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特開2023-168382作業車両支援システム及び作業車両支援方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168382
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】作業車両支援システム及び作業車両支援方法
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20231116BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20231116BHJP
【FI】
A01B69/00 303Z
G05D1/02 N
G05D1/02 H
A01B69/00 303A
【審査請求】有
【請求項の数】18
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023151983
(22)【出願日】2023-09-20
(62)【分割の表示】P 2021205761の分割
【原出願日】2015-02-06
(31)【優先権主張番号】PCT/JP2014/077906
(32)【優先日】2014-10-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2014021759
(32)【優先日】2014-02-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】小倉 康平
(72)【発明者】
【氏名】黒田 晃史
(72)【発明者】
【氏名】松本 圭司
(72)【発明者】
【氏名】青木 英明
(57)【要約】
【課題】自動走行の中断後、適切な位置から自動走行を再開させることが可能な作業車両支援システム及び作業車両支援方法を提供する。
【解決手段】作業車両支援システムは、圃場内を自動走行する作業車両(自律走行作業車両1)に用いられる作業車両支援システムであって、作業車両(自律走行作業車両1)の自動走行に関する特定情報を設定する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場内を自動走行する作業車両に用いられる作業車両支援システムであって、
前記作業車両の自動走行に関する特定情報を設定する、
作業車両支援システム。
【請求項2】
前記特定情報は、前記作業車両に関する情報を含む、
請求項1に記載の作業車両支援システム。
【請求項3】
前記特定情報は、前記作業車両に設けられる作業機に関する情報を含む、
請求項1又は2に記載の作業車両支援システム。
【請求項4】
前記作業機に関する情報は、前記作業機の幅に係る情報を含む、
請求項3に記載の作業車両支援システム。
【請求項5】
前記特定情報は、前記圃場に関する情報を含む、
請求項1~4のいずれか1項に記載の作業車両支援システム。
【請求項6】
前記圃場に関する情報は、前記圃場の外周の変曲点に係る情報を含む、
請求項5に記載の作業車両支援システム。
【請求項7】
前記圃場に関する情報は、前記圃場の出入口に係る情報を含む、
請求項5又は6に記載の作業車両支援システム。
【請求項8】
前記圃場に関する情報は、前記圃場の枕地に係る情報を含む、
請求項5~7のいずれか1項に記載の作業車両支援システム。
【請求項9】
前記特定情報は、前記作業車両による作業幅の重複幅に関する情報を含む、
請求項1~8のいずれか1項に記載の作業車両支援システム。
【請求項10】
前記特定情報は、前記作業車両の旋回半径に関する情報を含む、
請求項1~9のいずれか1項に記載の作業車両支援システム。
【請求項11】
前記特定情報は、前記作業車両が自動走行する際の基準となる基準走行方向に関する情報を含み、
前記基準走行方向に基づいて前記作業車両を自律走行させるための直進経路及び旋回経路を含む走行経路を生成する、
請求項1~10のいずれか1項に記載の作業車両支援システム。
【請求項12】
自動走行の開始条件が成立することによって前記作業車両に自動走行を開始させることが可能であり、
前記開始条件が成立しているか否かは、前記作業車両の現在位置と進行方向とに基づいて判断される、
請求項1~11のいずれか1項に記載の作業車両支援システム。
【請求項13】
自動走行の複数の開始条件が成立することで前記作業車両に自動走行を開始させることが可能であり、
前記複数の開始条件に関する表示を行い、開始条件が成立するごとに当該開始条件に係る表示態様を変更する、
請求項1~12のいずれか1項に記載の作業車両支援システム。
【請求項14】
前記作業車両が自動走行中に、自動走行の中断条件が成立すると自動走行を中断させる、
請求項1~13のいずれか1項に記載の作業車両支援システム。
【請求項15】
前記中断条件の成立時には、自動走行を中断させて、前記作業車両の走行を停止させる、
請求項14に記載の作業車両支援システム。
【請求項16】
前記中断条件の成立時には、自動走行を中断する原因を通知する、
請求項14又は15に記載の作業車両支援システム。
【請求項17】
前記特定情報は、表示装置に表示される設定画面における入力に従って設定される、
請求項1~16のいずれか1項に記載の作業車両支援システム。
【請求項18】
圃場内を自動走行する作業車両に用いられる作業車両支援方法であって、
前記作業車両の自動走行に関する特定情報を設定すること、を有する、
作業車両支援方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両支援システム及び作業車両支援方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、所定範囲の作業地内を走行する作業車に、GPS衛星からの衛星信号を受信する作業車側受信局を設けて作業車の現在位置を検出し、作業地の外側の近傍にGPS衛星からの衛星信号を受信する監視側受信局を設けて監視装置の現在位置を検出し、作業車と監視装置との間で通信して両者の相対距離を検出し、作業車の監視可能範囲から外れると警報を発し走行を停止させる技術が公知となっている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平9-146635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
【0005】
本発明は、上記課題に鑑み、自動走行を中断した後の作業開始の位置合わせが容易に行え、作業が途切れることを防止できる作業車両支援システム及び作業車両支援方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段を説明する。
【0007】
一態様に係る作業車両支援システムは、圃場内を自動走行する作業車両に用いられる作業車両支援システムであって、前記作業車両の自動走行に関する特定情報を設定する。
一態様に係る作業車両支援方法は、圃場内を自動走行する作業車両に用いられる作業車両支援方法であって、前記作業車両の自動走行に関する特定情報を設定すること、を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、自動走行を中断した後の作業開始の位置合わせが容易に行え、作業が途切れることを防止できる作業車両支援システム及び作業車両支援方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】自律走行作業車両とGPS衛星と基準局を示す概略側面図。
図2】制御ブロック図。
図3】横併走協調作業の状態を示す図。
図4】縦併走重複作業を示す図。
図5】自律走行作業車両の基準となる長さを示す図。
図6】自律走行作業車両に装着した作業機を偏心して装着した場合の偏心量を示す図。
図7】圃場データを取得するための行程を示す図。
図8】基準経路の方向を示す図。
図9】圃場における作業範囲と枕地を示す図。
図10】自律走行開始制御を示すフローチャート図。
図11】自律走行時の中断制御を示すフローチャート図。
図12】制御ブロック図の他の実施形態を示す図。
図13】自律走行作業車両が作業開始位置へ近づく状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
無人で自動走行可能な自律走行作業車両1、及び、この自律走行作業車両1に随伴してオペレータが操向操作する有人の随伴走行作業車両100をトラクタとし、自律走行作業車両1及び随伴走行作業車両100には作業機としてロータリ耕耘装置がそれぞれ装着されている実施例について説明する。但し、作業車両はトラクタに限定するものではなく、コンバイン等でもよく、また、作業機はロータリ耕耘装置に限定するものではなく、畝立て機や草刈機やレーキや播種機や施肥機やワゴン等であってもよい。
【0011】
図1図2において、自律走行作業車両1となるトラクタの全体構成について説明する。ボンネット2内にエンジン3が内設され、該ボンネット2の後部のキャビン11内にダッシュボード14が設けられ、ダッシュボード14上に操向操作手段となるステアリングハンドル4が設けられている。該ステアリングハンドル4の回動により操舵装置を介して前輪9・9の向きが回動される。自律走行作業車両1の操舵方向は操向センサ20により検知される。操向センサ20はロータリエンコーダ等の角度センサからなり、前輪9の回動基部に配置される。但し、操向センサ20の検知構成は限定するものではなく操舵方向が認識されるものであればよく、ステアリングハンドル4の回動を検知したり、パワーステアリングの作動量を検知してもよい。操向センサ20により得られた検出値は制御装置30に入力される。
【0012】
前記ステアリングハンドル4の後方に運転席5が配設され、運転席5下方にミッションケース6が配置される。ミッションケース6の左右両側にリアアクスルケース8・8が連設され、該リアアクスルケース8・8には車軸を介して後輪10・10が支承される。エンジン3からの動力はミッションケース6内の変速装置(主変速装置や副変速装置)により変速されて、後輪10・10を駆動可能としている。変速装置は例えば油圧式無段変速装置で構成して、可変容量型の油圧ポンプの可動斜板をモータ等の変速手段44により作動させて変速可能としている。変速手段44は制御装置30と接続されている。後輪10の回転数は車速センサ27により検知され、走行速度として制御装置30に入力される。但し、車速の検知方法や車速センサ27の配置位置は限定するものではない。
【0013】
ミッションケース6内にはPTOクラッチやPTO変速装置が収納され、PTOクラッチはPTO入切手段45により入り切りされ、PTO入切手段45は制御装置30と接続され、PTO軸への動力の断接を制御可能としている。
【0014】
前記エンジン3を支持するフロントフレーム13にはフロントアクスルケース7が支持され、該フロントアクスルケース7の両側に前輪9・9が支承され、前記ミッションケース6からの動力が前輪9・9に伝達可能に構成している。前記前輪9・9は操舵輪となっており、ステアリングハンドル4の回動操作により回動可能とするとともに、操舵駆動手段となるパワステシリンダからなる操舵アクチュエータ40により前輪9・9が左右操舵回動可能となっている。操舵アクチュエータ40は制御装置30と接続され、自動走行制御されて駆動される。
【0015】
制御装置30にはエンジン回転制御手段となるエンジンコントローラ60が接続され、エンジンコントローラ60にはエンジン回転数センサ61や水温センサや油圧センサ等が接続され、エンジンの状態を検知できるようにしている。エンジンコントローラ60では設定回転数と実回転数から負荷を検出し、過負荷とならないように制御するとともに、後述する遠隔操作装置112にエンジン3の状態を送信して表示手段となるディスプレイ113で表示できるようにしている。
【0016】
また、ステップ下方に配置した燃料タンク15には燃料の液面を検知するレベルセンサ29が配置されて制御装置30と接続され、自律走行作業車両1のダッシュボードに設ける表示手段49には燃料の残量を表示する燃料計が設けられ制御装置30と接続されている。そして、制御装置30から遠隔操作装置112に燃料残量に関する情報が送信されて、遠隔操作装置112のディスプレイ113に燃料残量と作業可能時間が表示される。
【0017】
前記ダッシュボード14上にはエンジンの回転計や燃料計や油圧等や異常を示すモニタや設定値等を表示する表示手段49が配置されている。
【0018】
また、トラクタ機体後方に作業機装着装置23を介して作業機としてロータリ耕耘装置24が昇降自在に装設させて耕耘作業を行うように構成している。前記ミッションケース6上に昇降シリンダ26が設けられ、該昇降シリンダ26を伸縮させることにより、作業機装着装置23を構成する昇降アームを回動させてロータリ耕耘装置24を昇降できるようにしている。昇降シリンダ26は昇降アクチュエータ25の作動により伸縮され、昇降アクチュエータ25は制御装置30と接続されている。
【0019】
制御装置30には衛星測位システムを構成する移動受信機33が接続されている。移動受信機33には移動GPSアンテナ34とデータ受信アンテナ38が接続され、移動GPSアンテナ34とデータ受信アンテナ38は前記キャビン11上に設けられる。該移動受信機33には、位置算出手段を備えて測位し緯度と経度を制御装置30に送信し、現在位置を把握できるようにしている。なお、GPS(米国)に加えて準天頂衛星(日本)やグロナス衛星(ロシア)等(航法衛星と称する)の衛星測位システム(GNSS)を利用することで精度の高い測位ができるが、本実施形態ではGPSを用いて説明する。
【0020】
自律走行作業車両1は、機体の姿勢変化情報を得るためにジャイロセンサ31、および進行方向を検知するために方位センサ32を具備し制御装置30と接続されている。但し、GPSの位置計測から進行方向を算出できるので、方位センサ32を省くことができる。ジャイロセンサ31は自律走行作業車両1の機体前後方向の傾斜(ピッチ)の角速度、機体左右方向の傾斜(ロール)の角速度、および旋回(ヨー)の角速度、を検出するものである。該三つの角速度を積分計算することにより、自律走行作業車両1の機体の前後方向および左右方向への傾斜角度、および旋回角度を求めることが可能である。ジャイロセンサ31の具体例としては、機械式ジャイロセンサ、光学式ジャイロセンサ、流体式ジャイロセンサ、振動式ジャイロセンサ等が挙げられる。ジャイロセンサ31は制御装置30に接続され、当該三つの角速度に係る情報を制御装置30に入力する。
【0021】
方位センサ32は自律走行作業車両1の向き(進行方向)を検出するものである。方位センサ32の具体例としては磁気方位センサ等が挙げられる。方位センサ32は制御装置30に接続され、機体の向きに係る情報を制御装置30に入力する。
【0022】
こうして制御装置30は、上記ジャイロセンサ31、方位センサ32から取得した信号を姿勢・方位演算手段により演算し、自律走行作業車両1の姿勢(向き、機体前後方向及び機体左右方向の傾斜、旋回方向)を求める。
【0023】
次に、自律走行作業車両1の位置情報をGPS(グローバル・ポジショニング・システム)を用いて取得する方法について説明する。GPSは、元来航空機・船舶等の航法支援用として開発されたシステムであって、上空約二万キロメートルを周回する二十四個のGPS衛星(六軌道面に四個ずつ配置)、GPS衛星の追跡と管制を行う管制局、測位を行うための利用者の受信機で構成される。GPSを用いた測位方法としては、単独測位、相対測位、DGPS(ディファレンシャルGPS)測位、RTK-GPS(リアルタイムキネマティック-GPS)測位など種々の方法が挙げられ、これらいずれの方法を用いることも可能であるが、本実施形態では測定精度の高いRTK-GPS測位方式を採用し、この方法について図1図2より説明する。
【0024】
RTK-GPS(リアルタイムキネマティック-GPS)測位は、位置が判っている基準局と、位置を求めようとする移動局とで同時にGPS観測を行い、基準局で観測したデータを無線等の方法で移動局にリアルタイムで送信し、基準局の位置成果に基づいて移動局の位置をリアルタイムに求める方法である。
【0025】
本実施形態においては、自律走行作業車両1に移動局となる移動受信機33と移動GPSアンテナ34とデータ受信アンテナ38が配置され、基準局となる固定受信機35と固定GPSアンテナ36とデータ送信アンテナ39が圃場の作業の邪魔にならない所定位置に配設される。本実施形態のRTK-GPS(リアルタイムキネマティック-GPS)測位は、基準局および移動局の両方で位相の測定(相対測位)を行い、基準局の固定受信機35で測位したデータをデータ送信アンテナ39からデータ受信アンテナ38に送信する。
【0026】
自律走行作業車両1に配置された移動GPSアンテナ34はGPS衛星37・37・・・からの信号を受信する。この信号は移動受信機33に送信され測位される。そして、同時に基準局となる固定GPSアンテナ36でGPS衛星37・37・・・からの信号を受信し、固定受信機35で測位し移動受信機33に送信し、観測されたデータを解析して移動局の位置を決定する。こうして得られた位置情報は制御装置30に送信される。
【0027】
こうして、この自律走行作業車両1における制御装置30は、GPS衛星37・37・・・から送信される電波を受信して移動受信機33において設定時間間隔で機体の位置情報を求め、ジャイロセンサ31及び方位センサ32から機体の変位情報および方位情報を求め、これら位置情報と変位情報と方位情報に基づいて機体が予め設定した走行経路Rに沿って走行するように、操舵アクチュエータ40、変速手段44等を制御する。
【0028】
また、自律走行作業車両1には障害物センサ41が配置されて制御装置30と接続され、障害物に当接しないようにしている。例えば、障害物センサ41は超音波センサで構成して機体の前部や側部や後部に配置して制御装置30と接続し、機体の前方や側方や後方に障害物があるかどうかを検出し、障害物が設定距離以内に近づくと走行を停止させるように制御する。
【0029】
また、自律走行作業車両1には機体周囲を撮影するカメラ42が搭載され制御装置30と接続されている。カメラ42で撮影された映像は随伴走行作業車両100に備えられ、または、作業者が携帯する遠隔操作装置112のディスプレイ113に表示されるようにしている。作業者は、前方を表示した画像により障害物を確認したり、作業機を表示した画像により作業機の作動状態や作業後の仕上がり状態や随伴走行作業車両100との位置関係等を確認できるようにしている。なお、自律走行作業車両1と随伴走行作業車両100との位置関係は、カメラ42による画像で判断したり、遠隔操作装置112が備えるGPSによる位置情報で判断したりすることができる。ただし、ディスプレイ113の表示画面が小さい場合は大きい別のディスプレイで表示したり、複数に画面を分割して複数を同時に表示したり、カメラ映像は別の専用のディスプレイで常時または選択的に表示したり、自律走行作業車両1に設けた表示手段49で表示したりすることも可能である。
【0030】
遠隔操作装置112は前記自律走行作業車両1の走行経路Rを設定したり、自律走行作業車両1を遠隔操作したり、自律走行作業車両1の走行状態や作業機の作動状態を監視したり、作業データを記憶したりするものである。
【0031】
有人走行車両となる随伴走行作業車両100はオペレータが乗車して運転操作するとともに、随伴走行作業車両100に遠隔操作装置112を搭載して自律走行作業車両1を操作可能としている。随伴走行作業車両100の基本構成は自律走行作業車両1と略同じ構成であるので詳細な説明は省略する。なお、随伴走行作業車両100または遠隔操作装置112にはGPS用の移動受信機33や移動GPSアンテナ34を備える構成とすることも可能である。
【0032】
遠隔操作装置112は、随伴走行作業車両100及び自律走行作業車両1のダッシュボードやキャビンの柱や天井等の操作部に着脱可能としている。遠隔操作装置112は随伴走行作業車両100のダッシュボードに取り付けたまま操作することも、随伴走行作業車両100の外に持ち出して携帯して操作することも、自律走行作業車両1のダッシュボードに取り付けて操作可能としている。なお、随伴走行作業車両100、または/及び、自律走行作業車両1には図示しない遠隔操作装置112用の取付具が設けられる。遠隔操作装置112は例えばノート型やタブレット型のパーソナルコンピュータで構成することができる。本実施形態ではタブレット型のコンピュータで構成している。
【0033】
さらに、遠隔操作装置112と自律走行作業車両1は無線で相互に通信可能に構成しており、自律走行作業車両1と遠隔操作装置112には通信するための送受信機110・111がそれぞれ設けられている。送受信機111は遠隔操作装置112に一体的に構成されている。通信手段は例えばWiFi等の無線LANで相互に通信可能に構成されている。該自律走行作業車両1と遠隔操作装置112との間で通信を行うときには、通信妨害(ウイルスの感染等も含む)や混信等を避けるための方策がなされる。例えば、独自のプロトコルや言語等を用いることができる。
【0034】
遠隔操作装置112は画面に触れることで操作可能なタッチパネル式の操作画面としたディスプレイ113を筐体表面に設け、筐体に送受信機111やCPUや記憶装置やバッテリやカメラやGPS(衛星測位装置)等を備える。該ディスプレイ113には、前記カメラ42で撮影した周囲の画像や自律走行作業車両1の状態や作業の状態やGPSに関する情報(測位情報)や遠隔操作装置112と自律走行作業車両1との通信状況(例えば、良好・不良の表示、または、電波強度や通信速度)や操作画面や自律走行作業車両1と随伴走行作業車両100との位置関係等を表示できるようにし、オペレータが監視できるようにしている。
【0035】
前記自律走行作業車両1の状態としては、作業の状態や走行状態やエンジンの状態や作業機の状態等であり、走行状態としては変速位置や車速や燃料残量やバッテリの電圧等であり、エンジンの状態としてはエンジンの回転数や負荷率等であり、作業機の状態としては作業機の種類やPTO回転数や作業機高さ等であり、それぞれディスプレイ113に数字やレベルメータ等で表示される。
【0036】
前記作業の状態としては、作業経路(目標経路または走行経路R)、作業行程、現在位置、行程から計算される枕地までの距離、残りの経路、行程数、今までの作業時間、残りの作業時間等であり、随伴走行作業車両100の作業経路もディスプレイ113に表示できるようにしている。設定走行経路Rにおける自律走行作業車両1と随伴走行作業車両100の残りの経路は、全体の作業経路から既作業経路を塗りつぶすことで容易に認識できるようにしている。また、未作業経路と既作業経路を別々の色で表示することも可能である。また、作業経路上に自律走行作業車両1と随伴走行作業車両100をイメージするアニメを表示して現在の作業位置を表示してもよい。また、現在位置から次の行程を矢印で表示することで、現在から旋回方向等次の行程を容易に認識することができるようにしている。GPSに関する情報(測位情報)は、自律走行作業車両1の実位置となる経度や緯度、衛星の捕捉数や電波受信強度等である。
【0037】
前記遠隔操作装置112のディスプレイ113は、カメラ42で撮影した周囲の画像の他、自律走行作業車両1の状態や予め設定された走行経路R等も表示するため、一度に多数の情報を表示できない。そこで、画面を大きくして分割表示したり、カメラ用のディスプレイを別に設けたりして、必要に応じて、モニタ画面や操作画面や走行経路Rや撮影画面等をディスプレイ113と別のディスプレイとを複数同時表示したり、適宜切り換えたり、スクロールさせたりすることも可能である。こうして、作業者(オペレータ)が見たい画面を容易に見ることができる。
【0038】
また、前記自律走行作業車両1は遠隔操作装置112により遠隔操作可能としている。例えば、ディスプレイ113にスイッチや増減目盛等を表示して、それをタッチすることで、自律走行作業車両1の緊急停止や一時停止や再発進や車速の変更やエンジン回転数の変更や作業機の昇降やPTOクラッチの入り切り等を操作できるようにしている。つまり、遠隔操作装置112から送受信機111、送受信機110、制御装置30を介してアクセルアクチュエータや変速手段44やPTO入切手段45等を制御し作業者が容易に自律走行作業車両1を遠隔操作できるのである。
【0039】
以上のように、衛星測位システムを利用して機体となる自律走行作業車両1の位置を測位する位置算出手段を備える移動受信機33と、操舵装置を作動させる操舵アクチュエータ40と、エンジン回転制御手段となるエンジンコントローラ60と、変速手段44と、これらを制御する制御装置30とを備えた自律走行作業車両1を、前記制御装置30に記憶させた設定走行経路Rに沿って自律走行させるとともに、該自律走行作業車両1に随伴走行しながら作業を行う随伴走行作業車両100に搭載する遠隔操作装置112により自律走行作業車両1を操作可能とする併走作業システムであって、前記遠隔操作装置112は可搬可能、かつ、随伴走行作業車両100、または/及び、自律走行作業車両1に着脱可能に取り付けられるので、併走作業時においては、遠隔操作装置112を随伴走行作業車両100に取り付けた状態で作業を行い、自律走行作業車両1により単独で作業を行ったり、自律走行作業車両1にトラブルが生じたりした場合には、遠隔操作装置112を取り外して、自律走行作業車両1に乗り込んだり、自律走行作業車両1の近傍または良く見える位置で操作したり確認したりできるようになる。よって、操作性が向上し、トラブル等の処置も容易に行うことができる。
【0040】
また、前記遠隔操作装置112は、ディスプレイ113を有し、該ディスプレイ113には自律走行作業車両1の走行状態やエンジン3の状態、作業機の状態、自律走行作業車両1と随伴走行作業車両100との位置関係を表示するので、オペレータは視覚により容易に自律走行作業車両1の状態を把握することができ、自律走行作業車両1に異常が発生しても迅速に対応することができる。また、作業者が随伴走行作業車両100に乗って作業しているときに、自律走行作業車両1と距離が近すぎないか、離れ過ぎでないか、自律走行作業車両1に対して位置がずれていないか等を容易に判断できる。
【0041】
また、前記ディスプレイ113には自律走行作業車両1の後述する目標走行経路(設定された走行経路)R、現在位置、枕地までの距離、作業時間、完了までの作業時間、及び、随伴走行作業車両100の作業経路を表示するので、作業時における走行状態や作業経過等が容易に認識でき、作業計画も立て易くなる。また、前記ディスプレイにはGPS情報(測位情報)を表示するので、衛星からの受信状態を把握でき、GPS衛星からの信号が途絶えた場合等での対処が容易にできる。また、前記自律走行作業車両1には機体周囲を撮影するカメラ42が備えられ、該カメラ42で撮影した映像を前記ディスプレイ113にて表示可能としたので、離れた位置で自律走行作業車両1の周囲の様子を容易に認識でき、障害物があったとき等において容易に対処できる。
【0042】
次に、自律走行作業車両1の目標走行経路Rの作成について説明する。なお、目標走行経路Rが作成された後は設定された走行経路Rとする。走行経路Rは制御装置30の記憶装置30aに記憶される。なお、前記制御装置30は、自律走行作業車両1の走行・作業制御及び走行経路Rを演算し記憶することを一つの制御装置で行うことも可能であるが、自律走行作業車両1の作動(走行や作業)を制御する第一制御装置301と、自律走行に関わる制御(走行経路Rの設定や開始条件判断や中断条件判断等)を行い記憶する第二制御装置302とにより構成することもできる。この場合、図12(a)に示すように、第一制御装置301と第二制御装置302を自律走行作業車両1の適宜位置に別々に配置したり、図12(b)に示すように、第一制御装置301は自律走行作業車両1に備えられ、第二制御装置302は遠隔操作装置112に配置したり(該第二制御装置302は遠隔操作装置112の制御装置と一体的に構成することもできる)、図12(c)に示すように、第一制御装置301は自律走行作業車両1に備えられ、第二制御装置302は自律走行作業車両1の外部に配置するように構成することができる。第二制御装置302はユニットとして構成し、外部からコネクタ(バス)等を介して第一制御装置301と通信できるようにする。
【0043】
目標走行経路Rは作業形態に合わせて生成される。作業形態としては、自律走行作業車両1のみの単独走行作業、自律走行作業車両1と随伴走行作業車両100による併走走行作業、自律走行収穫作業車(コンバイン)と随伴搬送車両等とによる複合収穫作業等があるが、本実施形態では自律走行作業車両1と随伴走行作業車両100による併走走行作業の走行経路生成について説明する。さらに、併走走行作業では、図3に示す横併走協調作業と図4に示す縦併走重複作業と縦併走協調作業がある。なお、自律走行作業車両1と随伴走行作業車両100とによる併走走行作業では、作業時間を短縮できるとともに、従来から所有している随伴走行作業車両100に自律走行作業車両1を加えることで実現でき、新たに自律走行作業車両1を二台購入する必要はなく、コストが抑えられる。
【0044】
具体的には、図3に示す横併走協調作業は、自律走行作業車両1の斜め後方を随伴走行作業車両100が走行して作業域を一部重複させて(随伴走行作業車両100の作業機がトレンチャー等では重複させる必要はない)、作業機の約二倍の幅を一人で一度に作業し、時間の短縮化を図ることができる。図4に示す縦併走重複作業は、自律走行作業車両1と随伴走行作業車両100は前後一列に並んで走行し、同じ作業機を装着して、一台目は荒耕しを行い、二台目は砕土作業を行い一つの作業を分割する。また、縦併走協調作業は自律走行作業車両1と随伴走行作業車両100は前後一列に並んで走行し、一台目は耕耘(砕土)を行い、二台目は施肥や播種等の別の作業機で、前後二つ以上の作業を分割して行うことができる。
【0045】
上記横併走協調作業における自律走行作業車両1により自律走行しながら作業を行う自動作業システムの走行経路生成について説明する。なお、設定操作は遠隔操作装置112で行うが、自律走行作業車両1の表示手段49で行うことも可能とする。まず、耕耘作業するための基準長さを制御装置30の記憶装置30aに予め入力しておく。基準長さは、図5に示すように、トラクタに装着される作業機の作業幅W1、機体に搭載された移動GPSアンテナ34から作業機端までの距離L1、機体の全長L2(または最小旋回半径L3)、作業機が偏心して配置される場合は図6に示すように左右中心からの偏心量S1がそれぞれ機体の諸元表から得て制御装置30の記憶装置30aに保存する行程を経る。また、作業機がロータリ耕耘装置24の場合には、サイドドライブ式またはセンタードライブ式かを選択し、サイドドライブ式の場合にはチェーンケース24aの位置と幅W2の値も記憶装置30aに保存する。また、機体の全長L2と作業機幅(W1+W2)で占める面積(L2×(W1+W2))を、自律走行作業車両1と作業機(ロータリ耕耘装置24)が走行時に占める最大占有領域Qと定義して記憶装置30aに保存する。なお、フロント作業機を装着した場合はフロント作業機の前端から機体後端までの距離がL2となる。また、ロータリ耕耘装置24の代わりにミッド作業機を装着した場合、(W1+W2)はミッド作業機が機体の幅(左右の後輪の外幅)よりも大きい場合はW1となる。また、最大占有領域Qは四角形に限定せず、この四角形の外接円Q1とすることも可能である。外接円Q1とすることで旋回時に畦等との干渉が認識し易くなる。また、随伴走行作業車両100の基準長さも前記同様に制御装置30の記憶装置30aまたは遠隔操作装置112に入力される。
【0046】
次に、圃場の位置と作業範囲及び作業を行う走行経路Rを設定するために、圃場の四隅(A、B、C、D、または、変曲点)に自律走行作業車両1を位置させて、測位する行程を行う。つまり、図7に示すように、圃場Hの出入口Eで測位して出入口位置データとして制御装置30の記憶装置30aにその緯度と経度を記憶する。出入口Eを設定しておくことで、走行経路Rの作業開始位置Xや作業終了位置を容易に設定することができる。なお、圃場の外周を走行しながら測定して走行経路Rを作成するとき、固定基地局からの補正信号で測位する場合と、簡易基地局からの補正信号で測位する場合があるため、いずれの基地局で測位したか識別できるようにしておき、走行経路Rの作成時に違和感が生じた時に容易に理解できるようにする。
【0047】
自律走行作業車両1を出入口Eから圃場内に入り進行させて入口に最も近い一つの隅(角)Aに移動して、圃場の短辺または長辺(以下畦とする)と平行となるように位置させて測位し、第一隅部データ(緯度と経度)として記憶する。次に、無人トラクタを次の隅Bに移動させて、畦と平行となるように約90度方向転換して測位し第二隅部データとして記憶する。そして、前記同様に次の隅Cに移動して第三隅部データを取得して記憶し、次の隅Dに移動して第四隅部データを取得して記憶する。こうして、一つの隅Aから順番に一筆書きのように直線で隅(B、C、D)を結ぶことにより圃場の形状を確定し圃場データとして取得する。但し、圃場の形状が変形圃場である場合には、四隅以外の隅位置や変曲点位置のデータを取得して圃場データを確定する。例えば、三角形であれば三つの隅を、五角形であれば五つの隅の位置データを取得し記憶する。なお、隅部は下位概念で変曲点は上位概念であるため、変曲点を順次測位して位置データを取得して一周することで圃場データを取得することができる。また、最外周を走行して得られた圃場外周データの内側の領域でのみ、走行経路Rを作成することができ、はみ出すとエラーとして走行経路Rの作成はできないようにしている。また、隅部データを直線で結んだ際に、直線が交差した場合は圃場データとして認識しないようにしている。これは、圃場としてあり得ず、隅または変曲点が抜けている可能性が高いからである。また、圃場データの作成において、インターネットや地図メーカ等が公開している地図データから圃場データを取得することを禁止しており、前述の現地で測位した位置データのみ採用を許可するものとしている。こうして、実際の作業で走行させたときに誤差により圃場外に出てしまうことを防止している。
【0048】
更に、圃場の周囲には、取水口や排水口が設けられていたり、境界を示す杭や石等が配設されていたり、樹木が入り込んで生えていたりする場合がある。これらは直線状に走行した場合に邪魔となるので、これらは障害物として測位し設定できるようにしている。この障害物は圃場データ作成時に障害物として設定する。この障害物を設定した場合には、自律走行時には避けて走行するように走行経路Rが設定される。
【0049】
次に、基準走行開始方向を選択する行程となる。基準走行開始方向は回り作業や往復作業の作業開始位置から作業終了位置までの進行方向や作業終了位置から出口までの経路(作業範囲HAの外側の作業方向)を選択する。具体的には、図8に示すように、基準走行開始方向は、右回りで作業を開始して終了するか、或いは、左回りで作業を開始して終了するかを設定する。この設定はディスプレイ113上で矢印や目印等を表示させてそれをタッチする等して簡単に選択できるようにしている。
【0050】
こうして、図9に示すように、圃場データから得られる作業範囲HAは略四角形となるようにしており、この作業範囲HAが遠隔操作装置112のディスプレイ113に表示される。この作業範囲HAにおいて更に自律走行作業車両1が進行する作業方向の前後両側に枕地HBを設定する。枕地HBの幅Wbは作業機をロータリ耕耘装置24とした場合、耕耘幅W1から求められる。例えば、耕耘幅を入力しその整数倍を選択できるようにしている。但し、枕地HBの幅Wbは作業範囲HAにおける自律走行作業車両1が作業する進行方向(長手方向)と平行な方向の長さとする。なお、枕地幅Wbはハンドルを切り返しせずに旋回させ、滑り等も考慮してマージンを持たせて旋回させる必要があるため、最小旋回半径よりも大きくしなければならない。そこで、作業機(本実施形態ではロータリ耕耘装置24)を装着した状態の自律走行作業車両1の最小旋回半径を予め記憶装置30aに記憶させておくことで、この最小旋回半径よりも小さな値は設定時において入力できないようにしている。但し、設定する旋回半径は増速旋回やオートステアリング機能がない場合の旋回半径としてもよい。
【0051】
なお、随伴走行作業車両100が自律走行作業車両1よりも大きい場合や、随伴走行作業車両100に装着される作業機が自律走行作業車両1に装着される作業機よりも大きい場合、枕地HBの幅Wbは随伴走行作業車両100の基準長さが採用される。その他の作業機を装着した場合においては、作業機の全長や条の幅等が考慮されるので、枕地幅Wbは任意の長さを数値で入力することも可能としている。枕地を往復して作業を行う場合や枕地を含む作業範囲の周囲を螺旋状に周回して作業を終了する場合もあるので、枕地HBにおける旋回方向も設定できるようにしている。また、圃場の周囲は畦が存在するため畦処理のために別途作業が必要な場合があるため、作業開始側の端部HCの幅(畔からの距離)Wcも任意の長さに設定できるようにしている。
【0052】
次に、オーバーラップ量(重複幅)を設定する行程となる。オーバーラップ量Wr(図3)は作業機(例えば、ロータリ耕耘装置)で往復作業する場合の往路と復路で重複させる幅や、自律走行作業車両1と随伴走行作業車両100とによる横併走協調作業における左右のロータリ耕耘装置が重複する作業幅であり、傾斜や凹凸等があっても耕耘残しがないようにオーバーラップ量Wrが任意の長さに設定される。なお、オーバーラップ量Wrをもたせると、縦併走重複作業の場合、枕地で旋回してすれ違うときに作業機同士が当接してしまうおそれがある。または、障害物センサ41の検出により自律走行作業車両1は走行を停止してしまうことになる。このようなことを避けるため、随伴走行作業車両100は1列以上飛ばして作業を行い、当接を避けた走行を行う。或いは、枕地に近づくと、作業機の当接を避ける「すれ違い制御」を行う。「すれ違い制御」は、例えば、すれ違うときに、一方の作業機は上昇させ、他方の作業機は下降させるような制御とする。ただし、中央1条の移植機や播種機やトレンチャー等のオーバーラップさせる必要はない作業機による作業では、条の間隔を設定し、飛ばしたり「すれ違い制御」を行う必要はなく、これらを作業モードに応じて選択できるようにしている。
【0053】
また、圃場データに作業終了位置を設定または選択できるようにしている。例えば、走行経路Rが設定された後に作業終了位置が出入口Eと反対位置となった場合や、圃場Hのうち四角形の作業範囲HAの残りの圃場HDが出入口Eと離れた位置にある場合等においては、作業終了位置が優先されるように設定して、できるだけ重複した作業を避け、圃場面を荒らすことなく終了できるように設定する。この場合、作業終了位置から逆方向に作業走行経路Rをたどって設定することで作業開始位置Xが設定される。よって、作業開始位置Xは出入口Eから離れた位置となることもある。また、作業開始位置Xや作業終了位置はオペレータの好みの位置に設定することもできるために、作業を行わない空走り行程を設定することで作業開始方向や作業終了方向を変更することも可能となる。上記の数値や選択肢を入力して設定すると、制御装置30によって作業範囲HAで順次往復直進作業を行い、枕地HBで反転する回行を行うように自動的に走行経路Rが生成される。さらに、随伴走行作業車両100の作業経路R´(図3)も同時に生成される。
【0054】
走行経路Rの生成行程を経ると、次に、作業条件を設定する行程となる。作業条件は、例えば、作業時における車速(変速位置)、エンジン回転数、PTO回転数(PTO変速位置)、旋回時における車速、エンジン回転数等である。走行経路Rの各位置で作業条件を設定して作業行程が生成される。なお、前記ディスプレイ113上での設定値の入力や選択は、ディスプレイ113に順次設定画面が表示され、間違いや設定忘れが生じないようにし、オペレータにとっても簡単に操作でき、設定や入力ができるようにしている。
【0055】
上記設定が終了し、走行経路Rおよび走行経路Rに沿った作業行程が生成されると、作業を開始するために、オペレータが自律走行作業車両1を運転して作業開始位置Xに移動させ、随伴走行作業車両100をその近傍に位置させる。そして、オペレータが遠隔操作装置112を操作して作業を開始する。
【0056】
作業を開始するには、自律走行作業車両1の開始条件が整うことが条件となっている。作業開始条件は、自律走行作業車両1の制御装置30に記憶され、随伴走行作業車両100に備えられる遠隔操作装置112の作業開始手段をオンすると、制御装置30は所定の作業開始条件を満たしているか判断する。作業開始条件については後述する。前記作業開始手段は開始ボタンや開始スイッチ等で構成し、自律走行作業車両1に設けてもよい。
【0057】
前記自律走行作業車両1に随伴して走行しながら作業を行う随伴走行作業車両100について説明する。随伴走行作業車両100は、オペレータが搭乗して手動運転を行う。オペレータは設定経路(走行経路R)を走行する無人作業車となる自律走行作業車両1の後方または側方を随伴して走行するように運転する。よって、オペレータは随伴走行作業車両100を運転しながら自律走行作業車両1を監視して作業を行い、必要に応じて遠隔操作装置112を操作して自律走行作業車両1を操作する。
【0058】
前記遠隔操作装置112による自律走行作業車両1を遠隔操作するために、制御装置30には操舵アクチュエータ40、ブレーキアクチュエータ、アクセルアクチュエータ、変速手段44、PTO入切手段45、クラッチアクチュエータ、昇降アクチュエータ25等と接続されている。
【0059】
また、自律走行作業車両1の走行状態や作動状態を監視するために、自律走行作業車両1の走行速度を車速センサ27で検知し、エンジン回転数センサ61でエンジン回転数を検知し、検知した値をそれぞれ表示手段49及び遠隔操作装置112のディスプレイ113に表示する。また、カメラ42で撮影した映像が遠隔操作装置112に送信されてディスプレイ113に表示され、機体前方や作業機や圃場の状態を見ることを可能としている。
【0060】
また、遠隔操作装置112の記憶装置には作業データが記憶される。作業データとしては、例えば、圃場の位置や作業日を記憶したり、その圃場に設定した走行経路Rにおける作業済位置を記憶したり、施肥作業では肥料の種類や単位面積当たりの施肥量を記憶したりする。
【0061】
以上説明したように、圃場Hの一端(作業開始位置X)から他端(作業終了位置)にかけて自律走行作業車両1を走行させて圃場面作業を行うために、衛星測位システムを利用して自律走行作業車両1の位置を把握して、自律走行作業車両を自動的に走行して作業させる走行経路Rの設定方法であって、機体の前後長を入力する行程と、作業機の幅を入力する行程と、作業機と作業機の幅方向のオーバーラップ量を入力する行程と、圃場外周の変曲点に作業車両を順次位置させて、各位置で衛星測位システムを利用して機体の位置を測位する行程と、圃場内での作業範囲を設定する行程と、出入口Eを設定する行程と、作業開始位置Xと作業終了位置を設定する行程と、基準走行開始方向を設定する行程と、作業範囲の両端に枕地HBを設定する行程と、圃場内での走行経路Rを設定する行程とが行われるので、作業車両の諸元(スペック)より容易に得られる長さを入力して、圃場内を移動させて容易に測位でき、走行経路Rが容易に得られる。
【0062】
また、前記枕地HBの幅Wbは作業機幅(W1+W2)の整数倍とするので、枕地設定を容易に行える。また、前記枕地HBの幅Wbは作業機を装着した状態の自律走行作業車両1の最小旋回半径L3より大きく設定するので、枕地で切り返すことなく旋回でき作業効率を低下させることがない。
【0063】
こうして、作業走行経路Rを作成した後、作業を開始する。この作業を開始するためにオペレータは自律走行作業車両1を運転して作業開始位置まで移動させる。このとき、GPSにより測位した現在位置は地図上で表示されるが、作業開始位置Xに正確に移動させることは難しいため、図13に示すように、自律走行作業車両1を作業開始位置Xへ移動させているときに、音や表示手段でガイドできるようにしている。例えば、作業開始位置Xに近づいていることを段階的に音の変化で知らせるようにする場合、作業開始位置Xまで遠い場合は、小さな音としたり、断続音の間隔を長くしたりし、作業開始位置Xに近づくほど大きな音としたり、断続音の間隔を短くするのである。そして、作業開始位置Xに入ると、音質を変えたり連続音とするのである。なお、距離だけでなく方向も音でガイドすることも可能である。また、表示手段(ディスプレイ113)で作業開始位置Xにガイドする場合には矢印等で表示するのである。
【0064】
そして、制御装置30は次のような制御を行う。すなわち、図10に示すように、自律走行作業車両1と随伴走行作業車両100をそれぞれ圃場内の作業開始位置に配置し、オペレータは随伴走行作業車両100に乗車し(オペレータが遠隔操作装置112を携帯して自律走行作業車両1と随行することも可能)、遠隔操作装置112をスタンバイ状態に操作する。このとき、随伴走行作業車両100の遠隔操作装置112と自律走行作業車両1の制御装置30が通信可能に接続されているか(通信異常があるか)判断する(S1)。つまり、送受信機110・111を介して通信可能であるか判断し、作業時に遠隔操作装置112により遠隔操作ができ、監視できるようにする。接続されていないと電源の確認や無線の状態等をチェックし、接続設定を行う(S2)。なお、接続されていない場合は通信異常であり、断続や通信妨害も含む。通信異常がある場合にはその異常内容がディスプレイ113に表示される。接続されていると、オペレータが作業開始の操作を行う。
【0065】
この作業開始手段の操作により制御装置30は、GPSからの信号により、作業車(自律走行作業車両1)の現在位置を測位しディスプレイ113に現在位置と、作業開始位置と、作業進行方向等の位置情報を表示する(S3)。なお、現在位置と作業開始位置と作業進行方向と圃場形状等は切り替えないかぎり常時(言い換えれば、マップ表示のとき)ディスプレイ113に表示される。また、この測位したときの基準局と、作業範囲HAまたは走行経路Rを作成したときの基準局とが異なる場合は、基準が異なり位置がずれる可能性があるため自律走行の開始を許可しない。
【0066】
そして、このとき自律走行作業車両1が作業開始位置に位置しているか、つまり、作業開始位置から設定範囲内に位置しているか判断する(S4)。この「設定範囲内に位置しているか」は、測位した自律走行作業車両1の現在位置が設定した走行経路Rの作業開始位置から設定範囲(設定距離)内に位置しているか、であるが、自律走行作業車両1(送受信機110)と遠隔操作装置112(送受信機111)との間で通信が途絶えない距離の範囲内に位置しているか、または、自律走行作業車両1(送受信機110)と遠隔操作装置112(送受信機111)との通信レートのレベルが設定値以上の範囲内に位置しているか、を更に加えてもよい。また、GPSの信号に異常があると測位できないので、この場合のGPSの信号強度が設定範囲内か、も判断に加えてもよい。また、随伴走行作業車両100にGPSが搭載されている場合には、随伴走行作業車両100がスタンバイ位置に位置しているかも判断に加えてもよい。該スタンバイ位置は随伴走行作業車両100の作業開始位置ではなく自律走行作業車両1が作業を開始した後に遅滞なく作業を開始できる近傍である。
【0067】
自律走行作業車両1が設定範囲内に位置していないと判断すると、自律走行の開始を許可せず、オペレータが自律走行作業車両1を運転して作業開始位置Xに移動する(S5)。設定範囲としては、例えば、作業開始から数メートル走行することで正規位置に入り容易に修正できる範囲や随伴走行作業車両100による作業に影響を与えない範囲とし、作業残しの範囲をできるだけ小さくする。なおこのとき、作業を行うように設定された圃場であるかも同時に判断できるので、作業する圃場でない場合も自律走行は開始されない。また、設定範囲外に位置していても、走行及び作業を開始できるが直ぐに停止する制御とすることもできる。これにより、走行部や作業機が正常に作動することが確認でき、その他の問題が発生していることが理解できる。
【0068】
次に、走行経路R上で自律走行作業車両1の最大占有領域Qが圃場外と重複していないか判断する(S6)。つまり、自律走行作業車両1の機体は圃場H内の設定範囲内(作業開始位置Xや走行経路R)に位置していても作業機(ロータリ耕耘装置24)の後端や側端が圃場H外に位置しているときがあるので、この場合自律走行は開始しない。自律走行作業車両1の最大占有領域Qが圃場内に位置していると、自律走行作業車両1の進行方向と設定された進行方向が設定範囲内に位置しているか判断し(方位センサ32で検知した方位と設定進行方向方位を比較し)(S7)、設定範囲内に入っていないと自律走行の開始を許可せず、オペレータが自律走行作業車両1の進行方向を調整する(S5)。設定範囲内の進行方向は、例えば、走行経路Rの設定進行方向の中心から左右20度以内として、走行開始から数メートル程度で設定進行方向に修正できる範囲とする。
【0069】
次に、自律走行作業車両1に異常がないか判断する(S8)。異常があるとどのような異常であるか表示して(S9)作業は開始せず、異常の修復を行う(S10)。異常として例えば、エンジンがエンストしたり、油温や水温が上昇したり、電気系統が断線したり短絡したり、作業機が作動しない場合、自律走行作業車両1のドアが閉まっていない(センサで検知)場合、オペレータが遠隔操作装置112を注視していない(離れている)場合等である。なお、遠隔操作装置112を注視していない(離れている)かの判断は遠隔操作装置112に備えるカメラやタッチセンサ等で検知して判断する。異常がない場合には、エンジン3が始動しているか判断し(S11)、始動していないと自律走行は開始されず、オペレータが自律走行作業車両1に乗り始動操作を行う(S12)。始動していると、自律走行及び作業が開始される(S13)。なお、前述の開始条件が整っているかの判断時において、完了する毎に一つずつ表示を変えるようにすることも可能である。また、作業車両が電動駆動の場合は、バッテリから電動モータに電力が供給可能な状態になっているかを判断する。
【0070】
自律走行作業時においては、作業が終了したか判断する(S14)。作業が終了すると、自律走行作業車両1の走行が停止されて終了となる(S15)。終了ではないとき、作業が途中で中断されたか判断する(S16)。なお、中断条件は後述する。中断条件が発生しない場合は自律走行作業を続行し、作業を中断した場合は、その中断した位置が記憶装置30aに記憶される(S17)。中断時においては作業が再開できるか判断する(S18)、再開するとなると中断した時の位置が再開始位置として表示され(S19)、ステップ1に戻る。なお、中断後に再開する位置は、前記中断位置と別の作業開始位置と選択できるようにすることもできる。また、再開する時に燃料補給や修理等で別の位置に移動した時は、自動で再開位置まで自律走行作業車両1を移動させるように制御することも可能である。
【0071】
以上のように、スイッチ等で作業開始操作が行われて、自律走行作業車両1により作業を開始する場合、前記制御装置30は、自律走行作業車両1の現在位置が設定走行経路Rの作業開始位置Xから設定範囲以上離れている場合、作業開始を許可しないように制御するので、作業開始位置Xでの未作業域が大きくなることを防止し、設定範囲内の多少の位置ズレであれば設定走行経路Rへの復帰が迅速に行える。また、前記制御装置30は、自律走行作業車両1の走行及び作業を制御する第一制御装置301と、走行経路Rを演算し記憶する第二制御装置302からなり、第一制御装置301は自律走行作業車両1に備えられ、第二制御装置302は自律走行作業車両1または遠隔操作装置112に備えられるので、平行(分散)して演算(制御処理)ができるようになり、制御負担が小さく演算(制御)を速くできる。また、第二制御装置302を遠隔操作装置112に設けると、機体から離れた家等で設定作業ができるようになる。
【0072】
また、制御装置30は作業開始位置Xにおいて、進行方向が設定範囲外に向いていると自律走行の開始を許可しないように制御するので、意図しない方向に走行したり、畦や他の障害物に当接したり、大きく曲がった作業跡となることがない。
【0073】
また、制御装置30は自律走行作業車両1に異常が発生した場合は自律走行の開始を許可しないように制御するので、異常があるまま作業を開始して、機体やエンジンや作業機等を傷めることがない。また、自律走行作業車両1の制御装置30は遠隔操作装置112と送受信機110・111を介して接続されていない(通信異常の)場合は自律走行を許可しないように制御するので、遠隔操作装置112による操作が確実に行え、自律走行作業車両1の状態も容易に認識できる。また、制御装置30は作業が中断されると、中断位置を記憶し、再度作業を開始するときはその中断位置を作業再開始位置とし、表示手段49やディスプレイ113にその位置を表示するので、中断後の作業開始の位置合わせが容易に行え、作業が途切れることを防止できる。
【0074】
そして、自律走行作業車両1と随伴走行作業車両100とにより作業が行われている途中において、次のような条件となると自律走行を停止して作業を中断させる。つまり、図11に示すように、自律走行作業車両1と随伴走行作業車両100とによる併走作業時において、制御装置30はGPS信号が異常であるか判断する(S20)。制御装置30は自律走行作業車両1の現在位置を検知するために、複数のGPS衛星37・37・・・からのGPS信号を受信しているが、GPS信号のレベルが低くなったり途切れたりして異常値となると、現在位置が把握できなくなり、設定した経路を走行できなくなる。よって、GPS信号が異常となると自律走行を停止させ(S21)、中断状態となる。なお、「GPS信号の異常」は、衛星測位システム(GNSS)に関わる衛星からの信号を受信している衛星数を検出し、その受信している衛星数が所定の衛星数以下となることや、受信している衛星からの信号強度が所定の強度以下となることや、受信している衛星の信号の波形が所定の波形以外になることや所定の周波数以外の周波数に変化することや信号が途切れることや、受信している複数の衛星の方位が所定の方向に偏ったことも含まれ、これらの場合も自律走行を停止させる。この停止時に表示手段となる遠隔操作装置112のディスプレイ113及び随伴走行作業車両100の表示手段49には走行を停止した原因を表示して警報を発する(S22)。
【0075】
また、GPSにより検知した自律走行作業車両1の実位置(測位位置)と設定した走行経路Rとを比較し(S23)、実位置が走行経路Rから設定した距離以上逸脱すると、自律走行を停止させる(S21)。なお同時に、随伴走行作業車両100の実位置と設定走行経路とを比較して設定範囲以上逸脱した場合、または、自律走行作業車両1と随伴走行作業車両100との位置関係が設定範囲以上逸脱した場合も自律走行作業車両1の走行を停止させるように制御することも可能である。つまり、設定走行経路からズレて未作業部分や不要な重複部分ができることを防止し、また、自律走行作業車両1が随伴走行作業車両100から設定範囲以上離れて、遠隔操作装置112からの信号が届き難くなったり、作業者の監視範囲から外れたりすることを防止する。また、作業中にステアリングハンドル4の操舵方向を検知する操向センサ20の出力値が正常の範囲内か判断する(S24)。例えば、断線やショート等の原因により異常な値を検出した場合急旋回してしまうので、異常な値でないかを検出し、異常値であると走行を停止させる(S21)。
【0076】
また、姿勢を検知するジャイロセンサ31と方位を検知する方位センサ32の出力値が正常の範囲内か判断する(S25)。異常値であると走行を停止させる(S21)。なお、デッドリコニングの方策による異常がないかも判断してもよい。例えば、慣性航法も適用している場合には、車軸(走行輪)の回転数センサ等の慣性航法に関わるセンサ値に異常がないかも判断する。また、燃料残量が設定量以下になったか判断する(S26)。燃料残量が設定量以下になると走行を停止する(S21)。但し、設定値は任意に設定できるようにしている。こうして、作業途中で燃料補給をする必要がなく、作業途中で燃料がなくなることによって動けなくなることを防止し、エンジンを傷めることもない。また、燃料残量を求める代わりに、エンジン回転数や負荷や作動時間等から燃料消費量を積算し、所定の積算値を越えると停止するように制御することも可能である。この場合燃料給油量または残量を入力しておく。さらに、その他機体等に異常が発生した場合(S27)にも走行を停止して中断させる(S21)。その他の異常としては、エンジンが正常に回転しない場合や、機体に異常振動が発生した場合や、作業機が作動しない場合や、スリップして車軸の回転と走行移動距離の差が所定の範囲を越えた場合や、キャビン付の場合ドアが開いた場合や、遠隔操作装置112と通信できなくなった場合や、遠隔操作装置112をオペレータが携帯して操作するモードで遠隔操作装置112がオペレータから離れた場合等であり、これらの場合も中断させる。遠隔操作装置112がオペレータから離れたことを検知するには、例えば、遠隔操作装置112の衝撃加速度を検知して設定値以上となったときや、遠隔操作装置112の姿勢を検知して異常な姿勢(裏向きや上下逆)となった場合や、遠隔操作装置112にカメラを付設して顔認識機能を付加して一定時間以上オペレータを認識できない場合や、人感センサを設けて携帯者を検知できない場合等において走行を停止させるのである。
【0077】
上記中断が発生しない場合は自律走行が続行される(S28)。走行を停止した場合においては(S21)、中断の原因を表示して警報を発すると(S22)、オペレータは随伴走行作業車両100の作業を停止して、中断の原因を解消する作業を行い、中断が解消する(S29)と、自律走行を再開させる(S28)。なお、自律走行を再開させる場合、自動的に再開させることも、監視者の確認後に再開させるようにすることもできる。監視者の確認は、遠隔操作装置112に設ける各項目の確認スイッチや再開スイッチ等の操作で安全や、故障や異常の解消等を確認し、その後、再始動を行う。更に、作業を再開する場合には、予告として音を発したり発光させたりして、再開を周囲に認識させるようにする。
【0078】
前記走行を停止させる手段は、ブレーキに加えて、油圧式無段変速装置を用いている場合には、変速手段44を中立として走行を停止する。つまり、油圧式無段変速装置(HST)を用いた変速装置の場合には、ソレノイドやモータで構成した変速手段を作動させて可変容量油圧ポンプの可動斜板を中立位置に移動させるのである。また、電動モータを用いて走行駆動している場合には、出力回転がゼロとなるように制御することで停止させる。こうして、傾斜地での作業において走行を停止した場合でも傾斜に沿って下りないようにしている。
【0079】
また、前記走行を停止させる手段は、歯車摺動式変速装置やパワークラッチ式変速装置やベルト式無段変速装置等を用いる変速装置では、エンジン3の出力軸とミッションケースの入力軸との間に配置したメインクラッチをオフとして走行を停止しブレーキを作動させる。こうして、傾斜地で走行を停止した場合でも傾斜に沿って下りないようにしている。
【0080】
前記走行を停止したとき、PTO入切手段45を作動させてPTOクラッチをオフとして作業機の作動を停止させるとともに、エンジン3の回転数をアイドル回転まで低下させる。こうして、不意に急な動きが生じることがなく作業面を荒らすことを防止している。但し、走行停止時のエンジン回転数は任意に設定可能としている。
【0081】
また、自律走行作業車両1が作業中に負荷の増加等によりエンストが発生して停止した場合には、オペレータは作業を中止して自律走行作業車両1に搭乗する。そして、エンジンを再始動させて、負荷が上昇した原因を回避する操作を行う。例えば、作業機を上昇させたり変速位置を下げて低速走行させたりする。そして、高負荷域を回避して通過させると通常の作業を再開させる。
【0082】
上記のように前記制御装置30は、GPS衛星(航法衛星)37からの信号が異常となると、自律走行を停止するように制御するので、設定走行経路Rから大きく外れる前に停止して、作業精度が悪化することを防止できる。
【0083】
また、制御装置30は設定走行経路Rに対して実位置が設定範囲以上逸脱すると走行を停止するように制御するので、設定走行経路Rから大きく外れる前に停止して、作業精度が悪化することを防止でき、深くはまり込んだり障害物に乗り上げたりして身動きができなくなることも防止できる。
【0084】
また、制御装置30は操向センサ20からの検出値が異常な値(例えば、検出値が変化しない場合や変化が大き過ぎる場合や検出可能範囲を越える値が出力された場合等)となると走行を停止するように制御するので、操向センサ20の検出値が異常のまま操舵アクチュエータ40を作動させて、意図せぬ方向へ進行することを防止できる。また、制御装置30は姿勢・方位を検知意するジャイロセンサ31と方位センサ32の検出値と目標値との差が設定値以上となると走行を停止するように制御するので、意図しない方向に進行することを防止できる。
【0085】
また、制御装置30は、前記走行を停止すると、その原因を随伴走行作業車両100に備える遠隔操作装置112に送信し、遠隔操作装置112のディスプレイ113に表示させるので、オペレータは走行停止の原因を容易に認識でき、停止の原因を解消するための対応を迅速にできる。また、故障である場合には、メンテナンス作業の処置も迅速に簡単にできる。
【0086】
<発明の付記>
第1態様においては、走行経路に沿って作業車両を自動走行させながら自動作業させることが可能な自動作業システムであって、前記走行経路は、自動作業が行われる複数の直進経路を含んで構成され、前記走行経路の自動走行開始位置において自動走行の開始条件が成立することによって自動走行を開始させることが可能であり、前記走行経路を自動走行中に、自動走行の中断条件が成立することによって自動走行が中断され、前記自動走行が中断された位置を作業再開始位置として記憶し、前記作業再開始位置を所定の表示部に表示する。
【0087】
第2態様においては、自動走行が中断された後、自動走行の再開を、前記走行経路における自動走行の中断位置及び別の走行経路における作業開始位置の何れの再開位置から実行するかを選択可能に前記表示部に表示する。
【0088】
第3態様においては、自動走行の中断は、自動走行の中断条件の成立に基づいて即座に実行されるとともに、自動走行の中断後、自動走行が中断されたことを示す警告を行い、前記再開位置からの自動走行の再開は、監視者による所定の操作具への操作に基づいて実行され、自動走行が再開される前に、自動走行が再開されることを示す報知を実行する。
【0089】
第4態様においては、前記所定の操作具は、前記作業車両と通信可能な遠隔操作装置に設けられ、前記遠隔操作装置は、前記走行経路を生成可能に構成され、前記表示部は、前記遠隔操作装置が備えており、前記警告として前記表示部に自動走行が中断されたことを表示する。
【0090】
上記態様によれば、走行経路を自動走行中に、自動走行の中断条件が成立することによって自動走行が中断され、自動走行が中断された位置を作業再開始位置として記憶し、作業再開始位置を所定の表示部に表示することにより、自動走行を中断した後の作業開始の位置合わせが容易に行え、作業が途切れることを防止できる。
【0091】
本発明の一態様に係る自動作業システムは、走行経路に沿って作業車両を自動走行させながら自動作業させることが可能な自動作業システムであって、前記走行経路の自動走行開始位置において自動走行の開始条件が成立することによって自動走行を開始させることが可能であり、前記走行経路を自動走行中に、自動走行の中断条件が成立することによって自動走行が中断され、前記自動走行の中断後、自動作業を再開するときには、前記自動走行が中断された位置を作業再開始位置として表示部に表示する。
【産業上の利用可能性】
【0092】
本発明は、異常が発生したときに自動的に停止させることを可能とする建設機械や農用作業車等に利用可能である。
【符号の説明】
【0093】
1 自律走行作業車両
30 制御装置
40 操舵アクチュエータ
44 変速手段
60 エンジンコントローラ
100 随伴走行作業車両
112 遠隔操作装置
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