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  • 特開-冷間形成積層体 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168358
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】冷間形成積層体
(51)【国際特許分類】
   C03C 27/12 20060101AFI20231116BHJP
   B32B 1/00 20060101ALI20231116BHJP
   B32B 17/10 20060101ALI20231116BHJP
   B60J 1/00 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
C03C27/12 R
B32B1/00 Z
B32B17/10
B60J1/00 H
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023146006
(22)【出願日】2023-09-08
(62)【分割の表示】P 2021034163の分割
【原出願日】2016-07-07
(31)【優先権主張番号】62/190,828
(32)【優先日】2015-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/281,301
(32)【優先日】2016-01-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/339,145
(32)【優先日】2016-05-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【弁理士】
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 秀明
(74)【代理人】
【識別番号】100163050
【弁理士】
【氏名又は名称】小栗 眞由美
(74)【代理人】
【識別番号】100224775
【弁理士】
【氏名又は名称】南 毅
(72)【発明者】
【氏名】ウィリアム キース フィッシャー
(72)【発明者】
【氏名】マーク スティーヴン フリスク
(72)【発明者】
【氏名】スティーヴン ルーサー モイヤー
(72)【発明者】
【氏名】ポール ジョージ リカール
(57)【要約】
【課題】自動車用窓ガラスや建築用途の、より薄く、複雑に湾曲した積層体を提供する。
【解決手段】複雑に湾曲した基板および平坦な基板から作製された、複雑に湾曲した積層体、例えば自動車の窓ガラス、ならびに湾曲した基板および平坦な基板から複雑に湾曲したガラスを冷間形成する。積層体は、第一面と第一面の反対側の第二面とを有する第一の複雑に湾曲したガラス基板、第三面と第三面の反対側の第四面とその間の厚さとを有する第二の複雑に湾曲したガラス基板、および第二面および第三面に固定されたポリマー中間層を含み、前記第四面の圧縮応力値が前記第三面の圧縮応力値より大きく、前記第一の厚さまたは前記第二の厚さの一方が0.1mmから1.4mmの範囲内であり、前記第一と第二の複雑に湾曲したガラス基板の夫々は互いに異なる2つの直交する軸に沿った曲率を有する非平面形状を有する。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一面と、前記第一面の反対側の第二面と、その間の第一の厚さとを有する第一の複雑に湾曲したガラス基板、
第三面と、前記第三面の反対側の第四面と、その間の第二の厚さとを有する第二の複雑に湾曲したガラス基板、および
前記第二面および前記第三面に固定されたポリマー中間層、
を備える積層体であって、
前記第二の厚さが0.1mmから1.4mmの範囲内であり、前記第四面の圧縮応力値が前記第三面の圧縮応力値より大きく、
前記第一と第二の複雑に湾曲したガラス基板の夫々は、互いに異なる2つの直交する軸に沿った曲率を有する非平面形状を有し、以下のうち少なくとも1つの特徴を有する積層体:
(A)前記第二の複雑に湾曲したガラス基板は化学強化されたガラスであり、300MPa以上の表面圧縮応力を有し、前記化学強化は350℃から450℃の範囲の温度を有する溶融塩浴に2時間から8時間の範囲の時間浸漬によるものであること;および
(B)前記第二の複雑に湾曲したガラス基板は熱強化されたガラスであり、少なくとも500℃の仮想温度を有し、前記熱強化は0.024cal/cm・s・℃から0.15cal/cm・s・℃の範囲の熱伝達率による加熱と冷却によるものであること。
【請求項2】
前記第二の複雑に湾曲したガラス基板が化学強化されたガラスである場合、当該ガラス基板のDOLは15μm以上である、請求項1に記載の積層体。
【請求項3】
前記第一の複雑に湾曲したガラス基板は強化されていないガラスである、請求項1または2のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項4】
前記第一の厚さが4.0mm以下である、請求項1から3のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項5】
前記第一の厚さが1.4mmから3.85mmの範囲内である、請求項4に記載の積層体。
【請求項6】
前記第二の複雑に湾曲したガラス基板の周辺部が前記ポリマー中間層に対して圧縮力を加え、前記第二の複雑に湾曲したガラス基板の中央部分が前記ポリマー中間層に対して張力を加える、請求項1から5のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項7】
前記積層体が曲率半径を示し、前記曲率半径が1000mm未満である、請求項1から6のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項8】
車体、前記車体の開口部、および前記開口部に配置された積層体を備えた車両であって、前記積層体が、
第一面と、前記第一面の反対側の第二面と、その間の第一の厚さとを有する第一の複雑に湾曲したガラス基板、
第三面と、前記第三面の反対側の第四面と、その間の第二の厚さとを有する第二の複雑に湾曲したガラス基板、および
前記第二面および第三面に固定されたポリマー中間層、
を含み、
前記第二の厚さが0.1mmから1.4mmの範囲内であり、前記第四面の圧縮応力値が前記第三面の圧縮応力値より大きく、
前記第一と第二の複雑に湾曲したガラス基板の夫々は、互いに異なる2つの直交する軸に沿った曲率を有する非平面形状を有し、以下のうち少なくとも1つの特徴を有する、車両:
(A)前記第二の複雑に湾曲したガラス基板は化学強化されたガラスであり、300MPa以上の表面圧縮応力を有し、前記化学強化は350℃から450℃の範囲の温度を有する溶融塩浴に2時間から8時間の範囲の時間浸漬によるものであること;および
(B)前記第二の複雑に湾曲したガラス基板は熱強化されたガラスであり、少なくとも500℃の仮想温度を有し、前記熱強化は0.024cal/cm・s・℃から0.15cal/cm・s・℃の範囲の熱伝達率による加熱と冷却によるものであること。
【請求項9】
前記積層体が前記開口部に関して移動可能である、請求項8に記載の車両。
【請求項10】
前記第一の厚さは4.0mm未満である、請求項8または9に記載の車両。
【請求項11】
前記第一の複雑に湾曲した基板は強化されていないガラス基板である、請求項8から10のいずれか一項に記載の車両。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、米国特許法第119条のもと、2016年5月20日に出願された米国特許仮出願第62/339145号、2016年1月21日に出願された米国特許仮出願第62/281301号および2015年7月10に出願された米国特許仮出願第62/190828号の優先権の恩恵を主張し、それらの内容は全体として参照により本明細書に援用され組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本開示の原理および実施形態は、概して、冷間成形された複雑に湾曲した積層体、およびそのような積層体を冷間成形する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
湾曲した積層体は、自動車用窓ガラスおよび建築用窓をはじめとする様々な用途で使用される。そのような用途のために、ガラスのシートは、開口部の構造およびサイズ、ならびに車両スタイルまたは建築の美観によって決定される所定の形状および/または曲率に、正確に曲げられる。そのような湾曲した積層体は、平坦なガラスシートを成形に適した温度に加熱し、そのシートに力を加えて変形させ、次に2枚の湾曲したシートを合わせて積層することによって、作製することができる。このプロセスは典型的には、「熱間曲げ」プロセスと呼ばれる。いくつかの公知例では、ガラスを炉内で加熱し、シートが依然として炉内で高温状態(ガラスの軟化温度または軟化温度付近)にある間にガラスを成形することができる。ガラスシートはまた、まず、ガラスシートを炉内でガラスの軟化温度または軟化温度付近の好適な温度に加熱し、次にガラスシートを炉の外側のガラス曲げ装置に移すことによっても曲げることができる。そのような曲げ操作を受けるガラスシートは、典型的には2.5mm、3mmまたはそれ以上の厚さである。
【0004】
湾曲した積層体は、典型的には、厳しい光学的要件を満たさなければならず、閉鎖部の視野領域、すなわち窓は、湾曲した積層体を通したクリアな視野を妨害し得る、表面欠陥および光学的ひずみがあってはならない。曲げ操作の間に適切な温度でないガラスは、光学的ひずみ、例えばローラーウェイブ(光学的ロールひずみ)、ならびに/または不連続マーキング、および/もしくは曲げられたシートをその本来の目的に適さないものにする可能性がある欠陥を示す可能性がある。
【0005】
複雑に湾曲した積層体を形成するための既存の方法は、現在のところ、2枚のガラスシートをガラスの軟化点または軟化点付近で加熱および屈曲させて、1枚の積層体を形成することを必要とし、および/または曲げ操作を容易にするために典型的には非常に厚いガラスシートを使用し、積層体の全重量がさらに大きくなっている。また、2枚のガラスシートが(例えば、異なる軟化点および/または厚さに起因して)異なる成形条件またはプロセスを必要とする場合、2枚のガラスシートは、典型的には別々に形成され、その後結合され、多くの場合、形状のミスマッチならびに不必要な処理ステップおよびコストにつながる。したがって、そのような方法は、複雑な製造プロセスを必要とし、製造時間が長くなり、コストが高くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
自動車用窓ガラスおよび建築用途では、現在入手可能な積層体よりも薄く、複雑に湾曲した積層体への要求が高まっている。したがって、より少ない処理ステップを使用し、より正確に形状を一致させて形成することができ積層することができるそのような積層体が必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の第一の態様は、複雑に湾曲した形状を有する積層体に関する。一つ以上の実施形態において、積層体は、平坦な基板を湾曲した基板に積層することによって冷間成形される。本明細書中で使用する場合、「冷間成形」とは、いずれかの基板の軟化温度より十分低い温度で実施される積層体形成プロセスを指す。一つ以上の実施形態によると、積層体は、いずれかの基板の軟化温度より少なくとも200℃低い温度で冷間成形される。いくつかの実施形態において、冷間成形された、複雑に湾曲した積層体は、薄い基板(例えば、約1mm未満の厚さを有する)を含み、その結果、重量が減少した積層体が得られる。一つ以上の実施形態による本明細書中で記載する積層体は、公知の複雑に湾曲した積層体(典型的には、熱間曲げプロセスを用いて形成される)で見られることが多い光学的欠陥やひずみがなく、所望の複雑に湾曲した形状を示す。
【0008】
一つの実施形態において、積層体は、第一面とその第一面の反対側の第二面とその間の第一厚さとを含む第一の複雑に湾曲したガラス基板、第三面とその第三面の反対側の第四面とその間の第二の厚さとを含む第二の複雑に湾曲したガラス基板、ならびに第二面および第三面に固定されたポリマー中間層を含む。
【0009】
一つ以上の実施形態において、第一の複雑に湾曲したガラス基板および第二の複雑に湾曲したガラス基板のいずれか一方または両方は、約0.1mmから約1mm、または約0.2mmから約0.7mmの範囲内の厚さを有する。特に、一つ以上の実施形態において、第二の複雑に湾曲したガラス基板は第一の複雑に湾曲したガラス基板よりも薄い厚さを有する。一つ以上の実施形態において、第三面および第四面はそれぞれ、第四面が第三面の圧縮応力値を上回る圧縮応力値を有するような圧縮応力値を有する。一つ以上の実施形態において、第一面および第三面は凸面を形成し、その一方で、第二面および第四面は凹面を形成する。
【0010】
本開示の別の態様は、積層体を形成するための方法に関する。一つの実施形態において、複雑に湾曲した積層体を製造する方法は、複雑に湾曲した基板と平坦で強化されたガラス基板との間にボンディング層を配置してスタックを形成することと、スタックに圧力を加えて、強化されたガラス基板を、ボンディング層に押し付け、ボンディング層を複雑に湾曲した基板に押し付けることと、複雑に湾曲した基板、ボンディング層、および複雑に湾曲した強化されたガラス基板を400℃よりも低い温度に加熱して、強化されたガラス基板が複雑に湾曲した基板と形状が一致する、複雑に湾曲した積層体を形成することと、を含む。
【0011】
本明細書中で記載する方法は、両基板の加熱および曲げを必要とせず、したがって、基板の両方の加熱および曲げ操作を回避することによって製造時間およびコストを削減する。一つ以上の実施形態において、本方法は、一つの基板を化学的、熱的、機械的、またはその組み合わせで強化することと、を含む。
【0012】
別の実施形態において、複雑に湾曲した積層体を製造する方法は、二本の軸に沿って曲率を有し、複雑に湾曲したガラス基板を提供するように、二つの主要表面とその間の厚さを有する第一のガラス基板を形成することと、複雑に湾曲したガラス基板をボンディング層および第二のガラス基板とともに、ボンディング層が複雑に湾曲したガラス基板と第二のガラス基板との間になるようにスタック状に配置することを含む。一つ以上の実施形態において、第二のガラス基板は二つの主要表面とその間の厚さを有し、二本の軸に沿って曲率を有し、第二のガラス基板の曲率は第一のガラス基板の曲率と一致しない。一つ以上の実施形態において、本方法は、スタックに室温で圧力を加えて、第二のガラス基板を成形して、複雑に湾曲したガラス基板の曲率に一致させ、複雑に湾曲した積層体を形成することを含む。
【0013】
さらなる特徴を、以下の詳細な説明で記載し、一部は当業者にはその説明から容易に明らかになるか、または以下の詳細な説明、特許請求の範囲、ならびに添付の図面を含む、本明細書中で記載する実施形態を実施することにより認識される。
【0014】
前記の概要および以下の詳細な説明はどちらも単なる例示であって、請求項の本質および性質の理解に対する概要または枠組みを提供することを意図すると理解すべきである。添付の図面は、さらなる理解を提供するために含まれ、本明細書に援用され、本明細書の一部を構成する。図面は一つ以上の実施形態を説明し、説明とあわせて様々な実施形態の原理および操作を説明する役目を果たす。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、積層体の例示的実施形態の断面図を示す。
図2図2は、平坦なガラス基板、湾曲したガラス基板および介在フィルム層の例示的実施形態の成形前の断面図を示す。
図3図3は、本開示の実施形態に従った積層体の積層体形状を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
ここで様々な実施形態を詳細に参照し、その例を添付の図面で説明する。
【0017】
本明細書全体にわたって「一実施形態」、「ある実施形態」、「様々な実施形態」、「一つ以上の実施形態」または「実施形態」とは、その実施形態と関連して記載した特定の特徴、構造、材料、または特性が本開示の少なくとも一つの実施形態に含まれることを意味する。したがって、本明細書全体にわたって様々な箇所で出現する「一つ以上の実施形態において」、「ある実施形態において」、「様々な実施形態において」、「一実施形態において」または「実施形態において」などの語句は、必ずしも本開示の同じ実施形態を指すとは限らない。さらに、特定の特徴、構造、材料、または特性を一つ以上の実施形態において、任意の好適な方法で組み合わせることができる。
【0018】
自動車および建築用途は、様々な用途のために、軽量であるが機械的に強い積層体を必要とすることが多い。自動車分野においては、車両の重量を削減して、それにより燃料効率を改善することが必要とされる。車両の重量を削減するための一つのアプローチは、積層体および/または積層体で使用する基板の厚さを削減することである。美的要件を満たす、ますます複雑に湾曲した形状を有する積層体も必要とされる。例えば、自動車分野では、フロントガラス、バックライト、サンルーフ、固定して取り付けた屋根板、およびサイドライトが、複雑に湾曲した形状を有する積層体を利用している。建築では、そのような複雑に湾曲した積層体は、様々な外装および内装用途(例えば、壁、調理台、電化製品、モジュール式のシステム家具など)で使用することができる。
【0019】
無機材料の曲げ要件は、湾曲した積層体で用いられるプライの厚さを制限することが多い。約1.5mmまたは1.4mm以下の厚さを有する薄いガラス基板は、公知の熱間曲げ法を使用して適切に湾曲させ成形するには冷却が迅速すぎて、その結果、熱間曲げ操作の間に許容できないひびまたは積層体破壊が起こる可能性があることが判明している。さらに、約1.5mm以下の厚さを有する薄いガラス基板は、そのような冷却を相殺するためにさらに高い温度に加熱される場合、よりひずみを生じやすい可能性がある。各ガラス基板の前縁および後縁は、基板縁部がローラ曲げ装置によって支持されていない場合はカンチレバーを形成する。特定の温度より高く加熱すると、ガラス基板は(厚さに関係なく)カンチレバーの自重のもとでたるむ可能性があるが、基板が薄いほど、かつ基板が加熱される温度が高いほど、そのようなたるみは大きくなる可能性がある。そのようなたるみはまた、支持ローラ間の基板の支持されていない部分全体にわたって起こり得る。これらの課題の一つ以上は、本明細書中で記載する様々な実施形態によって対処することができる。
【0020】
本開示の第一の態様は、複雑に湾曲した形状を有する冷間成形された積層体に関する。一つ以上の実施形態において、積層体は、複雑に湾曲した形状を有する第一基板および平坦または平面形状を有する第二基板から得ることができる。本明細書中で使用する場合、「平坦」および「平面」は交換可能に用いられ、そのような平坦な基板を別の基板(すなわち、約3メートル以上、約4メートル以上、または約5メートル以上の曲率半径)または一本だけの軸に沿った(任意の値の)曲率に冷間成形する場合に、曲率ミスマッチのために積層欠陥が生じる曲率よりも小さい曲率を有する形状を意味する。平坦な基板は、表面上に配置された場合に前記形状を有する。本明細書中で用いられる場合、「複雑な曲線」および「複雑に湾曲した」とは、互いに異なる2つの直交する軸に沿った曲率を有する非平面形状を意味する。複雑に湾曲した形状の例には、非展開可能な形状とも呼ばれる単純または複合曲線を有するものが挙げられ、限定するものではないが、球状、非球状、およびトロイダル形状を含む。実施形態による複雑に湾曲した積層体はまた、そのような表面のセグメントもしくは部分を含み得るか、またはそのような曲線および表面の組み合わせから構成され得る。一つ以上の実施形態において、積層体は、長半径および交差曲率を含む複合曲線を有し得る。一つ以上の実施形態による複雑に湾曲した積層体は二つの独立した方向で異なった曲率半径を有し得る。一つ以上の実施形態によると、複雑に湾曲した積層体はしたがって、積層体が所与の次元(dimension)に平行な軸(すなわち第一軸)に沿って湾曲し、また同じ次元に対して垂直な軸(すなわち、第二軸)に沿っても湾曲している「交差曲率」を有するとして特徴づけることができる。積層体の曲率は、有効最小半径が有効交差曲率、および/または曲げ深さと組み合わされる場合は、より一層複雑であり得る。一部の積層体はまた、互いに対して垂直でない軸に沿った曲げも含み得る。非限定的実施例として、複雑に湾曲した積層体は、0.5m×1.0mの長さおよび幅寸法、ならびに短軸に沿って2mから2.5mの曲率半径および主軸に沿って4mから5mの曲率半径を有し得る。一つ以上の実施形態において、複雑に湾曲した積層体は、少なくとも一つの軸に沿って5m以下の曲率半径を有し得る。一つ以上の実施形態において、複雑に湾曲した積層体は、少なくとも第一軸およびその第一軸に対して垂直な第二軸に沿って5m以下の曲率半径を有し得る。一つ以上の実施形態において、複雑に湾曲した積層体は、少なくとも第一軸およびその第一軸に対して垂直でない第二軸に沿って5m以下の曲率半径を有し得る。
【0021】
図1は、複雑に湾曲した形状を有し、第二面114によって提供される少なくとも一つの凹面の反対側の、第一面112によって提供される少なくとも一つの凸面を有し、その間に厚さを有する第一基板110を含む積層体100の一実施形態を示す。積層体はまた、冷間成形され、複雑に湾曲した第二基板130も含む。第二基板130は、第四面134によって提供される少なくとも一つの凹面の反対側の第三面132によって提供される少なくとも一つの凸面を、その間の厚さとともに含む。図1に示すように、中間層120を第一基板110と第二基板130との間に配置することができる。一つ以上の実施形態において、中間層120を少なくとも積層体の第二面114および第三面132に固定する。本明細書中で使用する場合、「凸面」という語は、図1において参照番号112および132で示される、外向きの曲げまたは湾曲を意味する。「凹面」という語は、図1において参照番号114、134で示されるような、内向きの曲げまたは湾曲を意味する。
【0022】
一つ以上の実施形態において、冷間成形プロセス前には、第三面132および第四面134におけるそれぞれの圧縮応力は実質的に等しい。第二基板130が強化されていない(本明細書中で定義するとおり)実施形態において、第三面132および第四面134は、冷間成形前には、感知できる圧縮応力を示さない。第二基板130が強化された(本明細書中で記載するとおり)実施形態において、第三面132および第四面134は、冷間成形前には、互いに対して等しい圧縮応力を示す。一つ以上の実施形態において、冷間成形後、第四面134上の圧縮応力は増加する(すなわち、第四面134上の圧縮応力は、冷間成形前よりも冷間形成後の方が大きい)。理論によって拘束されないが、冷間成形プロセスは成形される基板(すなわち、第二基板)の圧縮応力を増大させて、曲げおよび/または成形操作の間に付与された引張応力を相殺する。一つ以上の実施形態において、冷間成形プロセスにより、その基板の第三面(すなわち、第三面132)は引張応力を受け、その一方で、基板の第四面(すなわち、第四面134)は圧縮応力を受ける。
【0023】
強化された第二基板130を利用する場合、第二基板の第三面および第四面(132、134)はすでに圧縮応力下にあり、したがって第三面132はさらに大きな引張応力を受け得る。これによって、強化された第二基板が湾曲した表面にさらに密接に一致することが可能になる。したがって、図1に示す積層体について、積層体100の形成後、第三面132は第四面134の圧縮応力よりも小さい圧縮応力を有する。言い換えると、第四面134の圧縮応力は第三面132の圧縮応力よりも大きい。
【0024】
一つ以上の実施形態において、第四面134における(第三面と比較して)増大した圧縮応力は、積層体が形成された後では露出する表面である第四面134に対してより大きな強度を提供する。
【0025】
一つ以上の実施形態において、第二基板130は第一基板110よりも薄い厚さを有する。この厚さの差は、第一基板110の形状に一致するために、第二基板130が加える力がより少なく、より柔軟であることを意味する。さらに、第二基板130が薄いほど容易に変形して、第一基板110の形状によって生じる形状ミスマッチおよびギャップを相殺することができる。一つ以上の実施形態において、薄くかつ強化された第二基板は、特に冷間成形の間でより高い柔軟性を示す。
【0026】
一つ以上の実施形態において、第二基板130は、第一基板110と一致して、第二面114と第三面132との間に実質的に均一な距離を提供し、この距離は中間層によって充填される。
【0027】
一つ以上の実施形態において、積層体100は、6.85mm以下、または5.85mm以下の厚さを有し得、ここで、積層体100の厚さは、第一基板110と第二基板130と中間層120の厚さとの合計である。様々な実施形態において、積層体100は、約1.8mmから約6.85mmの範囲内、または約1.8mmから約5.85mmの範囲内、または約1.8mmから約5.0mmの範囲内、または2.1mmから約6.85mm、または約2.1mmから約5.85mmの範囲内、または約2.1mmから約5.0mmの範囲内、または約2.4mmから約6.85mmの範囲内、または約2.4mmから約5.85mmの範囲内、または約2.4mmから約5.0mmの範囲内、または約3.4mmから約6.85mmの範囲内、または約3.4mmから約5.85mmの範囲内、または約3.4mmから約5.0mmの範囲内の厚さを有し得る。
【0028】
一つ以上の実施形態において、積層体100は、1000mm未満、または750mm未満、または500mm未満、または300mm未満である曲率半径を示す。積層体、第一基板および/または第二基板は実質的にしわがない。
【0029】
一つ以上の実施形態において、第二基板130は第一基板と比べて、比較的薄い。言い換えると、第一基板110は第二基板130よりも大きな厚さを有する。一つ以上の実施形態において、第一基板110は、第二基板130の厚さの2倍を上回る厚さを有し得る。一つ以上の実施形態において、第一基板110は、第二基板130の厚さの約1.5倍から約2.5倍までの範囲内の厚さを有し得る。
【0030】
一つ以上の実施形態において、第一基板110および第二基板130は同じ厚さを有し得、第一基板は第二基板よりも硬質であるかまたは大きな剛性を有し、特に具体的な実施形態では、第一基板および第二基板の両方が0.2mmから0.7mmの間の厚さを有する。
【0031】
一つ以上の具体的な実施形態において、第二基板130は0.8mm以下の厚さを有する。様々な実施形態において、第二基板130は、約0.1mmから約1.4mmの範囲内、または約0.2mmから約1.4mmの範囲内、または約0.3mmから約1.4mmの範囲内、または約0.4mmから約1.4mmの範囲内、または約0.5mmから約1.4mmの範囲内、または約0.1mmから約1mmの範囲内、または約0.2mmから約1mmの範囲内、または約0.1mmから約0.7mmの範囲内、または約0.2mmから約0.7mmの範囲内、または約0.3mmから約0.7mmの範囲内、または約0.4mmから約0.7mmの範囲内、または約0.2mmから約0.6mmの範囲内、または約0.3mmから約0.6mmの範囲内、または約0.4mmから約0.6mmの範囲内、または約0.2mmから約0.5mmの範囲内、または約0.3mmから約0.5mmの範囲内、または約0.2mmから約0.4mmの範囲内の厚さを有し得る。
【0032】
一つ以上の実施形態において、第一基板110は第二基板130を上回る厚さを有し得る。一つ以上の実施形態において、第一基板110は、4.0mm以下、または3.85mm以下の厚さを有する。様々な実施形態において、第一基板は、約1.4mmから約3.85mmの範囲内、または約1.4mmから約3.5mmの範囲内、または約1.4mmから約3.0mmの範囲内、または約1.4mmから約2.8mmの範囲内、または約1.4mmから約2.5mmの範囲内、または約1.4mmから約2.0mmの範囲内、または約1.5mmから約3.85mmの範囲内、または約1.5mmから約3.5mmの範囲内、または約1.5mmから約3.0mmの範囲内、または約1.5mmから約2.8mmの範囲内、または約1.5mmから約2.5mmの範囲内、または約1.5mmから約2.0mmの範囲内、または約1.6mmから約3.85mmの範囲内、または約1.6mmから約3.5mmの範囲内、または約1.6mmから約3.0mmの範囲内、または約1.6mmから約2.8mmの範囲内、または約1.6mmから約2.5mmの範囲内、または約1.6mmから約2.0mmの範囲内、または約1.8mmから約3.5mmの範囲内、または約2.0mmから約3.0mmの範囲内の厚さを有し得る。
【0033】
第一基板110および第二基板130の材料は様々であり得る。一つ以上の実施形態によると、第一基板および第二基板の材料は、同じ材料であっても、または異なる材料であってもよい。例示的実施形態において、第一基板および第二基板の一方または両方は、ガラス(例えば、ソーダ石灰ガラス、アルカリアルミノシリケートガラス、アルカリ含有ホウケイ酸ガラス、および/またはアルカリアルミノホウケイ酸ガラス)またはガラス-セラミックであり得る。好適なガラスセラミックの例としては、LiO-Al-SiO系(すなわちLAS系)ガラスセラミック、MgO-Al-SiO系(すなわちMAS系)ガラスセラミック、およびムライト、スピネル、α-石英、β-石英固溶体、葉長石、ジケイ酸リチウム、βリシア輝石、霞石、およびアルミナのいずれか一つ以上の結晶相を含むガラスセラミックが挙げられる。さらに、第一基板および第二基板の一方または両方を化学的、熱的、機械的またはその組み合わせで強化することができる。一つ以上の実施形態において、第一基板は強化されていないが(化学強化、熱強化または機械的強化プロセスによって強化されていないが、アニーリングされた基板を含み得ることを意味する)、第二基板は強化されている。一つ以上の具体的な実施形態において、第二のガラス基板は化学強化されている。
【0034】
一つ以上の実施形態において、積層体は、基板の一方または両方が、ガラスまたはガラス以外の材料、例えばプラスチック、金属、セラミック、ガラス-セラミック、木材、およびそれらの組み合わせで作られたものを含み得る。
【0035】
基板は、様々な異なるプロセスによって提供することができる。例えば、基板がガラス基板を含む場合、例示的なガラス基板形成方法は、フロートガラス法、およびダウンドロー法、例えばフュージョンドロー法、およびスロットドロー法を含む。
【0036】
フロートガラス法によって調製されるガラス基板は平滑な表面によって特徴づけることができ、均一な厚さは、溶融した金属、典型的にはスズの床上に溶融ガラスを平らにならすことによって得られる。例示的プロセスにおいて、溶融スズ床の表面上に供給される溶融ガラスはフローティングガラスリボンを形成する。ガラスリボンがスズ浴に沿って流れる際に、ガラスリボンが凝固してスズからローラ上に持ち上げることができる固体ガラス基板になるまで、温度は徐々に低下する。浴から出ると、ガラス基板をさらに冷却し、アニールして内部応力を減少させることができる。
【0037】
ダウンドロー法は、表面が比較的傷ついていない、均一な厚さを有するガラス基板を製造する。ガラス基板の平均曲げ強度は表面ひびの量およびサイズによって制御されるので、接触が最小であった傷のない表面は、より高い初期強度を有する。ダウンドローされたガラス基板は約2mm未満の厚さに延伸することができる。
【0038】
フュージョンドロー法は、例えば、溶融ガラス原材料を受け取るためのチャンネルを有するドローイングタンクを使用する。チャンネルは、チャンネルの両側においてチャンネルの長さに沿って、頂部で開放された堰を有する。チャンネルが溶融した材料で満たされると、溶融ガラスは堰を越えてあふれる。重力のために、溶融ガラスは二つの流動するガラス膜としてドローイングタンクの外表面を流れ落ちる。これらのドローイングタンク外表面は下側および内向きに延びて、ドローイングタンクの下の縁部で合流する。二つの流動するガラス膜はこの縁部で合流して融合し、一つの流動するガラス基板を形成する。フュージョンドロー法は、チャンネル上を流れる二枚のガラス膜が一緒になって融合し、結果として得られるガラス基板のいずれの外表面も装置の部分と接触しないという利点を提供する。したがって、フュージョンドローされたガラス基板の表面特性は、そのような接触によって影響を受けない。
【0039】
スロットドロー法はフュージョンドロー法とは異なる。スロットドロープロセスでは、溶融した原材料ガラスをドローイングタンクに提供する。ドローイングタンクの底部は、スロットの長さにわたって延在するノズルを備えた開放スロットを有する。溶融ガラスはスロット/ノズルを通って流れ、連続基板としてアニーリング領域中に下方に延伸される。
【0040】
いったん形成されると、第一基板または第二基板のいずれか一方を強化して、強化されたガラス基板を形成することができる。ガラスセラミック基板もガラス基板と同じ方法で強化することができることに留意されたい。本明細書中で使用する場合、「強化された基板」という語は、例えば化学強化(例えば、ガラスまたはガラスセラミック基板の表面での大きなイオンと小さなイオンとのイオン交換)、熱強化、または機械的強化により強化されたガラス基板またはガラスセラミック基板を指す場合がある。いくつかの実施形態において、基板は、化学強化プロセス、熱強化プロセスおよび機械的強化プロセスのいずれか一つ以上の組み合わせを用いて強化することができる。
【0041】
一つ以上の実施形態において、本明細書中で記載する強化された基板はイオン交換プロセスによって化学強化することができる。典型的にはガラスまたはガラスセラミック基板を溶融塩浴中に所定の時間浸漬することによるイオン交換プロセスでは、ガラスまたはガラスセラミック基板の表面または表面付近のイオンが、塩浴からのより大きな金属イオンと交換される。一つの実施形態において、溶融塩浴の温度は約350℃から約430℃の範囲内であり、所定の時間は約2時間から約8時間である。より大きなイオンをガラスまたはガラスセラミック基板に組み入れることで、基板の近表面領域すなわち表面および表面に隣接する領域で圧縮応力(CS)が生じることによって基板を強化する。対応する引張応力が、基板の表面からある距離離れた一つ以上の中央領域内で誘導されて、圧縮応力のバランスをとる。引張応力を示す一つ以上の中央領域は、中央張力(CT)領域と称する。この強化プロセスを利用するガラスまたはガラスセラミック基板を、化学強化されたガラスまたはガラスセラミック基板、あるいはイオン交換されたガラスまたはガラスセラミック基板として、さらに具体的に記載する場合がある。
【0042】
一実施例において、ガラスまたはガラスセラミック基板中のナトリウムイオンは、硝酸カリウム塩浴などの溶融浴からのカリウムイオンによって置換されるが、ルビジウムまたはセシウムなどのより大きな原子半径を有する他のアルカリ金属イオンは、ガラス中のより小さなアルカリ金属イオンと置換することができる。特定の実施形態によると、ガラスまたはガラスセラミック中のより小さなアルカリ金属イオンをAgイオンによって置換することができる。同様に、限定するものではないが、硫酸塩、リン酸塩、ハロゲン化物などの他のアルカリ金属塩をイオン交換プロセスで使用することができる。
【0043】
圧縮応力は以下の式(1)による中央張力に関連する。
【0044】
【数1】
【0045】
式中、tは強化されたガラスまたはガラスセラミック基板の合計厚さであり、層の圧縮深さ(DOL)は交換の深さである。DOLは圧縮応力が引張応力に切り替わる、ガラスまたはガラスセラミック基板の深さを指す。
【0046】
熱強化を使用する場合、ガラスまたはガラスセラミック基板は、良好な物理的制御で、ガラスをやさしく取り扱って、正確な方法で、非常に高い熱伝達率(h、単位cal/cm・s・℃)を使用して加熱し、次に冷却することができる。特定の実施形態において、熱強化プロセスおよびシステムは、冷却/クエンチングセクションでギャップの小さい気体軸受を利用することができ、これによって、薄いガラス基板を冷却開始時により高い相対温度で処理して、その結果より高い熱強化レベルを得ることが可能になる。後述するように、このギャップの小さい気体軸受の冷却/クエンチングセクションは、対流冷却に基づいて多量の気流を使用するのではなく、ギャップを横切るヒートシンクへの伝導性熱伝達によって非常に高い熱伝達率を達成する。この高伝達率の伝導性熱伝達は、ガラスを液体または固体材料と接触させることなく、ガラス基板をギャップ内の気体軸受上で支持することによって達成される。
【0047】
一つ以上の実施形態において、結果として得られる熱強化されたガラスまたはガラスセラミック基板は、以前に知られているよりも高いレベルの永久的な熱誘発応力を示す。理論によって拘束されることを望まないが、熱誘発応力の達成されるレベルは、複数の理由により得ることができると考えられる。本明細書中で詳述するプロセスにおける熱伝達の高い均一性は、ガラスにおける物理的で望ましくない熱応力を低減または除去して、ガラス基板を破壊することなくより高い熱伝達率でテンパリングすることを可能にする。さらに、本方法は、所望のガラス平坦性および形状を保存しつつ、より低いガラス基板粘度(クエンチングの開始時のより高い初期温度)で実施することができ、これによって冷却プロセスにおいてはるかに大きな温度変化を提供し、したがって熱強化レベルの増加が達成される。
【0048】
様々な実施形態において、熱強化されたガラスまたはガラスセラミック基板は、本明細書中で記載する応力プロファイル、および形成されたままの低い表面粗度の両方を有する。本明細書中で開示するプロセスおよび方法は、形成されたままの表面の表面粗度を増加させることなく基板を熱強化することができる。例えば、流入するフロートガラス空気側表面および流入するフュージョン形成されたガラス表面を、処理前後で原子間力顕微鏡法(AFM)によって特性評価した。R表面粗度は、流入する1.1mmのソーダライムフロートガラスについて1nm未満(0.6nmから0.7nm)であり、R表面粗度は本発明のプロセスによる熱強化によっては増加しなかった。同様に、フュージョン形成されたガラスの1.1mmシートについて0.3nm未満(0.2nmから0.3nm)のR表面粗度は、本開示による熱強化によって維持された。したがって、一つ以上の実施形態による熱強化されたガラスおよびガラスセラミック基板は、少なくとも第一面上で、0.2nmから1.5nmの粗度R、0.2nmから0.7nm、0.2nmから0.4nmまたはさらには例えば0.2nmから0.3nmの範囲内の表面粗度を、
10×10μmの面積にわたって有する。表面粗度は、例示的実施形態では10×10μm、またはいくつかの実施形態では15×15μmの面積にわたって測定することができる。
【0049】
別の実施形態において、本明細書中で記載する熱強化されたガラスまたはガラスセラミック基板は高い平坦性を有する。様々な実施形態において、本明細書中で論じる強化系は、制御された気体軸受を利用して輸送および加熱中にガラスまたはガラスセラミック基板を支持し、またいくつかの実施形態では、結果として得られる熱強化されたガラスまたはガラスセラミック基板の平坦性の制御および/または改善を支援して、結果として、特に薄いおよび/または高度に強化されたガラスまたはガラスセラミック基板についてこれまでに得ることができた平坦性度よりも高い平坦性度を得るために使用することができる。例えば、約0.6mm以上の厚さを有するシート形態のガラスまたはガラスセラミック基板を強化して、強化後の平坦性を改善することができる。熱強化されたガラスまたはガラスセラミック基板の様々な実施形態の平坦性は、その第一面もしくは第二面の一方に沿った任意の50mm長さに沿って100μm以下の読みの最大差(total indicator run-out、TIR)、第一面もしくは第二面の一方で50mm以内の長さで300μmTIR以下、または第一面もしくは第二面の一方で50mm以内の長さで200μmTIR以下、100μmTIR以下、もしくは70μmTIR以下を含み得る。例示的実施形態において、平坦性は、熱強化されたガラスまたはガラスセラミック基板の任意の50mm以下のプロファイルに沿って測定する。企図される実施形態において、熱強化されたガラスまたはガラスセラミック基板は、シート形態であり得、本明細書中で開示する厚さを有し得、第一面または第二面の一方で20mm以内の長さで200μmTIR以下の平坦性(例えば、100μmTIR以下の平坦性、70μmTIR以下の平坦性、または50μmTIR以下の平坦性)を有する。
【0050】
企図される実施形態によると、一つ以上の実施形態による熱強化されたガラスまたはガラスセラミック基板は、1cmの長さまたは幅に沿ったその厚さtが、50μmを超えて変化しないような、例えば10μmを超えて変化しない、5μmを超えて変化しない、または2μmを超えて変化しないような、高度の寸法不変性を有する。そのような寸法不変性は、所与の厚さ、面積、および/または負の引張応力の大きさについて、冷却プレートアライメント、および/または寸法を変える可能性がある表面の凹凸などの実際的な検討項目に起因して、本明細書中で開示するように、固体クエンチングによっては達成することができない。
【0051】
企図される実施形態によると、一つ以上の実施形態による熱強化されたガラスまたはガラスセラミック基板は、それに沿った1cmの長さ方向のプロファイルが50μm以内、例えば20μm以内、10μm以内、5μm以内、2μm以内の直線にとどまり、および/またはそれに沿った1cmの幅方向のプロファイルが50μm以内、例えば20μm以内、10μm以内、5μm以内、2μm以内の直線にとどまるような平坦さである、少なくとも一つの表面を有する。そのような高い平坦性は、所与の厚さ、面積、および/または負の引張応力の大きさについて、これらのプロセスで強化されたガラスにおける、対流および関連する液体の力による反りまたは曲げなどの実際的な検討項目に起因して、本明細書中で開示するように、液体クエンチングによっては達成することができない可能性がある。
【0052】
様々な実施形態において、一つ以上の実施形態による熱強化されたガラスまたはガラスセラミック基板は高い仮想温度を有する。様々な実施形態において、高い仮想温度は、結果として得られるガラスまたはガラスセラミック基板の高レベルの熱強化、高い中心引張応力および/または高い圧縮表面応力に関連すると理解される。表面仮想温度は、示差走査熱量測定法、ブルリアン分光法、またはラマン分光法をはじめとする任意の好適な方法によって決定することができる。
【0053】
例示的実施形態によると、一つ以上の実施形態による熱強化されたガラスまたはガラスセラミック基板は、表面または表面付近などに、少なくとも500℃、例えば少なくとも600℃、またはさらには少なくとも700℃などの特に高い仮想温度を有する部分を有する。いくつかの実施形態において、そのような活性温度を示すガラスまたはガラスセラミック基板は、ソーダライムガラスを含み得る。例示的実施形態によると、一つ以上の実施形態による熱強化されたガラスまたはガラスセラミック基板は、表面または表面付近などに、同じ化学組成のアニーリングされたガラスと比べて特に高い仮想温度を有する部分を有する。例えば、いくつかの実施形態において、熱強化されたガラスまたはガラスセラミック基板は、同じ化学組成のアニーリングされたガラス(すなわち、本明細書中で記載するプロセスにしたがって熱強化されていない、または熱強化されなかったガラス)の仮想温度よりも、少なくとも10℃高い、少なくとも30℃高い、少なくとも50℃高い、少なくとも70℃高い、またはさらには少なくとも100℃高い仮想温度を示す。高い仮想温度は、熱強化系において高温ゾーンから冷却ゾーンへの急速な移行によって達成することができる。理論によって拘束されないが、高い仮想温度を有する熱強化されたガラスまたはガラスセラミック基板は増大した損傷抵抗を示す。
【0054】
表面仮想温度を測定するためのいくつかの方法では、妥当な正確さで仮想温度を測定するために、熱強化されたガラスまたはガラスセラミック基板を破壊して、熱強化プロセスによって誘導される「テンパリング応力(temper stress)」を軽減する必要がある場合がある。ラマン分光法によって測定された特性構造バンドは、シリケートガラスにおいて、仮想温度および負荷応力の両方に関して、制御された方法でシフトすることは周知である。このシフトを使用して、テンパリング応力が分かっている場合は、仮想温度を非破壊的に測定することができる。仮想温度を測定する方法は、2015年10月2日に出願された、「THERMALLY STRENGTHENED GLASS AND RELATED SYSTEMS AND METHODS」と題する米国特許仮出願第62236296号に記載され、その全体が参照により本明細書中で援用される。
【0055】
以下の無次元仮想温度パラメータθを使用して、生じた仮想温度に関する熱強化プロセスの相対的性能を比較することができる。この場合、表面仮想温度θsに関しては次の式で表される。
【0056】
【数2】
【0057】
式中、Tfsは表面仮想温度であり、Tanneal(粘度η=1013.2ポアズでのガラスの温度)はアニーリング温度であり、Tsoft(粘度η=107.6ポアズでのガラスの温度)はガラスシートの軟化点である。図10は、2つの異なるガラスについて熱強化の間に適用された熱伝達率hの関数としての測定された表面仮想温度についてのθのプロットである。一つ以上の実施形態において、熱強化されたガラスまたはガラスセラミックは、単位℃で表された軟化温度Tsoft、単位℃で表されたアニーリング温度Tanneal、単位℃で表した場合にTfsによって表される、ガラスシートの第一面上で測定された表面仮想温度、および(Tfs-Tanneal)/(Tsoft-Tanneal)(式中、パラメータθsは0.20から0.9までの範囲内である)で表される、無次元表面仮想温度パラメータθsを有するガラスを含む。実施形態において、パラメータθsは、約(例えば、±10%)0.21から0.09、または0.22から0.09、または0.23から0.09、または0.24から0.09、または0.25から0.09、または0.30から0.09、または0.40から0.09、または0.5から0.9、または0.51から0.9、または0.52から0.9、または0.53から0.9、または0.54から0.9、または0.54から0.9、または0.55から0.9、または0.6から0.9、またはさらには0.65から0.9を含む。
【0058】
しかしながら、さらに高い熱伝達率(例えば約800W/mK以上)では、ガラスの高温または「液相」CTEはテンパリング性能に影響を及ぼし始める。したがって、そのような条件下では、粘度曲線にわたって変化するCTE値についての積分の近似に基づくテンパリング可能性パラメータΨは有用であることが判明している。
【0059】
【数3】
【0060】
式中、α CTEは、1/℃(℃-1)で表された低温線形CTE(ガラスについては0℃から300℃までの平均線形膨張係数に等しい)であり、α CTEは、1/℃(℃-1)で表された高温線形CTE(ガラス転移と軟化点との間のどこかで起こることが観察される高温プラトー値に等しい)であり、Eは、GPa(MPaではない)で表されたガラスの弾性率((無次元)パラメータΨの値を概して0から1の間の範囲にすることを可能にする)であり、Tstrainは、℃で表されたガラスの歪み点の温度(粘度η=1014.7ポアズでのガラスの温度)であり、Tsoftは、℃で表されたガラスの軟化点(粘度η=107.6ポアズでのガラスの温度)である。
【0061】
熱強化プロセスおよび結果として得られる表面CS値を、様々な特性を有するガラスについてモデル化して、テンパリングパラメータΨを決定した。ガラスを同じ108.2ポアズの同じ出発粘度および様々な熱伝達係数でモデル化した。様々なガラスの特性を表1中に、108.2ポアズでの各ガラスの温度および各々についてのテンパリング可能性パラメータΨの計算値とともに示す。
【0062】
【表1】
【0063】
表1中の結果は、Ψがガラスの熱強化性能に比例することを示す。別の態様において、任意のガラスについて、任意の所与の熱伝達係数値h(cal/cm・s・℃で表す)で、表面CSの曲線(σCS、MPa)対厚さ(t、mm)を双曲線によって(0mmから6mmまでのtの範囲にわたって)適合させることができることが判明した。ここで、PおよびPはhの関数であるので、
【0064】
【数4】
【0065】
あるいは、これにΨの式を代入すると、CSσCS(ガラス、h、t)の曲線は
【0066】
【数5】
【0067】
で表され、前記(4)または(5)のいずれかの式中の定数P、Pは、各々、
【0068】
【数6】
【0069】
および
【0070】
【数7】
【0071】
によって表される熱伝達値hの連続関数である。
【0072】
いくつかの実施形態において、同様の式を使用して熱強化されたガラスシートのCTを予測することができ、特に6mm以下の厚さ、および800W/mK以上の熱伝達係数を、単純に、同じ伝導下で予想されたCSを2で割ることによって、予測することができる。したがって、予測されるCTは
【0073】
【数8】
【0074】
によって表され、式中、P1CTおよびP2CTは以下のように表される。
【0075】
【数9】
【0076】
および
【0077】
【数10】
【0078】
いくつかの実施形態において、hおよびhCTは、熱強化の所与の物理的例について同じ値を有し得る。しかしながら、いくつかの実施形態において、それらは様々であり得、別の変数を与え、それらのばらつきを可能にすることで、記述的な性能曲線内で、2:1の典型的なCS/CT比が保持されない場合を取り込むことが可能になる。
【0079】
本開示のプロセスおよびシステムの一つ以上の実施形態は、表2で示す熱伝達率値(hおよびhCT)のすべてで熱強化されたSLGシートを製造した。
【0080】
【表2】
【0081】
いくつかの実施形態において、熱伝達率値(hおよびhCT)は約0.024cal/s・cm/℃から約0.15cal/s・cm/℃(約1004から約6280W/mK)、約0.026cal/s・cm/℃から約0.10cal/s・cm/℃(約1089から約4187W/mK)、または約0.026cal/s・cm/℃から約0.075cal/s・cm/℃(約1089から約3140W/mK)であり得る。
【0082】
一つ以上の実施形態において、強化されたガラスまたはガラスセラミック基板は、基板の部分間の熱膨張係数のミスマッチを利用することによって機械的に強化して、圧縮応力を生じることができ、中央伸長領域を形成することができる。
【0083】
一つの実施形態において、強化されたガラスまたはガラスセラミック基板は、300MPa以上、例えば400MPa以上、450MPa以上、500MPa以上、550MPa以上、600MPa以上、650MPa以上、700MPa以上、750MPa以上、または800MPa以上の表面CSを有し得る。一つ以上の実施形態において、表面CSは強化されたガラスまたはガラスセラミック基板における最大CSである。
【0084】
強化されたガラスまたはガラスセラミック基板は約15μm以上、20μm以上(例えば、25μm、30μm、35μm、40μm、45μm、50μmまたはそれ以上)のDOLを有し得る。一つ以上の実施形態において、強化されたガラスまたはガラスセラミック基板は、10MPa以上、20MPa以上、30MPa以上、40MPaまたはそれ以上(例えば、42MPa、45MPa、または50MPaまたはそれ以上)であるが、100MPa未満(例えば、95MPa、90MPa、85MPa、80MPa、75MPa、70MPa、65MPa、60MPa、55MPa以下)である最大CT値を示し得る。
【0085】
一つ以上の具体的な実施形態において、強化されたガラスまたはガラスセラミック基板は、300MPaを上回る表面圧縮応力、15μmを上回る圧縮層深さ、および18MPaを上回る中央張力のうちの一つ以上を有する。
【0086】
基板で使用することができるガラスの例には、アルカリアルミノシリケートガラス組成物またはアルカリアルミノホウケイ酸ガラス組成物が含まれ得るが、他のガラス組成物も企図される。ガラス組成物の一例は、SiO、BおよびNaOを含み、ここで、(SiO+B)≧66モル%であり、NaO≧9モル%である。実施形態において、ガラス組成物は少なくとも6重量%の酸化アルミニウムを含む。さらなる実施形態において、基板は、アルカリ土類酸化物の含有量が少なくとも5重量%となるように一つ以上のアルカリ土類酸化物を有するガラス組成物を含む。好適なガラス組成物は、いくつかの実施形態において、KO、MgO、およびCaOのうちの少なくとも一つをさらに含む。特定の実施形態において、基板で用いられるガラス組成物は、61~75モル%のSiO、7~15モル%のAl、0~12モル%のB、9~21モル%のNaO、0~4モル%のKO、0~7モル%のMgO、および0~3モル%のCaOを含み得る。
【0087】
基板に適したガラス組成物のさらなる例は、60~70モル%のSiO、6~14モル%のAl、0~15モル%のB、0~15モル%のLiO、0~20モル%のNaO、0~10モル%のKO、0~8モル%のMgO、0~10モル%のCaO、0~5モル%のZrO、0~1モル%のSnO、0~1モル%のCeO、50ppm未満のAs、および50ppm未満のSbを含み、ここで、12モル%≦(LiO+NaO+KO)≦20モル%であり、0モル%≦(MgO+CaO)≦10モル%である。
【0088】
基板に適したガラス組成物のさらなる例は、63.5~66.5モル%のSiO、8~12モル%のAl、0~3モル%のB、0~5モル%のLiO、8~18モル%のNaO、0~5モル%のKO、1~7モル%のMgO、0~2.5モル%のCaO、0~3モル%のZrO、0.05~0.25モル%のSnO、0.05~0.5モル%のCeO、50ppm未満のAs、および50ppm未満のSbを含み、ここで、14モル%≦(LiO+NaO+KO)≦18モル%であり、2モル%≦(MgO+CaO)≦7モル%である。
【0089】
特定の実施形態において、基板に適したアルカリアルミノシリケートガラス組成物はアルミナ、少なくとも一つのアルカリ金属および、ある実施形態では50モル%を上回るSiO、他の実施形態では少なくとも58モル%のSiO、またさらに別の実施形態では少なくとも60モル%のSiOを含み、比((Al+B)/Σ改質剤)>1であり、この比において、成分はモル%で表され、改質剤はアルカリ金属酸化物である。このガラス組成物は、特定の実施形態において、58~72モル%のSiO、9~17モル%のAl、2~12モル%のB、8~16モル%のNaO、および0~4モル%のKOを含み、比((Al+B)/Σ改質剤)>1である。
【0090】
さらに別の実施形態において、基板は、64~68モル%のSiO、12~16モル%のNaO、8~12モル%のAl、0~3モル%のB、2~5モル%のKO、4~6モル%のMgO、および0~5モル%のCaOを含み、66モル%≦SiO+B+CaO≦69モル%、NaO+KO+B+MgO+CaO+SrO>10モル%、5モル%≦MgO+CaO+SrO≦8モル%、(NaO+B)-Al≦2モル%、2モル%≦NaO-Al≦6モル%、および4モル%≦(NaO+KO)-Al≦10モル%である、アルカリアルミノシリケートガラス組成物を含み得る。
【0091】
別の実施形態において、基板は、2モル%以上のAlおよび/またはZrO、あるいは4モル%以上のAlおよび/またはZrOを含むアルカリアルミノシリケートガラス組成物を含み得る。
【0092】
いくつかの実施形態において、ガラス基板に使用する組成物は、NaSO、NaCl、NaF、NaBr、KSO、KCl、KF、KBr、およびSnOを含む群から選択される、少なくとも一つの清澄剤0~2モル%と合わせることができる。
【0093】
一つ以上の実施形態において、中間層120は、ポリビニルブチラール(PVB)樹脂、エチレンビニルアセテートコポリマー(EVA)、イオノマー、ポリ塩化ビニルコポリマーおよび熱可塑性ポリウレタン(TPU)からなる群から選択される材料を含む。中間層の厚さは約0.3mmから約2mmの範囲内であり得る。
【0094】
一つ以上の実施形態において、積層体は、30.5cm×約30.5cm(12インチ×12インチ)から約50.8cm×101.6cm(20インチ×40インチ)まで、または30.5cm×約30.5cm(12インチ×12インチ)から約121.9cm×127cm(48インチ×50インチ)まで、または30.5cm×約30.5cm(12インチ×12インチ)から約127cm×183cm(50インチ×72インチ)までの範囲内の長さおよび幅を有し得る。積層体を二次元で記載してきたが、積層体は、四角形(例えば、長方形、正方形、台形など)、例えば平面の2つの異なる辺または軸に沿って、二方向で寸法を有する三角形を含む様々な形状を有し得るか、または半径および/または長軸および短軸の長さに関して記載することができる非長方形(例えば、円形、楕円形、長円形、多角形など)を有し得、非長方形は、例えば、長方形基板から切り出して測定されるような、垂直方向の二つの最大寸法に対応する長方形に関連する場合がある。基板は、好適な構成および及び寸法にして意図するサイズの積層体とすることができる。
【0095】
一つ以上の実施形態において、積層体は、限定するものではないが、色合い、反射防止コーティング、防眩コーティング、耐擦傷性コーティングなどを含む、露出表面に施用されたさらなるコーティングまたは層を有していてもよい。一つ以上の実施形態において、ポリマー中間層は、紫外線(UV)吸収、赤外線(IR)吸収、IR反射および色合いのうちの特性の一つ以上を有するように改修することができる。ポリマー中間層は、色素、顔料、ドーパントなどの好適な添加剤によって改修して、所望の特性を付与することができる。
【0096】
本開示の第二の態様は、本明細書中で記載する積層体の冷間成形法に関する。図2は第一基板110、中間層120、および第二基板130の例示的実施形態の、冷間成形前の断面図を示す。
【0097】
第一基板110を中間層120および第二基板130とスタック状に配列させる。図2に示すように、第二基板130は、形成プロセス前は平坦である。様々な実施形態において、冷間成形プロセスの間、図2中の矢印「P」によって示されるようにスタックに圧力を加えることによって、第二基板130、中間層120、および第一基板110が一緒にプレスされるようにスタックに圧力を加える。一つ以上の実施形態において、圧力は約1気圧以上であってよい。一つ以上の別の実施形態において、加えられる圧力は約1気圧以下であってよい。さらに後述するように、熱を第二基板130の形成温度よりも低い温度で適用することができる。第二基板130は変形して、第一基板110の形状をとり、第一基板110および第二基板を中間層120によってあわせて接着する。したがって、図1に示すように、第二基板130、複雑に湾曲した形状を有する第一基板110、および中間層120を冷間成形プロセスによってあわせて積層して、積層体100を形成する。一つ以上の実施形態において、第一のガラス基板110はまた、アニールまたは熱的にテンパリングすることもできる。
【0098】
一つ以上の実施形態において、第一基板および第二基板を積み重ねることができ、整列することができ、冷間成形装置に同時に導入することができる。次に複数の基板を成形することができ、曲げ装置によって一度に合わせて冷間成形することができる。
【0099】
一つ以上の実施形態において、本方法は、第一基板を複雑に湾曲した形状に熱間形成した後、第一基板および第二基板を冷間成形して、本明細書中で記載する積層体の一つ以上の実施形態にすることを含む。一つ以上の実施形態において、第一基板を熱間成形することは、第一基板を基板の軟化点付近の温度まで加熱し、次に加熱された第一基板を複雑に湾曲した形状に曲げることを含むことができる。一つ以上の実施形態において、第一基板はガラス基板であり、第一基板を熱間成形することは、第一基板を軟化点付近の温度、例えば400℃より高い温度まで加熱することを含む。
【0100】
一つ以上の実施形態において、複雑に湾曲した第一基板および平坦な第二基板を、第二基板の軟化点よりも十分低い温度で冷間成形して積層体にする。一つ以上の実施形態において、冷間成形プロセスは基板の軟化点より200℃以上低い温度で行われる。軟化点とは、ガラスが自重で変形する温度を指す。一つ以上の具体的な実施形態において、冷間成形プロセス中の温度は、約400℃未満、約350℃未満、約300℃未満、約200℃未満、約175℃未満、または約150℃未満である。一つの特定の実施形態において、冷間成形プロセスは室温から約140℃の範囲内である。室温は製造所の周囲温度(例えば16℃から約35℃)であるとみなすことができる。
【0101】
一つ以上の実施形態において、本方法は、中間層を複雑に湾曲した第一基板と平坦な第二基板との間に配置することと、平坦な基板が複雑に湾曲するように基板を冷間形成し、その一方で、同時に2枚の基板を、中間層を介してあわせて接着することとを含む。一つ以上の実施形態において、本方法は、第一基板および第二基板を、平坦な第二基板が第一基板と一致するように成形される冷間成形ステップとは別のステップで、中間層を介して合わせて接着することを含む。様々な実施形態において、接着ステップは、第一基板、中間層および第二基板のスタックを約100℃から約140℃の範囲内の温度に加熱して、基板と中間層との間に接着を形成することを含む。一つ以上の実施形態において、本方法は、中間層に加えてまたは中間層の代わりに接着剤を使用して基板を合わせて接着することを含むことができる。
【0102】
一つ以上の実施形態において、本方法は第一基板および第二基板を接着することを含まない。そのような実施形態において、複雑に湾曲した第一基板および平坦な第二基板を積み重ね、あわせて整列させ、一緒にプレスして、第二基板を第一基板の形状に一致した複雑に湾曲した形状に成形した。2枚の基板をその後分離させ、個々に使用する。
【0103】
一つ以上の実施形態において、冷間成形プロセスの間、第二基板は変形して第一基板の第二面114に適合し、より平坦な状態に曲げて戻ることが望まれるために、第二基板の周辺部は中間層(存在する場合)および第一基板に圧縮力を加える。第二基板の中央部分は、中間層から離れてより平坦な状態に曲げて戻って、引張応力の少なくとも一部を解除しようとするので、中間層(存在する場合)および第一基板に対して張力を加える。
【0104】
本明細書中で記載する方法の実施形態は、第二基板が広範な形状を有し得、かつ依然としてうまく冷間成形して第一基板にすることができるので、より高い製造収率を可能にする。第二基板がガラスである一つ以上の実施形態によると、本明細書中で記載する方法は、ガラス形成の間に起こり得る形状ミスマッチを克服し、その結果、第二基板が形状均一性に欠けている場合でも、望ましくかつ再現可能な形状を有する積層体が得られる。
【0105】
一つ以上の実施形態において、冷間成形プロセスは雄型枠および雌型枠を備えたプレス曲げ装置で実施することができる。様々な実施形態において、第二基板は、雌型枠によって支持することができ、少なくとも中間部に空洞を提供して、成形操作の間に第二基板の一部を受ける。様々な実施形態において、雌型枠および雄型枠は互いに係合して第二基板および第一基板を積層体に冷間成形するように構成される。
【0106】
様々な実施形態において、真空技術を使用して、第一基板および第二基板を本明細書中で記載する積層体に冷間成形することができる。好適な真空技術としては、真空バッグ技術または真空リングが挙げられ、使用することもできる。別の実施形態において、平台型クラムシェルタイプの積層体機を使用することができる。
【0107】
真空バッグ技術では、第一基板、第二基板、および場合によって中間層を積み重ね、整列させ、好適なバッグ中に入れることができる。バッグを取り巻く気圧が約1気圧の力を加えるようになるまで、バッグから空気を抜く(すなわち、標高/地理学上の位置、およびすべての空気を排気する真空装置の限度などを考慮して)。様々な実施形態において、加えた力によって第二基板が複雑に湾曲した第一基板を冷間成形する。
【0108】
本開示の第三の態様は、開口部を有する車体と開口部に配置された本明細書中で開示される積層体の一つ以上の実施形態とを含む車両に関する。車両は、自動車、大型トラック、外洋船、鉄道車両、航空機などを含み得る。積層体は開口部に関して移動可能であり得る。
【0109】
本開示の第四の態様は、内部キャビンを画定する車体を有する車両に関し、内部キャビンは、本明細書中で記載する一つ以上の積層体から形成される表面を備える。一つ以上の実施形態において、表面は、ダッシュボード、床、ドアパネル、センターコンソール、計器パネル、表示パネル、ヘッドレスト、柱などの少なくとも一部を形成する。
【実施例0110】
本開示の原理および実施形態を以下の非限定的実施例によって例示する。
【0111】
本明細書中で記載する方法を使用する実施例を、平坦で化学強化された基板(アルカリアルミノシリケートガラスから形成)を積層することによって調製して、平坦で化学強化された基板を上回る厚さを有する複雑に湾曲した強化されていない基板(ソーダ石灰ガラス(SLG)から形成)を形成した。結果として得られる積層体は、基板間に三層アコースティックポリビニルブチレート中間層を含んでいた。積層体はまた、真空バッグまたは真空チャンネル脱気のいずれかを使用する真空技術、および標準的オートクレーブプロセスを使用して形成した。
【0112】
実施例1
アルミノシリケートガラス組成物から形成された355.6mmの直径および0.7mmの厚さを有するガラス基板(「GG」と標識)を、SLGから形成された同じ直径および1.6mmの厚さを有するガラス基板(「SLG」と標識)とスタックに組み立てた。厚さ1.6mmの基板は球状でしたがって複雑に湾曲した形状を有していた。スタックを真空バッグ中に入れ、これを次にオートクレーブに入れ、厚さ0.7mmの基板を冷間成形して厚さ1.6mmの基板とした。基板および結果として得られる積層体の形状を、一般的なモーションプラットフォームとあわせて使用するMicro-Epsilonから入手可能な共焦点センサーによって測定した。どの場合も、基板(積層前)または積層体を一般的なモーションプラットフォーム上に置いた。プラットフォームはx-y位置を制御しモニターする。共焦点センサーは基板(積層前)または積層体のプラットフォームの平面からの変位を測定する。プラットフォームからの変位対x-y位置のマップは、基板(積層前)または積層体の形状を規定する。図3は測定結果のグラフである。積層後、両基板は同じ形状を有し、当初平坦な基板がより厚くより硬質な基板の球状の形状に適合できることを示した。
【0113】
実施例2
アルミノシリケートガラス組成物を含む237mm×318mm×0.7mmの長さ、幅および厚さ寸法を有する平坦な基板を複雑に湾曲した基板と組み立ててスタックにした。複雑に湾曲した基板は平坦な基板と同じ長さおよび幅の寸法を有していたが、2.1mmの厚さを有し、SLG組成物を含んでいた。厚さ2.1mmの基板は中央たるみ深さ(縁部から中心までの曲率の合計深さ)が6.75mmであることを示した。スタックを真空バッグに入れ、平坦な基板を冷間成形して複雑に湾曲した形状のSLG基板とした。結果として得られる積層体の光学特性を、様々な角度で積層体を通して「ゼブラボード」を見るASTM規格C1036-06にしたがって透過光学系(transmitted optics)を使用して測定した。ゼブラボードは、一連の黒と白の斜めのストライプ(すなわち、幅25mmの白色ストライプによって隔てられた幅25mmの黒色ストライプ)から構成されていた。透過光学系の品質は、積層体を通してみた場合のストライプのひずみの程度を観察することによって評価する。中央透明部分の透過光学的ひずみは冷間成形プロセスに起因する劣化の兆候を示さなかった。積層体の周辺で低レベルのひずみが検出されたが、周辺上の化粧バンドのために裸眼では見えなかった。
【0114】
実施例3
237mm×318mm×0.55mmの長さ、幅および厚さ寸法を有し、アルミノシリケートガラス組成物を含む平坦な基板を複雑に湾曲した基板と組み合立てた。複雑に湾曲した基板は平坦な基板と同じ長さおよび幅寸法を有していたが、1.6mmの厚さを有し、SLG組成物を含んでいた。厚さ1.6mmの基板は、中央たるみ深さ(縁部から中心までの曲率の合計深さ)6.75mmを示した。スタックを真空バッグ中に入れ、したがって、平坦な基板を冷間成形してSLG基板の複雑に湾曲した形状にした。結果として得られる積層体の光学特性は、実施例2と同様にして透過光学系を使用して測定した。中央透明部分の透過光学的ひずみは、冷間成形プロセスに起因する劣化の兆候を示さなかった。低レベルのひずみが積層体の周辺で検出されたが、周辺上の化粧バンドのために裸眼では見ることができなかった。
【0115】
実施例4
1350mm×472mm×0.7mmの長さ、幅および厚さの寸法を有し、アルミノシリケートガラス組成物を含む平坦な基板を、平坦な基板と同じ長さおよび幅の寸法を有するが3.85mmの厚さを有し、SLG組成物を含む複雑に湾曲した基板と組み立てた。スタックを真空バッグ中に入れ、平坦な基板を冷間成形して、複雑に湾曲した形状のSLG基板にした。結果として得られる積層体の光学特性を、実施例2と同じ方法で透過光学系を使用して測定した。冷間成形プロセスに起因する劣化の兆候は示されなかった。
【0116】
第一の実施形態において、本開示は、第一面と第一面の反対側の第二面とその間の第一厚さとを有する第一の複雑に湾曲したガラス基板、第三面と第三面の反対側の第四面とその間の第二の厚さとを有する第二の複雑に湾曲したガラス基板、および第二面および第三面に固定されたポリマー中間層を含む積層体を提供し、第一厚さおよび第二の厚さの一方は約0.2mmから約0.7mmの範囲内であり、第三面および第四面はそれぞれ、第四面が第三面の圧縮応力値を上回る圧縮応力値を有するような圧縮応力値を有する。
【0117】
第二の実施形態において、本開示は、第一の実施形態の積層体であって、約0.2mmから約0.7mmの範囲内の厚さを有する複雑に湾曲したガラス基板が、化学強化されたガラスである積層体を提供する。
【0118】
第三の実施形態において、本開示は、第一の実施形態および第二の実施形態のいずれか一方または両方の積層体を提供し、第一の複雑に湾曲したガラス基板は約1.4mmから約3.85mmの範囲内の厚さを有し、第二の複雑に湾曲したガラス基板は約0.2mmから約0.7mmの範囲内の厚さを有する。
【0119】
第四の実施形態において、本開示は、第一から第三の実施形態のいずれかの積層体を提供し、第一の複雑に湾曲したガラス基板はソーダ石灰ガラス製である。
【0120】
第五の実施形態において、本開示は、第一から第四の実施形態のいずれかの積層体を提供し、介在ポリマー中間層は、ポリビニルブチラール、エチレンビニルアセテート、イオノマー、ポリ塩化ビニルコポリマーおよび熱可塑性ポリウレタンからなる群から選択される。
【0121】
第六の実施形態において、本開示は第一から第五の実施形態のいずれかの積層体を提供し、第二の複雑に湾曲したガラス基板の周辺部はポリマー中間層に対して圧縮力を加え、第二の複雑に湾曲したガラス基板の中央部分はポリマー中間層に対して張力を加える。
【0122】
第七の実施形態において、本開示は、第二面と第三面との間で均一な距離をさらに含む、第一から第六の実施形態のいずれかの積層体を提供する。
【0123】
第八の実施形態において、本開示は第一から第七の実施形態のいずれかの積層体を提供し、積層体は曲率半径を示し、曲率半径は1000mm未満である。
【0124】
第九の実施形態において、本開示は、車体、車体中の開口部、および開口部中に配置された積層体を含む車両を提供し、積層体は、第一面と、第一面と反対側の第二面と、その間の第一厚さとを有する第一の複雑に湾曲したガラス基板、第三面と、第三面と反対側の第四面と、その間の第二の厚さとを有する第二の複雑に湾曲したガラス基板、および第二面および第三面に固定されたポリマー中間層を含み、第一厚さおよび第二の厚さの一方は約0.2mmから約0.7mmの範囲内であり、第三面および第四面は、それぞれ、第四面が第三面の圧縮応力値を上回る圧縮応力値を有するような圧縮応力値を有する。
【0125】
第十の実施形態において、本開示は、積層体が開口部に関して移動可能である、第九の実施形態の車両を提供する。
【0126】
第十一の実施形態において、本開示は、第九の実施形態および第十の実施形態のいずれか一方または両方の車両であって、第一の複雑に湾曲した基板がソーダ石灰ガラス組成物と約0.7mmを上回る厚さとを有し、第二の複雑に湾曲した基板が、強化されたガラスと約0.2mmから約0.7mmの範囲内の厚さとを有する、車両を提供する。
【0127】
第十二の実施形態において、本開示は、複雑に湾曲した積層体を製造する方法であって、第一の複雑に湾曲した基板と平坦な第二ガラス基板との間に中間層を配置してスタックを形成することと、スタックに圧力を加えて第二のガラス基板を中間層および第一の複雑に湾曲した基板に対して押し付けて、複雑に湾曲した積層体を形成することと、複雑に湾曲した積層体を400℃よりも低い温度に加熱することと、を含む方法を提供する。
【0128】
第十三の実施形態において、本開示は、第一の複雑に湾曲した基板が金属製、セラミック製、プラスチック製またはガラス製である、第十二の実施形態の方法を提供する。
【0129】
第十四の実施形態において、本開示は、第十二および第十三の実施形態の一方または両方の方法であって、平坦な第二ガラス基板が約0.2mmから約0.7mmの範囲内の厚さを有し、第一の複雑に湾曲した基板が0.7mmを上回る厚さを有する方法を提供する。
【0130】
第十五の実施形態において、本開示は、第十二から第十四の実施形態のいずれか一つの方法であって、圧力が約1気圧またはそれ以上である方法を提供する。
【0131】
第十六の実施形態において、本開示は、第十二から第十五の実施形態のいずれか一つの方法であって、真空技術を用いてスタックに圧力を加える方法を提供する。
【0132】
第十七の実施形態において、本開示は、第十二から第十六の実施形態のいずれか一つの方法であって、室温でスタックに圧力を加える方法を提供する。
【0133】
第十八の実施形態において、本開示は、第十二から第十七の実施形態のいずれか一つの方法であって、積層体を約100℃から約140℃の範囲内の温度に加熱して、ボンディング層と複雑に湾曲したガラス基板との間に完全な結合を形成する方法を提供する。
【0134】
第十九の実施形態において、本開示は、第十二から第十八の実施形態のいずれか一つの方法によって形成される複雑に湾曲した積層体を提供する。
【0135】
第二十の実施形態において、本開示は、複雑に湾曲した積層体を製造する方法であって、2本の軸に沿って曲率を有し、複雑に湾曲したガラス基板を提供するように、2つの主要表面とその間の厚さを有する第一のガラス基板を成形することと、前記複雑に湾曲したガラス基板を中間層および第二のガラス基板とともに、前記中間層が前記複雑に湾曲したガラス基板と前記第二のガラス基板の間になるように、前記第二のガラス基板が二つの主要表面とその間の厚さを有して、二本の軸に沿って曲率を有し、前記第二のガラス基板の前記曲率が前記第一のガラス基板の前記曲率と一致しないように、スタック状に配列することと、前記スタックに室温で圧力を加えることとを含み、前記第二のガラス基板の前記曲率が前記第一のガラス基板の前記曲率と一致して、複雑に湾曲した積層体を形成する、方法を提供する。
【0136】
第二十一の実施形態において、本開示は、スタックを約100℃から約140℃の範囲内の温度に加熱して、中間層と、第一基板および第二のガラス基板との間に結合を形成することをさらに含む、第二十の実施形態の方法を提供する。
【0137】
第二十二の実施形態において、本開示は、第二のガラス基板が約0.2mmから約0.7mmの範囲内の厚さを有する化学強化されたガラスであり、第一のガラス基板が約1.4mmから約3.85mmの範囲内の厚さを有するソーダ石灰ガラスである、第二十および第二十一の実施形態のいずれか一方または両方の方法を提供する。
【0138】
第二十三の実施形態において、本開示は、第二十から第二十二の実施形態のいずれか一つの方法によって形成される複雑に湾曲した積層体を提供する。
【0139】
本明細書中の開示を特定の実施形態を参照して記載してきたが、これらの実施形態は本開示の原理および応用の単なる例示であると理解すべきである。当業者には、本開示の趣旨および範囲から逸脱することなく本開示の方法および装置に対して様々な改修および変更をなすことができることは明らかであろう。したがって、本開示は添付の特許請求の範囲およびその均等物の範囲内にある改修および改変を含むことが意図される。
【0140】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0141】
実施形態1
第一面と前記第一面の反対側の第二面とその間の第一厚さとを有する第一の複雑に湾曲したガラス基板、
第三面と前記第三面の反対側の第四面とその間の第二の厚さとを有する第二の複雑に湾曲したガラス基板、および
前記第二面および前記第三面に固定されたポリマー中間層、
を備える積層体であって、
前記第一厚さおよび前記第二の厚さの一方が約0.2mmから約0.7mmの範囲内であり、前記第三面および前記第四面がそれぞれ、前記第四面が前記第三面の圧縮応力値を上回る圧縮応力値を有するような圧縮応力値を有する、
積層体。
【0142】
実施形態2
約0.2mmから約0.7mmの範囲内の厚さを有する前記複雑に湾曲したガラス基板が化学強化されたガラスである、実施形態1に記載の積層体。
【0143】
実施形態3
前記第一の複雑に湾曲したガラス基板が約1.4mmから約3.85mmの範囲内の厚さを有し、前記第二の複雑に湾曲したガラス基板が約0.2mmから約0.7mmの範囲内の厚さを有する、実施形態1または実施形態2に記載の積層体。
【0144】
実施形態4
前記第一の複雑に湾曲したガラス基板がソーダ石灰ガラス製である、実施形態1から3のいずれか一項に記載の積層体。
【0145】
実施形態5
前記介在ポリマー中間層が、ポリビニルブチラール、エチレンビニルアセテート、イオノマー、ポリ塩化ビニルコポリマーおよび熱可塑性ポリウレタンからなる群から選択される、実施形態1から4のいずれか一項に記載の積層体。
【0146】
実施形態6
前記第二の複雑に湾曲したガラス基板の周辺部が前記ポリマー中間層に対して圧縮力を加え、前記第二の複雑に湾曲したガラス基板の中央部分が前記ポリマー中間層に対して張力を加える、実施形態1から5のいずれか一項に記載の積層体。
【0147】
実施形態7
前記第二面と前記第三面との間に均一な距離をさらに含む、実施形態1から6のいずれか一項に記載の積層体。
【0148】
実施形態8
前記積層体が曲率半径を示し、前記曲率半径が1000mm未満である、実施形態1から7のいずれか一項に記載の積層体。
【0149】
実施形態9
車体、前記車体の開口部、および前記開口部に配置された積層体を備えた車両であって、前記積層体が、
第一面と、前記第一面の反対側の第二面と、その間の第一厚さとを有する第一の複雑に湾曲したガラス基板、
第三面と、前記第三面の反対側の第四面と、その間の第二の厚さとを有する第二の複雑に湾曲したガラス基板、および
前記第二面および前記第三面に固定されたポリマー中間層、
を含み、
前記第一厚さおよび前記第二の厚さのうちの一方が約0.2mmから約0.7mmの範囲内であり、前記第三面および第四面がそれぞれ、前記第四面が前記第三面の圧縮応力値を上回る圧縮応力値を有するような圧縮応力値を有する、車両。
【0150】
実施形態10
前記積層体が前記開口部に関して移動可能である、実施形態9に記載の車両。
【0151】
実施形態11
前記第一の複雑に湾曲した基板がソーダ石灰ガラス組成および約0.7mmを上回る厚さを有し、前記第二の複雑に湾曲した基板が強化されたガラスを含み、約0.2mmから約0.7mmの範囲内の厚さを有する、実施形態9または10に記載の車両。
【0152】
実施形態12
複雑に湾曲した積層体を製造する方法であって、
第一の複雑に湾曲した基板と平坦な第二ガラス基板との間に中間層を配置してスタックを形成する工程と、
前記スタックに圧力を加えて前記第二のガラス基板を前記中間層および前記第一の複雑に湾曲した基板に押し付けて、前記複雑に湾曲した積層体を形成する工程と、
前記複雑に湾曲した積層体を400℃よりも低い温度に加熱する工程と、
を含む、方法。
【0153】
実施形態13
前記第一の複雑に湾曲した基板が、金属製、セラミック製、プラスチック製またはガラス製である、請求項12に記載の方法。
【0154】
実施形態14
前記平坦な第二ガラス基板が約0.2mmから約0.7mmの範囲内の厚さを有し、前記第一の複雑に湾曲した基板が0.7mmを上回る厚さを有する、実施形態12または13に記載の方法。
【0155】
実施形態15
前記圧力が約1気圧またはそれ以上である、実施形態12~14のいずれか一項に記載の方法。
【0156】
実施形態16
真空技術を使用して前記スタックに圧力を加える、実施形態12~15のいずれか一項に記載の方法。
【0157】
実施形態17
室温で前記圧力を前記スタックに加える、実施形態12~16のいずれか一項に記載の方法。
【0158】
実施形態18
前記積層体を約100℃から約140℃の範囲内の温度に加熱して、前記ボンディング層と前記複雑に湾曲したガラス基板との間に完全な結合を形成する、実施形態12~17のいずれか一項に記載の方法。
【0159】
実施形態19
実施形態12~18のいずれか一項に記載の方法によって形成される、複雑に湾曲した積層体。
【0160】
実施形態20
複雑に湾曲した積層体を製造する方法であって、
2本の軸に沿って曲率を有し、複雑に湾曲したガラス基板を提供するように、2つの主要表面とその間の厚さを有する第一のガラス基板を成形する工程と、
前記複雑に湾曲したガラス基板を中間層および第二のガラス基板とともに、前記中間層が前記複雑に湾曲したガラス基板と前記第二のガラス基板の間になるように、前記第二のガラス基板が二つの主要表面とその間の厚さを有し、二本の軸に沿って曲率を有し、前記第二のガラス基板の前記曲率が前記第一のガラス基板の前記曲率と一致しないように、スタック状に配列する工程と、
室温で前記スタックに圧力を加え、前記第二のガラス基板の前記曲率が前記第一のガラス基板の前記曲率と一致して、複雑に湾曲した積層体を形成する工程と、
を含む、方法。
【0161】
実施形態21
スタックを約100℃から約140℃の範囲内の温度に加熱して、前記中間層と前記第一基板および前記第二のガラス基板との間に結合を形成する工程をさらに含む、実施形態20に記載の方法。
【0162】
実施形態22
前記第二のガラス基板が約0.2mmから約0.7mmの範囲内の厚さを有する化学強化されたガラスであり、前記第一のガラス基板が約1.4mmから約3.85mmの範囲内の厚さを有するソーダ石灰ガラスである、実施形態20および21に記載の方法。
【0163】
実施形態23
実施形態20から22のいずれか一項に記載の方法によって形成された、複雑に湾曲した積層体。
【符号の説明】
【0164】
100 積層体
110 第一基板
112 第一面
114 第二面
120 中間層
130 第二基板
132 第三面
134 第四面
図1
図2
図3