IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 大日本印刷株式会社の特許一覧

特開2023-168380金属端子用接着性フィルム及びその製造方法、金属端子用接着性フィルム付き金属端子、当該金属端子用接着性フィルムを用いた蓄電デバイス、金属端子用接着性フィルムと蓄電デバイス用外装材を含むキット、並びに蓄電デバイスの製造方法
<>
  • 特開-金属端子用接着性フィルム及びその製造方法、金属端子用接着性フィルム付き金属端子、当該金属端子用接着性フィルムを用いた蓄電デバイス、金属端子用接着性フィルムと蓄電デバイス用外装材を含むキット、並びに蓄電デバイスの製造方法 図1
  • 特開-金属端子用接着性フィルム及びその製造方法、金属端子用接着性フィルム付き金属端子、当該金属端子用接着性フィルムを用いた蓄電デバイス、金属端子用接着性フィルムと蓄電デバイス用外装材を含むキット、並びに蓄電デバイスの製造方法 図2
  • 特開-金属端子用接着性フィルム及びその製造方法、金属端子用接着性フィルム付き金属端子、当該金属端子用接着性フィルムを用いた蓄電デバイス、金属端子用接着性フィルムと蓄電デバイス用外装材を含むキット、並びに蓄電デバイスの製造方法 図3
  • 特開-金属端子用接着性フィルム及びその製造方法、金属端子用接着性フィルム付き金属端子、当該金属端子用接着性フィルムを用いた蓄電デバイス、金属端子用接着性フィルムと蓄電デバイス用外装材を含むキット、並びに蓄電デバイスの製造方法 図4
  • 特開-金属端子用接着性フィルム及びその製造方法、金属端子用接着性フィルム付き金属端子、当該金属端子用接着性フィルムを用いた蓄電デバイス、金属端子用接着性フィルムと蓄電デバイス用外装材を含むキット、並びに蓄電デバイスの製造方法 図5
  • 特開-金属端子用接着性フィルム及びその製造方法、金属端子用接着性フィルム付き金属端子、当該金属端子用接着性フィルムを用いた蓄電デバイス、金属端子用接着性フィルムと蓄電デバイス用外装材を含むキット、並びに蓄電デバイスの製造方法 図6
  • 特開-金属端子用接着性フィルム及びその製造方法、金属端子用接着性フィルム付き金属端子、当該金属端子用接着性フィルムを用いた蓄電デバイス、金属端子用接着性フィルムと蓄電デバイス用外装材を含むキット、並びに蓄電デバイスの製造方法 図7
  • 特開-金属端子用接着性フィルム及びその製造方法、金属端子用接着性フィルム付き金属端子、当該金属端子用接着性フィルムを用いた蓄電デバイス、金属端子用接着性フィルムと蓄電デバイス用外装材を含むキット、並びに蓄電デバイスの製造方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168380
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】金属端子用接着性フィルム及びその製造方法、金属端子用接着性フィルム付き金属端子、当該金属端子用接着性フィルムを用いた蓄電デバイス、金属端子用接着性フィルムと蓄電デバイス用外装材を含むキット、並びに蓄電デバイスの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/193 20210101AFI20231116BHJP
   H01M 50/186 20210101ALI20231116BHJP
   H01M 50/197 20210101ALI20231116BHJP
   H01M 50/178 20210101ALI20231116BHJP
   H01G 11/80 20130101ALI20231116BHJP
【FI】
H01M50/193
H01M50/186
H01M50/197
H01M50/178
H01G11/80
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023151876
(22)【出願日】2023-09-20
(62)【分割の表示】P 2023539230の分割
【原出願日】2023-01-19
(31)【優先権主張番号】P 2022006723
(32)【優先日】2022-01-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124431
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 順也
(74)【代理人】
【識別番号】100174160
【弁理士】
【氏名又は名称】水谷 馨也
(72)【発明者】
【氏名】望月 洋一
(72)【発明者】
【氏名】田中 潤
(57)【要約】
【課題】高温環境での金属端子に対する高いシール性と、優れた水蒸気バリア性とを兼ね備えた、金属端子用接着性フィルムを提供する。
【解決手段】蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、前記蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在される、金属端子用接着性フィルムであって、
前記金属端子用接着性フィルムの少なくとも一方側の表面は、ホモポリブチレンテレフタレートフィルムからなる、ホモポリブチレンテレフタレート層により形成されている、金属端子用接着性フィルム。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、前記蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在される、金属端子用接着性フィルムであって、
前記金属端子用接着性フィルムの少なくとも一方側の表面は、ホモポリブチレンテレフタレートフィルムからなる、ホモポリブチレンテレフタレート層により形成されている、金属端子用接着性フィルム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、金属端子用接着性フィルム及びその製造方法、金属端子用接着性フィルム付き金属端子、金属端子用接着性フィルムを用いた蓄電デバイス、金属端子用接着性フィルムと蓄電デバイス用外装材を含むキット、並びに蓄電デバイスの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、様々なタイプの蓄電デバイスが開発されているが、あらゆる蓄電デバイスにおいて電極や電解質等の蓄電デバイス素子を封止するために蓄電デバイス用外装材が不可欠な部材になっている。従来、蓄電デバイス用外装材として金属製の蓄電デバイス用外装材が多用されていたが、近年、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、パソコン、カメラ、携帯電話等の高性能化に伴い、蓄電デバイスには、多様な形状が要求されると共に、薄型化や軽量化が求められている。しかしながら、従来多用されていた金属製の蓄電デバイス用外装材では、形状の多様化に追従することが困難であり、しかも軽量化にも限界があるという欠点がある。
【0003】
そこで、近年、多様な形状に加工が容易で、薄型化や軽量化を実現し得る蓄電デバイス用外装材として、基材層/接着層/バリア層/熱融着性樹脂層が順次積層された積層シートが提案されている。このようなフィルム状の蓄電デバイス用外装材を用いる場合、蓄電デバイス用外装材の最内層に位置する熱融着性樹脂層同士を対向させた状態で、蓄電デバイス用外装材の周縁部をヒートシールにて熱融着させることにより、蓄電デバイス用外装材によって蓄電デバイス素子が封止される。
【0004】
蓄電デバイス用外装材のヒートシール部分からは、金属端子が突出しており、蓄電デバイス用外装材によって封止された蓄電デバイス素子は、蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子によって外部と電気的に接続される。すなわち、蓄電デバイス用外装材がヒートシールされた部分のうち、金属端子が存在する部分は、金属端子が熱融着性樹脂層に挟持された状態でヒートシールされている。金属端子と熱融着性樹脂層とは、互いに異種材料により構成されているため、金属端子と熱融着性樹脂層との界面において、密着性が低下しやすい。
【0005】
このため、金属端子と熱融着性樹脂層との間には、これらの密着性を高めることなどを目的として、接着性フィルムが配されることがある。このような接着性フィルムとしては、例えば特許文献1に記載されたものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2015-79638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
金属端子と熱融着性樹脂層との間に配される接着性フィルムは、蓄電デバイス用外装材と金属端子との間において、高温・高圧でヒートシールされる。
【0008】
また、接着性フィルムが使用される蓄電デバイスとしては、リチウムイオン電池などの電解液を含むものが一般的であるが、電解質が固体電解質である全固体電池も知られている。全固体電池は、電解質が固体であるため、電解液を使用した蓄電デバイスと比較して、高温での高速充電が可能であり、リチウムイオン電池などと比較して、より高温環境での使用が想定されている。
【0009】
全固体電池は、固体電解質のイオン伝導度を高めることなどを目的として、その製造過程において、セルに金属端子が取り付けられた状態で高温高圧(例えば温度120℃から150℃、圧力100MPa程度)でプレスされることがあるため、金属端子部が高温に達する虞がある。また、急速充放電時には抵抗発熱により金属端子の温度が150℃程度にまで到達することがある。したがって、前述した接着性フィルムを全固体電池に適用する場合には、高温環境での金属端子に対する高いシール性が特に要求される。
【0010】
また、蓄電デバイスの外部から内部に水分が浸入すると、蓄電デバイスの性能が劣化することから、金属端子と熱融着性樹脂層との間に配される接着性フィルムには、高い水蒸気バリア性も要求される。
【0011】
このような状況下、本開示は、高温環境での金属端子に対する高いシール性と、優れた水蒸気バリア性とを兼ね備えた、金属端子用接着性フィルムを提供することを主な目的とする。さらに、本開示は、当該金属端子用接着性フィルムを利用した金属端子用接着性フィルム付き金属端子、当該金属端子用接着性フィルムを用いた蓄電デバイス及び当該蓄電デバイスの製造方法を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本開示の発明者等は、上記の課題を解決すべく鋭意検討を行った。その結果、金属端子用接着性フィルムに、ホモポリブチレンテレフタレートを用いると、高温環境での金属端子に対する高いシール性と、優れた水蒸気バリア性とが発揮されることを見出した。本開示は、かかる知見に基づいて更に検討を重ねることにより完成したものである。
【0013】
即ち、本開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、前記蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在される、金属端子用接着性フィルムであって、
前記金属端子用接着性フィルムの少なくとも一方側の表面は、ホモポリブチレンテレフタレートフィルムからなる、ホモポリブチレンテレフタレート層により形成されている、金属端子用接着性フィルム。
【発明の効果】
【0014】
本開示によれば、高温環境での金属端子に対する高いシール性と、優れた水蒸気バリア性とを兼ね備えた、金属端子用接着性フィルムを提供することができる。さらに、本開示は、当該金属端子用接着性フィルムを利用した金属端子用接着性フィルム付き金属端子、当該金属端子用接着性フィルムを用いた蓄電デバイス及び当該蓄電デバイスの製造方法を提供することも目的とする。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本開示の蓄電デバイスの略図的平面図である。
図2図1の線A-A'における略図的断面図である。
図3図1の線B-B'における略図的断面図である。
図4】本開示の金属端子用接着性フィルムの略図的断面図である。
図5】本開示の金属端子用接着性フィルムの略図的断面図である。
図6】本開示の金属端子用接着性フィルムの略図的断面図である。
図7】本開示の金属端子用接着性フィルムの略図的断面図である。
図8】本開示の蓄電デバイス用外装材の略図的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本開示の金属端子用接着性フィルムは、蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、前記蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在される、金属端子用接着性フィルムであって、金属端子用接着性フィルムの少なくとも一方側の表面は、ホモポリブチレンテレフタレートフィルムからなる、ホモポリブチレンテレフタレート層により形成されていることを特徴とする。本開示の金属端子用接着性フィルムは、このような構成を備えていることにより、高温環境での金属端子に対する高いシール性と、優れた水蒸気バリア性とを兼ね備えている。
【0017】
また、本開示の蓄電デバイスは、少なくとも、正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子と、当該蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材と、前記正極及び前記負極のそれぞれに電気的に接続され、前記蓄電デバイス用外装材の外側に突出した金属端子とを備える蓄電デバイスであって、金属端子と蓄電デバイス用外装材との間に、本開示の金属端子用接着性フィルムが介在されてなることを特徴とする。以下、本開示の金属端子用接着性フィルム、金属端子用接着性フィルム付き金属端子、当該金属端子用接着性フィルムを用いた蓄電デバイス、及び蓄電デバイスの製造方法について詳述する。
【0018】
なお、本明細書において、数値範囲については、「~」で示される数値範囲は「以上」、「以下」を意味する。例えば、2~15mmとの表記は、2mm以上15mm以下を意味する。本開示に段階的に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、他の段階的な記載の数値範囲の上限値又は下限値に置き換えてもよい。また、別個に記載された、上限値と上限値、上限値と下限値、又は下限値と下限値を組み合わせて、それぞれ、数値範囲としてもよい。また、本開示に記載されている数値範囲において、ある数値範囲で記載された上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。
【0019】
また、金属端子用接着性フィルムのMDの確認方法として、XRD、ラマン分光法、偏向IRなどを採用することができる。また、例えば、200℃環境下に金属端子用接着性フィルムを2分間放置した後の熱収縮率を測定し、収縮率がより大きい方をMDと判断することもできる。
【0020】
1.金属端子用接着性フィルム
本開示の金属端子用接着性フィルムは、蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在されるものである。具体的には、例えば図1から図3に示されるように、本開示の金属端子用接着性フィルム1は、蓄電デバイス素子4の電極に電気的に接続されている金属端子2と、蓄電デバイス素子4を封止する蓄電デバイス用外装材3との間に介在されている。また、金属端子2は、蓄電デバイス用外装材3の外側に突出しており、ヒートシールされた蓄電デバイス用外装材3の周縁部3aにおいて、金属端子用接着性フィルム1を介して、蓄電デバイス用外装材3に挟持されている。
【0021】
前述したように、例えば全固体電池の製造工程での加熱プレス工程や、急速充電時などに150℃程度の高温となることが想定され、耐用温度として150℃程度が求められる。このため、蓄電デバイス用外装材3には、融点が150℃以上の熱融着性樹脂層を使用する必要があり、蓄電デバイス用外装材同士からなる辺をヒートシールする際の加熱温度としては、通常160~250℃程度の範囲、圧力としては、通常0.5~2.0MPa程度の範囲で、平板状の金属製のシールバー(ヒートシールバー)を用いてシールする。金属端子用接着性フィルムを介して金属端子と蓄電デバイス用外装材とをヒートシールする辺については、同様に、通常160~250℃程度の範囲、圧力としては、通常0.5~2.0MPa程度の範囲で、必要に応じてシールヘッドの該当部分に金属端子や金属端子用接着性フィルムの厚みによる差分を調整する段差を設けた、段差付きの金属性のシールヘッドを用いてシールする。また、接着性フィルムはあらかじめ金属端子の所定の位置に接着しておくことが望ましく、例えば、熱溶着により接着する場合においては、金属端子への仮接着工程及び本接着工程というように、複数回の加熱及び加圧が行われることが一般的である。仮接着工程は、金属端子への金属端子用接着性フィルムへの仮止めや気泡抜きを行う工程であり、本接着工程は、仮接着工程よりも高温条件で1回又は複数回の加熱・加圧を行って金属端子用接着性フィルムを金属端子に接着させる工程である。金属端子用接着性フィルムの金属端子への仮接着工程は、例えば、温度160~230℃程度、圧力0.1~0.5MPa程度、時間10~20秒間程度、硬度20~50程度、厚さ2~5mm程度の耐熱ゴムで被覆した金属製のシールヘッドで1~2回程度の条件で行われ、本接着工程は、金属端子用接着性フィルムと金属端子と間の熱融着を目的とし、例えば、温度180~250℃程度、圧力0.2~1.0MPa程度、時間10~30秒間程度、硬度20~50程度、厚さ2~5mm程度の耐熱ゴムで被覆した金属製のシールヘッドで1~2回程度の条件で行われる。また、必要に応じて、シールヘッドの該当部分に金属端子や金属端子用接着性フィルムの厚みによる差分を調整する段差を設けることで、効率的に溶着することが可能である。なお、本開示の金属端子用接着性フィルムが適用される蓄電デバイスが、全固体電池である場合には、金属端子用接着性フィルムに対して特に高温・高圧が加えられることになる。ここに例示した金属端子用接着性フィルムの取付け方法は一例であって、特定方法に限定されるものではなく、例えば金属端子用接着性フィルムの厚み等によって加圧時間等を適宜調整する。
【0022】
本開示の金属端子用接着性フィルム1は、金属端子2と蓄電デバイス用外装材3との密着性を高めるために設けられている。金属端子2と蓄電デバイス用外装材3との密着性が高められることにより、蓄電デバイス素子4の密封性が向上する。上述のとおり、蓄電デバイス素子4をヒートシールする際には、蓄電デバイス素子4の電極に電気的に接続された金属端子2が蓄電デバイス用外装材3の外側に突出するようにして、蓄電デバイス素子が封止される。このとき、金属端子用接着性フィルム1と、蓄電デバイス用外装材3の最内層に位置する熱融着性樹脂層35は共に150℃程度の耐用性が求められるが、これらが異種材料により形成されている場合は、熱融着性樹脂層35との界面において、蓄電デバイス素子の密封性が低くなりやすい。
【0023】
本開示の金属端子用接着性フィルム1の少なくとも一方側の表面は、ホモポリブチレンテレフタレート層により形成されている。ホモポリブチレンテレフタレート層は、ホモポリブチレンテレフタレートフィルムからなる樹脂層(以下、ホモPBT層と表記することがある)である。すなわち、本開示の金属端子用接着性フィルム1は、少なくとも1層のホモPBT層を含み、かつ、金属端子用接着性フィルム1の表面のうち、少なくとも一方側の表面は、ホモPBT層により形成されている。本開示の効果を奏することを限度として、本開示の金属端子用接着性フィルム1は、図4に示すように単層であってもよいし、図5~7に示すように複層であってよい。
【0024】
本開示の金属端子用接着性フィルム1が単層である場合、金属端子用接着性フィルム1は、ホモPBT層により構成されており、金属端子側の表面と蓄電デバイス用外装材の表面は、当該ホモPBT層によって形成されている。この場合、金属端子用接着性フィルム1の蓄電デバイス用外装材側の表面を形成する樹脂と、金属端子側の表面を形成する樹脂とが、共通する樹脂(すなわち、ホモPBT層を構成する樹脂)である。なお、金属端子用接着性フィルム1の蓄電デバイス用外装材側の表面を形成する樹脂と、金属端子側の表面を形成する樹脂とが、共通するとは、これらの樹脂中の成分のうち、例えば、80質量%以上が同一であること、90質量%以上が同一であること、95質量%以上が同一であること、100質量%が同一であることなどを意味している。
【0025】
本開示の金属端子用接着性フィルム1が複層である場合、少なくとも1層が、ホモPBT層により構成されていればよい。例えば図5に示すように、本開示の金属端子用接着性フィルム1が2層構造である場合、金属端子用接着性フィルム1は、第1の樹脂層12aと第2の樹脂層12bの積層体であり、これらの層のうち、少なくとも一方が、ホモPBT層により構成されている。本開示の金属端子用接着性フィルム1が複層である場合にも、蓄電デバイス用外装材側の表面を形成する樹脂と、金属端子側の表面を形成する樹脂とが、共通する樹脂であることが好ましい。
【0026】
例えば図6に示すように、本開示の金属端子用接着性フィルム1が3層構造である場合、金属端子用接着性フィルム1は、第1の樹脂層12aと中間層11と第2の樹脂層12bとがこの順に積層された積層体であり、これらの層のうち、第1の樹脂層12aと第2の樹脂層12bの少なくとも一方が、ホモPBT層により構成されている。中間層11は、耐熱性に優れていることが好ましく、絶縁性が優先的に求められる場合においては、中間層11の融点は、好ましくは250℃以上であり、より好ましくは250~330℃である。
【0027】
本開示の金属端子用接着性フィルム1は、4層以上により構成されていてもよい。例えば、図7に示されるように、第1の樹脂層12aと中間層11との間、第2の樹脂層12bと中間層11との間には、それぞれ、接着促進剤層13が積層されていてもよい。
【0028】
なお、本開示においては、第1の樹脂層12aが金属端子側に配置され、第2の樹脂層12bが蓄電デバイス用外装材3側に配置されるものとする。本開示の金属端子用接着性フィルム1の金属端子側の表面は、金属(金属端子を構成する金属)に対する熱融着性を備えており、蓄電デバイス用外装材側の表面は、後述する熱融着性樹脂層に対する熱融着性を備えている。金属端子側の表面は、ホモPBT層により構成されていることが好ましい。また、蓄電デバイス用外装材側の表面が、ホモPBT層により構成されていることも好ましい。
【0029】
本開示の金属端子用接着性フィルム1に少なくとも1層含まれるホモPBT層は、例えば、融点が220~230℃である。なお、ホモPBT層の融点は、示差走査熱量計(DSC)で測定される吸熱ピークである。
【0030】
ホモPBT層は、ホモポリブチレンテレフタレートフィルムからなる樹脂層であり、ホモPBT層に含まれる樹脂は、実質的に(例えば99質量%以上、さらには100質量%以上が)ホモポリブチレンテレフタレートのみである。すなわち、ホモPBT層は、ホモポリブチレンテレフタレートとは異なる樹脂を実質的に含まない、ホモポリブチレンテレフタレートフィルムにより形成されている。例えば、ホモPBT層は、エラストマー及び共重合ポリブチレンテレフタレートを含まない、ホモポリブチレンテレフタレートフィルムからなる層である。
【0031】
また、ホモポリブチレンテレフタレートは、酸変性されていてもよいし、酸変性されていなくてもよい。ホモポリブチレンテレフタレートが酸変性ホモポリブチレンテレフタレートである場合、ホモポリブチレンテレフタレートの酸変性は、無水マレイン酸、アクリル酸などの酸成分で行うことができる。
【0032】
ホモPBT層の厚みは、本開示の効果を好適に発揮する観点から、好ましくは約20μm以上、より好ましくは約30μm以上、さらに好ましくは約50μm以上である。また、同様の観点から、当該厚みは、好ましくは約300μm以下、より好ましくは約200μm以下、好ましくは約100μm以下である。また、当該厚みの好ましい範囲は、20~300μm程度、20~200μm程度、20~100μm程度、30~300μm程度、30~200μm程度、30~100μm程度、50~300μm程度、50~200μm程度、50~100μm程度である。
【0033】
本開示の金属端子用接着性フィルム1は、ホモPBT層とは異なる、他の樹脂層を少なくとも1層含むことができる。ただし、本開示の金属端子用接着性フィルム1の高温環境での金属端子に対する高いシール性と、優れた水蒸気バリア性を担保する観点から、他の樹脂層は、融点が150℃以上であり、かつ、水蒸気透過係数が低いことが好ましい。他の樹脂層の融点は、好ましくは150~330℃程度、より好ましくは180~280℃程度である。他の樹脂層の融点は、示差走査熱量計(DSC)で測定される吸熱ピークである。
【0034】
なお、他の樹脂層が2層以上含まれる場合、それぞれの他の樹脂層の組成は同一であってもよいし、異なっていてもよい。ホモPBT層が2層以上含まれる場合も、それぞれのホモPBT層の組成は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0035】
他の樹脂層の厚みとしては、本開示の効果を好適に発揮する観点から、好ましくは約20μm以上、より好ましくは約50μm以上、更により好ましくは約80μm以上である。また、同様の観点から、当該厚みは、好ましくは約300μm以下、より好ましくは約200μm以下、更により好ましくは約100μm以下である。また、当該厚みの好ましい範囲は、20~300μm程度、20~200μm程度、20~100μm程度、50~300μm程度、50~200μm程度、50~100μm程度、80~300μm程度、80~200μm程度、80~100μm程度である。
【0036】
本開示の金属端子用接着性フィルム1が他の樹脂層を含む場合、金属端子用接着性フィルム1の積層構成としては、例えば、図5の第1の樹脂層12aがホモPBT層であり、第2の樹脂層12bが他の樹脂層である積層体;図5の第2の樹脂層12bがホモPBT層であり、第1の樹脂層12aが他の樹脂層である積層体;図6又は図7の第1の樹脂層12aがホモPBT層であり、中間層11及び第2の樹脂層12bが他の樹脂層である積層体;図6又は図7の第2の樹脂層12bがホモPBT層であり、中間層11及び第1の樹脂層12aが他の樹脂層である積層体;図6又は図7の第1の樹脂層12a及び第2の樹脂層12bがホモPBT層であり、中間層11が他の樹脂層である積層体;図6又は図7の第1の樹脂層12a及び中間層11がホモPBT層であり、第2の樹脂層12bが他の樹脂層である積層体;図6又は図7の第2の樹脂層12b及び中間層11がホモPBT層であり、第1の樹脂層12aが他の樹脂層である積層体などが挙げられる。
【0037】
他の樹脂層を構成する樹脂としては、本開示の金属端子用接着性フィルムの目的を阻害しないことを限度として、特に制限されず、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリエステル系樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フッ素樹脂、珪素樹脂、フェノール樹脂、ポリエーテルイミド、ポリイミド、ポリカーボネート及びこれらの混合物や共重合物等が挙げられ、耐熱性に優れることから、特に好ましくはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリイミドなどである。本開示の金属端子用接着性フィルム1が複層である場合、積層構成の具体例としては、ホモPBT層/フッ素樹脂層/ホモPBT層がこの順に積層された積層構成、ホモPBT層/ポリエチレンナフタレート層/ホモPBT層がこの順に積層された積層構成などが例示される。
【0038】
ホモPBT層及び他の樹脂層は、それぞれ、必要に応じて充填剤等の添加剤をさらに含んでいてもよい。充填剤を含むことにより、充填剤がスペーサー(Spacer)として機能するために、金属端子2と蓄電デバイス用外装材3のバリア層33との間の短絡を効果的に抑制することが可能となる。充填剤の粒径としては、0.1~35μm程度、好ましくは5.0~30μm程度、さらに好ましくは10~25μm程度の範囲が挙げられる。また、充填剤の含有量としては、ホモPBT層及び他の樹脂層を形成する樹脂成分100質量部に対して、それぞれ、5~30質量部程度、より好ましくは10~20質量部程度が挙げられる。
【0039】
充填剤としては、無機系、有機系のいずれも用いることができる。無機系充填剤としては、例えば、炭素(カーボン、グラファイト)、シリカ、酸化アルミニウム、チタン酸バリウム、酸化鉄、シリコンカーバイド、酸化ジルコニウム、珪酸ジルコニウム、酸化マグネシウム、酸化チタン、アルミ酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸カルシウム等が挙げられる。また、有機系充填剤としては、例えば、フッ素樹脂、フェノール樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物、ポリメタクリル酸メチル架橋物、ポリエチレン架橋物等が挙げられる。形状の安定性、剛性、内容物耐性の点から、酸化アルミニウム、シリカ、フッ素樹脂、アクリル樹脂、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物が好ましく、特にこの中でも球状の酸化アルミニウム、シリカがより好ましい。ホモPBT層及び他の樹脂層を形成する樹脂成分への充填剤の混合方法としては、予めバンバリーミキサー等で両者をメルトブレンドし、マスターバッチ化したものを所定の混合比にする方法、樹脂成分との直接混合方法などを採用することができる。
【0040】
また、ホモPBT層及び他の樹脂層は、それぞれ、必要に応じて顔料を含んでいてもよい。顔料としては、無機系の各種顔料を用いることができる。顔料の具体例としては、上記充填剤で例示した炭素(カーボン、グラファイト)が好ましく例示できる。炭素(カーボン、グラファイト)は、一般に蓄電デバイスの内部に使用されている材料であり、電解液に対する溶出の虞がない。また、着色効果が大きく接着性を阻害しない程度の添加量で充分な着色効果を得られると共に、熱で溶融することがなく、添加した樹脂の見かけの溶融粘度を高くすることができる。さらに、熱接着時(ヒートシール時)に加圧部が薄肉となることを防止して、蓄電デバイス用外装材と金属端子の間における優れた密封性を付与できる。
【0041】
ホモPBT層及び他の樹脂層に顔料を添加する場合、その添加量としては、たとえば、粒径が約0.03μmのカーボンブラックを使用した場合、ホモPBT層及び他の樹脂層を形成する樹脂成分100質量部に対して、それぞれ、0.05~0.3質量部程度、好ましくは0.1~0.2質量部程度が挙げられる。ホモPBT層又は他の樹脂層に顔料を添加することにより、金属端子用接着性フィルム1の有無をセンサーで検知可能なもの、または目視で検査可能なものとすることができる。
【0042】
接着促進剤層13は、中間層11と第1の樹脂層12a、及び中間層11と第2の樹脂層12bとを強固に接着することを目的として、必要に応じて設けられる層である(図7を参照)。接着促進剤層13は、中間層11と第1の樹脂層12a及び第2の樹脂層12bとの間の一方側のみに設けられていてもよいし、両側に設けられていてもよい。
【0043】
接着促進剤層13は、イソシアネート系、ポリエチレンイミン系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ポリブタジエン系等の公知の接着促進剤を用いて形成することができる。強固な密着強度を得る観点からは、これらの中でも、イソシアネート系の接着促進剤により形成されていることが好ましい。イソシアネート系の接着促進剤としては、トリイソシアネートモノマー、ポリメリックMDIから選ばれたイソシアネート成分からなるものが、ラミネート強度に優れ、かつ、高温下でのラミネート強度の低下が少ない。特に、トリイソシアネートモノマーであるトリフェニルメタン-4,4',4"-トリイソシアネートやポリメリックMDIであるポリメチレンポリフェニルポリイソシアネート(NCO含有率が約30%、粘度が200~700mPa・s)からなる接着促進剤によって形成することが特に好ましい。また、トリイソシアネートモノマーであるトリス(p-イソシアネートフェニル)チオホスフェートや、ポリエチレンイミン系を主剤とし、ポリカルボジイミドを架橋剤とした2液硬化型の接着促進剤により形成することも好ましい。
【0044】
接着促進剤層13は、バーコート法、ロールコート法、グラビアコート法等の公知の塗布法で塗布・乾燥することにより形成することができる。接着促進剤の塗布量としては、トリイソシアネートからなる接着促進剤の場合は、20~100mg/m2程度、好ましくは40~60mg/m2程度であり、ポリメリックMDIからなる接着促進剤の場合は、40~150mg/m2程度、好ましくは60~100mg/m2程度であり、ポリエチレンイミン系を主剤とし、ポリカルボジイミドを架橋剤とした2液硬化型の接着促進剤の場合は、5~50mg/m2程度、好ましくは10~30mg/m2程度である。なお、トリイソシアネートモノマーは、1分子中にイソシアネート基を3個持つモノマーであり、ポリメリックMDIは、MDIおよびMDIが重合したMDIオリゴマーの混合物であり、下記式で示されるものである。
【0045】
【化1】
【0046】
本開示の金属端子用接着性フィルム1の水蒸気透過係数は、65℃90%RHの保存条件において、好ましくは5.0g・mm/m2・day以下、より好ましくは3.0g・mm/m2・day以下、より好ましくは1.0g・mm/m2・day以下、さらに好ましくは0.5g・mm/m2・day以下である。水蒸気透過係数の測定方法は以下の通りである。
【0047】
<水蒸気透過係数の測定(水蒸気バリア性の評価)>
100×100mmのアルミニウム箔(厚さ50μm)を2枚用意し、これを、アクリル樹脂、硝酸クロム(III)化合物、リン酸の3成分からなる処理剤で処理層が約100nmの厚さとなるように焼き付けたアルミニウム箔を作製する。100×100mmのサイズとした金属端子用接着性フィルムを2枚用意する。2枚のアルミニウム箔の間に、2枚の金属端子用接着性フィルムを挟み、3辺を3mm巾でヒートシールする。ヒートシールされていない1辺から、2枚の金属端子用接着性フィルムの間に0.3gのシリカゲル(粒径Φ2~5mm)を入れる。ヒートシールされていない1辺を3mm巾でヒートシールしてシリカゲルを密封し、65℃90%RHの条件で1カ月保存後、重量増加、および、シール部の金属端子用接着性フィルムの厚さ(シール後残存厚さ)より水蒸気透過係数を算出(g・mm/m2・day)する。
【0048】
本開示の金属端子用接着性フィルム1の総厚みとしては、本開示の効果を好適に発揮する観点から、好ましくは約50μm以上、より好ましくは約80μm以上、さらに好ましくは約100μm以上である。また、同様の観点から、当該厚みは、好ましくは約500μm以下、より好ましくは約300μm以下、さらに好ましくは約200μm以下である。また、当該厚みの好ましい範囲は、50~500μm程度、50~300μm程度、50~200μm程度、80~500μm程度、80~300μm程度、80~200μm程度、100~500μm程度、100~300μm程度、100~200μm程度である。
【0049】
本開示の金属端子用接着性フィルム1は、ホモPBT層を形成する樹脂(ホモポリブチレンテレフタレート)を用いて、押出ラミネート法、Tダイ法、インフレーション法、サーマルラミネート法などの公知の方法によりフィルム状に成形することができる。複層とする場合には共押出し型の押し出し機によって各層を積層してもよいし、中間層11と第1の樹脂層12a及び第2の樹脂層12bとを、接着促進剤層13を介して積層する場合には、例えば、接着促進剤層13を構成する接着促進剤を上記の方法で中間層11の上に塗布・乾燥し、接着促進剤層13の上から第1の樹脂層12a、第2の樹脂層12bをそれぞれ積層すればよい。
【0050】
金属端子用接着性フィルム1を金属端子2と蓄電デバイス用外装材3との間に介在させる方法としては、特に制限されず、例えば、図1~3に示すように、金属端子2が蓄電デバイス用外装材3によって挟持される部分において、金属端子2に金属端子用接着性フィルム1を配置してもよい。また、図示を省略するが、金属端子2が蓄電デバイス用外装材3によって挟持される部分において、金属端子用接着性フィルム1が2つの金属端子2を横断するようにして、金属端子2の両面側に配置してもよい。
【0051】
[金属端子2]
本開示の金属端子用接着性フィルム1は、金属端子2と蓄電デバイス用外装材3との間に介在させて使用される。金属端子2(タブ)は、蓄電デバイス素子4の電極(正極または負極)に電気的に接続される導電部材であり、金属材料により構成されている。金属端子2を構成する金属材料としては、特に制限されず、例えば、アルミニウム、ニッケル、銅などが挙げられる。例えば、リチウムイオン蓄電デバイスの正極に接続される金属端子2は、通常、アルミニウムなどにより構成されている。また、リチウムイオン蓄電デバイスの負極に接続される金属端子2は、通常、銅、ニッケルなどにより構成されており、低抵抗と表面劣化防止の観点からはニッケルメッキを施した銅や、ニッケルと銅のクラッド材などにより構成される。
【0052】
金属端子2の表面は、耐電解液性を高める観点から、化成処理が施されていることが好ましい。例えば、金属端子2がアルミニウムにより形成されている場合、化成処理の具体例としては、リン酸塩、クロム酸塩、フッ化物、トリアジンチオール化合物、アクリル酸塩などの耐食性皮膜を形成する公知の方法が挙げられる。耐食性皮膜を形成する方法の中でも、フェノール樹脂、フッ化クロム(III)化合物、リン酸の3成分から構成されたものや、アクリル樹脂、硝酸クロム(III)化合物、リン酸の3成分から構成されたものなどを用いるリン酸クロメート処理が好適である。
【0053】
金属端子2の大きさは、使用される蓄電デバイスの大きさなどに応じて適宜設定すればよい。金属端子2の厚さとしては、好ましくは50~1000μm程度、より好ましくは70~800μm程度が挙げられる。また、金属端子2の長さとしては、好ましくは1~200mm程度、より好ましくは3~150mm程度が挙げられる。また、金属端子2の幅としては、好ましくは1~200mm程度、より好ましくは3~150mm程度が挙げられる。
【0054】
[蓄電デバイス用外装材3]
蓄電デバイス用外装材3としては、少なくとも、基材層31、バリア層33、及び熱融着性樹脂層35をこの順に有する積層体からなる積層構造を有するものが挙げられる。図8に、蓄電デバイス用外装材3の断面構造の一例として、基材層31、必要に応じて設けられる接着剤層32、バリア層33、必要に応じて設けられる接着層34、及び熱融着性樹脂層35がこの順に積層されている態様について示す。蓄電デバイス用外装材3においては、基材層31が外層側になり、熱融着性樹脂層35が最内層になる。蓄電デバイスの組み立て時に、蓄電デバイス素子4の周縁に位置する熱融着性樹脂層35同士を接面させて熱融着することにより蓄電デバイス素子4が密封され、蓄電デバイス素子4が封止される。なお、図1から図3には、エンボス成形などによって成形されたエンボスタイプの蓄電デバイス用外装材3を用いた場合の蓄電デバイス10を図示しているが、蓄電デバイス用外装材3は成形されていないパウチタイプであってもよい。なお、パウチタイプには、三方シール、四方シール、ピロータイプなどが存在するが、何れのタイプであってもよい。
【0055】
蓄電デバイス用外装材3を構成する積層体の厚みとしては、特に制限されないが、上限については、コスト削減、エネルギー密度向上等の観点からは、好ましくは約180μm以下、約160μm以下、約155μm以下、約140μm以下、約130μm以下、約120μm以下が挙げられ、下限については、蓄電デバイス素子4を保護するという蓄電デバイス用外装材3の機能を維持する観点からは、好ましくは約35μm以上、約45μm以上、約60μm以上、約80μm以上が挙げられ、好ましい範囲については、例えば、35~180μm程度、35~160μm程度、35~155μm程度、35~140μm程度、35~130μm程度、35~120μm程度、45~180μm程度、45~160μm程度、45~155μm程度、45~140μm程度、45~130μm程度、45~120μm程度、60~180μm程度、60~160μm程度、60~155μm程度、60~140μm程度、60~130μm程度、60~120μm程度、80~180μm程度、80~160μm程度、80~155μm程度、80~140μm程度、80~130μm程度、80~120μm程度が挙げられる。
【0056】
また、本開示の金属端子用接着性フィルム1は、全固体電池用外装材に対して好適に適用することができ、全固体電池用外装材を構成する積層体の厚みとしては、特に制限されないが、コスト削減、エネルギー密度向上等の観点からは、好ましくは約10000μm以下、約8000μm以下、約5000μm以下が挙げられ、電池素子を保護するという全固体電池用外装材の機能を維持する観点からは、好ましくは約100μm以上、約150μm以上、約200μm以上が挙げられ、好ましい範囲については、例えば、100~10000μm程度、100~8000μm程度、100~5000μm程度、150~10000μm程度、150~8000μm程度、150~5000μm程度、200~10000μm程度、200~8000μm程度、200~5000μm程度が挙げられ、特に100~500μm程度が好ましい。
【0057】
(基材層31)
蓄電デバイス用外装材3において、基材層31は、蓄電デバイス用外装材の基材として機能する層であり、最外層側を形成する層である。
【0058】
基材層31を形成する素材については、絶縁性を備えるものであることを限度として特に制限されるものではない。基材層31を形成する素材としては、例えば、ポリエステル、ポリアミド、エポキシ、アクリル、フッ素樹脂、ポリウレタン、珪素樹脂、フェノール、ポリエーテルイミド、ポリイミド、及びこれらの混合物や共重合物等が挙げられる。ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルは、耐電解液性に優れ、電解液の付着に対して白化等が発生し難いという利点があり、基材層31の形成素材として好適に使用される。また、ポリアミドフィルムは延伸性に優れており、成形時の基材層31の樹脂割れによる白化の発生を防ぐことができ、基材層31の形成素材として好適に使用される。
【0059】
基材層31は、1軸又は2軸延伸された樹脂フィルムで形成されていてもよく、また未延伸の樹脂フィルムで形成してもよい。中でも、1軸又は2軸延伸された樹脂フィルム、とりわけ2軸延伸された樹脂フィルムは、配向結晶化することにより耐熱性が向上しているので、基材層31として好適に使用される。
【0060】
これらの中でも、基材層31を形成する樹脂フィルムとして、好ましくはナイロン、ポリエステル、更に好ましくは2軸延伸ナイロン、2軸延伸ポリエステルが挙げられる。また、全固体電池は150℃以上の耐用温度にする為、200℃以上の高温でシールする場合が多く、2軸延伸ポリエステルが最も適している。
【0061】
基材層31は、耐ピンホール性及び蓄電デバイスの包装体とした時の絶縁性を向上させるために、異なる素材の樹脂フィルムを積層化することも可能である。具体的には、ポリエステルフィルムとナイロンフィルムとを積層させた多層構造や、2軸延伸ポリエステルと2軸延伸ナイロンとを積層させた多層構造等が挙げられる。基材層31を多層構造にする場合、各樹脂フィルムは接着剤を介して接着してもよく、また接着剤を介さず直接積層させてもよい。接着剤を介さず接着させる場合には、例えば、共押出し法、サンドラミネート法、サーマルラミネート法等の熱溶融状態で接着させる方法が挙げられる。上記、高温シールの為、少なくとも最外層は2軸延伸ポリエステルであることが望ましい。
【0062】
また、基材層31は、成形性を向上させるために低摩擦化させておいてもよい。基材層31を低摩擦化させる場合、その表面の摩擦係数については特に制限されないが、例えば1.0以下が挙げられる。基材層31を低摩擦化するには、例えば、マット処理、スリップ剤の薄膜層の形成、これらの組み合わせ等が挙げられる。
【0063】
基材層31の厚さについては、例えば、10~50μm程度、好ましくは15~30μm程度が挙げられる。
【0064】
(接着剤層32)
蓄電デバイス用外装材3において、接着剤層32は、基材層31に密着性を付与させるために、必要に応じて、基材層31上に配置される層である。即ち、接着剤層32は、基材層31とバリア層33の間に設けられる。
【0065】
接着剤層32は、基材層31とバリア層33とを接着可能である接着剤によって形成される。接着剤層32の形成に使用される接着剤は、2液硬化型接着剤であってもよく、また1液硬化型接着剤であってもよい。また、接着剤層32の形成に使用される接着剤の接着機構についても、特に制限されず、化学反応型、溶剤揮発型、熱溶融型、熱圧型等のいずれであってもよい。
【0066】
接着剤層32の形成に使用できる接着剤の樹脂成分としては、展延性、高湿度条件下における耐久性や黄変抑制作用、ヒートシール時の熱劣化抑制作用等が優れ、基材層31とバリア層33との間のラミネート強度の低下を抑えてデラミネーションの発生を効果的に抑制するという観点から、好ましくはポリウレタン系2液硬化型接着剤;ポリアミド、ポリエステル、又はこれらと変性ポリオレフィンとのブレンド樹脂が挙げられる。
【0067】
また、接着剤層32は異なる接着剤成分で多層化してもよい。接着剤層32を異なる接着剤成分で多層化する場合、基材層31とバリア層33とのラミネート強度を向上させるという観点から、基材層31側に配される接着剤成分として基材層31との接着性に優れる樹脂を選択し、バリア層33側に配される接着剤成分としてバリア層33との接着性に優れる接着剤成分を選択することが好ましい。接着剤層32は異なる接着剤成分で多層化する場合、具体的には、バリア層33側に配置される接着剤成分としては、好ましくは、酸変性ポリオレフィン、金属変性ポリオレフィン、ポリエステルと酸変性ポリオレフィンとの混合樹脂、共重合ポリエステルを含む樹脂等が挙げられる。
【0068】
接着剤層32の厚さについては、例えば、2~50μm程度、好ましくは3~25μm程度が挙げられる。
【0069】
(バリア層33)
蓄電デバイス用外装材において、バリア層33は、蓄電デバイス用外装材の強度向上の他、蓄電デバイス内部に水蒸気、酸素、光などが侵入することを防止する機能を有する層である。バリア層33は、金属層、すなわち、金属で形成されている層であることが好ましい。バリア層33を構成する金属としては、具体的には、アルミニウム、ステンレス、チタンなどが挙げられ、好ましくはアルミニウムが挙げられる。バリア層33は、例えば、金属箔や金属蒸着膜、無機酸化物蒸着膜、炭素含有無機酸化物蒸着膜、これらの蒸着膜を設けたフィルムなどにより形成することができ、金属箔により形成することが好ましく、アルミニウム箔により形成することがさらに好ましい。蓄電デバイス用外装材の製造時に、バリア層33にしわやピンホールが発生することを防止する観点からは、バリア層は、例えば、焼きなまし処理済みのアルミニウム(JIS H4160:1994 A8021H-O、JIS H4160:1994 A8079H-O、JIS H4000:2014 A8021P-O、JIS H4000:2014 A8079P-O)など軟質アルミニウム箔により形成することがより好ましい。
【0070】
バリア層33の厚さについては、蓄電デバイス用外装材を薄型化しつつ、成形によってもピンホールの発生し難いものとする観点から、好ましくは10~200μm程度、より好ましくは20~100μm、20~45μm程度、45~65μm程度、65~85μm程度が挙げられる。
【0071】
また、バリア層33は、接着の安定化、溶解や腐食の防止などのために、少なくとも一方の面、好ましくは両面が化成処理されていることが好ましい。ここで、化成処理とは、バリア層の表面に耐食性皮膜を形成する処理をいう。
【0072】
(接着層34)
蓄電デバイス用外装材3において、接着層34は、熱融着性樹脂層35を強固に接着させるために、バリア層33と熱融着性樹脂層35の間に、必要に応じて設けられる層である。
【0073】
接着層34は、バリア層33と熱融着性樹脂層35を接着可能である接着剤によって形成される。接着層の形成に使用される接着剤の組成については、特に制限されないが、例えば、ポリエステルポリオール化合物と脂環式イソシアネート化合物からなる接着剤が挙げられる。
【0074】
接着層34の厚さについては、例えば、1~40μm程度、好ましくは2~30μm程度が挙げられる。
【0075】
(熱融着性樹脂層35)
蓄電デバイス用外装材3において、熱融着性樹脂層35は、最内層に該当し、蓄電デバイスの組み立て時に熱融着性樹脂層同士が熱融着して蓄電デバイス素子を密封する層である。
【0076】
熱融着性樹脂層35に使用される樹脂成分については、熱融着可能であることを限度として特に制限されないが、例えば、蓄電デバイス用外装材においては、一般には、ポリオレフィン、環状ポリオレフィンが挙げられる。
【0077】
前記ポリオレフィンとしては、具体的には、低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン等のポリエチレン;ホモポリプロピレン、ポリプロピレンのブロックコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのブロックコポリマー)、ポリプロピレンのランダムコポリマー(例えば、プロピレンとエチレンのランダムコポリマー)等の結晶性又は非晶性のポリプロピレン;エチレン-ブテン-プロピレンのターポリマー等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくはポリエチレン及びポリプロピレンが挙げられる。
【0078】
前記環状ポリオレフィンは、オレフィンと環状モノマーとの共重合体であり、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーであるオレフィンとしては、例えば、エチレン、プロピレン、4-メチル-1-ペンテン、ブタジエン、イソプレン、等が挙げられる。また、前記環状ポリオレフィンの構成モノマーである環状モノマーとしては、例えば、ノルボルネン等の環状アルケン;具体的には、シクロペンタジエン、ジシクロペンタジエン、シクロヘキサジエン、ノルボルナジエン等の環状ジエン等が挙げられる。これらのポリオレフィンの中でも、好ましくは環状アルケン、さらに好ましくはノルボルネンが挙げられる。構成モノマーとしては、スチレンも挙げられる。
【0079】
これらの樹脂成分の中でも、好ましくは結晶性又は非晶性のポリオレフィン、環状ポリオレフィン、及びこれらのブレンドポリマー;さらに好ましくはポリエチレン、ポリプロピレン、エチレンとノルボルネンの共重合体、及びこれらの中の2種以上のブレンドポリマーが挙げられる。
【0080】
熱融着性樹脂層35は、1種の樹脂成分単独で形成してもよく、また2種以上の樹脂成分を組み合わせたブレンドポリマーにより形成してもよい。さらに、熱融着性樹脂層35は、1層のみで形成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂成分によって2層以上形成されていてもよい。
【0081】
また、熱融着性樹脂層35の厚さとしては、特に制限されないが、2~2000μm程度、好ましくは5~1000μm程度、さらに好ましくは10~500μm程度が挙げられる。
【0082】
また、本開示の金属端子用接着性フィルム1は、全固体電池用外装材に対して特に好適に適用することができ、全固体電池用外装材の熱融着性樹脂層35の融点は、好ましくは150~250℃であり、より好ましくは180~270℃、さらに好ましくは200~270℃、さらに好ましくは200~250℃である。
【0083】
また、全固体電池用外装材の熱融着性樹脂層35に含まれる樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンや、酸変性ポリプロピレン、酸変性ポリエチレンなどの酸変性ポリオレフィン、ポリブチレンテレフタレートなどが挙げられる。これらの中でも、ポリブチレンテレフタレートは耐熱性に優れているため、全固体電池用外装材において、熱融着性樹脂層35は、好ましくはポリブチレンテレフタレートフィルムにより形成されている。また、熱融着性樹脂層35がポリブチレンテレフタレートフィルムにより形成されることにより、本開示の金属端子用接着性フィルムのホモPBT層との密着性も優れている。なお、熱融着性樹脂層35を形成するポリブチレンテレフタレートフィルムは、予め用意したポリブチレンテレフタレートフィルムを接着層34と積層して熱融着性樹脂層35としてもよいし、ポリブチレンテレフタレートフィルムを形成する樹脂を溶融押出しするなどしてフィルムとすると共に、接着層34と積層してもよい。
【0084】
ポリブチレンテレフタレートフィルムは、延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムであってもよいし、未延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムであってもよく、未延伸ポリブチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。
【0085】
ポリブチレンテレフタレートフィルムは、ホモポリブチレンテレフタレートから構成されることが好ましい。
【0086】
熱融着性樹脂層35は、1層のみで形成されていてもよいが、同一又は異なる樹脂によって2層以上で形成されていてもよい。熱融着性樹脂層35が2層以上で形成されている場合、少なくとも1層が、ポリブチレンテレフタレートフィルムにより形成されており、ポリブチレンテレフタレートフィルムは、全固体電池用外装材の最内層であることが好ましい。また、接着層34と接着する層は、ポリブチレンテレフタレートフィルムであることが好ましい。熱融着性樹脂層35が2層以上で形成されている場合、ポリブチレンテレフタレートフィルムにより形成されていない層については、例えば、ポリプロピレン、ポリエチレン等のポリオレフィンや、酸変性ポリプロピレン、酸変性ポリエチレンなどの酸変性ポリオレフィンなどにより形成された層であってもよい。ただし、ポリオレフィンや酸変性ポリオレフィンは、ポリブチレンテレフタレートと比較すると、高温環境下における耐久性が低いため、熱融着性樹脂層35は、ポリブチレンテレフタレートフィルムのみによって構成されていることが好ましい。
【0087】
2.蓄電デバイス
本開示の蓄電デバイス10は、少なくとも、正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子4と、当該蓄電デバイス素子4を封止する蓄電デバイス用外装材3と、正極及び負極のそれぞれに電気的に接続され、蓄電デバイス用外装材3の外側に突出した金属端子2とを備えている。本開示の蓄電デバイス10においては、金属端子2と蓄電デバイス用外装材3との間に、本開示の金属端子用接着性フィルム1が介在されてなることを特徴とする。すなわち、本開示の蓄電デバイス10は、金属端子2と蓄電デバイス用外装材3との間に、本開示の金属端子用接着性フィルム1が介在する工程を備える方法により製造することができる。
【0088】
具体的には、少なくとも正極、負極、及び電解質を備えた蓄電デバイス素子4を、蓄電デバイス用外装材3で、正極及び負極の各々に接続された金属端子2を外側に突出させた状態で、本開示の金属端子用接着性フィルム1を金属端子2と熱融着性樹脂層35との間に介在させ、蓄電デバイス素子4の周縁に蓄電デバイス用外装材のフランジ部(熱融着性樹脂層35同士が接触する領域であり、蓄電デバイス用外装材の周縁部3a)が形成できるようにして被覆し、フランジ部の熱融着性樹脂層35同士をヒートシールして密封させることによって、蓄電デバイス用外装材3を使用した蓄電デバイス10が提供される。なお、蓄電デバイス用外装材3を用いて蓄電デバイス素子4を収容する場合、蓄電デバイス用外装材3の熱融着性樹脂層35が内側(蓄電デバイス素子4と接する面)になるようにして用いられる。
【0089】
本開示の蓄電デバイス用外装材は、電池(コンデンサー、キャパシター等を含む)などの蓄電デバイスに好適に使用することができる。また、本開示の蓄電デバイス用外装材は、一次電池、二次電池のいずれに使用してもよいが、好ましくは二次電池である。本開示の蓄電デバイス用外装材が適用される二次電池の種類については、特に制限されず、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池、全固体電池、半固体電池、擬固体電池、ポリマー電池、全樹脂電池、鉛蓄電池、ニッケル・水素蓄電池、ニッケル・カドミウム蓄電池、ニッケル・鉄蓄電池、ニッケル・亜鉛蓄電池、酸化銀・亜鉛蓄電池、金属空気電池、多価カチオン電池、コンデンサー、キャパシター等が挙げられる。これらの二次電池の中でも、本開示の蓄電デバイス用外装材の好適な適用対象として、リチウムイオン電池及びリチウムイオンポリマー電池が挙げられる。
【0090】
これらの中でも、本開示の金属端子用接着性フィルム1は、全固体電池に対して好適に適用することができる。
【実施例0091】
以下に実施例及び比較例を示して本開示を詳細に説明する。但し、本開示は実施例に限定されるものではない。
【0092】
<金属端子用接着性フィルムの調製>
実施例1
ホモポリブチレンテレフタレート(ホモPBT)により形成された、ホモポリブチレンテレフタレートフィルム(融点223℃、厚さ100μm)を用意し、当該ホモポリブチレンテレフタレートフィルム単層を金属端子用接着性フィルムとした。
【0093】
比較例1
エラストマー(ポリブチレンテレフタレートとポリエーテルのブロック共重合体)を7.0質量%含むポリブチレンテレフタレートフィルム(融点215℃、厚さ100μm)を用意し、当該エラストマー含有ポリブチレンテレフタレートフィルム単層を金属端子用接着性フィルムとした。
【0094】
比較例2,3
共重合ポリブチレンテレフタレート(共重合PBT)により形成された、共重合ポリブチレンテレフタレートフィルム(厚さ100μm)を用意し、当該共重合ポリブチレンテレフタレートフィルム単層を金属端子用接着性フィルムとした。共重合ポリブチレンテレフタレートは、主成分であるポリブチレンテレフタレート構造を形成するテレフタル酸と1,4-ブタンジオールが2つの構成単位を構成しており、さらに、ポリブチレンテレフタレート構造に対し、副成分としてドデカン二酸がブロック重合されたものである。ドデカン二酸が、前記の1,4-ブタンジオールと共重合されることで樹脂に導入される構造である。比較例2で用いた共重合ポリブチレンテレフタレートには、ドデカン二酸が12質量%含まれており、融点は205℃である。比較例3で用いた共重合ポリブチレンテレフタレートには、モノマー単位として、ドデカン二酸が5質量%含まれており、融点は216℃である。
【0095】
比較例4
ホモポリエチレンテレフタレート(ホモPET)により形成された、ホモポリエチレンテレフタレートフィルム(融点252℃、厚さ100μm)を用意し、当該ホモポリエチレンテレフタレートフィルム単層を金属端子用接着性フィルムとした。
【0096】
比較例5
無水マレイン酸変性ホモポリプロピレンフィルム(融点162℃、厚さ100μm)を用意し、当該フィルム単層を金属端子用接着性フィルムとした。
【0097】
比較例6
共重合ポリエチレンテレフタレート(共重合PET)により形成された、共重合ポリエチレンテレフタレートフィルム(融点215℃、厚さ100μm)を用意し、当該共重合ポリブチレンテレフタレートフィルム単層を金属端子用接着性フィルムとした。共重合ポリエチレンテレフタレートは、ネオペンチルグリコールをグリコール成分として10質量%程度含んでいる。
【0098】
(全固体電池用外装材の調製)
まず、全固体電池用外装材を準備した。基材層として、ポリエチレンテレフタレートフィルム(25μm)の貼り合わせ面側にコロナ処理を施したものを用意した。また、バリア層として、アルミニウム合金箔(JIS H4160:1994 A8021H-O、厚さ40μm)を用意した。また、それぞれ、実施例1及び比較例1~6で使用したフィルムを構成する樹脂と同じ樹脂を用いて、熱融着性樹脂層(50μm)として用意した。後述の通り、下記<150℃でのシール強度の測定(耐熱性の評価)>においては、実施例1及び比較例1~6の金属端子用接着性フィルムと、それぞれ、共通する熱融着性樹脂層を用いた全固体電池用外装材を用いて評価を行った。ただし、比較例5の樹脂についてはフィルムと同樹脂の未変性樹脂(ホモPP、融点162℃)を用いた。2液硬化型ウレタン接着剤(ポリオール化合物と芳香族イソシアネート化合物)を用い、ドライラミネート法により、基材層とバリア層とを接着し、基材層(25μm)/接着剤層(3μm)/バリア層(40μm)の積層体を作製した。次に、ポリエステルポリオール化合物(加水分解抑制剤を添加したもの)と脂環式イソシアネート化合物(イソホロンジイソシアネートを含む)を含む樹脂組成物を用い、ドライラミネート法により、得られた積層体のバリア層側と、熱融着性樹脂層とを接着し、バリア層の上に接着層(3μm)/熱融着性樹脂層(50μm)を積層させた。次に、得られた積層体を80℃で72時間エージングし、加熱することにより、基材層(ポリエチレンテレフタレートフィルム(25μm))/接着剤層(2液硬化型ウレタン接着剤の硬化物(3μm))/バリア層(アルミニウム合金箔(40μm))/接着層(ポリエステルポリオール化合物と脂環式イソシアネート化合物を含む樹脂組成物の硬化物(3μm))/熱融着性樹脂層(50μm)がこの順に積層された積層体からなる外装材を得た。
【0099】
(金属端子用接着性フィルム付き金属端子の調製)
厚さ400μm×TD45mm×MD60mmのアルミニウム合金箔を金属端子とし、これを、アクリル樹脂、硝酸クロム(III)化合物、リン酸の3成分からなる処理剤で処理層が約100nmの厚さとなるように焼き付けた表面処理金属端子を作製した。次にTD10mm×MD55mmのサイズにカットした金属端子用接着性フィルムを2枚用意し、これら2枚の金属端子用接着性フィルムとこの表面処理金属端子の幅方向の中心が一致するようにして、この表面処理金属端子の端から10mmの位置の両面に、上下とも厚さ3.0mm、硬度40のシリコンゴムを貼った金属ヘッドの平板プレス機で240℃×0.25MPa(シリコンゴムにかかる面圧)×16秒の条件で熱シールし、金属端子用接着性フィルム/金属端子/金属端子用接着性フィルムが順に積層された金属端子用接着性フィルム付き金属端子を調製した。このとき、金属端子のMDと金属端子用接着性フィルムのMDとが直交するように配置した。ただし、金属端子側の樹脂として無水マレイン酸変性ホモポリプロピレンフィルムを用いた比較例5については、190℃×0.25MPa(シリコンゴムにかかる面圧)×16秒の条件で金属端子用接着性フィルム付き金属端子を調製した。
【0100】
<150℃でのシール強度の測定(高温環境での金属端子に対するシール性の評価)>
全固体電池用外装材を用意し、TD60mm×MD150mmのサイズにカットした。前記の通り、全固体電池用外装材の熱融着性樹脂層は、それぞれ、実施例1及び比較例1~6の金属端子用接着性フィルムと共通する樹脂で形成(比較例5のみ未変性のホモPP)したものである。次に、全固体電池用外装材(外装材)の熱融着性樹脂層同士を内側にして長さ方向(MD)を二つ折りにし(TD60mm×MD75mm)、その間に上記で作製した金属端子用接着性フィルム付き金属端子(幅45mm×長さ60mm)を挟んだ。このとき、金属端子用接着性フィルム付き金属端子は、金属端子用接着性フィルムのMDと、外装材のMDとが直交するようにして、外装材の折り目の内側部分に突き当てるようにして挟んだ。この状態で、7mm幅の上下金属ヘッドのシール機で、それぞれ表1に記載のシール温度(比較例5は190℃×1.0MPa×5秒、実施例1、比較例1~3,6は240℃×1.0MPa×12秒、比較例4は280℃×1.0MPa×12秒)の条件でヒートシールした。7mm幅が外装材のMDの方向である。なお、これらのヒートシール条件は、金属端子用接着性フィルムに用いた樹脂に適した温度条件である。得られた積層体のヒートシール部は、外装材/金属端子用接着性フィルム/金属端子/金属端子用接着性フィルム/外装材が順に積層された構成となっている。次に、シール幅7mmと直角方向に積層体を裁断して、幅15mmのサンプルを取得した。このとき、サンプルは積層体の中心部分から取得した。幅15mmが外装材のTDの方向である。次に、サンプルの片側の外装材と、金属端子をチャックし、恒温槽付きの引張試験機で150℃環境下、300mm/minの速度で外装材と金属端子を180℃方向に引っ張り、150℃でのシール強度を測定した。耐熱性の評価を以下の基準で行った。結果を表1に示す。
A+:シール強度が50N/15mm以上である。
A:シール強度が40N/15mm以上50N/15mm未満である。
B:シール強度が30N/15mm以上40N/15mm未満である。
C:シール強度が30N/15mm未満である。
【0101】
<150℃でのシール強度の測定における外装材の基材層表面の損傷評価>
前記の<150℃でのシール強度の測定(耐熱性の評価)>でのサンプルのシール時に、それぞれ、外装材の基材層表面を目視で観察し、基材層表面の損傷を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
A:基材層表面の外観に変化が無い。
B:基材層表面がやや白化した。
C:基材層表面が溶融し表面に凹凸が生じた。
【0102】
<水蒸気透過係数の測定(水蒸気バリア性の評価)>
100×100mmのアルミニウム箔(厚さ100μm)を2枚用意し、これを、アクリル樹脂、硝酸クロム(III)化合物、リン酸の3成分からなる処理剤で処理層が約100nmの厚さとなるように焼き付けたアルミニウム箔を作製した。100×100mmのサイズとした実施例及び比較例の金属端子用接着性フィルムを2枚用意した。2枚のアルミニウム箔の間に、2枚の金属端子用接着性フィルムを挟み、3辺を3mm巾で、それぞれ表1に記載のシール温度(比較例5は190℃×1.0MPa×5秒、実施例1、比較例1~3,6は240℃×1.0MPa×12秒、比較例4は280℃×1.0MPa×12秒)の条件でヒートシールした。ヒートシールされていない1辺から、2枚の金属端子用接着性フィルムの間に0.3gのシリカゲル(粒径Φ2~5mm)を入れた。ヒートシールされていない1辺を3mm巾で前記3辺と同条件でヒートシールしてシリカゲルを密封後、65℃90%RHの条件で1カ月保存後、重量増加、および、シール部の金属端子用接着性フィルムの厚さ(シール後残存厚さ)より水蒸気透過係数を算出(g・mm/m2・day)した。水蒸気透過係数に基づき、水蒸気バリア性を以下の基準で評価した。結果を表1に示す。
A:水蒸気透過係数が5g・mm/m2・day以下である。
B:水蒸気透過係数が5g・mm/m2・day超、10g・mm/m2・day以下である。
C:水蒸気透過係数が10g・mm/m2・day超である。
【0103】
【表1】
【0104】
実施例1の金属端子用接着性フィルムは、表面がホモポリブチレンテレフタレートフィルムからなる、ホモポリブチレンテレフタレート層により形成されており、高温環境での金属端子に対する高いシール性と、優れた水蒸気バリア性とを兼ね備えている。
【0105】
以上のとおり、本開示は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1. 蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、前記蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在される、金属端子用接着性フィルムであって、
前記金属端子用接着性フィルムの少なくとも一方側の表面は、ホモポリブチレンテレフタレートフィルムからなる、ホモポリブチレンテレフタレート層により形成されている、金属端子用接着性フィルム。
項2. 前記蓄電デバイス用外装材側の表面を形成する樹脂と、前記金属端子側の表面を形成する樹脂とが、共通する樹脂である、項1に記載の金属端子用接着性フィルム。
項3. 前記金属端子用接着性フィルムは、単層である、項1または2に記載の金属端子用接着性フィルム。
項4. 前記金属端子用接着性フィルムの総厚みが、50μm以上500μm以下である、項1~3のいずれか1項に記載の金属端子用接着性フィルム。
項5. 前記蓄電デバイス用外装材が、全固体電池用外装材である、項1~4のいずれか1項に記載の金属端子用接着性フィルム。
項6. 金属端子に、項1~5のいずれか1項に記載の金属端子用接着性フィルムが取り付けられてなる、金属端子用接着性フィルム付き金属端子。
項7. 少なくとも、正極、負極、及び電解質を備えた前記蓄電デバイス素子と、当該蓄電デバイス素子を封止する前記蓄電デバイス用外装材と、前記正極及び前記負極のそれぞれに電気的に接続され、前記蓄電デバイス用外装材の外側に突出した前記金属端子とを備える蓄電デバイスであって、
前記金属端子と前記蓄電デバイス用外装材との間に、項1~5のいずれか1項に記載の金属端子用接着性フィルムが介在されてなる、蓄電デバイス。
項8. 少なくとも、正極、負極、及び電解質を備えた前記蓄電デバイス素子と、当該蓄電デバイス素子を封止する前記蓄電デバイス用外装材と、前記正極及び前記負極のそれぞれに電気的に接続され、前記蓄電デバイス用外装材の外側に突出した前記金属端子とを備える蓄電デバイスの製造方法であって、
前記金属端子と前記蓄電デバイス用外装材との間に、項1~5のいずれか1項に記載の金属端子用接着性フィルムを介在させて、前記蓄電デバイス素子を前記蓄電デバイス用外装材で封止する工程を備える、蓄電デバイスの製造方法。
項9. 金属端子用接着性フィルムと、蓄電デバイス用外装材とを含む、キットであって、
前記金属端子用接着性フィルムの少なくとも一方側の表面は、ホモポリブチレンテレフタレートフィルムからなる、ホモポリブチレンテレフタレート層により形成されており、
用時に、蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、前記蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に、前記金属端子用接着性フィルムを介在させ、前記蓄電デバイス素子を前記蓄電デバイス用外装材で封止するように用いられる、キット。
項10. 蓄電デバイス素子の電極に電気的に接続された金属端子と、前記蓄電デバイス素子を封止する蓄電デバイス用外装材との間に介在される、金属端子用接着性フィルムの製造方法であって、
前記金属端子用接着性フィルムの少なくとも一方側の表面は、ホモポリブチレンテレフタレートフィルムからなる、ホモポリブチレンテレフタレート層により形成されている、金属端子用接着性フィルムの製造方法。
【符号の説明】
【0106】
1 金属端子用接着性フィルム
2 金属端子
3 蓄電デバイス用外装材
3a 蓄電デバイス用外装材の周縁部
4 蓄電デバイス素子
10 蓄電デバイス
11 中間層
12a 第1の樹脂層
12b 第2の樹脂層
13 接着促進剤層
31 基材層
32 接着剤層
33 バリア層
34 接着層
35 熱融着性樹脂層
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8