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特開2023-168381作業車両用の自動走行システム及び作業車両用の自動走行方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168381
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】作業車両用の自動走行システム及び作業車両用の自動走行方法
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20231116BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20231116BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
A01B69/00 301
G05D1/02 N
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023151982
(22)【出願日】2023-09-20
(62)【分割の表示】P 2019093806の分割
【原出願日】2019-05-17
(71)【出願人】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】白藤 大貴
(72)【発明者】
【氏名】黒田 晃史
(57)【要約】
【課題】ユーザにかかる負担の軽減を図りながら、作業車両の待機事由や作業状況などに適した待機位置を設定することができる作業車両用の自動走行システム及び作業車両用の自動走行方法を提供する。
【解決手段】作業車両用の自動走行システムは、自動走行制御部46Fと、指定部と、を備える。自動走行制御部46Fは、作業車両V1を作業地で自動走行させる。指定部は、作業地の外形を特定する複数の外形特定線の中から、作業車両V1に資材を補給するための資材補給辺としての外形特定線を指定する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
作業車両を作業地で自動走行させる自動走行制御部と、
前記作業地の外形を特定する複数の外形特定線の中から、前記作業車両に資材を補給するための資材補給辺としての外形特定線を指定する指定部と、を備える、
作業車両用の自動走行システム。
【請求項2】
前記指定部は、ユーザの選択操作に応じて前記資材補給辺としての外形特定線を指定する、
請求項1に記載の作業車両用の自動走行システム。
【請求項3】
前記作業地に関する作業地情報を含む表示画面を表示部に表示させる表示制御部を更に備え、
前記指定部は、前記表示画面上でのユーザの選択操作に応じて前記資材補給辺としての外形特定線を指定する、
請求項2に記載の作業車両用の自動走行システム。
【請求項4】
前記指定部は、前記作業車両が作業を行いながら自動走行する作業経路の延長線上に位置する外形特定線の中から前記資材補給辺としての外形特定線を指定する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の作業車両用の自動走行システム。
【請求項5】
前記資材補給辺に向かって前記作業車両が自動走行する経路の終端側に、前記作業車両の自動走行を中断させる中断位置を設定する、
請求項1~4のいずれか1項に記載の作業車両用の自動走行システム。
【請求項6】
前記資材補給辺に向かって前記作業車両が自動走行する経路の延長線を、補給用移動経路に設定する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の作業車両用の自動走行システム。
【請求項7】
前記資材補給辺での前記資材の補給後に、前記作業車両を自動後進走行させ、自動後進走行した後に次の作業経路の始端側に向けて自動旋回走行させる、
請求項1~6のいずれか1項に記載の作業車両用の自動走行システム。
【請求項8】
作業車両を作業地で自動走行させることと、
前記作業地の外形を特定する複数の外形特定線の中から、前記作業車両に資材を補給するための資材補給辺としての外形特定線を指定することと、を有する、
作業車両用の自動走行方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラクタ、乗用草刈機、乗用田植機、乗用播種機、乗用施肥機、コンバイン、及び、無人草刈機、などの作業車両の自動走行を可能にする作業車両用の自動走行システム及び作業車両用の自動走行方法に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車両用の自動走行システムにおいては、例えば、ユーザにて指定された位置に資材の補給位置(待機位置の一例)を設定する補給位置設定部を備え、作業車両にて資材の補給が必要になった場合に、作業車両を前述した補給位置まで自動走行させて補給位置にて待機させるように構成されたものがある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2018-050491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の作業車両用の自動走行システムにおいて、資材の補給位置は、ユーザが無線通信端末のディスプレイに表示された補給位置設定ウィンドウを利用して事前に指定した単一の位置に設定されている。そのため、例えば、設定された補給位置が、実際には、その近くに樹木などの障害物が存在していて作業車両に対する資材補給に支障を来たす、又は、資材補給が必要になった作業車両の現在位置から大きく離れていて補給位置への移動に時間がかかる、などのように、作業車両の待機事由(ここでは資材補給)や作業状況などに適していない不都合を招くことがある。
【0005】
上記のような不都合の発生を防止するためには、ユーザが作業車両の待機事由や作業状況などを十分に考慮して適正な補給位置を指定する必要がある。又、上記のような不都合が生じた場合には、ユーザが補給位置を指定し直すことになる。そのため、適正な補給位置を指定する上においてユーザにかかる負担が大きくなっている。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、ユーザにかかる負担の軽減を図りながら、作業車両の待機事由や作業状況などに適した待機位置を設定することができる作業車両用の自動走行システム及び作業車両用の自動走行方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一態様に係る作業車両用の自動走行システムは、自動走行制御部と、指定部と、を備える。前記自動走行制御部は、作業車両を作業地で自動走行させる。前記指定部は、前記作業地の外形を特定する複数の外形特定線の中から、前記作業車両に資材を補給するための資材補給辺としての外形特定線を指定する。
【0008】
一態様に係る作業車両用の自動走行方法は、作業車両を作業地で自動走行させることと、前記作業地の外形を特定する複数の外形特定線の中から、前記作業車両に資材を補給するための資材補給辺としての外形特定線を指定することと、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】作業車両用の自動走行システムの概略構成を示す図
図2】トラクタの伝動構成を示す概略図
図3】自動走行システムの概略構成を示すブロック図
図4】障害物検知システムの概略構成を示すブロック図
図5】第1実施形態における圃場(登録作業地)での作業車両の目標経路及び待機位置などを示す平面図
図6】表示デバイスの表示画面を登録圃場表示画面に切り換えた状態を示す図
図7】表示デバイスの表示画面を選択圃場表示画面に切り換えた状態を示す図
図8】表示デバイスの表示画面を作業装置選択画面に切り換えた状態を示す図
図9】表示デバイスの表示画面を枕地領域設定画面に切り換えた状態を示す図
図10】表示デバイスの表示画面を作業条件設定画面に切り換えた状態を示す図
図11】第1実施形態における待機位置取得制御のフローチャート
図12】種子補給用移動制御のフローチャート
図13】第1実施形態における圃場(登録作業地)での併走作業用の作業車両の目標経路及び待機位置などを示す平面図
図14】第2実施形態における圃場(登録作業地)での作業車両の目標経路及び補給用待機位置(待機位置)などを示す平面図
図15】第2実施形態における圃場(登録作業地)での作業車両の場外移動経路及び場外待機位置(待機位置)などを示す部分平面図
図16】第2実施形態における待機位置取得制御のフローチャート
図17】第2実施形態における苗補給用移動制御のフローチャート
図18】第2実施形態における苗補給用移動制御のフローチャート
図19】第2実施形態における場外移動経路取得制御のフローチャート
図20】第3実施形態における圃場(登録作業地)での作業車両の目標経路及び排出用待機位置(待機位置)などを示す平面図
図21】第3実施形態における圃場(登録作業地)での作業車両の目標経路及び複数の排出用待機位置(待機位置)などを示す平面図
図22】第3実施形態における穀粒排出用移動制御のフローチャート
図23】第4実施形態における着陸帯(登録作業地)での作業車両の目標経路及び退避用待機位置(待機位置)などを示す平面図
図24】第4実施形態における着陸帯(登録作業地)の植生地(作業領域)にて選択された作業車両の退避用待機位置(待機位置)及び退避経路などの一例を示す平面図
図25】第4実施形態における着陸帯(登録作業地)の植生地(作業領域)にて選択された作業車両の退避用待機位置(待機位置)及び退避経路などの一例を示す平面図
図26】第4実施形態における着陸帯(登録作業地)の植生地(作業領域)にて選択された作業車両の退避用待機位置(待機位置)及び退避経路などの一例を示す平面図
図27】第4実施形態における待機位置選択制御のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0010】
〔第1実施形態〕
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る作業車両用の自動走行システムを作業車両の一例であるトラクタに適用した第1実施形態を図面に基づいて説明する。
【0011】
尚、本発明に係る作業車両用の自動走行システムは、トラクタ以外の、例えば乗用田植機、コンバイン、乗用草刈機、除雪車、ホイールローダ、などの乗用作業車両、及び、無人耕耘機や無人草刈機などの無人作業車両に適用することができる。
【0012】
図1に示すように、この第1実施形態に例示されたトラクタV1は、その後部に3点リンク機構2を介して播種用の作業装置(以下、播種装置と称する)3が連結されている。これにより、このトラクタV1は、その後部に連結された播種装置3によって播種作業を行う播種仕様に構成されている。播種装置3は、トラクタV1の後部に昇降可能かつローリング可能に連結されている。
【0013】
尚、このトラクタV1の後部には、播種装置3に代えて、施肥装置、施肥播種装置、薬剤散布装置、ロータリ耕耘装置、プラウ、ディスクハロー、カルチベータ、サブソイラ、草刈装置、などの各種の作業装置を連結することができる。
【0014】
トラクタV1は、作業車両用の自動走行システムを使用することにより、登録作業地として例示した図5~6に示す圃場Aa~Agなどにおける自動走行が可能になっている。 尚、図5~6に例示する圃場Aa~Agは、外形の形状が矩形状の定形圃場Aa,Ab,Ad~Af又は台形の変形圃場Ac,Agであるが、登録圃場は、その外形の形状が三角形や五角形、又は、外形の少なくとも一辺に湾曲部分が含まれた変形圃場であってもよい。
【0015】
図1図3に示すように、作業車両用の自動走行システムには、トラクタV1に搭載された自動走行ユニット4、及び、自動走行ユニット4と無線通信可能に通信設定された無線通信機器の一例である携帯通信端末5、などが含まれている。携帯通信端末5には、自動走行に関する各種の情報表示や入力操作などを可能にするマルチタッチ式の表示デバイス(例えば液晶パネル)50などが備えられている。
【0016】
尚、携帯通信端末5には、タブレット型のパーソナルコンピュータやスマートフォンなどを採用することができる。又、無線通信には、Wi-Fi(登録商標)などの無線LAN(Local Area Network)やBluetooth(登録商標)などの近距離無線通信などを採用することができる。
【0017】
図1~2に示すように、トラクタV1には、その前部に配置された前フレーム10、操舵可能で駆動可能な左右の前輪11、駆動可能な左右の後輪12、コモンレールシステムを有する電子制御式のディーゼルエンジン(以下、エンジンと称する)13、エンジン13からの動力を断続する主クラッチ14、主クラッチ14を経由した動力を変速する変速ユニット15、エンジン13などを覆うボンネット16、及び、トラクタV1の後部に配置されたキャビン17、などが備えられている。
尚、エンジン13には、電子ガバナを有する電子制御式のガソリンエンジンなどを採用してもよい。
【0018】
図2に示すように、左右の前輪11は、前フレーム10にローリング可能に支持された前車軸ケース18の左右両端部に、左右の前輪ギアケース19を介して操舵可能に連結されている。左右の後輪12は、変速ユニット15の後部に備えられた左右の後車軸ケース(図示せず)に支持されている。エンジン13は、前フレーム10に防振支持されている。
【0019】
図2に示すように、変速ユニット15は、エンジン13からの動力を走行用に変速する走行伝動系15Aと作業用に変速する作業伝動系15Bとを有している。
【0020】
走行伝動系15Aには、エンジン13からの動力を変速する電子制御式の主変速装置20、主変速装置20からの動力を前進用と後進用とに切り換える電子油圧制御式の前後進切換装置21、前後進切換装置21からの前進用又は後進用の動力を高低2段に変速するギア式の副変速装置22、前後進切換装置21からの前進用又は後進用の動力を超低速段に変速するギア式のクリープ変速装置23、副変速装置22又はクリープ変速装置23からの動力を左右の後輪12に分配する後輪用差動装置24、後輪用差動装置24からの動力を減速して左右の後輪12に伝える左右の減速装置25、及び、副変速装置22又はクリープ変速装置23から左右の前輪11への伝動を切り換える電子油圧制御式の伝動切換装置26、などが含まれている。
【0021】
作業伝動系15Bには、エンジン13からの動力を断続する油圧式のPTOクラッチ27、PTOクラッチ27を経由した動力を正転3段と逆転1段とに切り換えるPTO変速装置28、及び、PTO変速装置28からの動力を作業用として出力するPTO軸29、などが含まれている。
【0022】
変速ユニット15には、左右の後輪12を個別に制動する左右のブレーキ30が備えられている。
【0023】
主変速装置20には、静油圧式無段変速装置(HST:Hydro Static Transmission)よりも伝動効率が高い油圧機械式無段変速装置の一例であるI-HMT(Integrated Hydro-static Mechanical Transmission)が採用されている。
【0024】
尚、主変速装置20には、I-HMTの代わりに、油圧機械式無段変速装置の一例であるHMT(Hydraulic Mechanical Transmission)、静油圧式無段変速装置、又は、ベルト式無段変速装置、などの無段変速装置を採用してもよい。又、無段変速装置の代わりに、複数の油圧式の変速クラッチ、及び、それらに対するオイルの流れを制御する複数の電磁式の変速バルブ、などを有する電子油圧制御式の有段変速装置を採用してもよい。
【0025】
伝動切換装置26は、左右の前輪11への伝動状態を、左右の前輪11への伝動を遮断する伝動遮断状態と、左右の前輪11の周速が左右の後輪12の周速と同じになるように左右の前輪11に伝動する等速伝動状態と、左右の後輪12の周速に対して左右の前輪11の周速が約2倍になるように左右の前輪11に伝動する倍速伝動状態とに切り換える。伝動切換装置26からの動力は、前輪駆動用の伝動軸31などを介して、前車軸ケース18に内蔵された前輪用差動装置32に伝えられる。前輪用差動装置32は、伝動切換装置26からの動力を左右の前輪11に分配する。分配された動力は、左右の前輪ギアケース19に内蔵された左右の伝動装置(図示せず)を介して左右の前輪11に伝えられる。左右の伝動装置は、左右の前輪11の操舵を許容しながら、前輪用差動装置32からの動力を減速して左右の前輪11に伝える。PTO軸29から取り出された動力は、その動力で駆動される播種装置や施肥装置などの作業装置がトラクタV1の後部に連結された場合に、外部伝動軸(図示せず)などを介して作業装置に伝えられる。
【0026】
図1に示すように、キャビン17の内部には、手動操舵用のステアリングホイール35、搭乗者用の座席36、及び、各種の情報表示や入力操作などを可能にするマルチタッチ式の液晶モニタ37、などが備えられている。これにより、キャビン17の内部には、搭乗者によるトラクタV1の運転を可能にする搭乗式の運転部が形成されている。
【0027】
図示は省略するが、運転部には、エンジン回転数の設定回転数での維持を可能にするアクセルレバー、エンジン回転数の設定回転数からの増速を可能にするアクセルペダル、主クラッチ14の断続操作を可能にするクラッチペダル、主変速装置20の変速操作を可能にする主変速レバー、前後進切換装置21の前後進切り換え操作を可能にするリバーサレバー、副変速装置22の変速操作を可能にする副変速レバー、クリープ変速装置23の変速操作を可能にするクリープ変速レバー、PTOクラッチ27の断続操作を可能にするPTOスイッチ、PTO変速装置28の変速操作を可能にするPTO変速レバー、及び、左右のブレーキ30の制動状態への切り換え操作を可能にする左右のブレーキペダルとパーキングレバー、などが含まれている。
【0028】
左右のブレーキ30は、左右のブレーキペダルとパーキングレバーとに機械的に連動連結されている。左右のブレーキ30は、左右いずれか一方又は双方のブレーキペダルが踏み込み操作された場合には、そのときの踏み込み操作量に応じた制動力で対応する後輪12を制動する。左右のブレーキ30は、パーキングレバーが制動領域にて操作保持された場合には、そのときの保持位置に応じた制動力で左右の後輪12を制動する。
【0029】
図1に示すように、播種装置3は、3点リンク機構2に着脱可能に連結された播種フレーム3Aと、作業条数分の播種ユニット3Bとを有している。各播種ユニット3Bは、農用資材の一例である種子を貯留する貯留部3Ba、貯留部3Baから所定量の種子を繰り出す繰出部3Bb、圃場面に播種溝を形成するディスク式の作溝器3Bc、及び、播種後の覆土を鎮圧する複数の鎮圧輪3Bd、などを有している。図示は省略するが、播種装置3は、トラクタV1の作業走行時に接地してトラクタV1の走行に伴って回転する接地輪と、接地輪の回転力を各播種ユニット3Bの繰出部3Bbに伝える伝動系とを有している。各繰出部3Bbは、接地輪からの回転力で駆動され、これにより、各貯留部3Baに貯留された種子を所定量ずつ繰り出す。つまり、播種装置3は、接地輪の回転力で播種を行う接地輪駆動方式に構成されている。
【0030】
尚、播種装置3は、PTO軸29から取り出された動力で駆動されるPTO駆動式、又は、電動モータからの動力で駆動される電動式に構成されていてもよい。
【0031】
図3に示すように、トラクタV1には、左右の前輪11を操舵する全油圧式のパワーステアリングユニット40、左右のブレーキ30を操作する電子油圧制御式のオートブレーキユニット41、PTOクラッチ27を操作する電子制御式のPTOバルブユニット42、播種装置3を昇降駆動する電子油圧制御式の昇降駆動ユニット43、播種装置3をロール方向に揺動駆動する電子油圧制御式のローリングユニット44、トラクタV1に備えられた各種のセンサやスイッチなどを含む車両状態検出機器45、及び、各種の制御部を有する車載制御ユニット46、などが備えられている。
【0032】
尚、パワーステアリングユニット40には、操舵用の電動モータを有する電動式を採用してもよい。
【0033】
車両状態検出機器45は、トラクタV1の各部に備えられた各種のセンサやスイッチなどの総称である。図示は省略するが、車両状態検出機器45には、アクセルレバーとアクセルペダルのアイドリング位置からの操作量を検出するアクセルセンサ、エンジン回転数を検出する回転センサ、主変速レバーの操作量を検出する変速センサ、トラクタV1の車速を検出する車速センサ、リバーサレバーの操作位置を検出するリバーサセンサ、前輪11の操舵角を検出する舵角センサ、播種装置3の高さ位置を検出する高さセンサ、トラクタV1のロール角を検出する傾斜センサ、及び、播種装置3の各貯留部3Baに貯留された種子の残量が種子補給用の設定値まで低下したこと検出する複数の残量センサ45A(図3参照)、などの各種のセンサが含まれている。車両状態検出機器45には、PTOクラッチ27の断続を指令するPTOスイッチ、及び、播種装置3の昇降を指令する昇降スイッチ、などの各種のスイッチが含まれている。
【0034】
図3~4に示すように、車載制御ユニット46には、エンジン13に関する制御を行うエンジン制御部46A、トラクタV1の車速や前後進の切り換えに関する制御を行う変速ユニット制御部46B、ステアリングに関する制御を行うステアリング制御部46C、播種装置3などの作業装置に関する制御を行う作業装置制御部46D、液晶モニタ37などに対する表示や報知に関する制御を行う表示制御部46E、自動走行に関する制御を行う自動走行制御部46F、及び、圃場内の走行領域に応じて生成された自動走行用の目標経路P(図5参照)などを記憶する不揮発性の車載記憶部46G、などが含まれている。各制御部46A~46Fは、マイクロコントローラなどが集積された電子制御ユニットや各種の制御プログラムなどによって構築されている。各制御部46A~46Fは、CAN(Controller Area Network)を介して相互通信可能に接続されている。
【0035】
尚、各制御部46A~46Fの相互通信には、CAN以外の通信規格や次世代通信規格である、例えば、車載EthernetやCAN-FD(CAN with FLexible Data rate)などを採用してもよい。
【0036】
エンジン制御部46Aは、アクセルレバーが操作された場合には、アクセルセンサからの検出情報と回転センサからの検出情報とに基づいて、エンジン回転数をアクセルレバーのアイドリング位置からの操作量に応じた回転数に維持するエンジン回転数維持制御を実行する。エンジン制御部46Aは、アクセルペダルが操作されて、アクセルペダルのアイドリング位置からの操作量がアクセルレバーのアイドリング位置からの操作量を超えた場合には、アクセルセンサからの検出情報と回転センサからの検出情報とに基づいて、エンジン回転数をアクセルペダルのアイドリング位置からの操作量に応じた回転数に変更するエンジン回転数変更制御を実行する。
【0037】
変速ユニット制御部46Bは、変速レバーが操作された場合には、変速センサからの検出情報と車速センサからの検出情報とに基づいて主変速装置20の作動を制御することで、トラクタV1の車速を変速レバーの操作位置に応じた速度に変更する車速制御を実行する。車速制御には、変速レバーが零速位置に操作された場合に、主変速装置20を零速状態まで減速制御してトラクタV1の走行を停止させる減速停止処理が含まれている。
【0038】
変速ユニット制御部46Bは、リバーサレバーが操作された場合には、リバーサセンサからの検出情報に基づいて前後進切換装置21の伝動状態を切り換える前後進切り換え制御を実行する。前後進切り換え制御には、リバーサレバーが中立位置に操作された場合に前後進切換装置21を伝動遮断状態に切り換える遮断状態切り換え処理、リバーサレバーが前進位置に操作された場合に前後進切換装置21を前進伝動状態に切り換える前進状態切り換え処理、及び、リバーサレバーが後進位置に操作された場合に前後進切換装置21を後進伝動状態に切り換える後進状態切り換え処理が含まれている。
【0039】
作業装置制御部46Dは、PTOスイッチが入り位置に操作された場合には、PTOバルブユニット42の作動を制御して、PTOクラッチ27を伝動遮断状態から伝動状態に切り換える。作業装置制御部46Dは、PTOスイッチが切り位置に操作された場合には、PTOバルブユニット42の作動を制御して、PTOクラッチ27を伝動状態から伝動遮断状態に切り換える。
【0040】
作業装置制御部46Dは、昇降スイッチの操作と、高さセンサからの検出情報と、予め設定された作業高さ位置及び退避用の非作業高さ位置とに基づいて、昇降駆動ユニット43の作動を制御して、播種装置3を作業高さ位置と非作業高さ位置とにわたって昇降させる昇降制御を実行する。昇降制御には、昇降スイッチの操作によって上昇指令が指令されたときに、播種装置3を作業高さ位置から非作業高さ位置まで上昇させる上昇処理と、昇降スイッチの操作によって下降指令が指令されたときに、播種装置3を非作業高さ位置から作業高さ位置まで下降させる下降処理とが含まれている。
【0041】
作業装置制御部46Dは、舵角センサからの検出情報と、高さセンサからの検出情報と、予め設定された非作業高さ位置とに基づいて、前輪11の操舵角が閾値未満から閾値に達したことを検知したときに、トラクタV1が旋回を開始したと判定して、昇降駆動ユニット43の作動を制御して播種装置3を作業高さ位置から非作業高さ位置まで上昇させる旋回上昇制御機能を有している。
【0042】
作業装置制御部46Dは、リバーサセンサからの検出情報と、高さセンサからの検出情報と、予め設定された非作業高さ位置とに基づいて、リバーサレバーの後進位置への操作を検知したときに、昇降駆動ユニット43の作動を制御して播種装置3を作業高さ位置から非作業高さ位置まで上昇させる後進上昇制御機能を有している。
【0043】
作業装置制御部46Dは、傾斜センサからの検出情報と予め設定された制御目標姿勢とに基づいて、ローリングユニット44の作動を制御して播種装置3のロール姿勢を制御目標姿勢に維持する自動ローリング制御機能を有している。
【0044】
図3に示すように、トラクタV1には、トラクタV1の現在位置や現在方位などを測定する測位ユニット70が備えられている。測位ユニット70は、衛星測位システム(NSS:Navigation Satellite System)の一例であるGNSS(Global Navigation Satellite System)を利用してトラクタV1の現在位置と現在方位とを測定する衛星航法装置71、及び、3軸のジャイロスコープ及び3方向の加速度センサなどを有してトラクタV1の姿勢や方位などを測定する慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)72、などを有している。GNSSを利用した測位方法には、DGNSS(Differential GNSS:相対測位方式)やRTK-GNSS(Real Time Kinematic GNSS:干渉測位方式)などがある。この第1実施形態では、移動体の測位に適したRTK-GNSSが採用されている。そのため、図1に示すように、圃場周辺の既知位置には、RTK-GNSSによる測位を可能にする基準局6が設置されている。
【0045】
図1図3に示すように、トラクタV1と基準局6とのそれぞれには、測位衛星7(図1参照)から送信された電波を受信するGNSSアンテナ73,60、及び、トラクタV1と基準局6との間における測位情報を含む各情報の無線通信を可能にする通信モジュール74,61、などが備えられている。これにより、測位ユニット70の衛星航法装置71は、トラクタV1側のGNSSアンテナ73が測位衛星7からの電波を受信して得た測位情報と、基準局6側のGNSSアンテナ60が測位衛星7からの電波を受信して得た測位情報とに基づいて、トラクタV1の現在位置及び現在方位を高い精度で測定することができる。又、測位ユニット70は、衛星航法装置71と慣性計測装置72とを有することにより、トラクタV1の現在位置、現在方位、姿勢角(ヨー角、ロール角、ピッチ角)を高精度に測定することができる。
【0046】
このトラクタV1において、通信モジュール74は測位ユニット70に含まれている(図3参照)。トラクタV1には、携帯通信端末5との測位情報を含む各情報の無線通信を可能にする通信モジュール76が備えられている。測位ユニット70の慣性計測装置72、GNSSアンテナ73、及び、通信モジュール76は、図1に示すアンテナユニット75に含まれている。アンテナユニット75は、キャビン17の前面側における上部の左右中央箇所に配置されている。そして、トラクタV1の現在位置などを測定するときの測位対象位置は、トラクタV1におけるGNSSアンテナ73の取り付け位置から換算して求められた左右の後輪12間の車軸中心位置に設定されている。
【0047】
ちなみに、このトラクタV1において無線通信にWi-Fiなどの無線LANが採用される場合には、通信モジュール76は、通信情報を無線LANとCANとの双方向に変換する変換器として機能する。
【0048】
図3に示すように、携帯通信端末5には、マイクロコントローラなどが集積された電子制御ユニットや各種の制御プログラムなどを有する端末制御ユニット51、及び、トラクタV1側の通信モジュール76との測位情報を含む各情報の無線通信を可能にする通信モジュール52、などが備えられている。端末制御ユニット51には、表示デバイス50などに対する表示や報知に関する制御を行う表示制御部51A、自動走行用の目標経路P(図5参照)を生成する目標経路生成部51B、及び、目標経路生成部51Bが生成した目標経路Pなどを記憶する不揮発性の端末記憶部51C、などが含まれている。端末記憶部51Cには、目標経路Pの生成に使用する各種の情報として、トラクタV1の旋回半径や作業幅などの車体情報、及び、前述した測位情報から得られる圃場情報、などが記憶されている。圃場情報には、圃場の形状や大きさなどに応じたトラクタV1の走行領域を特定する複数の領域特定地点Ap1~Ap4(図5参照)や領域特定枠F(図5参照)などが含まれている。複数の領域特定地点Ap1~Ap4は、ユーザが登録対象の圃場内においてトラクタV1を圃場の外周縁に沿って手動走行させたときに、GNSSを利用して、圃場内でのトラクタV1の走行領域を特定するのに必要な圃場の角部地点などを手動登録することで取得することができる。領域特定枠Fは、取得した複数の領域特定地点Ap1~Ap4を取得順に繋ぐ線分を目標経路生成部51Bが生成することで取得することができる。
【0049】
尚、登録対象の圃場が、その外形の少なくとも一辺に湾曲部分が含まれた変形圃場である場合には、その形状や大きさなどに応じたトラクタV1の走行領域を特定するために、角部地点以外に、湾曲部分の形状などに応じた複数の領域特定地点を登録する必要がある。
【0050】
目標経路生成部51Bは、表示デバイス50に対するユーザのタッチ操作で目標経路生成モードが選択された場合に、目標経路P(図5参照)の生成に関する各種の情報を取得する情報取得処理を開始する。
【0051】
以下、図6~10に基づいて、目標経路生成部51Bの情報取得処理について説明する。
【0052】
目標経路生成部51Bは、目標経路生成モードが選択されるのに伴って、車載制御ユニット46から送信されたトラクタV1の現在位置に基づいて、トラクタV1の周辺において登録済みの圃場Aa~Agが存在するか否かを確認する。
【0053】
目標経路生成部51Bは、登録済みの圃場Aa~Agが存在している場合は、表示デバイス50の表示画面を、圃場Aa~Agが含まれている地図データを表示する登録圃場表示画面50Aに切り換える(図6参照)。
【0054】
目標経路生成部51Bは、登録済みの圃場Aa~Agが存在していない場合は、表示デバイス50の表示画面を、圃場の新規登録を行うか否かの確認を行う新規登録確認画面(図示せず)に切り換える。
【0055】
目標経路生成部51Bは、新規登録確認画面に対するユーザのタッチ操作で圃場の新規登録を行うことが確認された場合は、表示デバイス50の表示画面を、トラクタ周辺の地図データを表示するとともに圃場の登録に関する操作手順などを表示する圃場登録画面(図示せず)に切り換える。そして、圃場登録画面の操作手順に従って圃場の登録が完了した場合に、表示デバイス50の表示画面を登録圃場表示画面50Aに切り換えて、新規登録された圃場をトラクタV1の周辺に存在する登録済みの圃場として表示させる。圃場登録画面に表示される操作手順には、未登録圃場の各形状特定地点(図5に示す角部地点Ap1~Ap4など)を取得するための操作方法などが含まれている。
【0056】
目標経路生成部51Bは、新規登録確認画面に対するユーザのタッチ操作で圃場の新規登録を行わないことが確認された場合は目標経路生成モードを終了する。
【0057】
目標経路生成部51Bは、図6に示す登録圃場表示画面50Aに対するユーザのタッチ操作で、例えば、登録圃場表示画面50Aに表示された圃場Aa~Agのうち、矩形状の圃場Adが作業対象圃場に選択された場合は、表示デバイス50の表示画面を、選択された圃場Adなどを表示する選択圃場表示画面50Bに切り換える(図7参照)。図7に示す選択圃場表示画面50Bでは、選択された圃場Adとともに、自動走行の開始位置Sの選択などを促すメッセージ50Ba、及び、次画面への切り換えを指示する画面切り換えボタン50Bb、などが表示されている。
【0058】
目標経路生成部51Bは、図7に示す選択圃場表示画面50Bにおいて自動走行の開始位置Sが選択され、画面切り換えボタン50Bbが操作された場合に、表示デバイス50の表示画面を、作業装置の選択を可能にする作業装置選択画面50Cに切り換える(図8参照)。図8に示す作業装置選択画面50Cでは、作業装置選択画面50Cに表示される各作業装置の順位設定を可能にする複数の順位設定ボタン50Ca,50Cb、表示された各作業装置の選択を可能にする複数の作業装置選択ボタン50Cc,50Cd、及び、次画面への切り換えを指示する画面切り換えボタン50Ce、などが表示されている。
【0059】
目標経路生成部51Bは、図8に示す作業装置選択画面50Cにて、例えば播種装置が選択されて、画面切り換えボタン50Ceが操作された場合に、表示デバイス50の表示画面を、圃場Adにおける枕地領域A1,A2(図5参照)の設定を可能にする枕地領域設定画面50Dに切り換える(図9参照)。図9に示す枕地領域設定画面50Dでは、圃場Adに対してトラクタV1が方向転換する一対の第1枕地領域A1と方向転換しない一対の第2枕地領域A2とを設定するための第1枕地設定ボタン50Da、圃場Adに対して一対の第1枕地領域A1のみを設定するための第2枕地設定ボタン50Db、各枕地領域A1,A2を最小に設定するための最小設定ボタン50Dc、各枕地領域A1,A2を作業幅の倍数に設定するための倍数設定ボタン50Dd、各枕地領域A1,A2を作業領域Aw(図5参照)に含むための枕地作業ボタン50De、及び、次画面への切り換えを指示する画面切り換えボタン50Df、などが表示されている。なお、枕地領域を作業幅の倍数に設定するための倍数設定ボタン50Ddに関しては、枕地領域を作業幅の1倍に設定する1倍設定ボタンや作業幅の2倍に設定する2倍設定ボタンなどを備えるようにしてもよい。
【0060】
目標経路生成部51Bは、図9に示す枕地領域設定画面50Dにおいて、必要な設定操作が行われた後に画面切り換えボタン50Dfが操作された場合に、表示デバイス50の表示画面を、作業時の車速やエンジン回転数などの作業条件の設定を可能にする作業条件設定画面50Eに切り換える(図10参照)。図10に示す作業条件設定画面50Eでは、ユーザにより設定された作業時の車速などの作業条件を表示する複数の作業条件表示部50Ea~50Ed、枕地作業の有無を表示する枕地作業表示部50Ee、及び、次画面への切り換えを指示する画面切り換えボタン50Ef、などが表示されている。
【0061】
目標経路生成部51Bは、図10に示す作業条件設定画面50Eにおいて、画面切り換えボタン50Ceが操作された場合に情報取得処理を終了する。そして、図6に示す登録圃場表示画面50Aにて選択された圃場Adに対して、情報取得処理で取得した各種の情報を考慮した目標経路Pを生成する目標経路生成処理を行う。
【0062】
具体的には、目標経路生成部51Bは、例えば、図5に示す圃場Adに対して、図9に示す枕地領域設定画面50Dにおいて第1枕地設定ボタン50Daと倍数設定ボタン50Ddとが操作された場合は、図5に示すように、圃場Adの領域特定枠F内に一対の第1枕地領域A1と一対の第2枕地領域A2とを作業幅の倍数分で確保し、それらの枕地領域A1,A2を除いた領域特定枠F内の中央側領域A3を矩形の作業領域Awに特定する。そして、目標経路生成部51Bは、図7に示す選択圃場表示画面50Bにおいて圃場Adの左下側部位に開始位置Sが選択され、図8に示す作業装置選択画面50Cにて播種装置3が選択された場合は、図5に示すように、圃場Adの作業領域Awに対して、播種装置3の作業幅に応じた所定間隔をあけて並列に配置される複数の作業経路P1を生成し、一対の第1枕地領域A1に対して、複数の作業経路P1を開始位置SからトラクタV1の走行順に接続する複数の方向転換経路P2を生成する。
【0063】
これにより、目標経路生成部51Bは、図5に示す圃場Adに対して、ユーザの任意設定に基づく作業領域Awの設定や目標経路Pの生成などを行うことができる。そして、生成された目標経路Pは、播種装置3の各繰出部3Bbによる単位距離当たりの種子繰出量などを含む各種の設定内容などとともに端末記憶部51Cに記憶されている。
【0064】
図5に示す目標経路Pにおいて、各作業経路P1は、トラクタV1が播種作業を行いながら自動走行する経路である。各方向転換経路P2は、トラクタV1が播種作業を行わずに前の作業経路P1の終端地点から次の作業経路P1の始端地点に自動走行する経路である。各作業経路P1の始端地点は、トラクタV1が播種作業を開始する作業開始地点p1であり、各作業経路P1の終端地点は、トラクタV1が播種作業を停止する作業停止地点p2である。
【0065】
尚、図5に示す目標経路Pはあくまでも一例であり、目標経路生成部51Bは、トラクタV1や播種装置3の機種などに応じて異なる旋回半径や作業条数などの車体情報、及び、圃場Aa~Agに応じて異なる圃場の形状や大きさなどの圃場情報、などに基づいて、それらに適した種々の目標経路Pを生成することができる。
【0066】
目標経路Pは、車体情報や圃場情報などに関連付けされた状態で端末記憶部51Cに記憶されており、携帯通信端末5の表示デバイス50にて表示することができる。目標経路Pには、各作業経路P1におけるトラクタV1の走行方向や目標車速、及び、各方向転換経路P2におけるトラクタV1の目標車速や前輪操舵角、などが含まれている。
【0067】
端末制御ユニット51は、車載制御ユニット46からの送信要求指令に応じて、端末記憶部51Cに記憶されている圃場情報や目標経路Pなどを車載制御ユニット46に送信する。車載制御ユニット46は、受信した圃場情報や目標経路Pなどを車載記憶部46Gに記憶する。目標経路Pの送信に関しては、例えば、端末制御ユニット51が、トラクタV1が自動走行を開始する前の段階において、目標経路Pの全てを端末記憶部51Cから車載制御ユニット46に一挙に送信するようにしてもよい。又、端末制御ユニット51が、目標経路Pを所定距離ごとの複数の分割経路情報に分割して、トラクタV1が自動走行を開始する前の段階からトラクタV1の走行距離が所定距離に達するごとに、トラクタV1の順路に応じた所定数の分割経路情報を端末記憶部51Cから車載制御ユニット46に逐次送信するようにしてもよい。
【0068】
自動走行制御部46Fは、各種の自動走行開始条件を満たすためのユーザによる手動操作が行われてトラクタV1の走行モードが自動走行モードに切り換えられた状態において、携帯通信端末5の表示デバイス50に対するユーザのタッチ操作で自動走行の開始が指令された場合に、前述したGNSSを利用して測位ユニット70が測定したトラクタV1の現在位置や現在方位などを取得しながら、トラクタV1を登録作業地Aの目標経路Pに従って自動走行させる自動走行制御を開始する。
【0069】
自動走行制御部46Fは、自動走行制御の実行中に、例えば、ユーザにより携帯通信端末5の表示デバイス50が操作されて自動走行の終了が指令された場合や、運転部に搭乗しているユーザによってステアリングホイール35やアクセルペダルなどの手動操作具が操作された場合は、自動走行制御を終了するとともに走行モードを自動走行モードから手動走行モードに切り換える。
【0070】
自動走行制御部46Fによる自動走行制御には、エンジン13に関する自動走行用の制御指令をエンジン制御部46Aに送信するエンジン用自動制御処理、トラクタV1の車速や前後進の切り換えに関する自動走行用の制御指令を変速ユニット制御部46Bに送信する車速用自動制御処理、ステアリングに関する自動走行用の制御指令をステアリング制御部46Cに送信するステアリング用自動制御処理、及び、播種装置3などの作業装置に関する自動走行用の制御指令を作業装置制御部46Dに送信する作業用自動制御処理、などが含まれている。
【0071】
自動走行制御部46Fは、エンジン用自動制御処理においては、目標経路Pに含まれた設定回転数などに基づいてエンジン回転数の変更を指示するエンジン回転数変更指令、などをエンジン制御部46Aに送信する。エンジン制御部46Aは、自動走行制御部46Fから送信されたエンジン13に関する各種の制御指令に応じてエンジン回転数を自動で変更するエンジン回転数自動変更制御、などを実行する。
【0072】
自動走行制御部46Fは、車速用自動制御処理においては、目標経路Pに含まれた目標車速に基づいて主変速装置20の変速操作を指示する変速操作指令、及び、目標経路Pに含まれたトラクタV1の進行方向などに基づいて前後進切換装置21の前後進切り換え操作を指示する前後進切り換え指令、などを変速ユニット制御部46Bに送信する。変速ユニット制御部46Bは、自動走行制御部46Fから送信された主変速装置20や前後進切換装置21などに関する各種の制御指令に応じて、主変速装置20の作動を自動で制御する自動車速制御、及び、前後進切換装置21の作動を自動で制御する自動前後進切り換え制御、などを実行する。自動車速制御には、例えば、目標経路Pに含まれた目標車速が零速である場合に、主変速装置20を零速状態まで減速制御してトラクタV1の走行を停止させる自動減速停止処理などが含まれている。
【0073】
自動走行制御部46Fは、ステアリング用自動制御処理においては、目標経路Pに含まれた前輪操舵角などに基づいて左右の前輪11の操舵を指示する操舵指令、などをステアリング制御部46Cに送信する。ステアリング制御部46Cは、自動走行制御部46Fから送信された操舵指令に応じて、パワーステアリングユニット40の作動を制御して左右の前輪11を操舵する自動操舵制御、及び、前輪11の操舵角が閾値に達したときに、オートブレーキユニット41の作動を制御して旋回内側のブレーキ30を作動させる自動制動旋回制御、などを実行する。
【0074】
自動走行制御部46Fは、作業用自動制御処理においては、目標経路Pに含まれた作業開始地点p1に基づいて播種装置3の作業状態への切り換えを指示する作業開始指令、及び、目標経路Pに含まれた作業停止地点p2に基づいて播種装置3の非作業状態への切り換えを指示する作業停止指令、などを作業装置制御部46Dに送信する。作業装置制御部46Dは、自動走行制御部46Fから送信された播種装置3に関する各種の制御指令に応じて、昇降駆動ユニット43の作動を制御して、播種装置3を作業高さ位置まで下降させて作動させる自動作業開始制御、及び、播種装置3を非作業高さ位置まで上昇させて停止させる自動作業停止制御、などを実行する。
【0075】
尚、作業装置3がPTO軸29からの動力で駆動される播種装置やモーアなどである場合には、作業装置制御部46Dは、自動走行制御部46Fからの作業開始指令に基づく自動作業開始制御においては、PTOバルブユニット42と昇降駆動ユニット43の作動を制御することで、作業装置3を作業高さ位置まで下降させて作動させる。又、作業装置制御部46Dは、自動走行制御部46Fからの作業停止指令に基づく自動作業停止制御においては、PTOバルブユニット42と昇降駆動ユニット43の作動を制御することで、作業装置3を停止させて非作業高さ位置まで上昇させる。
【0076】
つまり、前述した自動走行ユニット4には、パワーステアリングユニット40、オートブレーキユニット41、PTOバルブユニット42、昇降駆動ユニット43、ローリングユニット44、車両状態検出機器45、車載制御ユニット46、測位ユニット70、及び、通信モジュール74,76、などが含まれている。そして、これらが適正に作動することにより、トラクタV1を目標経路Pに従って精度よく自動走行させることができるとともに、播種装置3による耕耘作業を適正に行うことができる。
【0077】
図3~4に示すように、トラクタV1には、トラクタV1の周囲を監視して、その周囲に存在する障害物を検知する障害物検知システム80が備えられている。障害物検知システム80が検知する障害物には、圃場Aa~Agにて作業する作業者などの人物や他の作業車両、及び、圃場Aa~Agに既存の電柱や樹木などが含まれている。
【0078】
図1図4に示すように、障害物検知システム80は、トラクタV1の周囲を撮像する4台のカメラ81~84、トラクタV1の周囲に存在する測定対象物までの距離を測定するアクティブセンサユニット85、各カメラ81~84からの画像を処理する画像処理装置86、及び、画像処理装置86からの情報とアクティブセンサユニット85からの測定情報とを統合処理して障害物を検知する障害物検知装置87、を有している。画像処理装置86及び障害物検知装置87は、マイクロコントローラなどが集積された電子制御ユニットや各種の制御プログラムなどによって構築されている。アクティブセンサユニット85、画像処理装置86、及び、障害物検知装置87は、車載制御ユニット46にCANを介して相互通信可能に接続されている。
【0079】
障害物検知システム80は、4台のカメラ81~84として、キャビン17から前方の所定範囲が撮像範囲に設定された前カメラ81、キャビン17から後方の所定範囲が撮像範囲に設定された後カメラ82、キャビン17から右方の所定範囲が撮像範囲に設定された右カメラ83、及び、キャビン17から左方の所定範囲が撮像範囲に設定された左カメラ84、を有している。
【0080】
前カメラ81及び後カメラ82は、トラクタV1の左右中心線上に配置されている。前カメラ81は、キャビン17の前端側における上部の左右中央箇所に、トラクタV1の前方側を斜め上方側から見下ろす前下がり姿勢で配置されている。これにより、前カメラ81は、トラクタV1の左右中心線を対称軸とする車体前方側の所定範囲が撮像範囲に設定されている。後カメラ82は、キャビン17の後端側における上部の左右中央箇所に、トラクタV1の後方側を斜め上方側から見下ろす後下がり姿勢で配置されている。これにより、後カメラ82は、トラクタV1の左右中心線を対称軸とする車体後方側の所定範囲が撮像範囲に設定されている。右カメラ83は、キャビン17の右端側における上部の前後中央箇所に、トラクタV1の右方側を斜め上方側から見下ろす右下がり姿勢で配置されている。これにより、右カメラ83は、車体右方側の所定範囲が撮像範囲に設定されている。左カメラ84は、キャビン17の左端側における上部の前後中央箇所に、トラクタV1の左方側を斜め上方側から見下ろす左下がり姿勢で配置されている。これにより、左カメラ84は、車体左方側の所定範囲が撮像範囲に設定されている。
【0081】
アクティブセンサユニット85は、キャビン17から前方の所定範囲が測定範囲に設定された前ライダーセンサ85A、キャビン17から後方の所定範囲が測定範囲に設定された後ライダーセンサ85B、及び、キャビン17から右方の所定範囲とキャビン17から左方の所定範囲とが測定範囲に設定されたソナー85C、を有している。各ライダーセンサ85A,85Bは、測定光の一例であるレーザ光(例えばパルス状の近赤外レーザ光)を使用して測定範囲での測定を行う測定部85Aa,85Baと、測定部85Aa,85Baからの測定情報に基づいて距離画像の生成などを行うライダー制御部85Ab,85Bbとを有している。ソナー85Cは、右超音波センサ85Caと左超音波センサ85Cbと単一のソナー制御部85Ccとを有している。各ライダー制御部85Ab,85Bb及びソナー制御部85Ccは、マイクロコントローラなどが集積された電子制御ユニットや各種の制御プログラムなどによって構築されている。各ライダー制御部85Ab,85Bb及びソナー制御部85Ccは、障害物検知装置87にCANを介して相互通信可能に接続されている。
【0082】
各ライダーセンサ85A,85Bにおいて、各測定部85Aa,85Baは、照射したレーザ光が測距点に到達して戻るまでの往復時間に基づいて測距点までの距離を測定するTOF(Time Of Flight)方式により、各測定部85Aa,85Baから測定範囲の各測距点(測定対象物の一例)までの距離を測定する。各測定部85Aa,85Baは、測定範囲の全体にわたって、レーザ光を高速で縦横に走査して、走査角(座標)ごとの測距点までの距離を順次測定することで、測定範囲において3次元の測定を行う。各測定部85Aa,85Baは、測定範囲の全体にわたってレーザ光を高速で縦横に走査したときに得られる各測距点からの反射光の強度(以下、反射強度と称する)を順次測定する。各測定部85Aa,85Baは、測定範囲の各測距点までの距離や各反射強度などをリアルタイムで繰り返し測定する。各ライダー制御部85Ab,85Bbは、各測定部85Aa,85Baが測定した各測距点までの距離や各測距点に対する走査角(座標)などの測定情報から、距離画像を生成するとともに障害物と推定される測距点群を抽出し、抽出した測距点群に関する測定情報を、障害物候補に関する測定情報として障害物検知装置87に送信する。
【0083】
前ライダーセンサ85A及び後ライダーセンサ85Bは、前カメラ81及び後カメラ82と同様にトラクタV1の左右中心線上に配置されている。前ライダーセンサ85Aは、キャビン17の前端側における上部の左右中央箇所に、トラクタV1の前方側を斜め上方側から見下ろす前下がり姿勢で配置されている。これにより、前ライダーセンサ85Aは、トラクタV1の左右中心線を対称軸とする車体前方側の所定範囲が測定部85Aaによる測定範囲に設定されている。後ライダーセンサ85Bは、キャビン17の後端側における上部の左右中央箇所に、トラクタV1の後方側を斜め上方側から見下ろす後下がり姿勢で配置されている。これにより、後ライダーセンサ85Bは、トラクタV1の左右中心線を対称軸とする車体後方側の所定範囲が測定部85Baによる測定範囲に設定されている。
【0084】
ソナー85Cにおいて、ソナー制御部85Ccは、左右の超音波センサ85Ca,85Cbによる超音波の送受信に基づいて、測定範囲における測定対象物の存否を判定する。ソナー制御部85Ccは、発信した超音波が測距点に到達して戻るまでの往復時間に基づいて測距点までの距離を測定するTOF(Time Of Flight)方式により、各超音波センサ85Ca,85Cbから測定対象物までの距離を測定し、測定した測定対象物までの距離と測定対象物の方向とを、障害物候補に関する測定情報として障害物検知装置87に送信する。
【0085】
右超音波センサ85Caは、キャビン17における右側の前輪11と右側の後輪12との間に配置された右側の乗降ステップ部(図示せず)に車体右外向き姿勢で取り付けられている。これにより、右超音波センサ85Caは、車体右外側の所定範囲が測定範囲に設定されている。左超音波センサ85Cbは、キャビン17における左側の前輪11と左側の後輪12との間に配置された左側の乗降ステップ部17Aに車体左外向き姿勢で取り付けられている。これにより、左超音波センサ85Cbは、車体左外側の所定範囲が測定範囲に設定されている。
【0086】
画像処理装置86は、各カメラ81~84から順次送信される画像に対して画像処理を行う。画像処理装置86には、登録圃場にて作業する作業者などの人物や他の作業車両、及び、登録圃場に既存の電柱や樹木などを障害物として認識するための学習処理が施されている。
【0087】
画像処理装置86は、各カメラ81~84から順次送信される画像を合成してトラクタV1の全周囲画像(例えばサラウンドビュー)を生成し、生成した全周囲画像や各カメラ81~84からの画像を、トラクタ側の表示制御部46Eや携帯通信端末側の表示制御部51Aに送信する。
【0088】
これにより、全周囲画像生成部86Aが生成した全周囲画像やトラクタV1の走行方向の画像などを、トラクタV1の液晶モニタ37や携帯通信端末5の表示デバイス50などにおいて表示することができる。そして、この表示により、トラクタV1の周囲の状況や走行方向の状況をユーザに視認させることができる。
【0089】
画像処理装置86は、各カメラ81~84から順次送信される画像に基づいて、各カメラ81~84のいずれかの撮像範囲においてトラクタV1の走行に支障を来たす障害物が存在するか否かを判別する。障害物が存在する場合は、障害物が存在する画像上での障害物の座標を求める座標算出処理を行い、求めた障害物の座標を、各カメラ81~84の取り付け位置や取り付け角度などに基づいて、車体座標原点を基準にした座標に変換する。そして、その変換後の座標と予め設定した距離算出基準点とにわたる直線距離を、距離算出基準点から障害物までの距離として求め、変換後の座標と求めた障害物までの距離とを障害物に関する検知情報として障害物検知装置87に送信する。一方、障害物が存在しない場合は、障害物が未検知であることを障害物検知装置87に送信する。
【0090】
このように、各カメラ81~84の撮像範囲のいずれかに障害物が存在する場合は、画像処理装置86が、障害物の検知情報を障害物検知装置87に送信することから、障害物検知装置87は、その障害物の検知情報を受け取ることにより、各カメラ81~84のいずれかの撮像範囲に障害物が存在することを検知することができるとともに、その障害物の位置及び障害物までの距離を検知することができる。又、各カメラ81~84の撮像範囲のいずれにも障害物が存在しない場合は、画像処理装置86が、障害物の未検知を障害物検知装置87に送信することから、障害物検知装置87は、各カメラ81~84の撮像範囲のいずれにも障害物が存在しないことを検知することができる。
【0091】
障害物検知装置87は、物体の判別精度が高い画像処理装置86からの障害物に関する検知情報と、測距精度の高いアクティブセンサユニット85からの障害物候補に関する測定情報とが整合した場合に、アクティブセンサユニット85から得た障害物候補までの距離を障害物までの距離として採用する。これにより、障害物検知装置87は、物体の判別精度及び測距精度の高い障害物に関する検知情報を取得することができる。障害物検知装置87は、取得した障害物に関する検知情報を車載制御ユニット46に送信する。
【0092】
図3~4に示すように、車載制御ユニット46には、障害物検知装置87からの検知情報に基づいて障害物との衝突を回避する衝突回避制御部46Hが含まれている。衝突回避制御部46Hは、マイクロコントローラなどが集積された電子制御ユニットや各種の制御プログラムなどによって構築されている。衝突回避制御部46Hは、車載制御ユニット46の他の制御部46A~46F、アクティブセンサユニット85、画像処理装置86、及び、障害物検知装置87に、CANを介して相互通信可能に接続されている。
【0093】
衝突回避制御部46Hは、障害物検知装置87からの検知情報に基づいて障害物までの距離などを取得し、取得した障害物までの距離などに応じて、トラクタV1及び携帯通信端末5に備えられた報知ブザーや報知ランプなどの報知器を作動させる報知処理、トラクタV1の車速を低下させる自動減速処理、トラクタV1の走行を停止させる自動走行停止処理、などの障害物に対する衝突回避処理を適宜行うように構成されている。
【0094】
図3~4に示すように、車載制御ユニット46には、トラクタV1の播種装置3に種子を補給するときのトラクタV1の待機位置(以下、補給用待機位置と称する)p0(図5参照)を設定する待機位置設定部46Kが含まれている。待機位置設定部46Kは、マイクロコントローラなどが集積された電子制御ユニットや各種の制御プログラムなどによって構築されている。待機位置設定部46Kは、車載制御ユニット46の他の制御部46A~46F,46Hなどに、CANを介して相互通信可能に接続されている。
【0095】
待機位置設定部46Kは、前述したGNSSを利用して測位ユニット70が測定するトラクタV1の位置情報、及び、トラクタV1の周辺に存在する各圃場Aa~Ag(図5~6参照)に関する情報などに基づいて、作業対象の圃場Aa~AgへのトラクタV1の手動走行を検知した場合に待機位置取得制御を実行する。
【0096】
以下、図11のフローチャートに基づいて、図5に示す圃場Adでの播種作業における待機位置設定部46Kの待機位置取得制御について説明する。
【0097】
待機位置設定部46Kは、トラクタV1の圃場Adへの手動走行を検知するのに伴って、測位ユニット70が測定するトラクタV1の位置情報からトラクタV1の手動走行経路Rmを取得する経路取得処理を開始する(ステップ#1)。
【0098】
待機位置設定部46Kは、取得中の手動走行経路Rmと、圃場Adに関する情報に含まれた圃場Adの外形OLとに基づいて、トラクタV1が圃場Ad外から圃場Ad内に進入したか否かを判定する第1判定処理を行う(ステップ#2)。
具体的には、取得中の手動走行経路Rmが圃場Adの外形OLと交差したか否かを判定する。
【0099】
待機位置設定部46Kは、第1判定処理において、トラクタV1が圃場Ad内に進入するまでの間は経路取得処理を継続し、トラクタV1が圃場Ad内に進入した場合に、トラクタV1が圃場Ad外から圃場Ad内に進入したときの進入地点を取得する進入地点取得処理を行い(ステップ#3)、取得した進入地点を補給用待機位置p0に設定する待機位置設定処理を行う(ステップ#4)。
具体的には、取得中の手動走行経路Rmが圃場Adの外形OLと交差した場合にトラクタV1が圃場Ad内に進入したと判定し、手動走行経路Rmと圃場Adの外形OLとの交点を、圃場Adに対するトラクタV1の進入地点とし、この進入地点を補給用待機位置p0に設定して車載記憶部46Gに記憶する。
【0100】
待機位置設定部46Kは、待機位置設定処理を行った後にトラクタV1が自動走行の開始位置Sに到達したか否かを判定する第2判定処理を行う(ステップ#5)。
【0101】
待機位置設定部46Kは、第2判定処理において、トラクタV1が自動走行の開始位置Sに到達するまでの間は経路取得処理を継続し、トラクタV1が自動走行の開始位置Sに到達した場合に、開始位置Sに至るまでの手動走行経路Rmを車載記憶部46Gに記憶して経路取得処理を終了し(ステップ#6)、その後、待機位置取得制御を終了する。
【0102】
自動走行制御部46Fは、自動走行制御を実行してトラクタV1を目標経路Pに従って自動走行させる自動走行状態において、トラクタV1を補給用待機位置p0にて待機させる待機条件が成立したか否かを判定し、待機条件が成立した場合に、トラクタV1を現在位置から補給用待機位置p0まで自動走行させて補給用待機位置p0にて待機させる種子補給用移動制御を実行する。
【0103】
具体的には、この第1実施形態ではトラクタV1が播種仕様に構成されていることから、自動走行制御部46Fは、播種装置3の各貯留部3Baに備えられた残量センサ45A(図3参照)にて、いずれかの貯留部3Baにおける種子の残量が種子補給用の設定値まで低下したことが検出された場合に、待機条件が成立したと判定するように設定されている。
【0104】
つまり、自動走行制御部46Fは、自動走行制御によるトラクタV1の自動走行状態において、各残量センサ45Aからの検出情報に基づいて、播種装置3のいずれかの貯留部3Baにおける種子の残量が種子補給用の設定値まで低下したか否かを判定し、いずれかの貯留部3Baにおける種子の残量が種子補給用の設定値まで低下した場合に種子補給用移動制御を実行する。
【0105】
尚、この第1実施形態における種子補給用の設定値は、目標経路Pのうちの単一の作業経路P1においてトラクタV1が自動走行したときに消費される種子量よりも大きい値に設定されている。
【0106】
以下、図12のフローチャートに基づいて、図5に示す圃場Adでの播種作業における自動走行制御部46Fの種子補給用移動制御について説明する。
【0107】
自動走行制御部46Fは、種子補給用移動制御の開始に伴って、貯留部3Baにおける種子の残量が種子補給用の設定値まで低下したことを携帯通信端末5の表示デバイス50などによってユーザに報知する残量低下報知処理を行う(ステップ#11)。
【0108】
自動走行制御部46Fは、目標経路PとトラクタV1の現在位置とに基づいて、トラクタV1が走行中の作業経路P1における作業停止地点(終端地点)p2を種子補給用の中断位置p3に設定する中断位置設定処理と、中断位置p3に対する次の作業開始地点(次の作業経路P1の始端地点)p1を種子補給後の再開位置p4に設定する再開位置設定処理とを行う(ステップ#12~13)。
【0109】
自動走行制御部46Fは、上記の位置設定後に、目標経路Pのうちの未走行経路(図5に示す目標経路Pのうちの細線で示す経路)と車載記憶部46Gに記憶された手動走行経路Rmとを利用して種子補給用の中断位置p3から補給用待機位置p0にわたる最短の補給用移動経路Pm1を生成する補給用経路生成処理と、手動走行経路Rmを利用して補給用待機位置p0から種子補給後の再開位置p4にわたる最短の再開用移動経路Pm2を生成する再開用経路生成処理とを行う(ステップ#14~15)。
【0110】
尚、図示は省略するが、再開用移動経路Pm2には、その経路始端部においてトラクタV1を後進姿勢から前進姿勢に方向転換させる方向転換経路が含まれている。
【0111】
自動走行制御部46Fは、トラクタV1が中断位置p3に到達したか否かを判定する第3判定処理を行い(ステップ#16)、第3判定処理において、トラクタV1が中断位置p3に到達するまでの間は自動走行制御による播種作業を継続し、トラクタV1が中断位置p3に到達した場合に自動走行制御を中断する自動走行制御中断処理を行う(ステップ#17)。
【0112】
自動走行制御部46Fは、自動走行制御の中断後に、補給用移動経路Pm1に従ってトラクタV1を中断位置p3から補給用待機位置p0まで自動走行させる補給用移動処理と、トラクタV1が補給用待機位置p0への移動走行中であることを携帯通信端末5の表示デバイス50などによってユーザに報知する補給用移動報知処理とを開始する(ステップ#18~19)。
【0113】
自動走行制御部46Fは、トラクタV1が補給用待機位置p0に到達したか否かを判定する第4判定処理を行い(ステップ#20)、第4判定処理において、トラクタV1が補給用待機位置p0に到達するまでの間は補給用移動処理と補給用移動報知処理とを継続し、トラクタV1が補給用待機位置p0に到達した場合に、補給用移動処理と補給用移動報知処理とを終了してトラクタV1を補給用待機位置p0にて待機させる(ステップ#21~22)。
【0114】
自動走行制御部46Fは、トラクタV1の補給用待機位置p0での待機中に、携帯通信端末5の表示デバイス50に対するユーザのタッチ操作でトラクタV1の自動走行制御による自動走行の再開が指令されたか否かを判定する第5判定処理を行う(ステップ#23)。
【0115】
自動走行制御部46Fは、第5判定処理において、自動走行の再開が指令されるまでの間は、各貯留部3Baに対する種子の補給が完了していないと判断してトラクタV1を補給用待機位置p0にて待機させ、自動走行の再開が指令された場合に、各貯留部3Baに対する種子の補給が完了した判断して、再開用移動経路Pm2に従ってトラクタV1を補給用待機位置p0から再開位置p4まで自動走行させる再開用移動処理と、再開位置p4への移動走行中であることを携帯通信端末5の表示デバイス50などによってユーザに報知する再開用移動報知処理とを開始する(ステップ#24~25)。
【0116】
自動走行制御部46Fは、トラクタV1が再開位置p4に到達したか否かを判定する第6判定処理を行い(ステップ#26)、第6判定処理において、トラクタV1が再開位置p4に到達するまでの間は再開用移動処理と再開用移動報知処理とを継続し、トラクタV1が再開位置p4に到達した場合に、再開用移動処理と再開用移動報知処理とを終了する(ステップ#27~28)。
【0117】
自動走行制御部46Fは、再開用移動処理と再開用移動報知処理とを終了した後、トラクタV1の自動走行制御による自動走行を再開させる自動走行制御再開処理を行い(ステップ#29)、その後、種子補給用移動制御を終了する。
【0118】
以上の構成により、この作業車両用の自動走行システムにおいては、待機位置設定部46Kが、作業対象の圃場Aa~AgへのトラクタV1の手動走行を検知した場合に、待機位置取得制御を実行して、作業対象の圃場Aa~Agに対するトラクタV1の進入地点を取得し、この進入地点を補給用待機位置p0に設定する。これにより、ユーザは圃場Aa~Agごとに補給用待機位置p0を設定する必要がなくなる。
【0119】
そして、補給用待機位置p0に設定される進入地点は、補給用の種子が積み込まれた運搬車などを停車させることができる農道Rfなどに圃場Aa~Agを接続する圃場Aa~Agの出入口である。そのため、補給用待機位置p0にて待機しているトラクタV1の播種装置3に対して種子を補給する場合には、種子が積み込まれた運搬車などを補給用待機位置p0のトラクタV1に対して容易に接近させることができる。これにより、運搬車などからトラクタV1の播種装置3への種子補給に要する労力を軽減することができる。
【0120】
又、この作業車両用の自動走行システムにおいては、播種装置3における種子の残量が種子補給用の設定値まで低下した場合に、自動走行制御部46Fが、種子補給用移動制御を実行して、トラクタV1を補給用待機位置p0まで移動させた後に補給用待機位置p0にて待機させる。これにより、ユーザは、トラクタV1を中断位置p3から補給用待機位置p0まで手動走行させる必要がなくなる。
【0121】
更に、この作業車両用の自動走行システムにおいては、トラクタV1の補給用待機位置p0での待機中に、播種装置3に対する種子の補給が完了して、携帯通信端末5の表示デバイス50に対するユーザのタッチ操作で自動走行制御の再開が指令された場合には、自動走行制御部46Fが、トラクタV1を補給用待機位置p0から再開位置p4まで移動させた後、自動走行制御による目標経路Pに従ったトラクタV1の自動走行を再開させる。これにより、ユーザは、トラクタV1を補給用待機位置p0から再開位置p4まで手動走行させる必要がなくなる。
【0122】
つまり、各圃場Aa~Agにおける補給用待機位置p0の設定や補給用待機位置p0に対するトラクタV1の移動を自動で適正に行えることから、トラクタV1の播種装置3に対する補給作業を、ユーザにかかる負担の軽減を図りながら効率よく行うことができる。
【0123】
その上、この作業車両用の自動走行システムにおいては、播種作業の中断位置p3が現在走行中の作業経路P1の作業停止地点p2に設定されることから、作業経路P1の途中で播種装置3における種子の残量が種子補給用の設定値まで低下した場合であっても、トラクタV1は、現在走行中の作業経路P1の作業停止地点p2まで自動走行制御による播種作業を継続することができる。そして、種子補給後の再開位置p4が中断位置p3に対する次の作業開始地点(次の作業経路P1の始端地点)p1に設定されることから、例えば、種子補給後の再開位置p4(播種作業の中断位置p3)が現在走行中の作業経路P1の途中位置に設定される場合に比較して、トラクタV1を再開位置p4まで自動走行させる再開用移動処理において、トラクタV1を再開位置p4の近くまで前進走行させた後に、後進状態に切り換えて再開位置p4まで後進走行させる必要がなくなる。その結果、トラクタV1を再開位置p4まで効率よく自動走行させることができる。
【0124】
又、この作業車両用の自動走行システムにおいては、補給用移動処理と再開用移動処理のいずれにおいても、トラクタV1が目標経路Pの未走行経路や手動走行経路Rmに従って走行することから、トラクタV1にて圃場Aa~Agの既作業領域Awaが踏み荒らされる虞や、圃場Aa~Agの未作業領域Awbに播種作業に悪影響を及ぼす轍が形成される虞を回避することができる。
【0125】
図示は省略するが、自動走行制御部46Fには、複数台のトラクタV1を目標経路Pに従って併走させる併走作業(図13参照)を可能にする併走用制御モジュールが含まれている。併走用制御モジュールは、併走作業を可能にするための各種の手動設定操作が行われた状態で、携帯通信端末5の表示デバイス50に対するユーザのタッチ操作で併走作業の開始が指令された場合に、前述したGNSS、障害物検知システム80、及び、衝突回避制御部46Hなどを利用して、複数台のトラクタV1を目標経路Pに従って併走させる自動併走制御を実行する。
【0126】
併走作業においては、複数台のトラクタV1のうち、先頭を走るトラクタV1の待機位置設定部46Kは、前述した進入地点取得処理で取得した圃場Aa~Agに対するトラクタV1の進入地点を補給用待機位置p0に設定する。後続するトラクタV1の待機位置設定部46Kは、併走作業時の走行順に応じて、先頭のトラクタV1の補給用待機位置p0から所定間隔を置いた圃場内の所定位置を補給用待機位置p0に設定する。そして、各トラクタV1の併走用制御モジュールは、自動併走制御の実行中に、いずれかのトラクタV1の播種装置3における種子の残量が種子補給用の設定値まで低下した場合に、前述した種子補給用移動制御を実行して、各トラクタV1を併走作業時の走行順に所定の車間距離をあけた状態で播種作業の中断位置p3から各補給用待機位置p0まで移動させた後に各補給用待機位置p0にて待機させる。
【0127】
又、各トラクタV1の併走用制御モジュールは、各トラクタV1の各補給用待機位置p0での待機中に、各トラクタV1の播種装置3に対する種子の補給が完了して、携帯通信端末5の表示デバイス50に対するユーザのタッチ操作で自動併走制御の再開が指令された場合には、各トラクタV1を各補給用待機位置p0から各再開位置p4まで移動させた後、自動併走制御による目標経路Pに従ったトラクタV1の自動走行を再開させる。
【0128】
これにより、図13に示すように複数台(図13では2台)のトラクタV1を目標経路Pに従って併走させる併走作業においても、各圃場Aa~Agにおける補給用待機位置p0の設定や補給用待機位置p0に対するトラクタV1の移動を自動で適正に行えることから、トラクタV1の播種装置3に対する補給作業を、ユーザにかかる負担の軽減を図りながら効率よく行うことができる。
【0129】
尚、例えば、図13に示すように、2台のトラクタV1を目標経路Pに従って横並びに併走させる併走作業において、先行するトラクタV1が、その運転部にユーザが搭乗している有人機であり、この有人機に随伴する後方のトラクタV1が無人機である場合には、各トラクタV1の併走用制御モジュール及び待機位置設定部46Kが以下のような制御作動を行うようにしてもよい。
【0130】
有人機の併走用制御モジュールは、自動併走制御の実行中に有人機における走行モードの自動走行モードから手動走行モードへの切り換えを検知した場合に、自動併走制御を中断するとともに、その中断地点を無人機に送信する中断地点送信処理を行う。又、有人機の併走用制御モジュールは、有人機の測位ユニット70が測定する有人機の位置情報から有人機の手動走行経路Rmを取得する経路取得制御と、取得した有人機の手動走行経路Rmを無人機に送信する取得経路送信制御とを実行する。
【0131】
無人機の併走用制御モジュールは、自動併走制御の実行中に有人機の中断地点を受信した場合は、現在走行中の作業経路P1における有人機の中断地点に相当する地点まで自動併走制御を継続した後に自動併走制御を中断する。そして、無人機の併走用制御モジュールは、有人機の手動走行経路Rmを受信した場合は、自動併走制御の中断後に、有人機から所定の車間距離をあけた状態で手動走行経路Rmに従って無人機を有人機に追従走行させる手動経路追従制御を実行する。手動経路追従制御には、無人機の待機位置設定部46Kが、無人機の障害物検知装置87からの検知情報を取得し、取得した検知情報に基づいて有人機の停止を検知した場合に、有人機の停止位置から所定間隔を置いた有人機の後方位置を無人機の待機位置p0に設定する待機位置設定処理と、待機位置設定部46Kにて無人機の待機位置p0が設定された場合に、無人機の併走用制御モジュールが無人機を待機位置p0にて自動停止させる待機停止処理とが含まれている。
【0132】
これにより、例えば、有人機に搭乗しているユーザが、携帯通信端末5の表示デバイス50などを介して、いずれかのトラクタV1における種子の残量が種子補給用の設定値まで低下したことを把握して、有人機が自動併走制御で現在走行中の作業経路P1の作業停止地点p2(中断位置p3)に到達した後に、有人機を所望の補給用待機位置p0まで移動させる手動走行を行った場合には、無人機が現在走行中の作業経路P1の作業停止地点p2(中断位置p3)に到達した後に、自動併走制御を中断して手動経路追従制御を実行する。これにより、図13に二点鎖線で示すように、無人機を有人機の手動走行経路Rmに従って有人機に追従させることができる。そして、有人機が補給用待機位置p0に到達して補給用待機位置p0にて停止した場合には、無人機を有人機の停止位置から所定間隔を置いた待機位置p0にて自動停止させることができる。
【0133】
〔第2実施形態〕
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る作業車両用の自動走行システムを作業車両の一例である乗用田植機に適用した第2実施形態を図面に基づいて説明する。
【0134】
尚、この第2実施形態で例示する作業車両用の自動走行システムは、第1実施形態で例示した作業車両用の自動走行システムとは、適用される作業車両に加えて、待機位置設定部46K及び自動走行制御部46Fの制御作動などが異なることから、適用される作業車両の主要構成や待機位置設定部46K及び自動走行制御部46Fの制御作動、などについて説明する。
【0135】
図14~15に示すように、この第2実施形態に例示された乗用田植機V2は、第1実施形態で例示したトラクタV1に相当する走行車体1と、走行車体1の後部にリンク機構(図示せず)を介して連結される苗植え用の作業装置(以下、苗植付装置と称する)3とを有している。これにより、この乗用田植機V2は、その後部に備えられた苗植付装置3によって作業対象の圃場Adに対して苗を植え付けることができる。苗植付装置3は、走行車体1の後部に昇降可能かつローリング可能に連結されている。
尚、図14~15には、圃場Aa~Agのうちの圃場Adが作業対象に選択された場合が例示されている。又、乗用田植機V2には、苗植付装置3に加えて施肥装置や薬剤散布装置などの作業装置を備えることができる。
【0136】
図14~15に示すように、苗植付装置3には、農用資材の一例であるマット苗が載置される苗載台3Cが備えられている。又、図示は省略するが、苗植付装置3には、複数の整地フロート、動力分配ユニット、横送り機構、作業条数分の縦送り機構と植付機構、及び、これらを支持する植付フレーム、などが備えられている。
【0137】
苗載台3Cは、作業条数分のマット苗を載置するように形成されている。苗載台3Cは、植付フレームに左右方向にスライド移動可能に支持されている。各整地フロートは、作業走行時に機体の走行に伴って圃場の泥面を整地する。動力分配ユニットは、作業伝動系を介して伝えられるエンジンからの動力を横送り機構と各植付機構とに分配する。横送り機構は、動力分配ユニットからの動力で駆動され、この駆動により、苗載台3Cをマット苗の左右幅に対応する一定ストロークで左右方向に往復駆動させる。縦送り機構は、苗載台3Cが左右のストローク端に達するごとに横送り機構にて駆動され、この駆動により、苗載台3Cに載置された各マット苗を所定ピッチで下方に縦送りする。各植付機構は、植え付け条間に対応する一定間隔で左右方向に配置されている。各植付機構は、一対の植付爪を有するロータリ式に構成されている。各植付機構は、動力分配ユニットからの動力で駆動され、この駆動により、各マット苗の下端から苗を所定量ずつ掻き取って圃場に植え付ける。植付フレームには、左右方向に延びる角パイプ状の主部材、主部材から上方に延びる支持フレーム、及び、主部材から後方に延びる複数の伝動ケース、などが含まれている。各伝動ケースの後端部には、左右一対の植付機構が駆動可能に取り付けられている。各伝動ケースの内部には、動力分配ユニットからの動力を植付機構に伝える伝動機構が備えられている。
【0138】
乗用田植機V2の車両状態検出機器45には、第1実施形態で例示した複数の残量センサ45A(図3参照)の代わりに、苗植付装置3の苗載台3Cに載置された作業条数分のマット苗のうちのいずれかの残量が苗補給用の設定値まで低下したことを検出する複数の苗残量センサ45B(図3にて二点鎖線で記載)が含まれている。
【0139】
図14~15には、圃場Adが作業対象に選択された状態において、図7に示す選択圃場表示画面50Bにて圃場Adの左下側部位に開始位置Sが選択され、図8に示す作業装置選択画面50Cにて苗植付装置3が選択され、図9に示す枕地領域設定画面50Dにて第1枕地設定ボタン50Daと枕地作業ボタン50Deとが操作された場合に、圃場Adに対して目標経路生成部51Bにて特定される作業領域Awや生成される目標経路Pなどの一例が示されている。
【0140】
具体的には、図14~15に示す圃場Adに対して、圃場Adの領域特定枠F内に一対の第1枕地領域A1と一対の第2枕地領域A2とが作業幅の倍数分で確保され、それらの枕地領域A1,A2を除いた領域特定枠F内の中央側領域A3が矩形の第1作業領域Aw1に特定され、各枕地領域A1,A2が枠状の第2作業領域Aw2に特定されている。そして、第1作業領域Aw1に対して、苗植付装置3の作業条数(作業幅)に応じた所定間隔をあけて並列に配置される複数の第1作業経路P1が生成され、一対の第1枕地領域A1に対して、複数の第1作業経路P1を開始位置Sから乗用田植機V2の走行順に接続する複数の第1方向転換経路P2が生成されている。又、第2作業領域Aw2に対して、領域特定枠Fに沿った4本の第2作業経路P3と、第1作業領域Aw1における最終の第1作業経路P1を第2作業領域Aw2における最初の第2作業経路P3に接続する単一の第2方向転換経路P4と、各第2作業経路P3を乗用田植機V2の走行順に接続する3本の第3方向転換経路P5とが生成されている。
【0141】
尚、図14~15に示す目標経路Pはあくまでも一例であり、目標経路生成部51Bは、乗用田植機V2の機種などに応じて異なる旋回半径や作業条数などの車体情報、及び、圃場Aa~Agに応じて異なる圃場の形状や大きさなどの圃場情報、などに基づいて、それらに適した種々の目標経路Pを生成することができる。
【0142】
図示は省略するが、携帯通信端末5の表示デバイス50に表示される選択圃場表示画面50B(図7参照)においては、圃場Adの外形OLを特定する4つの圃場辺(外形特定線に相当)As1~As4(図14参照)のうち、乗用田植機V2の苗植付装置3に対する苗補給に適した圃場辺(図14~15では圃場辺As1)を選択するためのタッチ操作が可能になっている。待機位置設定部46Kは、そのタッチ操作が行われた場合に、タッチ操作に応じた圃場Adの圃場辺As1を補給用の圃場辺に指定する指定部としての機能を有している。これにより、例えば、図14~15に示すように、乗用田植機V2の方向転換が行われる一対の第1枕地領域A1のうちの一方が、補給用のマット苗が積み込まれた運搬車などを停車させることができる農道Rfなどに隣接している場合には、その一方の第1枕地領域A1に沿う圃場Adの圃場辺As1を苗補給用の圃場辺として指定することができる。又、例えば、乗用田植機V2の方向転換が行われる一対の第1枕地領域A1のうちの一方に沿う圃場辺As3に、苗補給に支障を来たす電柱や樹木などが存在する場合には、その圃場辺As3を補給用の圃場辺に指定しないことで、圃場辺As3が補給用の圃場辺に使用される虞を回避することができる。
【0143】
尚、この第2実施形態における苗補給用の設定値は、目標経路Pのうちの2本の第1作業経路P1において乗用田植機V2が自動走行したときに消費される苗量よりも大きい値に設定されている。
【0144】
待機位置設定部46Kは、自動走行制御部46Fの自動走行制御による乗用田植機V2の第1作業領域Aw1内での目標経路Pに従った自動走行において、各苗残量センサ45Bからの検出情報に基づいて、苗植付装置3の苗載台3Cに載置された作業条数分のマット苗のうちのいずれかの残量が苗補給用の設定値まで低下したことを検知した場合に待機位置取得制御を実行する。
【0145】
以下、図16のフローチャートに基づいて、図14に示す圃場Adでの苗植え作業における待機位置設定部46Kの待機位置取得制御について説明する。
【0146】
待機位置設定部46Kは、苗載台3Cに載置された作業条数分のマット苗のうちのいずれかの残量が苗補給用の設定値まで低下したことを検知するのに伴って、目標経路Pと乗用田植機V2の現在位置とに基づいて、乗用田植機V2が走行中の第1作業経路P1を特定する作業経路特定処理を行う(ステップ#31)。
【0147】
待機位置設定部46Kは、特定した第1作業経路(以下、特定作業経路と称する)P1での乗用田植機V2の走行方向が、選択圃場表示画面50Bに対するユーザのタッチ操作で選択された苗補給用の圃場辺As1に接近する方向か否かを判定する第7判定処理を行う(ステップ#32)。
【0148】
待機位置設定部46Kは、第7判定処理において乗用田植機V2の走行方向が苗補給用の圃場辺As1に接近する方向である場合は、特定作業経路P1と苗補給用の圃場辺As1とに基づいて、特定作業経路P1の延長線Lと苗補給用の圃場辺As1との交点を補給用待機位置p0aに設定する第1待機位置設定処理を行い(ステップ#33)、その後、待機位置取得制御を終了する。
【0149】
待機位置設定部46Kは、第7判定処理において乗用田植機V2の走行方向が苗補給用の圃場辺As1に接近する方向ではない場合は、特定作業経路P1の次に乗用田植機V2が走行する第1作業経路(以下、次工程作業経路と称する)P1と苗補給用の圃場辺As1とに基づいて、次工程作業経路P1の延長線Lと苗補給用の圃場辺As1との交点を補給用待機位置p0aに設定する第2待機位置設定処理を行い(ステップ#34)、その後、待機位置取得制御を終了する。
【0150】
自動走行制御部46Fは、自動走行制御による乗用田植機V2の第1作業領域Aw1内での目標経路Pに従った自動走行において、乗用田植機V2を補給用待機位置p0aにて待機させる第1待機条件が成立したか否かを判定し、第1待機条件が成立した場合に、乗用田植機V2を現在位置から補給用待機位置p0aまで自動走行させて補給用待機位置p0aにて待機させる苗補給用移動制御を実行する。
【0151】
具体的には、この第2実施形態では、作業車両が乗用田植機V2であり、苗載台3Cに備えられた複数の苗残量センサ45Bのいずれかにて、苗載台3Cに載置された作業条数分のマット苗のいずれかの残量が苗補給用の設定値まで低下したことが検出された場合に、待機位置設定部46Kが補給用待機位置p0aを設定することから、自動走行制御部46Fは、待機位置設定部46Kにて補給用待機位置p0aが設定された場合に、第1待機条件が成立したと判定するように設定されている。
【0152】
つまり、自動走行制御部46Fは、自動走行制御による乗用田植機V2の自動走行において、待機位置設定部46Kにて補給用待機位置p0aが設定されたか否かを判定し、補給用待機位置p0aが設定された場合に苗補給用移動制御を実行する。
【0153】
以下、図17~18のフローチャートに基づいて、図14に示す圃場Adでの苗植え作業における自動走行制御部46Fの苗補給用移動制御について説明する。
【0154】
自動走行制御部46Fは、苗補給用移動制御の開始に伴って、苗載台3Cに載置されたマット苗の残量が苗補給用の設定値まで低下したことを携帯通信端末5の表示デバイス50などによってユーザに報知する残量低下報知処理を行う(ステップ#41)。
【0155】
自動走行制御部46Fは、待機位置設定部46Kにて設定された補給用待機位置p0aが、特定作業経路P1の延長線Lと苗補給用の圃場辺As1との交点か否かを判定する第8判定処理を行う(ステップ#42)。
【0156】
自動走行制御部46Fは、第8判定処理において補給用待機位置p0aが特定作業経路P1の延長線Lと苗補給用の圃場辺As1との交点である場合は、目標経路Pと乗用田植機V2の現在位置とに基づいて、特定作業経路P1の作業停止地点(終端地点)p2を苗補給用の中断位置p3に設定する第1中断位置設定処理を行う(ステップ#43)。
【0157】
自動走行制御部46Fは、第8判定処理において補給用待機位置p0aが特定作業経路P1の延長線Lと苗補給用の圃場辺As1との交点ではないと判定した場合は、目標経路Pと乗用田植機V2の現在位置とに基づいて、次工程作業経路P1の作業停止地点(終端地点)p2を苗補給用の中断位置p3に設定する第2中断位置設定処理を行う(ステップ#44)。
【0158】
自動走行制御部46Fは、苗補給用の中断位置p3を設定した後、中断位置p3に対する次の作業開始地点(次の作業経路P1の始端地点)p1を苗補給後の再開位置p4に設定する再開位置設定処理と、苗補給用の中断位置p3から補給用待機位置p0aにわたる特定作業経路P1の延長線L又は次工程作業経路P1の延長線Lを補給用移動経路Pm3に設定し、かつ、この補給用移動経路Pm3と中断位置p3から再開位置p4にわたる第1方向転換経路P2とを再開用移動経路Pm4に設定する移動経路設定処理とを行う(ステップ#45~46)。
【0159】
自動走行制御部46Fは、乗用田植機V2が中断位置p3に到達したか否かを判定する第9判定処理を行い(ステップ#47)、第9判定処理において、乗用田植機V2が中断位置p3に到達するまでの間は自動走行制御による苗植え作業を継続し、乗用田植機V2が中断位置p3に到達した場合に自動走行制御を中断する自動走行制御中断処理を行う(ステップ#48)。
【0160】
自動走行制御部46Fは、自動走行制御の中断後に、補給用移動経路Pm3に従って乗用田植機V2を中断位置p3から補給用待機位置p0aまで自動走行させる補給用移動処理と、乗用田植機V2が補給用待機位置p0aへの移動走行中であることを携帯通信端末5の表示デバイス50などによってユーザに報知する補給用移動報知処理とを開始する(ステップ#49~50)。
【0161】
自動走行制御部46Fは、乗用田植機V2が補給用待機位置p0aに到達したか否かを判定する第10判定処理を行い(ステップ#51)、第10判定処理において、乗用田植機V2が補給用待機位置p0aに到達するまでの間は補給用移動処理と補給用移動報知処理とを継続し、乗用田植機V2が補給用待機位置p0aに到達した場合に、補給用移動処理と補給用移動報知処理とを終了して乗用田植機V2を補給用待機位置p0aにて待機させる(ステップ#52~53)。
【0162】
自動走行制御部46Fは、乗用田植機V2の補給用待機位置p0aでの待機中に、携帯通信端末5の表示デバイス50に対するユーザのタッチ操作で乗用田植機V2の自動走行制御による自動走行の再開が指令されたか否かを判定する第11判定処理を行う(ステップ#54)。
【0163】
自動走行制御部46Fは、第11判定処理において、自動走行の再開が指令されるまでの間は、各貯留部3Baに対する種子の補給が完了していないと判断して乗用田植機V2を補給用待機位置p0aにて待機させ、自動走行の再開が指令された場合に、各貯留部3Baに対する種子の補給が完了した判断して、再開用移動経路Pm4に従って乗用田植機V2を補給用待機位置p0aから再開位置p4まで自動走行させる再開用移動処理と、再開位置p4への移動走行中であることを携帯通信端末5の表示デバイス50などによってユーザに報知する再開用移動報知処理とを開始する(ステップ#55~56)。
【0164】
自動走行制御部46Fは、乗用田植機V2が再開位置p4に到達したか否かを判定する第12判定処理を行い(ステップ#57)、第12判定処理において、乗用田植機V2が再開位置p4に到達するまでの間は再開用移動処理と再開用移動報知処理とを継続し、乗用田植機V2が再開位置p4に到達した場合に、再開用移動処理と再開用移動報知処理とを終了する(ステップ#58~59)。
【0165】
自動走行制御部46Fは、再開用移動処理と再開用移動報知処理とを終了した後、乗用田植機V2の自動走行制御による自動走行を再開させる自動走行制御再開処理を行い(ステップ#60)、その後、苗補給用移動制御を終了する。
【0166】
以上の構成により、この作業車両用の自動走行システムにおいては、待機位置設定部46Kが、苗植付装置3におけるマット苗の残量が苗補給用の設定値まで低下したことを検知した場合に、待機位置取得制御を実行して、作業対象の圃場Aa~Agにおける苗補給用の圃場辺As1と特定作業経路P1の延長線L又は次工程作業経路P1の延長線Lとの交点を取得し、この交点を補給用待機位置p0aに設定する。これにより、ユーザは圃場Aa~Agごとに補給用待機位置p0aを設定する必要がなくなる。
【0167】
そして、補給用待機位置p0aは、補給用のマット苗が積み込まれた運搬車などを停車させることができる農道Rfに隣接する苗補給用の圃場辺As1と、特定作業経路P1の延長線L又は次工程作業経路P1の延長線Lとの交点である。そのため、補給用待機位置p0aにて待機している乗用田植機V2の苗植付装置3に対してマット苗を補給する場合には、マット苗が積み込まれた運搬車などを補給用待機位置p0aの乗用田植機V2に対して容易に接近させることができる。これにより、運搬車などから乗用田植機V2の苗植付装置3への苗補給に要する労力を軽減することができる。
【0168】
又、この作業車両用の自動走行システムにおいては、苗植付装置3におけるマット苗の残量が苗補給用の設定値まで低下して待機位置設定部46Kにて補給用待機位置p0aが設定された場合に、自動走行制御部46Fが、苗補給用移動制御を実行して、乗用田植機V2を補給用待機位置p0aまで移動させた後に補給用待機位置p0aにて待機させる。これにより、ユーザは、乗用田植機V2を中断位置p3から補給用待機位置p0aまで手動走行させる必要がなくなる。
【0169】
更に、この作業車両用の自動走行システムにおいては、乗用田植機V2の補給用待機位置p0aでの待機中に、苗植付装置3の苗載台3Cに対するマット苗の補給が完了して、携帯通信端末5の表示デバイス50に対するユーザのタッチ操作で自動走行制御による乗用田植機V2の自動走行の再開が指令された場合に、自動走行制御部46Fが、乗用田植機V2を補給用待機位置p0aから再開位置p4まで移動させた後、自動走行制御による目標経路Pに従った乗用田植機V2の自動走行を再開させる。これにより、ユーザは、乗用田植機V2を補給用待機位置p0aから再開位置p4まで手動走行させる必要がなくなる。
【0170】
つまり、各圃場Aa~Agにおける補給用待機位置p0aの設定や補給用待機位置p0aに対する乗用田植機V2の移動を自動で適正に行えることから、乗用田植機V2の苗植付装置3に対する補給作業を、ユーザにかかる負担の軽減を図りながら効率よく行うことができる。
【0171】
その上、この作業車両用の自動走行システムにおいては、苗植え作業の中断位置p3が特定作業経路P1又は次工程作業経路P1の作業停止地点p2に設定されることから、作業経路P1の途中で苗植付装置3におけるマット苗の残量が苗補給用の設定値まで低下した場合であっても、乗用田植機V2は、特定作業経路P1又は次工程作業経路P1の作業停止地点p2まで自動走行制御による苗植え作業を継続することができる。そして、苗補給後の再開位置p4が中断位置p3に対する次の作業開始地点(次の作業経路P1の始端地点)p1に設定されることから、例えば、苗補給後の再開位置p4(苗植え作業の中断位置p3)が特定作業経路P1の途中位置に設定される場合に比較して、乗用田植機V2を再開位置p4まで自動走行させる再開用移動処理において、乗用田植機V2を再開位置p4の近くまで前進走行させた後に、後進状態に切り換えて再開位置p4まで後進走行させる必要がなくなる。その結果、乗用田植機V2を再開位置p4まで効率よく自動走行させることができる。
【0172】
又、苗植え作業の中断位置p3は、苗補給用の圃場辺As1に近い特定作業経路P1又は次工程作業経路P1の作業停止地点p2となり、又、苗補給後の再開位置p4は、苗補給用の圃場辺As1に近い中断位置p3に隣接する次の作業開始地点p1となる。そのため、中断位置p3から補給用待機位置p0aにわたる補給用移動経路Pm3と、補給用待機位置p0aから再開位置p4にわたる再開用移動経路Pm4とを短くすることができる。これにより、乗用田植機V2の中断位置p3から補給用待機位置p0aへの移動、及び、補給用待機位置p0aから再開位置p4への移動に要する時間を短くすることができる。
【0173】
更に、この作業車両用の自動走行システムにおいては、補給用移動処理と再開用移動処理のいずれにおいても、乗用田植機V2が特定作業経路P1又は次工程作業経路P1の延長線Lや第1方向転換経路P2に従って走行することから、乗用田植機V2にて圃場Aa~Agの既作業領域Awaが踏み荒らされる虞や、圃場Aa~Agの未作業領域Awbに苗植え作業に悪影響を及ぼす轍が形成される虞を回避することができる。
【0174】
待機位置設定部46Kは、携帯通信端末5の表示デバイス50に表示された経路取得ボタン(図示せず)に対するユーザのタッチ操作が行われた場合に、乗用田植機V2の圃場Aa~Agに対する圃場外での手動走行経路Rmを場外移動経路Pm5(図14~15参照)として取得する場外移動経路取得制御を実行する。
【0175】
以下、図19のフローチャートに基づいて、図14~15に示す圃場Adに対する待機位置設定部46Kの場外移動経路取得制御について説明する。
【0176】
待機位置設定部46Kは、経路取得ボタンに対するユーザのタッチ操作に伴って、測位ユニット70が測定する乗用田植機V2の位置情報から、乗用田植機V2の圃場Adに対する手動走行の開始地点p5を取得する開始地点取得処理を行い(ステップ#61)、その後、乗用田植機V2の手動走行経路Rmを取得する経路取得処理を開始する(ステップ#62)。
【0177】
待機位置設定部46Kは、取得中の手動走行経路Rmと、圃場Adに関する情報に含まれた圃場Adの領域特定枠Fとに基づいて、乗用田植機V2が圃場Adの走行領域に到達したか否かを判定する第13判定処理を行う(ステップ#63)。
具体的には、取得中の手動走行経路Rmが圃場Adの領域特定枠Fに接したか否かを判定する。
【0178】
待機位置設定部46Kは、第13判定処理において、乗用田植機V2が圃場Adの走行領域に到達するまでの間は経路取得処理を継続し、乗用田植機V2が圃場Adの走行領域に到達した場合に、その到達地点p6を取得する到達地点取得処理を行う(ステップ#64)。
【0179】
具体的には、取得中の手動走行経路Rmが圃場Adの領域特定枠Fに接した場合に乗用田植機V2が圃場Adの走行領域に到達したと判定し、手動走行経路Rmと領域特定枠Fとの接点を、圃場Adの走行領域に対する乗用田植機V2の到達地点p6とする。
【0180】
待機位置設定部46Kは、到達地点p6を取得した後、手動走行の開始地点p5から到達地点p6までの手動走行経路Rmを場外移動経路Pm5に設定して車載記憶部46Gに記憶する場外移動経路記憶処理と、到達地点p6を場外移動経路Pm5に従って乗用田植機V2が自動走行するときの走行開始位置に設定する開始位置設定処理と、手動走行の開始地点p5を乗用田植機V2の圃場Ad外での待機位置(以下、場外待機位置と称する)p0bに設定する待機位置設定処理とを行う(ステップ#65~67)。その後、経路取得処理を終了し(ステップ#68)、場外移動経路取得制御を終了する。
【0181】
自動走行制御部46Fは、図14~15に示す圃場Adの目標経路Pに従って乗用田植機V2を自動走行させる自動走行制御の終了に伴って、乗用田植機V2を場外待機位置p0bにて待機させる第2待機条件が成立しているか否かを判定し、第2待機条件が成立している場合に、乗用田植機V2を現在位置(目標経路Pの終端地点)から場外待機位置p0bまで自動走行させて場外待機位置p0bにて待機させる場外自動走行制御を実行する。
【0182】
具体的には、自動走行制御部46Fは、乗用田植機V2が目標経路Pの終端地点に到達した段階において、待機位置設定部46Kにて場外移動経路Pm5と走行開始位置p6と場外待機位置p0bとが設定されている場合に、第2待機条件が成立したと判定するように設定されている。
【0183】
つまり、自動走行制御部46Fは、乗用田植機V2が目標経路Pの終端地点に到達した段階において、待機位置設定部46Kにて場外移動経路Pm5と走行開始位置p6と場外待機位置p0bとが設定されているか否かを判定し、設定されている場合に場外自動走行制御を実行する。
【0184】
これにより、乗用田植機V2が圃場Adでの苗植え作業を終えて目標経路Pの終端地点に到達した後は、図15に示すように、乗用田植機V2を場外移動経路Pm5に従って場外待機位置p0bまで自動走行させることができ、場外待機位置p0bへの到達に伴って、乗用田植機V2を場外待機位置p0bにて待機させることができる。
【0185】
その結果、場外待機位置p0bが、図14~15に示すように、乗用田植機V2を運搬する運搬車Zに対する積み下ろし位置であれば、乗用田植機V2を圃場Adから積み下ろし位置まで手動走行させる手間を省くことができる。又、場外待機位置p0bが、乗用田植機V2を格納する納屋などの設置位置であれば、乗用田植機V2を圃場Adから納屋まで手動走行させる手間を省くことができる。更に、場外待機位置p0bが、圃場Adの次に作業を行う登録圃場の近傍位置であれば、乗用田植機V2を圃場Adから次の登録圃場の近くまで手動走行させる手間を省くことができる上に、作業効率の向上を図ることができる。
【0186】
尚、第2実施形態では、携帯通信端末5の表示デバイス50に表示された経路取得ボタンに対するユーザのタッチ操作が行われた場合に、待機位置設定部46Kが場外移動経路取得制御を実行する形態を例示したが、場外待機位置p0bを、例えば乗用田植機V2を運搬する運搬車Zに対する積み下ろし位置とする場合は、乗用田植機V2における変速ユニット15の変速状態を積み下ろし用の超低速段から移動走行用の高速段に切り換える変速操作が行われた場合に待機位置設定部46Kが場外移動経路取得制御を開始するようにしてもよい。又、場外待機位置p0bを、例えば乗用田植機V2を格納する納屋などの設置位置とする場合は、乗用田植機V2に対する電源投入操作が行われた場合に待機位置設定部46Kが場外移動経路取得制御を開始するようにしてもよい。
【0187】
〔第3実施形態〕
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る作業車両用の自動走行システムを作業車両の一例であるコンバインに適用した第3実施形態を図面に基づいて説明する。
【0188】
尚、この第3実施形態で例示する作業車両用の自動走行システムは、第1実施形態及び第2実施形態で例示した作業車両用の自動走行システムとは、適用される作業車両に加えて、待機位置設定部46K及び自動走行制御部46Fの制御作動などが異なることから、適用される作業車両の主要構成や待機位置設定部46K及び自動走行制御部46Fの制御作動、などについて説明する。
【0189】
図20~21に示すように、この第3実施形態に例示されたコンバインV3は、第1実施形態で例示したトラクタV1や第2実施形態で例示した走行車体1に相当するフルクローラ仕様の走行車体(図示せず)に、穀稈収穫用の作業装置(以下、刈取搬送装置と称する)3、刈取搬送装置3にて刈り取り搬送された穀稈に脱穀選別処理を施す脱穀装置8、及び、脱穀装置8からの穀粒を貯留する穀粒タンク9、などが備えられている。穀粒タンク9には、その内部に貯留された穀粒を機外の運搬車Zの荷台などに排出するスクリュ搬送式の穀粒排出装置9Aが備えられている。これにより、このコンバインV3は、その前部に備えられた刈取搬送装置3により、作業対象の圃場Adに作付けされた穀稈を収穫することができる。そして、収穫した穀稈に脱穀選別処理を施すことで得られた穀粒を穀粒タンク9に貯留することができる。
【0190】
尚、図20~21には、圃場Aa~Agのうちの圃場Adが作業対象に選択された場合が例示されている。
【0191】
コンバインV3の車両状態検出機器45には、第1実施形態で例示した複数の残量センサ45A(図3参照)や第2実施形態で例示した複数の苗残量センサ45B(図3参照)の代わりに、穀粒タンク9における穀粒の貯留量が穀粒排出用の設定値に達したことを検出する満杯センサ45C(図3にて二点鎖線で記載)が含まれている。
【0192】
図20~21には、圃場Adが作業対象に選択された状態において、図8に示す作業装置選択画面50Cにて刈取搬送装置3が選択された場合に、圃場Adに対して目標経路生成部51Bにて生成される目標経路Pなどの一例が示されている。
【0193】
具体的には、図20~21に示す圃場Adに対して、圃場Adの領域特定枠F内が矩形の作業領域Awに特定され、この作業領域Awに対して回り刈り用の目標経路Pが生成されている。この目標経路Pには、刈取搬送装置3の作業条数(作業幅)に応じた所定間隔をあけて圃場Adの各圃場辺に並列に配置される複数の作業経路P1と、複数の作業経路P1を開始位置SからコンバインV3の走行順に接続する複数の方向転換経路P2とが含まれている。
【0194】
尚、図20~21に示す目標経路Pはあくまでも一例であり、目標経路生成部51Bは、コンバインV3の機種などに応じて異なる旋回半径や作業条数などの車体情報、及び、圃場Aa~Agに応じて異なる圃場の形状や大きさなどの圃場情報、などに基づいて、それらに適した種々の目標経路Pを生成することができる。
【0195】
待機位置設定部46Kは、携帯通信端末5の表示デバイス50に表示された待機位置設定ボタン(図示せず)に対するユーザのタッチ操作が行われた場合に、第1実施形態で例示した待機位置取得制御を実行する。これにより、圃場Adに対するコンバインV3の進入地点が、コンバインV3の穀粒タンク9に貯留された穀粒を機外に排出するときのコンバインV3の待機位置(以下、排出用待機位置と称する)p0(図20参照)に設定される。又、この排出用待機位置p0が、当該排出用待機位置p0から自動走行の開始位置Sにわたる手動走行経路Rm(図20参照)とともに車載記憶部46Gに記憶される。
【0196】
自動走行制御部46Fは、自動走行制御を実行してコンバインV3を目標経路Pに従って自動走行させる自動走行状態において、コンバインV3を排出用待機位置p0にて待機させる待機条件が成立したか否かを判定し、待機条件が成立した場合に、コンバインV3を現在位置から排出用待機位置p0まで自動走行させて排出用待機位置p0にて待機させる穀粒排出用移動制御を実行する。
【0197】
具体的には、この第3実施形態では作業車両がコンバインV3であることから、自動走行制御部46Fは、穀粒タンク9に備えられた満杯センサ45Cにて、穀粒タンク9における穀粒の貯留量が穀粒排出用の設定値に達したことが検出された場合に、待機条件が成立したと判定するように設定されている。
【0198】
つまり、自動走行制御部46Fは、自動走行制御によるコンバインV3の自動走行状態において、満杯センサ45Cからの検出情報に基づいて、穀粒タンク9における穀粒の貯留量が穀粒排出用の設定値に達したか否かを判定し、貯留量が穀粒排出用の設定値に達した場合に穀粒排出用移動制御を実行する。
【0199】
尚、この第3実施形態における穀粒排出用の設定値は、目標経路Pのうちの単一の作業経路P1においてコンバインV3が自動走行したときに得られる穀粒を穀粒タンク9に貯留することができる値に設定されている。
【0200】
以下、図22のフローチャートに基づいて、図20に示す圃場Adでの収穫作業における自動走行制御部46Fの穀粒排出用移動制御について説明する。
【0201】
自動走行制御部46Fは、穀粒排出用移動制御の開始に伴って、穀粒タンク9における穀粒の貯留量が穀粒排出用の設定値に達したことを携帯通信端末5の表示デバイス50などによってユーザに報知する満杯報知処理を行う(ステップ#71)。
【0202】
自動走行制御部46Fは、目標経路PとコンバインV3の現在位置とに基づいて、コンバインV3が走行中の作業経路P1における作業停止地点(終端地点)p2を穀粒排出用の中断位置p3に設定する中断位置設定処理と、中断位置p3に対する次の作業開始地点(次の作業経路P1の始端地点)p1を穀粒排出後の再開位置p4に設定する再開位置設定処理とを行う(ステップ#72~73)。
【0203】
自動走行制御部46Fは、上記の位置設定後に、目標経路Pのうちの既走行経路(図20に示す目標経路Pのうちの太線で示す経路)と車載記憶部46Gに記憶された手動走行経路Rmとを利用して、穀粒排出用の中断位置p3から排出用待機位置p0にわたる最短の排出用移動経路Pm6を生成する排出用経路生成処理と、排出用待機位置p0から穀粒排出後の再開位置p4にわたる最短の再開用移動経路Pm7を生成する再開用経路生成処理とを行う(ステップ#74~75)。
【0204】
尚、図示は省略するが、再開用移動経路Pm7には、その経路始端部においてコンバインV3を後進姿勢から前進姿勢に方向転換させる方向転換経路が含まれている。
【0205】
自動走行制御部46Fは、コンバインV3が中断位置p3に到達したか否かを判定する第14判定処理を行い(ステップ#76)、第14判定処理において、コンバインV3が中断位置p3に到達するまでの間は自動走行制御による収穫作業を継続し、コンバインV3が中断位置p3に到達した場合に自動走行制御を中断する自動走行制御中断処理を行う(ステップ#77)。
【0206】
自動走行制御部46Fは、自動走行制御の中断後に、排出用移動経路Pm6に従ってコンバインV3を中断位置p3から排出用待機位置p0まで自動走行させる排出用移動処理と、コンバインV3が排出用待機位置p0への移動走行中であることを携帯通信端末5の表示デバイス50などによってユーザに報知する排出用移動報知処理とを開始する(ステップ#78~79)。
【0207】
自動走行制御部46Fは、コンバインV3が排出用待機位置p0に到達したか否かを判定する第15判定処理を行い(ステップ#80)、第15判定処理において、コンバインV3が排出用待機位置p0に到達するまでの間は排出用移動処理と排出用移動報知処理とを継続し、コンバインV3が排出用待機位置p0に到達した場合に、排出用移動処理と排出用移動報知処理とを終了してコンバインV3を排出用待機位置p0にて待機させる(ステップ#81~82)。
【0208】
自動走行制御部46Fは、コンバインV3の排出用待機位置p0での待機中に、携帯通信端末5の表示デバイス50に対するユーザのタッチ操作でコンバインV3の自動走行制御による自動走行の再開が指令されたか否かを判定する第16判定処理を行う(ステップ#83)。
【0209】
自動走行制御部46Fは、第16判定処理において、自動走行の再開が指令されるまでの間は、穀粒タンク9からの穀粒の排出が完了していないと判断してコンバインV3を排出用待機位置p0にて待機させ、自動走行の再開が指令された場合に、穀粒タンク9からの穀粒の排出が完了した判断して、再開用移動経路Pm7に従ってコンバインV3を排出用待機位置p0から再開位置p4まで自動走行させる再開用移動処理と、再開位置p4への移動走行中であることを携帯通信端末5の表示デバイス50などによってユーザに報知する再開用移動報知処理とを開始する(ステップ#84~85)。
【0210】
自動走行制御部46Fは、コンバインV3が再開位置p4に到達したか否かを判定する第17判定処理を行い(ステップ#86)、第17判定処理において、コンバインV3が再開位置p4に到達するまでの間は再開用移動処理と再開用移動報知処理とを継続し、コンバインV3が再開位置p4に到達した場合に、再開用移動処理と再開用移動報知処理とを終了する(ステップ#87~88)。
【0211】
自動走行制御部46Fは、再開用移動処理と再開用移動報知処理とを終了した後、コンバインV3の自動走行制御による自動走行を再開させる自動走行制御再開処理を行い(ステップ#89)、その後、穀粒排出用移動制御を終了する。
【0212】
以上の構成により、この作業車両用の自動走行システムにおいては、携帯通信端末5の表示デバイス50に表示された待機位置設定ボタンに対するユーザのタッチ操作が行われた場合に、待機位置設定部46Kが、待機位置取得制御を実行して、作業対象の圃場Aa~Agに対するコンバインV3の進入地点を取得し、この進入地点を排出用待機位置p0に設定する。これにより、ユーザは圃場Aa~Agごとに排出用待機位置p0を設定する必要がなくなる。
【0213】
そして、排出用待機位置p0に設定される進入地点は、コンバインV3の穀粒タンク9からの穀粒が積み込まれる穀粒搬送用の運搬車Zなどを停車させることができる農道Rfなどに圃場Aa~Agを接続する圃場Aa~Agの出入口である。これにより、穀粒搬送用の運搬車Zなどを排出用待機位置p0の近くに停車させておくことが可能になり、コンバインV3が排出用待機位置p0に到達した後のコンバインV3の穀粒タンク9から運搬車Zの荷台などへの穀粒の排出作業を円滑に行うことができる。
【0214】
又、この作業車両用の自動走行システムにおいては、穀粒タンク9における穀粒の貯留量が穀粒排出用の設定値に達した場合に、自動走行制御部46Fが、穀粒排出用移動制御を実行して、コンバインV3を排出用待機位置p0まで移動させた後に排出用待機位置p0にて待機させる。これにより、ユーザは、コンバインV3を中断位置p3から排出用待機位置p0まで手動走行させる必要がなくなる。
【0215】
更に、この作業車両用の自動走行システムにおいては、コンバインV3の排出用待機位置p0での待機中に、穀粒タンク9からの穀粒の排出が完了して、携帯通信端末5の表示デバイス50に対するユーザのタッチ操作で自動走行制御によるコンバインV3の自動走行の再開が指令された場合には、自動走行制御部46Fが、コンバインV3を排出用待機位置p0から再開位置p4まで移動させた後、自動走行制御による目標経路Pに従ったコンバインV3の自動走行を再開させる。これにより、ユーザは、コンバインV3を排出用待機位置p0から再開位置p4まで手動走行させる必要がなくなる。
【0216】
つまり、各圃場Aa~Agにおける排出用待機位置p0の設定や排出用待機位置p0に対するコンバインV3の移動を自動で適正に行えることから、コンバインV3の穀粒タンク9からの穀粒の排出作業を、ユーザにかかる負担の軽減を図りながら効率よく行うことができる。
【0217】
その上、この作業車両用の自動走行システムにおいては、収穫作業の中断位置p3が現在走行中の作業経路P1の作業停止地点p2に設定されていることから、作業経路P1の途中で穀粒タンク9における穀粒の貯留量が穀粒排出用の設定値に達した場合であっても、コンバインV3は、現在走行中の作業経路P1の作業停止地点p2まで自動走行制御による収穫作業を継続することができる。そして、穀粒排出後の再開位置p4が中断位置p3に対する次の作業開始地点(次の作業経路P1の始端地点)p1に設定されていることから、例えば、穀粒排出後の再開位置p4(収穫作業の中断位置p3)が現在走行中の作業経路P1の途中位置に設定される場合に比較して、コンバインV3を中断位置p3から排出用待機位置p0まで自動走行させる排出用移動処理において、コンバインV3を中断位置p3から後進走行させた後に、前進状態に切り換えて排出用待機位置p0まで前進走行させる必要がなくなる。その結果、コンバインV3を排出用待機位置p0まで効率よく自動走行させることができる。
【0218】
又、この作業車両用の自動走行システムにおいては、排出用移動処理と再開用移動処理のいずれにおいても、コンバインV3が目標経路Pの既走行経路や手動走行経路Rmに従って走行することから、コンバインV3にて圃場Aa~Agの未作業領域Awbが踏み荒らされる虞を回避することができる。
【0219】
図示は省略するが、携帯通信端末5の表示デバイス50に表示される選択圃場表示画面50B(図7参照)においては、排出用待機位置p0を圃場Adの複数個所に設定するためのタッチ操作が可能になっている。待機位置設定部46Kは、そのタッチ操作が行われた場合には、タッチ操作に応じた圃場Adの複数個所に排出用待機位置p0を設定する。
【0220】
図3に示すように、車載制御ユニット46には、圃場Adの複数個所に排出用待機位置p0が設定されている場合に、複数の排出用待機位置p0から単一の排出用待機位置p0を選択する待機位置選択部46L(図3にて二点鎖線で記載)が含まれている。待機位置選択部46Lは、マイクロコントローラなどが集積された電子制御ユニットや各種の制御プログラムなどによって構築されている。待機位置選択部46Lは、車載制御ユニット46の他の制御部46A~46F,46H,46Kなどに、CANを介して相互通信可能に接続されている。
【0221】
待機位置選択部46Lは、例えば、図21に示すように、穀粒搬送用の運搬車Zなどを停車させることができる農道Rfなどに隣接する圃場Adの圃場端において複数(図21では2箇所)の排出用待機位置p0が設定されている場合には、前述した待機条件が成立したときのコンバインV3の現在位置や、各排出用待機位置p0に対するコンバインV3の移動回数、などに基づいて、今回の穀粒排出作業に適切な排出用待機位置p0を選択する待機位置選択処理を行う。又、待機位置選択部46Lは、選択した排出用待機位置p0を携帯通信端末5の表示デバイス50などでユーザに報知する選択待機位置報知処理を行う。
【0222】
具体的には、待機位置選択部46Lは、例えば、前述した待機条件が成立したときのコンバインV3の現在位置から設定される中断位置p3に対して、一方の排出用待機位置p0が他方の排出用待機位置p0よりも近い場合には、待機位置選択処理において、その近い側の一方の排出用待機位置p0を今回の排出用待機位置p0として選択する。これにより、コンバインV3の中断位置p3と排出用待機位置p0とにわたる移動に要する時間を短くすることができ、穀粒排出作業を効率よく行うことができる。
【0223】
又、待機位置選択部46Lは、例えば、一方の排出用待機位置p0に対するコンバインV3の移動回数が、他方の排出用待機位置p0に対するコンバインV3の移動回数よりも少ない場合には、待機位置選択処理において、その移動回数が少ない一方の排出用待機位置p0を今回の排出用待機位置p0として選択する。これにより、コンバインV3の移動回数が多くなることで、排出用待機位置p0でのぬかるみが酷くなるのを抑制することができる。
【0224】
そして、ユーザは、待機位置選択部46Lの選択待機位置報知処理により、今回の穀粒排出作業で使用される排出用待機位置p0を事前に把握することができる。これにより、ユーザは、コンバインV3が自動走行制御部46Fの穀粒排出用移動制御で、待機位置選択部46Lにて選択された排出用待機位置p0に移動するのに合わせて、穀粒搬送用の運搬車Zなどを排出用待機位置p0に移動させることができる。
【0225】
〔第4実施形態〕
以下、本発明を実施するための形態の一例として、本発明に係る作業車両用の自動走行システムを作業車両の一例である乗用草刈機に適用した第4実施形態を図面に基づいて説明する。
【0226】
尚、この第2実施形態で例示する作業車両用の自動走行システムは、第1実施形態~第3実施形態で例示した作業車両用の自動走行システムとは、適用される作業車両に加えて、待機位置設定部46K及び自動走行制御部46Fの制御作動などが異なることから、適用される作業車両の主要構成や待機位置設定部46K及び自動走行制御部46Fの制御作動、などについて説明する。
【0227】
図23~26に示すように、この第4実施形態に例示された乗用草刈機V4は、第1実施形態で例示したトラクタV1の後部に、3点リンク機構2を介して草刈り用の作業装置(以下、モーアと称する)3が連結されている。モーア3は、トラクタV1の後部に昇降可能かつローリング可能に連結されている。
尚、図23においては、空港の着陸帯Aが登録作業地として例示されている。
【0228】
図23~26に示すように、着陸帯Aには、滑走路90に隣接する複数の植生地91が含まれている。図23~26には、着陸帯Aに対して目標経路生成部51Bにて特定される作業領域Awや生成される目標経路Pなどの一例が示されている。
【0229】
具体的には、着陸帯Aに対して、各植生地91が作業領域Awに特定され、各作業領域Awに対して目標経路Pが生成されている。各目標経路Pには、各作業領域Awの外周に沿った4本の第1作業経路P1、複数の第1作業経路P1を乗用草刈機V4の走行順に接続する3本の第2方向転換経路P2、モーア3の作業幅に応じた所定間隔をあけて並列に配置される複数の第2作業経路P3、最終の第1作業経路P1を所定の第2作業経路P3に接続する単一の第2方向転換経路P4、各第2作業経路P3を乗用草刈機V4の走行順に接続する複数の第3方向転換経路P5、などが含まれている。各作業領域Awの間には、それらの目標経路Pを乗用草刈機V4の走行順に接続する移動経路Pmが生成されている。
【0230】
尚、図23~26に示す目標経路Pはあくまでも一例であり、目標経路生成部51Bは、トラクタV1やモーア3の機種などに応じて異なる旋回半径や作業幅などの車体情報、及び、着陸帯Aに応じて異なる植生地91の形状や大きさなどの作業地情報、などに基づいて、それらに適した種々の目標経路Pを生成することができる。
【0231】
図示は省略するが、携帯通信端末5の表示デバイス50に表示される選択圃場表示画面50B(図7参照)においては、航空機の離着陸時に乗用草刈機V4を退避させるときの乗用草刈機V4の待機位置(以下、退避用待機位置と称する)p0(図23~26参照)を、滑走路90から所定距離以上離れた複数個所に設定するためのタッチ操作が可能になっている。待機位置設定部46Kは、そのタッチ操作が行われた場合には、タッチ操作に応じた複数個所に退避用待機位置p0を設定する。
尚、図23~26においては、着陸帯Aの各植生地91を着陸帯Aの外側に位置する場周道路92に接続する各植生地91に対する接続地点(入出地点)が退避用待機位置p0に設定されている。
【0232】
図3に示すように、車載制御ユニット46には、複数の退避用待機位置p0から単一の退避用待機位置p0を選択する待機位置選択部46L(図3にて二点鎖線で記載)が含まれている。待機位置選択部46Lは、マイクロコントローラなどが集積された電子制御ユニットや各種の制御プログラムなどによって構築されている。待機位置選択部46Lは、車載制御ユニット46の他の制御部46A~46F,46H,46Kなどに、CANを介して相互通信可能に接続されている。
【0233】
待機位置選択部46Lは、乗用草刈機V4を退避用待機位置p0にて待機させる待機条件が成立した場合に、乗用草刈機V4を最短時間で到達させることができる退避用待機位置p0を選択する待機位置選択制御を実行する。
【0234】
尚、この第4実施形態では、登録作業地が空港の着陸帯Aであることから、待機位置選択部46Lは、空港にて航空機の離着陸が行われるときの管制塔からの事前通報を受信した場合に、待機条件が成立したと判定するように設定されている。
【0235】
以下、図27のフローチャートに基づいて、図23~26に示す植生地91での待機位置選択部46Lの待機位置選択制御について説明する。
【0236】
待機位置選択部46Lは、待機条件の成立に伴って、そのときの乗用草刈機V4の現在位置や走行状態などを取得する情報取得処理を行う(ステップ#91)。
【0237】
待機位置選択部46Lは、取得した情報に応じた各退避用待機位置p0に対する複数の退避経路や乗用草刈機V4の走行形態などを推測し、推測した退避経路や走行形態などから乗用草刈機V4が各退避用待機位置p0に到達するまでの所要時間を算出する所要時間算出処理を行う(ステップ#92)。
【0238】
待機位置選択部46Lは、算出した所要時間が最短になる退避用待機位置p0を今回の退避用待機位置p0として選択する待機位置選択処理と、選択した退避用待機位置p0とともにその退避用待機位置p0への移動に適した退避経路Pm8や走行形態などを退避情報として自動走行制御部46Fに送信する退避情報送信処理とを行い(ステップ#93~94)、その後、待機位置選択制御を終了する。
【0239】
自動走行制御部46Fは、待機位置選択部46Lからの退避情報を受信した場合に、乗用草刈機V4を退避用待機位置p0にて待機させる待機条件が成立したと判定し、待機位置選択部46Lからの退避情報に含まれた退避経路Pm8や走行形態などに従って、乗用草刈機V4を退避用待機位置p0まで自動走行させて退避用待機位置p0にて待機させる退避用移動制御を実行する。
【0240】
具体的には、例えば、図24に示すように、前述した管制塔からの事前通報を待機位置選択部46Lが受信したときの乗用草刈機V4の現時位置が、目標経路Pの始端側に設定された退避用待機位置p0よりも目標経路Pの終端側に設定された退避用待機位置p0に近い位置で、乗用草刈機V4の走行状態が場周道路92に向かって前進走行している状態である場合には、待機位置選択部46Lは、終端側の退避用待機位置p0を今回の退避用待機位置p0として選択し、退避情報として、終端側の退避用待機位置p0、乗用草刈機V4の現時位置から終端側の退避用待機位置p0にわたる最短の退避経路Pm8、前進走行、などを自動走行制御部46Fに送信する。そして、自動走行制御部46Fは、待機位置選択部46Lからの退避情報に基づいて、乗用草刈機V4を、退避経路Pm8に従って終端側の退避用待機位置p0まで前進走行させる。
【0241】
例えば、図25に示すように、前述した管制塔からの事前通報を待機位置選択部46Lが受信したときの乗用草刈機V4の現時位置が、前述した後端側の退避用待機位置p0よりも始端側の退避用待機位置p0に近い位置で、乗用草刈機V4の走行状態が場周道路92に向かって前進走行している状態である場合には、待機位置選択部46Lは、始端側の退避用待機位置p0を今回の退避用待機位置p0として選択し、退避情報として、始端側の退避用待機位置p0、乗用草刈機V4の現時位置から始端側の退避用待機位置p0にわたる最短の退避経路Pm8、前進走行、などを自動走行制御部46Fに送信する。そして、自動走行制御部46Fは、待機位置選択部46Lからの退避情報に基づいて、乗用草刈機V4を、退避経路Pm8に従って始端側の退避用待機位置p0まで前進走行させる。
【0242】
例えば、図26に示すように、前述した管制塔からの事前通報を待機位置選択部46Lが受信したときの乗用草刈機V4の現時位置が、前述した始端側の退避用待機位置p0よりも終端側の退避用待機位置p0に近い位置で、乗用草刈機V4の走行状態が滑走路90に向かって前進走行している状態である場合には、待機位置選択部46Lは、終端側の退避用待機位置p0を今回の退避用待機位置p0として選択し、退避情報として、終端側の退避用待機位置p0、乗用草刈機V4の現時位置から終端側の退避用待機位置p0にわたる最短の退避経路Pm8、後進走行、などを自動走行制御部46Fに送信する。そして、自動走行制御部46Fは、待機位置選択部46Lからの退避情報に基づいて、乗用草刈機V4を、退避経路Pm8に従って終端側の退避用待機位置p0まで後進走行させる。
【0243】
以上の構成により、この作業車両用の自動走行システムにおいては、乗用草刈機V4を退避用待機位置p0にて待機させる待機条件が成立した場合に、待機位置設定部46Kが、待機位置選択制御を実行して、待機条件の成立時(航空機の離着陸時)に最適な退避用待機位置p0を選択する。これにより、ユーザは待機条件の成立時に、その時々で異なる最適な退避用待機位置p0を選択する必要がなくなる。
【0244】
又、待機位置設定部46Kからの退避情報に基づいて、自動走行制御部46Fが、退避用移動制御を実行して、乗用草刈機V4を最適な退避用待機位置p0に最短時間で移動させた後に退避用待機位置p0にて待機させる。これにより、ユーザは、乗用草刈機V4を退避用待機位置p0まで手動走行させる必要がなくなる。
【0245】
つまり、空港の着陸帯Aにおける退避用待機位置p0の選択や退避用待機位置p0への乗用草刈機V4の移動を自動で適正に行えることから、航空機の離着陸に応じた乗用草刈機V4の退避用待機位置p0への移動を、ユーザにかかる負担の軽減を図りながら良好に行うことができる。
【0246】
〔別実施形態〕
本発明の別実施形態について説明する。
尚、以下に説明する各別実施形態の構成は、それぞれ単独で適用することに限らず、他の別実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0247】
(1)作業車両の構成に関する代表的な別実施形態は以下の通りである。
例えば、作業車両は、エンジン13の代わりに電動モータを備える電動仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両は、エンジン13と電動モータとを備えるハイブリッド仕様に構成されていてもよい。
【0248】
(2)第1実施形態に例示された作業車両用の自動走行システムは、播種仕様のトラクタV1以外に、トラクタV1の後部に3点リンク機構2を介して播種施肥用の作業装置3が連結された播種施肥仕様のトラクタV1、トラクタV1の後部に3点リンク機構2を介して施肥用の作業装置3が連結された施肥仕様のトラクタV1、第2実施形態に例示された乗用田植機V2、苗植付装置3に加えて施肥装置が備えられた施肥機能付きの乗用田植機V2、及び、苗植付装置3に加えて薬剤散布装置が備えられた施薬機能付きの乗用田植機V2、などの作業車両に適用することができる。
【0249】
(3)第2実施形態に例示された作業車両用の自動走行システムは、乗用田植機V2以外に、前述した施肥機能付きの乗用田植機V2、施薬機能付きの乗用田植機V2、播種仕様のトラクタV1、播種施肥仕様のトラクタV1、及び、施肥仕様のトラクタV1、などの作業車両に適用することができる。
【0250】
(4)第3実施形態に例示された作業車両用の自動走行システムは、コンバインV3以外に、トウモロコシなどを収穫する収穫機などの作業車両に適用することができる。
【0251】
(5)第4実施形態に例示された作業車両用の自動走行システムは、乗用草刈機V4以外に、トラクタV1の後部に3点リンク機構2を介してロータリ耕耘装置が連結されたロータリ耕耘仕様のトラクタV1、除雪車、及び、ホイールローダ、などの作業車両に適用することができる。
【0252】
(6)第4実施形態に例示された作業車両用の自動走行システムにおいて、待機位置選択部46Lは、作業車両(乗用草刈機V4)を現時位置から退避用待機位置p0まで移動させる場合に、現在の作業経路P1での作業を終了させる時間的余裕がある場合には、作業車両を、現在の作業経路P1での作業を終了させてから退避用待機位置p0まで移動させる退避経路Pm8を自動走行制御部46Fに送信するように構成されていてもよい。
<発明の付記>
【0253】
本発明の第1特徴構成は、作業車両用の自動走行システムにおいて、
衛星測位システムを利用して作業車両を登録作業地の目標経路に従って自動走行させる自動走行制御部と、前記作業車両の待機位置を設定する待機位置設定部とを有し、
前記待機位置設定部は、前記登録作業地外から前記登録作業地内に進入したときの進入地点を取得するとともに、前記進入地点を前記待機位置に設定し、
前記自動走行制御部は、前記作業車両を前記待機位置にて待機させる待機条件が成立したか否かを判定し、前記待機条件が成立した場合に前記作業車両を現在位置から前記待機位置まで自動走行させて前記待機位置にて待機させる点にある。
【0254】
本構成によれば、ユーザが作業車両を登録作業地に向けて手動走行させる場合に、待機位置設定部が、登録作業地に対する作業車両の進入地点を取得し、この進入地点を待機位置に設定する。これにより、ユーザは作業を行う登録作業地ごとに待機位置を設定する必要がなくなる。
【0255】
そして、例えば登録作業地が圃場であれば、待機位置に設定される進入地点は、登録圃場を圃場外の農道などに接続する登録圃場に対する出入口となる。又、例えば登録作業地が空港の着陸帯であれば、待機位置に設定される進入地点は、登録着陸帯をその外側にある場周道路などに接続する登録着陸帯に対する出入口となる。
【0256】
これにより、作業車両が例えば圃場に苗を植え付ける乗用田植機や圃場に肥料を供給する乗用施肥機であれば、補給用の苗や肥料などの農用資材が積み込まれた運搬車などを停車させることができる農道などに圃場を接続する出入口(進入地点)が、作業車両に農用資材を補給するときの作業車両の待機位置に設定されることになる。
又、作業車両が、圃場において稲や大豆などの農作物を収穫するコンバインなどの収穫機であれば、収穫した農作物が移載される運搬車などを停車させることができる農道などに圃場を接続する出入口(進入地点)が、作業車両から運搬車などに農作物を移載するときの作業車両の待機位置に設定されることになる。
これにより、作業車両に対する農用資材の補給や、作業車両から運搬車などへの農作物の移載などが行い易くなる。
【0257】
一方、作業車両が、空港の着陸帯における滑走路周辺の植生部で草刈り作業を行う草刈機などであれば、着陸帯をその外側の場周道路などに接続する出入口(進入地点)が、航空機の離着陸時に作業車両を退避させるときの作業車両の待機位置に設定されることになる。これにより、航空機の離着陸時には、作業車両を滑走路から離れた位置に退避させることができる。
【0258】
そして、作業車両を待機位置にて待機させる待機条件として、例えば、作業車両における農用資材の残量不足や農作物の貯留過多などを設定すれば、これらの条件が成立した場合に、作業車両が、現在位置から資材補給用又は農作物移載用の待機位置まで自動走行して、その待機位置にて待機することになる。
又、作業車両を待機位置にて待機させる待機条件として、例えば、空港にて航空機の離着陸が行われるときの管制塔からの事前通報の受信などを設定すれば、この条件が成立した場合に、作業車両が、現在位置から退避用の待機位置まで自動走行して、その待機位置にて待機することになる。
これにより、ユーザは、作業車両を現在位置から待機位置まで手動走行させる必要がなくなる。
【0259】
つまり、ユーザにかかる負担を軽減しながら、作業車両の待機事由や作業状況などに適した待機位置を設定することができる。又、待機条件が成立した場合には、作業車両を適切な待機位置まで自動走行させることができる。そして、作業車両が乗用田植機やコンバインなどの農作業機である場合には、待機位置での作業車両に対する資材補給や作業車両からの農作物の移載などの作業を効率よく行うことができる。又、作業車両が空港の着陸帯で作業する草刈機などである場合には、着陸帯での作業を、航空機の離着陸に支障を来たすことなく良好に行うことができる。
【0260】
本発明の第2特徴構成は、
衛星測位システムを利用して作業車両を登録作業地の目標経路に従って自動走行させる自動走行制御部と、前記作業車両の待機位置を設定する待機位置設定部とを有し、
前記待機位置設定部は、前記目標経路に含まれた作業経路の延長線と前記登録作業地の外形との交点を前記待機位置に設定し、
前記自動走行制御部は、前記作業車両を前記待機位置にて待機させる待機条件が成立したか否かを判定し、前記待機条件が成立した場合に前記作業車両を現在位置から前記待機位置まで自動走行させて前記待機位置にて待機させる点にある。
【0261】
本構成によれば、待機位置設定部が、登録作業地に関する登録情報に含まれた目標経路や作業地の外形などから前述した交点を取得し、この交点を待機位置に設定する。これにより、ユーザは作業地ごとに待機位置を設定する必要がなくなる。
【0262】
そして、例えば登録作業地が圃場であれば、圃場での作業に応じて生成された目標経路に含まれている作業経路の延長線と、圃場の内側と外側との境界になる圃場の外形との交点が待機位置に設定される。これにより、作業車両の現在位置から待機位置までの移動距離を短くすることができる。
【0263】
更に、例えば、作業車両が圃場で作業を行う乗用田植機やコンバインなどの農作業機であれば、待機位置にて待機させる待機条件として、作業車両における農用資材の残量不足や農作物の貯留過多などを設定すれば、これらの条件が成立した場合に、作業車両が、現在位置から現在走行中の作業経路の延長線と圃場の外形との交点である待機位置まで自動走行して、その待機位置にて待機することになる。これにより、ユーザは、作業車両を現在位置から待機位置まで手動走行させる必要がなくなる。
【0264】
つまり、ユーザにかかる負担を軽減しながら、作業車両の待機事由や作業状況などに適した待機位置を設定することができる。又、待機条件が成立した場合には、作業車両を適切な待機位置まで自動走行させることができる。そして、作業車両が乗用田植機やコンバインなどの農作業機である場合には、待機位置への移動を含めた作業車両に対する資材補給や作業車両からの農作物の移載などの作業を効率よく行うことができる。
【0265】
本発明の第3特徴構成は、
前記登録作業地の外形を特定する複数の外形特定線のうち、前記待機位置の設定が可能な外形特定線を指定する指定部を有している点にある。
【0266】
本構成によれば、作業車両の待機位置への移動に支障を来たす側溝や壁体などの障害物が隣接している外形特定線、及び、待機位置に移動した作業車両に対する資材補給や作業車両からの農作物の移載などに支障を来たす樹木や電線などの障害物が近くに存在する外形特定線、などにおいて、作業経路の延長線との交点が待機位置に設定される不都合の発生を防止することができる。
【0267】
つまり、作業車両の待機事由や作業状況などに不適な待機位置が設定される虞を回避することができる。その結果、作業車両を待機位置にて待機させる待機条件が成立しているにもかかわらず、作業車両を待機位置まで自動走行させることができなくなる、及び、作業車両が待機位置にて待機しているにもかかわらず、作業車両に対する資材補給や作業車両からの農作物の移載などが行い難くなる、といった不都合の発生を回避することができる。
【0268】
本発明の第4特徴構成は、
衛星測位システムを利用して作業車両を登録作業地の目標経路に従って自動走行させる自動走行制御部と、前記作業車両の待機位置を前記登録作業地の複数個所に設定する待機位置設定部と、前記複数の待機位置から単一の待機位置を選択する待機位置選択部とを有し、
前記自動走行制御部は、前記作業車両を前記待機位置にて待機させる待機条件が成立したか否かを判定し、前記待機条件が成立した場合に前記作業車両を現在位置から前記待機位置選択部にて選択された前記待機位置まで自動走行させて前記待機位置にて待機させる点にある。
【0269】
本構成によれば、待機位置設定部にて設定される複数個所の待機位置から、作業車両を待機位置にて待機させる待機条件が成立したときの作業車両の現在位置などに適した単一の待機位置を待機位置選択部にて選択させることが可能になる。これにより、ユーザは、前述した待機条件が成立した時々で異なる作業車両の現在位置などに適した待機位置を選択する必要がなくなる。
【0270】
そして、作業車両を待機位置にて待機させる待機条件として、例えば、作業車両における農用資材の残量不足や農作物の貯留過多などを設定すれば、これらの条件が成立した場合に、作業車両が、現在位置から選択された資材補給用又は農作物移載用の待機位置まで自動走行して、その待機位置にて待機することになる。
又、作業車両を待機位置にて待機させる待機条件として、例えば、空港にて航空機の離着陸が行われるときの管制塔からの事前通報の受信などを設定すれば、この条件が成立した場合に、作業車両が、現在位置から選択された退避用の待機位置まで自動走行して、その待機位置にて待機することになる。
これにより、ユーザは、作業車両を現在位置から待機位置まで手動走行させる必要がなくなる。
【0271】
つまり、ユーザにかかる負担を軽減しながら、前述した待機条件が成立した時々で異なる作業車両の現在位置などの作業状況などに適した待機位置を選択することができる。又、待機条件が成立した場合には、作業車両を適切な待機位置まで自動走行させることができる。そして、作業車両が乗用田植機やコンバインなどの農作業機である場合には、待機位置での作業車両に対する資材補給や作業車両からの農作物の移載などの作業を効率よく行うことができる。又、作業車両が空港の着陸帯で作業する草刈機などである場合には、着陸帯での作業を、航空機の離着陸に支障を来たすことなく良好に行うことができる。
【符号の説明】
【0272】
46F 自動走行制御部
46K 待機位置設定部(指定部)
46L 待機位置選択部
A 登録作業地(空港の着陸帯)
Aa 登録作業地(圃場)
Ab 登録作業地(圃場)
Ac 登録作業地(圃場)
Ad 登録作業地(圃場)
Ae 登録作業地(圃場)
Af 登録作業地(圃場)
Ag 登録作業地(圃場)
As1 外形特定線
As2 外形特定線
As3 外形特定線
As4 外形特定線
L 作業経路の延長線
OL 登録作業地の外形
P 目標経路
V1 作業車両(播種仕様のトラクタ)
V2 作業車両(乗用田植機)
V3 作業車両(コンバイン)
V4 作業車両(乗用草刈機)
p0 待機位置
p0a 待機位置
p0b 待機位置
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