(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168388
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】レンズアレイ、撮像モジュール、撮像装置
(51)【国際特許分類】
G02B 3/00 20060101AFI20231116BHJP
H01L 27/146 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
G02B3/00 A
H01L27/146 D
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023152318
(22)【出願日】2023-09-20
(62)【分割の表示】P 2019077537の分割
【原出願日】2019-04-16
(71)【出願人】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100165157
【弁理士】
【氏名又は名称】芝 哲央
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(72)【発明者】
【氏名】橋本 和哉
(72)【発明者】
【氏名】牧野 美生
(72)【発明者】
【氏名】守岡 結
(57)【要約】
【課題】強度をより向上させたレンズアレイを提供すること。
【解決手段】撮像モジュールの撮像部よりも光の入射側に配置されるレンズアレイであって、光の入射側に凸形状となる複数の単位レンズ11が、撮像部の受光面に沿って2次元的に配列されたレンズ部10と、レンズ部10の出射側に設けられ、受光面の法線方向から見た形状が各単位レンズを囲むように区画された遮光隔壁部21dと、遮光隔壁部21dの各区画の内部に充填される光透過性材料層22とを備える。遮光隔壁部21dは、複数の遮光隔壁シート211をレンズアレイ5の厚み方向に沿って重ね合わせた積層体であり、遮光隔壁部21dを構成する複数の遮光隔壁シート211のうち少なくとも1枚の遮光隔壁シート211は、区画に対応する開口の面積が他の遮光隔壁シートよりも小さく、レンズアレイの厚み方向において最も撮像部側に位置する遮光隔壁シート211よりもレンズ部側に位置する。
【選択図】
図8
【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像モジュールの撮像部よりも光の入射側に配置されるレンズアレイであって、
光の入射側に凸形状となる複数の単位レンズが、前記撮像部の受光面に沿って2次元的に配列されたレンズ部と、
前記レンズ部の光の出射側に設けられ、前記受光面の法線方向から見た形状が各前記単位レンズを囲むように区画された遮光隔壁部と、
前記遮光隔壁部の各区画の内部に充填される光透過性材料層と、
を備え、
前記遮光隔壁部は、複数の遮光隔壁シートをレンズアレイの厚み方向に沿って重ね合わせた積層体であり、
前記遮光隔壁部を構成する前記複数の遮光隔壁シートのうち少なくとも1枚の前記遮光隔壁シートは、
前記区画に対応する開口の面積が、他の前記遮光隔壁シートの前記区画に対応する開口の面積よりも小さく、かつ、
前記レンズアレイの厚み方向において最も前記撮像部側に位置する前記遮光隔壁シートよりも前記レンズ部側に位置する、
レンズアレイ。
【請求項2】
請求項1に記載のレンズアレイにおいて、
前記隔壁シートは、樹脂シートである、
レンズアレイ。
【請求項3】
請求項1に記載のレンズアレイにおいて、
前記隔壁シートは、金属シートである、
レンズアレイ。
【請求項4】
入射した光を電気信号に変換する複数の画素が2次元的に配列された撮像部と、
前記撮像部よりも光の入射側に配置される、請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載のレンズアレイと、
を備え、
1つの前記単位レンズ及び1つの前記区画には、複数の前記画素が対応する、
撮像モジュール。
【請求項5】
請求項4に記載の撮像モジュールを備える撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズアレイ、撮像モジュール、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、撮影後に焦点距離や被写界深度を変更できる複眼カメラが開発されている(例えば、特許文献1、2参照)。この複眼カメラでは、イメージセンサ上に配置されたレンズアレイで入射光を分割することにより、複数の方向の光を撮影する。そして、撮影後に光の入射方向や強度に基づいて所定の画像処理を行うことにより、画像の焦点距離や被写界深度を変更できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-72663号公報
【特許文献2】特開2005-352345号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した複眼カメラは、例えば、携帯端末、産業用機器等のカメラとして用いられることがあるため、レンズアレイの強度をより向上させることが求められている。
【0005】
本発明の目的は、強度をより向上させたレンズアレイ、撮像モジュール、撮像装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下のような解決手段により、課題を解決する。なお、理解を容易にするために、本発明の実施形態に対応する符号を付して説明するが、これに限定されるものではない。また、符号を付して説明した構成は、適宜に改良してもよく、また、少なくとも一部を他の構成物に代替してもよい。
【0007】
第1の発明は、撮像モジュール(4)の撮像部(6)よりも光の入射側に配置されるレンズアレイであって、光の入射側に凸形状となる複数の単位レンズ(11)が、前記撮像部の受光面に沿って2次元的に配列されたレンズ部(10)と、前記レンズ部の光の出射側に設けられ、前記受光面の法線方向から見た形状が各前記単位レンズを囲むように区画された遮光隔壁部(21d)と、前記遮光隔壁部の各区画の内部に充填される光透過性材料層(22)と、を備え、前記遮光隔壁部は、複数の遮光隔壁シート(211)を前記レンズアレイの厚み方向に沿って重ね合わせた積層体であり、前記遮光隔壁部を構成する前記複数の遮光隔壁シートのうち少なくとも1枚の前記遮光隔壁シートは、前記区画に対応する開口の面積が、他の前記遮光隔壁シートの前記区画に対応する開口の面積よりも小さく、かつ、前記レンズアレイの厚み方向において最も前記撮像部側に位置する前記遮光隔壁シートよりも前記レンズ部側に位置する、レンズアレイ(5)に関する。
第2の発明は、第1の発明のレンズアレイにおいて、前記隔壁シートは、樹脂シートである。
第3の発明は、第1の発明のレンズアレイにおいて、前記隔壁シートは、金属シートである。
第4の発明は、入射した光を電気信号に変換する複数の画素が2次元的に配列された撮像部(6)と、前記撮像部よりも光の入射側に配置される、第1の発明から第3の発明までのいずれかのレンズアレイ(5)と、を備え、1つの前記単位レンズ及び1つの前記区画には、複数の前記画素が対応する、撮像モジュール(4)である。
第5の発明は、第4の発明の撮像モジュールを備える撮像装置(1)である。
【発明の効果】
【0008】
本開示の一形態によれば、強度をより向上させたレンズアレイ、撮像モジュール、撮像装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】実施形態の撮像モジュール4を説明する図である。
【
図5】(A)~(E)は、樹脂製の遮光隔壁シート211を用いて光制御部20を製造する手順を示す図である。
【
図6】(A)~(E)は、金属製の遮光隔壁シート211を用いて光制御部20を製造する手順を示す図である。
【
図7】(A)~(C)は、レンズアレイ5を製造する手順を示す図である。
【
図8】(A)は、開口制御部211aを有する遮光隔壁部21の断面図である。(B)は、開口制御部211aを有する光制御部20の断面図である。
【
図9】(A)は、反射制御部211bを有する遮光隔壁部21の断面図である。(B)は、反射制御部211bを有する光制御部20の断面図である。(C)は、他の形状の反射制御部211bを有する遮光隔壁部21の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施形態について説明する。なお、本明細書に添付した図面は、いずれも模式図であり、理解しやすさ等を考慮して、各部の形状、縮尺、縦横の寸法比等を、実物から変更又は誇張している。また、図面においては、部材の断面を示すハッチングを適宜に省略する。
【0011】
本明細書等において、形状、幾何学的条件、これらの程度を特定する用語、例えば、「平行」、「直交」、「方向」等の用語については、その用語の厳密な意味に加えて、ほぼ平行、ほぼ直交等とみなせる程度の範囲、概ねその方向とみなせる範囲を含む。また、本明細書中において、シート面とは、シート状の部材であるレンズアレイ5、イメージセンサ6等において、そのシート全体として見たときの、シートの平面方向となる面を指すものとする。
なお、図面において、撮像モジュール4のシート面に平行であって、互いに直交する2方向をX(X1-X2)方向、Y(Y1-Y2)方向とし、シート面と直交する方向をZ(Z1-Z2)方向とする。
【0012】
図1は、本実施形態のカメラ1を説明する図である。
図2は、本実施形態の撮像モジュール4を説明する図である。
図3は、
図2のI-I線断面図である。
図1に示すように、カメラ1は、開口部2を有する筐体3の内部に、撮像モジュール4を備える。カメラ1は、例えば、スマートフォン、タブレット端末、産業用機器等の電子機器に搭載される撮像装置である。筐体3は、上述した電子機器の筐体に相当する。また、図示していないが、カメラ1は、制御部、記憶部等を備える。
【0013】
開口部2は、被写体側からの光を、カメラ1の撮像モジュール4へ取り込む部分である。開口部2には、撮像モジュール4への埃、ゴミ等の異物の侵入を防止する等の観点から、開口部2を覆うカバーガラス2aが設けられている。
撮像モジュール4は、光軸O(Z方向)に沿って、光の入射側(被写体側、Z1側)から順に、レンズアレイ5、接合層7、イメージセンサ(撮像部)6等を備える。撮像モジュール4は、前述した制御部(不図示)からの出力信号により、被写体を撮像する。
【0014】
レンズアレイ5及びイメージセンサ6は、いずれも矩形状且つ平板状の部材であり、そのシート面の幾何学的中心に光軸Oが直交している。すなわち、光軸Oは、レンズアレイ5及びイメージセンサ6のシート面の法線方向と一致している。
レンズアレイ5は、光軸O方向において、イメージセンサ6よりも光の入射側(Z1側)に配置されている。レンズアレイ5は、接合層7を介してイメージセンサ6の受光面(Z1側の面)に接合されている。
【0015】
レンズアレイ5は、
図3に示すように、レンズ部10、光制御部20及び接着層30を備える。
レンズ部10は、
図2に示すように、複数の単位レンズ11により構成されている。各単位レンズ11は、シート面に沿ってX方向及びY方向に正方格子状に配列している。これにより、各単位レンズ11は、撮像モジュール4として構成された場合に、イメージセンサ6の受光面に沿って2次元的に配列されることになる。単位レンズ11は、
図3に示すように、光の入射側(Z1側)に凸形状となる光学部材である。本実施形態の単位レンズ11は、X-Z断面において、略半球状に形成されている。略半球状とは、半球だけでなく、球や回転楕円体の一部形状等を含む形状をいう。また、光の入射側に凸形状となる光学部材として、例えば、フレネルレンズを用いることもできる。
【0016】
レンズ部10は、光透過性を有する樹脂により構成される。具体的には、レンズ部10は、ウレタンアクリレート、ポリエステルアクリレート、エポキシアクリレート等の紫外線硬化型樹脂を用いて、紫外線成形法等により形成される。なお、レンズ部10は、電子線硬化型樹脂等の、他の電離放射線硬化型樹脂により形成してもよい。また、レンズ部10は、PET(ポリエチレンテレフタレート)樹脂等の熱可塑性樹脂等を用いて熱溶融押出成形法等により形成されてもよいし、ガラスにより形成されてもよい。
【0017】
単位レンズ11において、光の入射側(Z1側)となる面には、反射防止機能を有する反射防止層(不図示)が形成されている。この反射防止層は、反射防止機能を有する材料として、例えば、フッ化マグネシウム(MgF2)、二酸化ケイ素(SiO2)、フッ素系光学用コーティング剤等を所定の膜厚でコーティングする等により形成される。レンズアレイ5において。光の入射側となる面に反射防止層を形成することにより、レンズアレイ5と空気との界面における反射を抑制し、入射光量の増加を図ることができる。
【0018】
光制御部20は、後述するように、入射した光のうち、クロストークの原因となる一部を吸収し、その他の光を透過させる機能を有する。光制御部20は、
図3に示すように、遮光隔壁部21と、光透過性材料層22と、を備える。
遮光隔壁部21は、
図2に示すように、受光面の法線方向から見た形状が、単位レンズ11を囲むように格子状に区画された構造体である。以下、遮光隔壁部21の一区画を「隔壁区画部21d」ともいう。遮光隔壁部21は、
図3に示すように、レンズアレイ5の厚さ方向(Z方向)に沿って延在している。レンズ部10の光の出射側(Z2側)に遮光隔壁部21(光制御部20)を設けることにより、各単位レンズ11が形成する像の一部が斜め方向から入射して、隣の画素領域(イメージセンサ6)に投影される、いわゆるクロストークと呼ばれる現象を抑制できる。
【0019】
遮光隔壁部21は、後述するように、カーボンブラック等の光吸収性を有する材料(以下、光吸収材という)や、光吸収材を含有した樹脂製の遮光隔壁シート211(後述)を複数枚重ね合わせることにより作製できる。
光吸収材としては、可視光領域の光を吸収する機能を有する粒子状等の部材が好適である。このような部材としては、カーボンブラック、グラファイト、黒色酸化鉄等の金属塩、顔料や染料、顔料や染料で着色された樹脂粒子等が挙げられる。
【0020】
顔料や染料で着色された樹脂粒子を用いる場合には、その樹脂粒子は、アクリル系樹脂や、PC(ポリカーボネート)樹脂、PE(ポリエチレン)樹脂、PS(ポリスチレン)樹脂、MBS(メチルメタクリレート・ブタジエン・スチレン)樹脂、MS(メチルメタクリレート・スチレン)樹脂等により形成されたものが用いられる。遮光隔壁部21を樹脂で構成する場合、その屈折率は、レンズ部10、接着層30及び光透過性材料層22の屈折率と同じとすることが望ましい。これら各部の屈折率を同じとすることにより、光学的な設計が容易になる。また、これら各部を同じ材料で形成することにより、レンズ部10と、光制御部20(遮光隔壁部21及び光透過性材料層22)との密着性をより高めることができる。
光吸収材としては、カーボンブラック等と上記のような着色された樹脂粒子とを組み合わせて用いてもよい。光吸収材を含有する樹脂としては、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート等の紫外線硬化型樹脂や、電子線硬化型樹脂等の電離放射線硬化型樹脂が挙げられる。
【0021】
光制御部20の厚みは、例えば、20μm~10mmである。
また、遮光隔壁部21は、後述するように、ステンレス、鉄、銅等の薄板をエッチングすることにより得られた金属製の遮光隔壁シート211を複数枚重ね合わせることによっても作製できる。
上述のように、遮光隔壁部21は、樹脂又は金属からなる複数の遮光隔壁シート211を重ね合わせた積層体として構成されている。
【0022】
接着層30は、レンズ部10と、光制御部20とを接着する層である。接着層30としては、例えば、レンズ部10と同じ種類の樹脂材料、OCA(Optical Clear Adhesive)に用いられるアクリル系、ウレタン系、シリコン系等の樹脂材料、熱硬化性樹脂、二液硬化型樹脂等を用いることができる。前述したように、接着層30の屈折率は、レンズ部10及び遮光隔壁部21を構成する樹脂の屈折率と同じとすることが望ましい。なお、レンズアレイ5の製造方法によっては、接着層30を省略できる。例えば、光制御部20の光の入射側(Z1側)にレンズ部10を直接成型すれば、レンズアレイ5において、接着層30を省略できる。
【0023】
図3に示すように、光透過性材料層(以下、「光透過層」ともいう)22は、遮光隔壁部21において、それぞれの隔壁区画部21dの内部に充填される部材である。光透過層22としては、例えば、レンズ部10と同じ種類の樹脂材料を用いることができる。光透過層22の屈折率は、遮光隔壁部21と同じとすることが望ましい。光透過層22の屈折率は、例えば、1.38~1.60である。光透過層22の屈折率を遮光隔壁部21と同じとすることにより、遮光隔壁部21の表面での光の反射を抑制できるため、イメージセンサ6において、より鮮明な画像を撮像できる。なお、光透過層22の屈折率を、遮光隔壁部21の屈折率よりも低くしても、ほぼ同様の効果が得られる。
【0024】
隔壁区画部21dに光透過層22を充填することにより、隔壁区画部21dの内部を空気で満たした構成に比べて、レンズアレイ5の強度をより向上させることができる。また、隔壁区画部21dに光透過層22を充填することにより、レンズ部10を構成する単位レンズ11の焦点距離を実質的に短くできるため、隔壁区画部21dの内部を空気で満たした構成に比べて、レンズアレイ5をより薄くできる。
【0025】
イメージセンサ6は、受光面で受光した光を電気信号に変換して出力する固体撮像素子である。イメージセンサ6は、複数の画素PXが2次元方向に配列されており、各画素PXにおいて、その画素PXに入射した光の強度が検出される。イメージセンサ6の受光面(Z1側の面)には、接合層7を介してレンズアレイ5が接合されている(
図1参照)。
【0026】
イメージセンサ6を構成する複数の画素PXは、イメージセンサ6の受光面である被写体側の表面に、2次元方向に配列されている。本実施形態では、
図2に示すように、イメージセンサ6の画素PXは、左右方向及び上下方向(X方向及びY方向)に複数配列されている。なお、
図2では、1つの単位レンズ11に対応する複数の画素PXの大きさを模式的に示している。また、以下の説明において、1つの単位レンズ11に対応する複数の画素PXからなる領域を「画素領域」ともいう。
イメージセンサ6としては、例えば、CCD(Charge Coupled Device)やCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等が用いられる。
【0027】
カメラ1において、開口部2から撮像モジュール4内に進んだ光は、レンズアレイ5に入射して、単位レンズ11により集光される。単位レンズ11で集光された光は、イメージセンサ6の受光面で焦点を結ぶ。また、レンズアレイ5に入射した光のうち、斜め方向に進む光の一部は、遮光隔壁部21で吸収される。そのため、イメージセンサ6の受光面上には、レンズアレイ5により結像された像が、それぞれ重なることなく形成される。
【0028】
本実施形態では、
図2に示すように、レンズアレイ5に設けられた複数の各単位レンズ11に対して、イメージセンサ6の複数の画素PXが対応するように配置されている。そして、撮影時には、各画素PXには、対応する単位レンズ11により分割された光が入射し、各画素PXにより、光の強度が検出される。また、各画素PXと、X-Y平面上のどの位置の単位レンズ11を透過したかを解析することにより、画素PXに入射した光の入射方向が検出可能となる。
撮影時、撮像モジュール4において、各画素PXが検出した入射光の強度及び入射方向の情報は、記憶部に記憶され、また、制御部により各種演算等が行われることにより、その焦点距離や被写界深度等を変更した(リフォーカス処理を行った)画像データとして生成される。
【0029】
次に、レンズアレイ5における各部の寸法の具体例と、入射する光との関係について説明する。
図4は、レンズアレイ5の断面図である。
図4は、
図3と同じく
図2のI-I線断面図に相当する図である。なお、
図4では、
図3に示す接着層30の図示を省略している。
図4に示すレンズアレイ5の各部の寸法として、例えば、以下のような数値が挙げられる。(カッコ内は、好ましい範囲)。なお、以下に示す数値は、光制御部20において、クロストークを抑制するために必要な条件の一例であり、レンズアレイ5の各部の寸法は、下記の具体例に限定されない。
【0030】
隔壁区画部21dの配列ピッチpは、850μmである。
遮光隔壁部21の幅wは、100μmである。
遮光隔壁部21の高さh1は、1000μmである。
単位レンズ11の高さh2は、レンズ部10と光制御部20との界面bからの数値であり、500μmである。なお、界面bは、レンズ部10と光制御部20との間に接着層30がないと仮定した場合の界面を示している。
【0031】
単位レンズ11の曲率半径は、530μmである。単位レンズ11の曲率半径の中心点は、単位レンズ11の配列ピッチと曲率半径との関係から、単位レンズ11の光軸上に設定される。具体的には、イメージセンサ6において、1つの単位レンズ11に割り当てられる画素数により単位レンズ11の配列ピッチが決定する。また、要求される視野角から単位レンズ11の曲率半径が決定し、この曲率半径から単位レンズ11の凸形状部分の高さh3が求められる。単位レンズ11の配列ピッチは、イメージセンサ6がフルサイズ(36mm×24mm)であるとすると、例えば、50μm~12mmである。
【0032】
本例では、単位レンズ11の配列ピッチを850μm(遮光隔壁部21の幅wを100μm、映像部面積750×750μm)と決定し、視野角40°から単位レンズ11の曲率半径530μmを決定した。これにより、曲率半径530μmとなる単位レンズ11の焦点位置(単位レンズ11の頂点からレンズ部10の平坦部分までの距離=高さh4)を、約1500μmに決定した。なお、「映像部面積」とは、1つの単位レンズ11に割り当てられる画素群の総面積をいう。
【0033】
上記寸法のレンズアレイ5において、単位レンズ11の頂点11aから入射する光のうち、角度θ1で入射する光L1は、光制御部20で遮られることなくイメージセンサ6(不図示)の対応する画素領域PX1に入射する。レンズアレイ5において、単位レンズ11の頂点11aから角度θ1以下の角度で入射した光は、すべてイメージセンサ6の対応する画素領域PX1へ入射する。後述するように、角度θ1を超える角度で入射した光は、すべて光制御部20で吸収される。
【0034】
角度θ2で入射する光L2は、光制御部20のZ2側の長さが短ければ、光制御部20の下側から、イメージセンサ6の隣の画素領域PX2へ入射する。角度θ3で入射する光L3は、光制御部20のZ1側の長さが短ければ、光制御部20の上側から、イメージセンサ6の隣の画素領域PX2へ入射する。これらの光L2、L3は、いずれも角度θ1を超える角度で入射するため、光制御部20ですべて吸収される。そのため、上記寸法のレンズアレイ5をイメージセンサ6に接合することにより、クロストークの発生を抑制できる。
【0035】
光制御部20は、
図4に示すように、レンズアレイ5の厚さ方向(Z方向)において、Z1側からZ2側まで延在していることが望ましいが、これに限定されない。上述したレンズアレイ5の構成において、遮光隔壁部21の下側(Z2側)から入射する光L2及び上側(Z1側)から入射する光L3を遮光するには、
図4の右側に示すように、遮光隔壁部21の長さを、レンズアレイ5のZ2側の下端からh5~h6(μm)の範囲とすればよい。これにより、単位レンズ11の頂点11aから角度θ1を超える角度で入射する光L2及び光L3を遮光できる。一例として、h5~h6は、53~270μmである。
【0036】
なお、上述した遮光隔壁部21の範囲は、遮光隔壁部21がZ1側からZ2側まで延在してしなくてもよいことを説明するために例示した数値であって、実際には、この範囲よりも長くすることが好ましい。
また、遮光隔壁部21上側(Z1側)の端部は、レンズ部10において、各単位レンズ11の周囲を囲むように延在してもよい。
【0037】
次に、光制御部20の製造方法について説明する。
まず、樹脂製の遮光隔壁シート211を用いて光制御部20を製造する例について説明する。
図5(A)~(D)は、樹脂製の遮光隔壁シート211を用いて光制御部20を製造する手順を示す図である。なお、
図5及び後述する
図6~
図9では、1つの図面により製造方法を説明するため、光制御部20の厚さ方向(Z方向)の高さを、
図3に示す高さよりも短く図示している。
【0038】
図5(A)に示すように、樹脂製の基材シート212を用意する。この基材シート212は、例えば、黒色の顔料により着色された樹脂シートである。基材シート212の厚みは、例えば、250μmである。この基材シート212から作製される遮光隔壁シート211を4枚重ね合わせることにより、厚さ約1mmの遮光隔壁シート211が得られる(後述する金属製の遮光隔壁シート211についても同様)。
【0039】
図5(A)に示すように、基材シート212に対してレーザ光LRを照射して、隔壁区画部21dとなる領域を形成する。そして、
図5(B)に示すように、隔壁区画部21dとなる領域から不要なシート材を除去することにより、1枚(1層分)の遮光隔壁シート211を作製する。なお、遮光隔壁シート211において、隔壁区画部21dとなる領域の形成は、レーザ光に限らず、例えば、打ち抜き加工により形成してもよい。また、樹脂成型により隔壁区画部21dとなる領域を形成してもよい。
【0040】
次に、
図5(C)に示すように、4枚の遮光隔壁シート211を重ね合わせて接合することにより、1枚の遮光隔壁部21を作製する。遮光隔壁シート211の接合には、例えば、接着剤(不図示)を用いることができる。なお、接着剤を用いることなしに、遮光隔壁部21の隔壁区画部21dに充填される光透過層22により、4枚の遮光隔壁シート211を接合してもよい。
【0041】
次に、
図5(D)に示すように、遮光隔壁部21の隔壁区画部21dに、未硬化の紫外線硬化型樹脂(不図示)を充填する。そして、充填した紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射して硬化させることにより光透過層22を形成する。以上の工程を経ることにより、光制御部20を作製できる。
【0042】
次に、金属製の遮光隔壁シート211を用いて光制御部20を製造する例について説明する。
図6(A)~(E)は、金属製の遮光隔壁シート211を用いて光制御部20を製造する手順を示す図である。
まず、
図6(A)に示すように、銅の薄板からなる基材シート212を用意する。基材シート212の表面にレジスト層213を形成し、例えば、電子線パターン描画によるパターン形成方法を用いて、レジストパターンを形成する。このレジストパターンは、遮光隔壁部21と同じパターン形状を有する。
【0043】
次に、基材シート212とレジストパターンの形成されたレジスト層213との積層体を、エッチング装置(不図示)にセットし、基材シート212をエッチング加工する。このエッチング加工により、
図6(B)に示すような1枚(1層分)の遮光隔壁シート211を作製する。
次に、
図6(C)に示すように、4枚の遮光隔壁シート211を重ね合わせて接合し、1枚の遮光隔壁部21を作製する。金属性の遮光隔壁シート211の接合は、例えば、接着剤を用いてもよいし、電気的な手法を用いてもよい。また、樹脂製の遮光隔壁シート211の場合と同じく、遮光隔壁部21の隔壁区画部21dに充填される光透過層22により、4枚の金属製の遮光隔壁シート211を接合してもよい。
【0044】
次に、
図6(D)に示すように、接合された遮光隔壁部21に対して黒化処理を行う。黒化処理としては、例えば、酸化処理でもよいし、黒化クロムを蒸着してもよい。また、黒化処理として、カーボン粒子を含有した塗料を遮光隔壁部21に塗布してもよい。遮光隔壁部21に黒化処理を施すことにより、遮光隔壁部21の表面における光の反射を抑制できる。
【0045】
次に、
図6(E)に示すように、遮光隔壁部21の隔壁区画部21dに、未硬化の紫外線硬化型樹脂(不図示)を充填する。そして、充填した紫外線硬化型樹脂に紫外線を照射して硬化させることにより光透過層22を形成する。以上の工程を経ることにより、光制御部20を作製できる。
【0046】
図7(A)~(C)は、レンズアレイ5を製造する手順を示す図である。
まず、
図7(A)に示すように、光制御部20の光の入射側(Z1側)の面に接着層30を形成する。光制御部20は、樹脂製の遮光隔壁シート211(
図5参照)で構成されたものでもよいし、金属製の遮光隔壁シート211で構成されたものでもよい(
図6参照)。
【0047】
次に、
図7(B)に示すように、光制御部20の光の入射側(Z1側)にレンズ部10を配置する。ここでは、
図2に示すように、光制御部20に設けられた各隔壁区画部21dと、レンズ部10に形成された各単位レンズ11とがシート面上で一致するように、位置合わせを行う。そして、レンズ部10と光制御部20とを接着層30で接着する。
これにより、
図7(C)に示すように、レンズ部10と光制御部20とを備えたレンズアレイ5が完成する。
【0048】
上述した実施形態のレンズアレイ5によれば、光制御部20の隔壁区画部21dに光透過層22が充填されるため、隔壁区画部21dの内部を空気で満たした構成に比べて、レンズアレイ5の強度をより向上させることができる。また、隔壁区画部21dに光透過層22を充填することにより、レンズ部10を構成する単位レンズ11の焦点距離を実質的に短くできるため、隔壁区画部21dの内部を空気で満たした構成に比べて、レンズアレイ5をより薄くできる。
【0049】
実施形態のレンズアレイ5において、光制御部20の遮光隔壁部21は、複数の遮光隔壁シート211を重ね合わせた積層体として構成される。そのため、レンズアレイ5において、光制御部20の厚さをより細かく調節できる。また、遮光隔壁部21の内部に、後述する開口制御部211a、反射制御部211b等を容易に形成できる。
【0050】
実施形態のレンズアレイ5において、光制御部20の遮光隔壁部21は、樹脂製の遮光隔壁シート211重ね合わせて積層体としてもよいし、金属製の遮光隔壁シート211を重ね合わせて積層体としてもよい。そのため、レンズアレイ5の製品仕様等に応じて、光制御部20の構成を適宜に選択できる。
【0051】
次に、遮光隔壁部21の他の実施形態について説明する。
図8(A)は、開口制御部211aを有する遮光隔壁部21の断面図である。
図8(B)は、開口制御部211aを有する光制御部20の断面図である。
図8(A)及び(B)では、理解を容易にするため、遮光隔壁シート211の間に隙間を示しているが、遮光隔壁部21において、複数の遮光隔壁シート211は、隙間なく積層されている。後述する
図9(A)~(C)についても同様である。
【0052】
図8(A)に示す遮光隔壁部21は、隔壁区画部21dとなる領域において、1枚の遮光隔壁シート211の開口面積が、他の遮光隔壁シート211の開口面積よりも小さく設定される。遮光隔壁シート211において、隔壁区画部21dとなる領域の開口面積は、レーザ光LR(
図5(A)参照)による照射範囲を調節することにより適宜に設定できる。なお、遮光隔壁シート211において、隔壁区画部21dとなる領域の形成は、レーザ光に限らず、例えば、打ち抜き加工により形成してもよい。また、樹脂成型により隔壁区画部21dとなる領域を形成してもよい。
【0053】
開口面積の小さな遮光隔壁シート211が積層された遮光隔壁部21においては、開口面積が小さい部分が開口制御部211aとなる。図示していないが、開口制御部211aは、遮光隔壁部21を構成するすべての隔壁区画部21dに形成されている。なお、開口制御部211aをシート面の法線方向から見た形状は、円形とすることが望ましいが、隔壁区画部21dをシート面の法線方向から見た形状と相似形としてもよい。
【0054】
各隔壁区画部21dに開口制御部211aを形成することにより、
図8(B)に示すように、シート面の法線方向に対して斜め方向から入射する光のうち、一部の光L4を透過させ、その他の光L5を遮光できる。このように、遮光隔壁部21に設けられた開口制御部211aは、カメラ1の絞りとして機能する。なお、開口制御部211aを設ける位置は、遮光隔壁部21において、レンズ部10側(Z1側)でもよいし、イメージセンサ6側(Z2側)でもよい。また、開口制御部211aは、遮光隔壁部21の厚さ方向(Z方向)において、複数個所に設けてもよい。
【0055】
図9(A)は、反射制御部211bを有する遮光隔壁部21の断面図である。
図9(B)は、反射制御部211bを有する光制御部20の断面図である。
図9(C)は、他の形状の反射制御部211bを有する遮光隔壁部21の断面図である。
図9(A)に示す遮光隔壁部21は、隔壁区画部21dとなる領域において、4枚の遮光隔壁シート211にそれぞれ反射制御部211bが設けられている。反射制御部211bは、隔壁区画部21dを区画する部分の断面形状が、レンズ部10側(Z1側)とイメージセンサ6側(Z2側)とで異なる。具体的には、反射制御部211bは、イメージセンサ6側(Z2側)の端部が、レンズ部10側(Z1側)の端部よりも内側に突出するように形成されている。なお、反射制御部211bは、レンズ部10側(Z1側)の端部が、イメージセンサ6側(Z2側)の端部よりも内側に突出するように形成してもよい。
【0056】
このような形状は、例えば、金属製の遮光隔壁シート211において、エッチング加工の時間を制御することにより形成できる。すなわち、遮光隔壁シート211のエッチング加工中に、遮光隔壁シート211のイメージセンサ6側(Z2側)の端部がすべて溶解して除去される前にエッチングを終了することにより、
図9(A)に示すようなエッジ形の断面形状を形成できる。図示していないが、反射制御部211bは、遮光隔壁部21を構成するすべての隔壁区画部21dに形成される。なお、反射制御部211bをシート面の法線方向から見た形状は、円形とすることが望ましいが、隔壁区画部21dをシート面の法線方向から見た形状と相似形としてもよい。
【0057】
各隔壁区画部21dに反射制御部211bを形成することにより、
図9(B)に示すように、シート面の法線方向に対して斜め方向から入射する一部の光L6を上向き(Z1方向)に反射させることができる。なお、反射制御部211bは、
図9(A)に示すように、積層されたすべての遮光隔壁シート211に形成してもよいし、1枚又は2~3枚の遮光隔壁シート211に形成してもよい。
【0058】
なお、遮光隔壁シート211を両面エッチングしたり、片面ずつ交互にエッチングしたりすることにより、
図9(C)に示すように、遮光隔壁シート211の厚さ方向(Z方向)の中心部分のみが内側に突出した断面形状を形成できる。このような形状とした場合でも、シート面の法線方向に対して斜め方向から入射する一部の光L7を上向き(Z1方向)に反射させることができる。
また、
図9(C)に示す断面形状の遮光隔壁シート211と、
図8(A)、
図9(A)に示す断面形状の遮光隔壁シート211とを組み合わせてもよい。
【0059】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本開示は、前述した実施形態に限定されるものではなく、後述する変形形態のように種々の変形や変更が可能であって、それらも本開示の技術的範囲内に含まれる。また、実施形態に記載した効果は、本開示から生じる最も好適な効果を列挙したに過ぎず、実施形態に記載したものに限定されない。なお、上述の実施形態及び後述する変形形態は、適宜に組み合わせて用いることもできるが、詳細な説明は省略する。
【0060】
(変形形態)
実施形態では、遮光隔壁部21を、複数の遮光隔壁シート211を重ね合わせた積層体とした例について説明した。これに限らず、遮光隔壁部21を1枚の遮光隔壁シート211により構成してもよい。また、複数の遮光隔壁シート211を重ね合わせて積層体とする場合、各遮光隔壁シート211の厚みは、均等でもよいし、それぞれ異なっていてもよい。
【0061】
実施形態では、樹脂製の遮光隔壁シート211を積層して遮光隔壁部21を作製する例及び金属製の遮光隔壁シート211を積層して遮光隔壁部21を作製する例について説明した。これに限らず、樹脂製の遮光隔壁シート211と、黒化処理した金属製の遮光隔壁シート211とを適宜に組み合わせて遮光隔壁部21を作製してもよい。
実施形態では、複数の単位レンズ11がシート面に沿ってX方向及びY方向に正方格子状に配列される例について説明した。これに限らず、複数の単位レンズ11は、シート面の法線方向(Z方向)から見て、六方格子状、長方格子状に配列するように構成してもよい。
【0062】
イメージセンサ6の受光面の大きさは、撮像モジュール4が用いられる携帯端末やカメラ等の大きさや、所望する画質やカメラの性能等に応じて、適宜に選択される。イメージセンサ6の受光面の大きさは、例えば、スマートフォン等の携帯端末に用いられる場合には、横×縦のサイズが4.8×3.6mm、4.4×3.3mm等、カメラ(主にコンパクトデジタルカメラ)等に用いられる場合には、横×縦のサイズが6.2×4.7mm、7.5×5.6mm等が挙げられる。
実施形態では、撮像モジュール4を備えた撮像装置の一例として、筐体3に撮像モジュール4を収納したカメラ1について説明した。これに限らず、撮像モジュール4は、筐体3に収納せずに単体で使用してもよい。
【符号の説明】
【0063】
1 カメラ
4 撮像モジュール
5 レンズアレイ
6 イメージセンサ
10 レンズ部
20 光制御部
21 遮光隔壁部
21d 隔壁区画部
211 遮光隔壁シート
211a 開口制御部
211b 反射制御部
22 光透過性材料層(光透過層)