(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168289
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】比色分析による金属粉末の床の特性決定
(51)【国際特許分類】
G01N 21/27 20060101AFI20231116BHJP
B22F 10/28 20210101ALI20231116BHJP
B22F 10/80 20210101ALI20231116BHJP
B22F 10/37 20210101ALI20231116BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20231116BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20231116BHJP
B33Y 50/02 20150101ALI20231116BHJP
G01N 33/2022 20190101ALN20231116BHJP
【FI】
G01N21/27 A
B22F10/28
B22F10/80
B22F10/37
B33Y10/00
B33Y30/00
B33Y50/02
G01N21/27 F
G01N33/2022
【審査請求】未請求
【請求項の数】17
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023078359
(22)【出願日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】2204524
(32)【優先日】2022-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(71)【出願人】
【識別番号】311015001
【氏名又は名称】コミサリヤ・ア・レネルジ・アトミク・エ・オ・エネルジ・アルテルナテイブ
(74)【代理人】
【識別番号】110001173
【氏名又は名称】弁理士法人川口國際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ティモテ・ドゥラクロワ
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ポール・ガランデ
(72)【発明者】
【氏名】ヒシャム・マクロ
(72)【発明者】
【氏名】フレデリク・シュスター
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンド・ロメッロ
【テーマコード(参考)】
2G055
2G059
4K018
【Fターム(参考)】
2G055AA03
2G055BA01
2G055CA25
2G055FA02
2G059AA01
2G059BB09
2G059CC07
2G059EE02
2G059EE13
2G059GG01
2G059HH02
2G059KK04
2G059MM01
2G059MM05
2G059MM09
2G059MM10
2G059MM12
2G059MM14
4K018AA06
4K018AA07
4K018AA14
4K018AA33
4K018BA03
4K018BA04
4K018BA08
4K018BA17
4K018CA44
4K018EA51
4K018EA60
(57)【要約】
【課題】比色分析による金属粉末の床の特性決定を提供する。
【解決手段】本発明は、粉末床(PB)の形態を取る金属材料(Mat)の粉末(MP)の酸素濃度(Cox)を決定するための方法(20)であって:
A)前記粉末床の少なくとも一部の画像(Im)を生成することであって、前記画像がピクセルの組(P)を含み、ピクセルが、3つの量(G1,G2,G3)を含む比色コードによりコード化される色を有することと、
B)前記材料の関数であり、前記酸素濃度と前記3つの量とを結び付けるあらかじめ定義された較正関数(CF
Mat)を用いて、画像のピクセルに関連する前記3つの量の値から、粉末の酸素濃度を決定することと、
にあるステップを含む方法に関する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末床(PB)の形態を取る金属材料(Mat)の粉末(MP)の酸素濃度(Cox)を決定するための方法(20)であって:
A 前記粉末床の少なくとも一部の画像(Im)を生成することであって、前記画像がピクセルの組(P)を含み、ピクセルが、3つの量(G1,G2,G3)を含む比色コードによりコード化される色を有することと、
B 前記材料の関数であり、前記酸素濃度と前記3つの量とを結び付けるあらかじめ定義された較正関数(CFMat)を用いて、前記画像のピクセルに関連する前記3つの量の値から、前記粉末の前記酸素濃度を決定することと、
にあるステップを含む方法。
【請求項2】
前記比色コードがRGB系であり、前記3つの量がR、G、及びBとして知られている、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記較正関数が、前記3つの量に対応する3つの変数と、前記材料の関数である係数とを有する一次又は二次多項式である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップAがビデオカメラを用いて一度に行われる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
ステップAがフラットベッドスキャナを用いて走査することによって行われる、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
ステップBが:
B1 前記較正関数によって、前記画像の複数のピクセルに関して、ピクセル密度として知られる酸素濃度(COxj)を決定することと、
B2 前記ピクセル密度の平均値から前記酸素濃度を決定することと、
にあるサブステップを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
ステップBが:
B’1 前記画像の複数のピクセルに関連する量の値(G1j,G2j,G3j)から、それぞれの前記量の平均値(G1m、G2m、G3m)を決定することと、
B’2 前記較正関数を介して、前記3つの量の前記平均値から前記酸素濃度を決定することと、
にあるサブステップを含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
粉末床の選択的固化による金属付加製造のための請求項1~7のいずれか一項に記載の方法であって、前記金属付加製造方法において少なくとも1回行われる、前記粉末床の前記酸素濃度の決定のステップを含む、方法。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか一項に記載の粉末床の酸素濃度を決定するための方法が、前記金属付加製造方法の開始時、製造チャンバー中への不活性ガスの注入中、及び/又は前記金属付加製造方法の終了時、製造された部品の冷却中に行われる、請求項8に記載の金属付加製造方法。
【請求項10】
決定されている前記酸素濃度の値の関数として、前記方法のパラメーターを適応させるステップを含む、請求項8又は9に記載の金属付加製造方法。
【請求項11】
前記酸素濃度があらかじめ決定された閾値を超える場合に、使用済みの粉末を新しい粉末と混合するステップをさらに含み、前記混合ステップが、2つの部品を製造することの間に行われる、請求項8~10のいずれか一項に記載の金属付加製造方法。
【請求項12】
粉末床(PB)の形態を取る金属材料(Mat)の粉末(MP)の酸素濃度(Cox)を決定するための装置(10)であって:
前記粉末床の少なくとも一部の画像(Im)を生成するように構成された画像取り込み装置(ICD)であって、前記画像がピクセルの組(P)を含み、ピクセルが、3つの量(G1,G2,G3)を含む比色コードによりコード化された色を有する画像取り込み装置と、
前記材料の関数であり、前記酸素濃度と前記3つの量とを結び付けるあらかじめ定義された較正関数(CFMat)を用いて、前記画像のピクセルに関連する前記3つの量の値から、前記粉末の前記酸素濃度を決定するように構成された第1のプロセシングユニット(UT1)と、
を含む装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置に、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法の前記ステップを実施させる命令を含むコンピュータプログラム。
【請求項14】
粉末床の選択的固化による金属付加製造のためのシステム(100)であって:
酸素濃度を決定するための請求項12に記載の装置(10)と、
上に部品が製造される基材を収容することが意図されたタンク(Tk)と、
前記粉末床の表面上に前記粉末を塗布するための装置(PSD)と、
前記粉末を固化させるための装置(CD)と、
前記金属付加製造の実施を制御するように構成された第2のプロセシングユニット(UT2)と、
を含むシステム。
【請求項15】
前記画像取り込み装置が、前記塗布装置(PSD)に接続されたフラットベッドスキャナ(Scan)を含む、請求項14に記載の金属付加製造システム。
【請求項16】
前記画像取り込み装置が高解像度ビデオカメラを含む、請求項14に記載の金属付加製造システム。
【請求項17】
請求項1~7のいずれか一項に記載の方法を実施するための較正関数を決定するための方法であって:
前記粉末の複数の試料を得ることであって、各試料が、異なる既知の酸素濃度を有することと、
各試料の画像を生成し、関連する平均色を決定することであって、色は、3つの量(G1,G2,G3)を含む比色コードによりコード化され、関連する酸素濃度値を有する色が、較正データとして既知であることと、
回帰によって前記較正データから前記較正関数を決定することと、
にあるステップを含む決定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属粉末の特性決定の分野に関し、特に、上記粉末の酸素濃度の決定の分野に関し、後者は平坦面(粉末の床)を有する。この特性決定は、典型的には、部品の金属付加製造方法を実施する場合に有益となる。
【背景技術】
【0002】
金属粉末は、使用中に酸化しやすく、このことはその使用の妨げとなりうる。この問題は、例えば、粉末床の選択的固化による粉末床溶融結合金属付加製造(MAM-PBF)方法を実施する場合に生じる。この方法が用いられる分野は、典型的には航空学、航空宇宙、生物医学、自動車、及び核である。
【0003】
金属付加製造は、3Dデジタルファイルに基づいて1層ずつ(金属)材料層を連続して加えることによって部品を製造することにある。粉末床PBは、平坦面を有する制御された厚さの粉末MPであると理解すべきである。粉末を構成する金属材料Matは、例えば、ステンレス鋼、チタン基合金、アルミニウム基合金、ニッケル基合金から選択される。
【0004】
製造は、粉末の薄層(典型的には10~100μmの間の厚さ)を互いの上に広げることが必要であり、各層の堆積の間には材料の選択的固化ステップを伴う。選択的固化は、例えば、1つ以上のレーザービームを用いて、電子ビームを用いて、レーザー焼結によって、又はバインダーの吹き付けによって行われる。固化は、粉末粒子を互いに結合させることによって材料を硬質にすることであると理解すべきである。
【0005】
レーザービームLBを用いた部品PaのMAM-PBF製造(L-PBFと示される)を用いるシステム15の一例を
図1中に示す。これは、金属粉末MPのタンクPC、製造プラットフォームMPL、及び粉末収集タンクPCTを含む。粉末塗布装置PSDは、粉末床PBとして知られる制御された厚さの粉末(典型的には約10~100μm)が堆積されるような方法で、タンクからプラットフォームMPLまで塗布方向SDに粉末を押し出す。この方向SDは、軸Xに沿っており、粉末床の面は面XYであり、Zは垂直方向である。塗布中、過剰の粉末は、収集タンクPCT中に排出される。塗布装置PSDは、例えばスクレーパー、ローラー、又はブラシである。製造に用いられるタンクTk内には、製造用基材Subを移動させるための垂直移動装置MDが配置され、これによって層が堆積され固化されるときに、基材と形成される部品PaとがZに沿って下降する。製造開始時に、基材Subは粉末床を受け取り、次に製造中に、この基材に部品が取り付けられる。ここで、固化装置CDは、3DファイルからのデータによってレーザービームLBを偏向させるプロセシングユニットUT0によって制御されたレーザーL及びミラーの組LSDを含む。
【0006】
したがって、MAM-PBF方法は、各層に関して、過剰の粉末の排出を含む粉末を塗布する(及び装置PSDを初期位置に戻す)ステップと、固化ステップとを含むサイクルを含む。次に、基材を下げで、新しいサイクルによる次の層の形成などを最終層まで行う。
【0007】
製造終了後、製造された1つ又は複数の部品が固定された基材が機械から取り外される。タンクTkを満たす粉末及びタンクPCTからの粉末は、回収され、場合によりふるい分けされ、特性決定され、適切であれば新しい粉末と混合されて、後の製造に再利用される。実際には、粉末の非常にわずかな部分のみが、製造中に部品として固化され、溶融していない粉末は回収して、後の製造に再利用することができる。しかしながら、レーザーと材料との間の相互作用、発生する高温、及び製造チャンバー中の不完全に制御された雰囲気のために、一部の粒子は劣化する。したがって、粉末の再利用によって、粉末中に不規則に分布する一部の粒子で特性の劣化が生じる。粉末の品質の低下によって、製造される部品の性質の低下が誘発される。再循環される粉末の酸素濃度の増加が、多くの材料に関する文献に記載されている。一部の粉末粒子は、酸化物の幾分均一な層によって取り囲まれ、その化学的性質は、材料Matによって異なる。例えば、刊行物のT.Delacroix et al.“Influence of powder recycling on 316L stainless steel feedstocks and printed parts in laser powder bed fusion”(Addit.Mauf.,vol.25,pp.84-103,2019)には、ステンレス鋼粉末の場合のこの現象が記載されている。したがって、典型的にはMAM-PBF製造に用いられる場合の、粉末の品質の低下の良好な指標の1つは、その酸化である。
【0008】
現在のところ、粉末の試料は、製造サイクル間に収集され、その品質を評価するために、ex situで少量で特性決定が行われる。これらの少量の特性決定される材料は、必ずしも粉末全体を代表するものではない。
【0009】
幾つかの場合では、リスクを負わないために、製造後に回収された溶融していない粉末の検査は行われないが、その代わりに、新しい粉末のみを使用し、製造される部品の品質を保証するために、直接排除され、これによって部品のコストが増加する。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】T.Delacroix et al.,“Influence of powder recycling on 316L stainless steel feedstocks and printed parts in laser powder bed fusion”(Addit.Mauf.,vol.25,pp.84-103,2019)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の目的の1つは、粉末床の形態を取る金属材料の粉末の酸素濃度を決定するための方法と、迅速で、比較的低コストであり、粉末床金属付加製造方法の実施中に直接オンラインで実施可能な関連する装置とを提案することによって、上記短所を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、主題のために、粉末床の形態を取る金属材料の粉末の酸素濃度を決定するための方法であって:
A)前記粉末床の少なくとも一部の画像を生成することであって、前記画像がピクセルの組を含み、ピクセルが、3つの量を含む比色コードによりコード化された色を有することと、
B)前記材料の関数であり、前記酸素濃度と前記3つの量とを結び付けるあらかじめ定義された較正関数を用いて、画像のピクセルに関連する前記3つの量の値から、粉末の酸素濃度を決定することと、
にあるステップを含む方法を有する。
【0013】
一実施形態によると、比色コードはRGB系であり、3つの量はR、G、及びBとして知られている。
【0014】
一実施形態によると、較正関数は、一次又は二次多項式であり、3つの量に対応する3つの変数を有し、それらの係数は材料の関数である。
【0015】
一変形形態によると、ステップAは、ビデオカメラを用いて一度に行われる。
【0016】
別の一変形形態によると、ステップAは、フラットベッドスキャナを用いて走査することによって行われる。
【0017】
第1の方法によると、ステップBは:
B1)較正関数によって、画像の複数のピクセルに関して、ピクセル密度として知られる酸素濃度を決定することと、
B2)前記ピクセル密度の平均値から酸素濃度を決定することと、
にあるサブステップを含む。
【0018】
第2の方法によると、ステップBは:
B’1)画像の複数のピクセルに関連する量の値からそれぞれの前記量の平均値を決定することと、
B’2)較正関数を介して、3つの量の前記平均値から酸素濃度を決定することと、
にあるサブステップを含む。
【0019】
別の一態様では、本発明は、粉末床の選択的固化による金属付加製造方法であって、前記金属付加製造方法において少なくとも1回行われる、前記粉末床の酸素濃度の決定の本発明によるステップを含む、金属付加製造方法に関する。
【0020】
本発明による金属付加製造方法の一実施形態によると、粉末床の酸素濃度を決定するための方法は、金属付加製造方法の開始時、製造チャンバー中への不活性ガスの注入中、及び/又は金属付加製造方法の終了時、製造された部品の冷却中に行われる。
【0021】
一実施形態によると、本発明による金属付加製造方法は、決定されている酸素濃度の値の関数として、方法のパラメーターを適応させるステップを含む。
【0022】
一実施形態によると、本発明による金属付加製造方法は、酸素濃度があらかじめ決定された閾値を超える場合に、使用済みの粉末を新しい粉末と混合するステップをさらに含み、この混合ステップは、部品の2つの製造操作の間に行われる。
【0023】
別の一態様では、本発明は、粉末床の形態を取る金属材料の粉末の酸素濃度を決定するための装置であって:
前記粉末床の少なくとも一部の画像を生成するように構成された画像取り込み装置であって、前記画像がピクセルの組を含み、ピクセルが、3つの量を含む比色コードによりコード化された色を有する画像取り込み装置と、
前記材料の関数であり、前記酸素濃度と前記3つの量とを結び付けるあらかじめ定義された較正関数を用いて、画像のピクセルに関連する前記3つの量の値から、粉末の酸素濃度を決定するように構成された第1のプロセシングユニットと、
を含む装置に関する。
【0024】
別の一態様では、本発明は、本発明による装置に、本発明による酸素濃度を決定するための方法のステップを実施させる命令を含むコンピュータプログラムに関する。
【0025】
さらに別の一態様では、本発明は、粉末床の選択的固化による金属付加製造のためのシステムであって:
酸素濃度を決定するための本発明による装置と、
上に部品が製造される基材を収容することが意図されたタンクと、
粉末床の表面上に前記粉末を塗布するための装置と、
粉末を固化させるための装置と、
金属付加製造の実施を制御するように構成された第2のプロセシングユニットと、
を含むシステムに関する。
【0026】
一実施形態によると、画像取り込み装置は、塗布装置に接続されたフラットベッドスキャナを含む。
【0027】
一実施形態によると、画像取り込み装置は高解像度ビデオカメラを含む。
【0028】
さらなる一態様では、本発明は、本発明による酸素濃度を決定するための方法を実施するための較正関数を決定するための方法であって:
前記粉末の複数の試料を得ることであって、各試料が、異なる既知の酸素濃度を有することと、
各試料の画像を生成し、関連する平均色を決定することであって、色は、3つの量を含む比色コードによりコード化され、関連する酸素濃度値を有する色は、較正データとして既知であることと、
回帰によって前記較正データから前記較正関数を決定することと、
にあるステップを含む決定方法に関する。
【0029】
以下の説明は、本発明の装置の多数の代表的な実施形態について記載しており、これらの例は、本発明の範囲に対する限定ではない。これらの代表的な実施形態は、本発明の本質的な特徴と、関連の実施形態に関係するさらなる特徴との両方を有する。
【0030】
非限定的な例によって提供される添付の図面が参照される以下の詳細な説明によって、本発明がより理解され、その別の特徴、目的、及び利点が明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】既に言及しており、粉末床の選択的固化による金属付加製造を用いたシステムを示している。
【
図2】本発明による粉末床の形態を取る粉末の酸素濃度を決定するための方法を示している。
【
図3】本発明による方法のステップBを実施するための2つの適用可能な方法を示している。
【
図4】本発明によるステップBを実施するための第1の方法を示している。
【
図5】本発明によるステップBを実施するための第2の方法を示している。
【
図6】画像取り込み装置が光学系及びマトリックス検出器を含む本発明による装置の第1の変形形態を示している。
【
図7】本発明による粉末床の選択的固化による金属付加製造のためのシステムを示している。
【
図8】本発明による粉末床の選択的固化による金属付加製造のためのシステムをより詳細に示している。
【
図9】製造した22個の試料の較正データを示しており、試料の種々の濃度に関連する3つの成分R、G、及びBの強度を表している。
【
図10】比色空間CIExy 1931で表される7つの試料に関連する色を示している。
【
図11】本発明による方法1及び方法2、並びに不活性ガス中での溶融を使用するex situ方法を用いて得られた種々の酸素濃度測定値を示している。
【
図12】本発明による方法の方法1及び2、不活性ガス中の溶融によるex situ方法、並びに理論値を用いて、4つの試料で得た酸素濃度結果を示している。
【発明を実施するための形態】
【0032】
粉末床PBの形態を取る金属材料Matの粉末MPの酸素濃度Coxの決定の本発明による方法20を
図2中に示している。これは、比色分析に基づいており、前述のように金属付加製造における粉末の品質の低下の良好な指標となる粉末の酸素濃度を決定するために粒子の色を利用する。
【0033】
粒子の重量基準の酸素濃度Coxは、粒子の組成中に入り、主としてその表面に存在する酸素の量を表している。これは典型的には重量百万分率(wppm)の単位で測定される。
【0034】
高温における金属粉末の酸化中に、酸化物の表面層が形成される。異なる加熱条件から異なる層の厚さが得られ、異なる酸素濃度が生じる。色が観測可能であり、この色は、これらの異なる酸化物膜の厚さと、及び膜/金属界面によって反射される光と酸化物の上部(膜/空気界面)によって反射される光との間の干渉とによって生じる。したがって、粒子の色とその酸素濃度とを相関させることができる。
【0035】
本発明による方法は、粉末床PBに対して、すなわち平坦面を有する粉末の層に対して直接分析を行う。
【0036】
これは、粉末床PBの少なくとも一部の画像Imを生成することにある第1のステップAを含む。この画像はピクセルの組Piを含み、ここでiはピクセルの指数であり、撮像中、画像のピクセルは、3つの量G1、G2、G3を含む比色コードによりコード化された色Coliを有する。視覚的三変系のため、色の識別には3つの数で十分である。
【0037】
一実施形態によると、比色コードは、RGB(又はRGB加法合成)系であり、G1=R、G2=G、及びG3=Bである。光を加えることで、異なる色が再現される。赤色R、緑色G、及び青色Bの3つの光線の加法合成によって、ほとんどの色の作成/特性決定が可能である。特定の色を示すため/特性決定するため、その組成物中の3つの加法混色の原色RGBのそれぞれの比率が決定される。これら3つの色を完全に足し合わせると白色が得られる。このモデルは、非常に広く使用されており、その理由はこれがカラーモニタが動作する方法に対応しているからである。それぞれの原色は、0%~100%の間のパーセント値、又は0~255の間の値(8ビットでのコーディング、1つの色当たり合計で24ビット)として変動し、したがって特定の色は、それぞれの原色の寄与を示すことによって指定される。それぞれの原色の256の濃淡を有することによって、16.7百万(256×256×256)の色を作成することができる。このコーディングは、カラーフィルターが取り付けられた検出器を用いて現場の色の画像を生成する場合にも用いられる。RGBコーディングを用いると、ピクセルPiは、トリプレット(Ri,Gi,Bi)と関連する。
【0038】
しかし、あらゆる種類のカラーコーディング、例えば(シアン、マゼンタ、イエロー)コーディング、RGBコーディングから派生したCIE XYZコーディング、又はCIE U’V’W’、CIE L*a*b*コーディングを本発明に用いることができる。
【0039】
方法を実施するために、一実施形態では、撮像装置の初期コーディングが用いられ、別の一実施形態では幾つかの別のコーディング形態への変換が行われる(典型的には軸の系の変更)。重要なことは、粉末床PBの画像のピクセルの色に関する利用可能な情報を有することであり、その情報は値のトリプレットによりコード化される。
【0040】
第2のステップBでは、粉末の酸素濃度は、材料Matの関数であり、酸素濃度Coxと3つの量とを結び付けるあらかじめ定義された較正関数CFMatを用いて、画像のピクセルに関連する3つの量の値から決定される:
Cox=CFMat(G1,G2,G3)
【0041】
Pjは、本発明による方法に用いられる画像のピクセルを意味するものとする。ピクセルPjは、画像の全てのピクセル、又はそれらのピクセルの一部に対応することができる。
【0042】
したがって、粉末床PBの形態を取り撮像される粉末MPの酸素濃度Coxは、ピクセルPjに関連するトリプレットの組(G1j,G2j,G3j)から決定される。
【0043】
多数の実験及び多くの研究の後、本発明者らは、特定の色を対象の範囲内の特有の酸素濃度に結び付ける較正関数CFMatを明らかにした(色と酸素濃度との間の全単射関係)。この対象の範囲は、典型的には、[200,2500]の範囲内のwppmの単位で測定される重量基準の酸素濃度である。さらに、市販の撮像装置による色の測定が、酸素濃度の正確な決定に対応することが示された。ある特定の材料Matは、複数の較正関数に対応する場合があることに留意されたい。
【0044】
非常に良好な酸素濃度測定結果が得られている。これは顕著な驚くべき結果である。粉末床上のレーザー溶融した粉末の劣化の機構は、実際には、レーザーと材料との相互作用と、溶融プール中で生じる液体材料の対流及び排出物を有する物理的現象と、背圧によるレーザー付近の粒子の取り込みとのため、非常に複雑である。再循環粉末中には、着色した粒子が見られるが、色を発生させる連続酸化物膜を有さず表面酸化物ノジュールを有する粒子も見られる(例えば、Delacroix et al.による前述の刊行物を参照されたい)。したがって、付加製造される粉末の品質を監視するための比色分析による酸素測定が、予想可能なものであり従来の測定と同等であることは、先験的に明らかではなかった(以下参照)。
【0045】
本発明による方法20は、粉末床が平面構造を有するので、粉末床の画像を撮影できることを利用している。これは、粉末床の画像を取得し、画像の比色分析によって粉末層の酸素濃度を決定することによる、酸素濃度のその場での非接触特性決定が行われるという利点を有する。これは、粉末の操作を必要とせず、試料に使用されず直接粉末床に使用され、したがって粉末床を使用するプロセスに容易に統合させることができる(以下参照)。
【0046】
さらに、その実施に必要な手段は少なく、較正関数は、独立した方法で決定され、メモリに保存される。本発明者らは、較正関数を、3つの量に対応する3つの変数と、材料Matの関数である係数とを有する一次又は二次多項式として表すことができることも示している(この較正関数の決定の一例は以下を参照されたい)。
【0047】
第1の変形形態では、ステップA(粉末床の画像の生成)は、ビデオカメラを用いる1段階プロセスであり、以下に詳細に記載される第2の変形形態では、ステップAは、フラットベッドスキャナを用いて走査することによって行われる。
【0048】
本発明を限定しない方法では、説明の残りの部分において、3つの量RGBは、色をコードするために用いられる。
【0049】
本発明による方法のステップBは、
図3中に示される2つの方法を用いて実施することができる。
【0050】
図4中にも示される第1の方法では、各ピクセルの酸素濃度を得るために較正関数が使用され、その後、全ての個別のピクセルPjにわたって合計することによって、床の平均酸素濃度が計算される。したがって、最初にステップB1において、複数のピクセルPjについて、ピクセル密度として知られる対応の酸素濃度Coxjが較正関数によって決定される:
Coxj=FC
Mat(Rj,Gj,Bj)
【0051】
次に、ステップB2において、ピクセル密度の平均値Coxjに基づいて酸素濃度が決定される:
【数1】
【0052】
図5中にも示される第2の方法では、最初にステップB’1において、画像の複数のピクセルPjに関連する量の値(G1j,G2j,G3j)からそれぞれの量の平均値(Rm,Gm,Bm)が決定される。
【0053】
次に、ステップB’2において、較正関数によって、3つの量の平均値から酸素濃度が決定される。
Cox=FCMat(Rm,Gm,Bm)
【0054】
第1の方法は理論的により堅牢となるべきであるが、その理由は、これは較正関数を各ピクセルに対して使用し、したがってこれらの濃度Coxjの平均値が、粉末床中に存在する酸素量の物理的な値を表すと仮定できるからである。第2の方法はより迅速であり、その理由は、ピクセルの組Pjの平均量Rm、Gm、Bmを決定するための画像処理が非常に単純であり、較正関数は1回のみ使用されるからである。
【0055】
劣化した原材料の粉末床上に存在する着色粒子の多様性を考慮すると、2つの方法で類似の結果が得られることは先験的に明らかではなかった。さらに、数学的観点から、採用される相関関数が線形ではない場合に、有意差があると予想できた。しかしながら、本発明者らが、2つの方法を用いて得られた結果を比較すると、驚くべきことに、第2の方法によって第1の方法と同様に良好な結果が得られた(以下の実施例を参照されたい)。
【0056】
本発明による方法が粉末床に対してその場で行われることで、これを、一例が従来技術に記載されるMAM-PBF方法に容易に組み込むことが可能となる。別の一態様では、本発明は、粉末床の選択的固化による金属付加製造方法であって、本発明による方法20を用いて粉末床の酸素濃度を決定するステップを含む金属付加製造方法に関する。方法20は、MAM-PBF方法において少なくとも1回行われる。
【0057】
一実施形態によると、方法20は、金属付加製造方法の開始時、製造チャンバー中への不活性ガスの注入中、及び/又は金属付加製造方法の終了時の、製造された部品の冷却中に行われる。
【0058】
一実施形態によると、方法20のステップAは、走査と、粉末を塗布するステップとを同時に行うことによって行われる(以下参照)。
【0059】
本発明による方法20によって、直接オンラインで、機械内で、製造に直接用いられる全体的に代表的な試料に対して、粉末の品質を検査するための新しい機会を得ることができる。
【0060】
MAM-PBF方法においてその場で酸素濃度測定を行えることで、これまで不可能であった調節が可能となる。一実施形態では、MAM-PBF方法は、決定された酸素濃度の値の関数として、方法のパラメーターを適合させるステップを含む。これは例えば、レーザーの出力、レーザーの走査速度、又は2つのレーザー軌道間の距離の変更を意味し、これら全ては、材料に加えられる局所エネルギー密度に影響を与え、溶融又は蒸発によって除去するために、酸化物の層で取り囲まれる粉末に、より多くのエネルギーを加える必要がある。
【0061】
さらに、現在では、低品質の粉末、すなわち酸素濃度が高すぎる粉末の使用を回避することが可能である。一実施形態では、金属付加製造方法は、使用済みの粉末の酸素濃度が、あらかじめ決定された閾値C0を上回る場合に、使用済みの粉末を新しい粉末と混合するステップを含む。この混合ステップは、部品の2つの製造操作の間に行われる。
【0062】
別の一態様によると、本発明は、粉末床PBの形態を取る金属材料Matの粉末MPの酸素濃度Coxを決定するための装置10に関する。装置10は、粉末床の少なくとも一部の画像Imを生成するように構成された画像取り込み装置ICDを含み、画像Imはピクセルの組Piを含み、画像のピクセルは、3つの量(G1,G2,G3)を含む比色コードによりコード化された色を有する。装置10は、材料Matの関数であり、酸素濃度Coxと3つの量とを結び付けるあらかじめ定義された較正関数CFMatを用いて、画像のピクセルに関連する3つの量の値から粉末の酸素濃度を決定するように構成された第1のプロセシングユニットUT1も含む。
【0063】
本発明による装置10の第1の変形形態が
図6中に示され、ここで装置ICDは、光学系Optとマトリックス検出器MDとを含む。画像は一度に取り込まれる。画像取り込み装置は好ましくは高解像度ビデオカメラを含む。
【0064】
本発明による装置10の第2の変形形態では、装置ICDは、走査することによって粉末床の画像を取り込むフラットベッドスキャナを含む。
【0065】
別の一態様によると、本発明は、
図7中に示される粉末床の選択的固化による金属付加製造のためのシステム100に関する。
【0066】
システム100は、上に部品Paが製造される基材Subを収容することが意図されるタンクTkと、粉末を塗布するための装置PSDと、粉末を固化させるための装置CDとを含む。これは好ましくは、基材を垂直に移動させるための装置MDも含む。システム100は、本発明による装置10も含み、
図7中には第2の変形形態で示されており、装置ICDはフラットベッドスキャナScanを含む。システム100は、金属付加製造の実施を制御するように構成された第2のプロセシングユニットUT2も含む。第1のプロセシングユニットUT1は好ましくはUT2中に統合される。
【0067】
一実施形態では、システム100の画像取り込み装置ICDは、塗布装置PSDに接続されたフラットベッドスキャナScanを含む。次に、これに固定された粉末の塗布に用いられる装置とともに画像取り込みが行われ、このことは機械の配置に関して有利である。付加製造機械に取り付けられる、表面の検査を行うためのスキャナは、例えば文献の米国特許第10981225号明細書に既に記載されている。
【0068】
スキャナScanを有するシステム100のより詳細な実施が、
図8中に示されている。
【0069】
注記として、スキャナの理論は以下の通りである:可動ブロック上に配置されたランプは、文書/表面の表面全体を走査する。この操作は段階的に行われる。これによって、仮想的な線への文書/表面の分割が行われ、これはスキャナの水平解像度を決定するブロックの前進の1段分である。文書/表面が反射した光をセンサーが受け取り、各線を構成する点の色を画定する。フラットベッドスキャナ、CCD、及びCIS(コンタクトイメージセンサー)では2つの技術が用いられる。
【0070】
CCD型スキャナでは、ランプは白色光を放出し、次にこれはミラーの組によって線ごとに反射される。移動終了時、ビームはレンズを通過することで、光線を集束させ、それらは感光素子のストリップからなるCCDセンサーに集められる。文書/表面の色を再現するために、赤色、緑色、及び青色のフィルターがそれらを交互に覆う。センサーは、線ごとに受け取った光の量を測定し、これを電荷に変換し、次にこれはデジタルデータに変換される。
【0071】
CIS技術では、光源は赤色、緑色、及び青色の光を放出するダイオード(LED)からなり、センサーは、スキャナの幅全体にわたって配置され、LEDと同時に移動する。LEDから放出された3つの色の光は、円柱レンズによってセンサーに向けて集束する。LED、レンズ、及びセンサーは、同じ装置の一部であり、その幅にわたって1ピクセル当たり1つである。
【0072】
これら2つの技術は、本発明に適合しており、市販のスキャナは、一般に3つの色R、G、及びBに関して1~255でコード化されたピクセル当たりの比色情報を出力するが、CIS技術が、より良好な比色性能が得られるため好ましい。
【0073】
複数の解像度について試験が行われており、機能することが分かっている。好ましくは、粒子のサイズを解像できる、典型的には2400dpiに等しい、又はさらには4800dpiに等しい高解像度が、粉末床の色のより忠実な測定のためには好ましい。塗布装置の速度が比較的速いので(例えば50mm/s)、一実施形態では、画像取り込みは、塗布装置に固定されたスキャナによって、粉末が適切に塗布される間ではなく、塗布装置が高解像度に適合する速度(例えば0.16mm/s)でその最初の位置に戻るときに行われる。
【0074】
高解像度が好ましいが、その理由は、粒子のサイズを解像することが可能となり、粉末床の劣化は均一ではなく、表面にわたって分散する着色粒子からなるからである。
【0075】
本発明による方法20を実施するための較正関数FCMatの決定の実験例によって示される方法が次に記載される。
【0076】
最初に、各試料が異なる既知の酸素濃度を有する、利用可能な複数の粉末試料が必要である。
【0077】
SS316Lステンレス鋼粉末が考慮され、オーブン中で時間及び温度の種々の組み合わせに試料を供することによって、この粉末の種々の酸化が得られる。次に、当業者に周知の不活性ガス中で溶融させる(不活性ガス溶融)方法によってex situで酸素濃度を測定する。低濃度の場合、粉末の色は、灰色から、次にオレンジ色/褐色の間で変化し、その後濃度が増加すると粉末はピンク色になり、次に青色になることが、目で見て分かる。
【0078】
次に各試料の画像を生成し、3つの量(G1、G2、G3)を含む比色コードによって関連する平均色を決定する。関連する酸素濃度値を有する色は、較正データとして認識される。
【0079】
この測定を試料に対して4800dpiの解像度を有するCanon CIS型スキャナを用いて行い、保存された画像の全てのピクセルで色を測定した。次に、種々のピクセルの測定値から、R、G、及びBの平均値を計算した。
【0080】
図9は、[200,2500]wppmの対象の範囲内の酸素濃度を有するように作製した22個の試料の較正データを示しており、試料の種々の濃度に関連する3つの成分R、G、及びB(それぞれ1~255でコード化される)の強度を表している。
【0081】
例として、22個の中から選択した1~7の番号を付けた7つの試料に関連する色(以下の表I参照)を計算し、色を表すために一般に使用される比色空間CIExy 1931で
図10に示している。
【0082】
【0083】
増加していく酸素濃度を有する316Lステンレス鋼粉末の7つの試料に関連する7つの色のそれぞれの位置から、対象のCox範囲にわたって色は実際に異なり、灰色からオレンジ色、次にピンク色から青色に変化することが分かる。
【0084】
最後に、較正データに基づく回帰によって、較正関数が決定される。一次又は二次多項式回帰が好ましくは用いられ、良好な結果が得られている。
【0085】
変数R、G、及びBは、以下の式中にそれぞれx、y、及びzで示される。
【0086】
図9からのデータに適用される第1の例では、(1,x,y,z,xy,xz,yz,x
2,y
2,z
2)のタイプの多項式を考慮した回帰によって較正関数CF1
Matが決定され:
CF1
Mat=4036-49x+0.24x
2+45y-0.60xy+0.05y
2-18z+0.3xz+0.36yz-0.40z
2
が得られた。
【0087】
この第1の回帰を用いて、較正決定係数R2=0.99824が計算された。
【0088】
図9からのデータに適用される第2の例では、(1,x,y,z,xy,xz,yz)のタイプの多項式を考慮した回帰によって較正関数CF2
Matが決定され:
CF2
Mat=6117-95x+178y-0.77xy-127z+1.6xz-0.77yz
が得られた。
【0089】
この第2の回帰を用いて、係数R2=0.99642が計算された。
【0090】
図9からのデータに適用される第3の例では、(1,x,y,z,x
2,y
2,z
2)のタイプの多項式を考慮した回帰によって較正関数CF3
Matが決定され:
CF3
Mat=2906+13x-0.30x
2-2.5y+0.40y
2-6.22z-0.22z
2
が得られた。
【0091】
この第3の回帰を用いて、係数R2=0.99676が計算された。
【0092】
R2の値が1に非常に近いことから、これら3つの回帰から良好な結果が得られることが分かる。
【0093】
上記の較正関数CF1Matを用いて、本発明による方法20の試験を行った。このために、新しい316Lステンレス鋼粉末(R0)と、MAM-PBFシステム(レーザー溶融による)で使用され、1回(R1)、5回(R5)、10回(R10)、及び15回(R15)の種々の回数再循環された粉末との試料が利用可能であった。この再循環は、前述のDelacroix et al.による刊行物中の研究の主題であり、トレイ上のいくつかの部品の粉末床に対するレーザー溶融による製造に対応し、部品中で固化していない全ての粉末は回収され、最も粗い粒子を除去するためその粉末のふるい分けが行われ、このふるい分けされた粉末は、新しい粉末を加えることなく、新しい製造サイクルのために機械に再導入される。
【0094】
粉末床は、機械内を通過する間に走査される。これらの走査のデジタルズームによって、粒子間で変化する粒子の不均一構造が強調され、R15の走査において異なる色の酸化物で被覆された多数の粒子が示される。
【0095】
較正関数の決定、及び引き続く粉末の特性決定のために、同じ画像取り込み装置を使用することが好ましい。
【0096】
それぞれの粉末床R0~R15の走査によって生成された画像から、方法1及び方法2を用いて酸素濃度を決定し、不活性ガス中での溶融によりex situで行った測定と比較した。
図11は、得られたCoxの種々の値を示している。
【0097】
本発明による方法を用いて得られたCoxの値は、粉末がいっそう再利用される場合に酸素濃度が増加する傾向にうまく従っていることが分かる。
【0098】
本発明による方法(方法1及び2)によって得られた結果が、ex situ測定と完全に整合しているという顕著な結果が得られている。本発明による方法1及び2を用いた結果は、ex situの結果より最大で10~15wppmまでわずかに高いが、実質的に常に化学分析値の標準偏差内にある。
【0099】
別の良好な結果は、第2の方法によって、第1の方法を用いて得られた結果に非常に近い結果が得られることである(5wppm未満の差)。したがって、第2の方法単独を粉末床の走査の分析に利用することができ、その理由は、この方法では、ほぼ瞬間的に酸素濃度結果が得られるからである(100mm2のゾーンの場合は70ms/10cm2のゾーンの場合は7sでコード化が実施される)。にもかかわらず第1の方法も実施可能であり、より厳密である。
【0100】
上記説明のように、付加製造における粉末の品質を監視するための比色分析による酸素の測定が、予測可能であり、従来の測定と同等であることは、先験的に明らかではなかった。さらに、粒子周囲の膜厚によって一義的に色が決定されることで開始されることにある理論的方法は、必ずしも全体的に正確ではなく、本発明による方法によって、非常に再循環された粉末(R10及びR15)で正確な酸素濃度結果が得られることは、それ自体注目に値し、驚くべきことである。
【0101】
さらに、方法における酸化は、不活性ガス(一般に、アルゴン、窒素、又はヘリウム)雰囲気中、非常に低い酸素分圧と、不明で均一ではない粉末がさらされる温度とで行われる。したがって、酸素と、一定温度の空気中のオーブン中で制御された酸化によって生じる色との間の相関(較正関数の決定のため)が、粉末床に対するレーザー溶融プロセス中の酸化のため、着色粒子で見られるものと同様の値となりうることは、さらに明らかなことではなかった。
【0102】
本発明による方法の堅牢性をさらに試験するために、「人工的に」劣化させた粉末の試料の分析も行った。1580wppmのL1と、2350wppmのL2との異なる酸素レベルでオーブン中で酸化させた粉末を異なる割合(5及び10重量%)で含む新しい粉末から混合物を作製した。したがって4つの試料が存在した:
試料[L1-5%]:95%の新しい粉末-レベルL1まで酸化させた5%の粉末
試料[L1-10%]:90%の新しい粉末-レベルL1まで酸化させた10%の粉末
試料[L2-5%]:95%の新しい粉末-レベルL2まで酸化させた5%の粉末
試料[L2-10%]:90%新しい粉末-レベルL2まで酸化させた10%の粉末
【0103】
図12は、本発明による方法の方法1及び2、不活性ガス中の溶融によるex situ方法、並びに理論値を用いて4つの試料で得た濃度Coxの結果を示している。これらの理論値は、2つの構成要素の重量分率及び酸素濃度に基づく粉末混合物の予想酸素濃度を表している。
【0104】
4つの試料の不活性ガス中の溶融による測定値は、理論的に計算した値とほぼ完全に一致している。
【0105】
本発明による方法1及び2を用いて得られた結果に関して、両方の方法では、化学分析による値に対してわずかに過大評価された値となる。これらの傾向は依然として維持され、これら2つの方法の結果は、この場合も実質的に同じである。被覆中の酸化粒子の特定の割合の場合、Coxの過大評価はL1試料の場合により顕著となる。L1試料は薄いオレンジ色の粒子からなり、一方、L2試料は青色の粒子を含む。着色粒子の周辺部は、取得画像中でより暗く見えることが分かり、このことが過大評価につながるのかもしれない。L2酸化粒子は既に比較的暗く、エッジ効果はあまり顕著ではなく、色のばらつきが小さく、このことによって、L2混合物の場合に測定される差がより小さくなることを説明できる。さらに、特定のレベルの場合、この差は、10%の着色粒子を有する試料の場合により大きくなる。着色粒子数が増加すると、より多く存在し、したがってより発散して反映されるエッジ効果が誘発される。にもかかわらず、本発明による方法によって、異なる酸化の粒子の混合物を含む粉末の場合に現実に近いCoxの評価が可能となることは、注目すべきことで非常に驚くべきことでもある。
【符号の説明】
【0106】
10 装置
100 システム
20 方法
CD 固化装置
CFMat 較正関数
Cox 酸素濃度
ICD 画像取り込み装置
Im 画像
Mat 金属材料
MP 金属粉末
P ピクセルの組
PB 粉末床
PSD 粉末塗布装置
Scan フラットベッドスキャナ
Tk タンク
UT1 第1のプロセシングユニット
UT2 第2のプロセシングユニット
【外国語明細書】