取付け部材51と台座部材53とを連結し、両者51、53間の距離を変えるための部材であり、例えば、前記離接方向に沿って延びる円柱形状の部材である。前記円柱形状の部材である調整部材52の外周側面には、ねじ溝が形成され、その一方端部が端面で回転可能に台座部材53の他方面(表面)に取り付けられ、その他方端部が取付け部材51における前記貫通開口に螺合して挿通される。このような構成の第1ないし第4距離調整治具5-1~5-4は、それぞれ、その調整部材52を回転することにより、その台座部材53に対し離接方向にその取付け部材51が移動する。このため、調整部材52を回転することにより、検知対象Obの面と磁気回路形成部1の永久磁石11、12との間の距離が変更でき、調整できる。
【0072】
また、上述の実施形態において、所定の中継部材がさらに備えられてもよい。この中継部材は、前記検知対象Obと前記永久磁石11、12との間に、前記検知対象Obと前記中継部材とが互いに密着するとともに、前記中継部材と前記永久磁石材とが互いに密着するように、介在する部材である。これによれば、検知対象Obの配置面が曲面である場合でも配置することが可能となる。
【0073】
磁気回路形成部1の永久磁石11、12における検知対象Obと当接する面(当接面)が平面であって、前記検知対象Obの面(配置面)が曲面である場合、減肉検知装置Dを前記検知対象Obの配置面に配置すると、検知対象Obの配置面と永久磁石11、12の当接面との間に、間隙(エアギャップ)が生じる。この間隙は、磁気抵抗が大きく、永久磁石11、12から検知対象Obに入り込む磁束を減じるとともに、漏れ磁束を生じさせるため、前記減肉検知装置にとって好ましくない。前記中継部材は、これを解消するための部材である。
【0074】
図10は、第4変形形態における減肉検知装置を説明するための図である。減肉検知装置Dcにおける磁気回路形成部1cは、例えば、図10に示すように、永久磁石11と検知対象Obとの間を中継する第1中継部材14-1と、永久磁石12と検知対象Obとの間を中継する第2中継部材14-2とをさらに備える。第1および第2中継部材14-1、14-2は、それぞれ、互いに同様に構成されるので、その一つで代表的に説明する。例えば、中継部材14(14-1)は、略三角柱形状の部材であり、永久磁石11と当接する第1面は、永久磁石11の平面に倣う平面であり、検知対象Obと当接する第2面は、検知対象Obの曲面に倣う曲面であり、永久磁石11と検知対象Obとの間に介在される。
【0075】
また、上述の実施形態において、前記磁気回路形成部の形状を維持するための構造がさらに備えられてもよい。図11は、第5変形形態における減肉検知装置を説明するための図である。例えば、減肉検知装置Ddにおける連結部材13dは、図11に示すように、永久磁石11に当接する一方端部の端面に、その外側端部において、永久磁石11に向かう方向に沿って立設する凸片状の凸部(爪部)131-1をさらに備え、永久磁石12に当接する他方端部の端面に、その外側端部において、永久磁石12に向かう方向に沿って立設する凸片状の凸部(爪部)131-2をさらに備える。そして、永久磁石11と検知対象Obとの間に介在される第1中継部材14d-1は、永久磁石11に当接する第1面に、その外側端部において、永久磁石11に向かう方向に沿って立設する凸片状の凸部(爪部)141-1をさらに備え、永久磁石12と検知対象Obとの間に介在される第2中継部材14d-2は、永久磁石12に当接する第1面に、その外側端部において、永久磁石12に向かう方向に沿って立設する凸片状の凸部(爪部)141-2をさらに備える。これら凸部131-1、141-1によって永久磁石11が外側に飛び出ることが防止でき、これら凸部131-2、141-2によって永久磁石12が外側に飛び出ることが防止でき、磁気回路形成部1の形状が維持できる。
【0076】
また、上述の減肉検知装置Dにおいて、前記磁気回路形成部の形状を維持するために、その強度を増強するための構造がさらに備えられてもよい。図12は、第6変形形態における減肉検知装置を説明するための図である。例えば、減肉検知装置Deにおける前記磁気回路形成部1eは、図12に示すように、その外周側面全体に亘って接着剤が塗布され、これによって、その外周側面全体に亘って形成された接着剤層6をさらに備える。
【0077】
また、上述の実施形態において、前記減肉検知装置は、次のように変形されてもよい。図13は、第7ないし第10変形形態における各減肉検知装置を説明するための図である。図13Aは、第7変形形態を示し、図13Bは、第8変形形態を示し、図13Cは、第9変形形態を示す。なお、図13Aないし図13Cでは、前記磁気回路形成部のみが図示され、前記センサおよび前記周辺回路の図示が省略されている。
【0078】
例えば、図13Aに示すように、1個の検知対象Obに対し、複数の減肉検知装置Dが用いられてもよい。図13Aに示す例では、1個の検知対象Obにおける面上に、4個の第1ないし第4減肉検知装置D-1~D-4が順次に並置されて用いられている。この場合には、互いに隣接する2個の減肉検知装置D間において、検知対象Ob内の磁束の向きが揃うように、4個の第1ないし第4減肉検知装置D-1~D-4が配置される。このように1個の検知対象Obに対し、複数の減肉検知装置Dを並置することによって、広範囲に減肉がモニタ(監視)できる。
【0079】
例えば、図13Bに示すように、減肉検知装置Dgにおける連結部材13gは、永久磁石で形成されてもよい。永久磁石11と連結部材13gとは、互いに異なる極で連結され、永久磁石12と連結部材13gとは、互いに異なる極で連結される。
【0080】
例えば、図13Cに示すように、減肉検知装置Dhにおける磁気回路形成部1hは、2個の磁気回路を形成するように構成されてもよい。より具体的には、磁気回路形成部1hは、図1に示す上述の磁気回路形成部1に対し、永久磁石11、12の間に、永久磁石15をさらに備えて構成される。永久磁石15は、一方端部の端面で検知対象Obの面に当接し、他方端部の端面で連結部材13に連結される。永久磁石11、15は、互いに異なる極を向けて前記検知対象Obに対向するように、配置され、永久磁石12、15は、互いに異なる極を向けて前記検知対象Obに対向するように、配置され、永久磁石11、12は、互いに同じ極を向けて前記検知対象Obに対向するように、配置される。
【0081】
また、上述の実施形態において、前記減肉検知装置は、様々な形状の面に利用することができる。図14は、前記減肉検知装置の第1および第2使用態様を説明するための図である。図14Aは、前記減肉検知装置を配管の継ぎ手の曲面に用いた場合を示し、図14Bは、前記減肉検知装置を、交差する2面に用いた場合を示す。なお、図14Aおよび図13Bでは、前記磁気回路形成部のみが図示され、前記センサおよび前記周辺回路の図示が省略されている。
【0082】
例えば、前記減肉検知装置は、図14Aに示すように、配管の継ぎ手の曲面に用いられてよく、図14Bに示すように、交差する2面に用いられてよい。配管の継ぎ手の曲面に用いられる場合には、図10に示す上述の第4変形形態における減肉検知装置Dcが用いられる。図14Bに示す検知対象Obは、互いに直交する第1および第2側壁部WL-1、WL-2を備え、このような第1および第2側壁部WL-1、WL-2の2面に用いられる場合には、減肉検知装置Djは、略L字形状の磁気回路形成部1jを備えて構成される。より具体的には、永久磁石11、12と、これら永久磁石11、12を互いに直交するように連結する連結部材13jとを備える。永久磁石11は、その一方端部の端面で第1側壁部WL-1の面に当接され、永久磁石12は、その一方端部の端面で第2側壁部WL-1の面に当接され、永久磁石11は、永久磁石11、12が互いに異なる極を向けて検知対象Obに対向するように、その他方端部が連結部材13jを介して永久磁石12の他方端部で永久磁石12と連結される。
【0083】
また、上述の実施形態(図7ないし図14に示す場合を含む)において、前記センサ(第1センサ)2の検知に応じて稼働され、前記検知対象Obの減肉量に応じた信号を出力する第2センサがさらに備えられてもよい。
【0084】
図15は、第11および第12変形形態における減肉検知装置の構成を示す図である。なお、図15には、第12変形形態における減肉検知装置Dkの構成も破線で図示されている。図16は、前記第11変形形態の減肉検知装置における電気的な構成を示す回路図である。
【0085】
より具体的には、第11変形形態における減肉検知装置Dkは、例えば、図15に示すように、磁気回路形成部1と、第1センサ2と、周辺回路3bと、第2センサ7と、出力部8とを備える。この第11変形形態における磁気回路形成部1および第1センサ2は、それぞれ、図1ないし図6を用いて説明した上述の実施形態における磁気回路形成部1およびセンサ2と同様であるので、その説明を省略する。
【0086】
第2センサ7は、第1センサ2の検知に応じて稼働され、検知対象Obの減肉量に応じた信号(測定信号)を出力するセンサである。第2センサ7は、図15に示すように、減肉により漏れた漏れ磁束φと干渉するように、検知対象Obに対して配置される。第2センサ7は、例えば、検知対象Obと第1センサ2との間に配置されてよく、あるいは例えば、第1センサ2から図15の紙面奥行き方向にずらして配置されてよい。第2センサ7は、周辺回路3bに接続され、前記測定信号を周辺回路3bに出力する。
【0087】
第2センサ7は、例えば、ホール素子、AMR素子、TMR素子およびGMR素子のうちのいずれかを備える磁気センサであり、検知対象Obの減肉量に応じて前記検知対象Obから漏洩した磁束を検知する。より詳しくは、一例では、第2センサ7は、ホール素子およびその周辺回路のICを備えるホールICであり、前記ホールICは、前記ホール素子に電流を流し、前記電流に磁束が交差するとホール効果により、電流の向きと磁束の向きとに対して直交する方向に電圧(ホール電圧)が生じ、これを前記ICで増幅して前記磁束の磁束密度に比例した電圧を出力する。あるいは、一例では、第2センサ7は、AMR素子およびその周辺回路のICを備えるAMR・ICである。前記AMR素子は、異方性磁気抵抗効果(AMR効果)を持つ4個の磁気抵抗素子AMR1~AMR4(図略)を2×2の二次元アレイ状に配置し、この際に、抵抗変化しない2個の磁気抵抗素子AMR1、AMR4を一方の対角方向に沿って配置し、抵抗変化する2個の磁気抵抗素子AMR2、AMR3を他方の対角方向に沿って配置し、これら4個の磁気抵抗素子AMR1、AMR3、AMR4、AMR3の順に閉ループ状に接続した素子である。前記AMR効果は、電流の方向と磁束の方向とが平行な場合に抵抗値が大きくなり、電流の方向と磁束の方向とが垂直な場合に抵抗値が小さくなる事象である。前記AMR・ICは、磁気抵抗素子AMR1と磁気抵抗素子AMR3との第1接続点と、磁気抵抗素子AMR4と磁気抵抗素子AMR2との第2接続点との間に電圧を印加し、AMR素子に磁束が交差すると、磁気抵抗素子AMR1と磁気抵抗素子AMR2との第3接続点と、磁気抵抗素子AMR3と磁気抵抗素子AMR4との第4接続点との間に電位差が生じ、これを前記ICで増幅して前記磁束の磁束密度に比例した電圧を出力する。あるいは、一例では、第2センサ7は、TMR素子およびその周辺回路のICを備えるTMR・ICであり、薄い非磁性の絶縁膜を2枚の磁性膜(ピン層、フリー層)で挟んだTMR素子に、電流を流し、TMR素子に磁束が交差するとトンネル磁気抵抗効果(TMR効果)により電位差が生じ、これを前記ICで増幅して前記磁束の磁束密度に比例した電圧を出力する。前記TMR効果は、前記ピン層と前記フリー層とが反平行になるように磁化されると抵抗値が大きくなり、前記ピン層と前記フリー層とが平行になるように磁化されると抵抗値が小さくなる事象である。あるいは、一例では、第2センサ7は、GMR素子およびその周辺回路のICを備えるGMR・ICであり、前記GMR・ICは、導電性非磁性体層を2枚の強磁性体層(ピン層、フリー層)で挟んだGMR素子に、電流を流し、GMR素子に磁束が交差すると巨大磁気抵抗効果(GMR効果)により電位差が生じ、これを前記ICで増幅して前記磁束の磁束密度に比例した電圧を出力する。前記巨大磁気抵抗効果(GMR効果)は、前記ピン層と前記フリー層とが反平行になるように磁化されると抵抗値が大きくなり、前記ピン層と前記フリー層とが平行になるように磁化されると抵抗値が小さくなる事象である。
【0088】
あるいは例えば、第2センサ7は、薄膜超音波探傷素子であってよく、あるいは例えば、第2センサ7は、超音波探傷素子であってよく、あるいは例えば、第2センサ7は、渦電流探傷素子であってよい。
【0089】
出力部8は、周辺回路3bに接続され、周辺回路3bの制御に従って第2センサ7で測定した減肉量を出力する装置である。出力部8は、例えばLCD(液晶表示装置)および有機ELディスプレイ等の表示装置であってよい。あるいは例えば、出力部8は、複数のLEDを一方向に並置したインジケータであってよく、前記複数のLEDのうち、減肉量に応じた個数のLEDが点灯される。あるいは例えば、出力部8は、1または複数の7セグメントLEDや16セグメントLEDを備えた表示器であってよい。あるいは例えば、出力部8は、外部の機器とデータを入出力する、例えばUSB規格等のインターフェースであってもよく、第2センサ7で測定した減肉量は、前記外部の機器(例えばUSBメモリやタブレット端末等の携帯端末装置等)で出力される。
【0090】
周辺回路3bは、第1および第2センサ2、7の周辺回路である。すなわち、周辺回路3bは、上述した第1センサ2の出力を処理する周辺回路3、3aに加えて、第2センサ7の出力を処理する周辺回路を備えている。周辺回路3bは、本第11変形形態では、前記ウィーガントセンサ21、22のコイル22を用いて前記ウィーガントセンサ21、22を初期化する初期化部31を備える。前記初期化部31は、前記第2センサ7から出力された信号に基づいて前記第1センサ2の誤検知の有無を判定し、前記第1センサ2の誤検知を判定した場合に、前記初期化を実行する。
【0091】
より具体的には、周辺回路3bは、例えば、図16に示すように、第1ないし第3スイッチSW1~SW3、全波整流回路RHと、コンデンサCと、第1、第2および第5抵抗素子R1、R2、R5と、サイリスタSCRと、スイッチング素子PMOSと、マイクロコンピュータMPと、電池BTとを備える。
【0092】
第1および第2スイッチSW1、SW2は、1入力2出力のスイッチであり、入出力の切り換えが互いに連動する。ウィーガントセンサ2におけるコイル22の一方端子は、第1スイッチSW1の入力端子T1aに接続され、ウィーガントセンサ2におけるコイル22の他方端子は、第2スイッチSW2の入力端子T2aに接続される。第1スイッチSW1における一方の出力端子T1bおよび第2スイッチSW2における一方の出力端子T2bは、全波整流回路RHの各入力端子に接続される。第1スイッチSW1における他方の出力端子T1cは、給電する、マイクロコンピュータMPのプラス側の給電端子V+に接続され、第2スイッチSW2における他方の出力端子T2cは、前記給電する、マイクロコンピュータMPのマイナス側の給電端子V-に接続される。第1スイッチSW1を切り換える制御信号が入力される制御端子T1dおよび第2スイッチSW2を切り換える制御信号が入力される制御端子T2dは、マイクロコンピュータMPの制御信号(第2制御信号)を出力する第2制御端子on/off_2に接続される。マイクロコンピュータMPからローレベル(Lowレベル)の第2制御信号が各制御端子T1d、T2dに入力されると、第1スイッチSW1は、入力端子T1aと出力端子T1bとを接続するように切り換え、第2スイッチSW2は、入力端子T2aと出力端子T2bとを接続するように切り換える。一方、マイクロコンピュータMPからハイレベル(Hiレベル)の第2制御信号が各制御端子T1d、T2dに入力されると、第1スイッチSW1は、入力端子T1aと出力端子T1cとを接続するように切り換え、第2スイッチSW2は、入力端子T2aと出力端子T2cとを接続するように切り換える。
【0093】
全波整流回路RHは、第1スイッチSW1が入力端子T1aと出力端子T1bとを接続するように切り換えられ、第2スイッチSW2が入力端子T2aと出力端子T2bとを接続するように切り換えられている場合、ウィーガントセンサ2の出力を全波整流する。コンデンサCは、全波整流回路RHの出力端子間に接続され、全波整流回路RHの出力を平滑化する。第1抵抗素子R1は、コンデンサCに並列に接続される。第2抵抗素子R2は、その一方端子がコンデンサCと第1抵抗素子R1との接続箇所に接続され、その他方端子がサイリスタSCRのゲート端子に接続される。スイッチング素子PMOSは、例えば、pチャネルのMOSFETである。サイリスタSCRのアノード端子は、スイッチング素子PMOSのゲート端子に接続され、サイリスタSCRのカソード端子は、接地される。スイッチング素子PMOSのゲート端子とソース端子との間には、第5抵抗素子R5が接続される。スイッチング素子PMOSのドレイン端子は、電力の供給を受けるマイクロコンピュータMPに受電端子Vccに接続される。スイッチング素子PMOSのソース端子は、第3スイッチSW3の出力端子T3bに接続され、第3スイッチSW3の入力端子T3aは、電池BTの+極に接続され、電池BTの-極は、接地される。第3スイッチSW3は、ノーマリーオン(B接点)の1入力1出力のスイッチであり、第3スイッチSW3のオンオフを切り換える制御信号が入力される制御端子T3dは、マイクロコンピュータMPの制御信号(第1制御信号)を出力する第1制御端子on/off_1に接続される。マイクロコンピュータMPからローレベル(Lowレベル)の第1制御信号(マイクロコンピュータMPのシャットダウンによるローレベルを含む)が制御端子T3dに入力されると、第3スイッチSW3は、オンして入力端子T3aと出力端子T3bとを接続する。一方、マイクロコンピュータMPからハイレベル(Hiレベル)の第1制御信号が制御端子T3dに入力されると、第3スイッチSW3は、オフして入力端子T3aと出力端子T3bとを非接続するように切り換える。第3スイッチSW3は、ノーマリーオンであるので、マイクロコンピュータMPのシャットダウンによる前記ローレベルの第1制御信号でも、入力端子T3aと出力端子T3bとの前記接続を維持する。マイクロコンピュータMPは、例えば、CPU、メモリ、インターフェースおよびその周辺回路等を1チップに集積した1チャップマイコンである。図16に示す例では、第2センサ7は、ホールIC7であり、電力の供給を受けるホールIC7の受電端子VCCは、給電するマイクロコンピュータMPの給電端子V1に接続され、ホールIC7の接地端子GNDは、マイクロコンピュータMPの接地端子GNDに接続され、ホールIC7の出力端子OUTは、マイクロコンピュータMPの信号入力端子sigに接続される。マイクロコンピュータMPの出力制御端子OUTは、出力部8に接続され、出力部8を制御する。
【0094】
このような第11変形形態における減肉検知装置Dkでは、まず、所望の検知対象Obの面上に配置され、第1センサ2のウィーガントセンサ2が初期化され、減肉検知装置Dkの運用が開始される。この運用開始時では、第1および第2スイッチSW1、SW2は、第1スイッチSW1における一方の出力端子T1bおよび第2スイッチSW2における一方の出力端子T2bが全波整流回路RHの各入力端子に接続されるように切り換えられており、第3スイッチSW3は、接続となるように切り換えられている。
【0095】
減肉検知装置Dの配置後、所定の減肉の検知では、例えば、図15に示すように、検知対象Obが経年により腐食し、所定の減肉が生じると、漏れ磁束φが生じる。第1センサ2は、この漏れ磁束φを検知すると、前記誘導起電力を生じて電気信号を出力する。周辺回路3bでは、第1センサ2から出力された、この電気信号が全波整流回路RHで全波整流されてコンデンサCで平滑化され、第2抵抗素子R2を介してサイリスタSCRがオンし、スイッチング素子PMOSがオンし、マイクロコンピュータMPがスリープ状態からアクティブ状態となる。このため、第1センサ2、第1および第2スイッチSW1、SW2、全波整流回路RH、コンデンサC、第1および第2抵抗素子R1、R2、サイリスタSCRおよびスイッチング素子PMOSは、所定の減肉量を検知してマイクロコンピュータMPをスリープ状態からアクティブ状態に切り換えてマイクロコンピュータMPを起動する検知起動回路を構成し、第1および第2スイッチSW1、SW2、全波整流回路RH、コンデンサC、第1および第2抵抗素子R1、R2、サイリスタSCRおよびスイッチング素子PMOSは、第1センサ2の周辺回路を構成する。アクティブ状態となると、マイクロコンピュータMPのCPUには、初期化部31が機能的に構成される。これによりマイクロコンピュータMPは、ノーマリーオンの第3スイッチSW3およびスイッチング素子PMOSを介して電池BTから給電される。サイリスタSCRは、オン状態を維持するので、サイリスタSCR、第5抵抗素子R5およびスイッチング素子PMOSは、第3スイッチSW3をおよびスイッチング素子PMOSを介して電池BTからマイクロコンピュータMPに給電を続ける自己保持回路を構成する。マイクロコンピュータMPは、第2センサ7の例えばホールIC7に給電し、減肉量を測定するために、第2センサ7を稼働させる。このように第2センサ7は、第1センサ2の検知に応じて稼働される。
【0096】
第2センサ7は、稼働すると、漏れ磁束φを測定し、この測定結果をマイクロコンピュータMPに出力する。前記測定結果が入力されると、マイクロコンピュータMPは、初期化部31によって、第2センサ7から出力された信号に基づいて第1センサ2における誤検知の有無を判定する。より具体的には、初期化部31は、第2センサ7の測定結果と、予め設定された所定の閾値(誤検知判定閾値)とを比較し、この比較の結果、例えば第2センサ7の測定結果が前記誤検知判定閾値を下回る場合には、第1センサ2の誤検知である、と判定し、一方、前記比較の結果、第2センサ7の測定結果が前記誤検知判定閾値上である場合には、第1センサ2の誤検知ではない、と判定する。前記誤検知判定閾値は、例えば複数のサンプルから適宜に設定される。
【0097】
第1センサ2の誤検知と判定した場合、初期化部31は、第1センサ2のウィーガントセンサ2を初期化する。より具体的には、マイクロコンピュータMPは、初期化部31によって、第1および第2スイッチSW1、SW2にハイレベルの第2制御信号をその制御端子T1d、T2dに出力し、これによって、第1スイッチSW1は、入力端子T1aと出力端子T1cとを接続するように切り換え、第2スイッチSW2は、入力端子T2aと出力端子T2cとを接続するように切り換える。そうすると、第1センサ2のウィーガントセンサ2には、第1および第2スイッチSW1、SW2を介してマイクロコンピュータMPの給電端子V+、V-から電圧が印加され、第1センサ2のウィーガントセンサ2は、初期化される。初期化すると、減肉の検知を継続するために、マイクロコンピュータMPは、第1および第2スイッチSW1、SW2にローレベルの第2制御信号をその制御端子T1d、T2dに出力し、これによって、第1スイッチSW1は、入力端子T1aと出力端子T1bとを接続するように切り換え、第2スイッチSW2は、入力端子T2aと出力端子T2bとを接続するように切り換え、そして、第3スイッチSW3にハイレベルの第1制御信号をその制御端子T3dに出力し、第3スイッチSW3は、オフする。これによって、前記自己保持回路の自己保持が解除され、マイクロコンピュータMPは、シャットダウンしてアクティブ状態からスリープ状態になり、ノーマリーオンの第3スイッチSW3がオンする。これによって減肉検知装置Dkは、減肉の検知を継続する。
【0098】
一方、第1センサ2の誤検知ではない判定した場合、マイクロコンピュータMPは、第2センサ7で測定した測定結果を出力部8に出力する。これによって減肉量が出力部8に出力され、減肉量が認識される。
【0099】
第1ないし第3スイッチSW1~SW3、電池BTおよびマイクロコンピュータMPは、第1センサ2のウィーガントセンサ2を初期化する初期化回路を構成する。電池BT、第3スイッチSW3、スイッチング素子PMOSおよびマイクロコンピュータMPは、第2センサ7の周辺回路を構成する。なお、このような前記初期化回路は、上述の実施形態(図7ないし図14に示す場合を含む)における減肉検知装置D(Da~Dj)に供えられてもよい。
【0100】
このような第11変形形態における減肉検知装置Dkは、第2センサ7をさらに備えるので、第1センサ2による減肉の検知だけでなく減肉量も検知できる。減肉量を参照することで、検知対象Obの交換や修理(補修)の必要が判定でき、その緊急性も判定できる。第2センサ7は、前記第1センサの検知に応じて稼働されるので、それまでスリープ状態であるから、上記減肉検知装置Dkは、消費電力を低減でき、比較的長期間、運用できる。
【0101】
上記減肉検知装置Dkは、第2センサ7に磁気センサ、図16に示す例ではホールIC7を用いるので、第1センサ2の磁気回路と共有可能となり、減肉検知装置Dkの小型化が可能となる。
【0102】
上記減肉検知装置Dkは、初期化部31をさらに備えるので、ウィーガントセンサを初期化する場合、別途、永久磁石や電磁石等の励磁器を用意する必要が無い。
【0103】
上記減肉検知装置Dkは、第2センサ7を備えるので、前記第2センサ7から出力された信号に基づいて前記第1センサ2の誤検知の有無を判定できる。上記減肉検知装置Dkは、初期化部31を備えるので、例えばノイズ等の原因で誤検知の場合、第1センサ2のウィーガントセンサ2を初期化できる。したがって、上記減肉検知装置Dkは、第1センサ2のウィーガントセンサ2が誤検知した場合、自己復帰でき、人手によらずに減肉の検知を継続できる。
【0104】
また、上述の第11変形形態の実施形態において、減肉検知装置Dlは、図15に破線で示すように、前記第2センサ7から出力された信号を表す減肉量情報を収容した通信信号を送信する通信部9をさらに備えてもよい(第12変形形態)。通信部9は、例えば、有線や無線で前記通信信号を外部の機器へ送信する通信インターフェース等である。なお、この場合、出力部8は、省略されてもよい。
【0105】
この第12変形形態における減肉検知装置Dlは、初期化部31によって第1センサ2の誤検知と判定した場合、第11変形形態における減肉検知装置Dkと同様に動作する。一方、第1センサ2の誤検知ではない判定した場合、マイクロコンピュータMPは、第2センサ7で測定した測定結果を通信部9に出力し、通信部9は、前記測定結果の減肉量を表す減肉量情報を収容した通信信号(減肉量通知信号)を生成して送信する。
【0106】
このような第12変形形態における減肉検知装置Dlは、通信部9を備えるので、減肉を遠隔から監視可能となり、減肉を集中監視可能となる。
【0107】
また、上述の第12変形形態の実施形態において、減肉を遠隔から集中監視し、減肉を集中管理する減肉監視システムが構成されてもよい。
【0108】
図17は、第12変形形態における減肉検知装置を、複数、備えた減肉監視システムの構成を示す図である。より具体的には、例えば、図17に示すように、減肉監視システムMSは、第2センサ7から出力された信号を表す減肉量情報を管理する減肉管理装置SVと、通信ネットワークNWを介して、前記減肉管理装置SVと通信可能に接続される、複数の第12変形形態における減肉検知装置Dl(Dl-1、Dl-2、Dl-3、・・・、Dl-n)とを備える。減肉管理装置SVと減肉検知装置Dlとは、例えばTCP/IP等のいわゆるインターネットプロトコル群(インターネット プロトコル スイート)を用いて通信する。減肉管理装置SVは、例えばサーバ装置としてのコンピュータを備えて構成され、減肉検知装置DlとそのIPアドレスとその配置箇所とそのIDを相互に対応付けた情報(装置情報)、および、減肉検知装置DlのIDと減肉検知装置Dlで測定した減肉量とを互いに対応付けた情報(減肉監視情報)を記憶する。前記IDは、減肉検知装置Dlを特定して識別するための識別子である。
【0109】
このような減肉監視システムMSでは、減肉検知装置Dlは、第1センサ2によって減肉を検知し、第2センサ7によって減肉量を測定すると、この測定した減肉量を表す減肉量情報を収容した減肉量通知信号を減肉管理装置SVに送信する。減肉管理装置SVは、通信ネットワークNWを介して減肉量通知信号を受信すると、この受信した減肉量通知信号に収容された減肉量情報を取り出し、この受信した減肉量通知信号のIPアドレスに対応する減肉検知装置DlのIDを装置情報から抽出し、この抽出したIDと前記取り出した減肉量情報で表された減肉量とを互いに対応付けて記憶し、前記減肉監視情報を更新する。ユーザは、必要に応じて減肉管理装置SVに記憶されている減肉監視情報を、減肉管理装置の表示装置に表示させる。
【0110】
なお、上述において、IPアドレスに代え、MACアドレスが用いられてもよい。あるいは、減肉検知装置Dlには、自機のIDが記憶されており、減肉量通知信号には、この自機のIDがさらに収容され、減肉管理装置SVは、装置情報を参照することなく、受信の減肉量通知信号に収容されたIDと減肉量情報とを取り出し、この取り出したIDと減肉量情報で表された減肉量とを互いに対応付けて記憶し、前記減肉監視情報を更新してもよい。
【0111】
また、減肉管理装置SVは、減肉量通知信号を受信すると、この受信した減肉量通知信号に収容された減肉量情報を取り出し、この取り出した減肉量情報で表された減肉量と予め設定された所定の閾値(警告発報判定閾値)と比較し、例えば前記減肉量が前記警告発報判定閾値以下である場合に、検知対象Obに例えば交換や修理を促す警告を発報するように構成されてもよい。前記警告発報判定閾値は、例えば検知対象Obが故障した場合の影響の大きさ等の検知対象Obの重要性等に応じて適宜に設定される。
【0112】
これによれば、複数の減肉検知装置Dlを遠隔から集中監視できる減肉監視システムMSが提供でき、複数の減肉検知装置Dlを遠隔から集中管理する減肉管理装置SVが提供できる。遠隔から集中監視することで、人手が低減でき、コスト削減が可能となる。
【0113】
本発明を表現するために、上述において図面を参照しながら実施形態を通して本発明を適切且つ十分に説明したが、当業者であれば上述の実施形態を変更および/または改良することは容易に為し得ることであると認識すべきである。したがって、当業者が実施する変更形態または改良形態が、請求の範囲に記載された請求項の権利範囲を離脱するレベルのものでない限り、当該変更形態または当該改良形態は、当該請求項の権利範囲に包括されると解釈される。
【符号の説明】
【0114】
D、Da~De、Dg~Dl 減肉検知装置
S-1 第1センサ部
S-2 第2センサ部
1、1c、1e、1g~1j 磁気回路形成部
2、2-1、2-2 センサ(第1センサ)
3、3-1、3-2、3a、3b 周辺回路
5-1~5-4 治具(距離調整治具)
6 接着剤層
11、11i、12、12i 永久磁石
13、13d、13g、13i、13j 連結部材
7 第2センサ
8 出力部
9 通信部
31 初期化部
MS 減肉監視システム
SV 減肉管理装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17