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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168395
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】漏れ検知機能付き配管
(51)【国際特許分類】
   G01M 3/16 20060101AFI20231116BHJP
【FI】
G01M3/16 E
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023153998
(22)【出願日】2023-09-20
(62)【分割の表示】P 2023039602の分割
【原出願日】2023-03-14
(31)【優先権主張番号】P 2022053491
(32)【優先日】2022-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000110217
【氏名又は名称】TOPPANエッジ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141139
【弁理士】
【氏名又は名称】及川 周
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100206999
【弁理士】
【氏名又は名称】萩原 綾夏
(72)【発明者】
【氏名】三浦 大史
(72)【発明者】
【氏名】松保 諒
(72)【発明者】
【氏名】菰田 夏樹
(57)【要約】
【課題】配線の耐久性が高く、かつ検知感度が高い漏れ検知機能付き配管を提供する。
【解決手段】漏れ検知機能付き配管は、筒状の配管110と、配管110の周囲に巻き付けられた断熱材111と、断熱材111の周囲を覆う外装板112と、漏れ検知センサ10と、非接触型データ受送信体と、を有し、漏れ検知センサ10は、シート状の基材1と、基材1の第1主面1aに設けられ、液状の親油性物質と接触することにより電気抵抗値が上昇する検知用配線2と、第1主面1aに設けられ、検知用配線2の一部を覆う保護層3と、を備え、断熱材111と外装板112との間に設置または断熱材111に取り付けられ、非接触型データ受送信体は、漏れ検知センサ10の検知用配線2に電気的に接続されている。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の配管と、前記配管の周囲に巻き付けられた被覆材と、前記被覆材の周囲を覆う外装板と、漏れ検知センサと、非接触型データ受送信体と、を有する漏れ検知機能付き配管であって、
前記漏れ検知センサは、シート状の基材と、前記基材の主面に設けられ、液状の親油性物質と接触することにより電気抵抗値が上昇する検知用配線と、前記主面に設けられ、前記検知用配線の一部を覆う保護層と、を備え、前記被覆材と前記外装板との間に設置または前記被覆材に取り付けられ、
前記非接触型データ受送信体は、前記漏れ検知センサの前記検知用配線に電気的に接続されている、
漏れ検知機能付き配管。
【請求項2】
前記保護層は、前記主面の幅方向の少なくとも一方の端を含む領域に非形成部を有し、
前記非形成部は、少なくとも1つの前記検知用配線の長さ方向の一部を全幅にわたって露出させる、
請求項1記載の漏れ検知機能付き配管。
【請求項3】
前記保護層は、前記検知用配線を全幅にわたって覆う複数の島状の被覆部を有し、
複数の前記被覆部は、前記検知用配線の長さ方向に間隔をおいて並ぶ、
請求項1または2に記載の漏れ検知機能付き配管。
【請求項4】
前記被覆部は、前記検知用配線の長さ方向に対して傾斜して延在する帯状に形成されている、
請求項3記載の漏れ検知機能付き配管。
【請求項5】
前記被覆部は、前記検知用配線の長さ方向に対して傾斜して延在する2つの帯状部分によってV字形状に形成されている、
請求項3記載の漏れ検知機能付き配管。
【請求項6】
前記親油性物質と接触した場合に、前記保護層に覆われた部分の前記検知用配線の電気抵抗値は、前記非形成部の前記検知用配線の電気抵抗値に比べて高くなる、
請求項2記載の漏れ検知機能付き配管。
【請求項7】
前記親油性物質と接触した場合に、前記保護層と前記基材の間に前記親油性物質が浸透し、前記保護層に覆われた部分の前記検知用配線に接触して電気抵抗値が上昇する、
請求項1、2、および6のうちいずれか1項に記載の漏れ検知機能付き配管。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、漏れ検知機能付き配管に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、油が配線に触れることによる電気抵抗値の変化によって、油の漏れを検知する検知センサがある。漏れ検知センサは、例えば、基材と、基材表面に形成された配線と、基材表面に設けられた保護層とを備える(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第5904386号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の検知センサは、配線を保護し、配線の耐久性を高めるための保護層が設けられている。しかし、前記検知センサでは、保護層によって、検知対象である油が配線に接触しにくくなることがある。そのため、検知感度が低下する可能性がある。
【0005】
本発明の一態様は、配線の耐久性が高く、かつ検知感度が高い漏れ検知機能付き配管を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、シート状の基材と、前記基材の主面に設けられ、液状の親油性物質と接触することにより電気抵抗値が上昇する検知用配線と、前記主面に設けられ、前記検知用配線の一部を覆う保護層と、を備え、前記保護層は、前記主面の幅方向の少なくとも一方の端を含む領域に非形成部を有し、前記非形成部は、少なくとも1つの前記検知用配線の長さ方向の一部を全幅にわたって露出させる、漏れ検知センサを提供する。
【0007】
前記保護層は、前記検知用配線を全幅にわたって覆う複数の島状の被覆部を有し、複数の前記被覆部は、前記検知用配線の長さ方向に間隔をおいて並ぶことが好ましい。
【0008】
前記被覆部は、前記検知用配線の長さ方向に対して傾斜して延在する帯状に形成されていてもよい。
【0009】
前記被覆部は、前記検知用配線の長さ方向に対して傾斜して延在する2つの帯状部分によってV字形状に形成されていてもよい。
【0010】
前記親油性物質と接触した場合に、前記保護層に覆われた部分の前記検知用配線の電気抵抗値は、前記非形成部の前記検知用配線の電気抵抗値に比べて高くなってもよい。
【0011】
前記漏れ検知センサは、前記親油性物質と接触した場合に、前記保護層と前記基材の間に前記親油性物質が浸透し、前記保護層に覆われた部分の前記検知用配線に接触して電気抵抗値が上昇してもよい。
【0012】
本発明の一態様は、前記漏れ検知センサと、前記検知用配線に電気的に接続された非接触型データ受送信体と、を備える、漏れ検知システムを提供する。
【0013】
本発明の一態様は、前記漏れ検知センサと、前記検知用配線に電気的に接続された非接触型データ受送信体と、を備える、漏れ検知システムを提供する。
【0014】
本発明の一態様は、シート状の基材の主面に、液状の親油性物質と接触することにより電気抵抗値が上昇する検知用配線を形成する第1工程と、前記主面に、前記検知用配線の一部を覆う保護層を形成する第2工程と、を有し、前記第2工程において、樹脂材料と水系の溶剤とを含む液状の保護層用組成物を、前記主面の幅方向の少なくとも一方の端を含む領域が非形成部となるように塗布することによって保護層を形成し、前記非形成部は、少なくとも1つの前記検知用配線の長さ方向の一部を全幅にわたって露出させる、漏れ検知センサの製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0015】
本発明の一態様によれば、配線の耐久性が高く、かつ検知感度が高い漏れ検知機能付き配管を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】第1実施形態に係る漏れ検知システムの構成図である。
図2】第1実施形態に係る漏れ検知センサの平面図である。
図3図2のI-I断面図である。
図4】第1実施形態に係る漏れ検知センサの拡大した平面図である。
図5】第1実施形態に係る漏れ検知センサの設置形態を示す模式的な断面図である。
図6】比較形態に係る漏れ検知センサの平面図である。
図7図6のII-II断面図である。
図8図6のIII-III断面図である。
図9】比較形態に係る漏れ検知センサの設置形態を示す模式的な断面図である。
図10】第2実施形態に係る漏れ検知センサの平面図である。
図11】第2実施形態に係る漏れ検知センサの拡大した平面図である。
図12】第2実施形態に係る漏れ検知システムの構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
[漏れ検知システム]
図1は、第1実施形態に係る漏れ検知システム100の構成図である。図2は、第1実施形態に係る漏れ検知センサ10の平面図である。図3は、図2のI-I断面図である。図4は、漏れ検知センサ10の拡大した平面図である。
【0018】
図1に示すように、漏れ検知システム100は、漏れ検知センサ10と、非接触型データ受送信体20と、接続用配線31,32,33と、を備える。なお、図1では、保護層3の図示を省略する。
【0019】
非接触型データ受送信体20は、リーダライタ50との間で近距離の無線通信を行うことができる。
非接触型データ受送信体20は、ICチップ(図示略)と、ICチップに電気的に接続されたアンテナ11と、ICチップに電気的に接続された配線12,13と、を備える。 ICチップは、アンテナ11を介して非接触で情報の書き込みおよび読み出しが可能である。
【0020】
接続用配線31,32の一端は、それぞれ配線12,13に電気的に接続される。接続用配線31,32の他端は、漏れ検知センサ10の一端において、2本の検知用配線2の一端にそれぞれ電気的に接続される。接続用配線33は、漏れ検知センサ10の他端において、2本の検知用配線2の他端どうしを電気的に接続する。接続用配線31,32,33および検知用配線2は、ループ状の回路を形成する。この回路は、接続用配線31から、一方の検知用配線2、接続用配線33、および他方の検知用配線2を経て接続用配線32に至る。
【0021】
非接触型データ受送信体20は、接続用配線31,32,33および検知用配線2に通電することで、検知用配線2における電気抵抗値の検出結果を得る。電気抵抗値は、例えば、前記ICチップに内蔵された電気抵抗計によって検出することができる。
非接触型データ受送信体20は、電気抵抗値の検出結果に関する情報をリーダライタ50に送信することができる。
【0022】
[漏れ検知センサ](第1実施形態)
図2および図3に示すように、漏れ検知センサ10は、基材1と、一対の検知用配線2と、保護層3と、を備える。
【0023】
基材1は、シート状に形成されている。基材1は、例えば、可撓性を有する。基材1は、絶縁性材料で構成される。基材1としては、樹脂基材、紙基材などが使用できる。
樹脂基材としては、ポリカーボネート(PC)からなる基材;ポリエチレンテレフタレート(PET)などのポリエステル樹脂からなる基材;ポリエチレン(PE)などのポリオレフィン樹脂からなる基材;ポリフッ化ビニルなどのポリフッ化エチレン系樹脂からなる基材;ナイロン6などのポリアミド樹脂からなる基材;ポリ塩化ビニル(PVC)などのビニル重合体からなる基材;ポリメタクリル酸メチルなどのアクリル系樹脂からなる基材;ポリスチレンからなる基材;ポリアリレートからなる基材;ポリイミドからなる基材などが挙げられる。
【0024】
基材1は、テープ状(帯状)に形成されている。基材1の一方の面を第1主面1aという。基材1の他方の面(第1主面1aと反対の面)を第2主面1bという(図3参照)。第1主面1aは「主面」の一例である。
【0025】
以下の説明において、XY直交座標系を用いることがある。図2に示すように、X方向は第1主面1aの長さ方向である。Y方向は第1主面1aの幅方向である。Y方向は第1主面1aに沿う面内においてX方向と直交する。Z方向はX方向およびY方向に直交する方向である。Z方向から見ることを平面視という。
【0026】
図2における右方はX方向の一方の向き(+X方向)である。図2における左方は+X方向とは反対の向き(-X方向)である。図2における上方はY方向の一方の向き(+Y方向)である。図2における下方は+Y方向とは反対の向き(-Y方向)である。図2における紙面に対して手前方向はZ方向の一方の向き(+Z方向)である。図2における紙面に対して奥方向は+Z方向とは反対の向き(-Z方向)である。
【0027】
一対の検知用配線2は、基材1の第1主面1aに形成されている。検知用配線2は、基材1の長さ方向(X方向)に沿って形成されている。検知用配線2は、基材1の全長にわたって形成されている。一対の検知用配線2は、基材1の幅方向(Y方向)に互いに離れている。一対の検知用配線2は、互いに平行に形成されている。2つの検知用配線2を、それぞれ検知用配線2A,2Bともいう。
【0028】
検知用配線2は、第1主面1aの幅方向の端(側端1c)から離れた位置に形成されている。詳しくは、一対の検知用配線2のうち検知用配線2Aは、一方の側端1c(図2において+Y方向の側端1c)よりも幅方向の内方(-Y方向)に位置する。一対の検知用配線2のうち検知用配線2Bは、他方の側端1c(図2において-Y方向の側端1c)よりも幅方向の内方(+Y方向)に位置する。幅方向の内方は、一方の側端1cと他方の側端1cとが近づく方向である。
【0029】
検知用配線2は、例えば、膨潤性材料と、導電性材料とを含む検知用組成物によって形成されている。膨潤性材料は、親油性物質を吸収して膨潤する性質を有する。膨潤性材料は、親油性物質と親和性が高い。
【0030】
膨潤性材料としては、例えば、アクリル系ポリマー、ポリスチレン、酢酸ビニル系ポリマー、塩化ビニリデン系ポリマー、塩化ビニル系ポリマー、スチレン-ブタジエン系コポリマー、ポリブタジエン、アクリロニトリル-ブタジエン系ポリマー、ポリクロロプレン、ポリブチレン、ポリイソブチレン、イソプレン-イソブチレン系コポリマーなどの樹脂が挙げられる。
【0031】
導電性材料は、検知用配線2に導電性を与える。導電性材料は、例えば、導電性粒子、導電性繊維などの導電体である。導電性材料は、膨潤性材料中に分散される。導電性材料は、炭素系材料、金属系材料などで構成される。
【0032】
炭素系材料としては、カーボンブラック、グラファイト、カーボンナノチューブ、フラーレン、カーボンファイバー(炭素繊維)等を挙げることができる。炭素系材料は、これらのうち1つを単独で用いてもよいし、2以上を併用してもよい。炭素系材料で形成される導電体は、粒子状、微粉末状、繊維状などであってよい。
【0033】
金属系材料としては、金、銀、銅、アルミニウム等の金属;前記金属を含む合金;前記金属を含む金属酸化物等を挙げることができる。金属系材料としては、前記金属のうち1つを単独で用いてもよいし、2以上を併用してもよい。金属系材料で形成される導電体は、粒子状、微粉末状、繊維状などであってよい。金属系材料で形成される導電体は、複数の金属で形成される複合体であってもよい。例えば、第1の金属で形成された粒子の表面に第2の金属の被覆が形成された構造体であってもよい。
【0034】
検知用配線2における導電性材料の含有量は、例えば、5質量%~90質量%である。検知用配線2における膨潤性材料と導電性材料との配合比率(膨潤性材料:導電性材料)(質量基準)は、例えば、3:97~50:50である。検知用配線2は、必要に応じて、充填剤、分散剤、可塑剤、酸化防止剤、界面活性剤、軟化剤、老化防止剤、安定剤、レベリング剤、消泡剤、加水分解防止剤、膨張剤、増粘剤、着色剤等を含んでいてもよい。
【0035】
検知用配線2は、親油性物質に触れると電気抵抗値が変化する。詳しくは、検知用配線2に親油性物質が触れると、親油性物質は検知用配線2に吸収される。これにより、膨潤性材料が膨潤し、検知用配線2の体積が増す。検知用配線2の体積が増すと、導電性材料どうしの距離が大きくなるため、検知用配線2の電気抵抗値は高くなる。
【0036】
図2および図3に示すように、保護層3は、基材1の第1主面1aに形成されている。保護層3は、平面視において検知用配線2の一部を覆う。保護層3は、絶縁性の樹脂材料で形成される。保護層3に用いられる樹脂材料としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)などのポリオレフィン樹脂、ポリメタクリル酸メチルなどの(メタ)アクリル樹脂等が挙げられる。保護層3に用いられる樹脂材料は、ポリスチレン、ビニル樹脂、ポリエステル、ポリアミド等でもよい。
【0037】
保護層3は、必要に応じて、充填剤、分散剤、可塑剤、酸化防止剤、界面活性剤、軟化剤、老化防止剤、安定剤、レベリング剤、消泡剤、加水分解防止剤、膨張剤、増粘剤、着色剤等を含んでいてもよい。
【0038】
図2に示すように、保護層3は、第1主面1aの全領域に形成されているわけではなく、第1主面1aの一部領域にのみ形成されている。保護層3が形成されていない部分を非形成部4という。保護層3は、非形成部4を有する。
【0039】
非形成部4は、平面視において、第1主面1aの幅方向の両方の端(+Y方向の側端1cおよび-Y方向の側端1c)に達している。そのため、第1主面1aの側端1cを含む領域は露出している。
【0040】
保護層3の形状について詳しく説明する。
図4に示すように、保護層3は、複数の島状の被覆部5を有する。被覆部5は、他の被覆部5から離間しているため、島状に形成されているといえる。
複数の被覆部5は、検知用配線2の長さ方向(X方向)に沿う2つの列6をなすように配列されている。列6は、検知用配線2の長さ方向に間隔をおいて配列された複数の被覆部5によって形成されている。2つの列6のうち第1列6Aは、一方の検知用配線2(2A)に沿って形成されている。2つの列6のうち第2列6Bは、他方の検知用配線2(2B)に沿って形成されている。
【0041】
第1列6Aをなす被覆部5は、第1主面1aの一方の側端1c(+Y方向の側端1c)よりも幅方向の内方(-Y方向)に位置する。第2列6Bをなす被覆部5は、第1主面1aの他方の側端1c(-Y方向の側端1c)よりも幅方向の内方(+Y方向)に位置する。被覆部5が側端1cより幅方向の内方にあるため、保護層3の非形成部4は、第1主面1aの両方の側端1cを含む。第1列6Aをなす被覆部5と、第2列6Bをなす被覆部5とは、Y方向に離れて位置する。
【0042】
被覆部5は、検知用配線2の長さ方向(X方向)に対して傾斜して延在する帯状に形成されている。被覆部5は、X方向に対して傾斜する一対の対辺と、X方向に沿う一対の対辺とを有する平行四辺形状とされている。被覆部5のY方向の寸法は、検知用配線2の幅より大きい。被覆部5は、検知用配線2を斜めに横切って形成されている。そのため、被覆部5は、検知用配線2を全幅にわたって覆う。複数の被覆部5は、互いに平行に形成されている。
【0043】
隣り合う被覆部5の間において、検知用配線2は、長さ方向の一部が全幅にわたって露出している。そのため、非形成部4は、検知用配線2の長さ方向の一部を全幅にわたって露出させているといえる。
【0044】
親油性物質と接触した場合の、保護層3(被覆部5)に覆われた部分の検知用配線2の電気抵抗値と、非形成部4の検知用配線2の電気抵抗値とを比較する。「保護層3(被覆部5)に覆われた部分」を「被覆部分」と称する。共通の親油性物質を、被覆部分の検知用配線2と、非形成部4の検知用配線2との両方に接触させることを想定する。
親油性物質に接触したときの被覆部分の検知用配線2の電気抵抗値は、親油性物質に接触したときの非形成部4の検知用配線2の電気抵抗値より高くなる場合がある。
この構成によれば、非形成部4の検知用配線2の機能が何らかの原因で低下した場合でも、被覆部分の検知用配線2を用いて、親油性物質の漏れ検知性能を確保することができる。
【0045】
漏れ検知センサ10に親油性物質が接触した場合、親油性物質は、保護層3(被覆部5)と基材1との間に浸透して被覆部分の検知用配線2に接触することができる場合がある。親油性物質は、被覆部5の周縁(例えば、平行四辺形状の被覆部5の4つの辺)から、被覆部5と基材1との隙間に入り込む。親油性物質と接触した検知用配線2は、電気抵抗値が上昇する。
この構成によれば、非形成部4の検知用配線2の機能が何らかの原因で低下した場合でも、被覆部分の検知用配線2を用いて、親油性物質の漏れ検知性能を確保することができる。
【0046】
[漏れ検知センサの製造方法]
漏れ検知センサ10を製造する方法について説明する。
【0047】
(第1工程:検知用配線の形成)
膨潤性材料と導電性材料とを含む検知用組成物を用いて、公知の印刷法などにより基材1の第1主面1aに検知用配線2を形成する。印刷方法としては、スクリーン印刷などが挙げられる。検知用配線2は、公知のコーティング方法によって形成してもよい。検知用組成物は、第1主面1aに塗布した後、自然乾燥させてもよいし、乾燥炉を用いて乾燥させてもよい。
【0048】
(第2工程:保護層の形成)
樹脂材料と溶剤とを含む液状の保護層用組成物を用いて、公知の印刷法などにより基材1の第1主面1aに保護層3を形成する。印刷方法としては、スクリーン印刷などが挙げられる。保護層3は、公知のコーティング方法によって形成してもよい。保護層用組成物は、第1主面1aに塗布した後、自然乾燥させてもよいし、乾燥炉を用いて乾燥させてもよい。
【0049】
保護層用組成物は水系の溶剤を含む。この溶剤は親水性物質であるため、親油性の検知用配線2には吸収されにくい。そのため、検知用配線2の電気抵抗値が高くなるのを抑制できる。したがって、漏れ検知センサ10の検知感度の低下を抑えることができる。
【0050】
[漏れ検知センサおよび漏れ検知システムの使用方法]
漏れ検知センサ10および漏れ検知システム100(図1参照)の使用方法の一例を説明する。
【0051】
図5は、漏れ検知センサ10の設置形態を示す模式的な断面図である。
図5に示すように、送油設備400は、配管110と、断熱材111と、外装板112とを備える。
【0052】
配管110は、金属、樹脂などで形成される。配管110には、液状の親油性物質が流通する。
親油性物質は、油、非極性溶剤などと親和性が高い物質である。親油性物質としては、鉱物系油、合成油、動物系油、植物系油などがある。鉱物系油としては、石油系油がある。合成油としては、炭化水素系油、シリコーン油、フッ素系油などがある。炭化水素系油は石油系油であってもよい。石油系油としては、原油、重油、ガソリン、軽油、灯油およびナフサ等がある。親油性物質としては、非極性または低極性の有機系材料も挙げられる。非極性または低極性の有機系材料としては、ジエチルエーテル、n-ヘキサン、n-ペンタン等の炭化水素;四塩化炭素、クロロホルム等のハロゲン化物;酢酸エチル等のエステル;ベンゼン、トルエン等の芳香族化合物などがある。水にも溶ける有機系溶媒は、親油性物質と同等の性質を有する場合がある。水にも溶ける有機系溶媒としては、例えば、エタノール、イソプロパノール(IPA)、アセトンなどが挙げられる。水にも溶ける有機系溶媒は、漏れ検知センサ10の検知対象となる可能性がある。
【0053】
断熱材111は、例えば、ケイ酸カルシウム、グラスウールなどで形成されている。断熱材111は、配管110の外周面を全周にわたって覆う断熱層である。断熱材111の外周面には、この外周面を覆うように金属箔を設けてもよい。
外装板112は、例えば、断熱材111の外周を包囲する。外装板112は、例えば、金属で形成される。
【0054】
漏れ検知センサ10は、例えば、断熱材111と外装板112との間に設置される。漏れ検知センサ10は、断熱材111の外周面に粘着剤などで貼り付けてもよい。漏れ検知センサ10は、断熱材111の外周面と金属箔との間に設置してもよい。
【0055】
漏れ検知センサ10は、断熱材111の外周面の最下部に、基材1の第1主面1aを下(例えば、鉛直下方)に向けた姿勢で設置するのが好ましい。第1主面1aの向き(下方)は、配管110の径方向の外方である。
【0056】
図1に示すように、非接触型データ受送信体20は、漏れ検知センサ10の検知用配線2に通電することができる。
【0057】
図5に示すように、配管110から親油性物質Oが漏出し、断熱材111を通過して外周面に達し、漏れ検知センサ10に接触したと想定する。
【0058】
図4に示すように、保護層3の非形成部4は、基材1の側端1cを含む領域に及び、かつ検知用配線2の一部を全幅にわたって露出させている。そのため、断熱材111の外周面を経て漏れ検知センサ10に達した親油性物質Oは、側端1cから第1主面1aに流れ込み、露出した検知用配線2に達する。検知用配線2の一部は全幅にわたって露出しているため、親油性物質Oは、検知用配線2の幅方向の広い領域(例えば、全幅)に接することができる。
【0059】
検知用配線2に親油性物質Oが触れると、親油性物質Oは検知用配線2に吸収される。これにより、膨潤性材料が膨潤し、検知用配線2の体積が増す。検知用配線2の体積が増すと、導電性材料どうしの距離が大きくなるため、検知用配線2の電気抵抗値は高くなる。漏れ検知システム100は、検知用配線2の電気抵抗値を検出する。漏れ検知システム100は、電気抵抗値の検出値が予め定められた設定値以上となった場合、親油性物質Oが漏れ検知センサ10に接触したと判断することができる。そのため、親油性物質Oが配管110(図5参照)から漏れたことを検知できる。
【0060】
非接触型データ受送信体20は、検知用配線2の電気抵抗値の検出結果に関する情報を、リーダライタ50に送信することができる。
【0061】
[実施形態の漏れ検知センサおよび漏れ検知システムが奏する効果]
本実施形態の漏れ検知センサ10では、保護層3の非形成部4は、基材1の側端1cを含む領域に及び、かつ検知用配線2の一部を全幅にわたって露出させている。そのため、漏れ検知センサ10に達した親油性物質Oは、側端1cから第1主面1aに流れ込み、露出した検知用配線2に達する。検知用配線2の一部は全幅にわたって露出しているため、親油性物質Oは、検知用配線2の幅方向の広い領域に接することができる。したがって、電気抵抗値は大きく上昇する。よって、親油性物質Oの漏れを高い感度で検知することができる。
【0062】
漏れ検知センサ10は、検知用配線2の一部を覆う保護層3を備えるため、検知用配線2の耐久性を高めることができる。
【0063】
図3および図4に示すように、保護層3は、複数の島状の被覆部5を有する。被覆部5は、検知用配線2の長さ方向に間隔をおいて並んでいる。検知用配線2は所定長さごとに被覆部5に覆われるため、検知用配線2を保護する効果を高めることができる。保護層3は、被覆部5の間で検知用配線2を全幅にわたって露出させることができるため、親油性物質Oが検知用配線2に接触したときに電気抵抗値を大きく上昇させることができる。よって、検知用配線2を保護する効果を高めつつ、親油性物質Oの漏れを高い感度で検知することができる。
【0064】
被覆部5は、検知用配線2の長さ方向に対して傾斜して延在する帯状とされている。そのため、被覆部が検知用配線2の幅方向に沿って形成される場合に比べて、被覆部5を基材1の長さ方向の広い範囲にわたって形成することができる。よって、保護層3が検知用配線2を保護する効果を高めることができる。
【0065】
図1に示すように、漏れ検知システム100は、漏れ検知センサ10を備えるため、親油性物質Oの漏れを高い感度で検知することができる。漏れ検知システム100は、漏れ検知センサ10を備えるため、検知用配線2の耐久性を高めることができる。
【0066】
漏れ検知システム100は、非接触型データ受送信体20を備えるため、漏れ検知センサ10に通電するための電源が不要となる。そのため、装置構造を簡略にし、低コスト化を図ることができる。
【0067】
図6は、比較形態に係る漏れ検知センサ510の平面図である。図7は、図6のII-II断面図である。図8は、図6のIII-III断面図である。図9は、漏れ検知センサ510の設置形態を示す模式的な断面図である。
【0068】
図6図8に示すように、比較形態として、漏れ検知センサ510を想定する。漏れ検知センサ510は、保護層503の非形成部504が基材1の側端1cに達していない点で、図2に示す第1実施形態の漏れ検知センサ10と異なる。
【0069】
図9に示すように、配管110から親油性物質Oが漏出し、断熱材111を通過して外周面に達し、漏れ検知センサ510に接触したと想定する。
漏れ検知センサ510では、非形成部504が基材1の側端1cに達していないため、断熱材111の外周面を経て漏れ検知センサ10に達した親油性物質Oは、非形成部504内に流入しにくい。そのため、親油性物質Oの検知感度は低くなる。
【0070】
[漏れ検知センサ](第2実施形態)
図10は、第2実施形態に係る漏れ検知センサ310の平面図である。図11は、第2実施形態に係る漏れ検知センサ310の拡大した平面図である。
図10に示すように、漏れ検知センサ310は、保護層3に代えて保護層303を有する点で、図4に示す漏れ検知センサ10と異なる。保護層303は、被覆部5に代えて被覆部305を有する。
【0071】
図11に示すように、被覆部305は、第1帯状部分306と第2帯状部分307とを有するV字形状とされている。第1帯状部分306および第2帯状部分307は、検知用配線2の長さ方向(X方向)に対して傾斜して延在する。第1帯状部分306と第2帯状部分307とは検知用配線2の長さ方向に対して反対の方向に傾斜している。第1帯状部分306は、+Y方向に向かって+X方向に移行するように傾斜する。第2帯状部分307は、+Y方向に向かって-X方向に移行するように傾斜する。帯状部分306,307の幅方向の内端どうしが接続されているため、被覆部305はV字形状となっている。
【0072】
本実施形態の漏れ検知センサ310では、第1実施形態の漏れ検知センサ10と同様に、親油性物質Oの漏れを高い感度で検知することができる。漏れ検知センサ310は、検知用配線2の一部を覆う保護層303を備えるため、検知用配線2の耐久性を高めることができる。
【0073】
被覆部305がV字形状であるため、隣り合う被覆部305の隙間の形状も屈曲形状(V字形状)となる。そのため、漏れ検知センサ310に異物が接触することなどによって、漏れ検知センサ310の表面に直線状の引っかき傷350ができた場合、引っかき傷350の一部は被覆部305に達する。被覆部305に覆われた部分の検知用配線2は損傷を受けにくいため、検知用配線2は断線しにくい。よって、検知用配線2の耐久性を高めることができる。
【0074】
[漏れ検知システム](第2実施形態)
図12は、第2実施形態に係る漏れ検知システム200の構成図である。図12では、保護層3の図示を省略する。
【0075】
図12に示すように、漏れ検知システム200は、非接触型データ受送信体20に代えて、通信デバイス220を用いる点で、図1に示す漏れ検知システム100と異なる。 漏れ検知システム200は、接続用配線31,32,33および検知用配線2に通電することで、検知用配線2における電気抵抗値の検出結果を得る。通信デバイス220は、電気抵抗値の検出結果に関する情報を無線送信することができる。
【0076】
以上、本発明の実施形態を説明したが、実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であり、本発明の趣旨から逸脱しない範囲内で、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。
【0077】
図4に示すように、上述の実施形態では、第1主面1aの側端1cを含む領域は、基材1の長さ方向にわたって露出しているが、第1主面1aの側端1cを含む領域は、基材1の全長にわたって露出する必要はない。例えば、第1主面1aの側端1cを含む領域は、基材1の長さ方向の一部のみが露出していてもよい。
【0078】
前記実施形態では、非形成部4は、第1主面1aの幅方向の両方の端(+Y方向の側端1cおよび-Y方向の側端1c)に達しているが、非形成部4は、第1主面1aの一方の側端1cにのみ達していてもよい。そのため、非形成部4は、少なくとも一方の側端1cを含むように形成されていればよい。
【0079】
非形成部4の数は、1でもよいし、複数でもよい。複数の非形成部4は、例えば、基材1の長さ方向に分割されて形成されていてもよい。その場合、複数の非形成部4は、それぞれが第1主面1aの側端1cを含むように形成されることが望ましい。
【0080】
前記実施形態では、漏れ検知センサ10は、2本の検知用配線2を有するが、検知用配線2の数は2に限定されない。検知用配線2の数は1でもよいし、複数(2以上の任意の数)でもよい。
【実施例0081】
図2および図3に示す漏れ検知センサ10を作製した。
保護層用組成物に含まれる溶剤の種類が検知用配線2の電気抵抗値に及ぼす影響について調べた結果を示す。
【0082】
[実施例1~3]
基材1上に、検知用配線2を形成した(幅1.5mm、長さ100mm)。検知用配線2の上に、水系の溶剤を含む保護層用組成物を塗布した。水系の溶剤は、親水性物質である。実施例1,2で用いた溶剤はアルコール(イソプロピルアルコール)を含む。溶剤に含まれるアルコール量を表1に示す。
保護層用組成物を塗布する前の検知用配線2の電気抵抗値と、保護層用組成物を塗布して5分間経過したときの検知用配線2の電気抵抗値とを測定した。結果を表1に示す。
【0083】
[比較例1~4]
基材1上に形成した検知用配線2の上に、有機系の溶剤を含む保護層用組成物を塗布した。有機系の溶剤は、親油性物質である。溶剤に含まれる有機系溶媒の量を表1に示す。 比較例2~4で用いた保護層用組成物に含まれる樹脂は、紫外線硬化性樹脂である。 保護層用組成物を塗布する前の検知用配線2の電気抵抗値と、保護層用組成物を塗布して5分間経過したときの検知用配線2の電気抵抗値とを測定した。結果を表1に示す。
【0084】
【表1】
【0085】
表1より、実施例1~3では、保護層用組成物を塗布した後の検知用配線2の電気抵抗値はオーバーレンジとならず、正常範囲内に維持されたことがわかる。この結果より、実施例1~3では、保護層用組成物が検知感度に与える影響は小さいと考えられる。
これに対し、比較例1~4では、保護層用組成物を塗布した後の検知用配線2の電気抵抗値がオーバーレンジとなったため、検知感度は低下する可能性がある。
【符号の説明】
【0086】
1…基材、1a…第1主面(主面)、1c…側端(端)、2…検知用配線、3…保護層、4…非形成部、5,305…被覆部、10,310…漏れ検知センサ、20…非接触型データ受送信体、O…親油性物質
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12