(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168315
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】太陽電池パネル用分離装置および太陽電池モジュールの分解システム
(51)【国際特許分類】
B09B 3/35 20220101AFI20231116BHJP
B09B 3/40 20220101ALI20231116BHJP
B09B 5/00 20060101ALI20231116BHJP
H01L 31/048 20140101ALI20231116BHJP
【FI】
B09B3/35
B09B3/40 ZAB
B09B5/00 A
H01L31/04 560
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023079418
(22)【出願日】2023-05-12
(31)【優先権主張番号】P 2022079617
(32)【優先日】2022-05-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100142424
【弁理士】
【氏名又は名称】細川 文広
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 創
(72)【発明者】
【氏名】秋元 裕太
(72)【発明者】
【氏名】井上 泰治
(72)【発明者】
【氏名】太田 幹人
(72)【発明者】
【氏名】陶浪 暁彦
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 享司
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 祐至
(72)【発明者】
【氏名】鴨下 時男
(72)【発明者】
【氏名】市川 尚
(72)【発明者】
【氏名】折原 正教
(72)【発明者】
【氏名】宮田 紘行
(72)【発明者】
【氏名】中村 建太
【テーマコード(参考)】
4D004
5F251
【Fターム(参考)】
4D004AA23
4D004AB03
4D004BA10
4D004CA04
4D004CA08
4D004CA12
4D004CA23
4D004CB33
5F251JA02
5F251JA30
(57)【要約】
【課題】複雑な設備を特には必要とせずに、連続的に安定して、太陽電池パネルのガラス板を再利用可能なガラス片として効率よく回収することができる太陽電池パネル用分離装置および太陽電池モジュールの分解システムを提供する。
【解決手段】太陽電池パネル用分離装置は、ガラス板と、前記ガラス板の一面に封止剤を介して接合された太陽電池セルシートと、前記太陽電池セルシートに接続される配線部材とを有する太陽電池パネルの前記ガラス板と前記太陽電池セルシートとを分離する太陽電池パネル用分離装置であって、前記太陽電池パネルの搬送方向に対して垂直な方向に開口した加熱コイルを有する誘導加熱式ヒータと、前記誘導加熱式ヒータの下流に配置された回転軸を中心として回転している剥離ローラと、前記誘導加熱式ヒータで加熱された前記太陽電池パネルを、主面が水平となるように前記剥離ローラに押し当てる搬送機とを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス板と、前記ガラス板の一面に封止剤を介して接合された太陽電池セルシートと、前記太陽電池セルシートに接続される配線部材とを有する太陽電池パネルの前記ガラス板と前記太陽電池セルシートとを分離する太陽電池パネル用分離装置であって、
前記太陽電池パネルの搬送方向に対して垂直な方向に開口した加熱コイルを有する誘導加熱式ヒータと、
前記誘導加熱式ヒータの下流に配置された回転軸を中心として回転している剥離ローラと、
前記誘導加熱式ヒータで加熱された前記太陽電池パネルを、主面が水平となるように前記剥離ローラに押し当てる搬送機とを備える太陽電池パネル用分離装置。
【請求項2】
前記搬送機は、前記太陽電池パネル側から見て、前記剥離ローラが下方に向けて回転する側の周面であって、前記剥離ローラの前記回転軸の位置と同じ高さかそれよりも下方の位置に前記誘導加熱式ヒータで加熱された前記太陽電池パネルを押し当てる請求項1に記載の太陽電池パネル用分離装置。
【請求項3】
前記搬送機は、前記誘導加熱式ヒータで加熱された前記太陽電池パネルを搬送する送りローラと、前記送りローラと前記剥離ローラとの間に配置され、前記太陽電池パネルの上面を押さえる押さえ機構とを有する請求項1または2に記載の太陽電池パネル用分離装置。
【請求項4】
前記剥離ローラは、表面に凸部を有する請求項1または2に記載の太陽電池パネル用分離装置。
【請求項5】
前記加熱コイルと、前記搬送機で搬送される前記太陽電池パネルとの間には、前記太陽電池パネルの全体を均一に加熱させる輻射板を更に備える請求項1または2に記載の太陽電池パネル用分離装置。
【請求項6】
太陽電池パネルと、前記太陽電池パネルを取り囲む金属枠と、ジャンクションボックスとを備え、前記太陽電池パネルはガラス板と、前記ガラス板の一面に封止剤を介して接合された太陽電池セルシートと、前記太陽電池セルシートに接続される配線部材とを有する太陽電池モジュールの分解システムであって、
前記太陽電池モジュールの前記太陽電池パネルと、前記金属枠と、前記ジャンクションボックスとを分離する第1分離装置と、
前記第1分離装置で分離された前記太陽電池パネルの前記ガラス板と、前記太陽電池セルシートとを分離する第2分離装置とを含み、
前記第2分離装置が、請求項1または2に記載の太陽電池パネル用分離装置である太陽電池モジュールの分解システム。
【請求項7】
さらに、前記太陽電池パネルの構成元素を分析する蛍光X線検査装置を有する請求項6に記載の太陽電池モジュールの分解システム。
【請求項8】
さらに、前記第2分離装置で分離されたガラスを分級する分級機を有する請求項6に記載の太陽電池モジュールの分解システム。
【請求項9】
さらに、前記分級機で分級された粗大物と微細物のうち、前記粗大物から有色物を選別する色彩選別機を有する請求項8に記載の太陽電池モジュールの分解システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネル用分離装置および太陽電池モジュールの分解システムに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、一般に、太陽電池パネルと、太陽電池パネルを取り囲む金属枠と、ジャンクションボックスとを備える。資源の有効利用のため、使用済みの太陽電池パネルを分解して、太陽電池パネルの各構成部材で使用されている材料を回収して再利用することが行われている(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
太陽電池パネルは、一般に、ガラス板と、ガラス板の一面に封止剤を介して接合された太陽電池セルシートと、太陽電池セルシートに接続される配線部材とを有する積層体である。太陽電池パネルでは、ガラスを分離回収して再利用することが行われている。太陽電池パネルからガラスを分離回収する方法としては、太陽電池パネルを剥離剤溶液中に浸漬してガラス板を剥離させる方法(特許文献3)、太陽電池パネルを100~200℃に加熱し、次いで過熱蒸気を用いて高温に加熱することで封止剤を除去した後、ガラス板から太陽電池セルシートや配線部材を落下させる方法(特許文献4)、刃具をガラス板と太陽電池セルシートとの間に挿入する方法(特許文献5)、互いに対向する一対のローラの間に太陽電池パネルを挿入して破砕する方法(特許文献6)が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019-205982号公報
【特許文献2】特開2020-131165号公報
【特許文献3】特開2014-104406号公報
【特許文献4】特開2014-24037号公報
【特許文献5】特開2019-69428号公報
【特許文献6】特開2016-203128号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
使用済みの太陽電池パネルは年々増加する傾向にある。このため、太陽電池モジュールを複雑な設備を必要とせずに、長期間にわたって連続的に安定して、構成部材を再利用可能な形で分解することができる分解システムが望まれている。しかしながら、従来の太陽電池パネルからガラス板を分離回収する方法は、次に述べるような問題がある。剥離剤溶液を用いる方法(特許文献3)は、剥離剤溶液が消耗品であるため剥離剤溶液の交換が必要となり長期間にわたって連続的に行うことが難しく、また使用後の剥離剤溶液を処理するための設備が必要となるため処理コストが高くなるおそれがある。過熱蒸気を用いる方法(特許文献4)では、処理設備が複雑となり、設備のコストが高くなるおそれがある。
刃具を用いる方法(特許文献5)では、刃具が破損した場合には交換が必要となり長期間にわたって連続的に行うことが難しく、処理コストが高くなるおそれがある。一対のローラを用いる方法(特許文献6)では、太陽電池パネルの両面に荷重が付与させるため、ガラスが微細化し、再利用しにくくなるおそれがある。
【0006】
本発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、複雑な設備を特には必要とせずに、長期間にわたって連続的に安定して、太陽電池パネルのガラス板を再利用可能なガラス片として分離効率よく回収することができる太陽電池パネル用分離装置および太陽電池モジュールの分解システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は、下記の態様を提供する。
[1]ガラス板と、前記ガラス板の一面に封止剤を介して接合された太陽電池セルシートと、前記太陽電池セルシートに接続される配線部材とを有する太陽電池パネルの前記ガラス板と前記太陽電池セルシートとを分離する太陽電池パネル用分離装置であって、前記太陽電池パネルの搬送方向に対して垂直な方向に開口した加熱コイルを有する誘導加熱式ヒータと、前記誘導加熱式ヒータの下流に配置された回転軸を中心として回転している剥離ローラと、前記誘導加熱式ヒータで加熱された前記太陽電池パネルを、主面が水平となるように前記剥離ローラに押し当てる搬送機とを備える太陽電池パネル用分離装置。
【0008】
このような構成とされた本発明の太陽電池パネル用分離装置によれば、太陽電池パネルを剥離ローラに押し当てる前に、誘導加熱式ヒータを用いて、加熱コイルの内部に太陽電池パネルを通過させることによって太陽電池パネルをパネルの内部から加熱することができるので、太陽電池パネルを均一かつ迅速に十分加熱することが可能となる。このため、ガラス板と太陽電池セルシートとの密着力を均一に低下させることができる。よって、太陽電池パネルを剥離ローラに押し当てたときに、ガラス板と太陽電池セルシートとが分離しやすくなる。したがって、本発明の太陽電池パネル用分離装置によれば、複雑な設備を特には必要とせずに、長期間にわたって連続的に安定して、太陽電池パネルのガラス板を再利用可能なガラス片として回収することができる。
【0009】
[2]前記搬送機は、前記太陽電池パネル側から見て、前記剥離ローラが下方に向けて回転する側の周面であって、前記剥離ローラの前記回転軸の位置と同じ高さかそれよりも下方の位置に前記誘導加熱式ヒータで加熱された前記太陽電池パネルを押し当てる上記[1]に記載の太陽電池パネル用分離装置。
この場合、剥離ローラに押し当てられた太陽電池パネルを下方に向かって押し下げることによって、太陽電池パネルのガラス板が破砕され、ガラス板を過度に微細化させずにガラス片として回収することができる。
【0010】
[3]前記搬送機は、前記誘導加熱式ヒータで加熱された前記太陽電池パネルを搬送する送りローラと、前記送りローラと前記剥離ローラとの間に配置され、前記太陽電池パネルの上面を押さえる押さえ機構とを有する上記[1]または[2]に記載の太陽電池パネル用分離装置。
この場合、送りローラと剥離ローラとの間に、太陽電池パネルの上面を押さえる押さえ機構が配置されているので、太陽電池パネルを剥離ローラの所定の位置に精度よく押し当てることができる。よって、太陽電池パネルのガラス板を再利用可能なガラス片としてより確実に回収することができる。
【0011】
[4]前記剥離ローラは、表面に凸部を有する上記[1]から[3]のいずれかに記載の太陽電池パネル用分離装置。
この場合、剥離ローラに押し当てられた太陽電池パネルをより確実に下方に向かって押し下げることができる。よって、太陽電池パネルのガラス板を再利用可能なガラス片としてさらに確実に回収することができる。
【0012】
[5]前記加熱コイルと、前記搬送機で搬送される前記太陽電池パネルとの間に、前記太陽電池パネルの全体を均一に加熱させる輻射板を更に備える上記[1]から[4]のいずれかに記載の太陽電池パネル用分離装置。
この場合、加熱コイルからの誘導加熱によって輻射板を加熱し、この輻射板から太陽電池パネルの全体(全面)に熱線を輻射させることで、太陽電池パネルの全体をムラなく均一に発熱させることが可能になる。よって、より安定してガラス板と太陽電池セルシートとが分離しやすくなる。
【0013】
[6]太陽電池パネルと、前記太陽電池パネルを取り囲む金属枠と、ジャンクションボックスとを備え、前記太陽電池パネルはガラス板と、前記ガラス板の一面に封止剤を介して接合された太陽電池セルシートと、前記太陽電池セルシートに接続される配線部材とを有する太陽電池モジュールの分解システムであって、前記太陽電池モジュールの前記太陽電池パネルと、前記金属枠と、前記ジャンクションボックスとを分離する第1分離装置と、前記第1分離装置で分離された前記太陽電池パネルの前記ガラス板と、前記太陽電池セルシートとを分離する第2分離装置とを含み、前記第2分離装置が、上記[1]から[5]のいずれかに記載の太陽電池パネル用分離装置である太陽電池モジュールの分解システム。
【0014】
このような構成とされた本発明の太陽電池モジュールの分解システムによれば、第2分離装置が、上記本発明の太陽電池パネル用分離装置であるので、複雑な設備を特には必要とせずに、長期間にわたって連続的に安定して、太陽電池パネルのガラス板を再利用可能なガラス片として回収することができる。
【0015】
[7]さらに、前記太陽電池パネルの構成元素を分析する蛍光X線検査装置を有する上記[6]に記載の太陽電池モジュールの分解システム。
この場合、分解処理前に有害元素を含有する太陽電池モジュールを排除することができる。このため、分解処理時での有害物質の発生を抑えることができる。
【0016】
[8]さらに、前記第2分離装置で分離されたガラスを分級する分級機を有する上記[6]または[7]に記載の太陽電池モジュールの分解システム。
この場合、分級機を用いて、第2分離装置で得られたガラス片を用途に合わせた粒度に調整することができる。
【0017】
[9]さらに、前記分級機で分級された粗大物と微細物のうち、前記粗大物から有色物を選別する色彩選別機を有する上記[8]に記載の太陽電池モジュールの分解システム。
この場合、色彩選別機を用いて、第2分離装置で得られたガラス片の中から透明物を選択して回収することができ、これにより得られた透明物をガラス再資源化用として有効に利用することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、複雑な設備を特には必要とせずに、長期間にわたって連続的に安定して、太陽電池パネルのガラス板を再利用可能なガラス片として効率よく回収することができる太陽電池パネル用分離装置および太陽電池モジュールの分解システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールの分解システムにおいて分解対象となる太陽電池モジュールの一例の斜視図である。
【
図2】本発明の一実施形態に係る太陽電池パネル用分離装置の構成を示す概略構成図である。
【
図3】
図2に示す太陽電池パネル用分離装置で用いられる誘導加熱式ヒータの斜視図である。
【
図4】
図2に示す太陽電池パネル用分離装置の剥離ローラの周囲の拡大図である。
【
図5】本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールの分解システムを説明するブロック図である。
【
図6】誘導加熱式ヒータの別な実施形態を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る太陽電池パネル用分離装置および太陽電池モジュールの分解システムについて、図面を参照して説明する。
【0021】
本発明の一実施形態である太陽電池モジュールの分解システムにおいて分解対象となる太陽電池モジュールについて説明する。
図1は、太陽電池モジュール10の一例の斜視図である。
図1に示すように、太陽電池モジュール10は、太陽電池パネル11と、太陽電池パネル11を取り囲む金属枠16と、太陽電池パネル11の背面に接続されているジャンクションボックス17とを備える。太陽電池パネル11は、ガラス板12と、ガラス板12の一面に封止剤15を介して接合された太陽電池セルシート13と、太陽電池セルシート13のガラス板12側とは反対側の面に封止剤15を介して接合されたバックシート14を有する。
【0022】
太陽電池パネル11のガラス板12は、太陽電池セルシート13の受光面(前面)を保護する機能を有する。ガラス板12は、通常、無色透明である。ガラス板12の厚さは、例えば、2mm以上4mm以下の範囲内にある。太陽電池セルシート13は、複数個の太陽電池セルが配線部材(不図示)より接続されてシート状に形成されたものである。配線部材の材料としては、例えば、銅などの金属を用いることができる。バックシート14は、太陽電池セルシート13の背面を保護する機能を有する。バックシート14の材料としては、例えば、フッ素系樹脂材料を用いることができる。封止剤15は、ガラス板12と太陽電池セルシート13および太陽電池セルシート13とバックシート14とを接合する。封止剤の材料としては、例えば、EVA(エチレン・ビニル・アセテート)などの樹脂材料を用いることができる。
【0023】
金属枠16は、太陽電池パネル11の強度を持たせる機能を有する。金属枠16の材料としては、例えば、アルミニウム、鉄などの金属を用いることができる。ジャンクションボックス17は、太陽電池セルシート13の配線部材と接続する外部端子が収容されたケースである。
【0024】
次に、本発明の一実施形態に係る太陽電池パネル用分離装置を説明する。
図2は、太陽電池パネル用分離装置20の構成を示す概略構成図である。
図3は、
図2に示す太陽電池パネル用分離装置20で用いられる誘導加熱式ヒータの斜視図であり、
図4は、太陽電池パネル用分離装置20の剥離ローラ22の周囲の拡大図である。
【0025】
図2に示すように、太陽電池パネル用分離装置20は、基台21の上に配置された、誘導加熱式(IH)ヒータ30と、誘導加熱式ヒータ30の後段に配置された剥離ローラ22と、ローラ駆動装置23、搬送機24、搬送ガイド27を有する。
【0026】
誘導加熱式ヒータ30は、
図3に示すように、加熱コイル31を有する。加熱コイル31は、太陽電池パネル11の搬送方向に対して垂直な方向に開口している。加熱コイル31の内部に太陽電池パネル11を通過させることによって、太陽電池パネル11内の配線部材などの金属部材が電磁誘導で加熱される。このため、太陽電池パネル11全体を均一かつ迅速に十分加熱することができる。また、例えば、太陽電池パネル11に向けて熱線を直接照射する赤外線ヒータ、この赤外線ヒータによって空気を高温に加熱した熱風を噴射させる熱風式ヒータなど、太陽電池パネル11の温度を昇温可能な各種形態のヒータを誘導加熱式ヒータ30と組み合わせて使用しても良い。
【0027】
剥離ローラ22は、回転軸22aを中心として回転可能とされている。剥離ローラ22の直径は、300mm以上500mm以下の範囲内にあることが好ましい。剥離ローラ22は、表面に凸部22bを有する。凸部22bの形状は特に制限はない。本実施形態では、凸部22bは、
図4に示すように、剥離ローラ22の幅方向に延びる断面が四角形状の突起とされている。凸部22bの高さは、10mm以上30mm以下の範囲内にあることが好ましい。凸部22bのピッチは50mm以上100mm以下の範囲内にあることが好ましい。ローラ駆動装置23は、剥離ローラ22を回転させる駆動装置である。剥離ローラ22の回転速度は、60rpm以上80rpm以下の範囲内にあることが好ましい。
【0028】
搬送機24は、太陽電池パネル11を搬送する送りローラ25と、送りローラ25と剥離ローラ22との間に配置され、太陽電池パネル11の上面を押さえる押さえ機構26とを有する。送りローラ25は、互いに対向する一対の回転ローラ25a、25bとからなる。太陽電池パネル11は、回転ローラ25aと回転ローラ25b間に挿入されることによって、主面が水平となるように搬送される。
【0029】
なお、本実施形態において、水平とは、厳密な水平のみを意味するのではなく、実質的に水平であればよい。例えば、太陽電池パネルの主面は、基台21の上面に対して2度以内で傾斜していてもよい。押さえ機構26は、剥離ローラ22に接触した際に太陽電池パネル11が浮き上がるのを防止する。
【0030】
押さえ機構26の構成は特に制限なく、例えば、ローラであってもよいし、太陽電池パネル11の搬送方向に対して垂直に伸びた柱状体であってもよい。柱状体の断面は、四角形状であってもよいし、円形状であってもよい。
【0031】
また、本実施形態では、押さえ機構26として押さえローラを示しているが、これ以外にも、押さえ機構26として、太陽電池パネル11の上面に接するよう押さえプレートを用いることも好ましい。この場合、押さえプレートのパネルとの接触部は平坦であってもよいし、凹凸があってもよい。こうした押さえプレートを用いることで、押さえローラよりも、太陽電池パネル11との接触部と剥離ローラ22間のギャップが小さくなるため、太陽電池パネル11の長さ方向の末端まで剥離ローラ22に確実に押し当てることができる。
【0032】
搬送機24は、太陽電池パネル11側から見て、剥離ローラ22が下方に向けて回転する側の周面であって、剥離ローラ22の回転軸22aの位置と同じ高さかそれよりも下方の位置に太陽電池パネル11を主面が水平となるように押し当てる。太陽電池パネル11を剥離ローラ22に押し当てる位置は、回転軸22aの位置と同じ高さから±10mmの位置の範囲内にあることが好ましい。搬送ガイド27は、回転ローラ25aと回転ローラ25b間に太陽電池パネル11が挿入されるように、太陽電池パネル11を案内する。
【0033】
剥離ローラ22の下には、太陽電池パネル11から分離された太陽電池セルシート13とバックシート14を払い出す払出ローラ28が配置されている。払出ローラ28の表面は平らであってもよいし、凹凸があってもよい。払出ローラ28は、剥離ローラ22で分離された太陽電池セルシート13とバックシート14を略垂直に払い出すためのガイドとしての機能を有する。また、剥離ローラ22の下には、太陽電池パネル11から分離したガラス板12の破砕物(ガラス片12a)を回収するガラス回収容器29が配置されている。
【0034】
太陽電池パネル用分離装置20を用いた太陽電池パネル11の分離処理は、次のようにして行われる。
【0035】
太陽電池パネル11を搬送ガイド27に沿って搬送する。太陽電池パネル11は、ガラス板12が上となるように搬送することが好ましい。太陽電池パネル11の搬送速度は、例えば、2.0m/min以上3.5m/min以下の範囲内にある。
【0036】
次に、太陽電池パネル11を、誘導加熱式ヒータ30によって加熱する。加熱によって、太陽電池パネル11の封止剤15が軟化、溶融あるいは分解して、ガラス板12と太陽電池セルシート13との密着力が低下することにより、ガラス板12と太陽電池セルシート13とが剥がれやすくなる。誘導加熱式ヒータ30による太陽電池パネル11の加熱温度は、封止剤15の材料によっても異なるが、80℃以上120℃以下の範囲内とすることが好ましい。本実施形態の太陽電池パネル用分離装置20では、加熱コイル31の内部に太陽電池パネル11を通過させるので、太陽電池パネル11全体を均一かつ迅速に十分加熱することができる。
【0037】
次に、加熱された太陽電池パネル11を、剥離ローラ22に押し当てる。剥離ローラ22に押し当てられた太陽電池パネル11は、剥離ローラ22の回転と凸部22bによって下方に向かって押し下げられる。これにより、ガラス板12は破砕され、ガラス片12aとして、太陽電池パネル11から分離される。このとき、太陽電池パネル11には下方に向かう一方の方向にのみ荷重が付与されるので、ガラス片12aは微細化しにくく、再利用可能なサイズのガラス片が得られる。一方、太陽電池パネル11から分離された太陽電池セルシート13とバックシート14は、払出ローラ28によって略垂直に払い出される。一方、ガラス片12aはガラス回収容器29に貯留される。
【0038】
以上のような構成とされた本実施形態の太陽電池パネル用分離装置20によれば、太陽電池パネル11を剥離ローラ22に押し当てる前に、誘導加熱式ヒータ30を用いて、加熱コイル31の内部に太陽電池パネル11を通過させることによって、太陽電池パネル11をパネルの内部から加熱することができるので、太陽電池パネル11を均一かつ迅速に十分加熱することが可能となる。このため、ガラス板12と太陽電池セルシート13との密着力を均一に低下させることができる。よって、太陽電池パネル11を剥離ローラ22に押し当てたときに、ガラス板12と太陽電池セルシート13とが分離しやすくなる。したがって、本実施形態の太陽電池パネル用分離装置20によれば、複雑な設備を特には必要とせずに、長期間にわたって連続的に安定して、太陽電池パネル11のガラス板12を再利用可能なガラス片12aとして回収することができる。
【0039】
また、本実施形態の太陽電池パネル用分離装置20によれば、搬送機24は、太陽電池パネル11側から見て、剥離ローラ22が下方に向けて回転する側の周面であって、剥離ローラ22の回転軸22aの位置と同じ高さかそれよりも下方の位置に誘導加熱式ヒータで加熱された太陽電池パネル11を押し当てるように構成されているので、剥離ローラ22に押し当てられた太陽電池パネル11を下方に向かって押し下げることによって、太陽電池パネル11のガラス板12が破砕される。このため、ガラス板12を過度に微細化させずにガラス片12aとして回収することができる。
【0040】
また、本実施形態の太陽電池パネル用分離装置20によれば、搬送機24は、太陽電池パネル11を搬送する送りローラ25と、送りローラ25と剥離ローラ22との間に配置され、太陽電池パネル11の上面を押さえる押さえ機構26とを有するので、太陽電池パネル11を剥離ローラ22の所定の位置に精度よく押し当てることができる。よって、太陽電池パネル11のガラス板12を再利用可能なガラス片12aとしてより確実に回収することができる。ただし、搬送機24はこれに限定されるものではない。例えば、送りローラ25の代わりにベルトコンベアおよびシリンダー式の押出機などの搬送装置を用いてもよい。
【0041】
また、本実施形態の太陽電池パネル用分離装置20によれば、剥離ローラ22は、表面に凸部22bを有するので、剥離ローラ22に押し当てられた太陽電池パネル11をより確実に下方に向かって押し下げることができる。よって、太陽電池パネル11のガラス板12を再利用可能なガラス片12aとしてさらに確実に回収することができる。なお、実施形態の太陽電池パネル用分離装置20では、凸部22bは、剥離ローラ22の幅方向に延びる断面が四角形状の突起とされているが、凸部22bの形状は、これに限定されるものではない。凸部22bは、太陽電池パネル11を下方に向かって押し下げることができる形状であればよく、例えば、凸部22bの断面形状は、三角形状や半円形状であってもよい。また、剥離ローラ22によって太陽電池パネル11を下方に向かって押し下げることが可能であれば、凸部22bは省略してもよい。
【0042】
また、本実施形態の太陽電池パネル用分離装置20においては、太陽電池パネル11から分離したガラス片12aをガラス回収容器29にて一旦貯留させるように構成されているが、ガラス片12aの回収方法はこれに限定されるものではない。例えば、ガラス回収容器29にベルトコンベアを配置して、ガラス片12aを連続的に取り出せるようにしてもよい。
【0043】
次に、前述した実施形態の太陽電池パネル用分離装置20において、誘導加熱式ヒータ30の別な実施形態を説明する。
図6は、誘導加熱式ヒータの別な実施形態を示す斜視図である。
本実施形態の誘導加熱式ヒータ30は、加熱コイル31と、輻射板32とを備えている。
【0044】
加熱コイル31は、前述した実施形態のものと同様の構成であればよい。
輻射板32は、加熱コイル31と、搬送ガイド27に沿って搬送される太陽電池パネル11との間に配置される。このような構成によって、誘導加熱式ヒータ30は、誘導加熱によって輻射板32を昇温させる。そして、輻射板32は、昇温によって発生する赤外線(熱線)を、太陽電池パネル11に向けて照射する。
【0045】
輻射板32は、誘導加熱によって発熱する材料、例えば、グラファイト、鉄類などを用いることができる。本実施形態では、輻射板32として、グラファイト板を用いている。また、輻射板32のサイズは、搬送される太陽電池パネル11の幅と同じか、それよりも大きいものを用いることが好ましい。これにより、太陽電池パネル11の両端部までムラなく昇温させることができる。
【0046】
こうした構成によれば、誘導加熱式ヒータ30の加熱コイル31からの誘導加熱によって直接太陽電池パネル11を昇温させる場合と比較して、本実施形態のように輻射板32を介して太陽電池パネル11を加熱する場合、太陽電池パネル11全体に均一に赤外線が照射されるので、太陽電池パネル11の全体(全面)に渡って、ほぼ均一な温度なるようにムラなく昇温させることが可能になる。これにより、後段側の剥離ローラ22において、太陽電池セルシートの一部分にガラス片が固着して剥離しない領域が生じることを防止できる。
【0047】
次に、太陽電池モジュールの分解システムについて説明する。
図5は、本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールの分解システムを説明するブロック図である。
【0048】
図5に示すように、太陽電池モジュールの分解システム40は、蛍光X線検査装置41、第1分離装置42、第2分離装置43、シート裁断機44、分級機45、色彩選別機46を備える。
【0049】
蛍光X線検査装置41は、太陽電池パネル11の構成元素を分析する。太陽電池パネル11のガラス板12や太陽電池セルシート13には、有害元素(例えば、ヒ素)を含んでいる場合がある。このため、太陽電池パネル11の構成元素を分析して、有害元素を含んでいる場合には分解処理を中断する。
【0050】
第1分離装置42は、太陽電池モジュール10を太陽電池パネル11と、金属枠16と、ジャンクションボックス17とに分離する。金属枠16は、例えば、内側から油圧駆動の押出治具により押し広げて、金属枠16を変形させる方法によって分離することができる。ジャンクションボックス17は、スクレーバなどの刃状器具をジャンクションボックス17と太陽電池パネル11との間に押し込む方法によって太陽電池パネル11から分離することができる。
【0051】
第2分離装置43は、太陽電池パネル11のガラス板12と太陽電池セルシート13とを分離する。第2分離装置43としては、上述の太陽電池パネル用分離装置20を用いることができる。
【0052】
シート裁断機44は、太陽電池パネル11から分離された太陽電池セルシート13およびバックシート14を裁断する。
【0053】
分級機45は、第2分離装置43で分離回収されたガラス片12aを分級する。分級機45としては、例えば、振動篩機を用いることができる。分級機45は、例えば、最長径が2.0mm以上の粗大物12bと最長径が2.0mm未満の微細物12cとに分級するように設定されていてもよい。
【0054】
色彩選別機46は、分級機45で分級された粗大物12bの色彩を判断し、有色物と判断されたものを分離除去する。太陽電池パネル11中の太陽電池セルなどの破砕物が付着しているガラス片は着色しているように見えるので、これらの破砕物が付着している粗大物12bを有色物12eとして分離除去する。粗大物12bから有色物12eが分離除去されることによって、透明物12dが得られる。
【0055】
太陽電池モジュールの分解システム40を用いた太陽電池パネル11の分解処理は、次のようにして行われる。
【0056】
太陽電池パネル11の元素分析を、蛍光X線検査装置41を用いて実施する。元素分析の結果、有害元素が検出されない有害元素非含有太陽電池モジュール10aについて分離処理を実施する。有害元素が検出された有害元素含有太陽電池モジュール10bは別途処理を実施する。
【0057】
次に、有害元素非含有太陽電池モジュール10aを、第1分離装置42を用いて、太陽電池パネル11と、金属枠16と、ジャンクションボックス17とに分離する。分離された金属枠16は金属再資源化原料として利用することができる。分離されたジャンクションボックス17は内部に収容されている外部端子を金属再資源化原料として利用することができる。
【0058】
次に、分離された太陽電池パネル11のガラス板12と太陽電池セルシート13とを、第2分離装置43(太陽電池パネル用分離装置20)を用いて、上述の方法により分離する。これにより、太陽電池パネル11は、太陽電池セルシート13とバックシート14の積層体と、ガラス片12aと、粉塵18とに分離される。
【0059】
太陽電池セルシート13とバックシート14の積層体は、シート裁断機44を用いて裁断する。得られた裁断物13aは、金属部材の破砕物が混入しているので、金属部材再資源化原料として利用することができる。金属部材は、例えば、配線部材および太陽電池セル内の電極などの金属で形成された部材である。
【0060】
ガラス片12aは、分級機45を用いて、粗大物12bと微細物12cとに分級する。
粗大物12bは、色彩選別機46を用いて、有色物12eを除去回収する。色彩選別機46で除去されなかった透明物12dは、ガラス再資源化原料として利用することができる。一方、色彩選別機46で除去回収された有色物12eは、表面に金属部材の破砕物が付着しているので、金属部材再資源化原料として利用することができる。微細物12cおよび粉塵18は、金属部材の破砕物が混入しているので、金属部材再資源化原料として利用することができる。また、微細物12c、透明物12d、有色物12eおよび粉塵18の中にはSiO2を含むものもあるため、こうしたSiO2を含むものは、非鉄金属製錬の硅砂代替としても利用することもできる。
【0061】
以上のような構成とされた本実施形態の太陽電池モジュールの分解システム40によれば、第2分離装置43が、上述の太陽電池パネル用分離装置20であるので、複雑な設備を特には必要とせずに、長期間にわたって連続的に安定して、太陽電池パネル11のガラス板12を再利用可能なガラス片12aとして回収することができる。
【0062】
また、本実施形態の太陽電池モジュールの分解システム40によれば、蛍光X線検査装置41を有するので、分解処理前に有害元素含有太陽電池モジュール10bを排除することができる。このため、分解処理時での有害物質の発生を抑えることができる。なお、太陽電池モジュール10が有害元素を含まないことが明らかである場合は、蛍光X線検査装置41は省略してもよい。
【0063】
また、本実施形態の太陽電池モジュールの分解システム40によれば、分級機45を有するので、第2分離装置43で得られたガラス片12aを用途に合わせた粒度に調整することができる。なお、ガラス片12aの用途によっては、分級機45は省略してもよい。
【0064】
また、本実施形態の太陽電池モジュールの分解システム40によれば、色彩選別機46を有するので、分級機45で得られた粗大物12bの中から透明物12dを選択して回収することができ、これによって得られた透明物12dをガラス再資源化用として有効に利用することができる。なお、ガラス片12aの用途によっては、色彩選別機46は省略してもよい。
【0065】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されることはなく、その発明の技術的思想を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【符号の説明】
【0066】
10 太陽電池モジュール
10a 有害元素非含有太陽電池モジュール
10b 有害元素含有太陽電池モジュール
11 太陽電池パネル
12 ガラス板
12a ガラス片
12b 粗大物
12c 微細物
12d 透明物
12e 有色物
13 太陽電池セルシート
13a 裁断物
14 バックシート
15 封止剤
16 金属枠
17 ジャンクションボックス
18 粉塵
20 太陽電池パネル用分離装置
21 基台
22 剥離ローラ
22a 回転軸
22b 凸部
23 ローラ駆動装置
24 搬送機
25 送りローラ
25a、25b 回転ローラ
26 押さえ機構
27 搬送ガイド
28 払出ローラ
29 ガラス回収容器
30 誘導加熱式ヒータ
31 加熱コイル
32 輻射板
40 太陽電池モジュールの分解システム
41 蛍光X線検査装置
42 第1分離装置
43 第2分離装置
44 シート裁断機
45 分級機
46 色彩選別機