(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168291
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】ベロー法またはダウンドロー法によりガラス管を製造するための装置、ベロー法またはダウンドロー法によりガラス管を製造するための方法、およびガラス管
(51)【国際特許分類】
C03B 7/22 20060101AFI20231116BHJP
C03C 3/083 20060101ALI20231116BHJP
C03C 3/085 20060101ALI20231116BHJP
C03C 3/087 20060101ALI20231116BHJP
C03C 3/091 20060101ALI20231116BHJP
C03C 3/093 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
C03B7/22
C03C3/083
C03C3/085
C03C3/087
C03C3/091
C03C3/093
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2023078387
(22)【出願日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】22173006
(32)【優先日】2022-05-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(71)【出願人】
【識別番号】504299782
【氏名又は名称】ショット アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SCHOTT AG
【住所又は居所原語表記】Hattenbergstr. 10, 55122 Mainz, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シュテファン トラツキー
(72)【発明者】
【氏名】フォルカー トリンクス
(72)【発明者】
【氏名】ユルゲン エクル
(72)【発明者】
【氏名】トーマス メナー
(72)【発明者】
【氏名】トーマス ツィマート
【テーマコード(参考)】
4G062
【Fターム(参考)】
4G062AA01
4G062BB01
4G062DA06
4G062DA07
4G062DB02
4G062DB03
4G062DB04
4G062DC01
4G062DC02
4G062DC03
4G062DC04
4G062DD01
4G062DE01
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4G062EA02
4G062EA03
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4G062KK07
4G062KK10
4G062MM01
4G062NN29
(57)【要約】 (修正有)
【課題】外径変動の少ないベロー法またはダウンドロー法によるガラス管の製造装置、方法およびガラス管の提供。
【解決手段】溶融ガラスを排出するための出口開口部5を有する溶融物供給装置3、およびシャフト11と成形本体13とを有する成形マンドレル9を有し、シャフトは、シャフトと出口開口部の周縁部との間の出口環状路15を形成する出口開口部を通って延在しているため、溶融ガラスは、溶融物供給装置から出口環状路を通って成形本体を覆うように流れ、それにより中空ガラス延伸ストランド19を形成することができ、成形本体は、シャフトの下端部から軸線方向に長さXに沿って延在し、かつ円錐形の外面を有する第1の部分21、および第1の部分の下端部から軸線方向に長さYに沿って延在し、かつ外径Zを有する円筒形の外面を有する第2の部分を有し、X/Z比は0.1~0.5であり、Y/Z比は0.02~0.35である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベロー法またはダウンドロー法によりガラス管を製造するための装置であって、
溶融ガラスを排出するための出口開口部を有する溶融物供給装置、および
シャフトと成形本体とを有する成形マンドレル
を有し、
前記シャフトは、前記シャフトと前記出口開口部の周縁部との間の出口環状路を形成する前記出口開口部を通って延在しているため、前記溶融ガラスは、前記溶融物供給装置から前記出口環状路を通って前記成形本体を覆うように流れ、それにより中空ガラス延伸ストランドを形成することができ、
前記成形本体は、
前記シャフトの下端部から軸線方向に長さXに沿って延在し、かつ円錐形の外面を有する第1の部分、および
前記第1の部分の下端部から軸線方向に長さYに沿って延在し、かつ外径Zを有する円筒形の外面を有する第2の部分
を有し、
X/Z比は0.1~0.5であり、Y/Z比は0.02~0.35である、
装置。
【請求項2】
前記第1の部分および前記第2の部分が、軸線方向で直接連続しており、共通の中心軸線を有し、中空であり、かつ/または一体に形成されており、前記第1の部分の最大外径が前記第2の部分の外径に等しく、前記外径Zが80mm以上であり、
かつ/または
前記成形マンドレルが、軸線方向に調節可能であり、かつ/または相対回動不能である、請求項1記載の装置。
【請求項3】
ベロー法またはダウンドロー法によりガラス管を製造するための方法であって、溶融ガラスが、溶融物供給装置から前記溶融物供給装置の出口開口部を通って成形本体を覆うように流れ、それにより中空ガラス延伸ストランドを形成し、
前記成形本体は、
前記シャフトの下端部から軸線方向に長さXに沿って延在し、かつ円錐形の外面を有する第1の部分、および
前記第1の部分の下端部から軸線方向に長さYに沿って延在し、かつ外径Zを有する円筒形の外面を有する第2の部分
を有し、
X/Z比は0.1~0.5であり、Y/Z比は0.02~0.35である、
方法。
【請求項4】
前記第1の部分および前記第2の部分が、軸線方向で直接連続しており、共通の中心軸線を有しており、中空であり、かつ/または一体に形成されており、前記第1の部分の最大外径が前記第2の部分の外径に等しく、かつ/または前記外径Zが80mm以上である、請求項3記載の方法。
【請求項5】
中心軸線を有するガラス管であって、
前記ガラス管について、前記中心軸線を含み、かつ前記中心軸線に対して平行な特定の断面を規定することができ、
前記特定の断面内で、前記中心軸線に沿って任意に選ばれた2つの第1および第2の軸線方向位置x1およびx2における前記ガラス管の外径d1およびd2の各対について、
|(d2-d1)/(x2-x1)|×(106mm)/d1
の関係が60以下である、
ガラス管。
【請求項6】
前記関係が、50以下、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、最も好ましくは20以下であり、
前記管の長さを乗算した前記関係が、90000以下、好ましくは750000以下、より好ましくは500000以下、最も好ましくは300000以下であり、
かつ/または、
前記管の前記長さおよび前記直径d1をそれぞれ乗算した前記関係が、40000000以下、好ましくは30000000以下、より好ましくは20000000以下、最も好ましくは10000000以下である、
請求項5記載のガラス管。
【請求項7】
中心軸線を有するガラス管であって、
前記ガラス管について、前記中心軸線を含み、かつ前記中心軸線に対して平行な特定の断面を規定することができ、
前記特定の断面内で、前記中心軸線に沿って任意に選ばれた2つの軸線方向位置x1およびx2における前記ガラス管の外径d1およびd2の各対について、
(i)前記外径の相対変化、|(d2-d1)/d2|は、特にd2>d1の場合、0.035以下、好ましくは0.03以下、好ましくは0.025以下、より好ましくは0.02、より好ましくは0.015、最も好ましくは0.01であり、
かつ/または
(ii)d1/d2比は、d2>d1の場合、0.95以上、好ましくは0.96以上、好ましくは0.97以上、より好ましくは0.98以上、最も好ましくは0.99以上である、
ガラス管。
【請求項8】
(i)前記管の長さを乗算した前記外径の相対変化が、50以下、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、最も好ましくは20以下、最も好ましくは10以下、最も好ましくは5以下であり;
(ii)前記管の長さを乗算した前記d1/d2比が、1400以上、好ましくは1450以上、より好ましくは1500以上、最も好ましくは1550以上であり;
(iii)前記管の長さおよび直径d1をそれぞれ乗算した前記外径の相対変化が、14000以下、好ましくは11000以下、より好ましくは8000以下、最も好ましくは6000以下、最も好ましくは4000以下であり;
かつ/または
(iv)前記管の長さおよび直径d1をそれぞれ乗算した前記d1/d2比が、800000以上、好ましくは700000以上、より好ましくは650000以上、最も好ましくは600000以上である、
請求項5から7までのいずれか1項記載のガラス管。
【請求項9】
前記中心軸線に沿ったx1とx2との間の距離が、(i)前記ガラス管の全長の半分以下、または(ii)400mm以上、好ましくは500mm以上、好ましくは600mm以上、好ましくは700mm以上、好ましくは800mm以上、好ましくは1000mm以上、好ましくは1200mm以上である、請求項5から7までのいずれか1項記載のガラス管。
【請求項10】
d1およびd2がそれぞれ、80mm以上、好ましくは90mm以上、好ましくは100mm以上、好ましくは120mm以上、好ましくは150mm以上、好ましくは200mm以上、好ましくは220mm以上、好ましくは250mm以上、好ましくは300mm以上、好ましくは320mm以上、好ましくは350mm以上、好ましくは400mm以上、好ましくは420mm以上、好ましくは450mm以上であり、かつ/または1000mm以下、好ましくは700mm以下、好ましくは500mm以下、好ましくは300mm以下、好ましくは200mm以下、好ましくは100mm以下である、請求項5から8までのいずれか1項記載のガラス管。
【請求項11】
前記第1の軸線方向位置および前記第2の軸線方向位置がそれぞれ、前記ガラス管の2つの端部から、前記ガラス管の長さの少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%の距離にある、請求項5から9までのいずれか1項記載のガラス管。
【請求項12】
前記ガラス管が、少なくとも0.50m、少なくとも1.00m、少なくとも1.5m、少なくとも2.00m、少なくとも2.5m、少なくとも3.00m、少なくとも3.5m、または約1.5mの長さを有する、請求項5から10までのいずれか1項記載のガラス管。
【請求項13】
前記ガラス管が、あらゆる位置において、0.3mm~20mm、好ましくは1mm~15mm、好ましくは2mm~15mm、好ましくは2mm~10mmの壁厚を有する、請求項5から11までのいずれか1項記載のガラス管。
【請求項14】
前記ガラスが、
-5.0~0.0の範囲のA;
4000~12000の範囲のB;および
1℃~250℃の範囲のT0
のVFT定数を有する、請求項5から12までのいずれか1項記載のガラス管。
【請求項15】
前記ガラス管のガラスがホウケイ酸ガラスである、請求項5から13までのいずれか1項記載のガラス管。
【請求項16】
前記ガラス管のガラスが、
【表1】
の成分を重量パーセント(重量%)で含む、請求項5から14までのいずれか1項記載のガラス管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ベロー法またはダウンドロー法によりガラス管を製造するための装置、ベロー法またはダウンドロー法によりガラス管を製造するための方法、およびガラス管に関する。
【0002】
発明の背景
外径が大きいガラス管は、一般に、ベロー法またはダウンドロー法を使用して延伸される。このプロセスにおいて、溶融ガラスは、成形マンドレルに含まれる成形本体を覆うように流れる。プロセスの間、成形本体の分離縁部において形成されるガラス延伸ストランドは、延伸機により下方に延伸され、冷却される。ガラス延伸ストランドが所定の長さに達したとき、所定の長さの管部分をガラス延伸ストランドから切り離し、水平方向での最終処理に送る場合がある。延伸機の延伸ローラにより加えられる力に加え、延伸プロセスの鉛直方向の向きにより、ガラス延伸ストランド自体の重さもストランドおよび管形成プロセスに作用するが、ガラス延伸ストランド自体の重さは、ガラス延伸ストランドの端部における個々の部分の切断のために、連続的に変動する。
【0003】
ガラス延伸ストランドの重量のこのような変動は、ガラス延伸ストランドが成形本体の分離縁部の領域に形成される場合、ガラス延伸ストランドの外径および壁厚に連続的に影響する。ベロー法またはダウンドロー法の場合、これは、管軸線に沿った外径の振れ経路につながる。「外径振れ」の長さは、管部分の長さに対応する場合がある。「外径振れ」の振幅は、製造されたガラス管の幾何学的品質の尺度である。したがって、「外径振れ」の振幅、ひいては全体としての外径変動をさらに低減することが、一般的に望まれている。
【0004】
したがって、本発明の目的は、非常に均一で大きな外径を有するガラス管を製造することを可能にする手段を提供することによって、上述した技術水準における欠点を克服することである。さらに、本発明の目的は、高品質のガラス管を提供することである。
【0005】
発明の説明
課題は本発明の第1の態様によって解決される。第1の態様によれば、ベロー法またはダウンドロー法によりガラス管を製造するための装置であって、溶融ガラスを排出するための出口開口部を有する溶融物供給装置、およびシャフトと成形本体とを有する成形マンドレルを有し、
シャフトは、シャフトと出口開口部の周縁部との間の出口環状路を形成する出口開口部を通って延在しているため、溶融ガラスは、溶融物供給装置から出口環状路を通って成形本体を覆うように流れ、それにより中空ガラス延伸ストランドを形成することができ、
成形本体は、
シャフトの下端部から軸線方向に長さXに沿って延在し、かつ円錐形の外面を有する第1の部分、および
第1の部分の下端部から軸線方向に長さYに沿って延在し、かつ外径Zを有する円筒形の外面を有する第2の部分を有し、
X/Z比は0.1~0.5であり、Y/Z比は0.02~0.35である、
装置が提案される。
【0006】
したがって、本発明は、円錐形部分と円筒形部分とのそれぞれの寸法が最適化された成形本体を提供することにより、ガラス流の「平滑化」を達成することができ、その結果、円筒形部分上により均一なガラス層を形成することができる、という驚くべき発見に基づいている。したがって、延伸されたガラス延伸ストランド中のガラス塊の分布もより均一となり、ガラス延伸ストランドの軸線方向における外径振れが大幅に低減される。よって、外径が大きいガラス管、例えば外径が90mmを超えるガラス管であっても、より均一な外径を有するガラス管を得ることができる。
【0007】
本発明者らは、いかなる理論にもとらわれることなく、提案された寸法が、成形本体上の流動ガラスにより均一な温度分布をもたらし、ひいては、円筒形部分上のガラス層の均一な形成が改善されると考える。
【0008】
この理論は、円錐形部分の直径に対する高さの比が大きすぎる場合(すなわち、溶融ガラスが沿って流れる円錐形部分の外面が急峻すぎる場合)、必要とされる冷却能力またはガラス層の厚さを成形本体の表面上で達成することは最早不可能であり、製造されるガラス管の特定の外径および/または壁厚を達成することができないという観察結果に裏付けされている。
【0009】
しかしながら、円錐形部分の直径に対する高さの比が低すぎる場合(すなわち、溶融ガラスが沿って流れる円錐形部分の外面が平坦すぎる場合)、ガラス層からの熱放射が増加し、よってその温度はさらに低下し、関連する粘度は増加する。これにより、後続の円筒表面上でのガラス材料の流れが遅くなり、成形本体の、今や極めて平坦である板状の領域において、ガラス塊の分布は不均一となる。したがって、この場合、ガラス塊は、成形本体の円筒形部分上に不均一に流れ、これにより円筒表面上で不均一なガラス塊分布が生じる。
【0010】
円筒形部分は、管が引き出される前に「導かれる」場所であるので、この部分は、したがって、円錐形部分と共に、ガラス流を安定化させる上で重要な役割を有すると認められている。
【0011】
したがって、提案された設計に従って成形本体が提供されると、結果的に、ガラス流の全体的な安定性に対して有利な効果を及ぼすことになる。したがって、ガラス層に導入される「波」がより少なくなり、そのため、ガラス延伸ストランドおよび製造されたガラス管の外径の振れの振幅が低減される。
【0012】
一実施形態において、X/Z比は、0.1~0.3、または0.2~0.5である。
【0013】
一実施形態において、X/Z比は、0.15以上、好ましくは0.2以上、好ましくは0.25以上、好ましくは0.3以上、好ましくは0.35以上である。
【0014】
一実施形態において、X/Z比は、0.45以下、好ましくは0.4以下、好ましくは0.35以下、好ましくは0.3以下、好ましくは0.25以下、好ましくは0.2以下、好ましくは0.15以下である。
【0015】
一実施形態において、Y/Z比は、0.02~0.2、または0.15~0.35である。
【0016】
一実施形態において、Y/Z比は、0.03以上、好ましくは0.05以上、好ましくは0.1以上、好ましくは0.15以上、好ましくは0.2以上、好ましくは0.25以上、好ましくは0.3以上である。
【0017】
一実施形態において、Y/Z比は、0.3以下、好ましくは0.25以下、好ましくは0.2以下、好ましくは0.15以下、好ましくは0.1以下、好ましくは0.05以下である。
【0018】
外径Zは、90mm以上、好ましくは100mm以上、好ましくは120mm以上、好ましくは150mm以上、好ましくは200mm以上、好ましくは220mm以上、好ましくは250mm以上、好ましくは300mm以上、好ましくは320mm以上、好ましくは350mm以上、好ましくは400mm以上、好ましくは420mm以上、好ましくは450mm以上、および/または1000mm以下、好ましくは700mm以下、好ましくは500mm以下、好ましくは400mm以下、好ましくは300mm以下、好ましくは200mm以下、好ましくは100mm以下であってもよい。
【0019】
好ましくは、装置は、溶融ガラスが溶融物供給装置から出口環状路を通って、成形本体を覆うように主延伸方向に沿って流れることができるように設計されている。主延伸方向は、ガラスストランドが延伸機によって成形本体から延伸される方向であってもよい。装置の使用中、主延伸方向は、それぞれ、鉛直方向および/または重力に対して平行な方向であってもよい。
【0020】
好ましくは、円錐形の外面は、延伸方向に円錐状に延在している。
【0021】
ベロー法およびダウンドロー法の一般的な原理は当技術分野において知られているので、それらをここでさらに詳細に説明する必要はない。そのような製造プロセスにおいて、本発明で提案された装置を使用する場合は、溶融物供給装置から流れる溶融ガラスが、出口開口部から流出することが特に知られている。成形マンドレルは、出口開口部内に延在し、出口環状路を形成している。有利には、成形マンドレルは、上側部分、シャフト、中央円錐部分、第1の部分、および下側円筒部分、第2の部分といった複数の部分を有する。成形マンドレルの円錐領域の下縁の直径は、好適には、出口開口部の内径よりも大きな直径を有しているため、第1の部分の円錐領域の表面および第2の部分の円筒領域は、出口環状路の下に位置している。次いで、溶融ガラスは、溶融物供給装置から鉛直方向に(かつ/または主延伸方向に沿って)、出口開口部の縁部とシャフトとの間の出口環状路を通って流出することができ、第1の部分の円錐領域の表面上を、かつ第2の部分の円筒領域の周面を覆うようにその下端部(「分離縁部」)まで、ガラス層として半径方向外向きに流れ続ける。
【0022】
一実施形態において、第1の態様としては、第1の部分および第2の部分が、軸線方向で直接連続しており、共通の中心軸線を有し、中空であり、かつ/または一体に形成されており、第1の部分の最大外径が第2の部分の外径に等しく、外径Zが80mm以上であり、かつ/または成形マンドレルが軸線方向に調節可能であり、かつ/または相対回動不能であることが好ましい場合がある。
【0023】
第1の部分および第2の部分が中空である場合、加工のための空気が成形マンドレルまたはその一部を通して吹き込まれ、第2の部分の円筒形部分の端部において成形マンドレルを出るため、成形本体から引き出されたガラスストランドは、さらに安定化させることができる。もちろん、成形マンドレルのシャフトも中空であってよい。
【0024】
第1および第2の部分が一体に形成されれば、頑丈な成形本体を提供することができる。さらに、円錐形部分と円筒形部分との間の移行部は、これにより、滑らかに設計することができる。また、製造コストを低減することもできる。
【0025】
好ましくは、成形マンドレル、特に成形本体は、溶融物供給装置に対して固定された位置にあり、かつ/または相対回動不能である。
【0026】
課題は、本発明の第2の態様によって解決される。本発明の第2の態様としては、ベロー法またはダウンドロー法によりガラス管を製造する方法であって、溶融ガラスが、溶融物供給装置から溶融物供給装置の出口開口部を通って成形本体を覆うように流れ、それにより中空ガラス延伸ストランドを形成し、
成形本体は、
シャフトの下端部から軸線方向に長さXに沿って延在し、かつ円錐形の外面を有する第1の部分、および
第1の部分の下端部から軸線方向に長さYに沿って延在し、かつ外径Zを有する円筒形の外面を有する第2の部分を有し、
X/Z比は0.1~0.5であり、Y/Z比は0.02~0.35である、
方法、が提案される。
【0027】
本発明の第1の態様の装置に関する上記説明は、文脈から別段の指示がない限り、ここでその通り適用される。したがって、その説明をここで繰り返す必要はないが、上記説明を参照してもよい。
【0028】
成形本体は成形マンドレルに含まれていてもよい。成形マンドレルはシャフトを有していてもよい。好ましくは、成形マンドレルは、溶融物供給装置に対して固定された位置にあり、かつ/または相対回動不能である。
【0029】
一実施形態において、本発明の方法は、本発明の第1の態様による装置を提供することと、および/またはガラス延伸ストランドから、特にガラス延伸ストランドが所定の長さに達したときに、所定の長さの管部分を切り出すことを含んでもよい。本発明の他の態様によれば、この管部分はさらに冷却されてもよく、かつ/またはガラス管としてもよい。
【0030】
ベロー法またはダウンドロー法の一般的な原理は当技術分野において知られているので、それらをさらに詳細に説明する必要はない。特に、好ましくは(第1の部分の)円錐形部分の表面積を変化させることによって、成形本体におけるガラス材料の滞留時間を調節できることが知られている。これはまた、成形本体上のガラス材料の放射損失の変動につながることもあるので、ガラス材料の温度は上昇/低下し、かつ/またはその粘度は低下/上昇する。これにより、成形本体上のガラス材料の厚みを調整することができ、その結果、ガラス延伸ストランドの外径および/または壁厚を調整することができ、したがって、製造されるガラス管の外径および/または壁厚を調整することができる。好ましくは、成形本体の冷却能力が上昇するにつれて、より大きな外径寸法および/または壁厚寸法を有するガラス管の製造が可能となり、かつ/または引き出し能力が上昇することがある。
【0031】
好ましくは、溶融ガラスは、溶融物供給装置から溶融物供給装置の出口開口部を通り、主延伸方向に沿って成形本体を覆うように流れる。主延伸方向は、ガラスストランドが延伸機によって成形本体から延伸される方向であってもよい。ガラス管を製造している間、主延伸方向は、それぞれ、鉛直方向および/または重力に対して平行な方向であってもよい。
【0032】
一実施形態において、第2の態様としては、第1の部分および第2の部分が、軸線方向で直接連続しており、共通の中心軸線を有しており、中空であり、かつ/または一体に形成されており、第1の部分の最大外径が第2の部分の外径に等しく、かつ/または外径Zが80mm以上であることが好ましい場合がある。
【0033】
第1の部分および第2の部分が中空である場合、加工のための空気が成形マンドレルまたはその一部を通して吹き込まれ、第2の部分の円筒形部分の端部において成形マンドレルを出るため、成形本体から引き出されたガラスストランドは、さらに安定化させることができる。もちろん、成形マンドレルのシャフトも中空であってよい。
【0034】
第1および第2の部分が一体に形成されれば、頑丈な成形本体を提供することができる。さらに、円錐形部分と円筒形部分との間の移行部は、これにより、滑らかに設計することができる。また、製造コストを低減することもできる。
【0035】
外径Zは、90mm以上、好ましくは100mm以上、好ましくは120mm以上、好ましくは150mm以上、好ましくは200mm以上、好ましくは220mm以上、好ましくは250mm以上、好ましくは300mm以上、好ましくは320mm以上、好ましくは350mm以上、好ましくは400mm以上、好ましくは420mm以上、好ましくは450mm以上、および/または1000mm以下、好ましくは700mm以下、好ましくは500mm以下、好ましくは400mm以下、好ましくは300mm以下、好ましくは200mm以下、好ましくは100mm以下であってもよい。
【0036】
課題は、本発明の第3の態様によって解決される。本発明の第3の態様としては、中心軸線を有するガラス管であって、
上記ガラス管について、中心軸線を含み、かつ中心軸線に対して平行な特定の断面を規定することができ、特定の断面内で、中心軸線に沿って任意に選ばれた2つの第1および第2の軸線方向位置x1およびx2におけるガラス管の外径d1およびd2の各対について、
|(d2-d1)/(x2-x1)|×(106mm)/d1
の関係が60以下である、
ガラス管、が提案される。
【0037】
したがって、本発明は、本発明の第1の態様で提案する装置および/または本発明の第2の態様で提案する方法を用いれば、上記提案する関係によって規定された強度の要件を満たす幾何学的品質を有するガラス管を製造することが初めて可能となる、という驚くべき発見に基づいている。
【0038】
言い換えれば、本発明で提案するガラス管の外径は非常に均一であり、すなわち外径振れの振幅は、好ましく非常に低減されている。
【0039】
一実施形態において、上記関係は、0.1以上、好ましくは0.5以上、好ましくは1以上、好ましくは5以上、好ましくは10以上、好ましくは15以上、好ましくは20以上、好ましくは25以上、好ましくは30以上、好ましくは35以上、好ましくは40以上、好ましくは45以上、好ましくは50以上、好ましくは55以上である。
【0040】
例えば、上記関係は、0.1~60、好ましくは0.1~40、例えば0.1~30、または20~40、または20~60、例えば20~40、または30~60である。
【0041】
d1、d2、x1およびx2の値は、好ましくは、全てミリメートル単位である。
【0042】
好ましくは、本明細書で使用される「ガラス管」という用語は、中空ガラス体を指す。ガラス管は、典型的には、管腔を囲む壁と、2つの開放端部とを有する。
【0043】
好ましくは、本明細書で使用される「外径」という用語は、ガラス管の特定の断面内における外面上の2点間の最大距離を指し、この2点は、ガラス管の中心軸線に対して垂直であり、かつこれと交差する直線で結ばれる。ガラス管は、2つ以上の外径を有してもよい。
【0044】
好ましくは、本明細書で使用される「内径」という用語は、ガラス管の特定の断面内における内面上の2点間の最大距離を指し、この2点は、ガラス管の中心軸線に対して垂直であり、かつこれと交差する直線で結ばれる。ガラス管は、2つ以上の内径を有してもよい。
【0045】
好ましくは、本明細書で使用する「壁厚」という用語は、ガラス管の内面と外面との間の最短距離を表す。ガラス管は、2つ以上の壁厚を有してもよい。
【0046】
一実施形態において、第3の態様としては、上記関係が50以下、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、最も好ましくは20以下であり、管の長さを乗算した上記関係が90000以下、好ましくは750000以下、より好ましくは500000以下、最も好ましくは300000以下であり、かつ/または管の長さおよび直径d1をそれぞれ乗算した上記関係が40000000以下、好ましくは30000000以下、より好ましくは20000000以下、最も好ましくは10000000以下であることが、好ましい場合がある。
【0047】
一実施形態において、上記関係は35以下、好ましくは30以下、好ましくは25以下、好ましくは20以下、好ましくは15以下、好ましくは10以下、好ましくは5以下、好ましくは3以下、好ましくは1以下である。
【0048】
課題は、本発明の第4の態様によって解決される。本発明の第4の態様としては 中心軸線を有するガラス管であって、
上記ガラス管について、中心軸線を含み、かつ中心軸線に対して平行な特定の断面を規定することができ、
特定の断面内で、中心軸線に沿って任意に選ばれた2つの軸線方向位置x1およびx2におけるガラス管の外径d1およびd2の各対について、
(i)外径の相対変化、|(d2-d1)/d2|は、特にd2>d1の場合、0.035以下、好ましくは0.03以下、好ましくは0.025以下、より好ましくは0.02、より好ましくは0.015、最も好ましくは0.01であり、
かつ/または
(ii)d1/d2比は、d2>d1の場合、0.95以上、好ましくは0.96以上、好ましくは0.97以上、より好ましくは0.98以上、最も好ましくは0.99以上である、ガラス管、が提案される。
【0049】
したがって、本発明は、本発明の第1の態様で提案する装置および/または本発明の第2の態様で提案する方法を用いれば、上記提案する関係によって規定された強度の要件を満たす幾何学的品質を有するガラス管を製造することが初めて可能となる、という驚くべき発見に基づいている。
【0050】
言い換えれば、本発明で提案するガラス管の外径は非常に均一であり、すなわち外径振れの振幅は、好ましく非常に低減されている。
【0051】
一実施形態において、外径の相対変化は、0.027以下、好ましくは0.025以下、好ましくは0.023以下、好ましくは0.02以下、好ましくは0.017以下、好ましくは0.015以下、好ましくは0.013以下、好ましくは0.01以下、好ましくは0.007以下、好ましくは0.005以下、好ましくは0.003以下である。
【0052】
一実施形態において、外径の相対変化は、0.001以上、好ましくは0.005以上、好ましくは0.01以上、好ましくは0.015以上、好ましくは0.02以上、好ましくは0.025以上、好ましくは0.03以上である。
【0053】
一実施形態において、d1/d2比は、0.967以上、好ましくは0.97以上、好ましくは0.973以上、好ましくは0.975以上、好ましくは0.977以上、好ましくは0.98以上、好ましくは0.983以上、好ましくは0.985以上、好ましくは0.987以上、好ましくは0.99以上、好ましくは0.993以上、好ましくは0.995以上、好ましくは0.977以上である。
【0054】
一実施形態において、d1/d2比は、0.9999以下、好ましくは0.999以下、好ましくは0.99以下、好ましくは0.985以下、好ましくは0.98以下、好ましくは0.975以下、好ましくは0.97以下である。
【0055】
d1およびd2の値は、好ましくは、全てミリメートル単位である。
【0056】
一実施形態において、第3および/または第4の態様として、好ましくは
(i)管の長さを乗算した外径の相対変化が、50以下、好ましくは40以下、より好ましくは30以下、最も好ましくは20以下、最も好ましくは10以下、最も好ましくは5以下であり;
(ii)管の長さを乗算したd1/d2比が、1400以上、好ましくは1450以上、より好ましくは1500以上、最も好ましくは1550以上であり;
(iii)管の長さおよび直径d1をそれぞれ乗算した外径の相対変化が、14000以下、好ましくは11000以下、より好ましくは8000以下、最も好ましくは6000以下、最も好ましくは4000以下であり;
かつ/または
(iv)管の長さおよび直径d1をそれぞれ乗算したd1/d2比が、800000以上、好ましくは700000以上、より好ましくは650000以上、最も好ましくは600000以上である。
【0057】
前記関係は、外径が非常に均一なガラス管に特に有利であることが判明した。
【0058】
一実施形態において、第3および/または第4の態様として、中心軸線に沿ったx1とx2との間の距離が、(i)ガラス管の全長の半分以下、または(ii)400mm以上、好ましくは500mm以上、好ましくは600mm以上、好ましくは700mm以上、好ましくは800mm以上、好ましくは1000mm以上、好ましくは1200mm以上であることが好ましい場合がある。
【0059】
上記距離は、1500mm以上、好ましくは2000mm以上、好ましくは3000mm以上、好ましくは4000mm以上であってもよい。
【0060】
上記距離は、5000mm以下、好ましくは3000mm以下、好ましくは2000mm以下、好ましくは1500mm以下、好ましくは1000mm以下、好ましくは800mm以下、好ましくは500mm以下であってもよい。
【0061】
一実施形態において、第3および/または第4の態様として、d1およびd2がそれぞれ、80mm以上、好ましくは90mm以上、好ましくは100mm以上、好ましくは120mm以上、好ましくは150mm以上、好ましくは200mm以上、好ましくは220mm以上、好ましくは250mm以上、好ましくは300mm以上、好ましくは320mm以上、好ましくは350mm以上、好ましくは400mm以上、好ましくは、420mm以上、好ましくは450mm以上であり、かつ/または1000mm以下、好ましくは700mm以下、好ましくは500mm以下、好ましくは300mm以下、好ましくは200mm以下、好ましくは100mm以下であることが好ましい場合がある。
【0062】
それぞれの直径を有するガラス管は、非常に均一な外径にとって特に有利であることが判明していた。
【0063】
一実施形態において、第3および/または第4の態様として、第1の軸線方向位置および第2の軸線方向位置がそれぞれ、ガラス管の2つの端部から、ガラス管の長さの少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、好ましくは少なくとも20%、好ましくは少なくとも30%の距離にあることが好ましい場合がある。
【0064】
一実施形態において、第3および/または第4の態様として、ガラス管が、少なくとも0.50m、少なくとも1.00m、少なくとも1.5m、少なくとも2.00m、少なくとも2.5m、少なくとも3.00m、少なくとも3.5m、または約1.5mの長さを有することが好ましい場合がある。
【0065】
また、ガラス管は、少なくとも0.1m、好ましくは少なくとも0.3m、好ましくは少なくとも0.7m、好ましくは少なくとも1.3m、好ましくは少なくとも1.7m、好ましくは少なくとも2.3m、好ましくは少なくとも2.7m、好ましくは少なくとも3.3m、好ましくは少なくとも3.7mの長さを有する場合もある。
【0066】
また、ガラス管は、7m以下、好ましくは5m以下、好ましくは3m以下の長さを有する場合もある。
【0067】
好ましくは、ガラス管の長さは、ガラス管の中心軸線に沿って、例えば、ガラス管の一端から他端まで測定される。
【0068】
一実施形態において、第3および/または第4の態様として、ガラス管があらゆる位置において0.3mm~20mm、好ましくは1mm~15mm、好ましくは2mm~15mm、好ましくは2mm~10mmの壁厚を有することが好ましい場合がある。
【0069】
ガラス管は、異なる位置で異なる壁厚を有してもよい。しかしながら、各壁厚は、好ましくは、ここに提案する範囲内である。
【0070】
一実施形態において、第3および/または第4の態様として、ガラスが、-5.0~0.0の範囲のA;4000~12000の範囲のB;および1℃~250℃の範囲のT0のVFT定数を有することが好ましい場合がある。
【0071】
一般的に、フォーゲル・フルチャー・タンマン(VFT)方程式は、ガラスの特定の粘度を達成するのに必要とされる温度を計算するために使用される(DIN ISO 7884-2:1998-2を参照のこと):
lgη=A+B/T-T0
【0072】
VFT方程式において、ηは、粘度であり、AおよびBは、温度に依存しない、材料のパラメータであり、Tは、温度であり、T0は、フォーゲル温度である。A、BおよびT0は、任意の特定のガラスに対して一定である。
【0073】
例えば、Aは、-3.0~-1.0の範囲であり;Bは、4000~9000の範囲であり、かつ/またはT0は、200℃~250℃の範囲である。
【0074】
一実施形態において、ガラス管のガラスは、少なくとも4000、少なくとも4500、または少なくとも5000の値のBを有してもよい。任意で、Bは、12000まで、10000まで、または9000までの値であってもよい。T0は、少なくとも1℃、少なくとも10℃、少なくとも70℃、または少なくとも200℃であってもよい。実施形態において、T0は、250℃まで、または230℃までの範囲である。Aは、0未満、例えば、-0.5未満または-1.0未満であってもよい。一実施形態において、Aは、少なくとも-5.0、少なくとも-4.0または少なくとも-3.5である。好ましくは、Aは、-5.0~0.0または-4.0~0.0に到達してもよい。
【0075】
本発明のガラス管のガラスについて、Tgは、525℃~600℃の範囲にあってもよい。
【0076】
一実施形態において、第3および/または第4の態様として、ガラス管のガラスがホウケイ酸ガラスであることが好ましい場合がある。
【0077】
一実施形態において、第3および/または第4の態様として、ガラス管のガラスが、
【表1】
の成分を重量パーセント(重量%)で含むことが好ましい場合がある。
【0078】
ガラス成分の選択は、ガラス粘度の温度依存性に影響を及ぼす。例えば、一定量のSiO2を添加すると、VFT方程式におけるAの値が減少し、Bの値およびT0が増加する。以下の表に、VFT定数に対するガラス成分の影響をまとめる。表中、各ガラス成分の増加量により、「+」は、上昇効果を指し、「++」は、各定数が大きく上昇することを意味し、「-」は、低下効果を指し、「--」は、各定数が大きく低下することを意味する。
【0079】
【0080】
ガラスは、ガラスの総量に対して、少なくとも50重量%、好ましくは少なくとも55重量%、より好ましくは少なくとも60重量%、および最も好ましくは少なくとも65重量%の割合で、SiO2を含むことができる。SiO2は、ガラスマトリックス中の重要な網目形成成分であり、ガラス特性に影響を及ぼす。特に、SiO2は、ガラスの耐薬品性にとってとりわけ重要である。ガラス中のSiO2の含有量は、ガラスの総量に対して、最大90重量%、好ましくは最大85重量%、より好ましくは最大80重量%であってもよい。SiO2の含有量が多すぎると、ガラスの軟化点の大幅な上昇を招く場合がある。
【0081】
SiO2の他に、ガラスは、少なくとも1つの第2の網目形成成分を含んでもよい。ガラスは、さらなる網目形成成分として、B2O3を、ガラスの総量に対して、少なくとも3重量%、好ましくは少なくとも4重量%、より好ましくは少なくとも6重量%の割合で、含んでもよい。その網目形成特性により、B2O3は、ガラスの安定性を実質的に支える。B2O3含有量が少なすぎる場合、ホウケイ酸ガラス系に要求される安定性を保証することができない。それにもかかわらず、ガラス中のB2O3の含有量は、ガラスの総量に対して、最大20重量%、好ましくは最大15重量%、より好ましくは最大12重量%である。ガラス中のB2O3の含有量が多すぎる場合、粘度が著しく低下する可能性があるため、結晶化安定性の低下を受け入れなければならない。
【0082】
さらに、ホウケイ酸ガラスは、酸化アルミニウムを含むことができる。酸化アルミニウムの添加は、ガラス形成を改善するのに役立ち、一般的に耐薬品性をサポートする。ガラス中の酸化アルミニウムの割合は、ガラスの総量に対して、最大12重量%、好ましくは最大9重量%、より好ましくは最大7重量%であってもよい。しかしながら、酸化アルミニウムの含有量が多すぎる場合、結晶化する傾向が高まる。好ましくは、ガラス中の酸化アルミニウムの量は、ガラスの総量に対して、少なくとも1重量%、さらに好ましくは少なくとも2.5重量%、および最も好ましくは少なくとも4重量%である。
【0083】
ガラスは、ガラスの総量に対して、少なくとも3重量%、好ましくは少なくとも5重量%、およびより好ましくは少なくとも6重量%の割合で、アルカリ金属酸化物を含んでもよい。Na2OおよびK2Oの両方が、ガラスに含まれていてもよい。
【0084】
アルカリ金属酸化物はガラスの溶融性を改善するので、経済的な製造を可能にする。ガラスを製造する際、アルカリ金属酸化物は融剤として作用する。ガラス中のアルカリ金属酸化物の合計は、20重量%、好ましくは13重量%、およびより好ましくは10重量%の値を超えるべきではない。アルカリ金属酸化物の含有量が多すぎると、ガラスの耐候性が弱まることがあり、このため、その用途の範囲が、大きく制限される場合がある。
【0085】
任意に、アルカリ金属酸化物(例えば、Na2O、K2O、Li2O)の総重量に対するアルカリ土類金属酸化物(例えば、CaO、BaO、SrOおよびMgO)の総重量の比であるRO/R2O比は、少なくとも0.10、少なくとも0.15または少なくとも0.20である。この比の値が最小であると、ガラスの粘度プロファイルを損なうことなく良好な耐加水分解性を得るのに役立つ。
【0086】
ガラス中のNa2Oの割合は、ガラスの総量に対して、少なくとも3重量%、好ましくは少なくとも5重量%、およびより好ましくは少なくとも6重量%であってもよい。ただし、ガラス中のNa2Oの割合は、ガラスの総量に対して、最大15重量%、好ましくは最大10重量%、およびより好ましくは最大8重量%に制限される場合がある。
【0087】
ガラス中のK2Oの割合は、ガラスの総量に対して、最大5重量%、好ましくは最大3重量%、およびより好ましくは2重量%であってもよい。
【0088】
ホウケイ酸ガラスは、上記成分に加えて、添加剤も含有することができる。これらの添加剤は、例えば、アルカリ土類金属酸化物(例えば、BaO、CaO)であってもよく、これらはガラスの流れおよび溶融特性または耐薬品性を操作するために、ガラスに添加してもよい。付加的にまたは代替的に、ガラスは、d族金属の酸化物、例えば、酸化鉄(FeO、Fe2O3またはFe3O4)を含有してもよい。酸化鉄は、ガラスの主成分の一般的な不純物、特に砂の不純物である。
【0089】
ガラス中のBaOの割合は、ガラスの総量に対して、最大6重量%、好ましくはそれぞれ最大4重量%、およびより好ましくは3重量%であってもよい。
【0090】
ガラス中のCaOの割合は、ガラスの総量に対して、最大5重量%、好ましくはそれぞれ最大3重量%、およびより好ましくは2重量%であってもよい。
【0091】
ガラス中のFe2O3の割合は、ガラスの総量に対して、最大3重量%、好ましくはそれぞれ最大2重量%、およびより好ましくは1.5重量%であってもよい。
【0092】
ガラス組成は、二酸化チタンを含んでもよい。ガラス中のTiO2の含有量は、ガラスの総量に対して、最大10重量%、好ましくは最大8重量%、およびより好ましくは最大6重量%である。TiO2の含有量が非常に多いと、望ましくないガラスの結晶化が生じる場合がある。
【0093】
一実施形態において、ガラスは、重量パーセントで:
【表3】
を含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0094】
本発明の様々な態様は、添付の概略的な図面に照らして読めば、後述する好ましい実施形態の詳細な説明から当業者に明らかになるであろう。
【
図1】本発明の第1の態様による装置の概略的な断面図を示す図である。
【
図2】本発明の第2の態様による方法のフローチャートを示す図である。
【
図3a】本発明の第3の態様による概略的なガラス管を示す図である。
【
図3b】特定の断面内における
図3aのガラス管の切断図を示す図である。
【
図4a】本発明の第4の態様による概略的なガラス管を示す図である。
【
図4b】特定の断面内における
図4aのガラス管の切断図を示す図である。
【0095】
図面の詳細な説明
図1は、本発明の第1の態様による装置1の概略的な断面図を示す図である。
【0096】
装置1は、溶融物供給装置3に保持された溶融ガラス7を排出するための出口開口部5を有する溶融物供給装置3、およびシャフト11と成形本体13とを有する成形マンドレル9を備える。
【0097】
シャフト11は、出口開口部5を通って延在し、これにより、シャフト11と、出口開口部5の周縁部17との間に出口環状路15を形成する。したがって、溶融ガラス7は、溶融物供給装置3から出口環状路15を通って成形本体13を覆うように流れることができ、これにより、中空ガラス延伸ストランド19が形成される。
【0098】
成形本体13は、シャフト11の下端部から軸線方向Rに長さXに沿って延在し、かつ円錐形の外面を有する第1の部分21を有する。成形本体13はまた、第1の部分21の下端部から軸線方向Rに長さYに沿って延在し、かつ外径Zを有する円筒形の外面を有する第2の部分23も有する。
【0099】
X/Z比は0.1~0.5であり、Y/Z比は0.02~0.35である。
【0100】
第1の部分および第2の部分21,23は一体に形成されている。シャフト11および成形本体13は全て中空であるので、加工用空気を、成形マンドレル9を通して、
図1における上から下へ流すことができる。ガラス延伸ストランド19は、延伸装置(
図1には示されていない)により、方向Rに対して平行な主延伸方向に沿って成形本体13から引き出される。実際には、方向Rは、装置1が使用されている間は、重力に対しても平行である。ガラス延伸ストランド19は、分離縁部25において、第2の部分から離れる。
【0101】
図2は、本発明の第2の態様による方法100のフローチャートを示す図である。
【0102】
方法を実施するにあたり、本発明の第1の態様による装置、例えば
図1に関して上記された装置1などを使用してもよい。
【0103】
したがって、101において、それぞれの装置1が提供される。103において、溶融ガラス7は、溶融物供給装置3から、溶融物供給装置3の出口開口部5を通り、成形本体13を覆うように主延伸方向Rに沿って流れ、これにより、中空ガラス延伸ストランド19が形成される。105において、ガラス延伸ストランドが所定の長さに達すると、所定の長さの管部分がガラス延伸ストランド19から切断される。
【0104】
この管部分は、好ましくは、本発明の第3および/または第4の態様によるガラス管であり、特に以下に記載するようなガラス管である。
【0105】
図3aは、本発明の第3の態様による、中心軸線Cを有するガラス管201を示す図である。
図3bは、中心軸線Cを含みかつ中心軸線Cに対して平行な特定の断面内におけるガラス管201の切断図を示す図である。すなわち、
図3bの描画面は、特定の断面である。
【0106】
特定の断面(
図3b参照)内で、中心軸線Cに沿って任意に選ばれた2つの第1および第2の軸線方向位置x1およびx2におけるガラス管201の外径d1およびd2の各対について、中心軸線Cに沿ったx1とx2との間の距離は400mm以上であり、以下の関係
|(d2-d1)/(x2-x1)|×(10
6mm)/d1
は60以下である。
【0107】
もちろん、
図3bは、外径d1およびd2の1つの対のみを示している。しかしながら、上記関係は、状況に応じて選択される外径d1およびd2の全ての対に関して保持される。
図3bにおいて、位置x1およびx2は、例示の目的のためだけに、中心軸線Cに対して平行な座標軸上に示されている。
【0108】
図4aは、本発明の第4の態様による、中心軸線Cを有するガラス管301を示す図である。
図4bは、中心軸線Cを含みかつ中心軸線Cに対して平行な特定の断面内におけるガラス管301の切断面を示す図である。すなわち、
図4bの描画面は、特定の断面である。
【0109】
特定の断面(
図4b参照)内で、中心軸線Cに沿って任意に選ばれた2つの軸線方向位置x1およびx2におけるガラス管301の外径d1およびd2の各対について、中心軸線Cに沿ったx1とx2との間の距離が400mm以上であるとき、外径の相対変化、|(d2-d1)/d2|は、特にd2>d1の場合、0.035以下である。
【0110】
もちろん、
図4bは、外径d1およびd2の1つの対のみを示している。しかしながら、記載された外径の相対変化は、状況に応じて選択される外径d1およびd2の全ての対に関して保持される。
図4bにおいて、位置x1およびx2は、例示のためだけに、中心軸線Cに対して平行な座標軸上に示されている。
【0111】
本明細書、図面、および特許請求の範囲に開示された特徴は、本願発明の異なる実施形態の実現のために、単独でまたはあらゆる組み合わせにおいて必須である場合がある。
【符号の説明】
【0112】
1 装置
3 溶融物供給装置
5 出口開口部
7 溶融ガラス
9 成形マンドレル
11 シャフト
13 成形本体
15 出口環状路
17 縁部
19 ガラス延伸ストランド
21 第1の部分
23 第2の部分
25 分離縁部
100 フローチャート
101 装置を提供する
103 溶融ガラスを溶融物供給装置から成形本体を覆うように流し、これにより、ガラス延伸ストランドを形成する
105 ガラス延伸ストランドから管部分を切り離す
201 ガラス管
301 ガラス管
C 中心軸線
d1,d2 外径
R 方向
X 長さ
x1,x2 軸線方向位置
Y 長さ
Z 外径
【外国語明細書】