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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168399
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】地図データ生成方法
(51)【国際特許分類】
   G08G 1/16 20060101AFI20231116BHJP
   G08G 1/00 20060101ALI20231116BHJP
   G09B 29/00 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
G08G1/16 A
G08G1/00 D
G09B29/00 Z
【審査請求】有
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023155449
(22)【出願日】2023-09-21
(62)【分割の表示】P 2019153532の分割
【原出願日】2019-08-26
(71)【出願人】
【識別番号】000005016
【氏名又は名称】パイオニア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100134832
【弁理士】
【氏名又は名称】瀧野 文雄
(74)【代理人】
【識別番号】100165308
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100115048
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 康弘
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 康悟
(72)【発明者】
【氏名】相馬 貴之
(72)【発明者】
【氏名】村田 一夫
(57)【要約】
【課題】詳細な情報を含む地図データを生成することができる地図データ生成方法を提供する。
【解決手段】車両2と対向車両との車両中心間距離が閾値以下となった判定区間において、挙動が所定条件を満たした場合に、この区間をすれ違い困難区間とする。すれ違い困難区間の情報を含む地図データを生成することにより、車道の幅情報よりも詳細な情報を地図データに含めることができる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
移動体の位置を示す位置情報、前記移動体の挙動を示す挙動情報、及び、前記移動体に搭載された測定部により測定された対向移動体の位置情報を含む走行履歴情報を用いて、前記移動体と前記対向移動体との道路幅方向における移動体間距離を算出し、前記移動体間距離が所定値以下となる地点より先の判定区間において、前記挙動が所定条件を満たした場合、当該満たした地点を含む区間をすれ違い困難区間と判定する判定工程と、
前記すれ違い困難区間の情報を含む地図データを生成する地図データ生成工程と、を含むことを特徴とする地図データ生成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地図データ生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、搭乗者に多くの情報を提供することを目的として、車両が走行する車線および隣接する車線を検出する車線検出手段と、車両の搭乗者に情報を提示可能な情報提示手段と、を備えた情報処理装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された情報処理装置では、走行する車線と隣接する車線との位置関係を示す情報を搭乗者に提示することにより、車線の検出が適切になされていることを搭乗者が知ることができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2016-177622号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載されたように車線を検出するだけでは、運転支援等を実施するための情報として不充分である場合があった。例えば、白線を検出することで白線同士の間隔を算出することはできるものの、白線同士の間隔だけでは走行の困難度を適切に評価できないことがあった。即ち、白線同士の間隔が広くても電柱等の障害物によって局所的に走行困難な場合や、白線同士の間隔が狭くても走行容易な場合がある。
【0005】
したがって、本発明の課題は、詳細な情報を含む地図データを生成することができる地図データ生成方法を提供することが一例として挙げられる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した課題を解決し目的を達成するために、請求項1に記載の本発明の地図データ生成方法は、移動体の位置を示す位置情報、前記移動体の挙動を示す挙動情報、及び、前記移動体に搭載された測定部により測定された対向移動体の位置情報を含む走行履歴情報を用いて、前記移動体と前記対向移動体との道路幅方向における移動体間距離を算出し、前記移動体間距離が所定値以下となる地点より先の判定区間において、前記挙動が所定条件を満たした場合、当該満たした地点を含む区間をすれ違い困難区間と判定する判定工程と、前記すれ違い困難区間の情報を含む地図データを生成する地図データ生成工程と、を含むことを特徴としている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の実施例の地図データ生成システムの概略を示すブロック図である。
図2】前記地図データ生成システムを構成する車両が対向車両とすれ違う様子を模式的に示す平面図である。
図3】前記地図データ生成システムが利用するヒストグラムの一例である。
図4】前記地図データ生成システムが利用するヒストグラムの他の例である。
図5】本発明の実施例の運転支援システムの概略を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を説明する。本発明の実施形態に係る地図データ生成方法は、移動体の位置を示す位置情報、移動体の挙動を示す挙動情報、及び、移動体に搭載された
測定部により測定された対向移動体の位置情報を含む走行履歴情報を用いて、移動体と対向移動体との道路幅方向における移動体間距離を算出し、移動体間距離が所定値以下となる地点より先の判定区間において、挙動が所定条件を満たした場合、この満たした地点を含む区間をすれ違い困難区間と判定する判定工程と、すれ違い困難区間の情報を含む地図データを生成する地図データ生成工程と、を含む。
【0009】
例えば対面通行で中央線のない道路を移動体が走行している際、対向移動体との移動体間距離は短くなる。すれ違い時、移動体の運転者は、対向移動体との衝突を避けるために、ブレーキを踏んで減速させたり、対向移動体を避けるようにステアリングホイールを操作したりすることがある。従って、移動体間距離が所定値以下となる地点より先の判定区間において、移動体の挙動が所定条件を満たすか否かを判定することにより、すれ違い困難区間を判定することができる。すれ違い困難区間の情報を含む地図データを生成することにより、車道の幅情報よりも詳細な情報を地図データに含めることができる。
【0010】
尚、移動体間距離の算出には、少なくとも、測定部により測定された対向移動体の位置情報を用いればよい。即ち、例えば光センサ等の測定部によって、移動体と対向移動体との相対的な位置関係を測定することができ、この相対的な位置関係に基づいて移動体間距離を算出することができる。また、「すれ違い困難」とは、単にすれ違いが不可能であることを示してもよいし、すれ違いが可能であるものの困難性を伴う(例えば相当の注意が必要である場合、初心者等の低技能者にとっては困難である場合、すれ違い時の移動体同士の余裕距離が所定値以下である場合等)ことを示していてもよい。
【0011】
本発明の他の実施形態に係る地図データ生成方法は、移動体の位置を示す位置情報、移動体の挙動を示す挙動情報、及び、走行頻度が所定値以下となる道路幅方向範囲の情報を用いて、移動体が道路幅方向範囲を走行する判定区間において、挙動が所定条件を満たした場合、この満たした地点を含む区間をすれ違い困難区間と判定する判定工程と、すれ違い困難区間の情報を含む地図データを生成する地図データ生成工程と、を含む。
【0012】
移動体同士のすれ違いが困難な区間において移動体が走行している際に、対向移動体が走行してきた場合、移動体の運転者は、対向移動体がいない場合と比較して、道路幅方向において対向移動体から離れた位置を走行させようとする。即ち、移動体は、道路幅方向において走行頻度が低い道路幅方向範囲を走行しやすくなる。その後、移動体の運転者は、対向移動体との衝突を避けるために、ブレーキを踏んで減速させたり、対向移動体を避けるようにステアリングホイールを操作したりすることがある。従って、移動体の走行頻度が低い道路幅方向範囲を走行する判定区間において、移動体の挙動が所定条件を満たすか否かを判定することにより、すれ違い困難区間を判定することができる。すれ違い困難区間の情報を含む地図データを生成することにより、車道の幅情報よりも詳細な情報を地図データに含めることができる。
【0013】
本発明の他の実施形態に係る地図データ生成方法は、移動体の位置を示す位置情報、移動体の挙動を示す挙動情報、及び、道路幅方向範囲の走行頻度の情報を用いて、走行頻度の情報に基づく判定区間において、挙動が所定条件を満たした場合、この満たした地点を含む区間をすれ違い困難区間と判定する判定工程と、すれ違い困難区間の情報を含む地図データを生成する地図データ生成工程と、を含む。
【0014】
対面走行可能な道路においては、道路の幅方向において、一方向に走行する際の走行頻度が極大となる位置と、他方向に走行する際の走行頻度が極大となる位置と、が存在することとなる。これらの極大となる位置同士が接近しているほどすれ違いが困難となりやすい。従って、走行頻度の情報に基づく判定区間において、移動体の挙動が所定条件を満たすか否かを判定することにより、すれ違い困難区間を判定することができる。すれ違い困
難区間の情報を含む地図データを生成することにより、車道の幅情報よりも詳細な情報を地図データに含めることができる。
【0015】
尚、上記のような地図データ生成方法は、例えば移動体から情報を取得する外部サーバによって実施されればよい。このとき、全ての工程が外部サーバによって実施されなくてもよく、移動体に搭載された制御部によって一部又は全部の工程が実施されてもよい。
【0016】
判定工程において、判定区間において挙動が所定条件を満たしたか否かを複数の情報について判定し、前記所定条件を満たした地点の重なり程度が所定値以上である場合に、すれ違い困難区間であると判定することが好ましい。これにより、すれ違いが困難ではない区間において、歩行者のはみ出し等によって偶然に挙動が所定条件を満たした場合には、所定条件を満たした地点の重なり程度が低いことから、この区間をすれ違い困難区間と判定しないようにすることができる。
【0017】
本発明の実施形態に係る経路案内方法は、上記の地図データ生成方法によって地図データを生成し、現在地点から目標地点までの探索された経路中にすれ違い困難区間が含まれる場合には、すれ違い困難区間を避ける他の経路を探索するものである。すれ違い困難区間を避ける経路を探索することで、運転容易な経路を案内することができる。
【0018】
本発明の実施形態に係る運転支援方法は、上記の地図データ生成方法によって地図データを生成し、走行しようとする経路中にすれ違い困難区間が含まれる場合には、運転者に対し、すれ違い困難であることを示す情報を提示するものである。すれ違い困難であることを示す情報を提示することで、運転者は自らの判断ですれ違い困難区間を避ける経路を選択したり、すれ違い困難区間を慎重に運転したりすることができる。
【0019】
本発明の実施形態に係る運転支援方法は、上記の地図データ生成方法によって地図データを生成し、走行しようとする経路中にすれ違い困難区間が含まれる場合には、後続移動体に対し、移動体への過接近を防止するように指示する情報を提示するものである。後続移動体が移動体に過接近しないようにすることで、移動体が対向移動体とすれ違う際に、後退する余地を残すことができる。
【0020】
また、上述した地図データ生成方法をコンピュータにより実行させる地図データ生成プログラムとしてもよい。このようにすることにより、コンピュータを用いて、詳細な情報を含む地図データを生成することができる。
【0021】
また、上述した地図データ生成プログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に格納してもよい。このようにすることにより、当該プログラムを機器に組み込む以外に単体でも流通させることができ、バージョンアップ等も容易に行える。
【実施例0022】
以下、本発明の実施例について具体的に説明する。本実施例では、図1に示すような地図データ生成システム1によって地図データを生成し、図2に示すような運転支援システム10によって、地図データを利用して運転者の運転状態を評価する。
【0023】
[地図データ生成システム]
地図データ生成システム1は、複数の車両(移動体)2と、外部サーバ(情報処理装置)3と、を備える。尚、車両2は、一般車両であってもよいし、地図データを生成することを目的とした測定車両であってもよい。
【0024】
車両2には、情報取得部20が搭載されており、情報取得部20は、位置測定部21と
、測定部22と、通信部23と、記憶部24と、挙動測定部25と、車両側制御部26と、を備える。
【0025】
位置測定部21は、車両2の現在位置(絶対位置)を測定するものであって、例えば複数のGPS(Global Positioning System)衛星から発信される電波を受信するGPS受
信部であればよい。位置測定部21は、車両2の現在位置として、緯度経度情報を取得すればよい。
【0026】
測定部22は、周辺情報を測定可能なものであって、例えば光を投射して照射対象物による反射光を受光する光センサ(いわゆるLIDAR; Light Detection and RangingまたはLaser Imaging Detection and Ranging)であればよい。このとき、周辺情報とは、光センサによって得られる点群データであればよい。尚、測定部22としてビデオカメラ等を用い、(VSLAM;Visual Simultaneous Localization and Mapping)によって周辺情報を測定してもよい。
【0027】
通信部23は、例えばインターネットや公衆回線等のネットワークと通信するための回路やアンテナ等から構成され、外部サーバ3と通信して情報を送受信する。尚、通信部23は外部サーバ3に対して情報の送信のみを行うものであってもよい。また、通信部23に代えて着脱可能な記憶媒体を設けておき、作業者がこの記憶媒体を取り外すことで外部サーバ3に対してデータを転送可能な構成としてもよい。
【0028】
記憶部24は、例えばハードディスクや不揮発性メモリなどで構成され、自己位置推定用情報が記憶される。即ち、位置測定部21によって現在位置を測定する際、自己位置推定用情報を用いてマップマッチングすることができるようになっている。
【0029】
挙動測定部25は、車両2の挙動として変位量を測定するためのものであって、例えば、車両2の車速パルスを取得する車速パルス取得部と、車両2の方位変位量を測定するためのジャイロセンサと、車両2の加速度を取得するための加速度センサと、によって構成されている。挙動測定部25により、車両2の挙動情報が得られる。尚、挙動測定部25は、車両2のステアリングホイールの操舵角を測定してもよい。
【0030】
車両側制御部26は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などのメモリを備えたCPU(Central Processing Unit)で構成され、情報取得
部20の全体制御を司る。
【0031】
外部サーバ3は、記憶部本体31と、通信部32と、サーバ側制御部33と、を備え、車両2とは物理的に分離して設けられるとともに、例えば、インター ネット等のネットワークを介して車両2と通信可能となっており、車両2から情報を収集し、処理し、記憶するように構成されている。尚、外部サーバ3のうち 情報を記憶するための部分と、処理するための部分と、が物理的に分離していてもよい。
【0032】
記憶部本体31は、例えばハードディスクや不揮発性メモリなどで構成され、道路情報を記憶し、サーバ側制御部33からの制御により読み書きがなされる。道路情報は、点群データに対応したマッチング用情報と、幅方向における道路の構成情報を含む道路構成情報と、を含む。
【0033】
マッチング用情報は、例えば地物の情報や白線の情報を含むものであればよい。即ち、光センサによって得られた点群データのうち地物や白線に対応する点群 を、マッチング用情報と比較することにより、マッチング用情報と重ならず且つレーン上に位置する点群を、他車両(移動体)に対応したものであると判断する ことができる。
【0034】
道路構成情報は、各道路リンクにおける緯度経度情報とレーン数情報とレーン幅情報とを含む。
【0035】
通信部32は、インターネットや公衆回線等のネットワークと通信するための回路やアンテナ等から構成され、車両2と通信して情報を送受信する。
【0036】
サーバ側制御部33は、例えばRAM(Random Access Memory)やROM(Read Only Memory)などのメモリを備えたCPU(Central Processing Unit)で構成され、外部サ
ーバ3の全体制御を司り、後述するように、車両2から取得した情報について処理を行うとともに、処理後の情報を記憶部本体31に記憶する。
【0037】
以上のような地図データ生成システム1において地図データを生成する方法の具体例について説明する。
【0038】
(地図データの生成方法1)
図2に示すように、対面通行で中央線のない道路において、車両2と対向車両100とが走行しているものとする。まず、車両2が走行しつつ測定部22による測定を実施することにより、周辺情報および挙動情報が得られる。得られた周辺情報および挙動情報が、測定時の車両2の現在位置情報と組み合わされ、通信部23を介して外部サーバ3に送信される。上記が繰り返されることにより、外部サーバ3は、複数の周辺情報および挙動情報を収集し、記憶部本体31に記憶する。また、外部サーバ3は、複数の車両2から周辺情報および挙動情報を収集する。
【0039】
サーバ側制御部33は、以下に説明するように、すれ違い困難区間を判定する(判定工程)。サーバ側制御部33は、収集した周辺情報のそれぞれについて、対向車両100に対応する点群を抽出する。即ち、マッチング用情報のうち現在位置情報に対応した情報と、点群データである周辺情報と、を比較する。このとき、進行方向において車両2と対向車両100とが離れていると、道路幅方向において車両同士が接近しているか否かを判定する際に道路の湾曲の影響を受けやすいことから、進行方向において所定距離(例えば50m)以内の範囲で対向車両100の点群を抽出すればよい。また、道路の直線部分を走行している際と湾曲部分を走行している際とでこの所定距離を異なる値に設定してもよい。さらに、サーバ側制御部33は、測定部22を基準とする対向車両100の道路幅方向中心位置(即ち測定部22に対する相対的な位置)100Aと、対向車両の道路幅方向寸法L1と、を算出する。サーバ側制御部33は、車両2における測定部22の設置位置に基づき、車両2の道路幅方向中心2Aと、対向車両の道路幅方向中心100Aと、の道路幅方向における間隔(車両中心間距離)L2を算出する。
【0040】
車両中心間距離には、所定の閾値(例えば1.5m)が設定されている。尚、この閾値は、対向車両の道路幅方向寸法(車格)に応じて変化させてもよい。サーバ側制御部33は、算出した車両中心間距離を閾値と比較し、車両中心間距離が閾値以下である場合には、その地点よりも先の判定区間を設定する。判定区間の終点は、対向車両とのすれ違いが完了した地点であってもよいし、判定区間の始点から予め定められた距離の地点であってもよい。このように、すれ違いが発生している区間を特定することができる。
【0041】
サーバ側制御部33は、判定区間において、車両2の挙動が所定条件を満たすか否かを判定する。判定対象となる車両2の挙動としては、速度や減速度、方位変位量、進行方向の転換等が例示される。即ち、対向車両とのすれ違いが困難であるほど、車両2の速度が低くなったり(低速走行を継続したり)、車両2が減速したり(中高速走行から低速走行に変化したり)、障害物や対向車両を避けるために方位が大きく変化したり、すれ違い可
能な位置に移動するために後退したりする傾向があり、これらの挙動に基づいてすれ違い困難性を評価することができる。
【0042】
従って、所定条件としては、速度が所定値以下になったか否かや、減速度が所定値以上となった否か、方位変化量が所定値以上となったか否か、進行方向の転換の有無が例示される。これらの条件のうち1つでも満たした場合に、満たした区間を仮すれ違い困難区間と判定してもよいし、所定数の条件を満たした場合に、満たした区間を仮すれ違い困難区間と判定してもよい。また、所定条件を満たした場合に、その判定区間全体を仮すれ違い困難区間としてもよいし、満たした区間のみを仮すれ違い困難区間としてもよいし、判定区間を含むリンク全体を仮すれ違い困難区間としてもよい。
【0043】
また、サーバ側制御部33は、仮すれ違い困難区間を判定するだけでなく、すれ違い困難度も決定してもよい。例えば、上記条件の各所定値を複数段階に設定しておくことですれ違い困難度を決定してもよいし、満たした条件の数によってすれ違い困難度を決定してもよい。また、対向車両の車格に応じてすれ違い困難度を決定してもよい。即ち、車両2が同じような挙動を示した場合であっても、対向車両の道路幅方向寸法が小さいほど、その地点におけるすれ違い困難度は高い。
【0044】
サーバ側制御部33は、複数の車両2から複数の周辺情報および挙動情報を収集し、それぞれの情報について、上記のように仮すれ違い困難区間を判定する。これにより、仮すれ違い困難区間が重なる区間が存在し、重なり程度が所定値以上となった区間を、すれ違い困難区間と判定する。尚、重なり程度は、重なり数に基づくものであってもよいし、仮判定区間同士の重なり長さを考慮してもよい。
【0045】
サーバ側制御部33は、上記のように判定したすれ違い困難区間の情報を含む地図データを生成する(地図データ生成工程)。このとき、上記のような道路構成情報にすれ違い困難区間の情報を加えることで、詳細道路構成情報を生成する。サーバ側制御部33は、詳細道路構成情報を含む地図データを生成し、記憶部本体31に記憶させる。尚、地図データは、各道路リンクについての情報である詳細道路構成情報以外にも、道路周辺の地物についての情報も含んでいてもよい。
【0046】
(地図データの生成方法2)
上記の生成方法1では、車両中心間距離が閾値以下である場合に車両2の挙動を判定するものとしたが、生成方法2では、道路幅方向において車道(もしくは車線)に設定された通常走行帯および過渡走行帯の情報を用い、車両2が過渡走行帯を走行した区間を判定区間とする。
【0047】
通常走行帯および過渡走行帯は、複数の車両の走行頻度に基づいて予め設定されており、道路構成情報に含まれている。例えば、複数の車両の走行履歴を収集して図3に示すようなヒストグラムを生成し、極大値となる位置から所定のばらつき範囲(例えば±2σ)を通常走行帯とし、その外側を過渡走行帯とすればよい。
【0048】
サーバ側制御部33は、車両2が過渡走行帯を走行した区間を判定区間とした後は、生成方法1と同様に、車両2の挙動が所定条件を満たすか否かを判定することで、仮すれ違い困難区間を判定し、仮すれ違い困難区間の重なり程度に基づいてすれ違い困難区間を判定する。さらに、サーバ側制御部33は、すれ違い困難区間の情報を含む地図データを生成する。
【0049】
(地図データの生成方法3)
上記の生成方法2では、車両2が過渡走行帯を走行した区間を判定区間とするものとし
たが、生成方法3では、ヒストグラムに基づいて判定区間を設定する。対面走行可能な道路においては、道路の幅方向において、一方向に走行する際の走行頻度が極大となる位置と、他方向に走行する際の走行頻度が極大となる位置と、が存在することとなり、図4に示すようなヒストグラムが生成される。これらの極大となる位置同士が接近しているほどすれ違いが困難となりやすい。そこで、サーバ側制御部33は、極大となる位置同士の間隔が所定値以下となる区間を判定区間とする。
【0050】
サーバ側制御部33は、車両2が過渡走行帯を走行した区間を判定区間とした後は、生成方法1と同様に、車両2の挙動が所定条件を満たすか否かを判定することで、仮すれ違い困難区間を判定し、仮すれ違い困難区間の重なり程度に基づいてすれ違い困難区間を判定する。さらに、サーバ側制御部33は、すれ違い困難区間の情報を含む地図データを生成する。
【0051】
尚、仮すれ違い困難区間を判定する際、車両2の挙動が所定条件を満たすか否かの判定に代えて、道路幅方向分布のばらつきに基づいて判定してもよい。即ち、ばらつきが大きいほど、車両が走行する際の自由度が高くなる傾向があり、ばらつきが小さいと自由度が低くすれ違いが困難であると判断することができる。
【0052】
(地図データの生成方法4)
本生成方法では、すれ違い困難区間の情報に加え、退避可能地点の情報も含む地図データを生成する。すれ違い困難区間については、生成方法1~3と同様の方法で判定すればよい。
【0053】
サーバ側制御部33は、すれ違い困難区間内またはその前後において、車両2が過渡走行帯において停車したか(速度が0となったか)否かを判定する。車両2が過渡走行帯において停車した地点を退避可能地点と判定することができる。さらに、サーバ側制御部33は、すれ違い困難区間の情報および退避可能地点の情報を含む地図データを生成する。
【0054】
[運転支援システム]
評価システム10は、図5に示すように、支援対象車両(移動体)4と、外部サーバ(情報処理装置)3と、を備える。
【0055】
支援対象車両4には、運転支援部40が搭載されており、運転支援部40は、位置測定部41と、測定部42と、通信部43と、記憶部44と、情報出力部45と、車両側制御部46と、を備える。運転支援部40の各部41~44、46は、車両2の情報取得部20の各部21~24、26と同様の構成を有している。
【0056】
情報出力部45は、例えばスピーカ等の音声出力部や画面等の表示部によって構成され、搭乗者に対して情報を出力可能に構成されている。尚、支援対象車両5が自動運転車両である場合には、情報出力部45に代えて、運転制御部が設けられていればよい。
【0057】
車両側制御部46は、通信部43を介して、外部サーバ3からすれ違い困難区間の情報を含む地図データを取得し、記憶部44に記憶させる。
【0058】
(支援方法1)
本支援方法は、現在地点から目標地点までの経路を探索して案内する経路案内方法である。車両側制御部46は、位置測定部41によって現在位置情報を取得するとともに、搭乗者によって入力された目的地情報を取得し、現在地点から目的地点までの経路を探索する。このとき、車両側制御部46は、距離優先や渋滞回避優先といった予め定められたアルゴリズムに基づいて経路を探索するものの、探索された経路にすれ違い困難区間が含ま
れることがある。車両側制御部46は、すれ違い困難区間が含まれる経路を候補から外し、他の経路を探索する。車両側制御部46は、探索した1つ又は複数の経路の情報を情報出力部45に出力させる。
【0059】
尚、車両側制御部46は、すれ違い困難区間を含まないようにする経路探索と、すれ違い困難区間を許容する経路探索と、が切換可能とされていてもよい。また、走行時の周辺環境に応じて、経路探索時にすれ違い困難区間を含むか含まないかを決定してもよい。例えば夜間や雨天時、積雪時等、運転の困難度が高くなるような環境下では、すれ違い困難区間を含まない経路探索とすればよい。また、運転者が自己の判断によりすれ違い困難区間を含むか含まないかを決定してもよいし、運転者のスキルを客観的に判定し、スキルに応じてすれ違い困難区間を含むか含まないかを決定してもよい。
【0060】
(支援方法2)
本支援方法は、運転者に対してすれ違い困難であることを示す情報を提示する運転支援方法である。車両側制御部46は、現在地点から目標地点までの経路を探索し、探索した1つ又は複数の経路の情報を情報出力部45に出力させる。車両側制御部46は、搭乗者によって選択された経路にすれ違い困難区間が含まれているか否かを判定するとともに、位置測定部41によって取得された現在位置がすれ違い困難区間に接近しているか否かを判定する。
【0061】
支援対象車両4の現在位置がすれ違い困難区間に接近している場合、走行しようとする経路にすれ違い困難区間が含まれるものと判定される。このとき、車両側制御部46は、すれ違い困難区間が存在すること示す情報を情報出力部45に出力させ、運転者に対して注意喚起する。
【0062】
本支援方法では、すれ違い困難区間が存在するかしないかだけでなく、すれ違い困難度を出力してもよい。このとき、道路状況が同じあっても対向車両の道路幅方向寸法が大きいほどすれ違いが困難となる。そこで、対向車両の車格ごとにすれ違い困難度を出力してもよいし(例えば、「対向車両がトラックである場合はすれ違い不可能、対向車両が普通乗用車である場合はすれ違い困難、対向車両が軽自動車である場合はすれ違いやや困難」という情報)、対向車両を検出した場合に、その道路幅方向寸法に応じたすれ違い困難度を出力してもよい。また、運転者の技能等のステータスに応じたすれ違い困難度を出力してもよい。
【0063】
(支援方法3)
本支援方法は、後続車両に対して過接近を防止するように指示する情報を提示する運転支援方法である。車両側制御部46は、現在地点から目標地点までの経路を探索し、探索した1つ又は複数の経路の情報を情報出力部45に出力させる。車両側制御部46は、搭乗者によって選択された経路にすれ違い困難区間が含まれているか否かを判定するとともに、位置測定部41によって取得された現在位置がすれ違い困難区間に接近しているか否かを判定する。
【0064】
支援対象車両4の現在位置がすれ違い困難区間に接近している場合、走行しようとする経路にすれ違い困難区間が含まれるものと判定される。このとき、車両側制御部46は、過接近を防止するように指示する情報を情報出力部45に出力させ、後続車両の運転者に対して注意喚起する。本支援方法を実施する際には、情報出力部45は、後続車両に対して情報を出力可能に構成さている。尚、後続車両への情報出力方法は、例えば、後続車両と通信することで後続車両のスピーカや画面に情報を出力させるものであってもよいし、支援対象車両4の後面側に表示部を設けておき、この表示部に情報を出力するものであってもよい。
【0065】
上記の構成により、すれ違い困難区間の情報を含む地図データを生成することにより、車道の幅情報よりも詳細な情報を地図データに含めることができる。
【0066】
また、仮すれ違い困難区間の重なり程度が所定値以上である区間をすれ違い困難区間とすることで、すれ違いが困難ではない区間において、歩行者のはみ出し等によって偶然に仮すれ違い困難区間と判断された場合には、仮すれ違い困難区間が重なりにくく、この区間をすれ違い困難区間と判定しないようにすることができる。
【0067】
上記の支援方法1によれば、すれ違い困難区間を避ける経路を探索することで、運転容易な経路を案内することができる。
【0068】
上記の支援方法2によれば、すれ違い困難であることを示す情報を提示することで、運転者は自らの判断ですれ違い困難区間を避ける経路を選択したり、すれ違い困難区間を慎重に運転したりすることができる。
【0069】
上記の支援方法3によれば、後続車両が支援対象車両4に過接近しないようにすることで、支援対象車両4が対向車両とすれ違う際に、後退する余地を残すことができる。
【0070】
なお、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、本発明の目的が達成できる他の構成等を含み、以下に示すような変形等も本発明に含まれる。
【0071】
例えば、前記実施例では、地図データを生成するための判定工程と地図データ生成工程との全てを外部サーバ3側において実行するものとしたが、各工程の一部又は全部が車両側において実行されてもよい。
【0072】
また、前記実施例では、仮すれ違い困難区間の重なり程度に基づいてすれ違い困難区間を判定するものとしたが、仮すれ違い困難区間を設定することなく、車両2の挙動が所定条件を満たした場合にすれ違い困難区間であると判定してもよい。例えば、挙動が複数の条件を満たした場合にすれ違い困難区間であると判定するようにすれば、偶然によってすれ違い困難区間であると判定されることを抑制することができる。また、仮すれ違い困難区間を設定しないことで、短期間ですれ違い困難区間を判定することができる。
【0073】
また、前記実施例では、対向車両との車両中心間距離が閾値以下となった場合、又は、車両2が過渡走行帯を走行した場合に、判定区間を設定して車両2の挙動について判定するものとしたが、このような判定方法に限定されない。例えば、対向車両との車両中心間距離が閾値以下となり、且つ、車両2が過渡走行帯を走行した場合に、車両2の挙動について判定してもよい。また、対向車両との車両中心間距離が閾値以下となるという条件と、車両2が過渡走行帯を走行するという条件と、の両方を満たした場合に、この区間をすれ違い困難区間としてもよい。
【0074】
また、前記実施例では、複数の車両の走行履歴を収集してヒストグラムを生成し、このヒストグラムを利用して仮すれ違い困難区間を判定するものとしたが、ヒストグラムに代えて、複数の車両の走行履歴を平均化したものを利用してもよい。
【0075】
その他、本発明を実施するための最良の構成、方法などは、以上の記載で開示されているが、本発明は、これに限定されるものではない。すなわち、本発明は、主に特定の実施例に関して特に図示され、且つ、説明されているが、本発明の技術的思想および目的の範囲から逸脱することなく、以上述べた実施例に対し、形状、材質、数量、その他の詳細な構成において、当業者が様々な変形を加えることができるものである。従って、上記に開
示した形状、材質などを限定した記載は、本発明の理解を容易にするために例示的に記載したものであり、本発明を限定するものではないから、それらの形状、材質などの限定の一部、もしくは全部の限定を外した部材の名称での記載は、本発明に含まれるものである。
【符号の説明】
【0076】
1 地図データ生成システム
2 車両
3 外部サーバ
4 支援対象車両
10 運転支援システム
図1
図2
図3
図4
図5