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特開2023-16835肺におけるインフラマソーム活性及び炎症をモジュレートする方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023016835
(43)【公開日】2023-02-02
(54)【発明の名称】肺におけるインフラマソーム活性及び炎症をモジュレートする方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 45/00 20060101AFI20230126BHJP
   A61P 11/00 20060101ALI20230126BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230126BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20230126BHJP
   A61P 11/06 20060101ALI20230126BHJP
   A61P 37/00 20060101ALI20230126BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20230126BHJP
   A61P 17/02 20060101ALI20230126BHJP
   A61P 37/06 20060101ALI20230126BHJP
   A61P 25/16 20060101ALI20230126BHJP
   A61K 31/727 20060101ALI20230126BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230126BHJP
   C07K 16/28 20060101ALN20230126BHJP
【FI】
A61K45/00 101
A61P11/00
A61P35/00
A61P25/00
A61P11/06
A61P37/00
A61P29/00
A61P17/02
A61P37/06
A61P25/16
A61K31/727
A61K39/395 N
C07K16/28 ZNA
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2022181180
(22)【出願日】2022-11-11
(62)【分割の表示】P 2019536086の分割
【原出願日】2017-12-28
(31)【優先権主張番号】62/440,180
(32)【優先日】2016-12-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】514198183
【氏名又は名称】ユニバーシティ オブ マイアミ
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】キーン,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】ディートリヒ,ダルトン
(72)【発明者】
【氏名】カー,ナディーン
(72)【発明者】
【氏名】ウー,シュー
(72)【発明者】
【氏名】デ リベロ ヴァッカリ,ジュアン パブロ
(57)【要約】
【課題】肺におけるインフラマソーム活性及び炎症をモジュレートする方法等の提供。
【解決手段】本発明は、肺における炎症をもたらす病態を患う哺乳動物の肺における炎症を低減させるための組成物及び方法を提供する。本明細書に記載の組成物及び方法は、単独で、又は細胞外ベシクル取り込み阻害剤との組合せで使用される、哺乳動物におけるインフラマソームシグナリングを阻害する薬剤、例えば、インフラマソーム構成成分に対して指向される抗体を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
肺における炎症の治療を、それを必要とする患者において行う方法であって、インフラマソームシグナリングを阻害する薬剤を含む組成物を前記患者に投与し、それにより前記患者の前記肺における前記炎症を治療することを含む方法。
【請求項2】
前記肺における前記炎症が、中枢神経系(CNS)損傷、神経変性疾患、自己免疫疾患、喘息、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症、間質性肺疾患及び急性呼吸窮迫症候群から選択される病態により引き起こされる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記CNS損傷が、外傷性脳損傷(TBI)、脳卒中及び脊髄損傷(SCI)からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記神経変性疾患が、筋委縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)及びパーキンソン病(PD)からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記組成物の前記投与が、前記患者の肺細胞におけるインフラマソーム活性化の阻害をもたらす、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記組成物の前記投与が、対照と比較して前記患者の肺細胞におけるカスパーゼ-1、ヌクレオチド結合ロイシンリッチリピートピリンドメイン含有タンパク質1(NLRP1)、ヌクレオチド結合ロイシンリッチリピートピリンドメイン含有タンパク質2(NLRP2)、ヌクレオチド結合ロイシンリッチリピートピリンドメイン含有タンパク質3(NLRP3)、NLRファミリーCARDドメイン含有タンパク質4(NLRC4)、カスパーゼ-11、X連鎖アポトーシス阻害タンパク質(XIAP)、パンネキシン-1、カスパーゼ活性化リクルートメントドメイン含有アポトーシス関連スペック様タンパク質(ASC)、インターロイキン-18(IL-18)、ハイモビリティーグループボックス1(HMGB1)又はアブセントインメラノーマ2(AIM2)レベルの低減をもたらし、前記対照は、非処理患者である、請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記肺細胞が、II型肺胞細胞である、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記組成物の前記投与が、対照と比較して急性肺損傷(ALI)の低減をもたらし、前記対照は、非処理患者である、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
ALIの前記低減が、肺胞及び/又は間質腔中への好中球浸潤の低減、肺胞中隔肥厚の低減若しくは不存在又はそれらの組合せにより証明される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記薬剤が、細胞外ベシクル(EV)取り込み阻害剤、インフラマソーム構成成分に結合する抗体又はそれらの組合せである、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記EV取り込み阻害剤が、化合物又は抗体であり、前記抗体は、表1から選択される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記薬剤が、インフラマソーム構成成分に結合する抗体との組合せのEV取り込み阻害剤である、請求項10又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記EV取り込み阻害剤が、ヘパリンである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記ヘパリンが、エノキサパリンである、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
インフラマソーム構成成分に結合する前記抗体が、哺乳動物AIM2、NLRP1、NLRP2、NLRP3又はNLRC4インフラマソームの構成成分に特異的に結合する抗体である、請求項10~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記インフラマソーム構成成分が、カスパーゼ-1、ASC又はAIM2である、請求項10又は15に記載の方法。
【請求項17】
前記インフラマソーム構成成分が、ASCである、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記抗体が、前記ASCタンパク質のN末端PYRIN-PAAD-DAPINドメイン(PYD)、C末端カスパーゼリクルートメントドメイン(CARD)ドメイン又は前記PYD若しくはCARDドメインに由来するエピトープに結合する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記抗体が、配列番号1及び配列番号2からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸に結合する、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記抗体が、前記患者の前記肺におけるASC活性を阻害する、請求項17~19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
前記組成物が、薬学的に許容可能な担体又は希釈剤と配合される、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
前記組成物を、脳室内、腹腔内、静脈内投与するか、又は吸入により投与する、請求項1~21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
中枢神経系(CNS)損傷を受けた患者の肺における炎症を治療する方法であって、インフラマソームシグナリングを阻害する薬剤を含む組成物を前記患者に投与し、それにより前記患者の前記肺における前記炎症を治療することを含む方法。
【請求項24】
前記CNS損傷が、外傷性脳損傷(TBI)、脳卒中及び脊髄損傷(SCI)からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記組成物の前記投与が、前記患者の肺細胞におけるインフラマソーム活性化の阻害をもたらす、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項26】
前記組成物の前記投与が、対照と比較して前記患者の肺細胞におけるカスパーゼ-1、NLRP1、NLRP2、NLRP3、NLRC4、カスパーゼ-11、XIAP、パンネキシン-1、カスパーゼ活性化リクルートメントドメインを含有するアポトーシス関連スペック様タンパク質(ASC)、インターロイキン-18(IL-18)、ハイモビリティーグループボックス1(HMGB1)又はアブセントインメラノーマ2(AIM2)レベルの低減をもたらし、前記対照は、非処理患者である、請求項23又は24に記載の方法。
【請求項27】
前記肺細胞が、II型肺胞細胞である、請求項25又は26に記載の方法。
【請求項28】
前記組成物の前記投与が、対照と比較して急性肺損傷(ALI)の低減をもたらし、前記対照は、非処理患者である、請求項23~27のいずれか一項に記載の方法。
【請求項29】
ALIの前記低減が、肺胞及び/又は間質腔中への好中球浸潤の低減、肺胞中隔肥厚の低減若しくは不存在又はそれらの組合せにより証明される、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記薬剤が、細胞外ベシクル(EV)取り込み阻害剤、インフラマソーム構成成分に結合する抗体又はそれらの組合せである、請求項23~29のいずれか一項に記載の方法。
【請求項31】
前記EV取り込み阻害剤が、化合物又は抗体であり、前記抗体は、表1から選択される、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記薬剤が、インフラマソーム構成成分に結合する抗体との組合せのEV取り込み阻害剤である、請求項30又は31に記載の方法。
【請求項33】
前記EV取り込み阻害剤が、ヘパリンである、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記ヘパリンが、エノキサパリンである、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
インフラマソーム構成成分に結合する前記抗体が、哺乳動物AIM2、NLRP1、NLRP2、NLRP3又はNLRC4インフラマソームの構成成分に特異的に結合する抗体である、請求項30~34のいずれか一項に記載の方法。
【請求項36】
前記インフラマソーム構成成分が、カスパーゼ-1、ASC又はAIM2である、請求項30又は35に記載の方法。
【請求項37】
前記インフラマソーム構成成分が、ASCである、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記抗体が、前記ASCタンパク質のPYD、CARDドメイン又は前記PYD若しくはCARDドメインに由来のエピトープに結合する、請求項37に記載の方法。
【請求項39】
前記抗体が、配列番号1及び配列番号2からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸に結合する、請求項37に記載の方法。
【請求項40】
前記抗体が、前記患者の前記肺におけるASC活性を阻害する、請求項37~39のいずれか一項に記載の方法。
【請求項41】
前記組成物が、薬学的に許容可能な担体又は希釈剤と配合される、請求項23~40のいずれか一項に記載の方法。
【請求項42】
前記組成物を、脳室内、腹腔内、静脈内投与するか、又は吸入により投与する、請求項23~41のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[0001] 本出願は、全ての目的のために参照により全体として本明細書に組み込まれる2016年12月29日に出願された米国仮特許出願第62/440,180号からの優先権を主張する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究に関する記述
[0002] 本発明は、米国政府の支援を受けてNational Institute of Neurological Disorders and Stroke(NINDS)により授与された助成金番号4R42BS086274-02のもとなされた。米国政府は、本発明における一定の権利を有する。
【0003】
電子的に提出されたテキストファイルの説明
[0003] 本明細書とともに電子的に提出されたテキストファイルの内容は、参照により全体として本明細書に組み込まれる:配列表のコンピュータ読取可能フォーマットコピー(ファイル名:UNMI_010_01WO_SeqList_ST25.txt、記録日:2017年12月28日、ファイルサイズ2キロバイト)。
【0004】
分野
[0004] 本発明は、一般に、免疫学及び医学の分野に関する。より特定すると、本発明は、肺における炎症を産生する病態に応答して炎症を低減させるための治療として哺乳動物の肺におけるASC(カスパーゼ活性化リクルートメントドメイン(CARD)含有アポトーシス関連スペック様タンパク質(Apoptosis-associated Speck-like protein containing a Caspase Activating Recruitment Domain(CARD)))活性及びアブセントインメラノーマ2(Absent in Melanoma 2)(AIM2)インフラマソーム活性をモジュレートするための組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0005】
背景
[0005] 重度外傷性脳損傷(TBI)は広範な公衆衛生上の問題であり、世界中にわたる死亡及び罹患の主因である(3)。脳への直接的損傷の他、TBIは、他の器官、例えば、肺における合併症をもたらし得る。急性肺損傷(ALI;2)は、一般的な外傷後の心肺障害であり、40%超の院内死亡率を伴う(4)。TBI患者は、特に、ALIを発症しやすく、一部の研究は30%ほども高い発生率を報告している(5)。近年の研究は、全身性炎症因子がTBI後の肺機能不全及び肺損傷をもたらし得ることを示しているが(6)、TBI誘導肺損傷の基礎となる正確な分子機序の定義は不十分のままである。
【0006】
[0006] 損傷細胞から放出される大量の分泌炎症性メディエーター、例として、サイトカイン、ケモカイン、及び損傷関連分子パターン(DAMP)は、脳炎症に寄与し、遠位器官、例えば、肺を冒す(5)。最も広く研究されているDAMPの1つは、種々の病原性状態、例として、TBIにおける炎症の早期メディエーターとして機能し得るハイモビリティーグループボックス-1(high mobility group box-1)(HMGB1)である(7)。より近年の研究は、HMGB1がTBI誘導肺機能不全の機序に関与し得ることを示している(8)。HMGB1放出は、TBI後のカスパーゼ-1の活性化並びにIL-1β及びIL-18のプロセシングに関与する多タンパク質複合体のインフラマソーム(9)により調節され得る(10)。
【0007】
[0007] TBI後の肺合併症の病理学的機序を説明するための種々の説明、例として、タンパク質性破片の毛細血管漏出及び浸潤をもたらす血管浸透性の増加が記載されている(11)。細胞外ベシクル(EV)は、細胞間コミュニケーションにおける役割を担う膜含有ベシクルであり(12)、LPS誘導ネズミモデルにおけるALIの発症における役割を担うことに関与するとされている。さらに、EVは生物活性サイトカイン、IL-1β及びインフラマソームタンパク質を担持し得(13)(14)、その積み荷を介して免疫応答をトリガーし、隣接及び周囲細胞に炎症を増幅させ得ることが示されている。しかしながら、EV媒介インフラマソームシグナリングがTBI誘導ALIの病理学的機序に寄与し得るか否かは不明である。さらに、TBI誘導ALIの病理学的機序が、肺炎症を産生する他の病態により共有されるか否かも不明である。さらに、肺炎症を治療するためのFederal Drug Administration(FDA)承認薬物は不足している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
[0008] したがって、TBI及び他の病態により引き起こされる肺炎症の病理学的機序の解明だけでなく、肺炎症を治療及び/又は予防するための治療組成物及びその使用の開発が速やかに必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
概要
[0009] 一態様において、本明細書において、肺における炎症の治療を、それを必要とする患者において行う方法であって、インフラマソームシグナリングを阻害する薬剤を含む組成物を患者に投与し、それにより患者の肺における炎症を治療することを含む方法が提供される。一部の例において、肺における炎症は、中枢神経系(CNS)損傷、神経変性疾患、自己免疫疾患、喘息、慢性閉塞性肺疾患、嚢胞性線維症、間質性肺疾患及び急性呼吸窮迫症候群から選択される病態により引き起こされる。一部の例において、CNS損傷は、外傷性脳損傷(TBI)、脳卒中及び脊髄損傷(SCI)からなる群から選択される。一部の例において、神経変性疾患は、筋委縮性側索硬化症(ALS)、多発性硬化症(MS)及びパーキンソン病(PD)からなる群から選択される。一部の例において、組成物の投与は、患者の肺細胞におけるインフラマソーム活性の阻害をもたらす。一部の例において、組成物の投与は、対照と比較して患者の肺細胞におけるカスパーゼ-1、ヌクレオチド結合ロイシンリッチリピートピリンドメイン含有タンパク質1(nucleotide-binding leucine-rich repeat pyrin domain containing protein 1)(NLRP1)、ヌクレオチド結合ロイシンリッチリピートピリンドメイン含有タンパク質2(NLRP2)、ヌクレオチド結合ロイシンリッチリピートピリンドメイン含有タンパク質3(NLRP3)、NLRファミリーCARDドメイン含有タンパク質4(NLRC4)、カスパーゼ-11、X連鎖アポトーシス阻害タンパク質(XIAP)、パンネキシン-1、カスパーゼ活性化リクルートメントドメイン含有アポトーシス関連スペック様タンパク質(ASC)、インターロイキン-18(IL-18)、ハイモビリティーグループボックス1(HMGB1)又はアブセントインメラノーマ2(AIM2)レベルの低減をもたらし、対照は、非処理患者である。一部の例において、肺細胞は、II型肺胞細胞である。一部の例において、組成物の投与は、対照と比較して急性肺損傷(ALI)の低減をもたらし、対照は、非処理患者である。一部の例において、ALIの低減は、肺胞及び/又は間質腔中への好中球浸潤の低減、肺胞中隔肥厚の低減若しくは不存在又はそれらの組合せにより証明される。一部の例において、薬剤は、細胞外ベシクル(EV)取り込み阻害剤、インフラマソーム構成成分に結合する抗体又はそれらの組合せである。一部の例において、EV取り込み阻害剤は、化合物又は抗体であり、抗体は、表1から選択される。一部の例において、薬剤は、インフラマソーム構成成分に結合する抗体との組合せのEV取り込み阻害剤である。一部の例において、EV取り込み阻害剤は、ヘパリンである。一部の例において、ヘパリンは、エノキサパリンである。一部の例において、インフラマソーム構成成分に結合する抗体は、哺乳動物AIM2、NLRP1、NLRP2、NLRP3又はNLRC4インフラマソームの構成成分に特異的に結合する抗体である。一部の例において、インフラマソーム構成成分は、カスパーゼ-1、ASC又はAIM2である。一部の例において、インフラマソーム構成成分は、ASCである。一部の例において、抗体は、ASCタンパク質のN末端PYRIN-PAAD-DAPINドメイン(PYD)、C末端カスパーゼリクルートメントドメイン(CARD)ドメイン又はPYD若しくはCARDドメインに由来するエピトープに結合する。一部の例において、抗体は、配列番号1及び配列番号2からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するタンパク質に結合する。一部の例において、抗体は、患者の肺におけるASC活性を阻害する。一部の例において、組成物は、薬学的に許容可能な担体又は希釈剤と配合される。一部の例において、組成物は、脳室内、腹腔内、静脈内投与するか、又は吸入により投与する。
【0010】
[0010] 別の態様において、本明細書において、中枢神経系(CNS)損傷を受けた患者の肺における炎症を治療する方法であって、インフラマソームシグナリングを阻害する薬剤を含む組成物を患者に投与し、それにより患者の肺における炎症を治療することを含む方法が提供される。一部の例において、CNS損傷は、外傷性脳損傷(TBI)、脳卒中及び脊髄損傷(SCI)からなる群から選択される。一部の例において、組成物の投与は、患者の肺細胞におけるインフラマソーム活性化の阻害をもたらす。一部の例において、組成物の投与は、対照と比較して患者の肺細胞におけるカスパーゼ-1、NLRP1、NLRP2、NLRP3、NLRC4、カスパーゼ-11、XIAP、パンネキシン-1、カスパーゼ活性化リクルートメントドメイン含有アポトーシス関連スペック様タンパク質(ASC)、インターロイキン-18(IL-18)、ハイモビリティーグループボックス1(HMGB1)又はアブセントインメラノーマ2(AIM2)レベルの低減をもたらし、対照は、非処理患者である。一部の例において、肺細胞は、II型肺胞細胞である。一部の例において、組成物の投与は、対照と比較して急性肺損傷(ALI)の低減をもたらし、対照は、非処理患者である。一部の例において、ALIの低減は、肺胞及び/又は間質腔中への好中球浸潤の低減、肺胞中隔肥厚の低減若しくは不存在又はそれらの組合せにより証明される。一部の例において、薬剤は、細胞外ベシクル(EV)取り込み阻害剤、インフラマソーム構成成分に結合する抗体又はそれらの組合せである。一部の例において、EV取り込み阻害剤は、化合物又は抗体であり、抗体は、表1から選択される。一部の例において、薬剤は、インフラマソーム構成成分に結合する抗体との組合せのEV取り込み阻害剤である。一部の例において、EV取り込み阻害剤は、ヘパリンである。一部の例において、ヘパリンは、エノキサパリンである。一部の例において、インフラマソーム構成成分に結合する抗体は、哺乳動物AIM2、NLRP1、NLRP2、NLRP3又はNLRC4インフラマソームの構成成分に特異的に結合する抗体である。一部の例において、インフラマソーム構成成分は、カスパーゼ-1、ASC又はAIM2である。一部の例において、インフラマソーム構成成分は、ASCである。一部の例において、抗体は、ASCタンパク質のPYD、CARDドメイン又はPYD若しくはCARDドメインに由来するエピトープに結合する。一部の例において、抗体は、配列番号1及び配列番号2からなる群から選択されるアミノ酸配列と少なくとも85%の配列同一性を有するタンパク質に結合する。一部の例において、抗体は、患者の肺におけるASC活性を阻害する。一部の例において、組成物は、薬学的に許容可能な担体又は希釈剤と配合される。一部の例において、組成物は、脳室内、腹腔内、静脈内投与するか、又は吸入により投与する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面の簡単な説明
図1A】[0011]TBI後のC57/BL6マウス皮質及び肺組織におけるインフラマソーム活性化を説明する。図1Aは、TBI後の活性カスパーゼ-1、ASC、IL-18、IL-β、HMGB1、及びAIM2の代表的なイムノブロットを示す。
図1B】[0011]活性カスパーゼ-1(図1B)は、皮質組織中でTBIの4及び24時間後において有意に上昇する。データは、平均+/-SEM;疑似と比較して****p<0.001、***p<0.01、p<0.05として提示した。1群当たりN=4~5。
図1C】[0011]ASC(図1C)は、皮質組織中でTBIの4及び24時間後において有意に上昇する。データは、平均+/-SEM;疑似と比較して****p<0.001、***p<0.01、p<0.05として提示した。1群当たりN=4~5。
図1D】[0011]IL-18(図1D)は、皮質組織中でTBIの4及び24時間後において有意に上昇する。データは、平均+/-SEM;疑似と比較して****p<0.001、***p<0.01、p<0.05として提示した。1群当たりN=4~5。
図1E】[0011]HMGB1(図1E)は、皮質組織中でTBIの4及び24時間後において有意に上昇する。データは、平均+/-SEM;疑似と比較して****p<0.001、***p<0.01、p<0.05として提示した。1群当たりN=4~5。
図1F】[0011]AIM2(図1F)は、皮質組織中でTBIの4及び24時間後において有意に上昇する。データは、平均+/-SEM;疑似と比較して****p<0.001、***p<0.01、p<0.05として提示した。1群当たりN=4~5。
図1G】[0011]IL-β(図1G)は、皮質組織中でTBIの4及び24時間後において有意に上昇する。データは、平均+/-SEM;疑似と比較して****p<0.001、***p<0.01、p<0.05として提示した。1群当たりN=4~5。
図1H】[0011]図1Hは、肺組織における活性カスパーゼ-1、ASC、IL-18、IL-β、HMGB1、及びAIM2の代表的なイムノブロットを示す。
図1I】[0011]活性カスパーゼ-1(図1I)は、肺組織中でTBIの4及び24時間後に有意に上昇する。データは、平均+/-SEMとして提示した。1群当たりN=4~5、疑似と比較して**p<0.01.、p<0.05。
図1J】[0011]ASC(図1J)は、肺組織中でTBIの4及び24時間後に有意に上昇する。データは、平均+/-SEMとして提示した。1群当たりN=4~5、疑似と比較して**p<0.01.、p<0.05。
図1K】[0011]IL-18(図1K)は、肺組織中でTBIの4及び24時間後に有意に上昇する。データは、平均+/-SEMとして提示した。1群当たりN=4~5、疑似と比較して**p<0.01.、p<0.05。
図1L】[0011]HMGB1(図1L)は、肺組織中でTBIの4及び24時間後に有意に上昇する。データは、平均+/-SEMとして提示した。1群当たりN=4~5、疑似と比較して**p<0.01.、p<0.05。
図1M】[0011]AIM2(図1M)は、肺組織中でTBIの4及び24時間後に有意に上昇する。データは、平均+/-SEMとして提示した。1群当たりN=4~5、疑似と比較して**p<0.01.、p<0.05。
図1N】[0011]IL-β(図1N)は、肺組織中でTBIの4及び24時間後に有意に上昇する。データは、平均+/-SEMとして提示した。1群当たりN=4~5、疑似と比較して**p<0.01.、p<0.05。
図2A】[0012]II型肺胞上皮細胞におけるインフラマソームタンパク質の発現を説明する。図2AはAIM2を示す。
図2B】[0012]図2Bは活性カスパーゼ-1を示す。
図2C】[0012]図2CはASC免疫反応性がマウスと比較してCCI後(4、24時間)に肺組織において増加することを示す。AIM2、カスパーゼ-1、及びASC(緑色)及びII型上皮細胞(サーファクタントプロテインC、赤色)の共焦点画像。
図3A】[0013]TBIがマウス肺における核及び細胞質HMGB1発現を増加させることを説明する。図3Aは、TBI後の核HMGB1の代表的なイムノブロットを示す。
図3B】[0013]図3Bは、核HMGB1が、疑似と比較して4時間の損傷動物において有意に上昇することを示す。データは、平均+/-SEMとして提示した;疑似と比較して****p<0.001、***p<0.01、p<0.05。1群当たりN=4~5。
図3C】[0013]図3Cは、TBI後の細胞質HMGB1の代表的なイムノブロットを示す。
図3D】[0013]図3Dは、細胞質HMGB1が、疑似と比較して4時間の損傷動物において有意に上昇することを示す。データは、平均+/-SEMとして提示した;疑似と比較して****p<0.001、***p<0.01、p<0.05。1群当たりN=4~5。
図3E】[0013]図3Eは、HMGB1免疫反応性が疑似マウスと比較してCCI後に肺組織において増加したことを示す。HMGB1及びII型上皮細胞(サーファクタントプロテインC、赤色)の共焦点画像。
図4A】[0014]TBIの4時間後のマウス肺におけるピロプトソーム形成を説明する。図4Aは、TBIが肺組織におけるASCのラダリングを誘導することを示し、カスパーゼ-1の活性化及びピロトーシスをもたらすASC二量体のオリゴマー化であるピロプトソームの形成を示す。
図4B】[0014]図4Bはガスダーミンの代表的なイムノブロットを示す。
図4C】[0014]図4Cはガスダーミンの定量を示す。ガスダーミン-Dは、TBI後に肺組織において有意に上昇する。データは、平均+/-SEMとして提示した。1群当たりN=4~5、疑似と比較して**p<0.01.、p<0.05。
図5A】[0015]TBIがマウスにおいて肺胞形態変化及び急性肺損傷を誘導することを説明する。図5Aは、4時間及び24時間における疑似及び損傷動物からの肺切片のH及びE染色を示す。切片は、好中球浸潤(矢印頭部)、肺胞毛細血管膜の形態の変化(アスタリスク、)、間質浮腫(短矢印)の証拠、並びに間質及び肺胞中隔の肥厚(ポンド、#)の証拠を示す。
図5B】[0015]図5Bは、急性肺損傷スコアリングが4時間及び24時間において疑似と比較して損傷動物において有意に増加することを示す。データは、平均+/-SEMとして提示した。1群当たりN=4~5、疑似と比較して**p<0.01.、p<0.05。
図6】[0016]対照及びTBI損傷マウスからの血清由来EVにおけるCD81の発現を説明する。疑似対照及びTBI損傷マウスからの血清由来EVにおけるCD81の代表的なイムノブロット。
図7A】[0017]TBI動物からのEVの養子移植が非損傷マウスの肺においてカスパーゼ-1及びASCを誘導することを説明する。図7Aは、カスパーゼ-1(図7B)、ASC(図7C)、IL-18(図7D)、AIM2(図7E)、HMGB1(図7F)が、疑似動物からのEVと比較してTBIマウスから単離されたEVを受容した動物の肺において上昇することを示す代表的なイムノブロットを説明する。
図7B】[0017]カスパーゼ-1(図7B)が、疑似動物からのEVと比較してTBIマウスから単離されたEVを受容した動物の肺において上昇することを示す。データを、+平均/-SEMとして提示した;疑似と比較してp<.0.05。1群当たりN=3。
図7C】[0017]ASC(図7C)が、疑似動物からのEVと比較してTBIマウスから単離されたEVを受容した動物の肺において上昇することを示す。データを、+平均/-SEMとして提示した;疑似と比較してp<.0.05。1群当たりN=3。
図7D】[0017]IL-18(図7D)が、疑似動物からのEVと比較してTBIマウスから単離されたEVを受容した動物の肺において上昇することを示す。データを、+平均/-SEMとして提示した;疑似と比較してp<.0.05。1群当たりN=3。
図7E】[0017]AIM2(図7E)が、疑似動物からのEVと比較してTBIマウスから単離されたEVを受容した動物の肺において上昇することを示す。データを、+平均/-SEMとして提示した;疑似と比較してp<.0.05。1群当たりN=3。
図7F】[0017]HMGB1(図7F)が、疑似動物からのEVと比較してTBIマウスから単離されたEVを受容した動物の肺において上昇することを示す。データを、+平均/-SEMとして提示した;疑似と比較してp<.0.05。1群当たりN=3。
図7G】[0017]TBIマウスからのEVは、H及びE染色により決定されたとおり、肺胞形態変化(肺胞サイズの減少)及び炎症性細胞の浸潤を誘導した(図7G)。
図7H】[0017]ALIスコアは、非損傷マウスと比較して損傷マウスから送達されたEVにおいて有意に増加する(図7H)。データは、平均+/-SEMとして提示した;非損傷群と比較してp<.0.05。
図8A】[0018]エノキサパリン(3mg/kg)及びIC100(5mg/kg)による処理が、損傷マウスからのEVが送達された動物の肺におけるインフラマソーム発現を低減させることを説明する。図8Aは、カスパーゼ-1(図8B)、ASC(図8C)、IL-1β(図8D)、AIM2(図8E)、HMGB1(図8F)が、非処理陽性対照動物と比較してエノキサパリン及びIC100により処理された動物の肺において低減することを示す代表的なイムノブロットを説明する。
図8B】[0018]カスパーゼ-1(図8B)が、非処理陽性対照動物と比較してエノキサパリン及びIC100により処理された動物の肺において低減することを示す。データは、平均+/-SEMとして提示した;疑似と比較してp<.0.05。1群当たりN=4。
図8C】[0018]ASC(図8C)が、非処理陽性対照動物と比較してエノキサパリン及びIC100により処理された動物の肺において低減することを示す。データは、平均+/-SEMとして提示した;疑似と比較してp<.0.05。1群当たりN=4。
図8D】[0018]IL-1β(図8D)が、非処理陽性対照動物と比較してエノキサパリン及びIC100により処理された動物の肺において低減することを示す。データは、平均+/-SEMとして提示した;疑似と比較してp<.0.05。1群当たりN=4。
図8E】[0018]AIM2(図8E)が、非処理陽性対照動物と比較してエノキサパリン及びIC100により処理された動物の肺において低減することを示す。データは、平均+/-SEMとして提示した;疑似と比較してp<.0.05。1群当たりN=4。
図8F】[0018]HMGB1(図8F)が、非処理陽性対照動物と比較してエノキサパリン及びIC100により処理された動物の肺において低減することを示す。データは、平均+/-SEMとして提示した;疑似と比較してp<.0.05。1群当たりN=4。
図9A】[0019]エノキサパリン(3mg/kg)及びIC100(5mg/kg)による処理が、損傷マウスからのEVが送達された動物の肺におけるALIスコアを低減させることを説明する。図9Aは、生理食塩水(図9A)処理の損傷マウスからのEVが送達されたマウス肺からの肺切片のH及びE染色を説明する。切片は、好中球浸潤の証拠、肺胞毛細血管膜の形態の変化、間質浮腫、並びに間質及び肺胞中隔の肥厚の証拠を示す。
図9B】[0019]図9Bは、非処理(図9B)の損傷マウスからのEVが送達されたマウス肺からの肺切片のH及びE染色を説明する。
図9C】[0019]図9Cは、エノキサパリン(図9C)処理の損傷マウスからのEVが送達されたマウス肺からの肺切片のH及びE染色を説明する。
図9D】[0019]図9Dは、IC100(抗ASC;図9D)処理の損傷マウスからのEVが送達されたマウス肺からの肺切片のH及びE染色を説明する。
図9E】[0019]図9Eは、急性肺損傷スコアリングが、非処理動物と比較してエノキサパリン、IC100により処理された動物において有意に減少することを説明する。データを、平均+/-SEMとして提示した。1群当たりN=4、**p<0.01.、p<0.05。
図10A】[0020]TBI患者からの血清由来EVの送達が、肺内皮細胞におけるインフラマソームタンパク質発現を増加させることを説明する。図10Aは、TBI-EV及び対照EVとの4時間のインキュベーション後のPMVECにおけるカスパーゼ-1、ASC、AIM2、HMGB1のウエスタンブロット表示を示す。
図10B】[0020]図10Bは、ウエスタンブロットの定量を示す、1群当たりn=3つのフィルター、n=6人の患者、t検定、p<0.05。
図10C】[0020]図10Cは、ウエスタンブロットの定量を示す、1群当たりn=3つのフィルター、n=6人の患者、t検定、p<0.05。
図10D】[0020]図10Dは、ウエスタンブロットの定量を示す、1群当たりn=3つのフィルター、n=6人の患者、t検定、p<0.05。
図10E】[0020]図10Eは、ウエスタンブロットの定量を示す、1群当たりn=3つのフィルター、n=6人の患者、t検定、p<0.05。
図10F】[0020]図10Fは、Ellaシンプルプレックスアッセイを使用したIL-1β発現の有意な増加の免疫アッセイ結果を示す。1群当たりn=3つのフィルター、n=6人の患者、t検定、p<0.05。
図11A】[0021]肺内皮細胞へのTBI-EVの送達が、活性カスパーゼ-1の免疫反応性及び細胞死を増加させることを説明する。図11Aは、カスパーゼ-1FLICA及びPI染色の同時局在化並びにTBI-EVと4時間インキュベートされたPMVECを示す。
図11B】[0021]図11Bは、対照EVと4時間インキュベートされたPMVECにおけるカスパーゼ-1FLICA及びPI染色を示す。
図11C】[0021]図11Cは、TBI及び対照EVと4時間インキュベートされたPMVECの蛍光プレートリーダー分析を示す。n=6、p<0.05。
【発明を実施するための形態】
【0012】
詳細な説明
定義
[0022] 特に定義のない限り、本明細書において使用される全ての技術用語は、本発明が属する分野の当業者により一般に理解されるものと同一の意味を有する。
【0013】
[0023] 本明細書において使用される「タンパク質」及び「ポリペプチド」は、長さにも翻訳後修飾にも、例えば、グリコシル化にもリン酸化にも関係なくアミノ酸の任意のペプチド結合鎖を意味するために同義的に使用される。
【0014】
[0024] 本明細書において使用される用語「抗体」は、一般に、及び広く、免疫グロブリン、モノクローナル抗体、及びポリクローナル抗体、並びにそれらの活性断片を指す。断片は、それがコグネイト抗原(例えば、ASC、NLRP1、AIM2など)に結合するという点で活性であり得、又はそれは、それが生物学的に機能的であるという点で活性であり得る。本明細書における使用のための抗体は、当技術分野において公知の技術を使用するキメラ、ヒト化、又はヒト抗体であり得る。
【0015】
[0025] 本明細書において使用される用語「ヒト化抗体」は、非ヒト抗体の最小部分が他のヒト抗体中に導入されている抗体を指す。
【0016】
[0026] 本明細書において使用される用語「ヒト抗体」は、軽微な配列変化又はバリエーションを有する、タンパク質の実質的に全ての部分がヒトにおいて実質的に非免疫原性である抗体を指す。
【0017】
[0027] 抗原結合部位は、一般に、重鎖可変領域(VH)及び軽鎖可変領域(VL)免疫グロブリンドメインにより形成され得、抗原結合界面は、相補性決定領域(CDR)と称される6つの表面ポリペプチドループにより形成される。フレームワーク領域(FR)と一緒にVH(HCDR1、HCDR2、HCDR3)及びVL(LCDR1、LCDR2、LCDR3)においてそれぞれ3つのCDRが存在する。
【0018】
[0028] 用語「CDR領域」又は「CDR」は、Kabat et al.,1991(Kabat,E.A.et al.,(1991)Sequences of Proteins of Immunological Interest,5th Edition.US Department of Health and Human Services,Public Service,NIH,Washington)、及び後版により定義されるとおり、免疫グロブリンの重鎖又は軽鎖の超可変領域を意味し得る。抗体は、典型的には、3つの重鎖CDR及び3つの軽鎖CDRを含有する。
【0019】
[0029] 全抗体の断片も抗原に結合し得ることが示されている。結合断片の例としては、(i)VL、VH、CL及びCH1ドメインからなるFab断片(Ward,E.S.et al.,(1989)Nature 341,544-546);(ii)VH及びCH1ドメインからなるFd断片(McCafferty et al.,(1990)Nature,348,552-554);(iii)単一抗体のVL及びVHドメインからなるFv断片(Holt et al.,(2003)Trends in Biotechnology 21,484-490);(iv)VH又はVLドメインからなるdAb断片(Ward,E.S.et al.,Nature 341,544-546(1989)、McCafferty et al.,(1990)Nature,348,552-554、Holt et al.,(2003)Trends in Biotechnology 21,484-490];(v)単離CDR領域;(vi)2つの結合Fab断片を含む二価断片であるF(ab’)断片(vii)VHドメイン及びVLドメインが、その2つのドメインが会合して抗原結合部位を形成することを可能とするペプチドリンカーにより結合している単鎖Fv分子(scFv)、(Bird et al.,(1988)Science,242,423-426、Huston et al.,(1988)PNAS USA,85,5879-5883);(viii)二重特異的単鎖Fv二量体(PCT/US第92109965号)及び(ix)遺伝子融合により構築された多価又は多重特異的断片である「ダイアボディ」(国際公開第94/13804号;Holliger,P.(1993)et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90 6444-6448)が挙げられる。
【0020】
[0030] Fv、scFv又はダイアボディ分子は、VH及びVLドメインを結合するジスルフィド架橋の取り込みにより安定化することができる(Reiter,Y.et al.,Nature Biotech,14,1239-1245,1996)。CH3ドメインに結合しているscFvを含むミニボディを作製することもできる(Hu,S.et al.,(1996)Cancer Res.,56,3055-3061)。結合断片の他の例は、重鎖CH1ドメインのカルボキシル末端における数残基、例として、抗体ヒンジ領域からの1つ以上のシステインの付加だけFab断片と異なるFab’、及び定常ドメインのシステイン残基がフリーチオール基を担持するFab’断片であるFab’-SHであり得る。
【0021】
[0031] 「Fv」は、本明細書において使用される場合、抗原認識部位及び抗原結合部位の両方を保持する抗体の最小断片を指し得る。「Fab」は、本明細書において使用される場合、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖のCH1ドメインを含む抗体の断片を指し得る。用語「mAb」は、モノクローナル抗体を指す。
【0022】
[0032] 用語「カスパーゼ活性化リクルートメントドメイン(CARD)含有アポトーシス関連スペック様タンパク質」及び「ASC」は、ASC遺伝子の発現産物若しくはそのアイソフォーム、又はASC(例えば、ヒトにおけるNP_037390(Q9ULZ3-1)、NP_660183(Q9ULZ3-2)又はQ9ULZ3-3、マウスにおけるNP_075747又はラットにおけるNP_758825(BAC43754))と少なくとも65%(しかし好ましくは、75、80、85、90、95、96、97、98、又は99%)のアミノ酸配列同一性を共有し、ASCの機能的活性を呈するタンパク質を意味する。タンパク質の「機能的活性」は、タンパク質の生理学的機能に関連する任意の活性である。ASCの機能的活性としては、例えば、カスパーゼ-1の活性化及び細胞死の開始のためのタンパク質のリクルートメントが挙げられる。
【0023】
[0033] 用語「ASC遺伝子」、又は「ASC核酸」は、天然ASCコード核酸配列、ASC cDNAが転写され得るゲノム配列、及び/又は上記のもののアレルバリアント及びホモログを意味する。この用語は、二本鎖DNA、一本鎖DNA、及びRNAを包含する。
【0024】
[0034] 本明細書において使用される用語「インフラマソーム」は、カスパーゼ-1を活性化させる多タンパク質(例えば、少なくとも2つのタンパク質)複合体を意味する。さらに、用語「インフラマソーム」は、次いでIL-1β、IL-18及びIL-33プロセシング及び活性化を調節するカスパーゼ-1活性を活性化させる多タンパク質複合体を指し得る。それぞれ参照により全体として本明細書に組み込まれるArend et al.2008;Li et al.2008;及びMartinon et al. 2002参照。用語「NLRP1インフラマソーム」、「NALP1インフラマソーム」、「NLRP2インフラマソーム」、「NALP2インフラマソーム」、「NLRP3インフラマソーム」、「NALP3インフラマソーム」、「NLRC4インフラマソーム」、「IPAFインフラマソーム」又は「AIM2インフラマソーム」は、少なくともカスパーゼ-1及び1つのアダプタータンパク質、例えば、ASCのタンパク質複合体を意味する。例えば、用語「NLRP1インフラマソーム」及び「NALP1インフラマソーム」は、NLRP1、ASC、カスパーゼ-1、カスパーゼ-1の活性化及びインターロイキン-1β、インターロイキン-18及びインターロイキン-33のプロセシングのためのカスパーゼ-11、XIAP、並びにパンネキシン-1を含有する多タンパク質複合体を意味し得る。用語「NLRP2インフラマソーム」及び「NALP2インフラマソーム」は、NLRP2(aka NALP2)、ASC及びカスパーゼ-1を含有する多タンパク質複合体を意味し得る一方、用語「NLRP3インフラマソーム」及び「NALP3インフラマソーム」は、NLRP3(aka NALP3)、ASCを含有する多タンパク質複合体を意味し得、用語「NLRC4インフラマソーム」及び「IPAFインフラマソーム」は、NLRC4(aka IPAF)、ASC及びカスパーゼ-1を含有する多タンパク質複合体を意味し得る。さらに、用語「AIM2インフラマソーム」は、AIM2、ASC及びカスパーゼ-1を含む多タンパク質複合体を意味し得る。
【0025】
[0035] 本明細書において使用される語句「配列同一性」は、2つの配列(例えば、核酸配列、アミノ酸配列)をアラインしてサブユニットマッチングを最大化する、すなわち、ギャップ及び挿入を考慮する場合のその2つの配列中の対応位置における同一サブユニットの割合を意味する。配列同一性は、配列分析ソフトウェア(例えば、Accelrys CGC,San Diego,CAからのSequence Analysis Software Package)を使用して計測することができる。
【0026】
[0036] 語句「治療有効量」及び「有効投与量」は、治療的に(例えば、臨床的に)望ましい結果を産生するために十分な量を意味し;結果の正確な性質は、治療される障害の性質に応じて変動する。例えば、治療すべき障害がSCIである場合、結果は、運動技能及びロコモーター機能の改善、脊髄病変の減少などであり得る。本明細書に記載の組成物は、1日1回以上~週1回以上投与することができる。当業者は、ある因子、例として、限定されるものではないが、疾患又は障害の重症度、前治療、対象の全身健康状態及び/又は年齢、並びに存在する他の疾患が対象を有効に治療するために要求される投与量及びタイミングに影響し得ることを認識する。さらに、治療有効量の本発明の組成物による対象の治療は、単一治療又は一連の治療を含み得る。
【0027】
[0037] 本明細書において使用される用語「治療」は、疾患、疾患の症状又は疾患を罹患しやすい傾向を治癒し、回復させ、緩和し、軽減し、変更し、救助し、好転させ、改善し、又はそれに影響を与える目的での、患者への本明細書に記載の、若しくは本明細書に記載の方法により同定される治療剤の適用若しくは投与、又は疾患、疾患の症状若しくは疾患を罹患しやすい傾向を有する患者からの単離組織若しくは細胞系への治療剤の適用若しくは投与として定義される。
【0028】
[0038] 用語「患者」「対象」及び「個体」は、本明細書において互換的に使用され、治療すべき哺乳動物対象を意味し、ヒト患者が好ましい。一部の例において、本発明の方法は、実験動物において、獣医学的用途において、及び疾患についての動物モデル、例として、限定されるものではないが、げっ歯類、例として、マウス、ラット、及びハムスター、並びに霊長類の発生において使用される。
【0029】
[0039] 本明細書において互換的に使用される「アブセントインメラノーマ2」及び「AIM2」は、AIM2遺伝子の発現産物若しくはアイソフォーム;又はAIM2(例えば、アクセッション番号NX_014862、NP004824、XP016858337、XP005245673、AAB81613、BAF84731、AAH10940)と少なくとも65%(しかし好ましくは、75、80、85、90、95、96、97、98、又は99%)のアミノ酸配列同一性を共有し、AIM2の機能的活性を呈するタンパク質を意味し得る。
【0030】
[0040] 本明細書において互換的に使用される「NALP1」及び「NLRP1」は、NALP1若しくはNLRP1遺伝子の発現産物若しくはアイソフォーム;又はNALP1(例えば、アクセッション番号AAH51787、NP_001028225、NP_127500、NP_127499、NP_127497、NP055737)と少なくとも65%(しかし好ましくは、75、80、85、90、95、96、97、98、又は99%)のアミノ酸配列同一性を共有し、NALP1の機能的活性を呈するタンパク質を意味する。
【0031】
[0041] 本明細書において互換的に使用される「NALP2」及び「NLRP2」は、NALP2若しくはNLRP2遺伝子の発現産物若しくはアイソフォーム;又はNALP2(例えば、アクセッション番号NP_001167552、NP_001167553、NP_001167554又はNP_060322)と少なくとも65%(しかし好ましくは、75、80、85、90、95、96、97、98、又は99%)のアミノ酸配列同一性を共有し、NALP2の機能的活性を呈するタンパク質を意味する。
【0032】
[0042] 本明細書において互換的に使用される「NALP3」及び「NLRP3」は、NALP3若しくはNLRP3遺伝子の発現産物若しくはアイソフォーム;又はNALP3(例えば、アクセッション番号NP_001073289、NP_001120933、NP_001120934、NP_001230062、NP_004886、NP_899632、XP_011542350、XP_016855670、XP_016855671、XP_016855672又はXP_016855673)と少なくとも65%(しかし好ましくは、75、80、85、90、95、96、97、98、又は99%)のアミノ酸配列同一性を共有し、NALP3の機能的活性を呈するタンパク質を意味する。
【0033】
[0043] 本明細書において互換的に使用される「NLRC4」及び「IPAF」は、NLRC4若しくはIPAF遺伝子の発現産物若しくはアイソフォーム;又はNLRC4(例えば、アクセッション番号NP_001186067、NP001186068、NP_001289433又はNP_067032)と少なくとも65%(しかし好ましくは、75、80、85、90、95、96、97、98、又は99%)のアミノ酸配列同一性を共有し、NLRC4の機能的活性を呈するタンパク質を意味する。
【0034】
[0044] 用語「脳卒中」及び「虚血性脳卒中」は、血流が中断されている脳又は脊髄の一部を意味する。
【0035】
[0045] 「CNSの外傷性損傷」は、CNS機能の永久的又は一時的損害をもたらす可能性がある外部の機械的力からのCNSの任意の傷害を意味する。
【0036】
[0046] 用語「抗体」は、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体(mAb)、キメラ抗体、ヒト化抗体、可溶性又は結合形態で標識することができる抗体に対する抗イディオタイプ(抗Id)抗体、及び任意の公知の技術、例えば、限定されるものではないが、酵素的開裂、ペプチド合成又は組換え技術により提供されるそれらの断片、領域又は誘導体を含むことを意味する。このような本発明の抗ASC及び抗NLRP1抗体は、それぞれカスパーゼ-1活性化を妨害するASC及びNLRP1の一部に結合し得る。
【0037】
[0047] 慣用の分子生物学的技術を含む方法は、本明細書に記載される。このような技術は、一般に当技術分野において公知であり、方法論の論文、例えば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual,3rd ed.,vol.1-3,ed.Sambrook et al.,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,2001;及びCurrent Protocols in Molecular Biology,ed.Ausubel et al.,Greene Publishing and Wiley-Interscience,New York,1992(定期的更新あり)に詳述されている。免疫学的技術は、一般に当技術分野において公知であり、方法論の論文、例えば、Advances in Immunology,volume 93,ed.Frederick W.Alt,Academic Press,Burlington,MA,2007;Making and Using Antibodies:A Practical Handbook,eds.Gary C.Howard and Matthew R.Kaser,CRC Press,Boca Raton,FL,2006;Medical Immunology,6thed.,edited by Gabriel Virella,Informa Healthcare Press,London,England,2007;及びHarlow and Lane ANTIBODIES:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1988に詳述されている。
【0038】
[0048] 本明細書に記載のものと同様又は同等の組成物及び方法を本発明の実施又は試験において使用することができるが、好適な組成物及び方法が以下に記載される。本明細書に挙げられる全ての刊行物、特許出願、及び特許は、参照により全体として組み込まれる。矛盾する場合、本明細書が定義を含め優先される。以下に考察される特定の実施形態は、説明のためのものにすぎず、限定的なものではない。
【0039】
概要
[0049] 本明細書において、肺炎症をもたらすか、又は引き起こす病態を受けた、又はそれを患う哺乳動物の肺における炎症を低減させるための組成物及び方法が提供される。本明細書に記載の組成物及び方法は、細胞外ベシクル(EV)取り込みをモジュレートし(例えば、阻害するか、又は低減させ)、哺乳動物における肺炎症のための治療として使用される、哺乳動物インフラマソーム及び/又は化合物の少なくとも1つの構成成分(例えば、ASC)に特異的に結合する本明細書に提供される抗体又はその活性断片を含み得る。
【0040】
[0050] 本明細書において、肺における炎症応答をもたらし、及び/又は引き起こす病態を有する哺乳動物の肺における炎症を低減させる方法が記載される。一実施形態において、哺乳動物の肺における炎症を治療する方法は、インフラマソームシグナリングを阻害する薬剤を含む組成物を哺乳動物に投与することを含む。哺乳動物は、本明細書に提供される患者又は対象であり得る。肺における炎症をもたらし得る病態の例としては、中枢神経系(CNS)損傷(例えば、脊髄損傷(SCI)、外傷性脳損傷(TBI)又は脳卒中)、神経変性疾患、自己免疫疾患、喘息、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症、間質性肺疾患又は急性呼吸窮迫症候群が挙げられる。組成物は、治療有効量で投与することができる。治療有効量は、本明細書に提供される用量であり得る。薬剤は、細胞外ベシクル(EV)取り込み阻害剤、インフラマソームの構成成分に結合する本明細書に提供される抗体若しくはその活性断片又はそれらの組合せであり得る。組成物は、任意の好適な経路により、例えば、吸入により投与し、静脈内、腹腔内、又は脳室内投与することができる。組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体又は希釈剤をさらに含み得る。
【0041】
[0051] 一実施形態において、薬剤の投与は、対象の肺における哺乳動物インフラマソームの構成成分の活性及び/又は発現レベルの低減をもたらし得る。低減は、肺の細胞、例えば、II型肺胞細胞などにおけるものであり得る。低減は、対照と比較したものであり得る。対照は、薬剤の投与前の対象であり得る。対照は、薬剤が投与されなかった対象におけるインフラマソーム構成成分の活性及び/又は発現レベルであり得る。一実施形態において、薬剤の投与は、対象の少なくとも肺又は肺細胞におけるカスパーゼ-1活性化の低減をもたらす。一実施形態において、薬剤の投与は、対象の少なくとも肺又は肺細胞における1つ以上のインフラマソーム構成成分(例えば、ASC、AIM2、NALP1、NALP2、NALP2、NALP3又はNLRC4)の発現レベルの低減をもたらす。
【0042】
[0052] 別の実施形態において、薬剤の投与は、急性肺損傷(ALI)の低減又は排除をもたらし得る。一実施形態において、ALIの低減は、肺胞及び/又は間質腔中への好中球浸潤の低減、肺胞中隔肥厚の低減若しくは不存在又はそれらの組合せにより証明される。低減は、対照と比較したものであり得る。対照は、薬剤の投与前の対象におけるALIであり得る。対照は、薬剤が投与されなかったALIを罹患する対象におけるALIであり得る。
【0043】
[0053] さらなる別の実施形態において、薬剤の投与は、対象の肺におけるピロトーシスの低減又は排除をもたらし得る。ピロトーシスは、カスパーゼ-1の活性化を含む細胞死の炎症促進形態である。ピロトーシスは、ガスダーミンD(GSDMD)のカスパーゼ-1媒介開裂によりトリガーされ得る。一実施形態において、ピロトーシスの低減は、対象の肺又は肺細胞(例えば、II型肺胞細胞)におけるGSDMDの開裂の低減又は欠落により証明される。ピロトーシスの低減又は排除は、対照と比較したものであり得る。GSDMDの開裂の低減又は欠落は、対照と比較したものであり得る。対照は、薬剤の投与前の対象におけるピロトーシスのレベルであり得る。対照は、薬剤が投与されなかったピロトーシスを罹患する対象におけるピロトーシスのレベルであり得る。
【0044】
[0054] 一実施形態において、投与すべき薬剤は、EV取り込み阻害剤である。EV取り込み阻害剤は、化合物、アンチセンスRNA、siRNA、ペプチド、本明細書に提供される抗体若しくはその活性断片又はそれらの組合せであり得る。化合物又はペプチドは、ヘパリン、α-ジフルオロメチルオルニチン(DFMO)、エノキサパリン、アシアロフェツイン、ヒト受容体関連タンパク質(RAP)、RGD(Arg-Gly-Asp)ペプチド、サイトカラシンD、サイトカラシンB、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ラトランクリンA、ラトランクリンB、NSC23766、ダイナソア、クロルプロマジン、5-(N-エチル-N-イソプロピル)アミロリド(EIPA)、アミロリド、バフィロマイシンA、モネンシン及びクロロキン、アネキシン-V、ワートマンニン、LY294002、メチル-β-シクロデキストリン(MβCD)、フィリピン、シンバスタチン、フモニシンB1及びN-ブチルデオキシノジリマイシン塩酸塩、U0126又はプロトンポンプ阻害剤から選択される1つ以上の化合物であり得る。EV取り込み阻害剤、本明細書に提供される抗体又はその活性断片は、表1に列記されるタンパク質標的に対して指向される1つ以上の抗体又はその活性断片であり得る。EV取り込み阻害剤を使用して哺乳動物の肺における炎症を治療し、及び/又は低減させるための組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体又は希釈剤をさらに含み得る。
【0045】
【表1】
【0046】
【表2】
【0047】
【表3】
【0048】
【表4】
【0049】
【表5】
【0050】
[0056] 一実施形態において、投与すべき薬剤は、哺乳動物インフラマソームの構成成分又はそれに由来する抗原若しくはエピトープに対して指向される本明細書に提供される抗体又はその活性断片である。別の実施形態において、投与すべき薬剤は、哺乳動物インフラマソームの構成成分に対して指向されるアンチセンスRNA又はsiRNAである。インフラマソーム構成成分は、当技術分野において公知の任意のインフラマソーム、例えば、NAPL1、NALP2、NALP3、NLRC4又はAIM2インフラマソームなどの構成成分であり得る。典型的な実施形態において、抗体は、ASC又はそれに由来する抗原若しくはエピトープに特異的に結合する。しかしながら、哺乳動物インフラマソーム(例えば、NALP1、NALP2、NALP3、NLRC4又はAIM2インフラマソーム)の任意の他の構成成分に対する抗体を使用することができる。
【0051】
[0057] 本明細書に記載の抗体は、モノクローナル若しくはポリクローナル抗体又はそれらの活性断片であり得る。前記抗体又は活性断片は、本明細書に記載のキメラ、ヒト又はヒト化のものであり得る。
【0052】
[0058] ASCに特異的に結合する本明細書に提供される任意の好適な抗体又はその活性断片、例えば、対象の肺細胞(例えば、II型肺胞細胞)におけるASC活性を阻害する抗体を使用することができる。典型的な実施形態において、抗体は、アミノ酸配列の配列番号1又は配列番号2と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列に特異的に結合する。同様に、別の実施形態において、インフラマソームは、NALP1インフラマソームであり、少なくとも1つの構成成分は、NALP1(すなわち、NLRP1)である。この実施形態において、本明細書に提供される抗体又はその活性断片は、アミノ酸配列の配列番号3又は配列番号4と少なくとも85%の配列同一性を有するアミノ酸配列に特異的に結合する。
【0053】
[0059] さらに別の実施形態において、薬剤は、インフラマソームの構成成分に結合する本明細書に提供される1つ以上の抗体又はその活性断片との組合せの1つ以上のEV取り込み阻害剤である。EV取り込み阻害剤は、本明細書に提供される任意のEV取り込み阻害剤であり得る。インフラマソームの構成成分に結合する抗体は、本明細書に提供される任意のインフラマソーム構成成分に結合する任意の抗体であり得る。一実施形態において、肺炎症を罹患する対象に投与される薬剤は、AIM2インフラマソームの構成成分(例えば、ASC)に結合する抗体との組合せのヘパリン(例えば、エノキサパリン)を含む。
【0054】
[0060] 一実施形態において、本方法は、哺乳動物インフラマソーム(例えば、AIM2インフラマソーム)の少なくとも1つの構成成分(例えば、ASC)に特異的に結合する本明細書に提供される抗体又はその活性断片を含む治療有効量の組成物を提供すること;及び組成物を肺炎症を罹患する哺乳動物に投与することを含み、哺乳動物への組成物の投与は、哺乳動物の肺におけるカスパーゼ-1活性化の低減をもたらす。別の実施形態において、本方法は、哺乳動物インフラマソーム(例えば、AIM2インフラマソーム)の少なくとも1つの構成成分(例えば、ASC)に特異的に結合する抗体を含む治療有効量の組成物を提供すること;及び組成物を肺炎症を罹患する哺乳動物に投与することを含み、哺乳動物への組成物の投与は、1つ以上のインフラマソーム構成成分(例えば、ASC)のレベルの低減をもたらす。さらに別の実施形態において、本方法は、哺乳動物インフラマソーム(例えば、AIM2インフラマソーム)の少なくとも1つの構成成分(例えば、ASC)に特異的に結合する抗体を含む治療有効量の組成物を提供すること;及び組成物を肺炎症を罹患する哺乳動物に投与することを含み、哺乳動物への組成物の投与は、ALIの低減をもたらす。肺炎症は、炎症性構成成分によるCNS損傷(例えば、SCI又はTBI)、喘息、慢性閉塞性肺障害(COPD)、神経変性疾患、又は自己免疫疾患の結果であり得る。一実施形態において、肺炎症は、CNS損傷、例えば、TBI又はSCIにより引き起こされる。
【0055】
[0061] 一実施形態において、本明細書に提供される方法は、肺炎症を罹患すると疑われる対象からの試料における哺乳動物インフラマソームの1つ以上の構成成分のレベル又は活性を検出することをさらに含む。レベル又は活性を検出する方法は、対象から得られた試料における少なくとも1つのインフラマソームタンパク質(例えば、ASC又はAIM2)のレベルを計測すること;前記少なくとも1つのインフラマソームタンパク質(例えば、ASC又はAIM2)のレベル又は活性の上昇の存在又は不存在を決定することを含む。前記少なくとも1つのインフラマソームタンパク質のレベル又は活性は、対照試料における前記少なくとも1つのインフラマソームタンパク質のレベルに対して向上し得る。タンパク質シグネチャーにおける前記少なくとも1つのインフラマソームタンパク質のレベル又は活性は、予め決定された参照値又は参照値の範囲に対して向上し得る。少なくとも1つのインフラマソームタンパク質は、ヌクレオチド結合ロイシンリッチリピートピリンドメイン含有タンパク質1(NLRP1)、NLRP2、NLRP3、NLRC4、AIM2、カスパーゼリクルートメントドメイン含有アポトーシス関連スペック様タンパク質(ASC)、カスパーゼ-1、又はそれらの組合せであり得る。試料は、脳脊髄液(CSF)、唾液、血液、血清、血漿、尿又は肺吸引液であり得る。
【0056】
哺乳動物インフラマソームの少なくとも1つの構成成分に特異的に結合する抗体
[0062] 哺乳動物の肺における炎症を低減させる本明細書に記載の方法は、哺乳動物インフラマソーム(例えば、AIM2インフラマソーム)の少なくとも1つの構成成分(例えば、ASC、AIM2)に特異的に結合する本明細書に提供される抗体又はその活性断片を含む組成物を含む。哺乳動物の肺における炎症を治療し、及び/又は低減させるための組成物は、少なくとも1つの薬学的に許容可能な担体又は希釈剤をさらに含み得る。本明細書の方法における使用のための哺乳動物インフラマソームの構成成分に対して指向される例示的な抗体は、内容が参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第8685400号に見出されるものであり得る。
【0057】
[0063] 一実施形態において、哺乳動物の肺における炎症を治療し、及び/又は低減させるための組成物は、哺乳動物ASCタンパク質、例えば、ヒト、マウス又はラットASCタンパク質などのドメイン又はその一部に特異的に結合する本明細書に提供される抗体又はその活性断片を含む。任意の好適な抗ASC抗体を使用することができ、いくつかは市販されている。本明細書の方法における使用のための抗ASC抗体の例は、内容が参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第8685400号に見出されるものであり得る。本明細書に提供される方法における使用のための市販の抗ASC抗体の例としては、限定されるものではないが、04-147抗ASC、MilliporeSigmaからのクローン2EI-7マウスモノクローナル抗体、Millipore SigmaからのAB3607-抗ASC抗体、Biorbytからのorb194021抗ASC、LifeSpan BiosciencesからのLS-C331318-50抗ASC、R&D SystemsからのAF3805抗ASC、Novus BiologicalsからのNBP1-78977抗ASC、Rockland Immunochemicalsからの600-401-Y67抗ASC、MBL InternationalからのD086-3抗ASC、AdipogenからのAL177抗ASC、モノクローナル抗ASC(クローンo93E9)抗体、Santa Cruz Biotechnologyから抗ASC抗体(F-9)、Santa Cruz Biotechnologyからの抗ASC抗体(B-3)、Enzo Life SciencesからのASCポリクローナル抗体-ADI-905-173、又はA161抗ヒトASC-Leinco Technologiesが挙げられる。ヒトASCタンパク質は、アクセッション番号NP_037390.2(Q9ULZ3-1)、NP_660183(Q9ULZ3-2)又はQ9ULZ3-3であり得る。ラットASCタンパク質は、アクセッション番号NP_758825(BAC43754)であり得る。マウスASCタンパク質は、アクセッション番号NP_075747.3であり得る。一実施形態において、抗体は、哺乳動物ASCタンパク質(例えば、ヒト、マウス又はラットASC)のPYRIN-PAAD-DAPINドメイン(PYD)又はその一部若しくは断片に結合する。この実施形態において、本明細書に記載の抗体は、ヒト、マウス又はラットASCのPYDドメイン又はその断片と少なくとも65%(例えば、65、70、75、80、85%)の配列同一性を有するアミノ酸配列に特異的に結合する。一実施形態において、抗体は、哺乳動物ASCタンパク質(例えば、ヒト、マウス又はラットASC)のC末端カスパーゼリクルートメントドメイン(CARD)又はその一部若しくは断片に結合する。この実施形態において、本明細書に記載の抗体は、ヒト、マウス又はラットASCのCARDドメイン又はその断片と少なくとも65%(例えば、65、70、75、80、85%)の配列同一性を有するアミノ酸配列に特異的に結合する。さらに別の実施形態において、抗体は、PYD及びCARDドメイン間に局在する哺乳動物ASCタンパク質配列(例えば、ヒト、マウス又はラットASC)の一部又はその断片に結合する。別の実施形態において、哺乳動物の肺における炎症を治療し、及び/又は低減させるための組成物は、ラットASCの一領域、例えば、アミノ酸配列ALRQTQPYLVTDLEQS(配列番号1)(すなわち、ラットASC、アクセッション番号BAC43754の残基178~193)に特異的に結合する抗体を含む。この実施形態において、本明細書に記載の抗体は、ラットASCのアミノ酸配列ALRQTQPYLVTDLEQS(配列番号1)と少なくとも65%(例えば、65、70、75、80、85%)の配列同一性を有するアミノ酸配列に特異的に結合する。別の実施形態において、哺乳動物のCNSにおける炎症を治療し、及び/又は低減させるための組成物は、ヒトASCの一領域、例えば、アミノ酸配列RESQSYLVEDLERS(配列番号2)に特異的に結合する抗体を含む。一実施形態において、本明細書に記載のASCドメイン又はその断片に結合する抗体は、哺乳動物の肺細胞、例えば、II型肺胞細胞におけるASC活性を阻害する。
【0058】
[0064] 別の実施形態において、哺乳動物の肺における炎症を低減させるための組成物は、NLRP1又はそのドメインに特異的に結合する本明細書に提供される抗体(例えば、抗NLRP1ニワトリ抗体)又はその活性断片を含む。任意の好適な抗NLRP1抗体を使用することができ、いくつかは市販されている。本明細書に記載の方法における使用のための抗NLRP1抗体の例は、内容が参照により全体として本明細書に組み込まれる米国特許第8685400号に見出されるものであり得る。本明細書に提供される方法における使用のための市販の抗NLRP1抗体の例としては、限定されるものではないが、R&D SystemsからのヒトNLRP1ポリクローナル抗体AF6788、EMD Milliporeウサギポリクローナル抗NLRP1 ABF22、Novus Biologicalsウサギポリクローナル抗NLRP1 NB100-56148、Sigma-Aldrichマウスポリクローナル抗NLRP1 SAB1407151、Abcamウサギポリクローナル抗NLRP1 ab3683、Biorbytウサギポリクローナル抗NLRP1 orb325922 mybiosourceウサギポリクローナル抗NLRP1 MBS7001225、R&D systemsヒツジポリクローナルAF6788、Aviva Systemsマウスモノクローナル抗NLRP1 oaed00344、Aviva Systemsウサギポリクローナル抗NLRP1 ARO54478_P050、Origeneウサギポリクローナル抗NLRP1 APO7775PU-N、Antibodies onlineウサギポリクローナル抗NLRP1 ABIN768983、Prosciウサギポリクローナル抗NLRP1 3037、Proteintechウサギポリクローナル抗NLRP1 12256-1-AP、Enzoマウスモノクローナル抗NLRP1 ALX-804-803-C100、Invitrogenマウスモノクローナル抗NLRP1 MA1-25842、GeneTexマウスモノクローナル抗NLRP1 GTX16091、Rocklandウサギポリクローナル抗NLRP1 200-401-CX5、又はCell Signaling Technologyウサギポリクローナル抗NLRP1 4990が挙げられる。ヒトNLRP1タンパク質は、アクセッション番号AAH51787、NP_001028225、NP_055737、NP_127497、NP_127499、又はNP_127500であり得る。一実施形態において、抗体は、哺乳動物NLRP1タンパク質(例えば、ヒトNLRP1)のPyrin、NACHT、LRR1-6、FIIND又はCARDドメイン又はその一部若しくは断片に結合する。この実施形態において、本明細書に記載の抗体は、ヒトNLRP1の規定のドメイン(例えば、Pyrin、NACHT、LRR1-6、FIIND又はCARD)又はその断片と少なくとも65%(例えば、65、70、75、80、85%)の配列同一性を有するアミノ酸配列に特異的に結合する。一実施形態において、Ayes Laboratoriesによりカスタム設計され、産生されたニワトリ抗NLRP1ポリクローナルが肺炎症の低減に使用される。この抗体は、ヒトNLRP1中の以下のアミノ酸配列CEYYTEIREREREKSEKGR(配列番号3)に対して指向され得る。一実施形態において、本明細書に記載のNLRP1ドメイン又はその断片に結合する抗体は、哺乳動物の肺細胞、例えば、II型肺胞細胞におけるNLRP1活性を阻害する。
【0059】
[0065] さらに別の実施形態において、哺乳動物の肺における炎症を低減させるための組成物は、AIM2又はそのドメインに特異的に結合する本明細書に提供される抗体又はその活性断片を含む。任意の好適な抗AIM2抗体を使用することができ、いくつかは市販されている。本明細書に提供される方法における使用のための市販の抗AIM2抗体の例としては、限定されるものではないが、Proteintechからのウサギポリクローナル抗AIM2カタログ番号20590-1-AP、Abcam抗AIMS抗体(ab119791)、ECM biosciencesからのウサギポリクローナル抗AIM2(N末端領域)カタログ番号AP3851、Elabsciencesからのウサギポリクローナル抗ASCカタログ番号E-AB-30449、Santa Cruz BiotechnologyからのAIM2抗体(3C4G11)と呼ばれる抗AIM2マウスモノクローナル抗体、カタログ番号sc-293174、OrigeneからのマウスモノクローナルAIM2抗体、カタログ番号TA324972、Thermofisher ScientificからのAIM2モノクローナル抗体(10M2B3)、Antibodies-onlineからのAIM2ウサギポリクローナル抗体ABIN928372又はABIN760766、Biomatixコート抗AIM2ポリクローナル抗体、カタログ番号CAE02153、Aviva Systems Biologyからの抗AIM2ポリクローナル抗体(OABF01632)、LSBio-C354127からのウサギポリクローナル抗AIM2抗体LS-C354127、Cell Signaling Technologyからのウサギモノクローナル抗AIM2抗体、カタログ番号MA5-16259、Fab Gennix International Incorporatedからのウサギポリクローナル抗AIM2 モノクローナル抗体、カタログ番号AIM2 201AP、MyBiosourceウサギポリクローナル抗AIM2カタログ番号MBS855320、Signalwayウサギポリクローナル抗AIM2カタログ番号36253、Novus Biologicalウサギポリクローナル抗AIM2カタログ番号43900002、GeneTexウサギポリクローナル抗AIM2 GTX54910、Prosci、ウサギポリクローナル抗AIM2 26-540、Biorbytマウスモノクローナル抗AIM2 orb333902、Abcamウサギポリクローナル抗AIM2 ab93015)、Abcamウサギポリクローナル抗AIM2 ab76423、Signma Aldrichマウスポリクローナル抗AIM2 SAB1406827、又はBiolegend抗AIM2 3B10が挙げられる。ヒトAIM2タンパク質は、アクセッション番号NX_014862、NP004824、XP016858337、XP005245673、AAB81613、BAF84731又はAAH10940であり得る。一実施形態において、抗体は、哺乳動物AIM2タンパク質(例えば、ヒトAIM2)のPyrin又はHIN-200ドメイン又はそれらの一部若しくは断片に結合する。この実施形態において、本明細書に記載の抗体は、ヒトAIM2の規定のドメイン(例えば、Pyrin又はHIN-200)又はその断片と少なくとも65%(例えば、65、70、75、80、85%)の配列同一性を有するアミノ酸配列に特異的に結合する。一実施形態において、本明細書に記載のAIM2ドメイン又はその断片に結合する抗体は、哺乳動物の肺細胞、例えば、II型肺胞細胞におけるAIM2活性を阻害する。
【0060】
[0066] 本明細書に記載の抗インフラマソーム(例えば、抗ASC、抗NLRP1又は抗AIM2)抗体としては、哺乳動物インフラマソーム(例えば、AIM2インフラマソーム)の構成成分、例えば、ASC又はAIM2などに特異的に結合する免疫グロブリン可変領域の少なくとも1つの抗原結合領域を有するポリクローナル及びモノクローナルげっ歯類抗体、ポリクローナル及びモノクローナルヒト抗体、又はそれらの任意の一部が挙げられる。一部の例において、抗体がポリペプチドのエピトープに対して産生され、天然又は組換えタンパク質の少なくとも一部に結合する場合に抗体がASCに特異的であるように、抗体はASCに特異的である。
【0061】
[0067] 競合阻害によりモノクローナル抗体特異性及び親和性を決定する方法は、参照により全体として本明細書に組み込まれるHarlow,et al.,Antibodies:A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,N.Y.,1988,Colligan et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,Greene Publishing Assoc.and Wiley Interscience,N.Y.,(1992,1993)、及びMuller,Meth.Enzymol.92:589-601,1983に見出すことができる。
【0062】
[0068] 本発明の抗インフラマソーム(例えば、抗ASC及び抗AIM2)抗体は、限定されるものではないが、ポリペプチド若しくは抗原性断片による適切な動物の接種、リンパ球集団のインビトロ刺激、合成法、ハイブリドーマ、及び/又はそのような抗ASC若しくは抗NLR1抗体をコードする核酸を発現する組換え細胞のような方法により定型的に作製することができる。精製組換えASC又はそのペプチド断片、例えば、ラットASC(例えば、アクセッション番号BAC43754)の残基178~193(配列番号1)又はヒトASCの配列番号2を使用する動物の免疫化は、抗ASC抗体を調製する方法の一例である。同様に、精製組換えNLRP1又はそのペプチド断片、例えば、ラットNALP1の残基MEE SQS KEE SNT EG-cys(配列番号4)又はヒトNALP1の配列番号3を使用する動物の免疫化は、抗NLRP1抗体を調製する方法の一例である。
【0063】
[0069] ASC又はNLRP1に特異的に結合するモノクローナル抗体は、当業者に公知の方法により得ることができる。例えば、内容が参照により全体として本明細書に組み込まれるKohler and Milstein,Nature 256:495-497,1975;米国特許第4,376,110号;Ausubel et al.,eds.,Current Protocols in Molecular Biology,Greene Publishing Assoc.and Wiley Interscience,N.Y.,(1987,1992);Harlow and Lane ANTIBODIES:A Laboratory Manual Cold Spring Harbor Laboratory Press,Cold Spring Harbor,NY,1988;Colligan et al.,eds.,Current Protocols in Immunology,Greene Publishing Assoc.and Wiley Interscience,N.Y.,(1992,1993)参照。このような抗体は、任意の免疫グロブリンクラス、例として、IgG、IgM、IgE、IgA、GILD及びそれらの任意のサブクラスのものであり得る。本発明のモノクローナル抗体を産生するハイブリドーマは、インビトロ、インサイチュー又はインビボで培養することができる。
【0064】
組成物の投与
[0070] 本発明の組成物は、任意の好適な配合物で哺乳動物(例えば、げっ歯類、ヒト)に投与することができる。例えば、抗ASC抗体は、薬学的に許容可能な担体又は希釈剤、例えば、生理食塩水又は緩衝塩溶液中で配合することができる。好適な担体及び希釈剤は、投与方式及び経路並びに標準的な医薬実務に基づき選択することができる。例示的な薬学的に許容可能な担体及び希釈剤、並びに医薬配合物の説明は、本分野における標準的教本のRemington’s Pharmaceutical Sciences、及びUSP/NFに見出すことができる。他の物質を組成物に添加して組成物を安定化し、及び/又は保存することができる。
【0065】
[0071] 本発明の組成物は、任意の慣用の技術により哺乳動物に投与することができる。典型的には、このような投与は、吸入によるもの、又は非経口(例えば、静脈内、皮下、腫瘍内、筋肉内、腹腔内、又は髄腔内導入)であり得る。組成物は、例えば、内部若しくは外部標的部位への手術送達により、又は血管によりアクセス可能な部位へのカテーテルにより標的部位に直接投与することもできる。組成物は、単一ボーラス、複数回注射で、又は連続注入(例えば、静脈内、腹膜透析によるもの、ポンプ注入)により投与することができる。非経口投与のため、組成物は、好ましくは、無菌パイロジェンフリー形態で配合される。
【0066】
有効用量
[0072] 上記の組成物は、好ましくは、有効量、すなわち、治療される哺乳動物における所望の結果を産生し得る(例えば、CNSの外傷性損傷若しくは脳卒中を受け、又は自己免疫若しくはCNS疾患を有する哺乳動物のCNSにおける炎症を低減させ得る)量で哺乳動物(例えば、ラット、ヒト)に投与される。このような治療有効量は、下記のとおり決定することができる。
【0067】
[0073] 本発明の方法において利用される組成物の毒性及び治療効力は、培養物中の細胞又は実験動物のいずれかを使用する標準的医薬手順により決定してLD50(集団の50%の致死用量)を決定することができる。毒性効果及び治療効果間の用量比は治療指数であり、それは比LD50/ED50として表現することができる。大きな治療指数を示すそれらの組成物が好ましい。毒性副作用を示すものを使用することができる一方、そのような副作用の潜在的な損傷を最小化する送達系を設計するように留意すべきである。好ましい組成物の投与量は、好ましくは、毒性をほとんど有さず、又は有さないED50を含む範囲内である。投与量は、用いられる剤形及び利用される投与経路に応じてこの範囲内で変動し得る。
【0068】
[0074] 医学及び獣医学分野において周知のとおり、任意の1つの対象についての投与量は、多くの因子、例として、対象のサイズ、体表面積、年齢、投与すべき特定の組成物、投与の時間及び経路、全身健康状態、並びに同時投与される他の薬物に依存する。
【実施例0069】
実施例
[0075] 本発明を以下の具体的な実施例によりさらに説明する。実施例は、説明のため提供するにすぎず、決して本発明の範囲を限定するものと解釈すべきでない。
【0070】
実施例1
TBI後のALIにおけるEV媒介インフラマソームシグナリングの役割及びその中和の効果
[0076] 肺機能不全は、重度外傷性脳損傷の合併症として見つかることが多い(1)。TBI対象の約20~25パーセントが急性肺損傷(ALI)を発症する(2)が、TBI誘導ALIの病変を媒介する機序の定義は不十分のままである。従来の文献は、TBI後の肺機能不全が、心肺機能不全をもたらす頭蓋内圧の増加に対する交感神経応答に起因するという考えを支持している(42)。しかしながら、より近年の研究は、全身炎症応答もTBI誘導肺損傷における重要な役割を担うことを示している(43)。具体的には、HMGB1-RAGEリガンド受容体経路がTBI後の肺機能不全についての中枢伝達機序として機能する(8)。さらに、HMGB1は、AIM2インフラマソーム活性化を誘導する(37)。さらなる従来の文献は、病原体がDAMP、例えば、HMGB1を担持するEVを分泌し、炎症をトリガーすることを明らかにしている(Buzas et al.,2014)。種々の研究は、血液脳関門(BBB)が損傷後3~6時間ほど早くTBI後に浸透性になり、脳及び血管内コンパートメント間の保護障壁への損傷をもたらし、タンパク質及び体液の漏出をもたらすことを示している(44)。損傷後のBBBの破壊は、炎症性メディエーター、例えば、DAMPの分泌をもたらし、それが脳炎症を促進し、遠位器官を損傷し得る(5)。いくつかの炎症性メディエーターは、明確な脳損傷のマーカーとして作用し得るが、それらの妥当性は広く認められているわけではない(45)。さらに現在、TBI誘導ALIについての臨床的に承認された治療もバイオマーカーも存在しない。近年、EVは、いくつかの異なるタイプの疾患、例として、肺損傷(46)及びTBI(47)についてのバイオマーカー研究の関心領域になっている。TBIを有する患者の脳脊髄液から単離されたEVにおいて、対照試料と比較してインフラマソームタンパク質が増加することが既に示されている(14)。本実施例において、TBI誘導ALIの病因におけるEV媒介インフラマソームシグナリングの寄与を試験した。
【0071】
材料及び方法
動物及び外傷性脳損傷
[0077] 全ての動物手順は、University of Miami Miller School of MedicineのInstitutional Animal Care and Use Committee(Animal Welfare Assurance A3224-01)により承認され、NIH Guide for the Care and Use of Laboratory Animalsに従って行った。本試験を実施する場合、ARRIVE指針に従った。全てのC57/BL6マウスは、8~12週齢及び24~32グラムであった。マウスをTBIについての実験群(疑似、4時間、24)、養子移植及び処理についての実験群(ナイーブ、疑似生理食塩水、非処理、エノキサパリン、抗ASC)にプロスペクティブにランダム化した。TBI実験群について、疑似動物は外科手術を受けたが損傷されなかった。養子移植処理試験について、疑似生理食塩水群は外科手術を受け、ビヒクル処理として生理食塩水を受容した。ナイーブ動物は、外科手術を受けなかった。検出力分析(G検出力分析、効果量F=0.85、α設定0.05を使用)及び履歴データに基づきそれぞれの群について5~6の試料サイズを使用した49,50。全てのマウスをUniversity of MiamiにおけるLois Pope Life Centerにおけるウイルス抗原不含(VAF)動物施設において12時間の明暗サイクルで飼育し、飼料及び水を自由摂餌として供給した。施設は、畜産的手順を週2回実施し、動物の状態を毎日確認した。動物を術後観察し、それらを加熱パッド上で保持し、体温を直腸プローブにより制御し、手術室内で体温を37℃に維持し、次いで動物飼育室に移した。
【0072】
[0078] 術前、動物をケタミン及びキシラジン(腹腔内、i.p.)により麻酔した。次いで、麻酔した動物を加熱パッド上に配置して37℃の体温を確保した。制御式皮質衝撃(Controlled Cortical Impact)(CCI)モデルを使用してTBIを実施した。5mm開頭術を右皮質(ブレグマから-2.5mm後部、2.0mm側部)上で行った。ECCI-6.3装置(Custom Design & Fabrication,Richmond,VA,USA)を、6m/sの速度、0.8mmの深さ、及び150msの衝撃持続時間における3mmのインパウンダー(impounder)で使用して損傷を誘導した(15)。これらの手順後、動物をそれらのケージに戻し、飼料及び水を与えた。動物を記載のとおりTBIの4時間及び24時間後に屠殺した。疑似動物は麻酔し、損傷動物と同一の術前切開に供したが、開頭術も挫傷も受けなかった。
【0073】
組織回収
[0079] 全ての動物を灌流前にケタミン及びキシラジンにより麻酔した。次いで、動物は気管灌流を受けた。気管カテーテルを20cmのH2Oにおいて使用して肺に4%のパラホルムアルデヒド(PFA)を灌流させ、次いで4%のPFA中で4℃において一晩固定した。固定肺組織をパラフィン包埋し、5μm切片を加工した(16)。タンパク質単離及び分子分析のために右肺組織を回収した。次いで、動物は骨頭切除術を受け、タンパク質単離及び分子分析のために右皮質組織を回収した。
【0074】
ピロプトソーム単離アッセイ
[0080] マウス肺組織溶解物を、5μmの低結合ポリビニリデンジフルオリド(PVDF)膜(Millipore)に通して濾過した。濾過後、上清を2,700×gにおいて8分間遠心分離した。ペレットを40μlの3[(3-コラミドプロピル)ジメチルアンモニオ]-プロパンスルホン酸(CHAPS)緩衝液(20?mmol/LのHEPES-KOH、pH7.5、5?mmol/LのMgCl2、0.5?mmol/LのEGTA、0.1?mmol/Lのフェニルメチルスルホニルフルオリド、プロテアーゼ阻害剤カクテル、及び0.1%のCHAPS)中で再懸濁させた。ピロプトソームを、2,700×gにおける8分間の遠心分離によりペレット化した。次いで、2.2μlのジスクシンイミジル基質(9)を有する27.8μlのCHAPS緩衝液中でペレットを再懸濁させ、室温において30分間インキュベートしてASC二量体を架橋させた。最後に、等量の2×Laemmli緩衝液を添加し、ASC及びガスダーミン-D(GSD)に対する市販の抗体を使用するイムノブロッティングによりタンパク質を分析した。
【0075】
核及び細胞質抽出
[0081] NE-PER核細胞質抽出試薬(Thermo Scientific)を製造業者の説明書に従って使用して核及び細胞質分画を抽出した。簡潔に述べると、マウス肺組織試料を、20~100mgの小片に切断し、500×gにおいて5分間遠心分離した。組織片を細胞質抽出試薬によりホモジナイズし、16,000×gにおいて5分間遠心分離した。次いで、上清(細胞抽出物)を除去し、ペレットを核抽出試薬(Thermo Scientific)により16,000×gにおいて10分間遠心分離した。この上清は核分画に対応し、それを取り出し、-80℃において貯蔵した。
【0076】
イムノブロッティング
[0082] 肺及び脳組織試料を液体窒素中でスナップ冷凍し、-80℃において貯蔵した。プロテアーゼ及びホスファターゼ阻害剤カクテル(Sigma,St Louis,MO,USA)を含有する抽出緩衝液中で右下肺及び右皮質組織の2mm切片をホモジナイズし、4~20%のトリス-TGX Criterionプレキャストゲル(Bio-Rad,Hercules,CA,USA)中で、de Rivero Vaccari et al.2015(13)に記載のとおり、カスパーゼ-1(Novus Biologicals)、ASC(Santa Cruz)、IL-1β(Cell Signaling)、IL-18(Abcam)AIM2(Santa Cruz)及びHMGB1(Millipore)に対する抗体を使用して分解した。Image Labを使用してバンド密度の定量を実施し、全てのデータをβ-アクチンに対して正規化した。
【0077】
免疫組織化学的検査
[0083] 組織切片をキシレン中で脱パラフィン化し、次いでエタノール及びトリス緩衝生理食塩水を使用して再水和した。次いで、免疫組織化学的手順を既に記載のとおり(16)、二重染色について実施した。切片を、カスパーゼ-1及びASC(Millipore)、AIM2(Santa Cruz)、HMGB1(Millipore)及びSPC(Millipore)に対する抗体と4℃において一晩インキュベートした。疑似、4時間、及び24時間マウスの免疫染色した肺切片を、Zeissレーザー走査共焦点顕微鏡(Zeiss,Inc.,Thornwood,NY,USA)により試験した。群盲検化した者により肺切片を分析した。
【0078】
EV単離
[0084] 全エクソソーム抽出溶液を製造業者の説明書(Invitrogen)に従って使用してTBI損傷マウス及び損傷マウスからの血清からEVを単離した。簡潔に述べると、100μlのそれぞれの試料を2000×gにおいて30分間遠心分離した。次いで、上清を20μlの全エクソソーム抽出(TEI)試薬と4℃において30分間インキュベートし、次いで10,000×gにおいて室温において10分間遠心分離した。上清を廃棄し、ペレットを100μlのPBS中で再懸濁させた。EVをCD81の発現により、及びNanosightトラッキング分析により特徴づけした(図6)。
【0079】
EVの養子移植
[0085] C57BL-6TBI及び疑似マウスからの血清由来EVを、ナイーブC57BL-6マウス中に頸静脈を介して体重1グラム当たり1.0×1010個の粒子の用量において注射した48。粒子数をNanosightトラッキング分析により計測し、それに基づき試料を希釈した。術前、動物をケタミン及びキシレンにより麻酔した。1~2cmの切開部を顎及び鎖骨間に作製した。頸静脈を上昇させ、拘束し、次いでカテーテルを配置した。血清由来EVを移植し、分析(n=5)のために注射の24時間後に肺及び脳組織を回収した。
【0080】
エノキサパリン及び抗ASC処理
[0086] TBIマウスからの血清由来EVを、ナイーブC57-BL6マウス中に頸静脈注射を介して注射した。1時間後、エノキサパリン(3mg/kg)(n=4)及び抗ASC(5mg/kg)(n=4)をレシピエント動物に投与した。以下の群を使用した:1)ナイーブ群は、処理を受容せず、2)疑似生理食塩水群は、陰性対照として使用し、生理食塩水のみの頸静脈注射を受け、3)非処理群は、いかなる処理もせずにTBIマウスからのEVを受容し、陽性対照として使用し、4)ENOX群は、TBIマウスからのEV及びエノキサパリンを受容し、並びに5)抗ASC群は、TBIマウスからのEV及び抗ASCを受容した。処理順序はランダム化した。分析のため、注射の24時間後に肺及び脳組織を回収した。処理実験において使用される抗ASC抗体は、ASCに対するヒト化モノクローナル抗体であり、ネズミ、ヒト及びブタASCを認識することを留意すべきである。
【0081】
組織学的検査及び肺損傷スコアリング
[0087] 組織学的検査、形態計測及びALIスコアリングのため、標準的なヘマトキシリン及びエオシン法により肺組織切片を染色した。American Thoracic Society Workshop Reportからの肺損傷スコアリングシステム(17)を使用して盲検病理学者により肺切片をスコアリングした。スコアリングのために20個のランダムな高倍率視野を選択した。ALIスコアリングについての基準は、肺胞腔、間質腔中の好中球の数、ヒアリン膜、空隙を満たすタンパク質性破片及び肺胞中隔肥厚に基づいた。これらの基準に基づき、0(損傷なし)~1(重度損傷)間のスコアを付与した。
【0082】
統計的分析
[0088] 2つの群についてのスチューデントT検定及び2つ以上の群についての一元ANOVAとそれに続くテューキー多重比較検定(GraphPad Prismバージョン7.0)を使用してデータを分析した。ダゴスティーノ・パーソン検定を使用して正規性について検定した。データを平均+/-SEMとして表現する。使用された有意性のP値は、p<0.05であった。
【0083】
結果
重度TBIは、マウスの脳におけるAIM2インフラマソームタンパク質及びHMGB1発現を増加させる
[0089] 炎症促進性サイトカインIL-1β及びIL-18、並びにインフラマソームタンパク質の発現レベルは、流体パーカッション脳損傷後の二次損傷に関連する(18)。重度CCIが炎症促進性サイトカインのプロセシング及びインフラマソームタンパク質レベルの変更を誘導したか否かを決定するため、皮質溶解物を分析したが、重度TBIにおけるインフラマソーム活性化に対する研究が制限された。本実施例において、重度CCIの後、皮質溶解物をカスパーゼ-1(図1A、B)(p<.001)、ASC(図1A、C)(p=.003)、IL-18(図1A、D)(p=.0042)、AIM2(図1A、F)(p=0.0197)及びIL-1β(図1A、G)(p=0.0141)のレベルについて損傷の4及び24時間後において試験した。カスパーゼ-1、ASC、AIM2、及びIL-Iβのレベルは、CCIの4時間後においてピークに達し、24時間までに減少した。炎症性サイトカインの成熟の経時変化はわずかに異なったが、TBIの24時間後までにピークに達した。他者らがAIM2インフラマソームを活性化させるインフラマソームDAMP HMGB1についての役割を示しているため、それらのタンパク質のレベルも皮質溶解物において決定した。図1A、1Eに示されるとおり、CCIは、損傷の4及び24時間後においてHMGB1(図1A、1E)(p=0.0121)のレベルの有意な増加を誘導した。これらのデータは、マウスにおける重度CCIの後、AIM2インフラマソームタンパク質のレベルが損傷後の皮質において有意に上昇したことを示す。
【0084】
重度TBIは、マウスの肺上のAIM2インフラマソームタンパク質及びHMGB1発現を増加させる
[0090] CCIが肺におけるインフラマソーム活性化を誘導したか否かを決定するため、肺溶解物のイムノブロット分析をカスパーゼ-1(図1H、I)(p=.0026)、ASC(図1H、J)(p=.0427)、IL-18(図1H、K)(p=.0025)、IL-1β(図1H、N)(p=.0012)及びAIM2(図1H、M)(p<.001)、及びNLRP3(p=.0047)(補足図1)について実施した。カスパーゼ-1、ASC、IL-18及びAIM2のレベル増加は、疑似対照と比較して損傷の4時間及び24時間後において有意に増加した。しかしながら、タンパク質発現の増加の経時変化は、それらがCCIの24時間後においてピークに達した脳において観察されたものとわずかに異なった。HMGB1-RAGE軸がTBIが肺機能不全を誘導する機序における役割を担うため(8)、肺溶解物をHMGB1タンパク質発現のレベルについて分析した。図1H、1L(p=.0158)は、HMGB1発現がTBIの4及び24時間後において増加したことを示し、AIM2インフラマソーム及びHMGB1がTBI後の肺における炎症応答における役割を担うことを示す。
【0085】
TBIは、マウスの肺においてピロトーシスを誘導する
[0091] 既に示されるとおり、皮質ニューロンにおけるAIM2インフラマソームの活性化は、ピロトーシス細胞死をもたらす(19)。TBIがマウス肺組織においてピロトーシスをもたらすか否かを調査するため、肺組織中のピロプトソームをTBI後に単離した。損傷の4時間後において屠殺したTBI動物は、疑似動物と比較したASCオリゴマー化の証拠を示した(図4A)。ASC二量体、及び三量体がTBI動物において見られた(それぞれ、50、75kDA)。これらの結果は、ピロプトソーム形成を示し、それはASCオリゴマーの超分子集合により特徴づけすることができる。さらに、カスパーゼ-1の活性化時に開裂され、ピロトーシス及びIL-1βの放出をトリガーするガスダーミン-D(GSDMD)(20)は、疑似と比較してTBI動物の肺において有意に増加した(図4B及び4C)(p=0.0001)。これらの知見は、ピロトーシスがTBI後の肺組織において細胞死に寄与することを示した。
【0086】
TBIは、II型肺胞上皮細胞におけるインフラマソームタンパク質の免疫反応性を増加させる
[0092] TBIは、毛細血管漏出をもたらし、血管浸透性の増加及びII型肺細胞と呼ばれる特殊化肺胞上皮細胞の損傷をもたらし得る(5)。損傷後の肺におけるインフラマソーム発現に対するTBIの細胞効果を試験するため、免疫組織化学的分析を、疑似、4時間、及び24時間損傷動物の肺切片において実施した。II型肺胞上皮細胞は、主なタイプのALIにおける損傷肺細胞であることが公知である(17)。肺切片をAIM2、カスパーゼ-1、及びASC(緑色)に対する抗体により染色し、II型上皮細胞のマーカーであるプロ-サーファクタントプロテインC(Pro-SPC、赤色)、及びDAPI核染色(青色)により同時染色した。図2A~2Cに示されるとおり、活性カスパーゼ-1(図2A)、ASC(図2B)、及びAIM2(図2C)は、SPC陽性細胞中に存在する(矢印)。これらのインフラマソームタンパク質の免疫反応性は、TBI後に増加した。これらの知見は、インフラマソームタンパク質がII型肺胞上皮細胞中で発現されること及びTBIがそれらの細胞における免疫反応性の増加をもたらすことを示す。
【0087】
TBIは、核及び細胞質HMGB1発現を増加させる
[0093] TBI後の肺細胞におけるHMGB1の細胞分布を決定するため、肺ホモジネートからの核及び細胞質分画を単離した(図3A、3C)(p=.0337)。イムノブロッティングは、両方の分画がTBIの4時間後におけるHMGB1発現の有意な増加を有したことを示した(図3B、3D)(p=.0345)。HMGB1の免疫組織化学的分析も実施してTBI後の肺切片における免疫反応性の変化を決定した。切片をHMGB1(緑色)及びSPC(赤色)及びDAPI核染色(青色)について同時染色した。HMGB1の免疫反応性は、疑似と比較して4時間及び24時間において増加した。HMGB1の弱い免疫反応性がSPC陽性細胞において観察され(矢印)(図3E);したがって、損傷肺組織におけるHMGB1変化が細胞質であり得ることを示唆する。
【0088】
TBIは、肺形態の変化を誘導し、ALIを誘導する
[0094] ALIは、肺胞及び間質浮腫並びに肺胞腔中への炎症性細胞の浸潤をもたらす炎症プロセスにより特徴づけすることができる(23)。肺組織の組織病理学的分析(図5A)は、重度TBIが損傷の4及び24時間後における肺構造及び形態のかなりの変化を引き起こすことを示す。疑似動物は、正常な肺胞形態を示した一方、損傷動物は、肺胞浮腫の急激な変化を示したが、損傷の24時間後までにわずかに減少した(長矢印)。さらに、両方の時点において好中球浸潤(矢印頭部)及び肺胞毛細血管膜の形態の変化()の証拠が存在した。損傷動物は、間質浮腫の徴候を示し、それは損傷の4時間後においてより顕著であったが、損傷の24時間後においても依然として明らかであった(短矢印)。最後に、損傷動物は、間質区域及び肺胞中隔の肥厚の証拠も示した(ポンド、#)。
【0089】
[0095] 重度損傷がALIを誘導することを裏付けるため、American Thoracic Society(17)により定義されたALIスコアリング体系を使用して組織学的切片を分析した。この体系は、肺胞及び間質腔中への好中球浸潤の証拠、ヒアリン膜形成、空隙を満たすタンパク質性破片、並びに肺胞中隔肥厚に基づく(17)。これらの特徴は、損傷動物において有意に上昇し、ALIスコアは、疑似と比較してTBI動物において全体的に高かった(図5B)(p=0.0017)。
【0090】
エノキサパリン及び抗ASC抗体処理は、TBIマウスからのEVの養子移植後のインフラマソーム発現及びALIを有意に低減させる
[0096] TBI後に循環中に放出され得るEV及びそれらの積み荷が肺においてインフラマソーム活性化を誘導し得る証拠を提供するため、重度CCIマウスからの血清由来EVを使用して古典的養子移植実験を実施した。EVマーカーCD81についてのウエスタンブロットを使用してEV調製物をバリデートした(図6)。対照は、疑似及びナイーブ動物から単離されたEVを受容した。図7A~7Fに示されるとおり、活性カスパーゼ-1(図7A、7B)、ASC(図7A、7C)、IL-18(図7A、7D)、AIM2(図7A、7E)及びHMGB1(図7A、7F)は、非損傷又はナイーブマウス又はナイーブマウスからのEVを受容する動物の肺と比較してTBI損傷動物からのEVを受容した動物の肺において有意に上昇した。さらに、炎症性細胞の浸潤(矢印)は、TBIマウスからのEVにより処理された肺において明らかであった(図7G)。最後に、ALIスコアも、損傷マウスからのEVを受容した動物において有意に高かった(図7H)。これらの試験は、TBI後に循環中に放出されるEVが、ALIの病変に寄与する肺標的細胞におけるインフラマソームを活性化させる神経-呼吸器-インフラマソーム軸(neural-respiratory-inflammasome axis)についての証拠を提供した。
【0091】
[0097] 次に、損傷マウスからナイーブマウスへのEVの養子移植後のエノキサパリン又はASCに対するモノクローナル抗体のいずれかによる処理によりエクソソーム取り込み遮断を試みた。陰性対照動物は、生理食塩水を受容し、陽性対照動物は、処理を受容しなかった。図8A~8Fに示されるとおり、カスパーゼ-1(図8A、8B)、ASC(図8A、8C)、IL-1β(図8A、8D)、AIM2(図8A、8E)及びHMGB1(図8A、8F)は、エノキサパリン又はヒト化モノクローナル抗ASC抗体(例えば、IC100抗体)による処理後に、非処理(陽性対照)群と比較して有意に低減した(p=<.0001)。さらに、H及びE染色された肺切片は、肺胞及び間質腔中への有意に少ない好中球浸潤を示し、中隔肥厚の徴候を示さなかった(図9A~D)。エノキサパリン及び抗ASC抗体(IC100)により処理された動物についてのALIスコアは、非処理群と比較して有意に低かった(図9E)(p=<.0001)。したがって、TBI後に循環中に放出されるEVは、ALIをもたらす肺細胞におけるインフラマソーム活性化における役割を担う。
【0092】
結論
[0098] TBIは、より高い割合のある医学的合併症、特に肺及び中枢神経系機能不全に関連し得る。本実施例において、重度TBIは、皮質及び肺組織中でHMGB1及びインフラマソーム発現(例えば、AIM2、カスパーゼ-1及びASC発現)を増加させ、ALIと一致する肺形態の変化(例えば、肺胞及び間質腔中への好中球の浸潤、肺胞中隔肥厚、並びに肺胞浮腫及び出血)を誘導することが示され、神経細胞呼吸器炎症軸(Neural Respiratory Inflammatory Axis)の考えを導入する。重要なことに、TBIは、肺組織における(例えば、GSDMD開裂の存在下で)ピロトーシスをもたらし、II型肺胞上皮細胞におけるインフラマソームタンパク質の発現を増加させた。さらに、TBIマウスからのEVの養子移植は、インフラマソームを活性化させ、ALIを誘導し、そのことは脳損傷がインフラマソームタンパク質の積み荷を含有するEVの放出を誘導し、次いでそれがALIをもたらすことを示した。さらに、EV取り込み(エノキサパリン)及びインフラマソーム活性化(抗ASC抗体(IC100)処理)の両方の阻害により、インフラマソームタンパク質発現及びALIの発生が低減することが示された。
【0093】
[0099] まとめると、本実施例は、AIM2インフラマソームシグナリングがTBI後の肺損傷の病理学的機序における中心的役割を担うことを示し、EV媒介インフラマソームシグナリングを含むTBI誘導ALIの機序を実証する。これらのデータは、EV媒介インフラマソームシグナリングが神経細胞-呼吸器-炎症軸(Neuronal-Respiratory-Inflammatory Axis)を含む中心的役割を担い得る証拠を提供した。したがって、インフラマソームタンパク質に対する抗体又はEV取り込みを遮断する薬物によるこの軸の標的化は、救命医療の全ての領域における神経外傷誘導ALIにおける治療アプローチを提供し得る。これらの結果に照らして、開示される治療方針は、一般に肺の炎症性疾患の治療に有用であり得る。
【0094】
参照による組み込み
[00100] 以下の参照文献は、全ての目的のために参照により全体として組み込まれる。
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【0095】
実施例2
ヒト患者におけるTBI後のALIにおけるEV媒介インフラマソームシグナリングの役割
[0151] 実施例1におけるマウスに対する実験へのフォローアップとして、ヒト肺内皮細胞におけるインフラマソームシグナリングに対するヒトTBI患者から単離されたEVの役割を試験した。
【0096】
[0152] 第1の実験において、全エクソソーム抽出キット(Thermofisher)を使用して血清由来EVをTBI及び対照患者から単離した。肺ヒト細小血管内皮細胞(HMVEC-Lonza)を培養し、12ウェルプレート上でプレーティングした。コンフルエンシーに達した後、TBI及び対照患者からの単離EVを4時間のインキュベーション期間、細胞に送達した(1.94×108個の粒子/ml)。インキュベーション後、細胞を200ulの溶解緩衝液により回収し、細胞溶解物をウエスタンブロット分析に使用した。
【0097】
[0153] 第2の実験において、全エクソソーム抽出キット(Thermofisher)を使用して血清由来EVをTBI及び対照患者から単離した。肺ヒト細小血管内皮細胞(HMVEC-Lonza)を培養し、96ウェルプレート上でプレーティングした。コンフルエンシーに達した後、TBI及び対照患者からの単離EVを3時間のインキュベーション期間、細胞に送達し(1.94×108個の粒子/ml)、次いでカスパーゼ-1FAM FLICA(Immunohistochemistry Technologies)と1:30の容量/容量比でさらに1時間インキュベートした。インキュベーション後、培地を除去し、細胞をアポトーシス洗浄緩衝液(Immunohistochemistry Technologies)により3回洗浄した。次いで、細胞を核染色についてのヘキスト及び細胞死についてのヨウ化プロピジウムにより同時染色した。EVOS顕微鏡を使用して画像を撮影し、次いで蛍光プレートリーダー下で492nmの励起波長及び520nmの発光波長において細胞を読み取った。
【0098】
結果
[0154] 図10A~10Fに示されるとおり、TBI患者からの血清由来EVの送達は、肺内皮細胞におけるインフラマソームタンパク質発現を増加させた。図10A~10Eは、カスパーゼ-1、ASC、AIM2、及びHMGB1が、対照EVと4時間インキュベートされたPMVECと比較してTBI-EVと4時間インキュベートされたPMVECにおいて上昇することを示した。免疫アッセイ結果は、Ellaシンプルプレックスアッセイを使用してIL-1ベータ発現の有意な増加を示した(図10F)。
【0099】
[0155] 図11A~11Cにおいて示されるとおり、肺内皮細胞へのTBI-EVの送達は、カスパーゼ-1の免疫反応性及び細胞死を増加させた。
【0100】
結論
[0156] これらの試験は、TBI後に循環中に放出されるEVがALIの病変に寄与する肺標的細胞におけるインフラマソームを活性化させる神経細胞-呼吸器-インフラマソーム軸についてのさらなる証拠を提供した。
【0101】
[0157] 上記の種々の実施形態を組み合わせてさらなる実施形態を提供することができる。本明細書に言及される米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願及び非特許刊行物の全ては、参照により全体として本明細書に組み込まれる。実施形態の態様は、別のさらなる実施形態を提供するために種々の特許、出願及び刊行物の概念を用いることが必要な場合、改変することができる。
【0102】
[0158] これらの及び他の変化は、上記の詳細な説明に照らして実施形態に対して行うことができる。一般に、以下の特許請求の範囲において、使用される用語は、特許請求の範囲を本明細書及び特許請求の範囲に開示される具体的な実施形態に限定するものと解釈すべきでないが、そのような特許請求の範囲が与えられる均等物の完全な範囲とともに全ての考えられる実施形態を含むと解釈すべきである。したがって、特許請求の範囲は、本開示により限定されるものではない。
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図1G
図1H
図1I
図1J
図1K
図1L
図1M
図1N
図2A
図2B
図2C
図3A
図3B
図3C
図3D
図3E
図4A
図4B
図4C
図5A
図5B
図6
図7A
図7B
図7C
図7D
図7E
図7F
図7G
図7H
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図9A
図9B
図9C
図9D
図9E
図10A
図10B
図10C
図10D
図10E
図10F
図11A
図11B
図11C
【配列表】
2023016835000001.xml
【手続補正書】
【提出日】2022-12-12
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の発明
【外国語明細書】