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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2023168430
(43)【公開日】2023-11-24
(54)【発明の名称】積層シート、及び冷凍食品用容器
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/20 20060101AFI20231116BHJP
   B32B 27/32 20060101ALI20231116BHJP
   B65D 81/34 20060101ALI20231116BHJP
   B65D 65/40 20060101ALI20231116BHJP
【FI】
B32B27/20 Z
B32B27/32 Z
B65D81/34 U
B65D65/40 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
【公開請求】
(21)【出願番号】P 2023162871
(22)【出願日】2023-09-26
(71)【出願人】
【識別番号】311018921
【氏名又は名称】株式会社TBM
(74)【代理人】
【識別番号】100106002
【弁理士】
【氏名又は名称】正林 真之
(74)【代理人】
【識別番号】100120891
【弁理士】
【氏名又は名称】林 一好
(74)【代理人】
【識別番号】100131705
【弁理士】
【氏名又は名称】新山 雄一
(72)【発明者】
【氏名】大森 望
(57)【要約】
【課題】本発明の課題は、油ちょう処理された冷凍食品用容器における電子レンジ加熱時の変形が改善された、無機物質粉末含有積層シートや、冷凍食品用容器を提供することである。
【解決手段】本発明は、冷凍食品用容器に使用されるための3層以上の積層シートであって、前記積層シートが、所定の重質炭酸カルシウムを含む内層と、前記内層の表面に積層された第1の外層及び第2の外層とを少なくとも備える、積層シートを提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
冷凍食品用容器に使用されるための3層以上の積層シートであって、
前記冷凍食品が、油ちょう処理された食品であり、
前記容器が、前記冷凍食品を収納した状態で電子レンジ加熱可能であり、
前記積層シートが、内層と、前記内層の表面に積層された第1の外層及び第2の外層とを少なくとも備え、
前記内層が、無機物質粉末、及び熱可塑性樹脂を含み、
前記第1の外層及び前記第2の外層が、それぞれ熱可塑性樹脂を含み、
前記無機物質粉末の含有量が、前記積層シートに対して、40.0質量以上80.0質量%以下であり、
前記内層の無機物質粉末の割合が、前記第1の外層及び前記第2の外層の無機物質粉末の総量の割合よりも多く、
前記第1の外層及び前記第2の外層の厚さの比率が、前記積層シートの全体厚さに対して、それぞれ、2.0%以上20.0%以下であり、
前記無機物質粉末が、重質炭酸カルシウムを含み、
前記熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン系樹脂からなり、
前記重質炭酸カルシウムの最大粒径が、30μm以下である、
積層シート。
【請求項2】
前記重質炭酸カルシウムの最大粒径が、20μm以下である、請求項1に記載の積層シート。
【請求項3】
前記熱可塑性樹脂が、プロピレン-エチレンブロック共重合体を含む、請求項1に記載の積層シート。
【請求項4】
前記無機物質粉末の粒度分布D50が、2μm以上10μm以下である、請求項1から3の何れかに記載の積層シート。
【請求項5】
前記重質炭酸カルシウムにおける、JIS M-8511に準じた空気透過法による平均粒子径が、0.7μm以上6.0μm以下である、請求項1から3の何れかに記載の積層シート。
【請求項6】
冷凍食品用容器であって、
前記冷凍食品が、油ちょう処理された食品であり、
前記容器が、前記冷凍食品を収納した状態で電子レンジ加熱可能であり、
前記容器が、凹状に形成され、前記冷凍食品を収容可能な収容部を有し、
前記収容部が、底部と、底部の外周部に沿って形成された側部と、を有し、
前記収容部が、前記底部及び前記側部の内面に対して間隔をおいて前記冷凍食品を支持可能な複数の支持部を有し、
複数の前記支持部が、それぞれ、前記底部の周方向に間隔をおいて設けられ、かつ、前記底部の外周側から前記側部の底部側にわたって内側に突出し、
前記側部の内面側に、周方向に間隔をおいて設けられ、かつ、前記収容部の深さ方向に延在する複数の溝が形成され、
前記容器が、3層以上の積層シートからなり、
前記積層シートが、内層と、前記内層の表面に積層された第1の外層及び第2の外層とを少なくとも備え、
前記内層が、無機物質粉末、及び熱可塑性樹脂を含み、
前記第1の外層及び前記第2の外層が、それぞれ熱可塑性樹脂を含み、
前記無機物質粉末の含有量が、前記積層シートに対して、40.0質量以上80.0質量%以下であり、
前記内層の無機物質粉末の割合が、前記第1の外層及び前記第2の外層の無機物質粉末の総量の割合よりも多く、
前記第1の外層及び前記第2の外層の厚さの比率が、前記積層シートの全体厚さに対して、それぞれ、2.0%以上20.0%以下であり、
前記無機物質粉末が、重質炭酸カルシウムを含み、
前記熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン系樹脂からなり、
前記重質炭酸カルシウムの最大粒径が、30μm以下である、
冷凍食品用容器。
【請求項7】
前記容器が、所定の応力を作用させることによってそれぞれの前記収容部に分離可能に、複数の前記収容部を一体に連結する連結部を有している
請求項6に記載の冷凍食品用容器。
【請求項8】
前記側部は、前記支持部に対して間隔をおいて設けられ、底部側に対して外周側に張り出させることによって形成される段差部を有している
請求項6に記載の冷凍食品用容器。
【請求項9】
前記底部に、複数の前記支持部に対して間隔をおいて設けられ、内側に突出する凸部が形成されている
請求項6に記載の冷凍食品用容器。
【請求項10】
前記容器が、真空成形品である、請求項6から9の何れかに記載の冷凍食品用容器。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、積層シート、及び冷凍食品用容器に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、環境保護の観点から、各種樹脂成形品における樹脂成分含有量を低減するための試みが行われている。
このような試みとして、樹脂成形品における炭酸カルシウム等の配合量を高めることが挙げられる(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第6857428号公報
【特許文献2】特許第7113579号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
他方で、炭酸カルシウムの配合量が高い樹脂成形品は環境負荷が低いものの、樹脂成形品の用途に応じた強度等の調整には未だ課題がある。
本発明者は、特に、過酷な温度差にさらされる冷凍食品用容器について、電子レンジ加熱時の変形の抑制に着目した。
【0005】
本発明は以上の実情に鑑みてなされたものであり、油ちょう処理された冷凍食品用容器における電子レンジ加熱時の変形が改善された、無機物質粉末含有積層シートや、冷凍食品用容器の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、所定の要件を満たす積層シートを冷凍食品用容器の材料として使用することで、上記課題を解決出来る点を見出し、本発明を完成するに至った。より具体的には、本発明は以下を提供する。
【0007】
(1) 冷凍食品用容器に使用されるための3層以上の積層シートであって、
前記冷凍食品が、油ちょう処理された食品であり、
前記容器が、前記冷凍食品を収納した状態で電子レンジ加熱可能であり、
前記積層シートが、内層と、前記内層の表面に積層された第1の外層及び第2の外層とを少なくとも備え、
前記内層が、無機物質粉末、及び熱可塑性樹脂を含み、
前記第1の外層及び前記第2の外層が、それぞれ熱可塑性樹脂を含み、
前記無機物質粉末の含有量が、前記積層シートに対して、40.0質量以上80.0質量%以下であり、
前記内層の無機物質粉末の割合が、前記第1の外層及び前記第2の外層の無機物質粉末の総量の割合よりも多く、
前記第1の外層及び前記第2の外層の厚さの比率が、前記積層シートの全体厚さに対して、それぞれ、2.0%以上20.0%以下であり、
前記無機物質粉末が、重質炭酸カルシウムを含み、
前記熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン系樹脂からなり、
前記重質炭酸カルシウムの最大粒径が、30μm以下である、
積層シート。
【0008】
(2) 前記重質炭酸カルシウムの最大粒径が、20μm以下である、(1)に記載の積層シート。
【0009】
(3) 前記熱可塑性樹脂が、プロピレン-エチレンブロック共重合体を含む、(1)に記載の積層シート。
【0010】
(4) 前記無機物質粉末の粒度分布D50が、2μm以上10μm以下である、(1)から(3)の何れかに記載の積層シート。
【0011】
(5) 前記重質炭酸カルシウムにおける、JIS M-8511に準じた空気透過法による平均粒子径が、0.7μm以上6.0μm以下である、(1)から(3)の何れかに記載の積層シート。
【0012】
(6) 冷凍食品用容器であって、
前記冷凍食品が、油ちょう処理された食品であり、
前記容器が、前記冷凍食品を収納した状態で電子レンジ加熱可能であり、
前記容器が、凹状に形成され、前記冷凍食品を収容可能な収容部を有し、
前記収容部が、底部と、底部の外周部に沿って形成された側部と、を有し、
前記収容部が、前記底部及び前記側部の内面に対して間隔をおいて前記冷凍食品を支持可能な複数の支持部を有し、
複数の前記支持部が、それぞれ、前記底部の周方向に間隔をおいて設けられ、かつ、前記底部の外周側から前記側部の底部側にわたって内側に突出し、
前記側部の内面側に、周方向に間隔をおいて設けられ、かつ、前記収容部の深さ方向に延在する複数の溝が形成され、
前記容器が、3層以上の積層シートからなり、
前記積層シートが、内層と、前記内層の表面に積層された第1の外層及び第2の外層とを少なくとも備え、
前記内層が、無機物質粉末、及び熱可塑性樹脂を含み、
前記第1の外層及び前記第2の外層が、それぞれ熱可塑性樹脂を含み、
前記無機物質粉末の含有量が、前記積層シートに対して、40.0質量以上80.0質量%以下であり、
前記内層の無機物質粉末の割合が、前記第1の外層及び前記第2の外層の無機物質粉末の総量の割合よりも多く、
前記第1の外層及び前記第2の外層の厚さの比率が、前記積層シートの全体厚さに対して、それぞれ、2.0%以上20.0%以下であり、
前記無機物質粉末が、重質炭酸カルシウムを含み、
前記熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン系樹脂からなり、
前記重質炭酸カルシウムの最大粒径が、30μm以下である、
冷凍食品用容器。
【0013】
(7) 前記容器が、所定の応力を作用させることによってそれぞれの前記収容部に分離可能に、複数の前記収容部を一体に連結する連結部を有している、
(6)に記載の冷凍食品用容器。
【0014】
(8) 前記側部は、前記支持部に対して間隔をおいて設けられ、底部側に対して外周側に張り出させることによって形成される段差部を有している、
(6)に記載の冷凍食品用容器。
【0015】
(9) 前記底部に、複数の前記支持部に対して間隔をおいて設けられ、内側に突出する凸部が形成されている、
(6)に記載の冷凍食品用容器。
【0016】
(10) 前記容器が、真空成形品である、(6)から(9)の何れかに記載の冷凍食品用容器。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、油ちょう処理された冷凍食品用容器における電子レンジ加熱時の変形が改善された、無機物質粉末含有積層シートや、冷凍食品用容器が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る冷凍食品用容器の平面図である。
図2図2は、本発明の一実施形態に係る図1のA-A断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0020】
<積層シート>
本発明の一形態に係る積層シートは、冷凍食品用容器に使用されるための積層シートであり、かつ、3層(すなわち、内層と、内層の表面に積層された第1の外層及び第2の外層)以上の構造を有し、以下の要件を全て満たす。
・冷凍食品が、油ちょう処理された食品である。
・容器が、冷凍食品を収納した状態で電子レンジ加熱可能である。
・積層シートが、内層と、内層の表面に積層された第1の外層及び第2の外層とを少なくとも備える。
・内層が、無機物質粉末、及び熱可塑性樹脂を含む。
・第1の外層及び第2の外層が、それぞれ熱可塑性樹脂を含む。
・無機物質粉末の含有量が、積層シートに対して、40.0質量以上80.0質量%以下である。
・内層の無機物質粉末の割合が、第1の外層及び第2の外層の無機物質粉末の総量の割合よりも多い。
・第1の外層及び第2の外層の厚さの比率が、積層シートの全体厚さに対して、それぞれ、2.0%以上20.0%以下である。
・無機物質粉末が、重質炭酸カルシウムを含む。
・熱可塑性樹脂が、ポリプロピレン系樹脂からなる。
・重質炭酸カルシウムの最大粒径が、30μm以下である。
【0021】
なお、積層シートが、本発明の要件を満たしているかどうかは、走査電子顕微鏡(SEM)画像に基づき特定出来る。
具体的には、積層シートの断面等のSEM画像を分析し、各層の厚さ、各層に含まれる成分の含有量を特定出来る。
また、積層シートが無機物質粉末の後述する粒度分布の要件を満たしているかどうかや、積層シートに含まれる無機物質粉末の種類等は、後述するレーザ回折式粒度分布測定装置を用いた方法で特定出来る。
【0022】
無機物質粉末が高配合された積層シートでは、環境負荷が低いというメリットを有する反面、無機物質粉末の分布不均一等に起因して、加熱や衝撃による変形が生じる可能性がある。
本発明者は、このような変形が、油ちょう処理された冷凍食品用容器における電子レンジ加熱時において、特に生じ易いことに着目した。冷凍食品は、電子レンジ加熱時において、その品温(食品自体の温度)が、低温(例えば、0℃未満)から高温(例えば、100℃超)の急激な温度変化にさらされる。このような温度変化にともない、食品から生じた高温の液体(水や油)がシート表面に偏在し、凹凸等の変形を生じ得る。
食品のうち、油ちょう処理された冷凍食品は、温度変化にともなう液体の偏在が特に顕著であるため、変形がより生じ易い。
【0023】
上記のような事情のもと、本発明者らによる検討の結果、意外にも、無機物質粉末として重質炭酸カルシウムを配合し、その最大粒径を調整することで、上記温度変化にともなう変形を抑制出来ることが見出された。
【0024】
本発明において、「油ちょう処理された食品」とは、油を用いて加熱調理された任意の食品を包含する。
油を多く使用する食品ほど本発明の効果が奏され易く、油ちょう処理された食品としては、例えば、揚げ物(高温の油の中で食品を調理したもの)が挙げられる。
揚げ物としては、フライ、天ぷら、コロッケ、かき揚げ、カツ(メンチカツ等)、唐揚げ、磯辺揚げ、素揚げ等が挙げられる。
【0025】
本発明において、「冷凍食品」とは、調理済みの食品を低温で冷凍し、その状態で流通させる食品を包含する。例えば、本発明の一態様において、「冷凍食品」は、一般社団法人日本冷凍食品協会が定める定義を満たすものを包含する。
【0026】
本発明によれば、油ちょう処理された冷凍食品を収納した容器(積層シート)において電子レンジ加熱時の変形が抑制されている。
本発明において、「電子レンジ加熱」とは、マイクロ波による加熱処理を包含し、例えば、500~1500Wでの加熱を包含する。なお、本発明の一態様において、「電子レンジ」は、日本国消費者庁が定める定義を満たすものを包含する。
電子レンジによる加熱時間は、ワット数や、食品の種類及び大きさ等によって適宜調整され、例えば数秒~20分であり得る。
【0027】
容器や積層シートについて、電子レンジ加熱時の変形の有無や程度は、実施例に示した方法で特定出来る。
【0028】
本発明において、「成分Aからなる」とは、成分A以外の成分を実質的に含まないことを意味する。
【0029】
本発明において、「成分Bを実質的に含まない」とは、成分Bの含有量が、その配合対象全体(例えば、積層シート)に対して、0.1質量%未満である態様、より好ましくは0.01質量%以下である態様、更に好ましくは成分Bを全く含まない態様を包含する。
【0030】
以下、本発明の積層シートの構成について詳述する。
【0031】
(1)積層シートに含まれる無機物質粉末
本発明は、高い割合の無機物質粉末が配合されつつも、無機物質粉末の種類、及びその最大粒径を調整した点に主要な技術的特徴がある。
【0032】
(1-1)積層シート中の無機物質粉末の配合量
無機物質粉末の含有量は、積層シートに対して、40.0質量以上80.0質量%以下である。
このように無機物質粉末の含有量が高い積層シートは、加熱による変形が生じる可能性があり得る。しかし、本発明においては、後述する無機物質粉末の最大粒径の調整により、このような変形を抑制出来る。
【0033】
無機物質粉末の含有量は、大きな温度変化にさらされる食品(電子レンジ加熱される油ちょう処理済み冷凍食品等)と接触していても変形を生じにくいという観点から、積層シートに対して、40.0質量以上、好ましくは45.0質量以上、より好ましくは50.0質量%以上である。
【0034】
無機物質粉末の含有量は、充分な表面平滑性等を付与するほどの熱可塑性樹脂を配合する観点から、積層シートに対して、80.0質量以下、好ましくは75.0質量以下、より好ましくは70.0質量%以下である。
【0035】
(1-2)積層シート中の無機物質粉末の最大粒径
後述する通り、本発明の一態様に係る無機物質粉末は、重質炭酸カルシウムを含み、かつ、その最大粒径は30μm以下である。
【0036】
本発明者は、最大粒径が30μm以下である重質炭酸カルシウムを使用すると、電子レンジ加熱時における積層シート及び冷凍食品用容器の変形が抑制し易いという意外な知見を見出した。
更に、最大粒径がより小さい重質炭酸カルシウムを使用すると、上記効果に加え、容器の分離(例えば、後述する、電子レンジ加熱前及び加熱後の収容部の分離(収容部同士の連結部へ応力を作用させることによる分離))がより容易となることも見出した。このような効果は、重質炭酸カルシウムの最大粒径が20μm以下であると、安定的に奏された。
したがって、本発明の一態様において、重質炭酸カルシウムの最大粒径は、30μm以下であり、好ましくは20μm以下である。
【0037】
本発明の一態様において、積層シート中の無機物質粉末は、その全体の最大粒径が、好ましくは30μm以下、より好ましくは20μm以下である。
【0038】
本発明において、「最大粒径」は、材料としての無機物質粉末の粒径ではなく、最終製品(積層シート又は冷凍食品用容器)に含まれる無機物質粉末の最大粒径を意味し、以下の方法で特定される。
まず、電子顕微鏡を用い、最終製品の内層の断面から無作為に選択された5箇所、好ましくは20箇所(視野:100μm×100μm)において、無機物質粉末の粒径(長径)を測定する。
次いで、各視野内で測定された無機物質粉末の粒径の最大値を、無機物質粉末の最大粒径とする。
【0039】
(1-3)積層シート中の無機物質粉末の種類
無機物質粉末としては、少なくとも重質炭酸カルシウムを含む点以外は特に限定されず、通常の樹脂製品等に含まれるものであっても良い。無機物質粉末は、1種類の物質を単独で、又は2種類以上の物質を組み合わせて用いても良い。
【0040】
積層シートにおける各層に含まれる無機物質粉末は、全て同一の物質であっても良く、異なる物質であっても良い。
ただし、本発明の効果が奏され易いという観点から、積層シートにおける各層に含まれる無機物質粉末は、全て同一の物質であることが好ましい。
また、後述の通り、積層シートにおいては、内層の無機物質粉末の割合が、第1の外層及び第2の外層における無機物質粉末の総量の割合よりも多く調整されるが、本発明の効果が特に奏され易いという観点から、無機物質粉末は、内層のみに含まれることが好ましい。
【0041】
無機物質粉末としては、例えば、以下のものが挙げられる。
金属(カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、チタン、鉄、亜鉛等)の炭酸塩、硫酸塩、珪酸塩、リン酸塩、又はホウ酸塩;
金属(カルシウム、マグネシウム、アルミニウム、チタン、鉄、亜鉛等)の酸化物;
上記塩又は酸化物の水和物等。
【0042】
無機物質粉末としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、酸化亜鉛、酸化チタン、シリカ、アルミナ、クレー、タルク、カオリン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ酸カルシウム、硫酸アルミニウム、硫酸マグネシウム、硫酸カルシウム、リン酸マグネシウム、硫酸バリウム、珪砂、カーボンブラック、ゼオライト、モリブデン、珪藻土、セリサイト、シラス、亜硫酸カルシウム、硫酸ナトリウム、チタン酸カリウム、ベントナイト、黒鉛等が挙げられる。
【0043】
無機物質粉末は合成のものであっても良く、天然鉱物由来のものであっても良い。
【0044】
無機物質粉末の分散性や反応性を高めるために、無機物質粉末の表面を、常法に従い、予め表面改質しても良く、しなくても良い。
表面改質法としては、物理的処理方法(プラズマ処理等)、化学的処理方法(カップリング剤や界面活性剤を使用した方法)等が挙げられる。
【0045】
無機物質粉末の形状は、特に限定されず、粒子状(球形、不定形状等)、フレーク状、顆粒状、繊維状等の何れであっても良い。
【0046】
無機物質粉末としては、重質炭酸カルシウムを少なくとも含む。例えば、無機物質粉末において、重質炭酸カルシウムは、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、最も好ましくは100質量%含まれる。
【0047】
積層シート中の無機物質粉末に重質炭酸カルシウムが含まれているかどうかや、その含有量は、積層シートを焼成し、その灰分分析によって特定出来る。
【0048】
炭酸カルシウムとしては、重質炭酸カルシウムに加えて、軽質炭酸カルシウムを含んでいても良く、含んでいなくても良い。
「重質炭酸カルシウム」とは、CaCOを主成分とする天然原料(石灰石等)を機械的に粉砕(乾式法、湿式法等)して得られる炭酸カルシウムである。
「軽質炭酸カルシウム」とは、合成法(化学的沈殿反応等)により調製された炭酸カルシウムである。
したがって、重質炭酸カルシウム、及び軽質炭酸カルシウムは互いに明確に区別される。
【0049】
重質炭酸カルシウム、及び軽質炭酸カルシウムの違いは、例えば、SEM画像の分析に基づき算出された真円度から特定出来る。
重質炭酸カルシウム粉末の真円度は、例えば、0.50以上0.95以下の範囲である。軽質炭酸カルシウム粉末の真円度は、例えば、ほぼ1.00である。
【0050】
本発明において「真円度」とは、下式で表される値であり、粒子の不定形性度合いの指標である。真円度が「1」(最大値)に近いほど真円に近いことを意味し、数値が低いほど不定形の度合いが高いことを意味する。
「真円度」=(粒子の投影面積)/(粒子の投影周囲長と同一周囲長を持つ円の面積)
【0051】
材料として用いる重質炭酸カルシウム(つまり、積層シートや容器に加工していない状態の無機物質粉末)の、JIS M-8511に準じた空気透過法に基づく平均粒子径は、所望の最大粒径を実現し易いという観点から、好ましくは0.7μm以上6.0μm以下、より好ましくは1.0μm以上5.5μm以下である。
【0052】
(1-4)積層シート中の無機物質粉末の粒度分布
本発明の効果が安定的に奏され易いという観点から、積層シートに含まれる無機物質粉末は、その粒子径の積算分布が所定要件を満たすように調整しても良い。
例えば、本発明の一態様において、積層シートに含まれる無機物質粉末の粒度分布D50は、所望の最大粒径を実現し易いという観点から、好ましくは2μm以上10μm以下である。
【0053】
本発明において、「粒度分布DnがXμmである」とは、粒子母集団の「n%」が、「Xμm以下」の粒子径であること、換言すれば、粒子母集団のうち「n%」の粒子径の上限値が「Xμm」であることを意味する。
本発明において「無機物質粉末における粒度分布Dnが、Aμm以上Bμm以下である」とは、無機物質粉末全体のうちの「n%」が、「Aμm以上Bμm以下」の範囲内の値を上限とする粒子径を有することを意味する。
したがって、「D50が2μm以上10μm以下である」とは、無機物質粉末全体のうち、半分(50%)の粒子が、2μm以上10μm以下の範囲内の値を上限とする粒子径を有することを意味する。この例の場合、半分の粒子が、例えば、8μm以下、7μm以下、又は3μm以下の粒子径を有する。
【0054】
本発明において、粒度分布Dnや、無機物質粉末の粒子径の測定機器としては、レーザ回折式粒度分布測定装置を用いる。
より詳細には、シートや成形品を焼成して得られた灰分に基づき、レーザ回折・散乱式の粒子径分布測定装置により、積層シートや、該積層シートから得られる成形品に含まれる無機物質粉末の粒度分布を特定出来る。
【0055】
粒度分布の調整方法は特に限定されないが、例えば以下の方法が挙げられる。
・粒度分布が予め特定された無機物質粉末(市販品等でも良い)を、所望の粒度分布を満たすようにブレンドする。
・上記ブレンド品を、必要に応じて、孔径のフィルタに通し、粒度分布を調整する。
・上記ブレンド品に対し、必要に応じて、粒度分布が極めて狭い所定粒径の無機物質粉末を添加し、粒度分布を調整する。
【0056】
(2)内層
内層は、無機物質粉末、及び熱可塑性樹脂を含む。
【0057】
(2-1)内層に配合される無機物質粉末
内層に配合される無機物質粉末は、積層シートに含まれる無機物質粉末に関する上述の要件を満たせば特に限定されない。
【0058】
(2-2)内層に配合される熱可塑性樹脂
内層に配合される熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂のみが配合される。ポリプロピレン系樹脂は、1種類の物質を単独で、又は2種類以上の物質を組み合わせて用いても良い。
【0059】
本発明において、「ポリプロピレン系樹脂」とは、プロピレン成分単位が、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上、更に好ましくは70質量%以上、最も好ましくは80質量%以上の樹脂を包含する。
【0060】
ポリプロピレン系樹脂としては、ポリプロピレンホモポリマー(プロピレン単独重合体)、プロピレンと他のα-オレフィン(プロピレンと共重合可能なもの)との共重合体等が挙げられる。
「他のα-オレフィン」としては、例えば、炭素数4~10のα-オレフィン(エチレン、1-ブテン、イソブチレン、1-ペンテン、3-メチル-1-ブテン、1-ヘキセン、3,4-ジメチル-1-ブテン、1-ヘプテン、3-メチル-1-ヘキセン等)が挙げられる。
【0061】
プロピレン単独重合体としては、種々の立体規則性(アイソタクティック、シンジオタクティック、アタクチック、ヘミアイソタクチック等)を示す、直鎖状又は分枝状のポリプロピレン等が包含される。
【0062】
プロピレンの共重合体は、ポリプロピレンランダムコポリマー(ランダム共重合体)、ポリプロピレンブロックコポリマー(ブロック共重合体)、二元共重合体、三元共重合体等の何れであっても良い。具体的には、プロピレン-エチレンブロック共重合体、エチレン-プロピレンランダム共重合体、ブテン-1-プロピレンランダム共重合体、エチレン-ブテン-1-プロピレンランダム3元共重合体等が挙げられる。
【0063】
上記のポリプロピレン系樹脂のうち、ポリプロピレンブロックポリマーを含む樹脂が好ましく、プロピレン-エチレンブロック共重合体を含む樹脂がより好ましい。
【0064】
(2-3)内層に配合されるその他の成分
内層には、本発明の効果を阻害しない範囲で、無機物質粉末、及び熱可塑性樹脂以外のその他の成分を配合しても良く、配合しなくても良い。
【0065】
その他の成分としては、樹脂シートに通常配合され得る任意の成分を採用出来る。
このような成分として、潤滑剤、分散剤、静電防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
これらの成分の種類や量は、得ようとする効果等に応じて適宜設定出来る。
【0066】
本発明の好ましい態様は、内層が、重質炭酸カルシウム粒子、及び熱可塑性樹脂のみからなる積層シートを包含する。
【0067】
(2-4)内層に配合される成分の割合
内層に配合される無機物質粉末、及び熱可塑性樹脂の含有量は、積層シートに含まれる無機物質粉末に関する上述の要件を満たせば特に限定されない。
【0068】
本発明の効果が奏され易いという観点から、内層には充分量の無機物質粉末が含まれていることが好ましいため、無機物質粉末の含有量の下限は、内層に対して、好ましくは40.0質量%以上、より好ましくは45.0質量%以上、更に好ましくは50.0質量%以上である。
【0069】
積層シートに充分な成形加工性を付与する観点から、無機物質粉末の含有量の上限は、内層に対して、好ましくは80.0質量%以下、より好ましくは75.0質量%以下、更に好ましくは70.0質量%以下である。
【0070】
内層の無機物質粉末の含有量は、以下の方法で特定された数字であり得る。以下の方法で特定された数字は、上記で挙げた内層に対する無機物質粉末の含有量の例と重複し得る。
(1)工程1
まず、積層シートの任意の5箇所において、積層シート断面のSEM画像を取得する。
該積層シートについて、総質量も記録する。
得られた5箇所のSEM画像に基づき、積層シートの断面全体に対する無機物質粉末の占有面積(面積1)、及び、積層シートの断面のうち内層に対する無機物質粉末の占有面積(面積2)を特定する。
(2)工程2
次いで、積層シートを焼成し、灰分(乾燥粉末)を得る。
得られた灰分に基づき、無機物質粉末の種類や質量を特定する。
(3)工程3
下記式に基づき、内層の無機物質粉末の含有量(質量%)を特定する。
内層の無機物質粉末の含有量(質量%)=「無機物質粉末の質量」×「面積2/面積1」÷「積層シート総質量」
【0071】
工程1において、「面積2/面積1」の下限は、好ましくは0.7以上、より好ましくは1.0である。
【0072】
熱可塑性樹脂の含有量は、無機物質粉末の含有量に応じて調整出来る。
無機物質粉末の含有量の下限は、内層に対して、好ましくは20.0質量%以上、より好ましくは25.0質量%以上、更に好ましくは30.0質量%以上である。
熱可塑性樹脂の含有量の上限は、内層に対して、好ましくは60.0質量%以下、より好ましくは55.0質量%以下、更に好ましくは50.0質量%以下である。
【0073】
(3)外層
外層は、内層の2つの表面に積層される1対の層である(つまり、本発明の積層シートにおいて、外層は、内層を挟むように2層形成される。)。
本発明において、該1対の層を、第1の外層及び第2の外層と称する。
【0074】
第1の外層及び第2の外層の構成は同一であっても良く、異なっていても良い。ただし、第1の外層及び第2の外層は、それぞれ、熱可塑性樹脂を含む。
【0075】
本発明の好ましい態様は、第1の外層及び第2の外層の構成(組成、厚さ、形状等)が全て同一である態様を包含する。
【0076】
(3-1)外層に配合される熱可塑性樹脂
外層に配合される熱可塑性樹脂としては、ポリプロピレン系樹脂のみが配合される。ポリプロピレン系樹脂は、1種類の物質を単独で、又は2種類以上の物質を組み合わせて用いても良い。
【0077】
外層に配合される熱可塑性樹脂は、上記「内層に配合される熱可塑性樹脂」の項に挙げたものと同様の樹脂を採用出来る。
ただし、本発明の積層シートにおいて、外層に配合される熱可塑性樹脂と、内層に配合される熱可塑性樹脂とは同一であっても良く、異なっていても良い。
【0078】
本発明の好ましい態様は、以下の態様を全て包含する。
(態様1)外層に配合される熱可塑性樹脂と、内層に配合される熱可塑性樹脂とが全て同一である態様
(態様2)第1の外層に配合される熱可塑性樹脂と、第2の外層に配合される熱可塑性樹脂と、内層に配合される熱可塑性樹脂とが全て異なる態様
(態様3)第1の外層に配合される熱可塑性樹脂、第2の外層に配合される熱可塑性樹脂、及び内層に配合される熱可塑性樹脂のうち2種のみが同一である態様
【0079】
(3-2)外層に配合されるその他の成分
外層には、本発明の効果を阻害しない範囲で、熱可塑性樹脂以外のその他の成分を配合しても良く、配合しなくても良い。
【0080】
その他の成分としては、樹脂シートに通常配合され得る任意の成分を採用出来る。
このような成分として、上述の無機物質粉末、潤滑剤、分散剤、静電防止剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等が挙げられる。
これらの成分の種類や量は、得ようとする効果等に応じて適宜設定出来る。
【0081】
(3-3)外層に配合される成分の割合
外層に配合される熱可塑性樹脂等の含有量は、後述する積層シート全体の要件を満たせば、特に限定されない。
【0082】
外層に配合される熱可塑性樹脂の割合は、樹脂シートを成形出来る範囲であれば、特に限定されない。
【0083】
熱可塑性樹脂の含有量の下限は、外層に対して、好ましくは80.0質量%以上、より好ましくは90.0質量%以上、更に好ましくは99.0質量%以上である。
【0084】
熱可塑性樹脂の含有量の上限は、外層に対して、好ましくは100.0質量%である。
【0085】
外層に無機物質粉末が配合される場合、内層の無機物質粉末の割合(つまり、内層全体に対する無機物質粉末の割合)が、第1の外層及び第2の外層における無機物質粉末の総量の割合(つまり、第1の外層及び第2の外層の全体に対する無機物質粉末の割合)よりも多く配合される。
このように調整することで、大きな温度変化にさらされる食品(電子レンジ加熱される油ちょう処理済み冷凍食品等)と接触していても変形を生じにくい積層シートが得られ易くなる。
【0086】
内層の無機物質粉末の割合が、第1の外層及び第2の外層における無機物質粉末の総量の割合よりも多いかどうかは、積層シート断面のSEM画像の分析に基づき特定出来る。
具体的には、積層シートの断面画像において、内層における無機物質粉末が占める面積割合が、第1の外層及び第2の外層における無機物質粉末の面積割合の合計よりも多ければ、内層の無機物質粉末の割合が、第1の外層及び第2の外層における無機物質粉末の総量の割合よりも多いと判断出来る。
【0087】
内層の無機物質粉末の含有量に対する、第1の外層及び第2の外層における無機物質粉末の含有量の総量の比率(第1の外層及び第2の外層における無機物質粉末の含有量の総量/内層の無機物質粉末の含有量)は、1.0未満であれば良いが、該比率が小さいほど本発明の効果が得られ易い。
最も好ましい態様では、第1の外層及び第2の外層には無機物質粉末が含まれない。
【0088】
本発明の好ましい態様は、外層が、それぞれ熱可塑性樹脂のみからなる積層シートを包含する。
【0089】
(4)積層シートの各層の厚さ等
本発明の積層シートにおいて、第1の外層及び第2の外層における厚さの比率は、積層シートの全体厚さに対して、それぞれ、2.0%以上20.0%以下である。つまり、本発明の積層シートにおいて、外層の総厚さ(第1の外層及び第2の外層における厚さの合計値)は、積層シートの全体厚さに対して、4.0%以上40.0%以下である。
本発明の積層シートは、内層の厚さに対して外層の厚さを薄くすることで、電子レンジ加熱時の変形を抑制出来るだけでなく、成形加工性等も向上させることが出来る。
【0090】
第1の外層及び第2の外層における厚さの比率の下限は、外観が良好となり易いという観点から、積層シートの全体厚さに対して、それぞれ、2.0%以上、好ましくは2.5%以上、より好ましくは3.0%以上である。
【0091】
第1の外層及び第2の外層における厚さの比率の上限は、本発明の効果が奏し易くなるという観点から、積層シートの全体厚さに対して、それぞれ、20.0%以下、好ましくは18.0%以下、より好ましくは16.0%以下、最も好ましくは10.0%以下である。
【0092】
本発明の積層シートにおいて、内層の厚さの比率は、外層の厚さに応じて調整され、積層シートの全体厚さに対して、60.0%以上96.0%以下である。
【0093】
第1の外層及び第2の外層における厚さの下限は、良好な外観が得られ易いという観点から、それぞれ、好ましくは5.0μm以上、より好ましくは10.0μm以上である。
【0094】
第1の外層及び第2の外層における厚さの上限は、良好な成形性等を実現し易い等の観点から、それぞれ、好ましくは50.0μm以下、より好ましくは45.0μm以下である。
【0095】
内層の厚さの下限は、良好な機械的特性が得られ易い等の観点から、好ましくは50.0μm以上、より好ましくは100.0μm以上である。
【0096】
内層の厚さの上限は、良好な成形性等の観点から、好ましくは950.0μm以下、より好ましくは900.0μm以下である。
【0097】
積層シートの全体厚さの下限は、外層や内層の厚さに応じて調整され、好ましくは100.0μm以上、より好ましくは150.0μm以上である。
【0098】
積層シートの全体厚さの上限は、外層や内層の厚さに応じて調整され、好ましくは990.0μm以下、より好ましくは700.0μm以下である。
【0099】
積層シートの密度は、特に限定されない。
【0100】
積層シートは、内層、第1の外層、及び第2の外層からなる3層シートであっても良く、外層の外側(最外層)にその他の層が設けられた4層以上のシートであっても良い。
上記その他の層としては、本発明の効果を阻害しない範囲で任意の層(印刷層等)が選択され得る。
ただし、本発明の一態様は、積層シートが、内層、第1の外層、及び第2の外層からなる3層シートである態様を包含する。
【0101】
(5)積層シートの製造方法
本発明の積層シートの製造方法は特に限定されず、従来知られる多層シートや積層体の製造方法を採用出来る。
【0102】
積層シートの製造方法として、例えば、以下の方法が挙げられる。
・シート状に成形した内層及び外層をカレンダーロールで積層する方法
・内層及び外層を共押出する方法
・多層Tダイ方式の二軸押出成形機を用いて、内層用原材料の溶融混練と内外層の共押出成形とを同一工程で行う方法
・複数の環状ダイスを用いた、押出インフレーション方式による方法
【0103】
積層シートは、必要に応じて延伸を行っても良い。
【0104】
(6)積層シートの用途
本発明の積層シートは、冷凍食品用容器の材料として使用される。該冷凍食品用容器は、油ちょう処理された冷凍食品を収容した状態で加熱処理(電子レンジ加熱等)に供され得る。
【0105】
冷凍食品用容器の構成としては、従来知られる任意の構成を採用出来る。好ましい構成としては、「(7)冷凍食品用容器」の項に挙げた構成が挙げられる。
【0106】
本発明の積層シートを、任意の成形方法に供することで冷凍食品用容器が得られる。
このような成形方法としては、特に限定されず、真空成形、圧空成形、マッチモールド成形等が挙げられる。
これらのうち、成形容易性という観点から、真空成形が好ましい。したがって、本発明の積層シートは、真空成形用積層シートである態様を包含する。
【0107】
(7)冷凍食品用容器
本発明の一態様は、下記の構造を有する、本発明の積層シートからなる冷凍食品用容器も包含する。
【0108】
冷凍食品用容器は、凹状に形成され、冷凍食品を収容可能な収容部を有している。収容部は、底部と、底部の外周部に沿って形成された側部と、を有している。収容部は、底部及び側部の内面に対して間隔をおいて冷凍食品を支持可能な複数の支持部を有している。複数の支持部は、それぞれ、底部の周方向に間隔をおいて設けられ、かつ、底部の外周側から側部の底部側にわたって内側に突出している。側部の内面側には、周方向に間隔をおいて設けられ、かつ、収容部の深さ方向に延在する複数の溝が形成されている。
【0109】
上記冷凍食品用容器は、所定の応力を作用させることによってそれぞれの収容部に分離可能に、複数の収容部を一体に連結する連結部を有していても良い。
【0110】
上記冷凍食品用容器における側部は、支持部に対して間隔をおいて設けられ、底部側に対して外周側に張り出させることによって形成される段差部を有していても良い。
【0111】
上記冷凍食品用容器における底部は、複数の支持部に対して間隔をおいて設けられ、内側に突出する凸部が形成されていても良い。
【0112】
図1及び2に示される容器は、本発明の積層シートからなる冷凍食品用容器の好ましい一例である。
【0113】
冷凍食品用容器における冷凍食品の配置は特に限定されないが、一の収容部に対して、一の冷凍食品を、底部及び側部の内面に対して間隔をおいた状態で収容することで、冷凍食品の加熱によって生じた液体と冷凍食品との接触を抑制するとともに、冷凍食品の加熱によって生じた蒸気を側部の内面と冷凍食品との間を通過させるようにすることが好ましい。
【0114】
本発明の冷凍食品用容器の成形方法としては、特に限定されず、真空成形、圧空成形、マッチモールド成形等が挙げられる。
これらのうち、成形容易性という観点から、真空成形が好ましい。したがって、本発明の冷凍食品用容器は、真空成形品である態様を包含する。
【実施例0115】
以下に、実施例により本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0116】
<積層シート及び冷凍食品用容器の作製及び評価-1>
以下の方法で積層シート及び冷凍食品用容器を作製し、その評価を行った。
【0117】
(1)材料の準備
各層の材料を以下の通り準備した。
【0118】
(1-1)無機物質粉末
無機物質粉末として、下記の特性を有する重質炭酸カルシウム粒子の何れかを使用した。
【0119】
(Ca-1)
・粒度分布D50:5.1μm
・平均粒子径:4.9μm
【0120】
(Ca-2)
・粒度分布D50:12.1μm
・平均粒子径:9.8μm
【0121】
(1-1-1)粒度分布D50の測定方法
無機物質粉末の粒度分布D50は、以下の方法(レーザ回折式粒度分布測定)で特定した。
(a)灰分として得た、各無機物質粉末の含有量測定を行った。
(b)電子天秤で、各無機物質粉末(0.01g)、イオン交換水(9.99g)を量り取り、0.1wt%の無機物質粉末水溶液を調製した。
(c)調製した水溶液を超音波洗浄機に5分間入れ、粉末を分散させた。
(d)得られた分散液を、レーザ回折式粒子サイズ分析装置における試料分散ユニットの試料採取タンクに少しずつ加え、散乱強度が5~10%になるように調整し、粒度分布測定を行った。各サンプル3回ずつ測定を行った。
【0122】
(1-1-2)平均粒子径
無機物質粉末の平均粒子径は、JIS M-8511に準じた空気透過法に基づき特定した。平均粒子径は、材料として用いる無機物質粉末(つまり、積層シートや容器に加工していない状態の無機物質粉末)について測定を行った。
【0123】
(1-1-3)最大粒径の測定方法
積層シート又は冷凍食品用容器における無機物質粉末の最大粒径を、下記の手順で特定した。
まず、電子顕微鏡を用い、内層の断面から無作為に選択された5箇所(視野:100μm×100μm)において、炭酸カルシウム粒子の粒径(長径)を測定した。
次いで、各視野内で測定された炭酸カルシウム粒子の粒径の最大値を、炭酸カルシウム粒子の最大粒径とした。
その結果、Ca-1を用いた例では、何れも最大粒径が15.2~25.8μmだった。
また、Ca-2を用いた例では、何れも最大粒径が35.3~39.8μmだった。
【0124】
(1-2)熱可塑性樹脂
ポリプロピレン系樹脂(PP):プロピレン-エチレンブロック共重合体(融点160℃)
ポリエチレン系樹脂(PE):HDPE及びLLDPEのブレンド(HDPE:LLDPE(質量比)=70:30)
なお、上記HDPEにおける、JIS K 6922-1(ISO1133)によるMFR(190℃、21.6kg)は、7.5g/10分である。
上記LLDPEにおける、JIS K 6922-1(ISO1133)によるMFR(190℃、2.16kg)は、0.8g/10分である。
【0125】
(2)積層シートの作製
表に示す材料を用いて、多層Tダイ法により、3層の積層シートを作製した。
積層シートの全体厚さは、400μmに設定した。
内層の厚さは、360μm(積層シートの全体厚さに対して90%)に設定した。
内層の両面に外層(第1の外層及び第2の外層)を設け、それぞれの外層の厚さは、20μm(積層シートの全体厚さに対して、それぞれ5%)に設定した。
【0126】
(3)冷凍食品用容器の作製
上記で得られた各積層シートについて、遠赤外線ヒーターで予熱した後、真空成形機によって容器に成形した。
容器の形状の概要は図1及び図2に示す通りである。
【0127】
この容器1は、凹状に形成され、食品を収容可能な複数の収容部10を有している。容器1は、所定の応力を作用させることによってそれぞれの収容部10に分離可能に、複数の収容部10を一体に連結する連結部2を有している。容器1を構成するそれぞれの収容部10には、1つの略球形状の食品が収容される。図に示す容器1は、2つの収容部10を有している。容器1は、平面視における長手方向寸法が200mm、短手方向寸法が100mmであり、高さ寸法が50mmである。また、収容部10は、径方向寸法が80mm、深さ寸法が50mmである。
【0128】
収容部10は、底部11と、底部11の外周部に沿って形成された側部12と、底部11及び側部12の内面に対して間隔をおいて食品を支持する複数の支持部13と、を有している。
【0129】
底部11は、外径寸法が75mmの円板状に形成されている。底部11の径方向の中心部側には、複数の支持部13に対して10mmの間隔をおいて設けられ、内側に突出する凸部11aが形成されている。凸部11aは、基端側の一辺が15mm、先端側の一辺が9.5mm、高さが6.5mmの四角錐台形状に形成され、収容部10に収容された食品に対して底部11側から当接する。これにより、収容部10に収容された食品と底部11の内面と間には、隙間が形成される。収容部10に収容された食品は、加熱にともなう蒸発等によっての液体(水又は油等)が食品の外側に生じた場合に、液体が底部11の内面側における凸部11aと支持部13との間に溜まり、加熱中又は加熱後の食品と液体との接触が抑制される。
【0130】
側部12は、円筒状に形成されている。側部12の内周面側には、それぞれ周方向に間隔をおいて設けられ、収容部10の深さ方向に延在する溝12aが形成されている。溝12aは、幅寸法が3mm、深さ寸法が1.5mmの横断面半円形状に形成されている。収容部10に収容された食品は、加熱によって生じた水又は油等の蒸気が溝12aに沿って収容部10の厚さ方向に流通する。また、側部12は、複数の支持部13に対して収容部10の深さ方向に間隔をおいて設けられ、底部11側に対して外周側に張り出させることによって形成される段差部12bを有している。段差部12bは、側部12を、底部11側に対して4mm径方向外側に張り出させることによって形成されている。収容部10に収容された食品は、複数の支持部13及び段差部12bの角部分によって安定的に支持される。
【0131】
複数の支持部13は、底部11の周方向に10mmの間隔をおいて設けられ、底部11の外周側から側部12の底部11側にわたって内側に突出している。複数の支持部13は、それぞれ、底部11の周方向において、底部11側の長さ寸法が19mm、側部12側の長さ寸法が30mm、高さ寸法が6.5mmである。図に示す容器1の収容部10は、4つの支持部13を有している。また、複数の支持部13には、それぞれ、収容部10の深さ方向に延在し、食品の加熱によって生じる蒸気が流通可能な溝13aが形成されている。溝13aは、幅寸法が3mm、深さ寸法が1.5mmの横断面半円形状に形成されている。
【0132】
(4)冷凍食品用容器の評価
以下の方法で、冷凍食品用容器へ食品を収納し、電子レンジ加熱を行い、変形の有無等を評価した。その結果を表中の「変形」の項に示す。
なお、本試験では、加熱試験からその評価のあいだ、食品を容器の底部に置き、収容部に対して、食品が、底部及び側部の内面に対して間隔をおいた状態で収容された状態を維持した。
【0133】
(4-1)食品の準備
常法にしたがい、約80g(約5cm×3.5cm×約5cm)のメンチカツ(油ちょう処理された食品に相当する。)を作製した。該メンチカツは、挽肉及び野菜をこねて小判型に成形し、衣をつけて油で揚げた食品である。
作製したメンチカツを急速冷凍し、下記加熱試験に供するまで-18℃で冷凍保存した。
また、急速冷凍及び冷凍保存をせずに、作製後、常温保存(20℃前後)したメンチカツも準備した。
【0134】
参考として、白米を成形した握り飯(油ちょう処理された食品に相当しない。)も用意し、急速冷凍後に、下記試験に供するまで-18℃で冷凍保存した。
【0135】
(4-2)加熱試験
食品(メンチカツ又は握り飯、それぞれ約80g(約5cm×3.5cm×約5cm))を、各冷凍食品用容器の各収容部10に、底部11及び側部12の内面に対して間隔をおいた状態で収納し、すみやかに電子レンジで加熱(600W、80秒)した。なお、加熱時、冷凍食品用容器の開口部は蓋やラップ等で覆わなかった。
加熱後、食品を冷凍食品用容器からすみやかに取り出し、容器の変形の有無や程度を目視観察し、以下の基準で評価した。
【0136】
[加熱試験の評価基準]
A:油ちょう食品から生じた液体が溜まった凹部の変形が全く認められなかった。
B:油ちょう食品から生じた液体が溜まった凹部の変形が少々認められた。
C:油ちょう食品から生じた液体が溜まった凹部の変形が明確に認められた。
【0137】
【表1】
【0138】
【表2】
【0139】
表に示される通り、本発明の要件を満たす積層シートから得られた容器によれば、食品を収納し、電子レンジ加熱をしても、変形が抑制されていた。
このような効果は、食品の冷凍の有無や、油ちょう処理された食品であるかどうかにかかわらず認められた。
【0140】
これに対し、本発明の要件を満たさない積層シートから得られた容器では、冷凍していない食品や、油ちょう処理されていない食品を電子レンジ加熱した場合には、変形が抑制される傾向にあった。
しかし、油ちょう処理された冷凍食品を電子レンジ加熱した場合には、顕著な変形が認められた。
【0141】
<積層シート及び冷凍食品用容器の作製及び評価-2>
上記<積層シート及び冷凍食品用容器の作製及び評価-1>と同様の方法で積層シート、及び冷凍食品用容器を作製し、加熱試験を行った。
ただし、重質炭酸カルシウムとして、「Ca-1」と、該「Ca-1」をふるいにかけて粒度分布をやや狭めた「Ca-1α」を使用した。積層シート、及び冷凍食品用容器に含まれた「Ca-1α」の最大粒径を計測したところ、10.6~18.7μmだった。
【0142】
その結果、本発明の要件を満たしたうえで、重質炭酸カルシウムの最大粒径が小さいほど、電子レンジ加熱時における積層シート及び冷凍食品用容器の変形が抑制されるだけではなく、電子レンジ加熱前及び加熱後の収容部の分離(収容部同士の連結部へ応力を作用させることによる分離)が容易となる傾向にあった。
具体的には、本発明の要件を満たしたうえで「Ca-1α」を使用した場合では、本発明の要件を満たしたうえで「Ca-1」を使用した場合よりも、安定的に分離が容易となった。ただし、無機物質粉末の含有量が本発明の要件を満たさない場合、「Ca-1」、及び「Ca-1α」の何れを使用した場合でも、電子レンジ加熱前及び加熱後の収容部の分離のし易さに違いはほぼ認められなかった。

図1
図2