(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168398
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】地図データ生成方法
(51)【国際特許分類】
G08G 1/00 20060101AFI20231116BHJP
G08G 1/16 20060101ALI20231116BHJP
G09B 29/00 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
G08G1/00 D
G08G1/16 A
G09B29/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023155448
(22)【出願日】2023-09-21
(62)【分割の表示】P 2019153531の分割
【原出願日】2019-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康悟
(72)【発明者】
【氏名】相馬 貴之
(72)【発明者】
【氏名】村田 一夫
(57)【要約】
【課題】詳細な情報を含む地図データを生成することができる地図データ生成方法を提供する。
【解決手段】複数の車両2の道路幅方向の位置についてヒストグラムを作成し、極大値となる位置と、ばらつきである分散σと、に基づいて通常走行帯情報と過渡走行帯情報とを生成する。これにより、単に車両が走行可能か否かを示すレーン幅情報よりも詳細な情報を地図データに含めることができる。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定移動体に搭載された測定部によって測定された周辺情報と、予め記憶された道路情報と、を比較することにより、前記道路情報に対する、前記周辺情報に含まれる移動体の道路幅方向の位置を算出する算出工程と、
前記道路情報に対する複数の移動体の道路幅方向の位置の分布に基づき、分布密度が所定値以上の範囲を示す第1情報と、前記第1情報の範囲の外側範囲を示す第2情報と、のうち少なくとも一方を生成する情報生成工程と、
前記第1情報および前記第2情報のうち少なくとも一方を含む地図データを生成する地図データ生成工程と、を含むことを特徴とする地図データ生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図データ生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搭乗者に多くの情報を提供することを目的として、車両が走行する車線および隣接する車線を検出する車線検出手段と、車両の搭乗者に情報を提示可能な情報提示手段と、を備えた情報処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された情報処理装置では、走行する車線と隣接する車線との位置関係を示す情報を搭乗者に提示することにより、車線の検出が適切になされていることを搭乗者が知ることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたように車線を検出するだけでは、運転支援等を実施するための情報として不充分である場合があった。例えば、車線および他の移動体を検出する場合に、隣接する車線内において他の移動体がふらつきつつ走行していても、車線からはみ出していなければこの移動体が正常であると判断されてしまう可能性がある。また、幅員やレーン数等の情報だけでは、実際の道路事情に即して走行を支援する上で課題が存在した。
【0005】
したがって、本発明の課題は、詳細な情報を含む地図データを生成することができる地図データ生成方法を提供することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の地図データ生成方法は、測定移動体に搭載された測定部によって測定された周辺情報と、予め記憶された道路情報と、を比較することにより、前記道路情報に対する、前記周辺情報に含まれる移動体の道路幅方向の位置を算出する算出工程と、前記道路情報に対する複数の移動体の道路幅方向の位置の分布に基づき、分布密度が所定値以上の範囲を示す第1情報と、前記第1情報の範囲の外側範囲を示す第2情報と、のうち少なくとも一方を生成する情報生成工程と、前記第1情報および前記第2情報のうち少なくとも一方を含む地図データを生成する地図データ生成工程と、を含むことを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】本発明の第1実施例の地図データ生成システムの概略を示すブロック図である。
【
図2】前記地図データ生成システムが生成するヒストグラムの一例である。
【
図3】前記地図データ生成システムが生成する地図データに含まれる通常走行帯情報及び過渡走行帯情報を示す概略図である。
【
図4】前記第1実施例の評価システムの概略を示すブロック図である。
【
図5】前記第2実施例の運転支援システムの概略を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明の実施形態に係る地図データ生成方法は、測定移動体に搭載された測定部によって測定された周辺情報と、予め記憶された道路情報と、を比較することにより、道路情報に対する、周辺情報に含まれる移動体の道路幅方向の位置を算出する算出工程と、道路情報に対する複数の移動体の道路幅方向の位置の分布に基づき、分布密度が所定値以上の範囲を示す第1情報と、第1情報の範囲の外側範囲を示す第2情報と、のうち少なくとも一方を生成する情報生成工程と、第1情報および第2情報のうち少なくとも一方を含む地図データを生成する地図データ生成工程と、を含む。
【0009】
複数の移動体の道路幅方向の位置の分布に基づいて第1情報と第2情報とを生成することから、第1情報に対応する道路幅方向位置は移動体の走行頻度が高く、第2情報に対応する道路幅方向位置は移動体の走行頻度が低い。即ち、単に移動体が走行可能か否かを示すレーン幅情報よりも詳細な情報を地図データに含めることができる。
【0010】
第1情報と第2情報とを地図データに含めることで、以下に複数例示するように地図データを利用することができる。まず、通常の幅員情報には歩道や中央分離帯も含まれることがあり、実際に走行可能な領域が不明であるのに対し、複数の移動体の道路幅方向の位置の分布に基づいて第1情報と第2情報とを生成することにより、実際に走行可能な領域を把握することができ、移動体を実際に走行可能な領域に案内することができる。特に、自動運転においては移動体を適切に案内することができる。また、手動運転では道路事情等に応じた運転が行われ、必ずしも各レーンの幅方向中央部を走行するとは限らないことから、複数の移動体の道路幅方向の位置の分布に基づく第1情報および第2情報を利用して案内することにより、自動運転においても実際の道路事情に即した運転を実現しやすい。また、第1情報および第2情報に基づいて他の移動体や移動物体の挙動を予測し、予測結果に基づいて運転支援を行うことができる。また、第1情報および第2情報に基づいて運転者の意図や運転行動を解析することができる。
【0011】
尚、このような地図データ生成方法は、例えば移動体から情報を取得する外部サーバによって実施されればよい。このとき、全ての工程が外部サーバによって実施されなくてもよく、移動体に搭載された制御部によって一部または全部の工程が実施されてもよい。また、周辺情報に複数の移動体が含まれる場合には、複数の移動体のそれぞれについて道路幅方向の位置を算出すればよい。また、複数台の測定移動体が走行するとともにこれらの移動体から外部サーバが情報を収集してもよいし、1台の移動体から外部サーバが情報を収集してもよい。
【0012】
情報生成工程において、複数の移動体の道路幅方向の位置についてヒストグラムを生成し、極大値となる位置と、ばらつきの程度と、に基づいて第1情報および第2情報の少なくとも一方を生成することが好ましい。これにより、道路の各位置における実際の走行状況に応じた情報を生成することができる。即ち、道路幅方向において移動体の走行位置のばらつきが小さい場合には、第1情報に対応する範囲が狭くなり、ばらつきが大きい場合には、第1情報に対応する範囲が広くなる。
【0013】
本発明の実施形態に係る評価方法は、上記の地図データ生成方法によって第2情報を含む地図データを生成し、第2情報に対応する道路幅方向位置おける移動体の挙動に基づいて、この移動体の運転者の運転状態を評価するものである。
【0014】
第2情報に対応する道路幅方向位置において、移動体が例えば急制動したり進行方向(方位)を急に変更したりした場合、車線変更を試みて失敗した可能性がある。このような挙動の頻度が高いと、この移動体を運転する運転者の技能が低いと判断することができる。また、第2情報に対応する道路幅方向位置における移動体の挙動に基づいて、煽り運転や漫然運転を判定し、安全運転度を評価することができる。運転技能や安全運転度を評価することにより、例えば自動車保険の保険料等の判断材料として用いることができる。
【0015】
本発明の実施形態に係る運転支援方法は、上記の地図データ生成方法によって第2情報を含む地図データを生成し、第2情報に対応する道路幅方向位置における他移動体の挙動に基づき、この他移動体のその後の挙動を予測し、予測した情報に基づいて移動体に対して運転支援するものである。
【0016】
第2情報に対応する道路幅方向位置おける他移動体の挙動に基づいて、例えば他移動体が車線変更しようとしていることを判断することができる。即ち、他移動体が方向指示器による指示を出す前であっても、この他移動体は第2情報に対応する道路幅方向位置を走行することがあり、この挙動に基づいて車線変更の意図があることを判断することができる。尚、他移動体に車線変更の意図があると判断した場合、移動体の運転者に対してその旨を伝達することで運転支援してもよいし、自動運転の制御に反映させてもよい。
【0017】
本発明の実施形態に係る運転支援方法は、上記の地図データ生成方法によって第2情報を含む地図データを生成し、他移動体との衝突予測度が所定値以上となった場合には、第2情報に対応する道路幅方向位置を走行するように移動体を誘導するものである。
【0018】
第2情報に対応する道路幅方向位置は、移動体の走行頻度は低いものの、走行可能な位置である。従って、例えば対向して走行する他移動体が車線をはみだして走行することにより衝突予測度が所定値以上となった場合に、第2情報に対応する道路幅方向位置を走行するように移動体を誘導することで、他移動体との衝突を避けることができる。尚、衝突予測度が所定値以上となった場合、移動体の運転者に対して走行すべき位置を示すことで運転支援してもよいし、自動運転の制御に反映させてもよい。
【0019】
本発明の実施形態に係る運転支援方法は、上記の地図データ生成方法によって第1情報および第2情報を含む地図データを生成し、第2情報に対応する道路幅方向範囲よりも外側に位置する移動物体を検出し、移動物体の検出状況に応じて、第1情報に対応する道路幅方向位置を走行するように移動体を誘導する。
【0020】
歩道において歩行者の通行量が多い場合や歩道幅が狭い場合、歩行者が歩道からはみ出して通行することがある。このような事態が頻発する道路においては、第1情報に対応する道路幅方向位置は、レーンの幅方向中央に対して歩道とは反対側に偏ることがある。一方、歩行者が歩道からはみ出していない場合、運転者は移動体がレーンの幅方向中央を走行するように運転することが多く、また、自動運転においても幅方向中央を走行するように制御される可能性がある。このように移動体がレーンの幅方向中央を走行し、第2情報に対応する道路幅方向範囲よりも外側に位置する移動物体(歩行者等)が検出された場合に、第1情報に対応する道路幅方向位置を走行するように移動体を誘導することで、移動物体がレーン内に侵入してきた場合でも、衝突を抑制しやすい。
【0021】
また、上述した地図データ生成方法をコンピュータにより実行させる地図データ生成プログラムとしてもよい。このようにすることにより、コンピュータを用いて、詳細な情報を含む地図データを生成することができる。
【0022】
また、上述した地図データ生成プログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよい。このようにすることにより、当該プログラムを機器に組み込む以外に単体でも流通させることができ、バージョンアップ等も容易に行える。
【実施例0023】
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。
【0024】
<第1実施例>
本実施例では、
図1に示すような地図データ生成システム1によって地図データを生成し、
図4に示すような評価システム10によって、地図データを利用して運転者の運転状態を評価する。
【0025】
[地図データ生成システム]
地図データ生成システム1は、複数の車両(移動体)2と、外部サーバ(情報処理装置)3と、を備える。尚、車両2は、一般車両であってもよいし、地図データを生成することを目的とした測定車両であってもよい。
【0026】
車両2には、情報取得部20が搭載されており、情報取得部20は、位置測定部21と、測定部22と、通信部23と、記憶部24と、車両側制御部25と、を備える。
【0027】
位置測定部21は、車両2の現在位置(絶対位置)を測定するものであって、例えば複数のGPS(Global Positioning System)衛星から発信される電波を受信するGPS受
信部であればよい。位置測定部21は、車両2の現在位置として、緯度経度情報を取得すればよい。
【0028】
測定部22は、周辺情報を測定可能なものであって、例えば光を投射して照射対象物による反射光を受光する光センサ(いわゆるLIDAR; Light Detection and RangingまたはLaser Imaging Detection and Ranging)であればよい。このとき、周辺情報とは、光セン
サによって得られる点群データであればよい。尚、測定部22としてビデオカメラ等を用い、(VSLAM;Visual Simultaneous Localization and Mapping)によって周辺情報を測定してもよい。
【0029】
通信部23は、例えばインターネットや公衆回線等のネットワークと通信するための回路やアンテナ等から構成され、外部サーバ3と通信して情報を送受信する。尚、通信部23は外部サーバ3に対して情報の送信のみを行うものであってもよい。また、通信部23に代えて着脱可能な記憶媒体を設けておき、作業者がこの記憶媒体を取り外すことで外部サーバ3に対してデータを転送可能な構成としてもよい。
【0030】
記憶部24は、例えばハードディスクや不揮発性メモリなどで構成され、自己位置推定用情報が記憶される。即ち、位置測定部21によって現在位置を測定する際、自己位置推定用情報を用いてマップマッチングすることができるようになっている。
【0031】
車両側制御部25は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などのメモリを備えたCPU(Central Processing Unit)で構成され、情報取得部20の全体制御を司る。
【0032】
外部サーバ3は、記憶部本体31と、通信部32と、サーバ側制御部33と、を備え、車両2とは物理的に分離して設けられるとともに、例えば、インターネット等のネットワークを介して車両2と通信可能となっており、車両2から情報を収集し、処理し、記憶するように構成されている。尚、外部サーバ3のうち情報を記憶するための部分と、処理するための部分と、が物理的に分離していてもよい。
【0033】
記憶部本体31は、例えばハードディスクや不揮発性メモリなどで構成され、道路情報を記憶し、サーバ側制御部33からの制御により読み書きがなされる。道路情報は、点群データに対応したマッチング用情報と、幅方向における道路の構情報成および各部の幅情報を含む道路構成情報と、を含む。
【0034】
マッチング用情報は、例えば地物の情報や白線の情報を含むものであればよい。即ち、光センサによって得られた点群データのうち地物や白線に対応する点群を、マッチング用情報と比較することにより、マッチング用情報に重ならず且つレーン上に位置する点群を、他車両(移動体)に対応したものであると判断することができる。
【0035】
道路構成情報の一例を表1に示す。
【0036】
【0037】
表1に示す道路構成情報には、各道路リンクIDについて、始点および終点のノードと、車線リンクIDと、各車線リンクにおけるレーンの幅と、が含まれている。車線リンクIDの数が、その道路における車線数に対応する。
【0038】
通信部32は、インターネットや公衆回線等のネットワークと通信するための回路やアンテナ等から構成され、車両2と通信して情報を送受信する。
【0039】
サーバ側制御部33は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などのメモリを備えたCPU(Central Processing Unit)で構成され、外部サーバ3の全体制御を司り、後述するように、車両2から取得した情報について処理を行うとともに、処理後の情報を記憶部本体31に記憶する。
【0040】
以上のような地図データ生成システム1において地図データを生成する際の具体的な方法の一例について説明する。
【0041】
まず、車両2が走行しつつ測定部22による測定を実施することにより、周辺情報が得られる。得られた周辺情報が、測定時の車両2の現在位置情報と組み合わされ、通信部23を介して外部サーバ3に送信される。上記が繰り返されることにより、外部サーバ3は、複数の周辺情報を収集する。また、外部サーバ3は、複数の車両2から周辺情報を収集する。
【0042】
サーバ側制御部33は、収集した周辺情報のそれぞれについて、他車両に対応する点群を抽出するとともに、基準位置に対する他車両の幅方向位置を算出する(算出工程)。即ち、マッチング用情報のうち現在位置情報に対応した位置の情報を用い、点群データである周辺情報と比較する。これにより、点群データから、他車両に対応した点群と、基準位置となる点群と、を抽出することができる。尚、基準位置としては、特定の白線(例えば最も歩道側の白線)や中央分離帯等の位置を用いればよい。他車両に対応した点群と、基準位置となる点群と、に基づき、他車両の道路幅方向位置を算出することができる。
【0043】
他車両の道路幅方向位置は、他車両が存在する範囲である。例えば幅が3mのレーンにおいて、基準位置(原点)となる白線から他車両の幅方向一端までの距離が0.5mであり、幅方向他端までの距離が2.3mである場合(即ち他車両の幅方向寸法が1.8mである場合)、原点から0.5~2.3mの範囲が、他車両の道路幅方向位置となる。
【0044】
1つの周辺情報に複数の他車両の点群が含まれる場合には、それぞれの他車両について道路幅方向位置を算出する。
【0045】
サーバ側制御部33は、各道路リンクについて、基準位置からの他車両の幅方向位置についてヒストグラムを生成し、極大値となる位置とばらつきの程度とに基づき、第1情報としての通常走行帯情報と、第2情報としての過渡走行帯情報と、を生成する(情報生成工程)。ヒストグラムは、例えば
図2に示すように、横軸を原点からの距離である幅方向位置(m)として適宜な単位で区画し、縦軸を分布数(個)としたものである。
【0046】
例えば幅が3mのレーンを10cm毎に区画し、原点から第1~第30エリアとする。上記のように他車両の道路幅方向位置が原点から0.5~2.3mの範囲である場合には、第6~第23エリアのそれぞれにおいて分布数が1カウントされる。
【0047】
このようにヒストグラムを生成すると、分布数がレーンの幅方向中央近傍において極大となる。また、道路幅方向位置におけるばらつきとして、標準偏差σを算出することができる。分布数が極大値となる道路幅方向位置を中心として、±2σの範囲を通常走行帯とし、その外側でありレーン内の範囲を過渡走行帯とする。尚、レーン数が複数である場合には、各々のレーンにおいて通常走行帯および過渡走行帯の情報を生成する。このとき、複数のレーンについて独立にヒストグラムを生成してもよいし、まとめて生成してもよい。
【0048】
図2に示す例では、原点から0.3~2.1mの範囲が通常走行帯となり、原点から0.3mまでの範囲と、2.1~3mの範囲と、が過渡走行帯となる。このように、他車両の道路幅方向の位置の分布密度が高い範囲が通常走行帯となり、分布密度が低い範囲が過渡走行帯となる。尚、分布密度に閾値を設定しておき、分布密度が閾値以上となる範囲を通常走行帯としてもよい。このとき、分布密度の閾値は、例えば幅に応じて設定されてもよく、各道路リンクにおいて互いに異なっていてもよい。
【0049】
上記に説明した方法では、ヒストグラムの生成時に、他車両の道路幅方向位置として、他車両が存在する範囲を用いたが、道路幅方向における他車両の中央位置を用いてもよい。中央位置を用いてヒストグラムを生成し、極大となる位置およびばらつきに基づいて中央位置の範囲を算出し、この範囲に適宜な車両幅を加えることにより、通常走行帯を決定してもよい。
【0050】
サーバ側制御部33は、通常走行帯情報と過渡走行帯情報とを含む地図データを生成する(地図データ生成工程)。まず、表1に示すような道路構成情報に通常走行帯情報および過渡走行帯情報を加えることで、表2に示すような詳細道路構成情報を生成する。
【0051】
【0052】
表2のような詳細道路構成情報は、レーンの幅だけでなく、レーン内における通常走行帯および過渡走行帯の位置についての情報も含んでいる。これにより、
図3に示すような通常走行帯および過渡走行帯が規定される。尚、後述するように通常走行帯情報および過渡走行帯情報を利用して各種の処理を実行する際、対象となる車両の車格(車幅)に応じて、通常走行帯の幅を増減させてもよい。即ち、大型車の場合、正常に走行していても通常走行帯からはみ出しやすくなるため、通常走行帯を広くするように補正してもよい。また、上記の表2では、レーン数が1である場合の例を示しているが、レーン数が複数である場合には、各レーンについて詳細道路構成情報が生成される。
【0053】
サーバ側制御部33は、詳細道路構成情報を含む地図データを生成し、記憶部本体31に記憶させる。尚、地図データは、詳細道路構成情報以外にも、道路周辺の地物についての情報も含んでいてもよい。
【0054】
[評価システム]
評価システム10は、
図4に示すように、評価対象車両(移動体)4と、外部サーバ(情報処理装置)3と、を備える。
【0055】
評価対象車両4には、情報取得部40が搭載されており、情報取得部40は、位置測定部41と、測定部42と、通信部43と、記憶部44と、車両側制御部45と、挙動測定部46と、を備える。情報取得部40の各部41~45は、車両2の情報取得部20の各部21~25と同様の構成を有している。
【0056】
挙動測定部46は、評価対象車両4の挙動として変位量を測定するためのものであって、例えば、評価対象車両4の車速パルスを取得する車速パルス取得部と、評価対象車両4の方位変位量を測定するためのジャイロセンサと、評価対象車両4の加速度を取得するための加速度センサと、によって構成されている。挙動測定部46により、評価対象車両4の挙動情報が得られる。
【0057】
車両側制御部45は、評価対象車両4が走行した際、周辺情報および挙動情報を測定時の評価対象車両4の現在位置情報と組み合わせ、通信部43によって外部サーバ3に送信する。
【0058】
本実施例では、地図データ生成用の外部サーバ3と評価用の外部サーバ3とが同一であるものとするが、互いに異なる外部サーバを用いてもよい。
【0059】
以上のような評価システム10において評価対象車両4の運転者の運転状態を評価する際の具体的な方法の一例について説明する。
【0060】
サーバ側制御部33は、測定部42が測定した周辺情報と、記憶部本体31に記憶されたマッチング用情報と、に基づいて、各道路リンクにおける評価対象車両4の道路幅方向の位置を算出する。評価対象車両4の道路幅方向の位置と、各道路リンクにおける通常走行帯情報および過渡走行帯情報と、に基づいて評価対象車両4がいずれの走行帯を走行したかを判定することができる。尚、評価対象車両4が過渡走行帯を走行したか否かは、評価対象車両4の少なくとも一部が過渡走行帯に進入したか否かに基づいて判定してもよいし、評価対象車両4の特定部位(例えば車幅方向中央部)が過渡走行帯に進入したか否かに基づいて判定してもよい。
【0061】
サーバ側制御部33は、評価対象車両4が過渡走行帯を走行した道路リンクについて、評価対象車両4の挙動が所定条件を満たすか否かについて判定する。
【0062】
例えば、評価対象車両4の加速度が負の値でありその絶対値が所定値以上である場合、評価対象車両4が過渡走行帯において急減速と判断することができる。このような急減速は、車線変更しようとしたものの周辺車両と衝突しそうになった場合に起こり得る。従って、評価対象車両4が過渡走行帯において急減速した頻度が高い場合、運転者が周辺車両の動きの予測を苦手としており、運転技能が劣っていると判断することができる。
【0063】
また、評価対象車両4の方位変位量が所定値以上である場合、評価対象車両4が過渡走行帯において急ハンドルにより進行方向を変えたことが判断できる。このような進行方向
の変化は、車線変更しようとしたものの周辺車両と衝突しそうになった場合に起こり得る。従って、評価対象車両4が過渡走行帯において進行方向を変更する頻度が高いる場合、運転者が周辺車両の動きの予測を苦手としており、運転技能が劣っていると判断することができる。
【0064】
また、評価対象車両4の通常走行帯から過渡走行帯への出入りの頻度(所定時間当たりの出入り回数)が所定値以上である場合、評価対象車両4が煽り運転をしている、又は、周囲から煽り運転であると認識されるような運転をしていると判断できる。このような場合、運転者の安全運転度が低いと判断することができる。尚、横風や路面状態によっては、車体が意図せずに揺れることがあり、煽り運転でなくても通常走行帯から過渡走行帯への出入りを繰り返してしまうことがある。そこで、過渡走行帯に進入している時間を測定し、進入時間が閾値以上である場合に、煽り運転について判定するようにしてもよい。
【0065】
また、評価対象車両4が過渡走行帯を走行している時間が所定値以上である場合や、過渡走行帯における車両進行方向と道路進行方向とがなす角度が所定値以下である場合、運転者の覚醒度が低いと判断することができる。即ち、運転者が眠気を感じていたり漫然運転をしていたりする場合、過渡走行帯に長時間留まる傾向がある。また、運転者が眠気を感じていたり漫然運転をしていたりする場合、通常走行帯から過渡走行帯へ進入する際の車両進行方向と道路進行方向との角度は、車線変更等の意図的な過渡走行帯への進入と比較して小さくなる傾向がある。このような場合、運転者の安全運転度が低いと判断することができる。
【0066】
また、各々の評価対象車両4について、過渡走行帯における挙動を収集することにより、その運転者の運転傾向を判断することができる。例えば、過渡走行帯への進入頻度が高い傾向が見られる場合、その運転者は苛立ちやすいと判断することができる。
【0067】
上記のように、サーバ側制御部33は、過渡走行帯における評価対象車両4の挙動に基づき、運転者の運転状態を評価することができる。このような運転状態の情報は、運転者を評価するものであり、自動車保険の保険料等の判断材料として用いたり、高齢者の場合には運転免許の返納の判断材料として用いたりすることができる。即ち、通常であれば、過渡走行帯は次のアクション(車線変更や右左折等)を起こすための準備動作や予備的動作として走行する領域であって、このような領域に長時間留まっていたり、このような領域において急激な加減速等を行ったりすると、事故を誘発する可能性がある。従って、過渡走行帯における評価対象車両4の挙動に基づき、運転者の運転状態を評価することができる。
【0068】
上記の構成により、複数の車両2の道路幅方向の位置の分布に基づいて通常走行帯情報と過渡走行帯情報とを生成することで、単に車両が走行可能か否かを示すレーン幅情報よりも詳細な情報を地図データに含めることができる。
【0069】
また、過渡走行帯における評価対象車両4の挙動に基づいて運転者の運転状態を評価することで、この運転者の運転技能や安全運転度を評価することができ、自動車保険の保険料等の判断材料として用いることができる。
【0070】
<第2実施例>
本実施例では、
図1に示すような地図データ生成システム1によって地図データを生成し、
図5に示すような運転支援システム100によって、地図データを利用して運転者の運転状態を評価する。
【0071】
[運転支援システム]
運転支援システム100は、手動運転車両である支援対象車両(移動体)5と、外部サーバ(情報処理装置)3と、を備える。
【0072】
支援対象車両5には、運転支援部50が搭載されており、運転支援部50は、位置測定部51と、測定部52と、通信部53と、記憶部54と、車両側制御部55と、情報出力部56と、を備える。情報取得部40の各部51~55は、車両2の情報取得部20の各部21~25と同様の構成を有している。
【0073】
情報出力部56は、例えばスピーカ等の音声出力部や画面等の表示部によって構成され、搭乗者に対して情報を出力可能に構成されている。尚、支援対象車両5が自動運転車両である場合には、情報出力部56に代えて、運転制御部が設けられていればよい。
【0074】
車両側制御部55は、通信部53を介して外部サーバ3からマッチング用情報および詳細道路構成情報を取得し、記憶部54に記憶する。車両側制御部55は、測定部52によって測定された点群データである周辺情報とマッチング用情報とを比較することにより、マッチング用情報に含まれない物体の点群を抽出する。マッチング用情報に含まれない物体のうち、車道上に位置するものは他車両であると判断することができ、歩道上に位置するものは歩行者や自転車等であると判断することができる。
【0075】
(他車両の挙動予測による運転支援)
他車両に対応する点群が抽出された場合、車両側制御部55は、マッチング用情報に含まれる基準位置との比較により、この他車両の道路幅方向位置を算出し、この他車両が通常走行帯と過渡走行帯とのうちいずれを走行しているかを判断する。さらに、車両側制御部55は、他車両の進行方向を算出するとともに、他車両と支援対象車両5との道路幅方向における間隔を算出する。
【0076】
車両側制御部55は、過渡走行帯における他車両の挙動に基づき、この他車両のその後の挙動を予測する。例えば、他車両が通常走行帯から過渡走行帯に進入するとともに車両進行方向と道路進行方向とがなす角度が所定値以上である場合、他車両は意図的に過渡走行帯に進入してきたものと判断することができる。従って、他車両の運転者が車線変更の意図を有しているものと予測される。
【0077】
車両側制御部55は、他車両が車線変更を意図している場合、情報出力部56に情報を出力させる。このとき、他車両が車線変更する可能性がある旨を出力してもよいし、車線変更を妨げないように加減速を指示したり車線変更を禁止するように指示したりしてもよい。例えば、道路幅方向に隣り合って走行する他車両が車線変更しようとしていると判断した場合には、減速を指示すればよく、後続車両が車線変更しようとしていると判断した場合には、二重追い越しをしないように、車線変更を禁止する指示をすればよい。
【0078】
尚、支援対象車両5が自動運転車両である場合、車両側制御部55は、上記のように、加減速したり追い越しを禁止したりするように運転制御部に命令を送信すればよい。
【0079】
(他車両との衝突予測時の運転支援)
車両側制御部55は、対向車両と支援対象車両5との道路幅方向における間隔に基づき、この対向車両との衝突予測度を算出する。例えば、救急車等の緊急車両が対向車線において追い越しのためにセンターラインからはみだしている場合、緊急車両と支援対象車両5との間隔が狭くなって衝突予測度が高くなる。このような場合、緊急車両の走行を優先して支援対象車両5は緊急車両を避けることが好ましい。
【0080】
そこで、車両側制御部55は、対向車両との衝突予測度が所定値以上となった場合には
、対向車両と反対側に位置する過渡走行帯を走行するように、情報出力部56に情報を出力させる。尚、支援対象車両5が自動運転車両である場合、車両側制御部55は、対向車両と反対側に位置する過渡走行帯を走行するように運転制御部に命令を送信すればよい。
【0081】
(歩行者が存在する場合の運転支援)
歩道において歩行者の通行量が多い場合や歩道幅が狭い場合、歩行者が歩道からはみ出して通行することがある。このような事態が頻発する道路においては、通常走行帯はレーンの幅方向中央に対して歩道とは反対側に偏ることがある。一方、歩行者が歩道からはみ出していない場合、運転者は支援対象車両5がレーンの幅方向中央を走行するように運転することが多く、運転者が意図せずに過渡走行帯を走行することがある。
【0082】
歩道上に位置する点群が抽出され、その密度または絶対数が所定値以上である場合、歩行者数が多いと推定される。このような場合、車両側制御部55は、通常走行帯を走行するように情報出力部56に情報を出力させる。尚、支援対象車両5が自動運転車両である場合、車両側制御部55は、通常走行帯を走行するように運転制御部に命令を送信すればよい。
【0083】
(積雪時の運転支援)
非積雪時の道路状態を把握している運転者は、積雪時においては視認不能となっている側溝等を避けるように運転する。通常走行帯とレーンの幅方向中央とにずれが生じている場合、非積雪時の道路状態を把握していない運転者は、側溝等の存在を認識しておらず、レーンと側溝との合計領域の幅方向中央を運転しようとすることがある。このような場合、車両側制御部55は、通常走行帯を走行するように情報出力部56に情報を出力させる。
【0084】
尚、支援対象車両5が自動運転車両である場合、車両側制御部55は、通常走行帯を走行するように運転制御部に命令を送信すればよい。このようにすることで、支援対象車両5は、非積雪時の道路状態を把握している運転者の運転によって形成された轍上を走行しやすくなる。
【0085】
上記の構成により、通常走行帯情報および過渡走行帯情報を含む地図データを利用して運転支援することで、他車両や歩行者等と衝突することを抑制することができる。また、自動運転においては、手動運転と同じような道路幅方向位置を走行することができ、搭乗者に与える不安を軽減することができる。
【0086】
なお、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0087】
例えば、前記実施例では、地図データを生成するための算出工程と情報生成工程と地図データ生成工程との全てを外部サーバ3側において実行するものとしたが、各工程の一部又は全部が車両側において実行されてもよい。
【0088】
また、前記実施例では、複数の車両2の道路幅方向の位置についてヒストグラムを生成し、極大値となる位置から±2σとなる範囲を通常走行帯と判定するものとしたが、このような判定方法に限定されない。例えば、極大値となる位置を基準とした範囲をさらに狭くしてもよいし広くしてもよい。また、分布数の絶対値を定めておき、この絶対値を超えた位置を通常走行帯としてもよい。
【0089】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施
例に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施例に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。