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特開2023-168360車両停止制御装置及び車両停止制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168360
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】車両停止制御装置及び車両停止制御方法
(51)【国際特許分類】
   B60W 50/02 20120101AFI20231116BHJP
   B60W 50/04 20060101ALI20231116BHJP
   B60W 30/09 20120101ALI20231116BHJP
   G08G 1/095 20060101ALI20231116BHJP
   G08G 1/16 20060101ALI20231116BHJP
   B60T 7/12 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B60W50/02
B60W50/04
B60W30/09
G08G1/095 F
G08G1/16 C
B60T7/12 C
B60T7/12 D
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023146596
(22)【出願日】2023-09-11
(62)【分割の表示】P 2019077790の分割
【原出願日】2019-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002082
【氏名又は名称】スズキ株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】517326475
【氏名又は名称】BOLDLY株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100121083
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 宏義
(74)【代理人】
【識別番号】100138391
【弁理士】
【氏名又は名称】天田 昌行
(74)【代理人】
【識別番号】100132067
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 喜雅
(72)【発明者】
【氏名】秋田 晃
(72)【発明者】
【氏名】須山 温人
(57)【要約】
【課題】乗客の不安の解消及び管制担当者の監視業務の効率化を両立できる車両停止制御装置及び車両停止制御方法を提供すること。
【解決手段】車両停止制御装置は、車両の異常を診断する異常診断部(502)と、異常診断部により車両が異常と診断されたとき、車両を停止させる自動運転制御部(501)と、通信部を制御し、管制担当者が使用する管制用端末との間の通信を行わせる通信制御部(507)と、を具備し、通信制御部は、自動運転制御部が車両を停止させた後に、通信部に管制用端末との間の通信接続を行わせ、異常が特定の異常である場合、通信部に通信接続を行わせない。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の異常を診断する異常診断部と、
前記異常診断部により前記車両が異常と診断されたとき、前記車両を停止させる自動運転制御部と、
通信部を制御し、管制担当者が使用する管制用端末との間の通信を行わせる通信制御部と、を具備し、
前記通信制御部は、前記自動運転制御部が前記車両を停止させた後に、前記通信部に前記管制用端末との間の通信接続を行わせ、
前記異常が特定の異常である場合、前記通信部に前記通信接続を行わせないことを特徴とする車両停止制御装置。
【請求項2】
前記特定の異常は、前記通信部による通信に起因する異常であることを特徴とする請求項1記載の車両停止制御装置。
【請求項3】
前記特定の異常は、乗客の行動を要因とする異常であることを特徴とする請求項1又は請求項1記載の車両停止制御装置。
【請求項4】
車両の周辺に存在する障害物が検出されたとき、前記車両を停止させる自動運転制御部と、
通信部を制御し、管制担当者が使用する管制用端末との間の通信を行わせる通信制御部と、
前記車両に関する情報を、前記通信部に前記管制用端末へ送信させる情報提供部と、を具備し、
前記情報提供部は、
前記自動運転制御部が、前記車両が制動を開始する前に、前記車両を停止させる理由を知らせる停止理由情報を含む第1報を送信し、
前記車両の制動中に、異常停止情報を含む第2報を送信し、
前記車両の停止後に、前記車両を停止させたときの前記車両の挙動に関する車両挙動情報を含む第3報を送信することを特徴とする車両停止制御装置。
【請求項5】
前記第2報が、前記車両の前方画像の静止画又は車内画像の静止画のみを含むことを特徴とする請求項4記載の車両停止制御装置。
【請求項6】
前記第2報が、前記車両の前方画像の静止画と車内画像の静止画の両方であることを特徴とする請求項4記載の車両停止制御装置。
【請求項7】
前記車両挙動情報が、前記車両におけるエアバックの展開に関する情報又は最大減加速度を含むことを特徴とする請求項4記載の車両停止制御装置。
【請求項8】
前記管制用端末との間での音声通話を行う音声通話制御部をさらに具備し、
前記音声通話制御部は、前記第3報の送信後に、前記通信制御部に、前記音声通話を行うための通信接続を行なわせ、
通信接続の後、車両の前方画像および車内の動画像を含む第4報を送信することを特徴とする請求項5又は請求項6に記載の車両停止制御装置。
【請求項9】
前記第4報として、前記車内の動画像を、前記前方画像よりも優先して送信することを特徴とする請求項8に記載の車両停止制御装置。
【請求項10】
自動運転により車両を停止させる車両停止制御方法であって、
前記車両の異常を診断する異常診断部により前記車両が異常と診断されたとき、前記車両を停止させる工程と、
前記車両を停止させた後に、通信部を制御し、管制担当者が使用する管制用端末との間の通信接続を行わせる工程と、を具備し、
前記異常が特定の異常である場合、前記通信部に前記通信接続を行わせないことを特徴とする車両停止制御方法。
【請求項11】
自動運転により車両を停止させる車両停止制御方法であって、
前記車両の周辺に存在する障害物が検出されたとき、前記車両を停止させる工程と、
通信部を制御し、管制担当者が使用する管制用端末との間の通信接続を行わせる工程と、
前記車両が制動を開始する前に、前記車両を停止させる理由を知らせる停止理由情報を含む第1報を前記通信部に前記管制用端末へ送信させる工程と、
前記車両の制動中に、前記障害物に関する障害物情報を含む第2報を前記通信部に前記管制用端末へ送信させる工程と、
前記車両の停止後に、前記車両を停止させたときの前記車両の挙動に関する車両挙動情報を含む第3報を前記通信部に前記管制用端末へ送信させる工程と、
を具備することを特徴とする車両停止制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両停止制御装置及び車両停止制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗り合いバスにおいて、乗客への対応は、運転手等の乗員が行っている。例えば、バスが歩行者の飛び出しに対処した場合に、又は、予定通りの運行できなくなった場合に、バスを一時停車したとき、乗員がその事情を説明し、乗客の不安を和らげることができる。
【0003】
しかし、乗り合いバスの無人自動運転化が検討されている。乗員が乗車しなくなると、バスと管制センターとの間を通信接続し、音声通話により、管制担当者が、乗客に遠隔でバスが一時停車した事情を説明することが必要になる。
【0004】
その場合、一時停車の要因となる事象が発生した後、バスと管制センターとの通信を開始し、管制担当者との会話が可能になるまで、ある程度の時間がかかってしまう。このため、従来よりも乗客の不安が長く続いてしまうことが懸念される。
【0005】
また、一時停車の要因には様々なものが考えられる。すべての場合にバスと管制センターとの間の通信を接続し、管制担当者が音声通話で対応することになると、管制担当者は、複数のバスを一人で担当していることが多いため、監視業務が煩雑になり、効率が著しく低下する。
【0006】
一方で、車両が自動運転走行中に自動運転不可な状況に該当したとき、自車両の周囲に情報を提示する情報提示手段を用いて自車両が停止することを提示しながら、自車両を停止させる制御を行うことが提案されている(特許文献1等参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2017-30518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1に開示された技術は、自車両が停止することを周囲の車両に知らせることは開示されているが、乗り合いバスのような乗客が乗っている車両への適用について何ら言及がなく、乗り合いバスの車内にいる乗客の不安を解消することへ適用することができない。
【0009】
本発明は係る点に鑑みてなされたものであり、乗客の不安の解消及び管制担当者の監視業務の効率化を両立できる車両停止制御装置及び車両停止制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一態様の車両停止制御装置は、車両の異常を診断する異常診断部と、前記異常診断部により前記車両が異常と診断されたとき、前記車両を停止させる自動運転制御部と、通信部を制御し、管制担当者が使用する管制用端末との間の通信を行わせる通信制御部と、を具備し、前記通信制御部は、前記自動運転制御部が前記車両を停止させた後に、前記通信部に前記管制用端末との間の通信接続を行わせ、前記異常が特定の異常である場合、前記通信部に前記通信接続を行わせないことを特徴とする。
【0011】
本発明の一態様の車両停止制御装置は、車両の周辺に存在する障害物が検出されたとき、前記車両を停止させる自動運転制御部と、通信部を制御し、管制担当者が使用する管制用端末との間の通信を行わせる通信制御部と、前記車両に関する情報を、前記通信部に前記管制用端末へ送信させる情報提供部と、を具備し、前記情報提供部は、前記自動運転制御部が、前記車両が制動を開始する前に、前記車両を停止させる理由を知らせる停止理由情報を含む第1報を送信し、前記車両の制動中に、異常停止情報を含む第2報を送信し、
前記車両の停止後に、前記車両を停止させたときの前記車両の挙動に関する車両挙動情報を含む第3報を送信することを特徴とする。
【0012】
本発明の一態様の、自動運転により車両を停止させる車両停止制御方法は、前記車両の異常を診断する異常診断部により前記車両が異常と診断されたとき、前記車両を停止させる工程と、前記車両を停止させた後に、通信部を制御し、管制担当者が使用する管制用端末との間の通信接続を行わせる工程と、を具備し、前記異常が特定の異常である場合、前記通信部に前記通信接続を行わせないことを特徴とする。
【0013】
本発明の一態様の、自動運転により車両を停止させる車両停止制御方法は、前記車両の周辺に存在する障害物が検出されたとき、前記車両を停止させる工程と、通信部を制御し、管制担当者が使用する管制用端末との間の通信接続を行わせる工程と、前記車両が制動を開始する前に、前記車両を停止させる理由を知らせる停止理由情報を含む第1報を前記通信部に前記管制用端末へ送信させる工程と、前記車両の制動中に、前記障害物に関する障害物情報を含む第2報を前記通信部に前記管制用端末へ送信させる工程と、前記車両の停止後に、前記車両を停止させたときの前記車両の挙動に関する車両挙動情報を含む第3報を前記通信部に前記管制用端末へ送信させる工程と、を具備することを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、乗客の不安の解消及び管制担当者の監視業務の効率化を両立できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】第1の実施の形態に係る車両停止制御装置を適用した乗り合いバス管制システム全体を示す模式図である。
図2】第1の実施の形態に係るバスを示す機能ブロック図である。
図3】第1の実施の形態に係るバスにおける車両停止制御に関わる要部を示す機能ブロック図である。
図4】第1の実施の形態に係る管制用端末を示す機能ブロック図である。
図5】第1の実施の形態に係る乗り合いバス管制システムにおける緊急停止処理の各処理を示すフローチャート図である。
図6】第1の実施の形態に係る乗り合いバス管制システムにおける通常停止処理の各処理を示すフローチャート図である。
図7】第1の実施の形態に係るサーバ及び端末のハードウェア構成の一例を示す図である。
図8】第2の実施の形態に係るバスにおける車両停止制御に関わる要部を示す機能ブロック図である。
図9】第2の実施の形態に係る管制用端末を示す機能ブロック図である。
図10】第2の実施の形態に係る乗り合いバス管制システムにおけるデータのやり取りを示すシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。なお、以下においては、本発明に係る車両停止制御装置及びその方法を、定時運行を行う無人運転乗り合いバスに適用した例について説明するが、適用対象はこれに限定されることなく変更可能である。例えば、本発明を、利用者の依頼に応じて配車され、利用者及びその同伴者に限り乗車することを前提とした、タクシーのような無人運転車両に適用してもよい。また、車両のタイプは特に限定されることなく、四輪車、二輪車・三輪車等の鞍乗型車両のどちらのタイプの車両であってもよい。また、無人運転車両は、乗員が乗っていても構わない。
【0017】
(本発明の概要)
本発明者らは、上記課題を解決すべく、鋭意検討を重ねた結果、異常停止を検知したとき、その異常の要因が何であったかに応じて、車両と管制担当者が用いる管制用端末との通信接続を適切なタイミング行うこと、及び、乗客への報知の内容及びタイミングを適切に行うことが、乗客の不安の解消及び管制担当者の監視業務の効率化の両立に寄与することを見出し、本発明を完成した。
【0018】
すなわち、本実施の形態に係る車両停止制御装置は、車両の周辺に存在する障害物が検出されたとき、前記車両を停止させる自動運転制御部と、通信部を制御し、管制担当者が使用する管制用端末との間の通信を行わせる通信制御部と、を具備し、前記通信制御部は、前記自動運転制御部が前記車両を停止させた後に、前記通信部に前記管制用端末との間の通信接続を行わせることを特徴とする。
また、本実施の形態に係る車両停止制御装置は、車両の異常を診断する異常診断部と、前記異常診断部により前記車両が異常と診断されたとき、前記車両を停止させる自動運転制御部と、通信部を制御し、管制担当者が使用する管制用端末との間の通信を行わせる通信制御部と、を具備し、前記通信制御部は、前記自動運転制御部が前記車両を停止させた後に、前記通信部に前記管制用端末との間の通信接続を行わせることを特徴とする。
【0019】
また、本実施の形態に係る車両停止制御装置は、車両の周辺に存在する障害物が検出されたとき、前記車両を停止させる自動運転制御部と、通信部を制御し、管制担当者が使用する管制用端末との間の通信を行わせる通信制御部と、前記車両に関する情報を、前記通信部に前記管制用端末へ送信させる情報提供部と、を具備し、前記情報提供部は、前記自動運転制御部が、前記車両が制動を開始する前に、前記車両を停止させる理由を知らせる停止理由情報を含む第1報を送信し、前記車両の制動中に、前記障害物に関する障害物情報を含む第2報を送信し、前記車両の停止後に、前記車両を停止させたときの前記車両の挙動に関する車両挙動情報を含む第3報を送信することを特徴とする。
【0020】
また、本実施の形態に係る、自動運転により車両を停止させる車両停止制御方法は、前記車両の周辺に存在する障害物が検出されたとき前記車両を停止させる工程と、前記車両を停止させた後に、通信部を制御し、管制担当者が使用する管制用端末との間の通信接続を行わせる工程と、を具備することを特徴とする。
【0021】
また、本実施の形態に係る、自動運転により車両を停止させる車両停止制御方法は、前記車両の異常を診断する異常診断部により前記車両が異常と診断されたとき、前記車両を停止させる工程と、前記車両を停止させた後に、通信部を制御し、管制担当者が使用する管制用端末との間の通信接続を行わせる工程と、を具備することを特徴とする。
【0022】
また、本実施の形態に係る、自動運転により車両を停止させる車両停止制御方法であって、前記車両の周辺に存在する障害物が検出されたとき、前記車両を停止させる工程と、前記車両が制動を開始する前に、前記車両を停止させる理由を知らせる停止理由情報を含む第1報を送信する工程と、前記車両の制動中に、前記障害物に関する障害物情報を含む第2報を送信する工程と、前記車両の停止後に、前記車両を停止させたときの前記車両の挙動に関する車両挙動情報を含む第3報を送信する工程と、を具備することを特徴とする。
【0023】
<第1の実施の形態>
以下、本発明の第1の実施の形態に係る車両停止制御装置を適用した乗り合いバス運行システムについて、図1図7を参照して、詳細に説明する。
【0024】
(システム全体)
図1は、第1の実施の形態に係る車両停止制御装置を適用した乗り合いバス管制システム全体を示す模式図である。図1に示す乗り合いバス管制システム1は、クラウド2に配置された車両管制サーバ3を備えている。車両管制サーバ3には、ネットワークの一例である移動体通信網4を介して、バス5が通信可能に接続されている。また、車両管制サーバ3には、インターネット(不図示)を介して、管制用端末6が接続されている。管制用端末6は、車両管制センターに設置され、移動体通信網4を介して、バス5と通信可能に接続されている。バス5は、GNSS衛星7からGNSS信号を受信可能に構成されている。また、バス5は、VICS発信装置(例えば、VICS(登録商標)ビーコン)8から、VICS信号を受信可能に構成されている。なお、図1では、バス5及び管制用端末6は、便宜上、1つずつ示しているが、複数存在していてもよい。
【0025】
(車両管制サーバ)
車両管制サーバ3は、通信部を備え、バス5及び管制用端末6との間の通信接続を制御するように構成されている。また、車両管制サーバ3は、バス5から送信された各種情報を受信し、記憶部に記憶するように構成されている。このような車両管制サーバ3の各機能は、後述するように、車両管制サーバ3を実現するためのコンピュータ装置1000(図9参照)のプロセッサ1001がプログラムを実行し、通信部を制御して信号等を送受信し、又は、記憶部に対しデータ等を書き込み及び読み出しすることにより実現することができる。
【0026】
(バス)
図2は、第1の実施の形態に係るバス5を示す機能ブロック図である。なお、バス5が当然に備えている構成(例えば、車輪、シート、ヘッドライト)や任意に備えている構成(空調装置等)については、本実施の形態の説明に必要なものだけを示し、省略している。
【0027】
図2に示すように、バス5は、演算部51が実現する機能として、自動運転制御部501、異常診断部502、現在位置取得部503、駆動制御部504、制動制御部505、操舵制御部506、通信制御部507、交通情報取得部508及び操作受付部509を備えている。
【0028】
自動運転制御部501は、記憶部53に記憶した運行計画に関する情報に含まれる運行計画に沿った運行経路を無人で自動走行し、乗車予約がなされたバス停に停車し、乗客を乗せる迎車動作を実行するように構成されている。
【0029】
まず、自動運転制御部501は、記憶部53に記憶された地図データを参照し、運行計画で指定された運行経路を走行する。
【0030】
自動運転制御部501は、無人自動走行に際し、駆動制御部504に、電動モータ等の駆動部54を制御させ、バス5の加減速を行わせる。また、自動運転制御部501は、制動制御部505に、ブレーキ等の制動部55を制御させ、バス5の制動及び停止を行わせる。さらに、自動運転制御部501は、操舵制御部506に、ステアリングモータ等の操舵部56を制御させ、バス5の右左折等を行わせる。
【0031】
より具体的には、自動運転制御部501は、センサ57の一つである前方センサからの検知信号に従って、前方車両との距離を把握し、車間を維持するように、駆動部54及び制動部55の制御(定速走行・車間距離制御)を実行する。ここで、前方センサとしては、例えば、前方カメラ、ミリ波レーダ又はLIDARを単独又は組み合わせて使用することができる。
【0032】
また、自動運転制御部501は、前方センサからの検知信号に基づいて、バス5の周辺に存在する障害物を検出したとき、制動部55を制御し、バス5を停止する制御を実行し、又は、操舵部56を制御し、バス5を方向転換し、障害物を回避する制御を実行する。
【0033】
このように自動運転制御部501は、例えば、SAE Internationalにより定義された自動運転レベル4又は5に相当する自動運転を行うことができるように構成されるが、特に限定されるものではない。
【0034】
異常診断部502は、駆動制御部504及び駆動部54(以下、「駆動系システム」と記載する)、制動制御部505及び制動部55(以下、「制御系システム」と記載する)、並び、操舵制御部506及び操舵部56(以下、「操舵系システム」と記載する)における異常(以下、「車両システムエラー」と記載する)を診断するように構成されている。一般的な車両では、ECU(後述)に異常診断機能が備えられ、車両システムエラーを検知し、例えば、MIL(Malfunction Indication Lamp)のような警告灯を点灯させるように構成されている。以下の説明において、駆動系、制御系及び操舵系システムをまとめて「車両システム」とも記載する。
【0035】
また、異常診断部502は、通信制御部507からの信号に基づいて、通信部52による通信に起因する異常(以下、「通信システムエラー」と記載する)を診断するように構成されている。通信システムエラーには、通信部52、移動体通信網4又はインターネットなどのネットワークのいずれかでトラブルが発生し、バス5と管制用端末6との間の通信ができない異常が含まれるが、特に限定されない。
【0036】
現在位置取得部503は、GNSS受信部58によりGNSS衛星7(図1参照)からGNSS信号を受信して現在位置情報を取得するように構成されている。
【0037】
駆動制御部504は、駆動部54の制御を行なうように構成されている。例えば、電動モータの出力、ガソリンエンジンのアクセル開度、トランスミッションでのトルク変更等を行い、バス5の速度を制御することができる。
【0038】
制動制御部505は、制動部55の制御を行なうように構成されている。例えば、ブレーキの作動開始及び停止並びに制動力の調節、エンジンブレーキの作動開始及び停止並びに調節を行い、バス5の速度の制御及び停止を行うことができる。
【0039】
制動部55は、バス5の走行を安定させるための装置、例えば、ABS(Antilock Brake System)、ESP(Electronic Stability Program)(登録商標)を備えていてもよい。
【0040】
操舵制御部506は、操舵部56の制御を行なうように構成されている。例えば、ステアリングモータを制御し、操舵角を変更して、バス5の旋回などを行うことができる。
【0041】
通信制御部507は、通信部52を制御し、移動体通信網4(図1)及び車両管制サーバ3を介して、管制用端末6と通信を行い、管制担当者による利用者との通話を実現するように構成されている。例えば、バス5において、入力部59の一つであるマイクにより利用者の音声を受け付けると共に、出力部61の一つであるスピーカーから管制担当者の音声を出力する。音声に代えて、または音声に加えて、ディスプレイでのテキスト表示を行ってもよい。
【0042】
交通情報取得部508は、例えば、VICS受信部62によりVICS発信装置8(図1参照)からVICS信号を受信して運行経路の信号情報や渋滞情報を含む交通情報を取得するように構成されている。
【0043】
操作受付部509は、例えば、入力部59の一例であるタッチパネルディスプレイのタッチパネルにより、乗客による操作を受け付けるように構成されている。
【0044】
(車両停止制御)
図3は、第1の実施の形態に係るバス5における車両停止制御に関わる要部を示す機能ブロック図である。図3に示すように、自動運転制御部501によるバス5の一時停止制御を監視し、バス5の一時停止が車両停止条件を満たしているか否かを判定する停止条件判定部101が設けられている。
【0045】
自動運転制御部501によるバス5の一時停止には、以下の場合が挙げられる。
(A)障害物への衝突回避のための車両停止
センサ57(図2参照)の一例である前方センサ102によりバス5の前方に障害物を検出したときに、自動運転制御部501が、制動制御部505に緊急的な制動を行わせ、バスを停止させる場合が含まれる。
【0046】
(B)交通情報に基づく車両停止
バス5の運行を管理する運行管理部103が、交通情報取得部508により取得した信号情報や渋滞情報を含む交通情報に基づいて、自動運転制御部501にバス5を停止させる場合が含まれる。例えば、運行管理部103が、交通情報から運行経路上のバス5の前方で交通事故が発生したことを認識し、自動運転制御部501が、バス5を安全な場所で停車させる。
【0047】
(C)システムエラーに基づく車両停止
異常診断部502が、車両システムエラー又は通信システムエラーがあると診断し、自動運転制御部501がバス5を停止させる場合が含まれる。車両システムエラーには、例えば、ブレーキオイルの漏れによるブレーキの機能不全のような制動系システムエラー、或いは、タイヤのパンク又はバーストによりステアリングが固着し、操舵が不可能になるような操舵系システムエラーが含まれる。
【0048】
(D)運行時間調整のための車両停止
運行管理部103が、運行計画及び現在位置情報に基づいて、バス5が運行計画よりも早く運行していると判断したとき、自動運転制御部501にバス5を一時停止させる場合が含まれる。定期運行の乗り合いバスは、運行計画よりも早く運行しているとき、バス停等に一時停止し、時間調整を行う必要がある。
【0049】
(E)乗客の行動による車両停止
乗客監視部104が、乗客の行動に起因した異常が発生したことを検知し、乗客の安全を確保するために、自動運転制御部501にバス5を一時停止させる場合が含まれる。例えば、乗客監視部104は、センサ57の一例であるシートベルト装着センサ105により、シートベルトが外されたことを検知し、又は、操作受付部609が、入力部59の一例である停止要求ボタンが乗客により押下げられたことを検知し、乗客の行動に起因した異常の発生を検知することができる。停止要求ボタンは、メカニカルなプッシュボタンスイッチであっても、ソフトウェア的な、タッチパネルのディスプレイに表示されたボタンであってもよい。
【0050】
(F)一時停止位置や交通信号に伴った前方車両の停止に追従した一時停止
センサ57(図2参照)の一例である前方センサ102によりバス5の前方を走行する前方車両が停止したことに基づいて、自動運転制御部501が、制動制御部505へ前方車両に追従した停止を指示する。制動制御部505の制動によって、バス5を停止させる。
【0051】
停止条件判定部101は、上述のような異常停止が発生したこと、すなわち、異常停止条件A~Fのいずれか1つが成立したと判定し、本発明の報知部の一例である報知制御部106を制御し、出力部61を介して、乗客に対する情報の提供(報知)を行うように構成されている。本実施の形態では、報知部の用いる報知手段として音声による報知を例に挙げるが、特に限定されない。
【0052】
また、停止条件判定部101は、異常停止条件A~Fのいずれか1つが成立したと判定した場合、通信制御部507に、通信部52を制御させ、管制用端末6との通信接続を行わせ、また、音声通話制御部の一例である通話制御部107に、管制用端末6との通信を用い、管制担当者との音声通話を行なわせられるように構成されている。
【0053】
上述のようなバス5の各機能は、ECU(Electronic Control Unit)及び/又は車載コンピュータにより実現することができる。例えば、車載コンピュータの構成は、基本的には、後述するように管制用端末6を実現するためのコンピュータ装置1000(図8参照)と同等である。したがって、プロセッサ1001がプログラムを実行し、通信部52を制御して信号等を送受信し、又は、記憶部53に対しデータ等を書き込み及び読み出しすることにより、バス5の各機能を実現することができる。また、ECUのように、マイクロコントローラ(マイコン)により、バス5の各機能が実現されていてもよい。
【0054】
(管制用端末)
図4は、第1の実施の形態に係る管制用端末6を示す機能ブロック図である。図4に示すように、管制用端末6は、演算部21により実現される機能として、表示制御部201、通信制御部203、通話制御部204及び操作受付部202を備えている。
【0055】
表示制御部201は、各種情報を出力部23の一例である表示部に表示させるように構成されている。
【0056】
通信制御部203は、通信部22を制御し、移動体通信網4(図1)及び車両管制サーバ3を介して、バス5と通信を行うように構成されている。
【0057】
音声通話制御部の一例である通話制御部204は、バス5との通信を用い、入力部24の一例であるマイクと、出力部23の一例であるイヤホンを介して、管制担当者の、バス5の乗客との音声通話を行なわせるように構成されている。
【0058】
操作受付部202は、管制担当者による操作を、入力部24の一例であるタッチパネルディスプレイのタッチパネルを介して受け付けるように構成されている。
【0059】
上述のような管制用端末6の各機能は、後述するように管制用端末6を実現するためのコンピュータ装置1000(図8参照)のプロセッサ1001がプログラムを実行し、通信部22を制御して信号等を送受信し、又は、記憶部(不図示)に対しデータ等を書き込み及び読み出しすることにより実現することができる。
【0060】
特に、管制用端末6が、パーソナルコンピュータ、スマートフォン又はタブレットに代表されるように、オペレーションシステム(OS)上で実行されるアプリケーションプログラムにより、様々な機能を実現できる場合、図3を参照して説明した各機能の一部又は全部は、アプリケーションプログラムにより実現されてもよい。また、管制用端末6の各機能のすべて又はその一部が、他のサーバの上で実行されるアプリケーションプログラムにより実現されてもよい。
【0061】
(車両停止処理)
停止条件判定部101(図3参照)が、上述の異常停止条件A~Fのいずれか一つが成立しているか否か判定する。
【0062】
報知制御部106が、自動報知0(ゼロ)を実施する。自動報知0は、乗客に対してバス5が一時停止を行うことを報知する内容である。例えば、出力部61の一例であるスピーカーから警報音を出力することにより行われる。報知手段は特に限定されない。例えば、警報音に代えて、音声メッセージを出力してもよいし、バス5内に設置されたディスプレイにテキストを表示してもよい。以下の説明で挙げられている報知には、特に言及がない限り、どのような報知手段を用いてもかまない。
【0063】
(異常停止条件A)
次に、停止条件判定部101は、バス5の停止が障害物による停止(異常停止条件A)が成立した場合について説明する。
自動運転制御部501(図2参照)は、障害物への衝突を回避するため、バス5を緊急停止させる。このような緊急停止処理の詳細については、後述する。
【0064】
バス5が緊急停止するため、バス5に大きな減速加速度(減速G)が要求され、乗客に衝撃が加わるおそれがある。そこで、乗客に対して、制動がこれから行われること、及び、制動が行われていることを知らせ、安全な姿勢をとらせることが望ましい。
【0065】
本実施の形態では、異常停止条件Aが成立している場合、制動開始前及び制動中に報知を行なう。例えば、報知制御部106に自動報知1を実施させる。自動報知1は、スピーカーから警告音(例えば、「ピ、ピ、ピ、ピ」のような断続音)を出力することにより行うことができる。
【0066】
次に、停止条件判定部101は、制動が開始されたか否か判定する。この判定は、自動運転制御部501が、例えば、制動制御部505に制動を行うように指示したか否かに基づいて行うことができる。
【0067】
制動が開始された場合、停止条件判定部101は、報知制御部106に、自動報知2を実施させる。自動報知2は、例えば、スピーカーから警告音(例えば、「ピー」のような継続音)を出力することにより行うことができる。
【0068】
その後、停止条件判定部101は、バス5が停止したか否か判定する。この判定は、例えば、センサ57の一例である加速度センサ606により加速度が0になったか否かに基づいてバス5が停車するまで継続される。
【0069】
バス5の停止が確認できた場合、停止条件判定部101は、通信制御部507に通信部52を制御させ、管制用端末6との音声通話のための通信接続を開始するよう指示する。管制用端末6との音声通話のための通信接続が開始されない場合、停止条件判定部101は、所定の時間Tが経過するまで繰り返し通信接続の処理を継続する。
【0070】
上述のように、バス5の停止が、障害物への衝突回避のために行われる場合(異常停止条件Aが成立した場合)、バス5の制動開始前及び制動中は、乗客は、安全な姿勢を取り、自らの安全確保を行い、管制担当者との音声通話は、バスの停止が完了した後、行えるようにすればよい。
【0071】
(異常停止条件C)
次に、バス5がシステムエラーによる停止(異常停止条件C)が成立した場合について説明する。
【0072】
システムエラーは、バス5の安全な運行を継続することができない状態である。しかし、障害物への衝突のような緊急性は低い。そのため、乗客の安全を優先し、ゆっくりとバス5を停止させるようにすることが好ましい。このため、自動運転制御部501は、バス5の周囲に障害物がないことを確認しつつ、バス5を安全に停止させる。このような通常停止処理の詳細については、後述する。
【0073】
バス5のシステムエラー(異常停止条件C)が検出された場合、車両システムエラーであるか、通信システムエラーであるか判断を行い、エラー原因に応じた処理を行う。
【0074】
車両システムエラーである場合、停止条件判定部101は、通信制御部507に、通信部52を制御させ、管制用端末6との音声通話のための通信接続を開始するよう指示する。次に、停止条件判定部101は、通信接続が完了したか否かを判定する。管制用端末6との音声通話接続が完了しない場合、停止条件判定部101は、所定の時間Tの間、管制用端末6との音声通話接続に伴う処理を継続する。
【0075】
停止条件判定部101は、報知制御部106に自動報知1を実施させる。自動報知1により、制動が開始されることが乗客に報知された後、停止条件判定部101は、自動運転制御部501に対し、制動開始を要求する。
【0076】
上述のように、バス5がシステムエラーにより停止する場合(異常停止条件Cが成立した場合)、バス5はゆっくりと停止する。このため、バス5の制動開始前及び制動中も、乗客は、比較的安全であり、通信システムエラーでなければ、管制担当者との音声通話を行い、乗客に対して管制担当者が直接対応し、事情説明を行なえるようにすることが好ましい。これにより、車両システムエラーによりバス5の運行ができなくなり、バス5の乗り換えを促すことができる。
【0077】
また、バス5がゆっくりと停止するときも、制動開始時に衝撃が発生する可能性があるので、自動報知1を実施し、乗客に制動開始を報知することが好ましい。通信システムエラーである場合、及び、通信接続が時間T以内に完了しない場合には、自動報知1が実施されるので、乗客は制動による減速加速度(減速G)に備えることができる。
【0078】
(異常停止条件E)
次に、乗客の行動に起因した停止(異常停止条件E)が成立した場合について説明する。
【0079】
例えば、乗客がシートベルトを外した場合、そのまま運行を継続すると、乗客の安全を確保できない事態が懸念される。そこで、乗客監視部104によりシートベルト装着センサ105からの検出信号に応じ、シートベルトが外れたことを認識する。シートベルトが外されたことが認識された場合、自動運転制御部501は、バス5を通常停止処理により一時停止させると共に、報知制御部106が、シートベルトが外れているというような停止の理由を報知し、乗客にシートベールを装着させられればよい。
【0080】
そこで、停止条件判定部101は、報知制御部106に「シートベルトが外れています。バスを一時停止いたします」というような音声報知1を行わせる。その後、停止条件判定部101は、報知制御部106に自動報知1を実施させ、自動運転制御部501に制動開始を要求する。
【0081】
上述のように、バス5の停止が乗客の行動により停止する場合(異常停止条件Eが成立した場合)、乗客の行動に起因しているので、比較的簡単な対応で乗客の安心感が得られるため、管制用端末6との通信接続は行わず、報知制御部106による音声報知1で十分である。また、乗客のシートベルトが予め定められる所定時間以上継続して外れている場合は、音声報知では不十分であると判断し、管制用端末6との音声通話接続を行ってもよい。
【0082】
また、バス5はゆっくりと停止するため、バス5の制動中に乗客に大きな減速加速度がかかるおそれがないので、自動報知1により、乗客に制動開始を報知し、制動時の減速加速度(減速G)に備えさせれば足りる。
【0083】
(異常停止条件D)
次に、バス5の運行管理に基づいた時間調整(異常停止条件D)に起因した停止条件が成立した場合について説明する。
【0084】
時間調整のためにバス5が一時停車する場合、バス5の運行に問題はなく、また、乗客の安全も確保されている。そこで、バス5を通常停止処理により一時停止させると共に、時間調整のための停止である旨を報知できればよい。
【0085】
そこで、停止条件判定部101は、報知制御部106に「時間調整のために、バスを一時停止いたします」というような音声報知2を行わせる。その後、停止条件判定部101は、報知制御部106に自動報知1を実施させ、自動運転制御部501に制動開始を要求する。
【0086】
上述のように、時間調整によりバス5が停止する場合(異常停止条件Dが成立した場合)、管制用端末6との通信接続は行わず、報知制御部106による音声報知2で十分である。
【0087】
また、バス5はゆっくりと停止するため、バス5の制動中に乗客に大きな減速加速度がかかるおそれがないので、自動報知1により、乗客に制動開始を報知し、制動時の減速加速度(減速G)に備えさせれば足りる。
【0088】
(異常停止条件B)
次に、交通情報に基づく停止(異常停止条件B)に起因した停止条件が成立した場合について説明する。
【0089】
信号情報や渋滞情報を含む交通情報に基づいてバス5が一時停車する場合、乗客の安全は確保されている。そこで、バス5を通常停止処理により一時停止させるのと一緒に交通情報を報知できればよい。
【0090】
そこで、停止条件判定部101は、報知制御部106に「バスの進行方向で車両事故が発生しています。バスを一時停止いたします」というような音声報知3を行わせる。その後、停止条件判定部101は、報知制御部106に自動報知1を実施させ、自動運転制御部501に制動開始を要求する。
【0091】
上述のように、交通情報に基づいてバス5が停止する場合(異常停止条件Bが成立した場合)、管制用端末6との通信接続は行わず、報知制御部106による音声報知3で十分である。
【0092】
また、バス5はゆっくりと停止するため、バス5の制動中に乗客に大きな減速加速度がかかるおそれがないので、自動報知1により、乗客に制動開始を報知し、制動時の減速加速度(減速G)に備えさせれば足りる。
【0093】
(異常停止条件F)
次に、バス5の前方を走行する前方車両の停止動作に基づく停止(異常停止条件F)に起因した停止条件が成立した場合について説明する。
【0094】
バス5の前方を走行する前方車両が、一時停止場所による停止や交通信号によって停止する場合、バス5を通常停止処理により一時停止させることと一緒に停止理由を報知できればよい。
【0095】
そこで、自動運転制御部501(図2参照)は、前方車両に追従するように、バス5を停止させる。このような通常停止処理の詳細については、後述する。
【0096】
以下の表1は、第1の実施の形態における異常停止条件A~Fと報知の種類及び実施タイミング、並びに、音声通話のための通信接続の実施タイミングとの関係を示している。
【0097】
【表1】
【0098】
表1に示すのと同等の判定テーブルを用意し、バス5の記憶部53に記憶しておき、停止条件判定部101が判定テーブルを参照し、報知の種類及び実施タイミング、並びに、音声通話のための通信接続の実施タイミングを決定することもできる。
【0099】
例えば、停止条件判定部101は、図5に示すS1での異常停止条件A~Fの成立の有無を判定した後、成立した異常停止条件をキーとして、表1に示す判定テーブルを参照し、対応する報知の種類(表1の報知の欄における上段)及び実施タイミング(表1の報知の欄における下段)を決定する。そして、停止条件判定部101は、決定された種類の報知を、決定された実施タイミングに従って、報知制御部106に報知を行わせ、且つ、通信制御部507に、音声通話のためのバス5と管制用端末6との通信接続を、決定された実施タイミングで行わせることができる。
【0100】
(緊急停止処理)
図5は、第1の実施の形態に係る乗り合いバス管制システム1における緊急停止処理の各処理を示すフローチャート図である。図5に示すように、まず、自動運転制御部501は、上限減速度を決定する(S101)。
【0101】
次に、自動運転制御部501は、TTC(Time to Collision)を決定する(S102)。TTCは、ある時点でのバス5と障害物との距離を相対速度で除した値である。
【0102】
なお、上限減速度及びTTCの決定は、順番が逆でもよいし、同時に行ってもよい。
【0103】
次に、自動運転制御部501は、上限減速度及びTTCに従って、制動制御部505に、制動部55を制御させ、制動制御処理を行う(S103)。その後、自動運転制御部501は、バス5が停止したか否か判定する(S104)。S104における判定がNoである場合、S104に戻り、同一の処理を繰り返す。S104における判定がYesであった場合、処理を終了する。
【0104】
(通常停止処理)
図6は、第1の実施の形態に係る乗り合いバス管制システム1における通常停止処理の各処理を示すフローチャート図である。図6に示すように、自動運転制御部501は、停止条件判定部101からの制動開始要求があったか否かを判定する(S200)。S200における判定がNoである場合、S200に戻り、同一の処理を繰り返す。
【0105】
S200における判定がYesであれば、バス5の前方センサ102による検出可能距離内に障害物がないことを確認するために、前方センサ102による検出結果に基づいて、障害物があるか否かを決定する(S201)。
【0106】
S201における判定がYesであり、障害物がある場合、自動運転制御部501は、減速度αを設定する(S202)。S201における判定がNoであり、障害物がない場合、自動運転制御部501は、減速度βを設定する(S203)。ここで、減速度α、βの関係は、α>βであり、障害物がない場合には、比較的ゆっくりとバス5を停止させ、乗客の安全を確保し、安心感を高めることができる。
【0107】
次に、自動運転制御部501は、設定された減速度α又はβに従って、制動制御部505に、制動部55を制御させ、制動制御処理を行う(S204)。その後、自動運転制御部501は、バス5が停止したか否か判定する(S205)。S205における判定がNoである場合、S205に戻り、同一の処理を繰り返す。S205における判定がYesであった場合、処理を終了する。
【0108】
(路上障害物による緊急停止の具体例)
上述のような第1の実施の形態において、バス5の前方の路上に障害物(落下物、動体、車両など)が存在するとき、自動運転制御部501により、緊急停止処理が実施される。具体的には、まず、バス5の前方センサ102の検出可能距離内で障害物が検出されると、自動運転制御部501は、緊急停止処理の実施を決定する。次いで、当該決定に基づいて、停止条件判定部101が、異常停止条件Aが成立したことを判定する。次いで、報知制御部106が、自動報知0を実施する。これにより、乗客に対する注意喚起がされる。
【0109】
次に、自動運転制御部501は、TTCが所定の時間になったときに制動制御処理(図5中、S103)を開始する。これに対し、報知制御部106は、異常停止条件Aの成立を判定した時点で、制動開始前に自動報知1を実施する。これにより、乗客へ報知がなされた後に制動が開始されるので、乗客が、急な制動開始により驚き、不安になることを抑えることができる。
【0110】
その後、自動運転制御部501は、上限減速度を超えないようにバス5の制動制御を実施する。このとき、報知制御部106は、自動報知2を継続的に実施する。これにより、制動中に大きな減速加速度が発生した場合に、減速加速度(減速G)に対して乗客が備えられるようになる。
【0111】
(システムエラーによる通常停止の具体例)
また、上述のような第1の実施の形態において、バス5で車両システムエラーが発生したとき、自動運転制御部501により、通常停止処理が実施される。具体的には、異常診断部502(図3参照)が車両システムエラー(例えば、ステアリングがロック)の発生を診断すると、自動運転制御部501は、通常停止緊処理の実施を決定する。次いで、当該決定に基づいて、停止条件判定部101が、異常停止条件Cが成立したことを判定する。次いで、報知制御部106が、自動報知0を実施する。これにより、乗客に対する注意喚起がされる。
【0112】
次に、停止条件判定部101は、通信システムエラー以外の車両システムエラーによる停車であることを判断し、通信接続を行う。その後、報知制御部106が、自動報知1を実施する。その後、停止条件判定部101は、自動運転制御部501に制動開始要求を行う。自動運転制御部501は、制動開始要求に応じて制動を開始する。これにより、乗客へ報知がなされた後に制動が開始されるので、乗客が、制動が開始されたことで不安になることを抑えることができる。
【0113】
また、制動が開始される前から通信接続が開始され、制動中又はバス5の停止までに、管制担当者との音声通話が可能になり、可能な限り速やかに乗客への対応を開始できる。
【0114】
(属性情報に基づく制動制御)
第1の実施の形態において、乗客の不安を抑えるために、さらに制動の諸条件を乗客の属性に合わせて調整することが好ましい。
【0115】
ここで、乗客の属性情報には、例えば、年齢、妊娠の有無、身体障害者認定の有無、車いすの利用の有無、ベビーカーの利用の有無が含まれるが特に限定されない。乗客の属性情報は、例えば、クラウド2に設置された乗車予約管理サーバ(不図示)の記憶部に記憶された乗客データベースにから取得可能であるが、特に限定されない。
【0116】
まず、緊急停止処理(図5参照)において、自動運転制御部501が、上限減速度を乗客の属性情報に基づいて決定することが望ましい。例えば、車いすを使用している乗客、ベビーカーを利用している乗客が乗車している場合、上限減速度を低く設定し、乗客に係る最大減加速度を小さくできる。
【0117】
また、通常停止処理(図6参照)において、自動運転制御部501が、制動を開始するタイミングを乗客の属性情報に基づいて調整することが望ましい。例えば、高齢者が乗車している場合、自動報知1で報知されたことを認知するのにある程度時間がかかることが予想されるため、制動の開始を遅くすることが好ましい。
【0118】
さらに、通常停止処理(図6参照)において、自動運転制御部501が、減速度βを乗客の属性情報に基づいて補正することが望ましい。例えば、高齢者が乗車している場合、減速度βが小さくなるように補正し、制動による減速加速度(減速G)をより好適に抑えることができる。
【0119】
ただし、制動を開始するタイミングの調整及び減速度βの補正は、バス5の前方に障害物が検知されていないことを条件とする。
【0120】
以上説明したように、第1の実施の形態では、バス5の障害物への衝突を回避するために緊急停止処理が行われるため、大きな減加速度(減速G)がバス5に要求される可能性がある。このような状況では、乗客が管制担当者と通話を行えないことが懸念される。しかし、第1の実施の形態によれば、バス5が停止した後で通信接続を行うため、管制担当者は、乗客に適切に対応を行うことができる。
【0121】
また、バス5が障害物への衝突を回避するため一時停車するとき、自動報知1により、制動開始前に制動が行われることが乗客に報知されるので、乗客は制動開始時の減速加速度(減速G)に備えることができる。
【0122】
また、車両システムエラーによりバス5が一時停止する場合、通常停止処理が行われるため、大きな減加速度がバス5に要求される可能性は低いが、制動によってバス5の車両挙動が不安定になることが懸念される。しかし、第1の実施の形態によれば、バス5が停止する前に通信接続が行われ、管制担当者が早期に乗客に対応することができるので、乗客の安心感を高めることができる。また、車両システムエラーがあった場合、報知制御部106による報知ができないことも予測されるため、制動中から音声通話により管制担当者が乗客に対応できる点で好ましい。
【0123】
また、第1の実施の形態によれば、通信システムエラーがある場合、通信接続を行わないが、自動報知1により乗客に制動開始を報知することにより、制動開始による衝撃に備えさせて、乗客の安心感を高めることができる。
【0124】
また、バス5が乗客の行動に起因して一時停止する場合、車両システムエラーはないので、報知制御部106による報知が可能である。第1の実施の形態では、このような場合には、音声報知1を行い、一時停止の理由を乗客に知らせ、通信接続は行わない。これにより、必要がない通信接続を避け、管制担当者の監視業務の効率化を図ることができる。さらに、バス5が停止要求ボタンを有する場合には、停止要求ボタンが押下げられた場合には、管制担当者による対応を行うため、管制用端末6との音声通話接続を行ってもよい。
【0125】
(ハードウェア構成)
なお、上記実施の形態の説明に用いた機能ブロック図は、機能単位のブロックを示している。これらの機能ブロック(構成部)は、ハードウェア及び/又はソフトウェアの任意の組み合わせによって実現される。また、各機能ブロックの実現手段は特に限定されない。すなわち、各機能ブロックは、物理的に結合した1つの装置により実現されてもよいし、物理的に分離した2つ以上の装置を有線又は無線で接続し、これら複数の装置により実現されてもよい。
【0126】
図7は、第1の実施の形態に係るサーバ及び端末のハードウェア構成の一例を示す図である。車両管制サーバ3、バス5の車載コンピュータ(以下、単に「バス5」と記載する)及び管制用端末6などを構成するコンピュータ装置1000は、物理的には、プロセッサ1001、メモリ1002、ストレージ1003、通信装置1004、入力装置1005、出力装置1006、センサ1007、内部バス1008などを含むコンピュータ装置1000として構成されてもよい。
【0127】
なお、以下の説明では、「装置」という文言は、回路、デバイス、ユニットなどに読み替えることができる。ハードウェア構成は、図に示した各装置を1つ又は複数含むように構成されてもよいし、一部の装置を含まずに構成されてもよい。
【0128】
例えば、プロセッサ1001は1つだけ図示されているが、複数のプロセッサがあってもよい。また、処理は、1のプロセッサで実行されてもよいし、処理が同時に、逐次に、又はその他の手法で、1以上のプロセッサで実行されてもよい。
【0129】
車両管制サーバ3、バス5、管制用端末6などにおける各機能は、プロセッサ1001、メモリ1002などのハードウェア上に所定のソフトウェア(プログラム)を読み込ませることで、プロセッサ1001が演算を行い、通信装置1004による通信や、メモリ1002及びストレージ1003におけるデータの読み出し及び/又は書き込みを制御することで実現される。
【0130】
プロセッサ1001は、例えば、オペレーティングシステムを動作させてコンピュータ全体を制御する。プロセッサ1001は、周辺装置とのインターフェース、制御装置、演算装置、レジスタなどを含む中央処理装置(CPU:Central Processing Unit)で構成されてもよい。プロセッサ1001は、1以上のチップで実装されてもよい。
【0131】
また、プロセッサ1001は、プログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールやデータを、ストレージ1003及び/又は通信装置1004からメモリ1002に読み出し、これらに従って各種の処理を実行する。プログラムとしては、上述の実施の形態で説明した動作の少なくとも一部をコンピュータに実行させるプログラムが用いられる。
【0132】
メモリ1002は、記憶部53(図2参照)の一例であり、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、ROM(Read Only Memory)、EPROM(Erasable Programmable ROM)、EEPROM(Electrically EPROM)、RAM(Random Access Memory)、その他の適切な記憶媒体の少なくとも1つで構成されてもよい。メモリ1002は、レジスタ、キャッシュ、メインメモリ(主記憶装置)などと呼ばれてもよい。メモリ1002は、本発明に係る乗車予約利用者支援装置を実現するために実行可能なプログラム(プログラムコード)、ソフトウェアモジュールなどを保存することができる。
【0133】
ストレージ1003は、記憶部53(図2参照)の一例であり、コンピュータ読み取り可能な記録媒体であり、例えば、フレキシブルディスク、フロッピー(登録商標)ディスク、光磁気ディスク(例えば、コンパクトディスク(CD-ROM(Compact Disc ROM)など)、デジタル多用途ディスク、Blu-ray(登録商標)ディスク)、リムーバブルディスク、ハードディスクドライブ、スマートカード、フラッシュメモリデバイス(例えば、カード、スティック、キードライブ)、磁気ストライプ、データベース、サーバ、その他の適切な記憶媒体の少なくとも1つで構成されてもよい。ストレージ1003は、補助記憶装置と呼ばれてもよい。
【0134】
通信装置1004は、通信部22、52(図2、4参照)の一例であり、有線及び/又は無線ネットワークを介してコンピュータ間の通信を行うためのハードウェア(送受信デバイス)であり、例えばネットワークデバイス、ネットワークコントローラ、ネットワークカード、通信モジュールなどともいう。
【0135】
入力装置1005は、入力部24、59(図2、4参照)の一例であり、外部からの入力を受け付ける入力デバイス(例えば、キーボード、マウスなど)である。出力装置1006は、出力部23、61(図2、4参照)の一例であり、外部への出力を実施する出力デバイス(例えば、ディスプレイ、スピーカーなど)である。なお、入力装置1005及び出力装置1006は、一体となった構成(例えば、タッチパネル)であってもよい。
【0136】
また、プロセッサ1001やメモリ1002などの各装置は、情報を通信するための内部バス1008で接続される。
【0137】
また、車両管制サーバ3、バス5及び管制用端末6などは、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP:Digital Signal Processor)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、PLD(Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)などのハードウェアを含んで構成されてもよく、当該ハードウェアにより、各機能ブロックの一部又は全てが実現されてもよい。例えば、プロセッサ1001は、これらのハードウェアの少なくとも1つで実装されてもよい。
【0138】
また、第1の実施の形態において、クラウド2(図1参照)と管制用端末6との間の通信に用いられるネットワークは、インターネット、モバイルネットワーク、LAN(Local Area Network)、WAN(Wide Area Network)などの様々なネットワークを含む。なお、ネットワークは、無線、有線又はこれらの組み合わせで構成されてもよい。例えば、無線通信方式としては、Bluetooth(登録商標)、無線LAN(例えば、IEEE802.11規格に準拠)、LTE(Long Term Evolution)、又はその他の無線通信方式を利用することができる。
【0139】
また、移動体通信網4(図1参照)は、例えば、LTE又はその他の無線通信方式を利用することができる。
【0140】
<第2の実施の形態>
次に、第2の実施の形態について、図8図10を参照し、第1の実施の形態との相違を中心に説明する。以下の説明において、第1の実施の形態と同様の構成については、同一の符号を用い、説明を省略する。
【0141】
図8は、第2の実施の形態に係るバス5における車両停止制御に関わる要部を示す機能ブロック図である。第2の実施の形態は、バス5の一時停止に関する各種情報を収集し、管制用端末6へ提供している点で、第1の実施の形態と異なる。
【0142】
図8に示すように、バス5(図1参照)の自動運転制御部501及び停止条件判定部101から各種情報を収集するように情報提供部601が設けられている。情報提供部601は、収集した各種情報を、通信制御部507に、通信部52を制御させ、移動体通信網4を用いて、車両管制サーバ3に送信するように構成されている。
【0143】
情報提供部601は、停止条件判定部101から、本発明の停止理由情報の一例として、成立した異常停止条件A~Fのいずれか一つを収集するように構成されている。
【0144】
また、情報提供部601は、障害物情報の一例として、前方カメラ607からバス5の前方画像を収集するように構成されている。なお、前方カメラ607が撮影した前方画像の他に、他の車外カメラ(不図示)で撮影したバス5の周辺の画像を収集してもよい。
【0145】
また、情報提供部601は、車両挙動情報の例として、エアバック603の展開の有無、制動部55のABS604及びESP605の作動の有無、及び、加速度センサ606が検知した最大減加速度(最大G)を収集するように構成されている。
【0146】
また、情報提供部601は、車内カメラ602からバス5の車内画像を収集するように構成されている。
【0147】
さらに、第2の実施の形態では、通話制御部107は、車内カメラ602及び表示部を用いたビデオ通話を、管制用端末6と行うことができるように構成されている。
【0148】
また、バス5は、遠隔操作制御部608を備えている。遠隔操作制御部608は、管制用端末6からの遠隔操作命令を受け付け、自動運転制御部501に、遠隔操作命令に応じた制御を行わせるように構成されている。
【0149】
図9は、第2の実施の形態に係る管制用端末6を示す機能ブロック図である。第2の実施の形態では、管制用端末6が、情報出力制御部611及び遠隔命令制御部612を備えている点で、第1の実施の形態と相違する。
【0150】
情報出力制御部611は、バス5の情報提供部601から送信された各種情報を、例えば、表示部に表示するように構成されている。
【0151】
また、遠隔命令制御部612は、操作受付部202で受け付けた管制担当者からの操作に従い、遠隔操作命令を生成し、通信部22を用いて、ネットワーク及び移動体通信網4を介して、バス5に送信するように構成されている。
【0152】
また、通話制御部204は、入力部24の一例であるフロントカメラ及び表示部を用いたビデオ通話を、バス5と行うことができるように構成されている。
【0153】
上記構成からなる第2の実施の形態に係る乗り合いバス管制システム1において、バス5から管制用端末6に対し、車両管制サーバ3を介して、異常停止情報の送信が適切なタイミングで行われる。図12は、第2の実施の形態に係る乗り合いバス管制システム1におけるデータのやり取りを示すシーケンス図である。図12に示すように、まず、バス5において、停止条件判定部101が、異常停止条件A~Fのいずれかが成立したか否かを判定する(S501)。この例では、異常停止条件Aが成立したと仮定する。異常停止条件Aが成立したならば、報知制御部106が自動報知0を実施する(S502)。
【0154】
次いで、情報提供部601(図1参照)が、停止理由情報(異常停止条件Aの成立)を含む異常停止情報を、第1報(速報)として、車両管制サーバ3へ送信する(S503)。第1報は、停止理由情報を含んでいればよく、例えば、テキスト情報であっても済むので、データ量を小さくし、通信トラブルが起こりにくいという利点がある。
【0155】
車両管制サーバ3は、第1報を記憶部に記録する(S504)。その後、車両管制サーバ3は、第1報を管制用端末6に送信する(S505)。管制用端末6では、情報出力制御部611が、第1報に含まれる停止理由情報を表示部に表示させる(S506)。
【0156】
その後、バス5において、停止条件判定部101が、自動運転制御部501が制動を開始したか否かを判定する(S507)。この判定は、図6に示すS22に相当する。制動が開始されたならば、情報提供部601は、前方画像および車内画像を含む異常停止情報を、第2報として、車両管制サーバ3へ送信する(S508)。車両管制サーバ3は、第2報を記憶部に記録する(S509)。その後、車両管制サーバ3は、第2報を管制用端末6に送信する(S510)。管制用端末6では、情報出力制御部611が、第2報に含まれる前方画像及び車内画像を表示部に表示させる(S511)。このとき、前方画像及び車内画像は、データの送信を短時間で行う観点から、静止画であることが好ましい。静止画であれば、前方画像及び車内画像を同時に送信できる。管制担当者は、表示された前方画像及び車内画像に基づいて、通話のために通信接続を指示するか否か判断する。
【0157】
管制用端末6では、操作受付部202(図4参照)により接続要求指示を受け付ける(S512)。具体的には、操作受付部202は、例えば、表示部及び入力部24の一例であるタッチパネルディスプレイに表示された通信接続ボタンに対する管制担当者によるタッチ操作を受け付ける。次に、通信制御部203は、車両管制サーバ3に対し、バス5との通信接続の要求を行う(S513)。
【0158】
一方、バス5において、停止条件判定部101(図3参照)は、バス5が停止したか否かを判定する(S514)。この判定は、図6に示すS24に相当する。車両が停止したならば、情報提供部601は、バス5が停止したときのバス5の挙動に関する車両挙動情報を、第3報として、車両管制サーバ3へ送信する(S515)。車両挙動情報は、例えば、エアバック603の展開の有無、制動部55のABS604及びESP605の作動の有無、及び、加速度センサ606が検知した最大減加速度を含む。車両管制サーバ3は、第3報を記憶部に記録する(S516)。その後、車両管制サーバ3は、第3報を管制用端末6に送信する(S517)。管制用端末6では、情報出力制御部611が、第3報に含まれる車両挙動情報を表示部に表示させる(S518)。
【0159】
一方、車両管制サーバ3は、車両挙動情報に基づいて、バス5と管制用端末6との通信接続を行うか否か判定する(S519)。より具体的には、車両挙動情報の一つである最大減加速度が閾値を超えていた場合、通信接続を行うと判定する。また、車両挙動情報の他に、バス5が停止した後の車内画像を情報提供部601により車両管制サーバ3に送信させ、車両管制サーバ3が備えている画像解析処理部(不図示)により、車内画像から乗客の状態を確認し、通信接続の可否を判断することもできる。ここでの判定の結果、通信接続を行わないと判定されたときは、以下で説明する音声通話及びビデオ通話は行われない。
【0160】
車両管制サーバ3は、S519で通信接続を行うと判定した場合、バス5と管制用端末6との通信が接続され、音声通話が行われる(S520)。次いで、情報提供部601(図9参照)は、車内カメラ602が撮影した車内動画像及び前方画像を、第4報として、車両管制サーバ3へ送信する(S521)。車両管制サーバ3は、第4報を記憶部に記録する(S522)。その後、車両管制サーバ3は、第4報を管制用端末6に送信する(S523)。管制用端末6では、情報出力制御部611が、第4報に含まれる車内動画像及び前方画像を表示部に表示させる(S524)。ここで、車内動画像はデータ量が大きいため、前方画像よりも優先して送信されることが好ましい。
【0161】
その後、バス5と管制用端末6との間で、ビデオ通話(S525)、及び、遠隔操作(S526)が行われる。
【0162】
以上説明したように、第2の実施の形態によれば、第1の実施の形態と同様の効果を奏する他に、以下のような効果を奏する。
【0163】
まず、バス5が障害物への衝突を回避するために緊急停止処理を行う場合、バス5に大きな減加速度(減速G)が要求される可能性があり、通信接続を行い、乗客に対して適切な対応を行えないことが懸念される。第2の実施の形態では、バス5が停止した後で、通信接続を行い、音声通話(S520)及びビデオ通話(S525)を行うようにし、乗客の安全を確保し、かつ、管制担当者の労力を低減している。また、第1報(S503)及び第2報(S508)により、適切なタイミングで適切な情報が管制担当者に提供されるので、早期にバス5での状況を把握し、バス5が停止し、音声通話(S520)及びビデオ通話(S525)が可能になったときに、迅速かつ適切な乗客への対応を行うことができる。
【0164】
また、S508において、制動開始後に、第2報としてバス5の前方画像及び車内画像を管制用端末6に送信するので、管制担当者がバス5及び乗客の状況を早期に把握できるので、音声通話(S520)及びビデオ通話(S525)をバス5が停止した後に行うようにしても、乗客への適切な対応が可能になる。
【0165】
また、S515において、バス5が停止した後、第3報としてバス5を制動したときの車両挙動情報を、管制用端末6に送信するので、管制担当者がより適切に乗客に対応することや、遠隔操作(遠隔手動運転等)により適切な対処を遠隔で行うことができる。
【0166】
また、S512において、管制担当者から、音声通話、ビデオ通話及び遠隔操作のために、バス5と管制用端末6との間の通信接続を行うことを示す接続要求指示を受け付け、S513において、管制用端末6から車両管制サーバ3に通信接続の要求が行われる。これにより、不必要な通信接続を防ぎ、管制担当者の監視業務の向上を図ることができる。
【0167】
また、第1報(S503)、第2報(S508)、第3報(S515)及び第4報(S521)に含まれる各種情報を、車両管制サーバ3の記憶部に記憶している。これにより、バス5での異常の発生、要因、緊急制動による影響、バス5の前方及び車内の状況を、イベントレーコーダとして記録できる。
【0168】
また、本実施の形態及び変形例を説明したが、本発明の他の実施の形態として、上記実施の形態及び変形例を全体的又は部分的に組み合わせたものでもよい。
【0169】
また、本発明の実施の形態は上記の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の趣旨を逸脱しない範囲において様々に変更、置換、変形されてもよい。更には、技術の進歩又は派生する別技術によって、本発明の技術的思想を別の仕方で実現することができれば、その方法を用いて実施されてもよい。従って、特許請求の範囲は、本発明の技術的思想の範囲内に含まれ得る全ての実施の形態をカバーしている。
【0170】
例えば、上記実施の形態においては、車載センサである前方センサ102により障害物を検知しているが、障害物をバス5の外部から検出してもよい。例えば、路側に設置された道路監視センサにより障害物を検知してもよい。
【0171】
また、交通情報には、道路管理センター又は車両管制センターに他の車両から集められた、過去の道路情報、天気予報の雨量情報及び冠水情報を用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0172】
以上説明したように、本発明は、乗客の不安の解消及び管制担当者の監視業務の効率化を両立できるという効果を有し、特に、自動運転乗り合いバスに有用である。
【符号の説明】
【0173】
1 乗り合いバス管制システム
2 クラウド
3 車両管制サーバ
4 移動体通信網
5 バス
6 管制用端末
7 GNSS衛星
8 VICS発信装置
21、51 演算部
22、52 通信部
23、61 出力部
24、59 入力部
53 記憶部
54 駆動部
55 制動部
56 操舵部
57 センサ
58 GNSS受信部
62 VICS受信部
101 停止条件判定部
102 前方センサ
103 運行管理部
104 乗客監視部
105 シートベルト装着センサ
106 報知制御部
107 通話制御部
201 表示制御部
202 通信制御部
203 通話制御部
204 操作受付部
501 自動運転制御部
502 異常診断部
503 現在位置取得部
504 駆動制御部
505 制動制御部
506 操舵制御部
507 通信制御部
508 交通情報取得部
509 操作受付部
601 情報提供部
602 車内カメラ
603 エアバック
604 ABS
605 ESP
606 加速度センサ
607 前方カメラ
608 遠隔操作制御部
609 操作受付部
611 情報出力制御部
612 遠隔命令制御部
1000 コンピュータ装置
1001 プロセッサ
1002 メモリ
1003 ストレージ
1004 通信装置
1005 入力装置
1006 出力装置
1007 センサ
1008 内部バス
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10