(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168306
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】熱交換装置
(51)【国際特許分類】
B60H 1/22 20060101AFI20231116BHJP
B60H 1/32 20060101ALI20231116BHJP
H01M 10/613 20140101ALI20231116BHJP
H01M 10/615 20140101ALI20231116BHJP
H01M 10/625 20140101ALI20231116BHJP
H01M 10/6556 20140101ALI20231116BHJP
H01M 10/6568 20140101ALI20231116BHJP
H01M 10/6571 20140101ALI20231116BHJP
H01M 10/633 20140101ALI20231116BHJP
【FI】
B60H1/22 651C
B60H1/32 626E
B60H1/22 611D
H01M10/613
H01M10/615
H01M10/625
H01M10/6556
H01M10/6568
H01M10/6571
H01M10/633
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023078868
(22)【出願日】2023-05-11
(31)【優先権主張番号】P 2022079501
(32)【優先日】2022-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000246273
【氏名又は名称】コベルコ建機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】岡 秀和
【テーマコード(参考)】
3L211
5H031
【Fターム(参考)】
3L211AA09
3L211BA02
3L211BA03
3L211BA32
3L211CA12
3L211DA24
3L211DA25
3L211DA50
3L211GA24
3L211GA25
3L211GA49
5H031AA09
5H031HH06
5H031KK03
5H031KK08
(57)【要約】
【課題】本発明は、従来に比べ電力消費を削減しながら温度調整対象部を効率的に調温することができる熱交換装置を提供することを目的とする。
【解決手段】熱交換装置10は、流体が流れる流体配管の経路中に設けられて流体を冷却する第1熱交換器31、第2熱交換器53と第3熱交換器55とを有する熱交換部50、前記第1熱交換器と前記第2熱交換器とに流れる風を発生させる送風用のファン40およびファン40を制御するコントローラ11を備え、第1熱交換器31と第2熱交換器53とが対向して配置されており、コントローラ11は、温度調整対象部を加熱および冷却の何れかの状態に応じて、ファン40による風の向きを設定する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が流れる流体配管の経路中に設けられて前記流体を冷却する第1熱交換器、
および温度調整対象部を加熱および冷却の何れかを行う第3熱交換器を有する熱交換部、
前記第1熱交換器と前記第2熱交換器とに流れる風を発生させる送風用のファンおよび
前記ファンの動作を制御するコントローラを備え、
前記第1熱交換器と前記第2熱交換器とが対向して配置されている、建設機械に用いられる熱交換装置において、
前記第2熱交換器と、前記第3熱交換器とは、直接的に接続されて熱交換を行い、又は間接的に熱交換を行い、
前記コントローラは、前記温度調整対象部を加熱および冷却の何れかの状態に応じて、前記ファンによる風の向きを設定する、熱交換装置。
【請求項2】
前記熱交換部は、前記建設機械の空調装置であり、
前記ファンによる風は、前記空調装置が冷房運転時には前記第2熱交換器から前記第1熱交換器への方向に流れ、前記空調装置が暖房運転時には前記第1熱交換器から前記第2熱交換器への方向に流れるように制御される、請求項1に記載の熱交換装置。
【請求項3】
前記熱交換装置は暖房ヒータを有し、
前記流体の温度に応じて、前記建設機械の運転室に設けられている暖房ヒータが作動制御される、請求項2に記載の熱交換装置。
【請求項4】
前記熱交換装置は暖房ヒータを有し、
前記第2熱交換器の温度に応じて、前記建設機械の運転室に設けられている暖房ヒータが作動制御される、請求項2に記載の熱交換装置。
【請求項5】
前記熱交換装置は暖房ヒータを有し、
外気温に応じて、前記建設機械の運転室に設けられている暖房ヒータが作動制御される、請求項2に記載の熱交換装置。
【請求項6】
前記空調装置が暖房運転時において、前記流体の温度が所定閾値以上である場合は、前記ファンによる送風方向は冷房運転時と同じ方向に制御される、請求項2に記載の熱交換装置。
【請求項7】
前記熱交換部は、前記建設機械が有するバッテリの温度を調整するバッテリ調温装置であり、
前記ファンによる風は、前記バッテリ調温装置がバッテリを冷却する時には前記第2熱交換器から前記第1熱交換器への方向に流れ、前記バッテリ調温装置がバッテリを加熱する時には前記第1熱交換器から前記第2熱交換器への方向に流れるように制御される、請求項1に記載の熱交換装置。
【請求項8】
前記熱交換部は、前記バッテリを加熱するバッテリヒータを有し、
前記流体の温度に応じて、前記バッテリヒータが作動制御される、請求項7に記載の熱交換装置。
【請求項9】
前記熱交換部は、前記バッテリを加熱するバッテリヒータを有し、
前記第1熱交換器の周辺部の外気温に応じて、前記バッテリヒータが作動制御される、請求項7に記載の熱交換装置。
【請求項10】
前記熱交換部は、前記バッテリを加熱するバッテリヒータを有し、
前記バッテリヒータにより前記バッテリが加熱されている時に、前記流体の温度が所定閾値以上となった場合は、前記ファンによる送風方向は前記バッテリの冷却時と同じ方向に制御されるとともに、前記バッテリヒータはオンにされる、請求項7に記載の熱交換装置。
【請求項11】
前記流体は油圧ポンプにより加圧されるオイルであり、
前記オイルの温度が所定閾値より低い時に前記オイルの温度を上げる昇温装置を有している、請求項2~10の何れか1項に記載の熱交換装置。
【請求項12】
前記ファンは、回転数がそれぞれ制御される2つのファンを含んでおり、
前記2つのファンは、前記第1熱交換器を挟んで前記第2熱交換器と反対側、前記第2熱交換器を挟んで前記第1熱交換器と反対側および前記第1熱交換器と前記第2熱交換器との間の何れか2か所にそれぞれ配置されている、請求項2~10の何れか1項に記載の熱交換装置。
【請求項13】
前記熱交換部は、温度調整対象部を調温する第3熱交換器、
前記第2熱交換器と、前記第3熱交換器との間に介在して、前記第2熱交換器および前記第3熱交換器の何れか一方から何れか他方へ熱を伝達する中間熱交換部および
前記中間熱交換部と前記第2熱交換器および前記中間熱交換部と前記第3熱交換器のそれぞれの接続状態を切り替え可能な切替弁を有している、請求項2~10の何れか1項に記載の熱交換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建設機械の熱交換装置に関し、具体的には熱交換器から放熱される熱を温度調整対象部の温度調整に利用することができる熱交換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バッテリ駆動の建設機械において、運転室を暖房する装置に関する発明が開示されている。特許文献1に開示された発明は、暖房用の電熱器を有し、水を熱媒体として運転室との間を循環させて、運転室を暖房する装置を備えている。
【0003】
また、特許文献2には、ヒートポンプ式冷暖房装置に関する発明が記載されている。特許文献2のヒートポンプ式冷暖房装置は、暖房時の補助手段として、油圧機構の加圧油と空調装置用冷媒とを熱交換器に循環させ、熱交換器の内部において加圧油の熱を冷媒に吸収させる熱交換器を備えている。特許文献2のヒートポンプ式冷暖房装置は、加圧油と空調装置用冷媒とを通す熱交換器を備えることで、加圧油の熱を暖房に利用して低温時の暖房効率を向上させている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003-267037号公報
【特許文献2】特公平7-5020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に記載された発明では、暖房用の電熱器を備えることが必要であった。また、電熱器の電力をバッテリで賄うため、暖房にバッテリ電力を消費するため、建設機械が稼働できる作業時間が短くなるという欠点が存在した。また、特許文献2に記載された発明では、加圧油と冷媒とを通して熱交換する追加の熱交換器が必要であった。
【0006】
本発明は、従来に比べ消費電力を削減しながら、温度調整対象部を効率的に温度調整することができる熱交換装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る熱交換装置は、流体が流れる流体配管の経路中に設けられて流体を冷却する第1熱交換器、第2熱交換器および温度調整対象部を加熱および冷却の何れかを行う第3熱交換器を有する熱交換部、前記第1熱交換器と前記第2熱交換器とに流れる風を発生させる送風用のファンおよびファンの動作を制御するコントローラを備え、第1熱交換器と第2熱交換器とが対向して配置されている、建設機械に用いられる熱交換装置において、第2熱交換器と、第3熱交換器とは、直接的に接続されて熱交換を行い、又は間接的に熱交換を行い、コントローラは温度調整対象部を加温および冷却の何れかの状態に応じて、ファンによる風の向きを設定する。
【0008】
本発明に係る熱交換装置は、対向して配置されている第1熱交換器および、第2熱交換器と第3熱交換器とを有し、温度調整対象部を加温および冷却の何れかの状態に応じて、ファンによる風の向きを設定する。そのため、熱交換装置は第2熱交換器を介して空気中に熱を放出、又は第2熱交換器を介して空気中から熱を吸収することができ、ヒートポンプ効果により温度調整対象部を効率的に加温、又は冷却できる。したがって、従来に比べ消費電力を削減しながら、温度調整対象部を効率的に調温することができる熱交換装置とすることができる。
【0009】
本発明に係る熱交換装置では、ファンによる風は、空調装置の冷房運転時には第2熱交換器から第1熱交換器への方向に流れ、空調装置の暖房運転時には第1熱交換器から第2熱交換器への方向に流れるように制御される。
【0010】
本発明に係る熱交換装置では、暖房運転時において、ファンによる風で第1熱交換器の熱を第2熱交換器で吸熱させることで、ヒートポンプ効果により暖房効率を上げることができる。
【0011】
また、本発明に係る熱交換装置では、流体の温度に応じて、運転室に設けられている暖房ヒータが作動制御されることが好ましい。
【0012】
これにより、本発明に係る熱交換装置は、暖房時、流体の温度に応じて、暖房ヒータのオンオフ制御がされ、運転室を暖房することができる。また不要時に暖房ヒータの作動を止めて消費電力を削減することができる。
【0013】
また、本発明に係る熱交換装置では、第2熱交換器の温度に応じて、運転室に設けられている暖房ヒータが作動制御されることが好ましい。
【0014】
これにより、本発明に係る熱交換装置は、暖房時、第2熱交換器の温度に応じて、暖房ヒータのオンオフ制御がされ、運転室を暖房することができる。また、不要時に暖房ヒータの作動を止めて消費電力を削減することができる。
【0015】
また、本発明に係る熱交換装置は暖房ヒータを有し、外気温に応じて、建設機械の運転室に設けられている暖房ヒータが作動制御されることが好ましい。
【0016】
これにより、本発明に係る熱交換装置は、暖房時、外温度に応じて、暖房ヒータのオンオフ制御がされ、運転室を暖房することができる。また不要時に暖房ヒータの作動を止めて消費電力を削減することができる。
【0017】
また、本発明に係る熱交換装置では、空調装置が暖房運転時において、流体の温度が所定閾値以上である場合は、ファンによる送風方向は冷房運転時と同じ方向に制御されることが好ましい。
【0018】
これにより、本発明に係る熱交換装置は、暖房運転時において、流体の温度が所定閾値以上になった時には、ファンによる風の向きを冷却効率が良い冷房運転時と同じ方向にして、流体の冷却性を向上させることができる。
【0019】
また、本発明に係る熱交換装置では、熱交換部は、建設機械が有するバッテリの温度を調整するバッテリ調温装置であり、ファンによる風は、バッテリ調温装置がバッテリを冷却する時には第2熱交換器から第1熱交換器への方向に流れ、バッテリ調温装置がバッテリを加温する時には第1熱交換器から第2熱交換器への方向に流れるように制御されることが好ましい。
【0020】
本発明に係る熱交換装置では、ファンによる風は、バッテリ調温装置がバッテリを冷却する時には第2熱交換器から第1熱交換器への方向に流れ、バッテリ調温装置がバッテリを加温する時には第1熱交換器から第2熱交換器への方向に流れるように制御される。そのため、熱交換装置は、第2熱交換器を介して空気中から熱を吸収、又は第2熱交換器を介して空気中に熱を放出することができ、ヒートポンプ効果により温度調整対象部を効率的に加温、又は冷却できる。したがって、従来に比べ電力消費を削減しながら、温度調整対象部を効率的に調温することができる熱交換装置とすることができる。
【0021】
また、本発明に係る熱交換装置は、バッテリを加温するバッテリヒータを有し、流体の温度に応じてバッテリヒータが作動制御されることが好ましい。
【0022】
本発明に係る熱交換装置では、バッテリを加温するバッテリヒータを有し、流体の温度に応じてバッテリヒータが作動制御される。バッテリの加温時、流体の温度に応じて、暖房ヒータのオンオフ制御がされ、ヒートポンプ効果に加えてバッテリを加温することができる。また、加温の不要時にはバッテリヒータの作動を止めて消費電力を削減することができる。したがって、従来に比べ電力消費を削減しながら、温度調整対象部を効率的に調温することができる熱交換装置とすることができる。
【0023】
また、本発明に係る熱交換装置は、バッテリを加温するバッテリヒータを有し、第1熱交換器周辺の外気温に応じてバッテリヒータが作動制御されることが好ましい。
【0024】
本発明に係る熱交換装置では、バッテリを加温するバッテリヒータを有し、第1熱交換器周辺の外気温に応じてバッテリヒータが作動制御される。バッテリの加温時、第1熱交換器周辺の外気温に応じて、暖房ヒータのオンオフ制御がされ、ヒートポンプ効果に加えてバッテリを加温することができる。また、加温が不要の時にはバッテリヒータの作動を止めて消費電力を削減することができる。したがって、従来に比べ電力消費を削減しながら、温度調整対象部を効率的に調温することができる熱交換装置とすることができる。
【0025】
また、本発明に係る熱交換装置は、バッテリを加温するバッテリヒータを有し、
バッテリヒータによりバッテリが加温されている時に、流体の温度が所定閾値以上となった場合は、ファンによる送風方向はバッテリの冷却時と同じ方向に制御されることが好ましい。
【0026】
本発明に係る熱交換装置では、バッテリを加温するバッテリヒータを有し、バッテリヒータによりバッテリが加温されている時に、流体の温度が所定閾値以上である場合は、ファンによる送風方向はバッテリの冷却時と同じ方向に制御される。そのため、ファンによる風の向きを冷却効率が良い冷房運転時と同じ方向にして、流体の冷却性を向上させることができる。したがって、従来に比べ電力消費を削減しながら、温度調整対象部を効率的に調温することができる熱交換装置とすることができる。
【0027】
また、本発明に係る熱交換装置では、流体は油圧ポンプにより加圧されるオイルであり、オイルの温度が所定閾値より低い時にオイルの温度を上げる昇温装置を有していることが好ましい。
【0028】
これにより、暖房時にオイルが低温の場合でも、昇温装置により早くオイルを昇温して、ヒートポンプ効果により暖房効率を上げることができる。
【0029】
また、本発明に係る熱交換装置は、ファンは、回転数がそれぞれ制御される2つのファンを含んでおり、2つのファンは、第1熱交換器を挟んで第2熱交換器と反対側、第2熱交換器を挟んで第1熱交換器と反対側および第1熱交換器と第2熱交換器との間の何れか2か所にそれぞれ配置されていることが好ましい。
【0030】
これにより、冷房時、又は暖房時において、温度変化状況が異なる流体と第2熱交換器とがそれぞれ最適温度になるように、独立して制御することができる。
【0031】
また、本発明に係る熱交換装置は、温度調整対象部を調温する第3熱交換器、第2熱交換器と、第3熱交換器との間に介在して、第2熱交換器および第3熱交換器の何れか一方から何れか他方へ熱を伝達する中間熱交換部および中間熱交換部と第2熱交換器および中間熱交換部と第3熱交換器のそれぞれの接続状態を切り替え可能な切替弁を有していることが好ましい。
【0032】
本発明に係る熱交換装置は、温度調整対象部を調温する第3熱交換器、第2熱交換器と、第3熱交換器との間に介在して、第2熱交換器および第3熱交換器の何れか一方から何れか他方へ熱を伝達する中間熱交換部および中間熱交換部と第2熱交換器および中間熱交換部と第3熱交換器のそれぞれの接続状態を切り替え可能な切替弁を有している。そのため、圧縮機との接続を切り替え用として高価な四方弁を用いることなく、熱交換装置を構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明に係る熱交換装置の第1実施例を示す概要図。
【
図2】
図1の熱交換装置が備える空調装置の運転モードを示す概要図。
【
図3】
図1の熱交換装置が備えるファンの作動を示す概要図。
【
図6】本発明に係る熱交換装置の第2実施例についての
図1に相当する概要図。
【
図7】
図6の熱交換装置が備えるファンの作動を示す概要図。
【
図8】本発明に係る熱交換装置の第3実施例を示す概要図。
【
図9】本発明に係る熱交換装置の第4実施例を示す概要図。
【
図10】本発明に係る熱交換装置の第4実施例を示す概要図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
<第1実施例>
図1~
図3を参照して、本発明の第1実施例の熱交換装置10を説明する。
図1は、熱交換装置10を備える建設機械の関連部分を示す概要図である。
図2は、熱交換装置10の第2熱交換器を備える空調装置の運転モードを示す概要図である。
図3は、熱交換装置10が備えるファンの送風状態を示す概要図である。
【0035】
[建設機械の構成]
熱交換装置10を備える建設機械は、建設機械が作動することにより熱せられた流体を冷却する第1熱交換器、空調装置の第2熱交換器および送風用のファンを備えていれば、何れの種類の建設機械でも本発明が適用可能である。又、本発明は解体機にも適用可能である。建設機械は図示しないが、例えばクローラショベル、クレーン、ホイールローダ、ブルドーザ等であり、下部走行体と、下部走行体上に旋回可能に搭載されている上部旋回体とを備えている建設機械および上部旋回体を備えていない建設機械の何れにも適用可能である。建設機械等の前方には、ブーム、アームおよびアタッチメントを含む各種作業機構が設けられている。また、建設機械等の前方又は中央には、箱状に形成された運転室が備えられている。建設機械の走行用および作業機構用駆動源は、バッテリ、又は内燃機関である。
【0036】
[作業機構20の構成]
作業機構20は、流体圧によりブーム等を作動させる機構である。作業機構20は、図示されないバッテリにて駆動される電動機21、電動機21が駆動する可変容量型の油圧ポンプ22、送出する油圧を制御するコントロールバルブ23、油圧により駆動されるアクチュエータ24、第1熱交換器31、昇温装置32および作動油タンク8(リザーバ)33を有している。熱交換装置10は、建設機械の作動により高温となる流体が流れる流体配管の経路中に設けられて流体を冷却する第1熱交換器31を備えている。前記流体は作業機構20を流れるオイルであり、第1熱交換器31はオイルクーラ31である。
【0037】
アクチュエータ24は、例えば油圧シリンダであり、内部に空間が形成されている。前記空間内には、ピストン25が前記空間内を摺動可能に収容されており、ピストン25により第1空間27および第2空間28の2つに仕切られている。第1空間27および第2空間28はオイルで満たされており、両者とコントロールバルブ23との間は、それぞれ配管で接続されている。
【0038】
ピストン25の摺動方向の一端面にはロッド26の一端部が接続されており、ロッド26はアクチュエータ24の一端面をシール部材で密閉された状態で貫通している。アクチュエータ24は上部旋回体に保持され、ロッド26の他端部はブームに接続されている。ブームが操作されると、オイルはコントロールバルブ23内で流路が制御されて、油圧ポンプ22からコントロールバルブ23を介して、第1空間27、又は第2空間28に流れる。オイルは、第1空間27、又は第2空間28に流入し、ピストン25を押圧してロッド26がシリンダ部に対して伸縮する。ロッド26の伸縮に伴い、ブームが作動する。
【0039】
アクチュエータ24は複数備えられており、ブームとアームおよびアームとアタッチメントのそれぞれの間に接続されている。アームおよびアタッチメントの各操作レバーを操作すると、油圧により上記ブームの作動メカニズムと同様にアームおよびアタッチメントが作動する。
【0040】
オイルが第1空間27、又は第2空間28の何れか一方に流入し、ピストン25が押圧されると、第1空間27、又は第2空間28の何れか他方からオイルが送出される。送出されたオイルは、コントロールバルブ23を介して、オイルクーラ31に流れる。オイルクーラ31で冷やされたオイルは、作動油タンク33に流れて貯留される。作動油タンク33のオイルは、油圧ポンプ22により吸いこまれ、作業機構20を循環する。
【0041】
コントロールバルブ23と、オイルクーラ31との間には、昇温装置32が配置されている。昇温装置32は、低温のオイルを昇温する装置である。昇温装置32は、例えば、電磁バルブを有するリリーフ弁であり、リリーフ圧を調整制御することができる。オイルが所定温度以上ではリリーフ弁は開放状態に制御され、オイルが所定温度以下の低温時にはリリーフ圧は規定値に設定される。リリーフ圧が規定値に設定されることで、リリーフ弁の内部を流れるオイルは大きな抵抗を受けて負荷がかかり、それによりリリーフ弁が開放状態の時に比べて、オイルが早く暖められる。
【0042】
[空調装置50の構成]
熱交換装置10は、熱交換部50である空調装置50を有している。空調装置50は周知の作用効果、すなわち、運転室の空調を制御するものであり、運転室と、外気との間で熱交換を行う。空調装置50は、運転室の空調を行う装置である。空調装置50は、ヒートポンプ式エアコンであり、公知のとおり、圧縮機51、四方弁52、第2熱交換器53、膨張弁54、エバポレータにより構成される第3熱交換器55および室内ファン56を有している。第2熱交換器53は、例えばコンデンサにより構成される。また、空調装置50は、流体が低温時でありヒートポンプ効果が低い場合に、運転室を暖める暖房ヒータ60を有している。熱交換部50は、温度調整対象部である運転室内を、エバポレータにより構成される第3熱交換器55で調温する。
【0043】
空調装置50は、コントローラ11を有しており、空調装置50に含まれる装置を制御している。コントローラ11は、冷暖房切り替えスイッチ13が設けられている空調操作部12を有しており、操縦者は空調操作部12を操作して、空調装置50の運転モード、温度、風量等を設定できる。
【0044】
図2を参照して、空調装置50の冷暖房設定に関する制御を説明する。
図2は、空調装置50の運転モード設定に関するフローチャート図である。以下に、その流れを説明する。なお、ファン40の送風方向に関する説明については後述する。
【0045】
コントローラ11は、空調操作部12の冷暖房切り替えスイッチ13をモニタしており、冷暖房切り替えスイッチ13の操作を検出する(
図2/STEP110)。
【0046】
コントローラ11は、冷暖房切り替えスイッチ13の操作を検出すると、選択された運転モードが冷房かを判定する(
図2/STEP120)。
【0047】
STEP120で冷房と判定した場合、ファン40の送風方向を上部旋回体の外側から内側になるようにファン40の回転方向を設定して、冷房運転を開始する(
図2/STEP130)。
【0048】
STEP120で暖房と判定した場合、ファン40の送風方向を上部旋回体の内側から外側になるようにファン40の回転方向を設定して、暖房運転を開始する(
図2/STEP140)。
【0049】
建設機械の運転中には、以上の制御が繰り返される。
【0050】
ヒートポンプ式の空調装置50の作動を説明する。冷房時の作動は、次のとおりである。圧縮機51によって圧縮された冷媒は四方弁52を通って第2熱交換器53に入る。冷媒は第2熱交換器53でファン40による風によって冷却され、膨張弁54で気化した状態でエバポレータにより構成される第3熱交換器55に送られる。気化した冷媒は、運転室の第3熱交換器55周辺の熱を吸収して第3熱交換器55が冷やされる。室内ファン56は、冷やされた第3熱交換器55に風を通過させて冷風を送り出す。冷媒は、第3熱交換器55を出て圧縮機51に戻り、再び圧縮される。以上のサイクルを繰り返して、冷房運転が行われる。
【0051】
次に暖房時の作動を説明する。暖房時に冷媒が流れる向きは、冷房時と反対である。冷媒は、第2熱交換器53に通りながら外気から熱を吸収して、圧縮機51によって圧縮され、四方弁52を通って第3熱交換器55に入る。冷媒は第3熱交換器55内で温度が下がって液化し、それによって熱が放出されて第3熱交換器55が暖められる。室内ファン56は、第3熱交換器55に風を通過させて温風を送り出す。冷媒は、第3熱交換器55を出て膨張弁54で気化した状態で第2熱交換器53に送られる。以上のサイクルを繰り返して、暖房運転が行われる。
【0052】
[熱交換装置10の構成および作動]
図3を参照して、本発明の熱交換装置10の作動を空調装置50の作動モードと、ファン40による送風方向を説明する。
図3は、上部旋回体の内部に配置されている熱交換装置10を示す概要図である。本発明の熱交換装置10は、流体が流れる流体配管の経路中に設けられて流体を冷却する第1熱交換器31であるオイルクーラ31、空調装置50の第2熱交換器53および、送風用のファン40を有している。ファン40は、電動機41、電動機41の回転軸に接続された軸部42および軸部42にそれぞれの一端が接続されている複数のファンブレード43を有している。ファンブレード43を回転させる電動機41は、コントローラ11の制御により何れの回転方向にも回転可能である。
【0053】
熱交換装置10は、上部旋回体の内部において、外側から内側に、第2熱交換器53、オイルクーラ31およびファン40の順で配置されている。第2熱交換器53と、オイルクーラ31はそれぞれ、略直方体形状である。オイルクーラ31の外面の略平行な1組の平面部は、空気が導入、又は導出される空気導入出部35、36であり、空気は何れか一方から導入され、何れか他方から導出される。また、第2熱交換器53の外面の略平行な1組の平面部は、空気が導入、又は導出される空気導入出部58、59であり、空気は何れか一方から導入され、何れか他方から導出される。
【0054】
第2熱交換器53と、オイルクーラ31とは、互いの空気導入出部59および空気導入出部35が略平行にして対向し、かつ互いの左右方向中心を合わせて配置されている。また、ファン40は、オイルクーラ31の第2熱交換器53と反対側面に配置されている。したがって、ファン40の回転による風は、第2熱交換器53の空気導入出部58、59の間およびオイルクーラ31の空気導入出部の間のそれぞれに形成されている冷却フィン同士の隙間を通過して流れる。第1方向である矢印Aの方向の風は、第2熱交換器53の空気導入出部58、59、オイルクーラ31の空気導入出部35、36の順で流れる。又、第2方向である矢印Bの方向の風は、上記と逆に、オイルクーラ31の空気導入出部36、35、第2熱交換器53の空気導入出部59、58の順で流れる。
【0055】
空調装置50の冷房運転時には、ファン40の回転による風は、
図3の矢印Aで示される上部旋回体の外側から内側である第1方向に流れるように、コントローラ11がファン40の回転方向を制御する。これにより、冷却が必要な第2熱交換器53とオイルクーラ31とを、上部旋回体の内部に比べて冷たい空気を上部旋回体の外部空間から取り入れられるので、空調装置50は運転室を効率よく冷房することができる。ファン40の作動中、ファン40の回転数は、所定の回転数で一定に保たれる。又は、ファン40の回転数は、コントローラ11により回転数が0rpm以上最高回転数以下の範囲において、オイルの温度Tに比例して制御されていてもよい。
【0056】
空調装置50の暖房運転時には、ファン40の回転による風は、
図3の矢印Bで示される上部旋回体の内側から外気側(内側から外側)である第2方向に流れるように、コントローラ11がファン40の回転方向を制御する。これにより、冷却が必要なオイルクーラ31にはファン40の回転による風をあてて冷却することができる。オイルクーラ31から放熱されて暖められた空気は、第2方向に沿ってオイルクーラ31から第2熱交換器53に流れ、第2熱交換器53を暖める。
【0057】
暖房運転時には、空調装置50は、冷媒が第2熱交換器53から運転室の第3熱交換器55に流れて加温して運転室を暖める。しかし、外気温が低温時は、従来のヒートポンプ式の空調装置では暖房効率が低下する。本発明の熱交換装置10は、そのような低温時でも、オイルクーラ31からの放熱を第2熱交換器53で吸熱して暖房に利用し、ヒートポンプ作用で空調装置50により運転室を効率よく暖めることができる。また、オイルクーラ31からの放熱を暖房に利用することで、バッテリの電力消費を従来の追加の電熱器式ヒータより削減することができる。したがって、バッテリ駆動の建設機械の場合には、バッテリ電力を消費することによる作業時間の低下を避けることができる。
【0058】
図1と
図4とを参照して、運転室に設けられている暖房ヒータ60の動作に関して説明する。暖房ヒータ60は、空調装置50の暖房性能が低下する建設機械の始動直後等において用いられる、追加的な暖房装置である。暖房ヒータ60は、建設機械が備えているバッテリの電力により、公知の方法で熱を発生する。暖房ヒータ60は、例えばニクロム線等の高い抵抗値の導体を有しており、バッテリから電流を流し、ジュール熱を発生させて暖房する。暖房ヒータ60は、室内ファン56の送風があたる位置に配置されており、暖房ヒータ60が作動した時には、第3熱交換器55と、暖房ヒータ60とにより、運転室が暖房される。
【0059】
図4を参照して、暖房ヒータ60の作動を説明する。暖房ヒータ60は、作業機構20を流れるオイルの温度Tに応じて、コントローラ11により制御される。コントローラ11は、作業機構20を流れるオイルの温度Tを検出する温度センサ14を有している。温度センサ14は、コントロールバルブ23とオイルクーラ31との間の配管のオイルクーラ31に隣接した位置に取付けられている。温度センサ14によるオイルの温度Tの検出は、空調装置50が作動中、常時行われている。
【0060】
建設機械の始動直後、作業機構20を流れるオイルの温度Tは、暖房ヒータ60の暖房を停止する温度である閾値より低く、コントローラ11は暖房ヒータ60を作動させる。オイルの温度Tが低い間は、オイルクーラ31からの放熱量は少なく、第2熱交換器53からの吸熱を利用する空調装置50の暖房効果は不足する。そのため、暖房ヒータ60が作動することにより運転室が暖房されて、操縦者の快適性が確保される。
【0061】
建設機械が一定時間作動してオイルの温度Tが上がり閾値T1以上になると、オイルクーラ31からの放熱量が多くなる。この時、コントローラ11は暖房ヒータ60への電流を止め、作動を停止する。したがって、オイルの温度Tが閾値T1以上では、暖房ヒータ60を利用せずに、第2熱交換器53からの吸熱を第3熱交換器55からの放熱するヒートポンプ作用のみで暖房する。また、オイルの温度Tが下がり閾値T0以下になると、コントローラ11は再び暖房ヒータ60を作動させて、ヒートポンプ作用と暖房ヒータ60とで暖房する。暖房ヒータ60は、作業機構20を流れるオイルの温度Tに応じて制御され、上記の動作が繰り返し行われる。暖房ヒータ60をこのように制御することで、暖房効果が低い始動直後には素早くかつ必要量暖房し、オイルの温度Tが上がった時には暖房ヒータ60の作動を停止してバッテリ電力の消費を防ぐことができる。
【0062】
また、コントローラ11は、第2熱交換器53の温度tを検出する温度センサ15を有している。温度センサ15は、第2熱交換器53に取付けられている。温度センサ15による第2熱交換器53の温度tの検出は、空調装置50が作動中、常時行われている。上記で説明したとおり、建設機械の始動直後等ではオイルクーラ31からの放熱量は少なく、第2熱交換器53からの吸熱を利用する空調装置50の暖房効果は不足する。したがって、第2熱交換器53からの吸熱度合いの指標となる第2熱交換器53の温度tを検出することで、上記の作業機構20を流れるオイルの温度Tに応じた暖房ヒータ60の作動制御と同様に、暖房ヒータ60をオンオフ制御する。
【0063】
図4に示すように、具体的には、コントローラ11は、第2熱交換器53の温度tが閾値T2以下では暖房ヒータ60をオンし、閾値T3以上では暖房ヒータ60をオフする。また、コントローラ11は、第2熱交換器53の温度tが閾値T2以下に下がると再度暖房ヒータ60をオンし、閾値T3以上になったら暖房ヒータ60をオフする。この動作が繰り返し行われる。第2熱交換器53の温度に応じた作動制御による効果は、上記の作業機構20を流れるオイルの温度Tに応じた暖房ヒータ60の作動制御と同様に得られる。第2熱交換器53の温度tは、オイルの温度Tより第2熱交換器53の吸熱状態との相関がより高いと考えられる。
【0064】
なお、両温度センサ14、15は、両者共に設けられていてもよい。その場合、コントローラ11はオイルの温度Tおよび第2熱交換器53の温度tの何れか一方の温度を用いて制御する。両者が設けられることで、何れか一方の断線等検出不良の発生時にも、何れか他方で検出は可能であり、フェールセーフが図られる。制御に用いている何れか一方の温度の値が検出不良である場合には、コントローラ11はオイルの温度Tおよび第2熱交換器53の温度tの何れか他方の温度を用いて制御する。また、第2熱交換器53部の温度tに替えて、他の部位の温度を代用することもできる。例えば、建設機械に外気温センサを搭載し、オイルの温度Tおよび第2熱交換器53の温度tに替えて、外気温センサで測定した外気温で代用してもよい。第2熱交換器53部を直接測温する場合に対して制御精度は若干低下するが、建設機械の始動時の第2熱交換器53部の温度は外気温とほぼ同じと考えられるため、代用は可能である。
【0065】
外気温を用いて暖房ヒータ60を制御する場合の制御を説明する。建設機械の始動時以降のオイル温度Tの上昇と時間との関係から、閾値T1に上昇するまでの時間があらかじめ決定しておくことで、コントローラ11は、外気温と、建設機械が所定の作業を行った場合にオイル温度Tが閾値T1に上昇するまでの時間の関係マップを備えることができる。それにより、コントローラ11は、外気温に応じて始動直後の所定時間の間、暖房ヒータ60を作動させることができる。暖房ヒータ60の作動制御に、他の用途に使用するために設けられる外気温センサを共用することで、第2熱交換器53部に温度センサ15を設ける場合に比べ、コスト低減を図ることができる。
【0066】
図4を参照して、昇温装置32の作動を説明する。昇温装置32は作業機構20を流れるオイルの温度を早く上げる装置である。昇温装置32は、作業機構20を流れるオイルの温度に応じて、コントローラ11により制御される。コントローラ11は、作業機構20を流れるオイルの温度を検出する温度センサ14を有している。作業機構20を流れるオイルの温度が低い閾値T4以下では、オイルクーラ31からの放熱が少なくなるため、ヒートポンプ作用による暖房は不足する。昇温装置32は、このような時に作業機構20を流れるオイルの温度を早く上げる装置である。昇温装置32は、例えばリリーフ弁である。コントローラ11は温度センサ14によるオイル温度が閾値T4以下の時には、リリーフ弁を作動させる。コントローラ11は、リリーフ弁が有する電磁バルブを制御して、リリーフ圧を規定値に設定する。リリーフ圧が規定値に設定されると、リリーフ弁の内部を流れるオイルは大きな抵抗を受けながら流れることで、オイル温度が早く上昇する。オイル温度が閾値T5以上に上昇した場合は、コントローラ11は、リリーフ弁が有する電磁バルブを制御して、リリーフ圧を初期値すなわち0に設定し、リリーフ弁を開放状態にする。そのため、オイル温度が上がった時には、電力の消費を削減することができる。なお、閾値T4、T5は昇温装置32の作動制御用に任意の温度を設定できる。又は、閾値T4、T5は、上記で説明した閾値T0、T1でそれぞれ代用してもよい。
【0067】
なお、リリーフ圧の設定はオンオフの2段階制御ではなく、オイル温度に応じてリリーフ圧を徐々に変化させるような連続的、又は3段階以上の設定であってもよい。例えば、オイル温度が始動直後の低い時から閾値T1まで、連続的にリリーフ圧の規定値が設定される、あるいは、3、4又は5段階にリリーフ圧の規定値が設定されて、始動後のオイル温度の上昇にともなって抵抗を徐々に減らすように、リリーフ圧が高圧値から低圧値へと変化するように制御されてもよい。
【0068】
また、昇温装置32は、リリーフ弁に替えて、流体に抵抗を付与する効果があり、配管途中の内径減少部となる、吐出圧力又は流量が電気的に調整可能な絞り弁、又は流量調整弁でもよい。
【0069】
また、油圧ポンプ22は可変容量型の油圧ポンプ22として構成されており、昇温装置32である。可変容量型油圧ポンプ22はオイル送出量を増加させ、流路抵抗により発熱させてオイル温度を上げることができる。可変容量型油圧ポンプ22は比例弁を有しており、比例弁から入力されるパイロット圧によりポンプ容量が変化する。コントローラ11は、比例弁への電流を制御して比例弁から出力されるパイロット圧を制御し、ポンプ容量を制御する。昇温装置32は、リリーフ弁又は可変容量型油圧ポンプ22の少なくとも何れか一方で構成されていてよい。昇温装置32をリリーフ弁のみで構成する場合は、油圧ポンプ22は
図6に示すように、容量一定型油圧ポンプとして構成してもよい。
【0070】
図5を参照して、次に作業機構20のオイル温度が閾値T1を超え、許容上限閾値T7に至った時のオイル高温時の制御を説明する。本発明の制御により、ファンによる風が外側から内側に向かう第1方向から、内側から外側に向かう第2方向に切り替えられている状態において、作業機構20の使用によりオイル温度が許容上限閾値T8まで上昇した場合、コントローラ11はファンによる送風方向を冷房運転時と同じ第1方向に変更するように制御する。ファン40による風は、外側から内側に向かう第1方向の方が、内側から外側に向かう第2方向より、流れる空気の温度が低いので冷却効率がよい。そのため、オイル温度が許容上限閾値T8に至った時には、ファン40による風の向きは冷却性がよい第1方向に変更される。
【0071】
また、暖房運転中に、ファン40による送風方向が冷房運転時と同じ第1方向に変更されている時には、第2熱交換器53からの吸熱量が低下するため空調装置50による暖房性能が低下する場合がある。その暖房量の不足を補うため、ファン40による風向きが第1方向に変更される時は、コントローラ11は暖房ヒータ60をオンにし、風向きが第1方向の間は暖房ヒータ60により加温される。上記のファン40による風向き変更の制御により、オイル温度は許容上限閾値T8から低下して正常範囲内に低下する。オイル温度が正常範囲内に低下した場合、暖房運転モード中は、再びファン40による風向きは第2方向に変更される。それと同時に、暖房ヒータ60の作動が停止される。オイル温度が閾値T1を超え、温度が許容上限閾値T8に再度至った時には、上記制御が繰り返される。
【0072】
[変形例]
上記で説明した第1実施例は、構成の一部を以下のように替えることも可能である。
【0073】
上記構成では、第1熱交換器31はオイルクーラ31、流体はオイルとして説明した。建設機械が内燃機関用の冷却装置を備え、内燃機関用冷却装置の第1熱交換器、すなわちラジエータを有する場合、第1熱交換器31はラジエータ、流体は冷却水としてもよい。または、建設機械が有するバッテリを冷却するバッテリ冷却装置の放熱器を有する場合、第1熱交換器31はバッテリ冷却用放熱器、流体はバッテリ冷却用流体としてもよい。また、オイルクーラ31、ラジエータ、バッテリ冷却用放熱器の2つ以上を、各々の空気導入出部を対向させる位置関係に配置してもよい。このようにすると、第2熱交換器53は、オイルクーラ31、ラジエータ、バッテリ冷却用放熱器の2つ以上からの熱を吸熱することができ、より暖房効率を向上することができる。
【0074】
上記構成では、ファン40の回転方向を逆転させることで、送風方向を変えている。このファン40を、軸部に対するファンブレートの角度を変えられる可変ピッチブレードを有するファンに替え、ファンの回転方向を変えずに、ファンブレード43のピッチ角度を変えることで送風方向を逆方向にしてもよい。
【0075】
作業機構20のオイル温度が通常温度範囲を超え、許容上限閾値T8に近づいた時のオイル高温時の制御に関し、
図5に示すように、閾値T7から所定値分低い温度に閾値T6を設けてもよい。閾値T6は、閾値T8の70%~95%に相当する温度とする。オイル温度が閾値T8に至る手前の閾値T6に到達した時点で、オイル温度が許容上限に近いことのメッセージを操縦者に表示、又は音声で報知してもよい。このようにすることで、操縦者は作業機構20のオイル温度が上限に近づいたことを知り、より的確に温度状況を把握することができる。
【0076】
<第2実施例>
図6および
図7を参照して、本発明の第2実施例である熱交換装置70を説明する。第2実施例は、熱交換装置10に替えて熱交換装置70を備えている。熱交換装置70は、ファン40を2つ有していることおよび空調装置50は運転室に温度センサ17を備え、設定温度に自動調整すること、油圧ポンプは容量一定型油圧ポンプ29であることが第1実施例の熱交換装置10と異なっており、その他は同じである。なお、第1実施例と同じ装置、同じ部材については、同じ符号を用いてその説明を省略する。
図6は、熱交換装置70を備える
図1に相当する概要図である。
図7は熱交換装置70の制御に関し、ファン40、40の作動を示す概要図である。
【0077】
熱交換装置70は、2つのファン40、40を有している。2つのファン40、40は、第1熱交換器31を挟んで第2熱交換器53と反対側、第2熱交換器53を挟んで第1熱交換器31と反対側および第1熱交換器31と第2熱交換器53との間の何れか2か所にそれぞれ配置されている。
図6および
図7では、第1熱交換器31を挟んで第2熱交換器53と反対側および第1熱交換器31と第2熱交換器53との間にそれぞれファン40、40が配置されている。2つのファン40、40は、コントローラ11により回転数が0rpm以上最高回転数以下の範囲でそれぞれ制御されている。また、ファンによる送風が相殺されることを防ぐために、2つのファン40、40は、互いに逆回転方向に回ることはない。
【0078】
また、熱交換装置は、ファンを3つ備えてもよい。3つのファン40、40、40は、第1熱交換器31を挟んで第2熱交換器53と反対側、第2熱交換器53を挟んで第1熱交換器31と反対側および第1熱交換器31と第2熱交換器53との間の3ケ所に設けることができる。この場合、コントローラ11は、それぞれのファン40、40、40を上記の2つのファン40、40が備えられている場合と同様に制御することができる。
【0079】
空調装置50は運転室に温度センサ17を備えており、操縦者が設定した温度に自動調整することができる。温度センサ17は、例えば運転室中央部付近、メータ付近等、運転室のできるだけ平均的な気温を検出できる箇所に設けられている。空調装置50は空調操作部12内に温度設定部16を有しており、操縦者は温度設定部16により運転室温度を設定する。空調装置50は運転室温度を設定温度に保つように、ファン40、40、室内ファン56、暖房ヒータ60、昇温装置32、等を制御する。
【0080】
<第3実施例>
図8を参照して、本発明の第3実施例である熱交換装置100を説明する。
図8は、第3実施例を示す概要図である。第1実施例では、熱交換部50が運転席の室内の空調を行うのに対し、第3実施例では、熱交換部50が温度調整する対象部が建設機械に搭載されているバッテリ101である点が異なっており、その他は同じである。なお、第1実施例と同じ装置、同じ部材については、同じ符号を用いてその説明を省略する。
【0081】
熱交換装置100は、流体が流れる流体配管の経路中に設けられて流体を冷却するオイルクーラにより構成される第1熱交換器31、熱交換部150および送風用のファン40を有している。熱交換部150は、圧縮機51、四方弁52、第2熱交換器53、膨張弁54、エバポレータで構成される第3熱交換器55である、バッテリファン156およびコントローラ111を有している。上部旋回体の内部において、外側から内側に向けて、第2熱交換器53、オイルクーラにより構成される第1熱交換器31およびファン40の順で配置されている。熱交換部150は、第2熱交換器53および第3熱交換器55において、放熱、又は吸熱、すなわち熱交換を行う部分である。圧縮機51、四方弁52、第2熱交換器53、膨張弁54、第3熱交換器55およびコントローラ111のそれぞれの構成は、第1実施例の各部材と同じである。また、バッテリファン156の構成は、第1実施例の室内ファン56と同じである。
【0082】
建設機械は、走行用および作業機構用駆動用の少なくとも何れか一方のためにバッテリ101を搭載している。バッテリ101は、所定温度範囲で使用されることで、出力を安定的に保てるとともに、バッテリ寿命の短縮を抑えることができる。熱交換装置100は、前記所定温度範囲より高温時にバッテリ101を冷却するとともに、前記所定温度範囲より低温時にバッテリ101を加温する。なお、第3実施例においては、バッテリ101は冷媒により冷却される。すなわち、バッテリ101の冷却は空冷式である。
【0083】
図8に示されているように、バッテリファン156と、第3熱交換器55と、バッテリ101とは、隣接して前記の順に配置されている。バッテリファン156による風は第3熱交換器55を通ってバッテリ101にあてられ、バッテリ101を冷却、又は加温する。バッテリ101は、一端面と、前記一端面に対して対向する他端面とに開口部が設けられている囲い102に囲われている。エバポレータ55は、囲い102の前記一端面の開口部に隙間なく嵌められている。第3熱交換器55は、第3熱交換器55の一面が囲い102の外側および第3熱交換器55の他面が囲い102の内側にそれぞれ向いて配置されている。また、囲い102の内部には、第3熱交換器55と、バッテリ101との間にバッテリヒータ160が配置されている。
【0084】
バッテリヒータ160は、建設機械が備えているヒータ用バッテリの電力により熱を発生して、バッテリ101を加温することができる。バッテリヒータ160は、例えば流体が低温時でヒートポンプ効果が低い場合に、第3熱交換器55からの送風とは別な加温源としてバッテリ101を温めることが可能である。囲い102により、バッテリヒータ160の作動時、非作動時とも、バッテリファン156による風は、第3熱交換器55を通って、ほぼ全量がバッテリ101にあてられる。そのため、バッテリ101の温度は、効率的に調整される。
【0085】
バッテリ101は、バッテリ温度センサ103を有し、バッテリ温度センサ103はコントローラ111に接続されている。また、バッテリヒータ160はコントローラ111に接続されている。コントローラ111は、バッテリ101の温度に応じてバッテリヒータ160の作動を制御可能である。
【0086】
図8を参照して、ファン40の回転制御方法を、以下に説明する。
【0087】
[バッテリ101の冷却時におけるファン40の回転制御]
コントローラ111はバッテリ温度センサ103の出力に基づいて、バッテリ101が所定温度範囲内かどうか判定する。バッテリ101が所定温度範囲より高温時には、ファン40による風が第2熱交換器53から第1熱交換器31への方向に流れるようにファン40を制御する。それにより、上部旋回体の内部に比べて冷たい空気が上部旋回体の外部空間から取り入れられ、第2熱交換器53が効率的に冷却される。第2熱交換器53で冷却された冷媒は、第3熱交換器55に供給される。バッテリファン156は第3熱交換器55に送風し、第3熱交換器55により冷やされた空気がバッテリ101を冷却する。以上により、熱交換装置100はバッテリ101を効率よく冷却することができる。
【0088】
[バッテリ101の加温時におけるファン40の回転制御]
コントローラ111はバッテリ温度センサ103の出力に基づいて、バッテリ101が所定温度範囲内かどうか判定する。バッテリ101が所定温度範囲より低温時には、ファン40による風が第1熱交換器31から第2熱交換器53への方向に流れるようにファン40を制御する。第1熱交換器31には、作業機構20により温められた流体が流れており、ファン40は第1熱交換器31から放出された熱により温められた風を第2熱交換器53に送風して第2熱交換器53が温められる。第2熱交換器53において加温された冷媒は、第3熱交換器55に供給される。バッテリファン156は第3熱交換器55に送風し、第3熱交換器55により熱せられた空気がバッテリ101を加温する。以上により、熱交換装置100はバッテリ101を効率よく加熱することができる。
【0089】
建設機械の運転中、熱交換装置100は上記制御を継続して、バッテリ101を冷却、又は加熱する。それにより、バッテリ101の温度は、バッテリ101の使用に最適な所定温度範囲内に維持される。
【0090】
[バッテリヒータ160の作動制御]
図8に示されているバッテリヒータ160を説明する。外気温が低温の時には、従来のヒートポンプ式の熱交換機構ではバッテリ101の加熱効率が低下する。熱交換装置100は、ヒートポンプ作用による加熱に加えて、バッテリヒータ160により、必要に応じて追加的にバッテリ101を温めることができる。バッテリヒータ160は、バッテリ温度が所定温度範囲より低い時に、流体の温度および外気温の少なくとも何れか一方の状態に応じて、コントローラ111により作動制御される。バッテリヒータ160は、建設機械が備えているバッテリの電力により、公知の方法で熱を発生する。バッテリヒータ160が作動することによりバッテリ101が加熱されて、最適な使用温度範囲内に維持される。
【0091】
図4を参照して、バッテリヒータ160の作動を説明する。建設機械の始動直後、作業機構20を流れるオイルの温度Tは、バッテリヒータ160の加熱を停止する温度である閾値より低い。また、建設機械の始動直後、バッテリ101は常温であり、所定温度範囲より低いため、コントローラ111はバッテリヒータ160を作動させる。バッテリヒータ160は、バッテリ101の温度が所定温度範囲より低い場合、作業機構20を流れるオイルの温度Tに応じて、コントローラ111により制御される。コントローラ111は、作業機構20を流れるオイルの温度Tを検出する温度センサ14を有しており、オイルの温度Tの検出は、熱交換部150が作動中、常時行われる。
【0092】
建設機械が一定時間作動してオイルの温度Tが上がり閾値T11以上になると、オイルクーラにより構成される第1熱交換器31からの放熱量が多くなる。この状態で、コントローラ111は、バッテリヒータ160の作動を停止する。したがって、バッテリ101を加熱中において、オイルの温度Tが閾値T11以上では、バッテリヒータ160を使用せずに、第2熱交換器53から吸熱して第3熱交換器55から放熱するヒートポンプ作用のみで加熱する。また、オイルの温度Tが下がり閾値T10以下になると、コントローラ111は再びバッテリヒータ160を作動させて、ヒートポンプ作用とバッテリヒータ160とでバッテリを加熱する。バッテリヒータ160は、作業機構20を流れるオイルの温度Tに応じて制御され、上記動作が繰り返し行われる。バッテリヒータ160をこのように制御することで、加熱効果が低い始動直後においても、素早く、かつ必要なだけ加熱されるとともに、オイルの温度Tが高くなった時にはバッテリヒータ160の作動を停止させてバッテリ101の電力消費を防ぐことができる。
【0093】
また、バッテリヒータ160は、オイルクーラにより構成される第1熱交換器31の周辺部の外気温tに応じて、作動を制御することが可能である。コントローラ111は、31周辺の外気温tを検出する温度センサ18を有している。温度センサ18は、第1熱交換器31の周辺部に取付けられている。温度センサ18による第1熱交換器31の周辺部の外気温tの検出は、熱交換部150が作動中、常時行われている。建設機械の始動直後等では第1熱交換器31からの放熱量は少なく、熱交換部150の加熱効果は不足する。したがって、第2熱交換器53からの吸熱度合いの指標となる第1熱交換器31の周辺部の外気温tを検出し、バッテリヒータ160をオンオフ制御して、バッテリ101を加熱する。なお、温度センサ18に替えて、温度センサ14を用いて第1熱交換器31からの放熱量を推定することもでき、同様の効果を得ることができる。
【0094】
図4に示すように、コントローラ111は、オイルクーラにより構成される第1熱交換器31の周辺部の外気温tが閾値T12以下ではバッテリヒータ160をオンし、閾値T13以上ではバッテリヒータ160をオフする。また、コントローラ111は、第1熱交換器31の周辺部の外気温tが閾値T12以下に下がると再度バッテリヒータ160をオンし、閾値T13以上になったらバッテリヒータ160をオフする。この動作が繰り返し行われる。第2熱交換器53の吸熱状態との相関は、オイルの温度Tより第1熱交換器31の周辺部の外気温tの方がより高いと考えられる。したがって、バッテリヒータ160を効率的に作動制御可能である。
【0095】
[オイル温度が許容上限閾値T8に至った時におけるファン40の回転制御]
図5を参照して、バッテリ101を加熱中に、作業機構20のオイル温度が閾値T1を超え、許容上限閾値T8に至った時のファン40の回転制御を説明する。バッテリ101を加熱中、ファン40による風がオイルクーラにより構成される第1熱交換器31から第2熱交換器53の方向(内側から外側に向かう第2方向)に切り替えられている状態において、作業機構20の使用に伴ってオイル温度が許容上限閾値T8まで上昇した場合、コントローラ111はファン40による送風方向を、バッテリ101を冷却する時と同じ方向、すなわち第2熱交換器53からオイルクーラにより構成される第1熱交換器31の方向(外側から内側に向かう第1方向)に変更する。ファン40による風は、外側から内側に向かう第1方向が、内側から外側に向かう第2方向より、流れる空気の温度が低いので冷却効率がよい。そのため、オイル温度が許容上限閾値T8に至った時には、作業機構20のオイル温度の冷却を優先し、ファン40による風の向きは冷却性がよい第1方向に変更される。
【0096】
また、バッテリ101の加熱中に、ファン40による送風方向がバッテリ101の冷却時と同じ第1方向に変更されている時には、第2熱交換器53からの吸熱量が低下するため、熱交換部150による加熱性能が不足する場合がある。その時は、コントローラ111はバッテリヒータ160をオンにし、上記制御により風向きが第1方向に制御されている間、バッテリ101はバッテリヒータ160により加熱される。
図5に示されているように、上記のファン40による風向き変更の制御により、オイル温度は許容上限閾値T8から正常範囲内の温度に低下する。オイル温度が閾値T7に低下した場合、バッテリ101を加熱する必要がある場合は、再びファン40による風向きは第2方向に変更される。それと同時に、バッテリヒータ160の作動が停止される。オイル温度が閾値T1を超え、温度が許容上限閾値T8に再度至った時には、上記制御が繰り返される。
【0097】
昇温装置32の作動制御方法は、
図4に示す第1実施例と同じである。第1実施例の説明において、コントローラ11、暖房ヒータ60および空調装置50を、コントローラ111、バッテリヒータ160および熱交換部150に読み替えて、第3実施例における昇温装置32の説明とする。
【0098】
[変形例]
熱交換部150は、2つのファン40、40を有していてもよい。その場合の構成は、
図6および
図7に示されている第2実施例と同様であり、その説明を省略する。
【0099】
<第4実施例>
図9および
図10を参照して、本発明の第4実施例である熱交換装置200を説明する。
図9および
図10は、第4実施例の熱交換装置200を示す概要図である。第1実施例では、熱交換部50は運転室の空調を行うのに対し、第4実施例では、熱交換部50が温度調整する対象部が建設機械に搭載されているバッテリ101である点が異なっている。また、第4実施例は、第1実施例の四方弁52に替えて、切替弁252を備えていることが異なっている。なお、第1実施例と同じ装置、同じ部材については、同じ符号を用いてその説明を省略する。なお、第1実施例と同じ装置、同じ部材については、同じ符号を用いてその説明を省略する。
【0100】
熱交換装置200は、流体が流れる流体配管の経路中に設けられて流体を冷却する第1熱交換器であるオイルクーラ31、熱交換部250および、送風用のファン40を有している。熱交換部250は、第2熱交換器53、切替弁252、中間熱交換機構257、バッテリヒータ260、ポンプ270、第3熱交換器104およびコントローラ211を有している。上部旋回体の内部において、外側から内側に向けて、第2熱交換器53、オイルクーラ31およびファン40の順で配置されている。第2熱交換器53は、例えばコンデンサ53で構成されている。
【0101】
建設機械は、走行用および作業機構用駆動用の少なくとも何れか一方のためにバッテリ101を搭載している。バッテリ101は、所定温度範囲で使用されることで、出力を安定的に保てるとともに、バッテリ寿命の短縮を抑えることができる。第3熱交換器104は、前記所定温度範囲より高温時にバッテリ101を冷却するとともに、前記所定温度範囲より低温時にバッテリ101を加熱する。なお、第4実施例においては、バッテリ101は冷媒により冷却される。すなわち、バッテリ101の冷却は水冷式である。
【0102】
図9および
図10に示されているように、中間熱交換機構257は、第2熱交換器53と、温度調整対象部であるバッテリ101を調温する第3熱交換器104との間に介在して、第2熱交換器53および第3熱交換器104の何れか一方から何れか他方へ熱を伝達する装置である。中間熱交換機構257は、2つの切替弁252を介して第2熱交換器53および第3熱交換器55につながる配管に接続されており、バッテリ101を加熱するか、冷却するかで接続経路が変更される。中間熱交換機構257は、圧縮機51、第1熱交換器255、第2熱交換器256および膨張弁54を有している。
【0103】
図9を参照しながら、熱交換部250および中間熱交換機構257の配管経路について説明する。
図9は、バッテリ101を加熱する場合を示しており、第2熱交換器53および第3熱交換器55がそれぞれ含まれる別な配管系統、すなわち経路Cと、経路Dとが構成されている。矢印Cで示されている経路Cは、第2熱交換器53、切替弁252、第1熱交換器255、切替弁252、ポンプ270を接続して構成されている。矢印Dで示されている経路Dは、第3熱交換器104、切替弁252、第2熱交換器256、切替弁252、ポンプ270を接続して構成されている。さらに、圧縮機51を含む圧縮機経路が構成されている。圧縮機経路は、圧縮機51、第2熱交換器256、膨張弁54および第1熱交換器255を接続して構成されている経路である。
【0104】
図10を参照しながら、熱交換部250および中間熱交換機構257の配管経路について説明する。
図10は、バッテリ101を冷却する場合を示しており、第2熱交換器53および第3熱交換器55がそれぞれ含まれる別な配管系統、すなわち経路Eと、経路Fとが構成されている。矢印Eで示されている経路Eは、第2熱交換器53、切替弁252、第2熱交換器256、切替弁252、ポンプ270を接続して構成されている。矢印Fで示されている経路Fは、第3熱交換器104、切替弁252、第1熱交換器255、切替弁252、ポンプ270を接続して構成されている。
【0105】
コントローラ211は、温度センサ103によりバッテリ101の温度を常時モニタしており、コントローラ211は、バッテリ101の温度に応じてバッテリ101を冷却、又は加熱するように熱交換装置200を制御する。
【0106】
図9を参照して、第1熱交換器255および第2熱交換器256を説明する。2つの切替弁252の間には2本の配管が配置されており、1本が第1熱交換器255の内部、他の一本が第2熱交換器256の内部を貫通して配置されている。また、第1熱交換器255および第2熱交換器256は、圧縮機51を含む圧縮機経路の配管の一部が内部を貫通して配置されている。
【0107】
第1熱交換器255および第2熱交換器256の内部をそれぞれ貫通している各2本の配管同士は、熱交換が効率的に行えるように直接接して配置されている。第1熱交換器255および第2熱交換器256は、配管類を一定長さ収容できるように所定長さに形成された直方体に形成されている。第1熱交換器255および第2熱交換器256は直方体以外の形状でもよく、例えば、断面が楕円を含む円形、又は多角形である箱状に形成されていてもよい。
第1熱交換器255および第2熱交換器256の内部において、配管同士は接して配置されており、配管から配管に直接熱が伝えられる。又は、配管固定部材を介して伝えられてもよい。
【0108】
第3熱交換器104は、温度調整対象部であるバッテリ101に一体的に形成されている。第3熱交換器104は、熱交換部250を通る冷媒が流れる配管部を含んでおり、温められた冷媒により第3熱交換器104からバッテリ101に熱を伝えることができる。又は、第3熱交換器104を流れる冷媒が熱くなったバッテリ101から熱を吸収することができる。又は、第3熱交換器104は、バッテリ101に一体的に形成されずに別体として形成されていてもよい。別体として形成された第3熱交換器104は、バッテリ101の表面に広く接触するように平面を有する形状に形成されて、バッテリ101の表面に直接接して配置されてもよい。
【0109】
[熱交換部250による熱の伝達経路-バッテリ101加熱時]
図9を参照して、中間熱交換機構257による熱の伝達を説明する。第2熱交換器53から吸収された熱は、経路Cを通る冷媒により、切替弁252を通って第1熱交換器255に供給される。第1熱交換器255において、圧縮機51を含む圧縮機経路中の冷媒に熱が伝えられ、第2熱交換器256に流れる。経路Cの冷媒の熱は、第2熱交換器256において、経路Dの冷媒に伝えられ、第3熱交換器104に供給される。このように、熱交換部250は、第2熱交換器53から熱を吸収し、中間熱交換機構257を介して第3熱交換器104に伝え、バッテリ101を加熱することができる。
【0110】
[熱交換部250による熱の伝達経路-バッテリ101冷却時]
図10を参照して、中間熱交換機構257による熱の伝達を説明する。
図10の熱交換部250は、
図9に対し切替弁252の位置のみが異なっている。第3熱交換器104から吸収されたバッテリ101の熱は、経路Fを通る冷媒により、切替弁252を通って第2熱交換器256に供給される。第2熱交換器256において圧縮機51を含む圧縮機経路中の冷媒に熱が伝えられ、冷媒は第1熱交換器255に流れる。経路Fの冷媒の熱は、第1熱交換器255において、経路Eの冷媒に伝えられ、第2熱交換器53に供給されて、第2熱交換器53から放熱される。切替弁252は、コントローラ211により切り替え制御される。このように、熱交換部250は、バッテリ101から熱を吸収し、中間熱交換機構257を介して第2熱交換器53に伝え、第2熱交換器53から放熱することで、バッテリ101を冷却することができる。
【0111】
熱交換装置200は、バッテリヒータ260を有している。バッテリヒータ260は、建設機械が備えているヒータ用バッテリの電力により熱を発生して冷媒を温め、冷媒を介してバッテリ101を加熱することができる。バッテリヒータ260は、配管に接して配置可能な図示されない発熱部を有している。バッテリヒータ260は、前記発熱部がバッテリ101に流入する冷媒が流れる配管に接した状態で配置されている。コントローラ211がバッテリヒータ260をオンにすると、冷媒を介してバッテリ101を温める。
【0112】
バッテリヒータ260は、例えば流体が低温時でヒートポンプ効果が低い場合に、エバポレータで構成される第3熱交換器55からの送風とは別な加熱源としてバッテリ101を温めることができる。バッテリヒータ260は、第3熱交換器104を通る経路D中の配管に接して配置されており、熱を発生させることで、第3熱交換器104を通る前記配管内の冷媒を温める。温められた冷媒は、第3熱交換器104に流れ、バッテリ101は、効率的に加熱される。第3実施例の熱交換装置100のバッテリヒータ160は、風を介してバッテリ101を温めるのに対し、第4実施例のバッテリヒータ260は、冷媒を介してバッテリ101を温める。バッテリヒータ260は、バッテリ101が所定温度範囲外の時に、流体の温度および外気温の少なくとも何れか一方に応じて、コントローラ211により作動制御され、ヒートポンプ作用が低下する条件下において、バッテリ101を温める。
【0113】
[バッテリヒータ260の作動制御]
バッテリヒータ260は、バッテリ温度が所定温度範囲より低い時に、流体の温度および外気温の少なくとも何れか一方の状態に応じて、コントローラ211により作動制御される。より具体的なバッテリヒータ260の作動制御は、第3実施例における、コントローラ111によるバッテリヒータ160の制御と共通である。
【0114】
熱交換装置200は、昇温装置32を有している。昇温装置32の作動制御方法は、第1実施例の昇温装置32と共通している。第1実施例の説明において、コントローラ11、暖房ヒータ60および空調装置50を、コントローラ211、バッテリヒータ160および熱交換部150と読み替えることで、昇温装置32の説明とする。
【0115】
また、バッテリ101の加熱中に、ファン40による送風方向がバッテリ101の冷却時と同じ第1方向に変更されている時には、第2熱交換器53からの吸熱量が低下するため熱交換部250による加熱性能が低下する場合がある。その不足を補うため、ファン40による風向きが第1方向に変更される。その時は、コントローラ211はバッテリヒータ260をオンにし、風向きが第1方向の間、バッテリ101はバッテリヒータ260により加熱される。
図5に示されているように、上記のファン40による風向き変更の制御により、オイル温度は許容上限閾値T7から低下して正常範囲内に低下する。オイル温度が正常範囲内に低下した場合、バッテリ101の加熱中は、再びファン40による風向きは第2方向に変更される。それと同時に、バッテリヒータ260の作動が停止される。オイル温度が閾値T1を超え、温度が許容上限閾値T7に再度至った時には、上記制御が繰り返される。
【0116】
バッテリファン156による送風によりバッテリ101を調温する第3実施例の熱交換装置100に対し、第4実施例の熱交換装置200ではバッテリ101に接して配置されている第3熱交換器104に冷媒を流し、熱伝導によりバッテリ101を調温する。第4実施例の熱交換装置200は、直接的に接してバッテリ101の熱交換を行うため、バッテリファン156が設置しにくい場合、スペースが限られる場合などに有用である。
【0117】
本発明は、従来に比べ消費電力を削減しながら、温度調整対象部を効率的に温度調整することができる熱交換装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0118】
10‥熱交換装置、
31‥第1熱交換器(オイルクーラ)、
53‥第2熱交換器、
32‥昇温装置、
40‥ファン、
50‥熱交換部(空調装置、バッテリ調温装置)、
53‥第2熱交換器(コンデンサ)、
55,104‥第3熱交換器、
60‥暖房ヒータ、
160,260‥バッテリヒータ、
257‥中間熱交換機構。