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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168425
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】自動走行システム及び自動走行方法
(51)【国際特許分類】
   A01B 69/00 20060101AFI20231116BHJP
   G05D 1/02 20200101ALI20231116BHJP
【FI】
A01B69/00 303M
G05D1/02 H
【審査請求】有
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023159327
(22)【出願日】2023-09-25
(62)【分割の表示】P 2019128309の分割
【原出願日】2019-07-10
(71)【出願人】
【識別番号】000006781
【氏名又は名称】ヤンマーパワーテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100167302
【弁理士】
【氏名又は名称】種村 一幸
(74)【代理人】
【識別番号】100135817
【弁理士】
【氏名又は名称】華山 浩伸
(74)【代理人】
【識別番号】100167830
【弁理士】
【氏名又は名称】仲石 晴樹
(72)【発明者】
【氏名】岩瀬 卓也
(72)【発明者】
【氏名】▲杉▼田 士郎
(72)【発明者】
【氏名】日高 茂實
(57)【要約】
【課題】複数の作業領域にて作業を行う場合に、作業領域での作業だけでなく、作業領域同士の間での移動も、作業車両の自動走行にて行うことができ、作業効率の向上を図ること。
【解決手段】自動走行システムは、複数の作業領域Sで作業を行う作業車両を自動走行させる自動走行制御部が備えられる。自動走行制御部は、複数の作業領域S間を移動させるように作業車両を自動走行させる。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の作業領域で作業を行う作業車両を自動走行させる自動走行制御部が備えられ、
前記自動走行制御部は、前記複数の作業領域間を移動させるように前記作業車両を自動走行させる、
自動走行システム。
【請求項2】
前記自動走行制御部は、作業領域内から作業領域外への退出方向、及び、作業領域外から作業領域内への進入方向に基づいて、前記複数の作業領域間において前記作業車両を自動走行させる、
請求項1に記載の自動走行システム。
【請求項3】
前記自動走行制御部は、前記作業領域における出入口の状況に基づいて、作業領域内から作業領域外への退出方向、及び、作業領域外から作業領域内への進入方向を修正可能である、
請求項1に記載の自動走行システム。
【請求項4】
前記自動走行制御部は、前記複数の作業領域のうち第1の作業領域から第2の作業領域への前記作業車両の移動に際し、前記第1の作業領域内から前記第1の作業領域外に退出する前に前記第1の作業領域内で前記作業車両を一時停止させ、一時停止状態が解除されると、前記作業車両を自動走行させて前記第1の作業領域外に移動させる、
請求項1~3の何れか1項に記載の自動走行システム。
【請求項5】
前記自動走行制御部は、前記複数の作業領域のうち第1の作業領域から第2の作業領域への前記作業車両の移動に際し、前記第2の作業領域外から前記第2の作業領域内に進入する前に前記第2の作業領域外で前記作業車両を一時停止させ、一時停止状態が解除されると、前記作業車両を自動走行させて前記第2の作業領域内に移動させる、
請求項1~4の何れか1項に記載の自動走行システム。
【請求項6】
前記作業車両が前記作業領域外を自動走行する場合には、前記作業車両が前記作業領域内を自動走行する場合よりも、前記作業車両の周囲の状況を監視する周囲監視装置の監視レベルを高くする、
請求項1~5の何れか1項に記載の自動走行システム。
【請求項7】
前記複数の作業領域を選択するための作業領域選択画面と、選択した前記複数の作業領域の作業順序を選択するための作業順序選択画面と、を表示部に表示させる、
請求項1~6の何れか1項に記載の自動走行システム。
【請求項8】
前記作業順序選択画面で選択された前記作業順序に基づいて前記複数の作業領域同士を接続する移動経路を生成する走行経路生成部を備え、
前記自動走行制御部は、前記移動経路に基づいて前記作業車両を自動走行させる、
請求項7に記載の自動走行システム。
【請求項9】
自動走行中の前記作業車両を停止させるための走行停止条件は、前記作業車両が前記作業領域外を自動走行する場合と、前記作業車両が前記作業領域内を自動走行する場合とで異なる、
請求項1~8の何れか1項に記載の自動走行システム。
【請求項10】
前記作業車両は前記複数の作業領域間を移動する際に車道を通行し、
前記自動走行制御部は、外部システムから受信される前記車道に関する情報に基づいて前記作業車両を自動走行させる、
請求項1~9の何れか1項に記載の自動走行システム。
【請求項11】
複数の作業領域で作業を行う作業車両を自動走行させる自動走行制御方法であって、
前記複数の作業領域間を移動させるように前記作業車両を自動走行させる、
自動走行制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、作業車両を自動走行させる自動走行システム及び自動走行方法に関する。
【背景技術】
【0002】
上記の自動走行システムは、衛星測位システム等を用いて作業車両の位置情報を取得する測位ユニットが備えられ、その測位ユニットにて取得した作業車両の位置情報に基づいて、予め生成した目標走行経路に沿って作業車両を自動走行させるようにしている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6170185号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、農作業等では、特定の作業領域のみで作業が完結するものではなく、一日に複数の作業領域にて作業を行うことがある。この場合には、ある作業領域で作業を行い、その作業が終了すると、農道等の作業領域外を走行して次の作業領域に移動し、次の作業領域での作業を行う。このように、作業領域での作業と作業領域同士の間での移動を繰り返し行いながら、複数の作業領域にて作業を行っている。
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のシステムでは、圃場等を作業領域としており、その作業領域に目標走行経路を生成しているので、作業領域においては、目標走行経路に沿って作業車両を自動走行させるが、作業領域外については作業車両を自動走行させることができない。よって、作業領域同士の間での移動については、ユーザ等が作業車両を手動運転にて走行させる必要があり、作業効率の低下を招く可能性があり、この点で改善の余地があった。
【0006】
この実情に鑑み、本発明の主たる課題は、複数の作業領域にて作業を行う場合に、作業領域での作業だけでなく、作業領域同士の間での移動も、作業車両の自動走行にて行うことができ、作業効率の向上を図ることができる自動走行システム及び自動走行方法を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一の態様に係る自動走行システムは、複数の作業領域で作業を行う作業車両を自動走行させる自動走行制御部が備えられる。前記自動走行制御部は、前記複数の作業領域間を移動させるように前記作業車両を自動走行させる。
【0008】
一の態様に係る自動走行方法は、複数の作業領域で作業を行う作業車両を自動走行させる自動走行制御方法であって、前記複数の作業領域間を移動させるように前記作業車両を自動走行させる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】自動走行システムの概略構成を示す図
図2】自動走行システムの概略構成を示すブロック図
図3】トラクタを前方側から見た正面図
図4】トラクタを後方側から見た後面図
図5】複数の作業領域における目標走行経路を示す図
図6】表示部の表示画面として作業領域選択画面を示す図
図7】作業を行う作業領域を決定した状態での表示部の表示画面を示す図
図8】表示部の表示画面として作業順序選択画面を示す図
図9】目標走行経路を修正するときの状態での表示部の表示画面を示す図
図10】目標走行経路を修正するときの状態での表示部の表示画面を示す図
図11】目標走行経路を修正するときの状態での表示部の表示画面を示す図
図12】トラクタを自動走行させるときの動作を示すフローチャート
図13】作業領域内での自動走行、及び、作業領域外へ自動走行にて退出するときの状態を模式的に示す図
図14】作業領域外での自動走行、及び、作業領域内へ自動走行にて進入するときの状態を模式的に示す図
図15】作業領域内へ進入するときに進入方向を修正する場合を説明するための図
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明に係る自動走行システムの実施形態を図面に基づいて説明する。
この自動走行システムは、図1に示すように、作業車両としてトラクタ1を適用しているが、トラクタ以外の、乗用田植機、コンバイン、乗用草刈機、ホイールローダ、除雪車等の乗用作業車両、及び、無人草刈機等の無人作業車両に適用することができる。
【0011】
この自動走行システムは、図1及び図2に示すように、トラクタ1に搭載された自動走行ユニット2、及び、自動走行ユニット2と通信可能に通信設定された携帯通信端末3を備えている。携帯通信端末3には、タッチ操作可能なタッチパネル式の表示部51(例えば、液晶パネル)等を有するタブレット型のパーソナルコンピュータやスマートフォン等を採用することができる。
【0012】
トラクタ1は、駆動可能な操舵輪として機能する左右の前輪5、及び、駆動可能な左右の後輪6を有する走行機体7が備えられている。走行機体7の前方側には、ボンネット8が配置され、ボンネット8内には、コモンレールシステムを備えた電子制御式のディーゼルエンジン(以下、エンジンと称する)9が備えられている。走行機体7のボンネット8よりも後方側には、搭乗式の運転部を形成するキャビン10が備えられている。
【0013】
走行機体7の後部には、3点リンク機構11を介して、作業装置12の一例であるロータリ耕耘装置を昇降可能かつローリング可能に連結することができる。トラクタ1の後部には、ロータリ耕耘装置に代えて、モア、プラウ、播種装置、散布装置等の各種の作業装置12を連結することができる。
【0014】
トラクタ1には、図2に示すように、エンジン9からの動力を変速する電子制御式の変速装置13、左右の前輪5を操舵する全油圧式のパワーステアリング機構14、左右の後輪6を制動する左右のサイドブレーキ(図示せず)、左右のサイドブレーキの油圧操作を可能にする電子制御式のブレーキ操作機構15、ロータリ耕耘装置等の作業装置12への伝動を断続する作業クラッチ(図示せず)、作業クラッチの油圧操作を可能にする電子制御式のクラッチ操作機構16、ロータリ耕耘装置等の作業装置12を昇降駆動する電子油圧制御式の昇降駆動機構17、トラクタ1の自動走行等に関する各種の制御プログラム等を有する車載電子制御ユニット18、トラクタ1の車速を検出する車速センサ19、前輪5の操舵角を検出する舵角センサ20、及び、トラクタ1の現在位置及び現在方位を測定する測位ユニット21等が備えられている。
【0015】
なお、エンジン9には、電子ガバナを備えた電子制御式のガソリンエンジンを採用してもよい。変速装置13には、油圧機械式無段変速装置(HMT)、静油圧式無段変速装置(HST)、又は、ベルト式無段変速装置等を採用することができる。パワーステアリング機構14には、電動モータを備えた電動式のパワーステアリング機構14等を採用してもよい。
【0016】
キャビン10の内部には、図1に示すように、パワーステアリング機構14(図2参照)を介した左右の前輪5の手動操舵を可能にするステアリングホイール38、搭乗者用の運転席39、タッチパネル式の表示部、及び、各種の操作具等が備えられている。
【0017】
図2に示すように、車載電子制御ユニット18は、変速装置13の作動を制御する変速制御部181、左右のサイドブレーキの作動を制御する制動制御部182、ロータリ耕耘装置等の作業装置12の作動を制御する作業装置制御部183、自動走行時に左右の前輪5の目標操舵角を設定してパワーステアリング機構14に出力する操舵角設定部184、及び、予め生成された自動走行用の目標走行経路P(例えば、図5参照)等を記憶する不揮発性の車載記憶部185等を有している。
【0018】
図2に示すように、測位ユニット21には、衛星測位システム(NSS:Navigation Satellite System)の一例であるGPS(Global Positioning System)を利用してトラクタ1の現在位置と現在方位とを測定する衛星航法装置22、及び、3軸のジャイロスコープ及び3方向の加速度センサ等を有してトラクタ1の姿勢や方位等を測定する慣性計測装置(IMU:Inertial Measurement Unit)23等が備えられている。GPSを利用した測位方法には、DGPS(Differential GPS:相対測位方式)やRTK-GPS(Real Time Kinematic GPS:干渉測位方式)等がある。本実施形態においては、移動体の測位に適したRTK-GPSが採用されている。そのため、圃場周辺の既知位置には、図1及び図2に示すように、RTK-GPSによる測位を可能にする基準局4が設置されている。
【0019】
トラクタ1と基準局4との夫々には、図2に示すように、測位衛星71(図1参照)から送信された電波を受信する測位アンテナ24,61、及び、トラクタ1と基準局4との間における測位情報(補正情報)を含む各種情報の無線通信を可能にする通信モジュール25,62等が備えられている。これにより、衛星航法装置22は、トラクタ側の測位アンテナ24が測位衛星71からの電波を受信して得た測位情報と、基地局側の測位アンテナ61が測位衛星71からの電波を受信して得た測位情報(トラクタ1の現在位置を測定するための補正情報)とに基づいて、トラクタ1の現在位置及び現在方位を高い精度で測定することができる。また、測位ユニット21は、衛星航法装置22と慣性計測装置23とを備えることにより、トラクタ1の現在位置、現在方位、姿勢角(ヨー角、ロール角、ピッチ角)を高精度に測定することができる。
【0020】
トラクタ1に備えられる測位アンテナ24、通信モジュール25、及び、慣性計測装置23は、図1に示すように、アンテナユニット80に収納されている。アンテナユニット80は、キャビン10の前面側の上部位置に配置されている。
【0021】
図2に示すように、携帯通信端末3には、表示部51等の作動を制御する各種の制御プログラム等を有する端末電子制御ユニット52、及び、トラクタ側の通信モジュール25との間における測位情報を含む各種情報の無線通信を可能にする通信モジュール53等が備えられている。端末電子制御ユニット52は、トラクタ1を自動走行させるための目標走行経路P(例えば、図5参照)を生成する走行経路生成部54(経路生成部に相当する)、及び、ユーザが入力した各種の入力情報や走行経路生成部54が生成した目標走行経路P等を記憶する不揮発性の端末記憶部55等を有している。
【0022】
走行経路生成部54による目標走行経路Pの生成の仕方については後述するが、走行経路生成部54は、図5に示すように、目標走行経路Pとして、作業領域S内の作業経路P1だけでなく、作業領域Sの領域外において作業領域S同士を接続する移動経路P2を生成可能としている。走行経路生成部54にて生成された目標走行経路Pは、表示部51に表示可能であり、経路情報として端末記憶部55に記憶されている。経路情報には、目標走行経路Pの方位角、及び、目標走行経路Pでのトラクタ1の走行形態等に応じて設定された設定エンジン回転速度や目標走行速度等が含まれている。
【0023】
走行経路生成部54が目標走行経路Pを生成すると、端末電子制御ユニット52が、携帯通信端末3からトラクタ1に経路情報を転送することで、トラクタ1の車載電子制御ユニット18が、経路情報を取得することができる。車載電子制御ユニット18は、取得した経路情報に基づいて、測位ユニット21にて自己の現在位置(トラクタ1の現在位置)を取得しながら、目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させることができる。測位ユニット21にて取得するトラクタ1の現在位置については、リアルタイム(例えば、数ミリ秒周期)でトラクタ1から携帯通信端末3に送信されており、携帯通信端末3にてトラクタ1の現在位置を把握している。
【0024】
経路情報の転送に関しては、トラクタ1が自動走行を開始する前の段階において、経路情報の全体を端末電子制御ユニット52から車載電子制御ユニット18に一挙に転送することができる。また、例えば、目標走行経路Pを含む経路情報を、情報量の少ない所定距離ごとの複数の経路部分に分割することもできる。この場合には、トラクタ1が自動走行を開始する前の段階においては、経路情報の初期経路部分のみが端末電子制御ユニット52から車載電子制御ユニット18に転送される。自動走行の開始後は、トラクタ1が情報量等に応じて設定された経路取得地点に達するごとに、その地点に対応する以後の経路部分のみの経路情報が端末電子制御ユニット52から車載電子制御ユニット18に転送するようにしてもよい。
【0025】
トラクタ1の自動走行を開始する場合には、例えば、ユーザ等がスタート地点にトラクタ1を移動させて、各種の自動走行開始条件が満たされると、携帯通信端末3にて、ユーザが表示部51を操作して自動走行の開始を指示することで、携帯通信端末3は、自動走行の開始指示をトラクタ1に送信する。これにより、トラクタ1では、車載電子制御ユニット18が、自動走行の開始指示を受けることで、測位ユニット21にて自己の現在位置(トラクタ1の現在位置)を取得しながら、目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させる自動走行制御を開始する。車載電子制御ユニット18が、衛星測位システムを用いて測位ユニット21により取得されるトラクタ1の測位情報に基づいて、目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させる自動走行制御を行う自動走行制御部として構成されている。
【0026】
自動走行制御には、変速装置13の作動を自動制御する自動変速制御、ブレーキ操作機構15の作動を自動制御する自動制動制御、左右の前輪5を自動操舵する自動操舵制御、及び、ロータリ耕耘装置等の作業装置12の作動を自動制御する作業用自動制御等が含まれている。
【0027】
自動変速制御においては、変速制御部181が、目標走行速度を含む目標走行経路Pの経路情報と測位ユニット21の出力と車速センサ19の出力とに基づいて、目標走行経路Pでのトラクタ1の走行形態等に応じて設定された目標走行速度がトラクタ1の車速として得られるように変速装置13の作動を自動制御する。
【0028】
自動制動制御においては、制動制御部182が、目標走行経路Pと測位ユニット21の出力とに基づいて、目標走行経路Pの経路情報に含まれている制動領域において左右のサイドブレーキが左右の後輪6を適正に制動するようにブレーキ操作機構15の作動を自動制御する。
【0029】
自動操舵制御においては、トラクタ1が目標走行経路Pを自動走行するように、操舵角設定部184が、目標走行経路Pの経路情報と測位ユニット21の出力とに基づいて左右の前輪5の目標操舵角を求めて設定し、設定した目標操舵角をパワーステアリング機構14に出力する。パワーステアリング機構14が、目標操舵角と舵角センサ20の出力とに基づいて、目標操舵角が左右の前輪5の操舵角として得られるように左右の前輪5を自動操舵する。
【0030】
作業用自動制御においては、作業装置制御部183が、目標走行経路Pの経路情報と測位ユニット21の出力とに基づいて、トラクタ1が作業経路P1(例えば、図5参照)上における作業開始地点に達するのに伴って作業装置12による所定の作業(例えば耕耘作業)が開始され、かつ、トラクタ1が作業経路P1(例えば、図5参照)上における作業終了地点に達するのに伴って作業装置12による所定の作業が停止されるように、クラッチ操作機構16及び昇降駆動機構17の作動を自動制御する。
【0031】
このようにして、トラクタ1においては、変速装置13、パワーステアリング機構14、ブレーキ操作機構15、クラッチ操作機構16、昇降駆動機構17、車載電子制御ユニット18、車速センサ19、舵角センサ20、測位ユニット21、及び、通信モジュール25等によって自動走行ユニット2が構成されている。
【0032】
この実施形態では、キャビン10にユーザ等が搭乗せずにトラクタ1を自動走行させるだけでなく、キャビン10にユーザ等が搭乗した状態でトラクタ1を自動走行させることも可能となっている。よって、キャビン10にユーザ等が搭乗せずに、車載電子制御ユニット18による自動走行制御により、トラクタ1を目標走行経路Pに沿って自動走行させることができるだけでなく、キャビン10にユーザ等が搭乗している場合でも、車載電子制御ユニット18による自動走行制御により、トラクタ1を目標走行経路Pに沿って自動走行させることができる。
【0033】
キャビン10にユーザ等が搭乗している場合には、車載電子制御ユニット18にてトラクタ1を自動走行させる自動走行状態と、ユーザ等の運転に基づいてトラクタ1を走行させる手動走行状態とに切り替えることができる。よって、自動走行状態にて目標走行経路Pを自動走行している途中に、自動走行状態から手動走行状態に切り替えることができ、逆に、手動走行状態にて走行している途中に、手動走行状態から自動走行状態に切り替えることができる。手動走行状態と自動走行状態との切り替えについては、例えば、運転席39の近傍に、自動走行状態と手動走行状態とに切り替えるための切替操作部を備えることができるとともに、その切替操作部を携帯通信端末3の表示部51に表示させることもできる。また、車載電子制御ユニット18による自動走行制御中に、ユーザがステアリングホイール38を操作すると、自動走行状態から手動走行状態に切り替えることができる。
【0034】
トラクタ1には、図1及び図2に示すように、トラクタ1(走行機体7)の周囲における障害物を検知して、障害物との衝突を回避するための障害物検知システム100が備えられている。障害物検知システム100は、レーザを用いて測定対象物までの距離を3次元で測定可能な複数のライダーセンサ101,102と、超音波を用いて測定対象物までの距離を測定可能な複数のソナーを有するソナーユニット103,104と、トラクタ1(走行機体7)の周囲を撮像するカメラ105,106と、障害物検知部110と、衝突回避制御部111とが備えられている。
【0035】
ライダーセンサ101,102、ソナーユニット103,104及びカメラ105,106にて測定する測定対象物は、物体や人等としている。ライダーセンサ101,102は、トラクタ1の前方側を測定対象とする前ライダーセンサ101と、トラクタ1の後方側を測定対象とする後ライダーセンサ102とが備えられている。ソナーユニット103,104は、トラクタ1の右側を測定対象とする右側のソナーユニット103と、トラクタ1の左側を測定対象とする左側のソナーユニット104とが備えられている。カメラ105,106は、トラクタ1の前方側を測定対象とする前カメラ105と、トラクタ1の後方側を測定対象とする後カメラ106とが備えられている。
【0036】
障害物検知部110は、ライダーセンサ101,102、ソナーユニット103,104及びカメラ105,106の測定情報に基づいて、所定距離内の物体や人等の測定対象物を障害物として検知する障害物検知処理を行うように構成されている。衝突回避制御部111は、障害物検知部110にて障害物を検知すると、トラクタ1を減速させる又はトラクタ1を走行停止させる衝突回避制御を行うように構成されている。衝突回避制御部111は、衝突回避制御において、トラクタ1を減速させる又はトラクタ1を走行停止させるだけでなく、報知ブザーや報知ランプ等の報知装置26を作動させて、障害物が存在することを報知している。衝突回避制御部111は、衝突回避制御において、通信モジュール25,53を用いて、トラクタ1から携帯通信端末3に通信して表示部51に障害物の存在を表示させることで、障害物が存在することを報知可能としている。
【0037】
障害物検知部110は、ライダーセンサ101,102,ソナーユニット103,104及びカメラ105,106の測定情報に基づく障害物検知処理をリアルタイムで繰り返し行い、物体や人等の障害物を適切に検知している。衝突回避制御部111は、リアルタイムで検知される障害物との衝突を回避するための衝突回避制御を行うようにしている。
【0038】
障害物検知部110及び衝突回避制御部111は、車載電子制御ユニット18に備えられている。車載電子制御ユニット18は、コモンレールシステムに含まれたエンジン用の電子制御ユニット、ライダーセンサ101,102、ソナーユニット103,104及びカメラ105,106等にCAN(Controller Area Network)を介して通信可能に接続されている。
【0039】
ライダーセンサ101,102は、レーザ光(例えば、パルス状の近赤外レーザ光)が測定対象物に当たって跳ね返ってくるまでの往復時間から測定対象物までの距離を測定している(Time Of Flight)。ライダーセンサ101,102は、レーザ光を上下方向及び左右方向に高速で走査し、各走査角における測定対象物までの距離を順次測定していくことで、測定対象物までの距離を3次元で測定している。ライダーセンサ101,102は、測定範囲内における測定対象物までの距離をリアルタイムで繰り返し測定している。ライダーセンサ101,102は、測定情報から3次元画像を生成して外部に出力可能に構成されている。ライダーセンサ101,102の測定情報から生成された3次元画像は、トラクタ1の表示部や携帯通信端末3の表示部51等の表示装置に表示させて、ユーザ等に障害物の有無を視認させることができる。ちなみに、3次元画像では、例えば、色等を用いて遠近方向での距離を示すことができる。
【0040】
前ライダーセンサ101は、図1及び図3に示すように、キャビン10の前面側の上部位置に配置されたアンテナユニット80の底部に取り付けられている。アンテナユニット80は、図3に示すように、走行機体7の左右方向においてキャビン10の全長に亘るパイプ状のアンテナユニット支持ステー81に取り付けられている。アンテナユニット80は、走行機体7の左右方向においてキャビン10の中央部に相当する位置に配置されている。前ライダーセンサ101は、前方側部位ほど下方側に位置する前下がり姿勢にてアンテナユニット80に取り付けられ、アンテナユニット80に一体的に備えられている。前ライダーセンサ101は、アンテナユニット80と同様に、走行機体7の左右方向においてキャビン10の中央部に相当する位置に配置されている。
【0041】
前カメラ105は、前ライダーセンサ101の上方側に配置されている。前カメラ105は、前ライダーセンサ101と同様に、前方側部位ほど下方側に位置する前下がり姿勢にて取り付けられている。前カメラ105は、走行機体7の前方側を斜め上方側から見下ろす状態で撮像するように備えられている。前カメラ105にて撮像した撮像画像を外部に出力可能に構成されている。前カメラ105の撮像画像は、トラクタ1の表示部や携帯通信端末3の表示部51等の表示装置に表示させて、ユーザ等にトラクタ1の周囲の状況を視認させることができる。前ライダーセンサ101及び前カメラ105は、上下方向でルーフ35に相当する位置に配置されている。
【0042】
後ライダーセンサ102は、図4に示すように、走行機体7の左右方向においてキャビン10の全長に亘るパイプ状のセンサ支持ステー82に取り付けられている。後ライダーセンサ102は、走行機体7の左右方向においてキャビン10の中央部に相当する位置に配置されている。後ライダーセンサ102は、後方側部位ほど下方側に位置する後下がり姿勢にてセンサ支持ステー82に取り付けられている。
【0043】
後カメラ106は、後ライダーセンサ102の上方側に配置されている。後カメラ106は、後ライダーセンサ102と同様に、後方側部位ほど下方側に位置する後下がり姿勢にて取り付けられている。後カメラ106は、走行機体7の後方側を斜め上方側から見下ろす状態で撮像するように備えられている。後カメラ106にて撮像した撮像画像を外部に出力可能に構成されている。後カメラ106の撮像画像は、トラクタ1の表示部や携帯通信端末3の表示部51等の表示装置に表示させて、ユーザ等にトラクタ1の周囲の状況を視認させることができる。後ライダーセンサ102及び後カメラ106は、上下方向でルーフ35に相当する位置に配置されている。
【0044】
ソナーユニット103,104は、投射した超音波が測定対象物に当たって跳ね返ってくるまでの往復時間から測定対象物までの距離を測定するように構成されている。上述の如く、ソナーユニット103,104として、トラクタ1(走行機体7)の右側を測定範囲とする右側のソナーユニット103と、トラクタ1(走行機体7)の左側を測定範囲とする左側のソナーユニット104(図1参照)とが備えられている。
【0045】
トラクタ1の前方側について、障害物検知部110が、障害物検知処理として、例えば、前カメラ105の測定情報に基づいて障害物の存否を検知し、障害物の存在を検知すると、前ライダーセンサ101の測定情報に基づいて、その障害物の位置を検知している。トラクタ1の後方側については、トラクタ1の前方側と同様に、障害物検知部110が、障害物検知処理として、後カメラ106の測定情報、及び、後ライダーセンサ102の測定情報に基づいて、障害物の存否、及び、障害物の位置を検知している。トラクタ1の右側について、障害物検知部110が、障害物検知処理として、右側のソナーユニット103の測定情報に基づいて、障害物の存否、及び、障害物の位置を検知し、トラクタ1の左側についても、障害物検知部110が、障害物検知処理として、左側のソナーユニット104の測定情報に基づいて、障害物の存否、及び、障害物の位置を検知している。
【0046】
以下、走行経路生成部54による目標走行経路Pの生成について説明する。 走行経路生成部54が目標走行経路Pを生成するに当たり、携帯通信端末3の表示部51に表示された目標走行経路設定用の入力案内に従って、運転者や管理者等のユーザ等が作業車両の機種及び作業装置12の種類や作業幅等の車体情報、作業領域S内から作業領域S外への退出方向及び作業領域S外から作業領域S内への進入方向に関する退出方向・進入方向情報等を含む各種の情報を入力しており、入力された入力情報が端末記憶部55に記憶されている。
【0047】
作業領域S内から作業領域S外への退出方向、及び、作業領域S外から作業領域S内への進入方向に関する退出方向・進入方向情報については、ユーザが表示部51(操作具に相当する)を操作することで、入力可能となっており、退出方向・進入方向情報取得部56が、その入力情報から退出方向・進入方向情報を取得している。ユーザが表示部51を操作することで、退出・進入方向情報における退出方向及び進入方向を変更可能に構成されており、退出方向・進入方向情報取得部56が、変更後の退出方向及び進入方向についての退出方向・進入方向情報を取得している。退出方向・進入方向情報の取得については、ユーザによる入力情報に限らず、例えば、退出方向・進入方向情報取得部56が、地図情報等から退出方向及び進入方向を読み取ることで、退出方向・進入方向情報を取得することもできる。
【0048】
作業対象となる作業領域Sを圃場としており、携帯通信端末3の端末電子制御ユニット52は、圃場の形状や位置及び圃場における出入口の位置等を含む圃場に関する圃場情報、及び、圃場外領域や圃場と圃場との間を接続する農道等の形状や位置を含む圃場外の領域に関する圃場外情報を取得して端末記憶部55に記憶している。端末電子制御ユニット52は、データベース等に格納されている地図情報等から圃場情報及び圃場外情報を取得している。また、例えば、作業領域の形状や位置等を実際に計測したときの計測情報等から圃場情報を取得することもでき、各種の手法を用いて、圃場情報及び圃場外情報を取得することができる。
【0049】
ユーザによる入力情報に加えて、端末電子制御ユニット52が取得した圃場情報及び圃場外情報が端末記憶部55に記憶されている状態において、走行経路生成部54が、端末記憶部55に記憶されている圃場情報、圃場外情報、車体情報、及び、退出方向・進入方向情報を用いて、目標走行経路Pを生成する。図5に示すように、複数の作業領域Sにて作業を行う場合には、走行経路生成部54が、目標走行経路Pとして、作業領域S内にて作業を行うための作業経路P1、及び、作業領域Sの領域外を走行させて作業領域S同士を接続する移動経路P2を生成している。
【0050】
複数の作業領域Sにて作業を行う場合には、表示部51に表示される表示画面に従って、ユーザが表示部51に対して各種の操作を行うことで、走行経路生成部54が目標走行経路Pを生成している。以下、表示部51に表示される表示画面を例示しながら説明する。
【0051】
図6に示すように、作業を行う作業領域S(圃場)を選択する作業領域選択画面が表示部51に表示される。この作業領域選択画面では、ユーザが、作業を行う作業領域S(圃場)に該当する箇所に触れることで、作業を行う作業領域Sを選択することができる。図6に示すものでは、複数の作業領域Sのうち、作業領域S1と作業領域S2と作業領域S3の3つの作業領域S(図6中、点線で囲む作業領域)が選択されている状態を示している。
【0052】
図6に示す状態において作業を行う作業領域Sを決定すると、例えば、図7に示すように、選択された作業領域S1~S3(圃場)が他の作業領域Sとは識別可能(図7において、太い点線にて囲まれている)となり、選択された作業領域Sの数も表示されることになる。図7に示すものでは、選択した作業領域Sにて作業を行う場合の目標走行経路Pを生成するか否かを選択可能な選択ボタン201が表示されている。
【0053】
ユーザが、図7における選択ボタン201を押し操作すると、図8に示すように、表示部51の表示画面が、選択した作業領域S1~S3をどのような作業順序にて作業を行うかを選択する作業順序選択画面に移行される。この作業順序選択画面では、例えば、ユーザが最初に触れた作業領域S(圃場)を1番目に作業を行うものとし、次にユーザが触れた作業領域Sを2番目に作業を行うものとして、ユーザが触れる順番に応じて作業順序を選択することができる。図8に示すものでは、1番目に作業を行うのを作業領域S1とし、2番目に作業を行うのを作業領域S2とし、3番目に作業を行うのを作業領域S3としている。
【0054】
ユーザが、図8における作業順序決定ボタン202を押し操作すると、図9に示すように、走行経路生成部54が、目標走行経路Pとして、作業領域S内にて作業を行うための作業経路P1と、作業領域Sの領域外に作業領域S同士を接続する移動経路P2とを生成している。走行経路生成部54は、端末記憶部55に記憶されている圃場情報、圃場外情報やユーザによる入力情報(車体情報、退出方向・進入方向情報等を含む)に基づいて、作業経路P1と移動経路P2を生成している。
【0055】
図9に示すものでは、走行経路生成部54が、作業経路P1を、入力情報に含まれる作業方向に沿って往復して作業を行う往復経路として生成しているが、例えば、作業経路P1を、作業領域Sの外周部の形状に応じて周回される周回経路とすることもでき、どのような形状の経路とするかは適宜変更が可能である。
【0056】
走行経路生成部54が、移動経路P2として、例えば、複数の直線状の経路を組み合わせて、先に作業を行う作業領域Sにおける作業経路P1の終端から、作業領域Sの領域外の農道N等を通り、次に作業を行う作業領域Sにおける作業経路P1の始端までを結ぶ経路を生成している。
【0057】
ここで、作業経路P1及び移動経路P2について、図5及び図9に示すものでは、作業領域S内に作業経路P1の始端及び終端を設定しており、移動経路P2を、先に作業を行う作業領域Sにおける作業経路P1の終端から、次に作業を行う作業領域Sにおける作業経路P1の始端までを結ぶ経路としている。これにより、移動経路P1は、先に作業を行う作業領域S内において作業経路P1の終端からその作業領域Sの内外の境界部までを繋ぐ経路部位と、作業領域Sの領域外において先に作業を行う作業領域Sの内外の境界部から次に作業を行う作業領域Sの内外の境界部までを繋ぐ経路部位と、次に作業を行う作業領域S内においてその作業領域Sの内外の境界部から作業経路P1の始端までを繋ぐ経路部位との3つの経路部位を組み合わせて生成されている。
【0058】
よって、図5及び図9に示すものでは、移動経路P2が、作業領域Sの領域外だけでなく、作業領域S内にも生成されているが、例えば、作業経路P1の始端及び終端を、作業領域Sの内外の境界部に設定することで、移動経路P2を作業領域Sの領域外にのみ生成することもできる。このように、走行経路生成部54は、作業経路P1及び移動経路P2として、先に作業を行う作業領域Sでの作業、先に作業を行う作業領域Sから次に作業を行う作業領域Sへの移動、及び、次に作業を行う作業領域Sでの作業を一連に行うための経路であればよく、作業経路P1及び移動経路P2をどのように生成するかは適宜変更可能である。
【0059】
図9に示すものでは、作業領域S1からの退出方向を上下方向としており、作業領域S2への進入方向及び作業領域S2からの退出方向を上下方向としており、作業領域S3への進入方向を左右方向としている場合を示している。走行経路生成部54は、作業領域S1と作業領域S2とを接続する移動経路P2と、作業領域S2と作業領域S3とを接続する移動経路P2とを生成している。作業領域S1と作業領域S2とを接続する移動経路P2については、作業領域S1からの退出方向を上下方向とし且つ作業領域S2への進入方向を上下方向としている。作業領域S2と作業領域S3とを接続する移動経路P2については、作業領域S2からの退出方向を上下方向とし且つ作業領域S3への進入方向を左右方向としている。このように、走行経路生成部54は、退出方向・進入方向情報に応じた移動経路P2を生成している。
【0060】
走行経路生成部54は、ユーザ等の修正操作(変更操作)に応じて、生成した作業経路P1及び移動経路P2を修正することができる。図10に示すように、ユーザが、表示部51において、作業領域S3における作業方向を上下方向(図9参照)から左右方向に修正(変更)すると、走行経路生成部54が、修正後の作業方向に応じて、作業経路P1を、左右方向に沿って往復作業するための経路に修正している。
【0061】
図11に示すように、ユーザが、作業領域S3に対するトラクタ1の進入方向を左右方向(図9参照)から上下方向に修正すると、走行経路生成部54が、修正後の進入方向に応じて、移動経路P2を、作業領域S3に対して上下方向に進入するための経路に修正している。
【0062】
このように、ユーザにより、作業領域Sにおける作業方向、及び、作業領域Sに対する進入方向や作業領域Sからの退出方向等が修正(変更)されると、走行経路生成部54が、修正後(変更後)の情報に基づいて、作業経路P1及び移動経路P2を修正している。図10又は図11に示す画面において、「Yes」ボタン203を押し操作すると、走行経路生成部54が修正した作業経路P1及び移動経路P2を、トラクタ1の自動走行を行うときの目標走行経路Pに決定している。図9図10又は図11に示す画面において、「No」ボタン204を押し操作すると、走行経路生成部54が修正する前の作業経路P1及び移動経路P2を表示部51に表示させて、修正する前の作業経路P1及び移動経路P2を、トラクタ1の自動走行を行うときの目標走行経路Pに決定している。
【0063】
走行経路生成部54にて生成された目標走行経路P(作業経路P1及び移動経路P2)は、表示部51に表示可能であり、圃場情報等の各種の情報と関連付けた経路情報として端末記憶部55に記憶されている。経路情報には、目標走行経路Pの方位角、及び、目標走行経路Pでのトラクタ1の走行形態等に応じて設定された設定エンジン回転速度や目標走行速度等が含まれている。車載電子制御ユニット18が、経路情報を取得することで、設定エンジン回転速度や目標走行速度等に制御した状態で目標走行経路Pに沿ってトラクタ1を自動走行させている。
【0064】
複数の作業領域Sにて作業を行う場合に、トラクタ1を自動走行させるときの動作について、図12のフローチャート、及び、図13図14に基づいて説明する。 図13は、作業領域S内における作業経路P1での自動走行、及び、トラクタ1が作業領域S内から作業領域S外に退出するときの状態を模式的に示したものである。図13は、作業領域S外における移動経路P2での自動走行、及び、トラクタ1が作業領域S内に進入するときの状態を模式的に示したものである。
【0065】
ユーザ等が1番目に作業を行う作業領域Sのスタート地点にトラクタ1を移動させて自動走行を開始すると、まず、図13に示すように、車載電子制御ユニット18は、作業装置12にて所定の作業を行う状態で作業領域Sの作業経路P1に沿ってトラクタ1を自動走行させる(図12におけるステップ#1)。
【0066】
このとき、図13に示すように、トラクタ1は作業領域S内の作業経路P1に沿って自動走行するので、車載電子制御ユニット18が、障害物検知システム100を作業領域内モードに設定している。障害物検知部110は、ライダーセンサ101,102、ソナーユニット103,104及びカメラ105,106の測定範囲を、作業領域内モード用の第1所定範囲K1(図13中グレーにて示す範囲)として、その第1所定範囲K1内に障害物が存在するか否かを検知する障害物検知処理を行う。第1所定範囲K1について、トラクタ1の前後はカメラ105,106の測定範囲を示しており、トラクタ1の左右はソナーユニット103,104の測定範囲を示している。上述の如く、衝突回避制御部111は、障害物検知部110にて障害物を検知すると、トラクタ1を減速させる又はトラクタ1を走行停止させる等の衝突回避制御を行う。このようにして、作業領域S内において、障害物との接触を回避しながら、作業経路P1に沿ってトラクタ1を自動走行させて所定の作業を行う。
【0067】
作業経路P1に沿ってトラクタ1を自動走行させることで、図13に示すように、トラクタ1を自動走行させる走行対象経路を、作業領域S内の経路から作業領域S外の経路に切り替えるための第1切替地点A1に到達すると、車載電子制御ユニット18が、トラクタ1を一時停止させる(図12におけるステップ#2のYesの場合、ステップ#3)。第1切替地点A1については、作業経路P1から移動経路P2に切り替える作業経路P1の終端や、作業領域Sの内外の境界部等、移動経路P2において作業領域S内の経路部位から作業領域Sの領域外の経路部位に切り替える地点とすることができる。車載電子制御ユニット18は、トラクタ1を一時停止させた状態において、通信モジュール25等を用いて、トラクタ1の走行状況等を監視している監視センター301に対して、作業領域S外の経路での自動走行を許可するか否かの自動走行許可の問い合わせを行う(図12におけるステップ#4)。
【0068】
車載電子制御ユニット18は、図13に示すように、トラクタ1を一時停止させた状態において、自動走行許可の問い合わせを行うとともに、障害物検知システム100を作業領域内モードから作業領域外モードに切り替えて、監視レベルを上げている(図12におけるステップ#5)。作業領域外モードでは、障害物検知部110が、ライダーセンサ101,102、ソナーユニット103,104及びカメラ105,106(周囲監視装置に相当する)の測定範囲を、作業領域外モード用の第2所定範囲K2(図13中グレーにて示す範囲)として、その第2所定範囲K2内に障害物が存在するか否かを検知する障害物検知処理を行う。作業領域外モード用の第2所定範囲K2は、作業領域内モード用の第1所定範囲K1よりも前後方向や左右方向に広い範囲としている。これにより、作業領域外モードでは、作業領域内モードに対して、障害物を検知する測定範囲を広げることで、監視レベルを上げて、トラクタ1からより遠くに離れた障害物を検知している。
【0069】
図13に示すものでは、トラクタ1の前方側及び後方側において、第1所定範囲K1から第2所定範囲K2に広くした場合を例示している。ちなみに、最も上方側に位置するトラクタ1については、後方側の第2所定範囲K2が上方側から2つ目に位置するトラクタ1の前方側の第2所定範囲K2と重複するので、工方側の第2所定範囲K2を省略している。例えば、前カメラ105及び後カメラの画角を広げること(例えば、画角を70度から200度に広げる)で、第1所定範囲K1から第2所定範囲K2に広げることができる。ちなみに、図13では、カメラ105,106以外のライダーセンサ101,102及びソナーユニット103,104の測定範囲を図示せずに、これらの測定装置を作動させていない状態を示しているが、作業領域内モードと同様に、カメラ105,106以外のライダーセンサ101,102やソナーユニット103,104も作動させて、トラクタ1の前後及び左右についても、障害物の検知を行うこともできる。第2所定範囲K2を第1所定範囲K1に対してどのような方向(前後方向や左右方向)に広げるかは適宜変更が可能である。
【0070】
この実施形態では、作業領域内モードと作業領域外モードとの間でモードを切り替える場合に、カメラ105等の同一の測定装置を用いて測定範囲を変更しているが、障害物検知システム100が、ライダーセンサ101,102、ソナーユニット103,104及びカメラ105,106に加えて、例えば、トラクタ1から遠方の障害物を検知可能なミリ波レーダー等を備え、作業領域内モードと作業領域外モードとの間でモードを切り替える場合に、障害物を検知するための測定装置を異なる測定装置に切り替えることもできる。例えば、作業領域内モードでは、ライダーセンサ101,102、ソナーユニット103,104及びカメラ105,106の測定装置を用いて障害物を検知し、作業領域外モードでは、ミリ波レーダーを用いて障害物を検知することができる。
【0071】
監視センター301では、図13に示すように、監視者が、監視カメラの撮像画像や道路情報等の各種の情報に基づいて、農道N等の作業領域S外の状況を監視している。監視センター301では、トラクタ1から自動走行許可の問い合わせを受けると、監視者が、作業領域S外においてトラクタ1の自動走行が可能な状況であると判断すると、トラクタ1に対して自動走行を許可する許可情報を送信している。車載電子制御ユニット18は、監視センター301から許可情報を受信すると、一時停止の解除条件が満たされたとして、トラクタ1を自動走行させる走行対象経路を作業領域S内の経路から作業領域S外の経路に切り替えて、移動経路P2に沿ってトラクタ1を自動走行させる(図12におけるステップ#6のYesの場合、ステップ#7)。
【0072】
移動経路P2にて自動走行を行う場合には、車載電子制御ユニット18の変速制御部181が、変速装置13を高速状態に切り替えて、高速状態にてトラクタ1を自動走行させることができ、車載電子制御ユニット18の作業装置制御部183が、作業装置12の作業を停止させるように、クラッチ操作機構16及び昇降駆動機構17を制御している。
【0073】
作業領域S外の移動経路P2にてトラクタ1を自動走行させる場合に、上述の如く、監視センター301にてトラクタ1の走行状況等を集中監視しながら、トラクタ1を自動走行させているが、農道N等の車道の状況等の各種の情報を把握して外部に送信自在な高度道路交通システム(ITS:Intelligent Transport Systems)が備えられる場合には、トラクタ1の車載電子制御ユニット18が、高度道路交通システムとの間で各種の情報を送受信することで、農道N等の車道の状況を把握することができる。そこで、監視センター301による監視に加えて又は代えて、車載電子制御ユニット18が、高度道路交通システムから取得した農道N等の車道の状況に応じて、トラクタ1を自動走行させることもできる。
【0074】
図13に示すように、トラクタ1が移動経路P2を自動走行する場合には、常時、監視センター301にて、トラクタ1の走行状況等を監視しており、監視センター301での集中監視を行いながら、移動経路P2での自動走行が行われている。このとき、障害物検知システム100は、作業領域外モードに切り替えられており、作業領域内モードよりも広い範囲で障害物の有無を検知しながら、トラクタ1の自動走行が行われている。
【0075】
移動経路P2に沿ってトラクタ1を自動走行させることで、図14に示すように、トラクタ1を自動走行させる走行対象経路を、作業領域S外の経路から作業領域S内の経路に切り替えるための第2切替地点A2に到達すると、車載電子制御ユニット18が、トラクタ1を一時停止させる(図12におけるステップ#8のYesの場合、ステップ#9)。第2切替地点A2については、移動経路P2における農道N上の地点や、作業領域Sの内外の境界部等、移動経路P2において作業領域S外の経路部位から作業領域Sの領域内の経路部位に切り替える地点とすることができる。車載電子制御ユニット18は、トラクタ1を一時停止させた状態において、通信モジュール25等を用いて、監視センター301に対して、作業領域S内に進入する進入通知を行う(図12におけるステップ#10)。
【0076】
車載電子制御ユニット18は、トラクタ1を一時停止してから所定時間が経過したり、監視センター301から作業領域S内への進入許可通知を受ける等により、一時停止の解除条件が満たされると、図14に示すように、トラクタ1を自動走行させる走行対象経路を作業領域S外の経路から作業領域S内の経路に切り替えて、移動経路P2における作業領域S内の経路部位及び作業経路P1に沿ってトラクタ1を自動走行させる(図12におけるステップ#11のYesの場合、ステップ#12)。移動経路P2における作業領域S内の経路部位及び作業経路P1での自動走行を行う場合には、車載電子制御ユニット18が、障害物検知システム100を作業領域内モードに設定して、作業装置12にて所定の作業を行う状態で作業経路P1に沿ってトラクタ1を自動走行させている。
【0077】
図12に示すフローチャートのように、作業領域S内における作業経路P1での自動走行、作業領域Sと次の作業領域Sとの間における移動経路P2での自動走行、次の作業領域S内における作業経路P1での自動走行を行うという動作を繰り返すことで、複数の作業領域Sでの作業を行うようにしている。
【0078】
トラクタ1を自動走行させて作業領域S外に退出する場合、及び、トラクタ1を自動走行させて作業領域S内に進入する場合(図15参照)に、入力ミスや作業領域Sの出入口Bの状況の変化等によって、トラクタ1の退出及び進入を自動走行にて行えない場合がある。このような場合でも自動走行を継続するための構成が備えられているので、以下、説明する。
【0079】
上述の如く、トラクタ1の周囲の状況を測定する測定装置として、ライダーセンサ101,102及びカメラ105,106(出入口状況検出部に相当する)が備えられている。トラクタ1を自動走行させて作業領域S外に退出する場合、及び、トラクタ1を自動走行させて作業領域S内に進入する場合(図15参照)に、ライダーセンサ101,102及びカメラ105,106の測定情報から、作業領域Sの出入口Bの状況を把握することができる。
【0080】
図15では、トラクタ1が作業領域S内に進入する場合を示している。ライダーセンサ101,102及びカメラ105,106の測定情報から、作業領域Sの出入口Bにおける進入可能方向C1に対して、トラクタ1の進入方向C2,C3がどのような状況となっているかを把握することができる。図15の実線にて示すように、出入口Bにおける進入可能方向C1に対してトラクタ1の進入方向C2が合致していれば、トラクタ1が作業領域S内に進入可能である。それに対して、図15の点線にて示すように、出入口Bにおける進入可能方向C1に対してトラクタ1の進入方向C3が異なっていれば、トラクタ1が作業領域S内に進入できない。トラクタ1が作業領域S外に退出する場合も、トラクタ1が作業領域S内に進入する場合と同様であるので、図示は省略する。
【0081】
そこで、端末電子制御ユニット52には、図2に示すように、ライダーセンサ101,102及びカメラ105,106の測定情報に基づいて、作業領域S内から作業領域S外への退出方向、及び、作業領域S外から作業領域S内への進入方向を修正可能な退出方向・進入方向修正部57が備えられている。退出方向・進入方向修正部57は、通信モジュール25,53等を用いて、ライダーセンサ101,102及びカメラ105,106の測定情報を取得しており、その測定情報から出入口Bにおける進入可能方向C1に対してトラクタ1の進入方向C2が合致しているか否かを判定している。
【0082】
退出方向・進入方向修正部57は、進入可能方向C1に対してトラクタ1の進入方向C2が合致していれば、退出方向及び進入方向の修正は行わず、進入可能方向C1に対してトラクタ1の進入方向C3が異なっていれば、退出方向及び進入方向の修正を行う。図15に示すものでは、点線にて示す位置にトラクタ1が存在するときに、進入可能方向C1に対してトラクタ1の進入方向C3が異なっているので、このときに、退出方向・進入方向修正部57が、進入方向C3を進入方向C2に修正している。ちなみに、進入可能方向C1に対してトラクタ1の進入方向C3が異なっている場合には、監視センター301等に退出方向及び進入方向の修正を行ってもよいかどうかの問い合わせを行い、監視センサー301から退出方向及び進入方向の修正の許可が得られると、退出方向・進入方向修正部57にて退出方向及び進入方向の修正を行うようにしている。
【0083】
このように、退出方向・進入方向修正部57にて退出方向又は進入方向を修正した場合には、走行経路生成部54が、修正後の退出方向及び進入方向に基づいて、移動経路P2を修正可能に構成されている。走行経路生成部54は、修正後の退出方向及び進入方向に対して移動経路P2の退出方向及び進入方向が合致するように、移動経路P2を修正している(図9の移動経路P2に対して進入方向を変更した図11参照)。走行経路生成部54が移動経路P2を修正することで、車載電子制御ユニット18が、修正後の移動経路P2に対応する経路情報を取得して、修正後の移動経路P2に沿ってトラクタ1を自動走行させることができる。よって、車載電子制御ユニット18は、当初の退出方向及び進入方向から退出方向及び進入方向を変更して、トラクタ1を自動走行させて作業領域S外に退出すること、及び、トラクタ1を自動走行させて作業領域S内に進入することができる。
【0084】
この実施形態では、作業領域S内の作業経路P1だけでなく、作業領域S外の移動経路P2においても、トラクタ1を自動走行させるので、自動走行中の走行停止条件を異ならせている。
【0085】
作業領域S内の作業経路P1にて自動走行する場合には、所定の作業を行うので、車載電子制御ユニット18が、トラクタ1の走行位置が作業経路P1から所定距離以上外れていると判定した場合や作業に関連する不具合が生じていると判定した場合に、トラクタ1を走行停止させている。それに対して、作業領域S外の移動経路P2にて自動走行する場合には、車載電子制御ユニット18が、トラクタ1の走行位置が移動経路P2から外れていても農道N等の車線を逸脱していないと判定すると、トラクタ1の自動走行を継続し、トラクタ1の走行位置が車線を逸脱していると判定すると、トラクタ1を走行停止させている。また、車載電子制御ユニット18が、農道N等の車道走行に関係の無い不具合が発生していても、トラクタ1の自動走行を継続し、車道走行に関係のある不具合が発生していると、トラクタ1を走行停止させている。
【0086】
測位ユニット21にて適切な測位情報を取得できない状態であると、作業領域S内の作業経路P1にて自動走行する場合には、所定距離走行するまで又は所定時間が経過するまで、トラクタ1の自動走行を継続し、所定距離走行した後又は所定時間が経過した後に、トラクタ1を走行停止させている。それに対して、作業領域S外の移動経路P2にて自動走行する場合には、適切な測位情報を取得できないときに、即座にトラクタ1を走行停止させている。ちなみに、トラクタ1に備えられたカメラ105,106の測定情報から自動走行を継続することが可能であれば、トラクタ1の自動走行を継続することもできる。
【0087】
〔別実施形態〕
本発明の他の実施形態について説明する。
尚、以下に説明する各実施形態の構成は、夫々単独で適用することに限らず、他の実施形態の構成と組み合わせて適用することも可能である。
【0088】
(1)作業車両の構成は種々の変更が可能である。
例えば、作業車両は、エンジン9と走行用の電動モータとを備えるハイブリット仕様に構成されていてもよく、また、エンジン9に代えて走行用の電動モータを備える電動仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両は、走行部として、左右の後輪6に代えて左右のクローラを備えるセミクローラ仕様に構成されていてもよい。
例えば、作業車両は、左右の後輪6が操舵輪として機能する後輪ステアリング仕様に構成されていてもよい。
【0089】
(2)上記実施形態では、走行経路生成部54、退出方向・進入方向情報取得部56、退出方向・進入方向修正部57を携帯通信端末3に備えているが、走行経路生成部54、退出方向・進入方向情報取得部56、退出方向・進入方向修正部57をトラクタ1(作業車両)や外部の管理装置に備えることもできる。
【0090】
(3)上記実施形態では、携帯通信端末3を操作することで、目標走行経路の生成や自動走行開始の指示等を行って、作業車両の自動走行を行うようにしているが、例えば、上記(2)にて述べた如く、走行経路生成部54、退出方向・進入方向情報取得部56、退出方向・進入方向修正部57等を外部の監視センターや監視装置等に備え、監視センサーや監視装置にて、目標走行経路の生成や自動走行開始の指示等を行うことで、作業車両の自動走行を行うこともできる。
【0091】
<発明の付記>
本発明の第1特徴構成は、複数の作業領域の夫々に対して作業経路を生成する経路生成部と、
その経路生成部にて生成された作業経路に沿って作業車両を自動走行させる自動走行制御部とが備えられ、
前記経路生成部は、作業領域の領域外を走行させて作業領域同士を接続する移動経路を生成可能に構成され、
前記自動走行制御部は、作業車両を自動走行させる走行対象経路を、作業領域内の経路から作業領域外の経路に切り替える前に作業車両を一時停止させ、その一時停止状態が解除されると、前記走行対象経路を作業領域外の経路に切り替えて作業車両を自動走行させるように構成されている点にある。
【0092】
本構成によれば、経路生成部は、作業領域に対する作業経路だけでなく、作業領域の領域外を走行させて作業領域同士を接続する移動経路を生成するので、自動走行制御部が、作業経路にて作業車両を自動走行させるだけでなく、移動経路についても作業車両を自動走行させることができる。これにより、複数の作業領域にて作業を行う場合に、作業領域での作業だけでなく、作業領域同士の間での移動も、作業車両の自動走行にて行うことができ、作業効率の向上を図ることができる。
【0093】
しかも、自動走行制御部は、作業車両を自動走行させる走行対象経路を、作業領域内の経路から作業領域外の経路に切り替える前に作業車両を一時停止させるので、作業領域外の経路にて自動走行させる前に、作業領域外の経路での自動走行を行っても安全性等が確保できるか否かを事前に確認しておくことができる。よって、自動走行制御部が、一時停止状態が解除された後に、作業領域外の経路での自動走行を行うことで、安全性を確保した状態で作業領域外の経路での自動走行を適切に行うことができる。
【0094】
本発明の第2特徴構成は、前記自動走行制御部は、作業車両を自動走行させる走行対象経路を、作業領域外の経路から作業領域内の経路に切り替える前に作業車両を一時停止させ、その一時停止状態が解除されると、前記走行対象経路を作業領域内の経路に切り替えて作業車両を自動走行させるように構成されている点にある。
【0095】
本構成によれば、自動走行制御部は、作業車両を自動走行させる走行対象経路を、作業領域外の経路から作業領域内の経路に切り替える前に作業車両を一時停止させるので、作業領域内の経路での自動走行を行っても作業の準備が整っているか否かを事前に確認しておくことができる。よって、自動走行制御部が、一時停止状態が解除された後に、作業領域内の経路での自動走行を行うことで、作業の準備等が整った状態で作業領域内の経路での自動走行を適切に行うことができ、作業を効率よく行うことができる。
【0096】
本発明の第3特徴構成は、前記経路生成部は、作業領域内から作業領域外への退出方向、及び、作業領域外から作業領域内への進入方向に基づいて、前記移動経路を生成するように構成され、
前記退出方向及び前記進入方向は、操作具による所定の操作に基づいて変更可能に構成されている点にある。
【0097】
本構成によれば、ユーザ等が操作具により所定の操作を行うことで、作業領域内から作業領域外への退出方向、及び、作業領域外から作業領域内への進入方向を適切に変更設定することができる。経路生成部は、変更設定された退出方向及び進入方向に基づいて、移動経路を生成するので、退出方向及び進入方向を適切な方向に設定した移動経路を生成することができる。よって、移動経路にて作業車両を自動走行させる場合に、作業領域内から作業領域外への退出方向、及び、作業領域外から作業領域内への進入方向の両方を適切な方向とすることができ、作業領域からの退出走行、及び、作業領域への進入走行を適切に行うことができる。
【0098】
本発明の第4特徴構成は、前記作業車両には、前記作業領域における出入口の状況を検出する出入口状況検出部が備えられ、
その出入口状況検出部の検出情報に基づいて、作業領域内から作業領域外への退出方向、及び、作業領域外から作業領域内への進入方向を修正可能な退出方向・進入方向修正部が備えられ、
その退出方向・進入方向修正部にて前記退出方向又は前記進入方向を修正した場合には、前記経路生成部が、修正後の退出方向又は修正後の進入方向に基づいて、前記移動経路を修正可能に構成されている点にある。
【0099】
例えば、ユーザの入力ミスや作業領域の出入口の状況の変化等により、既に設定された退出方向では作業領域から退出ができなかったり、既に設定された進入方向では作業領域へ進入ができなかったりする場合がある。
【0100】
そこで、本構成によれば、作業領域から退出する場合、及び、作業領域へ進入する場合に、出入口状況検出部の検出情報に基づいて、出入口の状況を把握することができるので、退出方向・進入方向修正部が、既に設定された退出方向にて退出できるか否か、及び、既に設定された進入方向にて進入できるか否かを判定することができる。退出方向・進入方向修正部は、既に設定された退出方向にて退出できないと判定すると、把握した出入口の状況に基づいて、退出方向を修正することができ、既に設定された進入方向にて進入できないと判定すると、把握した出入口の状況に基づいて、進入方向を修正することができる。
【0101】
このようにして、退出方向・進入方向修正部にて退出方向又は進入方向を修正した場合には、経路生成部が、修正後の退出方向又は修正後の進入方向に基づいて、移動経路を修正可能である。よって、ユーザの入力ミスや作業領域の出入口の状況の変化等により、既に設定された退出方向では作業領域から退出ができなかったり、既に設定された進入方向では作業領域へ進入ができなかったりする場合でも、自動走行制御部が、修正後の移動経路にて作業車両を自動走行させることで、作業領域からの退出、及び、作業領域への進入を適切に行うことができる。
【0102】
本発明の第5特徴構成は、前記作業車両には、その周囲の状況を監視する周囲監視装置が備えられ、
作業車両が作業領域外の経路に沿って自動走行する場合には、前記周囲監視装置が、作業車両が作業領域内の経路に沿って自動走行する場合よりも監視レベルを上げるように構成されている点にある。
【0103】
作業領域内の経路にて自動走行を行う場合には、作業車両の自動走行を阻害するような障害物が存在しても、その障害物が壁や電柱等の固定物である場合が多い。障害物が移動するような人等であっても、その移動速度は比較的遅いものとなっている。それに対して、作業領域外の経路にて自動走行を行う場合には、障害物が他の車両等が含まれ、その移動速度が比較的速いものとなっている。
【0104】
そこで、本構成によれば、作業車両が作業領域外の経路に沿って自動走行する場合には、周囲監視装置が、作業車両が作業領域内の経路に沿って自動走行する場合よりも監視レベルを上げている。例えば、周囲監視装置による監視範囲を広げて監視レベルを上げることで、移動速度の速い障害物が存在しても、その障害物を作業車両から離れた位置にて検知することができ、その障害物との接触を適切に防止することができる。このように、作業車両が作業領域外の経路に沿って自動走行する場合には、周囲監視装置の監視レベルを上げることで、障害物との接触等を適切に防止することができながら、作業車両を自動走行させることができる。
【符号の説明】
【0105】
1 トラクタ(作業車両)
18 車載電子制御ユニット(自動走行制御部)
54 走行経路生成部(経路生成部)
56 退出方向・進入方向情報取得部
57 退出方向・進入方向修正部
101 前ライダーセンサ(出入口状況検出部、周囲監視装置)
102 後ライダーセンサ(出入口状況検出部、周囲監視装置)
103 ソナーユニット(周囲監視装置)
104 ソナーユニット(周囲監視装置)
105 前カメラ(出入口状況検出部、周囲監視装置)
106 後カメラ(出入口状況検出部、周囲監視装置)
B 作業領域の出入口
P 目標走行経路
P1 作業経路
P2 移動経路
S 作業領域
図1
図2
図3
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